(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023172760
(43)【公開日】2023-12-06
(54)【発明の名称】吸収性物品の個包装体
(51)【国際特許分類】
A61F 13/15 20060101AFI20231129BHJP
【FI】
A61F13/15 220
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022084791
(22)【出願日】2022-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002631
【氏名又は名称】弁理士法人イイダアンドパートナーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100076439
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 敏三
(74)【代理人】
【識別番号】100161469
【弁理士】
【氏名又は名称】赤羽 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100164345
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 隆
(72)【発明者】
【氏名】辰巳 湧太
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200AA03
3B200BB09
3B200CA15
3B200DA25
3B200DF08
3B200DF09
3B200EA18
3B200EA24
(57)【要約】 (修正有)
【課題】開封しやすさと、異物混入防止の安心感付与とを同時に実現できる吸収性物品の個包装体を提供する。
【解決手段】個包装体30は、両側縁部34、34の開封端35を含む領域として、包装シート20が吸収性物品10を介さずに積層された枚数が最も少ない最小積層領域37よりも多い最積層領域36と、最積層領域内の吸収性物品の長手方向Yに沿う長さ範囲内に位置し、その周囲とは区別される色を備えた第1面側の着色帯領域5とを有し、両側縁部の着色帯領域に位置する融着部4が、積層した複数の包装シートが連続的・一体的に結合した第1融着部と、第1融着部を囲繞した第2融着部とを有し、第1融着部は、第1面側から平面視して、第2融着部よりも色が濃く、第2融着部は、第1面側に露出する部分に、厚み方向に窪んだ凹部を有し、第1融着部において、第1面側から平面視した面積が、第2面側から平面視した面積よりも大きい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸収性物品と、該吸収性物品を長手方向に折り畳んだ状態で包被する包装シートとを有する、吸収性物品の個包装体であって、
前記個包装体は、前記吸収性物品の幅方向の外方であって前記吸収性物品の長手方向に沿う一対の両側縁部それぞれに、前記包装シート同士を接合する複数の融着部を備え、前記吸収性物品の長手方向の一端側に位置する前記包装シートの開封端が表面に露出した第1面と、該第1面と反対側に位置して露出した第2面とを有し、前記開封端は、前記幅方向に沿って延在して前記両側縁部を含んでおり、
前記個装体は、前記両側縁部の前記開封端を含む領域として、前記包装シートが前記吸収性物品を介さずに積層された枚数が最も少ない最小積層領域よりも多い最積層領域と、該最積層領域内の前記吸収性物品の長手方向に沿う長さ範囲内に位置し、その周囲とは区別される色を備えた前記第1面側の着色帯領域とを有し、
前記両側縁部の前記着色帯領域に位置する前記融着部が、積層した複数の前記包装シートが連続的・一体的に結合した第1融着部と、前記第1融着部を囲繞した第2融着部とを有し、
前記第1融着部は、前記第1面側から平面視して、前記第2融着部よりも色が濃く、
前記第2融着部は、前記第1面側に露出する部分に、厚み方向に窪んだ凹部を有し、
前記第1融着部において、前記第1面側から平面視した面積が、前記第2面側から平面視した面積よりも大きい、
吸収性物品の個包装体。
【請求項2】
前記第2融着部が有する前記凹部は、前記第1面側から平面視して、前記第1融着部の外縁に沿うように配置されている、請求項1記載の吸収性物品の個包装体。
【請求項3】
前記第2融着部が有する前記凹部は、前記第1面側から平面視して、前記第1融着部の外縁から前記融着部の外縁へと延びた構造を有する、請求項1又は2記載の吸収性物品の個包装体。
【請求項4】
前記第1面側から平面視して、前記第1融着部の面積が前記第2融着部の面積よりも大きい、請求項1~3のいずれか1項に記載の吸収性物品の個包装体。
【請求項5】
前記第2面側から平面視して、前記第1融着部は、内側に湾曲した曲線よりなる外縁を有し、かつ、前記吸収性物品の長手方向に沿う方向に2等分した各領域において、前記内側に湾曲した曲線の交点を2点以上有し、前記交点それぞれを構成する曲線のなす角度が45°未満である、請求項1~4のいずれか1項に記載の吸収性物品の個包装体。
【請求項6】
前記両側縁部の前記最積層領域に位置する前記第2融着部が、複数の前記包装シートを結合し、かつ前記第1融着部に接する結合部を持つ、請求項1~5のいずれか1項に記載の吸収性物品の個包装体。
【請求項7】
前記両側縁部の前記最積層領域に位置する融着部において、厚み方向の断面視で、前記第2融着部の前記結合部と前記第1融着部の前記第2面側の枠線との交点を通る、前記結合部の枠線の接線と、厚み方向平行線とのなす角度が、45°未満である、請求項6記載の吸収性物品の個包装体。
【請求項8】
前記両側縁部の前記最積層領域に位置する融着部において、厚み方向の断面視、前記第1融着部の平均厚みが、前記第2融着部の包装シートの平均厚みよりも小さく、かつ平均密度が高い、請求項1~7のいずれか1項に記載の吸収性物品の個包装体。
【請求項9】
前記第1融着部は、前記第1面側から平面視して、前記着色帯領域の前記融着部が配されていない領域よりも、色が濃い、請求項1~8のいずれか1項に記載の吸収性物品の個包装体。
【請求項10】
前記着色帯領域は、前記第1融着部及び前記第2融着部の配される前記両側縁部から前記幅方向の内側の領域まで延在している、請求項1~9のいずれか1項に記載の吸収性物品の個包装体。
【請求項11】
前記着色帯領域の、前記第1融着部及び前記第2融着部の配される前記両側縁部より前記幅方向の内側の領域は、前記第1融着部より色が薄い、請求項10記載の吸収性物品の個包装体。
【請求項12】
前記第1融着部及び前記第2融着部は、前記両側縁部の延在方向において、前記着色帯領域における前記開封端とは反対側の端縁の外方領域にも、前記両側部に沿って配置されている、請求項1~11のいずれか1項に記載の吸収性物品の個包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品の個包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
生理用ナプキン等の吸収性物品は個包装されて販売されることが知られている。例えば、生理用ナプキン等のパッド型の吸収性物品は、通常包装シートによって包まれ、かつ長手方向に折りたたまれて厚み方向に積層されて、個包装体の包装形態にされることが多い。このような個包装体は複数個が更に内装袋に入れられて消費者の手に届けられる。前記個包装体において、包装状態の安定性や、開封性(開封しやすさ)の観点から様々な工夫が提案されている(例えば特許文献1~3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-521117号公報
【特許文献2】特開2021-186401号公報
【特許文献3】特開2019-84142号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記個包装体の包装形態において、開封しやすさを考慮しつつ異物混入を防ぐために両側縁部に複数の融着部を設けてシールすることが一般的である。しかし、個包装体の両側縁部には、個装開封端を含み、個装フィルムの積層枚数が周囲よりも多くなる最積層領域が存在し、一般的に、この領域においては、積層による厚みの増加分だけ最小積層領域よりも融着が強くなってしまう。特に、前記最積層領域のうち、個装開封端又はその近傍に前記融着部が形成された領域において強融着の程度が高まり過ぎると、開封端から始めるシール剥離開封操作が円滑に進まなくなる場合がある。異物混入防止に必要な融着力を持つ一方で、円滑な開封操作ができることが、素早く吸収性物品を使用したい使用者にとって、近年より強く求められるようになっている。
また、一般的に包装シートには、外観のデザイン性やそれによる消費者への訴求性を高める等の観点から様々な着色印刷がされている。その着色領域において前記融着部は加熱ロール間の押圧により成型するため、該融着部では周囲の着色領域と同様の色が残って目立たず、前記融着部の視認性が低下する。この融着部の視認性は、個包装体内部の吸収性物品に対する封止性、すなわち異物混入を防ぐ衛生保持性の高さを使用者に印象付け得る。しかし、融着部の視認性が低いと、たとえ十分な融着が付与されていても、吸収性物品の衛生保持性に対する使用者の視覚的な安心感が損なわれかねず、この点において改善の余地がある。
【0005】
本発明は、個装開封端近傍での開封しやすさと、融着部の視認性向上による異物混入防止の安心感の付与とを同時に実現できる吸収性物品の個包装体に関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、吸収性物品と、該吸収性物品を長手方向に折り畳んだ状態で包被する包装シートとを有する、吸収性物品の個包装体であって、前記個包装体は、前記吸収性物品の幅方向の外方であって前記吸収性物品の長手方向に沿う一対の両側縁部それぞれに、前記包装シート同士を接合する複数の融着部を備え、前記吸収性物品の長手方向の一端側に位置する前記包装シートの開封端が表面に露出した第1面と、該第1面と反対側に位置して露出した第2面とを有し、前記開封端は、前記幅方向に沿って延在して前記両側縁部を含んでおり、前記個装体は、前記両側縁部の前記開封端を含む領域として、前記包装シートが前記吸収性物品を介さずに積層された枚数が最も少ない最小積層領域よりも多い最積層領域と、該最積層領域内の前記吸収性物品の長手方向に沿う幅(長さ)範囲内に位置し、その周囲とは区別される色を備えた前記第1面側の着色帯領域とを有し、前記両側縁部の前記着色帯領域に位置する前記融着部が、積層した複数の前記包装シートが連続的・一体的に結合した第1融着部と、前記第1融着部を囲繞した第2融着部とを有し、前記第1融着部は、前記第1面側から平面視して、前記第2融着部よりも色が濃く、前記第2融着部は、前記第1面側に露出する部分に、厚み方向に窪んだ凹部を有し、前記第1融着部において、前記第1面側から平面視した面積が、前記第2面側から平面視した面積よりも大きい、吸収性物品の個包装体を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る吸収性物品の個包装体は、個装開封端近傍での開封しやすさと、融着部の視認性向上による異物混入防止の安心感の付与とを同時に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明に係る吸収性物品の個包装体の好ましい一実施形態を、開封端が露出する第1面側から模式的に示す平面図である。
【
図2】
図1に示す個包装体おけるII-II線断面を模式的に示す拡大断面図である。
【
図3】(A)は
図1に示す個包装体おける側縁部のII-II線断面を模式的に示す拡大断面図であり、(B)は前記側縁部の別の態様を模式的に示す拡大断面図である。
【
図4】(A)は、側縁部の第1面側における、着色帯領域を含む最積層領域の一例を部分拡大して示す図面代用写真図であり、(B)は、(A)図における融着部を拡大して示す図面代用写真である。
【
図5】(A)は、
図4(B)に示す融着部の第1面側からの平面視における第1融着部及び第2融着部の平面領域を破線で区画して示す図面代用写真であり、(B)は、前記融着部の第2面側からの平面視における第1融着部の平面領域を破線で区画して示す図面代用写真である。
【
図6】(A)~(C)は、
図5(A)に示す融着部の第1面側領域の境界を規定する方法についての一例を示す図面代用写真である。
【
図7】(A)は、断面を露出させた融着部に対し、第1面側に対する90°の傾斜角度から捉えた断面状態を示す図面代用写真であり、(B)は、60°の傾斜角度から捉えた断面状態を示す図面代用写真である。
【
図8】第1融着部及び第2融着部を含む融着部における、第1融着部の第1面側及び第2面側に対して加わる外力の相違を模式的に示す説明図である。
【
図9】第2融着部において、凹部が配置される領域の好ましい一態様を示す図面代用写真である。
【
図10】(A)及び(B)は、第1融着部の第2面側の平面形状の好ましい一態様を模式的に示す平面図である。
【
図11】第2融着部の厚み方向断面の好ましい一態様を示す図面代用写真である。
【
図12】第2融着部の結合部と第1融着部との接続部分の好ましい一態様を示す図面代用写真である。
【
図13】融着部の厚み方向の断面において、第1融着部の平均厚み及び第2融着部の包装シート20の平均厚みの組み合わせの一例を示す図面代用写真である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の吸収性物品の個包装体は、吸収性物品と、該吸収性物品を長手方向に折り畳んだ状態で包被する包装シートとを有する。この包被に関し、前記吸収性物品と前記包装シートとは、該包装シートが外側になるようにして一緒に折り畳んでもよく、前記吸収性物品を折り畳んだ状態のものを前記包装シートで包被してもよい。また、折り畳みの回数は、吸収性物品の長さや個包装体の大きさ等に応じて適宜設定することができる。前記包装シートは、1枚からなるものであってもよく、複数枚からなるものであってもよい。
【0010】
前記吸収性物品とは、下着などの衣類に固定して着用者の身体に装着し、排泄物等を吸収保持することができるものをいう。例えば、生理用ナプキン、パンティライナー(おりものシート)などが挙げられる。
吸収性物品は、個包装を解いて展開させた状態で縦長形状であり、着用者の腹側部、股下部及び背側部に対応する、前方部、中間部及び後方部を有する。この形状において、着用者の腹側部、股下部及び背側部を繋ぐ方向に対応する長手方向と、該長手方向と直交する幅方向とを有する。同様に、包装シートは、個包装を解いて展開させた状態で、長手方向と幅方向とを有する。
個包装体において、前記吸収性物品は前述の通り長手方向に沿って折り畳まれている。前記包装シートも前記吸収性物品の長手方向に沿って折り畳まれている。そのため個包装体において、前記吸収性物品の長手方向に沿う方向は、吸収性物品及び包装シートの折り畳み方向であり、前記折り畳み方向とは逆方向の、個包装体の開封方向でもある。以下において、吸収性物品の長手方向及び幅方向をそれぞれ長手方向Y及び幅方向Xという。長手方向Yに関し、折り畳み方向と開封方向とを区別するとき、折り畳み方向Y1、開封方向Y2ともいう。
【0011】
本発明に係る吸収性物品の個包装体の好ましい一実施形態について図面を参照しながら以下に説明する。
【0012】
図1及び2に示すように、本実施形態の個包装体30は、吸収性物品である生理用ナプキン10(以下、単にナプキン10とも言う。)と、ナプキン10を長手方向Yに折り畳んだ状態で包被する包装シート20とを有る。ナプキン10及び包装シート20は、ナプキン10の長手方向Yにおける中間部Cを含む部分を折り畳み中央部31とし、その前後において個装折り線L1及びL2を折り軸とし、長手方向Yに沿って折り畳まれている。その際、包装シート20を外側にして折り畳むことで、ナプキン10が包装シート20に内包され、個包装体30に収納されている。
本実施形態において、折り畳み中央部31の前後の生理用ナプキン10及び包装シート20の積層部分を第1折り畳み端部32、第2折り畳み端部33という。また、折り畳み中央部31、第1折り畳み端部32、第2折り畳み端部33の区分に合わせ、包装シート20は中央包装部21、第1折り包装部22、第2折り包装部23に区分される。本実施形態においては、折り畳み中央部31に対して、第1折り畳み端部32が重なり、その上に第2折り畳み端部33が重ねられている。包装シート20についても、中央包装部21に対して、第1折り包装部22が重なり、その上に第2折り包装部23が重ねられている。
なお、個装折り線は、折り畳みの回数を定めるものであり、前述の通り吸収性物品の長さや個包装体の大きさ等に応じて適宜設定することができる。また、折り畳みの順番は上記形態に限定されるものでなく適宜設定できる。
【0013】
個包装体30は、ナプキン10の幅方向Xの外方であって、該ナプキン10の長手方向Yに沿う一対の両側縁部34、34それぞれに、包装シート20同士を接合する複数の融着部4を備える。両側縁部34は、ナプキン10が介在せずに上記の折り畳みによって形成された包装シート20の積層部分である。この両側縁34、34に複数の融着部4を配することにより、両側縁部34、34は、個装折り線L1及びL2の垂直方向、すなわちナプキン10の長手方向Yに沿って個包装体30を封止するシール領域をなす。これにより、外部からの異物混入を防止するようにしている。
各融着部4は、包装シート20の部分的な溶融によりシート同士が接合された部分であり、熱エンボスや超音波エンボスなどこの種の物品において通常用いられる方法により形成することができる。各融着部4は、例えばドット状に形成され、その平面形状は後述の構成及びそれによる作用を具備する限り種々の形状とすることができる。各融着部4は、例えば、両側縁部34、34それぞれの延在方向(吸収性物品の長手方向Yに沿う方向)に等間隔で配列されことが、外部からの異物混入防止性を高める観点から好ましい。同様に、両側縁部34,34それぞれにおいて、前述の融着部4の列を複数有することが好ましい。
【0014】
また、個包装体30は、ナプキン10の長手方向Yの一端側に位置する包装シート20の開封端35が露出した第1面30Aと、第1面30Aと反対側に位置して露出した第2面30Bとを有する。ここで言うナプキン10の長手方向Yの一端側は、ナプキン10を折り畳んで長手方向Yの両端を重ねた積層構造において、最表層にある折り畳み端部の側を意味する。本実施形態において、ナプキン10の長手方向Yの一端側は、個装折り線L2にて区画される第2折り畳み端部33に含まれている。第2折り畳み端部33に含まれる包装シート20の第2折り包装部23の端部が個包装体30の開封端35となって露出している。第2折り畳み端部33の開封端35が露出する面が第1面30Aであり、その反対側の折り畳み中央部31が露出する面が第2面30Bである。
【0015】
このような個包装体30において、開封端35は、ナプキン10の幅方向Xに沿って延在し、両側縁部34、34の一部を含んでいる。言い換えると、両側縁部34,34は、開封端35の一部(具体的には両側部)を含んでいる。個包装体30の開封時、開封端35を引き上げながら、ナプキン10の長手方向Y、すなわち個包装体30の折り畳み方向Y1とは逆方向の開封方向Y2に引っ張る。これにより、長手方向Yに沿って延在する両側縁部34、34の複数の融着部5の融着が剥離されて個包装体30が開封され、内部のナプキン10が露出するようにされる。この個包装体30において、開封性の観点から、開封端35を折り畳み方向Y1に跨るようにしてタブテープ39が配されてもよい。
【0016】
個包装体30は、両側縁部34、34の開封端35を含む領域として、包装シート20がナプキン10を介さずに積層された最積層領域36を有する。この最積層領域36は、両側縁部34、34それぞれの開封端35を含む領域であって、最も包装シート20の積層枚数が少ない最小積層領域37の間に位置し、最小積層領域37よりも包装シート20の積層枚数が多い領域を意味する。最積層領域36における包装シート20の積層枚数は、最小積層領域37における包装シート20の積層枚数を越えていれば、単一であってもよく、複数種類含んでいてもよい。例えば、
図3(A)に示す態様では、側縁部34の延在方向(ナプキン10の長手方向Yに沿う方向)に沿う断面において、包装シート20の積層枚数が2枚とされた最小積層領域37、37に対し、その間の開封端35を含む領域が、包装シート20の積層枚数3枚の最積層領域36である。具体的には、最積層領域37は、包装シート20の中央包装部21、第1折り包装部22及び第2折り包装部23が積層された領域である。また
図3(B)に示す態様では、最小積層領域37、37間の開封端35を含む最積層領域36は、包装シート20の積層枚数が3枚、4枚と2種類の積層枚数を含む。具体的には、最積層領域36は、包装シート20の中央包装部21、第1折り包装部22及び第2折り包装部23の3枚積層領域と、第2折り包装部23の先端が更に折り返された4枚積層領域との2種類を含む。この最積層領域36における包装シート20の積層枚数は、上記の要件を満たす限り種々設定することができ、包装シート20の折り畳み回数に応じて適宜設定される。
【0017】
更に個包装体30は、両側縁部34、34の開封端35を含む領域として、最積層領域36内のナプキン10の長手方向Yに沿う幅(長さ)範囲内に位置し、その周囲とは区別される色を備えた第1面30A側の着色帯領域5を有する。この着色帯領域5は、上記要件を満たす領域として、最積層領域36のナプキン10の長手方向Yに沿う幅(長さ)全体を覆う範囲に位置していてもよく、一部を覆う範囲に位置していてもよい。また、着色帯領域5は、最積層領域36がある両側縁部34、34に留まってもよく、両側縁部34、34を越えて更に幅方向Xの内方側に延在していてもよい。
図1に示す例では、着色帯領域5は、個包装体30の幅方向Xの全域に亘って配されている。これに限らず、両側縁部34、34から幅方向Xの内方側に部分的に延在するようにしてもよい(図示せず)。
【0018】
着色帯領域5は、その周囲と異なる色を有する限り、種々の色を備えることができる。この色には、有彩色の他、グレーや黒などの無彩色が含まれる。第1面側30Aの包装シート20に配される着色帯領域5は、この種の物品において通常用いられる方法により形成することができる。例えば、顔料や染料を用いてフレキソ印刷、グラビア印刷、インクジェット印刷等によって形成することができる。
【0019】
両側縁部34、34の着色帯領域5には前述の融着部4が複数含まれている。両側縁部34、34の着色帯領域5に位置する融着部4はそれぞれ、積層した複数の包装シート20が連続的・一体的に結合した第1融着部6と、第1融着部6を囲繞した第2融着部7とを有する(
図4(A)及び(B))。第1融着部6において、「連続的」な結合とは、第1融着部6の平面領域全体において非結合部分を含まずに包装シート20が結合されていることを意味する。「一体的」な結合とは、第1融着部6の厚み方向おいて包装シート20の積層構造全体が結合されていることを意味する。第1融着部6において、包装シート20を連続的・一体的に結合していることで、平面領域及び厚み方向において非結合部を含まない均一な融着構造を有する。このような第1融着部6は、着色帯領域5に配される融着部4における包装シート20間の結合性の支配的な役割を担う。
【0020】
第1融着部6と第2融着部7とは、色の濃さによって区分され、第1面30A側から平面視して、第1融着部6は第2融着部よりも色が濃くされている。言い換えると、第1融着部6を囲繞する第2融着部7は、第1融着部6よりも色が薄い(場合によっては非着色)。そのため、第2融着部7の色は、融着部4の平面方向外方の着色帯領域5の色よりも薄くなる。これにより、
図4(A)及び(B)に示すように着色帯領域5の第1面30A側において、融着部4は、第2融着部7とその外側領域との色の相違で区画される。色の相違で画定された融着部4内において、第1融着部6は、各融着部4の第1面30A側の領域内で色が最も濃く、かつ厚み方向Zについて連続的・一体的に包装シート20を結合した領域と定義され、融着部4における結合性の支配的な役割を担う。第2融着部7は、各融着部4の領域内で第1融着部6を除く部分として定義される。第2融着部7においては、融着部4の外縁に隣接する部分において、複数の包装シート20が互いに離間した構造を有することが好ましい。第2融着部7の融着構造の好ましい態様については後述する。
【0021】
前述のとおり、第1融着部6は、色の濃さが薄い第2融着部7により囲繞されている。これにより、個包装体30の第1面30A側からの平面視、第1融着部6は、色の薄い第2融着部7によって縁取りされて、着色帯領域5内における視認性が高められている。
【0022】
(色の濃さの測定方法)
上記の色の濃さは、下記に示すように、画像中の着色部分(印刷部分)を構成する網点部分が占める面積の割合を百分率で表した「網点濃度」によって示される。
(1)個包装体30において、包装シート20の側縁部34の着色帯領域5うち、複数の融着部4を有する箇所において10mm×10mmの大きさのサンプル片を切り出す。光学顕微鏡(例えば、株式会社キーエンス製VHX-6000(商品名))を用いて、サンプル片の平面視における画像を撮像する。観察倍率は、200倍率とする。
(2)撮像した画像において、第1融着部6及び第2融着部7を規定し(下記規定方法のとおり)、それぞれの融着部において、網点部分の面積が占める面積の割合を百分率で表したものを求める。
(3)上記(1)及び(2)により異なる3箇所で網点濃度を測定し、それぞれの平均値を算出して、第1融着部6及び第2融着部7それぞれの網点濃度とする。
【0023】
(第1面30A側からの平面視における第1融着部6及び第2融着部7の規定方法)
(1)個々の融着部4の第1面側において、融着部4のうち最も濃い着色がある連続的・一体的な領域の境界を、光学顕微鏡に付属の線描画ツールを用いてなぞる。なぞった境界内の領域を第1融着部6の第1面30A側の領域と定める。
(2)次いで、融着部4の第1面30A側の領域の境界を画定し、該領域のうち上記の第1融着部6の領域を除いた領域を第2融着部7の第1面30A側の領域とみなす。
例えば、
図5(A)に示す例においては、融着部4の第1面30A側の領域は、その外縁となる境界D1で囲まれた領域として示され、第1融着部6の第1面30A側の領域は、その外縁となる境界D2で囲まれた領域として示される。
なお、上記区分方法において、融着部4の第1面30A側の領域の境界D1は、着色帯領域5と、該着色帯領域5の着色よりも相対的に色の薄い又は非着色の領域との境界を光学顕微鏡に付属の線描写ツールを用いてなぞることで特定することができる。このとき、描写した境界D1が基本進行方向V1から進行対抗方向V2に進み、進行対抗方向V2に凸な曲線となる場合(例えば、
図6(A)を部分拡大した
図6(B)の一点鎖線E1)、進行対抗方向V2に進む前の地点Q1から基本進行方向V1に平行な直線を、相対的に色の薄い又は非着色の領域の境界と交差する点Q2まで下ろす(例えば、
図6(C)に示す境界D1)。そこからまた描写を続けていく。
【0024】
更に第2融着部7は、第1面30A側に露出する部分に、厚み方向Zに窪んだ凹部71を有する(例えば
図7(A)及び(B))。第2融着部7の凹部71による陰影の効果により、第2融着部7よりも第2面30B側に奥まった位置にある、色の濃い第1融着部6がより立体的に浮き上がるように見える。これにより、各融着部4における結合性の支配的な役割を担う第1融着部6の視認性が顕著に高められる。これは、単に色の濃淡だけでは得られない極めて高い視認性となる(例えば
図4)。そのため、たとえ第1融着部6が融着部4の外側の着色帯領域5と同じ色を有していても、使用者は確実に第1融着部6の存在を認識することができる。
【0025】
なお、個包装体70における着色帯領域5および第1融着部6の情緒性の観点から、第1融着部6と融着部4の外側の着色帯領域5とは同じ色又は類似した色であることが好ましい。個包装体70の情緒性が着色帯領域5と着色帯領域5以外の領域とにより表現されることを鑑みると、第1融着部6に着色帯領域5とは大きく異なる色を持たせないようにすることで上述の個包装体70の情緒性を高めることができる。
具体的には、色の違いは下記により測定される色差ΔEによって表され、上記の観点から、第1融着部6と着色帯領域5との色差ΔEの値は、20以下であることが好ましく、15以下であることがより好ましく、13以下であることが更に好ましい。なお、本明細書において「同じ色」とは、両者の色差ΔEが5以下であることを指す。
【0026】
(色の違いの測定方法)
2種類の色の違いは、下記に示すように、「色差ΔE」によって示される。色差ΔEは、1976年に国際照明委員会(CIE)で規格化されたL*a*b*表色系(CIE1976(L*a*b*)表色系)に基づき測定される色度a*、色度b*及び明度L*から以下の式(1)によって算出されるものである。なお、ΔL*、Δa*、Δb*は、色相空間で対比される2点間におけるL*値、a*値、b*値各々の差を示す。
ΔE={(ΔL*)2+(Δa*)2+(Δb*)2}1/2 (1)
色差ΔEの測定は、具体的に、色差計(例えば、日本電色工業株式会社製SE-2000)を用いることにより行うことができる。測定条件に関しては、光束30mmφの反射測定方法にて、付属の標準白色校正版(L*=98.59、a*=0.55、b*=0.36)による標準合わせを行った後で、サンプル片の測定を開始する。なお、サンプル片に関しては、色差系の測定に必要な最小面積を満たすために、光学顕微鏡(例えば、キーエンス製VHX-6000)によりサンプル片を拡大した撮像画像を、印刷機(例えば、Ricoh製カラーBasic)にて所定の着色インク(例えば、株式会社Ricoh製MP Pトナー シアンC6003、イエローC6003、マゼンタC6003、ブラックC6003)を用いてカラー印刷したものにより、測定を行ってもよい。
【0027】
上述した色の濃さおよび色の違いの測定方法における測定方法において、色の濃さについては、サンプルの全面積における着色部分の面積率(前述の網点濃度)を表しており、色の違いについては、2種類の着色の違いを表すものである。
【0028】
第2融着部7の色は、第1融着部6の色と類似色でも良いし、異なる色でも良い。また、無着色でも良く、さらには、有色部分と無着色部分とが混在していても良い。なお、第2融着部7の色として、有色部分と無着色部分とが混在している場合は、有色部分は第1融着部6と同じ色又は類似色であっても良いし、異なる色であっても良い。
なお、第1融着部6の視認性を向上させる観点から、第2融着部7の色は、第1融着部6と異なる色であるか、無着色、有色と無着色部とが混在していることが好ましく、この場合、第1融着部6と第2融着部7との色差ΔEの値の差が、25以上であることが好ましく、30以上であることがより好ましく、35以上であることが更に好ましい。ここで、第2融着部7の色として、第1融着部6の色と類似色を用いる場合には、網点濃度等の調整により、第1融着部6と第2融着部7との色差ΔEを、上述した好ましい値にすることができるが、この場合は網点が配された部分が有色部分に相当し、網点が配されていない部分が非着色部分に相当する。
【0029】
また、開封端35を含み、かつ最積層領域36の範囲内に位置する着色帯領域5に、上記構成の第1融着部6及び第2融着部7があることにより、個包装体30の開封直前のタイミングで確実に第1融着部6が視認される。これにより、シール封止性及びそれによる吸収性物品の異物混入防止性(衛生保持性)に対する視覚的な安心感を、使用者に確実に付与することができる。また、その高い視認性により、最積層領域36の開封に必要な剥離力を使用者に視覚的に伝達することができ、適切で円滑な開封操作の一助となる。
【0030】
第2融着部7が有する凹部71は、
図7(A)及び(B)に示すように、融着部4の厚み方向Zに沿った断面視において、第1面30A側から第2面30B側へと窪んだ部分である。より具体的には、凹部71は、第1面30A側の、第2融着部7と第1融着部6との境界D2及び融着部4とその外側の着色帯領域5との境界D1で区画される第2融着部7の領域内に、周囲よりも第2面30B側に窪んだ底部を有する。このような凹部71は、断面視において極小点を有する枠線で示される箇所であることが、上記視認性をより高める観点から好ましい。また、このような凹部71は、最積層領域36を構成する包装シート20の積層構造において、第1面30A側の最上層の包装シート20にのみ形成されていることが、開封性の観点から好ましい。
【0031】
加えて、第1融着部6において、第1面30A側から平面視した面積M1が第2面30B側から平面視した面積M2よりも大きくされている。第1融着部6の第1面30A側の面積M1及び第2面30B側の面積M2はそれぞれ、前述の(第1面30A側からの平面視における第1融着部6及び第2融着部7の規定方法)を準用して測定することができる。すなわち、面積M1は、
図5(A)に示すように、第1面30A側において境界D2で囲まれた、最も濃い着色がある連続的・一体的な領域の面積として画定し、測定することができる。面積M2は、
図5(B)に示すように、第2面30B側において境界D3で囲まれた、最も濃い着色がある連続的・一体的な領域の面積として画定し、測定することができる。
【0032】
この面積M1及びM2の相違は、融着部4の厚み方向Zの断面において、例えば
図7(A)に示すような枠線長さの相違として示される。
図7(A)に示す第1融着部6の幅方向Xに沿う厚み方向Zの断面において、第1面30A側の境界D2-境界D2で区画される枠線62の幅N1が、第2面30B側の境界D3-D3で区画される枠線63の第1融着部6の幅N2より長くなる。
【0033】
(融着部4の厚み方向Zに沿った断面における第1融着部6の規定方法)
上記断面における第1融着部6は、断面を露出させた第1融着部6を有する融着部4に対し、第1面30A側に対する90°又は60°の傾斜角度から光学顕微鏡を用いて観察して規定される。その際、前述の(第1面30A側からの平面視における第1融着部6及び第2融着部7の規定方法)を準用する。すなわち、色の濃淡が最も濃い領域の境界D2及び境界D3となる断面両端点の4つを結んで区画される領域が第1融着部6の厚み方向Zに沿った断面として規定される(例えば
図7(A)及び(B))。
【0034】
このように、着色帯領域5の配される最積層領域36において、第1融着部6をなす、包装シート20の積層構造全体の連続的・一体的結合部分の面積を、第2面30B側より第1面30A側で大きくしている。これは、第1融着部6の厚み方向Zにおいて、第1面30A側から第2面30B側に向かうにつれてシート積層間の結合力が弱められることを意味する。これにより、第1面30A側からの第1融着部6の視認性が更に高められると共に、必要な融着面積を保持しながら、シート積層間の融着剥離を伴う個包装体30の開封性を高めることができる。すなわち、着色帯領域5に含まれる開封端35近傍での個包装体30の開封しやすさが高められる。
【0035】
上記開封性について、
図8を参照して説明する。
第1融着部6に関する面積M1及びM2の相違から、第1融着部6と第2融着部7との間の第1面30A側の境界D2、第2面30B側の境界D3それぞれの融着長さ(前述の幅N1、N2)が相違する。この相違(N1>N2)により、
図8に示される矢印のように、開封端35から開封方向Y2に剥離するのに必要な力ベクトル和の大きさが、第1面30A側よりも第2面30B側の方で小さくなる。この力ベクトル和の大きさの相違から、開封のための外力を加えると、第1面30A側よりも面積の小さき第2面30B側での剥離が先に進行しやすい。この際に、前述した通り、第1融着部6が平面領域及び厚み方向において非結合部を含まない均一な融着構造を有することで、当該メカニズムを確実に発現しやすくなる。
【0036】
このような融着構造の第1融着部6を有する個包装体30において、使用者は、前述のように視認性が高められた第1融着部6を第1面30A側にて強く認識し、第1融着部6の第1面30A側の面積M1を想定した剥離力を加えて開封を開始する。すると、その剥離力よりも小さき力で剥離可能な第2面30B側の境界D3においてシート積層間の剥離が先行し、該剥離が淀みなく進行し得る。また、第1融着部6の第2面30B側の面積M2が抑えられているので剥離に要する時間も短くて済む。更に、第2面30B側からの先行剥離で生じる切れ目をトリガーとして、第1融着部6と第2融着部7との境界において、第1面30A側までシート積層間の剥離が厚み方向Zに容易に進行する。この第1融着部6における剥離が開封操作の進行につれて複数の融着部4で次々と生じる。このようにして、個包装体30は、複数の融着部4を有する両側縁部34、34に沿った、開封端35から開封方向X2への開封が円滑に迅速になされ、開封性が高められる。
【0037】
以上の通り、本実施形態の個包装体30は上記構造を有することにより、個装開封端近傍での開封しやすさと、融着部の視認性向上による異物混入防止の安心感の付与とを同時に実現することができる。
【0038】
個包装体30において、上記のような第1融着部6及び第2融着部7を有する融着部4は、両側縁部34、34の着色帯領域5と重なる領域にある限り、両側縁部34,34の他の領域に配されてもよく、配されなくてもよい。
個包装体30が有する第1融着部6及び第2融着部7を有する融着部4は、この種の物品について用いられる通常のエンボス加工において、第1面30A側から押し込むエンボス凸部の先端部面積と第2面30B側から押し込むエンボス凸部の先端面積との間の差を適宜設定したり、第2面30B側から押し込むエンボス凸部を2重凸部形状にしたりすることにより形成できる。その際、第1融着部6と第2融着部7との色の濃さの相違は、例えば、エンボス加工で包装シートにかかる加熱温度領域において、包装シートに固定された状態から溶融して移動しやすくなる着色インクを選定することで形成することができる。すなわち、前記選定によって、エンボス加工前に包装シートにて第2融着部となる領域にて固定されていた着色インクが溶融し、溶融した着色インクが、第2融着部よりも紙面奥側に位置する第1融着部へと重力により移動させるようにする。移動した着色インクが第1融着部にて溶融する着色インクと表面張力によって凝集し、常温に戻ることで第1融着部の位置において再び固定されることによって、前記色の濃さの相違を形成することができる。
【0039】
個包装体30において、最積層領域36の長手方向Yに沿う長さK1に対する、第1融着部6及び第2融着部7を含む着色帯領域5の長手方向Yに沿う長さK2の比(K2/K1(
図3参照))は、前述の視認性および前記開封端35近傍における開封性を高める観点から、0.10以上が好ましく、0.20以上がより好ましく、0.25以上が更に好ましい。なお、本実施形態において着色帯領域5は最積層領域36よりも長手方向Yに沿う長さが短い(K2/K1>1)であったが、着色領域5の長手方向Yに沿う長さは、最積層領域36の長手方向Yに沿う長さ以上であってもよい。
【0040】
個包装体30において、前述の視認性をより高める観点から、第1面30A側から平面視した第1融着部6の網点濃度S1の、第2融着部7の網点濃度S2に対する比(S1/S2)は、4.0以上が好ましく、6.0以上がより好ましく、8.0以上が更に好ましい。
【0041】
更に、前記視認性をより高める観点から、第2融着部7の凹部71の着色帯領域5の第1面30A側表面からの深さは、第1融着部6の着色帯領域5の第1面30A側表面からの深さの80%以上が好ましく、90%以上がより好ましく、100%以上が更に好ましい。
また、開封性の観点から、第2融着部7の凹部71の着色帯領域5の第1面30A側表面からの深さは、第1融着部6の着色帯領域5の第1面30A側表面からの深さの160%以下が好ましく、150%以下がより好ましく、140%以下が更に好ましい。
【0042】
(着色帯領域5の第1面30A側表面からの深さの測定方法)
(1)
図7に示すような着色帯領域5に位置する測定対象(第1融着部6あるいは第2融着部7)の断面を、線描画ツールが付属した光学顕微鏡(例えば、キーエンス製光学顕微鏡「VHX-6000」)にて観察し、前記線描画ツール(例えば、キーエンス製光学顕微鏡「VHX-6000」に標準で付属しているソフト名「VHX-6000 Software」)を用いて、前記融着部が形成されていない包装シート20の最も第1面30A側表面に位置する点を通る幅方向平行線を描写する。
(2)前記幅方向平行線を基準として、測定対象(第1融着部6あるいは第2融着部7の凹部71)のうち最も幅方向平行線から離れる点を選び、幅方向平行線と当該点を厚み方向に平行な直線で結び、前記直線の長さを2点間距離測定ツール(例えば、キーエンス製光学顕微鏡「VHX-6000」に標準で付属しているソフト名「VHX-6000 Software」)を用いて、測定する。
(3)上記(1)、(2)の作業を、着色帯領域5に位置する異なる10箇所の第2融着部7にて行い、それらの平均値を測定対象の深さとする。
【0043】
個包装体30において、前述の視認性をより高める観点から、第2融着部7が有する凹部71は、第1面30A側から平面視して、第1融着部6の外縁に沿うように配置されることが好ましい。例えば、
図9に示すように第1融着部6が方形である場合、第1融着部6の外縁である境界D2がなす四辺に沿って第2融着部7の凹部71が配置されていることが挙げられる。
図9に示す第2融着部7の4つの領域7A、7B、7C及び7Dにおいて、第1融着部6の前記四辺に沿って凹部71が延在して配されることが好ましい。
これにより、第2融着部7の凹部71による陰影の視覚的効果がより高められ、第2融着部7よりも第2面30B側に奥まった第1融着部6の境界D2が、使用者から見てより明瞭になる。すなわち、第1融着部6の第1面30A側からの視認性がより高められる。
【0044】
同様に、第2融着部7が有する凹部71は、第1面30A側から平面視して、第1融着部6の外縁から融着部4の外縁へと延びた構造を有することが好ましい。例えば、
図9に示すように第1融着部6が方形である場合、第1融着部6の四つの角に沿って、第1融着部6の外縁である境界D2から四方に放射状に、融着部4の外縁である境界D1へと凹部71が延びた構造が挙げられる。
図9に示す第2融着部7の4つの角領域7E、7F、7G及び7Hにおいて、境界D2へと放射状に延びる構造の凹部71が配されることが好ましい。
これにより、第2融着部7の凹部71による陰影の視覚的効果が、第1融着部6のより中心側を浮き上がったように見せ、第1融着部6の第1面30A側からの視認性がより高められる。
【0045】
個包装体30において、前述の視認性をより高める観点から、第1面30A側から平面視して、第1融着部6の面積M1が第2融着部7の面積M3よりも大きいことが好ましい。これにより、第1面30A側からの第1融着部6の視認性がより高められる。この面積は、前述の通り、前述の(第1面30A側からの平面視における第1融着部6及び第2融着部7の規定方法)を準用して測定することができる。
【0046】
第1融着部6の面積M1>第2融着部7の面積M3の関係において、前述の視認性をより高める観点から、第1融着部6の面積M1の第2融着部7の面積M3に対する比(M1/M3)は、1.3以上が好ましく、1.5以上がより好ましく、2.0以上が更に好ましい。
また、第1融着部6を囲繞する第2融着部7の存在によって第1融着部6の視認性を確保する観点から、第1融着部6の面積M1の第2融着部7の面積M3に対する比(M1/M3)は、7.0以下が好ましく、6.5以下がより好ましく、6.0以下が更に好ましい。
【0047】
また、個包装体30において、前述の開封性をより高める観点から、第1融着部6における第1面30A側の面積M1の第2面30B側の面積M2に対する比(M1/M2)は、1.3以上が好ましく、1.5以上がより好ましく、2.0以上が更に好ましい。
また、シール性を確保する観点から、第1融着部6における第1面30A側の面積M1の第2面30B側の面積M2に対する比(M1/M2)は、7.0以下が好ましく、6.5以下がより好ましく、6.0以下が更に好ましい。
【0048】
前述の開封性をより高める観点から、第1融着部6は第2面30B側からの平面視、
図10(A)に示すように、内側に湾曲した曲線61よりなる外縁を有することが好ましい。加えて、第1融着部6の第2面30B側の領域をナプキン10の長手方向Yに沿う方向に2等分した各領域6A、6Bにおいて、内側に湾曲した曲線61、61の交点61Pを2点以上有し、交点61Pそれぞれを構成する曲線61、61のなす角度θが45°未満であることが好ましい。
これにより、第2面30B側における第1融着部6と第2融着部7との境界D3でのシート積層間の剥離が段階的に起こり、かつ、より小さな力での剥離を可能にする。すなわち、前述の個包装体30の開封性を更に高める。
より具体的には、
図10(B)に示すように、境界D3をなす、内側に湾曲した曲線61に対し開封方向Y2に沿った外力Wを加えると、これに対して反対方向の内力(応力)Bが発生する。内力Bを構成する境界対向成分(境界B3に対して直交する成分)B1の大きさは、前述の交点61Pでの角度θに基づき、Bsinθとなる。Bsinθは、第2面30B側における第1融着部6と第2融着部7との境界D3での剥離時に必要な力の大きさに相当し、0°<θ<45°であることで下記式(2)の範囲内に抑えられる。その結果、Bsinθに相当するより小さな力での境界D3でのシート積層間の剥離を可能にする。また、Bsinθは曲線61に沿って徐々に大きくなるようにされており、剥離開始時のより小さな力での素早い剥離が剥離進行を付勢し、段階的に広くなる融着面積に対する剥離を円滑にさせることができる。このような剥離開始時の素早い剥離による個包装体30の開封性をより確実に高める観点から、2等分した領域6A及び6Bの中で、上記の角度θの要件は少なくとも剥離開始側の領域6Aで満たされることが好ましい。
【0049】
【0050】
前述の曲線61、61のなす角度θによる作用をより効果的にする観点から、角度θは、40°以下がより好ましく、35°以下が更に好ましい。また、角度θは、0°以上が好ましく、より大きければ良い。
【0051】
第1融着部6における前述の剥離作用をより効果的にする観点から、第2融着部7は、厚み方向Zにおいて次のような融着構造を有することが好ましい。
すなわち
図11に示すように、第2融着部7は、厚み方向Zにおいて、最積層領域36の複数の包装シート20が互いに離間したシート集合体72と、シート集合体72に隣接し複数の包装シート20を厚み方向Zに境界なく連続的・一体的に融着(結合)した結合部73とを有することが好ましい。シート集合体72は境界D1寄りに位置し、融着部4の中で開封時の剥離のための外力を最初に受ける部位である。これにより、シート集合部72では、融着部4に到達した外力を最初に受けて包装シート20間の距離を素早く広げる力が働く一方、結合部73では自身が融着形成されていることから現位置に留まろうとして前記外力に対向する内力が働き、延いては、この1対の力が厚み方向の引き裂き力となる。これにより、着色帯領域5における最上層の開封端35を起点とする剥離操作の中で、剥離のための外力が、シート集合体72の最上層を介して結合部73と第1融着部6との第2面30B側の境界D4に伝達される。その結果、第1融着部6における、第1面30Aよりも面積の小さい第2面30B側から開始される前述の剥離(融着部4の第2面30B側における結合部73と第1融着部6との境界D4から開始される剥離)がより円滑に発現されやすくなる。
【0052】
第2融着部7の結合部73と第1融着部6との厚み方向Zの断面における境界D4は、前述の「第1面30A側からの平面視における第1融着部6及び第2融着部7の規定方法」及び「厚み方向Zの断面視における第1融着部6の規定方法」を準用して規定できる。具体的には以下の通りである。断面の光学顕微鏡による撮像画像にて、第1融着部6と第2融着部7との色の濃さの相違に基づいて、第2融着部7の第1面30A側の枠線と、最も第2面30B側に位置する包装シート20の第2面30B側の枠線とをなぞって結ぶ。そして前記2つの枠線とそれぞれ交点をなす厚み方向に平行な直線を描く。前記2つの枠線と前記直線とによって囲繞された領域を第2融着部7の結合部73(第1融着部6側の領域)とする。結合部73と第1融着部6の第2面30B側とが交差する部分において、色の濃さが相違する境界を境界D4とする。この際、前記直線は、第2融着部7の結合部73が、(i)第1着色部6よりも薄い色で着色されていて(若しくは着色されておらず)、(ii)連続的・一体的に融着(結合)された領域として区分されるように規定する。前記(ii)の要件を満たすように前記直線が規定できない場合は、結合部73は有さないものと解する。
【0053】
上記の区分において、第2融着部7は、例えば
図11に示すように厚み方向Zの断面において、最も第1面30A側に位置する包装シート20(第2折り包装部23)の第1面30A側表面から延出する枠線74、最も第2面30B側に位置する包装シート20(中央包装部21)の第2面30B側表面から延出する枠線75、境界D1を通る厚み方向Zに平行な直線76により画定される。この場合、前述の凹部71は、第1面30A側の枠線74の一部の枠線により特定される部分である。これら枠線74と枠線75とを結ぶ線上に、前述の結合部73と第1融着部6との境界D4が含まれる。
結合部73は、前述のとおり、融着される複数の包装シート20が厚み方向Zに境界なく連続的・一体的に融着(結合)された部位である。このように定義される結合部73は、例えば
図11に示すように厚み方向Zの断面において、第1面30A側の枠線74、第2面30B側の枠線75、厚み方向Zに平行な直線77により画定される。
【0054】
第2融着部7の結合部73と第1融着部6との接続部分に関し、開封性をより高める観点から下記のようにすることが好ましい。
すなわち、
図12に示すように、融着部4の厚み方向Zの断面視、第2融着部7の結合部73と第1融着部6の第2面30B側の枠線63との交点67Pを通る、結合部73の枠線78の接線T1と厚み方向平行線T2とのなす角度γが45°未満であることが好ましい。これにより、開封前において、第1融着部6と第2融着部7の枠線78との距離が離れるため、第2面30B側からの剥離がより一層発現しやすくなり、開封性が更に向上する。
【0055】
前述の枠線78の接線T1と厚み方向平行線T2とのなす角度γによる作用をより効果的にする観点から、角度γは、35°以下がより好ましい。
【0056】
また上記と同様の観点から、
図13に示す融着部4の厚み方向Zの断面視、第1融着部6の平均厚みH1が、第2融着部7の包装シート20の平均厚みH2よりも小さく、かつ、第1融着部6の平均密度J1が第2融着部7の平均密度J2よりも高いことが好ましい。これにより、各融着部4における結合性の支配的な役割を担う第1融着部6と、第2融着部7との境界(境界D2と境界D3とを厚み方向に繋ぐ厚み方向の境界)の長さが短くなり、且つ第1融着部6と第2融着部7との平均密度差により、第1融着部6と第2融着部7との境界での剥離がより一層起こりやすくなり、開封性が更に向上する。
なお、下記測定方法に示すように、第1融着部6の平均厚みH1は、連続的・一体的に結合した融着部分全体の平均厚みであり、第2融着部7の包装シート20の平均厚みH2は、最も第1面30A側に位置する包装シート20の平均厚みである。
【0057】
(第1融着部6の平均厚みH1の測定方法)
(1)光学顕微鏡(例えば、株式会社キーエンス製VHX-6000(商品名))で個包装体30の側縁部34の融着部4の断面を観察し、画像を撮像する。
(2)次いで、2点間距離計測ソフトウェア(例えば、株式会社キーエンス製VHX-6000 Software)を用いて、第1融着部6の厚みを10点測定し、その平均値を求める。
(3)前記(1)及び(2)を、異なる10箇所の融着部で行い、前記(2)で算出した値の平均値を第1融着部6の平均厚みH1とする。
【0058】
(第2融着部7の包装シート20の平均厚みH2の測定方法)
(1)光学顕微鏡(例えば、株式会社キーエンス製VHX-6000(商品名))で個包装体30の側縁部34の融着部4の断面を観察し、画像を撮像する。
(2)次いで、2点間距離計測ソフトウェアを用いて、第2融着部において、結合部73以外のシート集合体72で離間する複数の包装シート20のうち、最も第1面側に位置する包装シート20の最大厚みH2maxおよび最小厚みH2minを測定し、それらの平均値を算出する。
(3)前記(1)及び(2)を、異なる10箇所の融着部4で行い、前記(2)で算出した値の平均値を第2融着部7の包装シート20の平均厚みH2とする。
【0059】
(第1融着部6の平均密度J1及び第2融着部7の平均密度J2の測定方法)
第1融着部6の平均密度J1は、下記の式(3)により、算出する。
【0060】
【0061】
第2融着部7の平均密度J2は、下記の式(4)により、算出する。
【0062】
【0063】
第1融着部6の平均厚みH1の、第2融着部7の包装シート20の平均厚みH2に対する比(H1/H2)は、開封性の向上の観点から、0.8以下が好ましく、0.6以下がより好ましく、0.4以下が更に好ましい。
【0064】
第1融着部6の平均密度J1の第2融着部7の平均密度J2に対する比(J1/J2)は、開封性の向上の観点から、2.0以上が好ましく、3.0以上がより好ましく、4.0以上が更に好ましい。
【0065】
更に個包装体30において、前述の第1融着部6の視認性及び開封端35からの開封性をより高める観点から、下記(1)~(4)の構成の少なくとも1つを有することが好ましい。
【0066】
(1)第1融着部6は、第1面30A側から平面視して、着色帯領域5のうち融着部4が配されていない領域よりも、色が濃いことが好ましい。これにより、着色帯領域5の中で、両側縁部34、34の第1融着部6の色が最も濃くなって視認性が最も高くなり、個包装体30のシール封止性を使用者が視覚的により強く認識できる。その結果、ナプキン10の衛生保持性に対する視覚的な安心感を、より一層使用者に与えることができる。
上記の色の濃さの相違の程度として、第1面30A側からの平面視において、第1融着部6の網点濃度S1の、着色帯領域5の融着部4が配されていない領域の網点濃度S3に対する比(S1/S3)は、1.3以上が好ましく、1.5以上がより好ましく、2.0以上が更に好ましい。
また、前記比(S1/S3)は、個包装体70の情緒性の向上の観点から、8.0以下が好ましく、7.0以下がより好ましく、6.0以下が更に好ましい。
【0067】
(2)着色帯領域5は、第1融着部6及び第2融着部7の配される両側縁部34、34から幅方向Xの内側の領域51まで延在していることが好ましい。これにより、着色帯領域5の融着部4の配されない領域で開封端35を見つけやすく、開封端35の位置で指を入れて行う開封操作がより一層行いやすくなる。
【0068】
(3)着色帯領域5の、第1融着部6及び第2融着部7の配される両側縁部34、34より幅方向Xの内側の領域51(
図1参照)は、第1融着部6より色が薄いことが好ましい。この色のコントラストにより、開封時に指を入れる開封端35を見つけやすく、かつ、第1融着部6の配置がより視認しやすくなる。これにより、上述した開封性向上の効果をより発現しやすくなる。
この第1融着部6と内側の領域51との色のコントラストは、前述の通り網点濃度で示めされる。前記両者の網点濃度の差は、前述の網点濃度の比(S1/S3)と同様の範囲であることが好ましい。
【0069】
(4)第1融着部6及び第2融着部7は、両側縁部34、34の延在方向(ナプキン10の長手方向Yに沿う方向)において、着色領域5における開封端35とは反対側の端縁5Eの外方領域38(
図1参照)にも、両側縁部34、34に沿って配置されていることが好ましい。これにより、両側縁部34、34において、着色帯領域5と重なる第1融着部6の色の濃さ及びその外側の色との視覚的相違が、着色帯領域5と重ならない外方領域38の第1融着部6との対比でより顕在化する。これにより、これにより、上述した開封性向上の効果をより発現しやすくなる。
【0070】
個包装体30を構成するナプキン10及び包装シート20の形成材料は、この種の物品に用いられるものを特に制限なく用いることができる。
【0071】
包装シート20としては、融着部4を形成できる種々の材料を特に制限なく用いることができる。例えば、ポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂などのポリオレフィン系のポリマー樹脂などを用いて形成することができる。ポリエチレン〔直鎖状低密度ポリエチレン(L-LDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)〕、ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-アクリル酸共重合体(EA)、スチレン-イソプレン共重合体(SIS)、スチレン-ブタジエン共重合体(SBS)、オレフィン系エラストマー等の一種又はそれらの混合物が挙げられる。
【0072】
ナプキン10は、肌当接面側の表面シートと、非肌当接面側の裏面シートと、表面シートと裏面シートとの間に配された吸収体とを有することが好ましい。
吸収体としては、吸収性物品において通常用いられる種々の形態のものを特に制限なく採用することができる。例えば、親水性繊維の積繊体または親水性繊維と高吸収性ポリマー材との混合積繊体を親水性の被覆シートで覆ったものでもよい。また、親水性繊維からなる2つのシート状の繊維層間に高吸収性ポリマー材を挟持して固定した薄い吸収性シートから構成されていてもよい。吸収性シートの形成にあたっては、高吸収性ポリマー材が湿潤によって発現する粘着力や別に添加した接着剤や接着性繊維等のバインダーを利用して一体化することができる。作製は通常用いられる種々の方法によって行うことができ、湿式、乾式いずれの方式によってもよい。
吸収性シートは厚みを3.0mm以下に抑えながら、高吸収性ポリマー材をシートの平面方向に分散配置させているためゲルブロキングを起こし難く、高い吸収力を有する。例えば、特開平8-246395号公報の段落[0019]~[0131]に記載のものなどが挙げられる。
【0073】
吸収体を構成する親水性繊維としては、疎水性の繊維を親水化処理したもの、それ自体が親水性であるものが挙げられる。特に、それ自体が親水性でかつ保水性を有するものが好ましい。後者の親水性繊維としては、天然系の繊維、セルロース系の再生繊維又は半合成繊維が好ましい例として挙げられる。親水性繊維としては、特にパルプ、レーヨンが好ましく、パルプが一層好ましい。更にセルロース繊維の分子内及び/又は分子間を架橋させた架橋セルロース繊維や木材パルプをマーセル化処理して得られるような嵩高性のセルロース繊維を用いてもよい。パルプとしては、針葉樹クラフトパルプ或いは広葉樹クラフトパルプのような木材パルプ、木綿パルプ或いはワラパルプ等の天然セルロース繊維等が挙げられるが、それらに限定されるものではない。これらのパルプは1種又は2種以上を用いることができる。
【0074】
吸収体を構成する高吸収性ポリマー材としては、例えば、アクリル酸又はアクリル酸塩を主成分とし、場合によって架橋剤を添加してなる水溶性のエチレン性不飽和モノマーを重合させて得られるヒドロゲル材料が挙げられる。また、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、スルホン化ポリスチレン及びポリビニルピリジンの架橋物、デンプン-ポリ(メタ)アクリロニトリルグラフト共重合物のケン化物、デンプン-ポリ(メタ)アクリル酸グラフト共重合物、デンプン-ポリ(メタ)アクリルエステルグラフト共重合物の加水分解物などが挙げられる。これらの高吸収性ポリマー材は1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。高吸収性ポリマー材は、自重の20倍以上の液を吸収・保持できゲル化し得るものが好ましい。
高吸収性ポリマー材の形状は、吸収体に用いられる種々ものを特に制限なく用いることができる。例えば、球状、粒状、繊維状、俵状、塊状などが挙げられる。
【0075】
表面シートは、液透過性を有する種々のものを用いることができる。肌触りの良さを考慮すると、親水性の不織布が好ましく、サーマルボンド不織布がより好ましく、エアスルー不織布が特に好ましい。親水化処理された熱可塑性樹脂繊維であり、かつ、該繊維が2次クリンプ又は3次クリンプのような立体捲縮がなされた繊維であることが好ましい。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ナイロン、及びこれらの複合繊維を作成し、所定の長さにカットしてステープルを形成する前の段階で、各種親水化剤を塗工する。親水化剤としては、αオレフィンスルホン酸塩に代表される各種アルキルスルホン酸塩、アクリル酸塩、アクリル酸塩/アクリルアミド共重合体、エステルアミド、エステルアミドの塩、ポリエチレングリコール及びその誘導物、水溶性ポリエステル樹脂、各種シリコーン誘導物、各種糖類誘導物、及びこれらの混合物など、通常用いられる親水化剤による親水化処理を用いることができる。
【0076】
裏面シートとしては、防漏性を有する種々のものを用いることができる。例えば、非透湿性若しくは透湿性フィルム単独、又はフィルムと不織布とを貼り合わせたもの、撥水性の不織布(SMSやSMMS等)を用いることができる。コスト面やズレ止め粘着剤とのマッチングなどから、非透湿性フィルム単独を防漏材として用いることが最も好ましい。
【符号の説明】
【0077】
10 生理用ナプキン
20 包装シート
30 個包装体
30A 第1面
30B 第2面
34 側縁部
35 開封端
36 最積層領域
37 最小積層領域
4 融着部
5 着色帯領域
6 第1融着部
61 内側に湾曲した曲線
61P 交点
6A、6B 第1融着部の第2面側を吸収性物品の長手方向に沿う方向に2等分した領域
62 第1融着部の第1面側の枠線
63 第1融着部の第2面側の枠線
7 第2融着部
71 凹部
72 シート集合体
73 結合部
74 最も第1面側に位置する包装シートの第1面側表面から延出する枠線
75 最も第2面側に位置する包装シートの第2面側表面から延出する枠線
X 幅方向
Y 長手方向
Y1 折り畳み方向
Y2 開封方向