(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023172763
(43)【公開日】2023-12-06
(54)【発明の名称】変位量検出装置、変位量検出方法および操作量出力装置
(51)【国際特許分類】
G10H 1/34 20060101AFI20231129BHJP
G01B 7/00 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
G10H1/34
G01B7/00 101E
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022084801
(22)【出願日】2022-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】000004075
【氏名又は名称】ヤマハ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003177
【氏名又は名称】弁理士法人旺知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石井 潤
(72)【発明者】
【氏名】奥山 福太郎
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 和幸
【テーマコード(参考)】
2F063
5D478
【Fターム(参考)】
2F063AA02
2F063AA22
2F063BA30
2F063BC03
2F063CA10
2F063DA01
2F063DA05
2F063GA05
5D478BC04
5D478BC24
5D478BD01
(57)【要約】
【課題】可動部材の変位量を検出することができる範囲を確保しつつ、変位量の検出精度を確保する。
【解決手段】変位量検出装置1は、金属片またはパッシブコイルを含む反応体と、交流信号の供給により磁界を発生する第1コイル611を含み、反応体との距離に応じた振幅の第1検出信号を出力する第1基板回路61と、交流信号の供給により磁界を発生する第2コイル622を含み、反応体との距離に応じた振幅の第2検出信号を出力する第2基板回路62と、第1検出信号の振幅と第2検出信号の振幅との差分を出力する差分出力回路90とを有する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動部材の変位量を検出する変位量検出装置であって、
前記可動部材に設けられた金属片またはパッシブコイルを含む反応体と、
交流信号の供給により磁界を発生する第1コイルを含み、前記反応体との距離に応じた振幅の第1検出信号を出力する第1基板回路と、
前記交流信号の供給により磁界を発生する第2コイルを含み、前記反応体との距離に応じた振幅の第2検出信号を出力する第2基板回路と、
前記第1検出信号の振幅と前記第2検出信号の振幅との差分を出力する差分出力回路と、
を有する変位量検出装置。
【請求項2】
前記第1コイルは、前記第1基板回路の基板面において渦巻き状に形成され、
前記第2コイルは、前記第2基板回路の基板面において渦巻き状に形成される
請求項1に記載の変位量検出装置。
【請求項3】
前記第1基板回路と前記第2基板回路とは、前記基板面に沿った第1方向で離間して設けられ、
平面視で前記反応体の一部または全部が、前記第1方向に沿って、前記第1コイルまたは前記第2コイルに重なる範囲で変位する
請求項2に記載の変位量検出装置。
【請求項4】
前記第1基板回路と前記第2基板回路とは、前記基板面の鉛直方向の第2方向に沿って離間して設けられ、
前記反応体は、前記第2方向に沿って、前記第1基板回路と前記第2基板回路との間の範囲で変位する
請求項2に記載の変位量検出装置。
【請求項5】
前記可動部材、前記第1基板回路および前記第2基板回路の複数組であり、
前記交流信号の供給および前記差分の出力を、
前記複数組の前記第1基板回路および前記第2基板回路のうち1組を時分割で選択して実行する
請求項1に記載の変位量検出装置。
【請求項6】
前記交流信号を、
前記複数組の前記第1基板回路または前記第2基板回路に時分割で分配するデマルチプレクサと、
前記デマルチプレクサにより前記交流信号が供給された第1基板回路からの第1検出信号または第2基板回路からの第2検出信号を時分割で選択して、前記差分出力回路に出力するマルチプレクサと
を含む請求項5に記載の変位量検出装置。
【請求項7】
前記第1基板回路のQ値と前記第2基板回路のQ値とが異なる
請求項1または2に記載の変位量検出装置。
【請求項8】
可動部材の変位量を検出する変位量検出装置であって、
前記可動部材に設けられた金属片またはパッシブコイルを含む反応体と、
交流信号の供給により磁界を発生するコイルを含み、前記反応体との距離に応じた振幅の検出信号を出力する基板回路と、
前記コイルは、前記基板回路の基板面において渦巻き状に形成され、
前記基板回路は、前記コイルを含んだ反共振回路である
変位量検出装置。
【請求項9】
金属片またはパッシブコイルを含む反応体が設けられた可動部材の変位量を検出する変位量検出方法であって、
第1コイルに交流信号を供給し、前記反応体との距離に応じた振幅の第1検出信号を生成し、第2コイルに交流信号を供給し、前記反応体との距離に応じた振幅の第2検出信号を生成し、
前記第1検出信号の振幅と前記第2検出信号の振幅との差分を出力する
変位量検出方法。
【請求項10】
演奏動作に応じて変位する操作子と、
前記操作子に設けられた金属片またはパッシブコイルを含む反応体と、
交流信号の供給により磁界を発生する第1コイルを含み、前記反応体との距離に応じた振幅の第1検出信号を出力する第1基板回路と、
前記交流信号の供給により磁界を発生する第2コイルを含み、前記反応体との距離に応じた振幅の第2検出信号を出力する第2基板回路と、
前記第1検出信号の振幅と前記第2検出信号の振幅との差分を出力する差分出力回路と、
前記差分に基づいて前記操作子の操作情報を出力する情報処理回路と、
を有する操作子の操作量出力装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えば変位量検出装置、変位量検出方法および操作量出力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば鍵盤楽器における鍵等の可動部材の変位量を、2つのコイルを用いて検出する技術が提案されている。具体的には、可動部材に設置され、コイルの一方を含む被検出部と、交流信号の供給により磁界を発生するコイルの他方を含み、被検出部とコイルの他方との距離に応じたレベルの検出信号を生成する信号生成部と、可動部材および信号生成部の少なくとも一方に設置される磁性体とを有する技術が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
この技術によれば、コイルの他方の磁界による電磁誘導でコイル一方に電流が発生して、コイルの他方の磁界を相殺する方向の磁界がコイルの一方に発生するので、被検出部とコイルの他方との距離に応じたレベルの検出信号が信号生成部により生成される。上記技術によれば、可動部材および信号生成部の少なくとも一方に設置された磁性体によって、コイルの一方またはコイルの他方に発生する磁界が増強されるので、検出信号のレベルが変化する範囲、すなわち可動部材における変位量の検出可能範囲を確保し易い、という利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記技術では、可動部材における変位量の検出可能範囲をある程度確保することができるものの、2つのコイルが離れるにつれて、検出信号のレベル変化が小さくなる。このため、2つのコイルが離れている状態では、可動部材の変位を検出する精度が低下する、という課題がある。
以上の事情を考慮して、本開示のひとつの態様は、可動部材の変位量を検出することができる範囲をある程度確保しつつ、変位量の検出精度を確保することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る変位量検出装置は、可動部材の変位量を検出する変位量検出装置であって、前記可動部材に設けられた金属片またはパッシブコイルを含む反応体と、交流信号の供給により磁界を発生する第1コイルを含み、前記反応体との距離に応じた振幅の第1検出信号を出力する第1基板回路と、前記交流信号の供給により磁界を発生する第2コイルを含み、前記反応体との距離に応じた振幅の第2検出信号を出力する第2基板回路と、前記第1検出信号の振幅と前記第2検出信号の振幅との差分を出力する差分出力回路と、を有する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】変位量検出の原理を説明するための図である。
【
図2】変位量検出装置における基板回路を示す図である。
【
図3】第1実施形態に係る変位量検出装置の要部を示す図である。
【
図4】変位量に対するリアクタンスの変化特性を示す図である。
【
図5】第2実施形態に係る変位量検出装置の要部を示す平面図である。
【
図6】変位量検出装置における基板回路を示す平面図である。
【
図7】変位量検出装置の構成を示すブロック図である。
【
図8】変位量検出装置における差分出力等と変位量との関係を示す図である。
【
図9】第3実施形態に係る操作量出力装置を示すブロック図である。
【
図11】第4実施形態に係る操作量出力装置における鍵周辺を示す図である。
【
図12】差分出力等と変位量との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示の実施形態に係る変位量検出装置について図面を参照して説明する。
なお、各図において、各部の寸法および縮尺は、実際のものと適宜に異ならせてある。また、以下に述べる実施の形態は、好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。
【0009】
図1は、変位量検出の原理を説明するための図である。変位量検出は、2つのコイルの結合係数が距離の関数になっていることを利用して、当該距離を変位量として検出する。基板回路40は、コイル401および容量素子402を含む。コイル401は、例えば絶縁体基板の表面に設けられた銅箔を、渦巻き状にパターニングすることによって形成される平面状のループコイルである。コイル401の一端は容量素子402の一端に接続され、コイル401の他端は容量素子402の他端に接続される。
【0010】
基板回路60は、コイル601、抵抗素子602、容量素子603および604を有する。基板回路60において、入力端子Inが抵抗素子602の一端に接続され、抵抗素子602の他端がコイル601の一端および容量素子603の一端に接続される。コイル601の他端は、容量素子604の一端および出力端子Outに接続される。容量素子603の他端および容量素子604の他端は電位Gndに接地される。
コイル601は、コイル401と同様に、絶縁体基板の表面に設けられた銅箔を、渦巻き状にパターニングすることによって形成される平面状のループコイルである。
【0011】
なお、コイル401は、コイル601とは異なり、外部から信号が供給されない。すなわち、コイル401は、能動的(アクティブな)コイル601とは異なり、受動的(パッシブな)性質を有する。このため、コイル401はパッシブコイルとも呼ばれる。
【0012】
この構成において、基板回路40が基板回路60に対し、基板面を平行に保った状態で、基板面の鉛直方向(z方向)に向かって相対的に変位すると、基板回路60におけるコイル601のインダクタンスが変化する。このため、入力端子Inに入力された交流信号の振幅に対し、出力端子Outから出力される交流信号の振幅が変化する。具体的には、変位量が小さいければ出力信号の振幅が大きくなり、変位量が大きければ出力信号の振幅が小さくなる。このため、出力信号の振幅の大きさが変位量を表すことになる。
【0013】
基板回路40と基板回路60とが密着した状態であれば、コイル401および601の結合係数は「1」になる。結合係数が「1」であれば、基板回路60は、
図2に示されるような基板回路61で置き換えることができる。この等価回路は、共振周波数付近で入力信号の振幅に対する出力信号の振幅の比が急激に低下する反共振回路として機能する。
【0014】
基板回路61は、コイル611、容量素子612、抵抗素子613および614を含む。詳細には、基板回路61において、入力端子Inは、コイル611の一端、容量素子612の一端および抵抗素子613の一端に接続される。コイル611の他端、容量素子612の他端、抵抗素子614の他端は、抵抗素子614の一端および出力端子Outに接続される。抵抗素子614の他端は電位Gndに接地される。
【0015】
基板回路40におけるコイル401は、コイル611のインダクタンスを変位量に応じて変化させる役目を担う。この役目を担うのであれば、基板回路40を、例えば鉄製の金属片で代用することができる。基板回路40または金属片が基板回路60に対向すると、コイル611のインダクタンスLは、金属片とのz方向に距離、および、コイル601に対する金属片の重複率の関数になる。
この点について、
図3および
図4を用いて説明する。
なお、基板回路60には、基板回路40または金属片のどちらが対向してもよいが、以下の説明では、金属片が対向するものとして説明する。
【0016】
図3は、第1実施形態に係る変位量検出装置の要部を示す図である。詳細には、基板回路61と、変位量の検出対象である板状の金属片50との位置関係を示す斜視図である。コイル611は、xy平面に設けられる平面状のループコイルである。コイル601の外形は例えば四角枠であり、図ではコイル611が便宜的に厚みのある四角板で示される。
なお、y方向とは、コイル611の辺L1に沿った方向であり、x方向とは、辺L1に隣り合う辺L2に沿った方向である。z方向とは、xy平面の鉛直方向である。金属片50は、コイル611に対しz方向に沿って密着または離間して設けられる。
【0017】
金属片50の外形は、平面視したときに、コイル611の外形以上であるとする。なお、
図3は、金属片50におけるx方向の幅は、コイル611におけるx方向の幅と揃っており、また、金属片50におけるy方向の幅は、コイル611におけるx方向の幅よりも広い例である。なお、平面視とは、z方向の反対側から眺めることをいう。
【0018】
ここで、平面視したときに金属片50の辺L11が、図に示されるようにコイル611の辺L1に一致している状態を、x方向の変位量をゼロとする。
また、金属片50がコイル611を覆う割合を重複率とする。詳細には、重複率とは、平面視したときに、コイル501の面積に対して金属片50が覆う割合をいう。例えばx方向の変位量がゼロであれば、平面視したときにコイル611は金属片50で完全に覆われるので、重複率は「1」である。金属片50がx方向に変位して、金属片50の辺L11が、コイル611の中心線Cenに一致すれば、重複率は「0.5」である。なお、中心線Cenは、平面視で、コイル611の辺L2の中点を通過し、かつ、y方向に沿った仮想線である。また、金属片50の辺L11が、平面視で、コイル611の辺L1に対向する辺L3よりもx方向に変位すれば、重複率は「0」である。
【0019】
板状の金属片50は、例えば鉄製であり、コイル611の面に対して、z方向に所定距離を保ってx方向に変位する。
【0020】
図4は、z方向の距離を複数種類で固定した状態で、重複率が「0」から「1」まで変化するように金属片50をx方向に変位させた場合に、コイル611のインダクタンスLの変化を示す図である。なお、図においてインダクタンスLは、最小値を「0」で、最大値を「1」で正規化されている。
この図に示されるように、z方向の距離が短いほど、重複率の変化に対して、インダクタンスLが大きく変化する。インダクタンスLの変化が大きいということは、それだけ出力端子Outから出力される交流信号の振幅が大きく変化する、ということを意味する。
【0021】
図4から判るように、例えば重複率が大きい場合(例えば「1」である場合)において、z方向の距離が長い状態で当該距離が変化しても、インダクタンスLの変化が小さいので、出力される交流信号の振幅変化率が小さくなる。このため、z方向の距離が長い状態では、出力される交流信号の振幅変化率が小さくなるので、高い検出精度が期待できない。
一方、z方向の距離が短い状態で重複率が変化するように、金属片50がx方向に変位すると、インダクタンスLの変化が大きくなるので、検出精度の向上が期待できる。ただし、重複率を変化させて、x方向の変位量を検出することができる範囲は、重複率が「0」から「1」までの範囲に限られる。
【0022】
そこで、第1実施形態を改良し、金属片50の変位量を2つのコイルで検出する第2実施形態について説明する。なお、2つのコイルは、区別するために第1コイル611と第2コイル622としているが、第1コイル611は、
図2または
図3におけるコイル611と同一であるので、同一の符号としている。
【0023】
図5は、第2実施形態に係る変位量検出装置1において、変位量の検出対象である金属片50と、第1コイル611および第2コイル622との配置を示す図である。
図6は、第1コイル611を含む第1基板回路61と、第2コイル622を含む第2基板回路62とを示す図である。
図7は、変位量検出装置1の構成を示すブロック図である。
【0024】
第1コイル611および第2コイル622の各々は、
図2におけるコイル611と同様に、xy平面に設けられた平面状のループコイルであり、例えば絶縁体の基材16の表面に設けられた銅箔を、渦巻き状にパターニングすることによって形成される。なお、第1コイル611および第2コイル622の外形は、平面視で四角形であり、例えば10mm角である。第1コイル611および第2コイル622は、x方向に沿って、例えば16mmピッチで並設される。このため、第1コイル611および第2コイル622は、6mmほどの隙間が存在する。
【0025】
金属片50は、第1コイル611および第2コイル622の面に対し、z方向に1mmだけ離間した状態でx方向に変位する。なお、x方向は第1方向の一例である。金属片50と第1基板回路61または第2基板回路62と0とが密着した状態であれば、結合係数は「1」であるが、物理的には密着させた状態で金属片50を変位させることは困難である。ただし、距離が1mm程度で離間していれば、電気的には密着した状態と同視でき、また、金属片50を第1基板回路61および第2基板回路62に対して変位させることができる。
【0026】
図において、平面視で金属片50の左端が第1コイル611の左端に一致する地点(a)は、xの変位量ゼロ(原点)である。金属片50が地点(a)に位置すれば、第1コイル611に対する金属片50の重複率は「1」であり、第2コイル622に対する金属片50の重複率は「0」である。
【0027】
また、図において、平面視で金属片50の右端が第2コイル622の右端に一致する地点(b)では、xの変位量が16mmである。金属片50が地点(b)に位置する場合、第1コイル611に対する金属片50の重複率は「0」であり、第2コイル622に対する金属片50の重複率は「1」である。
【0028】
図6に示されるように、第1基板回路61は、基板回路60と同様な回路構成である。
なお、両者を区別するために、第1基板回路61における入力端子をin1とし、出力端子をOut1とし、第2基板回路62における入力端子をin2とし、出力端子をOut2としている。
なお、第1コイル611の渦巻き中心は、コンタクトホールCt1、破線で示される配線、および、コンタクトホールCt2を順に介して出力端子Out1に接続される。
また、第1基板回路61および第2基板回路62は、同一の基材16に設けられてもよし、異なる別体の基材16に設けられてもよい。
【0029】
本実施形態では、第1基板回路61における第1コイル611における渦巻きの方向と、第2基板回路62における第2コイル622における渦巻きの方向とは同じである。このため、入力端子In1およびIn2に同一の交流信号が供給されると、磁界がz方向に向かってまたはz方向とは反対方向に、揃って発生する。
【0030】
図7に示されるように、変位量検出装置1は、発振回路30、第1基板回路61、第2基板回路62、整流回路81、82および差分出力回路90を有する。なお、金属片50は省略されている。
発振回路30は、測定用の交流信号を生成して、当該交流信号を第1基板回路61の入力端子In1および第2基板回路62の入力端子In2にそれぞれ供給する。なお、測定用の交流信号の周波数は、第1基板回路61および第2基板回路62の共振周波数に応じて設定される。
【0031】
整流回路81は、出力端子Out1から出力される交流信号を整流および平滑化して信号Ev1として出力する。なお、出力端子Out1から出力される交流信号が第1検出信号の一例である。
整流回路82は、出力端子Out2から出力される交流信号を整流および平滑化して信号Ev2として出力する。なお、出力端子Out2から出力される交流信号が第2検出信号の一例である。
差分出力回路90は、信号Ev1の電圧から信号Ev2の電圧を減算し、信号Dとして出力する。なお、信号Dの電圧は、金属片50におけるx方向の変位量を反映したものとなる。
【0032】
このような構成において、金属片50におけるx方向の変位量が0mmである場合、金属片50による第1コイル611の重複率が「1」であるので、第1基板回路61の出力端子Out1から出力される交流信号の振幅は最大になる。なお、この場合、金属片50による第2コイル622の重複率は「0」であるので、第2基板回路62の出力端子Out2から出力される交流信号の振幅は最小である。
金属片50がx方向に変位すると、金属片50による第1コイル611の重複率が「1」から、変位量に反比例して低下するので、第1基板回路61の出力端子Out1から出力される交流信号の振幅は変位量に応じて低下する。
【0033】
金属片50がx方向に変位して、変位量が6mmを越えると、第1基板回路61の出力端子Out1から出力される交流信号の振幅は引き続き変位量に応じて低下する。一方で、金属片50による第2コイル622の重複率が「0」から増加に転じるので、第2基板回路62の出力端子Out2から出力される交流信号の振幅は、変位量に応じて次第に大きくなる。
金属片50がx方向に変位して、変位量が10mmに達すると、金属片50による第1コイル611の重複率が「0」になるので、第1基板回路61の出力端子Out1から出力される交流信号の振幅は、最低値になり、以降変位量が増加しても最低値からほとんど変化しない。一方で、金属片50による第2コイル622の重複率が変位量に比例して増加するので、第2基板回路62の出力端子Out2から出力される交流信号の振幅は、変位量に応じて引き続き大きくなる。この傾向は、変位量が16mmに達するまで継続する。
【0034】
したがって、このように出力端子Out1から出力される交流信号を整流および平滑化した信号Ev1の電圧から、出力端子Out2から出力される交流信号を整流および平滑化した信号Ev2を差し引いた信号Ev2の電圧を差し引いた信号Dの電圧は、
図8に示される通りとなる。なお、
図8において、信号Ev2の電圧は、差分出力回路90において反転して信号Ev1の電圧に加算されるので、-Ev2として示される。
また、
図8において縦軸の電圧は、信号Ev1の最高値を「1」に、信号Ev2を反転した-Ev2の最低値を「-1」に、正規化して示している。なお、信号Dがゼロとなるのは、金属片50の変位量が0mmと16mmとの中点(=8mm)に位置するときである。
【0035】
仮に、第1基板回路61のみが存在し、第2基板回路62が存在しない構成では、信号Ev1の電圧のみで変位量を求めることになるので、金属片50の変位量を検出することができる範囲は0~10mmの範囲に限られる。また、第2基板回路62のみが存在し、第1基板回路61が存在しない構成では、信号Ev2の電圧のみで変位量を求めることになるので、金属片50の変位量を検出することができる範囲は6~16mmの範囲に限られる。
これに対して、第2実施形態のように、信号Ev1の電圧と信号Ev2の電圧との差分である信号Dの電圧で変位量を求める構成では、金属片50の変位量を検出することできる範囲が、
図8に示されるように、0~16mmの範囲に拡大するだけでなく、最小値の0mm近辺および最大値の16mm近辺を除けば、信号Dの線形性を確保することができる。
したがって、第2実施形態によれば、第1実施形態と比較して、金属片50の変位量を検出することができる範囲の拡大しつつ、変位量に対する信号の線形性を確保することができる。
【0036】
なお、
図7に示される構成において、振幅の差分を求める前に、第1基板回路61の出力端子Out1から出力される交流信号を整流回路81で整流し、第2基板回路62の出力端子Out2から出力される交流信号を整流回路82で整流している理由は、次の通りである。すなわち、第1基板回路61の入力端子In1および第2基板回路62の入力端子In2には、発振回路30による同じ交流信号が供給されるが、金属片50におけるx方向の変位量に応じて第1コイル611のインダクタンス、および、第2コイル622のインダクタンスが変化する。このため、第1基板回路61の出力端子Out1から出力される交流信号の位相、および、第2基板回路62の出力端子Out2から出力される信号の位相が揃っているとは限らないためである。
【0037】
図9は、第3実施形態に係る操作子の操作量出力装置2の構成を示すブロック図であり、
図10は、可動部材であって操作子の一例である鍵12の周辺の構成を示す図である。第3実施形態に係る操作量出力装置2は、第2実施形態に係る変位量検出装置1を鍵盤装置10に適用して、当該鍵盤装置10における複数の鍵12の変位量をそれぞれ検出し、操作子の操作量に変換して出力する。
【0038】
鍵盤装置10における1つの鍵12は、支点部13を支点として支持部材14の上面141に、揺動自在に支持される。具体的には、鍵12の端部121は、利用者による鍵12の操作により図において鉛直方向に変位する。支持部材14は、鍵盤の各要素を支持する固定の構造体である。
【0039】
鍵12は、図示省略されたバネ等の弾性により図において支点部13を中心に反時計回りに付勢されている。利用者が鍵12を操作しない状態であれば、当該鍵12はストッパーSrにより図において実線のレスト位置Rstで静止し、押鍵時には、A方向に操作されて、ストッパーSeにより図において破線のエンド位置Endまで変位する。
【0040】
鍵12において、利用者から見て奥側の端面122には、金属片50が設けられる。鍵12が押下されるにつれて、金属片50は図において上方に変位する。したがって、変位量検出装置1としてみれば、図において上方がx方向になる。
なお、複数の鍵12が配列する方向、すなわち紙面手前方向がy方向であり、長手の鍵12において利用者に向く方向、すなわち図において右方向がz方向である。
【0041】
支持部材14の上面141には基材16が立設される。上面141はy方向およびz方向に沿った平面である。基材16には、上述したように第1コイル611および第2コイル622がx方向に沿って並設される。第1コイル611および第2コイル622は金属片50に対して例えば次のような位置関係で設けられる。すなわち、鍵12がレスト位置Rstにある場合に、第1コイル611が金属片50に対向し、鍵12がエンド位置Endにある場合に、第2コイル622が金属片50に対向する。
なお、
図10は、鍵12の一例として白鍵を挙げて説明しているが、黒鍵についても、第1基板回路61、第2基板回路62および金属片50が同様に設けられる。
【0042】
第3実施形態に係る操作量出力装置2は、
図10に示されるように、発振回路30と、デマルチプレクサ71と、マルチプレクサ72と、第1基板回路61および第2基板回路62のn組と、整流回路80と、AD変換回路75と、情報処理回路100とを含む。なお、nは2以上の整数である。
情報処理回路100は、デマルチプレクサ71の出力端子およびマルチプレクサ72の入力端子を選択するための選択信号Sel_Chを出力する。また、情報処理回路100は、AD変換回路75の出力信号を入力して、n個の鍵12について押鍵量(操作量)Dxをそれぞれ求める。
【0043】
デマルチプレクサ71は、入力端子inおよび出力端子Ch_1~Ch_(2n)を有し、入力端子Inに供給された発振回路30の交流信号を、選択信号Sel_Chで選択した出力端子から出力させる。
デマルチプレクサ71の出力端子Ch_1は、1番目の鍵12に対応した第1基板回路61の入力端子In1に接続され、出力端子Ch_2は、同じ1番目の鍵12に対応した第2基板回路62の入力端子In2に接続される。
一般に、1以上(n/2)以下の整数iを用いた場合、デマルチプレクサ71の出力端子Ch_iは、i番目の鍵12に対応した第1基板回路61の入力端子In1に接続され、出力端子Ch_(i+1)は、同じi番目の鍵12に対応した第2基板回路62の入力端子In2に接続される。
【0044】
マルチプレクサ72は、入力端子Ch_1~Ch_(2n)および出力端子outを有し、選択信号Sel_Chで選択された入力端子に供給された信号を、出力端子outから出力させる。
1番目の鍵12に対応した第1基板回路61の出力端子Out1は、マルチプレクサ72の入力端子Ch_1に接続され、同じ1番目の鍵12に対応した第2基板回路62の出力端子Out2は、マルチプレクサ72の入力端子Ch_2に接続される。
上記整数iを用いた場合、i番目の鍵12に対応した第1基板回路61の出力端子Out1は、マルチプレクサ72の入力端子Ch_iに接続され、同じくi番目の鍵12に対応した第2基板回路62の出力端子Out2は、マルチプレクサ72の入力端子Ch_(i+1)に接続される。
【0045】
整流回路80は、マルチプレクサ72の出力端子outから出力される交流信号を整流および平滑化して信号Evとして出力する。AD変換回路75は、アナログの信号Evをデジタルの信号に変換して、情報処理回路100に供給する。
【0046】
情報処理回路100は、例えばCPU(Central Processing Unit)等の単数または複数の制御装置で構成され、図示省略の記憶装置に記憶されたプログラムを実行することで、時分割選択部101、演算部102および変換部103が構築される。
なお、情報処理回路100は、CPUのほか、DSP(Digital Signal Processor)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の回路によって構成されてもよい。
【0047】
時分割選択部101は、選択信号Sel_Chによってデマルチプレクサ71の出力端子およびマルチプレクサ72の入力端子の選択を例えば次のような順番で指定する。具体的には、時分割選択部101は、デマルチプレクサ71の出力端子およびマルチプレクサ72の入力端子を、Ch_1→Ch_2→Ch_3→Ch_4→…→Ch_(2n-1)→Ch_(2n)→(Ch_1)という順番で選択して、この選択の動作を繰り返す。
このため、デマルチプレクサ71は、発振回路30の交流信号を出力端子Ch_1~Ch_(2n)に時分割に分配し、マルチプレクサ72は、入力端子Ch_1~Ch_(2n)に時分割で選択する。
【0048】
演算部102は、奇数番目の入力端子および出力端子が選択されたときの信号Evのデジタル値から、当該奇数番目に続く偶数番目の入力端子および出力端子が選択されたときの信号Evのデジタル値を減算する。
具体的には、演算部102は、時分割選択部101によって奇数番目の入力端子および出力端子が選択された場合には、デジタルの信号Evの値を保持する。次に、演算部102は、時分割選択部101によって先の奇数番目の続く次の偶数番目の入力端子および出力端子が選択された場合には、保持したデジタルの信号Evの値から、AD変換回路75の出力であるデジタルの信号Evを減算する。
【0049】
すなわち、演算部102は、対をなす第1基板回路61および第2基板回路62から出力される交流信号の振幅における差分を、デジタルで演算して出力する。このため、
図9に示される構成では、演算部102が差分出力回路として機能する。
なお、厳密には、演算部102で求められる差分は、第1基板回路61および第2基板回路62から同時に出力される交流信号の振幅における差分ではなく、時間的なズレを伴う差分である。しかしながら、デマルチプレクサ71の出力端子およびマルチプレクサ72の入力端子の選択する期間を短くすれば、または、選択の繰り返し周期を短くすれば、上記時間のズレは無視することできる。
【0050】
時分割選択部101により偶数番目の入力端子および出力端子が選択された場合に演算部102により求められた差分は、当該偶数番目よりも1つ前の奇数番目の第1基板回路61および当該偶数番目の第2基板回路62から出力される交流信号の振幅の差分である。一般には、上記整数iを用いると、時分割選択部101により選択される入力端子および出力端子の偶数番目が2iであるときに演算により求められる差分は、i番目の鍵12に設けられた金属片50におけるx方向の変位量を示すことになる。
【0051】
変換部103は、金属片50における変位量を鍵12の押鍵量Dxに変換して、鍵12の識別子と対応付けて出力する。
なお、鍵12の識別子とは、複数の鍵12を特定するための情報であり、上記の例でいえば、iであり、より具体的には鍵12の音高を示す情報である。また、変換部103における変換は、例えば変位量と押鍵量とを対応付けたテーブルや、線形の演算式などが用いることができる。
【0052】
図9に示されるような構成により、複数n個の鍵12の押鍵量Dxを鍵12の識別子に対応付けて出力することができる。なお、情報処理回路100は、複数n個の鍵12の押鍵量Dxを、図示省略された装置に供給して、当該装置において楽音制御などをさせてよいし、情報処理回路100自身が押鍵量Dxに基づいて楽音信号を生成してもよいし、当該楽音信号を物理的な音響に変換して、放音させる構成としてもよい。
【0053】
図11は、第4実施形態に係る操作量出力装置2において、可動部材である鍵12の周辺の構成を示す図である。
第4実施形態では、鍵12の底面123と、支持部材14の上面141との間において、上側に第1コイル611および下側に第2コイル622が取り付けられる。詳細には、第1コイル611の面および第2コイル622の面は、上面141に対して、それぞれ平行になるように、図示省略された部材によって取り付けられる。金属片50は、可動部材である鍵12の底面123に設けられ、ほぼ90度曲げられて、その延長部分の平板部分が、第1コイル611と第2コイル622との間に位置する。
なお、なお、金属片50の平板部分は、上面141に対してほぼ平行となるように設けられる。
【0054】
なお、
図11に示される構成では、第1基板回路61の基板面と第2基板回路62の基板面とは、支持部材14の上面141と平行であって、当該上面141の鉛直方向に沿って並設される。また、金属片50は、当該鉛直方向に沿って変位する。このため、当該鉛直方向が第2方向の一例になる。
【0055】
第1コイル611の渦巻き方向と第2コイル622の渦巻き方向とは、第1コイル611により発生する磁界の向きと第2コイル622により発生する磁界の向きとが揃うように設けられる。具体的には、支持部材14の上面141を俯瞰した場合に、第1コイル611の渦巻き方向と第2コイル622の渦巻き方向とが同方向に設けられる。
【0056】
このような構成において、鍵12がレスト位置Rstであれば、金属片50は、第1コイル611に最も接近するので、第1基板回路61の出力端子Out1から出力される交流信号の振幅は最大になる。また、鍵12がレスト位置Rstであれば、金属片50は、第2コイル622に最も離反するので、第2基板回路62の出力端子Out2から出力される交流信号の振幅は最小になる。
押鍵につれて、金属片50は、第1コイル611から離れるので、第1基板回路61の出力端子Out1から出力される交流信号の振幅は次第に低下する。一方で、押鍵につれて、金属片50は、第2コイル622に接近するので、第2基板回路62の出力端子Out2から出力される交流信号の振幅は次第に増加する。
鍵12がエンド位置Endであれば、金属片50は、第1コイル611に最も離反するので、第1基板回路61の出力端子Out1から出力される交流信号の振幅は最小になる。また、鍵12がエンド位置Endであれば、金属片50は、第2コイル622に最も接近するので、第2基板回路62の出力端子Out2から出力される交流信号の振幅は最大になる。
【0057】
このように、第4実施形態において、奇数番目の第1基板回路61の出力端子Out1から出力される交流信号を整流および平滑化した信号の電圧から、当該奇数番目に次に続く偶数番目の第2基板回路62の出力端子Ou2から出力される交流信号を整流および平滑化した信号の電圧を差し引いた信号Dの電圧は、
図12に示される通りとなる。
図12に示される特性は、
図8に示される特性と比較して、金属片50の変位量を検出することできる範囲が狭くなる。
しかしながら、例えば第1基板回路61のみでは、押鍵量が大きい領域(x方向の変位量が大きい領域)では、変位量の変化に対する信号Ev1の電圧変化率が小さくなる。また、第2基板回路62のみでは、押鍵量が小さい領域(x方向の変量量が小さい領域)では、変位量の変化に対する信号Ev2の電圧変化率が小さくなる。
これに対して、第4実施形態では、押鍵量が大きい領域でも小さい領域でも変位量の変化に対する信号Dの電圧変化率が大きくなるので、双方の領域において高い検出精度を期待することができる。
【0058】
なお、第4実施形態においても、
図9に示されるような構成によって、複数n個の鍵12の押鍵量Dxを鍵12の識別子に対応付けて操作情報として出力することができる。
【0059】
上述したように、基板回路60、第1基板回路61または第2基板回路62には、基板回路40または金属片50のどちらが対向してもよい。すなわち、基板回路60、第1基板回路61または第2基板回路62には、パッシブコイル401または金属片を含む反応体が対向すればよい。
【0060】
また、以上説明した実施形態等において、第1基板回路61および第2基板回路62の回路特性は必ずしも揃える必要はない。
例えば、第2基板回路62における抵抗素子613の抵抗値が大きくなると、Q値が大きくなり、信号Ev2の電圧では、
図12において(e)で示されるように、変位量が大きい領域において、変位量に対する電圧変化率が大きくなる。このため、信号Dでは、(f)で示されるように、小さな変位量に対して電圧が大きく変化するので、この領域において変位量の検出精度が向上する。
なお、特に図示しないが、反対に、第2基板回路62における抵抗素子613の抵抗値が小さくなると、Q値が小さくなり、変位量が大きい領域において、変位量に対する電圧変化率が小さくなる。
また、ここでは、第2基板回路62における抵抗素子613について説明したが、第1基板回路61の素子を変更して変位量が小さい領域における電圧変化率を変更してもよい。
【0061】
実施形態等において、例えば第1基板回路61を多層基板として、第1コイル611を複数層の重ね合わせで構成してもよい。同様に、第2基板回路62を多層基板として、第2コイル622を複数層の重ね合わせで構成してもよい。
このようにコイルを複数層の重ね合わせで構成すれば、単層と比較して、より遠くまで磁界が発生するので、検出範囲の拡大を図ることができる。
【0062】
また、操作子の一例として鍵12を挙げて説明したが、鍵12に限られず、例えばスライダーに適用して、当該スライダーの変位量を検出してもよい。
【0063】
以上の記載から、例えば以下のように本発明の好適な態様が把握される。なお、各態様の理解を容易にするために、以下では、図面の符号を便宜的に括弧書で併記するが、本発明を図示の態様に限定する趣旨ではない。
【0064】
本開示のひとつの態様(態様1)に係る変位量検出装置は、可動部材の変位量を検出する変位量検出装置であって、前記可動部材に設けられた金属片またはパッシブコイルを含む反応体と、交流信号の供給により磁界を発生する第1コイルを含み、前記反応体との距離に応じた振幅の第1検出信号を出力する第1基板回路と、前記交流信号の供給により磁界を発生する第2コイルを含み、前記反応体との距離に応じた振幅の第2検出信号を出力する第2基板回路と、前記第1検出信号の振幅と前記第2検出信号の振幅との差分を出力する差分出力回路と、を有する。
【0065】
態様1において、第1コイルまたは第2コイルで発生した磁界を反応体が遮ると、反応体の位置に応じて、第1検出信号の振幅および第2検出信号の振幅の双方が背反的に変化する。具体的には、可動部材に設けられた反応体が第1コイルに接近し、第2コイルから離反すれば、第1検出信号の振幅が大きくなり、第2検出信号の振幅が小さくなる。逆に、反応体が第1コイルから離反し、第2コイルに接近すれば、第1検出信号の振幅が小さくなり、第2検出信号の振幅が大きくなる。背反的に変化する第1検出信号の振幅と第2検出信号の振幅との差分を求める構成によれば、1つの基板回路(コイル)だけの検出信号だけを用いて変位量を算出する構成と比較して、検出範囲を確保しつつ、振幅の差分と変位量との線形性を改善することができる。
【0066】
なお、差分出力回路は、第1検出信号を整流した第1整流信号と第2検出信号を整流した第2整流信号との差分を出力してもよいし、第1検出信号を整流した第1整流信号の電圧デジタル値と第2検出信号を整流した第2整流信号の電圧デジタル値との差分を出力してもよい。
【0067】
態様1の具体例である態様2では、前記第1コイルは、前記第1基板回路の基板面において渦巻き状に形成され、前記第2コイルは、前記第2基板回路の基板面において渦巻き状に形成される。
態様2によれば、第1コイルおよび第2コイルが基板面に設けられるので、コイルを設置するためのスペースが少なくて済む。
【0068】
態様2の具体例である態様3では、前記第1基板回路と前記第2基板回路とは、前記基板面に沿った第1方向で離間して設けられ、平面視で前記反応体の一部または全部が、前記第1方向に沿って、前記第1コイルまたは前記第2コイルに重なる範囲で変位する。
態様3によれば、第1コイルと第2コイルとの並設方向で移動する反応体の変位量を検出することができる。
【0069】
態様2の別の具体例である態様4では、前記第1基板回路と前記第2基板回路とは、前記基板面の鉛直方向の第2方向に沿って離間して設けられ、前記反応体は、前記第2方向に沿って、前記第1基板回路と前記第2基板回路との間の範囲で変位する。
態様4によれば、第1コイルと第2コイルとの間で移動する反応体の変位量を検出することができる。
【0070】
態様1の別の具体例である態様5では、前記可動部材、前記第1基板回路および前記第2基板回路の複数組であり、前記交流信号の供給および前記差分の出力を、前記複数組の前記第1基板回路および前記第2基板回路のうち1組を時分割で選択して実行する。
差分出力回路が、第1基板回路および第2基板回路の複数組で共用されるので、差分出力回路が、第1基板回路および第2基板回路の各組に設けられる構成と比較して、構成の簡易化を図ることができる。
【0071】
態様5の具体例である態様6では、前記交流信号を、前記複数組の前記第1基板回路または前記第2基板回路に時分割で分配するデマルチプレクサと、前記デマルチプレクサにより交流信号が供給された第1基板回路からの第1検出信号または第2基板回路からの第2検出信号を時分割で選択して、前記差分出力回路に出力するマルチプレクサとを含む。
態様6によれば、交流信号の時分割供給がデマルチプレクサで実現され、差分を出力するための第1検出信号および第2検出信号の時分割選択がマルチプレクサで実現される。
【0072】
態様1または態様2の具体例である態様7では、前記第1基板回路のQ値と前記第2基板回路のQ値とが異なる。Q値が異なると、可動部材が第1基板回路寄りに位置する場合と、可動部材が第2基板回路寄りに位置する場合とで、変位量に対する振幅の差分の傾きが異なることになる。このため、態様7によれば、反応体が記第1基板回路または第2基板回路のいずれかに接近したときの位置検出精度を高めることができる。
【0073】
また、本開示の別の態様8に係る変位量検出装置は、可動部材の変位量を検出する変位量検出装置であって、前記可動部材に設けられた金属片またはパッシブコイルを含む反応体と、交流信号の供給により磁界を発生するコイルを含み、前記反応体との距離に応じた振幅の検出信号を出力する基板回路と、前記コイルは、前記基板回路の基板面において渦巻き状に形成され、前記基板回路は、前記コイルを含んだ反共振回路である。
【0074】
本開示のひとつの態様9に係る変位量検出方法は、金属片またはパッシブコイルを含む反応体が設けられた可動部材の変位量を検出する変位量検出方法であって、第1コイルに交流信号を供給し、前記反応体との距離に応じた振幅の第1検出信号を生成し、第2コイルに交流信号を供給し、前記反応体との距離に応じた振幅の第2検出信号を生成し、前記第1検出信号の振幅と前記第2検出信号の振幅との差分を出力する。
【0075】
本開示のひとつの態様10に係る操作子の操作量出力装置は、演奏動作に応じて変位する操作子と、前記操作子に設けられた金属片またはパッシブコイルを含む反応体と、交流信号の供給により磁界を発生する第1コイルを含み、前記反応体との距離に応じた振幅の第1検出信号を出力する第1基板回路と、前記交流信号の供給により磁界を発生する第2コイルを含み、前記反応体との距離に応じた振幅の第2検出信号を出力する第2基板回路と、前記第1検出信号の振幅と前記第2検出信号の振幅との差分を出力する差分出力回路と、前記差分に基づいて前記操作子の操作情報を出力する情報処理回路と、を有する。
【0076】
また、本開示の別の態様に係る変位量検出装置は、
可動部材に設けられた金属片またはパッシブコイルを含む反応体と、
交流信号の供給により磁界を発生するコイルを含み、前記反応体との距離に応じた振幅の検出信号を出力する基板回路と、
前記コイルは、前記基板回路の基板面において渦巻き状に形成され、
平面視で前記反応体の一部または全部が、前記コイルに重なる範囲で変位する。
【符号の説明】
【0077】
1…変位量検出装置、2…操作情報出力装置、10…鍵盤装置、12…鍵、50…金属片、61…第1基板回路、62…第2基板回路、81、82…整流回路、71…デマルチプレクサ、72…マルチプレクサ、90…差分出力回路、401…コイル、611…第1コイル、612…第2コイル。