(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023172845
(43)【公開日】2023-12-06
(54)【発明の名称】キャップ開閉装置及びその制御方法、マイクロチューブラック
(51)【国際特許分類】
G01N 35/02 20060101AFI20231129BHJP
B67B 7/12 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
G01N35/02 B
B67B7/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022174960
(22)【出願日】2022-10-31
(31)【優先権主張番号】P 2022083972
(32)【優先日】2022-05-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1) ▲1▼開催日: 令和4年6月1日~6月4日 ▲2▼集会名、開催場所: 一般社団法人日本機械学会、ロボティクス・メカトロニクス講演会2022 in Sapporo(北海道札幌市白石区東札幌6条1丁目1-1 札幌コンベンションセンター) ▲3▼公開者: 神野 誠、 野々山 良介 ▲4▼公開された発明の内容: 神野 誠及び野々山 良介がロボティクス・メカトロニクス講演会2022 in Sapporoにて、神野誠及び野々山良介が発明したマイクロチューブのキャップ開閉装置に関する研究について公開した。 (2) ▲1▼ 発行日:令和4年6月1日 ▲2▼ 刊行物:「ロボティクス・メカトロニクス講演会2022 in Sapporo」(電子データ配布) 1A1-F06 ▲3▼ 発行者:一般社団法人 日本機械学会 ▲4▼ 公開者:神野 誠、野々山 良介 ▲5▼ 公開のタイトル:「PCR検査前処理工程効率化のためのマイクロチューブキャッパーの開発」 ▲6▼ 添付の書面: 「ロボティクス・メカトロニクス講演会2022 in Sapporo」の表紙、総目次、講演概要目次、1A1-F06のコピー
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和2年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、戦略的創造研究推進事業「ウイルス変異を考慮した大量自動検査システムの研究」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】502245118
【氏名又は名称】学校法人国士舘
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】神野 誠
(72)【発明者】
【氏名】野々山 良介
【テーマコード(参考)】
2G058
3E081
【Fターム(参考)】
2G058CA02
3E081AA16
3E081AB03
3E081AC01
3E081BB19
3E081BB27
3E081EE02
3E081EE13
(57)【要約】
【課題】多様なマイクロチューブのキャップ形状に対応するキャップ開閉機構の提供。
【解決手段】容器本体と、ヒンジ部を介して容器本体に接続されたキャップとを有するマイクロチューブのキャップを開閉するキャップ開閉装置は、第1の回転軸により回転する第1アームと第2の回転軸により回転する第2アームを有し、第1アームは、第1の方向への回転に従って、所定位置に配置されたマイクロチューブのキャップの縁部と係合してキャップを開栓するように爪部を動かし、第2アームは、第1の方向とは逆の第2の方向への回転に従って、マイクロチューブのキャップを閉栓するように押圧部材を動かす。制御部は、爪部と押圧部材との間にキャップが位置し、第1の回転軸と爪部とを結ぶ直線と第2の回転軸と押圧部材を結ぶ直線との成す角度が所定の角度範囲に収まった状態を維持しながら第1の方向へ第1、第2アームを回転させ、キャップを開栓する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体と、ヒンジ部を介して前記容器本体に接続されたキャップとを有するマイクロチューブの前記キャップを開閉する装置であって、
第1の回転軸により回転する第1アームであって、前記第1アームの第1の方向への回転に従って、所定位置に配置された前記マイクロチューブの前記キャップの縁部と係合して前記キャップを開栓するように動く爪部を含む前記第1アームと、
第2の回転軸により回転する第2アームであって、前記第2アームの前記第1の方向とは逆の第2の方向への回転に従って、前記所定位置に配置された前記マイクロチューブの前記キャップを閉栓するように押す押圧部材を含む前記第2アームと、
前記爪部と前記押圧部材との間に前記キャップを位置させ、前記第1の回転軸と前記爪部とを結ぶ第1の直線と前記第2の回転軸と前記押圧部材とを結ぶ第2の直線との成す角度が所定の角度範囲に収まる特定の回転位置関係に維持しながら、前記第1アームと前記第2アームとを前記第1の方向へ回転させて前記キャップを開栓する制御手段と、を備えることを特徴とするキャップ開閉装置。
【請求項2】
前記所定の角度範囲は、10°~35°の範囲であることを特徴とする請求項1に記載のキャップ開閉装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記第1アームと前記第2アームとを等速で回転することにより、前記特定の回転位置関係を維持することを特徴とする請求項1に記載のキャップ開閉装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記爪部と前記押圧部材との間に前記キャップを位置させ、前記特定の回転位置関係に維持しながら前記第1アームと前記第2アームとを前記第2の方向へ回転させることにより前記キャップを閉栓することを特徴とする請求項1に記載のキャップ開閉装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記キャップの開栓の開始において、前記爪部と前記押圧部材とにより前記キャップを撓ませるように前記第1アームと前記第2アームの回転位置を制御する、ことを特徴とする請求項1に記載のキャップ開閉装置。
【請求項6】
前記キャップの撓みにより、前記キャップの一部が前記容器本体から離れることを特徴とする請求項5に記載のキャップ開閉装置。
【請求項7】
前記所定位置に配置された前記マイクロチューブの側面を一方の端部で押圧している押圧状態と押圧していない非押圧状態との間で遷移するようにスライド可能なピンと、
前記第2アームの前記第2の方向への回転とともに回転し、前記回転に応じて前記ピンを前記押圧状態へスライドさせる付勢部材と、を備えることを特徴とする請求項1に記載のキャップ開閉装置。
【請求項8】
前記ピンのスライドの方向は、前記第2の回転軸と平行な方向である、ことを特徴とする請求項7に記載のキャップ開閉装置。
【請求項9】
前記付勢部材は、
前記第2の回転軸の方向に第1の厚みを有する第1の部分と、前記第1の部分よりも厚い第2の厚みを有する第2の部分とを有し、
前記付勢部材の前記第2の方向への回転に応じて、前記ピンの前記一方の端部と反対側の他方の端部が前記第1の部分に当接した状態から前記第2の部分に当接した状態に遷移することにより、前記ピンが前記非押圧状態から前記押圧状態へスライドする、ことを特徴とする請求項7に記載のキャップ開閉装置。
【請求項10】
前記付勢部材は、前記第1の厚みから前記第2の厚みへ徐々に厚みが変化するように前記第1の部分と前記第2の部分とを接続する傾斜部分を含む、ことを特徴とする請求項9に記載のキャップ開閉装置。
【請求項11】
前記マイクロチューブを前記所定位置に配置するために、前記容器本体を挿入する挿入孔を備えることを特徴とする請求項1に記載のキャップ開閉装置。
【請求項12】
前記挿入孔の周囲に設けられ、前記挿入孔に挿入される前記マイクロチューブの前記容器本体の開口部に設けられたリム部を支持する支持部を備えることを特徴とする請求項11に記載のキャップ開閉装置。
【請求項13】
前記支持部は、前記リム部のうちの、前記挿入孔に挿入される前記マイクロチューブの前記ヒンジ部の位置と、前記ヒンジ部の位置に対向した位置とで前記リム部を支持することを特徴とする請求項12に記載のキャップ開閉装置。
【請求項14】
前記押圧部材は、前記第2の回転軸と交差する方向と平行に延びており、前記第2の回転軸から遠い側の端部に、前記キャップの略中央部を押すための第1の凸部を有することを特徴とする請求項1に記載のキャップ開閉装置。
【請求項15】
前記押圧部材は、前記第2の回転軸に近い側の端部に、前記第1の凸部よりも低い第2の凸部を有することを特徴とする請求項14に記載のキャップ開閉装置。
【請求項16】
前記第1の回転軸と前記第2の回転軸が同軸であることを特徴とする請求項1に記載のキャップ開閉装置。
【請求項17】
前記第1の回転軸と前記第2の回転軸は互いに平行、且つ、近傍に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のキャップ開閉装置。
【請求項18】
容器本体と、ヒンジ部を介して前記容器本体に接続され、開栓のための突起部が形成されたキャップとを有するマイクロチューブを収容するための挿入部を複数有するマイクロチューブラックであって、
前記挿入部が、
前記マイクロチューブの前記容器本体を収容するための挿入孔と、
前記挿入孔に挿入されたマイクロチューブの前記ヒンジ部の下面を支持する第1の支持部と、
前記第1の支持部の両側に配置され、前記第1の支持部よりも上に伸びる一対の突起部であって、前記一対の突起部のそれぞれには、前記一対の突起部の間隔が前記第1の支持部へ向かって狭くなるようにテーパーが付けられている前記一対の突起部と、を備えることを特徴とするマイクロチューブラック。
【請求項19】
前記挿入部は、前記挿入孔に挿入された前記マイクロチューブの前記突起部を支持する第2の支持部をさらに備える、請求項18に記載のマイクロチューブラック。
【請求項20】
複数の前記挿入部が1行に配列されているラックと、
複数の前記ラックを並べて収容するラックケースと、を備えることを特徴とする請求項18に記載のマイクロチューブラック。
【請求項21】
容器本体と、ヒンジ部を介して前記容器本体に接続されたキャップとを有するマイクロチューブを所定位置に配置する工程と、
爪部を有する第1アームを第1の回転軸を中心として第1の方向へ回転させることにより、前記所定位置に配置された前記マイクロチューブの前記キャップの縁部と前記爪部とを係合させて前記キャップを開栓する工程と、
押圧部材を有する第2アームを第2の回転軸を中心として前記第1の方向とは逆の第2の方向へ回転させることにより、前記所定位置に配置された前記マイクロチューブの前記キャップを前記押圧部材が押して閉栓する工程と、を備え、
前記開栓する工程では、前記爪部と前記押圧部材との間に前記キャップを位置させ、前記第1の回転軸と前記爪部とを結ぶ第1の直線と前記第2の回転軸と前記押圧部材とを結ぶ第2の直線との成す角度が所定の角度範囲に収まっている特定の回転位置関係を維持しながら、前記第1アームと前記第2アームとを前記第1の方向へ回転させる、ことを特徴とするキャップ開閉装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャップ開閉装置及びその制御方法、マイクロチューブラックに関する。
【背景技術】
【0002】
新型コロナウイルス(COVID-19)や、将来的なさらなるウイルス変異や未知のウイルスに対応するためPCR検査等を行うシステムの自動化は不可欠となっている。PCR検査等では、唾液や鼻咽頭ぬぐい液などの複数種の検体を、遠心管、凍結保存チューブ、マイクロチューブなど様々な容器を用いて処理が行われる。検査システムの自動化・効率化において、それら容器の開閉を自動化することは、重要なポイントとなる。
【0003】
特許文献1には、
図7に示されるようなマイクロチューブのキャップを開閉する機構が開示されている。本装置によれば、開閉部(710)をスライドさせることによりマイクロチューブのキャップ先端を締結部(750)の空間に挿入させ、この状態で開閉部(710)を回転させることによりマイクロチューブのキャップを開閉する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
遠心管、凍結保存チューブ、マイクロチューブなどの検体容器は、様々な理化学用品メーカから販売されおり、PCR検査施設などでは、このような検体容器を大量に消費する。マイクロチューブの場合、容量が同じであれば、概ね容器の外形(直径、長さ)寸法は同等であるが、キャップの形状や寸法は、操作性やシール性などについて他社との差別化を図るために、メーカごとに微妙に異なっている。使用されるマイクロチューブを統一することができれば、キャップの開閉を自動化することは容易である。しかし、特定のメーカのマイクロチューブに限定すると、そのメーカからマイクロチューブを入手するのが困難な状況に陥ったときに、検査を実施できなくなるという致命的な状況を招く。また、マイクロチューブの形状を完全に規格化し、各社から同一のマイクロチューブを提供できるようにすることも容易ではない。したがって、様々なメーカのマイクロチューブを取り扱うことができる自動化システムを構築することが、重要である。
【0006】
マイクロチューブを取り扱う作業は、検体容器のハンドリング作業、検体容器の開栓・閉栓作業、要求作業(分注作業、攪拌作業、遠心作業など)などから構成されている。前述のように、キャップ形状がさまざまであることから、その開栓・閉栓作業を自動化することは、検査システムの自動化、効率化の重要な要素技術となる。多軸のロボット(マニピュレータ)によりマイクロチューブの開栓・閉栓作業を行う場合、ロボットの動作が大きくなり、動作範囲や作業時間などに課題がある。
【0007】
また、特許文献1はマイクロチューブのキャップ開閉を専門に行う装置であるが、複数のマイクロチューブのキャップを同時に開閉することを目的としており、マイクロチューブのキャップ形状の変化に対応するための考慮はなされていない。例えば、特許文献1は、キャップの先端部をキャップの上側から引っ掛けて開栓する構成を有するが、引っ掛ける部分の隙間(締結部(750)の高さ方向の幅)が限られているため、開閉可能なキャップの先端の厚みが締結部(750)の隙間の大きさにより制限されてしまう。
【0008】
本発明は、多様なマイクロチューブのキャップ形状に対応するキャップ開閉機構を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様によるキャップ開閉装置は以下の構成を備える。すなわち、
容器本体と、ヒンジ部を介して前記容器本体に接続され、開栓のための突起部が形成されたキャップとを有するマイクロチューブの前記キャップを開閉する装置であって、
第1の回転軸により回転する第1アームであって、前記第1アームの第1の方向への回転に従って、所定位置に配置された前記マイクロチューブの前記突起部と係合して前記キャップを開栓するように動く爪部を含む前記第1アームと、
第2の回転軸により回転する第2アームであって、前記第2アームの前記第1の方向とは逆の第2の方向への回転に従って、前記所定位置に配置された前記マイクロチューブの前記キャップを閉栓するように押す押圧部材を含む前記第2アームと、
前記第1アームと前記第2アームとの回転を制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記キャップを開栓する際に、前記第1アームと前記第2アームとの回転位置関係を、前記第1アームと前記第2アームとの成す角度を所定の角度範囲に収まるように維持した状態で、前記第1アームと前記第2アームとを前記第1の方向へ回転する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、マイクロチューブの多様なキャップの形状に対して、より確実にキャップを開閉することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1実施形態によるキャップ開閉装置の概要を示す図である。
【
図2】第1実施形態によるキャップ開閉装置の開閉部の詳細を示す図である。
【
図3】第1実施形態によるキャップ開閉動作を説明する図である。
【
図4】第1実施形態による、キャップ開閉動作における開栓アームと閉栓アームの制御を説明する図である。
【
図5】(a)は挿入孔に設けられる後支持部の変形例を、(b-1)は押圧部材を説明する図、(b-2)は押圧部材の変形例を示す図。
【
図6A】マイクロチューブを収容するマイクロチューブラックを説明する図である。
【
図6B】マイクロチューブを収容するマイクロチューブラックを説明する図である。
【
図8】第2実施形態による、キャップ開閉動作における開栓アームと閉栓アームの制御を説明する図である。
【
図9】第3実施形態による閉栓アームの構造と、マイクロチューブを固定するためのピンを説明する図。
【
図10】第3実施形態による閉栓アームと、マイクロチューブを固定するためのピンの動きを説明する図。
【
図11】第3実施形態による閉栓アームと、マイクロチューブを固定するためのピンの動きを説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち二つ以上の特徴は任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0013】
<第1実施形態>
図1は、実施形態によるキャップ開閉装置100の概観を示す図である。(a)は外カバーが装着されたキャップ開閉装置100の外観図であり、(b)はキャップ開閉装置100の内部構造を示す図である。外カバー101、102の内部には、制御部121、および上位コントローラと通信接続する回路基板122、DCサーボモータ131等が収納されている。制御部121は、DCサーボモータ131の駆動制御を含む、上位コントローラ(不図示)からの指示に従った各種制御、等を行う。例えば、制御部121は、
図4により後述される開閉機構の駆動(開栓アーム、閉栓アームの駆動)を制御する。外カバー101,102によりキャップ開閉装置100の上部に開口部が形成され、この開口部にマイクロチューブ200の開栓および閉栓を行うための開閉機構108が露出している。この構造により、作業者や移載機がマイクロチューブ200を開閉機構108の所定位置に配置したり、開閉機構108から取り出したりすることができる。開閉機構108は、所定位置に配置されたマイクロチューブ200のキャップ202を開閉するために動作する第1アーム(以下、開栓アーム111)と、第2アーム(以下、閉栓アーム112)を含む。
【0014】
DCサーボモータ131aは、閉栓アーム112を回転駆動する。DCサーボモータ131aのモータシャフト先端には傘歯車132aが設けられ、閉栓アーム112の回転シャフトに連結された傘歯車132bとかみ合っている。この構成により、DCサーボモータ131のシャフトの回転により閉栓アーム112が回転シャフトを軸として回転する。開栓アーム111にも同様の構成(DCサーボモータ131b、傘歯車132c、132d)が設けられており、DCサーボモータ131bの駆動により開栓アーム111が回転する。開栓アーム111と閉栓アーム112は、独立した動作が可能であり、また、それらの動作領域においてお互いが干渉しない形状および配置となっている。
【0015】
次に、キャップ開閉装置100の開閉機構108についてより詳細に説明する。
図2は、開閉機構108の構成を説明するための図である。
図2(a)は、開閉機構108を上方(
図1の矢印191)から見た図であり、
図2(d)は、
図2(a)のA-A断面を示す図である。
図2(c)は開閉機構108を正面(
図1の矢印192)から見た図である。
図2(b)は、開閉機構108において、マイクロチューブ200が未挿入であり、開栓アーム111が回転した状態を示している。
【0016】
マイクロチューブ200は、挿入孔105に挿入さることにより所定位置に配置される。
図2(d)に示されるように、マイクロチューブ200は、容器本体201と、容器本体201にヒンジ部203を介して接続されるキャップ202を有する。キャップ202の縁部は、容器本体201のリム部205よりも突出する部分である突起部204が設けられており、突起部204はキャップ202の開栓に用いられ得る。容器本体201の開口には、リム部205が設けられている。リム部205の一部は、容器本体201の開口の径方向へ延びて、ヒンジ部203に接続される。突起部204とヒンジ部203は対向する位置に設けられている。
【0017】
開栓アーム111と閉栓アーム112は、DCサーボモータ131b、131aを駆動することにより、それぞれ回転軸106を中心として回転する。本実施形態の開栓アーム111は、略L字形状を有し、一端は回転軸106と同軸である回転シャフトに接続されている。開栓アーム111の他端には、マイクロチューブ200のキャップ202に設けられた突起部204の下側に係合可能な爪部115が設けられている。爪部115は、開栓アーム111の回転に従って回転軸106を中心とした円周上を移動する。爪部115は、この移動の過程で突起部204と係合し、突起部204を下側から押し上げるように作用してキャップ202を開栓する。また、
図2(d)に示されるように、爪部115は、テーパー形状の断面を有している。これにより、
図2(d)に示される開栓アーム111の回転位置(開栓アーム111の待機位置(
図2、
図3により後述))において、爪部115を前支持部103に接近させることができ、爪部115を様々な形状の突起部204に対してより確実に係合させることができる。
【0018】
閉栓アーム112の一端は、回転軸106と同軸である回転シャフトに接続される。閉栓アーム112の他端には、第1凸部113と第2凸部114が形成された押圧部材116が設けられている。押圧部材116は、閉栓アーム112の回転に従って回転軸106を中心とした円周上を移動する。押圧部材116は、回転軸106と交差する方向(本例では直交する方向)と平行(オフセット)した方向へ延びており、回転軸106から遠い側の端部に、キャップ202の略中央部(中央部または中央部よりも突起部204側であることが好ましい)でキャップ202の上面と接触する第1凸部113を有する。したがって、第1凸部113は、押圧部材116の上記移動によりキャップ202の略中央部を閉栓方向へ押し、マイクロチューブ200を閉栓する。押圧部材116の第2凸部114は、回転軸106に近い側の端部に設けられており、回転軸106を中心に回転移動する。これにより、第2凸部114は常にヒンジ部203の近辺の周囲を移動することになり、マイクロチューブ200が浮き上がるのを防止する。第2凸部114のこの作用については後述する。
【0019】
なお、本実施形態では開栓アーム111と閉栓アーム112の回転軸106を同一軸としているが、これに限られるものではない。但し、それぞれのアームの回転軸はヒンジ部203により規定される回転軸の近傍にあることが望ましい。特に、開栓アーム111と閉栓アーム112の回転軸106がヒンジ部203の回転軸(キャップ202の開栓/閉栓の軌跡の円弧の中心)と略一致していることが好ましい。キャップ202は、おおむねヒンジ部203の回転軸を中心に開閉するので、開栓アーム111の回転軸をヒンジ部203の回転軸の近傍に配置することで、開栓動作中から開栓後まで、爪部115を突起部204に対して確実に係合することができる。また、閉栓アーム112の回転軸をヒンジ部203の回転軸の近傍に配置することで、閉栓時において閉栓アーム112をキャップ202の上面を垂直方向に押し付けることが可能となる。これにより、閉栓アーム112の押し付け力を確実にキャップ202の上面に伝えることができる。また、開栓/閉栓の動作時に、第2凸部114は、ヒンジ部203の周りを回転するため、ヒンジ部203と干渉したり離れすぎたりすることなく、開栓の初期に生じ得るマイクロチューブ200の挿入孔105からの抜けを有効に防止することができる。
【0020】
挿入孔105は、マイクロチューブ200(容器本体201)を挿入するための孔である。前支持部103と後支持部104は、マイクロチューブ200が挿入孔105に挿入された際に、容器本体201のリム部205を支持する。前支持部103は突起部204側の位置で、後支持部104はヒンジ部203側の位置でそれぞれリム部205を支持する。前支持部103と後支持部104によってマイクロチューブ200のリム部205を支持することで、
図2(d)に示されるように、爪部115をキャップ202の突起部204の下側に配置するための空間が確保される。挿入孔105の両脇に確保されている領域107は、マイクロチューブ200を挿入孔105に挿入したり取り出したりする(ピックアンドプレース)ために、ロボット等のグリッパーがアプローチすることを可能にする。
【0021】
次に、開閉機構108によるマイクロチューブのキャップの開栓動作と閉栓動作を
図3および
図4を参照して説明する。本実施形態のキャップ開閉装置100は、開栓アーム111の爪部115により突起部204の下面を押し上げ、閉栓アーム112の押圧部材116によりキャップ202の上面の位置の変動を抑制しながらキャップ202を開く。これにより、キャップ202の形状に違いがあっても、確実にキャップ202を開閉可能としている。
【0022】
図3は、開閉機構108のキャップ開閉動作時における開栓アーム111と閉栓アーム112の動作状態を示す図である。また、
図4は開閉機構108のキャップ開閉動作における開栓アーム111と閉栓アーム112の回転制御を説明する図である。
図4に示される開栓アーム111と閉栓アーム112の回転制御は、制御部121がDCサーボモータ131a、131bを駆動制御することにより実現される。
図4において、線分401は、回転軸106と、爪部115の突起部204に係合する面とを結ぶ直線を示し、線分402は、回転軸106と第1凸部113の頂点(キャップ202と接触する部分)とを結ぶ直線を示す。
図4では、線分401と線分402により開栓アーム111と閉栓アーム112の回転位置を表している。但し、
図4では、図を分かり易くするために、線分401を白抜きの矩形で、線分402を黒塗りの矩形で示している。以下、線分401の回転位置を開栓アーム111の回転位置ともいう。同様に、線分402の回転位置を閉栓アーム112の回転位置ともいう。軸411と軸412は回転軸106を通り、90°で交わる。また、
図4において、開栓アーム111の回転角度は軸412の位置を0度として反時計回りを正方向とし、閉栓アーム112の回転角度は軸412の位置を0度として時計回りを正方向として表わされる。
【0023】
図3(a)では、開栓アーム111と閉栓アーム112が待機状態となっており、この状態でマイクロチューブ200の挿入孔105に対する挿入、取り出しを行うことができる。
図3(a)では、閉栓状態のマイクロチューブ200が挿入孔105に挿入された状態を示している。これは、
図4の状態1であり、開栓アーム111の回転位置が100°、閉栓アーム112の回転位置が50°となっている。開栓アーム111と閉栓アーム112の状態1への移動は、例えば、外部装置からの信号に応じて実行される。この状態で、例えば外部装置からの開栓指示信号を受信すると、制御部121は開栓動作を開始する。開栓動作が開始されると、開栓アーム111が95°の位置まで時計方向に回転し、閉栓アーム112が-80°の位置まで反時計方向に回転することにより、状態2(
図3(b))へ遷移する。状態2において、開栓アーム111が95°の位置に回転しており、爪部115が前支持部103の上端の近傍の位置、すなわち、突起部204の下面側近傍に位置している。また、閉栓アーム112は-80°の回転位置に回転し、押圧部材116(第1凸部113と第2凸部114)がキャップ202の上面の近傍に位置することになる。この時、押圧部材116は、キャップ202の上面に略接触してもよいが、必ずしも接触する必要はない。後述のように、開栓アーム111と閉栓アーム112はこのような特定の回転位置関係を維持して開栓動作を行う。なお、状態1から状態2へ遷移する際、開栓アーム111は、100°~95°の間を20°/sのスピードで回転する。また、閉栓アーム112は、50°~-30°の間を60°/sのスピードで、-30°~-80°の間を20°/sで回転する。なお、状態2へ移行する際に閉栓アーム112の回転速度を減速するのは、回転のオーバーシュートによりキャップ202と第1凸部113が接触してしまうことを防止するためである。オーバーシュートが生じないのであれば、50°~-80°の間を60°/sのスピードで閉栓アーム112を回転するようにしてもよい。すなわち、閉栓アーム112の高速動作の状態においては、閉栓アーム112の指令(目標)角度と実際の角度の偏差が大きくなる。閉栓アーム112の動作がキャップ202と第1凸部113が接触する可能性がある動作である場合、そのような偏差を少なくする必要がある。
図4では、そのような偏差を小さくするために、状態1から状態2への遷移の途中から閉栓アーム112を低速で動作させている。但し、制御性や動作に支障がなければ、特に低速にする必要はない。また、状態2に至る開栓アーム111と閉栓アーム112の動作順序は特に限定されない。例えば、開栓アーム111と閉栓アーム112のどちらかが先に状態2の回転位置に到達してもよいし、開栓アーム111と閉栓アーム112とが同時に状態2の回転位置に到達するようにしてもよい。
【0024】
次に、開栓アーム111は95°から-40°まで時計方向に、閉栓アーム112は-80°から50°まで時計方向に、同じスピード(60°/s)で回転して、状態2から状態3へ遷移する。すなわち、開栓アーム111と閉栓アーム112は、状態2におけるアーム間の角度(特定の回転位置関係)を維持しながら、時計方向に回転する。この回転の間に、開栓アーム111の爪部115がキャップ202の突起部204と係合し、キャップ202を開栓する。また、マイクロチューブ200が挿入孔105に挿入された状態において、ヒンジ部203により規定される回転軸と開栓アーム111の回転軸106とは略平行、且つ近傍に位置する。そのため、開栓アーム111の回転の間、爪部115とキャップ202の突起部204の位置関係は略一定となり、開栓アーム111の-40°の回転位置までキャップ202を開くことができる。例えば、
図7で説明した特許文献1の構成では、キャップの先端が締結部(750)に挿入されるように開閉部710をスライドさせるため、開閉部(710)の回転軸がキャップのヒンジ部分から離れている。このため、
図7(c)に示されるように、キャップをある程度開いたところで、キャップが締結部(750)から外れてしまい、キャップを開く角度が限られてしまう。こうして
図3(c)に示されるようにマイクロチューブ200のキャップ202の開栓が完了する。状態3において、マイクロチューブ200が十分に開口し、マイクロチューブ内への試薬の注入といったアクセスが可能となる。
【0025】
状態3における開栓アーム111の角度は、必ずしも-40°である必要はない。閉栓後のピペッティング作業などにおいてピペッターのチップなどと干渉の生じない程度開栓されていればよい。ただし、開栓アーム111と閉栓アーム112の間にはキャップ202が存在するため、開栓アーム111と閉栓アーム112の相対角度(すなわち、線分401と線分402の成す角度)が、所定量確保されている必要がある。キャップ202のバリエーションを考慮すると、開栓時に維持される開栓アーム111と閉栓アーム112の回転位置関係は、例えば10°~35°の相対角度であることが好ましい。すなわち、状態2から状態3への遷移の間、開栓アーム111と閉栓アーム112との成す角度が所定の角度範囲(例えば、10°~35°)に収まっているという特定の回転位置関係が維持される。開栓時に維持される両アームの回転位置関係は、両アームの相対角度が大きいほど許容されるキャップ202の厚みの変化が大きくなるが、マイクロチューブ200の浮き上がりを防止する能力が低下する。
【0026】
また、上述のように、回転軸106は閉栓アーム112の回転軸でもある。したがって、マイクロチューブ200が挿入孔105に挿入された状態において、閉栓アーム112の回転軸もヒンジ部203の回転軸と略平行、且つ近傍に位置する。そのため、状態2から状態3へ閉栓アーム112が回転する間、回転軸106に近い第2凸部114は、マイクロチューブ200のヒンジ部203の近辺を回転する。この動作により、第2凸部114は、開栓アーム111の爪部115によりマイクロチューブ200のキャップ202の突起部204が押し上げられる際に、マイクロチューブ200が浮き上がることを防止し、開栓動作がより確実に遂行され得る。
【0027】
なお、本実施形態では、状態2において、閉栓アーム112を、押圧部材116がキャップ202の上面に略接触状態の-80°の位置まで回転させているが、必ずしもその必要はない。閉栓アーム112の回転位置は、例えば、第2凸部114が、マイクロチューブ200の浮き上がりが防止ないし許容できる程度であればよく、例えば、-60°前後であってもよい。また、本実施形態では、状態2から状態3への遷移において、開栓アーム111を時計方向へ135°、閉栓アーム112を時計方向へ130°回転している。これは、マイクロチューブ200のキャップ202をより大きな角度で開栓させて、閉栓後のピペッティング作業をより容易にするためである。なお、
図4の例では、状態2よりも状態3の方が、開栓アーム111と閉栓アーム112との間の角度が小さい。これにより、開栓状態時および閉栓動作時において、開栓アーム111と閉栓アーム112とがより狭い角度でキャップ202を挟むことができ、より安定した開栓状態の維持および閉栓動作を行える。しかしながら、開栓アーム111と閉栓アーム112の回転制御はこれに限られない。例えば、状態3において開栓アーム111を-35°の回転位置で停止するようにしてもよいし、閉栓アーム112を55°の回転位置で停止するようにしてもよい。また、状態2において、開栓アーム111の回転位置を90°とし、開栓アーム111と閉栓アーム112の間の角度を10°で維持しながら、状態3へ遷移させてもよい。さらに、上記では、開栓アーム111と閉栓アーム112を等速で回転させ、両アーム間の角度を一定に維持して開栓動作(状態2から状態3への遷移)を行ったがこれに限られるものではない。開栓アーム111と閉栓アーム112の間にキャップ202を存在させ、開栓アーム111と閉栓アーム112の間の角度を所定の範囲(例えば、10°~35°)に維持しながら状態2から状態3への遷移が行われればよい。したがって、
図4の状態2から状態3への遷移において、開栓アーム111と閉栓アーム112との回転速度をともに60°/sとしたが、両アームの回転速度は等しくなくてもよい。例えば、開栓アーム111を60°/sで回転させ、閉栓アーム112を58°/sで回転させれば、両アームがほぼ同時に状態3の回転位置に到達することになる。
【0028】
次に閉栓動作を説明する。例えば、制御部121は、外部装置からの閉栓指示信号に応じて、閉栓動作を開始する。開栓アーム111が-40°から100°まで回転し、閉栓アーム112が、50°から-82°まで回転して、状態3から状態4へ遷移することにより、マイクロチューブ200のキャップ202が閉栓される。状態3から状態4への遷移において、開栓アーム111は、-40°~42°の間を60°/sのスピードで、42°~100°の間を20°/sのスピードで回転する。また、閉栓アーム112は、50°~-32°の間を60°/sのスピードで、-32°~-82°の間を20°/sのスピードで回転する。このように、閉栓アーム112によりキャップ202を閉じる動作において、閉栓の直前から回転速度を遅くすることにより閉栓アーム112の目標角度に対する追従遅れを低減し、キャップ202をより確実に閉めることを可能としている。また、状態2よりも閉栓アーム112を負の方向(反時計方向)へ余分に(本例では2°)回転することにより、キャップ202を容器本体201へ確実に押し込み、閉栓を実現している。なお、閉栓時(状態3から状態4への遷移)においても開栓アーム111と閉栓アーム112の特定の回転位置関係を維持するようにしたが、これに限られるものではない。閉栓時において、開栓アーム111は、閉栓アーム112による閉栓動作を妨害しないように動作すればよい。例えば、開栓アームは60°/sのまま100°の位置まで回転するようにしてもよい。
【0029】
その後、閉栓アーム112のみが-82°から50°の位置まで時計方向に回転して状態5へ遷移し、開栓アーム111と閉栓アーム112は待機状態に戻る(
図3(a))。この状態で、マイクロチューブ200を挿入孔105から取り出すことが可能になる。また、マイクロチューブ200を取り出した後は、新たなマイクロチューブ200を挿入孔105へ挿入することが可能となる(状態1)。
【0030】
なお、開閉機構108において、開栓アーム111と閉栓アーム112の回転軸106と挿入孔105に挿入されたマイクロチューブ200のヒンジ部203の回転軸とは、極力平行であり、近傍であることが望ましい。そこで、後支持部104に
図5(a)に示すような一対のガイド部601を設けてもよい。すなわち、後支持部104の両側に一対のガイド部601を設け、後支持部104の支持面に向かって一対のガイド部601の間隔が狭くなるようにガイド部601が対向する面にテーパーが付けられている。このような構成により、開栓アーム111と閉栓アーム112の回転軸106とヒンジ部203の回転軸とが平行になるように、挿入孔105に挿入されるマイクロチューブ200の向きを安定させることができる。
【0031】
また、押圧部材116は、
図5(b-1)に示されるように、第1凸部113と第2凸部114を有する構成としたが、これに限られるものではなく、回転軸から遠い側に最も大きい厚みを有する構造であればよい。例えば、
図5(b-2)の押圧部材116aに示されるように、第2凸部114と同じ厚みを有する部分603と、第1凸部113と同じ高さの凸部602を有する構成であってもよい。この場合、第1凸部113と第2凸部114との高さの差H1と、凸部602の部分603に対する高さH2が等しくなる。なお、第1凸部113および凸部602を略球面形状とすることで、キャップ上面の高さに多少変化があっても、閉栓時に閉栓力をキャップの中央ないし少し前方の位置に確実に集中させることができる。第1凸部113が平らな面で構成された場合、キャップ上面の高さが変化すると、押圧位置が前後にずれてしまう。
【0032】
また、上述のように第2凸部114には、開栓時におけるマイクロチューブ200の浮き上がりを防止する役割がある。
図5(b-1)に示されるように、第2凸部114を押圧部材116の後端部(回転軸側)に配置することで、閉栓アーム112の角度が変化しても、第2凸部114は常に回転中心近傍に存在することになり、広い範囲でマイクロチューブ200の浮き上がりを防止する効果を発揮できる。したがって、閉栓時の押圧部材116の角度精度の制約を緩和でき、いろいろな形状のキャップに対応できるという効果が得られる。
図5(b-2)の場合、H2を0に近づけるほど(部分603を凸部602の高さに近づけるほど)浮き上がり防止の効果を発揮することができるが、押圧部材116aの押圧面側が平らになると、上述の通り、閉栓力に支障が生じる。一方、第1凸部113と第2凸部114が、ほぼ同じ高さ、すなわちH1≒0であっても、
図5(b-1)の押圧部材116のようにそれらの間に凹部があれば、上述の効果は発揮できる。ただし、閉栓アーム112が開いたとき、ヒンジ部203と第2凸部114が干渉しないようにする必要がある。第1凸部113と第2凸部114との差H1をある程度確保することにより、ヒンジ部203と第2凸部114との間の干渉をより確実に避けることが可能となる。
【0033】
以上、開栓/閉栓時の開栓アーム111と閉栓アーム112の位置(角度)関係についてまめると、以下のようになる。
(1)開栓アーム111と閉栓アーム112の間には、キャップ202が存在する。このため、閉栓アーム112が開栓アーム111よりも閉栓側には位置することはなく、開栓アーム111と閉栓アーム112の相対角度は所定量以上が確保される。仮に、閉栓アーム112が開栓アーム111よりも閉栓側に位置するとキャップ202が壊れたり、過負荷となってDCサーボモータが停止したりする。
(2)キャップ202の開栓は、基本的に開栓アーム111が行うが、第2凸部114がマイクロチューブ200の浮き上がりを防止できるように、開栓アーム111と閉栓アーム112の角度関係が維持される。このとき、必ずしも、第1凸部113がキャップ上面に接触している必要はない。したがって、キャップ開閉装置100は様々なマイクロチューブ200に対応できる。
(3)キャップ202の閉栓は、基本的に閉栓アーム112が行う。この時、開栓アーム111は、閉栓アーム112による閉栓動作を邪魔しない位置にあればよい。また、閉栓アーム112によりキャップ202を容器本体201へ押圧する時は、閉栓アーム112の回転速度を遅くしたほうがよい。
【0034】
図6Aは、キャップ開閉装置100の挿入孔105へマイクロチューブ200を自動移載する際に用いられ得る、複数のマイクロチューブを収容可能なマイクロチューブラック300を示す図である。
図6A(a)に示されるように、マイクロチューブラック300は複数のマイクロチューブを収容する。マイクロチューブラック300に収容されている複数のマイクロチューブ200は、例えば、一つずつロボットハンドで把持されキャップ開閉装置100へ移載される。
【0035】
図6A(b)を参照すると、マイクロチューブラック300には、一つのマイクロチューブ200を配置するための挿入部が複数設けられている。各々の挿入部は、挿入孔303と、一対のガイド部301と、一対のガイド部301の間に設けられた支持部302を有する。支持部302の面の一部は、挿入孔303の内面と連続している。一対のガイド部301の間にマイクロチューブ200のヒンジ部203が入るようにマイクロチューブ200が挿入孔303に挿入されると、支持部302によりヒンジ部203(またはヒンジ部203側のリム部205)が支持される。挿入孔303に向かって一対のガイド部301の間隔が狭くなるようにそれぞれのガイド部301にテーパーが付けられており、ガイド部301のテーパー面が支持部302と接続される。この構成により、ロボットないし作業者がマイクロチューブ200を挿入孔303に配置する場合に、マイクロチューブ200の姿勢ずれが許容され、修正される。また、支持部302でマイクロチューブのヒンジ部203(又はその近傍のリム部)を支持することにより、挿入孔303に配置されたマイクロチューブの長さに関わらず、蓋の高さを概ね一定にすることができる。そのため、ロボットないし作業者がマイクロチューブラック300からキャップ開閉装置100へマイクロチューブ200を移載する際に、マイクロチューブの把持が容易になる。なお、
図6(B)に示されるように、挿入部は、キャップ202の突起部204を支持する前支持部304(上述した前支持部103と同様の機能を有する)を有してもよい。
【0036】
さらに、
図6Bに示されるように、複数のマイクロチューブ200に対応する複数の挿入部が1行に並ぶ複数のラック310をラックケース320に収納し、行列状に配置された挿入部を有するマイクロチューブラック330を構成するようしてもよい。例えば、ラック310の収納状態が異なるラックケース320を用意することで、様々な行列配置の挿入部を有するマイクチューブラックを構成することができる。例えば、
図6(B)のように、1行4列のラック310を縦に3ラック並べて配置するラックケース320を用いることで、マイクロチューブの挿入部が3行4列に配置されたマイクロチューブラック330が得られる。このようなマイクロチューブラックはロボットによる作業に適している。また、ラック310を横に3ラックを並べて配置するラックケース(不図示)を用いることで、挿入部が1行12列に並ぶマイクロチューブラックが得られる。このようなマイクロチューブラックは、作業者が手作業でマイクロチューブの開閉作業を行う場合に適している。このように、ラック310とラックケース320によりマイクロチューブラックを構成することで、例えば、ロボットや作業者の作業に適した配列で挿入部が並ぶマイクロチューブラックが得られ、ロボットと作業者の共存作業が可能となる。
【0037】
以上のようなマイクロチューブラック300によれば、複数のマイクロチューブ200の方向および姿勢を揃えて収容することが容易である。また、マイクロチューブラック300からキャップ開閉装置100の開閉機構108(挿入孔105)にマイクロチューブ200を正しい方向で移載するための移載機をより容易に実現できる。
【0038】
<第2実施形態>
第1実施形態では、開栓アーム111と閉栓アーム112により、マイクロチューブ200が浮き上がるのを防止しつつ、より確実にマイクロチューブ200を開栓する構成を説明した。しかしながら、第1実施形態では、開栓動作において、キャップ202と容器本体201が離されるときに、容器本体201に比較的大きな振動が加わる可能性がある。容器本体201に加えられた振動により、容器本体201内の検体や試薬が飛散したり、混じりあったりすることが考えられる。第2実施形態では、開栓アーム111と閉栓アーム112により、キャップ202を撓ませて開栓する。これによりキャップ202と容器本体201とを押さえ付けた状態でキャップ202の一部を容器本体201から分離させ、開栓時のマイクロチューブ200における振動の発生を抑える。
【0039】
第2実施形態によるキャップ開閉装置100の構成は第1実施形態(
図1~
図2)と同様である。
図8は、第2実施形態の制御部121による、キャップ開閉動作における開栓アーム111と閉栓アーム112の回転制御を説明する図である。状態2における開栓アーム111と閉栓アーム112との位置関係が、第1実施形態の回転制御(
図4)と異なっている。
図8の状態2において、開栓アーム111の回転位置は例えば85°であり、閉栓アーム112の回転位置は例えば-80°となっており、開栓アーム111と閉栓アーム112との間の角度は5°である。状態2において、閉栓アーム112の第1凸部113によりキャップ202の略中央部が上から押さえられ、且つ、開栓アーム111の爪部115によりキャップ202の突起部204が下から持ち上げられた状態となり、キャップ202に撓みが生じる。このように、キャップ202を撓ませることにより、容器本体201とキャップ202の一部(爪部115と係合する突起部204側の部分)に分離が生じる。その後、開栓アーム111と閉栓アーム112とを時計方向に回転させて状態3へと遷移させることにより、容器本体201とキャップ202との分離が徐々に進行し、マイクロチューブ200の開栓が完了する。このような開栓動作により、マイクロチューブ200に加わる開栓時の振動等が低減される。
【0040】
なお、
図8の状態2において、開栓アーム111の回転位置を85°、閉栓アーム112の回転位置を-80°としているが、これに限定されるものではなく、上述の様に、キャップ202に反りが生じる状態が得られればよい。また、状態2に至る開栓アーム111と閉栓アーム112の動作順序は特に限定されない。例えば、開栓アーム111が先に85°の回転位置に到達し、その後、閉栓アーム112が-80°の回転位置に到達してもよいし、閉栓アーム112が先に-80°の回転位置に到達し、その後、開栓アーム111が85°の回転位置に到達してもよい。或いは、開栓アーム111と閉栓アーム112とが同時に状態2の回転位置に到達するようにしてもよい。
【0041】
状態2から状態3への遷移は、第1実施形態と同様に行われ、マイクロチューブ200の開栓を完了する。すなわち、開栓アーム111と閉栓アーム112との成す角度が所定の角度範囲(例えば、10°~35°)に収まるように、特定の回転位置関係に維持しながら、開栓アーム111と閉栓アーム112を時計方向に回転する。状態3、状態4、状態5は、第1実施形態と同様である。
【0042】
以上のように、第2実施形態によれば、マイクロチューブ200の開栓時にマイクロチューブ200に生じ得る振動を低減することができる。
【0043】
<第3実施形態>
第2実施形態では、
図8の状態2においてキャップ202が撓むことによりキャップ202の一部が容器本体201から分離するように開栓アーム111と閉栓アーム112の回転位置関係を設定することで開栓時のマイクロチューブ200への振動を低減した。第3実施形態では、開栓の開始時にマイクロチューブ200の側面を押さえる機構を設けることにより、マイクロチューブ200に生じ得る振動を低減する。
【0044】
第3実施形態によるキャップ開閉装置100の構成は、開閉機構108を除いて第1実施形態(
図1、
図2)の構成とほぼ同様である。
図9は第3実施形態による開閉機構108の構造を説明する図である。
図9(a)に示されるように、閉栓アーム112は、付勢部材901を有する。付勢部材901は、
図9(b)(c)に示されるように、第1部分902と、第1部分902よりも薄い第2部分904と、第1部分902と第2部分904とを接続するように厚みが変化する傾斜部分903とを有する。
図9(c)に示されるように、ピン910は、一方の端部が挿入孔105に挿入されているマイクロチューブ200の壁面に当接し、その反対側の他方の端部(フランジ側)が閉栓アーム112の付勢部材901に当接するように設けられている。ピン910は、付勢部材901と当接する位置に応じて矢印920の方向にスライド可能であるように設けられている。
図9(a)に示されるように、付勢部材901を有する閉栓アーム112が装着されることにより、閉栓アーム112の回転動作に応じて、第1部分902、傾斜部分903、第2部分904の面が順次にピン910と当接する。付勢部材901によるピン910のスライドのストロークは、第1部分902と第2部分904との厚みの差dとなる。ピン910と第1部分902とが当接している間、ピン910には挿入孔105の内部へ突出するように移動する力が加わり、挿入孔105に挿入されているマイクロチューブ200の側面を押す。この状態(押圧状態)で、マイクロチューブ200はピン910と挿入孔105の壁面との間で押圧され、固定される。こうして、マイクロチューブ200が固定された状態で開栓動作が行われることにより、開栓時におけるマイクロチューブ200の振動が低減される。
図12は、ピン910の形状を説明する図である。ピン910は、矢印920の方向へ延びるように設けられたピン穴に挿入されており、挿入方向がフランジ911により規制され、抜け方向が閉栓アーム112の付勢部材901により規制されるため、ピン穴から抜けることはない。また、ピン910の先端部913は、円形の平面912を有する円錐形状をなしている。円形の平面912を有する円錐形状とすることで、マイクロチューブ200に対する押圧部の面圧を上げ、かつ、局所的な変形をもたらし、マイクロチューブ200に機能上問題となる損傷を与えない状態で、確実に保持することが可能となる。円形の直径は0.2~1mm程度(好ましくは0.4mm程度)あればよい。また、ピンの押圧量は、マイクロチューブ表面から0.2~1mm程度(好ましくは0.4mm程度)あればよい。
【0045】
図10は閉栓アーム112が開栓方向へ移動した後の状態を説明する図である。このとき、付勢部材901の薄い部分である第2部分904の面とピン910のフランジ911とが当接した状態、または第2部分904の面とフランジ911との間に隙間を有する状態となる。このような状態で、ピン910は挿入孔105へのマイクロチューブ200の挿抜に影響を及ぼさない位置(非押圧状態)に移動できる。例えば、ピン910は、挿入孔105の壁面位置またはそれよりも奥に引っ込むことが可能である。従って、仮にピン910の先端が挿入孔105の壁面より突出した状態にあっても、マイクロチューブ200の挿入によりピン910は挿抜に影響しない位置まで矢印921の方向へ押されることになる。
図11は、閉栓アーム112が閉栓方向へ移動した後の状態を表しており、付勢部材901の第1部分902とピン910とが当接している。
図10に示される状態から、
図11に示される状態へ閉栓アーム112が回転する間、ピン910が付勢部材901に当接する面は、第2部分904から傾斜部分903を経て第1部分902へと変化する。傾斜部分903が介在することにより、ピン910は矢印922の方向へ徐々に付勢され、非押圧状態から押圧状態へと遷移する。第1部分902にピン910が当接した状態では、ピン910は挿入孔105の壁面から突出し、マイクロチューブ200の側面を押圧する。この状態で、上述のように、挿入孔105に挿入されているマイクロチューブ200の側面がピン910と挿入孔105の壁面により押さえられ、マイクロチューブ200は挿入孔105に固定された状態となる。
【0046】
なお、
図10の状態から
図11の状態へ閉栓アーム112を回転させる途中、傾斜部分903においてピン910を押す力が必要になるが、斜面を通過すると平らな第1部分902になるため、ピン910を必要以上に押す力は生じない。また、閉栓時には閉栓アーム112の回転に必要な力はキャップ202を閉栓する力に加えてピン910を矢印922の方向へ押すための力が生じるが、ピン910を押す力は閉栓アーム112の回転方向に対して略直交しているので、支障にはならない。なお、ピン910(フランジ911)と付勢部材901とが当接する面部分は、大きな摩擦力を生じないよう硬質アルマイト処理やタフラム処理などの表面処理またはテフロン(登録商標)などの低摩擦材料などを用いることが望ましい。
【0047】
第1実施形態(
図4)で説明したように、
図11に示される閉栓アーム112の位置は、開栓開始時の状態(状態2)となる。従って、この状態から開栓動作が開始されると、マイクロチューブ200はピン910により機械的に固定された状態で開栓動作が行われることになり、開栓時の検体や試薬の飛散、混合を低減することができる。なお、第2実施形態(
図8)で説明した回転制御により開栓が行われる場合にも第3実施形態の機構を適用できることは言うまでもない。
【0048】
以上のように、第3実施形態によれば、マイクロチューブ200におけるキャップ202の開栓時に、マイクロチューブ200に生じ得る振動を低減することができる。
【0049】
なお、上記各実施形態において、挿入孔105に挿入されたマイクロチューブ200の周囲を冷却または温度調節する温度調整機構が設けられてもよい。例えば、
図2(d)において、挿入孔105の周囲のハッチング部分に空間を設けて、冷却機構やヒーターなどを装着可能としてもよい。
【0050】
また、上記各実施形態において、前支持部103、後支持部104、挿入孔105からなるマイクロチューブの配置部を回転軸106の方向に複数並べて設けた構成としてもよい。この場合、例えば、第1、第2実施形態では、開栓アーム111が複数の配置部に対応する位置に複数の爪部115を有し、閉栓アーム112が複数の配置部に対応する位置に複数の第1凸部113と第2凸部114を有する構成とする。或いは、開栓アーム111が複数の配置部が並ぶ範囲にわたって延びる爪部115を有し、閉栓アーム112が複数の配置部が並ぶ範囲にわたって延びる第1凸部113と第2凸部114を有する構成としてもよい。このような構成により、開栓アーム111と閉栓アーム112の1度の回転動作により、複数の配置部に配置された複数のマイクロチューブ200の開栓または閉栓を行うことが可能となる。また、第3実施形態では、付勢部901とピン910によりそれぞれの配置部に配置されたマイクロチューブ200の側部を押圧する構成が加わる。この場合、閉栓アーム112の回転軸106を提供するシャフトを軸方向に延長し、複数の配置部に対応して複数の付勢部901が設けられることになる。したがって、閉栓アーム112の回転軸106の位置は、配置部に配置されたマイクロチューブと干渉しない位置とする必要がある。
【0051】
発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0052】
100:キャップ開閉装置、101,102:外カバー、103:前支持部、104:後支持部、105:挿入孔、106:回転軸、111:開栓アーム、112:閉栓アーム、113:第1凸部、114:第2凸部、115:爪部、116:押圧部材