(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023172772
(43)【公開日】2023-12-06
(54)【発明の名称】測位システム、制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G01S 19/28 20100101AFI20231129BHJP
G01S 19/22 20100101ALI20231129BHJP
【FI】
G01S19/28
G01S19/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022084817
(22)【出願日】2022-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野田 雅明
【テーマコード(参考)】
5J062
【Fターム(参考)】
5J062BB01
5J062CC07
5J062DD22
5J062DD23
5J062EE01
5J062FF01
5J062FF02
5J062FF04
5J062FF06
(57)【要約】
【課題】測位演算の精度低下を抑制する。
【解決手段】測位システム1は、撮像部4と、画像生成部93と、選別部94と、測位演算部98と、を備える。撮像部4は、観測点から天空の第1画像を撮像する。画像生成部93は、第1画像に、複数の測位衛星2の位置を対応付けた第2画像を生成する。選別部94は、第2画像に基づいて、複数の測位衛星2のなかから、観測点から見て遮蔽物によって遮蔽されていない第1衛星と、観測点から見て遮蔽物によって遮蔽されている第2衛星と、を選別する。測位演算部98は、第1衛星から送信される第1信号と、第2衛星22から送信されて観測点の周囲に存在する反射体によって反射された第2信号と、観測点に対する反射体の相対位置の情報と、に基づいて観測点の位置を測位する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
観測点から天空の第1画像を撮像する撮像部と、
前記第1画像に、複数の測位衛星の位置を対応付けた第2画像を生成する画像生成部と、
前記第2画像に基づいて、前記複数の測位衛星のなかから、前記観測点から見て遮蔽物によって遮蔽されていない第1衛星と、前記観測点から見て遮蔽物によって遮蔽されている第2衛星と、を選別する選別部と、
前記第1衛星から送信される第1信号と、前記第2衛星から送信されて前記観測点の周囲に存在する反射体によって反射された第2信号と、前記観測点に対する前記反射体の相対位置の情報と、に基づいて前記観測点の位置を測位する測位演算部と、を備える
測位システム。
【請求項2】
前記測位演算部は、前記第1信号から、前記第1衛星と前記観測点との第1距離を演算し、前記第2信号及び前記情報から、前記第2衛星と前記観測点との第2距離を演算し、前記第1距離と前記第2距離とに基づいて前記観測点の位置を測位する
請求項1に記載の測位システム。
【請求項3】
前記観測点の周囲の第3画像を撮像する周囲撮像部と、
前記第3画像から、前記情報を生成する情報生成部と、を更に備える
請求項1に記載の測位システム。
【請求項4】
前記観測点が移動を開始する前の第1時点から、前記観測点が移動を開始した後の第2時点までの間における前記観測点の移動量を検出する移動量検出部と、
前記第1時点における前記観測点の第1位置と、前記移動量検出部による前記移動量の検出結果と、に基づいて、前記観測点の前記第2時点における第2位置を演算する補正部と、を更に備える
請求項1に記載の測位システム。
【請求項5】
前記第1信号を受信する第1受信部と、
前記第1受信部とは別の、前記反射体によって反射された反射波である前記第2信号を受信する第2受信部と、を更に備える
請求項1に記載の測位システム。
【請求項6】
前記測位演算部は、前記観測点が移動中の場合は、前記第1信号に基づいて前記観測点の位置を測位する
請求項1に記載の測位システム。
【請求項7】
外部装置と通信可能な通信部を更に有し、
前記通信部は、前記第2信号及び前記情報を前記外部装置に送信し、
前記外部装置は、前記第2信号及び前記情報から、前記第2衛星と前記観測点との第2距離を演算し、
前記通信部は、前記外部装置による前記第2距離の演算結果を受信する
請求項1に記載の測位システム。
【請求項8】
観測点から天空の第1画像を撮像する撮像ステップと、
前記第1画像に、複数の測位衛星の位置を対応付けた第2画像を生成する画像生成ステップと、
前記第2画像に基づいて、前記複数の測位衛星のなかから、前記観測点から見て遮蔽物によって遮蔽されていない第1衛星と、前記観測点から見て遮蔽物によって遮蔽されている第2衛星と、を選別する選別ステップと、
前記第1衛星から送信される第1信号と、前記第2衛星から送信されて前記観測点の周囲に存在する反射体によって反射された第2信号と、前記観測点に対する前記反射体の相対位置の情報と、に基づいて前記観測点の位置を測位する測位演算ステップと、を含む
制御方法。
【請求項9】
コンピュータシステムに、請求項8に記載の制御方法を実行させる
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、測位システム、制御方法及びプログラムに関し、より詳細には、測位衛星からの信号を受信することによって現在位置の測位を行う測位システム、制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の測位環境情報採集装置は、測位地点及び測位時刻における天空の障害物位置の情報を採集する。測位環境情報採集装置は、GPSユニットと、天空撮影ユニットと、撮影時刻データ作成ユニットと、記録ユニットと、を備える。GPSユニットは、GPS信号等の衛星測位信号を受信し位置演算を行って測位位置データを算出する。天空撮影ユニットは、天空を撮影して天空画像データを作成する。撮影時刻データ作成ユニットは、天空を撮影した時刻である撮影時刻データを作成する。記録ユニットは、測位位置データ、天空画像データ及び撮影時刻データを記録する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されたような測位環境情報採集装置において、GPSユニットと測位衛星との間に遮蔽物が存在し、測位衛星信号を直接受信できない場合がある。このような場合に、GPSユニットが、周囲の建物などで反射された測位衛星信号を受信して測位を行うと、測位演算の精度が低下する可能性がある。
【0005】
本開示は上記事由に鑑みてなされ、測位演算の精度低下を抑制することができる測位システム、制御方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る測位システムは、撮像部と、画像生成部と、選別部と、測位演算部と、を備える。前記撮像部は、観測点から天空の第1画像を撮像する。前記画像生成部は、前記第1画像に、複数の測位衛星の位置を対応付けた第2画像を生成する。前記選別部は、前記第2画像に基づいて、前記複数の測位衛星のなかから、前記観測点から見て遮蔽物によって遮蔽されていない第1衛星と、前記観測点から見て遮蔽物によって遮蔽されている第2衛星と、を選別する。前記測位演算部は、前記第1衛星から送信される第1信号と、前記第2衛星から送信されて前記観測点の周囲に存在する反射体によって反射された第2信号と、前記観測点に対する前記反射体の相対位置の情報と、に基づいて前記観測点の位置を測位する。
【0007】
本開示の一態様に係る制御方法は、撮像ステップと、画像生成ステップと、選別ステップと、測位演算ステップと、を含む。前記撮像ステップでは、観測点から天空の第1画像を撮像する。前記画像生成ステップでは、前記第1画像に、複数の測位衛星の位置を対応付けた第2画像を生成する。前記選別ステップでは、前記第2画像に基づいて、前記複数の測位衛星のなかから、前記観測点から見て遮蔽物によって遮蔽されていない第1衛星と、前記観測点から見て遮蔽物によって遮蔽されている第2衛星と、を選別する。前記測位演算ステップでは、前記第1衛星から送信される第1信号と、前記第2衛星から送信されて前記観測点の周囲に存在する反射体によって反射された第2信号と、前記観測点に対する前記反射体の相対位置の情報と、に基づいて前記観測点の位置を測位する。
【0008】
本開示の一態様に係るプログラムは、コンピュータシステムに、前記制御方法を実行させる。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、測位演算の精度低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る測位システムにおける測位衛星からの信号の受信状態を説明するための説明図である。
【
図2】
図2は、同上の測位システムの構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、同上の測位システムが撮像する第1画像の模式図である。
【
図4】
図4は、同上の測位システムによる第1画像のエッジ検出処理を説明するための模式図である。
【
図5】
図5は、同上の測位システムが生成する第2画像の模式図である。
【
図6】
図6は、同上の測位システムが生成する相対位置情報を説明するための模式図である。
【
図7】
図7は、同上の測位システムによる第2画像における遮蔽領域の設定処理を説明するための模式図である。
【
図8】
図8は、同上の測位システムにおける第2画像の生成動作を説明するためのフローチャートである。
【
図9】
図9は、観測点が停止している場合の、同上の測位システムにおける測位動作を説明するためのフローチャートである。
【
図10】
図10は、同上の測位システムが生成する第2画像における遮蔽領域の補正処理を説明するための模式図である。
【
図11】
図11は、観測点が移動している場合の、同上の測位システムにおける測位動作を説明するためのフローチャートである。
【
図12】
図12は、変形例2の測位システムの構成を示すブロック図である。
【
図13】
図13は、変形例3の測位システムの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示の実施形態に係る測位システム1について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態及び変形例は、本開示の一例に過ぎず、本開示は、実施形態及び変形例に限定されない。この実施形態及び変形例以外であっても、本開示の技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0012】
(1)概要
まず、本実施形態の測位システム1の概要について、
図1~
図3、
図5を参照して説明する。
【0013】
測位システム1は、複数の測位衛星2を有する全地球航法衛星システム(GNSS:Global NavigationSatellite System)を利用して、現在位置の測位を行うためのシステムである。測位システム1は、
図1に示すように、屋外の作業場G1において作業を自動で実施する移動体3に搭載され、複数の測位衛星2から送信される信号に基づいて移動体3の作業場G1における現在位置を測位する。なお、測位システム1が利用可能なGNSSとしては、例えば、GPS(Global Positioning System)、GLONASS(Global Navigation Satellite System)、Galileo、BeiDou(Bei Dou Navigation Satellite System)、QZSS(Quasi-Zenith Satellite System)、NavIC(Navigation Indian Constellation)等が挙げられる。
【0014】
移動体3は、例えば、測位システム1によって測位された自己の位置情報、及び、例えば外部の制御装置から与えられた目標位置の情報に基づいて、目標位置まで自律走行する。ここで、測位システム1が搭載される移動体3は、例えば屋外のコンテナヤードにおいてコンテナの運搬作業を行う無人フォークリフト、建築現場において土木作業を実施する重機等の、比較的低速で移動する移動体である。
【0015】
測位システム1は、
図2に示すように、撮像部4と、画像生成部93と、選別部94と、測位演算部98と、を備える。
【0016】
撮像部4は例えばカメラ41を有し、観測点P1(
図1参照)から天空の第1画像B1(
図3参照)を撮像する。なお本開示でいう「観測点P1」は、移動体3においてカメラ41が設置される位置である。また、本開示でいう「天空」とは、観測点P1から地平線を見た場合の、地平線より上側の領域を指す。
【0017】
画像生成部93は、第1画像B1に、複数の測位衛星2の位置を対応付けた第2画像B2(
図5参照)を生成する。
【0018】
選別部94は、第2画像B2に基づいて、複数の測位衛星2のなかから、観測点P1から見て遮蔽物13によって遮蔽されていない可視衛星(第1衛星)21(
図1参照)と、観測点P1から見て遮蔽物13によって遮蔽されている不可視衛星(第2衛星)22と、を選別する。
【0019】
測位演算部98は、第1衛星21から送信される第1信号Sig1と、第2衛星22から送信されて観測点P1の周囲に存在する反射体13Aによって反射された第2信号Sig2と、観測点P1に対する反射体13Aの相対位置の情報と、に基づいて観測点P1の位置を測位する。
【0020】
ここにおいて、観測点P1の周囲に存在する建物などの物体が測位衛星2からの信号を遮蔽する場合、この物体は遮蔽物13となる。また、観測点P1の周囲に存在する物体が、測位衛星2からの信号を反射し、その反射信号を測位システム1が受信する場合、この物体は反射体13Aとなる。
【0021】
本実施形態に係る測位システム1によれば、以下のような利点がある。
【0022】
図1に示すように、移動体3が作業を実施する作業場G1、又は作業場G1の周囲に、例えば建物、橋梁、山岳のような、遮蔽物13が存在する場合、複数の測位衛星2のうち一部の測位衛星2が、遮蔽物13によって遮蔽される場合がある。この場合、移動体3に搭載される測位システム1は遮蔽物13によって遮蔽される測位衛星2(第2衛星22)から直接信号を受信することはできないが、第2衛星22から送信され、観測点P1の周囲にある反射体13Aによって反射された信号(第2信号Sig2)を受信できる場合がある。反射信号である第2信号Sig2を第2衛星22から直接受信した信号として観測点P1の測位演算に使用した場合、観測点P1と第2衛星22との距離D2を正確に演算することができず、測位演算の精度が低下する可能性がある。本実施形態の測位システム1によれば、観測点P1に対する反射体13Aの相対位置の情報を用いて第2信号Sig2の経路R1を推定することができる。これにより、観測点P1と第2衛星22との距離D2を正確に演算することができ、第2信号Sig2を観測点P1の測位演算に使用した場合の測位演算の精度低下を抑制することができる。さらに言えば、観測点P1の測位演算に使用する測位衛星2の数が増えるので、測位演算の精度が向上するという利点がある。
【0023】
(2)詳細
以下に、本実施形態に係る測位システム1について、
図1~
図11を参照して、詳しく説明する。
【0024】
(2.1)構成
まず、測位システム1の構成について説明する。
【0025】
測位システム1は、
図2に示すように、撮像部4と、検出部5と、第1通信部6と、第2通信部7と、第3通信部8と、処理部9と、投光器10と、記憶部11と、を備える。
【0026】
撮像部4は、観測点P1の周囲を全周(360°)撮像可能なカメラ41を含み、カメラ41は、例えば魚眼レンズ付きの可視光カメラである。なお、カメラ41は、赤外線カメラであってもよいし、可視光カメラと赤外線カメラの両方の機能を備えていてもよい。
【0027】
撮像部4は、観測点P1から天空の第1画像B1(
図3参照)を撮像する。
【0028】
また、撮像部4は、観測点P1の周囲の第3画像B3を撮像する周囲撮像部4Aとしての機能を備える。この場合、周囲撮像部4Aが備えるカメラ41は撮像対象との距離を測定可能な例えばデプスカメラ、もしくはステレオカメラとしての機能を備える。カメラ41によって撮像される第3画像B3には、観測点P1と観測点P1の周囲の撮像対象との距離の情報が含まれる。本実施形態では、第3画像B3は、例えば、
図3に示す第1画像B1の撮像領域内の撮像対象に、観測点P1との距離の情報が付加された画像である。なお、周囲撮像部4Aが、撮像部4とは別に設けられてもよい。その場合に、周囲撮像部4Aはステレオカメラを備えてもよいし、レーザ等を使用した距離測定装置を備えてもよい。
【0029】
検出部5は、方位検出部51と、傾き検出部52と、加速度検出部53と、角速度検出部54と、を備える。
【0030】
方位検出部51は、観測点P1を中心とする方位を検出する。方位検出部51が検出した方位の情報(方位情報)は、処理部9(画像生成部93)による画像合成処理に利用される。
【0031】
傾き検出部52は、カメラ41の撮像方向の、鉛直方向に対する傾きを検出する。ここで言う「カメラ41の撮像方向」とは、カメラ41のレンズの光軸方向を示す。
【0032】
第1画像B1は、カメラ41の撮像方向(第1画像B1における天頂方向)が、鉛直方向(重力方向)と一致するように撮像されることが好ましいが、例えば測位システム1が搭載される移動体3が、作業場G1の路面状況等の影響により傾いている場合に、撮像方向と鉛直方向がずれる可能性がある。このような場合に、傾き検出部52は、撮像方向の鉛直方向に対する傾きを検出する。傾き検出部52が検出した傾きの情報(傾き情報)は、処理部9(画像生成部93)による画像合成処理時の傾き補正処理に利用される。
【0033】
方位検出部51及び傾き検出部52は、例えば、地球の磁力を検出する地磁気センサによって実現される。なお、方位検出部51及び傾き検出部52が、互いに異なるセンサによって実現されてもよい。
【0034】
加速度検出部53は、観測点P1が移動している場合に、観測点P1の加速度を検出する。カメラ41が設置される観測点P1は例えば移動体3の屋根部分であり、移動体3が移動すると観測点P1も移動する。つまり、加速度検出部53は、移動体3の加速度を検出する。加速度検出部53によって検出された移動体3の加速度は、移動体3の移動距離の算出に用いられる。
【0035】
角速度検出部54は、観測点P1が移動している場合に、観測点P1の角速度を検出する。換言すると、角速度検出部54は、移動体3の角速度を検出する。角速度検出部54によって検出された移動体3の角速度は、移動体3の移動方向の算出に用いられる。
【0036】
第1通信部6は、複数の測位衛星2から送信される信号を、所定の間隔で受信するための信号受信アンテナ61を含む。
【0037】
複数の衛星2から直接送信される信号は右旋円偏波であり、複数の測位衛星2から送信されて反射体13Aによって反射された信号は左旋円偏波である。信号受信アンテナ61は、例えば、デュアル偏波アンテナ等の技術を用いて、右旋円偏波及び左旋円偏波の直交する偏波のいずれも受信可能に構成されている。また、信号受信アンテナ61は、受信した右旋円偏波及び左旋円偏波を判別可能であり、それぞれを分離して出力することが可能である。
【0038】
第1通信部6は、信号受信アンテナ61が受信した信号を処理部9に送信する。信号受信アンテナ61が複数の測位衛星2から受信する信号は、特定の周波数を有しており、複数の情報を示すコード情報が含まれる。コード情報には、例えば、信号の送信元の測位衛星2を特定する識別情報、信号の発信時刻の情報(時刻情報)、信号の送信元の測位衛星2の軌道情報、信号の遅延を補正するための補正情報等が含まれる。
【0039】
第2通信部7は、直接的、又はネットワーク若しくは中継器等を介して間接的に、外部装置と通信を行う通信インターフェースである。第2通信部7が通信する外部装置は、例えば、位置が既知である基準点に設置された基準局12(
図1参照)である。
【0040】
第3通信部8は、直接的、又はネットワーク若しくは中継器等を介して間接的に、移動体3の移動を制御する移動制御部(図示せず)と通信する。移動制御部は、第3通信部8を介して測位システム1から受信した移動体3の位置の情報に基づいて、移動体3の移動を制御する。第3通信部8と移動制御部との間の通信方式としては、無線通信又は有線通信の適宜の通信方式が採用される。
【0041】
処理部9は、例えば、メモリ及びプロセッサを含むコンピュータシステムを主構成とする。すなわち、コンピュータシステムのメモリに記憶されたプログラムを、プロセッサが実行することにより、処理部9の機能が実現される。プログラムはメモリに予め記憶されていてもよいし、インターネット等の電気通信回線を通して提供されてもよく、メモリカード等の非一時的記憶媒体に記憶されて提供されてもよい。
【0042】
処理部9は、衛星位置算出部91と、エッジ検出部92と、画像生成部93と、選別部94と、移動量検出部95と、第1補正部96と、第2補正部97と、測位演算部98と、出力部99と、情報生成部100と、を有する。なお、衛星位置算出部91、エッジ検出部92、画像生成部93、選別部94、移動量検出部95、第1補正部96、第2補正部97、測位演算部98、出力部99及び情報生成部100は、処理部9によって実現される機能を示しているに過ぎず、必ずしも実体のある構成を示しているわけではない。
【0043】
処理部9の各部の機能については、「(2.2)動作説明」において詳細に説明するので、ここでは大まかな構成についてのみ説明する。
【0044】
衛星位置算出部91は、測位衛星2の軌道情報及び時刻情報等の情報と、観測点P1の略位置と、から観測点P1から鉛直方向に天空を見た場合の、複数の測位衛星2の位置を算出する。なお、測位衛星2の軌道情報及び時刻情報等の情報は、観測点P1の測位開始までに予め記憶部11に記憶されてもよいし、測位衛星2から送信される信号に含まれるコード情報から取得してもよいし、第2通信部7又は第3通信部8を介して外部から取得してもよい。また、観測点P1の略位置は、観測点P1の測位開始までに予め記憶部11に記憶されてもよいし、複数の測位衛星2から送信される信号に含まれるコード情報から算出されてもよい。
【0045】
エッジ検出部92は、撮像部4が撮像した第1画像B1から、例えば輝度が不連続な部分をエッジとして検出し、
図4に示すように、第1画像B1をエッジに囲われた複数の領域(領域A1~A5)に分割する。
【0046】
画像生成部93は、領域分割された第1画像B1に、衛星位置算出部91が算出した複数(例えば18機)の測位衛星2の位置を対応付けた第2画像B2を生成する。一例として、画像生成部93は、領域分割された第1画像B1に、18機の測位衛星2の位置を示すマーカM1~M18を合成した第2画像B2(
図5参照)を生成する。
【0047】
また、画像生成部93は、複数の測位衛星2の各々を判定対象の測位衛星とし、判定対象の測位衛星から送信される信号のC/N比が所定値以下であるか否かを判定する。ここで、「C/N比が所定値以下」とは、受信した測位衛星2の信号を評価することで算出されるC/N比の値が所定値以下である場合の他に、測位衛星2からの信号レベルが弱く、観測点P1において測位衛星2からの信号を受信できない場合も含まれる。画像生成部93は、第2画像B2において、信号のC/N比が所定値以下である判定対象の測位衛星2に対応するマーカを含む領域を、遮蔽物13に対応する遮蔽領域として設定する。
【0048】
移動量検出部95は、加速度検出部53の検出結果、角速度検出部54の検出結果及び測位衛星2から送信される信号に含まれる時刻情報から観測点P1(移動体3)の移動量を検出する。
【0049】
第1補正部96は、移動量検出部95による観測点P1の移動量の検出結果に基づいて、第2画像B2における遮蔽領域の位置を補正する。
【0050】
選別部94は、第2画像B2に基づいて、マーカM1~M18のなかから、遮蔽領域に含まれないマーカと、遮蔽領域に含まれるマーカとを選別する。換言すると、選別部94は、第2画像B2に基づいて、第2画像B2上に合成されたマーカM1~M18に対応する複数の測位衛星2のなかから、観測点P1から見て遮蔽物13によって遮蔽されていない第1衛星21と、遮蔽物13によって遮蔽されている第2衛星22と、を選別する。
【0051】
情報生成部100は、周囲撮像部4Aによって撮像された第3画像B3から、観測点P1に対する反射体13Aの相対位置の情報を生成する。上述したように、第3画像B3には、観測点P1と観測点P1の周囲の撮像対象との距離の情報が含まれている。情報生成部100は、観測点P1と観測点P1の周囲の撮像対象との距離の情報から、観測点P1に対する反射体13Aの相対位置の情報を含む相対位置情報を生成する。相対位置情報は、
図6に示すように、観測点P1の周囲の3D情報であり、観測点P1の周囲の遮蔽物13の相対位置の情報も含んでいる。なお、
図6は相対位置情報の説明のための模式図であって、相対位置情報が可視化されることは必須ではない。
【0052】
測位演算部98は、第1距離演算部981と、第2距離演算部982と、統合演算部983と、を含む。
【0053】
第1距離演算部981は、第1衛星21から送信される右旋円偏波である第1信号Sig1から、第1衛星21と観測点P1との第1距離D1を演算する。
【0054】
第2距離演算部982は、第2衛星22から送信され反射体13Aによって反射された左旋円偏波である第2信号Sig2と、観測点P1に対する反射体13Aの相対位置の情報から、第2衛星22と観測点P1との第2距離D2を演算する。尚、第2衛星22の選定にあたっては、衛星信号が受信可能な測位衛星2のうち、第2画像B2における遮蔽領域の位置に重なる測位衛星2を抽出し、その中で、左旋円偏波信号である第2信号Sig2のC/N比が所定値以上であるものの選択を行う。
【0055】
統合演算部983は、第1距離D1と、第2距離D2と、に基づいて観測点P1の位置を測位する。
【0056】
第2補正部97は、観測点P1が移動している場合に、測位演算部98による観測点P1の測位結果と、移動量検出部95による観測点P1の移動量の検出結果に基づいて、観測点P1の位置を補正する。
【0057】
出力部99は、測位演算部98によって測位された観測点P1の位置情報を、第3通信部8を介して、移動体3の移動制御部に出力する。
【0058】
投光器10は、観測点P1の周囲を照明する照明装置である。投光器10は、カメラ41の近傍において、例えば、投光器10からの出射光の光軸方向が、カメラ41のレンズの光軸方向と平行になるように設置される。投光器10は、例えばLED(Light Emitting Diode)を光源とする。
【0059】
例えば夜間等のように、観測点P1の周囲が暗い場合においても、投光器10で観測点P1の周囲を照明することによって、エッジ検出部92によるエッジ検出が可能な輝度分布を有する第1画像B1を撮像することができる。なお、カメラ41が赤外線カメラである場合、投光器10は赤外光で観測点P1の周囲を照明すればよい。
【0060】
記憶部11は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)等からなる。記憶部11は、検出部5による検知結果、測位衛星2から送信される信号に含まれるコード情報等を記憶する。
【0061】
(2.2)動作説明
測位システム1の動作について図を参照して説明する。
【0062】
(2.2.1)第2画像の生成動作
測位システム1による第2画像B2の生成動作を
図3~
図7及びフローチャートである
図8を参照して説明する。なお、
図8に示すフローチャートは、測位システム1による第2画像B2の生成動作の一例に過ぎず、処理の順序が適宜変更されてもよいし、処理が適宜追加又は省略されてもよい。
【0063】
まず、測位システム1の測位演算部98は、複数の測位衛星2から送信される信号のうち、例えば右旋円偏波である第1信号Sig1から、観測点P1の大まかな概算位置(略位置)を算出する(ステップST1)。第1信号Sig1に基づいた観測点P1の略位置の測位は、例えば、第1距離演算部981によって行われる。つまり、第1距離演算部981は、第1信号Sig1から観測点P1の略位置を測位可能に構成されている。なお、観測点P1の略位置の測位は、第1信号Sig1及び第2信号Sig2に基づいて行われてもよい。
【0064】
次に、衛星位置算出部91は、観測点P1の略位置と、複数の測位衛星2から送信される信号に含まれるコード情報から、観測点P1から鉛直方向に天空を見た場合の複数の測位衛星2の位置を算出する(ステップST2)。なお、信号のコード情報に含まれる情報に対応する情報は、第2通信部7を介して外部(携帯キャリアが提供する情報サービス等)から取得してもよい。
【0065】
撮像部4は、第1時点において、観測点P1から天空の第1画像B1(
図3参照)を撮像する(ステップST3)。
【0066】
また、加速度検出部53及び角速度検出部54は、第1時点における観測点P1の加速度、観測点P1の角速度をそれぞれ検出し、検知結果を記憶部11に記憶させる。このとき、第1時点において受信した測位衛星2のコード情報に含まれている第1時点の時刻情報も、第1時点における観測点P1の加速度及び観測点P1の角速度に紐付けて記憶部11に記録される。
【0067】
また、撮像部4(周囲撮像部4A)は、第1時点において、観測点P1と観測点P1の周囲の撮像対象との距離の情報が含まれる第3画像B3を撮像する(ステップST4)。
【0068】
情報生成部100は、第3画像B3から、観測点P1に対する反射体13Aの相対位置の情報を含む相対位置情報を生成する(ステップST5)。情報生成部100によって生成された相対位置情報は、例えば、記憶部11に記憶される。
【0069】
撮像部4が第1画像B1を撮像すると、エッジ検出部92は、
図4に示すように、エッジ検出処理によって第1画像B1を領域A1~A5に分割する(ステップST6)。
【0070】
画像生成部93は、
図5に示すように、領域分割された第1画像B1と、衛星位置算出部91が算出した複数の測位衛星2の位置情報から、第2画像B2を生成する(ステップST7)。画像生成部93は、第2画像B2の生成過程において、方位検出部51の検出結果に基づいて、第1画像B1の方位を補正する。換言すると、画像生成部93は、第1画像B1に方位の情報を付加する。これにより複数の測位衛星2の方位と、第1画像B1の方位とを一致させた状態で、第2画像B2を生成することができる。
図5に示すように、第1画像B1から生成された第2画像B2にも方位の情報が付加されており、第2画像B2において示されるアルファベット(EWSN)は方位の情報(東西南北)を表している。また、画像生成部93は、第2画像B2の生成過程において、傾き検出部52の検出結果に基づいて、第1画像における天頂位置C1が鉛直方向と一致するように補正する。具体的には、第1画像B1における天頂方向である撮像方向が鉛直方向からずれていた場合は、第1画像B1を、鉛直方向と撮像方向が一致した状態で撮像される画像に変換する。
【0071】
第2画像B2には、第1画像B1の領域内に存在する複数の測位衛星2の位置を示すマーカM1~M18が合成されている。
【0072】
画像生成部93は、第1画像B1の領域内に存在する複数の測位衛星2の各々を判定対象の測位衛星2とし、判定対象の測位衛星2の各々から送信される信号のC/N比が所定値以下であるか否かを判定する(ステップST8)。ここで、「C/N比が所定値以下」とは、受信した測位衛星2の信号を評価することで算出されるC/N比の値が所定値以下である場合の他に、測位衛星2からの信号レベルが弱く、観測点P1において測位衛星2からの信号を受信できない場合も含まれる。画像生成部93は、
図7に示すように、第2画像B2において、信号のC/N比が所定値以下である測位衛星2に対応する、例えばマーカM15~M18を含む領域A2~A5を、遮蔽物13に対応する遮蔽領域Am2~Am5として各々設定する(ステップST9)。
【0073】
(2.2.2)停止時の測位動作
以下に、観測点P1(移動体3)が停止している場合の、測位システム1による観測点P1の測位動作を
図7及びフローチャートである
図9を参照して説明する。なお、
図9に示すフローチャートは、測位システム1による測位動作の一例に過ぎず、処理の順序が適宜変更されてもよいし、処理が適宜追加又は省略されてもよい。
【0074】
測位システム1による観測点P1の測位は、例えば、位置が既知である基準局12から送信される補正情報を利用して、観測点P1の位置を算出する、リアルタイムキネマティック(RTK)方式によって行われる。なお、測位システム1による測位は、基準局12として電子基準点(VRS)を利用するネットワーク型RTK方式等によって行われてもよい。なお、RTK方式による測位は周知の技術であるから、ここでは詳細な説明は省略する。
【0075】
遮蔽領域Am2~Am5の設定(ステップST9)後に、第1通信部6は、マーカM1~M18に対応する複数の測位衛星2から信号を受信する(ステップST10)。第1通信部6は、マーカM1~M18に対応する複数の測位衛星2から信号を第2時点において受信完了する。また、第2通信部7は、第2時点までに、基準局12から補正情報を受信する。
【0076】
選別部94は、
図7に示すように、第2画像B2に基づいて、マーカM1~M18のなかから、遮蔽領域Am2~Am5に含まれないマーカM1~M10と、遮蔽領域Am2~Am5に含まれるマーカM11~M18と、を選別する。ここで、マーカM1~M10は第1衛星21に対応しており、マーカM11~M18は第2衛星22に対応している。つまり、選別部94は、第2画像B2に基づいて、複数の測位衛星2のなかから、観測点P1から見て遮蔽物13によって遮蔽されていない第1衛星21と、遮蔽物13によって遮蔽されている第2衛星22と、を選別する(ステップST11)。
【0077】
選別部94によって第1衛星21と第2衛星22とが選別されると、第1距離演算部981は、第2時点において受信完了した複数の測位衛星2からの信号のうち、第1衛星21からの第1信号Sig1から、第1衛星21と観測点P1との第1距離D1(
図1参照)を演算する(ステップST12)。
【0078】
また、第2距離演算部982は、第2衛星22から送信され反射体13Aによって反射された左旋円偏波である第2信号Sig2と、反射体13Aの相対位置の情報から、レイトレース法を用いて第2衛星22と観測点P1との第2距離D2を演算する(ステップST13)。詳細には、第2距離演算部982は、第2信号Sig2に含まれるコード情報(第2衛星22の軌道情報)、観測点P1の周囲の3D情報である相対位置情報等に基づいて、第2信号Sig2を反射した反射体13Aを推定し、第2信号Sig2の経路R1を推定するレイトレース演算を行う。そして、第2距離演算部982は、第2信号Sig2の経路R1の推定結果から、第2衛星22と観測点P1との第2距離D2を演算する。
【0079】
次に、統合演算部983は、第1距離D1と、第2距離D2と、基準局12から送信された補正情報と、に基づいて観測点P1の位置を測位する(ステップST14)。
【0080】
観測点P1の位置の測位が完了すると、出力部99は、観測点P1の位置情報を、第3通信部8を介して、移動体3の移動制御部に出力する(ステップST15)。また測位された観測点P1の位置情報は、次回の第2画像B2の生成時に、衛星位置算出部91による複数の測位衛星2の位置算出に利用される。
【0081】
(2.2.3)移動時の測位動作
次に、観測点P1(移動体3)が移動している場合の、測位システム1による観測点P1の測位動作を
図10及びフローチャートである
図11を参照して説明する。なお、
図11に示すフローチャートは、測位システム1による測位動作の一例に過ぎず、処理の順序が適宜変更されてもよいし、処理が適宜追加又は省略されてもよい。
【0082】
遮蔽領域Am2~Am5の設定(ステップST9)後に、第1通信部6は、マーカM1~M18に対応する複数の測位衛星2から信号を受信する(ステップST20)。第1通信部6は、マーカM1~M18に対応する複数の測位衛星2から信号を第2時点において受信完了する。また、第2通信部7は、第2時点までに、基準局12から補正情報を受信する。
【0083】
第1通信部6が第2時点においてマーカM1~M18に対応する複数の測位衛星2から信号を受信完了すると、画像生成部93は、第2画像B2における遮蔽領域Am2~Am5の補正を行う(ステップST21)。そして、画像生成部93による遮蔽領域Am2~Am5の補正後に、選別部94が第1衛星21及び第2衛星22の選別を開始する。換言すると、画像生成部93は、選別部94が第1衛星21及び第2衛星22の選別を開始する前の第2時点において、第2画像B2における遮蔽領域Am2~Am5の補正を行う。
【0084】
「(2.2.1)第2画像の生成動作」において説明したように、画像生成部93は、第1時点において撮像された第1画像B1に基づいた第2画像B2において、領域A2~A5を遮蔽領域Am2~Am5として各々設定する。このとき設定された遮蔽領域Am2~Am5は、第1画像B1が撮像された第1時点における遮蔽物13の位置に対応している。したがって、観測点P1が移動している場合には、選別部94が第1衛星21及び第2衛星22の選別を開始する前の第2時点における観測点P1から見た遮蔽物13の位置は第1時点から変化しているため、遮蔽領域Am2~Am5の位置補正が必要となる。
【0085】
以下に、遮蔽領域Am2~Am5の補正について詳細を説明する。
【0086】
まず、移動量検出部95が、第1時点から第2時点までの間における観測点P1の移動量を検出する。具体的には、移動量検出部95は、第1時点における時刻情報、観測点P1の加速度、観測点P1の角速度、及び、第2時点における時刻情報、観測点P1の加速度、観測点P1の角速度から、第1時点から第2時点までの間における観測点P1の移動量を検出する。上述したように、第1時点における時刻情報、観測点P1の加速度、観測点P1の角速度の情報は記憶部11に記憶されている。また、第2時点における時刻情報は、第2時点において受信した測位衛星2のコード情報に含まれている。第2時点における観測点P1の加速度及び観測点P1の角速度は、加速度検出部53及び角速度検出部54によって各々検出される。
【0087】
第2時点における時刻情報、第2時点において検出された観測点P1の加速度、観測点P1の角速度は、記憶部11に記録される。ここで、記憶部11に記憶されている第1時点における時刻情報、観測点P1の加速度、観測点P1の角速度は、例えば、第2時点における時刻情報、観測点P1の加速度、観測点P1の角速度によって上書きされる。なお、第1時点における時刻情報、観測点P1の加速度、観測点P1の角速度、及び、第2時点における時刻情報、観測点P1の加速度、観測点P1の角速度の両方が記憶部11に記録されてもよい。
【0088】
第1補正部96は、第2時点において、移動量検出部95による第1時点から第2時点までの間における観測点P1の移動量の検出結果に基づいて、第2画像B2における遮蔽領域Am2~Am5の位置を、第1時点における位置から補正する。ここで、第1時点から第2時点の間に、観測点P1が西へ移動したと仮定する。この場合、第1補正部96は、
図10に示すように、第1時点における遮蔽領域Am2~Am5を、第2時点においては遮蔽領域Am21~Am51に各々変更する。遮蔽領域Am21~Am51は、第2時点において観測点P1から天空を見た場合の遮蔽物13に位置に対応しており、観測点P1が西へ移動したことにより、遮蔽領域Am21~Am51は、遮蔽領域Am2~Am5から東側にシフトしている。これに伴い、非遮蔽領域である領域A1も、形状変化した領域A11となっている。
【0089】
遮蔽領域Am2~Am5を遮蔽領域Am21~Am51に変更することにより、第1時点において非遮蔽領域である領域A1に位置していたマーカM8、M9が、第2時点においては、遮蔽領域Am21、Am31に各々位置するようになる。また、第1時点においては遮蔽領域Am4に含まれていたマーカM13が、第2時点においては非遮蔽領域である領域A11に位置するようになる。
【0090】
このように、遮蔽領域の補正を行うことによって、観測点P1が移動している場合でも、実際の遮蔽物13の位置と遮蔽領域とを正確に対応させることができる。
【0091】
選別部94は、遮蔽領域の補正後の第2画像B2に基づいて、マーカM1~M18のなかから、遮蔽領域Am21~Am51に含まれないマーカM1~M7、M10、M13を選択する。ここで、マーカM1~M7、M10、M13は第1衛星21に対応している。つまり、選別部94は、遮蔽領域の補正後の第2画像B2に基づいて、複数の測位衛星2のなかから、観測点P1から見て遮蔽物13によって遮蔽されていない第1衛星21を選択する(ステップST22)。
【0092】
選別部94によって第1衛星21が選択されると、測位演算部98は、第2時点において受信完了した複数の測位衛星2からの信号のうち、第1衛星21からの第1信号Sig1と、基準局12から送信される補正情報とに基づいて観測点P1の位置を測位する(ステップST23)。つまり、測位演算部98は、観測点P1が移動中の場合は、第1信号Sig1に基づいて観測点P1の位置を測位する。
【0093】
ここで、測位演算部98によって測位された観測点P1の位置は、第2時点において受信完了した第1衛星21からの第1信号Sig1に基づいて演算されている。したがって、観測点P1が移動している場合には、測位演算部98による測位が完了した第3時点における観測点P1の実際の位置は、測位演算部98によって測位された観測点P1の位置から変化している。このため、第2補正部97は、第3時点において、観測点P1の位置を補正する。
【0094】
詳細には、第2補正部97は、第3時点において、測位演算部98によって演算された第2時点における観測点P1の位置と、移動量検出部95による観測点P1の第2時点から第3時点までの移動量の検出結果と、に基づいて、観測点P1の位置を補正(慣性航法補正)する(ステップST24)。なお、移動量検出部95による第2時点から第3時点までの間における観測点P1の移動量の検出手順は、上述した遮蔽領域の補正の場合と同じであるため、ここでは説明を省略する。
【0095】
第3時点において、観測点P1の位置の慣性航法補正が完了すると、出力部99は、慣性航法補正された観測点P1の位置情報を、第3通信部8を介して、移動体3の移動制御部に出力する(ステップST25)。また慣性航法補正された観測点P1の位置情報は、次回の第2画像B2の生成時に、衛星位置算出部91による複数の測位衛星2の位置算出に利用される。
【0096】
(3)利点
以上説明したように、本実施形態の測位システム1は、第1信号Sig1から演算される第1距離D1と、第2信号Sig2と反射体13Aの相対位置情報から演算される第2距離D2とを測位演算に利用する。このため、本実施形態の測位システム1によれば、第2衛星22から送信され、反射体13Aによって反射された第2信号Sig2の影響による測位演算の精度低下を抑制することができる。また、遮蔽領域が存在するため、第1信号Sig1(右旋円偏波信号)のみを用いた測位に利用できる可視衛星(第1衛星21)の数が少なく、RTK方式での正確な測位解が得られない環境下において、第1衛星21とともに不可視衛星(第2衛星22)を測位に利用することができる。これにより、測位に利用する測位衛星2の数を増加させることができ、RTK方式での正確な測位解を得ることができる。また、本実施形態の測位システム1は、測位動作において、遮蔽領域の補正及び観測点P1の位置の慣性航法補正を行うことで、観測点P1が移動している場合でも、測位の精度低下を抑制することができる。
【0097】
(4)変形例
上記実施形態は、本開示の様々な実施形態の一つに過ぎない。上記実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。また、測位システム1と同様の機能は、制御方法、コンピュータプログラム、又はプログラムを記録した非一時的な記録媒体等で具現化されてもよい。
【0098】
上記実施形態に係る制御方法は、撮像ステップと、画像生成ステップと、選別ステップと、測位演算ステップと、を含む。撮像ステップでは、観測点P1から天空の第1画像B1を撮像する。画像生成ステップでは、第1画像B1に、複数の測位衛星2の位置を対応付けた第2画像B2を生成する。選別ステップでは、第2画像B2に基づいて、複数の測位衛星2のなかから、観測点P1から見て遮蔽物13によって遮蔽されていない第1衛星21と、観測点P1から見て遮蔽物13によって遮蔽されている第2衛星22と、を選別する。測位演算ステップでは、第1衛星21から送信される第1信号Sig1と、第2衛星22から送信されて観測点P1の周囲に存在する反射体13Aによって反射された第2信号Sig2と、観測点P1に対する反射体13Aの相対位置の情報と、に基づいて観測点P1の位置を測位する。また、上記実施形態に係る(コンピュータ)プログラムは、コンピュータシステムに、上述の制御方法を実行させるためのプログラムである。
【0099】
以下、上記の実施形態の変形例を列挙する。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。ただし上記の実施形態の測位システム1と共通する構成要素については同じ参照符号を付して、適宜その説明を省略する。また、以下に説明する変形例の各構成は、上記実施形態で説明した各構成と適宜組み合わせて適用可能である。
【0100】
(4.1)変形例1
上記の実施形態の測位システム1が、観測点P1が移動中の場合は第1信号Sig1に基づいて観測点P1の位置を測位するのに対して、変形例1の測位システム1は、観測点P1が移動中の場合は、慣性航法補正によって観測点P1の位置を測位する。具体的に、第4時点より前に停止していた観測点P1が移動を開始した後の第5時点における観測点P1の測位について説明する。
【0101】
第5時点において、移動量検出部95が、第4時点から第5時点までの間における観測点P1の移動量を検出する。なお、移動量検出部95の第4時点から第5時点までの間における観測点P1の移動量の検出手順は、上記実施形態における第1時点から第2時点までの間における観測点P1の移動量の検出手順と同じであるからここでは説明を省略する。第2補正部97は、測位演算部98によって測位された第4時点における観測点P1の位置と、移動量検出部95による第4時点から第5時点までの間における観測点P1の移動量の検出結果と、に基づいて、観測点P1の第5時点における位置を演算する。
【0102】
これにより、移動中の観測点P1が、例えばトンネルの内部に入るなどして、測位衛星2からの信号を受信できない場合でも、観測点P1の位置を求めることができる。
【0103】
(4.2)変形例2
変形例2の測位システム1Aは、第1通信部6は、
図12に示すように、第1受信部61Aと、第1受信部61Aとは別の第2受信部61Bを備える点で、上記実施形態及び変形例1とは異なる。
【0104】
第1受信部61Aは、第1信号Sig1を受信するためのアンテナである。また第2受信部61Bは、反射体13Aによって反射された反射波である第2信号Sig2を受信するためのアンテナである。
【0105】
これにより、例えば、作業場G1の周囲の遮蔽物13及び反射体13Aの存在状況に応じて、第1信号Sig1及び第2信号Sig2の各々の受信状態が最適となるように、第1受信部61Aの位置と第2受信部61Bの位置とを別々に調整することができる。
【0106】
(4.3)変形例3
変形例3の測位システム1Bは、通信部(第2通信部)7と通信する外部装置200が第2距離D2を演算する点で、上記実施形態、変形例1及び変形例2とは異なる。この場合、第2通信部7と通信する外部装置200は、
図13に示すように、例えば測位演算部98よりも演算速度が速いサーバ等である。
【0107】
第2通信部7は、第2信号Sig2及び観測点P1に対する反射体13Aの相対位置の情報を含む相対位置情報を、外部装置200に送信する。
【0108】
外部装置200は、第2信号Sig2及び相対位置情報から、第2衛星22と観測点P1との第2距離D2を演算する。すなわち、測位システム1Bにおいては、外部装置200が、上記実施形態における第2距離演算部982の機能を担っている。
【0109】
第2通信部7は、外部装置200による第2距離D2の演算結果を受信する。
【0110】
これにより、第2距離D2の演算を高速化することができる。
【0111】
(4.4)その他の変形例
画像生成部93は、右旋円偏波のC/N比が左旋偏波のC/N比よりも大きい測位衛星2を第1衛星21と判定し、左旋偏波のC/N比が右旋円偏波のC/N比よりも大きい測位衛星2を第2衛星22と判定してもよい。
【0112】
画像生成部93は、観測点P1に対する遮蔽物13の相対位置の情報に基づいて、第2画像B2において遮蔽物13に対応する遮蔽領域を設定してもよい。ここで、観測点P1に対する遮蔽物13の相対位置の情報は、第3画像B3から情報生成部100によって生成されてもよいし、第2通信部7を介して、例えば国土交通省が公開しているPLATEAU等の3D都市モデルデータベースから取得されてもよい。
【0113】
本開示における測位システム1は、コンピュータシステムを含んでいる。コンピュータシステムは、ハードウェアとしてのプロセッサ及びメモリを主構成とする。コンピュータシステムのメモリに記録されたプログラムをプロセッサが実行することによって、本開示における測位システム1としての機能が実現される。プログラムは、コンピュータシステムのメモリに予め記録されてもよく、電気通信回線を通じて提供されてもよく、コンピュータシステムで読み取り可能なメモリカード、光学ディスク、ハードディスクドライブ等の非一時的記録媒体に記録されて提供されてもよい。コンピュータシステムのプロセッサは、半導体集積回路(IC)又は大規模集積回路(LSI)を含む1ないし複数の電子回路で構成される。ここでいうIC又はLSI等の集積回路は、集積の度合いによって呼び方が異なっており、システムLSI、VLSI(Very Large Scale Integration)、又はULSI(Ultra Large Scale Integration)と呼ばれる集積回路を含む。さらに、LSIの製造後にプログラムされる、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、又はLSI内部の接合関係の再構成若しくはLSI内部の回路区画の再構成が可能な論理デバイスについても、プロセッサとして採用することができる。複数の電子回路は、1つのチップに集約されていてもよいし、複数のチップに分散して設けられていてもよい。複数のチップは、1つの装置に集約されていてもよいし、複数の装置に分散して設けられていてもよい。ここでいうコンピュータシステムは、1以上のプロセッサ及び1以上のメモリを有するマイクロコントローラを含む。したがって、マイクロコントローラについても、半導体集積回路又は大規模集積回路を含む1ないし複数の電子回路で構成される。
【0114】
測位システム1の少なくとも一部の機能、例えば、処理部9の機能がクラウド(クラウドコンピューティング)等によって実現されてもよい。
【0115】
(5)まとめ
以上説明したように、第1の態様の測位システム(1)は、撮像部(4)と、画像生成部(93)と、選別部(94)と、測位演算部(98)と、を備える。撮像部(4)は、観測点(P1)から天空の第1画像(B1)を撮像する。画像生成部(93)は、第1画像(B1)に、複数の測位衛星(2)の位置を対応付けた第2画像(B2)を生成する。選別部(94)は、第2画像(B2)に基づいて、複数の測位衛星(2)のなかから、観測点(P1)から見て遮蔽物(13)によって遮蔽されていない第1衛星(21)と、観測点(P1)から見て遮蔽物(13)によって遮蔽されている第2衛星(22)と、を選別する。測位演算部(98)は、第1衛星(21)から送信される第1信号(Sig1)と、第2衛星(22)から送信されて観測点(P1)の周囲に存在する反射体(13A)によって反射された第2信号(Sig2)と、観測点(P1)に対する反射体(13A)の相対位置の情報と、に基づいて観測点(P1)の位置を測位する。
【0116】
この態様によれば、観測点(P1)に対する反射体(13A)の相対位置の情報を用いることにより、第2信号(Sig2)を観測点(P1)の測位演算に使用した場合の、測位演算の精度低下を抑制することができる。
【0117】
第2の態様の測位システム(1)では、第1の態様において、測位演算部(98)は、第1信号(Sig1)から、第1衛星(21)と観測点(P1)との第1距離(D1)を演算し、第2信号(Sig2)及び観測点(P1)に対する反射体(13A)の相対位置の情報から、第2衛星(22)と観測点(P1)との第2距離(D2)を演算し、第1距離(D1)と第2距離(D2)とに基づいて観測点(P1)の位置を測位する。
【0118】
この態様によれば、観測点(P1)に対する反射体(13A)の相対位置の情報を用いることにより、第2信号(Sig2)を観測点(P1)の測位演算に使用した場合の、測位演算の精度低下を抑制することができる。
【0119】
第3の態様の測位システム(1)は、第1又は第2の態様において、観測点(P1)の周囲の第3画像(B3)を撮像する周囲撮像部(4A)と、第3画像(B3)から、観測点(P1)に対する反射体(13A)の相対位置の情報を生成する情報生成部(100)と、を更に備える。
【0120】
この態様によれば、観測点(P1)の周囲の画像から、観測点(P1)に対する反射体(13A)の相対位置の情報を生成することができる。
【0121】
第4の態様の測位システム(1)は、第1~第3の態様のいずれかにおいて、移動量検出部(95)と、補正部(97)と、を更に備える。移動量検出部(95)は、観測点(P1)が移動を開始する前の第1時点から、観測点(P1)が移動を開始した後の第2時点までの間における観測点(P1)の移動量を検出する。補正部(97)は、第1時点における観測点(P1)の第1位置と、移動量検出部(95)による移動量の検出結果と、に基づいて、観測点(P1)の第2時点における第2位置を演算する。
【0122】
この態様によれば、移動中の観測点(P1)が、例えばトンネルの内部に入るなどして、測位衛星(2)からの信号を受信できない場合でも、観測点(P1)の位置を求めることができる。
【0123】
第5の態様の測位システム(1)は、第1~第4の態様のいずれかにおいて、第1受信部(61A)と、第1受信部(61A)とは別の第2受信部(61B)と、を更に備える。第1受信部(61A)は、第1信号(Sig1)を受信する。第2受信部(61B)は、反射体(13A)によって反射された反射波である第2信号(Sig2)を受信する。
【0124】
この態様によれば、作業場(G1)の周囲の遮蔽物(13)及び反射体(13A)の存在状況に応じて、第1信号(Sig1)及び第2信号(Sig2)の各々の受信状態が最適となるように、第1受信部(61A)の位置と第2受信部(61B)の位置とを別々に調整することができる。
【0125】
第6の態様の測位システム(1)では、第1~第5の態様のいずれかにおいて、測位演算部(98)は、観測点(P1)が移動中の場合は、第1信号(Sig1)に基づいて観測点(P1)の位置を測位する。
【0126】
この態様によれば、移動中の観測点(P1)の測位処理を高速化することができる。
【0127】
第7の態様の測位システム(1)は、第1~第6の態様のいずれかにおいて、外部装置(200)と通信可能な通信部(7)を更に有する。通信部(7)は、第2信号(Sig2)及び観測点(P1)に対する反射体(13A)の相対位置の情報を外部装置(200)に送信する。外部装置(200)は、第2信号(Sig2)及び観測点(P1)に対する反射体(13A)の相対位置の情報から、第2衛星(22)と観測点(P1)との第2距離(D2)を演算する。通信部(7)は、外部装置(200)による第2距離(D2)の演算結果を受信する。
【0128】
この態様によれば、第2距離(D2)の演算を高速化することができる。
【0129】
第8の態様の制御方法は、撮像ステップと、画像生成ステップと、選別ステップと、測位演算ステップと、を含む。撮像ステップでは、観測点(P1)から天空の第1画像(B1)を撮像する。画像生成ステップでは、第1画像(B1)に、複数の測位衛星(2)の位置を対応付けた第2画像(B2)を生成する。選別ステップでは、第2画像(B2)に基づいて、複数の測位衛星(2)のなかから、観測点(P1)から見て遮蔽物(13)によって遮蔽されていない第1衛星(21)と、観測点(P1)から見て遮蔽物(13)によって遮蔽されている第2衛星(22)と、を選別する。測位演算ステップでは、第1衛星(21)から送信される第1信号(Sig1)と、第2衛星(22)から送信されて観測点(P1)の周囲に存在する反射体(13A)によって反射された第2信号(Sig2)と、観測点(P1)に対する反射体(13A)の相対位置の情報と、に基づいて観測点(P1)の位置を測位する。
【0130】
この態様によれば、観測点(P1)に対する反射体(13A)の相対位置の情報を用いることにより、第2信号(Sig2)を観測点(P1)の測位演算に使用した場合の、測位演算の精度低下を抑制することができる。
【0131】
第9の態様のプログラムは、コンピュータシステムに第8の態様の制御方法を実行させる。
【0132】
この態様によれば、観測点(P1)に対する反射体(13A)の相対位置の情報を用いることにより、第2信号(Sig2)を観測点(P1)の測位演算に使用した場合の、測位演算の精度低下を抑制することができる。
【0133】
なお、第2~第7の態様は測位システム(1)に必須の構成ではなく、適宜省略が可能である。
【符号の説明】
【0134】
1 測位システム
2 測位衛星
4 撮像部
7 通信部
13 遮蔽物
13A 反射体
21 第1衛星
22 第2衛星
93 画像生成部
94 選別部
95 移動量検出部
98 測位演算部
100 情報生成部
200 外部装置
4A 周囲撮像部
61A 第1受信部
61B 第2受信部
B1 第1画像
B2 第2画像
B3 第3画像
D1 第1距離
D2 第2距離
G1 作業場
P1 観測点
Sig1 第1信号
Sig2 第2信号