(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023172832
(43)【公開日】2023-12-06
(54)【発明の名称】除去装置及び除去システム
(51)【国際特許分類】
A23N 4/12 20060101AFI20231129BHJP
B26D 3/26 20060101ALI20231129BHJP
B26D 7/26 20060101ALI20231129BHJP
B26D 7/08 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
A23N4/12
B26D3/26 601D
B26D7/26
B26D7/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022144683
(22)【出願日】2022-09-12
(62)【分割の表示】P 2022084718の分割
【原出願日】2022-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】516095501
【氏名又は名称】株式会社ロビット
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】新井 雅海
(72)【発明者】
【氏名】河北 薫
(72)【発明者】
【氏名】平野 龍一
【テーマコード(参考)】
3C021
4B061
【Fターム(参考)】
3C021JA02
3C021JA04
3C021JA09
4B061AA01
4B061AA02
4B061AA06
4B061AB03
4B061AB06
4B061AB08
4B061BA03
4B061BB07
4B061CB03
4B061CB05
4B061CB14
(57)【要約】
【課題】処理対象物の所定部位を除去するための除去装置を提供する。
【解決手段】処理対象物の所定部位を除去するための除去装置であって、前記処理対象物に挿入され、前記所定部位を除去するためのカッターと、前記カッターと係合する第1の部材と、前記カッターの挿入角度を調整する調整機構と、前記第1の部材を第1のシャフトに沿って移動させる移動機構とを含む構造体と、前記構造体を回転させる回転機構と、を備えるカット装置と、前記カット装置の位置を制御する位置制御装置とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理対象物の所定部位を除去するための除去装置であって、
前記処理対象物に挿入され、前記所定部位を除去するためのカッターと、
前記カッターと係合する第1の部材と、
前記カッターの挿入角度を調整する調整機構と、
前記第1の部材を第1のシャフトに沿って移動させる移動機構と
を含む構造体と、
前記構造体を回転させる回転機構と、
を備えるカット装置と、
前記カット装置の位置を制御する位置制御装置と
を備え、
前記カッターは、
前記第1の部材を前記第1のシャフトに沿って第1の方向に移動させることに伴って前記処理対象物に挿入されて第1の状態となり、
前記第1の部材を前記第1のシャフトに沿って前記第1の方向とは反対方向の第2の方向に移動させることに伴って前記処理対象物から離脱されて第2の状態となり、
前記回転機構は、前記第1の状態において前記第1の方向を回転中心として前記構造体を回転させることにより、前記カッターにより前記所定部位の切除を行い、
前記第1の状態から前記第2の状態への遷移により、前記処理対象物から前記所定部位が除去される、除去装置。
【請求項2】
請求項1に記載の除去装置であって、
前記調整機構は、前記処理対象物における前記所定部位の大きさ、及び、深さに応じて、前記カッターの前記挿入角度と挿入位置とを調整し、
前記移動機構は、前記調整された前記挿入角度及び前記挿入位置において、前記第1の部材を前記第1の方向に移動する、除去装置。
【請求項3】
請求項1に記載の除去装置であって、
前記処理対象物における前記所定部位の大きさ、及び、深さに応じて
前記調整機構は、前記カッターの挿入角度を調整し、
前記位置制御装置は、前記除去装置と前記処理対象物との距離を調整することにより、前記カッターの挿入位置を調整し、
前記移動機構は、前記調整された前記挿入角度及び前記挿入位置において、前記第1の部材を前記第1の方向に移動する、除去装置。
【請求項4】
請求項1に記載の除去装置であって、
前記第1の部材は、前記カッターが有する第1の突起部を収容する第1の開口を有し、
前記第1の突起部と前記第1の開口の内壁とが係合することにより、前記第1の部材の移動に従って前記カッターが移動する、除去装置。
【請求項5】
請求項4に記載の除去装置であって、
前記第1の開口は、前記第1の部材の移動方向に対応する方向に短軸を有し、前記短軸と直交する長軸を有し、
前記第1の突起部は、前記第1の部材の移動に応じて、前記第1の開口内を前記長軸の方向に移動可能に構成されている、除去装置。
【請求項6】
請求項1に記載の除去装置であって、
前記カッターにより前記所定部位を除去する場合に、前記所定部位を保持する保持部を更に備え、
前記保持部は、
前記第1の状態において前記処理対象物に挿入され、
前記第2の状態において前記処理対象物から離脱される、除去装置。
【請求項7】
請求項6に記載の除去装置であって、
前記第1の部材は、前記保持部と更に係合し、
前記第1の部材は、第2の突起部を有し、
前記保持部は、前記第2の突起部と係合する第1の係合部材と第2の係合部材とを有し、
前記第1の部材が前記第1の方向に移動する場合に、前記第1の係合部材と前記第2の突起部とが係合し、前記第1の部材が前記第2の方向に移動する場合に、前記第2の係合部材と前記第2の突起部とが係合する、除去装置。
【請求項8】
請求項6に記載の除去装置であって、
前記調整機構は、回動可能にヒンジ接続された第1の調整部材と第2の調整部材とを含み、
前記第1の調整部材と前記第2の調整部材との接続部は第2の開口を有し、前記保持部は前記第2の開口を通って移動する、除去装置。
【請求項9】
請求項6に記載の除去装置であって、
前記保持部は、前記構造体の回転中心に位置し、かつ、前記回転機構と結合され、前記構造体が回転される場合に静止状態に置かれる、除去装置。
【請求項10】
請求項1に記載の除去装置であって、
前記調整機構は、回動可能にヒンジ接続された第1の調整部材と第2の調整部材とを含み、
前記カッターは第1のカッターと、第2のカッターとを含み、 前記第1の調整部材は前記第1のカッターと接続され、前記第2の調整部材は前記第2のカッターと接続され、
前記第1の調整部材と前記第2の調整部材との回動角度に応じて、前記第1のカッターと前記第2のカッターとで規定される前記挿入角度が定まる、除去装置。
【請求項11】
請求項1に記載の除去装置であって、
前記カッターは、前記構造体の前記回転の方向に向かう面と、先端部とに刃が形成されている、除去装置。
【請求項12】
請求項1に記載の除去装置であって、
前記構造体が前記回転機構により回転される場合に、前記カッターを振動させる振動手段を更に備える、除去装置。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか1項に記載の除去装置であって、
前記処理対象物は農作物であって、前記所定部位は前記農作物の芯、へた、芽、異常部位のうちの少なくともいずれかである、除去装置。
【請求項14】
請求項1から12のいずれか1項に記載の除去装置と、
前記除去装置の動作を制御する制御装置と、
前記処理対象物を把持する把持機構と、
を備える、除去システム。
【請求項15】
請求項14に記載の除去システムであって、
前記除去装置は、前記処理対象物を撮影する撮影部を含み、
前記制御装置は、前記撮影部により撮影された画像に基づいて、前記所定部位の大きさ及び深さを判定し、前記除去装置の動作を制御して前記カッターの挿入位置及び挿入角度を調整する、除去システム。
【請求項16】
請求項14に記載の除去システムであって、
前記処理対象物は農作物であって、前記所定部位は、前記農作物の芯である、除去システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理対象物の所定部位を除去する除去装置、及び、除去システムに関する。
【背景技術】
【0002】
野菜等の農作物は、個々の外観や構造が異なり、かつ、不定形であり、重量も異なるため、野菜の芯等をカットする等の加工工程は人による手作業で行われていた(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
処理対象物の所定部位を除去するための除去装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、処理対象物の所定部位を除去するための除去装置であって、
前記処理対象物に挿入され、前記所定部位を除去するためのカッターと、
前記カッターと係合する第1の部材と、
前記カッターの挿入角度を調整する調整機構と、
前記第1の部材を第1のシャフトに沿って移動させる移動機構と
を含む構造体と、
前記構造体を回転させる回転機構と、
を備えるカット装置と、
前記カット装置の位置を制御する位置制御装置と
を備え、
前記カッターは、
前記第1の部材を前記第1のシャフトに沿って第1の方向に移動させることに伴って前記処理対象物に挿入されて第1の状態となり、
前記第1の部材を前記第1のシャフトに沿って前記第1の方向とは反対方向の第2の方向に移動させることに伴って前記処理対象物から離脱されて第2の状態となり、
前記回転機構は、前記第1の状態において前記第1の方向を回転中心として前記構造体を回転させることにより、前記カッターにより前記所定部位の切除を行い、
前記第1の状態から前記第2の状態への遷移により、前記処理対象物から前記所定部位が除去される。
【発明の効果】
【0006】
処理対象物の所定部位を除去するための除去装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図2】除去システム100のハードウェア構成の一例を示すブロック図。
【
図3A】カッターユニット101の外観の構造の一例を示す図。
【
図3B】カッターユニット101の外観および断面の構造の一例を示す図。
【
図4】カッターユニット101の構造の一部を示す図。
【
図5】カッターユニット101の動作の一例を説明するための図。
【
図6】カッター301の構造の一例を説明するための図。
【
図7A】カッターユニット101の動作の他の一例を説明するための図。
【
図7B】カッターユニット101におけるカッターの挿入位置の調整例を説明するための図。
【
図8】カッターユニット101の動作の更に他の一例を説明するための図。
【
図9】除去システム100における処理の流れの一例を示すフローチャート。
【
図10】除去システム100の、処理の流れにおける外観の一例を示す図。
【
図11】情報処理装置106のハードウェア構成の一例を示す図。
【
図12】処理対象物110としての野菜の芯の形状を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴うち二つ以上の特徴が任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0009】
まず、
図1を参照して、処理対象物の所定部位を除去するための除去システム100の外観構成について説明する。
図1(A)は、実施形態に対応する除去システム100の外観構成の一例を示す図である。
図1(B)は、除去システム100におけるカッターユニット101とロボットアーム102からなる除去装置の外観構成の一例を示す図である。
【0010】
図1(A)において、除去システム100は、カッターユニット101、ロボットアーム102、把持ユニット103、ベルトコンベア104、載置台105、情報処理装置106等を含んで構成することができる。また、処理対象物110は、農作物、具体的にはレタス、キャベツ、リンゴ、梨、パイナップル、ジャガイモ、イチゴ等の野菜や果物とすることができる。
【0011】
情報処理装置106は、除去システム100全体の動作を制御する。具体的に、本実施形態における除去システム100では、ベルトコンベア104で搬送されてきた処理対象物110を把持ユニット103の把持部103aにより把持して所定の処理位置に移動させる。その際、ベルトコンベア104で搬送されてきた処理対象物110をカメラ103bで撮影し、撮影画像に基づき、把持位置を決定する。把持部103aは、処理対象物110にダメージを与えず、かつ所定部位の除去に必要な把持力で処理対象物110を把持する。処理対象物110は、好適には、カッターユニット101でカットされる所定部位の側がカッターユニット101の側を向くように配置されて搬送されてくるものであるが、反対側を向いていてもよい。その場合、把持ユニット103の把持部103aが180度回転して処理対象物110の所定部位がカッターユニット101の側を向くようにすることができる。
【0012】
本実施形態において、処理対象物110から除去される所定部位は、処理対象物110の種類に応じて異なる部位とすることができる。例えば、レタス、キャベツといった葉物野菜の場合、芯の部分を所定部位とすることができる。それ以外に、リンゴや梨、パイナップル、イチゴの場合には、へたの部分も所定部位とすることができる。更には、ジャガイモの場合には、芽の部分を所定部位とすることができる。それ以外にも、農作物において腐食して変色していたり、虫や動物により食われて変色していたりする等、内的要因もしくは外的要因により発生した、外観から確認・推定することができる異常部位(変色部位)を所定部位とすることができる。以下では、説明の簡略化のため、処理対象物110としてレタス、所定部位をレタスの芯とした場合を想定して実施形態を説明するが、説明事項は他の処理対象物や他の所定部位についても同様に適用可能である。
【0013】
カッターユニット101は、処理対象物の所定部位をカットし、除去するためのカット装置である。カッターユニット101は、カメラユニット(後述する、カメラユニット315)を備え、撮影された画像に基づきカッターユニット101及びロボットアーム102の動作が制御される。当該カメラユニットは、例えばColorカメラとDepthカメラとを組み合わせて構成することができ、処理対象物110の三次元(3D)画像を生成することができる。情報処理装置106は、撮影された3D画像に基づき処理対象物110の芯の大きさ・深さを判定(推定)し、芯の大きさ・深さに対応するよう、ロボットアーム102の動作を制御してカッターユニット101の配置(位置)を調整すると共に、カッターユニット101におけるカッターの挿入角度を調整する。カッターユニット101の位置及びカッターの挿入角度が決定すると、カッターユニット101の動作を制御して、処理対象物110の芯をカット、除去する。芯がカットされた処理対象物110は、再びベルトコンベア104上に載置されて、ベルトコンベア104により搬送され、後工程が実施される。
【0014】
次に、
図1(B)を参照して、カッターユニット101とロボットアーム102との外観構成について説明する。カッターユニット101とロボットアーム102とは、処理対象物110から所定部位を除去するための除去装置として機能する。カッターユニット101は、ロボットアーム102に取り付けられており、3次元空間の任意の位置に配置させることができる。ロボットアーム102は、ロボットアーム120は、例えば、Universal Robits社のUR5、或いは、エプソン社製のVT6を利用することができる。
【0015】
ロボットアーム102は、カッターユニット101の3次元空間上における位置を制御する位置制御装置として機能する。情報処理装置106は、カッターユニット101と処理対象物110との距離を、カッターユニット101のカメラユニット315から得られるDepth情報(距離情報)に基づいて制御することができる。処理対象物110との距離を調節することにより、カッターの挿入位置を調節することができる。即ち、より近い位置からカッターの挿入を開始すると径の大きい芯に対応することができ、また、より遠い位置からカッターの挿入を開始すると系の小さい芯に対応することができる。
【0016】
図2は、実施形態に対応する除去システム100のシステム構成の一例を示すブロック図である。
図2に示すように除去システム100においては、情報処理装置106が、カッターユニット101、ロボットアーム102、把持ユニット103、ベルトコンベア104の動作を制御する。
【0017】
次に
図3A及び
図3Bを参照してカッターユニット101の外観構成について説明する。
図3A(A)は、カッターがカッターユニット101内に収納(収容)された状態を示し、
図3A(B)は、処理対象物110の所定部位を除去するためにカッターカッターユニット101の外に突出した状態を示す。
図3B(C)は、
図3A(A)に示すカッターユニット101を右側から見た外観の一例を示す側面図である。
図3B(D)は、
図3A(A)のA-A'線の断面におけるカッターユニット101の断面構造の一例を示す断面図である。
【0018】
カッターユニット101は、第1のカッターとしてカッター301r、第2のカッターとしてカッター301lを有する。以下の本実施形態において「r」と「l」とは、該当する構成要素を
図3Aに示す方向からみた場合の、右側と左側とをそれぞれ示す符号である。即ち、301rは、カッターユニット101が備える2つのカッターのうち、カッターユニット101の右側に配置されたカッターのことを指し示し、301lは、カッターのうち、カッターユニット101の左側に配置されたカッターのことを指し示す。また、「r」、「l」とが付された構成要素を総称する場合には、符号を省略した参照番号のみで示す。例えば、「カッター301」との記載は、カッター301r、カッター301lとを総称した記載となる。
【0019】
ベース部材302は、シャフト305、シャフト308、その他の構成要素を保持するための部材であって、正面部材と、当該正面部材と接続する底面部材と、底面部材と接続する背面部材とを含んで構成される。正面部材には開口302aを有する。開口302aは、所定部位をカッター301により除去する際に、芯を保持するための保持部316が通過する開口である。保持部316は
図3A(B)に示すように、2本の細い突起を有するフォーク状の先端を有しており、芯を除去する場合以外は、ベース部材302の内側に収納されている。保持部316の先端部は、
図3A(B)に示すフォーク状の形状以外にも、吸着パッドのような吸着により所定部位を保持する形態としてもよい。
【0020】
カッターガイド303r、303lは、それぞれカッター301r、301lと接続され、カッター301をカッターユニット101の内部に収納した状態から、カッターユニット101の先端側に突出させた状態に移行させる際、或いは、その逆に移行させる際の移動をガイドする。換言すると、カッター301は、カッターガイド303に形成された溝に沿って、第1の状態である突出状態におけるカッター位置と、第2の状態である収納状態におけるカッター位置との間を移動する。
【0021】
挿入角度調整部材304は、カッターガイド303と、回転部材306とに接続されている。回転部材306rは、第1モータ310と接続され、第1モータ310から伝達される動力に従って回転する。第1モータ310はステッピングモータとして構成することができる。回転部材306rは、回転部材306lと、挿入角度調整部材304rと係合しており、回転部材306rの回転が挿入角度調整部材304rに伝達されることにより、カッターガイド303rを介してカッター301rの挿入角度が調整される。また、回転部材306rの回転が回転部材306lに伝達されると、回転部材306lを介して更に挿入角度調整部材304lに伝達され、これによりカッターガイド303lを介してカッター301lの挿入角度が調整される。挿入角度の制御方法については、後段で
図4以降を参照してより詳細に説明する。
【0022】
部材307は、シャフト308とするスライド部材309と結合している。シャフト308には溝が切られた直動ネジとして構成されており、スライド部材309はシャフト308の回転に応じて溝に沿ってカッターユニット101の手前側と奥側との間でシャフト308上を移動する。シャフト308は第2モータ311により回転させられる。第2モータ311は、ステッピングモータにより構成することができる。スライド部材309の移動に応じて部材307もシャフト305r、305lに沿って、カッターユニット101の手前側と奥側との間を移動する。シャフト305rと305lとは部材307を貫通している。また、部材307は左右に開口を有しており、当該開口によりカッター301が備える突起部と係合し、部材307の移動に応じて、カッター301をカッターユニット101から突出させたり(第1の状態)、カッターユニット101内に収納したり(第2の状態)することができる。当該動作についても、後段で
図4以降を参照してより詳細に説明する。
【0023】
次に、第3モータ312は、カッターユニット101において第2モータ311よりも前側に位置する構造体330を矢印317の方向(逆方向でもよい)に少なくとも180度以上(例えば200度以上)回転させるためのモータである。第3モータはステッピングモータとすることができる。第3モータ312の回転力は、第1プーリ313を介してベルト314により第2プーリ319を介して構造体330に伝達される。
【0024】
構造体330が回転する機構について以下
図3Bを参照して説明する。
図3B(C)及び(D)に示すように、ベース部材302の背面部材には、第2プーリ319が結合されている。第2プーリ319は、ベルト314の回転力を構造体330に伝達する役割を果たす。第2プーリ319は、第1筒状部材321と結合しており、第1筒状部材321は、端部において軸受け部材322と結合しており、軸受け部材322の内輪と共に第2プーリ319の回転に合わせて回転する。第1筒状部材321は、ベース部材102とも結合しており、第1筒状部材321と軸受け部材322とが回転すると、ベース部材102、即ち構造体330が回転することになる。
【0025】
第1筒状部材321の内部には第2筒状部材323が配置されており、第2筒状部材323は、後ろ側端部において部材318及び部材320と固定的に結合されており、第1筒状部材321が回転しても回転せず、静止状態を維持するように構成されている。保持部316は、第2筒状部材323内をカッターユニット101の前後方向に移動可能に構成されており、構造体330が回転する際であっても、保持部316は第1筒状部材321とは独立しているので回転しない。第2プーリ319及び第1筒状部材321、及び、構造体330の回転中心は、点線324で示す、保持部316の中心線に一致する。
【0026】
カメラユニット315は、上述のようにColorカメラとDepthカメラとを組み合わせて構成され、情報処理装置106は、カメラユニット315が取得した情報に基づいて処理対象物110の3D画像を生成することができる。カメラユニット315は、部材318に固定されている。従って、構造体330が回転しても、カメラユニット315は回転せず、静止状態のままである。
【0027】
次に、
図4、
図5を参照して、カッター301の処理対象物110への挿入角度を調整するための機構を説明する。
図4(A)、
図4(B)は、挿入角度調整部材304を含む構造体の一例を示す図である。
図5は、カッター301の処理対象物110への挿入角度の調整方法を説明するための図である。
【0028】
図4(A)において、部材307は、開口401rと401lとを有している。開口401は角丸長方形の開口形状を有しており、部材307の移動方向に対して直交する方向に長軸を有し、部材307の移動方向に沿う方向に短軸を有する。開口401の内側には、カッター301と一体化された突起部402が配置され、突起部402は矢印403で示す開口401の長軸方向に移動可能となっている。また、突起部402は短軸方向の移動が開口401の内壁により制限される。部材307が矢印404に沿って移動する際、開口401の内壁と突起部402とが係合することにより、部材307の移動に応じてカッター301をカッターガイド303に沿って移動させることができる。その一方で、部材307が矢印404に沿って移動する際、部材307の移動に応じて、突起部402は開口401の長軸方向に移動可能に構成されている。
【0029】
また、挿入角度調整部材304rと304lとは回動軸405を回動中心として、挿入角度調整部材304の他の構成が離間するように回動可能にヒンジ接続されている。具体的には、
図4(B)に示すように、挿入角度調整部材304の先端部には開口405r、405lが設けられており、当該開口同士を回動可能にヒンジ接続することで、回動軸405が規定される。さらに、挿入角度調整部材304rの先端部には開口302Aと接続する開口406が形成されており、保持部316が通過可能となっている。なお、開口406は、挿入角度調整部材304が回動した場合であっても、保持部316の通過を妨げないよう、保持部316の径よりも十分に大きな径を有する。例えば、保持部316の径に対して、2mm又はそれ以上のクリアランスを確保することができる。
【0030】
突起部402の開口401内における移動は、上記のように部材307が矢印404に沿って移動する際に実施される他、カッター301の挿入角度を挿入角度調整部材304により調整する際にも実施される。
図4(B)において、挿入角度調整部材304は、回転部材306と係合する歯部412を備えて構成される。挿入角度調整部材304rの歯部412rは、回転部材306rの歯部411rと係合し、挿入角度調整部材304lの歯部412lは、回転部材306lの歯部411lと係合する。これにより、第1モータ310により供給される動力により回転部材306rが反時計回りに回転すると、挿入角度調整部材304rは挿入角度調整部材304lと離間する方向に回動する。回転部材306rと回転部材306lとは互いに反対方向に回転するため、回転部材306rが反時計回りに回転すると回転部材306lは時計回りに回転し、それにより挿入角度調整部材304lも挿入角度調整部材304rと離間する方向に回動する。
【0031】
回転部材306には、カッターガイド303と面する側において切り落とされて平面414が形成されている。平面414のうち端部414eは、回転部材306が回転する際にカッターガイド303を内側から押圧して、挿入角度調整部材304lと共にカッター301の角度を調整するのに役立つ。
【0032】
挿入角度調整部材304は壁部413を有しており、壁部413rによりカッターガイド303rと結合され、壁部413lによりカッターガイド303lと結合される。壁部413は、開口406を確保するのに十分な高さを有する。また、壁部413はカッターガイド303に対して力を安定的にかけるために、挿入角度調整部材304の底面からの立ち上がり部分の高さにおいて略中央の位置でカッターガイド303と接続される。これにより、第1モータ310からの動力が回転部材306、挿入角度調整部材304を介してカッターガイド303及びカッター301に効率よく伝達される。
【0033】
このようにしてカッター301の挿入角度を調整することが可能である。
図5は、カッター301の挿入角度を調節する様子をカッターユニット101の上側から見た場合の一例を示す。
図5(A)は挿入角度が最も小さい場合の状態を示しており、このときは挿入角度調整部材304rと304lとが最も接近している。また、回転部材306の平面414はカッターガイド303に沿った位置に配置される。
【0034】
これに対し
図5(B)は、回転部材306を回転させることにより挿入角度を
図5(A)よりも大きくした状態を示している。このとき挿入角度調整部材304rと304lとは互いに離間して、両者の間にスペースができる。また、回転部材306の平面414は、回転部材306の回転によりカッターガイド303から離間した位置となる。
【0035】
図5(C)は、カッター301の挿入角度を概念的に説明するための図である。
図5(C)において、カッター301rとカッター301lとで規定される角度をθ1とする。θ1は、挿入角度調整部材304rと304lとが互いに最も接近した状態において最小値を取り、両者が最も離間した状態において最大値を取る。θ1の取り得る範囲は、例えば、10度から120度とすることができる。θ1の範囲は、開口401における突起部402の移動範囲に対応し、θ1の値は、処理対象物110における所定部位501の大きさや深さに応じて定められる。
【0036】
図6は、カッター301の構造を説明するための図である。
図6(A)は、カッターユニット101の先端部分の構造を示す図であり、ここではカッター301が突出した状態を示している。
図6(B)は、カッター301rを側面からみた場合の構造の一例を示す図である。
図6(C)及び(D)は、カッター301r、301lの側面からみた構造の一例を示す図である。
図6(E)は、カッター301rと301lとが突出した状態(第1の状態)において、それぞれの先端部分の位置関係の一例を示す図である。
【0037】
カッター301は、処理対象物110に挿入される先端部分601a、602a、先端部分を支持する中間部分601b、602b、カッターガイド303に固定される固定部分601c、602cを含んで構成される。カッター301の固定部分601c、602cは、4か所をネジ止めすることによりカッターガイド303に対して固定される。カッター301r、301lは、ガイド部603r、603lにそれぞれ取り付けられて、カッターガイド303r、303lに形成されたガイド溝上を移動することができる。また、中間部分601b、602bと固定部分601c、602cとを跨ぐように2ヵ所でねじ止めすることにより、突起部402はカッター301に固定される。
【0038】
図6(A)においては、カッター301がガイド部603に直接に固定された構成を示したが、カッター301を直接にガイド部603に固定せず、カム機構やシリンダー等のアクチュエータを組み込むこと構成としてもよい。この構成によれば、カッター301rとカッター301lとの間の距離を、カッター301の挿入角度を維持しつつ広げたり狭めたりすることが可能となる。当該構成により、処理対象物110の所定部位の径や深さに対応することが可能となる。
【0039】
図6(C)、(D)に示すように、カッター301rとカッター301lとは互いに反転した位置関係でカッターユニット101に搭載されている。また、
図6(B)に示す通り、カッター301r、301lの先端部分は側面から見て刃が交差するようになっている。これにより、カッターユニット101を中心線324周りに回転させた場合に、処理対象物110の所定部位をカッター301r、301lの刃によって切断することができる。
【0040】
図6(C)、(D)では、カッター301rは先端部分601aにおいて上側と先端部に刃が形成され、カッター301lは、先端部分602aにおいて下側と先端部に刃が形成されている。この形態では、回転方向が一方方向に限定されるが、先端部分601aの下側、先端部分602aの上側にも刃を形成することで、回転方向が限定されなくなる。また、カット方向だけでなく、先端部に刃を形成しているのは、処理対象物110にカッターを挿入する際の抵抗を抑えるためである。この先端部の刃によりカッター301を処理対象物110に挿入する際にカッター301により処理対象物を破損することなく、処理対象物に対するダメージを最小限とすることができる。
【0041】
また、カッター301に形成される刃は交換可能な部品として提供されてもよい。例えば、先端部分601a、602aに、両刃カミソリのような板状の替刃をネジ止めすることにより取り付けてもよい。この場合、刃の切れ味が落ちてきた場合には、替刃を交換することで対応することができる。
【0042】
更に、
図6(E)に示すように、カッター301rと301lとが突出した状態(第1の状態)において、カッター301rの先端部601aが、カッター301lの先端部602aよりも前に出すことができる。なお、前に出ているのが先端部602aであってもよい。このように、一方が前に出ていることにより、所定部位の先端部分を確実に処理対象物110からカットすることができる。
図6(E)の構成はあくまで一例であり、カッター301の先端部の位置を左右でそろえるように配置してもよい。
【0043】
本実施形態ではカッター301rとカッター301lの2枚のカッターを配置する構成を説明しているが、カッター301は少なくとも1枚あれば足りるので、1枚で構成してもよい。また、カッター301は、処理対象物110の大きさや種類に応じて付け替えができる。例えば、芯の長さについては、先端部分601a、602aの長さを調節することにより対応可能である。また、芯の太さについては、先端部分601a、602aの高さを調節することにより対応可能である。
【0044】
また、本実施形態において、構造体330が回転して処理対象物110の所定部位をカットする際にカッター301に微弱な振動を与えてもよい。カッター301を振動させることにより、所定部位をよりカットしやすくなるという効果が期待される。当該振動は、例えば、第2モータ311を小刻みに反転駆動させることで生成することができる。或いは、カッターガイド303r、303l内にピエゾ素子などの振動素子を配置しておき、構造体330の回転時にカッターガイド303を介してカッター301に振動を与えてもよい。或いは、保持部316を振動させることにより、逆に処理対象物110を振動させるようにしてもよい。その場合、例えば、部材320等に振動素子を配置しておくことができる。
【0045】
図7A、
図7Bは、カッターユニット101におけるカッター301の挿入動作を説明するための図である。
図7A(A)は、カッター301がカッターユニット101内に収納された状態を示している。この状態において第2モータ311が回転してシャフト308を回転させる。シャフト308にはスライド部材309が軸方向に移動可能に嵌合しており、スライド部材309はシャフト308の回転に応じてカッターユニット101の手前側と奥側との間でシャフト308上を移動する。スライド部材309には保持部316が結合されており、スライド部材309がカッターユニット101の前方に移動することにより、
図7A(B)に示すように保持部316がカッターユニット101の正面に突出する。また、このとき部材307の開口401にはカッター301に接続された突起部402が係止されており、部材307がカッターユニット101の前方に移動するのに応じて、カッター301も前方側に移動して、
図7A(B)に示すようにカッターユニット101の正面側に突出する。
【0046】
図7A(C)及び
図7A(D)は、それぞれ
図7A(A)及び
図7A(B)に対応する、処理対象物110とカッター301、保持部316との関係を示す図である。
図7A(C)において、カッター301及び保持部316は処理対象物110内に挿入されていない状態であり、カッターユニット101内に収納されている。このとき、カッター301rとカッター301lとで規定される挿入角度はθ1の大きさを有しており、この挿入角度θ1は、
図7A(D)に示すようにカッター301、保持部316が処理対象物110に挿入された状態においても保持される。上述のように挿入角度θ1は、処理対象物110の所定部位501の大きさに基づいて事前に設定される。
【0047】
図7Bは、カッター301の挿入位置の調節方法について説明する。
図7B(E)と
図7B(F)とでは、カッター301の挿入角度θ1の大きさは同じである。しかし、処理対象物110との距離Lが、
図7B(E)の場合にはL1であるのに対し、
図7B(F)ではL2となっている。ここで、L1>L2である。この距離Lの違いにより、挿入角度θ1が同じであっても、処理対象物110に対する挿入位置を異ならせることができる。具体的には、
図7B(E)の方が挿入時のカッター間距離dがd1であるのに対し、
図7B(F)の方では挿入時のカッター間距離dがd2となっている。このときd2>d1である。即ち、処理対象物110との距離を近づけることで、より大きな径の所定部位をカットすることが可能となる。このような処理対象物110とカッターユニット101との距離は、ロボットアーム102により制御可能であり、カッターユニット101の位置を変更することで、所定部位の大きさに対応することができる。
【0048】
図7B(F)では、処理対象物110に対するカッターユニット101の距離をロボットアーム102により近づけることで、所定部位の大きさに対応する場合を説明したが、所定部位の大きさに対応する方法はこれに限られるものではない。例えば、アクチュエータを利用して、カッター301の挿入角度を維持しつつ、カッター間距離を調節することにより、挿入位置を調節することができる。
図7B(G)では、処理対象物110とカッターユニット101との距離LをL1として
図7B(E)の場合と同じくする一方で、挿入時のカッター間距離dをd2としている。但し、カッター301の位置は、
図7B(E)の場合と比較して、上下方向に平行にシフトされている。
【0049】
図8は、保持部316を処理対象物110に対して挿入する動作を説明するための図である。
図8(A)は、保持部316がカッターユニット101内に収納された状態を示している。
図8(B)は、保持部316がカッターユニット101の正面側に突出した状態を示している。
【0050】
第2モータ311の回転に従ってシャフト308が回転することにより、スライド部材309がシャフト308上を移動する場合、スライド部材309と接続された部材307がシャフト305に沿ってシャフト305を前後に移動する。このとき、部材307の底部には突起部307aが配置されており、突起部307aは、保持部316に設けられた第1の係合部材801又は第2の係合部材802と係合して、保持部316を部材307の移動方向に移動させる。例えば、部材307がカッターユニット101の正面側に向かう方向(第1の方向)に移動する場合、即ち、カッター301や保持部316をカッターユニット101の正面側に突出させる場合には、第1の係合部材801と突起部307aとが係合して、保持部316をカッターユニット101の正面側に突き出すように移動させる。
【0051】
また、例えば、部材307がカッターユニット101内に収納される方向(第2の方向)に移動する場合、即ち、カッター301や保持部316をカッターユニット101内に収納させる場合には、第2の係合部材802と突起部307aとが係合して、保持部316をカッターユニット101内に収納するように移動させる。
【0052】
このとき保持部316には、処理対象物110から除去された所定部位が付着しているが、保持部316がカッターユニット101内に収納される過程において、所定部位は、ベース部材302により保持部316から取り外されて、下方に落下する。このようにして、処理対象物110から除去された部位は、保持部316を収納する動作を実行することで、自動的にカッターユニット101から取り外して廃棄することができる。なお、保持部316の先端をフォーク状の形状ではなく吸着パッド等で構成した場合には、吸着パッドへの吸引用のエアー吸引を停止したり、或いは、エアーを逆噴射したりすることで、処理対象物110から除去された部位を取り外して廃棄することができる。
【0053】
なお、
図8においては、保持部316が部材307(即ち、カッター301)と連動して移動する構成を示したが、実施形態は、当該構成に限定されるものではない。例えば、保持部316にアクチュエータを設け、部材307とは独立して移動量の制御を可能とする構成としてもよい。この場合、保持部316の移動量を細かく制御することが可能となり、その結果として、フォーク状の先端の長さを短くすることも可能となる。
【0054】
図9は、本実施形態に対応する情報処理装置106における処理の流れの一例を示すフローチャートである。当該フローチャートに対応する処理は、情報処理装置106のプロセッサ(例えばCPU)が、該当する処理を実行するための所定のプログラムを実行することにより実現される。
図10は、除去システム100による処理時の様子の一例を示す図である。以下、
図9と
図10を参照して、本実施形態に対応する処理の流れを説明する。
【0055】
まず、S901では、情報処理装置106は、ベルトコンベア104の動作を制御し、ベルトコンベア104により処理対象物110を搬送し、所定位置で搬送を停止する。続くS902において、情報処理装置106は、把持ユニット103のカメラ103bを制御して、処理対象物110の画像を撮影し、ベルトコンベア104上の処理対象物110の位置を特定し、把持ユニット103の把持部103aによる把持位置を決定する。続くS903では、情報処理装置106は把持ユニット103の動作を制御して、処理対象物110を把持部103aにより把持し、カッターユニット101による処理を実行するための所定位置に処理対象物110を移動する。このとき、把持部103aは、処理対象物110にダメージを与えず、かつ所定部位の除去に必要な把持力で対象を把持する。S901からS903における処理の様子は、
図10(A)に示すとおりである。
【0056】
続くS904では、情報処理装置106は、カッターユニット101のカメラユニット315の動作を制御して、処理対象物110を撮影し、得られた3D画像に基づき所定部位を特定する。S904における処理の様子は、
図10(B)に示すとおりである。続くS905では、情報処理装置106は第1モータ310の動作を制御し、特定された所定部位の大きさ、及び、推定される所定部位の深さに応じてカッター301の挿入角度や挿入深さを調整する。また、アクチュエータを駆動することにより、カッター301rとカッター301lとの間の距離を、カッター301の挿入角度を維持しつつ広げたり狭めたりすることで、挿入位置を調整する。挿入位置の調整はロボットアーム102により行ってもよい。S904及びS905における処理の詳細は後述する。
【0057】
続くS906において、情報処理装置106は第2モータ311の動作を制御して、カッター301、保持部316を処理対象物110に対して挿入し、構造体330を回転させて、処理対象物110から所定部位をカットする。S906における処理の様子は、
図10(C)に示すとおりである。続くS907では、情報処理装置106は第2モータ311の動作を制御して、カッター301と保持部316をカッターユニット101内に退避させると同時に、除去した部位を保持部316から除去して廃棄する。S907における処理の様子は、
図10(D)に示すとおりである。
図10(D)には、処理対象物110から除去された部110aが、カッター301等がカッターユニット101内に退避されるのに応じて保持部316から取り外され、下方に落下して廃棄される様子が示されている。続くS908では、情報処理装置106は把持ユニット103の動作を制御して、処理済みの処理対象物110をベルトコンベア104上に載置する。S908における処理の様子は、
図10(E)に示すとおりである。続くS909で、情報処理装置106はベルトコンベア104の動作を制御し、処理対象物110を再度搬送して、後工程を実施する。
【0058】
以下、S904及びS905における処理の詳細を説明する。情報処理装置106は、事前に学習処理を行い、処理対象物110の所定部位の画像と、当該画像が得られた処理対象物110の実際の芯の幅、芯の底面からの高さ、芯の先端部の芯の底面中心からのずれ量及び方向とを関連付けておく。
【0059】
図12は、芯の形状について説明するための図である。
図12(A)は、処理対象物110の一例としてレタスを示す。レタスの中央にある芯を上述の所定部位として除去すると、芯1201となる。この芯について
図12(B)から(D)に示す芯の大きさ及び深さの情報を取得する。
図12(B)は、芯の幅Wの大きさを示す。芯の幅は、横方向の長さの最大値とすることができる。
図12(C)は、芯の高さHと、芯の先端部の芯の底面中心からのずれ量Gを示す。
図12(D)は、底面からみた場合の、芯先端部1202の底面中心1203からのずれの方向を示す。ずれの方向は、例えば、底面中心を原点として二次元座標を設定し、原点に対する芯先端部の座標値(x、y)により表すことができる。これらの芯の高さH、ずれ量G、ずれ方向(x、y)の情報は、芯の深さの情報とみなすことができる。
【0060】
上記のように、画像毎に、{W、H、G、(x、y)}の情報が関連付けられることとなる。当該関連付けは、例えば数十枚から行うことができる。なお、画像の枚数を上げることにより、精度を向上させることができ、例えば数万枚~数十万枚の画像について行ってもよい。カメラユニット315による処理対象物110の撮影は、カメラユニット315と把持部103aとの間の距離を一定距離として行われる。これによりカメラユニット315により撮影される処理対象物110の実際の幅Wと、取得される画像内での幅とを対応付けることができる。また、当該芯の高さH、ずれ量G、方向(x、y)の情報を当該画像と関連付けて学習することにより、新たに撮影された画像について、芯の高さH、ずれG、方向(x、y)を推定することができる。除去部位の大きさや深さの情報とカッター301の挿入角度、挿入位置を対応付けておくことで、上記の推定情報に従って、カッター301の挿入角度、挿入位置を特定することができる。そこで、対応する挿入角度、挿入位置となるよう、第1モータ310を駆動してカッター301の角度θ1を調節し、アクチュエータ或いはロボットアーム102の動作を制御する。
【0061】
次に、
図11を参照して、情報処理装置106のハードウェア構成の一例を説明する。
図11において、CPU1101は、HD(ハードディスク)1103に格納されているOS、カッターユニット101、ロボットアーム102、把持ユニット103、ベルトコンベア104の動作を制御するための各種アプリケーションプログラム等を実行し、RAM1102にプログラムの実行に必要な情報、ファイル等を一時的に格納する制御を行う。RAM02は、CPU1101の主メモリ、ワークエリア等として機能する。HD1103は、アプリケーションプログラム、ドライバプログラム、OS、制御プログラム、本実施形態に対応する処理を実行するための処理プログラム等を格納している。
【0062】
ディスプレイ1104は、操作部1109から入力したコマンドや、外部から取得した情報等を表示するための表示手段である。インターフェイス(以下、I/Fという)1105は、外部装置やネットワークと接続するための通信インターフェイスである。ROM1106には、基本I/Oプログラム等のプログラムを記憶する。外部記憶ドライブ1107は、メディア1108に記憶されたプログラム等を本コンピュータシステムにロードすることができる。記録媒体としてのメディア1108は、所定のプログラムおよび関連データを格納する。操作部1109は、本装置の操作者が、指示入力を行うためのユーザインタフェースであり、キーボードやマウスで構成される。システムバス1110は、装置内のデータの流れを司るものである。
【0063】
以上の実施形態に対応する除去システム100によれば、農作物等の処理対象物から芯等の除去すべき所定部位の形状及び深さを推定することで、所定部位の大きさに対応したカッターの挿入角度、挿入位置を決定して、所定部位を処理対象物から確実に除去することが可能となる。
【0064】
これまで人的により行われていた農作物の芯、へた、芽等の所定部位の除去作業では、単純作業の繰り返し故に過酷で作業の品質維持が難しく、人によっての基準のばらつきも大きかった。加工対象の個体差を考慮しないルールベースの装置による除去作業では、品質のばらつきが大きく、また、所定部位以外の製品部の過剰な除去や所定部位の取りこぼしが発生していた。これに対し、本実施形態に対応する除去システム100では、作業の自動化を可能とし、処理対象物の種類や大きさや形状に応じて除去すべき部位の大きさを調整し、除去作業を実施することができるので、品質のバラつきを抑えると共に、所定部位以外を過剰に除去したり、取りこぼしたりすることを効果的に抑制することができる。
【0065】
<実施形態のまとめ>
上記実施形態は以下の除去装置、除去システムを少なくとも開示する。
【0066】
(1) 処理対象物の所定部位を除去するための除去装置であって、
前記処理対象物に挿入され、前記所定部位を除去するためのカッターと、
前記カッターと係合する第1の部材と、
前記カッターの挿入角度を調整する調整機構と、
前記第1の部材を第1のシャフトに沿って移動させる移動機構と
を含む構造体と、
前記構造体を回転させる回転機構と、
を備えるカット装置と、
前記カット装置の位置を制御する位置制御装置と
を備え、
前記カッターは、
前記第1の部材を前記第1のシャフトに沿って第1の方向に移動させることに伴って前記処理対象物に挿入されて第1の状態となり、
前記第1の部材を前記第1のシャフトに沿って前記第1の方向とは反対方向の第2の方向に移動させることに伴って前記処理対象物から離脱されて第2の状態となり、
前記回転機構は、前記第1の状態において前記第1の方向を回転中心として前記構造体を回転させることにより、前記カッターにより前記所定部位の切除を行い、
前記第1の状態から前記第2の状態への遷移により、前記処理対象物から前記所定部位が除去される、除去装置。
【0067】
(2) (1)に記載の除去装置であって、
前記調整機構は、前記処理対象物における前記所定部位の大きさ、及び、深さに応じて、前記カッターの前記挿入角度と挿入位置とを調整し、
前記移動機構は、前記調整された前記挿入角度及び前記挿入位置において、前記第1の部材を前記第1の方向に移動する、除去装置。
【0068】
(3) (1)または(2)に記載の除去装置であって、
前記処理対象物における前記所定部位の大きさ、及び、深さに応じて
前記調整機構は、前記カッターの挿入角度を調整し、
前記位置制御装置は、前記除去装置と前記処理対象物との距離を調整することにより、前記カッターの挿入位置を調整し、
前記移動機構は、前記調整された前記挿入角度及び前記挿入位置において、前記第1の部材を前記第1の方向に移動する、除去装置。
【0069】
(4) (1)から(3)のいずれか1つに記載の除去装置であって、
前記第1の部材は、前記カッターが有する第1の突起部を収容する第1の開口を有し、
前記第1の突起部と前記第1の開口の内壁とが係合することにより、前記第1の部材の移動に従って前記カッターが移動する、除去装置。
【0070】
(5) (4)に記載の除去装置であって、
前記第1の開口は、前記第1の部材の移動方向に対応する方向に短軸を有し、前記短軸と直交する長軸を有し、
前記第1の突起部は、前記第1の部材の移動に応じて、前記第1の開口内を前記長軸の方向に移動可能に構成されている、除去装置。
【0071】
(6) (1)から(5)のいずれか1つに記載の除去装置であって、
前記カッターにより前記所定部位を除去する場合に、前記所定部位を保持する保持部を更に備え、
前記保持部は、
前記第1の状態において前記処理対象物に挿入され、
前記第2の状態において前記処理対象物から離脱される、除去装置。
【0072】
(7) (6)に記載の除去装置であって、
前記第1の部材は、第2の突起部を有し、
前記保持部は、前記第2の突起部と係合する第1の係合部材と第2の係合部材とを有し、
前記第1の部材が前記第1の方向に移動する場合に、前記第1の係合部材と前記第2の突起部とが係合し、前記第1の部材が前記第2の方向に移動する場合に、前記第2の係合部材と前記第2の突起部とが係合する、除去装置。
【0073】
(8) (6)または(7)に記載の除去装置であって、
前記調整機構は、回動可能にヒンジ接続された第1の調整部材と第2の調整部材とを含み、
前記第1の調整部材と前記第2の調整部材との接続部は第2の開口を有し、前記保持部は前記第2の開口を通って移動する、除去装置。
【0074】
(9) (6)から(8)のいずれか1つに記載の除去装置であって、
前記保持部は、前記構造体の回転中心に位置し、かつ、前記回転機構と結合され、前記構造体が回転される場合に静止状態に置かれる、除去装置。
【0075】
(10) (1)から(9)のいずれか1つに記載の除去装置であって、
前記調整機構は、回動可能にヒンジ接続された第1の調整部材と第2の調整部材とを含み、
前記カッターは第1のカッターと、第2のカッターとを含み、
前記第1の調整部材は前記第1のカッターと接続され、前記第2の調整部材は前記第2のカッターと接続され、
前記第1の調整部材と前記第2の調整部材との回動角度に応じて、前記第1のカッターと前記第2のカッターとで規定される前記挿入角度が定まる、除去装置。
【0076】
(11) (1)から(10)のいずれか1つに記載の除去装置であって、
前記カッターは、前記構造体の前記回転の方向に向かう面と、先端部とに刃が形成されている、除去装置。
【0077】
(12) (1)から(11)のいずれか1つに記載の除去装置であって、
前記構造体が前記回転機構により回転される場合に、前記カッターを振動させる振動手段を更に備える、除去装置。
【0078】
(13) (1)から(12)のいずれか1つに記載の除去装置であって、
前記処理対象物は農作物であって、前記所定部位は前記農作物の芯、へた、芽のうちの少なくともいずれかである、除去装置。
【0079】
(14) (1)から(13)のいずれか1項に記載の除去装置と、
前記除去装置の動作を制御する制御装置と、
前記処理対象物を把持する把持機構と、
を備える、除去システム。
【0080】
(15) (14)に記載の除去システムであって、
前記除去装置は、前記処理対象物を撮影する撮影部を含み、
前記制御装置は、前記撮影部により撮影された画像に基づいて、前記所定部位の大きさ及び深さを判定し、前記除去装置の動作を制御して前記カッターの挿入位置及び挿入角度を調整する、除去システム。
【0081】
発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。