(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023172840
(43)【公開日】2023-12-06
(54)【発明の名称】手術補助台および下肢関節手術用牽引手術台
(51)【国際特許分類】
A61G 13/12 20060101AFI20231129BHJP
【FI】
A61G13/12 Z
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【公開請求】
(21)【出願番号】P 2022165092
(22)【出願日】2022-10-13
(71)【出願人】
【識別番号】304021831
【氏名又は名称】国立大学法人千葉大学
(71)【出願人】
【識別番号】519440397
【氏名又は名称】株式会社カーム・ラーナ
(74)【代理人】
【識別番号】110003650
【氏名又は名称】弁理士法人ブランシェ国際知的財産事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100132621
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 孝行
(74)【代理人】
【識別番号】100123364
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 徳子
(72)【発明者】
【氏名】中村 順一
(72)【発明者】
【氏名】勝呂 徹
【テーマコード(参考)】
4C341
【Fターム(参考)】
4C341MM06
4C341MS14
(57)【要約】
【課題】下肢関節手術用牽引手術台にしっかりと固定され安全性の高い手術補助台およびこの手術補助台を備える下肢関節手術用牽引手術台を提供する。
【解決手段】手術補助台1は、下肢関節手術用牽引手術台100の三本の棒状部材112、121上に載置される。手術補助台1は、手術対象者の下肢を載せるマット部10と、マット部10の下面12に設けられる複数の脚部20と、下面12の中央近傍に下方に向かって突出する突出部30と、突出部30に形成されるレール部40と、レール部40に摺動自在に取り付けられる保持部50と、を備える。保持部50は、レール部40に摺動自在の摺動部51と、摺動部51に固定され摺動部51から垂下するベルト部52とを備える。ベルト部52を棒状部材112、121に取り巻くように締付けることで、手術補助台1が下肢関節手術用牽引手術台100に強固に固定される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一本のジョイント棒状部材を有するジョイント部と、二本のフレーム棒状部材を有するメインフレーム部とを有する下肢関節手術用牽引手術台の上に載置される手術補助台であって、
前記手術用補助台は、手術対象者の下肢が載置されるマット部と、
前記マット部の底面から垂下するように設けられ、下端面に凹部が形成されている複数の脚部と、
前記底面の中央近傍に下方に向かって突出する突出部と、
前記突出部に前記マット部の長手方向に沿って形成されるレール部と、
前記レール部に摺動自在に取り付けられる保持部と、を備え、
前記保持部は、
前記レール部に摺動自在に設けられる摺動部と、
前記摺動部に固定されるベルト部と、
前記ベルト部をロックするロック部と、を有し、
前記脚部の前記凹部を前記棒状部材に当接するように載置させ、
前記ベルト部を少なくとも一方の前記棒状部材に取り巻くように締付け、前記ロック部で前記ベルト部の先端近傍をロックし、前記ジョイント棒状部材および前記フレーム棒状部材からの前記マット部の移動を防止することを特徴とする、
手術補助台。
【請求項2】
前記締め付ける前記棒状部材がジョイント棒状部材であることを特徴とする、
請求項1に記載の手術補助台。
【請求項3】
前記保持部は、複数の保持部からなり、
少なくとも一つの前記保持部の前記ベルト部は、前記ジョイント棒状部材を締付け、
他の前記ベルト部が、前記フレーム棒状部材を締付けることを特徴とする、
請求項1または2に記載の手術補助台。
【請求項4】
前記ベルト部は、固定側ベルトと複数の調整側ベルトとを有し、
前記調整側ベルトの先端にはそれぞれ締結部が設けられ、
少なくとも一方の前記調整側ベルト部の先端近傍を前記ロック部でロックした後、前記締結部同士を締結することを特徴とする、
請求項1に記載の手術補助台。
【請求項5】
請求項1に記載された手術補助台と、
前記手術補助台を載置する前記一本のジョイント棒状部材および前記二本のフレーム棒状部材と、
手術台に固定し前記ジョイント棒状部材の一端を固定する第1固定部と、
前記ジョイント棒状部材の他端と前記フレーム棒状部材の一端を固定する第2固定部と、
前記フレーム棒状部材の他端を固定する第3固定部と、
動作モードを調整する位置調整部と、
前記メインフレーム部を支持し傾きを調整する支持脚部と、を備え、
前記脚部の前記凹部を前記棒状部材に当接するように載置させ、
前記ベルト部を少なくとも一方の前記棒状部材に取り巻くように締付け、前記ロック部で前記ベルト部の先端近傍をロックし、前記ジョイント棒状部材および前記フレーム棒状部材からの前記マット部の移動を防止することを特徴とする、
下肢関節手術用牽引手術台。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手術対象者の下肢を載置する手術補助台および下肢関節手術用牽引手術台に関する。
【背景技術】
【0002】
下肢関節の軟骨の変形や硬化等によって下肢関節の機能が低下した患者は、下肢関節の可動性が低下しているだけでなく痛みも伴う場合が多く、日常生活に制限が加わりQOL(生活の質)が低下してしまうといった問題がある。これら患者に対しては、下肢関節に対する手術(下肢関節手術)が必要となる。
【0003】
下肢関節手術においては、患者の下肢関節に対して十分な手術対象領域を確保する必要があることから、下肢関節を牽引、伸展、内転、内外旋等行う必要がある。その際に用いられる手術補助台および下肢関節手術用牽引手術台が知られている(特許文献1)。
【0004】
特許文献1は、手術台に固定する下肢関節手術用牽引手術台であり、二本の平行な棒状部材を備えたメインフレームを有するメインフレーム部と、メインフレームに沿って移動可能である移動フレームと、移動フレームに設置され手術対象者の足を固定するための足固定部を備える位置調整部と、メインフレーム部の傾きを調整可能な支持脚部と、メインフレームに接続され、一本のジョイント部棒状部材を有し手術台本体に接続するためのジョイント部とを備え、牽引、伸展の操作に対する利便性を損なうことなく、牽引と、伸展を二段階で確実に行うことができる下肢関節手術用牽引手術台が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1には、下肢関節手術用牽引手術台において、下肢関節手術用牽引手術台の上に設置するトレー(手術補助台)により、手術台全体を平面にすることができ、手術の前と後で手術対象者の下肢を安定しておくことができることがさらに開示されている。
【0007】
また、手術補助台は、下端面が一本のジョイント部棒状部材およびメインフレームの二本の棒状部材の断面形状に合わせて形成される三本の脚部材と、三本の脚部材の上に配置されるマット部材とを有しており、脚部材を下肢関節手術用牽引手術台の二本の棒状部材と一本のジョイント部棒状部材の上に配置することで安定的に手術対象者の下肢を支えることができることが開示されている。
【0008】
ところで、手術補助台を下肢関節手術用牽引手術台の上に載せただけでは棒状部材の断面形状に合わせた脚部材を有しているとは言っても、十分な固定性を得ることは難しい。重力方向であれば耐えることはできるが、水平方向や斜め方向からの外力に対する安定性は乏しい可能性がある。例えば、手術開始前の体位取りで全身麻酔にかかった状態で意識のない手術対象者の下肢を載せた手術補助台が、もし意図せずに外力により脱落してしまうと、全身麻酔にかかった状態で意識のない手術対象者の下肢を落下させてしまう可能性があるという課題があった。
【0009】
本発明は上述した事情に鑑み、下肢関節手術用牽引手術台にしっかりと固定され、安全性のより高い手術補助台およびその手術補助台を備える下肢関節手術用牽引手術台を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の発明者は、上述した課題に関して鋭意研究開発を続けた結果、以下の様な画期的な手術補助台および下肢関節手術用牽引手術台を見出した。
【0011】
上記課題を解決するための本発明の第1の態様は、一本のジョイント棒状部材を有するジョイント部と、二本のフレーム棒状部材を有するメインフレーム部とを有する下肢関節手術用牽引手術台の上に載置される手術補助台であって、手術用補助台は、手術対象者の下肢が載置されるマット部と、マット部の底面から垂下するように設けられ、下端面に凹部が形成されている複数の脚部と、底面の中央近傍に下方に向かって突出する突出部と、突出部にマット部の長手方向に沿って形成されるレール部と、レール部に摺動自在に取り付けられる保持部と、を備え、保持部は、レール部に摺動自在に設けられる摺動部と、摺動部に固定されるベルト部と、ベルト部をロックするロック部と、を有し、脚部の凹部を棒状部材に当接するように載置させ、ベルト部を少なくとも一方の棒状部材に取り巻くように締付け、ロック部でベルト部の先端近傍をロックし、ジョイント棒状部材およびフレーム棒状部材からのマット部の移動を防止することを特徴とする、手術補助台にある。
【0012】
かかる第1の態様では、ベルト部で棒状部材を取り巻くように締め付けるので、凹部の内面と棒状部材の外周とがしっかりと押圧密接され、下肢関節手術用牽引手術台の上に手術補助台を強固に固定することができる。また、上下方向(重力方向)、左右方向(水平方向)および斜め方向の3次元方向において、手術補助台が下肢関節手術用牽引手術台から移動することを防止することができるので、安全に手術対象者の下肢をマット部の上に載せることができ、かつ手術中においても外力による手術補助台からの移動を防止することができるので、医師は安心して手術に集中することができる。また、保持部をレール部内で自由に摺動できるので、適切な位置で、ベルト部を用いて棒状部材を締め付けることができる。その結果、下肢関節手術用牽引手術台にしっかりと固定され、より高い安全性を有する手術補助台を提供することができる。
【0013】
本発明の第2の態様は、締め付ける棒状部材がジョイント棒状部材であることを特徴とする、第1の態様に記載の手術補助台にある。
【0014】
ここで、下肢関節手術用牽引手術台は所定の位置および角度で保持される必要があるが、本発明に係る下肢関節手術用牽引手術台では、フレーム棒状部材と比較して、ジョイント棒状部材が屈曲等による影響が少ない(下肢関節手術用牽引手術台は所定の位置および角度で保持され易い)という特徴がある。
【0015】
かかる第2の態様では、フレーム棒状部材と比較して、屈曲等による影響が少ないジョイント棒状部材にベルト部が締め付けられるので、手術補助台がより安定して下肢関節手術用牽引手術台の上に載置することができる。
【0016】
本発明の第3の態様は、保持部は、複数の保持部からなり、少なくとも一つの保持部のベルト部は、ジョイント棒状部材を締付け、他のベルト部が、フレーム棒状部材を締付けることを特徴とする、第1または第2の態様に記載の手術補助台にある。
【0017】
かかる第3の態様では、少なくとも2つの保持部で各棒状部材をそれぞれ締め付けることができ、強固な固定を維持し、かつ安全性のより高い手術補助台を提供することができる。
【0018】
本発明の第4の態様は、ベルト部は、固定側ベルトと複数の調整側ベルトとを有し、調整側ベルトの先端にはそれぞれ締結部が設けられ、少なくとも一方の調整側ベルト部の先端近傍をロック部でロックした後、締結部同士を締結することを特徴とする、第1の態様に記載の手術補助台にある。
【0019】
かかる第4の態様では、棒状部材の下方を通す作業が容易となり、簡単に保持部を棒状部材に締め付けることができる手術補助台を提供できる。
【0020】
本発明の第5の態様は、第1の態様に記載された手術補助台と、手術補助台を載置する一本のジョイント棒状部材および二本のフレーム棒状部材と、手術台に固定しジョイント棒状部材の一端を固定する第1固定部と、ジョイント棒状部材の他端とフレーム棒状部材の一端を固定する第2固定部と、フレーム棒状部材の他端を固定する第3固定部と、動作モードを調整する位置調整部と、メインフレーム部を支持し傾きを調整する支持脚部と、を備え、脚部の凹部を棒状部材に当接するように載置させ、ベルト部を少なくとも一方の棒状部材に取り巻くように締付け、ロック部でベルト部の先端近傍をロックし、ジョイント棒状部材およびフレーム棒状部材からのマット部の移動を防止することを特徴とする、下肢関節手術用牽引手術台にある。
【0021】
かかる第5の態様では、ベルト部で棒状部材を取り巻くように締め付けるので、凹部の内面と棒状部材の外周とがしっかりと押圧密接され、下肢関節手術用牽引手術台の上に手術補助台を強固に固定することができる。また、上下方向(重力方向)、左右方向(水平方向)および斜め方向の3次元方向において、手術補助台が下肢関節手術用牽引手術台から移動することを防止することができるので、安全に手術対象者の下肢をマット部の上に載せることができ、かつ手術中においても外力による手術補助台からの移動を防止することができるので、医師は安心して手術に集中することができる。また、保持部をレール部内で自由に摺動できるので、適切な位置で、ベルト部を用いて棒状部材を締め付けることができる。その結果、下肢関節手術用牽引手術台にしっかりと固定され、より高い安全性を有する下肢関節手術用牽引手術台を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明に係る手術補助台と下肢関節手術用牽引手術台との関係を示す概略側面斜視図である。
【
図2】本発明に係る手術補助台の一例を示す概略側面斜視図である。
【
図4】
図2の手術補助台の保持部と下肢関節手術用牽引手術台の棒状部材との関係を示す説明図であり、(a)は第1実施態様、(b)は第2実施態様である。
【
図5】
図4に続く説明図であり、(a)は第3実施態様、(b)は第4実施態様である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る手術補助台および下肢関節手術用牽引手術台の実施形態を説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0024】
図1は、本発明に係る手術補助台と下肢関節手術用牽引手術台との関係を示す概略側面斜視図である。
図1に基づいて、手術補助台と下肢関節手術用牽引手術台との関係を詳述する。
【0025】
本実施形態の手術補助台1は、下肢関節手術用牽引手術台100の上に設置され、手術台全体を平面にすることができ、手術の前と後で手術対象者の下肢を安定しておくことができる。
【0026】
下肢関節手術用牽引手術台100は、手術台200に固定されるジョイント部110と、ジョイント部110と連結固定されるメインフレーム部120と、メインフレーム部120に設置され、手術対象者の下肢の固定を調整する位置調整部130と、メインフレーム部120を支持すると共に傾きを調整する支持脚部140とを備えている。
【0027】
ジョイント部110は、手術台200の側面に固定された第1固定部111に固定され、一本のジョイント棒状部材112を有している。メインフレーム部120は、二本のフレーム棒状部材121を有し、フレーム棒状部材121は、両端にそれぞれ配置される第2固定部122と第3固定部123とで固定され、略平行でかつ所定の離間距離を維持している。第2固定部122は、ジョイント棒状部材112の一端を固定しており、これによりジョイント部110とメインフレーム部120は、第2固定部122を介して一体化されている。
【0028】
位置調整部130は、3つの動作モードを調整する。第1モードは、メインフレーム部120に沿った移動動作および支持脚部140の傾き調整動作を固定する。第2のモードは、メインフレーム部120に沿った移動動作を解放し支持脚部140の傾き調整動作を固定する。第3のモードは、メインフレーム部120に沿った移動動作および支持脚部140の傾き調整動作を解放する。これにより、牽引、伸展等の操作に対する利便性を損なうことなく、牽引、伸展等を確実に行うことができる。
【0029】
支持脚部140は、位置調整部130の移動フレーム131に支持され、回転可能な2つの支持棒状部材141と、支持棒状部材141の下端に配置され床面を回転しながら下肢関節手術用牽引手術台100を移動自在とする、2つのローラー142とを備えている。
【0030】
なお、下肢関節手術用牽引手術台100の詳細は、特許登録第5754680号公報に記載されている。
【0031】
図2は、本発明に係る手術補助台の一例を示す概略側面斜視図である。
図3は、
図2の手術補助台の概略背面斜視図である。なお、
図2は、棒状部材との関係も示す必要があるため棒状部材も開示している。
図2および
図3に基づいて、手術補助台1を詳述する。
【0032】
手術補助台1は、下肢関節手術用牽引手術台100の三本の棒状部材112、121上に載置される。手術補助台1は、マット部10と、複数の脚部20と、突出部30と、レール部40と、保持部50と、を備えている。
【0033】
マット部10は、手術対象者の下肢を載せる上面11と、上面11と反対側の下面(底面)12とを有している。マット部10は、手術対象者の下肢を載せることができるものであれば特に限定されないが、上面にクッション性を有するものが好ましい。
【0034】
複数の脚部20は、マット部10の下面12から垂下するように下面12に対して一体または一体的に設けられている。脚部20は、本実施形態において三本あり、一本の前脚部21と、二本の後脚部22とで構成されている。それぞれの脚部20の下端面21a、22aには、凹部23がそれぞれ形成されている。手術補助台1を下肢関節手術用牽引手術台100に載置した際、各凹部23の内面と棒状部材112、121の表面が当接する。そして、当接することでマット部10の上面11と手術台200の上面11とが略平行となり、手術台全体が略平面となる。ここで、略平行とは、平行だけでなく、マット部10の上面11と手術台200の上面とが所定の角度以下(例えば3度)の角度を有する場合を含む概念である。
【0035】
凹部23は、ジョイント棒状部材112およびフレーム棒状部材121上に載置できるよう、各棒状部材112、121の表面形状に合わせて形成されている。例えば、各棒状部材112、121が円筒管である場合、下端面21a、22aは各棒状部材112、121の外径に合わせた半円形状となる。なお、下端面21a、22aは、半円形状に限らず、角形、楕円、等、各棒状部材112、121の表面形状に合わせた形状を選択することができる。
【0036】
脚部20は、棒状部材112、121の長手方向(軸方向)に沿った長さと、その長手方向と直交する方向に沿った幅を有している。この幅は、棒状部材112、121の断面における幅および凹部23の幅よりも広く設けられている。所定の幅と長さを有することで、脚部20は棒状部材112、121の上に安定して載置できるようになっている。なお、脚部20は、上述した構造を有するものであれば、材質や形状は特に限定されない。
【0037】
突出部30は、下面12の中央近傍に下方に向かって一体または一体的に突出し、梁のように前脚部21と後脚部22間に亘って所定の突出量(長さ)と幅を持って、下面の長手方向に平行になるように設けられている。レール部40は、突出部30にマット部10の長手方向に沿って、突出部30の側面に形成されている。そして、このレール部40に保持部50が摺動自在に取り付けられている。保持部50は、レール部40をマット部10の長手方向に沿って自由に移動することができ、保持部50を適切な位置に移動させることができる。なお、突出部30は、上述した構造を有するものであれば、材質や形状は特に限定されない。
【0038】
保持部50は、レール部40に摺動自在の摺動部51と、摺動部51に固定され摺動部51から垂下するベルト部52とを備えている。ベルト部52は、バックル等のロック部53を有している。ここで、ロック部53を挟んでロック部53の摺動部51側のベルト部52が固定側ベルト52aであり、反対側のベルト部52が調整側ベルト52bとする。
【0039】
ロック部53は、調整側ベルト52bの先端近傍を固定できるものであれば特に限定されない。本実施形態では、ラチェット式のロック部53を選択したが、カムバックル式、フック式等のものを選択してもよい。なお、保持部50、レール部40、摺動部51は、上述した構造を有するものであれば、材質や形状は特に限定されない。
【0040】
また、ベルト部52も帯状のもので、後述するように、棒状部材112、121の周囲に締め付けるように巻き付けることができるものであれば、長さ、形状、厚み等は特に限定されない。なお、ベルト部52の材質としては、ナイロン、ポリプロピレン、等の合成樹脂の他、合成ゴム、革などから選択できる。特に、棒状部材112、121が金属の場合、滑りを考慮して摩擦抵抗のある材質や表面加工などの選択が可能である。
【0041】
そして、保持部50は、手術補助台1を下肢関節手術用牽引手術台100の上に載置した後、ベルト部52を棒状部材112、121の周囲に締め付けるように巻き付け、ロック部53で、棒状部材112、121の周囲を締め付ける部分の調整側ベルト52bの長さを調整することによって、手術補助台1を下肢関節手術用牽引手術台100の上に強固に固定することができる。その結果、下肢関節手術用牽引手術台100に対して手術補助台1の3次元方向の移動を防止することができる。
【0042】
図4は、
図2の手術補助台の保持部と下肢関節手術用牽引手術台の棒状部材との関係を示す説明図であり、(a)は第1実施態様、(b)は第2実施態様である。
図4は、保持部を棒状部材に巻き付けた位置の断面を示している。
図4に基づいて、第1実施形態および第2実施形態を説明する。
【0043】
図4(a)の第1実施形態は、二本のフレーム棒状部材121にベルト部52を取り巻くように締付けた例を示している。手術補助台1の各脚部20を各棒状部材112、121の上に載置させた後、ベルト部52の調整側ベルト52bをフレーム棒状部材121の周辺に巻き付ける。その後、調整側ベルトの52bを引張り、調整側ベルト52bの内面がフレーム棒状部材121の外周を圧接した状態で、調整側ベルト52bの先端近傍をロック部53で固定している。
【0044】
図4(b)の第2実施形態は、一本のジョイント棒状部材112にベルト部52を取り巻くように締付けた例を示している。手術補助台1の各脚部20を各棒状部材112、121の上に載置させた後、ベルト部52の調整側ベルト52bをジョイント棒状部材112の周辺に巻き付ける。その後、調整側ベルトの52bを引張り、調整側ベルト52bの内面がジョイント棒状部材112の外周を圧接した状態で、調整側ベルト52bの先端近傍をロック部53で固定している。
【0045】
第1実施形態では、手術補助台1の中央部分を保持する形で手術補助台1を固定し、長手方向の安定性を優先しているが、第2実施形態では、手術台200に近い位置で固定することで振動に強くなる。また、下腿のみを手術補助台1のマット部10に載せる場合に安定性の上から有利となる。加えて、フレーム棒状部材と比較して、屈曲等による影響が少ないジョイント棒状部材にベルト部が締め付けられるので、手術補助台がより安定して下肢関節手術用牽引手術台の上に載置することができる。さらに、摺動部51は、レール部40の適宜の位置に移動できることで、手術に合わせた適切な固定位置を選択することができる。
【0046】
図5は、
図4に続く説明図であり、(a)は第3実施態様、(b)は第4実施態様である。
図5(a)は、
図2を、
図5(b)は
図4(a)を利用している。
図5に基づいて、第3実施態様および第4実施態様を説明する。
【0047】
図5(a)の実施形態3は、保持部50が複数ある場合を示している。実施形態3では、2つの保持部50が設けられ、一方の保持部50が二本のフレーム棒状部材121を介して手術補助台1を保持し、他方の保持部50が一本のジョイント棒状部材112を介して手術補助台1を保持している。複数の保持部50で手術補助台1を下肢関節手術用牽引手術台の上に保持することで、固定が強固となり安定性が向上する。
【0048】
図5(b)の実施態様4は、調整側ベルト52bが2つあり、それぞれの先端に締結部60を有している。ロック部53において一方の調整側ベルト52bをフレーム棒状部材121が締め付けられるように調整し、ロック部53で固定した後、調整側ベルト52bがフレーム棒状部材121を取り巻くように締結部60同士を締結するようになっている。上述した実施形態では、突出部30の近傍(狭い空間内)で、ロック部53を操作して、棒状部材112、121の周囲を締め付ける部分の調整側ベルト52bの長さを調整しなければならないために手間がかかる。一方、本実施形態では、フレーム棒状部材121の下方に配置される締結部60を締結することによって、手術補助台1を下肢関節手術用牽引手術台100の上に容易に固定することができる。
【0049】
以上説明したように、本発明によれば、保持部50によりマット部10が棒状部材112、121側に引き寄せられ、脚部20の凹部23の内面と棒状部材112、121の外周とが密接し、下肢関節手術用牽引手術台100に対して手術補助台1が強固に安定して載置できる。
【0050】
(他の実施形態)
上述した実施形態では、レール部は、突出部の一方の側面にマット部の長手方向に沿って形成されていたが、本発明はこれに限定されない。レール部は、例えば、突出部の下面に形成されていてもよいし、突出部の他方の側面に形成されていてもよい。このようにレール部を形成しても、上述した実施形態と同様の効果が得られる。
【0051】
また、上述した実施形態では、突出部は、マット部の下面に設けられていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、突出部がマット部内に設けられてもよい。
【0052】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【符号の説明】
【0053】
1 手術補助台
10 マット部
11 上面
12 下面(底面)
20 脚部
21 前脚部
21a 前脚部の下端面
22 後脚部
22a 後脚部の下端面
23 凹部
30 突出部
40 レール部
50 保持部
51 摺動部
52 ベルト部
52a 固定側ベルト
52b 調整側ベルト
53 ロック部
60 締結部
100 下肢関節手術用牽引手術台
110 ジョイント部
111 第1固定部
112 ジョイント棒状部材
120 メインフレーム部
121 フレーム棒状部材
122 第2固定部
123 第3固定部
130 位置調整部
131 移動フレーム
140 支持脚部
141 支持棒状部材
142 ローラー
200 手術台
【手続補正書】
【提出日】2023-01-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一本のジョイント棒状部材を有するジョイント部と、二本のフレーム棒状部材を有するメインフレーム部とを有する下肢関節手術用牽引手術台の上に載置される手術補助台であって、
前記手術補助台は、手術対象者の下肢が載置されるマット部と、
前記マット部の底面から垂下するように設けられ、下端面に凹部が形成されている複数の脚部と、
前記底面の中央近傍に下方に向かって突出する突出部と、
前記突出部に前記マット部の長手方向に沿って形成されるレール部と、
前記レール部に摺動自在に取り付けられる保持部と、を備え、
前記保持部は、
前記レール部に摺動自在に設けられる摺動部と、
前記摺動部に固定されるベルト部と、
前記ベルト部をロックするロック部と、を有し、
前記複数の脚部の前記凹部を、前記ジョイント棒状部材および前記二本のフレーム棒状部材にそれぞれ当接するように載置させ、
前記ベルト部を、前記ジョイント棒状部材および前記二本のフレーム棒状部材の少なくとも一方に取り巻くように締付け、前記ロック部で前記ベルト部の先端近傍をロックし、前記ジョイント棒状部材および前記フレーム棒状部材からの前記マット部の移動を防止することを特徴とする、
手術補助台。
【請求項2】
前記ベルト部は、前記ジョイント棒状部材を取り巻くように締め付けることを特徴とする、
請求項1に記載の手術補助台。
【請求項3】
前記保持部は、複数の保持部からなり、
少なくとも一つの前記保持部の前記ベルト部は、前記ジョイント棒状部材を締付け、
他の前記ベルト部が、前記フレーム棒状部材を締付けることを特徴とする、
請求項1または2に記載の手術補助台。
【請求項4】
前記ベルト部は、固定側ベルトと複数の調整側ベルトとを有し、
前記調整側ベルトの先端にはそれぞれ締結部が設けられ、
少なくとも一方の前記調整側ベルト部の先端近傍を前記ロック部でロックした後、前記締結部同士を締結することを特徴とする、
請求項1に記載の手術補助台。
【請求項5】
請求項1に記載された手術補助台と、
前記手術補助台を載置する前記一本のジョイント棒状部材および前記二本のフレーム棒状部材と、
手術台に固定し前記ジョイント棒状部材の一端を固定する第1固定部と、
前記ジョイント棒状部材の他端と前記フレーム棒状部材の一端を固定する第2固定部と、
前記フレーム棒状部材の他端を固定する第3固定部と、
動作モードを調整する位置調整部と、
前記メインフレーム部を支持し傾きを調整する支持脚部と、を備え、
前記複数の脚部の前記凹部を、前記ジョイント棒状部材および前記二本のフレーム棒状部材にそれぞれに当接するように載置させ、
前記ベルト部を、前記ジョイント棒状部材および前記フレーム棒状部材の少なくとも一方に取り巻くように締付け、前記ロック部で前記ベルト部の先端近傍をロックし、前記ジョイント棒状部材および前記フレーム棒状部材からの前記マット部の移動を防止することを特徴とする、
下肢関節手術用牽引手術台。