(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023172745
(43)【公開日】2023-12-06
(54)【発明の名称】サイドバイザーの取付構造
(51)【国際特許分類】
B60J 3/00 20060101AFI20231129BHJP
【FI】
B60J3/00 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022084762
(22)【出願日】2022-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】314014184
【氏名又は名称】DNP田村プラスチック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121142
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 恭一
(72)【発明者】
【氏名】加藤 貴士
(57)【要約】
【課題】サイドバイザーに外力が加えられた場合にも取付部材との組付状態を安定して保つことが可能なサイドバイザーの取付構造を提供することにある。
【解決手段】サイドバイザー1の取付構造は、サイドバイザー1と、サイドバイザー1を自動車の窓枠2に取り付ける際に用いられる取付部材6とを含み、サイドバイザー1は、突起体5を備え、突起体5は、突起体5の先端側に向かうにつれて拡がるようにテーパ状に傾斜する抜止部7とを含み、取付部材6は、一方の端部に窓枠引掛部8が形成され、他方の端部に係合部9が形成され、係合部9には、取付部材6が、突起体5に対して第1の向きである場合に抜止部7を含む突起体5が挿通可能であり、取付部材6が、突起体5に対して第2の向きである場合に突起体5が挿通不能な孔部10が形成され、第2の向きにおいて、取付部材6は、回動が抑制されると共に、抜止部7により孔部10から抜け止めされる。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺帯状の鍔部と、前記鍔部に沿って長尺帯状に形成された庇体とを含むサイドバイザーと、前記サイドバイザーを自動車の窓枠に取り付ける際に用いられる取付部材とを含むサイドバイザーの取付構造であって、
前記サイドバイザーは、前記窓枠への取付状態において前記窓枠側へ突出する突起体を備え、
前記突起体は、基端が、前記自動車への取付状態における窓枠側から見た場合に、真円を除く任意の形状を有すると共に、前記突起体の先端側に向かうにつれて拡がるように傾斜する抜止部を備え、
前記取付部材は、弾性を有する材質で成形された板状部材であり、一方の端部に前記窓枠に引っ掛けられる窓枠引掛部が形成され、他方の端部に前記サイドバイザーと係合するための係合部が形成され、
前記係合部には、前記取付部材が、前記突起体に対して第1の向きである場合に前記抜止部を含む前記突起体が挿通可能であり、前記取付部材が、前記突起体に対して第2の向きである場合に前記突起体が挿通不能な孔部が形成され、
前記孔部は、前記孔部の内径における任意の点を第1孔部基準点として、前記第1孔部基準点と、前記第1孔部基準点における接線に平行な線分が接線となる前記孔部の内径の点である第2孔部基準点との間隔が、前記突起体の外面で、前記庇体との境界から前記取付部材の板厚以下の範囲における任意の点を第1突起体基準点として、前記第1突起体基準点と、前記第1突起体基準点における接線と平行な線分が接線となる前記庇体との境界からの高さが前記第1突起体基準点と同等な前記突起体の外面の点である第2突起体基準点とが最大となる間隔以下の長さとなるように形成され、
前記突起体に対し前記取付部材を前記第1の向きとした状態で、前記孔部に前記突起体を挿通させ、引き続く、前記突起体の突出方向を軸とする回動により、前記第1の向きから移行された前記第2の向きにおいて、前記取付部材は、前記第1突起体基準点と前記第2突起体基準点との間隔が最大となる前記突起体の両端面に対する前記孔部の内面からの押圧により回動が抑制されると共に、前記抜止部により前記孔部から抜け止めされることを特徴とするサイドバイザーの取付構造。
【請求項2】
前記抜止部は、前記突起体の先端側に向けてテーパ状に傾斜して拡がることを特徴とする請求項1に記載のサイドバイザーの取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サイドバイザーの取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、サイドバイザーの自動車の窓枠への取り付けには、取付安定性等の様々な観点から、多様な取付構造が知られている。例えば、特許文献1には、サイドバイザーを窓枠へ取り付けるブラケットとして、ブラケット本体に形成されたボス係合部の板金挿入スロットに、非円形の板金孔が形成された板金を挿入したものが開示されると共に、サイドバイザーに設けられたボスを板金孔に挿入してボスを中心としてブラケット本体を回転させると、板金孔の縁部が、ボスに食い込み固定される構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1のサイドバイザーの取付構造では、ボスに板金孔の縁部が食い込んでいるため、サイドバイザーに外力が加えられた際には、ボスが板金孔の縁部で削られる等して、サイドバイザーとブラケットとの組付状態が不安定になる可能性があった。
【0005】
そこで、本発明の目的は、サイドバイザーに外力が加えられた場合にも取付部材との組付状態を安定して保つことが可能なサイドバイザーの取付構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、長尺帯状の鍔部と、鍔部に沿って長尺帯状に形成された庇体とを含むサイドバイザーと、サイドバイザーを自動車の窓枠に取り付ける際に用いられる取付部材とを含むサイドバイザーの取付構造であって、サイドバイザーは、窓枠への取付状態において窓枠側へ突出する突起体を備え、突起体は、基端が、自動車への取付状態における窓枠側から見た場合に、真円を除く任意の形状を有し、突起体の先端側に向かうにつれて拡がるように傾斜する抜止部を備え、取付部材は、弾性を有する材質で成形された板状部材であり、一方の端部に窓枠に引っ掛けられる窓枠引掛部が形成され、他方の端部にサイドバイザーと係合するための係合部が形成され、係合部には、取付部材が、突起体に対して第1の向きである場合に抜止部を含む突起体が挿通可能であり、取付部材が、突起体に対して第2の向きである場合に突起体が挿通不能な孔部が形成され、孔部は、孔部の内径における任意の点を第1孔部基準点として、第1孔部基準点と、第1孔部基準点における接線に平行な線分が接線となる孔部の内径の点である第2孔部基準点との間隔が、突起体の外面で、庇体との境界から取付部材の板厚以下の範囲における任意の点を第1突起体基準点として、第1突起体基準点と、第1突起体基準点における接線と平行な線分が接線となる庇体との境界からの高さが第1突起体基準点と同等な突起体の外面の点である第2突起体基準点とが最大となる間隔以下の長さとなるように形成され、突起体に対し取付部材を第1の向きとした状態で、孔部に突起体を挿通させ、引き続く、突起体の突出方向を軸とする回動により、第1の向きから移行された第2の向きにおいて、取付部材は、第1突起体基準点と第2突起体基準点との間隔が最大となる突起体の両端面に対する孔部の内面からの押圧により回動が抑制されると共に、抜止部により孔部から抜け止めされることを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、上記構成に加え、抜止部は、突起体の先端側に向けてテーパ状に傾斜して拡がることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、第1の向きとした取付部材の孔部にサイドバイザーに設けられた突起体を挿通した後、取付部材を第1の向きから第2の向きとするだけで抜け止めされるため、サイドバイザーと取付部材との組み付けを容易に行うことができる。また、サイドバイザーと取付部材との組付状態が、従来のように孔部の周縁が突起体に食い込んだものではないため、サイドバイザーに外力が加わった場合にも突起体が取付部材によって削られることはなく、サイドバイザーと取付部材との安定した組付状態を維持することができる。
請求項2に記載の発明によれば、取付部材を第1の向きから第2の向きへ回動させる際、抜止部の傾斜が、取付部材を庇体の内側面へ近づくように案内するため、取付部材をより庇体の内側面に近い位置で組み付けることができ、組付状態をより安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明のサイドバイザーの取付構造の説明図であって、(a)は斜視、(b)は(a)のA-A線端面図である。
【
図2】(a)はサイドバイザーの突起体周辺を示す説明図、(b)は突起体を含むサイドバイザーの中央縦断面図、(c)は取付部材を示す説明図である。
【
図3】突起体及び孔部における採寸方法に関する説明図であり、(a)は、突起体、(b)は孔部についてである。
【
図4】(a)は突起体を第1の向きの取付部材に挿通させた状態のサイドバイザーの突起体周辺を示す説明図、(b)は(a)のB-B線端面図である。
【
図5】(a)は取付部材を第2の向きとしてサイドバイザーに組み付けた状態のサイドバイザーの突起体周辺を示す説明図、(b)は(a)のC-C線端面図である。
【
図6】(a)は取付部材を組み付けたサイドバイザーの突起体周辺を示す説明図、(b)は取付部材から突起体に対して押圧力が生じる範囲を示す説明図である。
【
図7】(a)は変形例1のサイドバイザーの突起体周辺を示す説明図、(b)は取付部材を組み付けた変形例1のサイドバイザーの突起体周辺を示す説明図である。
【
図8】(a)は取付部材を第2の向きとして変形例1のサイドバイザーに組み付けた状態のサイドバイザーの突起体周辺を示す説明図、(b)は(a)のD-D線端面図である。
【
図9】(a)は変形例2のサイドバイザーの突起体周辺を示す説明図、(b)は取付部材を組み付けた変形例2のサイドバイザーの突起体周辺を示す説明図である。
【
図10】(a)は取付部材を第2の向きとして変形例2のサイドバイザーに組み付けた状態のサイドバイザーの突起体周辺を示す説明図、(b)は(a)のE-E線端面図である。
【
図11】
図10のF-F線端面図であって、変形例2の突起体に取付部材を取り付ける際の取付部材の動きを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明のサイドバイザーの取付構造の説明図であって、
図1(a)は斜視、
図1(b)は、
図1(a)のA-A線端面図である。
図2(a)は、サイドバイザーの突起体周辺を示す説明図、
図2(b)は、突起体を含むサイドバイザーの中央縦断面図、
図2(c)は、取付部材を示す説明図である。
図3は、突起体及び孔部における採寸方法に関する説明図であり、(a)は、突起体、(b)は孔部についてである。
図4(a)は、突起体を第1の向きの取付部材に挿通させた状態のサイドバイザーの突起体周辺を示す説明図、
図4(b)は、
図4(a)のB-B線端面図である。
図5(a)は、取付部材を第2の向きとしてサイドバイザーに組み付けた状態のサイドバイザーの突起体周辺を示す説明図、
図5(b)は、
図5(a)のC-C線端面図である。
図6(a)は、取付部材を組み付けたサイドバイザーの突起体周辺を示す説明図、
図6(b)は、取付部材から突起体に対して押圧力が生じる範囲を示す説明図である。なお、図中に示す方向は、自動車への取付状態における方向を示す。
【0010】
サイドバイザー1は、
図1(a)に示すように、自動車の窓枠2に取り付けられ、日除けや雨除けとして機能する。サイドバイザー1は、長尺帯状の鍔部3と、鍔部3に沿って長尺帯状に形成された庇体4とを含み、
図1(b)及び
図2(a)に示すように、自動車への取付状態における庇体4の窓枠2側の面に、サイドバイザー1と一体に設けられ、窓枠2側へ向けて突出する突起体5を備える。
サイドバイザー1は、突起体5に後述する取付部材6を組み付け、取付部材6及び両面テープT等の固定手段によって窓枠2に固定される。
【0011】
サイドバイザー1の突起体5は、
図2(a)、
図4(a),(b)、及び
図5(a),(b)に示すように、基端が、突起体5を自動車への取付状態における窓枠2側から見た場合に略菱形状に形成される。また、突起体5は、前側及び後側に、先端側に向かうにつれて拡がるようにテーパ状に傾斜する抜止部7を備える。
【0012】
取付部材6は、例えば、ポリアミド樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、アクリルニトリルブタジエンスチレン樹脂、アクリレートスチレンアクリルニトリル樹脂のような弾性を有する材質を元に、折曲成形された板状部材であって、
図1(b)、
図2(c)に示すように、一方の端部に窓枠2に引っ掛けられる窓枠引掛部8が形成され、他方の端部には、サイドバイザー1が係合可能な係合部9が形成されている。
係合部9には、
図4(a),(b)及び
図5(a),(b)に示すように、略菱形状の孔部10が穿設されている。
【0013】
続いて、自動車への取付状態において突起体5及び孔部10を窓枠2側から見た場合の、突起体5と孔部10との寸法関係について説明する。
そのために、
図3(a)に示すように、突起体5の外面で、庇体4との境界から取付部材6の板厚以下の範囲における任意の点を第1突起体基準点A1とする。さらに、第1突起体基準点A1における接線AL1と平行な線分AL2が接線となる突起体5の外面の点を第2突起体基準点A2とする。そして、第1突起体基準点A1と第2突起体基準点A2との間隔を間隔aとする。
また、
図3(b)に示すように、孔部10の内径における任意の点を第1孔部基準点B1とする。さらに、第1孔部基準点B1における接線BL1に平行な線分BL2が接線となる孔部10の内径の点を第2孔部基準点B2とする。そして、第1孔部基準点B1と、第2孔部基準点B2との間隔を間隔bとする。
【0014】
図4(a)に示すように、突起体5の前側の抜止部7の前端と、後側の抜止部7の後端との間隔を線分L1とし、孔部10の前端を第1孔部基準点B1とし、後端を第2孔部基準点B2とした場合の間隔bを線分D1とすると、線分L1が線分D1よりも短くなるように突起体5及び孔部10が形成される。加えて、孔部10の上端を第1孔部基準点B1とし、下端を第2孔部基準点B2とした場合の間隔bを線分D2とすると、線分L1が線分D2よりも長くなるように突起体5及び孔部10が形成される。一方、突起体5の上端と下端との間隔を線分L2とすると、線分L2が線分D2よりも短くなるように突起体5及び孔部10が形成される。突起体5と孔部10に、このような寸法関係を持たせることで、後述する第1の向きで突起体5が孔部10に挿通可能となり、且つ第2の向きで突起体5が孔部10に挿通不能となる。
【0015】
また、突起体5の前側の抜止部7における、庇体4との境界から取付部材6の板厚同等の高さの点を第1突起体基準点A1として、第1突起体基準点A1における接線AL1と平行な線分AL2が接線となる庇体4との境界からの高さが第1突起体基準点A1と同等な突起体5の外面の点、すなわち突起体5の後側の抜止部7における、庇体4との境界から取付部材6の板厚同等の高さの点を第2突起体基準点A2とした場合の、第1突起体基準点A1と第2突起体基準点A2との間隔aを線分L3とする。このとき、線分L3は、突起体5の外面で、庇体4との境界から取付部材6の板厚同等の高さにおける任意の間隔aのうち最大となる。そして、突起体5及び孔部10は、線分D2が線分L3より短くなるように形成される。
また、孔部10は、線分D1が取付部材6の長手方向と平行になる向きで設けられる。
【0016】
なお、突起体5の具体的な各寸法は以下の通りである。
突起体5の庇体4の内面からの突出幅は、1~10mmの範囲内で設定され、望ましくは4mmである。線分L1は3≦L1<13(mm)の範囲内で設定され、望ましくは8mmである。線分L2は、2≦L3≦8(mm)の範囲内で設定され、望ましくは5mmである。線分L3は3.5≦L2≦8.5(mm)の範囲内で設定され、望ましくは5.5mmである。
また、取付部材6の係合部9における各寸法は以下の通りである。
取付部材6の板厚は0.5~2mmの範囲内で設定され、望ましくは0.5mmである。孔部10の線分D1は3<D1≦13(mm)の範囲内で設定され、望ましくは8mm超である。線分D2は3≦D2≦8(mm)の範囲内で設定され、望ましくは5mmである。
【0017】
また、突起体5は、
図2(b)に示すように、自動車への取付状態における中央縦断面線、つまり線分L2を断面線とした断面形状において、突起体5の先端側がドーム形状となるように成形される。
このような先端が窄まった形状とすることで、取付部材6の孔部10に突起体5を挿通する際、位置合わせが曖昧であっても挿通が開始できるため、挿通を容易に行うことができる。
【0018】
続いて、サイドバイザー1の窓枠2への取付方法について説明する。
まず、サイドバイザー1と取付部材6とを組み付ける。
図4(a)に示すように、突起体5を、取付部材6の係合部9に穿設された孔部10に、取付部材6の外側から窓枠側に向けて挿通させる。この時、取付部材6は、孔部10の線分D1が、線分L1と平行になる向きとする。この向きが本実施例における第1の向きである。なお、実施例の
図4では、窓枠引掛部8が係合部9の後方に位置する向きを第1の向きとして示しているが、窓枠引掛部8が係合部9の前方に位置する向きを第1の向きとしても良い。すなわち、
図4で示す取付部材6を、突起体5の突出方向を軸にサイドバイザー1の庇体4の内側面に沿って180度回動させた向きを第1の向きとしても良い。
【0019】
次に、第1の向きの取付部材6の孔部10に突起体5を挿通した状態のまま、窓枠引掛部8が係合部9の上方に来るように、取付部材6を、突起体5の突出方向を軸にサイドバイザー1の庇体4の内側面に沿って90度回動させる。これにより、
図6(a)に示すように、取付部材6は、サイドバイザー1に係合し、組み付けられる。
【0020】
このとき、取付部材6の回動により、
図5(b)に示すように、抜止部7の傾斜面が孔部10の内側面と当接し、テーパ状の傾斜によって取付部材6は庇体4の内側面方向へ案内され、より庇体4の内側面に近い位置でサイドバイザー1と取付部材6との組み付けが可能となる。さらに、抜止部7の、突起体5の先端に向かうにつれて拡がる傾斜によって、取付部材6には突起体5の基端方向、すなわち庇体4の内面へ向けてへ押しつけられる力が働くため、取付部材6は、窓方向への移動が規制され、抜け止めされると共に、サイドバイザー1に対してのがたつきが抑制される。
【0021】
また、線分D2は、線分L3より短いため、第1の向きから、抜止部7の傾斜面が孔部10の内側面と当接した後、
図5(a)、
図6(a)に示すように、取付部材6を90度回動させたサイドバイザー1と取付部材6との組付状態に至るまで、孔部10は突起体5の外面、すなわち線分L2の両端面によって押し広げられる。このとき、取付部材6は弾性を有する材質から形成されるため、突起体5に対し孔部10から押圧力が加わる。従って、突起体5の外面で、庇体4との境界から取付部材6の板厚同等の高さにおける任意の第1突起体基準点A1と第2突起体基準点A2との間隔aが最大となる突起体5の両端面、すなわち、線分L3の両端の面に対する孔部10の内面からの押圧により回動が抑制される。なお、取付部材6を90度回動させなくても、孔部10の任意の第1孔部基準点B1と、第2孔部基準点B2との間隔を間隔bが線分L3よりも短くなるような範囲では、孔部10による突起体5に対する押圧力が生じるため、取付部材6の回動は抑制される。
図6(b)では、孔部10の任意の第1孔部基準点B1と、第2孔部基準点B2との間隔bが線分L2よりも短くなるような範囲、換言すると、線分L2を直径とする円と孔部10の周辺の係合部9とが重なる範囲を斜線で示している。従って、
図6(b)に斜線で示される範囲に線分L2の両端面が存在する場合、取付部材6から突起体5に対して押圧力が生じることになる。このような取付部材6から突起体5に対して押圧力が生じる状態における取付部材6の向きが、本実施例における第2の向きである。ただし、本実施例では、取付部材6を第1の向きから90度回動させた状態が最も安定性が増すため、好ましい。
このように、第1の向きの取付部材6の孔部10に突起体5を挿通させ、取付部材6を第1の向きから第2の向きとするだけで容易にサイドバイザー1と取付部材6との組み付けが行える。
【0022】
サイドバイザー1と取付部材6とを組み付けた後、取付部材6の窓枠引掛部8を窓枠2に引っ掛けると共に、両面テープT等の固定手段を用いて、サイドバイザー1を窓枠2に固定する。このようにして、サイドバイザー1は窓枠2に取り付けられる。
このとき、取付部材6は突起体5に食い込んでいないため、サイドバイザー1に外力が加えられた場合にも突起体5が孔部10の周縁によって削られることはなく、サイドバイザー1と取付部材6との安定した組付状態を維持することができる。
【0023】
上記形態のサイドバイザー1の取付構造は、長尺帯状の鍔部3と、鍔部3に沿って長尺帯状に形成された庇体4とを含むサイドバイザー1と、サイドバイザー1を自動車の窓枠2に取り付ける際に用いられる取付部材6とを含み、サイドバイザー1は、窓枠2への取付状態において窓枠2側へ突出する突起体5を備え、突起体5は、基端が、自動車への取付状態における窓枠2側から見た場合に、略菱形状を有し、突起体5の先端側に向かうにつれて拡がるようにテーパ状に傾斜する抜止部7を備え、取付部材6は、弾性を有する材質で成形された板状部材であり、一方の端部に窓枠2に引っ掛けられる窓枠引掛部8が形成され、他方の端部にサイドバイザー1と係合するための係合部9が形成され、係合部9には、取付部材6が、突起体5に対して第1の向きである場合に抜止部7を含む突起体5が挿通可能であり、取付部材6が、突起体5に対して第2の向きである場合に突起体5が挿通不能な孔部10が形成され、孔部10は、孔部10の上端を第1孔部基準点B1とし、下端を第2孔部基準点B2とした場合の間隔bである線分D2が、突起体5の前側の抜止部7における、庇体4との境界から取付部材6の板厚同等の高さの点を第1突起体基準点A1とし、突起体5の後側の抜止部7における、庇体4との境界から取付部材6の板厚同等の高さの点を第2突起体基準点A2とした場合の間隔aである線分L3以下の長さとなるように形成され、突起体5に対し取付部材6を第1の向きとした状態で、孔部10に突起体5を挿通させ、引き続く、突起体5の突出方向を軸とする回動により、第1の向きから移行された第2の向きにおいて、取付部材6は、第1突起体基準点A1と第2突起体基準点A2との間隔aが最大となる突起体5の両端面に対する孔部10の内面からの押圧により回動が抑制されると共に、抜止部7により孔部10から抜け止めされる。
【0024】
このようにして構成されるサイドバイザー1の取付構造によれば、第1の向きとした取付部材6の孔部10にサイドバイザー1に設けられた突起体5を挿通した後、取付部材6を第2の向きとするだけで抜け止めされるため、サイドバイザー1と取付部材6との組み付けを容易に行うことができる。また、サイドバイザー1と取付部材6との組付状態が、従来のように孔部10の周縁が突起体5に食い込んだものではないため、サイドバイザー1に外力が加わった場合にも突起体5が取付部材6によって削られることはなく、サイドバイザー1と取付部材6との安定した組付状態を維持することができる。
また、取付部材6を第1の向きから第2の向きへ回動させる際、抜止部7の傾斜が、取付部材6を庇体4の内側面へ案内するため、取付部材6をより庇体4の内側面に近い位置で組み付けることができ、組付状態をより安定なものにすることができる。
【0025】
図7(a)は、変形例1のサイドバイザーの突起体周辺を示す説明図、
図7(b)は、取付部材を組み付けた変形例1のサイドバイザーの突起体周辺を示す説明図である。
図8(a)は、取付部材を第2の向きとして変形例1のサイドバイザーに組み付けた状態のサイドバイザーの突起体周辺を示す説明図、
図8(b)は、
図8(a)のD-D線端面図である。
図1~5に示した構成と同様の効果を示す構成については、
図1~5と同じ符号を付し、説明を省略する。なお、図中に示す方向は、自動車への取付状態における方向を示す。
【0026】
サイドバイザー1aには、
図7(a),(b)及び
図8(a),(b)に示すように、自動車への取付状態における窓枠2側から見た場合に、円形状の前後に突起が設けられたような形状を有する突起体5aが設けられている。突起体5aの円柱状部分の前後両側それぞれには、突起体5aの先端側に向かうにつれてテーパ状に傾斜して拡がる抜止部7aとしての突条が設けられている。抜止部7aは、突起体5aを補強するリブとしての機能も有する。突起体5aの前側の抜止部7aの前端と後側の抜止部7aの後端とを結ぶ線分L4は、取付部材6の孔部10の線分D1よりも短く、且つ孔部10の短い線分D2よりも長く形成される。また、突起体5aは、突起体5aの外面で、庇体4との境界から取付部材6の板厚同等の高さにおける任意の第1突起体基準点A1と第2突起体基準点A2との間隔aのうち、間隔aが最大長となる、前側の抜止部7aの庇体4との境界から取付部材6の板厚同等の高さにおける前端と、後側の抜止部7aの庇体4との境界から取付部材6の板厚同等の高さにおける後端とを、第1突起体基準点A1及び第2突起体基準点A2とした場合の線分L5が、孔部10の線分D2よりも僅かに長くなるように形成される。
【0027】
サイドバイザー1aと取付部材6との組み付け、及び窓枠2への取り付けについては、上述の実施例と同様に行われる。従って、第1の向きとした取付部材6の孔部10にサイドバイザー1aに設けられた突起体5aを挿通した後、取付部材6を第2の向きとするだけで抜け止めされるため、サイドバイザー1aと取付部材6との組み付けを容易に行うことができる。また、サイドバイザー1aと取付部材6との組付状態が、従来のように孔部10の周縁が突起体5aに食い込んだものではないため、サイドバイザー1に外力が加わった場合にも突起体5aが取付部材6によって削られることはなく、サイドバイザー1aと取付部材6との安定した組付状態を維持することができる。
なお、取付部材6を90度回動させなくても、上述の実施例において
図6(b)に斜線で示したような、孔部10の任意の第1孔部基準点B1と、第2孔部基準点B2との間隔bが線分L5よりも短くなる範囲では、孔部10による突起体5aに対する押圧力が生じるため、取付部材6の回動は抑制される。従って、取付部材6から突起体5aに対して押圧力が生じる状態における取付部材6の向きが、変形例1における第2の向きである。ただし、変形例1では、取付部材6を第1の向きから90度回動させた状態が最も安定性が増すため、好ましい。
【0028】
図9(a)は、変形例2のサイドバイザーの突起体周辺を示す説明図、
図9(b)は、取付部材を組み付けた変形例2のサイドバイザーの突起体周辺を示す説明図である。
図10(a)は、取付部材を第2の向きとして変形例2のサイドバイザーに組み付けた状態のサイドバイザーの突起体周辺を示す説明図、
図10(b)は、
図10(a)のE-E線端面図である。
図11は、
図10のF-F線端面図であって、変形例2の突起体に取付部材を取り付ける際の取付部材の動きを示す説明図である。
図1~5に示した構成と同様の効果を示す構成については、
図1~5と同じ符号を付し、説明を省略する。なお、図中に示す方向は、自動車への取付状態における方向を示す。
【0029】
サイドバイザー1bには、
図9(a),(b)、
図10(a),(b)及び
図11に示すように、自動車への取付状態における窓枠2側から見た場合に、上下左右を頂点とする略菱形状の基端部11を有する突起体5bが設けられている。さらに、突起体5bの基端部11の先端側には、突起体5bの上側の頂点を上端として下方に拡がるように、自動車への取付状態における窓枠2側から見て真円形状の拡張部12が延設されている。また、突起体5bは、拡張部12の先端側に向かうにつれてテーパ状に傾斜して拡がる傾斜面が形成されている。この傾斜面が、変形例2における抜止部7bである。
突起体5bの拡張部12の前端と後端とを結ぶ線分L6は、取付部材6の孔部10の線分D1よりも短く形成される。一方、庇体4との境界から取付部材6の板厚同等の高さにおいて、突起体5の上端と下端との間隔を線分L7とすると、線分L7は線分D2よりも短くなるように形成される。さらに、突起体5bの外面で、庇体4との境界から取付部材6の板厚同等の高さにおける任意の第1突起体基準点A1と第2突起体基準点A2との間隔aのうち、間隔aが最大長となる、前側の抜止部7bの庇体4との境界から取付部材6の板厚同等の高さにおける前端と、後側の抜止部7bの庇体4との境界から取付部材6の板厚同等の高さにおける後端とを、第1突起体基準点A1及び第2突起体基準点A2とした場合の線分L6が、孔部10の線分D2よりも僅かに長くなるように形成される。
【0030】
続いて、サイドバイザー1bと取付部材6との組付方法について説明する。
まず、取付部材6は、孔部10の線分D1が、線分L6と平行になる向きとする。この向きが変形例2における第1の向きである。そして、第1の向きのまま、
図11に示すように、取付部材6を窓側方向へ傾けた状態で、突起体5bの拡張部12に対して下方から上方に向けてスライドさせるように移動させ(矢印A)、拡張部12を孔部10に納める。
【0031】
続いて、取付部材6とサイドバイザー1bの庇体4の内側面が接する様に、取付部材6の傾きを戻す(矢印B)。その後、
図9(b)に示すように、窓枠引掛部8が係合部9の上方に来るように、取付部材6を、突起体5bの突出方向を軸にサイドバイザー1bの庇体4の内側面に沿って90度回動させ、第2の向きとする。これにより、取付部材6は、サイドバイザー1に係合し、組み付けられる。従って、第1の向きとした取付部材6の孔部10にサイドバイザー1bに設けられた突起体5bを挿通した後、取付部材6を第2の向きとするだけで抜け止めされるため、サイドバイザー1bと取付部材6との組み付けを容易に行うことができる。また、サイドバイザー1bと取付部材6との組付状態が、従来のように孔部10の周縁が突起体5bに食い込んだものではないため、サイドバイザー1に外力が加わった場合にも突起体5bが取付部材6によって削られることはなく、サイドバイザー1bと取付部材6との安定した組付状態を維持することができる。
【0032】
その後の窓枠2への取り付けは、上述の実施例と同様に行われる。
なお、取付部材6を90度回動させなくても、上述の実施例において
図6(b)に斜線で示したような、孔部10の任意の第1孔部基準点B1と、第2孔部基準点B2との間隔bが線分L6よりも短くなる範囲では、孔部10による突起体5bに対する押圧力が生じるため、取付部材6の回動は抑制される。従って、取付部材6から突起体5bに対して押圧力が生じる状態における取付部材6の向きが、変形例2における第2の向きである。ただし、変形例2では、取付部材6を第1の向きから90度回動させた状態が最も安定性が増すため、好ましい。
【0033】
以上は、本発明を図示例に基づいて説明したものであり、その技術範囲はこれに限定されるものではない。例えば、実施例では自動車の左のフロントドアの窓枠に取り付ける場合を説明したが、本発明のサイドバイザーの取付構造は、左右のフロントサイドバイザー及び左右のリアサイドバイザーの何れについても適用可能である。
また、突起体は、上述のようにサイドバイザーと一体に設けられても良いし、別体で設けても良い。また、自動車への取付状態におけるサイドバイザーの内側であれば、突起体は、どこに設けられても良いし、1つだけ設けられても複数設けられても良い。さらに、突起体の形状は、取付部材を第1の向きから第2の向きとすることでサイドバイザーと取付部材とを組み付けられれば、基端を真円とする場合を除き、任意に設計可能である。加えて、突起体には、リブのような補強手段が設けられてもよく、リブに抜止部としての機能を持たせることもできる。
また、抜止部の傾斜形状は、平面でも曲面でも平面と曲面との組み合わせでも良いし、凹凸が設けられる等しても良く、突起体の外周に設けられていれば、3以上の抜止部が設けられても良い。
また、突起体の基端の形状及び拡張部の形状は、上記変形例2の如く、取付部材が拡張部を通過した後、拡張部が、第1の向きの取付部材が突起体の突出方向に移動することを規制するように取付部材とサイドバイザーとを組み付け可能であれば、任意に設計可能である。
また、孔部の形状は、第1の向きにおいて抜止部を含む突起体が挿通可能で、第2の向きとした場合に突起体が挿通不能であれば良く、楕円、多角形等、任意に設計可能である。さらに、孔部とは別に、取付部材の過回動を防止する手段を突起体、庇体、取付部材の少なくとも何れかに設けても良い。
また、第1の向きと第2の向きとの間の回動角度は、突起体、抜止部、及び孔部の形状の組み合わせに基づき、最適となる角度を任意に設定可能である。
また、第2の向きは、孔部による突起体に対する押圧力が生じる範囲であればよく、必ずしも、孔部の頂点のような凹部と突起体の頂点のような凸部との位置が一致する必要はない。
また、取付部材の素材は、サイドバイザーの窓枠への取り付けに適切な剛性と併せて第1の向きと第2の向きとの間での回動に伴う孔部の拡張収縮が可能な弾性力を有するもの、すなわち孔部の内面による突起体に対する押圧力を生じさせることができるものであれば、樹脂以外の素材からも選択可能である。加えて、取付部材全体を弾性を有する材質で形成する他、係合部や孔部周縁のみを弾性を有する材質で成形しても良い。
【符号の説明】
【0034】
1,1a,1b・・サイドバイザー、2・・窓枠、3・・鍔部、4・・庇体、5,5a,5b・・突起体、6・・取付部材、7,7a,7b・・抜止部、8・・窓枠引掛部、9・・係合部、10・・孔部。