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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023172764
(43)【公開日】2023-12-06
(54)【発明の名称】検出システムおよび楽器
(51)【国際特許分類】
   G10H 1/34 20060101AFI20231129BHJP
   G01B 7/00 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
G10H1/34
G01B7/00 101E
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022084803
(22)【出願日】2022-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】000004075
【氏名又は名称】ヤマハ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003177
【氏名又は名称】弁理士法人旺知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥山 福太郎
【テーマコード(参考)】
2F063
5D478
【Fターム(参考)】
2F063AA02
2F063BA30
2F063DA01
2F063DA05
2F063GA05
5D478BC24
(57)【要約】
【課題】可動部材の位置の特定に利用されるコイルの配置に関する制約を緩和する。
【解決手段】信号生成部27は、駆動領域Q-1と駆動領域Q-2と駆動領域Q-3とがX軸の方向に順番に配列された駆動面Faを含む。検出コイルLb-1は、巻回軸cがX軸に沿う状態で鍵に設置され、平面視で駆動領域Q-1と駆動領域Q-2との間において、Z軸の方向に鍵とともに移動する。検出コイルLb-2は、巻回軸cがX軸に沿う状態で鍵に設置され、平面視で駆動領域Q-2と駆動領域Q-3との間において、Z軸の方向に鍵とともに移動する。信号生成部27は、第1駆動期間において、駆動領域Q-1と駆動領域Q-2とにわたる磁場B-1を発生することで、検出コイルLb-1と駆動面Faとの距離に応じた検出信号D-1を生成し、第1駆動期間とは別個の第2駆動期間において、駆動領域Q-2と駆動領域Q-3とにわたる磁場を発生することで、検出コイルLb-2と駆動面Faとの距離に応じた検出信号D-2を生成する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1駆動領域と第2駆動領域と第3駆動領域とが第1方向に順番に配列された駆動面を含む信号生成部と、
巻回軸が前記第1方向に沿う状態で第1可動部材に設置され、平面視で前記第1駆動領域と前記第2駆動領域との間において、前記第1方向に交差する第2方向に前記第1可動部材とともに移動する第1検出コイルと、
巻回軸が前記第1方向に沿う状態で第2可動部材に設置され、平面視で前記第2駆動領域と前記第3駆動領域との間において、前記第2可動部材とともに前記第2方向に移動する第2検出コイルとを具備し、
前記信号生成部は、
第1駆動期間において、前記第1駆動領域と前記第2駆動領域とにわたる磁場を発生することで、前記第1検出コイルと前記駆動面との距離に応じた第1検出信号を生成し、
前記第1駆動期間とは別個の第2駆動期間において、前記第2駆動領域と前記第3駆動領域とにわたる磁場を発生することで、前記第2検出コイルと前記駆動面との距離に応じた第2検出信号を生成する
検出システム。
【請求項2】
前記信号生成部は、
第1駆動信号から前記第1検出信号を生成する第1駆動コイルと、
第2駆動信号から前記第2検出信号を生成する第2駆動コイルとを含み、
前記第1駆動コイルは、
前記第1駆動領域内に設置され、第1電流方向に電流が流れる第1部分と、
前記第2駆動領域内に設置され、前記第1電流方向とは反対の第2電流方向に電流が流れる第2部分とを含み、
前記第2駆動コイルは、
前記第2駆動領域内に設置され、第3電流方向に電流が流れる第3部分と、
前記第3駆動領域内に設置され、前記第3電流方向とは反対の第4電流方向に電流が流れる第4部分とを含む
請求項1の検出システム。
【請求項3】
前記第2部分と前記第3部分とは平面視で相互に重複する
請求項2の検出システム。
【請求項4】
駆動回路をさらに具備し、
前記信号生成部は、
前記第1駆動領域内に設置された第1駆動コイルと、
前記第2駆動領域内に設置された第2駆動コイルと、
前記第3駆動領域内に設置された第3駆動コイルとを含み、
前記駆動回路は、
前記第1駆動期間において、
前記第1駆動コイルに第1電流方向の電流が流れ、かつ、前記第2駆動コイルに前記第1電流方向とは反対の第2電流方向の電流が流れるように、前記第1駆動コイルと前記第2駆動コイルとを電気的に接続し、前記第1駆動コイルおよび前記第2駆動コイルに第1駆動信号を供給することで前記第1検出信号を生成し、
前記第2駆動期間において、
前記第2駆動コイルに第3電流方向の電流が流れ、かつ、前記第3駆動コイルに前記第3電流方向とは反対の第4電流方向の電流が流れるように、前記第2駆動コイルと前記第3駆動コイルとを電気的に接続し、前記第2駆動コイルおよび前記第3駆動コイルに第2駆動信号を供給することで前記第2検出信号を生成する
請求項1の検出システム。
【請求項5】
利用者による演奏操作に応じて移動する第1可動部材および第2可動部材と、
第1駆動領域と第2駆動領域と第3駆動領域とが第1方向に順番に配列された駆動面を含む信号生成部と、
巻回軸が前記第1方向に沿う状態で前記第1可動部材に設置され、平面視で前記第1駆動領域と前記第2駆動領域との間において、前記第1方向に交差する第2方向に前記第1可動部材とともに移動する第1検出コイルと、
巻回軸が前記第1方向に沿う状態で前記第2可動部材に設置され、平面視で前記第2駆動領域と前記第3駆動領域との間において、前記第2可動部材とともに前記第2方向に移動する第2検出コイルとを具備し、
前記信号生成部は、
第1駆動期間において、前記第1駆動領域と前記第2駆動領域とにわたる磁場を発生することで、前記第1検出コイルと前記駆動面との距離に応じた第1検出信号を生成し、
前記第1駆動期間とは別個の第2駆動期間において、前記第2駆動領域と前記第3駆動領域とにわたる磁場を発生することで、前記第2検出コイルと前記駆動面との距離に応じた第2検出信号を生成する
楽器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、可動部材の位置を特定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
可動部材の位置を特定するための各種の技術が従来から提案されている。例えば特許文献1には、鍵盤楽器の本体に設置された能動共振回路と、各鍵に設置された受動共振回路とを具備する検出システムが開示されている。能動共振回路は、周期信号の供給により磁場を発生するコイルを含み、当該コイルと受動共振回路のコイルとの距離に応じた検出信号を生成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2019/122867号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の構成においては、能動共振回路のコイルと受動共振回路のコイルとが相互に対向する必要がある。すなわち、能動共振回路のコイルと受動共振回路のコイルとの位置関係、または受動共振回路のコイルが移動する方向が制約される、という課題がある。以上の事情を考慮して、本開示のひとつの態様は、可動部材の位置の特定に利用されるコイルの配置に関する制約を緩和することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決するために、本開示のひとつの態様に係る検出システムは、第1駆動領域と第2駆動領域と第3駆動領域とが第1方向に順番に配列された駆動面を含む信号生成部と、巻回軸が第1方向に沿う状態で第1可動部材に設置され、平面視で前記第1駆動領域と前記第2駆動領域との間において、前記第1方向に交差する第2方向に前記第1可動部材とともに移動する第1検出コイルと、巻回軸が前記第1方向に沿う状態で第2可動部材に設置され、平面視で前記第2駆動領域と前記第3駆動領域との間において、前記第2可動部材とともに前記第2方向に移動する第2検出コイルとを具備し、前記信号生成部は、第1駆動期間において、前記第1駆動領域と前記第2駆動領域とにわたる磁場を発生することで、前記第1検出コイルと前記駆動面との距離に応じた第1検出信号を生成し、前記第1駆動期間とは別個の第2駆動期間において、前記第2駆動領域と前記第3駆動領域とにわたる磁場を発生することで、前記第2検出コイルと前記駆動面との距離に応じた第2検出信号を生成する。
【0006】
本開示のひとつの態様に係る楽器は、利用者による演奏操作に応じて移動する第1可動部材および第2可動部材と、第1駆動領域と第2駆動領域と第3駆動領域とが第1方向に順番に配列された駆動面を含む信号生成部と、巻回軸が第1方向に沿う状態で前記第1可動部材に設置され、平面視で前記第1駆動領域と前記第2駆動領域との間において、前記第1方向に交差する第2方向に前記第1可動部材とともに移動する第1検出コイルと、
巻回軸が前記第1方向に沿う状態で前記第2可動部材に設置され、平面視で前記第2駆動領域と前記第3駆動領域との間において、前記第2可動部材とともに前記第2方向に移動する第2検出コイルとを具備し、前記信号生成部は、第1駆動期間において、前記第1駆動領域と前記第2駆動領域とにわたる磁場を発生することで、前記第1検出コイルと前記駆動面との距離に応じた第1検出信号を生成し、前記第1駆動期間とは別個の第2駆動期間において、前記第2駆動領域と前記第3駆動領域とにわたる磁場を発生することで、前記第2検出コイルと前記駆動面との距離に応じた第2検出信号を生成する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態における鍵盤楽器の構成を例示するブロック図である。
図2】鍵盤楽器の構成を例示する模式図である。
図3】磁場発生部および被検出部の回路図である。
図4】被検出部の平面図である。
図5図4におけるa-a線の断面図である。
図6】信号生成部と各被検出部との関係を例示する斜視図である。
図7】信号生成部と各被検出部と各鍵との関係を例示する平面図である。
図8】検出システムの動作の説明図である。
図9】信号生成部の構成を例示する平面図である。
図10図9におけるb-b線の断面図である。
図11】駆動回路の構成を例示するブロック図である。
図12】制御処理のフローチャートである。
図13】相互に隣合う2個の鍵の各々の位置を特定するための動作の説明図である。
図14】相互に隣合う2個の鍵の各々の位置を特定するための動作の説明図である。
図15】第2実施形態における信号生成部の平面図である
図16】第2実施形態において1個の鍵の位置を検出する動作の説明図である。
図17】第2実施形態において相互に隣合う2個の鍵の各々の位置を特定するための動作の説明図である。
図18】第2実施形態において相互に隣合う2個の鍵の各々の位置を特定するための動作の説明図である。
図19】第3実施形態における信号生成部の平面図である。
図20図19におけるc-c線の断面図である。
図21】第3実施形態の変形例における検出システムの断面図である。
図22】第3実施形態の変形例における検出システムの断面図である。
図23】変形例における信号生成部と各被検出部との関係を例示する斜視図である。
図24】変形例における信号生成部と各被検出部との関係を例示する斜視図である。
図25】変形例における打弦機構の模式図である。
図26】変形例におけるペダル機構の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
A:第1実施形態
図1は、本開示の第1実施形態に係る鍵盤楽器100の構成を例示するブロック図である。鍵盤楽器100は、鍵盤ユニット20と制御システム30と放音システム40とを具備する電子楽器である。なお、以下の説明においては、相互に直交する3軸(X軸,Y軸,Z軸)を想定する。X軸は、鍵盤楽器100の左右方向(幅方向)に延在する軸線である。Y軸は、鍵盤楽器100の前後方向(奥行方向)に延在する軸線である。すなわち、XY平面は水平面に平行である。Z軸は、鍵盤楽器100の上下方向(鉛直方向)に延在する軸線である。なお、X軸の方向は、「第1方向」の一例である。
【0009】
鍵盤ユニット20は、利用者による演奏操作を受付ける入力機器であり、鍵盤21と検出システム25とを具備する。鍵盤21は、相異なる音高に対応するN個の鍵22-1~22-Nで構成される(Nは2以上の自然数)。N個の鍵22-1~22-Nは、複数の白鍵と複数の黒鍵とを含み、X軸に沿って配列される。各鍵22-n(n=1~N)は、Y軸に沿う長尺状に構成され、利用者による演奏操作に応じてZ軸の方向に移動する可動部材である。演奏操作は、押鍵または離鍵である。検出システム25は、Z軸の方向における各鍵22-nの位置P-nを特定する。
【0010】
制御システム30は、検出システム25による検出の結果に応じた音響信号Vを生成する。音響信号Vは、利用者が操作した鍵22-nに対応する音高の楽音を表す信号である。なお、制御システム30は、鍵盤楽器100とは別体で構成されてもよい。例えばスマートフォン、タブレット端末またはパーソナルコンピュータ等の汎用の情報処理装置が、制御システム30として利用されてもよい。
【0011】
放音システム40は、音響信号Vが表す楽音を放射する。例えば単数または複数のスピーカ、または利用者の頭部に装着されるヘッドホン(イヤホン)が、放音システム40として利用される。なお、鍵盤楽器100とは別体で構成された放音システム40が、鍵盤楽器100に有線または無線により接続されてもよい。
【0012】
図2は、鍵盤楽器100の構成を例示する模式図である。鍵盤21の各鍵22-nは、バランスピン23を支点として支持体24に支持される。支持体24は、鍵盤楽器100の各要素を支持する構造体である。各鍵22-nの先端部は、利用者による演奏操作に応じてZ軸の方向に移動する。検出システム25は、N個の鍵22-1~22-Nの各々の位置P-nを表す観測信号Oを生成する。位置P-nは、例えば鍵22-nの先端部における表面の位置であり、非操作の状態における各鍵22-nの位置を基準とした移動量で表現される。
【0013】
検出システム25は、信号生成部27とN個の被検出部60-1~60-Nと駆動回路70とを具備する。信号生成部27は、支持体24に設置される。すなわち、各信号生成部27の位置は固定である。被検出部60-nは鍵22-n毎に設置される。具体的には、被検出部60は、鍵22-nの底面221に設置される。したがって、Z軸の方向における被検出部60-nの位置は、利用者による演奏操作に応じて変化する。
【0014】
信号生成部27は、相異なる鍵22-nに対応するN個の磁場発生部50-1~50-Nを具備する。N個の磁場発生部50-1~50-Nの各々は、周囲に磁場を発生する駆動コイルLa-nを含む。他方、各被検出部60-nは、検出コイルLb-nを含む。すなわち、駆動コイルLa-nと検出コイルLb-nとの組が鍵22-n毎に設置される。磁場発生部50-nと被検出部60-nとの距離(駆動コイルLa-nと検出コイルLb-nとの距離)は、鍵22-nの位置P-nに応じて変化する。第1実施形態においては、鍵22-nの前端部とバランスピン23との間に被検出部60-nが設置された形態を例示する。したがって、利用者の押鍵により駆動コイルLa-nと検出コイルLb-nとの距離が減少する。駆動回路70は、駆動コイルLa-nと検出コイルLb-nとの距離に応じた信号レベルの観測信号Oを生成する。
【0015】
図3は、任意の1個の鍵22-nに対応する磁場発生部50-nおよび被検出部60-nの電気的な構成を例示する回路図である。磁場発生部50-nは、前述の駆動コイルLa-nのほか、入力端子T1と出力端子T2と抵抗素子Rと容量素子Ca1と容量素子Ca2とを含む共振回路である。抵抗素子Rの一端が入力端子T1に接続され、抵抗素子Rの他端は、容量素子Ca1の一端と駆動コイルLa-nの一端とに接続される。駆動コイルLa-nの他端は、出力端子T2と容量素子Ca2の一端とに接続される。容量素子Ca1の他端と容量素子Ca2の他端とは接地(Gnd)される。
【0016】
被検出部60-nは、検出コイルLb-nと容量素子Cbとを含む共振回路である。検出コイルLb-nの一端と容量素子Cbの一端とが相互に接続され、検出コイルLb-nの他端と容量素子Cbの他端とが相互に接続される。第1実施形態においては、磁場発生部50-nの共振周波数と被検出部60-nの共振周波数とが相等しい周波数に設定される。ただし、磁場発生部50-nの共振周波数と被検出部60-nの共振周波数とは相違してもよい。例えば、磁場発生部50-nの共振周波数は、被検出部60-nの共振周波数に所定の定数を乗算した周波数に設定される。
【0017】
以上の構成において、磁場発生部50-nの入力端子T1に駆動信号W-nが供給される。駆動信号W-nは、周期的に信号レベルが変動する信号である。例えば正弦波または矩形波等の任意の波形の周期信号が駆動信号W-nとして利用される。また、駆動信号W-nの周波数は、磁場発生部50-nおよび被検出部60-nの共振周波数と略同等の周波数に設定される。
【0018】
駆動信号W-nは、入力端子T1と抵抗素子Rとを経由して駆動コイルLa-nに供給される。駆動信号W-nの供給により駆動コイルLa-nに磁場B-nが発生する。駆動コイルLa-nに発生した磁場B-nによる電磁誘導で被検出部60-nの検出コイルLb-nには誘導電流が発生する。すなわち、駆動コイルLa-nの磁場B-nの変化を相殺する方向の磁場が検出コイルLb-nに発生する。検出コイルLb-nに発生する磁場は、駆動コイルLa-nと検出コイルLb-nとの距離に応じて変化する。したがって、駆動コイルLa-nと検出コイルLb-nとの距離に応じた振幅δの検出信号D-nが出力端子T2から出力される。検出信号D-nは、駆動信号Wと同等の周波数の周期信号である。検出信号D-nの振幅δは、鍵22-nの位置P-nに応じて変化する。
【0019】
図4は、被検出部60-nの平面図であり、図5は、図4におけるa-a線の断面図である。各被検出部60-nは、基材61を具備する。基材61は、例えば矩形状に成形された硬質の絶縁基板である。検出コイルLb-nは、基材61の一方の表面に形成された導電パターン621と、基材61の他方の表面に形成された導電パターン622とで構成される。導電パターン621および導電パターン622の各々は、巻回軸cを中心として内周から外周にかけて旋回する渦巻状に形成された導電膜である。巻回軸cは、基材61の表面に垂直な軸線であり、検出コイルLb-nの中心軸に相当する。導電パターン621と導電パターン622とが導通孔Hを介して相互に導通することで検出コイルLb-nが構成される。導通孔Hは、基材61に形成された貫通孔である。また、検出コイルLb-nに接続された容量素子Cbが基材61に実装される。なお、可撓性の絶縁フィルムにより基材61が構成されてもよい。
【0020】
図6は、信号生成部27とN個の被検出部50-1~50-Nとの関係を例示する斜視図である。また、図7は、信号生成部27とN個の被検出部50-1~50-NとN個の鍵22-1~22-Nとの関係を例示する平面図である。
【0021】
信号生成部27は駆動面Faを含む。駆動面Faは、XY平面に平行な平面である。駆動面Faには、(N+1)個の駆動領域Q-1~Q-N+1が画定される。(N+1)個の駆動領域Q-1~Q-N+1は、X軸の方向に以上の順番で配列される。具体的には、駆動領域Q-1は、鍵盤21におけるX軸の負方向の端部に位置し、駆動領域Q-N+1は、鍵盤21におけるX軸の正方向の端部に位置する。
【0022】
図7に例示される通り、鍵盤21の1個の鍵22-nは、駆動領域Q-nと駆動領域Q-n+1とに部分的に重なるように設置される。被検出部60-nの検出コイルLb-nは、Z軸に沿う平面視(以下では単に「平面視」という)において、相互に隣合う駆動領域Q-nと駆動領域Q-n+1との間に位置する。被検出部60-nは、検出コイルLb-nの巻回軸cがX軸に沿う状態で鍵22-nに設置される。すなわち、基材61の板厚方向はX軸に平行である。
【0023】
以上の構成において、検出コイルLb-nは、図6に例示される通り、平面視で駆動領域Q-nと駆動領域Q-n+1との間において、鍵22-nに連動してZ軸の方向に移動する。具体的には、鍵22-nが押鍵されることで検出コイルLb-nはZ軸に沿って駆動面Faに接近し、鍵22-nが離鍵されることで検出コイルLb-nはZ軸に沿って駆動面Faから離間する。
【0024】
図8は、検出システム25の動作の説明図である。検出システム25が動作する期間は、相異なる鍵22-nに対応するN個の駆動期間G-1~G-Nに区分される。各駆動期間G-nは、利用者による押鍵または離鍵の所要時間と比較して充分に短い時間長に設定される。また、駆動信号W-nの周期は、1個の駆動期間G-nの時間長よりも充分に短い。任意の1個の駆動期間G-nは、鍵盤21の1個の鍵22-nの位置P-nを特定するための期間である。すなわち、N個の駆動期間G-1~G-Nの各々において、各鍵22-nの位置P-nが時分割で順次に検出される。N個の駆動期間G-1~G-Nが時間軸上において反復される。
【0025】
各駆動期間G-nにおいては、駆動領域Q-nと駆動領域Q-n+1とにわたる磁場B-nが発生する。図6においては、駆動領域Q-1から駆動領域Q-2に向かう磁場B-1が例示されている。以上の説明の通り、N個の駆動期間G-1~G-Nの各々において、駆動領域Q-nと駆動領域Q-n+1とにわたる磁場B-nが駆動面Fa上に順次に発生する。例えば、駆動期間G-1においては駆動領域Q-1から駆動領域Q-2に向かう磁場B-1が発生し、駆動期間G-2においては駆動領域Q-2から駆動領域Q-3に向かう磁場B-2が発生し、…駆動期間G-Nにおいては駆動領域Q-Nから駆動領域Q-N+1に向かう磁場B-Nが発生する。
【0026】
磁場B-nはX軸に沿う成分を含む。各被検出部60-nの検出コイルLb-nは、磁場B-nを横断するようにZ軸の方向に移動する。したがって、前述の通り、駆動コイルLa-nに発生した磁場B-nによる電磁誘導で検出コイルLb-nには誘導電流が発生する。以上に例示した磁場の変化を利用して、駆動コイルLa-nと検出コイルLb-nとの距離に応じた振幅δの検出信号D-nが生成される。
【0027】
図9は、信号生成部27の詳細な構成を例示する平面図であり、図10は、図9におけるb-b線の断面図である。信号生成部27は、基材51を具備する。基材51は、例えば硬質の絶縁基板である。具体的には、基材51は、N個の磁場発生部50-1~50-NにわたりX軸の方向に長尺な板状部材である。基材51は、駆動面Faと設置面Fbとを含む。駆動面Faと設置面Fbとは相互に反対側の表面である。駆動面Faは、基材51のうち被検出部60-nに対向する表面であり、設置面Fbは、基材51のうち支持体24に対向する表面である。なお、図9および図10においては、抵抗素子Rと容量素子Ca1と容量素子Ca2との図示が便宜的に省略されている。可撓性の絶縁フィルムにより基材51が構成されてもよい。
【0028】
基材51の駆動面Faには導電パターン521が形成される。例えば、駆動面Faの全域を被覆する導電膜のパターニングにより、導電パターン521が形成される。他方、基材51の設置面Fbには導電パターン522が形成される。例えば、設置面Fbの全域を被覆する導電膜のパターニングにより、導電パターン522が形成される。
【0029】
N個の磁場発生部50-1~50-Nのうち奇数番目の各磁場発生部50-n1(n1=1,3,5,…)は駆動面Faに設置される。各磁場発生部50-n1における駆動コイルLa-n1と入力端子T1と出力端子T2とは、駆動面Faの導電パターン521に含まれる。
【0030】
奇数番目の各駆動コイルLa-n1は、第1部分A1と第2部分A2とを含む。第1部分A1と第2部分A2とはX軸の方向に配列する。具体的には、第2部分A2は、第1部分A1からみてX軸の正方向に位置する。第1部分A1は、平面視で内周から外周にかけて反時計回りに旋回する渦巻状に形成される。他方、第2部分A2は、平面視で内周から外周にかけて時計回りに旋回する渦巻状に形成される。第1部分A1の中心と第2部分A2の外周とは電気的に接続される。
【0031】
駆動コイルLa-n1の第1部分A1は駆動領域Q-n1に設置され、当該駆動コイルLa-n1の第2部分A2は駆動領域Q-n1+1に設置される。すなわち、各駆動コイルLa-n1の第1部分A1と第2部分A2とがX軸に沿って交互に配列される。
【0032】
各磁場発生部50-n1は、駆動面Faに設置されたスイッチHaおよびスイッチHbを含む。スイッチHaは、第1部分A1と入力端子T1との間に設置され、両者間の導通/絶縁を切替える。スイッチHbは、第2部分A2と出力端子T2との間に設置され、両者間の導通/絶縁を切替える。
【0033】
以上の構成において、スイッチHaおよびスイッチHbがオン状態に維持された状態で入力端子T1に駆動信号W-n1が供給されると、駆動コイルLa-n1に電流が流れる。第1電流方向α1の電流が第1部分A1に流れる状態においては、第1電流方向α1とは反対の第2電流方向α2の電流が第2部分A2に流れる。すなわち、第1部分A1と第2部分A2とには相互に逆方向の電流が流れる。したがって、第1部分A1および第2部分A2には、相互に逆方向の磁場が発生する。以上の作用により、前述の通り、駆動領域Q-n1と駆動領域Q-n1+1とにわたる磁場B-n1が発生する。したがって、駆動コイルLa-n1と検出コイルLb-n1との距離に応じた振幅δの検出信号D-n1が、スイッチHbを通過して出力端子T2から出力される。
【0034】
他方、N個の磁場発生部50-1~50-Nのうち偶数番目の各磁場発生部50-n2(n1=2,4,6,…)は設置面Fbに設置される。各磁場発生部50-n2における駆動コイルLa-n2と入力端子T1と出力端子T2とは、設置面Fbの導電パターン522に含まれる。
【0035】
駆動コイルLa-n2は、第3部分A3と第4部分A4とを含む。第3部分A3と第4部分A4とはX軸の方向に配列する。具体的には、第4部分A4は、第3部分A3からみてX軸の正方向に位置する。第3部分A3は、平面視で内周から外周にかけて反時計回りに旋回する渦巻状に形成される。他方、第4部分A4は、平面視で内周から外周にかけて時計回りに旋回する渦巻状に形成される。第3部分A3の中心と第4部分A4の外周とは電気的に接続される。
【0036】
駆動コイルLa-n2の第3部分A3は駆動領域Q-n2に設置され、当該駆動コイルLa-n2の第4部分A4は駆動領域Q-n2+1に設置される。すなわち、各駆動コイルLa-n2の第3部分A3と第4部分A4とがX軸に沿って交互に配列される。
【0037】
以上の説明から理解される通り、駆動コイルLa-n1と駆動コイルLb-n2とは平面視で相互に重複する。具体的には、第2部分A2と第3部分A3とが駆動領域Q-n2内において相互に重複し、第1部分A1と第4部分A4とが駆動領域Q-n1内において相互に重複する。したがって、駆動コイルLa-n1と駆動コイルLa-n2とが相互に重複しない構成と比較して、信号生成部27のサイズを低減できる。
【0038】
各磁場発生部50-n2は、設置面Fbに設置されたスイッチHaおよびスイッチHbを含む。スイッチHaは第3部分A3と入力端子T1との間に設置され、両者間の導通/絶縁を切替える。スイッチHbは、第4部分A4と出力端子T2との間に設置され、両者間の導通/絶縁を切替える。
【0039】
以上の構成において、スイッチHaおよびスイッチHbがオン状態に維持された状態で入力端子T1に駆動信号W-n2が供給されると、駆動コイルLa-n2に電流が流れる。第3部分A3に第1電流方向α1の電流が流れる状態においては、第2電流方向α2の電流が第4部分A4に流れる。すなわち、第3部分A3と第4部分A4とには相互に逆方向の電流が流れる。したがって、第3部分A3および第4部分A4には、相互に逆方向の磁場が発生する。以上の作用により、前述の通り、駆動領域Q-n2と駆動領域Q-n2+1とにわたる磁場B-n2が発生する。したがって、駆動コイルLa-n2と検出コイルLb-n2との距離に応じた振幅δの検出信号D-n2が、スイッチHbを通過して出力端子T2から出力される。
【0040】
図11は、駆動回路70の具体的な構成を例示するブロック図である。駆動回路70は、供給回路71と出力回路72とを具備する。供給回路71は、各駆動期間G-nにおいて、磁場発生部50-nのスイッチHaおよびスイッチHbをオン状態に制御したうえで当該磁場発生部50-nに駆動信号W-nを供給する。すなわち、供給回路71は、各磁場発生部50-nに時分割で駆動信号W-nを供給するデマルチプレクサである。磁場発生部50-nは、前述の通り、駆動信号W-nの供給により磁場B-nを発生する。
【0041】
図11の出力回路72は、各磁場発生部50-nから駆動期間G-n毎に出力される検出信号D-nを時間軸上に配列することで観測信号Oを生成するマルチプレクサである。具体的には、出力回路72は、磁場発生部50-nから駆動期間G-n毎に出力される検出信号D-nを整流(全波整流または半波整流)および平滑化し、各駆動期間G-nの平滑化後の信号を時間軸上に配列することで観測信号Oを生成する。以上の説明から理解される通り、観測信号Oは、駆動期間G-n毎に各鍵22-nの位置P-nに応じた信号レベルに設定される。具体的には、駆動コイルLa-nと検出コイルLb-nとが離間するほど観測信号Oの信号レベルは増加する。各駆動期間G-nにおける観測信号Oの信号レベルは、当該駆動期間G-nにおいて磁場発生部50-nが生成する検出信号D-nの信号レベルに相当する。
【0042】
図2の制御システム30は、駆動回路70からから供給される観測信号Oを解析することで各鍵22-nの位置P-nを解析する。制御システム30は、制御装置31と記憶装置32とA/D変換器33と音源回路34と具備するコンピュータシステムで実現される。なお、制御システム30は、単体の装置で実現されるほか、相互に別体で構成された複数の装置でも実現される。
【0043】
制御装置31は、鍵盤楽器100の各要素を制御する単数または複数のプロセッサで構成される。具体的には、例えばCPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、SPU(Sound Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、またはASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の1種類以上のプロセッサにより、制御装置31が構成される。
【0044】
記憶装置32は、制御装置31が実行するプログラムと制御装置31が使用するデータとを記憶する単数または複数のメモリである。記憶装置32は、例えば磁気記録媒体または半導体記録媒体等の公知の記録媒体で構成される。なお、複数種の記録媒体の組合せにより記憶装置32が構成されてもよい。また、鍵盤楽器100に着脱可能な可搬型の記録媒体、または、鍵盤楽器100が通信可能な外部記録媒体(例えばオンラインストレージ)が、記憶装置32として利用されてもよい。
【0045】
A/D変換器33は、駆動回路70から供給される観測信号Oをアナログからデジタルに変換する。音源回路34は、制御装置31から指示された楽音を表す音響信号Vを生成する。具体的には、複数の音高のうち位置P-nが変化した鍵22-nに対応する音高の楽音を表す音響信号Vが生成される。音響信号Vの音量は、例えば位置P-nが変化する速度に応じて制御される。音響信号Vが音源回路34から放音システム40に供給されることで、利用者による演奏操作に応じた楽音が放音システム40から放射される。なお、記憶装置32に記憶されたプログラムを実行することで制御装置31が音源回路34の機能を実現してもよい。すなわち、音響信号Vを生成する要素(音源部)は、汎用の制御装置31により実現されるソフトウェア音源、および専用の電子回路により実現されるハードウェア音源の何れでもよい。
【0046】
図12は、制御装置31が実行する処理(以下「制御処理」という)のフローチャートである。例えば駆動期間G-n毎に制御処理が反復される。制御処理が開始されると、制御装置31は、A/D変換器33による変換後の観測信号Oから各検出信号D-nの信号レベルを特定する(S1)。各駆動期間G-n内の信号レベルは、当該駆動期間G-nにおいて磁場発生部50-nが生成した検出信号D-nの振幅δに対応する電圧値である。すなわち、信号レベルは、駆動期間G-nに対応する1個の鍵22-nの位置P-nに応じた電圧値に設定される。
【0047】
制御装置31は、検出信号D-nの信号レベルから各鍵22-nの位置P-nを特定する(S2)。位置P-nの特定には、信号レベルと位置P-nとを対応付けるテーブルが利用される。なお、制御装置31は、信号レベルを適用した所定の演算により位置P-nを算定してもよい。
【0048】
制御装置31は、各鍵22-nの位置P-nに応じて音源回路34を制御する(S3)。具体的には、制御装置31は、各鍵22-nの位置P-nに応じて押鍵の有無を鍵22-n毎に判定し、利用者が押鍵した鍵22-nに対応する楽音の発音を音源回路34に指示する。音源回路34は、制御装置31から指示された楽音を表す音響信号Vを生成する。
【0049】
図13および図14は、相互に隣合う2個の鍵22-n(22-n1,22-n2)の各々の位置P-nを特定するための動作の説明図である。図13および図14には、駆動領域Q-n1と駆動領域Q-n2と駆動領域Q-n3とが図示されている。駆動領域Q-n1と駆動領域Q-n2と駆動領域Q-n3とは、X軸の正方向に以上の順番で配列する。
【0050】
鍵22-n1に設置された検出コイルLb-n1は、駆動領域Q-n1と駆動領域Q-n2との間において鍵22-n1とともにZ軸の方向に移動する。鍵22-n2に設置された検出コイルLb-n2は、駆動領域Q-n2と駆動領域Q-n3との間において鍵22-n2とともにZ軸の方向に移動する。
【0051】
図13に例示される通り、駆動期間G-n1において、信号生成部27(磁場発生部50-n1)は、駆動領域Q-n1と駆動領域Q-n2とにわたる磁場B-n1を発生することで、検出コイルLb-n1と駆動面Faとの距離に応じた検出信号D-n1を生成する。具体的には、駆動コイルLa-n1は、駆動信号W-n1から検出信号D-n1を生成する。
【0052】
また、図14に例示される通り、駆動期間G-n2において、信号生成部27(磁場発生部50-n2)は、駆動領域Q-n2と駆動領域Q-n3とにわたる磁場B-n2を発生することで、検出コイルLb-n2と駆動面Faとの距離に応じた検出信号D-n2を生成する。具体的には、駆動コイルLa-n2は、駆動信号W-n2から検出信号D-n2を生成する。
【0053】
以上の説明において、駆動領域Q-n1は「第1駆動領域」の一例であり、駆動領域Q-n2は「第2駆動領域」の一例であり、駆動領域Q-n3は「第3駆動領域」の一例である。また、鍵22-n1は「第1可動部材」の一例であり、鍵22-n2は「第2可動部材」の一例である。検出コイルLb-n1は「第1検出コイル」の一例であり、検出コイルLb-n2は「第2検出コイル」の一例である。駆動期間G-n1は「第1駆動期間」の一例であり、駆動期間G-n2は「第2駆動期間」の一例である。
【0054】
以上に説明した通り、第1実施形態においては、相互に隣合う2個の駆動領域Q(Q-n,Q-n+1)を横断するように検出コイルLb-nが移動する。したがって、例えば検出コイルLb-nの巻回軸cが駆動面Faに垂直な構成と比較して、駆動面Fa(駆動コイルLa-n)に対する検出コイルLb-nの移動の方向に関する制約を緩和できる。具体的には、駆動面Faに対する検出コイルLb-nの移動の方向は、相互に隣合う2個の駆動領域Qの間の平面内における任意の方向に設定される。例えば、検出コイルLb-nは、図6の例示の通り、駆動面Faに交差(例えば直交)する方向に移動してもよいし、後掲の図24の例示のように駆動面Faに平行な方向に移動してもよい。
【0055】
なお、特許文献1の構成においては、能動共振回路のコイルと受動共振回路のコイルとが相互に対向するように設置される。しかし、可動部材の位置を特定する精度を向上する観点からは種々の改良の余地がある。第1実施形態においては、検出コイルLb-nと駆動面Faとの距離に応じて検出信号D-nを充分に変化させることが可能である。すなわち、各鍵22-nの位置P-nを高精度に特定できる。また、第1実施形態においては、N個の駆動コイルLa-1~La-Nの各々に選択的に駆動信号W-nを供給する簡便な構成により、各鍵22-nの位置P-nを高精度に特定できる。
【0056】
B:第2実施形態
第2実施形態を説明する。なお、以下に例示する各態様において機能が第1実施形態と同様である要素については、第1実施形態の説明と同様の符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
【0057】
図15は、第2実施形態における信号生成部27の構成を例示する平面図である。信号生成部27における基材51の駆動面Faには、(N+1)個の駆動領域Q-1~Q-N+1が画定される。(N+1)個の駆動領域Q-1~Q-N+1は、X軸の方向に以上の順番で配列される。各駆動領域Q-nには駆動コイルLa-nが設置される。すなわち、(N+1)個の駆動コイルLa-1~La-N+1が、X軸の方向に以上に順番で配列される。
【0058】
(N+1)個の駆動コイルLa-1~La-N+1のうち奇数番目の各駆動コイルLa-n1(n1=1,3,5,…)は、平面視で内周から外周にかけて時計回りに旋回する渦巻状に形成される。他方、(N+1)個の駆動コイルLa-1~La-N+1のうち偶数番目の各駆動コイルLa-n2(n2=2,4,6,…)は、平面視で内周から外周にかけて反時計回りに旋回する渦巻状に形成される。すなわち、巻方向が相互に反対である駆動コイルLa-n1と駆動コイルLa-n2とがX軸に沿って交互に配列される。
【0059】
基材51には、(N+1)個の駆動コイルLa-1~La-N+1の各々について、接続端子T-nとスイッチHa-nとスイッチHb-nとが設置される。各駆動コイルLa-nに対応するスイッチHa-nは、当該駆動コイルLa-nと接続端子T-nとの導通/絶縁を切替える。また、各駆動コイルLa-nに対応するスイッチHb-nは、当該駆動コイルLa-nと次段の接続端子T-n+1との導通/絶縁を切替える。
【0060】
図16に例示される通り、駆動回路70は、各駆動期間G-nにおいて、駆動コイルLa-nに対応するスイッチHa-nおよびスイッチHb-nと、次段の駆動コイルLa-n+1に対応するスイッチHa-n+1およびスイッチHb-n+1とをオン状態に制御する。以上の状態においては、接続端子T-n→スイッチHa-n→駆動コイルLa-n→スイッチHb-n→スイッチHa-n+1→駆動コイルLa_n+1→スイッチHb-n+1→接続端子T-n+1という経路が確立される。以上の状態において、接続端子T-nは図3の入力端子T1として機能し、接続端子T-n+1は図3の出力端子T2として機能する。また、駆動コイルLa-nと駆動コイルLa-n+1との組により、図3の駆動コイルLa-nが構成される。
【0061】
以上の状態において、駆動回路70(供給回路71)は、接続端子T-nに駆動信号W-nを供給する。したがって、駆動信号W-nに応じた電流が駆動コイルLa_nと駆動コイルLa_n+1とに流れる。前述の通り、駆動コイルLa_nと駆動コイルLa_n+1との間で巻方向は反対であるから、駆動コイルLa_nと駆動コイルLa_n+1とには逆方向の電流が流れる。すなわち、駆動コイルLa_nと駆動コイルLa_n+1とには逆方向の磁場が発生する。したがって、第1実施形態と同様に、各駆動期間G-nにおいては、駆動領域Q-nと駆動領域Q-n+1とにわたる磁場B-nが発生する。第1実施形態と同様に、各被検出部60-nの検出コイルLb-nは、磁場B-nを横断するようにZ軸の方向に移動する。したがって、駆動面Faと検出コイルLb-nとの距離に応じた振幅δの検出信号D-nが、接続端子T-n+1(出力端子T2)から出力される。駆動期間G-n毎に以上の動作が反復されることで、第1実施形態と同様に、各検出信号D-nの信号レベルを表す観測信号Oが生成される。観測信号Oの解析により各鍵22-nの位置P-nを特定するための構成および動作は、第1実施形態と同様である。
【0062】
図17および図18は、相互に隣合う2個の鍵22-n(22-n1,22-n2)の各々の位置P-nを特定するための動作の説明図である。図17には、駆動領域Q-n1と駆動領域Q-n2と駆動領域Q-n3とが図示されている。駆動領域Q-n1と駆動領域Q-n2と駆動領域Q-n3とは、X軸の正方向に以上の順番で配列する。駆動領域Q-n1には駆動コイルLa-n1が設置され、駆動領域Q-n2には駆動コイルLa-n2が設置され、駆動領域Q-n3には駆動コイルLa-n3が設置される。
【0063】
図17の駆動期間G-n1において、駆動回路70は、スイッチHa-n1とスイッチHb-n1とスイッチHa-n2とスイッチHb-n2とをオン状態に制御する。すなわち、駆動コイルLa-n1に第1電流方向α1の電流が流れ、かつ、駆動コイルLa-n2に第2電流方向α2の電流が流れるように、駆動コイルLa-n1と駆動コイルLa-n2とが電気的に接続される。
【0064】
以上の状態において、駆動回路70は、接続端子T-n1に駆動信号W-n1を供給する。駆動信号W-n1に応じた電流が駆動コイルLa-n1および駆動コイルLa-n2に流れることで、駆動面Faと検出コイルLb-n1との距離に応じた検出信号D-n1が接続端子T-n3に出力される。すなわち、駆動回路70は、駆動コイルLa-n1および駆動コイルLa-n2に駆動信号W-n1を供給することで検出信号D-n1を生成する。
【0065】
他方、駆動期間G-n1の直後の駆動期間G-n2において、駆動回路70は、スイッチHa-n2とスイッチHb-n2とスイッチHa-n3とスイッチHb-n3とをオン状態に制御する。すなわち、駆動コイルLa-n2に第3電流方向α3の電流が流れ、かつ、駆動コイルLa-n3に第4電流方向α4の電流が流れるように、駆動コイルLa-n2と駆動コイルLa-n3とが電気的に接続される。第3電流方向α3は、第1電流方向α1および第2電流方向α2の一方と同じ方向であり、第4電流方向α4は、第1電流方向α1および第2電流方向α2の他方と同じ方向である。
【0066】
以上の状態において、駆動回路70は、接続端子T-n2に駆動信号W-n2を供給する。駆動信号W-n2に応じた電流が駆動コイルLa-n2および駆動コイルLa-n3に流れることで、駆動面Faと検出コイルLb-n2との距離に応じた検出信号D-n2が出力される。すなわち、駆動回路70は、駆動コイルLa-n2および駆動コイルLa-n3に駆動信号W-n2を供給することで検出信号D-n2を生成する。
【0067】
以上の説明において、駆動領域Q-n1は「第1駆動領域」の一例であり、駆動領域Q-n2は「第2駆動領域」の一例であり、駆動領域Q-n3は「第3駆動領域」の一例である。また、駆動コイルLa-n1は「第1駆動コイル」の一例であり、駆動コイルLa-n2は「第2駆動コイル」の一例であり、駆動コイルLa-n3は「第3駆動コイル」の一例である。駆動期間G-n1は「第1駆動期間」の一例であり、駆動期間G-n2は「第2駆動期間」の一例である。
【0068】
第2実施形態においても第1実施形態と同様の効果が実現される。また、第2実施形態においては、駆動期間G-n1における鍵22-n1の位置P-n1の特定と、駆動期間G-n2における鍵22-n2の位置P-n2の特定とに、駆動コイルLa-n2が兼用される。したがって、各鍵22-nの位置P-nの特定に別個の駆動コイルLa-nが使用される形態(例えば第1実施形態)と比較して、各鍵22-nの位置P-nの特定に必要な駆動コイルLa-nの個数を削減できる。したがって、例えば信号生成部27のサイズを低減できる。
【0069】
C:第3実施形態
図19は、第3実施形態における信号生成部27の平面図である。また、図20は、図19におけるc-c線の断面図である。図20には、被検出部60-nおよび鍵22-nも便宜的に併記されている。
【0070】
信号生成部27は、相異なる駆動領域Q(Q-1~Q-N+1)に設置された(N+1)個の駆動コイルLa-1~La-N+1を具備する。(N+1)個の駆動コイルLa-1~La-N+1は、平面視でX軸の方向に配列される。各鍵22-nに設置された検出コイルLb-nは、第1実施形態および第2実施形態と同様に、駆動領域Q-nと駆動領域Q-N+1との間において鍵22-nとともにZ軸の方向に移動する。
【0071】
第3実施形態の基材51は、第1層551と第2層552と第3層553と第4層554とが以上の順番でZ軸の正方向に積層された多層基板である。第1層551と第2層552と第3層553と第4層554との各々は、例えば硬質の絶縁基板である。
【0072】
第1層551の表面には複数(N/2個)の導電パターン561が形成される。第2層552の表面には複数(N/2個)の導電パターン562が形成される。第3層553の表面には複数(N/2個)の導電パターン563が形成される。第4層554の表面には複数(N/2個)の導電パターン564が形成される。各導電パターン56(561~564)は、内周から外周にかけて旋回する渦巻状に形成される。導電パターン561と導電パターン563とは、平面視で相互に重複および導通する。導電パターン562と導電パターン564とは、平面視で相互に重複および導通する。
【0073】
N個の駆動コイルLa-1~La-Nのうち奇数番目の各駆動コイルLa-n1(n1=1,3,5,…)は、導電パターン561と導電パターン563との積層で構成される。N個の駆動コイルLa-1~La-Nのうち偶数番目の各駆動コイルLa-n2(n2=2,4,6,…)は、導電パターン562と導電パターン564との積層で構成される。(N+1)個の駆動コイルLa-1~La-N+1の相互的な関係は、第1実施形態(図9)または第2実施形態(図15)と同様である。また、駆動回路70が各駆動コイルLa-1~La-N+1を駆動する動作も、第1実施形態または第2実施形態と同様である。
【0074】
X軸の方向における各導電パターン56の寸法は、X軸の方向に隣合う2個の導電パターン56の間隔を上回る。したがって、導電パターン561および563と、導電パターン562および564とは、平面視で部分的に相互に重複する。具体的には、X軸の方向における導電パターン561および563の一部と、X軸の方向における導電パターン562および564の一部とは、平面視で相互に重複する。以上の説明から理解される通り、X軸の方向に隣合う駆動コイルLa-n1と駆動コイルLa-n2とは、平面視で部分的に相互に重複する。
【0075】
駆動コイルLa-n1と駆動コイルLa-n2とが相互に重複しない構成では、各駆動コイルLa-nを設置できる面積が制限されるから、充分な強度の磁場B-nを各駆動コイルLa-nに発生させることが困難である場合がある。第3実施形態によれば、駆動コイルLa-n1と駆動コイルLa-n2とが平面視で部分的に相互に重複するから、各駆動コイルLa-n1に充分な強度の磁場B-nを発生させることが可能である。
【0076】
なお、以上の説明においては、第1実施形態および第2実施形態と同様に、検出コイルLb-nの巻回軸cがX軸に沿う形態を例示したが、駆動コイルLa-n1と駆動コイルLa-n2とが平面視で相互に重複する構成を適用できるのは、以上の形態に限定されない。例えば、図21に例示される通り、駆動コイルLa-nに対向するように検出コイルLb-nが設置された形態においても、駆動コイルLa-n1と駆動コイルLa-n2とが平面視で相互に重複する構成は採用される。図21の構成における検出コイルLb-nは、巻回軸cがZ軸に沿う状態で鍵22-nに設置される。すなわち、検出コイルLb-nは、利用者による演奏操作に応じて鍵22-nとともに巻回軸cの方向に移動する。
【0077】
図21の構成において、駆動回路70の供給回路71は、各駆動コイルLa-nに対して駆動期間G-n毎に時分割で駆動信号W-nを供給する。また、出力回路72は、各駆動期間G-nにおいて駆動コイルLa-nから出力される検出信号D-nを取得する。検出信号D-nの信号レベルは、駆動コイルLa-nと検出コイルLb-nとの距離に応じて変動する。したがって、制御システム30は、第1実施形態および第2実施形態と同様に、出力回路72が出力する観測信号Oを解析することで各鍵22-nの位置P-nを特定できる。
【0078】
また、図20においては、奇数番目の各駆動コイルLa-n1が導電パターン561と導電パターン563との積層で構成され、偶数番目の各駆動コイルLa-n2が導電パターン562と導電パターン564との積層で構成される形態を例示したが、各駆動コイルLa-nの積層構造は以上の例示に限定されない。例えば、図22に例示される通り、奇数番目の各駆動コイルLa-n1が導電パターン561と導電パターン562との積層で構成され、偶数番目の各駆動コイルLa-n2が導電パターン563と導電パターン564との積層で構成されてもよい。すなわち、単層(551~554)を挟んで相互に隣合う導電パターンの積層により、各駆動コイルLa-nが構成されてもよい。
【0079】
図22の形態によれば、駆動コイルLa-n1を構成する導電パターン561および導電パターン562の位置の誤差を低減し、駆動コイルLa-n2を構成する導電パターン563および導電パターン564の位置の誤差を低減することが可能である。また、導電パターン561および導電パターン562が形成された第1層551と、導電パターン563および導電パターン564が形成された第3層553とを、第2層552を挟んで相互に接合することで、基材51を容易に製造できるという利点もある。第4層554は省略されてよい。
【0080】
なお、図22においては、検出コイルLb-nの巻回軸cがX軸に沿う形態を例示したが、巻回軸cがZ軸に沿う状態で検出コイルLb-nが鍵22-nに設置される図21の構成においても同様に、奇数番目の各駆動コイルLa-n1が導電パターン561と導電パターン562との積層で構成され、偶数番目の各駆動コイルLa-n2が導電パターン563と導電パターン564との積層で構成されてもよい。
【0081】
D:変形例
以上に例示した各態様に付加される具体的な変形の態様を以下に例示する。前述の実施形態および以下に例示する変形例から任意に選択された複数の態様を、相互に矛盾しない範囲で適宜に併合してもよい。
【0082】
(1)図23に例示される通り、相異なる被検出部60-nに対応するN個のスリット58-1~58-Nが、信号生成部27の基材51に形成されてもよい。スリット50-nは、被検出部60-nが挿入可能な寸法に形成された長尺の貫通孔である。すなわち、鍵22-nが最下端まで押鍵された状態においては、被検出部60-nの一部がスリット50-nに挿入された状態となる。図23の構成によれば、各被検出部60-nと信号生成部27との衝突の可能性を低減できる。
【0083】
(2)前述の各形態においては、各被検出部60-nがZ軸の方向に移動する形態を例示したが、各被検出部60-nが駆動面Faに対して移動する方向は、以上の例示に限定されない。例えば、図24に例示される通り、各鍵22-nに対する演奏操作に応じて被検出部60-nがY軸の方向に移動する形態も想定される。すなわち、駆動面Faに平行な方向に各被検出部60-nが移動してもよい。駆動面Fa上には駆動領域Q-nと駆動領域Q-n+1とにわたり磁場B-nが形成されるから、図24の構成においても、第1実施形態および第2実施形態と同様に、被検出部60-nは磁場B-nを横断するように移動する。以上の例示から理解される通り、駆動領域Q-nと駆動領域Q-n+1とにわたる磁場B-nを横断するように、被検出部60-nが駆動面Faに対して移動する形態が好適である。駆動コイルLa-n(被検出部60-n)は、X軸に交差する方向に鍵22-nとともに移動する。X軸の方向は「第1方向」の一例であり、Y軸またはZ軸の方向は「第2方向」の一例である。
【0084】
(3)第1実施形態においては、奇数番目の駆動コイルLa-n1と偶数番目の駆動コイルLb-n2とが平面視で相互に重複する形態を例示したが、駆動コイルLa-n1と駆動コイルLa-n1とが相互に重複しない形態も想定される。また、駆動コイルLa-n1と駆動コイルLa-n1とが相互に重複しない形態においては、駆動コイルLa-n1と駆動コイルLa-n1との双方が、基材51における駆動面Faおよび設置面Fbの一方に形成されてもよい。
【0085】
(4)前述の各形態においては、鍵盤楽器100の鍵22-nの位置Pを特定する構成を例示したが、検出システム25により位置Pが検出される可動部材は鍵22-nに限定されない。可動部材の具体的な態様を以下に例示する。
【0086】
[態様A]
図25は、鍵盤楽器100の打弦機構91に検出システム25を適用した構成の模式図である。打弦機構91は、アコースティックピアノと同様に、鍵盤21の各鍵22-nの移動に連動して弦(図示略)を打撃するアクション機構である。具体的には、打弦機構91は、回動により打弦可能なハンマ911と、鍵22-nの移動に連動してハンマ911を回動させる伝達機構912(例えばウィペン,ジャックまたはレペティションレバー等)とを、鍵22-n毎に具備する。以上の構成において、検出システム25は、ハンマ911の位置を検出する。具体的には、被検出部60-nがハンマ911(例えばハンマシャンク)に設置される。他方、信号生成部27は支持部材913に設置される。支持部材913は、例えば打弦機構91を支持する構造体である。なお、打弦機構91におけるハンマ911以外の部材に被検出部60-nを設置してもよい。
【0087】
[態様B]
図26は、鍵盤楽器100のペダル機構92に検出システム25を適用した構成の模式図である。ペダル機構92は、利用者が足で操作するペダル921と、ペダル921を支持する支持部材922と、鉛直方向の上方にペダル921を付勢する弾性体923とを具備する。以上の構成において、検出システム25はペダル921の位置を検出する。具体的には、被検出部60-nがペダル921の底面に設置される。他方、信号生成部27は、被検出部60-nに対向するように支持部材922に設置される。なお、ペダル機構92が利用される楽器は鍵盤楽器100に限定されない。例えば打楽器等の任意の楽器にも同様の構成のペダル機構92が利用される。
【0088】
なお、図26においては鍵盤楽器100のペダル機構92を例示したが、電気弦楽器(例えば電気ギター)等の電気楽器に使用されるペダル機構にも図26と同様の構成が採用される。電気楽器に使用されるペダル機構は、例えばディストーションまたはコンプレッサー等の各種の音響効果の調整のために利用者が操作するエフェクトペダルである。
【0089】
また、前述の各形態においては鍵盤楽器100の各鍵22-nを検出する構成を例示したが、検出システム25による検出の対象は以上の例示に限定されない。例えば木管楽器(例えばクラリネットまたはサクソフォン)や金管楽器(例えばトランペットまたはトロンボーン)等の管楽器の演奏時に利用者が操作する操作子を、検出システム25により検出してもよい。
【0090】
以上の例示から理解される通り、検出システム25による検出の対象は、演奏操作に応じて移動する可動部材として包括的に表現される。可動部材は、利用者が直接的に操作する鍵22-nまたはペダル921等の演奏操作子のほか、演奏操作子に対する操作に連動して移動するハンマ911等の構造体を含む。ただし、本開示における可動部材は、演奏操作に応じて移動する部材に限定されない。すなわち、可動部材は、移動を発生させる契機に関わらず、移動可能な部材として包括的に表現される。
【0091】
(5)前述の各形態においては、鍵盤楽器100が音源回路34を具備する構成を例示したが、例えば鍵盤楽器100が打弦機構91等の発音機構を具備する構成においては、音源回路34を省略してもよい。検出システム25は、鍵盤楽器100の演奏内容を記録するために利用される。以上の説明から理解される通り、本開示に係る楽器は、音源回路34を具備する電子楽器のほか、発音機構を具備する自然楽器も包含する。
【0092】
また、本開示は、音源回路34または発音機構に対して演奏操作に応じた操作信号を出力することで楽音を制御する装置(操作装置)としても特定される。前述の各形態の例示のように音源回路34または発音機構を具備する楽器(鍵盤楽器100)のほか、音源回路34または発音機構を具備しない機器(例えばMIDIコントローラまたは前述のペダル機構92)が、操作装置の概念には包含される。すなわち、本開示における演奏操作装置(instrument playing apparatus)は、演奏者(操作者)が演奏のために操作する装置として包括的に表現される。
【0093】
(6)前述の各形態に係る制御システム30の機能は、前述の通り、制御装置31を構成する単数または複数のプロセッサと、記憶装置32に記憶されたプログラムとの協働により実現される。以上に例示したプログラムは、コンピュータが読取可能な記録媒体に格納された形態で提供されてコンピュータにインストールされ得る。記録媒体は、例えば非一過性(non-transitory)の記録媒体であり、CD-ROM等の光学式記録媒体(光ディスク)が好例であるが、半導体記録媒体または磁気記録媒体等の公知の任意の形式の記録媒体も包含される。なお、非一過性の記録媒体とは、一過性の伝搬信号(transitory, propagating signal)を除く任意の記録媒体を含み、揮発性の記録媒体も除外されない。また、配信装置が通信網を介してプログラムを配信する構成では、当該配信装置においてプログラムを記憶する記録媒体が、前述の非一過性の記録媒体に相当する。
【0094】
E:付記
以上に例示した形態から、例えば以下の構成が把握される。
【0095】
本開示のひとつの態様(態様1)に係る検出システムは、第1駆動領域と第2駆動領域と第3駆動領域とが第1方向に順番に配列された駆動面を含む信号生成部と、巻回軸が第1方向に沿う状態で第1可動部材に設置され、平面視で前記第1駆動領域と前記第2駆動領域との間において、前記第1方向に交差する第2方向に前記第1可動部材とともに移動する第1検出コイルと、巻回軸が前記第1方向に沿う状態で第2可動部材に設置され、平面視で前記第2駆動領域と前記第3駆動領域との間において、前記第2可動部材とともに前記第2方向に移動する第2検出コイルとを具備し、前記信号生成部は、第1駆動期間において、前記第1駆動領域と前記第2駆動領域とにわたる磁場を発生することで、前記第1検出コイルと前記駆動面との距離に応じた第1検出信号を生成し、前記第1駆動期間とは別個の第2駆動期間において、前記第2駆動領域と前記第3駆動領域とにわたる磁場を発生することで、前記第2検出コイルと前記駆動面との距離に応じた第2検出信号を生成する。
【0096】
以上の態様においては、相互に隣合う2個の駆動領域にわたる磁場を横断するように検出コイルが移動する。したがって、例えば検出コイルの巻回軸が駆動面に垂直な構成と比較して、駆動コイルに対する検出コイルの移動の方向に関する制約を緩和できる。具体的には、駆動面に対する検出コイルの移動の方向は、相互に隣合う2個の駆動領域の間の平面内における任意の方向に設定される。例えば、検出コイルは、駆動面に交差(例えば直交)する方向に移動してもよいし、駆動面に平行な方向に移動してもよい。
【0097】
第1駆動領域と第2駆動領域とにわたる磁場の方向は任意である。すなわち、第1駆動期間においては、第1駆動領域から第2駆動領域に向かう磁場が発生してもよいし、第2駆動領域から第1駆動領域に向かう磁場が発生してもよい。第2駆動領域と第3駆動領域とにわたる磁場の方向も任意である。すなわち、第2駆動期間においては、第2駆動領域から第3駆動領域に向かう磁場が発生してもよいし、第3駆動領域から第2駆動領域に向かう磁場が発生してもよい。第1駆動期間における磁場の方向と第2駆動期間における磁場の方向との異同も不問である。
【0098】
態様1の具体例(態様2)において、前記信号生成部は、第1駆動信号から前記第1検出信号を生成する第1駆動コイルと、第2駆動信号から前記第2検出信号を生成する第2駆動コイルとを含み、前記第1駆動コイルは、前記第1駆動領域内に設置され、第1電流方向に電流が流れる第1部分と、前記第2駆動領域内に設置され、前記第1電流方向とは反対の第2電流方向に電流が流れる第2部分とを含み、前記第2駆動コイルは、前記第2駆動領域内に設置され、第3電流方向に電流が流れる第3部分と、前記第3駆動領域内に設置され、前記第3電流方向とは反対の第4電流方向に電流が流れる第4部分とを含む。以上の態様によれば、複数の駆動コイルの各々に選択的に駆動信号を供給する簡便な構成により、各可動部材の位置を高精度に検出できる。なお、第3電流方向は、例えば第1電流方向および第2電流方向の一方と同じ方向であり、第4電流方向は、例えば第1電流方向および第2電流方向の他方と同じ方向である。
【0099】
態様2の具体例(態様3)において、前記第2部分と前記第3部分とは平面視で相互に重複する。以上の態様においては、第2部分と第3部分とが平面視で相互に重複するから、第2部分と第3部分とが相互に重複しない形態と比較して、信号生成部(駆動面)のサイズを縮小し易い。
【0100】
「平面視」は、駆動面に垂直な方向から観測することを意味する。また、「第2部分と第3部分とが平面視で相互に重複する」とは、部分的な重複および全体的な重複の双方を含む。すなわち、第2部分の一部または全部と第3部分の一部または全部とが相互に重複する。
【0101】
態様1の具体例(態様4)において、駆動回路をさらに具備し、前記信号生成部は、前記第1駆動領域内に設置された第1駆動コイルと、前記第2駆動領域内に設置された第2駆動コイルと、前記第3駆動領域内に設置された第3駆動コイルとを含み、前記駆動回路は、前記第1駆動期間において、前記第1駆動コイルに第1電流方向の電流が流れ、かつ、前記第2駆動コイルに前記第1電流方向とは反対の第2電流方向の電流が流れるように、前記第1駆動コイルと前記第2駆動コイルとを電気的に接続し、前記第1駆動コイルおよび前記第2駆動コイルに第1駆動信号を供給することで前記第1検出信号を生成し、前記第2駆動期間において、前記第2駆動コイルに第3電流方向の電流が流れ、かつ、前記第3駆動コイルに前記第3電流方向とは反対の第4電流方向の電流が流れるように、前記第2駆動コイルと前記第3駆動コイルとを電気的に接続し、前記第2駆動コイルおよび前記第3駆動コイルに第2駆動信号を供給することで前記第2検出信号を生成する。以上の態様においては、第1駆動期間内における第1可動部材の位置の検出と、第2駆動期間内における第2可動部材の位置の検出とに、第2駆動コイルが兼用される。したがって、各可動部材の位置の検出に別個の駆動コイルが使用される形態と比較して、各可動部材の位置の検出に必要な駆動コイルの個数を削減できる。
【0102】
本開示のひとつの態様(態様5)に係る楽器は、利用者による演奏操作に応じて移動する第1可動部材および第2可動部材と、第1駆動領域と第2駆動領域と第3駆動領域とが第1方向に順番に配列された駆動面を含む信号生成部と、巻回軸が第1方向に沿う状態で前記第1可動部材に設置され、平面視で前記第1駆動領域と前記第2駆動領域との間において、前記第1方向に交差する第2方向に前記第1可動部材とともに移動する第1検出コイルと、巻回軸が前記第1方向に沿う状態で前記第2可動部材に設置され、平面視で前記第2駆動領域と前記第3駆動領域との間において、前記第2可動部材とともに前記第2方向に移動する第2検出コイルとを具備し、前記信号生成部は、第1駆動期間において、前記第1駆動領域と前記第2駆動領域とにわたる磁場を発生することで、前記第1検出コイルと前記駆動面との距離に応じた第1検出信号を生成し、前記第1駆動期間とは別個の第2駆動期間において、前記第2駆動領域と前記第3駆動領域とにわたる磁場を発生することで、前記第2検出コイルと前記駆動面との距離に応じた第2検出信号を生成する。
【符号の説明】
【0103】
100…鍵盤楽器、20…鍵盤ユニット、21…鍵盤、22-n…鍵、23…バランスピン、24…支持体、25…検出システム、27…信号生成部、30…制御システム、31…制御装置、32…記憶装置、33…A/D変換器、34…音源回路、40…放音システム、50-n…磁場発生部、51…基材、60-n…被検出部、61…基材、70…駆動回路、71…供給回路、72…出力回路。
図1
図2
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