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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023017284
(43)【公開日】2023-02-07
(54)【発明の名称】保持機能付きソケット
(51)【国際特許分類】
   B25B 23/12 20060101AFI20230131BHJP
【FI】
B25B23/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021121432
(22)【出願日】2021-07-26
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平間 一輝
【テーマコード(参考)】
3C038
【Fターム(参考)】
3C038AA03
3C038AA04
3C038AA07
3C038BB02
3C038EA06
(57)【要約】
【課題】 本実施形態は、六角頭付きボルト及びナットを容易に取り外すことができる保持機能付きソケットを提供する。
【解決手段】 中心軸線を有する外周面と、軸方向の一端に位置する第1端面と、前記軸方向の他端に位置する第2端面と、前記中心軸線と同軸に形成され前記第1端面に開口した嵌合孔と、前記嵌合孔から前記第2端面の側に前記軸方向に沿って延びる第1収容孔と、前記外周面から前記第1収容孔まで貫通し前記軸方向に延びる第1ガイド孔と、を有するソケット本体と、前記嵌合孔に隣接する保持位置と前記嵌合孔から前記軸方向に離間した解除位置との間を移動可能に前記第1収容孔に配置された永久磁石と、前記第1ガイド孔に挿通され、前記永久磁石に係合した一端と前記外周面から外方に延出した他端とを有し、前記第1ガイド孔に沿って前記軸方向に移動可能な解除部材と、を備える保持機能付きソケット。
【選択図】 図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸線を有する外周面と、軸方向の一端に位置する第1端面と、前記軸方向の他端に位置する第2端面と、前記中心軸線と同軸に形成され前記第1端面に開口した嵌合孔と、前記嵌合孔から前記第2端面の側に前記軸方向に沿って延びる第1収容孔と、前記外周面から前記第1収容孔まで貫通し前記軸方向に延びる第1ガイド孔と、を有するソケット本体と、
前記嵌合孔に隣接する保持位置と前記嵌合孔から前記軸方向に離間した解除位置との間を移動可能に前記第1収容孔に配置された永久磁石と、
前記第1ガイド孔に挿通され、前記永久磁石に係合した一端と前記外周面から外方に延出した他端とを有し、前記第1ガイド孔に沿って前記軸方向に移動可能な解除部材と、
を備える、保持機能付きソケット。
【請求項2】
前記解除部材は、前記外周面に前記軸方向に移動可能に設けられ操作部材と、前記第1ガイド孔に挿通され前記永久磁石に係合した一端と前記操作部材に連結された他端とを有する連結部材と、を含んでいる、
請求項1に記載の保持機能付きソケット。
【請求項3】
前記操作部材は、環状に形成され、前記外周面に同軸に配置されている、
請求項2に記載の保持機能付きソケット。
【請求項4】
前記ソケット本体は、前記外周面から前記第1収容孔まで貫通し前記軸方向に延びているとともに前記第1ガイド孔に対して周方向に離間して設けられた第2ガイド孔を有し、
前記解除部材は、前記第2ガイド孔に挿通され前記永久磁石に係合した一端と前記操作部材に連結された他端とを有する第2連結部材を含んでいる、
請求項3に記載の保持機能付きソケット。
【請求項5】
前記ソケット本体は、前記外周面と前記嵌合孔との間に形成され前記軸方向に延びているとともに前記第1端面に開口した開口端を有する環状の第2収容孔を有し、
前記第2収容孔に前記軸方向に移動可能に配置され、一端部が前記第1端面から前記軸方向に突出する保持位置と前記ソケット本体の内に引き込む解除位置との間を移動可能に配置された筒状のワッシャ保持筒と、前記第2収容孔に配置され前記ワッシャ保持筒を前記保持位置に向けて付勢する付勢部材と、
を更に備え、
前記ワッシャ保持筒の少なくとも前記一端部は、磁石で形成されている、
請求項1に記載の保持機能付きソケット。
【請求項6】
前記ワッシャ保持筒は、軸方向に延びているとともに前記第1ガイド孔に対向した第3ガイド孔を有し、
前記解除部材は、前記第3ガイド孔に挿通され、前記第3ガイド孔に沿って前記軸方向に移動可能に設けられている、
請求項5に記載の保持機能付きソケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、保持機能付きソケットに関する。
【背景技術】
【0002】
六角頭付きボルト及びナットを脱着する際に用いられる工具の一例にソケットがある。ソケットは、六角頭付きボルトの頭部及びナットを嵌合する嵌合穴を有している。また、六角頭付きボルト及びナットが嵌合穴から脱落するのを防止するために、磁石や突起物等によりボルトあるいはナットを保持する機能を有したソケットが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3038838号公報
【特許文献2】特開2019―155495号公報
【特許文献3】特開2010―172991号公報
【特許文献4】特開2006―281427号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本実施形態は、六角頭付きボルト及びナットを容易に取り外すことができる保持機能付きソケットを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態に係る保持機能付きソケットは、中心軸線を有する外周面と、軸方向の一端に位置する第1端面と、前記軸方向の他端に位置する第2端面と、前記中心軸線と同軸に形成され前記第1端面に開口した嵌合孔と、前記嵌合孔から前記第2端面の側に前記軸方向に沿って延びる第1収容孔と、前記外周面から前記第1収容孔まで貫通し前記軸方向に延びる第1ガイド孔と、を有するソケット本体と、前記嵌合孔に隣接する保持位置と前記嵌合孔から前記軸方向に離間した解除位置との間を移動可能に前記第1収容孔に配置された永久磁石と、前記第1ガイド孔に挿通され、前記永久磁石に係合した一端と前記外周面から外方に延出した他端とを有し、前記第1ガイド孔に沿って前記軸方向に移動可能な解除部材と、
を備える。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1A図1Aは、第1実施形態に係る保持機能付きソケットの使い方の一例を示す平面図である。
図1B図1Bは、図1Aの線B―Bに沿う断面図である。
図1C図1Cは、図1AのC矢視の平面図である。
図2A図2Aは、第1実施形態に係る保持機能付きソケットの断面図である。
図2B図2Bは、図2Aの線B―Bに沿った断面図である。
図3A図3Aは、第1実施形態に係る本体部の平面図である。
図3B図3Bは、図3Aの線B-Bに沿った断面図である。
図4A図4Aは、第1実施形態に係るワッシャ保持筒の平面図である。
図4B図4Bは、図4Aの線B-Bに沿った断面図である。
図4C図4Cは、図4Aの線C-Cに沿った断面図である。
図5図5は、第1実施形態に係る解除部の部品図である。(a)は、解除部の平面図である。(b)は、(a)の線B―Bに沿った断面図である。
図6図6は、第1実施形態に係る永久磁石の部品図である。(a)は、永久磁石の平面図である。(b)は、(a)の線B-Bに沿った断面図である。
図7A図7Aは、第1実施形態に係る保持機能付きソケットのナット及びワッシャの保持状態を示す断面図である。
図7B図7Bは、第1実施形態に係る保持機能付きソケットのナットの解除状態を示す断面図である。
図7C図7Cは、第1実施形態に係る保持機能付きソケットのナット及びワッシャの解除状態を示す断面図である。
図8A図8Aは、第1実施形態に係る保持機能付きソケットの使用例1を示す断面図である。
図8B図8Bは、使用例1のナットの締め付け後を示す断面図である。
図9A図9Aは、第1実施形態に係る保持機能付きソケットの使用例2を示す断面図である。
図9B図9Bは、使用例2のナットの締め付け後を示す断面図である。
図10図10は、第2実施形態に係る保持機能付きソケットを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、開示はあくまで一例にすぎず、当業者において、発明の趣旨を保っての適宣変更について容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面や説明をより明確にするため、実際の様態に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宣省略することがある。
以下、図面を参照しながら一実施形態に係る保持機能付きソケットについて詳細に説明する。
【0008】
(使用場所の一例)
始めに、本実施形態の保持機能付きソケットを使用する作業の一例を説明する。
図1A図1B図1Cは、保持機能付きソケット(以下、単に「ソケット」と称する)1を使用して、工作物12に第2板17を結合する作業を示している。図示のように、工作物12は、第1板13と箱状部材15とを有し、箱状部材15は一対のブラケット14により第1板13に固定及び支持されている。
【0009】
ブラケット14は、コの字状に形成され、第1板13と箱状部材15とが接着されている。
箱状部材15は、金属板を折り曲げて形成され、第1板13に間隔を置いてほぼ平行に対向する底板15aと、底板15aの上側縁及び下側縁からほぼ垂直に延出した一対の側板15bと、を有している。一対の側板15bは、第1板13に対してほぼ垂直に延在しているとともに、隙間16を設け第1板13に平行に対向している。各側板15bの長手方向の両端部は、ブラケット14を介して第1板13に固定されている。
【0010】
箱状部材15において、底板15aと対向する面は開口している。箱状部材15と第1板13との間の隙間16の幅16aは狭く、作業者は隙間16から手を入れて、底板15aに触れることは困難とする。このような工作物12の底板15aに第2板17を、六角頭付きボルト(以下、単に「六角ボルト」と称する)8により結合する作業を行う。
【0011】
本実施形態の保持機能付きソケットは、上記のように作業者の手が届かない場所でも、六角ボルト8及びナット9を脱着することができる。
【0012】
六角ボルト8及びナット9の締付により、第2板17を底板15aに結合する手順について以下に記載する。
まず、工作物12の外で、ソケット1にハンドル(例えば、ラチェットハンドル)7を装着してソケットレンチを構成した後、ソケット1にナット9を装着する。次に、ソケット1及びハンドル7を第1板13と平行に向けた状態でソケット1を隙間16に挿入した後、ソケット1及びハンドル7をほぼ90度回転し、図1Bに示すように、ソケット1を底板15aに対してほぼ垂直な位置に移動する。これにより、ソケット1に保持されたナット9を六角ボルト8との締付位置に移動させる。この時、ナット9はソケット1の保持機能によりソケット1の内部に保持され、ソケット1から脱落することはない。
【0013】
第2板17及び底板15aを通して箱状部材15内に差し込まれた六角ボルト8にナット9を合わせた状態で、ハンドル7によりソケット1を回転することにより、ナット9を六角ボルト8に締め付ける。底板15aと第2板17とを挟んで、ナット9を六角ボルト8に締め付けることで、第2板17を底板15aに結合することができる。
【0014】
このように、保持機能を有したソケットを使用する場合、手の届かない位置での六角ボルト及びナットの締付を行うことができる。その反面、保持機能により保持されたナットをソケットから取り外すことが困難であり、取り外しに時間が掛かり、作業効率が低下する場合がある。
また、ナットをソケットから外すために、ソケットを地面や床に打ち付ける場合もあり、この場合、外れたナットが予期しない方向に飛散してしまう場合がある。
【0015】
以上のような問題を解決すべく、本発明の実施形態においては、ナットやワッシャ等をソケットの保持機能から容易に解除することを可能にし、短時間且つ安全に取り外しできるものである。以下、実施形態に係る保持機能付きソケットについて詳細に説明する。
【0016】
(第1実施形態)
図2Aは第1実施形態に係るソケット1の縦断面図、図2B図2Aの線B―Bに沿ったソケット1の横断面図である。
始めに、第1実施形態に係るソケット1の全体構成を概略的に説明する。
図2A及び図2Bに示すように、ソケット1は、ほぼ円柱形状のソケット本体2と、ソケット本体2内に設けられた永久磁石3と、ソケット本体2の外周側に設けられた操作部材4aと、操作部材4aと永久磁石3とを連結した連結部材4bと、を備えている。操作部材4a及び連結部材4bは、永久磁石3による保持を解除するための解除部材4を構成している。
【0017】
ソケット本体2の嵌合孔2bに装着されたナット又はボルト頭部は、永久磁石3により吸着され嵌合孔2b内に保持される。操作部材4a及び連結部材4bを介して永久磁石3を嵌合孔2bから離れる方向に移動させることにより、永久磁石3によるナットの保持を解除することができる。
【0018】
第1実施形態によれば、ソケット1は、ソケット本体2に同軸的に埋め込まれたワッシャ保持筒6、及びワッシャ保持筒6をソケット本体2から突出する方向に付勢する付勢部材5を更に備えている。
ワッシャ保持筒6の先端部にワッシャが装着され、ワッシャ保持筒6により装着位置に保持される。永久磁石3の移動に連動してワッシャ保持筒6の先端をソケット本体2の内部に移動させることにより、ワッシャの保持を解除することができる。付勢部材5は、例えば、コイルばねである。
【0019】
次に、ソケット1の各構成要素の構成を詳細に説明する。
図3Aは、ソケット本体2の平面図、図3Bは、図3Aの線B―Bに沿ったソケット本体2の縦断面図である。
図示のように、ソケット本体2は、中心軸線Cを有する円柱形状に形成されている。ソケット本体2は、非磁性の金属材料で形成されている。ただし、ソケット本体2の材料は、六角ボルト又はナットを締め付けする際に変形しない程度の剛性、及び非磁性の性質を有していれば、金属材料に限定されない。以下、中心軸線Cと平行な方向を軸方向X、軸方向Xと直交する方向を径方向Yと定義する。
【0020】
ソケット本体2は、中心軸線Cを有する第1外周面2a1、軸方向Xの一端に位置する第1端面2a2、及び軸方向Xの他端に位置する第2端面2a3を有している。また、ソケット本体2は、六角ボルトの頭部及びナットが嵌合する六角あるいは12角の嵌合孔2bと、ハンドル7のドライブ角が嵌合される差込角2cと、嵌合孔2bと差込角2cとの間に位置する第1収容孔2dとを有している。
嵌合孔2bは、ソケット本体2と同軸に設けられ、第1端面2a2に開口している。
第1収容孔2dは、嵌合孔2bよりも小さい内径を有している。第1収容孔2dは、中心軸線Cと同軸に設けられ、嵌合孔2bの底から第2端面2a3の側に向かって軸方向Xに延びている。すなわち、第1収容孔2dの一端は嵌合孔2bに連通している。第1収容孔2dは後述する第1保持位置2d1及び第1解除位置2d2を有している。
【0021】
ソケット本体2は、円筒状の第2収容孔2e及び複数の第1ガイド孔2fを更に備えている。
第2収容孔2eは、嵌合孔2b及び第1収容孔2dと第1外周面2a1との間に、中心軸線Cと同軸に設けられ、軸方向Xに延在している。第2収容孔2eは、嵌合孔2b及び第1収容孔2dの外側を覆っている。第2収容孔2eの一端は第1端面2a2に開口している。
【0022】
各第1ガイド孔2fは、ソケット本体2を径方向Yに貫通して形成され、第1外周面2a1に開口しているとともに第1収容孔2dに連通している。第1ガイド孔2fは、軸方向Xに延在した長孔を構成している。第1ガイド孔2fの軸方向の一端は、嵌合孔2bの底面の近傍に位置し、軸方向Xの他端は、嵌合孔2bから所定の距離だけ離れている。
【0023】
複数の第1ガイド孔2fは、周方向に互いに離間して設けられ、一例では、2つの第1ガイド孔2fが、180度離間して設けられている。なお、第1ガイド孔2fは、2つに限らず、1つでも、あるいは3つ以上設けてもよい。
【0024】
図4Aはワッシャ保持筒6の平面図、図4Bは線B―Bに沿ったワッシャ保持筒6の横断面図、図4Cは線C-Cに沿ったワッシャ保持筒6の縦断面図である。
図示のように、ワッシャ保持筒6は円筒形状に形成されている。ワッシャ保持筒6は、中心軸線Cと同軸に形成され、軸方向Xに延在している。ワッシャ保持筒6は、第2外周面6a1、内周面6a2、軸方向Xの一端に位置する第3端面6a3、及び軸方向Xの他端に位置する第4端面6a4を有している。
【0025】
ワッシャ保持筒6は、複数の第2ガイド孔6bを備えている。第2ガイド孔6bは、ワッシャ保持筒6を径方向Yに貫通して形成され、第2外周面6b1及び内周面6a2に開口している。
第2ガイド孔6bは、軸方向Xに所定長さ延在した長孔を構成している。複数の第2ガイド孔6bは、周方向に互いに離間して設けられ、一例では、2つの第2ガイド孔6bが互いに180度離間して設けられている。なお、第2ガイド孔6bは、2つに限らず、1つでも、あるいは3つ以上設けてもよい。
【0026】
ワッシャ保持筒6は、第3端面6a3の側にワッシャを保持する一端部6cを有している。ワッシャ保持筒6の少なくとも一端部6cは磁石で形成されている。本実施形態では、シート状あるいは薄板状の磁石を円筒形状に形成してワッシャ保持筒6を構成している。
【0027】
図2A及び図2Bに示すように、ワッシャ保持筒6は、ソケット本体2の第2収容孔2eに挿入され、ソケット本体2と同軸に、且つ、軸方向Xに移動可能に配置されている。ワッシャ保持筒6は、一端部6cがソケット本体2の第1端面2a2から軸方向Xに突出する第2保持位置2e1と、一端部6cがソケット本体2内に引き込まれる第2解除位置2e2とに移動可能に支持されている。ワッシャ保持筒6が第2保持位置2e1に移動した状態において、磁石の磁力により一端部6cの内にワッシャを保持することができる。
第2収容孔2eの内で、第2収容孔2eの一端とワッシャ保持筒6との間に付勢部材5、例えば、コイルばねが収納されている。ワッシャ保持筒6は、付勢部材5により、第2保持位置2e1に向けて付勢されている。
【0028】
図5は、操作部材4aの図面であり、(a)は平面図、(b)は線B―Bに沿った断面図である。
図示のように、操作部材4aは中心軸線Cと同軸の環状又はリング状に形成されている。ただし、操作部材4aは、環状に限らず、周方向に複数に分かれた円弧形状、又は他の形状としてもよい。
【0029】
操作部材4aは、複数の連結孔(ねじ孔)4a1を有している。
複数の連結孔4a1は、操作部材4aを径方向Yに貫通して形成され、操作部材4aの外周面及び内周円に開口している。複数の連結孔4a1は、周方向に互いに離れて設けられ、一例では、2つの連結孔4a1が設けられ、180度離れて位置している。なお、連結孔4a1は2つに限らず、1つでも、あるいは3つ以上設けてもよい。
【0030】
図6は、永久磁石3の図面であり、(a)は平面図、(b)は線B-Bに沿った断面図である。
図示のように、永久磁石3は中心軸線Cと同軸の環状に形成されている。永久磁石3は、第1収容孔2dの径よりも僅かに小さい外径及び外径よりも僅かに小さい内径を有している。
永久磁石3は、複数の係合孔3a及び第3収容孔3bを有している。
複数の係合孔3aは、それぞれ永久磁石3を径方向Yに貫通して形成され、永久磁石3の外周面及び内周面に開口している。一例では、2つの係合孔3aが周方向に互いに180度離間して設けられている。なお、係合孔3aは2つに限らず、1つでも、あるいは3つ以上設けてもよい。
第3収容孔3bは、ボルトのねじ部を収容する。永久磁石3が有する内径は、ソケット1の対応しているねじの呼び径よりも大きい。
【0031】
図2Aに示すように、永久磁石3は、ソケット本体2の第1収容孔2dに中心軸線Cと同軸的に配置されている。永久磁石3は、第1収容孔2dにおいて、第1保持位置2d1と第1解除位置2d2との間を軸方向Xに移動可能に配置されている。
【0032】
図2A及び図2Bに示すように、操作部材4aは、ソケット本体2の第1外周面2a1に軸方向Xに移動可能に設けられている。操作部材4aは、連結部材4bを介して永久磁石3に連結されている。一例では、連結部材4bとして2本の頭付きボルトを用いている。
各連結部材4bは、操作部材4aの外周面から操作部材4aの連結孔4a1にねじ込まれ、ソケット本体2の第1ガイド孔2f及びワッシャ保持筒6の第2ガイド孔6bを挿通して第1収容孔2dまで延出している。連結部材4bの延出端は、永久磁石3の係合孔3aに係合あるいは嵌合している。
【0033】
2本の連結部材4bは、円周方向に互いに180度離間して位置している。操作部材4aは、これら2本の連結部材4bにより永久磁石3に連結されている。また、2本の連結部材4bは、それぞれ第1ガイド孔2f及び第2ガイド孔6bに挿通され、これらのガイド孔に沿って軸方向Xに移動可能とされている。
【0034】
操作部材4a及び連結部材4bは、永久磁石3による吸着保持を解除する解除部材4を構成している。
すなわち、操作部材4aを軸方向Xに移動操作することにより、永久磁石3を第1保持位置2d1から第1解除位置2d2に移動し、永久磁石3による吸着保持を解除することができる。本実施形態では、操作部材4aとともに2本の連結部材4bが軸方向Xに移動するため、ワッシャ保持筒6が連結部材4bにより第1保持位置2d1から第2解除位置2e2に押し込まれる。これにより、ワッシャ保持筒6によるワッシャの吸着保持が解除される。
【0035】
なお、操作部材4aと連結部材4bとを連結する方法は必ずしもねじによる締付である必要はなく、例えば、連結孔4a1をピン孔、連結部材4bをピンとして、嵌めあいによる連結も可能である。すなわち、連結部材4bは、頭付きボルトに限られず、他の種々の部材を適用可能である。例えば、連結部材4bとして、棒状の連結ピン、あるいは、板状の連結板等を用いてもよい。更に、連結部材4bの一端部をソケット本体2の外周面から外方に突出させ、操作部材4aを兼ねる構成とすることも可能である。
【0036】
上記のように構成された第1実施形態によれば、ソケットに保持されたナット、スプリングワッシャ、及び平ワッシャを容易に且つ安全に解除することが可能であり、作業効率の低下を防ぐことができる保持機能付きソケットを得ることができる。
【0037】
(解除手順)
図7A図7B図7Cを参照して、ナット9、スプリングワッシャ10、及び平ワッシャ11をソケット1から解除する手順について説明する。
図7Aはナット9及びワッシャ類を保持している状態の断面図、図7Bはナット9及びスプリングワッシャ10を解除した状態の断面図、図7Cはナット9、スプリングワッシャ10、平ワッシャ11を解除した状態の断面図である。
【0038】
図7に示すように、ソケット1によりナット9及び平ワッシャ11を保持している状態において、永久磁石3は第1収容孔2dの第1保持位置2d1に位置し、ナット9を吸着している。ワッシャ保持筒6の一端部6cは、ソケット本体2から突出した第2保持位置2e1に位置し、内部に平ワッシャ11を吸着保持している。
【0039】
図7Bに示すように、ナット9及び平ワッシャ11の吸着を解除する場合、操作部材4aを嵌合孔2bから離れる方向に向かって軸方向Xに移動させ、永久磁石3を第1保持位置2d1から第1解除位置2d2に向かって移動させる。
図7Bに示すように、軸方向Xに操作部材4aを移動させると、永久磁石3は、第1保持位置2d1から少し移動する。ナット9と永久磁石3との間に隙間ができ、ナット9を保持するための磁力が弱まり、ナット9はソケット1の保持が解除される。ナット9は、段差2gに阻まれ、軸方向Xに移動することはできない。
【0040】
次に、図7Bに示す状態から、更に操作部材4aを軸方向Xに移動させる。
図7Cに示すように、永久磁石3は、第1解除位置2d2に移動する。この時、ワッシャ保持筒6の一端部6cは、第2保持位置2e1から第2解除位置2e2に移動する。平ワッシャ11を保持していたワッシャ保持筒6の一端部6cは、ソケット本体2の内部に収納されて、平ワッシャ11の保持は解除される。
【0041】
一例では、ナット9及びスプリングワッシャ10の解除と平ワッシャ11の解除とは、同時でなく2段階で行っているが、同時に行うことも可能である。ただし、平ワッシャ11の枚数や厚みが変化することを想定する場合、同時ではなく2段階での解除となる。
【0042】
(使用例)
図8A図8Bを参照してナット9、スプリングワッシャ10、平ワッシャ11を使用する場合の使用例1を説明する。
図8Aは、締付前の断面図、図8Bは締付後の断面図である。図8Aに示すように、ナット9は、永久磁石3の磁力により保持されている。スプリングワッシャ10は、永久磁石3に着磁されたナット9により保持されている。平ワッシャ11は、ワッシャ保持筒6の一端部6cの磁力により保持されている。
【0043】
第3板18と第4板19とを挟み、六角ボルト8とナット9とをソケット1を回転させることにより締付し、第3板18と第4板19とを結合する。
図8Bに示すように、六角ボルト8とナット9とを締付した時、ワッシャ保持筒6のソケット本体2から突出されている長さは、平ワッシャ11の厚みと等しい。
六角ボルト8とナット9とを締付した後、ソケット1を軸方向Xに移動させることでナットから取り外す。
【0044】
図9A図9Bを参照してスプリングワッシャ10及び平ワッシャ11を使用せず、ナット9のみを使用する場合の使用例2について説明する。
図9Aは、締付前の断面図、図9Bは締付後の断面図である。
図9Aに示すように、ナット9は、永久磁石3の磁力により保持されている。ワッシャ保持筒6は付勢部材5により、ソケット本体2から突出している。
第3板18と第4板19とを挟み、六角ボルト8とナット9とをソケット1を回転させることにより締付し、第3板18と第4板19とを結合する。
図9Bに示すように、六角ボルト8とナット9とを締付した時、ソケット本体2の第1端面2a2とワッシャ保持筒6の第3端面6a3とは同一平面上にある。
【0045】
本実施形態に係るソケット1は、スプリングワッシャ10及び平ワッシャ11の有無に関わらず、使用することができる。
【0046】
(第2実施形態)
図10を参照して、第2実施形態に係るソケットについて説明する。
図10は、第2実施形態に係るソケット1の断面図である。図示のように、第2実施形態では、ソケット1は、ワッシャ保持筒6を持たない構成としている。
詳細には、ソケット1は、ほぼ円柱形状のソケット本体2と、ソケット本体2内に設けられた永久磁石3と、ソケット本体2の外周側に設けられた操作部材4aと、操作部材4aと永久磁石3を連結した連結部材4bと、を備えている。
ソケット本体2は、嵌合孔2bにナットを嵌合し、第1収容孔2dに収容された永久磁石3は、ナット及びスプリングワッシャを磁力により保持する。
【0047】
上記のように構成された第2実施形態によれば、ナット及びスプリングワッシャの保持が可能であるとともに、保持したナット又はボルト頭部を容易に外すことが可能な保持機能付きソケットを得ることができる。
【0048】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。必要に応じて、複数の実施形態を組み合わせることも可能である。
【符号の説明】
【0049】
1…保持機能付きソケット、2…ソケット本体、2a1…第1外周面、2a2…第1端面、2a3…第2端面、2b…嵌合孔、2c…差込角、2d…第1収容孔、2d1…第1保持位置、2d2…第1解除位置、2e…第2収容孔、2e1…第2保持位置、2e2…第2解除位置、2f…第1ガイド孔、2g…段差、3…永久磁石、3a…係合孔、3b…第3収容孔、4…解除部材、4a…操作部材、4a1…連結孔、4b…連結部材、5…付勢部材、6…ワッシャ保持筒、6a1…第2外周面、6a2…内周面、6a3…第3端面、6a4…第4端面、6b…第2ガイド孔、6c…一端部、7…ハンドル、8…六角頭付きボルト、9…ナット、10…スプリングワッシャ、11…平ワッシャ
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図9A
図9B
図10