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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023172865
(43)【公開日】2023-12-06
(54)【発明の名称】昇降装置
(51)【国際特許分類】
   B66F 7/02 20060101AFI20231129BHJP
   B66F 9/06 20060101ALI20231129BHJP
   B66F 7/28 20060101ALI20231129BHJP
   B41F 9/18 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
B66F7/02 A
B66F9/06 S
B66F7/28 G
B41F9/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023005555
(22)【出願日】2023-01-18
(31)【優先権主張番号】P 2022084828
(32)【優先日】2022-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000237260
【氏名又は名称】富士機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100140338
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 直樹
(72)【発明者】
【氏名】大宮 利信
【テーマコード(参考)】
3F333
【Fターム(参考)】
3F333AA03
3F333AB15
3F333AE01
3F333AE02
(57)【要約】
【課題】作業員が一人で容易に転写ローラを取り扱うことができる補助装置を提供する。
【解決手段】昇降装置10は、基部11と、上下フレーム21と、ガイドレール31と、ガイドレール31に案内されて昇降する昇降部材41と、昇降部材41よりも後方に配置されて昇降部材41を昇降させる駆動機構51と、昇降部材41よりも上方かつ上下フレーム21の上端領域のうち前側に設けられて、駆動機構51を操作する操作部61とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
床置きされる基部と、
前記基部に立設される上下フレームと、
前記上下フレームに沿って設けられるガイド部と、
前記ガイド部に案内される被ガイド部、前記被ガイド部に設けられて前記上下フレームから前方へ突出するアーム部を有し、前記アーム部の前端部分で転写ローラの外周面を下方から支持する昇降部材と、
前記前端部分よりも後方に配置されて、前記被ガイド部を昇降させる駆動機構と、
前記昇降部材よりも上方かつ前記上下フレームの上端領域のうち前側に設けられて、前記駆動機構を操作する操作部とを備える、昇降装置。
【請求項2】
前記昇降部材は、床に沿う床位置と、前記床より所定寸法高い引渡位置との間で、昇降する、請求項1に記載の昇降装置。
【請求項3】
前記駆動機構は、前記被ガイド部に上向きまたは下向きの力を付与するピストンロッドと、前記ピストンロッドの一端に設けられるピストンを摺動可能に収容するシリンダと、前記シリンダ内のシリンダ室に高圧気体を供給する駆動エア回路と、前記駆動エア回路および前記複数の押しボタンを接続して前記押しボタンに入力される操作どおりに前記駆動エア回路を動作させる信号エア回路と、外部の圧気源に接続されて前記駆動エア回路および前記信号エア回路に高圧気体を供給する高圧気体供給口とを有する、請求項1に記載の昇降装置。
【請求項4】
前記駆動機構は、前記シリンダに設けられて前記信号エア回路と接続し、前記信号エア回路から信号エアが供給されない状態で前記ピストンロッドを制動するブレーキ手段を有する、請求項3に記載の昇降装置。
【請求項5】
前記駆動機構は、前記上下フレームに上下方向に調整可能に取付固定されて、前記昇降部材が前記引渡位置まで上昇したことを検知し、当該上昇を停止させるリミット手段を有する、請求項1に記載の昇降装置。
【請求項6】
前記駆動機構は、前記被ガイド部の昇降区間のうちの下側区間で該被ガイド部を昇降させる第1のシリンダおよびピストンと、前記被ガイド部の昇降区間のうちの上側区間で該被ガイド部を昇降させる第2のシリンダおよびピストンを含む、請求項1に記載の昇降装置。
【請求項7】
前記昇降部材は、縦置きないし斜め姿勢の転写ローラの外周面に当接する摩擦材と、前記摩擦材を支点に横置き姿勢にされる前記転写ローラの外周面を下方から支持する回転部材とを含む、請求項1に記載の昇降装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、版胴等の転写ローラを取り扱う装置に関する。
【背景技術】
【0002】
版胴等の転写ローラは、保管場所のスペース的な制約や、運搬の便宜のため、フォークリフト対応のパレット上に多数本縦置きにされて保管される。かかる転写ローラを印刷機に装着するには、パレット上から所望の転写ローラを取り出し縦置きから横置きに90°倒す姿勢変更作業と、横置き姿勢の転写ローラを台車に載せる作業と、当該台車を走行させて転写ローラを印刷機の傍まで運搬する運搬作業と、印刷機に付属の交換装置に転写ローラを供給する作業と、交換装置を操作して印刷機に転写ローラを装着する作業を順次実行しなければならない。
【0003】
転写ローラの姿勢を変更する装置として従来、特開2007-045031号公報(特許文献1)に記載のものが知られている。転写ローラを運搬する台車として従来、特開2006-175702号公報(特許文献2)に記載のものが知られている。交換装置として従来、特許第6757020号公報(特許文献3)に記載のものが知られている。
【0004】
特許文献1記載の姿勢変更装置は、細長い平板状の台座と、台座の一端部に設けられて版胴の円筒面を直接支持する胴面支持体と、台座の他端部に設けられるハンドルとを備える。ハンドルを回すことによって、平板状の台座は傾斜角度を変化させながら水平姿勢ないし鉛直姿勢にされる。そして台座が水平姿勢にされる間、版胴は台座上に横置きされる。また台座が鉛直姿勢にされる間、版胴は縦置き姿勢で台座に立て掛けられる。かかる縦置き/横置き姿勢の変更は、作業員が版胴から遠い他端側のハンドルを回すことによって実行される。
【0005】
特許文献2記載の台車は、台車の後部に配置されるラック、ピニオン、およびハンドルと、ラックの上端に設けられる水平な版胴台とを備え、版胴台は2本の平行な版胴を横置き姿勢で支持する。作業員は台車の後部背面に配置されるハンドルを回すことで、版胴を横置き姿勢のまま昇降させることができる。
【0006】
特許文献3記載の交換装置は、根元および先端を有し根元と交差する鉛直軸線を中心として回動するアームと、アーム先端に連結される回転テーブルと備える。回転テーブル上には2本の転写ローラを横置き姿勢で載置することができる。そして交換装置は、アームの回動および回転テーブルの回転によって、台車から受け取った転写ローラを印刷機の中へ運び入れる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007-045031号公報
【特許文献2】特開2006-175702号公報
【特許文献3】特許第6757020号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記従来のような姿勢変更装置および台車にあっては、作業効率の点で改善の余地がある。つまり転写ローラを両手で持って特許文献1記載の姿勢変更装置に受け渡す作業員からみて、備え付けのハンドルが作業員の手の届かない遠い位置にある。また転写ローラを両手で持って特許文献2記載の台車に受け渡す作業員からみて、備え付けのハンドルが作業員の手の届かない遠い位置にある。このように転写ローラを受け渡す作業位置と、ハンドル操作するための作業位置が離れていると、作業上不便である。結局、特許文献に記載される姿勢変更装置および台車では一人作業が非効率であり、転写ローラを取り扱う作業を効率良く補助することができない。かといって、もう一人の作業員を連れてきてハンドル操作させると、全体の作業効率が低下する。
【0009】
本発明は、上述の実情に鑑み、作業員が一人で容易に転写ローラを取り扱うことかできる補助装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的のため本発明による昇降装置は、床置きされる基部と、基部に立設される上下フレームと、上下フレームに沿って設けられるガイド部と、ガイド部に案内される被ガイド部、被ガイド部に設けられて上下フレームから前方へ突出するアーム部を有し、アーム部の前端部分で転写ローラの外周面を下方から支持する昇降部材と、アーム部の前端部分よりも後方に配置されて被ガイド部を昇降させる駆動機構と、昇降部材よりも上方かつ上下フレームの上端領域のうち前側に設けられて、駆動機構を操作する操作部とを備える。
【0011】
かかる本発明によれば、昇降部材の高さ位置を調整する操作部が、上下フレームの前側に設けられることから、作業員は昇降装置の前側に立つことにより、転写ローラに手を添えて取り扱う作業と、操作部を操作する作業の双方を実行することができる。上下フレームの前側とは、昇降部材の直上と、昇降部材よりも後側の少なくともいずれかを含むと理解されたい。ガイド部は例えば、上下に延びるレールである。ガイド部は上下フレームと一体物であってもよいし、あるいは上下フレームに取り付けられる別部材であってもよい。被ガイド部は例えば、レールに係合しつつレールに沿って走行するランナである。なお操作部は特に限定されない。操作部は例えば、作業員が手で押している間のみ押し下げ位置にされ、作業員が手を離すと原位置に復帰する押しボタンを含んでよい。あるいは操作部は、オン位置とオフ位置のいずれかにされて、作業員の操作によってオン位置からオフ位置へ、あるいは逆へ、自身の位置が変化するオンオフスイッチを含む。
【0012】
ところでグラビア印刷機に装着される転写ローラは、中径の鉄製版胴にあっては30kg~40kg、大径の鉄製版胴に至っては60kg~70kgの重量物である。作業員はこれらの転写ローラを縦置きから横置き姿勢にして台車に積み込み、台車で印刷機まで運搬し、印刷機に装着する取り付け作業と、これとは逆の取り外し作業に従事することになる。
【0013】
一方で、約40kg以上の版胴の縦置き/横置き姿勢を変えつつ当該版胴をパレットおよび台車間で載せ替える作業は、腰や腕や手指に負担が掛かるため、多大な筋力と熟練を要し、作業員を確保することが困難である。このため非力な者や初心者でも一人作業で容易に取り扱えるよう、労務環境の改善が求められている。また版胴は多数本であることから、作業のスピードアップが求められている。
【0014】
そこで本発明の好ましい局面として昇降部材は、床に沿う床位置と、床より所定寸法高い引渡位置との間で、昇降する。かかる局面によれば、昇降部材が床に沿う床位置まで下がることから、作業員は従来よりも少ない筋力で、パレット上に縦置きされた転写ローラを横置き姿勢に倒して昇降部材に載せたり、あるいは逆の作業を実行したりすることができる。したがって非力な者や初心者でも重量物の転写ローラを取り扱うことができ、労務環境が改善され、作業員の確保を図ることができる。床に沿う床位置は、転写ローラを支持する高さ位置が床から20[cm]以下の高さであり、好ましくは所定寸法規格のパレット高さと略同じである、と理解されたい。また床より所定寸法高い引渡位置は、台車が転写ローラを支持する高さ位置よりも若干高い位置である、と理解されたい。これにより転写ローラは引渡位置よりも低い位置に待機する台車に引き渡される。つまり転写ローラは昇降部材から台車に載せ替えられる。
【0015】
昇降部材を昇降させる駆動機構は特に限定されないが、本発明の一局面として駆動機構は、被ガイド部に上向きまたは下向きの力を付与するピストンロッドと、ピストンロッドの一端に設けられるピストンを摺動可能に収容するシリンダと、前記シリンダ内のシリンダ室に高圧気体を供給する駆動エア回路と、駆動エア回路および操作部を接続して操作部に入力される操作どおりに駆動エア回路を動作させる信号エア回路と、外部の高圧気体源に接続されて駆動エア回路および信号エア回路に高圧気体を供給する高圧気体供給口とを有する。かかる局面によれば駆動機構がエア圧等の高圧気体のみに駆動され、昇降装置は電気を全く使用する必要がなくなる。したがって、火気によって引火する有機溶剤を含む雰囲気において、昇降装置を防爆仕様にすることができる。かかる局面は、引火性のインキを取り扱う印刷機の補助装置として有用である。
【0016】
本発明の好ましい局面として駆動機構は、シリンダに設けられて信号エア回路と接続し、信号エア回路から信号エアが供給されない状態でピストンロッドを制動するブレーキ手段を有する。かかる局面によれば、万一、高圧気体の供給が止まっても、重量のある転写ローラを支持する昇降部材が不用意に下降することを防止できる。したがって安全性が向上する。ブレーキ手段は例えば、エアによってオン・オフにされるブレーキ機構である。
【0017】
さらに好ましい局面として本発明は、上下フレームに上下方向に調整可能に取付固定されて、昇降部材が引渡位置まで上昇したことを検知し、当該上昇を停止させるリミット手段を備える。かかる局面によれば、自動で上昇が停止することから、作業員が操作部を操作する手間が省かれ、作業性が向上する。またリミット手段の取付位置を調整することによって、引渡位置の高さを調整することができる。リミット手段は例えば、信号エア回路あるいは駆動エア回路に設けられる開閉弁と、かかる開閉弁に連係するリミットスイッチを有し、リミットスイッチが昇降部材と当接することによって開閉弁がオン・オフにされるリミット機構である。
【0018】
1つの局面として駆動機構は、全昇降区間で被ガイド部を昇降させる長尺なシリンダおよびピストンを含む。他の局面として駆動機構は、昇降区間のうちの下側区間で被ガイド部を昇降させる第1のシリンダおよびピストンと、昇降区間のうちの上側区間で被ガイド部を昇降させる第2のシリンダおよびピストンを含む。かかる局面によれば、第1のシリンダおよびピストンと、第2のシリンダおよびピストンの使い分けによって、昇降部材の高さ範囲を制御することができる。
【0019】
1つの局面として昇降部材は、縦置きないし斜め姿勢の転写ローラの外周面に当接する摩擦材と、前記摩擦材を支点に横置き姿勢にされる前記転写ローラの外周面を下方から支持する回転部材とを含む。かかる局面によれば、作業員は転写ローラの重量の1/4程度の腕力で、転写ローラの姿勢を変更することができる。したがって非力な者や初心者でも、縦置き姿勢でパレットに立てられた転写ローラを横置き姿勢に変更して昇降装置に積み込み、あるいはその逆の作業をすることができる。
【発明の効果】
【0020】
このように本発明によれば、作業員が転写ローラを受け渡しする作業位置と、作業員が操作部を操作する作業位置を同じにすることができる。したがって転写ローラを取り扱う作業の効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態を示す斜視図である。
図2】同実施形態を示す側面図であって、昇降部材が床位置にされる状態を表す。
図3】同実施形態を示す正面図であって、昇降部材が床位置にされる状態を表す。
図4】同実施形態を示す側面図であって、昇降部材が引渡位置にされる状態を表す。
図5】同実施形態を示す正面図であって、昇降部材が引渡位置にされる状態を表す。
図6】同実施形態を示す側面図であって、昇降部材が受取位置にされる状態を表す。
図7】同実施形態を示す正面図であって、昇降部材が受取位置にされる状態を表す。
図8】本発明の他の実施形態を示す正面図であって、昇降部材が床位置にされる状態を表す。
図9】本発明の他の実施形態を示す正面図であって、昇降部材が受取位置にされる状態を表す。
図10】本発明の他の実施形態を示す正面図であって、昇降部材が引渡位置にされる状態を表す。
図11】本発明のさらに他の実施形態を示す斜視図である。
図12】本発明の別な実施形態を示す斜視図である。
図13】別な実施形態の昇降部材を示す側面図である。
図14】別な実施形態の昇降部材を示す正面図である。
図15】別な実施形態の昇降部材に版胴を載せる手順を示す正面図である。
図16】別な実施形態の昇降部材に版胴を載せる手順を示す正面図である。
図17】別な実施形態の昇降部材に版胴を載せる手順を示す正面図である。
図18】別な実施形態の昇降部材に版胴を載せる手順を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づき詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態になる昇降装置を示す斜視図である。図2および図4は同実施形態を示す側面図であり、図1に示すように昇降装置の前側に位置する作業員からみて昇降装置の右側からみた状態を表す。図3および図5は同実施形態を示す正面図であり、昇降装置の前側からみた状態を表す。昇降装置10は、基部11と、上下フレーム21と、ガイドレール31と、昇降部材41と、駆動機構51と、操作部61とを備える。
【0023】
昇降装置10の前側には昇降部材41および操作部61が配置される。昇降装置10の後側には、駆動機構51が配置される。以下の説明において、昇降装置10の前後方向と直交する幅方向を、左右方向ともいう。
【0024】
基部11は、前後方向に延びる前後フレーム12と、左右方向に延びる左右フレーム13を含み、床Fに沿って配置される。前後フレーム12は左右にそれぞれ配置されて対をなす。左右フレーム13の左右端は1対の前後フレーム12とそれぞれ結合する。各前後フレーム12の前端には車輪14が設けられる。各前後フレーム12の後端には、方向自在のキャスタ輪15を含むキャスタ機構が取り付けられる。これら4個の車輪によって昇降装置10は床Fを走行可能であり、パレット200に接近可能とされる。またキャスタ機構に設けられたブレーキ操作子16を操作することにより、昇降装置10は走行を禁止される。
【0025】
基部11の前側には、左右方向に延びるガード部材17が設けられる。ガード部材17は、左側の車輪14を左方から覆う垂直な左壁部と、1対の前後フレーム12、12間に架設されて前方から前後フレーム12,12を覆う垂直は中間壁部と、右側の車輪14を右方から覆う垂直な右壁部が、この順序で連なる部材であり、上方からみてコの字に形成される(図1)。ガード部材17は、前方から基部11の前側部分を覆う。
【0026】
基部11には上下フレーム21が立設される。上下フレーム21は、上下方向に延びる4本の柱部材であり、前後左右にそれぞれ配置される。これらのうち左側2本の上下フレーム21の下端は左側の前後フレーム12と結合する。残る右側2本の上下フレーム21の下端は右側の前後フレームと結合する。前2本の上下フレーム21は、1対のガイドレール31を構成する。各上下フレーム21の上端同士は、水平フレーム22で連結固定される。図3に示すように1対の前後フレーム12の前端同士の間隔は、上下フレーム21,21の左右方向間隔と略等しい。
【0027】
昇降部材41は、被ガイド部42と、アーム部43と、受け部材44を有する。被ガイド部42はガイドレール31に係合する部材であり、ガイドレール31から水平方向に外れないがガイドレール31に沿って上下方向に移動可能である。左右1対の被ガイド部42は、左右1対ガイドレール31にそれぞれ案内されて昇降し、図1図3に実線で示す床位置Hlと、図2に二点鎖線で示す引渡位置Hhの間を連続的に変位する。床位置Hlとは、図1に示すようにパレット200に縦置きされた版胴100を受け取るために、受け部材44が床に沿うまで下降した下限位置をいう。具体的には床位置Hlとは、規格化されたパレット200(図1)の上下方向厚み寸法に対応する高さをいい、10[cm]~25[cm]の範囲に含まれる所定値である。引渡位置Hhとは、版胴100を受け部材44から図4に示す台車300に載せ替えるために、受け部材44が台車300よりも若干高くなるまで上昇した上限位置をいう。
【0028】
左右の被ガイド部42には板材45が架設される。板材45は垂直壁であり、前方から被ガイド部42を覆う。アーム部43は前後方向に延びて左右1対をなす。アーム部43は被ガイド部42に片持ちで支持され、アーム部43の後端は被ガイド部42と結合し、前端は自由端である。1対のアーム部43の前端領域には、左右方向に延びる受け部材44が架設される。図3に示すように1対のアーム部43,43の前端同士の間隔は、前後フレーム12,12の前端同士の間隔よりも小さい。
【0029】
図2の側面図に示すように受け部材44は前後に間隔を空けて2本配置される。これにより受け部材44は、横置き姿勢にされた断面円形の版胴100を下方から安定して支持する。図3に示すように受け部材44の表面44sにはゴム膜が形成され、版胴100の円筒面が傷つかないようこれを保護する。受け部材44の左右方向寸法は、版胴100の軸方向寸法の約半分とされる。このため横置き姿勢にされた版胴100が受け部材44に載せられると、版胴100の両端部が受け部材44から左右へそれぞれ突出する。
【0030】
図1を参照して駆動機構51は、4本の上下フレーム21によって囲まれる空間に配置され、昇降部材41を上昇させたり下降させたりする。本実施形態の駆動機構51は、上下方向に延びるシリンダ52と、シリンダ52上端からさらに延びるピストンロッド53(図4)と、ピストンロッド53先端に設けられる先端部54と、駆動チェーン55を有する。シリンダ52は基部11に立設される。シリンダ52内でピストン(図略)が上下方向に進退動すると、ピストンロッド53が上方へ進動し、あるいは下方へ退動する。
【0031】
図4を参照して先端部54は、カバー54cと、カバー54cに覆われて回転自在に支持されるスプロケット54dを有する。かかるスプロケット54dには駆動チェーン55が巻き掛けされる。駆動チェーン55の一端は、シリンダ52の上端に取付固定されるブラケット59に連結される。駆動チェーン55の他端は被ガイド部42(図1)に連結される。つまり駆動チェーン55の両端はそれぞれ、被ガイド部42の荷重で下方へ引っ張られ、駆動チェーン55の中央部は、先端部54によって被ガイド部42の2倍の荷重で上方へ引っ張られ、釣り合っている。そして先端部54が所定距離だけ上昇すると、被ガイド部42がその2倍の距離だけ上昇する。下降についても同様である。駆動機構51のシリンダ52およびピストンは、被ガイド部42の昇降区間の全領域で被ガイド部42を昇降させる。
【0032】
上下フレーム21の後部にはエア回路56が設けられる。エア回路56は、外部の高圧エア供給源に接続されて高圧気体を供給されるエア供給口56bと、エア供給口56bと接続する複数のエア通路(図略)と、これらのエア通路に設けられる複数の開閉弁(図略)で構成される。またエア回路56は駆動エア回路と信号エア回路で構成される。前者の駆動エア回路は、エア供給口56bからエア通路および開閉弁を経由してシリンダ52へ駆動エアを適宜供給する系統になる。後者の信号エア回路は、駆動エア回路とは別な系統であり、操作部61および各開閉弁と接続して操作部61に入力される動作どおりに各開閉弁をエアで開閉して、駆動エア回路を動作させる。昇降装置10の前方で版胴100を取り扱う作業員400は、昇降装置10の前方から操作部61を操作して、昇降装置10を所望通りの高さ位置へ昇降させることができる。
【0033】
操作部61は、昇降部材41の直上、具体的には上下フレーム21の上端領域に設けられる前壁62の前面、に配設され、前方を指向する。操作部61はオン位置ないしオフ位置に交互に切り替わるスイッチであってもよいが、本実施形態の操作部61は複数の押しボタン63,64,65を有する。各押しボタン63,64,65は、作業員が触れない場合、原位置(図2)へ前向きに進出しているが、作業員によって後ろ向きの力が加えられる間のみ押し下げ位置(図略)に押し下げられる。本実施形態では、押しボタン63が押し下げられると昇降部材41が上昇を開始し、押しボタン64が押し下げられると昇降部材41が下降を開始する。以後、これら押しボタン63,64から作業員が手を離しても、これらの昇降動作は続行する。押しボタン65が押し下げられると、これらの昇降動作が停止し、以後、押しボタン65から作業員が手を離しても、昇降部材41は停止したままである。操作部61の真下には昇降部材41が配置される。なお駆動機構51のピストンロッド53が最も上方へ進動する場合であっても、操作部61は昇降部材41よりも上方に配置される。このため昇降部材41が上昇して操作部61と干渉する虞はない。
【0034】
説明を駆動機構51に戻すと、本実施形態は、上下フレーム21にリミット機構57が取り付けられる。昇降部材41が上昇する際、昇降部材41に設けられる腕状のドック46がリミット機構57内のリミットスイッチ57bに当接してリミットスイッチをオンすることにより、リミット機構57は昇降部材41が所定の高さ位置、具体的には引渡位置Hh、に達したことを検知する。
【0035】
リミット機構57は、上述した信号エア回路と接続しており、引渡位置Hhの検知によって開閉弁が動作し、シリンダ52の正圧室への駆動エアの供給を停止する。このようにリミット機構57は、昇降部材41が所定の高さ位置を越えて上昇することを規制する。押しボタン63が押し下げられても、リミット機構57が優先される。なおリミット機構57は、作業員の好みに応じて高さ位置の取り付け変更が可能である。リミット機構57の高さ位置は、後述する台車300の柱部330の長さに合わせて上下方向に調整されるとよい。
【0036】
図4を参照して本実施形態では、シリンダ52の上端にブレーキ部58が設けられる。ブレーキ部58にはピストンロッド53が通され、所定条件でピストンロッド53の進退動を制動して停止させる。ブレーキ部58は、信号エア回路と接続し、何ら信号エアが入力されない原状態でブレーキオンにされる。
【0037】
具体的には、昇降装置10が何ら作業をしていない場合や、供給口56bに高圧気体が供給されない場合、ブレーキ部58は信号エア回路から信号エアを受けず、ピストンロッド53は自由な進退動が制限される(ブレーキオン)。反対に信号エア回路から信号エアを受ける間はブレーキを解除し、ピストンロッド53は自由な進退動が許容される(ブレーキオフ)。本実施形態によれば、外部からの高圧エアの供給が失陥した場合や、昇降装置10が使用されない停止状態において、昇降部材41の不用意な昇降が防止され、作業員が昇降装置10を使用しない間、昇降部材41はそのままの高さ位置に維持される。
【0038】
次に本実施形態を用いた版胴の受け渡し方法につき説明する。
【0039】
図1に示すように作業員400は、車輪14およびキャスタ輪15を回転させて昇降装置10を移動させ、パレット200の左側(あるいは右側)に横付けする。あるいは昇降装置10を床Fに固定し、パレット200を昇降装置10の左または右側に載置する。昇降部材41は予め床位置Hlまで下げられている。次に作業員400は、昇降装置10の前方に立ち、パレット200上に縦置きにされた版胴100を倒しつつ、受け部材44に載せる。この作業で要する力は版胴の重量の半分未満の力で足りる(40kgの版胴の場合、20kg未満の力)。かかる版胴100の軸方向中央部は、受け部材44の直上に載せられる。そして横置き姿勢にされる版胴100の軸方向両端部は、略均等に、受け部材44から左右方向に突出する。なお図示はしなかったが、床Fに直接縦置きされた版胴も、倒されて床位置Hlの昇降部材41に横置きで載せられることができる。
【0040】
次に作業員400は、操作部61へ手の伸ばし、上昇のための押しボタン63を1回だけ押し下げる。すると昇降部材41は、図4および図5に示す引渡位置Hhまで安全な速度で上昇し、リミット機構57によって引渡位置Hhで自動停止する。なお安全な速度とは、重量物である版胴100が、受け部材44の上で不用意に揺れたり、バランスを失って受け部材44から脱落したりすることがない低速(3~15[cm/sec]、好ましくは6~10[cm/sec])をいう。
【0041】
次に作業員400は、図4および図5に示すように、位置決め部材18に当接するまで台車300を走行させ、昇降部材41の直下に待機させる。台車300は、基部310と、基部310に設けられる車輪320と、基部310に立設される左右1対の柱部330と、各柱部330の上端に設けられる受け部材340を有する。前後左右の車輪320が回転することにより台車300は床F上を走行する。1対の位置決め部材18は、左右の前後フレーム12に取付固定されて左右方向外側へ突出するブラケットである。位置決め部材18は弾性体からなり、台車300の基部310と衝突すると弾性変形して衝撃を吸収する。
【0042】
基部310は、左右方向に延びて柱部330の下端同士を結合する横架材311(図5)を含む。横架材311は、昇降装置10の基部11よりも上方に位置する。このため台車300の基部310は、基部11と干渉することなく、昇降部材41の下方へ入り込むことができる。ガード部材17は、台車300を適切な待機位置に誘導するための目印になる。作業員400は、台車300の基部310の左右端をガード部材17に合わせ、横架材311がガード部材17を跨ぐように、台車300を走行させ、台車300を前側の上下フレーム21,21に接近させるとよい。
【0043】
図5に示すように版胴100は受取位置Hhに保持されている。受取位置Hhは台車300の受け部材340よりも若干高い位置である。台車300は、1対の柱部330間に空間を構成する。かかる空間において昇降部材41は、昇降可能であり、1対の受け部材340と干渉しない。昇降部材41が図5に示す引渡位置Hhから下降すると、1対の受け部材340が版胴100の両端部をそれぞれ支持し、版胴100は昇降部材41から台車300に載せ替えられる(図6および図7)。
【0044】
次に作業員400は、横置き姿勢の版胴100を支持する台車300に対し、当該台車300を走行させて、図示しないグラビア印刷機まで版胴100を搬送する。そして版胴100は特許文献3に記載される交換装置によってグラビア印刷機に装着される。
【0045】
交換装置によってグラビア印刷機から取り出された版胴100をパレット200へ返却する作業も、上述した説明と逆の手順によって実行される。図6に示す側面図および図7に示す正面図は、版胴100が横置き姿勢で台車300に載せられて、昇降装置10に搬入される状態を表す。台車300が昇降装置10の基部11上に留置されることに先立ち、昇降部材41は予め受取位置Hjにされる。受取位置Hjは台車300の受け部材340よりも若干低い位置であり、作業員400が操作部61を操作することによって実行される。
【0046】
次に作業員は、昇降装置10の前側に立ち、上昇のための押しボタン63を押し下げる。そうすると昇降部材41は上昇を開始し、受け部材44が下方から版胴100の外周面を掬い上げるようにして、版胴100を受け取る。そしてリミット機構57が作動し、昇降部材41は上昇を停止する。次に作業員は台車300を昇降装置10から退避させる。
【0047】
次に作業員は、押しボタン64を押し下げる。そうすると昇降部材41は版胴100を支持したまま下降を開始し、版胴100は横置き姿勢のまま床位置Hlまで下降する。床位置Hlは下限位置であるため、昇降部材41は床位置Hlで自動停止する。
【0048】
図1を参照して、次に作業員400は、横置き姿勢の版胴100に両手を添え、版胴100の一端をパレット200に載せつつ、版胴100の他端を持ち上げる。これにより版胴100は縦置き姿勢でパレット200上に返却される。
【0049】
図1図7に示す実施形態によれば、横置き姿勢の版胴100を台車300から昇降部材41へ載せ替え、あるいは昇降部材41から台車300へ載せ替えることができる。また作業員400が横置き姿勢の版胴100を床位置Hlからパレット200へ載せ替えて縦置き姿勢に変更し、あるいは逆の動作を行う際、作業員400にかかる肉体的負担を従来よりも半分程度に軽減することができる。しかも版胴100を取り扱う作業員400の手が操作部61に容易に届くので、作業性が従来よりも向上する。
【0050】
昇降装置10の左側および右側に関して附言すると、図3を参照して前後フレーム12、12よりも左右方向外側には、ガード部材17の左右壁部および位置決め部材18,18を除き、何ら部材を設けられない。これにより昇降装置10は図1に示すようにパレット200に横付け可能とされる。図1を参照して、昇降装置10の左側にパレット200が位置する他、昇降装置10の右側にパレット201が位置してもよい。本実施形態の昇降装置10は、昇降装置10の左側に位置するパレット200から受けた版胴100を台車300へ引き渡す作業と、台車300から受けた版胴100を昇降装置10の右側に位置するパレット201へ返納する作業を、交互に実施可能であり、版胴100の受け渡し作業が効率化される。
【0051】
次に本発明の他の実施形態を説明する。図8図10は本発明の他の実施形態を示す正面図であり、図8は昇降部材の床位置Hlを、図9は昇降部材の受取位置Hjを、図10は昇降部材の引渡位置Hhをそれぞれ表す。他の実施形態につき、前述した実施形態と共通する構成については同一の符号を付して説明を省略し、異なる構成について以下に説明する。他の実施形態において昇降部材41が昇降する構造、つまり昇降部材41の被ガイド部がガイドレール31上を摺動する構造は、前述した実施形態と同様である。他の実施形態になる昇降装置20は、前述した駆動機構51に代えて、駆動機構71で昇降部材41を昇降させる。
【0052】
駆動機構71は、上下方向に延びる2種類のシリンダ72,73と、左右方向に延びる横部材76を有する。シリンダ72は昇降装置10の左右方向中央に配置され、シリンダ73はシリンダ72の左右側にそれぞれ配置される。シリンダ72の上端は横部材76の中央に取付固定される。シリンダ72の下端からピストンロッド74が伸縮可能に延びる。ピストンロッド74の下端は昇降部材41に連結される。シリンダ73の上端は横部材76の端部に取付固定される。シリンダ73の上端からピストンロッド75が伸縮可能に延びる。ピストンロッド75の上端は、水平フレーム22に連結される。駆動機構71は水平フレーム22から吊り下げられ、懸垂運動によって昇降部材41を昇降させる。
【0053】
具体的には、図8に示すように昇降部材41が下限の床位置Hlにされる場合、ピストンロッド74,75はシリンダ72,73から進出し、駆動機構71は最も伸びた状態になる。これに対し図10に示すように昇降部材41が上限の引渡位置Hhにされる場合、ピストンロッド74,75はシリンダ72,73内へ退動し、駆動機構71は最も縮んだ状態になる。シリンダ72はシリンダ73よりも長く、ストローク範囲が大きい。シリンダの高さ位置について附言すると、シリンダ72,73の高さ位置が重なる。またシリンダ73がシリンダ72の上端部と重なるよう平行に配置される。
【0054】
昇降部材41は、床位置Hl(図8)から受取位置Hj(図9)を経て上限の引渡位置Hh(図10)へ上昇し、あるいは逆に下降する。つまり床位置Hl(図8)から受取位置Hj(図9)までの下側区間の昇降動作は、シリンダ72に対するピストンロッド74の進退動による。また受取位置Hjから引渡位置Hhまでの上側区間の昇降動作は、シリンダ73に対するピストンロッド75の進退動による。なお図示しない変形例として、シリンダ72,73の配置は互いに入替可能である。
【0055】
図8図10に示す実施形態によれば、前述した図1図7に示す実施形態と同様、横置き姿勢の版胴100を昇降部材41から台車300へ載せ替え、あるいは台車300から昇降部材41へ載せ替えることができる。また作業員400が、台車300から受け取った横置き姿勢の版胴100を床位置Hlからパレット200へ載せ替えて縦置き姿勢に変更し、あるいは逆の動作を行う際、作業員400にかかる肉体的負担を従来の半分程度まで軽減することができる。
【0056】
作業員は、版胴100等の転写ローラの高さ位置変更作業および姿勢変更作業に際して、一人で容易に実行することができ、転写ローラを昇降装置から台車に載せ替える作業および逆の作業が省力化される。
【0057】
具体的には、転写ローラを保管場所のパレット200から使用場所まで運搬したり、使用場所から保管場所のパレット200へ返却したりする作業において、作業員は熟練を要することなく転写ローラの姿勢を縦置きから横置きへ(あるいは反対へ)変えることができ、転写ローラを容易に昇降させることができる。作業員は、重労働から解放され、作業の効率および安全性が向上し、非力な者や初心者でも転写ローラを取り扱うことができる。
【0058】
昇降装置20の駆動機構71は、昇降部材41の昇降区間の下側領域で昇降部材41を昇降させる第1のシリンダ72およびピストンと、昇降区間の上側領域で昇降部材41を昇降させる第2のシリンダ73およびピストンを含む。昇降装置20によれば、第1のシリンダ72およびピストンと、第2のシリンダ73およびピストンの使い分けによって、昇降部材41の高さ範囲を制御することができる。具体的には床位置Hlおよび受取位置Hj間の昇降と、受取位置Hjおよび引渡位置Hhの昇降がそれぞれ、別々のシリンダ72,73によって実行されることから、前述したドック46およびリミット機構57が不要になる。
【0059】
次に本発明のさらに他の実施形態につき説明する。図11は本発明のさらに他の実施形態を示す斜視図である。さらに他の実施形態につき、前述した実施形態と共通する構成については同一の符号を付して説明を省略し、異なる構成について以下に説明する。さらに他の実施形態になる昇降装置30では、基部11において、前後フレーム12がクランク状に形成され、前後フレーム12の前端12f,12f同士の間隔Wbが、上下フレーム21,21の左右方向間隔よりも大きくされる。受け部材44は各アーム部43の前端にそれぞれ設けられ、1対の受け部材44,44は左右方向に離隔する。1対のアーム部43、43および1対の前端12f,12fは、昇降装置30の左右に対称配置される。
【0060】
1対のアーム部43,43の間隔Wcは、前端12f,12f同士の間隔Wbと同じ(あるいは大きく)、台車300(図5)の柱部330,330の間隔よりも大きくされる。そして台車300は、1対のアーム部43,43間に待機することができる。これにより特許文献2記載の台車のように台車300の左右方向寸法が小さい場合であっても、1対のアーム部43,43間に当該台車を版胴100の引渡のための待機位置に待機させることができる。
【0061】
あるいは図示はしないが、図5に示す台車300とは寸法が異なる台車が前端12f,12f同士間に待機する際、当該台車の左側の柱部が左側の前端12fと左側のアーム部43との間に配置され、当該台車の右側の柱部が右側の前端12fと右側のアーム部43との間に配置されてもよい。昇降装置30によれば、左右方向に長く延びる台車との間で版胴100を受け渡すことができる。間隔Wcは、版胴100の規定長さ寸法よりも若干小さく、版胴100の両端部をそれぞれ支持することから、版胴100の両端部を除く中央領域の直下でスペースを確保できるためである。
【0062】
次に本発明の別な実施形態を説明する。図12は本発明の別な実施形態を示す斜視図である。別な実施形態につき、前述した実施形態と共通する構成については同一の符号を付して説明を省略し、異なる構成について以下に説明する。別な実施形態における基本構成は、前述した図1に示す実施形態と同様である。別な実施形態になる昇降装置40では、昇降部材41が、前述した受け部材44に代えて、左右方向部材47、摩擦材48、回転輪49、およびカバー部材87を含む。
【0063】
図13は、昇降部材41を昇降装置40の左右方向にみた状態を示す側面図である。図14は、昇降部材41の前側半分を図13中の矢XIVの方向にみた状態を示す正面図であり、部品の一部を破断して描く。矢XIVは昇降装置40の概ね前後方向である。左右方向部材47は、1対のアーム部43,43に架設され、左右方向に延びる。上方の左右方向部材47と下方のアーム部43間にはブラケット81が介在する。ブラケット81は前後方向に延びる鉄製部材であり、その両端が上向きに折り曲げ形成されてそれぞれ前壁82および後壁83をなす。ブラケット81の前壁82は、アーム部43の前端から上方へ突出し、左右方向部材47の前側傾斜部47bを支持する。ブラケット81の後壁83は、前壁82よりも後方に離隔して配置されて、アーム部43から上方へ突出し、左右方向部材47の後側傾斜部47cを支持する。カバー部材87は、これら前後の傾斜部47b,47c間に嵌り込み、前後方向の移動を規制される。そしてカバー部材87は、上方から左右方向部材47を覆う。
【0064】
前壁82に支持されて、前側傾斜部47bは上向きかつ後方へ指向するよう傾斜し、下方かつ前方からカバー部材87を支持する。これによりカバー部材87は前方移動を規制される。後壁83に支持されて、後側傾斜部47cは上向きかつ前方へ指向するよう傾斜し、下方かつ後方からカバー部材87を支持する。これによりカバー部材87は後方移動を規制される。これら傾斜部47b,47cの間で、カバー部材87はV字断面形状の凹溝を構成する。この凹溝は左右方向に延び、かかる凹溝に版胴100の円断面が入り込むことによって、版胴100b、100c,100dの径が互いに異なる場合であっても、版胴100は傾斜部47b,47cに支持されるカバー部材87を乗り越えるように前後方向に移動しない。
【0065】
傾斜部47b,47cにはそれぞれ、軸支持部材84が立設される。軸支持部材84は互いに対向する1対の支持壁を含み、1対の支持壁間に回転輪支持軸85を支持する。回転輪支持軸85には回転輪49の中心が通され、回転輪49は軸支持部材84に回転自在に支持される。傾斜部47bに取付される回転輪49の数は、前後1対でもよいし、左右方向に間隔を空けて複数対あってもよい。この実施形態では図14に示すように左右方向に間隔を空けて3対が設けられる。つまり傾斜部47bおよび傾斜部47c、それぞれ同数の回転輪49が設けられる。
【0066】
図13に示すように、左右方向部材47にはカバー部材87が取り付けられる。カバー部材87は、断面V字形状であり、回転輪49の配置に対応して貫通開口88が形成される。これにより回転輪49の上縁部は、カバー部材87から上方へ突出するが、回転輪49の残る部分はカバー部材87に覆われる。
【0067】
カバー部材87の左右端部上面には摩擦材48が取り付けられる。摩擦材48はカバー部材87や左右方向部材47よりも摩擦係数の大きな材料で形成され、具体的には所定厚みのゴム板である。ゴム板は所定厚みを有することにより緩衝材としても機能する。図14に示すように、摩擦材48は昇降部材41の左右端の少なくとも一方に設けられる。ここで摩擦材48は、左右方向部材47の左右端の上角部89(カバー部材87の左右方向端)を覆うように配置されるとよい。これにより上角部89が版胴100の外周面に当接することが防止される。摩擦材48は、図13に示すように前側の回転輪49の列に沿って配置されるとともに、後側の回転輪49の列に沿っても配置される。
【0068】
回転輪49の上部は、摩擦材48よりも高くされるが、その高低差は少ないことが好ましい。その高低差は、例えば1~25[mm]の範囲に含まれる。
【0069】
次に、図13および図14に示す実施形態を用いた版胴の姿勢変更作業につき説明する。
【0070】
図15図18は、パレット200上に縦置きされる版胴100を受け取って横置き姿勢に変更する姿勢変更作業の手順を示す正面図である。まず図15に示すように昇降装置40をパレット200に横付けに設置する。次に昇降部材41の高さを、縦置きの版胴100の重心Gよりも低く、かつ版胴100の下端101よりも高い位置で待機させる。
【0071】
次に作業員400は、図16に示すように版胴100の上端部に手を当て、版胴100の重量よりも遥かに少ない力で、版胴100を少しの角度だけ傾斜させ、版胴100の外周面を左右方向部材47の左右方向端に接近させる。そうすると版胴100の外周面は、左右方向部材47の左右方向端の上面(具体的にはカバー部材87の上面)に固定される摩擦材48に接触する。
【0072】
前後2箇所の摩擦材48,48は、版胴100の外周面をグリップしている。作業員400は摩擦材48,48を支点にして引き続き版胴100を傾斜させ、図17に示すように版胴100の上端を左右方向部材47に載せ、版胴100を横置き姿勢にする。そうすると版胴100外周面は、摩擦材48から離れ、回転輪49のみに支持される。左右方向部材47および回転輪49は、横置き姿勢の版胴100を下方から支持する。
【0073】
図17に示すように版胴100の重心Gが左右方向部材47の左右方向中心CLからずれている場合、作業員400は版胴100に軸線方向力を与えるとよい。版胴100は、回転輪49上を軽い力で変位可能である。これにより図18に示すように、版胴100の重心Gは左右方向中心CLと一致する。
【0074】
別な実施形態の昇降部材41は、図16に示すように縦置きないし斜め姿勢の版胴100の外周面に当接する摩擦材48と、摩擦材48を支点として図17に示す横置き姿勢にされる版胴100の外周面を下方から支持する回転輪49とを含む。図1に示すように版胴100の下端をなるべく動かさないようにして版胴100の上端を版胴100の軸線方向寸法だけ作業員の腕の力で下げて横倒しする実施形態と比較して、遥かに軽い力で、版胴100の姿勢を変更することができる。具体的には、版胴100の重量の1/4程度の力で、版胴100の姿勢を変更することができ、作業員の負担が軽減される。したがって別な実施形態によれば、非力な者や初心者でも一人作業で容易に作業することができる。なお版胴100を横置きから縦置きに変更してパレット200上に返却する場合は、図15図18に示す取り出し作業の手順を逆に実行すればよい。そして返却作業も同様に軽い力で操作可能である。
【0075】
以上、図面を参照して本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、図示した実施の形態のものに限定されない。図示した実施の形態に対して、本発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。例えば上述した昇降装置10,20,30,40中、1の実施形態から一部の構成を抜き出し、上述した他の実施形態から他の一部の構成を抜き出し、これら抜き出された構成を組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、印刷産業および塗工産業において有利に利用される。
【符号の説明】
【0077】
10 昇降装置、 11 基部、 12 前後フレーム、
13 左右フレーム、 20 昇降装置、 21 上下フレーム、
22 水平フレーム、 30 昇降装置、 31 ガイドレール(ガイド部)、
40 昇降装置、 41 昇降部材、 42 被ガイド部、
43 アーム部、 44 受け部材、 47 左右方向部材、
48 摩擦材、 49 回転輪、 51 駆動機構、 52 シリンダ、
53 ピストンロッド、 55 駆動チェーン、 56 エア回路、
57 リミット機構(リミット手段)、 58 ブレーキ部(ブレーキ手段)、
61 操作部、 63~65 押しボタン、 87 カバー部材、
100 版胴(転写ローラ)、 200 パレット、 300 台車。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18