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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023172765
(43)【公開日】2023-12-06
(54)【発明の名称】作業機械
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/22 20060101AFI20231129BHJP
【FI】
E02F9/22 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022084806
(22)【出願日】2022-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】塩飽 晃司
(72)【発明者】
【氏名】森木 秀一
【テーマコード(参考)】
2D003
【Fターム(参考)】
2D003AA01
2D003AB01
2D003AB02
2D003AB03
2D003AB04
2D003BA02
2D003BA06
2D003BB04
2D003CA04
2D003DA03
2D003DB02
2D003DB04
(57)【要約】
【課題】作業機械の掘削制御システムにおいて,ブームとアームによる掘削動作中に掘削反力による過負荷状態が生じた場合に,掘削動作の中断或いは掘削動作の軌道修正を行うことなく過負荷状態を解消し,掘削動作をより効率よく行えるようにする。
【解決手段】コントローラ20は,ブーム105とアーム106を同時に駆動する複合操作に際し,圧力センサ25a~26bの検出信号に基づいてブームシリンダ2とアームシリンダ3のそれぞれの直動力を演算し,直動力のいずれ方が限界値に達した場合,IMU27,28の検出信号と直動力とに基づいて限界値に達した直動力が減少する方向を演算し,この方向にフロント作業機104の掘削動作点Pwが移動するようブームシリンダ2及びアームシリンダ3の駆動を制御する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体と,
前記車体に対して上下方向に回動するブームと,前記ブームに対して上下方向に回動するアームとを備えたフロント作業機と,
前記車体と前記ブームに連結され,前記車体に対し前記ブームを上下方向に駆動するブームシリンダと,
前記ブームと前記アームに連結され,前記ブームに対し前記アームを上下方向に駆動するアームシリンダと,
前記ブームの動作を指示する操作信号を生成する第1操作装置と,
前記アームの動作を指示する操作信号を生成する第2操作装置と,
前記ブームシリンダの直動力に関するパラメータを検出する第1センサと,
前記アームシリンダの直動力に関するパラメータを検出する第2センサと,
前記ブームの姿勢を検出する第3センサと,
前記アームの姿勢を検出する第4センサとを備えた作業機械において,
前記第1操作装置及び前記第2操作装置の操作信号,前記第1センサ及び前記第2センサの検出信号,前記第3センサ及び前記第4センサの検出信号に基づいて前記ブームシリンダ及び前記アームシリンダの駆動を制御するコントローラを更に備え,
前記コントローラは,
前記第1操作装置と前記第2操作装置とが同時に操作され,前記ブームと前記アームを同時に駆動する複合操作に際し,前記第1センサ及び前記第2センサの検出信号に基づいて前記ブームシリンダ及び前記アームシリンダのそれぞれの直動力を演算し,
前記ブームシリンダ及び前記アームシリンダの直動力のいずれか一方が前記限界値に達した場合は,前記第3センサ及び前記第4センサの検出信号と前記ブームシリンダ及び前記アームシリンダのそれぞれの直動力とに基づいて前記限界値に達した直動力が減少する方向を演算し,前記直動力が減少する方向に前記フロント作業機の掘削動作点が移動するよう前記ブームシリンダ及び前記アームシリンダの駆動を制御することを特徴とする作業機械。
【請求項2】
請求項1記載の作業機械において,
前記コントローラは,
前記ブームシリンダ及び前記アームシリンダのそれぞれの直動力のいずれか一方が前記限界値に達した場合は,前記第3センサ及び前記第4センサの検出信号と前記ブームシリンダ及び前記アームシリンダのそれぞれの直動力とに基づいて前記フロント作業機の掘削動作点に作用する掘削反力ベクトルを演算し,前記掘削反力ベクトルと前記第3センサ及び前記第4センサの検出信号と前記直動力とに基づいて,前記掘削反力ベクトルの大きさを維持しながら前記限界値に達した油圧シリンダの直動力が減少する方向を演算することを特徴とする作業機械。
【請求項3】
請求項2記載の作業機械において,
前記コントローラは,
前記第1操作装置及び前記第2操作装置の操作信号に基づいて前記第1操作装置及び前記第2操作装置のそれぞれの操作方向が前記ブームシリンダ及び前記アームシリンダの伸び方向か縮み方向かを判定し,
前記限界値に達した直動力が減少する方向の範囲の中に,前記ブームシリンダ及び前記アームシリンダの伸び方向又は縮み方向と一致する範囲が存在するかどうかを判定し,
前記一致する範囲が存在する場合は,前記一致する範囲内で,前記限界値に達した直動力が減少する方向を演算し,前記直動力が減少する方向に前記フロント作業機の掘削動作点が移動するよう前記ブームシリンダ及び前記アームシリンダの駆動を制御し,前記一致する範囲が存在しない場合は,前記ブームシリンダ及び前記アームシリンダの駆動を停止させることを特徴とする作業機械。
【請求項4】
請求項1記載の作業機械において,
可変容量型の第1油圧ポンプ及び第2油圧ポンプと,
前記第1油圧ポンプの吐出油路に接続された第1センタバイパス通路に接続され,前記第1油圧ポンプから前記ブームシリンダに供給される圧油の流量を制御するオープンセンタ型の第1流量制御弁と,
前記第1流量制御弁の下流側で前記第1センタバイパス通路にタンデムに接続され,前記第1油圧ポンプから前記アームシリンダに供給される圧油の流量を制御するオープンセンタ型の第2流量制御弁と,
前記第2油圧ポンプの吐出油路に接続された第2センタバイパス通路に接続され,前記第2油圧ポンプから前記アームシリンダに供給される圧油の流量を制御するオープンセンタ型の第3流量制御弁と,
前記第3流量制御弁の下流側で前記第2センタバイパス通路にタンデムに接続され,前記第2油圧ポンプから前記ブームシリンダに供給される圧油の流量を制御するオープンセンタ型の第4流量制御弁と,
前記第1油圧ポンプの吸収馬力が予め設定した最大馬力を超えないように前記第1油圧ポンプの吐出流量を制御する第1レギュレータと,
前記第2油圧ポンプの吸収馬力が予め設定した最大馬力を超えないように前記第2油圧ポンプの吐出流量を制御する第2レギュレータと,
前記第1流量制御弁と前記第2流量制御弁との間の前記第1センタバイパス通路を流れる圧油の中間圧力を検出する第5センサと,
前記第3流量制御弁と前記第4流量制御弁との間の前記第2センタバイパス通路を流れる圧油の中間圧力を検出する第6センサとを更に備え,
前記コントローラは,
前記第1レギュレータ及び前記第2レギュレータの制御で用いる前記最大馬力の設定を含むポンプ制御特性を記憶しておき,
前記第1操作装置及び前記第2操作装置の検出信号と,前記第5センサ及び前記第6センサの検出信号と,前記ポンプ制御特性の最大馬力とに基づいて,前記ブームシリンダ及び前記アームシリンダのいずれかの直動力が前記限界値に達した過負荷状態にあると仮定した場合に前記最大馬力によって制限される前記第1油圧ポンプ及び前記第2油圧ポンプのそれぞれの最大可能吐出圧力を演算し,
前記ブームシリンダ及び前記アームシリンダのそれぞれのピストンの受圧面積に前記最大可能吐出圧力を乗じることで,前記ブームシリンダ及び前記アームシリンダのそれぞれの最大可能直動力を演算し,前記最大可能直動力を前記直動力の限界値として用い,前記ブームシリンダ及び前記アームシリンダのそれぞれに対して,前記限界値に達した油圧シリンダの直動力が減少する方向を演算することを特徴とする作業機械。
【請求項5】
請求項1記載の作業機械において,
前記ブーム,前記アーム,前記ブームシリンダ,前記アームシリンダを含む前記フロント作業機のイラストを表示する表示装置を更に備え,
前記コントローラは,
前記ブームシリンダ及び前記アームシリンダの直動力が前記限界値に達したかどうかをシリンダごとに判定し,前記ブームシリンダ及び前記アームシリンダのいずれかの直動力が前記限界値に達したとき,前記ブームシリンダ及び前記アームシリンダの対応するもののイラストの配色を変更することを特徴とする作業機械。
【請求項6】
請求項1記載の作業機械において,
可変容量型の第1油圧ポンプ及び第2油圧ポンプと,
前記第1油圧ポンプの吐出油路に接続された第1センタバイパス通路に接続され,前記第1油圧ポンプから前記ブームシリンダに供給される圧油の流量を制御するオープンセンタ型の第1流量制御弁と,
前記第1流量制御弁の下流側で前記第1センタバイパス通路にタンデムに接続され,前記第1油圧ポンプから前記アームシリンダに供給される圧油の流量を制御するオープンセンタ型の第2流量制御弁と,
前記第2油圧ポンプの吐出油路に接続された第2センタバイパス通路に接続され,前記第2油圧ポンプから前記アームシリンダに供給される圧油の流量を制御するオープンセンタ型の第3流量制御弁と,
前記第3流量制御弁の下流側で前記第2センタバイパス通路にタンデムに接続され,前記第2油圧ポンプから前記ブームシリンダに供給される圧油の流量を制御するオープンセンタ型の第4流量制御弁と,
前記第1油圧ポンプの吸収馬力が予め設定した最大馬力を超えないように前記第1油圧ポンプの吐出流量を制御する第1レギュレータと,
前記第2油圧ポンプの吸収馬力が予め設定した最大馬力を超えないように前記第2油圧ポンプの吐出流量を制御する第2レギュレータと,
前記第1流量制御弁と前記第2流量制御弁との間の前記第1センタバイパス通路を流れる圧油の中間圧力を検出する第5センサと,
前記第3流量制御弁と前記第4流量制御弁との間の前記第2センタバイパス通路を流れる圧油の中間圧力を検出する第6センサと,
前記第1油圧ポンプの吐出圧力を検出する第7センサと,
前記第2油圧ポンプの吐出圧力を検出する第8センサと,
前記ブーム,前記アーム,前記ブームシリンダ,前記アームシリンダを含む前記フロント作業機のイラストを表示する表示装置とを更に備え,
前記コントローラは,
前記第1レギュレータ及び前記第2レギュレータの制御で用いる最大馬力の設定を含むポンプ制御特性を記憶しておき,
前記第1操作装置及び前記第2操作装置の検出信号と,前記第5センサ及び前記第6センサの検出信号と,前記ポンプ制御特性の最大馬力とに基づいて,前記ブームシリンダ及び前記アームシリンダのいずれかの直動力が前記限界値に達した過負荷状態にあると仮定したときの,前記最大馬力によって制限される前記第1油圧ポンプ及び前記第2油圧ポンプのそれぞれの最大可能吐出圧力を演算し,
前記第7センサによって検出された前記第1油圧ポンプの吐出圧力と前記第8センサによって検出された前記第2油圧ポンプの吐出圧力が前記最大可能吐出圧力に近づいたかどうかをポンプごとに判定し,前記第1油圧ポンプと前記第2油圧ポンプのいずれかの吐出圧力が前記最大可能吐出圧力に近づいたとき,前記吐出圧力が前記最大可能圧力に近づいた油圧ポンプのイラストの配色を変更することを特徴とする作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は掘削制御システムを備えた油圧ショベル等の作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
作業機械の代表例である油圧ショベルにおいて,オペレータによる掘削動作中にオペレータの操作情報をもとに,適切なアクチュエータ動作を行わせることで,掘削動作を円滑に行う掘削制御システムが種々提案されている
例えば,特許文献1では,検出したブーム角度,アーム角度,バケット角度と,予め記憶装置に格納された土砂特性とから,掘削反力テーブルを用いてバケットに作用する土砂の掘削反力を算出し,算出した掘削反力が予め設定した上限値より大きいか否かによって,掘削動作を修正するか否かを判断するシステムが提案されている。また,特許文献1では,算出した掘削反力が予め設定した上限値より大きくなったことをオペレータに通知することが好ましい,或いは,算出した掘削反力が予め設定した上限値より大きい場合,ブームを上げて掘削深さを低減するようにブームの駆動を制御することとしてもよい,としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5519414号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1によれば,掘削動作中に掘削反力による過負荷状態を適切に判定でき,掘削動作の修正を行うことができる。
【0005】
しかしながら,特許文献1において,掘削動作による掘削反力の大きさにのみに着目しているため,掘削反力の方向によってはブーム或いはアームの姿勢を変えることでアクチュエータの限界状態が解消されるにも係わらず,掘削反力が過大であると判定され,掘削動作の修正要の判定を行う場合がある。
【0006】
例えば,掘削反力によりアームシリンダが生成し得る最大直動力以上を要求する状態(以下過負荷状態と呼称)において,ブーム,アームの姿勢およびブーム,アームの動作方向によっては,アームの過負荷状態が解消される(アームシリンダの直動力が減少する)場合が存在する。このような場合においても特許文献1では,掘削反力の大きさが定められた値に至ったときに,掘削動作を停止してオペレータに通知して手動でブーム上げ動作を行う,或いは自動でブーム上げ動作を行うため,掘削動作の中断或いは掘削動作の軌道修正を行うこととなり,掘削効率が低下する。
【0007】
本発明は上記を鑑みてなされたものであり,その目的は,作業機械の掘削制御システムにおいて,ブームとアームによる掘削動作中に掘削反力による過負荷状態が生じた場合に,掘削動作の中断或いは掘削動作の軌道修正を行うことなく過負荷状態を解消し,掘削動作をより効率よく行える作業機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために,本発明は,車体と,前記車体に対して上下方向に回動するブームと,前記ブームに対して上下方向に回動するアームとを備えたフロント作業機と,前記車体と前記ブームに連結され,前記車体に対し前記ブームを上下方向に駆動するブームシリンダと,前記ブームと前記アームに連結され,前記ブームに対し前記アームを上下方向に駆動するアームシリンダと,前記ブームの動作を指示する操作信号を生成する第1操作装置と,前記アームの動作を指示する操作信号を生成する第2操作装置と,前記ブームシリンダの直動力に関するパラメータを検出する第1センサと,前記アームシリンダの直動力に関するパラメータを検出する第2センサと,前記ブームの姿勢を検出する第3センサと,前記アームの姿勢を検出する第4センサとを備えた作業機械において,前記第1操作装置及び前記第2操作装置の操作信号,前記第1センサ及び前記第2センサの検出信号,前記第3センサ及び前記第4センサの検出信号に基づいて前記ブームシリンダ及び前記アームシリンダの駆動を制御するコントローラを更に備え,前記コントローラは,前記第1操作装置と前記第2操作装置とが同時に操作され,前記ブームと前記アームを同時に駆動する複合操作に際し,前記第1センサ及び前記第2センサの検出信号に基づいて前記ブームシリンダ及び前記アームシリンダのそれぞれの直動力を演算し,前記ブームシリンダ及び前記アームシリンダの直動力のいずれか一方が前記限界値に達した場合は,前記第3センサ及び前記第4センサの検出信号と前記ブームシリンダ及び前記アームシリンダのそれぞれの直動力とに基づいて前記限界値に達した直動力が減少する方向を演算し,前記直動力が減少する方向に前記フロント作業機の掘削動作点が移動するよう前記ブームシリンダ及び前記アームシリンダの駆動を制御するものとする。
【0009】
このように構成した本発明においては,ブームシリンダ及びアームシリンダの直動力のいずれか一方が限界値に達した場合は,第3センサ及び第4センサの検出信号とブームシリンダ及びアームシリンダのそれぞれの直動力とに基づいて限界値に達した直動力が減少する方向を演算し,直動力が減少する方向にフロント作業機の掘削動作点が移動するようブームシリンダ及びアームシリンダの駆動を制御するため,掘削反力ベクトルの大きさ(掘削ベクトルの大きさ)が変わらなくても,ブームシリンダ及びアームシリンダのそれぞれの直動力の負担割合が変わり,ブームシリンダ又はアームシリンダの直動力を減少させることができる。これにより,ブームとアームによる掘削動作中に掘削反力による過負荷状態が生じた場合に,掘削動作の中断或いは掘削動作の軌道修正を行うことなく過負荷状態を解消し,掘削動作をより効率よく行うことができ,かつ操作性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば,ブームとアームによる掘削動作中に掘削反力による過負荷状態が生じた場合に,掘削動作の中断或いは掘削動作の軌道修正を行うことなく過負荷状態を解消し,掘削動作をより効率よくおこなうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明が適用される油圧ショベルの斜視図である。
図2】本発明の第1の実施形態に係わる油圧駆動装置の油圧回路を示す図である。
図3】本発明の第1の実施形態に係わる制御システムを示す図である。
図4】ブームシリンダの直動力及びアームシリンダの直動力とブーム角度及びアーム角度を示す図である。
図5】コントローラの演算制御部の機能を説明するフローチャートである。
図6】式(4)の距離J11,J22を説明する図である。
図7】掘削反力ベクトルFDigにより生じるブーム回動支点Pv1とアーム回動支点Pv2の各軸のトルクを示す図である。
図8】ブーム直動力ベクトルFBoomとアーム直動力ベクトルFArmにより生じるブーム回動支点Pv1とアーム回動支点Pv2の各軸のトルクを示す図である。
図9】直動力減少方向検索マップの一例を示す図である。
図10】直動力減少方向検索マップの一例を示す図である。
図11】本発明の第1の実施形態における直動力減少方向の介入の形態を示す図である。
図12】直動力減少向を油圧回路で介入させる形態を簡素化して示す図である。
図13】本発明の第2の実施形態に係わる制御システムを示す図である。
図14】コントローラの演算制御部の機能を説明するフローチャートである。
図15】限界値に達したシリンダ直動力が減少する方向の範囲(直動力減少方向範囲)と,ブームシリンダの伸び方向又は縮み方向と一致する範囲1及びアームシリンダ3の伸び方向又は縮み方向と一致する範囲2を示す図である。
図16】本発明の第3の実施形態に係わる油圧駆動装置の油圧回路を示す図である。
図17】レギュレータのポンプ制御特性を示す図である。
図18】本発明の第3の実施形態に係わる制御システムを示す図である。
図19】コントローラの最大可能ポンプ吐出圧力演算部と直動力限界値演算部の処理内容の詳細を示すフローチャートである。
図20】最大可能ポンプ吐出圧力演算部における最大吐出可能圧力の演算原理の説明図である。
図21】本発明の第4の実施形態に係わる制御システムを搭載した油圧ショベルの斜視図である。
図22】本発明の第4の実施形態に係わる制御システムを示す図である。
図23】コントローラの制御演算部の第1表示処理を示すフローチャートである。
図24】コントローラの制御演算部の第2表示処理を示すフローチャートである。
図25】第1表示処理と第2表示処理により表示装置70に表示される画像の変化を示す図である。
図26】直動力減少方向範囲の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下,本発明に係る作業機械として油圧ショベルを例に挙げ,本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
【0013】
<第1の実施形態>
~作業機械~
図1は,本発明が適用される油圧ショベルの斜視図である。
【0014】
油圧ショベル100は,下部走行体101と,下部走行体101に旋回装置102を介して回動可能に取り付けられ,車体を構成する上部旋回体103と,上部旋回体103の前部に取り付けられ,作業装置を構成するフロント作業機104とを備えている。フロント作業機104は上部旋回体103の前部に上下方向に回動可能に取りつけられたブーム105と,ブーム105の先端に上下方向に回動可能に取り付けられたアーム106と,アーム106の先端に上下方向に回動可能に取り付けられたバケット107と,アーム106とバケット107に回動可能に取り付けられたバケットリンク108と,上部旋回体103とブーム105とに連結され,上部旋回体103に対しブーム106を上下方向に駆動することで上部旋回体103とブーム105との回動角度を変更するブームシリンダ2と,ブーム105とアーム106とに連結され,ブーム105に対しアーム106を上下方向に駆動することでブーム105とアーム106の回動角度を変更するアームシリンダ3と,アーム106とバケットリンク108とに連結され,バケットリンク108を介してアーム106とバケット107の回動角度を変更するバケットシリンダ4とで構成される。
【0015】
下部走行体101はクローラ式の左右の走行装置109a,109b(右走行装置109bは不図示)を備え,左右の走行装置109a,109bは左右の走行モータ5a,5b(右走行モータ5bは不図示)により駆動され,油圧ショベル100を所望の位置に移動可能とする。旋回装置102は下部走行体101と上部旋回体103の回動角度を変更する旋回モータ6を備えている。
【0016】
上部旋回体103は運転室を形成するキャビン110を備え,キャビン110内の運転席111の後側に下記する制御を行うコントローラ20が配置されている。また,キャビン110内の運転席111の前部左右に,オペレータの操作によりブーム105,アーム106,バケット107,上部旋回体103の動作(速度と方向)を指示する操作信号を生成する操作装置21,22が配置され,運転席111の前側に,左右の走行装置109a,109bの動作(速度と方向)を指示する操作信号を生成する操作装置23a,23bが配置されている。
【0017】
~油圧駆動装置~
図2は,本実施形態に係わる油圧駆動装置の油圧回路を示す図である。図2は,図示の簡略化のため,ブームシリンダ2,アームシリンダ3,バケットシリンダ4,左右の走行モータ5a,5b,旋回モータ6のうちブームシリンダ2とアームシリンダ3に係わる部分のみを示している。
【0018】
図2において,本実施形態の油圧駆動装置は,図示しない原動機(例えばディーゼルエンジン)によって駆動される可変容量型の油圧ポンプ10a(第1油圧ポンプ)及び油圧ポンプ10b(第2油圧ポンプ)と,油圧ポンプ10aの吐出油路13aに接続されたセンタバイパス通路15a(第1センタバイパス通路)に接続され,油圧ポンプ10aからブームシリンダ2に供給される圧油の流量を制御するオープンセンタ型の流量制御弁11a(第1流量制御弁)と,流量制御弁11aの下流側でセンタバイパス通路15aにタンデムに接続され,油圧ポンプ10aからアームシリンダ3に供給される圧油の流量を制御するオープンセンタ型の流量制御弁12a(第2流量制御弁)と,油圧ポンプ10bの吐出油路13bに接続されたセンタバイパス通路15b(第2センタバイパス通路)に接続され,油圧ポンプ10bからアームシリンダ3に供給される圧油の流量を制御するオープンセンタ型の流量制御弁12b(第3流量制御弁)と,流量制御弁12bの下流側でセンタバイパス通路15bにタンデムに接続され,油圧ポンプ12bからブームシリンダ2に供給される圧油の流量を制御するオープンセンタ型の第4流量制御弁11b(第4流量制御弁)と,油圧ポンプ10aの吐出油路13aに接続され,油圧ポンプ10aの吐出圧力の最大値を制限するリリーフ弁14aと,油圧ポンプ10bの吐出油路13bに接続され,油圧ポンプ10bの吐出圧力の最大値を制限するリリーフ弁14bとを備えている。
【0019】
流量制御弁11a,12a,11b,12bは電磁切換方式のスプール弁であり,コントローラ20からの指令信号によりスプールのストローク(開口面積)が制御される。
【0020】
また,本実施形態の油圧駆動装置は,センタバイパス通路16a,15bを介して油圧ポンプ10a,10bの吐出油路13a,13bをタンクTに接続するオープンセンタシステムとして構成されている。このオープンセンタシステムにおいて,流量制御弁11a,12a,11b,12bが図示の中立位置にあり,流量制御弁11a,12a,11b,12bのメータイン絞りとメータアウト絞りが全閉しているとき,流量制御弁11a,12a,11b,12bはセンタバイパス通路15a,15bを全開し,油圧ポンプ10a,10bの吐出油をタンクTに還流する。
【0021】
流量制御弁11a,11bが図示の中立位置から図示左右のいずれか一方の位置に操作されると,流量制御弁11a,11bのメータイン絞りとメータアウト絞りが開くとともに,センタバイパス通路15a,15bが絞られ,油圧ポンプ10aの吐出油が流量制御弁11a及びアクチュエータ油路16a又は16bを介してブームシリンダ2に供給されるとともに,油圧ポンプ10bの吐出油も流量制御弁11b及びアクチュエータ油路16c又は16dを介してブームシリンダ2に供給される。このとき,流量制御弁11a,11bがハーフ操作されたときは,流量制御弁11a,11bのメータイン絞りとメータアウト絞りが操作量に応じた開口面積に開くとともに,センタバイパス通路15a,15bが操作量に応じた開口面積に絞られ,ブームシリンダ2に流量制御弁11a,11bの操作量に応じた流量の圧油が合流して供給され,ブームシリンダ2は流量制御弁11a,11bの操作量に応じた速度で駆動される。また,流量制御弁11a,11bがフル操作されたときは,流量制御弁11a,11bのメータイン絞りとメータアウト絞りが全開するとともに,センタバイパス通路15a,15bが全閉し,ブームシリンダ2に油圧ポンプ10a,10bから吐出された圧油の全量が供給され,ブームシリンダ2は高速で駆動される。
【0022】
流量制御弁12a,12bが図示の中立位置から図示左右のいずれか一方の位置に操作されたときも同様であり,油圧ポンプ10bの吐出油が流量制御弁12b及びアクチュエータ油路17a又は17bを介してアームシリンダ3に供給されるとともに,油圧ポンプ10aの吐出油がアクチュエータ油路17c又は17dを介してアームシリンダ3に供給され,アームシリンダ3は油圧ポンプ10a,10bから吐出された圧油により流量制御弁12a,12bの操作量に応じた速度で駆動される。
【0023】
流量制御弁11a,11bと流量制御弁12a,12bの両方が図示左右のいずれか一方の位置にハーフ操作されたときは,流量制御弁11a,11b及び流量制御弁12a,12bのメータイン絞りとメータアウト絞りがそれぞれの操作量に応じた開口面積に開くとともに,センタバイパス通路15a,15bが絞られ,油圧ポンプ10aの吐出油は上流側の流量制御弁11aに優先的に供給され,残りの圧油が流量制御弁12aに供給されるとともに,油圧ポンプ10bの吐出油は上流側の流量制御弁12bに優先的に供給され,残りの圧油が流量制御弁11bに供給される。これによりブームシリンダ2とアームシリンダ3には,油圧ポンプ10a,10bから吐出された圧油が合流して供給され,ブームシリンダ2とアームシリンダ3は流量制御弁11a,11bの操作量と流量制御弁12a,12bの操作量に応じた速度で駆動される。
【0024】
また,流量制御弁11a,11bと流量制御弁12a,12bの両方が,それぞれ,図示左右のいずれか一方の位置にフル操作されたときは,流量制御弁11a,11b及び流量制御弁12a,12bのメータイン絞りとメータアウト絞りが全開し,センタバイパス通路15a,15bが全閉し,油圧ポンプ10aの吐出油はその全量が上流側の流量制御弁11aに供給され,油圧ポンプ10bの吐出油はその全量が上流側の流量制御弁12bに供給される。これによりブームシリンダ2は油圧ポンプ10aから吐出された圧油により駆動され,アームシリンダ3は油圧ポンプ10bから吐出された圧油により駆動される。
【0025】
~操作装置及びセンサ~
図1において,操作装置21は,操作レバーが前後方向に操作されたときブーム用の操作装置(第1操作装置)として機能し,操作レバーが左右方向に操作したときバケット用の操作装置として機能する。操作装置22は,操作レバーが前後方向に操作されたとき旋回用の操作装置として機能し,操作レバーが左右方向に操作されたときアーム用の操作装置(第2操作装置)として機能する。以下において,ブーム用の操作装置として機能するときの操作装置21を操作装置21a(第1操作装置)と言い,アーム用の操作装置として機能するときの操作装置22を操作装置22a(第2操作装置)と言う。操作装置21aはブーム105の動作(目標速度と方向)を指示する操作信号を生成し,操作装置22aはアーム106の動作(目標速度と方向)を指示する操作信号を生成する。
【0026】
また,操作装置21,22及び操作装置23a,23bは電気的な操作信号を生成する電気式の操作装置であり,生成した操作信号はコントローラ20に送信される。
【0027】
図2において,ブームシリンダ2のボトム側に接続されたアクチュエータ油路16a及びロッド側に接続されたアクチュエータ油路16bには,ブームシリンダ2のボトム側の圧力を検出する圧力センサ25aとロッド側の圧力を検出する圧力センサ25bが接続され,アームシリンダ3のボトム側に接続されたアクチュエータ油路17a及びロッド側に接続されたアクチュエータ油路17bには,アームシリンダ3のボトム側の圧力を検出する圧力センサ26aとロッド側の圧力を検出する圧力センサ26bが接続されている。圧力センサ25a,25bはブームシリンダ2の直動力(後述)に関するパラメータを検出する第1センサとして機能し,圧力センサ26a,26bはアームシリンダ3の直動力(後述)に関するパラメータを検出する第2センサとして機能する。
【0028】
図1に示したブーム105の側面には上部旋回体103に対するブーム105の回動角度を検出するIMU27が備えられ,アーム106の側面にはブーム105に対するアーム106の回動角度を検出するIMU28が備えられている。IMU27はブーム105の姿勢を検出する第3センサとして機能し,IMU28はアーム106の姿勢を検出する第4センサとして機能する。
【0029】
なお、IMU27,28は、既知の慣性計測装置(Inertial Measurement Unit)からなる。
【0030】
~制御システム~
図3は,本実施形態に係わる制御システムを示す図である。
【0031】
図3において,操作装置21a(第1操作装置)を含む操作装置21及び操作装置22a(第2操作装置)を含む操作装置22の操作信号と,圧力センサ25a,25b及び圧力センサ26a,26bの検出信号と,IMU27,28の検出信号がコントローラ20に入力され,コントローラ20は所定の演算処理を行い,流量制御弁11a,12a,11b,12bを含む複数の流量制御弁に指令信号を出力する。
【0032】
コントローラ20は,操作装置21a(第1操作装置)と操作装置22a(第2操作装置)とが同時に操作され,ブーム105とアーム106を同時に駆動する複合操作に際し,圧力センサ25a,25b(第1センサ)及び圧力センサ26a,26b(第2センサ)の検出信号に基づいてブームシリンダ2とアームシリンダ3のそれぞれの直動力を演算し,ブームシリンダ2及びアームシリンダ3の直動力のいずれも限界値に達していない場合は,操作装置21a及び操作装置22aの操作信号に基づいてブームシリンダ2及びアームシリンダ3を駆動し,ブームシリンダ2及びアームシリンダ3の直動力のいずれか一方が限界値に達した場合は,IMU27(第3センサ)及びIMU28(第4センサ)の検出信号とブームシリンダ2及びアームシリンダ3のそれぞれの直動力とに基づいて限界値に達した直動力が減少する方向を演算し,この直動力が減少する方向にフロント作業機104の掘削動作点Pw(図4参照)であるバケット107の爪先が移動するようブームシリンダ2及びアームシリンダ3の駆動を制御する。
【0033】
以下に,コントローラ20の機能を具体的に説明する。
【0034】
コントローラ20は,図3に示すように,直動力演算部20aと,姿勢演算部20bと,記憶部20cと,制御演算部20dを含む複数の機能要素とを有している。
【0035】
直動力演算部20aは,圧力センサ25a,25b(第1センサ)の検出信号と圧力センサ26a,26b(第2センサ)の検出信号に基づいてブームシリンダ2の直動力とアームシリンダ3の直動力を演算する。
【0036】
図4は,ブームシリンダ2の直動力及びアームシリンダ3の直動力と,後述するブーム角度及びアーム角度を示す図である。
【0037】
図4において,符号Fbはブームシリンダ2の直動力を示し,符号Faはアームシリンダ3の直動力を示している。ブームシリンダ2の直動力Fbは,ブームシリンダ2のピストンロッドに作用する軸方向の推力(駆動力)を意味し,アームシリンダ3の直動力Faは,アームシリンダ3のピストンロッドに作用する軸方向の推力(駆動力)を意味する。
【0038】
直動力演算部20aは,ブームシリンダ2のボトム側のピストン受圧面積に圧力センサ25aで検出した圧力を乗じた推力から,ブームシリンダ2のロッド側のピストン受圧面積に圧力センサ25bで検出した圧力を乗じた推力を減算することで,ブームシリンダ2の直動力Faを演算する。同様に直動力演算部20aは,アームシリンダ3のボトム側のピストン受圧面積に圧力センサ26aで検出した圧力を乗じた推力から,アームシリンダ3のロッド側のピストン受圧面積に圧力センサ26bで検出した圧力を乗じた推力を減算することで,アームシリンダ3の直動力Faを算出する。
【0039】
以下において,ブームシリンダ2の直動力Fbを単にブーム直動力と言い,アームシリンダ3の直動力Faを単にアーム直動力と言うことがある。
【0040】
図4において,符号FBoomはブームシリンダ2の直動力Fbに直動力Fbの方向成分を加えたブームシリンダ2の直動力ベクトルを示し,符号FArmはアームシリンダ3の直動力Faに直動力Faの方向成分を加えたアームシリンダ3の直動力ベクトルを示している。また,図4に,掘削反力ベクトルを符号FDigで示している。
【0041】
姿勢演算部20bは,IMU27(第3センサ)及びIMU28(第4センサ)の検出信号に基づいて上部旋回体103に対するブーム105の回動角度(ブーム角度)θ1とブーム105に対するアーム106の回動角度(アーム角度)θ2を演算する。
【0042】
図4において,ブーム角度θ1(上部旋回体103に対するブーム105の回動角度)は,ブーム105の回動支点(ピン)Pv1を通る上部旋回体103の底板(旋回フレーム)103aに平行な前後方向の線分SLに対し,ブーム105の回動支点Pv1とアーム106の回動支点(ピン)Pv2とを通る線分BLがなす角度である。アーム角度θ2(ブーム105に対するアーム106の回動角度)は,線分BLに対し,アーム106の回動支点Pv2とバケット107の回動支点(ピン)Pv3とを通る線分ALがなす角度である。
【0043】
記憶部20cは,制御演算部20dの演算で使用する種々のデータを記憶しており,本実施形態では,ブーム直動力Fb及びアーム直動力Faの限界値と,限界値に達した直動力が減少する方向を探索する検索マップ(以下において直動力減少方向検索マップと言うことがある)が記憶されている。
【0044】
直動力の限界値は,予め定めた値であってもよいし,そのときの動作情報に基づいて算出した値であってもよい。本実施形態において,直動力の限界値は予め定めた値である。予め定めた値は,例えば,リリーフ弁14a,14bによって制限される油圧ポンプ10a,10bの最大吐出圧力に基づいて算出される直動力である。直動力減少方向検索マップについては後述する。
【0045】
図5は,制御演算部20dの機能を説明するフローチャートである。
【0046】
まず,制御演算部20dは,操作装置21a,22aからの操作信号に基づいて,ブーム105とアーム106を同時に駆動する複合操作を行っているかどうかを判定する(ステップS100)。この判定で,複合操作が行われていない場合,制御演算部20dは,操作装置21a又は22aからの操作信号に従い対応するアクチュエータが駆動されるよう流量制御弁の制御指令を演算し,指令信号を流量制御弁に出力する(ステップS150)。このときブーム105又はアーム106は操作装置21a又は22aの操作信号に応じて駆動される。
【0047】
ステップS100の判定で,複合操作が行われている場合は,制御演算部20dは,更に,直動力演算部20aで演算したブームシリンダ2及びアームシリンダ3の直動力Fb,Faと記憶部20cに記憶した直動力の限界値とを比較し,いずれかの直動力Fb又はFaが直動力の限界値に達したかどうかを判定する(ステップS110)。ステップS110の判定で,いずれの直動力も限界値に達していない場合は,制御演算部20dは,操作装置21a,22aの操作信号に従いブームシリンダ2及びアームシリンダ3が駆動されるよう流量制御弁11a,11b,12a,12bの制御指令を演算し,指令信号を流量制御弁11a,11b,12a,12bに出力する(ステップS150)。このときブーム105及びアーム106は操作装置21a,22aの操作信号に応じて駆動される。
【0048】
一方,ステップS110の判定で,ブームシリンダ2及びアームシリンダ3のいずれかの直動力Fb又はFaが直動力の限界値に達した場合,制御演算部20dは,直動力演算部20aで演算したブームシリンダ2及びアームシリンダ3の直動力Fb,Faと,姿勢演算部20bで演算されたブーム角度θ1(ブーム105の姿勢)及びアーム角度θ2(アーム106の姿勢)とに基づいて,式(1)に従い,フロント作業機104の掘削動作点Pw(バケット107の爪先)に作用する掘削反力の大きさとその方向を示す掘削反力ベクトルFDigを演算する(ステップS120)。
【0049】
【数1】
・・・(1)
【0050】
式(1)について説明する。
【0051】
式(1)において,J1,2の右上のTは転置行列を意味する。以下の行列の右上のTも同様である。また、各変数は以下の値である。
【0052】
FDig:上述した掘削反力ベクトル
FCylinder:上述したブームシリンダ2の直動力ベクトルFBoomとアームシリンダ3の直動力ベクトルFArmを合成したシリンダ直動力ベクトルである。シリンダ直動力ベクトルは以下の式(2)で表される。
【0053】
【数2】
・・・(2)
【0054】
1:ブーム角度θ1及びアーム角度θ2と,ブーム長さL1及びアーム長さL2を要素とする以下の式(3)で表されるヤコビアン行列である。
【0055】
【数3】
・・・(3)
【0056】
後述する図7に示すように,ブーム長さL1はブーム回動支点(ピン)Pv1とアーム回動支点(ピン)Pv2間の距離であり,アーム長さL2は,アーム回動支点(ピン)Pv2とバケット回動支点(ピン)Pv3間の距離である。
【0057】
2:ブーム回動支点(ピン)Pv1からブームシリンダ2の中心軸までの距離J11と,アーム回動支点(ピン)Pv2からアームシリンダ3の中心軸までの距離J22とを要素とする以下の式(4)で表わされるヤコビアン行列である。
【0058】
【数4】
・・・(4)
【0059】
図6は,式(4)の距離j11,j22を説明する図である。j11はブーム回動支点(ピン)Pv1からブームシリンダ2の中心軸上に垂下させた垂線の長さであり,ブーム角度θ1と,ブーム回動支点Pv1とブームシリンダ2の基端の回動支点Pv3間の距離Cp1と,ブーム回動支点Pv1とブームシリンダ2のロッド先端の回動支点Pv4間の距離Cm1との幾何学的関係から算出することができる。j22はアーム回動支点(ピン)Pv2からアームシリンダ3上の中心軸に垂下させた垂線の長さであり,アーム角度θ2と,アーム回動支点Pv2とアームシリンダ3の基端の回動支点Pv5間の距離Cp2と,アーム回動支点Pv2とアームシリンダ3のロッド先端の回動支点Pv6間の距離Cm2との幾何学的関係から算出することができる。
【0060】
式(1)の導出過程を説明する。
【0061】
式(1)は,掘削反力ベクトルFDigにより生じるブーム回動支点Pv1とアーム回動支点Pv2の各軸のトルクと,ブームシリンダ2の直動力ベクトルFBoom(以下にブーム直動力ベクトルということがある)とアームシリンダ3の直動力ベクトルFArm(以下にアーム直動力ベクトルということがある)により生じるブーム回動支点Pv1とアーム回動支点Pv2の各軸のトルクとのつり合いにより導かれる。
【0062】
図7は,掘削反力ベクトルFDigにより生じるブーム回動支点Pv1とアーム回動支点Pv2の各軸のトルクを示す図である。
【0063】
図8は,ブーム直動力ベクトルFBoomとアーム直動力ベクトルFArmにより生じるブーム回動支点Pv1とアーム回動支点Pv2の各軸のトルクを示す図である。
【0064】
図7図8において,ブーム回動支点Pv1とアーム回動支点Pv2の各軸のトルクが符号τ1,τ2で示されている。
【0065】
掘削反力ベクトルFDigを生じさせる掘削ベクトルとトルクτ1,τ2との関係は以下式(5)で表わされる。
【0066】
【数5】
・・・(5)
ブーム直動力ベクトルFBoom及びアーム直動力ベクトルFArmにより生じるブーム回動支点Pv1とアーム回動支点Pv2の各軸のトルクτ1,τ2とブーム直動力ベクトルFBoom及びアーム直動力ベクトルFArmとの関係はそれぞれ以下式(6A),(6B)で表わされる。
【0067】
【数6A】
・・・(6A)
【0068】
【数6B】
・・・(6B)
【0069】
式(5),式(6A),(6B)より,以下の関係が得られる。
【0070】
【数7】
・・・(7)
よって、以下の式(8)が得られる。
【0071】
【数8】
・・・(8)
上記の式(2)のように
FCylinder=[FBoom FArm]T
であるので,式(8)を変形して上述した式(1)が得られる。
【0072】
図5に戻り,制御演算部20dは,掘削反力ベクトルFDigとブーム角度θ1とアーム角度θ2(姿勢)とブームシリンダ2の直動力Fb及びアームシリンダ3の直動力Faに基づいて,限界値に達したシリンダ直動力Fb又はFaが減少する方向を演算する(ステップS130)。
【0073】
より詳しくは,制御演算部20dは,ブームシリンダ2及びアームシリンダ3のそれぞれの直動力のいずれか一方が限界値に達した場合,IMU27(第3センサ)及びIMU28(第4センサ)の検出信号とブームシリンダ2及びアームシリンダ3のそれぞれの直動力とに基づいてフロント作業機104の掘削動作点Pw(バケット107の爪先)に作用する掘削反力ベクトルFDigを演算し,その掘削反力ベクトルFDigと,IMU27(第3センサ)及びIMU28(第4センサ)の検出信号とブームシリンダ2及びアームシリンダ3のそれぞれの直動力とに基づいて,掘削反力ベクトルFDigの大きさを維持しながら上記限界値に達した油圧シリンダの直動力が減少する方向を演算する。
【0074】
次いで,制御演算部20dは,ステップS130で演算した,限界値に達した油圧シリンダの直動力が減少する方向にフロント作業機104の掘削動作点Pw(バケット107の爪先)が移動するようブームシリンダ2とアームシリンダ3を動作させるための制御指令を演算し,指令信号を流量制御弁11a,11b,12a,12bに出力する(ステップS140)。これによりブームシリンダ2とアームシリンダ3はステップS103で演算された直動力が減少する方向にフロント作業機104の掘削動作点(バケット107の爪先)が移動するよう制御される。
【0075】
ステップS130の限界値に達した油圧シリンダの直動力が減少する方向(以下単に直動力減少方向と言うことがある)の演算手法について説明する。
【0076】
直動力減少方向の演算手法には,例えば,以下がある。
【0077】
(a)現状のフロント作業機104(図1参照)の姿勢(以下単にフロント姿勢と言うことがある)近傍のヤコビアン行列J1,J2を求め,直動力ベクトルFCylinderについて繰り返し計算を行い,オンラインで求める手法;
(b)ヤコビアン行列J1,J2を油圧シリンダの稼働範囲のすべてのフロント姿勢について予め計算してフロント姿勢ごとにマップを作成し,それらのマップを用いて求める手法;
(c)フロント姿勢と掘削反力ベクトルFDig,直動力ベクトルFCylinderをセットにして,フロント姿勢,掘削反力ベクトルFDig,直動力ベクトルFCylinder(ブーム直動力,アーム直動力)を異ならせた多数のマップ(直動力減少方向検索マップ)を作成し,それらのマップを用いて求める手法。
【0078】
ステップS130の演算手法は,現状のフロント姿勢からシリンダ直動力が減少する方向が分かれば,上記以外のどのような手法であってもよい。
【0079】
図9及び図10は,上記(c)の演算手法に用いる直動力減少方向検索マップの一例を示す図である。
【0080】
直動力減少方向検索マップは,ある掘削反力ベクトルFDigに対して直動力ベクトルFCylinderの一部であるアーム直動力の大きさを白黒の濃淡(等高線)で示したものである。図9及び図10には,そのマップ上にフロント姿勢としてブームとアームを示す直線が示されている。白黒の濃淡は,位置情報とアーム直動力の大きさの情報が記憶された単位区画の集合であり,例えば位置情報はXY座標系の値として記憶され,アーム直動力の大きさは数値(スカラ値)で記憶されている。
【0081】
図9及び図10はアーム直動力についてのマップであるが,別途,ブーム直動力のマップもある。また,図9及び図10は,ある掘削反力ベクトルに対しての一例であり,掘削反力ベクトルごとに直動力の大きさを示す白黒の濃淡が異なるマップが存在する。
【0082】
制御演算部20dは,例えばアーム直動力が限界値に達した場合,そのときのフロント姿勢と掘削反力ベクトルとアーム直動力をセットにしたマップを選択し,フロント作業機104の現在の掘削動作点Pwの位置を基準として限界値に達したアーム直動力が減少する単位区画のうち,例えばアーム直動力が最も大きく減少する単位区画を選択し,その単位区画が位置する方向を直動力減少方向として選定し,その方向に掘削動作点Pwが移動するようにフロント姿勢を変える。
【0083】
図9及び図10において,符号Aは,アーム直動力が限界値に達し,直動力減少方向を検索するときの掘削動作点Pwの位置を示し,符号Bは,直動力減少方向が選定され,フロント姿勢を変えた後の掘削動作点Pwの位置を示している。直動力減少方向を検索するとき,フロント姿勢は図9の状態にあり,直動力減少方向に掘削動作点Pwが移動するようフロント姿勢を変えるとき,掘削動作点Pwは図10に示すように,位置Aから位置Bに移動する。
【0084】
このようにフロント姿勢を変えることで,掘削反力ベクトルの大きさ(掘削ベクトルの大きさ)が変わらなくても,ブームシリンダ2及びアームシリンダ3のそれぞれの直動力の負担割合が変わり,直動力が限界値に達したアームシリンダ3の直動力を減少させることできる。
【0085】
制御演算部20dは,ステップS140において,位置Aと位置Bの位置情報に基づいて,フロント作業機104の掘削動作点Pwを位置Aから位置Bに移動させるための制御指令を演算し,指令信号を出力する。
【0086】
ステップS140における制御指令の演算方法を説明する。
【0087】
ステップS140において,フロント作業機104の掘削動作点Pwを位置Aから位置Bに移動させるためには,掘削動作点PwがステップS130で演算した直動力が減少する方向に移動するよう,コントローラ20に入力した操作装置21a,22aの操作信号を補正すればよい。
【0088】
ここで,本実施形態では,コントローラ20内で,操作装置21a,22aの操作信号にステップS130で演算した直動力減少方向を介入させて操作信号を補正し,指令信号を生成している。しかし,操作装置21a,22aの操作信号にステップS130で演算した直動力減少方向が介入できれば,介入の形態はこれに限られない。
【0089】
図11は,本実施形態における直動力減少方向の介入の形態を示す図である。図11には,図2に示した油圧駆動装置が簡素化して示されている。前述したように,操作装置21a,22aの操作信号はコントローラ20に入力され,コントローラ20は,その操作信号にステップS130で演算した直動力減少方向を介入させて補正し,指令信号を生成する。この指令信号は油圧駆動装置の流量制御弁11a,11b,12a,12bのソレノイド11Sに直接出力される。
【0090】
図12は,ステップS130で演算した直動力減少向を油圧回路で介入させる形態を簡素化して示す図である。
【0091】
図12において,流量制御弁11は,油圧パイロット回路66から信号圧力が導かれる油圧駆動部11hを備えた油圧パイロット式の切換弁である。油圧パイロット回路66は,操作装置21a,22aのレバー操作によって切り換わり,通常モードの操作パイロット圧を生成する操作減圧弁60と,パイロット油圧源67を構成するパイロットポンプ61とパイロットリリーフ弁62と,コントローラ20からの指令信号により介入モードの制御パイロット圧を生成するソレノイド減圧弁63と,油圧駆動部11hに導かれる信号圧力を通常モードの操作パイロット圧と介入モードの制御パイロット圧とに切り換えるソレノイド切換弁64とを備えている。
【0092】
ブーム直動力とアーム直動力のいずれも限界値に達していない場合,コントローラ20は通常モードにあり,ソレノイド減圧弁63とソレノイド切換弁64はそれぞれ図示の位置にある。
【0093】
この通常モードでは,操作装置21a,22aにより生成された操作パイロット圧はソレノイド切換弁64を介して流量制御弁11の油圧駆動部11hに導かれ,ブームシリンダ2とアームシリンダ3は操作装置21a,22aのレバー操作に応じて駆動される。
【0094】
ブーム直動力とアーム直動力のいずれか一方が限界値に達すると,コントローラ20は,通常モードから介入モードに移行する。この介入モードにおいて,コントローラ20は,シリンダ直動力が減少する方向にブームシリンダ2とアームシリンダ3を動作させるための制御指令を演算し,ソレノイド減圧弁63とソレノイド切換弁64にそれぞれ指令信号を出力する。
【0095】
ソレノイド減圧弁63はコントローラからの指令信号に応じた介入モードの制御パイロット圧を生成し,ソレノイド切換弁64はコントローラからの指令信号により図示の位置から切り換わる。
【0096】
これによりソレノイド減圧弁63によって生成された介入モードの制御パイロット圧がソレノイド切換弁64を介して流量制御弁11の油圧駆動部11hに導かれ,ブームシリンダ2とアームシリンダ3は,アームシリンダ3の直動力が減少する方向にフロント作業機104の掘削動作点(バケット107の爪先)が移動するよう制御される。
【0097】
~効果~
本実施形態によれば,ブームシリンダ2及びアームシリンダ3の直動力のいずれか一方が限界値に達した場合,ブーム105とアーム106の姿勢に応じてブームシリンダ2又はアームシリンダ3の直動力が減少する方向を演算し,その方向にフロント作業機104の掘削動作点Pw(バケット先端)が移動するようブームシリンダ2及びアームシリンダ3の駆動を制御するため,掘削反力ベクトルの大きさ(掘削ベクトルの大きさ)が変わらなくても,ブームシリンダ2及びアームシリンダ3のそれぞれの直動力の負担割合が変わり,直動力が限界値に達したブームシリンダ2又はアームシリンダ3の直動力が減少させることができる。これによりブーム105とアーム106による掘削動作中に掘削反力による過負荷状態が生じた場合に,掘削動作の中断或いは掘削動作の不連続な軌道修正を行うことなく過負荷状態を解消し,掘削動作をより効率よく行うことができ,かつ操作性を向上させることができる。
【0098】
なお,本実施形態では,コントローラ20は上部旋回体103に配置したが,アクチュエータへの動作指示が可能であればコントローラ20をどこに配置してもよい。
【0099】
また,本実施形態では,ブーム105,アーム106,バケット107の3リンクの構成としたが,先端に作業を行う作業装置を有した2リンク以上の機構を持っていれば,リンク数やその形状などは何でもよい。また,「ブーム」及び「アーム」はリンクの名称であり,同等の機能を有するリンクであれば,他の名称であってもよい。
【0100】
更に,本実施形態では,圧力センサを用いて油圧シリンダの直動力を算出したが,油圧シリンダの直動力を計測できれば,センサの種類は問わず,例えば起歪体とひずみ計やピエゾ素子などをピストンロッドに埋設してもよい。
【0101】
また,本実施形態では,ブーム105及びアーム106の姿勢を検出するセンサとしてIMU27,28を用いたが,IMU27,28に代え,ブーム105及びアーム106の回転ジョイントに角度センサを設け,角度センサでブームシリンダ2及びアームシリンダ3の姿勢を計測してもよい。
【0102】
<第2の実施形態>
本発明の第2の実施形態を説明する。
【0103】
図13は,本実施形態に係わる制御システムを示す図である。
【0104】
本実施形態において,制御システムのコントローラ20は,図3に示した第1の実施形態のコントローラ20の機能要素に加えて,レバー操作方向判定部20eの機能要素を更に有している。
【0105】
コントローラ20は,レバー操作方向判定部20eにおいて,操作装置21a(第1操作装置)及び操作装置22a(第2操作装置)の操作信号に基づいて,操作装置21a及び操作装置22aのレバー操作方向がブームシリンダ2及びアームシリンダ3のそれぞれの伸び方向か縮み方向かを判定し,その判定結果を制御演算部20dに送る。
【0106】
制御演算部20dは,限界値に達した直動力が減少する方向の範囲の中に,ブームシリンダ2及びアームシリンダ3の伸び方向又は縮み方向と一致する範囲が存在するかどうかを判定し,一致する範囲が存在する場合は,その一致する範囲内で,限界値に達した直動力が減少する方向を演算し,その方向にフロント作業機104の掘削動作点Pwが移動するようブームシリンダ2及びアームシリンダ3の駆動を制御し,一致する範囲が存在しない場合は,ブームシリンダ2及びアームシリンダ3の駆動を停止させる。
【0107】
図14は,制御演算部20dの機能を説明するフローチャートである。
【0108】
制御演算部20dは,ステップS100~S120の後に,例えば、制御演算部20dにおいて選択した直動力減少方向検索マップを用い、ステップS130Aにおいて,掘削反力ベクトルFDigとブーム角度θ1とアーム角度θ2(姿勢)とブームシリンダ2の直動力Fb及びアームシリンダ3の直動力Faに基づいて,限界値に達したシリンダ直動力Fb又はFaが減少する方向の範囲(以下,直動力減少方向範囲と言うことがある)を演算する(ステップS130A)。
【0109】
図26は、直動力減少方向範囲の一例を示す図である。直動力減少方向範囲は,制御演算部20dにおいて選択した直動力減少方向検索マップにおいて、掘削動作点Pwの現在位置を基準にして演算される単位区画の直動力が減少する所定範囲の領域である。なお、所定の範囲の大きさや形状は予め定めておいてもよいし,掘削動作点Pwの移動速度にコントローラの演算刻み時間を乗じた値(次のステップまでの移動距離)を含む範囲として演算で求めてもよい。
【0110】
次に,制御演算部20dは,直動力減少方向範囲の中に,レバー操作方向判定部20eから取得したブームシリンダ2の伸び方向又は縮み方向と一致する範囲1(図15参照)又はアームシリンダ3の伸び方向又は縮み方向と一致する範囲2(図15参照)が存在するか否かを判定する(S132)。直動力減少方向範囲の中に範囲1及び範囲2のいずれも存在しない場合,制御演算部20dはブームシリンダ2及びアームシリンダ3を停止させる(S140D)。直動力減少方向範囲の中に範囲1又は範囲2が存在する場合,制御演算部20dは,更に直動力減少方向範囲の中に範囲1と範囲2のどちらか一方が存在するか否かを判定し(S134),直動力減少方向範囲の中に範囲1と範囲2のどちらか一方が存在する場合,制御演算部20dは,範囲1と範囲2のうち,直動力減少方向範囲の中に存在する範囲内で直動力が減少する方向を演算し,その方向にフロント作業機104の掘削動作点Pw(バケット107の爪先)が移動するようブームシリンダ2とアームシリンダ3を動作させるための制御指令を演算し,ブームシリンダ2及びアームシリンダ3を動作させる(S140A)。
【0111】
次に,直動力減少方向範囲の中に範囲1と範囲2の双方が存在し,双方が重複している場合(S136),制御演算部20dは,範囲1と範囲2の重複範囲内で直動力が減少する方向を演算し,その方向にフロント作業機104の掘削動作点Pw(バケット107の爪先)が移動するようブームシリンダ2とアームシリンダ3を動作させるための制御指令を演算し,ブームシリンダ2及びアームシリンダ3を動作させる(S140B)。
【0112】
ステップS136において,範囲1と範囲2の双方が重複していない場合,制御演算部20dは,範囲1と範囲2のうち,予め定めた一方の範囲を選択し,その範囲内で直動力が減少する方向を演算し,その方向にフロント作業機104の掘削動作点Pw(バケット107の爪先)が移動するようブームシリンダ2とアームシリンダ3を動作させるための制御指令を演算し,ブームシリンダ2及びアームシリンダ3を動作させる(S140C)。
【0113】
図15は,限界値に達したシリンダ直動力Fb又はFaが減少する方向の範囲(直動力減少方向範囲)と,ブームシリンダ2の伸び方向又は縮み方向と一致する範囲1及びアームシリンダ3の伸び方向又は縮み方向と一致する範囲2を示す図である。
【0114】
ブームシリンダ2の直動力減少方向範囲及びアームシリンダ3の直動力減少方向範囲は,前述したように、例えば、制御演算部20dにおいて選択した直動力減少方向検索マップを用いて演算された範囲であり(図14のステップS130A),図15にその範囲が斜線で示されている。
【0115】
図15において,ブームシリンダ2の伸び方向と一致する範囲1はアームシリンダ3によってアーム106が回動するときの掘削動作点Pwの移動軌跡Taのアーム106の回動支点Pv2側に形成され,ブームシリンダ2の縮み方向と一致する範囲1は移動軌跡Taのアーム106の回動支点Pv2の反対側かつ、ブームシリンダ2によってブーム105が回動するときの掘削動作点Pwの移動軌跡Tbのブーム105の回動支点Pv1側に形成される。アームシリンダ3の伸び方向と一致する範囲2は移動軌跡Tbの回動支点Pv1側に形成され,アームシリンダ3の縮み方向と一致する範囲2は移動軌跡Taの回動支点Pv2かつ移動軌跡Taの回動支点Pv1の反対側に形成される。
【0116】
~効果~
本実施形態によれば,ブームシリンダ2及びアームシリンダ3の少なくとも一方の伸縮方向が操作装置21a及び操作装置22aの操作信号が指示する伸縮方向と一致する場合に,ブーム105とアーム106の姿勢に応じて演算された,ブームシリンダ2又はアームシリンダ3の直動力が減少する方向にフロント作業機104の掘削動作点Pw(バケット先端)が移動するように制御を行うので,第1の実施形態の効果に加え,オペレータの操作をより反映した動作を行うことができ,操作性を一層向上させることができる。
【0117】
<第3の実施形態>
本発明の第3の実施形態を説明する。
【0118】
図16は,本実施形態に係わる油圧駆動装置の油圧回路を示す図である。図16に示す油圧駆動装置は,図2に示した油圧駆動装置と同様,可変容量型の油圧ポンプ10a(第1油圧ポンプ)及び油圧ポンプ10b(第2油圧ポンプ)と,オープンセンタ型の流量制御弁11a(第1流量制御弁)と,オープンセンタ型の流量制御弁12a(第2流量制御弁)と,オープンセンタ型の流量制御弁12b(第3流量制御弁)と,オープンセンタ型の第4流量制御弁11b(第4流量制御弁)と,リリーフ弁14a,14bとを備えている。
【0119】
また,本実施形態に係わる油圧駆動装置は,油圧ポンプ10aの吸収馬力が予め設定した最大馬力を超えないように油圧ポンプ10aの吐出流量を制御するレギュレータ56aと,油圧ポンプ10bの吸収馬力が予め設定した最大馬力を超えないように油圧ポンプ10bの吐出流量を制御するレギュレータ56bと,第1流量制御弁11aと第2流量制御弁12aとの間の第1センタバイパス通路15aを流れる圧油の中間圧力を検出する圧力センサ58a(第5センサ)と,第3流量制御弁12bと第4流量制御弁11bとの間の第2センタバイパス通路15bを流れる圧油の中間圧力を検出する圧力センサ58b(第6センサ)と,油圧ポンプ10aの吐出油路13aに接続され,油圧ポンプ10aの吐出圧力を検出する圧力センサ57a(第7センサ)と,油圧ポンプ10bの吐出油路13bに接続され,油圧ポンプ10bの吐出圧力を検出する圧力センサ57a(第8センサ)とを更に備えている。
【0120】
図17は,レギュレータ56a,56bのポンプ制御特性を示す図である。
【0121】
図17において,Pminは全ての操作装置が操作されていないときの油圧ポンプ10a,10bの最小吐出圧力であり,Pmaxはリリーフ弁14a,14bの設定圧によって定まる油圧ポンプ10a,10bの最大吐出圧力であり,qmaxは油圧ポンプ10a,10bの構造によって定まる最大容量(最大傾転角)であり,Qmaxはqmaxにポンプ回転数を乗じた油圧ポンプ10a,10bの最大流量である。図17では,ポンプ回転数が一定であると仮定してQmaxを示している。
【0122】
油圧ポンプ10a,10bの吐出圧力が最小圧力Pminと圧力Paの間にあるとき,油圧ポンプ10a,10bの最大容量はqmaxである。油圧ポンプ10a,10bの吐出圧力が最小圧力Paと最大圧力Pmaxの間にあるとき,油圧ポンプ10a,10bの最大容量は「ポンプ吐出圧力×容量=一定」のトルク特性曲線CTmax)に制限され,油圧ポンプ10a,10bの吐出圧力が上昇するにしたがって油圧ポンプ10a,10bの容量は減少し,油圧ポンプ10a,10bの吸収トルクが最大トルクTmaxを超えないように油圧ポンプ10a,10bの容量が制御される(トルク一定制御)。
【0123】
また,上記のように油圧ポンプ10a,10bの容量及びトルクが制御される結果,油圧ポンプ10a,10bの吐出流量及び吸収馬力も同様に制御される。すなわち,油圧ポンプ10a,10bの吐出圧力が最小圧力Pminと圧力Paの間にあるとき,油圧ポンプ10a,10bの最大流量はQmaxである。油圧ポンプ10a,10bの吐出圧力が最小圧力Paと最大圧力Pmaxの間にあるとき,油圧ポンプ10a,10bの最大流量は「ポンプ吐出圧力×流量=一定」の馬力特性曲線CHmax)に制限され,油圧ポンプ10a,10bの吐出圧力が上昇するにしたがって油圧ポンプ10a,10bの吐出流量は減少し,油圧ポンプ10a,10bの吸収馬力が最大馬力Hmaxを超えないように油圧ポンプ10a,10bの吐出流量が制御される(馬力一定制御)。
【0124】
図18は,本実施形態に係わる制御システムを示す図である。
【0125】
図18において,コントローラ20は,図18に示すように,図3に示した第1の実施形態のコントローラ20の機能要素に加えて,最大可能ポンプ吐出圧力演算部20fと直動力限界値演算部20gの機能要素を更に有し,記憶部20cに,第1の実施形態のコントローラ20の記憶部20cに記憶されていた直動力限界値(ブーム直動力Fbの限界値及びアーム直動力Faの限界値)に代えて,レギュレータ56a,56bの制御で用いる上記最大馬力Hmaxの設定を含むポンプ制御特性が記憶されている。
【0126】
また,コントローラ20には,図3に示した第1の実施形態のコントローラ20の入力信号(操作装置21a,22aの操作信号,圧力センサ25a,25b及び圧力センサ26a,26bの検出信号,IMU27,28の検出信号)に加えて,上述した圧力センサ58a,58bの検出信号が入力され,コントローラ20は,それらの入力信号に基づいて,図3に示した第1の実施形態のコントローラ20の演算処理に加え,以下の演算処理を行い,流量制御弁11a,12a,11b,12bを含む複数の流量制御弁と,レギュレータ56a,56bに指令信号を出力する。
【0127】
まず,コントローラ20は,制御演算部20dにおいて,圧力センサ57a,57bの検出信号と記憶部20cに記憶したポンプ制御特性の最大馬力Hmaxに基づいて,油圧ポンプ10a,10bの吸収馬力が最大馬力を超えないように油圧ポンプ10aの吐出流量を制御する指令値を演算し,レギュレータ56a,56bに指令信号を出力する。レギュレータ56a,56bは,その指令信号に基づいて,前述したトルク/馬力一定制御を行う。
【0128】
なお,レギュレータ56a,56bの制御はコントローラ20から出力される指令信号による電子制御ではなく,油圧ポンプ10a,10bの吐出圧力をレギュレータ56a,56bに導いて油圧ポンプ10a,10bの容量変更部材(例えば斜板)を駆動する油圧制御であってもよい。
【0129】
また,コントローラ20は,最大可能ポンプ吐出圧力演算部20fにおいて,操作装置21a,22aの操作信号と,圧力センサ58a,58bの検出信号と,ポンプ制御特性の最大馬力Hmaxとに基づいて,ブームシリンダ2及びアームシリンダ3のいずれかの直動力が限界値に達した過負荷状態にあると仮定した場合に最大馬力Hmaxによって制限される油圧ポンプ10a及び油圧ポンプ10bのそれぞれの最大可能吐出圧力を演算し,直動力限界値演算部20gにおいて,ブームシリンダ2及びアームシリンダ3のそれぞれのピストンの受圧面積に最大可能吐出圧力を乗じることで,ブームシリンダ2及びアームシリンダ3の駆動が停止して,ブームシリンダ2又はアームシリンダ3の排出側の圧力が0であると仮定したときのブームシリンダ2又はアームシリンダ3の最大可能直動力を演算し,制御演算部20dにおいて,この最大可能直動力を直動力の限界値として用い,ブームシリンダ2及びアームシリンダ3のそれぞれに対して,限界値に達した油圧シリンダの直動力が減少する方向を演算する。
【0130】
図19は,最大可能ポンプ吐出圧力演算部20fと直動力限界値演算部20gの処理内容の詳細を示すフローチャートである。図20は,最大可能ポンプ吐出圧力演算部20fにおける最大吐出可能圧力の演算原理の説明図である。
【0131】
まず,最大可能ポンプ吐出圧力演算部20fは,ブームシリンダ2とアームシリンダ3のいずれかの直動力が限界値に達してブームシリンダ2及びアームシリンダ3の駆動が停止する過負荷状態にあって,ブームシリンダ2又はアームシリンダ3に供給される圧油の流量が0であると仮定した場合に,任意のポンプ吐出圧Piを定め,その吐出圧力Piと,圧力センサ58a,58bによって検出したセンタバイパス通路15a.15bの中間圧力Pcと,現在の流量制御弁のセンタバイパス通路の開口面積Acとに基づいて,下記の式(9)に示すオリフィスの式によりセンタバイパス通過流量Qcを演算する(ステップS200)。
【0132】
【数9】
・・・(9)
【0133】
Ac:上流側流量制御弁のセンタバイパス開口面積
ある圧力Pp(Pi)に対してPcを検出すれば,上記オリフィス式からQcが
導出される。
【0134】
流量制御弁のセンタバイパス通路の開口面積Acは,操作装置21a,22aの操作信号と予め設定した流量制御弁11a,12bの開口面積特性(操作信号とメータイン開口面積との関係)とから算出することができる。
【0135】
次いで,最大可能ポンプ吐出圧力演算部20fは,過負荷状態におけるセンタバイパス通過流量Qcが馬力一定制御下の油圧ポンプ10a又は10bの最大流量QHmaxに等しいかどうか,すなわち,流量Qcが油圧ポンプ10a又は10bで吐出可能な流量であるかを判定する(ステップS210)。流量Qcが油圧ポンプ10a又は10bで吐出不可である場合,処理はステップS200に戻り,任意のポンプ吐出圧Piを変更し,ステップS210の判定で吐出可能となるまでステップS200,S210の処理を繰り返し,流量Qcが油圧ポンプ10a又は10bで吐出可能となる(流量Qcが最大流量QHmaxに等しくなる)任意のポンプ吐出圧Piを探索する。ステップS210の判定で,流量Qcが油圧ポンプ10a又は10bで吐出可能な場合,そのときの任意のポンプ吐出圧Piを最大可能吐出圧力として設定する(ステップS220)。
【0136】
次いで,直動力限界値演算部20gは,ブームシリンダ2及びアームシリンダ3の駆動が停止してブームシリンダ2又はアームシリンダ3の排出側の圧力が0であると仮定して,ブームシリンダ2又はアームシリンダ3のピストンの受圧面積に最大可能吐出圧力を乗じることで,ブームシリンダ2又はアームシリンダ3の最大可能直動力を演算する(ステップS230)。
【0137】
前述したように,制御演算部20dは,その最大可能直動力を直動力の限界値として用い,ブームシリンダ2及びアームシリンダ3のそれぞれに対して,限界値に達した油圧シリンダの直動力が減少する方向を演算する。
【0138】
~効果~
本実施形態によれば,特に,操作装置21a,22aの操作レバーが微操作であって,油圧ポンプ10a,10bの吐出圧力がリリーフ弁14a,14bの設定圧力まで上昇しない場合であっても,油圧回路の実際の動作状態に基づいて直動力の限界値を演算することで,より正確にブームシリンダ2及びアームシリンダ3のアクチュエータ直動力の限界値を設定でき,より効率よく掘削動作を行うことができる。
【0139】
<第4の実施形態>
本発明の第4の実施形態を説明する。
【0140】
図21は,本実施形態に係わる制御システムを搭載した油圧ショベルの斜視図である。
【0141】
本実施形態の制御システムは,上部旋回体103のキャビン110内に設置された表示装置70を更に備えている。
【0142】
また,本実施形態に係わる油圧駆動装置の油圧回路は,図16に示した第3の実施形態に係わる油圧駆動装置と同じである。
【0143】
図22は,本実施形態に係わる制御システムを示す図である。
【0144】
図22において,コントローラ20は,最大可能ポンプ吐出圧力演算部20fと制御演算部20dを含む,図18に示した第3の実施形態のコントローラ20と同様の機能要素を備えている。
【0145】
前述したように,コントローラ20は,最大可能ポンプ吐出圧力演算部20fにおいて,操作装置21a,22aの操作信号と,圧力センサ58a,58bの検出信号と,ポンプ制御特性の最大馬力Hmaxとに基づいて,ブームシリンダ2及びアームシリンダ3のいずれかの直動力が限界値に達した過負荷状態にあると仮定した場合に最大馬力Hmaxによって制限される油圧ポンプ10a及び油圧ポンプ10bのそれぞれの最大可能吐出圧力を演算する。
【0146】
ただし,本実施形態においては,最大可能ポンプ吐出圧力演算部20fで演算された最大可能吐出圧力は直動力限界値演算部20gだけでなく,制御演算部20dにも送られる。
【0147】
また,制御演算部20dは,直動力限界値演算部20gで演算されたブームシリンダ2及びアームシリンダ3のそれぞれの最大可能直動力を用いて第1表示処理を行い,圧力センサ57a,57bの検出信号が示す油圧ポンプ10a,10bの吐出圧力と最大可能ポンプ吐出圧力演算部20fで演算された最大可能吐出圧力を用いて第2表示処理を行い,表示装置70に指令信号を出力する。
【0148】
図23は,制御演算部20dの第1表示処理を示すフローチャートである。
【0149】
制御演算部20dは,ブームシリンダ2及びアームシリンダ3のそれぞれの直動力が限界値に達したかどうかをシリンダごとに判定し(ステップS300),ブームシリンダ2及びアームシリンダ3のいずれも直動力が限界値に達しないときは,ブームシリンダ2及びアームシリンダ3のイラストの配色をデフォルト色(標準色)のままとする(ステップS310)。一方,制御演算部20dは,ブームシリンダ2及びアームシリンダ3のいずれかの直動力が限界値に達したとき,指令信号を表示装置70に出力し,直動力が限界値に達した油圧シリンダのイラストの配色をデフォルト色から変更する(ステップS320)。
【0150】
図24は,制御演算部20dの第2表示処理を示すフローチャートである。
【0151】
制御演算部20dは,油圧ポンプ10a,10bのそれぞれの吐出圧力は最大可能吐出圧力に近づいたかどうかをポンプごとに判定し(ステップS350),油圧ポンプ10a,10bのいずれも吐出圧力が最大可能吐出圧力に近づいていないときは,油圧ポンプ10a,10bのイラストの配色をデフォルト色(標準色)のままとする(ステップS360)。一方,制御演算部20dは,油圧ポンプ10a,10bのいずれかの吐出圧力が最大可能吐出圧力に近づいたとき,指令信号を表示装置70に出力し,吐出圧力が最大可能吐出圧力に近づいた油圧ポンプのイラストの配色をデフォルト色から変更する(ステップS370)。
【0152】
図25は,上記第1表示処理と第2表示処理により表示装置70に表示される画像の変化を示す図である。
【0153】
ブームシリンダ2及びアームシリンダ3のいずれか(図示の例ではアームシリンダ3)の直動力が限界値に達したとき,図25の右側に示すように,直動力が限界値に達した油圧シリンダ(アームシリンダ3)のイラストの配色が変わり,オペレータは,視覚的に,直動力が限界値に達した油圧シリンダを把握することができる。
【0154】
同様に,油圧ポンプ10a,10bのいずれか(図示の例では油圧ポンプ10b)の吐出圧力が最大可能吐出圧力に近づいたときは,図25の左側に示すように吐出圧力が最大可能吐出圧力に近づいた油圧ポンプ(図示の例では油圧ポンプ10b)のイラストの配色が変わり,オペレータは,視覚的に,吐出圧力が最大可能吐出圧力に近づいた油圧ポンプを把握することができる。
【0155】
なお,本実施形態では,掘削時の油圧ポンプ10a,10bの負荷状態とブームシリンダ2及びアームシリンダ3の負荷状態の両方を表示装置70に表示させたが,一方だけを表示させてもよい。
【0156】
~効果~
本実施形態によれば,オペレータは,視覚的に,吐出圧力が最大可能吐出圧力に近づいた油圧ポンプ,或いは直動力が限界値に達した油圧シリンダを把握することができるので,掘削時の油圧ポンプ10a,10b及び/又はブームシリンダ2及びアームシリンダ3の負荷状態を適切に把握することができ,操作効率を一層向上することができる。
【0157】
<その他>
上記実施形態では,限界値に達したブームシリンダ2及びアームシリンダ3の直動力が減少する方向を算出するに際して,IMU27,28で検出したブームシリンダ2及びアームシリンダ3のそれぞれの姿勢を用いて掘削反力ベクトルを演算したが,姿勢に加え,ブームシリンダ2及びアームシリンダ3の速度と加速度と運動方程式を用いて掘削反力ベクトルを演算してもよい。
【0158】
ブームシリンダ2及びアームシリンダ3の速度と加速度は,例えば,姿勢を検出するIMU27,28で検出してもよいし,独立した速度センサ及び加速度センサを用いてもよい。また,ブームシリンダ2及びアームシリンダ3の姿勢を回転ジョイントの角度センサで計測する場合は,角度センサの角度情報を微分し,速度及び加速度を求めてもよい。
【0159】
ブームシリンダ2及びアームシリンダ3の速度と加速度を含めて掘削反力ベクトルを演算することで,掘削反力ベクトルをより正確に演算することができ,その結果,限界値に達したブームシリンダ2及びアームシリンダ3の直動力が減少する方向をより正確に演算でき,より効率よく掘削動作を行うことができる。
【0160】
また,上記実施形態では,作業機械が油圧ショベルである場合について説明したが,作業機械は車体とブーム及びアームを備えるフロント作業機とを有するものであれば,油圧ショベル以外の作業機械(例えば,ホイール式の油圧ショベル,油圧クレーン,ホイールローダ等)であってもよい。
【符号の説明】
【0161】
100 油圧ショベル
103 上部旋回体(車体)
104 フロント作業機
105 ブーム
106 アーム
107 バケット
2 ブームシリンダ
3 アームシリンダ
4 バケットシリンダ
10a,10b 油圧ポンプ(第1及び第2油圧ポンプ)
11a,12a 流量制御弁(第1及び第2流量制御弁)
12a,12b 流量制御弁(第3及び第4流量制御弁)
13a,13b 吐出油路
14a,14b リリーフ弁
15a,15b センタバイパス通路(第1及び第2センタバイパス通路)
20 コントローラ
20a 直動力演算部
20b 姿勢演算部
20c 記憶部
20d 制御演算部
20e レバー操作方向判定部
20f 最大可能ポンプ吐出圧力演算部
20g 直動力限界値演算部
21,22 操作装置
21a ブーム用の操作装置
22a アーム用の操作装置
25a,25b 圧力センサ(第1センサ)
26a,26b 圧力センサ(第2センサ)
27,28 IMU(第3及び第4センサ)
56a,56b レギュレータ(第1及び第2レギュレータ)
57a,57b 圧力センサ(第7及び第8センサ)
58a,58b 圧力センサ(第5及び第6センサ)
70 表示装置
図1
図2
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図5
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