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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023172815
(43)【公開日】2023-12-06
(54)【発明の名称】携帯型無線通信機
(51)【国際特許分類】
   H04R 1/08 20060101AFI20231129BHJP
   H04R 1/02 20060101ALI20231129BHJP
   H04R 1/06 20060101ALI20231129BHJP
   H04B 1/3827 20150101ALI20231129BHJP
【FI】
H04R1/08
H04R1/02 107
H04R1/06 320
H04B1/3827 110
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022097515
(22)【出願日】2022-06-16
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-09-29
(31)【優先権主張番号】P 2022083935
(32)【優先日】2022-05-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000234937
【氏名又は名称】八重洲無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089956
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 利和
(72)【発明者】
【氏名】飯束 嘉庸
【テーマコード(参考)】
5D017
5K011
【Fターム(参考)】
5D017BC03
5D017BC12
5D017BC19
5D017BD10
5D017BE10
5K011AA01
5K011AA07
5K011BA03
5K011JA01
5K011JA03
5K011KA06
(57)【要約】
【課題】携帯型無線通信機の複信通信でマイクとスピーカを用いるとハウリングが発生し易く、小型マイクとイヤホンからなる音響アクセサリなどの使用を余儀なくされる。
【解決手段】携帯型無線通信機の本体筐体10とは独立したアダプタ筐体15の筒体部17の先端にMICエレメント26を内蔵させる。アダプタ筐体15が本体筐体10に接合固定された状態(MIC信号線の接続状態)で、筒体部17の先端は本体筐体10の背面側上方のスピーカ13から遠い位置となり、収音孔38a,38bの方向はスピーカ13の音波の進行方向に対して垂直とされる。また、マイク側部分18の吸音孔38a,38bからMICエレメント26までに蛇行した音響伝送路を介在させて音響的距離を稼いである。スピーカ13からMICエレメント26への音波の回り込みとスピーカ13の機械的振動の伝搬を抑制してハウリングを防止する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複信方式での通話機能を有し、略直方体状の本体筐体の正面に内蔵スピーカの音声出力孔が形成されている携帯型無線通信機において、
前記本体筐体の側面に音声信号入力用のソケット端子が設けられている一方、前記本体筐体の前記ソケット端子に対して内蔵マイクロホンの音声信号出力用のピン端子を挿嵌接続させた状態で着脱自在に装着固定されるアダプタ筐体を備え、
前記アダプタ筐体は前記本体筐体に対する装着固定部と前記マイクロホンを内蔵すると共に上端部の周側面に収音孔を設けた筒体部とからなり、前記装着固定部が前記本体筐体に装着固定された状態で、前記筒体部の収音孔が前記本体筐体の背面側で前記本体筐体の上面より上側に配置せしめられ、
前記筒体部はその内部に蛇行した音響伝送路が構成されていると共に、前記音響伝送路の一端側が前記収音孔を通じて外部と連通し、他端側が内蔵されたマイクロホンエレメントの前側空間に連通している
ことを特徴とする携帯型無線通信機。
【請求項2】
前記音響伝送路が、前記筒体部の周側面の一部に形成した第1の平坦面に蛇行した凹溝を形成しておき、前記第1の平坦面に剛性のカバーシートを覆着することにより構成されており、前記収音孔を前記凹溝の一端側を前記カバーシートの周縁部より外側へ覗かせることにより構成した請求項1に記載の携帯型無線通信機。
【請求項3】
前記筒体部における前記第1の平坦面とは反対側の周側面に形成された第2の平坦面と前記凹溝の他端側とを通じる連通孔が形成されており、前記第2の平坦面の中央領域に凹段差面が形成されていると共に、その凹段差面に形成した穴の底部にマイクロホンエレメントを配置せしめ、前記凹段差面には防水音響膜を、前記第2の平坦面には剛性のカバーシートをそれぞれ覆着した請求項2に記載の携帯型無線通信機。
【請求項4】
前記アダプタ筐体の筒体部を、軸方向について、前記収音孔、前記音響伝送路及び前記マイクロホンを含む音響系要素が構成されているマイク側部分とそれ以外の部分とに分割し、前記各部分をプラグ・ジャックによる接栓接続方式として前記マイク側部分を前記アダプタ筐体に対して着脱自在とした請求項1、2又は3に記載の携帯型無線通信機。
【請求項5】
複信方式での通話機能を有し、略直方体状の本体筐体の正面に内蔵スピーカの音声出力孔が形成されていると共に、合成樹脂製の外筒にノーマルモード型ヘリカルアンテナを内蔵させたアンテナ部が前記本体筐体の上面に立設固定されており、前記アンテナ部の前記本体筐体に対する立設部を構成するアンテナベースに前記ヘリカルアンテナの最下部が給電点として接続されている携帯型無線通信機において、
前記アンテナ部の先端部分が、先端を開放端とした合成樹脂製の外筒に対して周側壁に収音孔を設けた有底キャップを冠着することで前記外筒の開放端と前記有底キャップの内壁面に囲まれた空間が前記収音孔を通じて外部と連通した構成とされ、前記アンテナベースで保持させたマイクロホンエレメントと前記空間との間を前記ヘリカルアンテナのコイル内に挿通した音響チューブを介して連通させたことを特徴とする携帯型無線通信機。
【請求項6】
前記外筒の先端区間が前記有底キャップの内周面が嵌着する第1区間とそれより先端側で前記第1区間よりも小径の第2区間とからなり、前記有底キャップに設けた収音孔が、前記有底キャップの内周面が前記外筒の第1区間に嵌着した状態で、前記外筒の第2区間と前記有底キャップの内周面の間に構成される隙間に連通する位置に設けられている請求項5に記載の携帯型無線通信機。
【請求項7】
前記外筒の開放端に防水音響膜を覆設した請求項5又は6に記載の携帯型無線通信機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯型無線通信機による複信モードでの通信において、ハウリングを発生させることなくマイクロホンとスピーカによる通話を可能にするための、携帯型無線通信機におけるマイクロホン側の音響的配置構成に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、特定小電力無線局や簡易無線局に係る携帯型無線通信機では、本体筐体にマイクロホンとスピーカが内蔵されていると共に、同筐体には小型タイピン状マイクロホンとイヤホンからなるオーディオ・アクセサリーやヘッドセット(マイク付きイヤホン・ヘッドホン)を接続するためのジャックも設けられており、単信モードでの通話においてはマイクロホンとスピーカを用いるが、複信モードではオーディオ・アクセサリーやヘッドセットが用いられる。
【0003】
ここで、複信モードにおいてオーディオ・アクセサリーなどを用いるのは、携帯型無線通信機ではマイクロホンとスピーカが小さな筐体内に組み込まれているため、如何にしてもハウリングの発生を回避できないからである。
すなわち、複信モードでの通信においては、無線通信機のスピーカからの音波がマイクロホンへ回り込むと共に、相手局のマイクロホン→自局のスピーカ→自局のマイクロホン→相手局のスピーカ→相手局のマイクロホン・・・という無線伝送路を介したループ経路が構成され、各無線通信機のマイクロホンアンプとスピーカアンプのゲインが加算されてループゲインが0dBを超えるとハウリングが発生するため、これをオーディオ・アクセサリーなどの使用によってスピーカからマイクロホンへの音波の回り込みを無くすることによりハウリングの発生を防止している。
【0004】
一方、前記音波の回り込みは所謂音響エコーを生じさせていることに外ならず、音響エコーキャンセラを適用してハウリングを防止する方式も一般的に採用されている。
この音響エコーキャンセラの原理は、スピーカに供給される信号を入力として音響エコー信号に模した信号(擬似エコー信号)を作り出し、音響エコー信号から擬似エコー信号を差し引くことで音響エコーを消去するものであり、下記特許文献1~4にあるように古くから様々な提案がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平08-274689号公報
【特許文献2】特開平06-260972号公報
【特許文献3】特開平01-158860号公報
【特許文献4】特開昭62-116025号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、音響エコーキャンセラの基本的構成は、図11に示されるように、適応フィルタ、エコーサプレッサ及びボイススイッチからなり、適応フィルタによりスピーカからマイクロホンに回り込む音響エコーを予測して除去する機能を有している。
また、エコーサプレッサは適応フィルタで除去できなかった音響エコーを抑制し、ボイススイッチはボイススイッチ制御部で制御されることで適切に音量を制御するようになっている。
【0007】
しかしながら、エコーサプレッサによる音響エコーの減衰量には限界があり、ハウリングを防止するためにボイススイッチでの音量制御を行わざるを得ない場合が多く、スピーカから大音量を出力させることができないという問題がある。
また、音響エコーキャンセラを用いると音声信号に歪が生じて聴き取りづらくなるという傾向がある。
【0008】
携帯型無線通信機相互のマイクロホンとスピーカを用いた複信モードでの通信におけるハウリング防止対策の基本は、スピーカからの音波が音響空間を介してマイクロホンに回り込む量を如何に抑制するかという点にある。
したがって、そのための手段としては、(1)スピーカとマイクロホンの間の距離を大きくしてマイクロホンが受ける音圧レベルを減衰させること、(2)マイクロホンの振動膜面がスピーカからの音波面の進行方向に対して垂直な関係になるようにすること、(3)スピーカの振動が筐体を介してマイクロホンに伝搬しないようにすること、(4)スピーカからの音波を直接的に受けない位置にマイクロホンを設置して回折減衰により音圧レベルを減衰させること等が考えられる。
【0009】
そこで、本発明は、前記ハウリング防止対策に鑑みて、携帯型無線通信機おけるスピーカに対するマイクロホンの音響的配置構成を工夫することにより、ハウリングを発生させることなく、マイクロホンとスピーカを用いた複信モードでの通話を可能にする携帯型無線通信機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の発明は、複信方式での通話機能を有し、略直方体状の本体筐体の正面に内蔵スピーカの音声出力孔が形成されている携帯型無線通信機において、前記本体筐体の側面に音声信号入力用のソケット端子が設けられている一方、前記本体筐体の前記ソケット端子に対して内蔵マイクロホンの音声信号出力用のピン端子を挿嵌接続させた状態で着脱自在に装着固定されるアダプタ筐体を備え、前記アダプタ筐体は前記本体筐体に対する装着固定部と前記マイクロホンを内蔵すると共に上端部の周側面に収音孔を設けた筒体部とからなり、前記装着固定部が前記本体筐体に装着固定された状態で、前記筒体部の収音孔が前記本体筐体の背面側で前記本体筐体の上面より上側に配置せしめられ、前記筒体部はその内部に蛇行した音響伝送路が構成されていると共に、前記音響伝送路の一端側が前記収音孔を通じて外部と連通し、他端側が内蔵されたマイクロホンエレメントの前側空間に連通していることを特徴とする携帯型無線通信機に係る。
【0011】
この第1の発明によれば、スピーカを内蔵する本体筐体に対して独立したアダプタ筐体にマイクロホンを内蔵させたことにより、スピーカの音響的振動はもとより、その機械的振動がマイクロホンに伝搬することが抑制できると共に、スピーカとマイクロホンの距離についても双方を本体筐体内に内蔵させている場合と比較して大きくとれるため、スピーカからマイクロホンへの音波の回り込みを効果的に抑制できる。
また、筒体部の内部に構成されている蛇行した音響伝送路は、収音孔とマイクロホンエレメントの間の音響的距離を大きくして、スピーカから回り込んだ音波と周辺の環境音を減衰させることができる。
さらに、マイクロホンを本体筐体の背面側に位置させていることで音圧の回折減衰効果が得られるため、前記音波の回り込みを有効に低減させる。
以上の効果により、前記第1の発明は携帯型無線通信機同士の複信方式での通話においてハウリングの発生をきわめて有効に防止する。
【0012】
前記第1の発明においては、前記音響伝送路が、前記筒体部の周側面の一部に形成した第1の平坦面に蛇行した凹溝を形成しておき、前記第1の平坦面に剛性のカバーシートを覆着することにより構成されており、前記収音孔を前記凹溝の一端側を前記カバーシートの周縁部より外側へ覗かせることにより構成することが望ましい。
この構成によれば、簡単な工程で長い音響伝送路と吸音孔を合理的に構成できる。
【0013】
また、その場合には、前記筒体部における前記第1の平坦面とは反対側の周側面に形成された第2の平坦面と前記凹溝の他端側とを通じる連通孔が形成されており、前記第2の平坦面の中央領域に凹段差面が形成されていると共に、その凹段差面に形成した穴の底部にマイクロホンエレメントを配置せしめ、前記凹段差面には防水音響膜を、前記第2の平坦面には剛性のカバーシートをそれぞれ覆着することが望ましい。
この構成によれば、音響伝送路を第1の平坦面側から第2の平坦面側へ連通孔によって迂回させることで、マイクロホンエレメントの合理的な実装と、より簡単な防水対策が可能になる。
【0014】
また、この第1の発明においては、前記アダプタ筐体の筒体部を、軸方向について、前記収音孔、前記音響伝送路及び前記マイクロホンを含む音響系要素が構成されているマイク側部分とそれ以外の部分とに分割し、前記各部分をプラグ・ジャックによる接栓接続方式として前記マイク側部分を前記アダプタ筐体に対して着脱自在としておくことが望ましい。
このようにマイク側部分を着脱可能にしておけば、携帯型無線通信機の使用環境によってはオーディオ・アクセサリーやヘッドセットの利用も可能になるため便利である。
【0015】
次に、第2の発明は、複信方式での通話機能を有し、略直方体状の本体筐体の正面に内蔵スピーカの音声出力孔が形成されていると共に、合成樹脂製の外筒にノーマルモード型ヘリカルアンテナを内蔵させたアンテナ部が前記本体筐体の上面に立設固定されており、前記アンテナ部の前記本体筐体に対する立設部を構成するアンテナベースに前記ヘリカルアンテナの最下部が給電点として接続されている携帯型無線通信機において、前記アンテナ部の先端部分が、先端を開放端とした合成樹脂製の外筒に対して周側壁に収音孔を設けた有底キャップを冠着することで前記外筒の開放端と前記有底キャップの内壁面に囲まれた空間が前記収音孔を通じて外部と連通した構成とされ、前記アンテナベースで保持させたマイクロホンエレメントと前記空間との間を前記ヘリカルアンテナのコイル内に挿通した音響チューブを介して連通させたことを特徴とする携帯型無線通信機に係る。
【0016】
この第2の発明では、携帯型無線通信機において本体筐体のスピーカに対して最も遠い位置にあるのはアンテナ部の先端であるが、その先端部分に収音孔を設けると共に、アンテナ部が内蔵するノーマルモード型ヘリカルアンテナの内側が中空になっていることを利用して、収音孔側の空間とアンテナベース側に保持させたマイクロホンエレメントの間を、前記ヘリカルアンテナのコイルの内側に挿通させた音響チューブで連通させている。
したがって、スピーカとマイクロホンの音響的距離を可能な限り大きくしており、またアンテナ部分は携帯型無線通信機の本体筐体に対して独立した別筐体に相当するものであることから、スピーカからマイクロホンへの音波の回り込みと機械的振動の伝播を効果的に減じることができる。
【0017】
特定小電力無線局や簡易無線局に係る携帯型無線通信機では1/4波長のホイップアンテナが用いられるが、先端が閉じた合成樹脂製の外筒にノーマルモード型ヘリカルアンテナを内蔵させることで全長をより短くしており、10~15cm程度のものが多用されている。
ここで、音圧レベルの減衰はスピーカを点音源と仮定すると理論的には倍距離当たり6dBの減衰となるが、本体筐体にスピーカとマイクロホンが内蔵されている場合と、マイクロホンをアンテナ部の先端に内蔵させた場合とで比較すると、スピーカとマイクロホンの間の距離は後者の場合が前者の場合の凡そ4~6倍程度又はそれ以上になり、この第2の発明は前記音波の回り込みの防止に対してきわめて有効であるといえる。
【0018】
また、前記第2の発明においては、前記外筒の先端区間が前記有底キャップの内周面が嵌着する第1区間とそれより先端側で前記第1区間よりも小径の第2区間とからなり、前記有底キャップに設けた収音孔が、前記有底キャップの内周面が前記外筒の第1区間に嵌着した状態で、前記外筒の第2区間と前記有底キャップの内周面の間に構成される隙間に連通する位置に設けられている構成にすることが望ましい。
この場合、収音孔から入った音波は、外筒の第2区間と有底キャップの内周面の隙間を通じて、外筒の先端側から音響チューブへ侵入し、音響チューブ内を伝搬してマイクロホンエレメントへ至るという音響経路を辿る。
収音孔は外部空間と前記隙間を連通しているが、前記隙間が薄い筒状空間になっていることにより、空気の吹込みによるヘルツホルム共鳴音が発生することを回避できる。
【0019】
また、前記第2の発明においては、前記外筒の開放端に防水音響膜を覆設することで、収音孔から侵入した水が外筒の開放端から音響チューブを通じてマイクロホンへ浸入することを防止でき、合理的に防水機能を具備させることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の携帯用無線通信機は、スピーカからマイクロホンエレメントへの音波の回り込みを有効に抑制できるマイクロホンエレメントの配置構成を適用し、その物理音響的条件により、複信モードでの通信においてハウリングを発生させない環境でのマイクロホンとスピーカを用いた通話を実現する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施形態1に係る携帯型無線通信機においてアダプタ筐体を取り付けた状態での外観斜視図(A)と、アダプタ筐体が装着固定部と筒体部とからなると共に、筒体部はマイク側部分と支持部とから構成されおり、マイク側部分が接栓にて着脱自在であることを示す斜視図(B)である。
図2】アダプタ筐体の正面図(A)、左側面図(B)、右側面図(C)及び筒体部におけるマイク側部分と支持部との連結部分に係る背面図(D)である。
図3】アダプタ筐体の装着固定部が内蔵している接続基板とジャック部、及び筒体部が内蔵しているMIC基板とプラグ部を示す正面図(A)と左側面図(B)と右側面図(C)である。
図4】アダプタ筐体の装着固定部と筒体部における接続基板とジャック部・プラグ部とMIC基板の内蔵状態を示す概略的断面図である。
図5】マイク側部分の先端側の拡大図(A)及び同拡大図(A)におけるY-Y矢視断面(B)である。
図6図5(A)のマイク側部分からカバーシートを外した状態の拡大図(A)及び図5(B)におけるZ-Z矢視断面(B)である。
図7図5(B)におけるマイクロホンエレメントの実装部分を中心とした部分拡大図(音響伝送路を通過した音波の進行経路も示す)である。
図8】本発明の実施形態2に係る携帯型無線通信機の外観斜視図である。
図9】ホイップアンテナの側面図(A)、正面図(B)及び正面図(B)におけるW-W矢視断面図(C)である。
図10図9(C)におけるホイップアンテナの先端部分の拡大図である。
図11】音響エコーキャンセラの基本的構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の携帯型無線通信機の実施形態1及び2ついて、図1から図10までを用いて詳細に説明する。
[実施形態1]
この実施形態に係る携帯型無線通信機の外観斜視図は図1(A)に示され、複信通信モードでの同時通話が可能な機能を備えている。
そして、この種の一般的な携帯型無線通信機と同様に、外観上は本体筐体10とアンテナ部11とツマミ12及びその他各種操作ボタン類(図示せず)からなると共に、本体筐体10にはスピーカ13が内蔵されており、本体筐体10の正面側の筐体壁部にはスピーカ13の音声出力孔14が形成されている。
【0023】
この実施形態では本体筐体10の側面に対してマイクロホンの取り付け用アダプタに相当するアダプタ筐体15が装着できるようになっている点に特徴がある。
ここに、アダプタ筐体15は本体筐体10側へ接合装着される装着固定部16とマイクロホンを内蔵した筒体部17とからなる。
また、筒体部17は、図1(B)に示されるように、マイク側部分18と支持部19とに分かれ、支持部19は装着固定部16と一体的に構成されており、マイク側部分18側のプラグ18aと支持部19側のジャック19aとの接栓機構により電気的・機械的に着脱自在になっている。
【0024】
アダプタ筐体15の詳細は、図2に示されるとおりであり、装着固定部16の本体筐体10側への接合面20にはマイクロホンとイヤホンの信号線に係るピン端子群21が設けられており、装着固定部16を本体筐体10側の嵌合部へ合わせて各ピン端子群21を本体筐体10側のマイクロホンとイヤホンの信号線に係る各ソケット端子群(図示せず)に挿入させた状態で、固定用ネジ22を本体筐体10側の雌ネジ(図示せず)に締着させることによりアダプタ筐体15が本体筐体10に固定される。
【0025】
図3には、アダプタ筐体15の装着固定部16側に内蔵されている接続基板23とそれに固定されているジャック部19a及び筒体部17側に内蔵されているMIC基板24とそれに固定されているプラグ18aが示されているが、接続基板23側には前記ピン端子群21が立設されていると共に固定用ネジ22の貫通孔25が形成されており、MIC基板24にはマイクロホンエレメント(以下、「MICエレメント」という)26が装着されている。
【0026】
そして、接続基板23側にはジャック部19aとピン端子群21を接続しているマイクロホンとイヤホンの信号線に係る導体パターン(図示せず)が構成されており、MIC基板24側にはMICエレメント26とプラグ18aを接続しているマイクロホンの信号線に係る導体パターン(図示せず)が構成されている。
なお、接続基板23側にマイクロホンだけでなくイヤホンの信号回路が構成されているのは、図1(B)に示すように、マイク側部分18を支持部19から抜いて、オーディオ・アクセサリーやヘッドセットのプラグを差し込むことでそれらも使用できるようにしてあるためである。
【0027】
図4は、合成樹脂製のアダプタ筐体15の装着固定部16と筒体部17に接続基板23とジャック19a・プラグ18aとMIC基板24が内蔵されている状態を示す概念図であり、MICエレメント26が出力する音声信号はMIC基板24の導体パターン(図示せず)→[プラグ18a・ジャック19a]→接続基板23の導体パターン(図示せず)→[接続基板23のピン端子群21・本体筐体10側のソケット端子群(図示せず)]を経て本体筐体10の変調送信部へ入力される。
【0028】
マイク側部分18の先端側は図5図6及び図7に示されるような構成になっている。
先ず、マイク側部分18の外周面の両側には、平面形状が長円形の座グリ状の穴27と、平面形状が円形の座グリ状の穴28が形成されており、各穴27,28の底部はMIC基板24に対して平行な平坦面27a,28aになっており、さらに各平坦面27a,28aは次のような構成になっている。
長円形の穴27側の平坦面27aには、図6に示すような蛇行した凹溝29が形成されており、その凹溝29の一端30aとその手前の分岐部分30bが平坦面27aの隅角まで至っているのに対して、他端31側は平坦面27aの領域内に留まっている。
円形の穴28側の平坦面28aにはその中央領域に凹段差面32が形成されており、その凹段差面32からMIC基板24のMICエレメント26へ通じる導音孔33が形成されている。
長円形の穴27側にある凹溝29の他端31と円形の穴28側の凹段差面32との間には、それらを通気させる連通孔34が形成されている。
【0029】
そして、以上の各平坦面27a,28aに係る構成において、平坦面27aに対しては平面形状が穴27より僅かに小さい合成樹脂製のカバーシート35が接合貼着され、凹段差面32に対しては導音孔33を覆う態様で防水音響膜36が接合貼着され、平坦面28aに対してその略全領域を覆う態様で合成樹脂製のカバーシート37が接合貼着されている。
なお、カバーシート35,37は合成樹脂製であるが平坦面27a,28aに接合貼着された状態で音響的振動に同期しないだけの剛性を有している。
【0030】
その結果、平坦面27aの凹溝29はカバーシート35が覆設されたことで断面が方形状の蛇行した音響伝送路になると共に、カバーシート35はその平面形状が穴27より僅かに小さいために、平坦面27aの隅角まで構成されている凹溝29の一端30aとその手前の分岐部分30bがカバーシート35の外縁より僅かに外側へ覗いた態様となり、図5(A)に示すように、その覗いた各部分が吸音孔38a,38bとなる。
また、図5(B)及び図7に示されるように、凹段差面32に覆着された防水音響膜36と平坦面28aに覆着されたカバーシート37の間には隙間39が構成されており、その隙間39は連通孔34に通じている。
【0031】
したがって、収音孔38a,38bから侵入した音波は、凹溝29とカバーシート35で構成された音響伝送路によって蛇行しながら連通孔34へ導かれ、さらに図7の破線で示すように、連通孔34を通じて背面側へ迂回せしめられて防水音響膜36とカバーシート37の隙間39へ侵入し、防水音響膜36を介して導音孔33へ通音されてMIC基板24のMICエレメント26へ至るという経路を辿る。
なお、この実施形態ではMIC基板24のMICエレメント26が導音孔33と反対側の基板面に取り付けられており、音波は最終的にMIC基板24に穿設されている小孔40を通じてMICエレメント26に達する。
【0032】
ところで、この実施形態のマイク側部分18は樹脂モールディングによってMIC基板24を包んで成形されているが、そのモールディングの際にMIC基板24をずれないように固定する必要がある。
図5から図7において符号41として示されている孔は、モールディングに際してMIC基板24を固定支持するための棒材が挿入されていた痕跡である。
【0033】
以上のこの実施形態における本体筐体10とアダプタ筐体15の構成において、本体筐体10のスピーカ13とアダプタ筐体15側のマイク側部分18が内蔵するMICエレメント26との音響的位置関係を検討する。
まず、一般的な携帯型無線通信機のように本体筐体にスピーカとマイクロホンを内蔵させていると仮定した場合のスピーカの音声出力孔とマイクロホンの収音孔の距離に対して、この実施形態における本体筐体10のスピーカ13の音声出力孔14とアダプタ筐体15の筒体部17(マイク側部分18)の上端に設けた収音孔38a,38bとの間の音響的距離を比較すると、当然にこの実施形態の方が圧倒的に長く、4~5倍以上になることは明らかであり、マイク側部分18の長さを大きくすればそれ以上の距離も確保できる。
【0034】
また、この実施形態の携帯型無線通信機では、前記のように外観的に確認できる音響的距離だけでなく、マイク側部分18の内部において、収音孔38a,38bから蛇行した長い音響伝送路を経由した後、連通孔34で背面側へ送られてMIC基板24のMICエレメント26へ至る音響的距離も加わることになり、MICエレメント26へ回り込むスピーカ13の音波を減衰させることができる。
【0035】
加えて、スピーカ13は本体筐体10に、MICエレメント26はアダプタ筐体15の筒体部17の先端部に内蔵されており、双方が別の筐体にあることから、スピーカ13の機械的振動がMICエレメント26に伝播し難い。
【0036】
さらに、アダプタ筐体15の筒体部17は本体筐体10の背面側に位置しており、スピーカ13の音声出力孔14から出力される音波は本体筐体10の正面側から回折しなければ筒体部17の収音孔38a,38bへ達しないため、収音孔38a,38bに達した音波は回折減衰して音圧レベルが低下したものになる。
【0037】
またさらには、図1に示すように、音声出力孔14から出力されるスピーカ13の音波の進行方向S1に対して、筒体部17のマイク側部分18に形成されている収音孔38a,38bの方向S2はほぼ垂直な関係にあるため、収音孔38a,38bは強い音圧を受けない条件になっている。
この点に関して、この実施形態では、筒体部17が支持部19とマイク側部分18からなり、マイク側部分18が支持部19に対してプラグ・ジャックの接栓機構で着脱自在になっているため、図2(C)及び(D)に示すようにマイク側部分18の接続側端部に係合突起18bを設けておき、支持部19の接続側端部に形成した切欠き部19bに係合させることで、収音孔38a,38bの方向が常に前記条件となるように考慮されている。
【0038】
以上のとおり、この実施形態に係る携帯型無線通信機は、本体筐体10とは独立したアダプタ筐体15にMICエレメント26を内蔵させて、スピーカ13が出力する音波がMICエレメント26に回り込み難い物理音響的条件を構成していることにより、その複信モードでの通信においてハウリングの発生をきわめて有効に防止できる。
なお、音響エコーキャンセラなどの他のハウリング防止対策の適用を排除するものではなく、例えば、音響エコーキャンセラとの併用であれば、大音量出力を可能にできることや、音声信号の歪を小さくするなどの効果が得られる。
【0039】
[実施形態2]
この実施形態に係る携帯型無線通信機の外観斜視図は図8に示され、前記実施形態1の場合と同様に複信通信での同時通話が可能な機能を備えている。
そして、この種の一般的な携帯型無線通信機と同様に、外観上は本体筐体50とアンテナ部51とツマミ52とその他各種操作ボタン類(図示せず)からなると共に、本体筐体50にはスピーカ53が内蔵されており、本体筐体50の正面側の筐体壁部にはスピーカ53の音声出力孔54が形成されている。
【0040】
この実施形態の特徴はホイップアンテナであるアンテナ部51の構成にあり、その詳細は図9に示される。
同図において、61は先端を開放端とした合成樹脂製の外筒、62は外筒61の先端部に冠着された有底キャップであり、この実施形態では有底キャップ62の周側壁に2つの収音孔63a,63bが形成されている。
【0041】
そして、図10はアンテナ部51の先端部分の拡大断面図[図9(C)と同一断面]である。
同図から明らかなように、外筒61の先端区間は、有底キャップ62の内周面が嵌着せしめられる第1区間61aと、それより先端側にあって第1区間61aよりも小径になっている第2区間61bとからなる。
なお、外筒61の第1区間61aはそれより下側にある部分よりも小径であり、その環状の段差部分61cが有底キャップ62の下端と当接するようになっている。
【0042】
一方、有底キャップ62は外筒61の第1区間61aに嵌着する内径を有した筒部と外側へ膨出した底部とからなり、その筒部の周方向に関する対称位置に前記収音孔63a,63bがそれぞれ形成されている。
そして、外筒61に有底キャップ62を冠着させた状態では、外筒61の第2区間61bと有底キャップ62の筒部の間に環状の隙間64が構成され、外筒61の先端の開放端と有底キャップ62の膨出した底部との間には半球状空間65が構成されるが、環状の隙間64の上側は半球状空間65と連通しており、前記収音孔63a,63bは隙間64の下側位置と連通する位置に形成されている。
また、図10に示されるように、外筒61の先端の開放端には防水音響膜66が接合貼着されており、外筒61の中空部67の上端が防水音響膜66で覆われている。
【0043】
ところで、外筒61の中空部67は、有底キャップ62の冠着部分の下側までは小内径になっているが、それより下側になると少し大きな中内径となり、本体筐体10への取付部付近になると外筒61の外径が徐々に大きくなるため、それに応じて内径も大きくなり、最下端側の区間には本体筐体10への取付部を兼ねているアンテナベースが内嵌固定されている。
そして、図9(C)に示すように、外筒61の中空部67には中内径区間からアンテナベース68までノーマルモード型ヘリカルアンテナ69が嵌挿されており、そのヘリカルアンテナ69はアンテナベース68の上側区間に巻回接続されており、その巻回接続部が給電点になっている。
【0044】
また、アンテナベース68は大径の上側中空部と小径の下側中空部とが形成された筒状構成になっており、その上側中空部で筒状のラバーホルダー70によって保持された態様で、MICエレメント71がその振動面を軸方向と垂直にして内嵌固定されており、MICエレメント71の出力信号線72はフレキシブルケーブルとして下側中空部を通じて本体筐体50の変調送信部(図示せず)へ導出されている。
【0045】
そして、そのような構成の下で、外筒61と有底キャップ62で構成された半球状空間65とアンテナベース68側のMICエレメント71との間が、外筒61の開放端に覆設した防水音響膜66を介して音響チューブ73で音響的に連通せしめられている。
なお、音響チューブ73はヘリカルアンテナ69のコイル内を貫通しており、上端側では外筒61の先端側の小内径区間に、下端側ではラバーホルダー70の孔内にそれぞれ挿入させた態様で固定されている。
【0046】
したがって、収音孔63a,63bから環状の隙間64へ入った音波は上側の半球状空間65へ伝搬し、防水音響膜66を介して音響チューブ73内を伝搬してMICエレメント71のダイヤフラムを振動させることになるが、本体筐体50側のスピーカ53に対してマイクロホンの収音孔63a,63bを少なくともアンテナ部51の長さに相当する距離だけ遠くしており、スピーカ53からMICエレメント71までの音響的距離についてみれば優にその2倍を超える距離となる。
【0047】
その結果、この実施形態の携帯型無線通信機によれば、スピーカ53の音波は著しく減衰したレベルでしか収音孔63a,63bに伝搬せず、且つ音響チューブ73の中でもその長さに相当する音響的距離分だけ減衰せしめられるため、スピーカからマイクロホンへの音声の回り込みに起因するハウリングの発生をきわめて有効に防止できる。
また、携帯型無線通信機のユーザにとっては、アンテナ部51の先端部に向かって話せばよく、使い勝手の点においても優れたものとなる。
また、MICエレメント71についても、本体筐体50とは別筐体に相当するアンテナ部51に内蔵されていることになるため、スピーカ53の音響的振動はもとより、機械的振動がMICエレメント71に伝搬してハウリングを誘発するような傾向も防止できる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は複信モードでの通信が可能な携帯型無線通信機におけるハウリング防止手段として利用することができる。
【符号の説明】
【0049】
10…携帯型無線通信機の本体筐体、11…アンテナ部、12…ツマミ、13…スピーカ、14…音声出力孔、15…アダプタ筐体、16…装着固定部、17…筒体部、18…マイク側部分、18a…プラグ、19…支持部、19a…ジャック、20…接合面、21…ピン端子群、22…固定用ネジ、23…接続基板、24…MIC基板、25…貫通孔、26…MICエレメント、27,28…座グリ状の穴、29…凹溝、30a…凹溝の一端、30b…凹溝の分岐部分、31…凹溝の他端、32…凹段差面、33…導音孔、34…連通孔、35…カバーシート、36…防水音響膜、37…カバーシート、38a,38b…収音孔、39…隙間、40…小孔、41…孔、50…本体筐体、51…アンテナ部、52…ツマミ、53…スピーカ、54…音声出力孔、61…外筒、61a…第1区間、61b…第2区間、61c…環状の段差部分、62…有底キャップ、63a,63b…収音孔、64…隙間、65…半球状空間、66…防水音響膜、67…外筒の中空部、68…アンテナベース、69…ノーマルモード型ヘリカルアンテナ、70…ラバーホルダー、71…MICエレメント、72…出力信号線、73…音響チューブ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【手続補正書】
【提出日】2023-08-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複信方式での通話機能を有し、略直方体状の本体筐体の正面に内蔵スピーカの音声出力孔が形成されている携帯型無線通信機において、
前記本体筐体の側面に音声信号入力用のソケット端子が設けられている一方、前記本体筐体の前記ソケット端子に対して内蔵マイクロホンの音声信号出力用のピン端子を挿嵌接続させた状態で着脱自在に装着固定されるアダプタ筐体を備え、
前記アダプタ筐体は前記本体筐体に対する装着固定部と前記マイクロホンを内蔵すると共に上端部の周側面に収音孔を設けた筒体部とからなり、前記装着固定部が前記本体筐体に装着固定された状態で、前記筒体部の収音孔が前記本体筐体の背面側で前記本体筐体の上面より上側に配置せしめられ、
前記筒体部はその内部に蛇行した音響伝送路が構成されていると共に、前記音響伝送路の一端側が前記収音孔を通じて外部と連通し、他端側が内蔵されたマイクロホンエレメントの前側空間に連通している
ことを特徴とする携帯型無線通信機。
【請求項2】
前記音響伝送路が、前記筒体部の周側面の一部に形成した第1の平坦面に蛇行した凹溝を形成しておき、前記第1の平坦面に剛性のカバーシートを覆着することにより構成されており、前記収音孔を前記凹溝の一端側を前記カバーシートの周縁部より外側へ覗かせることにより構成した請求項1に記載の携帯型無線通信機。
【請求項3】
前記筒体部における前記第1の平坦面とは反対側の周側面に形成された第2の平坦面と前記凹溝の他端側とを通じる連通孔が形成されており、前記第2の平坦面の中央領域に凹段差面が形成されていると共に、その凹段差面に形成した穴の底部にマイクロホンエレメントを配置せしめ、前記凹段差面には防水音響膜を、前記第2の平坦面には剛性のカバーシートをそれぞれ覆着した請求項2に記載の携帯型無線通信機。
【請求項4】
前記アダプタ筐体の筒体部を、軸方向について、前記収音孔、前記音響伝送路及び前記マイクロホンを含む音響系要素が構成されているマイク側部分とそれ以外の部分とに分割し、前記各部分をプラグ・ジャックによる接栓接続方式として前記マイク側部分を前記アダプタ筐体に対して着脱自在とした請求項1、2又は3に記載の携帯型無線通信機。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯型無線通信機による複信モードでの通信において、ハウリングを発生させることなくマイクロホンとスピーカによる通話を可能にするための、携帯型無線通信機におけるマイクロホン側の音響的配置構成に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、特定小電力無線局や簡易無線局に係る携帯型無線通信機では、本体筐体にマイクロホンとスピーカが内蔵されていると共に、同筐体には小型タイピン状マイクロホンとイヤホンからなるオーディオ・アクセサリーやヘッドセット(マイク付きイヤホン・ヘッドホン)を接続するためのジャックも設けられており、単信モードでの通話においてはマイクロホンとスピーカを用いるが、複信モードではオーディオ・アクセサリーやヘッドセットが用いられる。
【0003】
ここで、複信モードにおいてオーディオ・アクセサリーなどを用いるのは、携帯型無線通信機ではマイクロホンとスピーカが小さな筐体内に組み込まれているため、如何にしてもハウリングの発生を回避できないからである。
すなわち、複信モードでの通信においては、無線通信機のスピーカからの音波がマイクロホンへ回り込むと共に、相手局のマイクロホン→自局のスピーカ→自局のマイクロホン→相手局のスピーカ→相手局のマイクロホン・・・という無線伝送路を介したループ経路が構成され、各無線通信機のマイクロホンアンプとスピーカアンプのゲインが加算されてループゲインが0dBを超えるとハウリングが発生するため、これをオーディオ・アクセサリーなどの使用によってスピーカからマイクロホンへの音波の回り込みを無くすることによりハウリングの発生を防止している。
【0004】
一方、前記音波の回り込みは所謂音響エコーを生じさせていることに外ならず、音響エコーキャンセラを適用してハウリングを防止する方式も一般的に採用されている。
この音響エコーキャンセラの原理は、スピーカに供給される信号を入力として音響エコー信号に模した信号(擬似エコー信号)を作り出し、音響エコー信号から擬似エコー信号を差し引くことで音響エコーを消去するものであり、下記特許文献1~4にあるように古くから様々な提案がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平08-274689号公報
【特許文献2】特開平06-260972号公報
【特許文献3】特開平01-158860号公報
【特許文献4】特開昭62-116025号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、音響エコーキャンセラの基本的構成は、図に示されるように、適応フィルタ、エコーサプレッサ及びボイススイッチからなり、適応フィルタによりスピーカからマイクロホンに回り込む音響エコーを予測して除去する機能を有している。
また、エコーサプレッサは適応フィルタで除去できなかった音響エコーを抑制し、ボイススイッチはボイススイッチ制御部で制御されることで適切に音量を制御するようになっている。
【0007】
しかしながら、エコーサプレッサによる音響エコーの減衰量には限界があり、ハウリングを防止するためにボイススイッチでの音量制御を行わざるを得ない場合が多く、スピーカから大音量を出力させることができないという問題がある。
また、音響エコーキャンセラを用いると音声信号に歪が生じて聴き取りづらくなるという傾向がある。
【0008】
携帯型無線通信機相互のマイクロホンとスピーカを用いた複信モードでの通信におけるハウリング防止対策の基本は、スピーカからの音波が音響空間を介してマイクロホンに回り込む量を如何に抑制するかという点にある。
したがって、そのための手段としては、(1)スピーカとマイクロホンの間の距離を大きくしてマイクロホンが受ける音圧レベルを減衰させること、(2)マイクロホンの振動膜面がスピーカからの音波面の進行方向に対して垂直な関係になるようにすること、(3)スピーカの振動が筐体を介してマイクロホンに伝搬しないようにすること、(4)スピーカからの音波を直接的に受けない位置にマイクロホンを設置して回折減衰により音圧レベルを減衰させること等が考えられる。
【0009】
そこで、本発明は、前記ハウリング防止対策に鑑みて、携帯型無線通信機おけるスピーカに対するマイクロホンの音響的配置構成を工夫することにより、ハウリングを発生させることなく、マイクロホンとスピーカを用いた複信モードでの通話を可能にする携帯型無線通信機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明は、複信方式での通話機能を有し、略直方体状の本体筐体の正面に内蔵スピーカの音声出力孔が形成されている携帯型無線通信機において、前記本体筐体の側面に音声信号入力用のソケット端子が設けられている一方、前記本体筐体の前記ソケット端子に対して内蔵マイクロホンの音声信号出力用のピン端子を挿嵌接続させた状態で着脱自在に装着固定されるアダプタ筐体を備え、前記アダプタ筐体は前記本体筐体に対する装着固定部と前記マイクロホンを内蔵すると共に上端部の周側面に収音孔を設けた筒体部とからなり、前記装着固定部が前記本体筐体に装着固定された状態で、前記筒体部の収音孔が前記本体筐体の背面側で前記本体筐体の上面より上側に配置せしめられ、前記筒体部はその内部に蛇行した音響伝送路が構成されていると共に、前記音響伝送路の一端側が前記収音孔を通じて外部と連通し、他端側が内蔵されたマイクロホンエレメントの前側空間に連通していることを特徴とする携帯型無線通信機に係る。
【0011】
発明によれば、スピーカを内蔵する本体筐体に対して独立したアダプタ筐体にマイクロホンを内蔵させたことにより、スピーカの音響的振動はもとより、その機械的振動がマイクロホンに伝搬することが抑制できると共に、スピーカとマイクロホンの距離についても双方を本体筐体内に内蔵させている場合と比較して大きくとれるため、スピーカからマイクロホンへの音波の回り込みを効果的に抑制できる。
また、筒体部の内部に構成されている蛇行した音響伝送路は、収音孔とマイクロホンエレメントの間の音響的距離を大きくして、スピーカから回り込んだ音波と周辺の環境音を減衰させることができる。
さらに、マイクロホンを本体筐体の背面側に位置させていることで音圧の回折減衰効果が得られるため、前記音波の回り込みを有効に低減させる。
以上の効果により、前記第1の発明は携帯型無線通信機同士の複信方式での通話においてハウリングの発生をきわめて有効に防止する。
【0012】
発明においては、前記音響伝送路が、前記筒体部の周側面の一部に形成した第1の平坦面に蛇行した凹溝を形成しておき、前記第1の平坦面に剛性のカバーシートを覆着することにより構成されており、前記収音孔を前記凹溝の一端側を前記カバーシートの周縁部より外側へ覗かせることにより構成することが望ましい。
この構成によれば、簡単な工程で長い音響伝送路と吸音孔を合理的に構成できる。
【0013】
また、その場合には、前記筒体部における前記第1の平坦面とは反対側の周側面に形成された第2の平坦面と前記凹溝の他端側とを通じる連通孔が形成されており、前記第2の平坦面の中央領域に凹段差面が形成されていると共に、その凹段差面に形成した穴の底部にマイクロホンエレメントを配置せしめ、前記凹段差面には防水音響膜を、前記第2の平坦面には剛性のカバーシートをそれぞれ覆着することが望ましい。
この構成によれば、音響伝送路を第1の平坦面側から第2の平坦面側へ連通孔によって迂回させることで、マイクロホンエレメントの合理的な実装と、より簡単な防水対策が可能になる。
【0014】
また、本発明においては、前記アダプタ筐体の筒体部を、軸方向について、前記収音孔、前記音響伝送路及び前記マイクロホンを含む音響系要素が構成されているマイク側部分とそれ以外の部分とに分割し、前記各部分をプラグ・ジャックによる接栓接続方式として前記マイク側部分を前記アダプタ筐体に対して着脱自在としておくことが望ましい。
このようにマイク側部分を着脱可能にしておけば、携帯型無線通信機の使用環境によってはオーディオ・アクセサリーやヘッドセットの利用も可能になるため便利である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の携帯用無線通信機は、スピーカからマイクロホンエレメントへの音波の回り込みを有効に抑制できるマイクロホンエレメントの配置構成を適用し、その物理音響的条件により、複信モードでの通信においてハウリングを発生させない環境でのマイクロホンとスピーカを用いた通話を実現する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態1に係る携帯型無線通信機においてアダプタ筐体を取り付けた状態での外観斜視図(A)と、アダプタ筐体が装着固定部と筒体部とからなると共に、筒体部はマイク側部分と支持部とから構成されおり、マイク側部分が接栓にて着脱自在であることを示す斜視図(B)である。
図2】アダプタ筐体の正面図(A)、左側面図(B)、右側面図(C)及び筒体部におけるマイク側部分と支持部との連結部分に係る背面図(D)である。
図3】アダプタ筐体の装着固定部が内蔵している接続基板とジャック部、及び筒体部が内蔵しているMIC基板とプラグ部を示す正面図(A)と左側面図(B)と右側面図(C)である。
図4】アダプタ筐体の装着固定部と筒体部における接続基板とジャック部・プラグ部とMIC基板の内蔵状態を示す概略的断面図である。
図5】マイク側部分の先端側の拡大図(A)及び同拡大図(A)におけるY-Y矢視断面(B)である。
図6図5(A)のマイク側部分からカバーシートを外した状態の拡大図(A)及び図5(B)におけるZ-Z矢視断面(B)である。
図7図5(B)におけるマイクロホンエレメントの実装部分を中心とした部分拡大図(音響伝送路を通過した音波の進行経路も示す)である
図8】音響エコーキャンセラの基本的構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の携帯型無線通信機の実施形態ついて、図1から図までを用いて詳細に説明する
の実施形態に係る携帯型無線通信機の外観斜視図は図1(A)に示され、複信通信モードでの同時通話が可能な機能を備えている。
そして、この種の一般的な携帯型無線通信機と同様に、外観上は本体筐体10とアンテナ部11とツマミ12及びその他各種操作ボタン類(図示せず)からなると共に、本体筐体10にはスピーカ13が内蔵されており、本体筐体10の正面側の筐体壁部にはスピーカ13の音声出力孔14が形成されている。
【0018】
この実施形態では本体筐体10の側面に対してマイクロホンの取り付け用アダプタに相当するアダプタ筐体15が装着できるようになっている点に特徴がある。
ここに、アダプタ筐体15は本体筐体10側へ接合装着される装着固定部16とマイクロホンを内蔵した筒体部17とからなる。
また、筒体部17は、図1(B)に示されるように、マイク側部分18と支持部19とに分かれ、支持部19は装着固定部16と一体的に構成されており、マイク側部分18側のプラグ18aと支持部19側のジャック19aとの接栓機構により電気的・機械的に着脱自在になっている。
【0019】
アダプタ筐体15の詳細は、図2に示されるとおりであり、装着固定部16の本体筐体10側への接合面20にはマイクロホンとイヤホンの信号線に係るピン端子群21が設けられており、装着固定部16を本体筐体10側の嵌合部へ合わせて各ピン端子群21を本体筐体10側のマイクロホンとイヤホンの信号線に係る各ソケット端子群(図示せず)に挿入させた状態で、固定用ネジ22を本体筐体10側の雌ネジ(図示せず)に締着させることによりアダプタ筐体15が本体筐体10に固定される。
【0020】
図3には、アダプタ筐体15の装着固定部16側に内蔵されている接続基板23とそれに固定されているジャック部19a及び筒体部17側に内蔵されているMIC基板24とそれに固定されているプラグ18aが示されているが、接続基板23側には前記ピン端子群21が立設されていると共に固定用ネジ22の貫通孔25が形成されており、MIC基板24にはマイクロホンエレメント(以下、「MICエレメント」という)26が装着されている。
【0021】
そして、接続基板23側にはジャック部19aとピン端子群21を接続しているマイクロホンとイヤホンの信号線に係る導体パターン(図示せず)が構成されており、MIC基板24側にはMICエレメント26とプラグ18aを接続しているマイクロホンの信号線に係る導体パターン(図示せず)が構成されている。
なお、接続基板23側にマイクロホンだけでなくイヤホンの信号回路が構成されているのは、図1(B)に示すように、マイク側部分18を支持部19から抜いて、オーディオ・アクセサリーやヘッドセットのプラグを差し込むことでそれらも使用できるようにしてあるためである。
【0022】
図4は、合成樹脂製のアダプタ筐体15の装着固定部16と筒体部17に接続基板23とジャック19a・プラグ18aとMIC基板24が内蔵されている状態を示す概念図であり、MICエレメント26が出力する音声信号はMIC基板24の導体パターン(図示せず)→[プラグ18a・ジャック19a]→接続基板23の導体パターン(図示せず)→[接続基板23のピン端子群21・本体筐体10側のソケット端子群(図示せず)]を経て本体筐体10の変調送信部へ入力される。
【0023】
マイク側部分18の先端側は図5図6及び図7に示されるような構成になっている。
先ず、マイク側部分18の外周面の両側には、平面形状が長円形の座グリ状の穴27と、平面形状が円形の座グリ状の穴28が形成されており、各穴27,28の底部はMIC基板24に対して平行な平坦面27a,28aになっており、さらに各平坦面27a,28aは次のような構成になっている。
長円形の穴27側の平坦面27aには、図6に示すような蛇行した凹溝29が形成されており、その凹溝29の一端30aとその手前の分岐部分30bが平坦面27aの隅角まで至っているのに対して、他端31側は平坦面27aの領域内に留まっている。
円形の穴28側の平坦面28aにはその中央領域に凹段差面32が形成されており、その凹段差面32からMIC基板24のMICエレメント26へ通じる導音孔33が形成されている。
長円形の穴27側にある凹溝29の他端31と円形の穴28側の凹段差面32との間には、それらを通気させる連通孔34が形成されている。
【0024】
そして、以上の各平坦面27a,28aに係る構成において、平坦面27aに対しては平面形状が穴27より僅かに小さい合成樹脂製のカバーシート35が接合貼着され、凹段差面32に対しては導音孔33を覆う態様で防水音響膜36が接合貼着され、平坦面28aに対してその略全領域を覆う態様で合成樹脂製のカバーシート37が接合貼着されている。
なお、カバーシート35,37は合成樹脂製であるが平坦面27a,28aに接合貼着された状態で音響的振動に同期しないだけの剛性を有している。
【0025】
その結果、平坦面27aの凹溝29はカバーシート35が覆設されたことで断面が方形状の蛇行した音響伝送路になると共に、カバーシート35はその平面形状が穴27より僅かに小さいために、平坦面27aの隅角まで構成されている凹溝29の一端30aとその手前の分岐部分30bがカバーシート35の外縁より僅かに外側へ覗いた態様となり、図5(A)に示すように、その覗いた各部分が吸音孔38a,38bとなる。
また、図5(B)及び図7に示されるように、凹段差面32に覆着された防水音響膜36と平坦面28aに覆着されたカバーシート37の間には隙間39が構成されており、その隙間39は連通孔34に通じている。
【0026】
したがって、収音孔38a,38bから侵入した音波は、凹溝29とカバーシート35で構成された音響伝送路によって蛇行しながら連通孔34へ導かれ、さらに図7の破線で示すように、連通孔34を通じて背面側へ迂回せしめられて防水音響膜36とカバーシート37の隙間39へ侵入し、防水音響膜36を介して導音孔33へ通音されてMIC基板24のMICエレメント26へ至るという経路を辿る。
なお、この実施形態ではMIC基板24のMICエレメント26が導音孔33と反対側の基板面に取り付けられており、音波は最終的にMIC基板24に穿設されている小孔40を通じてMICエレメント26に達する。
【0027】
ところで、この実施形態のマイク側部分18は樹脂モールディングによってMIC基板24を包んで成形されているが、そのモールディングの際にMIC基板24をずれないように固定する必要がある。
図5から図7において符号41として示されている孔は、モールディングに際してMIC基板24を固定支持するための棒材が挿入されていた痕跡である。
【0028】
以上のこの実施形態における本体筐体10とアダプタ筐体15の構成において、本体筐体10のスピーカ13とアダプタ筐体15側のマイク側部分18が内蔵するMICエレメント26との音響的位置関係を検討する。
まず、一般的な携帯型無線通信機のように本体筐体にスピーカとマイクロホンを内蔵させていると仮定した場合のスピーカの音声出力孔とマイクロホンの収音孔の距離に対して、この実施形態における本体筐体10のスピーカ13の音声出力孔14とアダプタ筐体15の筒体部17(マイク側部分18)の上端に設けた収音孔38a,38bとの間の音響的距離を比較すると、当然にこの実施形態の方が圧倒的に長く、4~5倍以上になることは明らかであり、マイク側部分18の長さを大きくすればそれ以上の距離も確保できる。
【0029】
また、この実施形態の携帯型無線通信機では、前記のように外観的に確認できる音響的距離だけでなく、マイク側部分18の内部において、収音孔38a,38bから蛇行した長い音響伝送路を経由した後、連通孔34で背面側へ送られてMIC基板24のMICエレメント26へ至る音響的距離も加わることになり、MICエレメント26へ回り込むスピーカ13の音波を減衰させることができる。
【0030】
加えて、スピーカ13は本体筐体10に、MICエレメント26はアダプタ筐体15の筒体部17の先端部に内蔵されており、双方が別の筐体にあることから、スピーカ13の機械的振動がMICエレメント26に伝播し難い。
【0031】
さらに、アダプタ筐体15の筒体部17は本体筐体10の背面側に位置しており、スピーカ13の音声出力孔14から出力される音波は本体筐体10の正面側から回折しなければ筒体部17の収音孔38a,38bへ達しないため、収音孔38a,38bに達した音波は回折減衰して音圧レベルが低下したものになる。
【0032】
またさらには、図1に示すように、音声出力孔14から出力されるスピーカ13の音波の進行方向S1に対して、筒体部17のマイク側部分18に形成されている収音孔38a,38bの方向S2はほぼ垂直な関係にあるため、収音孔38a,38bは強い音圧を受けない条件になっている。
この点に関して、この実施形態では、筒体部17が支持部19とマイク側部分18からなり、マイク側部分18が支持部19に対してプラグ・ジャックの接栓機構で着脱自在になっているため、図2(C)及び(D)に示すようにマイク側部分18の接続側端部に係合突起18bを設けておき、支持部19の接続側端部に形成した切欠き部19bに係合させることで、収音孔38a,38bの方向が常に前記条件となるように考慮されている。
【0033】
以上のとおり、この実施形態に係る携帯型無線通信機は、本体筐体10とは独立したアダプタ筐体15にMICエレメント26を内蔵させて、スピーカ13が出力する音波がMICエレメント26に回り込み難い物理音響的条件を構成していることにより、その複信モードでの通信においてハウリングの発生をきわめて有効に防止できる。
なお、音響エコーキャンセラなどの他のハウリング防止対策の適用を排除するものではなく、例えば、音響エコーキャンセラとの併用であれば、大音量出力を可能にできることや、音声信号の歪を小さくするなどの効果が得られる
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は複信モードでの通信が可能な携帯型無線通信機におけるハウリング防止手段として利用することができる。
【符号の説明】
【0035】
10…携帯型無線通信機の本体筐体、11…アンテナ部、12…ツマミ、13…スピーカ、14…音声出力孔、15…アダプタ筐体、16…装着固定部、17…筒体部、18…マイク側部分、18a…プラグ、19…支持部、19a…ジャック、20…接合面、21…ピン端子群、22…固定用ネジ、23…接続基板、24…MIC基板、25…貫通孔、26…MICエレメント、27,28…座グリ状の穴、29…凹溝、30a…凹溝の一端、30b…凹溝の分岐部分、31…凹溝の他端、32…凹段差面、33…導音孔、34…連通孔、35…カバーシート、36…防水音響膜、37…カバーシート、38a,38b…収音孔、39…隙間、40…小孔、41…孔。
【手続補正3】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】全図
【補正方法】変更
【補正の内容】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8