(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023172774
(43)【公開日】2023-12-06
(54)【発明の名称】ねじ形状測定装置及びねじ形状測定方法
(51)【国際特許分類】
G01B 11/24 20060101AFI20231129BHJP
【FI】
G01B11/24 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022084820
(22)【出願日】2022-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001748
【氏名又は名称】弁理士法人まこと国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大島 伸一
【テーマコード(参考)】
2F065
【Fターム(参考)】
2F065AA52
2F065BB08
2F065CC04
2F065DD03
2F065FF02
2F065FF04
2F065GG02
2F065HH03
2F065JJ03
2F065MM26
2F065PP22
2F065QQ03
2F065QQ17
2F065QQ21
2F065QQ24
2F065QQ25
2F065QQ31
2F065UU06
(57)【要約】
【課題】光投影法による撮像画像に基づき、ねじ付き管の管端位置を精度良く特定し、特定した管端位置を用いてねじ形状を精度良く測定可能なねじ付き管のねじ形状測定装置等を提供する。
【解決手段】ねじ形状測定装置100は、照明部1と、撮像部2と、演算処理部3と、を備える。演算処理部は、撮像画像に基づき、ねじ付き管Pのテーパ部のなす輪郭線の近似直線L1と、ねじ付き管の端面Eのなす輪郭線の近似直線L2と、を算出し、これらの交点を第1管端位置候補として検出する輪郭線検出法と、撮像画像に基づき、端面の端部側から遠ざかり始める点である屈曲点を検出し、テーパ部の近似直線と、屈曲点を通り管軸AXに直交する直線L3と、を算出し、これらの交点を第2管端位置候補として検出する屈曲点検出法と、を実行可能であり、第1管端位置候補と第2管端位置候補とのうちの何れか一方を、ねじ付き管の管端位置として特定する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ねじ山が形成されたねじ部とねじ山が形成されていないテーパ部を端部の外周面に有するねじ付き管の、前記ねじ部のねじ形状を測定するねじ形状測定装置であって、
前記ねじ付き管は、
前記ねじ付き管の管軸に直交する測定方向から見て、前記管軸に近づくにつれて前記管軸方向に前記ねじ付き管の端部側から遠ざかるように傾斜した端面を有し、前記端面に切り込みが形成されており、
前記ねじ形状測定装置は、
前記測定方向に光を出射することで、前記端部を照明する照明部と、
前記端部を挟んで前記照明部に対向して配置され、前記端部に遮られずに通過した光を検出することで、前記端部の撮像画像を生成する撮像部と、
前記撮像画像に基づき、前記ねじ部のねじ形状を演算する演算処理部と、
を備え、
前記演算処理部は、前記撮像画像に基づき、前記測定方向から見た前記テーパ部のなす輪郭線の近似直線と、前記測定方向から見た前記端面のなす輪郭線の近似直線と、を算出し、これらの近似直線の交点を第1管端位置候補として検出する輪郭線検出法と、前記撮像画像に基づき、前記測定方向から見た前記端面の前記端部側から遠ざかり始める点である屈曲点を検出し、前記測定方向から見た前記テーパ部のなす輪郭線の近似直線と、前記端面の屈曲点を通り前記管軸に直交する直線と、を算出し、これらの近似直線と直線との交点を第2管端位置候補として検出する屈曲点検出法と、を実行可能であり、
前記演算処理部は、前記第1管端位置候補と前記第2管端位置候補とのうちの何れか一方を、前記ねじ付き管の管端位置として特定し、前記特定した管端位置を用いて、前記ねじ部のねじ形状を演算する、ねじ形状測定装置。
【請求項2】
前記演算処理部は、
前記輪郭線検出法で算出した前記測定方向から見た前記端面のなす輪郭線の近似直線の傾斜角が所定の角度範囲内にあり、且つ、前記屈曲点検出法で算出した前記測定方向から見た前記端面の屈曲点と前記測定方向から見た前記テーパ部のなす輪郭線の近似直線との距離が所定の距離範囲内に無い場合には、前記第1管端位置候補を前記ねじ付き管の前記管端位置として特定し、
前記輪郭線検出法で算出した前記測定方向から見た前記端面のなす輪郭線の近似直線の傾斜角が所定の角度範囲内に無く、且つ、前記屈曲点検出法で算出した前記測定方向から見た前記端面の屈曲点と前記測定方向から見た前記テーパ部のなす輪郭線の近似直線との距離が所定の距離範囲内にある場合には、前記第2管端位置候補を前記ねじ付き管の前記管端位置として特定し、
前記輪郭線検出法で算出した前記測定方向から見た前記端面のなす輪郭線の近似直線の傾斜角が所定の角度範囲内にあり、且つ、前記屈曲点検出法で算出した前記測定方向から見た前記端面の屈曲点と前記測定方向から見た前記テーパ部のなす輪郭線の近似直線との距離が所定の距離範囲内にある場合には、前記第1管端位置候補及び前記第2管端位置候補のうち、前記ねじ付き管の端部側に位置する管端位置候補を前記ねじ付き管の前記管端位置として特定する、請求項1に記載のねじ形状測定装置。
【請求項3】
ねじ山が形成されたねじ部とねじ山が形成されていないテーパ部を端部の外周面に有するねじ付き管の、前記ねじ部のねじ形状を測定するねじ形状測定方法であって、
前記ねじ付き管は、
前記ねじ付き管の管軸に直交する測定方向から見て、前記管軸に近づくにつれて前記管軸方向に前記ねじ付き管の端部側から遠ざかるように傾斜した端面を有し、前記端面に切り込みが形成されており、
前記ねじ形状測定方法は、
前記測定方向に光を出射する照明部を用いて、前記端部を照明する照明ステップと、
前記端部を挟んで前記照明部に対向して配置され、前記端部に遮られずに通過した光を検出する撮像部を用いて、前記端部の撮像画像を生成する撮像ステップと、
前記撮像画像に基づき、前記ねじ部のねじ形状を演算する演算処理ステップと、
を有し、
前記演算処理ステップでは、前記撮像画像に基づき、前記測定方向から見た前記テーパ部のなす輪郭線の近似直線と、前記測定方向から見た前記端面のなす輪郭線の近似直線と、を算出し、これらの近似直線の交点を第1管端位置候補として検出する輪郭線検出法と、前記撮像画像に基づき、前記測定方向から見た前記端面の前記端部側から遠ざかり始める点である屈曲点を検出し、前記測定方向から見た前記テーパ部のなす輪郭線の近似直線と、前記端面の屈曲点を通り前記管軸に直交する直線と、を算出し、これらの近似直線と直線との交点を第2管端位置候補として検出する屈曲点検出法と、を実行し、
前記演算処理ステップでは、前記第1管端位置候補と前記第2管端位置候補とのうちの何れか一方を、前記ねじ付き管の管端位置として特定し、前記特定した管端位置を用いて、前記ねじ部のねじ形状を演算する、ねじ形状測定方法。
【請求項4】
前記演算処理ステップでは、
前記輪郭線検出法で算出した前記測定方向から見た前記端面のなす輪郭線の近似直線の傾斜角が所定の角度範囲内にあり、且つ、前記屈曲点検出法で算出した前記測定方向から見た前記端面の屈曲点と前記測定方向から見た前記テーパ部のなす輪郭線の近似直線との距離が所定の距離範囲内に無い場合には、前記第1管端位置候補を前記ねじ付き管の前記管端位置として特定し、
前記輪郭線検出法で算出した前記測定方向から見た前記端面のなす輪郭線の近似直線の傾斜角が所定の角度範囲内に無く、且つ、前記屈曲点検出法で算出した前記測定方向から見た前記端面の屈曲点と前記測定方向から見た前記テーパ部のなす輪郭線の近似直線との距離が所定の距離範囲内にある場合には、前記第2管端位置候補を前記ねじ付き管の前記管端位置として特定し、
前記輪郭線検出法で算出した前記測定方向から見た前記端面のなす輪郭線の近似直線の傾斜角が所定の角度範囲内にあり、且つ、前記屈曲点検出法で算出した前記測定方向から見た前記端面の屈曲点と前記測定方向から見た前記テーパ部のなす輪郭線の近似直線との距離が所定の距離範囲内にある場合には、前記第1管端位置候補及び前記第2管端位置候補のうち、前記ねじ付き管の端部側に位置する管端位置候補を前記ねじ付き管の前記管端位置として特定する、請求項3に記載のねじ形状測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油井管など、端部にねじが形成されたねじ付き管のねじ形状を測定するねじ形状測定装置及びねじ形状測定方法に関する。特に、本発明は、光投影法によって生成される撮像画像に基づき、ねじ付き管の管端位置を精度良く特定し、特定した管端位置を用いてねじ形状を精度良く測定可能なねじ付き管のねじ形状測定装置及びねじ形状測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、油井管などの管の端部同士を連結する方法として、管の端部の外周面にねじ部(雄ねじ部)を形成してねじ付き管とし、一対のねじ付き管の各ねじ部(雄ねじ部)を、内周面にねじ部(雌ねじ部)が形成された継手にそれぞれ締結することで、ねじ付き管の端部同士を連結する方法が用いられている。
ねじ付き管の端部に形成されたねじ部の寸法精度が低いと、継手との締結状態が緩み、ねじ付き管同士の連結が解除されて脱落したり、ねじ付き管内部に流れる流体が外部に漏洩するおそれがある。特に油井管の場合には、近年の油井環境の過酷化に伴い、ねじ部の寸法精度や品質保証レベルに対する要求が年々厳格化している。
【0003】
このため、いわゆる光投影法を用いて、ねじ部のねじ形状を自動測定する装置が種々提案されている(例えば、特許文献1~3参照)。
光投影法は、ねじ付き管の端部に対して、ねじ付き管の管軸に直交する方向から光を出射することで、ねじ付き管の端部を照明し、ねじ付き管の端部に遮られずに通過した光を検出することで、ねじ付き管の端部の撮像画像を生成し、この撮像画像に基づき、ねじ部のねじ形状を測定する方法である。
【0004】
ここで、測定すべきねじ形状には、管端から管軸方向に予め決められた距離だけ離れた位置におけるねじ山の外径である「ねじ径」など、管端位置(ねじ付き管の管端の管軸方向の座標)を基準として測定する必要があるものが存在する。このため、管端位置を精度良く測定することが求められている。
多くのねじ付き管については、光投影法によって生成される撮像画像を画像処理することで、管端位置を容易に測定することが可能である。
しかしながら、油井管として用いられるねじ付き管には、端面に所定の角度ピッチ(管軸方向周りの角度ピッチ)で切り込み(溝やグルーブともいう)が形成されたものが存在する。
【0005】
図1は、切り込みが形成されたねじ付き管の端部形状の一例を模式的に示す図である。
図1(a)はねじ付き管の端部の端面図(管軸AXを含む面で切断した端面図)を、
図1(b)は
図1(a)に示す符号A1の破線で囲った領域の斜視図を示す。
なお、以下では、
図1(a)に示すように、ねじ付き管Pの管軸AXに沿った方向のうち、管端から遠い側となるねじ付き管Pの奥側に向かう側を、ねじ付き管Pの中央部側と称し、管端に近い側となるねじ付き管Pの手前側に向かう側を、ねじ付き管Pの端部側と称するものとする。
図1(a)に示すように、ねじ付き管Pは、その端部の外周面に、中央部側から順に、ねじ山Pa及びねじ溝Pbが形成されたねじ部と、ねじ部に隣接するベベル部と、ベベル部に隣接し、ねじ山が形成されていないリップ部と、を有する。リップ部の先端部(ねじ付き管Pの端部側の部位)は、ねじ付き管Pの端面Eに近づくにつれて管軸AXに近づくように傾斜したテーパ部Tになっている。ねじ付き管Pの端面Eは、管軸AXに直交する方向(Z方向)から見て、端面Eの外縁エッジE1(テーパ部Tとの境界部分)を起点として、管軸AXに近づくにつれて管軸AX方向にねじ付き管Pの端部側から遠ざかるように傾斜している。換言すれば、端面Eは、外縁エッジE1を起点として、すり鉢状に凹んだ形状を有する。
また、
図1(b)に示すように、端面E(濃いハッチングを施した部位)には、所定の角度ピッチ(具体的には、
図1(b)に示す例では72°)で切り込みGが形成されている。
【0006】
図1に示すようなねじ付き管の場合、光投影法で端部を撮像して生成される撮像画像が、切り込みが存在する影響で、ねじ付き管の管軸方向周りの角度に応じて異なるものとなり、撮像画像を単純に画像処理しただけでは、管端位置を精度良く測定できない場合がある。
【0007】
なお、特許文献3には、光投影法によって生成される撮像画像を用いて管端位置を精度良く測定する方法が提案されているものの、ピースを管端に接触させた状態で撮像画像を生成しなければならないという制約が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2019-128203号公報
【特許文献2】特許第6849149号公報
【特許文献3】特許第6607227号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記従来技術の問題点を解決するべくなされたものであり、光投影法によって生成される撮像画像に基づき、ねじ付き管の管端位置を精度良く特定し、特定した管端位置を用いてねじ形状を精度良く測定可能なねじ付き管のねじ形状測定装置及びねじ形状測定方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するため、本発明者は、光投影法によって生成される撮像画像に基づき管端位置(ねじ付き管の管端の管軸方向の座標)を検出する方法について鋭意検討を行った。具体的には、以下に述べる「輪郭線検出法」及び「屈曲点検出法」について鋭意検討を行った。
「輪郭線検出法」は、光投影法によって生成される撮像画像に画像処理を施すことで、測定方向(光投影法において端部の撮像画像を生成する撮像部の視軸の方向(管軸に直交する方向))から見たテーパ部のなす輪郭線(シルエット)の近似直線(テーパ部のなす輪郭線を構成する画素群の近似直線)と、測定方向から見た端面のなす輪郭線(シルエット)の近似直線(端面のなす輪郭線を構成する画素群の近似直線)と、を算出し、これらの近似直線の交点を管端位置として検出する(交点の管軸方向の座標を管端位置として検出する)方法である。
「屈曲点検出法」は、光投影法によって生成される撮像画像に画像処理を施すことで、測定方向から見た端面の端部側から遠ざかり始める点である屈曲点(
図1(a)に示す外縁エッジE1に相当)を検出し、測定方向から見たテーパ部のなす輪郭線の近似直線と、端面の屈曲点を通り管軸に直交する直線(外縁エッジに相当する画素を通り管軸に直交する直線)と、を算出し、これらの近似直線と直線との交点を管端位置として検出する(交点の管軸方向の座標を管端位置として検出する)方法である。
【0011】
本発明者は、上記の輪郭線検出法及び屈曲点検出法について鋭意検討した結果、光投影法によって端部を照明する際のねじ付き管の管軸方向周りの角度に応じて(撮像画像に反映されるねじ付き管の管軸方向周りの角度に応じて)、輪郭線検出法で検出される管端位置(第1管端位置候補)と、屈曲点検出法で検出される管端位置(第2管端位置候補)とのうちの何れか一方を、最終的な管端位置として特定すれば、管端位置を精度良く特定できることを見出した。
【0012】
本発明は、上記の本発明者の知見に基づき完成したものである。
すなわち、前記課題を解決するため、本発明は、ねじ山が形成されたねじ部とねじ山が形成されていないテーパ部を端部の外周面に有するねじ付き管の、前記ねじ部のねじ形状を測定するねじ形状測定装置であって、前記ねじ付き管は、前記ねじ付き管の管軸に直交する測定方向から見て、前記管軸に近づくにつれて前記管軸方向に前記ねじ付き管の端部側から遠ざかるように傾斜した端面を有し、前記端面に切り込みが形成されており、前記ねじ形状測定装置は、前記測定方向に光を出射することで、前記端部を照明する照明部と、前記端部を挟んで前記照明部に対向して配置され、前記端部に遮られずに通過した光を検出することで、前記端部の撮像画像を生成する撮像部と、前記撮像画像に基づき、前記ねじ部のねじ形状を演算する演算処理部と、を備え、前記演算処理部は、前記撮像画像に基づき、前記測定方向から見た前記テーパ部のなす輪郭線の近似直線と、前記測定方向から見た前記端面のなす輪郭線の近似直線と、を算出し、これらの近似直線の交点を第1管端位置候補として検出する輪郭線検出法と、前記撮像画像に基づき、前記測定方向から見た前記端面の前記端部側から遠ざかり始める点である屈曲点を検出し、前記測定方向から見た前記テーパ部のなす輪郭線の近似直線と、前記端面の屈曲点を通り前記管軸に直交する直線と、を算出し、これらの近似直線と直線との交点を第2管端位置候補として検出する屈曲点検出法と、を実行可能であり、前記演算処理部は、前記第1管端位置候補と前記第2管端位置候補とのうちの何れか一方を、前記ねじ付き管の管端位置として特定し、前記特定した管端位置を用いて、前記ねじ部のねじ形状を演算する、ねじ形状測定装置を提供する。
【0013】
本発明によれば、ねじ付き管の端部に対して、測定方向(管軸に直交する、端部の撮像画像を生成する撮像部の視軸の方向)に向けて光を出射することで、端部を照明する照明部と、ねじ付き管の端部を挟んで照明部に対向して配置され、ねじ付き管の端部に遮られずに通過した光を検出することで、端部の撮像画像を生成する撮像部と、撮像画像に基づき、ねじ部のねじ形状を演算する演算処理部と、によって光投影法が実行される。そして、演算処理部が、光投影法によって生成される撮像画像に基づき、輪郭線検出法で検出される第1管端位置候補と、屈曲点検出法で検出される第2管端位置候補とのうちの何れか一方を、ねじ付き管の管端位置として特定するため、本発明者が知見したように、ねじ付き管の管端位置を精度良く特定可能であり、特定した管端位置を用いてねじ形状を精度良く測定可能である。
【0014】
ここで、本発明者が鋭意検討した結果によれば、輪郭線検出法によって第1管端位置候補が精度良く検出されない場合には、端面のなす輪郭線の近似直線の傾斜角が所定の角度範囲内に無いことが分かった。換言すれば、端面のなす輪郭線の近似直線の傾斜角が所定の角度範囲内にあれば、第1管端位置候補を管端位置として精度良く特定できることが分かった。
一方、屈曲点検出法によって第2管端位置候補が精度良く検出されない場合には、端面の屈曲点とテーパ部のなす輪郭線の近似直線との距離が所定の距離範囲内に無いことが分かった。換言すれば、端面の屈曲点とテーパ部のなす輪郭線の近似直線との距離が所定の距離範囲内にあれば、第2管端位置候補を管端位置として精度良く特定できることが分かった。
さらに、端面のなす輪郭線の近似直線の傾斜角が所定の角度範囲内にあり(すなわち、第1管端位置候補を管端位置として精度良く特定できる)、且つ、端面の屈曲点とテーパ部のなす輪郭線の近似直線との距離が所定の距離範囲内にある(すなわち、第2管端位置候補を管端位置として精度良く特定できる)場合には、第1管端位置候補及び第2管端位置候補のうち、ねじ付き管の端部側に位置する管端位置候補を選択すれば、管端位置をより一層精度良く特定できることが分かった。
【0015】
したがって、好ましくは、前記演算処理部は、前記輪郭線検出法で算出した前記測定方向から見た前記端面のなす輪郭線の近似直線の傾斜角が所定の角度範囲内にあり、且つ、前記屈曲点検出法で算出した前記測定方向から見た前記端面の屈曲点と前記測定方向から見た前記テーパ部のなす輪郭線の近似直線との距離が所定の距離範囲内に無い場合には、前記第1管端位置候補を前記ねじ付き管の前記管端位置として特定し、前記輪郭線検出法で算出した前記測定方向から見た前記端面のなす輪郭線の近似直線の傾斜角が所定の角度範囲内に無く、且つ、前記屈曲点検出法で算出した前記測定方向から見た前記端面の屈曲点と前記測定方向から見た前記テーパ部のなす輪郭線の近似直線との距離が所定の距離範囲内にある場合には、前記第2管端位置候補を前記ねじ付き管の前記管端位置として特定し、前記輪郭線検出法で算出した前記測定方向から見た前記端面のなす輪郭線の近似直線の傾斜角が所定の角度範囲内にあり、且つ、前記屈曲点検出法で算出した前記測定方向から見た前記端面の屈曲点と前記測定方向から見た前記テーパ部のなす輪郭線の近似直線との距離が所定の距離範囲内にある場合には、前記第1管端位置候補及び前記第2管端位置候補のうち、前記ねじ付き管の端部側に位置する管端位置候補を前記ねじ付き管の前記管端位置として特定する。
【0016】
上記の好ましい構成によれば、光投影法によって端部を照明する際のねじ付き管の管軸方向周りの角度に関わらず、ねじ付き管の管端位置を精度良く特定可能であり、特定した管端位置を用いてねじ形状を精度良く測定可能である。
【0017】
また、前記課題を解決するため、本発明は、ねじ山が形成されたねじ部とねじ山が形成されていないテーパ部を端部の外周面に有するねじ付き管の、前記ねじ部のねじ形状を測定するねじ形状測定方法であって、前記ねじ付き管は、前記ねじ付き管の管軸に直交する測定方向から見て、前記管軸に近づくにつれて前記管軸方向に前記ねじ付き管の端部側から遠ざかるように傾斜した端面を有し、前記端面に切り込みが形成されており、前記ねじ形状測定方法は、前記測定方向に光を出射する照明部を用いて、前記端部を照明する照明ステップと、前記端部を挟んで前記照明部に対向して配置され、前記端部に遮られずに通過した光を検出する撮像部を用いて、前記端部の撮像画像を生成する撮像ステップと、前記撮像画像に基づき、前記ねじ部のねじ形状を演算する演算処理ステップと、を有し、前記演算処理ステップでは、前記撮像画像に基づき、前記測定方向から見た前記テーパ部のなす輪郭線の近似直線と、前記測定方向から見た前記端面のなす輪郭線の近似直線と、を算出し、これらの近似直線の交点を第1管端位置候補として検出する輪郭線検出法と、前記撮像画像に基づき、前記測定方向から見た前記端面の前記端部側から遠ざかり始める点である屈曲点を検出し、前記測定方向から見た前記テーパ部のなす輪郭線の近似直線と、前記端面の屈曲点を通り前記管軸に直交する直線と、を算出し、これらの近似直線と直線との交点を第2管端位置候補として検出する屈曲点検出法と、を実行し、前記演算処理ステップでは、前記第1管端位置候補と前記第2管端位置候補とのうちの何れか一方を、前記ねじ付き管の管端位置として特定し、前記特定した管端位置を用いて、前記ねじ部のねじ形状を演算する、ねじ形状測定方法としても提供される。
【0018】
好ましくは、前記演算処理ステップでは、前記輪郭線検出法で算出した前記測定方向から見た前記端面のなす輪郭線の近似直線の傾斜角が所定の角度範囲内にあり、且つ、前記屈曲点検出法で算出した前記測定方向から見た前記端面の屈曲点と前記測定方向から見た前記テーパ部のなす輪郭線の近似直線との距離が所定の距離範囲内に無い場合には、前記第1管端位置候補を前記ねじ付き管の前記管端位置として特定し、前記輪郭線検出法で算出した前記測定方向から見た前記端面のなす輪郭線の近似直線の傾斜角が所定の角度範囲内に無く、且つ、前記屈曲点検出法で算出した前記測定方向から見た前記端面の屈曲点と前記測定方向から見た前記テーパ部のなす輪郭線の近似直線との距離が所定の距離範囲内にある場合には、前記第2管端位置候補を前記ねじ付き管の前記管端位置として特定し、前記輪郭線検出法で算出した前記測定方向から見た前記端面のなす輪郭線の近似直線の傾斜角が所定の角度範囲内にあり、且つ、前記屈曲点検出法で算出した前記測定方向から見た前記端面の屈曲点と前記測定方向から見た前記テーパ部のなす輪郭線の近似直線との距離が所定の距離範囲内にある場合には、前記第1管端位置候補及び前記第2管端位置候補のうち、前記ねじ付き管の端部側に位置する管端位置候補を前記ねじ付き管の前記管端位置として特定する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、特許文献3に記載のようなピースを用いることなく、光投影法によって生成される撮像画像に基づき、ねじ付き管の管端位置を精度良く特定し、特定した管端位置を用いてねじ形状を精度良く測定可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】切り込みが形成されたねじ付き管の端部形状の一例を模式的に示す図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るねじ形状測定装置の概略構成例を模式的に示す正面図である。
【
図3】撮像画像の一例を用いて端面近似直線検出法を説明する図である。
【
図4】撮像画像の一例を用いて外縁エッジ検出法を説明する図である。
【
図5】外縁エッジの具体的な検出方法を模式的に説明する図である。
【
図6】端面近似直線検出法で検出される管端位置(第1管端位置候補)と、外縁エッジ検出法で検出される管端位置(第2管端位置候補)との一例を示す図である。
【
図7】
図6に示す測定結果について、ねじ付き管の管軸方向周りの各角度における、近似直線L2の傾斜角、及び、外縁エッジと近似直線L1との距離を算出した結果を示す。
【
図8】具体的な管端位置特定方法で特定された管端位置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面を適宜参照しつつ、本発明の一実施形態に係るねじ付き管のねじ形状測定装置について説明する。
【0022】
図2は、本発明の一実施形態に係るねじ形状測定装置の概略構成例を模式的に示す正面図(管軸AXの方向(X方向)から見た図)である。
図2に示すように、本実施形態に係るねじ形状測定装置100は、前述の
図1に示すようなねじ付き管Pのねじ部のねじ形状(ねじ径等)を測定する装置であって、照明部1と、撮像部2と、演算処理部3と、を備えている。
本実施形態の照明部1及び撮像部2は、測定方向である上下方向(Z方向)に延びるビーム4に対して、上下方向に互いに向き合うように、上下方向に一体的に移動可能に取り付けられている。本実施形態に係るねじ形状測定装置100は、ねじ付き管Pの両側の部位を測定することでねじ径等を演算できるように、ねじ付き管Pの管軸AXを挟んでY方向(管軸AXの方向であるX方向と、測定方向であるZ方向とに直交する方向)に対向する部位を照明・撮像する、2組の同一の光学系(照明部1及び撮像部2)及び同一のビーム4を備えている。
ねじ付き管Pは、本実施形態に係るねじ形状測定装置100によってねじ形状を測定する際に、チャック(図示せず)等によって位置が固定されている。ビーム4は、ねじ付き管Pの測定部位に応じて、X方向に移動可能となっており、ビーム4がX方向に移動するのに伴って、ビーム4に取り付けられた照明部1及び撮像部2もX方向に移動するように構成されている。このため、ビーム4をX方向に移動させることで、ねじ付き管Pの両側の部位を、管軸AXの方向の全長に亘って測定することが可能である。
以下、ねじ形状測定装置100が備える各構成要素について順に説明する。
【0023】
<照明部1>
照明部1は、ねじ付き管Pの管軸AXを含む断面Mに直交する方向(Z方向)の光軸を有し、X方向及びY方向に所定の拡がりを有する平行光Lを出射することで、ねじ付き管Pの端部を照明する手段である。照明部1から出射する平行光Lの光束の光軸に垂直な断面は、撮像部2で検出し撮像する範囲(すなわち、撮像視野)よりも十分に広い面積を有する。
照明部1としては、平行光Lを出射できるものである限りにおいて特に限定されないが、例えばレンズ付きLED照明、レンズ付きハロゲンランプ、レーザ等が用いられる。
【0024】
<撮像部2>
撮像部2は、照明部1から出射された平行光Lのうち、ねじ付き管Pの端部に遮られずに通過した光を検出して撮像し、撮像画像を生成する手段である。
図2に示すように、本実施形態の撮像部2は、撮像部本体21と、撮像部本体21に取り付けられたテレセントリックレンズ22とを具備する。撮像部本体21は、2次元配置されたCCDやCMOS等の撮像素子を具備する。撮像部2は、テレセントリックレンズ22を具備することで、撮像部本体21の撮像素子において平行光成分を容易に受光可能である。
【0025】
撮像部2は、照明部1の光軸と平行な視軸(すなわち、Z方向の視軸)を有する。そして、この撮像部2の視軸の方向を、ねじ形状測定装置100における測定方向と称する。撮像部2はテレセントリックレンズ22を具備するため、物面近傍の画角が0°であり、倍率が一定となるため、寸法測定に好適である。撮像部2は、ねじ付き管Pの管軸AXを含む断面Mにその合焦位置が合致するように調整されている。具体的には、前述のように、本実施形態の撮像部2は、ビーム4に対して上下方向(Z方向)に移動可能(照明部1と一体的に移動可能)になっており、撮像部2の合焦位置が断面Mに合致するように、ねじ付き管Pの配置位置に応じて、その上下方向位置が調整されている。
【0026】
<演算処理部3>
演算処理部3は、撮像部2に接続されており、撮像部2によって生成された撮像画像に基づき、ねじ付き管Pのねじ部のねじ形状を演算する手段である。
演算処理部3は、例えば、後述の演算処理(管端位置候補を検出するための輪郭線検出法や屈曲点検出法の他、管端位置候補から特定された管端位置を用いてねじ径等のねじ形状を演算する処理)を実行するためのプログラムがインストールされたパーソナルコンピュータから構成される。
【0027】
以下、演算処理部3が実行する、管端位置候補を検出するための輪郭線検出法及び屈曲点検出法について順に説明する。
【0028】
[輪郭線検出法]
図3は、撮像画像の一例を用いて輪郭線検出法を説明する図である。輪郭線検出法では、撮像画像において、ねじ付き管Pに相当する画素領域が暗くなり、その他の画素領域が明るくなる性質を利用し、合焦位置を断面Mに合致して得られた撮像画像に2値化等の画像処理を施すことで、ねじ付き管P以外の明るい画素領域とテーパ部Tとの境界部分(テーパ部Tのなす輪郭線を構成する画素群)と、ねじ付き管P以外の明るい画素領域と端面Eとの境界部分(端面Eのなす輪郭線を構成する画素群)とを検出する。端面Eのなす輪郭線は、これに限られるものではないが、例えば、外縁エッジ(屈曲点)E1から端面EのY方向の長さの1/2程度までの範囲とされる。
次に、
図3に示すように、検出したテーパ部Tのなす輪郭線(テーパ部Tのなす輪郭線にを構成する画素群)に最小二乗法等の近似演算法を適用することで、テーパ部Tのなす輪郭線の近似直線L1を算出する。同様に、検出した端面Eのなす輪郭線(端面Eのなす輪郭線を構成する画素群)に最小二乗法等の近似演算法を適用することで、端面Eのなす輪郭線の近似直線L2を算出する。そして、これらの近似直線L1、L2の交点P1を管端位置候補(第1管端位置候補)として検出する。すなわち、交点P1の管軸方向(X方向)の座標を第1管端位置候補として検出する。
なお、撮像画像における、テーパ部Tのなす輪郭線に相当する画素領域や、端面Eのなす輪郭線に相当する画素領域のおおよその位置は、撮像部2とねじ付き管Pとの位置関係(Y方向の位置関係)や、撮像部2の撮像視野等によって推定できるため、推定した位置近傍の画素群を用いて、近似直線L1、L2を算出すればよい。また、
図3では、端面Eのなす輪郭線を用いて近似直線L2を算出することを説明する便宜上、外縁エッジ(屈曲点)E1を図示しているが、輪郭線検出法では、外縁エッジE1(外縁エッジE1の座標)を実際に検出する必要はない。
【0029】
[屈曲点検出法]
図4は、撮像画像の一例を用いて屈曲点検出法を説明する図である。
図4(a)は撮像画像の全体図であり、
図4(b)は
図4(a)の符号A2の破線で囲った領域の拡大図である。屈曲点検出法では、輪郭線検出法と同様に、合焦位置を断面Mに合致して得られた撮像画像に2値化等の画像処理を施すことで、ねじ付き管P以外の明るい画素領域とテーパ部Tとの境界部分(テーパ部Tのなす輪郭線を構成する画素群、
図4(b)にその一部を符号T’で示す曲線)を検出し、更に、端面Eの端部側から遠ざかり始める屈曲点(外縁エッジE1)を検出する。以下、画像処理によって検出する屈曲点についても、実際のねじ付き管Pの端面Eの外縁エッジE1と同様に、適宜、符号E1を付して説明する。
ここで、撮像画像内に外縁エッジE1が写っている場合には、撮像画像内の外縁エッジE1の近傍に、外縁エッジE1を起点に管軸に近づくにつれて端部側から遠ざかる端面の一部に対応する線E’と、管端に対応する輪郭線とが見える場合がある。そのため、2値化等の画像処理を施す際の閾値を、予め適切な値に設定しておけば、2値化画像内に、外縁エッジE1を起点に管軸に近づくにつれて端部側から遠ざかる端面の一部に対応する線E’だけを残し、管端の輪郭線を消すことが可能となる。
次に、
図4(a)に示すように、検出したテーパ部Tのなす輪郭線(テーパ部Tのなす輪郭線を構成する画素群)に最小二乗法等の近似演算法を適用することで、テーパ部Tのなす輪郭線の近似直線L1を算出する。また、検出した屈曲点E1を通り、管軸AXに直交する(すなわち、Y方向に延びる)直線L3を算出する。そして、これらの近似直線L1と直線L3との交点P2を管端位置候補(第2管端位置候補)として検出する。すなわち、交点P2の管軸方向(X方向)の座標を第2管端位置候補として検出する。
なお、直線L3を算出する際、この直線L3と直交する管軸AXの方向を厳密に算出するには、例えば、2組の光学系(
図2に示す照明部1及び撮像部2)のうち、一方の光学系を用いて算出した近似直線L1の傾きと、他方の光学系を用いて算出した近似直線L1の傾きとの平均値を、管軸AXの傾き(方向)として算出すればよい。
【0030】
図5は、屈曲点E1の具体的な検出方法を模式的に説明する図である。
図5(a)に示すように、撮像画像に2値化等の画像処理を施すことで、ねじ付き管Pに相当する暗い画素領域と、ねじ付き管P以外の明るい画素領域とを識別し、
図5(b)に示すように、ねじ付き管Pの境界部分に相当する画素群(●でプロットした画素の集合体)を検出する。具体的には、テーパ部Tのなす輪郭線に相当する画素群と、端面Eのなす輪郭線に相当する画素群とを検出する。
【0031】
図1を参照して説明したように、測定対象とするねじ付き管Pの端面Eは、外縁エッジE1を起点として、管軸AXに近づくにつれて管軸AX方向にねじ付き管Pの端部側から遠ざかるように傾斜している。このため、ねじ付き管Pの境界部分は、外縁エッジE1において、ねじ付き管Pの端部側に向けて凸状に屈曲していると考えられる。したがって、ねじ付き管Pの境界部分を管軸AXに直交するY方向に2階微分して、ねじ付き管Pの端部側に向けて凸状に屈曲している極値を算出することで、外縁エッジE1に相当する屈曲点を検出できると考えられる。
ねじ付き管Pの境界部分は、実際には曲線状であると考えられる。しかしながら、
図5(c)に示すように、ねじ付き管Pの境界部分に相当する画素群が管軸方向(X方向)の座標順に並んでいると考えると(
図5(c)に示す線分で結ばれた画素同士が互いに隣接していると考えると)、2階微分する際に用いる3つの隣接画素が、境界部分を表す曲線に沿わないものとなり、適切に2階微分することができない。
【0032】
そこで、2階微分する際に用いる3つの隣接画素が、境界部分を表す曲線に沿うように、互いに隣接する画素を紐付ける処理を行う。
具体的には、
図5(d)に示すように、ねじ付き管Pの管軸AXから最も離れた位置にある(
図5(d)の最も下側に位置する)画素PX
1を最初に選択し、この画素PX
1から最も近い位置にある画素PX
2を2番目に選択する。次に、すでに選択された画素PX
1を除き、画素PX
2から最も近い位置にある画素PX
3を選択する。以降、最後の画素PX
nが選択されるまで同様の処理を繰り返す。
この紐付け処理により、
図5(d)に示す線分で結ばれた画素同士が互いに隣接しているものとして紐付けられ、2階微分する際に用いる3つの隣接画素が、境界部分を表す曲線に沿うようになる。
【0033】
図5(e)に示すように、紐付け処理後の画素群をそのまま2階微分し、ねじ付き管Pの端部側に向けて凸状になっている極値を算出すると、画素群の位置にばらつきがあることに起因して、複数の画素が極値を示す場合がある。
図5(e)に示す例では、複数の画素PX
8、PX
13、PX
16が極値を示しており、どの画素が外縁エッジE1に相当するかを特定できない。
【0034】
そこで、
図5(f)に示すように、2階微分する前に画素群の位置を移動平均し、移動平均後の画素群を2階微分して、ねじ付き管Pの端部側に向けて凸状になっている極値を算出する。これにより、極値を示す画素が1つになれば、この画素を外縁エッジE1に相当する屈曲点として特定する。
図5(f)に示す例では、
図5(e)に示す場合よりも極値を示す画素が少なくなったものの、複数の画素PX
8、PX
13が極値を示しており、どちらの画素が外縁エッジE1に相当するかを特定できない。したがって、このような場合には、極値を示す複数の画素のうち、近似直線L1と近似直線L2との交点(本来、外縁エッジE1が存在すると考えられる位置)に最も近い位置にある画素を外縁エッジE1に相当する屈曲点として特定する。
図5(f)に示す例では、画素PX
13が外縁エッジE1に相当する屈曲点として特定されることになる。
以上のようにして、屈曲点検出法で用いる屈曲点E1が検出される。
【0035】
演算処理部3は、以上に説明した輪郭線検出法及び屈曲点検出法を実行可能であり、輪郭線検出法で検出される第1管端位置候補(
図3に示す交点P1)と、屈曲点検出法で検出される第2管端位置候補(
図4に示す交点P2)とのうちの何れか一方を、ねじ付き管Pの管端位置として特定し、この特定した管端位置を用いて、ねじ部のねじ形状を演算する。
【0036】
図6は、輪郭線検出法で検出される管端位置(第1管端位置候補)と、屈曲点検出法で検出される管端位置(第2管端位置候補)との一例を示す図である。具体的には、
図6は、照明部1によって端部を照明する際のねじ付き管(
図6に示す例では、端面Eに120°ピッチで切り込みGが形成されたねじ付き管)Pの管軸AX方向周りの角度を、ある角度を基準にして0°~120°の角度範囲において所定の角度ピッチで変更し、各角度において、輪郭線検出法で検出される管端位置(第1管端位置候補)と、屈曲点検出法で検出される管端位置(第2管端位置候補)とを、接触式の形状測定装置(ミツトヨ製コントレーサ、触針の先端角度20°、先端半径25μm)で測定した管端位置と比較した結果の一例を示す。
図6(a)は管端位置の測定結果の一例を示し、
図6(b)~(e)はねじ付き管Pが所定の角度であるときに生成された撮像画像の一例を示す。なお、
図6(a)の縦軸は、ある位置を基準(0mm)として、管端位置(管端位置候補を含む)がねじ付き管Pの中央部側にどれだけ離れているかを示す値である。また、
図6(a)において、「コントレーサ測定不可」と記載されている領域は、コントレーサの触針が端面Eの切り込みGに接触してしまうことで、正確に管端位置を測定できなかった角度範囲を意味する。
【0037】
図6(a)に示すように、符号A3の破線で囲った領域では、輪郭線検出法で検出される第1管端位置候補及び屈曲点検出法で検出される第2管端位置候補の双方がコントレーサで測定した管端位置と良く合致している。このときには、
図6(b)に示すような撮像画像が生成されている。
図6(b)に示す撮像画像では、第1管端位置候補を検出するのに用いる近似直線L2が精度良く算出され、第2管端位置候補を検出するのに用いる屈曲点E1も精度良く検出されていることが分かる。
【0038】
図6(a)に示すように、符号A4の破線で囲った領域では、輪郭線検出法で検出される第1管端位置候補がコントレーサで測定した管端位置よりも小さな値になっている。すなわち、第1管端位置候補が、コントレーサで測定した実際の管端位置よりもねじ付き管Pの端部側に位置する座標として検出されている。このときには、
図6(c)に示すような撮像画像が生成されている。
図6(c)に示す撮像画像では、第1管端位置候補を検出するのに用いる近似直線L2の傾斜角(X方向と成す角度)θが、切り込みGの存在によって、精度良く第1管端位置候補を検出できた
図6(b)に示す近似直線L2の傾斜角(θ≒89°)よりも大きく算出されており、これに起因して、第1管端位置候補が小さな値になっている。
また、
図6(a)に示すように、符号A5の破線で囲った領域では、輪郭線検出法で検出される第1管端位置候補がコントレーサで測定した管端位置よりも大きな値になっている。すなわち、第1管端位置候補が、コントレーサで測定した実際の管端位置よりもねじ付き管Pの中央部側に位置する座標として検出されている。このときには、
図6(d)に示すような撮像画像が生成されている。
図6(d)に示す撮像画像では、第1管端位置候補を検出するのに用いる近似直線L2の傾斜角θが、切り込みGの存在によって、精度良く第1管端位置候補を検出できた
図6(b)に示す近似直線L2の傾斜角よりも小さく算出されており、これに起因して、第1管端位置候補が大きな値になっている。
【0039】
図6(a)に示すように、符号A6の破線で囲った領域(切り込みGの存在によってコントレーサ測定不可の領域)では、屈曲点検出法で検出される第2管端位置候補が、他の領域に対して不連続に変化しており、精度良く検出できていないと考えられる。このときには、
図6(e)に示すような撮像画像が生成されている。
図6(e)に示す撮像画像では、切り込みGの存在によって、第2管端位置候補を検出するのに用いる屈曲点E1が精度良く検出されず、精度良く第2管端位置候補を検出できた
図6(b)に示す屈曲点E1の位置よりも管軸AXに近づいた位置で検出されており、これに起因して、第2管端位置候補が精度良く検出できていないと考えられる。
【0040】
図7は、
図6に示す測定結果について、ねじ付き管Pの管軸方向周りの各角度における、近似直線L2の傾斜角θ、及び、屈曲点E1と近似直線L1との距離を算出した結果を示す。
図7(a)は近似直線L2の傾斜角θを示し、
図7(b)は屈曲点E1と近似直線L1との距離を示す。
図7(a)に示すように、第1管端位置候補を精度良く検出できた領域(
図6(a)に示す領域A3に対応する領域)では、測定方向から見た傾斜角θ≒89°であるため、例えば、測定方向から見た傾斜角θが90°以上の場合には(
図7(a)においてハッチングを施した領域では)、第1管端位置候補を精度良く検出できていないと判定し、この場合の第1管端位置候補を最終的な管端位置として選択しないようにすることが考えられる。これにより、第1管端位置候補を精度良く検出できなかった領域(
図6(a)に示す領域A4)を排除することができる。
また、
図7(b)に示すように、第2管端位置候補を精度良く検出できた領域(
図6(a)に示す領域A3に対応する領域)では、測定方向から見た屈曲点E1と近似直線L1との距離は1mm弱であるため、例えば、屈曲点E1と近似直線L1との距離が1mm以上の場合には(
図7(b)においてハッチングを施した領域では)、第2管端位置候補を精度良く検出できていないと判定し、この場合の第2管端位置候補を最終的な管端位置として選択しないようにすることが考えられる。これにより、第2管端位置候補を精度良く検出できなかった領域(
図6(a)に示す領域A6)を排除することができる。
【0041】
[管端位置特定方法]
以上に説明したような結果に基づき、本実施形態の演算処理部3は、具体的には以下に述べるようにして、第1管端位置候補及び第2管端位置候補のうちの何れか一方をねじ付き管Pの管端位置として特定する。
まず、本実施形態の演算処理部3は、輪郭線検出法で算出した端面Eのなす輪郭線の近似直線L2の傾斜角θが所定の角度範囲内(例えば、90°未満)にあり、且つ、屈曲点検出法で算出した端面Eの屈曲点E1とテーパ部Tのなす輪郭線の近似直線L1との距離が所定の距離範囲内(例えば、1mm未満)に無い場合には、第1管端位置候補が精度良く検出され、第2管端位置候補が精度良く検出されていないと判定し、第1管端位置候補をねじ付き管Pの管端位置として特定する。
また、本実施形態の演算処理部3は、輪郭線検出法で算出した端面Eのなす輪郭線の近似直線L2の傾斜角θが所定の角度範囲内(例えば、90°未満)に無く、且つ、屈曲点検出法で算出した端面Eの屈曲点E1とテーパ部Tのなす輪郭線の近似直線L1との距離が所定の距離範囲内(例えば、1mm未満)にある場合には、第2管端位置候補が精度良く検出され、第1管端位置候補が精度良く検出されていないと判定し、第2管端位置候補をねじ付き管Pの管端位置として特定する。
さらに、本実施形態の演算処理部3は、輪郭線検出法で算出した端面Eのなす輪郭線の近似直線L2の傾斜角θが所定の角度範囲内にあり、且つ、屈曲点検出法で算出した端面Eの屈曲点E1とテーパ部Tのなす輪郭線の近似直線L1との距離が所定の距離範囲内(例えば、1mm未満)にある場合には、第1管端位置候補及び第2管端位置候補のうち、ねじ付き管Pの端部側に位置する管端位置候補(すなわち、
図6(a)において、縦軸の値が小さい方の管端位置候補)をねじ付き管Pの管端位置として特定する。これにより、第1管端位置候補を精度良く検出できなかった領域(
図6(a)に示す領域A5)を排除することができる。
なお、端面Eの屈曲点E1とテーパ部Tのなす輪郭線の近似直線L1との距離は、屈曲点E1から近似直線L1に下した垂線(屈曲点を通り近似直線L1に直交する線分)の長さとして算出してもよいし、屈曲点E1から、屈曲点E1を通り管軸AXに直交する(Y方向に延びる)直線と近似直線L1との交点までの長さとして算出してもよい。
【0042】
図8は、以上に説明した具体的な管端位置特定方法で特定された管端位置を示す図である。具体的には、
図8は、
図6(a)に示す結果について、上記の管端位置特定方法で特定された管端位置を示す図である。
図8に示すように、0°~120°の全ての角度範囲において、特定された管端位置はコントレーサで測定した実際の管端位置と良好に合致しており、コントレーサで測定できない管端位置についても、滑らかに連続していることが分かる。
【0043】
なお、ねじ付き管Pの管端位置は、2組の光学系(
図2に示す照明部1及び撮像部2)のそれぞれで特定可能であるため、一方の光学系を用いて特定した管端位置と、他方の光学系を用いて特定した管端位置との平均値を、最終的な管端位置とすることも可能である。
演算処理部3は、以上ようにして特定された管端位置を用いてねじ径等のねじ形状を演算するが、ねじ形状の演算方法については、特許文献2に記載のような従来公知の方法を適宜用いることができるため、ここでは、その詳細な説明を省略する。
【0044】
本実施形態に係るねじ形状測定装置100によれば、光投影法によって端部Eを照明する際のねじ付き管Pの管軸方向周りの角度に関わらず、ねじ付き管Pの管端位置を精度良く特定可能であり、特定した管端位置を用いてねじ形状を精度良く測定可能である。
【符号の説明】
【0045】
1・・・照明部
2・・・撮像部
3・・・演算処理部
4・・・ビーム
21・・・撮像部本体
22・・・テレセントリックレンズ
100・・・ねじ形状測定装置
AX・・・管軸
E・・・端面
E1・・・外縁エッジ(屈曲点)
P・・・ねじ付き管
T・・・テーパ部