(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023172743
(43)【公開日】2023-12-06
(54)【発明の名称】異常診断機能付き液圧回路システム、及びそれを備える操舵装置
(51)【国際特許分類】
F15B 20/00 20060101AFI20231129BHJP
B63H 25/12 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
F15B20/00 D
B63H25/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022084759
(22)【出願日】2022-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135220
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 祥二
(72)【発明者】
【氏名】田中 辰喜
(72)【発明者】
【氏名】増田 貴行
【テーマコード(参考)】
3H082
【Fターム(参考)】
3H082DA06
3H082DA18
3H082DA46
3H082DE05
(57)【要約】
【課題】液圧回路の異常を判断することができる異常診断機能付き液圧回路システムを提供する。
【解決手段】異常診断機能付き液圧回路システムは、少なくとも1つの容積形のポンプと、ポンプに繋がる液圧回路と、液圧回路の下流側を流れる作動液の状態量を検出する下流側センサと、ポンプから吐出される作動液の第1状態量と、下流側センサで検出される作動液の第2状態量とに基づいて液圧回路の異常を判断する異常診断装置と、を備える異常診断機能付き液圧回路システム。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの容積形のポンプと、
前記ポンプに繋がる液圧回路と、
前記液圧回路の下流側を流れる作動液の状態量を検出する下流側センサと、
前記ポンプから吐出される作動液の第1状態量と、前記下流側センサで検出される作動液の第2状態量との比較結果に基づいて前記液圧回路の異常を判断する異常診断装置と、を備える異常診断機能付き液圧回路システム。
【請求項2】
前記液圧回路は、前記ポンプからの作動液の流れを制御する少なくとも1つの液圧制御機器を含む、請求項1に記載の異常診断機能付き液圧回路システム。
【請求項3】
前記液圧制御機器に制御信号を出力する制御装置を更に備え、
前記異常診断装置は、前記制御装置から出力される制御信号と、第1状態量と、第2状態量との比較結果に基づいて前記液圧制御機器の異常を判断する、請求項2に記載の異常診断機能付き液圧回路システム。
【請求項4】
前記異常診断装置は、第1状態量及び第2状態量の波形データに基づいて前記液圧回路の異常を判断する、請求項1に記載の異常診断機能付き液圧回路システム。
【請求項5】
複数の前記ポンプを備え、
前記液圧回路は、前記複数のポンプの各々から吐出される作動液を合流させ、
前記異常診断装置は、前記複数のポンプの各々から吐出される作動液の複数の第1状態量と、前記下流側センサで検出される第2状態量とに基づいて前記液圧回路の異常を判断する、請求項1に記載の異常診断機能付き液圧回路システム。
【請求項6】
前記液圧回路は、前記複数のポンプの各々が夫々接続される複数の回路系統と、前記複数の回路系統を流れる作動液を合流させる合流通路とを有し、
前記下流側センサは、前記合流通路の下流側を流れる作動液の第2状態量を検出し、
前記異常診断装置は、前記複数のポンプの各々から吐出される作動液の複数の第1状態量と、前記下流側センサで検出される第2状態量とに基づいて前記回路系統の異常を判断する、請求項5に記載の異常診断機能付き液圧回路システム。
【請求項7】
前記異常診断装置は、前記複数のポンプの各々から吐出される作動液の複数の第1状態量に関する波形データに基づいて前記液圧回路の異常を判断する、請求項6に記載の異常診断機能付き液圧回路システム。
【請求項8】
前記複数のポンプのうち少なくとも1つに設けられ、前記ポンプから吐出される作動液の第1状態量を変化させて作動液に付加信号を付加する信号発生器を更に備え、
前記異常診断装置は、前記付加信号が付加された第1状態量に基づいて前記回路系統の異常を判断する、請求項6に記載の異常診断機能付き液圧回路システム。
【請求項9】
前記ポンプから吐出される作動液の第1状態量を検出する上流側センサを更に備え、
前記異常診断装置は、前記上流側センサで検出される第1状態量と、前記下流側センサで検出される作動液の第2状態量とに基づいて前記液圧回路の異常を判断する、請求項1に記載の異常診断機能付き液圧回路システム。
【請求項10】
請求項1乃至9の何れか1つに記載の前記異常診断機能付き液圧回路システムを備える、操舵装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液圧回路の異常を判断する異常診断機能付き液圧回路システム、及びそれを備える操舵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
舶用機械及び建設機械等の産業用機械において、斜板ポンプ等の容積形ポンプが広く利用されている。そして、容積形ポンプの異常を検知する異常診断装置として、例えば特許文献1のような故障診断装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の故障診断装置は、作動液の吸入圧に基づいて容積形ポンプの故障を診断できる。しかし、ポンプに繋がる液圧回路の異常を判断することが想定されていない。
【0005】
そこで本発明は、液圧回路の異常を判断することができる異常診断機能付き液圧回路システム、及びそれを備える操舵装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の液圧回路システムは、少なくとも1つの容積形のポンプと、前記ポンプに繋がる液圧回路と、前記液圧回路の下流側を流れる作動液の状態量を検出する下流側センサと、前記ポンプから吐出される作動液の第1状態量と、前記下流側センサで検出される作動液の第2状態量との比較結果に基づいて前記液圧回路の異常を判断する異常診断装置と、を備える。
【0007】
本発明に従えば、ポンプから吐出される作動液の第1状態量と下流側センサで検出される作動液の第2状態量に基づいて液圧回路を流れる作動液の状態量の変化を見出すことができる。そして、液圧その変化に基づいて液圧回路における異常を判断することができる。
【0008】
本発明の操舵装置は、前述する前記異常診断機能付き液圧回路システムを備える。
【0009】
本発明に従えば、前述するような機能を有する操舵装置を実現することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、液圧回路の異常を判断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1実施形態の異常診断機能付き液圧回路システムを示す回路図である。
【
図2】
図1の異常診断機能付き液圧回路システムにおいて各センサで検出される圧力の経時変化を示すグラフであり、(a)は正常時且つポンプ駆動時において各センサで検出される圧力の経時変化であり、(b)は、正常時且つポンプ停止時における各センサで検出される圧力経時変化である。
【
図3】
図1の異常診断機能付き液圧回路システムにおいて各センサで検出される圧力の経時変化を示すグラフであり、(a)は第2遮断弁が閉状態でスティックしている時における各センサで検出される圧力の経時変化であり、(b)は、作動液漏れ時における各センサで検出される圧力経時変化である。
【
図4】本発明の第2実施形態の異常診断機能付き液圧回路システムを示す回路図である。
【
図5】
図4の異常診断機能付き液圧回路システムにおいて液圧回路が正常である際の各センサで検出される圧力の経時変化を示すグラフである。
【
図6】
図4の異常診断機能付き液圧回路システムにおいて液圧回路が異常である際の各センサで検出される圧力の経時変化を示すグラフである。
【
図7】本発明の第3実施形態の異常診断機能付き液圧回路システムを示す回路図である。
【
図8】
図7の異常診断機能付き液圧回路システムにおいて、下流圧の波形データを周波数分析した結果のグラフであって、(a)は液圧回路が正常である際の周波数分析結果であり、(b)は液圧回路が異常である際の周波数分析結果である。
【
図9】本発明の第4実施形態の異常診断機能付き液圧回路システムを示す回路図である。
【
図10】本発明の第5実施形態の異常診断機能付き液圧回路システムを示す回路図である。
【
図11】本発明の第6実施形態の異常診断機能付き液圧回路システムを備える操舵装置を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る第1乃至第6実施形態の異常診断機能付き液圧回路システム(以下、「液圧回路システム」という)1,1A~1E及びそれを備える操舵装置2について前述する図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明で用いる方向の概念は、説明する上で便宜上使用するものであって、発明の構成の向き等をその方向に限定するものではない。また、以下に説明する液圧回路システム1,1A~1E及び操舵装置2は、本発明の一実施形態に過ぎない。従って、本発明は実施形態に限定されず、発明の趣旨を逸脱しない範囲で追加、削除、変更が可能である。
【0013】
<液圧回路システム>
図1に示すような液圧回路システム1は、液圧アクチュエータ3に作動液(例えば、油及び水)を供給することによって液圧アクチュエータ3を駆動する。液圧アクチュエータ3は、例えば液圧シリンダ及び液圧モータである。また、液圧回路システム1は、液圧回路システム1内における異常を診断することができる。液圧回路システム1は、液圧ポンプ11と、液圧回路12と、下流側センサ13と、制御装置14とを備えている。また、液圧回路システム1は、上流側センサ15を更に備えている。
【0014】
<液圧ポンプ>
液圧ポンプ11は、作動液を吐出する。液圧ポンプ11は、容積形の液圧ポンプである。即ち、液圧ポンプ11から吐出される作動液が脈動している。液圧ポンプ11は、例えば往復ポンプ(斜板ポンプ、斜軸ポンプ、及びピストンポンプ等)、ギヤポンプ、並びにトロコイドポンプ等である。本実施形態において、液圧ポンプ11は、斜板ポンプである。
【0015】
<液圧回路>
液圧回路12は、液圧ポンプ11及び液圧アクチュエータ3に繋がっている。液圧回路12は、液圧ポンプ11から吐出された作動液を液圧アクチュエータ3に供給する。そして、液圧回路12は、液圧ポンプ11からアクチュエータ3に供給される作動液の流れを制御する。液圧回路12は、液通路21と、複数の遮断弁22,23と、リリーフ弁24とを含んでいる。なお、液圧回路12には、
図1に示される構成以外のものが含まれてもよい。液圧回路12に含まれる他の構成は、例えば方向切換弁、チェック弁、及び制御弁等の弁、並びに絞り等がある。
【0016】
液通路21は、液圧ポンプ11及び液圧アクチュエータ3に繋がっている。そして、液通路21は、液圧ポンプ11から吐出される作動液を液圧アクチュエータ3に供給する。液圧制御機器の一例である複数の遮断弁22,23の各々は、液通路21に直列するように介在している。本実施形態において、液通路21には、2つの遮断弁22,23が介在している。なお、液通路21において上流側に位置する遮断弁22が第1遮断弁22であり、下流側に位置する遮断弁23が第2遮断弁23である。2つの遮断弁22,23は、例えばノーマルオープン形の遮断弁である。即ち、遮断弁22,23は、入力される制御信号に応じて液通路21を閉じる。なお、2つの遮断弁22,23は、ノーマルクローズ形の遮断弁であってもよい。リリーフ弁24は、液通路21に接続されている。より詳細に説明すると、リリーフ弁24は、液通路21において2つの遮断弁22,23の下流側に接続されている。リリーフ弁24は、液通路21の液圧が所定圧以上になると、液通路21の作動液をタンク25に排出する。
【0017】
<上流側センサ>
上流側センサ15は、液圧ポンプ11から吐出される作動液の第1状態量を検出する。上流側センサ15は、液圧回路12の上流側に配置されている。より詳細に説明すると、上流側センサ15は、液通路21において2つの遮断弁22,23の上流側に接続されている。上流側センサ15は、本実施形態において液圧センサであって、液圧ポンプ11から吐出される作動液の液圧、即ち吐出圧を検出する。なお、上流側センサ15は、流量センサであってもよい。この場合、上流側センサ15は、第1状態量として流量を検出する。
【0018】
<下流側センサ>
下流側センサ13は、液圧回路12の下流側を流れる作動液の第2状態量を検出する。下流側センサ13は、液圧回路12の下流側に配置されている。より詳細に説明すると、下流側センサ13は、液通路21において2つの遮断弁22,23の下流側に接続されている。更に、下流側センサ13は、液通路21においてリリーフ弁24の下流側に接続されている。下流側センサ13は、本実施形態において液圧センサであって、液圧回路12の下流側の液圧、即ち下流圧を検出する。なお、下流側センサ13は、流量センサであってもよい。この場合、下流側センサ13は、第2状態量として流量を検出する。
【0019】
<制御装置>
制御装置14は、遮断弁22,23に制御信号を出力する。制御装置14は、遮断弁22,23に制御信号を出力することによって遮断弁22,23の動作を制御する。より詳細に説明すると、制御装置14は、第1制御信号を出力することによって第1遮断弁22を作動させる。また、制御装置14は、第2制御信号を出力することによって第2遮断弁23を作動させる。そして、制御装置14は、遮断弁22,23の何れかを作動させることによって液通路21を閉じる。
【0020】
また、異常診断装置の一例である制御装置14は、液圧ポンプ11の吐出圧と、下流側センサ13で検出される下流圧とに基づいて液圧回路12の異常を判断する。より詳細に説明すると、制御装置14は、各センサ13,15から吐出圧及び下流圧を取得する。制御装置14は、取得した下流圧及び吐出圧を比較した比較結果に基づいて液圧回路12の異常を判断する。本実施形態において、制御装置14は、吐出圧の波形データ及び下流圧の波形データを比較した比較結果に基づいて液圧回路12の異常を判断する。
【0021】
<液圧回路システムの動作>
液圧回路システム1では、制御装置14から遮断弁22,23に制御信号が出力されていない状態(即ち、「無通電状態」という)において、液通路21が開いている。それ故、液圧ポンプ11から吐出される作動液が液圧アクチュエータ3に供給される。これにより、液圧アクチュエータ3が作動する。
【0022】
次に、制御装置14は、プログラム又は図示しない操作装置からの指令(以下、「プログラム等」という)に基づいて第1及び第2制御信号の少なくとも一方を出力する。操作装置は、例えばレバー、スイッチ、及びタッチパネル等であって操作されることによって指令信号(電気信号及び油圧信号等)を出力するものである。第1遮断弁22は、制御装置14から第1制御信号が出力されると、液通路21を閉じる。また、第2遮断弁23は、制御装置14から第2制御信号が出力されると、液通路21を閉じる。少なくとも一方の遮断弁22,23が液通路21を閉じると、液圧アクチュエータ3の作動が停止する。
【0023】
<液圧回路システムの異常診断>
液圧回路システム1では、吐出圧と下流圧とに基づいて制御装置14が液圧回路12の異常を診断する。より詳細に説明すると、制御装置14が吐出圧と下流圧との比較結果に基づいて液圧回路12の異常を診断する。本実施形態において、制御装置14は、制御信号と、吐出圧の波形データと、下流圧の波形データとに基づいて液圧回路12の異常を診断する。以下では、異常診断方法が更に詳細に説明される。
【0024】
液圧回路システム1では、無通電状態及び液圧ポンプ11を停止させた停止状態の各々の状態において制御装置14が上流側センサ15から吐出圧を取得し、また下流側センサ13から下流圧を取得する。制御装置14は、取得した吐出圧から吐出圧の経時変化である吐出圧の波形データを生成する。また、制御装置14は、取得した下流圧から下流圧の経時変化である下流圧の波形データを生成する。そして、制御装置14は、無通電状態及び停止状態の各々において生成された吐出圧の波形データ及び吐出圧の波形データを比較する。制御装置14は、比較結果に基づいて液圧回路12の異常を診断する。
【0025】
無通電状態において、例えば制御装置14が
図2(a)のような吐出圧の波形データ及び下流圧の波形データを生成する。即ち、生成される吐出圧の波形データ及び下流圧の波形データは、共に脈動している(
図2(a)の「吐出圧の波形データ」及び「下流圧の波形データ」を参照)。制御装置14は、生成される2つの波形データの比較結果に基づいて2つの波形データが同一であると判断する。これにより、制御装置14は、遮断弁22,23が何れも正常に作動していると判断する。
【0026】
同様に、停止状態において、制御装置14が例えば
図2(b)のような吐出圧の波形データ及び下流圧の波形データが生成する。生成される吐出圧の波形データ及び下流圧の波形データは、共に一定圧(例えば、タンク圧)である(
図2(b)の「吐出圧の波形データ」及び「下流圧の波形データ」を参照)。制御装置14は、生成される2つの波形データの比較結果に基づいて2つの波形データが同一であると判断する。これにより、制御装置14は、遮断弁22,23が何れも正常に作動していると判断する。
【0027】
他方、液圧回路システム1では、無通電状態において制御装置14が
図3(a)のような吐出圧の波形データ及び下流圧の波形データを生成する場合がある。即ち、生成される吐出圧の波形データが脈動している(
図3(a)の「吐出圧の波形データ」参照)。他方、生成される下流圧の波形データは、正常時の下流圧の波形データ(
図3(a)の「下流圧の波形データ」一点鎖線参照)と異なり、一定圧(タンク圧)となっている(
図3(a)の「下流圧の波形データ」実線参照)。このように制御信号が出力されていない状態において2つの波形データが異なり且つ下流圧が一定である場合、制御装置14は、制御信号と2つの波形データとに基づいて液圧回路12が異常であると判断する。より詳しく説明すると、制御装置14は、遮断弁22,23の何れかが液通路21を閉じた閉状態でスティックしていると判断する。このように制御装置14は、制御信号に対する遮断弁22,23の応答に関する異常を診断することができる。
【0028】
また、無通電状態において制御装置14が例えば
図3(b)のような吐出圧の波形データ及び下流圧の波形データが生成する場合がある。即ち、生成される吐出圧の波形データ(
図3(b)の「吐出圧の波形データ」参照)に対して下流圧の波形データが大きく減衰している(
図3(b)の「下流圧の波形データ」の実線及び二点鎖線参照)。そうすると、制御装置14は、液圧回路12が異常であると診断する。より詳しく説明すると、制御装置14は、液通路21において液漏れが生じている液漏れ状態であると診断する。
【0029】
第1実施形態の液圧回路システム1では、液圧ポンプ11の吐出圧と下流側センサ13で検出される下流圧に基づいて、液圧回路12を流れる作動液の液圧の変化を見出すことができる。そして、液圧の変化に基づいて液圧回路12における異常を判断することができる。これにより、液圧回路12における異常を容易に判断することができる。
【0030】
また、第1実施形態の液圧回路システム1では、液圧回路12に遮断弁22,23が含まれている。そして、制御装置14は、吐出圧と下流圧とに基づいて遮断弁22,23を流れる作動液の圧力の変化を見出すことによって、液圧回路12に含まれる遮断弁22,23の異常を判断することができる
【0031】
また、第1実施形態の液圧回路システム1では、制御装置14が、制御信号と、吐出圧と、下流圧とに基づいて遮断弁22,23の異常を判断している。それ故、制御装置14は、制御信号に対する遮断弁22,23の応答に関する異常を判断することができる。
【0032】
また、第1実施形態の液圧回路システム1では、吐出圧の波形データ及び下流圧の波形データに基づいて制御装置14が液圧回路12の異常を判断する。吐出圧の波形データ及び下流圧の波形データに基づいて診断する場合の方が単に吐出圧と下流圧とに基づいて診断する場合に比べて、吐出圧に対する下流圧の定性的な変化が見出しやすい。それ故、制御装置14は、液圧回路12の異常判断がしやすい。
【0033】
また、第1実施形態の液圧回路システム1では、吐出圧及び下流圧が共にセンサ15,13によって検出されている。そして、制御装置14は、液圧回路12の上流側の液圧である吐出圧及び下流圧の実際の液圧に基づいて液圧回路12の異常を判断する。それ故、制御装置14は、液圧回路12の異常を判断する際の精度を高めることができる。
【0034】
<第2実施形態>
第2実施形態の液圧回路システム1Aは、第1実施形態の液圧回路システム1と構成が類似している。従って、第2実施形態の液圧回路システム1Aの構成については、主に第1実施形態の液圧回路システム1Aと異なる点が説明され、同一の構成については同一の符号を付して説明が省略される。なお、第3乃至第6実施形態の液圧回路システム1B~1Eについても同様に、同一の構成については同一の符号を付して説明が省略される。
【0035】
第2実施形態の液圧回路システム1Aは、
図4に示すように複数の液圧ポンプ11,11Aと、液圧回路12Aと、下流側センサ13Aと、制御装置14Aとを備えている。また、液圧回路システム1Aは、複数の上流側センサ15,15Aを更に備えている。
【0036】
<液圧ポンプ>
複数の液圧ポンプ11,11Aは、共に作動液を吐出する。本実施形態において、第1液圧ポンプ11及び第2液圧ポンプ11Aが液圧回路システム1Aに備わっている。第2液圧ポンプ11Aは、第1液圧ポンプ11と同じく容積形の液圧ポンプである。即ち、第2液圧ポンプ11Aが吐出する作動液もまた脈動している。第2液圧ポンプ11Aは、例えば往復ポンプ(斜板ポンプ、斜軸ポンプ、及びピストンポンプ等)、ギヤポンプ、並びにトロコイドポンプ等である。本実施形態において、第2液圧ポンプ11Aもまた斜板ポンプである。
【0037】
<液圧回路>
液圧回路12Aは、液圧ポンプ11,11Aの両方に繋がっている。また、液圧回路12Aは、液圧アクチュエータ3にも接続されている。液圧回路12Aは、2つの液圧ポンプ11,11Aの各々から流れる作動液を合流させる。そして、液圧回路12Aは、合流させた作動液を液圧アクチュエータ3に供給する。また、液圧回路12Aは、液圧ポンプ11,11Aから液圧アクチュエータ3に供給される作動液の流れを制御する。液圧回路12Aは、複数の回路系統31,31Aと、合流通路33と、リリーフ弁24と、を有している。
【0038】
複数の回路系統31,31Aの各々は、液圧ポンプ11,11Aに夫々接続されている。液圧回路12Aは、本実施形態において液圧ポンプ11,11Aと同数の2つの回路系統31,31Aを有している。そして、一方の回路系統31である第1回路系統31は、第1液圧ポンプ11に接続され、他方の回路系統31Aである第2回路系統31Aは、第2液圧ポンプ11Aに接続されている。回路系統31,31Aには、接続される液圧ポンプ11,11Aから吐出される作動液が流れる。そして、回路系統31,31Aは、回路系統31,31Aを流れる作動液の流れを制御する。回路系統31,31Aは、本実施形態において同様の構成を有している。
【0039】
第1回路系統31は、例えば第1液通路21と、第1方向制御弁34とを含んでいる。なお、第1回路系統31には、
図4に示される構成以外のものが含まれてもよい。第1回路系統31に含まれる他の構成は、例えば遮断弁、チェック弁、絞り、及び制御弁等である。
【0040】
第1液通路21は、第1液圧ポンプ11に繋がっている。第1液通路21には、第1液圧ポンプ11から夫々作動液が吐出される。液圧制御機器の一例である第1方向制御弁34は、第1液通路21に介在している。第1方向制御弁34は、入力される第1制御信号に応じて第1液通路21の流れを制御する。より詳細に説明すると、第1方向制御弁34は、入力される第1制御信号に応じて第1液通路21を閉じる。これにより、第1液通路21における下流側への流れが止まる。
【0041】
第2回路系統31Aは、第2液通路21Aと、第2方向制御弁34Aとを含んでいる。なお、第2回路系統31Aもまた、第1回路系統31と同様に
図4に示される構成以外のものが含まれてもよい。
【0042】
第2液通路21Aは、第2液圧ポンプ11Aに繋がっている。そして、第2液通路21Aには、第2液圧ポンプ11Aから夫々作動液が吐出される。液圧制御機器の一例である第2方向制御弁34Aは、第2液通路21Aに介在している。第2方向制御弁34Aもまた、入力される第2制御信号に応じて第2液通路21Aを閉じる。これにより、第2液通路21Aにおける下流側への流れが止まる。
【0043】
合流通路33は、2つの回路系統31,31Aに接続されている。そして、合流通路33では、2つの回路系統31,31Aを流れる作動液が合流する。より詳細に説明すると、合流通路33は、第1回路系統31の第1液通路21と、第2回路系統31Aの第2液通路21Aと繋がっている。そして、合流通路33では、2つの液通路21,21Aを介して夫々流れてくる各液圧ポンプ11,11Aの作動液が合流する。また、合流通路33には、液圧アクチュエータ3が接続されている。それ故、2つの液圧ポンプ11,11Aの作動液を合流通路33で合流させた後、液圧アクチュエータ3に流すことができる。また、合流通路33には、2つの液圧ポンプ11,11Aの作動液が合流する合流点33aより下流側にリリーフ弁24が接続されている。
【0044】
<上流側センサ>
複数の上流側センサ15,15Aは、液圧ポンプ11,11Aから夫々吐出される作動液の第1状態量を検出する。本実施形態において、液圧回路システム1Aは、液圧ポンプ11,11Aと同数の2つの上流側センサ15,15Aを備えている。一方の上流側センサ15である第1上流側センサ15は、第1液通路21において第1方向制御弁34の上流側に接続されている。また、他方の上流側センサ15Aである第2上流側センサ15Aは、第2液通路21Aにおいて第2方向制御弁34Aの上流側に接続されている。より詳細に説明すると、上流側センサ15、15Aの各々は、各々の液通路21,21Aにおいて最も上流側に位置している。また、上流側センサ15,15Aは、本実施形態において液圧センサであって、液圧ポンプ11,11Aの吐出圧を夫々検出する。なお、上流側センサ15,15Aは、流量センサであってもよい。
【0045】
<下流側センサ>
下流側センサ13Aは、液圧回路12Aの下流側を流れる作動液の第2状態量を検出する。下流側センサ13Aは、合流通路33において合流点33aより下流側に接続されている。下流側センサ13Aは、本実施形態において圧力センサであって、合流通路33の下流側を流れる作動液の液圧である下流圧を検出する。なお、下流側センサ13Aは、流量センサであってもよい。
【0046】
<制御装置>
制御装置14Aは、方向制御弁34,34Aに制御信号を出力する。制御装置14は、方向制御弁34,34Aに制御信号を出力することによって方向制御弁34,34Aの動作を制御する。より詳細に説明すると、制御装置14は、プログラム等に応じて第1制御信号及び第2制御信号を出力する。これにより、第1方向制御弁34及び第2方向制御弁34Aが作動する。
【0047】
また、異常診断装置の一例である制御装置14Aは、2つの液圧ポンプ11,11Aの吐出圧と、下流側センサ13Aで検出される下流圧とに基づいて液圧回路12Aの異常を判断する。より詳細に説明すると、制御装置14Aは、2つの上流側センサ15,15Aから吐出圧を取得すると共に、下流側センサ13から下流圧を取得する。そして、制御装置14Aは、取得した2つの吐出圧と下流圧とを比較した比較結果に基づいて液圧回路12Aの異常を判断する。本実施形態において、制御装置14Aは、下流圧の波形データ及び2つの吐出圧の波形データに基づいて液圧回路12Aの異常(より詳細に説明すると回路系統31,31Aの異常)を判断する。
【0048】
<液圧回路システムの動作>
液圧回路システム1Aでは、制御装置14Aがプログラム等に応じて第1制御信号を出力する。これにより、第1方向制御弁34が作動する。そうすると、第1液圧ポンプ11から第1液通路21及び合流通路33を介して液圧アクチュエータ3に作動液が供給される。これにより、液圧アクチュエータ3が伸長する。
【0049】
また、制御装置14は、プログラム等に応じて第1制御信号と共に第2制御信号を出力する。これにより、第2方向制御弁34Aも作動する。そうすると、2つの液圧ポンプ11,11Aの作動液が合流通路33において合流した後、液圧アクチュエータ3に供給される。それ故、より多くの作動液を液圧アクチュエータ3に供給することができるので、より速く液圧アクチュエータ3を伸長させることができる。
【0050】
<液圧回路システムの異常診断>
液圧回路システム1Aでは、吐出圧と下流圧とに基づいて制御装置14Aが液圧回路12Aの異常を判断する。より詳細に説明すると、液圧回路システム1Aでは、2つの吐出圧と下流圧との比較結果に基づいて制御装置14Aが液圧回路12Aの異常を判断する。本実施形態において、制御装置14は、制御信号と、2つの吐出圧の波形データと、下流圧の波形データとに基づいて液圧回路12Aの異常を判断する。以下では、異常診断方法が更に詳細に説明される。
【0051】
液圧回路システム1Aでは、制御装置14Aが第1及び第2制御信号を出力する。この際、制御装置14Aが2つの上流側センサ15,15Aの各々から吐出圧を取得し、また下流側センサ13から下流圧を取得する。そして、制御装置14Aは、取得した2つの吐出圧の各々から吐出圧の波形データを生成し、また取得した下流圧から下流圧の波形データを生成する。制御装置14Aは、生成された吐出圧の波形データ及び吐出圧の波形データを比較する。制御装置14Aは、比較結果に基づいて液圧回路12の異常を診断する。
【0052】
例えば、2つの吐出圧の波形データは、
図5に示すように脈動している。
図5において、第1上流側センサ15が検出する吐出圧が第1波形データであり、第2上流側センサ15Aが検出する吐出圧が第2波形データである。本実施形態において、2つの液圧ポンプ11,11Aは、同一の構成を有しているので、基本的に同じような周期で吐出圧が変動している。しかし、同一の構成を有する2つの液圧ポンプ11,11Aであっても構成等における僅かな個体差によって波形データに僅かな違いが生じている。即ち、2つの吐出圧の波形データは、固有値を有している(
図5の第1波形データの二点鎖線円11a内、及び第2波形データの一点鎖線円11b内参照)。そして、下流側センサ13Aで検出される下流圧の波形データでは、合流後の液圧を検出することによって2つの吐出圧の波形データの固有値が夫々現れる(
図5の下流圧波形データの2つの円11a,11b内参照)。それ故、制御装置14Aは、第1波形データ及び第2波形データと下流圧波形データとの比較結果に基づいて液圧回路12Aの異常を診断できる。即ち、第1波形データ及び第2波形データが有する2つの固有値が下流圧波形データに出現しているか否かを比較する。
【0053】
図5に示すように2つの固有値が下流圧の波形データに出現している場合、2つの液圧ポンプ11,11Aの作動液が合流通路33にて合流して液圧アクチュエータ3に供給されている。それ故、制御装置14は、2つの制御信号の出力の有無と、第1波形データ及び第2波形データと、下流圧波形データとに基づいて液圧回路12Aが正常であると判断する。他方、
図6に示すように、2つの制御信号が出力されているにもかかわらず、一方の固有値(例えば、第1波形データの固有値)だけが下流圧の波形データに出現している場合(
図6の下流圧のはけーデータにおける円11a参照)、第2液圧ポンプ11Aからの作動液が合流通路33に導かれていないことが分かる。それ故、制御装置14は、2つの制御信号の出力の有無と、第1波形データ及び第2波形データと、下流圧波形データとに基づいて液圧回路12Aが異常、より具体的には第2回路系統31Aが異常であると判断する。
【0054】
第2実施形態の液圧回路システム1Aでは、2つの液圧ポンプ11,11Aの各々の吐出圧と下流側センサ13Aで検出される下流圧とに基づいて各液圧ポンプ11,11Aの作動液が液圧回路12Aの下流側(本実施形態において液圧アクチュエータ3)まで供給されているか否かを確認することができる。これにより、制御装置14は、液圧回路12Aにおいて何れの液圧ポンプ11,11Aの作動液が合流していないかを判断することができる。
【0055】
また、第2実施形態の液圧回路システム1Aでは、複数の液圧ポンプ11,11Aの吐出圧と下流圧とに基づいて液圧ポンプ11,11Aから吐出される作動液が各回路系統31,31Aを介して液圧回路12Aの下流側(本実施形態において液圧アクチュエータ3)に供給されている否かを確認することができる。これにより、回路系統31,31Aの異常を判断することができる。
【0056】
更に、第2実施形態の液圧回路システム1Aでは、各回路系統31,31Aの異常診断に関して、複数の液圧ポンプ11,11Aの吐出圧に関する波形データが参酌されている。吐出圧の波形データ及び下流圧の波形データに基づいて診断する場合の方が単に吐出圧と下流圧とに基づいて診断する場合に比べて、吐出圧に対する下流圧の定性的な変化が見出しやすい。それ故、制御装置14は、液圧回路12の異常を判断しやすい。即ち、各回路系統31,31Aの異常診断を容易にすることができる。
【0057】
その他、液圧回路システム1Aは、第1実施形態の液圧回路システム1と同様の作用効果を奏する。
【0058】
<第3実施形態>
第3実施形態の液圧回路システム1Bは、
図7に示すように複数の液圧ポンプ35,35B,液圧回路12Aと、下流側センサ13Aと、制御装置14Bとを備えている。なお、液圧回路システム1Bは、本実施形態において2つの液圧ポンプ35,35Bを備えている。
【0059】
第1液圧ポンプ35及び第2液圧ポンプ35Bは、共に作動液を吐出する。第1液圧ポンプ35及び第2液圧ポンプ35Bは、共に容積形且つ固定容量形の液圧ポンプである。本実施形態において、液圧ポンプ35,35Bは、固定容量形の斜板ポンプである。また、液圧ポンプ35,35Bは、吐出圧における脈動が互いに異なっている。例えば、液圧ポンプ35,35Bでは、各々を構成するピストンの数が異なることによって、各々の脈動の周期が異なっている。なお、液圧ポンプ35,35Bでは、ピストンの回転位相が異なることによって各々の脈動の回転位相が異なっていてもよい。
【0060】
制御装置14Bは、制御装置14Aと同様に制御信号を出力することによって方向制御弁34,34Aの動きを制御する。また、異常診断装置の一例である制御装置14Bは、2つの液圧ポンプ35,35Bの吐出圧と、下流側センサ13Aで検出される下流圧とに基づいて液圧回路12Aの異常(より詳細に説明すると回路系統31,31Aの異常)を判断する。
【0061】
<液圧回路システムの異常診断>
液圧回路システム1Bでは、吐出圧と下流圧とに基づいて制御装置14Bが液圧回路12Aの異常を診断する。より詳細に説明すると、制御装置14Bは、2つの吐出圧の波形データの各々における脈動の周期と、下流圧の波形データに含まれる各脈動の周期との比較結果に基づいて制御装置14Bによって各回路系統31,31Aの異常を診断する。以下では、異常診断方法が更に詳細に説明される。
【0062】
液圧回路システム1Bでは、制御装置14Bが2つの方向制御弁34,34Aを作動させることによって2つの液通路21,21Aを開く。そして、制御装置14Bは、下流側センサ13から下流圧を取得する。そして、制御装置14Bは、取得した下流圧から下流圧の波形データを生成する。また、制御装置14Bは、下流圧の波形データに対して周波数解析(例えばFFT解析)を行う。そして、制御装置14Bは、下流圧の波形データに含まれる脈動に関して各周波数の強度を取得する。更に、制御装置14は、2つの吐出圧の脈動の周期を予め記憶している。下流圧の波形データでは、2つの液圧ポンプ11,11Aの作動液が合流することによって、2つの作動液の脈動が重ね合わされた状態で現れる。それ故、下流圧の波形データを周波数解析した際の解析結果(即ち、スペクトル)において、2つの吐出圧の脈動の周期のエネルギー強度が大きくなる。制御装置14は、下流圧の波形データを周波数解析した際のスペクトルと予め記憶される脈動周期とに基づいて液圧回路12の異常を診断することができる。
【0063】
例えば、2つの回路系統31,31Aが正常である場合、下流圧の波形データのスペクトルでは、
図8(a)に示すように2つの周波数f1,f2においてエネルギー強度が大きくなる。他方、第2回路系統31Aが異常である場合、下流圧の波形データのスペクトルでは、
図8(b)に示すように周波数f2のエネルギー強度が正常時より小さくなる。この場合において、制御装置14Bは、液圧回路12Aが異常、より具体的には第2回路系統31Aが異常であると判断する。
【0064】
このように構成される液圧回路システム1Bでは、複数の液圧ポンプ35,35Bが互いに異なる周期で脈動する作動液を吐出する。この場合、吐出圧の脈動の周期と下流圧の脈動の周期とに基づいて液圧回路12Aの異常、より詳しくは回路系統31,31Aの異常を診断することができる。
【0065】
その他、液圧回路システム1Bは、第2実施形態の液圧回路システム1Aと同様の作用効果を奏する。
【0066】
<第4実施形態>
第4実施形態の液圧回路システム1Cは、
図9に示すように複数の液圧ポンプ11,11Aと、液圧回路12Aと、信号発生器26,下流側センサ13Aと、制御装置14Cと、上流側センサ15,15Aとを備えている。なお、液圧回路システム1Cは、本実施形態において2つの液圧ポンプ11,11Aを備えている。また、液圧回路システム1Cは、上流側センサ15,15Aを更に備えている。
【0067】
信号発生器26は、例えば第2液圧ポンプ11Aに設けられている。なお、信号発生器26は、2つのポンプ11,11Aの両方に設けられてもよい。信号発生器26は、第2液圧ポンプ11Aから吐出される作動液の第1状態量、即ち第2液圧ポンプ11Aの吐出圧を変化させることによって作動液に付加信号を付加する。信号発生器26は、例えば電磁比例制御弁である。信号発生器26は、液圧回路12Aの第2液通路21Aに接続されている。なお、信号発生器26は、遮断弁であってもよい。信号発生器26は、遮断弁である場合、第2液通路21Aに介在する。信号発生器26は、入力される作動信号に応じて第2液通路21Aをタンク25に接続する。これにより、第2液圧ポンプ11Aの吐出圧が変化するので、作動液に付加信号を付加することができる。
【0068】
制御装置14Cは、制御装置14Aと同じ機能を有する。そして、制御装置14Cは、更に以下の機能を有している。即ち、制御装置14Cは、作動信号を出力する。これにより、制御装置14Cは、第2液通路21Aを流れる作動液に付加信号を付加することができる。制御装置14Cは、例えば所定の周期で作動信号を出力することによって、第1液通路21を流れる作動液の脈動と異なる周波数成分の脈動を有する作動液を第2液通路21Aに流すことができる。このようにして制御装置14Cは、第2液圧ポンプ11Aから吐出される作動液に付加信号を付加する。
【0069】
<液圧回路システムの異常診断>
液圧回路システム1Cでは、吐出圧と下流圧とに基づいて制御装置14Cが液圧回路12Aの異常を診断する。より詳細に説明すると、制御装置14Cは、制御装置14Bと同様の方法で各回路系統31,31Aの異常を診断する。以下では、異常診断方法が更に詳細に説明する。
【0070】
液圧回路システム1Cでは、制御装置14Cが2つの方向制御弁34,34Aを作動させることによって2つの液通路21,21Aを開く。更に、制御装置14Cは、作動信号を出力することによって信号発生器26に作動させる。これにより、第2液通路21Aを流れる作動液に付加信号が付加される。その後、制御装置14Cは、上流側センサ15,15Aから取得する2つの吐出圧から2つの吐出圧の波形データを生成する。また、制御装置14Cは、下流側センサ13から取得する下流圧から下流圧の波形データを生成する。また、制御装置14Cは、2つの吐出圧の波形データ及び下流圧の波形データ(即ち、3つの波形データ)に対して周波数解析(例えばFFT解析)を行う。そして、制御装置14は、2つの吐出圧の波形データのスペクトルと下流圧の波形データのスペクトルとを比較する。
【0071】
2つの吐出圧の波形データは互いに異なる周波数成分を有するので、制御装置14は、前述する異なる周波数成分が下流圧の波形データに含まれているかを判断する。制御装置14Cは、前述する異なる周波数成分が下流圧の波形データに含まれている場合、各液圧ポンプ11,11Aの作動液が各回路系統31,31Aを介して液圧アクチュエータ3に供給されていると判断する。それ故、制御装置14Cは、液圧回路12Aが正常であると判断する。他方、制御装置14Cは、前述する異なる周波数成分が下流圧の波形データに含まれている場合、含まれていない周波数成分の作動液が液圧アクチュエータ3に供給されていないと判断する。それ故、制御装置14Cは、含まれていない周波数成分の作動液が流れる回路系統31,31Aが異常であると判断する。このように制御装置14Cは、周波数解析の解析結果を比較することよって液圧回路12Aの異常を診断することができる。
【0072】
第4実施形態の液圧回路システム1Cでは、信号発生器26によって作動液に付加信号が付加される。それ故、付加信号を検出することによって、各液圧ポンプ11,11Aから吐出される作動液が各回路系統31,31Aを介して液圧回路12Aの下流側(本実施形態において液圧アクチュエータ3)に供給されているか否かを確認することができる。
【0073】
その他、液圧回路システム1Cは、第3実施形態の液圧回路システム1Bと同様の作用効果を奏する。
【0074】
<第5実施形態>
第5実施形態の液圧回路システム1Dは、
図10に示すように液圧ポンプ41,液圧回路12Dと、複数のセンサ42~45と、制御装置14Dとを備えている。
液圧ポンプ41は、容積形の液圧ポンプであって、2つのポート41a,41bの何れからも作動液を吐出できる。本実施形態において、液圧ポンプ41は両回転型の斜板ポンプである。例えば、液圧ポンプ41は、電動機46に接続されている。液圧ポンプ41は、電動機46によって正方向に回転されると一方のポート41aから作動液を吐出し、逆方向に回転されると他方のポート41bから作動液を吐出する。
【0075】
<液圧回路>
液圧回路12Dは、液圧ポンプ41に繋がっている。液圧回路12Dは、液圧アクチュエータ3Dを備えている。液圧回路12Dでは、液圧ポンプ41から吐出される作動液が液圧アクチュエータ3に供給されることによって液圧アクチュエータ3Dが作動する。本実施形態において、液圧アクチュエータ3Dは、両回転型の液圧モータである。但し、液圧アクチュエータ3Dは、液圧シリンダであってもよい。また、液圧回路12Dは、2つのポンプ通路47L,47Rと、2つの開閉弁48L,48Rと、給排機構49とを有している。
【0076】
ポンプ通路47L,47Rの各々は、液圧ポンプ41の各ポート41a,41bに繋がっている。また、2つのポンプ通路47L,47Rの各々は、液圧アクチュエータ3Dの各ポート41a,41bの各々に接続されている。更に、2つのポンプ通路47L,47Rの各々には、絞り47La,47Raが夫々介在している。
【0077】
開閉弁48L,48Rの各々は、ポンプ通路47L,47Rの各々に介在している。より詳細に説明すると、開閉弁48L,48Rは、ポンプ通路47L,47Rにおいて絞り47La,47Raより液圧アクチュエータ3D側に夫々介在している。開閉弁48L,48Rは、入力される制御信号に応じてポンプ通路47L,47Rを開閉する。
【0078】
給排機構49は、ポンプ通路47L,47Rの各々に接続されている。給排機構49は、供給時等において不足する作動液をポンプ通路47L,47Rの各々に供給する。また、給排機構49は、ポンプ通路47L,47Rの各々の液圧が所定圧を超えると作動液をタンク25に排出する。
【0079】
<センサ>
複数のセンサ42~45は、ポンプ通路47L,47Rの各々を流れる作動液の液圧を検出する。本実施形態において、4つのセンサ42~45が液圧回路システム1Dに備わっている。センサ42~45の各々は、ポンプ通路47L,47Rの各々に接続されている。より詳細に説明すると、2つのセンサ42,43は、第1ポンプ通路47Lに接続されている。2つのセンサ42,43は、第1ポンプ通路47Lにおいて絞り47Laの両側に配置されている。2つのセンサ44,45は、第2ポンプ通路47Rに接続されている。2つのセンサ44,45は、第2ポンプ通路47Rにおいて絞り47Raの両側に配置されている。そして、複数のセンサ42~45のうちの何れかが液圧ポンプ41から吐出される作動液の第1状態量である吐出圧を検出する。また、複数のセンサ42~45のうちの何れかが液圧回路12Dの下流側を流れる作動液の第2状態量である吸入圧を検出する。
【0080】
より詳細に説明すると、4つのセンサ42~43では、液圧ポンプ41の一方のポート41aから作動液が吐出される場合、少なくともセンサ42が上流側センサとして機能し、少なくともセンサ44が下流側センサとして機能する。即ち、センサ42は、液圧ポンプ41から吐出される作動液の第1状態量である吐出圧を検出し、センサ44は、液圧回路12Dの下流側を流れる作動液の第2状態量である吸入圧を検出する。他方、液圧ポンプ41の他方のポート41bから作動液が吐出される場合、少なくともセンサ44が上流側センサとして機能し、少なくともセンサ42が下流側センサとして機能する。即ち、センサ44が吐出圧を検出し、センサ42が吸入圧を検出する。
【0081】
<制御装置>
制御装置14Dは、開閉弁48L,48Rに制御信号を出力する。制御装置14は、開閉弁48L,48Rに制御信号を出力することによってポンプ通路47L,47Rを開閉する。また、制御装置14Dは、電動機46の動作を制御する。より詳細に説明すると、制御装置14Dは、電動機46の回転方向及び回転速度を制御する。これにより、制御装置14Dは、液圧ポンプ41の吐出方向及び吐出流量を制御することができる。
【0082】
また、異常診断装置の一例である制御装置14Dは、液圧ポンプ41の吐出圧及び吸入圧とに基づいて液圧回路12Dの異常を判断する。より詳細に説明すると、制御装置14Dは、センサ42,44によって吐出圧及び吸入圧を取得する。制御装置14は、吐出圧及び吸入圧を比較した比較結果に基づいて液圧回路12の異常を判断する。
【0083】
<液圧回路システムの動作>
液圧回路システム1Dでは、制御装置14Dから開閉弁48L,48Rに制御信号が出力されていない状態(即ち、「無通電状態」という)において、ポンプ通路47L,47Rが開いている。無通電状態において、制御装置14Dは、電動機46を駆動させることによって液圧ポンプ41から作動液を吐出させる。これにより、液圧アクチュエータ3Dに作動液が供給され、液圧アクチュエータ3Dが作動する。他方、制御装置14Dから開閉弁48L,48Rに制御信号が出力される、又は電動機46の駆動が停止されると、液圧ポンプ41から液圧アクチュエータ3Dへの作動液の供給が停止する。これにより、液圧アクチュエータ3Dの作動が停止する。
【0084】
<液圧回路システムの異常診断>
液圧回路システム1Dでは、吐出圧と吸入圧とに基づいて制御装置14Dが液圧回路12の異常を診断する。より詳細に説明すると、制御装置14Dが吐出圧と吸入圧との比較結果に基づいて液圧回路12Dの異常を診断する。本実施形態において、制御装置14Dは、2つのセンサ42,43で検出される液圧の差圧である第1差圧と、2つのセンサ44,45で検出される液圧の差圧である第2差圧とに基づいて液圧回路12Dの異常を診断する。以下では、異常診断方法が更に詳細に説明される。
【0085】
液圧回路システム1Dにおいて、制御装置14Dは、無通電且つ液圧ポンプ41を駆動させた状態で4つのセンサ42~45から各ポンプ通路47L,47Rの絞り47La,47Raの前後圧を取得する。制御装置14Dは、取得した前後圧に基づいて、絞り47Laの前後差圧である第1差圧と、絞り47Raの前後差圧である第2差圧とを演算する。そして、制御装置14Dは、第1差圧及び第2差圧を比較する。第1差圧及び第2差圧の各々は、液圧回路システム1Dに対して流入及び流出する流量に対尾する。それ故、制御装置14Dは、比較結果に基づいて液圧回路12Dの異常、より詳細に説明すると液漏れを診断できる。例えば、第1差圧及び第2差圧の差の絶対値が所定値未満である場合、液圧回路12Dの開閉弁48L,48R、液圧アクチュエータ3D、及び給排機構49において大きな液漏れが生じていない。それ故、制御装置14Dは、液圧回路12Dにおいて異常がないと診断する。他方、第1差圧及び第2差圧の差の絶対値が所定値以上である場合、液圧回路12Dに流入する流量に対して流出する流量が少ない。それ故、制御装置14Dは、液圧回路12Dにおいて大きな液漏れが生じている、即ち液圧回路12Dにおいて異常が有ると診断する。
【0086】
第5実施形態の液圧回路システム1Dは、閉回路であるが、他の開回路の液圧回路システム1~1Cと同様の作用効果を奏する。
【0087】
<第6実施形態>
第6実施形態の液圧回路システム1Eは、
図11に示すように操舵装置2に備わっている。操舵装置2は、船舶の操舵を行うための装置である。操舵装置2は、舵取機51と、液圧回路システム1Eとを備えている。
【0088】
<舵取機>
舵取機51は、作動液の供給を受けて作動する。舵取機51は、作動することによって船舶の向きを変える。舵取機51は、液圧アクチュエータ52と、舵柄53と、舵軸54と、舵板55とを含んでいる。液圧アクチュエータ52は、例えばラムシリンダであって、ラム52aと、一対のシリンダ52b,52cを有している。ラム52aは、棒状の部材である。ラム52aの両端側部分には、一対のシリンダ52b、52cが設けられている。また、ラム52aの軸方向中央部分には、ピン52eが設けられている。舵柄53は、舵軸54に固定され且つピン52eに係合している。舵軸54は、その中心周りに回動することができる。即ち、舵柄53は、舵軸54の中心軸回りに回動することができる。舵板55は、舵柄53に固定されている。
【0089】
このように構成されている舵取機51では、液圧アクチュエータ52のシリンダ52b,52cの何れかに作動液を供給すると、ラム52aが軸方向一方又は他方に進退する。そうすると、舵柄53がピン52eによって押される。これにより舵柄53が舵軸54を中心回動する。そうすると、舵板55の角度、即ち舵角が変わる。このようにして船舶の操舵を行うことができる。
【0090】
<液圧回路システム>
液圧回路システム1Eは、舵取機51に作動液を供給することによって舵取機51を作動させる。より詳細に説明すると、液圧回路システム1Eは、液圧アクチュエータ52に作動液を供給することによって舵板55を作動させる。液圧回路システム1Eは、例えば複数の液圧ポンプ11L,11Rと、液圧回路12Eと、複数の下流側センサ56L,57L,56R,57Rと、制御装置14Eとを備えている。また、液圧回路システム1Eは、複数の上流側センサ15L,15Rを更に備えている。
【0091】
<液圧ポンプ>
複数の液圧ポンプ11L,11Rは、共に作動液を吐出する。本実施形態において、液圧回路システム1Eには、2つの液圧ポンプ11L,11Rが備わっている。2つの液圧ポンプ11L,11Rは、第1実施形態の液圧ポンプ11と同じく容積形の液圧ポンプである。即ち、2つの液圧ポンプ11L,11Rは、各々から吐出される作動液の液圧が脈動している。本実施形態において、2つの液圧ポンプ11L,11Rもまた斜板ポンプである。但し、2つの液圧ポンプ11L,11Rは、斜板ポンプに限定されない。
【0092】
<液圧回路>
液圧回路12Eは、液圧ポンプ11L,11Rの両方に繋がっている。また、液圧回路12Aは、液圧アクチュエータ52に接続されている。液圧回路12Eは、液圧ポンプ11L,11Rから液圧アクチュエータ52に供給される作動液の流れを制御する。より詳細に説明すると、液圧回路12Eは、液圧アクチュエータ52への作動液の供給に関して冗長性を備えるべく複数の回路系統31L,31Rを有している。本実施形態において、液圧回路12Eは、液圧ポンプ11L,11Rと同数、即ち2つの回路系統31L,31Rを有している。
【0093】
2つの回路系統31L,31Rの各々は、液圧ポンプ11L,11Rの各々に接続されている。より詳細に説明すると、第1回路系統31Lは、第1液圧ポンプ11Lに接続され、第2回路系統31Rは、第2液圧ポンプ11Rに接続されている。また、2つの回路系統31L,31Rは、同じ構成を有している。従って、以下では、第1回路系統31Lの構成についてのみ説明し、第2回路系統31Rの構成については、第1回路系統31Lと同一の構成である場合、同一の構成の符号の「L」を「R」に代えて付し説明が省略される。
【0094】
第1回路系統31Lは、2つのポンプ通路61L,62Lと、2つの給排通路63L,64Lと、方向制御弁34Lと、給排機構65Lとを有している。第1ポンプ通路61Lは、第1液圧ポンプ11Lの吸入ポート11Laに接続され、第2ポンプ通路62Lは、第1液圧ポンプ11Lの吐出ポート11Lbに接続されている。また、第2ポンプ通路62Lには、絞り62Laが介在している。また、給排通路63L,64Lは、液圧アクチュエータ52の第1シリンダ52b及び第2シリンダ52cに夫々接続されている。方向制御弁34Lは、2つのポンプ通路61L,62L及び2つの給排通路63L,64Lに接続されている。方向制御弁34Lは、4つの通路61L~64Lの接続先を切り替える。これにより、第1液圧ポンプ11Lから液圧アクチュエータ52に供給される作動液の流れる方向が切換えられる。即ち、方向制御弁34Lは、第1液圧ポンプ11Lの作動液の供給先を液圧アクチュエータ52の2つのシリンダ52b,52cの何れかに切換えることができる。給排機構65Lは、給排通路63L,64Lに接続されている。給排機構65Lは、供給時等において不足する作動液を給排通路63L,64Lに供給する。また、給排機構65Lは、給排通路63L,64Lの液圧が所定圧を超えると作動液をタンク25に排出する。
【0095】
<上流側センサ>
複数の上流側センサ15L,15Rは、液圧ポンプ11L,11Rから夫々吐出される作動液の第1状態量を検出する。本実施形態において、液圧回路システム1Aは、液圧ポンプ11L,11Rと同数の2つの上流側センサ15L,15Rを備えている。そして、上流側センサ15L,15Rは、回路系統31L,31Rの第2ポンプ通路62L,62Rに夫々接続されている。より詳細に説明すると、上流側センサ15L,15Rは、第2ポンプ通路62Lにおいて絞り62La,62Raの上流側に接続されている。本実施形態において、上流側センサ15L,15Rは、第2ポンプ通路62L,62Rにおいて最も上流側に位置している。また、上流側センサ15L,15Rは、本実施形態において液圧センサであって、液圧ポンプ11L,11Rの吐出圧を夫々検出する。
【0096】
<下流側センサ>
下流側センサ56L,57L,56R,57Rは、液圧回路12Eの下流側を流れる作動液の第2状態量を検出する。より詳細に説明すると、下流側センサ56L,57Lは、第1回路系統31Lの下流側を流れる作動液の状態量を検出する。また、下流側センサ56R,57Rは、第2回路系統31Rの下流側を流れる作動液の状態量を検出する。本実施形態において、下流側センサ56L,57Lは、第1回路系統31Lの給排通路63L,64Lに夫々接続されている。また、下流側センサ56R,57Rは、第2回路系統31Rの給排通路63R,64Rに夫々接続されている。下流側センサ56L,57L,56R,57Rは、本実施形態において圧力センサであって、接続される給排通路63L,64L,63R,64Rを流れる作動液の液圧を検出する。これにより、下流側センサ56L,57L,56R,57Rは、回路系統31L,31Rの下流側における作動液の液圧、即ち下流圧を検出する。なお、下流側センサ56L,57L,56R,57Rは、流量センサであってもよい。
【0097】
<制御装置>
制御装置14Eは、制御装置14Aと類似する機能を有する。即ち、制御装置14Eは、制御信号を出力することによって方向制御弁34L,34Rの動作を制御する。より詳細に説明すると、制御装置14は、プログラム等に応じて第1及び第2制御信号を出力する。第1制御信号が出力されることによって方向制御弁34Lが作動し、また第2制御信号が出力されることによって方向制御弁34Rが作動する。
【0098】
また、異常診断装置の一例である制御装置14Eは、第1液圧ポンプ11L及び第2液圧ポンプ11Rの吐出圧と、下流側センサ56L,57L,56R,57Rで検出される下流圧とに基づいて液圧回路12Eの異常を判断する。より詳細に説明すると、制御装置14は、下流側センサ56L,57L,56R,57Rから下流圧を取得すると共に、2つの上流側センサ15L,15Rから吐出圧を取得する。そして、制御装置14は、取得した下流圧と2つの吐出圧とを比較した比較結果に基づいて液圧回路12Eの異常を判断する。本実施形態において、制御装置14は、下流圧の波形データ及び2つの吐出圧の波形データに基づいて液圧回路12Eの異常(より詳細に説明すると回路系統31L,31Rの異常)を判断する。
【0099】
<液圧回路システムの動作>
液圧回路システム1Eでは、制御装置14Eがプログラム等に応じて第1制御信号及び第2制御信号を出力する。これにより、第1方向制御弁34L及び第2方向制御弁34Rが作動する。そうすると、第1液圧ポンプ11Lから第1ポンプ通路61L及び給排通路63L(又は給排通路64L)を介して液圧アクチュエータ52に作動液が供給される。また、第2液圧ポンプ11Rからも第1ポンプ通路61R及び給排通路63R(又は給排通路64R)を介して液圧アクチュエータ52に作動液が供給される。これにより、ラム52aが動くので、舵板52dの舵角が変わる。それ故、舵取機51によって船舶の向きを変えることができる。
【0100】
<液圧回路システムの異常診断>
液圧回路システム1Eでは、吐出圧と下流圧とに基づいて制御装置14Eが液圧回路12Eの異常を診断する。より詳細に説明すると、液圧回路システム1Eでは、各回路系統31L,31Rにおける吐出圧及び下流圧の比較結果に基づいて制御装置14Eが液圧回路12Eの異常を診断する。本実施形態において、制御装置14は、各回路系統31L,31Rにおける吐出圧の波形データと、下流圧の波形データと、制御信号とに基づいて液圧回路12Eの異常を診断する。以下では、異常診断方法が更に詳細に説明される。
【0101】
液圧回路システム1Eでは、制御装置14Eが第1及び第2制御信号を出力する。この際、制御装置14Eが上流側センサ15L,15Rの各々から吐出圧を取得し、また下流側センサ56L,57L,56R,57Rから回路系統31L,31Rの下流圧を取得する。そして、制御装置14Eは、取得した2つの吐出圧の各々から吐出圧の波形データを生成し、また取得した下流圧から下流圧の波形データを生成する。制御装置14Eは、生成された吐出圧の波形データ及び吐出圧の波形データを比較する。制御装置14Eは、比較結果に基づいて液圧回路12の異常を診断する。
【0102】
例えば、制御装置14Eが第1及び第2制御信号を出力することによって2つの方向制御弁34L,34Rの各々が第2ポンプ通路62L,62Rを給排通路63L,63Rに接続する。制御装置14Eは、上流側センサ15L、15Rから取得した吐出圧を取得する。そして、制御装置14Eは、取得した吐出圧に基づいて吐出圧の波形データを生成する。また、制御装置14Eは、下流側センサ56L,57L,56R,57Rから回路系統31L,31Rの下流圧を取得する。そして、制御装置14Eは、取得する下流圧に基づいて下流圧の波形データを生成する。より詳細に説明すると、制御装置14Eは、回路系統31L,31Rの下流圧の波形データを第2ポンプ通路62L,62Rと繋がる給排通路63L,64L、63R,64Lを流れる作動液の液圧に基づいて生成する。即ち、制御装置14Eは、出力される第1及び第2制御信号に基づいて、液圧を取得すべき給排通路63L,64L、63R,64Lを選択する。そして、制御装置14Eは選択された給排通路63L,64L、63R,64Lを流れる作動液の液圧を下流圧として取得する。制御装置14Eは、第1液圧ポンプ11Lの吐出圧の波形データと第1回路系統31Lの下流圧の波形データとの比較結果に基づいて第1回路系統31Lの異常を診断する。また、制御装置14Eは、第2液圧ポンプ11Rの吐出圧の波形データと第2回路系統31Rの下流圧の波形データとの比較結果に基づいて第2回路系統31Rの異常を診断する。
【0103】
例えば、制御装置14Eは、吐出圧の波形データにおける脈動に対して下流圧の波形データにおける脈動が殆ど減衰していない場合、第1回路系統31Lが正常であると判断する。他方、吐出圧の波形データにおける脈動に対して下流圧の波形データにおける脈動が減衰している場合、第1回路系統31Lにおいて液漏れがあると判断する。また、制御装置14Eは、吐出圧の波形データにおける脈動に対して下流圧の波形データにおいて脈動が現れない場合、第1回路系統31Lにおいて作動液を供給できない異常があると判断する。同様に、制御装置14Eは、第2液圧ポンプ11Rの吐出圧の波形データと給排通路63Rの下流圧の波形データとを比較することによって比較結果に基づいて第2回路系統31Rの異常を診断する。
【0104】
また、制御装置14Eは、第1及び第2制御信を出力しない無通電状態においても、同様に波形データに基づいて液圧回路12Eの異常を診断する。異常診断の例について以下に説明すると、制御装置14Eは、吐出圧の波形データにおける脈動に対して下流圧の波形データにおいて脈動が現れない場合、第1回路系統31Lが正常であると判断する。他方、制御装置14Eは、例えば吐出圧の波形データにおける脈動に対して下流圧の波形データにおける脈動が現れている場合、方向制御弁34Lがスティックして作動できない等のように第1回路系統31Lが異常であると判断する。同様に、制御装置14Eは、第2液圧ポンプ11Rの吐出圧の波形データと下流圧の波形データとの比較結果に基づいて第2回路系統31Rの異常を診断する。
【0105】
このように構成されている第6実施形態の液圧回路システム1Eは、操舵装置2において、複数の回路系統31L,31Rを含む液圧回路12Eの異常を診断することができる。それ故、前述するような機能を有する操舵装置2を実現することができる。
【0106】
その他、液圧回路システム1Eは、第2実施形態の液圧回路システム1Aと同様の作用効果を奏する。
【0107】
<その他の実施形態>
第1乃至第6実施形態の液圧回路システム1,1A~1Eにおいて、波形データを生成するにあたって下流圧及び吐出圧が補正されてもよい。例えば、液通路21,21Aに絞り(例えば、固定絞り)が設けられる。絞りの前後圧をセンサで検出することによって作動液の粘度が推定される。そして、推定された粘度によって下流圧及び吐出圧が補正された後に波形データが生成される。また、粘度以外にも配管の圧力損失等によって下流圧及び吐出圧が補正されてもよい。このように下流圧及び吐出圧を補正することによって、液圧回路12,12A,12Eの異常の診断の精度を向上させることができる。
【0108】
また、第1乃至第6実施形態の液圧回路システム1,1A~1Eでは、液圧回路12,12A,12D,12Eの異常を診断する状態量が作動液の液圧であるが、作動液の流量であってもよい。また、作動液の流量は、必ずしもセンサによって直接計測する必要はなく、検出される作動液の液圧から推定してもよい。
【0109】
第1乃至第6実施形態の液圧回路システム1,1A~1Eでは、液圧回路12,12A,12D,12Eと液圧アクチュエータ3,52との間に別の液圧回路及び液圧制御機器(例えば、弁、及び絞り等)が介在したり接続されたりしてもよい。また、液圧制御機器は、前述する遮断弁22,23及び方向制御弁34、34A,34L,34Rに限定されず、他の弁及び絞り等であってもよい。また、制御装置14,14A,14B,14Eは、事前に計測する等することによって予め設定されている第1状態量(例えば吐出圧)に基づいて液圧回路12,12A,12Eの異常を診断してもよい。より詳細に説明すると、制御装置14,14A,14B,14Eは、予め設定されている吐出圧の波形データと検出された下流圧の波形データとを比較することによって液圧回路12,12A,12Eの異常を診断してもよい。
【0110】
第2乃至第4、及び第6実施形態の液圧回路システム1A~1C,1Eは、3つ以上の複数の液圧ポンプを備えていてもよい。この場合、制御装置は、複数の第1状態量と、第2状態量とに基づいて液圧回路の異常を診断する。また、液圧回路12A,12Eは、3つ以上の回路系統を有していてもよい。更に、1つの液圧ポンプに対して複数の回路系統が接続されていてもよい。
【0111】
<例示的な実施形態>
第1の局面における液圧回路システムは、少なくとも1つの容積形のポンプと、前記ポンプに繋がる液圧回路と、前記液圧回路の下流側を流れる作動液の状態量を検出する下流側センサと、前記ポンプから吐出される作動液の第1状態量と、前記下流側センサで検出される作動液の第2状態量との比較結果に基づいて前記液圧回路の異常を判断する異常診断装置と、を備える。上記局面に従えば、ポンプから吐出される作動液の第1状態量と下流側センサで検出される作動液の第2状態量に基づいて液圧回路を流れる作動液の状態量の変化を見出すことができる。そして、液圧その変化に基づいて液圧回路における異常を判断することができる。
【0112】
第2の局面における液圧回路システムは、第1の局面における液圧回路システムにおいて、第1の局面における前記液圧回路は、前記ポンプからの作動液の流れを制御する少なくとも1つの液圧制御機器を含む。上記局面に従えば、液圧回路に含まれる液圧制御機器の異常を判断することができる。
【0113】
第3の局面における液圧回路システムは、第2の局面における液圧回路システムにおいて、前記液圧制御機器に制御信号を出力する制御装置を更に備え、前記異常診断装置は、前記制御装置から出力される制御信号と、第1状態量と、第2状態量との比較結果に基づいて前記液圧制御機器の異常を判断する。上記局面に従えば、制御信号に対する液圧制御機器の応答に関する異常を判断することができる。
【0114】
第4の局面における液圧回路システムは、第1乃至3の局面の何れか1つにおける液圧回路システムにおいて、前記異常診断装置は、第1状態量及び第2状態量の波形データに基づいて前記液圧回路の異常を判断する。上記局面に従えば、第1状態量の波形データ及び第2状態量の波形データに基づいて診断する場合の方が単に第1状態量と第2状態量とに基づいて診断する場合に比べて、吐出圧に対する下流圧の定性的な変化が見出しやすい。それ故、制御装置は、液圧回路の異常判断がしやすい。
【0115】
第5の局面における液圧回路システムは、第1の局面における液圧回路システムにおいて、複数の前記ポンプを備え、前記液圧回路は、前記複数のポンプの各々から吐出される作動液を合流させ、前記異常診断装置は、前記複数のポンプの各々から吐出される作動液の複数の第1状態量と、前記下流側センサで検出される第2状態量とに基づいて前記液圧回路の異常を判断する。上記局面に従えば、複数のポンプの各々から吐出される作動液の複数の第1状態量と、下流側センサで検出される第2状態量とに基づいて各ポンプから吐出される作動液が液圧回路の下流側まで供給されているか否かを確認することができる。これにより、異常診断装置は、液圧回路において何れのポンプの作動液の合流ができていないかを判断することができる。
【0116】
第6の局面における液圧回路システムは、第5の局面における液圧回路システムにおいて、前記液圧回路は、前記複数のポンプの各々が夫々接続される複数の回路系統と、前記複数の回路系統を流れる作動液を合流させる合流通路とを有し、前記下流側センサは、前記合流通路の下流側を流れる作動液の第2状態量を検出し、前記異常診断装置は、前記複数のポンプの各々から吐出される作動液の複数の第1状態量と、前記下流側センサで検出される第2状態量とに基づいて前記回路系統の異常を判断する。上記局面に従えば、複数のポンプの各々から吐出される作動液の複数の第1状態量と、下流側センサで検出される第2状態量とを比較することによって、各ポンプから吐出される作動液が各回路系統を介して液圧回路の下流側まで供給されているか否かを確認することができる。これにより、回路系統の異常を診断判断することができる。
【0117】
第7の局面における液圧回路システムは、第6の局面における液圧回路システムにおいて、前記異常診断装置は、前記複数のポンプの各々から吐出される作動液の複数の第1状態量に関する波形データに基づいて前記液圧回路の異常を判断する。上記局面に従えば、複数のポンプの各々から吐出される作動液の複数の第1状態量に関する波形データが参酌されている。それ故、各回路系統の異常診断を容易にすることができる。
【0118】
第8の局面における液圧回路システムは、第6の局面における液圧回路システムにおいて、前記複数のポンプのうち少なくとも1つに設けられ、前記ポンプから吐出される作動液の第1状態量を変化させて作動液に付加信号を付加する信号発生器を更に備え、前記異常診断装置は、前記付加信号が付加された第1状態量に基づいて前記回路系統の異常を判断する。上記局面に従えば、付加信号を検出することによって、各ポンプから吐出される作動液が各回路系統を介して液圧回路の下流側まで到達しているか否かを確認することができる。
【0119】
第9の局面における液圧回路システムは、第1乃至8の局面の何れか1つにおける液圧回路システムにおいて、前記ポンプから吐出される作動液の第1状態量を検出する上流側センサを更に備え、前記異常診断装置は、前記上流側センサで検出される第1状態量と、前記下流側センサで検出される作動液の第2状態量とに基づいて前記液圧回路の異常を判断する。上記局面に従えば、制御装置は、液圧回路の上流側及び下流側における実際の状態量に基づいて液圧回路の異常を判断する。それ故、制御装置は、液圧回路の異常を判断する際の精度を高めることができる。
【0120】
操舵装置は、第1乃至第9の局面の何れか1つにおける前記異常診断機能付き液圧回路システムを備える。上記局面に従えば、前述するような機能を有する操舵装置を実現することができる。
【符号の説明】
【0121】
1,1A~1E 液圧回路システム
2 操舵装置
11,11A,11L,11R 液圧ポンプ
12,12A,12D,12E 液圧回路
13,13A,56L,56R,57L,57R 下流側センサ
14,14A~14E 制御装置(異常診断装置)
15,15A,15L,15R 上流側センサ
22 第1遮断弁(液圧制御機器)
23 第2遮断弁(液圧制御機器)
26 信号発生器
31,31L 第1回路系統
31A,31R 第2回路系統
33 合流通路
42~45 センサ