(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023017287
(43)【公開日】2023-02-07
(54)【発明の名称】車両用バンパ装置
(51)【国際特許分類】
B60R 19/34 20060101AFI20230131BHJP
B60R 19/24 20060101ALI20230131BHJP
【FI】
B60R19/34
B60R19/24 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021121438
(22)【出願日】2021-07-26
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(71)【出願人】
【識別番号】000100791
【氏名又は名称】アイシン軽金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉本 詩穂
(72)【発明者】
【氏名】北 恭一
(72)【発明者】
【氏名】正保 順
(57)【要約】
【課題】衝撃吸収部材に衝撃荷重が加わった際のエネルギー吸収率を安定化する。
【解決手段】バンパリインフォースメント10は、車両幅方向に延在して車体のサイドメンバ2と対向する。衝撃吸収部材20は、サイドメンバ2とバンパリインフォースメント10との間に挟まれている。少なくとも1つの締結部材170は、バンパリインフォースメント10および衝撃吸収部材20を締結する。衝撃吸収部材20は、筐体110と、少なくとも1つの工業用木材151とを含む。筐体110は、前面壁120、および、前面壁120から車両前後方向に突出し、少なくとも1つの締結部材170によってバンパリインフォースメント10と接続される前端部121を有する。少なくとも1つの工業用木材151は、筐体110に収容されて前面壁120と隣接し、少なくとも1つの欠除部151hが設けられている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両幅方向に延在して車体のサイドメンバと対向するバンパリインフォースメントと、
前記サイドメンバと前記バンパリインフォースメントとの間に挟まれている衝撃吸収部材と、
前記バンパリインフォースメントおよび前記衝撃吸収部材を締結する少なくとも1つの締結部材とを備え、
前記衝撃吸収部材は、
前面壁、および、該前面壁から車両前後方向に突出し、前記少なくとも1つの締結部材によって前記バンパリインフォースメントと接続される前端部を有する筐体と、
前記筐体に収容されて前記前面壁と隣接し、少なくとも1つの欠除部が設けられた少なくとも1つの工業用木材とを含む、車両用バンパ装置。
【請求項2】
前記少なくとも1つの欠除部は、前記車両幅方向に前記少なくとも1つの工業用木材を貫通した貫通孔である、請求項1に記載の車両用バンパ装置。
【請求項3】
前記少なくとも1つの工業用木材として、前記筐体の内部において前記車両幅方向に互いに間隔をあけて第1工業用木材および第2工業用木材が配置されており、
前記第1工業用木材は、前記車両幅方向における前記サイドメンバの外側部分と前記車両前後方向に並んで位置し、
前記第2工業用木材は、前記車両幅方向における前記サイドメンバの内側部分と前記車両前後方向に並んで位置している、請求項1または請求項2に記載の車両用バンパ装置。
【請求項4】
前記少なくとも1つの締結部材として、
車両上下方向に延在し、前記車両前後方向において前記第1工業用木材と並んでいる第1締結部材と、
前記車両前後方向に延在し、前記車両前後方向において前記第2工業用木材と並んでいる第2締結部材とを含む、請求項3に記載の車両用バンパ装置。
【請求項5】
前記少なくとも1つの工業用木材は、中密度繊維板である、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の車両用バンパ装置。
【請求項6】
前記前端部は、格子状に形成されたリブを含む、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の車両用バンパ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用バンパ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
衝撃吸収部材の構成を開示した先行文献として、特開2019-60366号公報(特許文献1)がある。特許文献1に記載された衝撃吸収部材は、樹脂製の被覆材と、木材とを備える。被覆材は、木材を一体的に被覆している。木材は、杉材が好適に使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
衝撃吸収部材に天然の木材を使用する場合、木材の含水率、密度または節の有無などの諸状態が個々に一定でないため、衝撃吸収部材に衝撃荷重が加わった際のエネルギー吸収率が不安定になる可能性がある。
【0005】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、衝撃吸収部材に衝撃荷重が加わった際のエネルギー吸収率を安定化する、車両用バンパ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に基づく車両用バンパ装置は、バンパリインフォースメントと、衝撃吸収部材と、少なくとも1つの締結部材とを備える。バンパリインフォースメントは、車両幅方向に延在して車体のサイドメンバと対向する。衝撃吸収部材は、サイドメンバとバンパリインフォースメントとの間に挟まれている。少なくとも1つの締結部材は、バンパリインフォースメントおよび衝撃吸収部材を締結する。衝撃吸収部材は、筐体と、少なくとも1つの工業用木材とを含む。筐体は、前面壁、および、該前面壁から車両前後方向に突出し、少なくとも1つの締結部材によってバンパリインフォースメントと接続される前端部を有する。少なくとも1つの工業用木材は、筐体に収容されて前面壁と隣接し、少なくとも1つの欠除部が設けられている。
【0007】
本発明の一形態においては、少なくとも1つの欠除部は、車両幅方向に少なくとも1つの工業用木材を貫通した貫通孔である。
【0008】
本発明の一形態においては、少なくとも1つの工業用木材として、筐体の内部において車両幅方向に互いに間隔をあけて第1工業用木材および第2工業用木材が配置されている。第1工業用木材は、車両幅方向におけるサイドメンバの外側部分と車両前後方向に並んで位置している。第2工業用木材は、車両幅方向におけるサイドメンバの内側部分と車両前後方向に並んで位置している。
【0009】
本発明の一形態においては、少なくとも1つの締結部材として、第1締結部材と、第2締結部材とを含む。第1締結部材は、車両上下方向に延在し、車両前後方向において第1工業用木材と並んでいる。第2締結部材は、車両前後方向に延在し、車両前後方向において第2工業用木材と並んでいる。
【0010】
本発明の一形態においては、少なくとも1つの工業用木材は、中密度繊維板である。
【0011】
本発明の一形態においては、前端部は、格子状に形成されたリブを含む。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、衝撃吸収部材に衝撃荷重が加わった際のエネルギー吸収率を安定化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係る車両用バンパ装置を備える車両の外観を示す上面図である。
【
図2】
図1の車両におけるII部を拡大して車両用バンパ装置周辺の構成を示す斜視図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る車両用バンパ装置が備える衝撃吸収部材の構成を示す斜視図である。
【
図4】
図2の車両用バンパ装置をIV-IV線矢印方向から見た断面図である。
【
図5】
図2の車両用バンパ装置をV-V線矢印方向から見た断面図である。
【
図6】
図3の衝撃吸収部材をVI-VI線矢印方向から見た断面図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係る車両用バンパ装置が備える衝撃吸収部材の内部に工業用木材を収容する状態を示す斜視図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係る車両用バンパ装置に衝撃荷重が加わった状態を示す斜視図である。
【
図9】
図8の車両用バンパ装置をIX-IX線矢印方向から見た断面図である。
【
図10】比較例に係る車両用バンパ装置に衝撃荷重が加わった状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態に係る車両用バンパ装置について図面を参照して説明する。以下の実施形態の説明においては、図中の同一または相当部分には同一符号を付して、その説明は繰り返さない。図中において、車両前後方向をX方向、車両幅方向をY方向、車両上下方向をZ軸方向とする。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態に係る車両用バンパ装置を備える車両の外観を示す上面図である。
図1に示すように、本実施形態における車両1は、サイドメンバ2と、フロントバンパ3と、車両用バンパ装置4とを備える。
【0016】
サイドメンバ2は、車両1における車体の骨格の一部分である。サイドメンバ2は、車両前後方向(X方向)に延びている。サイドメンバ2は、車両幅方向(Y方向)に互いに間隔をあけて1対設けられている。フロントバンパ3は、車両1における前方の端部に設けられている。
【0017】
車両用バンパ装置4は、X方向において、サイドメンバ2とフロントバンパ3との間に設けられている。なお、車両用バンパ装置4は、サイドメンバ2とフロントバンパ3との間に設けられる構成に限定されず、サイドメンバ2と図示しないリアバンパとの間に設けられていてもよい。
【0018】
図2は、
図1の車両におけるII部を拡大して車両用バンパ装置周辺の構成を示す斜視図である。
【0019】
サイドメンバ2は、X方向から見て、矩形形状を有している。
図1および
図2に示すように、サイドメンバ2は、外側部分2aと、内側部分2bと、フランジ部2cとを含む。外側部分2aは、車両1の外側に位置している。内側部分2bは、車両1の内側に位置している。フランジ部2cは、外側部分2aおよび内側部分2bにおける車両用バンパ装置4側の端面に設けられている。フランジ部2cには、締結孔2hが設けられている。
【0020】
本発明の一実施形態における車両用バンパ装置4は、バンパリインフォースメント10と、衝撃吸収部材20と、少なくとも1つの締結部材とを備える。
【0021】
バンパリインフォースメント10は、車両幅方向(Y方向)に延在して車体のサイドメンバ2と対向している。本実施形態におけるバンパリインフォースメント10は、X方向において、衝撃吸収部材20を間に挟んでサイドメンバ2と対向している。バンパリインフォースメント10は、金属製である。バンパリインフォースメント10は、たとえば、アルミニウム合金により構成されている。
【0022】
バンパリインフォースメント10は、前面部100と、上面部101と、下面部102とを備える。
【0023】
前面部100は、Y方向およびZ方向に延在している板状部である。上面部101は、Y方向に延在しつつ、前面部100のZ方向の上端から衝撃吸収部材20側に向かってX方向に延在している。下面部102は、Y方向に延在しつつ、前面部100のZ方向の下端から衝撃吸収部材20側に向かってX方向に延在している。上面部101および下面部102の各々は、Z方向において、衝撃吸収部材20を間に挟んで互いに対向している。
【0024】
バンパリインフォースメント10には、少なくとも1つの締結部材が挿通する複数の貫通孔が設けられている。具体的には、前面部100に第2貫通孔100hが設けられている。上面部101には、第1貫通孔101hが設けられている。下面部102には、第1貫通孔102hが設けられている。
【0025】
図3は、本発明の一実施形態に係る車両用バンパ装置が備える衝撃吸収部材の構成を示す斜視図である。
図4は、
図2の車両用バンパ装置をIV-IV線矢印方向から見た断面図である。
図5は、
図2の車両用バンパ装置をV-V線矢印方向から見た断面図である。
図6は、
図3の衝撃吸収部材をVI-VI線矢印方向から見た断面図である。
【0026】
衝撃吸収部材20は、外部から車両1に衝撃荷重が加わった際に衝撃エネルギーを吸収する部材である。
図2、
図4および
図5に示すように、衝撃吸収部材20は、サイドメンバ2とバンパリインフォースメント10との間に挟まれている。衝撃吸収部材20は、筐体110と、少なくとも1つの工業用木材とを含む。
【0027】
筐体110は、樹脂製である。筐体110は、たとえば、ポリプロピレンもしくはポリエチレンなどのポリオレフィン樹脂、ポリカーボネイト樹脂、ポリエチレンテレフタレートもしくはポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、または、アクリル樹脂などの熱可塑性樹脂により構成されている。
【0028】
図3~
図6に示すように、筐体110は、前面壁120と、前端部121とを有している。本実施形態における筐体110は、背面壁130と、上面壁140と、下面壁141と、1対の側面壁142とをさらに有している。
【0029】
前面壁120は、前端部121を間に挟んでバンパリインフォースメント10の前面部100に対向して配置されている。
図6に示すように、前面壁120は、サイドメンバ2の外側部分2aと距離が近づくように、Y方向に対して傾斜している。
【0030】
図4~
図6に示すように、背面壁130は、前面壁120に対向してサイドメンバ2に隣接している。
図4に示すように、背面壁130のZ方向の両端には、フランジ部131が設けられている。フランジ部131には、締結孔131hが設けられている。締結孔2hと締結孔131hとを図示しない締結ボルトにより締結することによって、サイドメンバ2と衝撃吸収部材20とが接続される。
【0031】
図2~
図6に示すように、上面壁140は、前面壁120および背面壁130のZ方向における上端同士を接続している。下面壁141は、前面壁120および背面壁130のZ方向における下端同士を接続している。1対の側面壁142の各々は、前面壁120および背面壁130のY方向における両端同士を接続している。
【0032】
図3~
図6に示すように、前端部121は、前面壁120から車両前後方向(X方向)に突出している。前端部121は、少なくとも1つの締結部材によってバンパリインフォースメント10と接続されている。
【0033】
前端部121は、格子状に形成されたリブ121rを含んでいる。本実施形態におけるリブ121rは、いわゆるハニカム構造を構成している。ハニカム構造は、筐体110の他の構成部分と比較して機械的強度が高い。これにより、前面壁120が衝撃荷重によって割れることを抑制することができる。なお、本実施形態における前端部121は、格子状のリブ121rを有しているが、この構成に限定されず、たとえば、X方向から見て三角形状または六角形状などのリブを有していてもよい。
【0034】
前端部121は、筒状部122と、第2ナット125とを有している。筒状部122は、Y方向において、外側部分2a側に配置されている。第2ナット125は、Y方向において、内側部分2b側に配置されている。前端部121には、第2貫通孔124hが設けられている。
【0035】
図3および
図4に示すように、筒状部122は、前端部121をZ方向に貫通する貫通孔に被締結部123が挿入されることにより構成されている。被締結部123は、金属製のスリーブである。被締結部123は、たとえば、アルミニウム合金により構成されている。
【0036】
図3および
図5に示すように、第2貫通孔124hは、前端部121をX方向に貫通している。本実施形態における第2貫通孔124hは、Z方向に並んで2箇所設けられている。
【0037】
第2ナット125は、第2貫通孔124hの内側に配置されている。第2ナット125は、カシメられることによって第2貫通孔124hに固定されている。第2ナット125は、たとえば、アルミニウム合金により構成されている。
【0038】
図4~
図6に示すように、少なくとも1つの工業用木材は、筐体110に収容されて前面壁120と隣接している。
【0039】
工業用木材は、天然の木材と比較して、含水率、密度または節の有無などの諸状態のばらつきが小さく、安定した性状を有している。本実施形態における少なくとも1つの工業用木材は、中密度繊維板(MDF:Medium Density Fiberboard)である。中密度繊維板は、木材を繊維状にして接着剤を加え、高湿高圧でプレス加工することによって形成される。本実施形態における少なくとも1つの工業用木材は、JIS規格(JIS A 5905:2014)における普通MDFに相当する密度基準の0.35g/cm3以上を少なくとも満足している。
【0040】
本実施形態においては、少なくとも1つの工業用木材として、筐体110の内部において車両幅方向(Y方向)に互いに間隔をあけて第1工業用木材151および第2工業用木材152が配置されている。
【0041】
第1工業用木材151は、車両幅方向(Y方向)におけるサイドメンバ2の外側部分2aと車両前後方向(X方向)に並んで位置している。第2工業用木材152は、車両幅方向(Y方向)におけるサイドメンバ2の内側部分2bと車両前後方向(X方向)に並んで位置している。
【0042】
少なくとも1つの工業用木材には、少なくとも1つの欠除部が設けられている。本実施形態においては、
図4および
図5に示すように、第1工業用木材151に複数の欠除部151hが設けられ、第2工業用木材152に複数の欠除部152hが設けられている。
【0043】
少なくとも1つの欠除部は、車両幅方向(Y方向)に少なくとも1つの工業用木材を貫通した貫通孔である。本実施形態においては、複数の欠除部151hおよび複数の欠除部152hの各々は、貫通孔である。なお、複数の欠除部151hおよび複数の欠除部152hの各々は、貫通孔に限定されず、非貫通の凹み形状であってもよいし、溝形状などであってもよい。
【0044】
複数の欠除部151h、152hの各々は、前面壁120から離れるにしたがって孔径が小さくなっている。これにより、衝撃吸収部材20にX方向における前面壁120側から衝撃荷重が加わった場合、第1工業用木材151および第2工業用木材152の各々において、前面壁120側から背面壁130側へ向かって並ぶ順に複数の欠除部151h、152hの各々を変形させることができる。
【0045】
図6に示すように、第1工業用木材151および第2工業用木材152の間には、中空部160が設けられている。中空部160を設けることによって、衝撃吸収部材20のうち、サイドメンバ2の外側部分2aおよび内側部分2bに効率的に衝撃荷重を加えることが可能な箇所にのみ工業用木材を配置することができるため、衝撃吸収部材20を軽量化することができる。
【0046】
なお、本実施形態における少なくとも1つの工業用木材は、第1工業用木材151と第2工業用木材152の2つの工業用木材によって構成されているが、この構成に限定されず、1つまたは3つ以上の工業用木材によって構成されていてもよい。この場合、工業用木材は、X方向において、少なくとも外側部分2aおよび内側部分2bに並んで配置される。
【0047】
図2、
図4および
図5に示すように、少なくとも1つの締結部材は、バンパリインフォースメント10および衝撃吸収部材20を締結する。本実施形態においては、少なくとも1つの締結部材として、第1締結部材170と、第2締結部材180とを含む。第1締結部材170および第2締結部材180の各々は、前端部121に接続されている。
【0048】
図2および
図4に示すように、第1締結部材170は、車両上下方向(Z方向)に延在している。第1締結部材170は、車両前後方向(X方向)において第1工業用木材151と並んでいる。
【0049】
第1締結部材170は、第1ボルト171と、第1ナット172とを有している。第1ボルト171における軸部171aは、Z方向において、第1貫通孔101h、被締結部123の内部および第1貫通孔102hの各々を貫通している。
【0050】
第1ナット172は、第1ボルト171の軸部171aの先端に配置されている。第1ナット172により第1ボルト171を締結することによって、上面部101と被締結部123の上端部123tとが当接し、下面部102と被締結部123の下端部123bとが当接する。これにより、上面部101、筒状部122および下面部102の各々が互いに固定される。すなわち、第1締結部材170は、バンパリインフォースメント10および衝撃吸収部材20同士を固定する。
【0051】
図5に示すように、第2締結部材180は、車両前後方向(X方向)に延在している。第2締結部材180は、車両前後方向(X方向)において第2工業用木材152と並んでいる。
【0052】
第2締結部材180は、第2ボルト181を有している。第2ボルト181における軸部181aは、第2ナット125に締結されている。これにより、前面部100および第2ナット125が互いに固定される。すなわち、第2締結部材180は、バンパリインフォースメント10および衝撃吸収部材20同士を固定する。
【0053】
なお、本実施形態における第2ボルト181は、前端部121にカシメられた第2ナット125と締結されているが、この構成に限定されず、前端部121とは別体で設けた第2ナットを、第2貫通孔100h,124hを挿通した第2ボルト181と締結することによって、前面部100および前端部121が互いに固定される構造であってもよい。
【0054】
図7は、本発明の一実施形態に係る車両用バンパ装置が備える衝撃吸収部材の内部に工業用木材を収容する状態を示す斜視図である。
【0055】
図7に示すように、衝撃吸収部材20に第1工業用木材151および第2工業用木材152の各々を収容する方法としては、まず、筐体110のうちの背面壁以外が射出成形される。次に、背面壁以外の成形された筐体110の一部の内部に、第1工業用木材151および第2工業用木材152の各々が挿入される。その後、背面壁を他の筐体110の部分と接合する。これにより、第1工業用木材151および第2工業用木材152の各々は、筐体110の内部に収容されて密閉される。
【0056】
以下、本発明の一実施形態に係る車両用バンパ装置に衝撃荷重が加わった状態について説明する。
【0057】
図8は、本発明の一実施形態に係る車両用バンパ装置に衝撃荷重が加わった状態を示す斜視図である。
図9は、
図8の車両用バンパ装置をIX-IX線矢印方向から見た断面図である。なお、
図8および
図9においては、車両用バンパ装置4に対して、X方向から衝撃荷重が加わった状態を例示する。また、
図9においては、第2工業用木材152に衝撃荷重が加わった際の変形を示しているが、第1工業用木材151においても第2工業用木材152と同様に変形する。
【0058】
図8および
図9に示すように、車両用バンパ装置4に外部からX方向の衝撃荷重が加わると、バンパリインフォースメント10から第1締結部材170および第2締結部材180の各々に衝撃荷重が加わる。さらに、第1締結部材170および第2締結部材180の各々から前端部121に衝撃荷重が加わる。これにより、筐体110において、前面壁120および前端部121がX方向のサイドメンバ2側に移動する。前面壁120から第1工業用木材151および第2工業用木材152に対してX方向の衝撃荷重が加わるため、第1工業用木材151および第2工業用木材152の各々は、X方向に潰れながら変形する。第1工業用木材151および第2工業用木材152の各々は、変形時に衝撃エネルギーを吸収する。
【0059】
仮に、第1工業用木材151および第2工業用木材152の各々において、複数の欠除部151h,152hが設けられていない場合、第1工業用木材151および第2工業用木材152の各々が変形するための潰れ代を確保することができない。この場合、第1工業用木材151および第2工業用木材152の各々における変形時の衝撃エネルギーの吸収率が低下する。
【0060】
一方、本実施形態の第1工業用木材151および第2工業用木材152の各々においては、複数の欠除部151h,152hが、衝撃荷重による変形時の潰れ代として形成されている。これにより、第1工業用木材151および第2工業用木材152の各々は、複数の欠除部151h,152hに周囲から破壊された部分が入り込みながら変形しつつ車両前後方向(X方向)の前から順に潰れることができるため、車両前後方向(X方向)の全体に亘って十分に潰れて変形することができる。その結果、第1工業用木材151および第2工業用木材152における衝撃エネルギーの吸収率を高くすることができる。
【0061】
また、一般に、車両1に加わる衝撃荷重は、サイドメンバ2の内側部分2b側より外側部分2a側に強く加わる傾向にある。本実施形態においては、第1締結部材170が車両上下方向(Z方向)に延在しているため、車両前後方向(X方向)に延在している第2締結部材180と比較して、衝撃荷重の伝達面積が大きい。これにより、外側部分2a側において単位面積あたりに加わる衝撃荷重を弱めることができる。その結果、外側部分2aと内側部分2bに生ずる衝撃応力を均等にすることができる。
【0062】
ここで、前端部が設けられていない場合の衝撃吸収部材を含んだ比較例に係る車両用バンパ装置について説明する。なお、本比較例に係る車両用バンパ装置において、本発明の一実施形態の車両用バンパ装置4と同様である構成については説明を繰り返さない。
【0063】
図10は、比較例に係る車両用バンパ装置に衝撃荷重が加わった状態を示す断面図である。
図10に示すように、比較例に係る車両用バンパ装置9は、バンパリインフォースメントと、衝撃吸収部材90と、第1締結部材970と、第2締結部材980とを備える。
【0064】
衝撃吸収部材90は、筐体910と、第1工業用木材951と、第2工業用木材952とを含む。筐体910は、前面壁920と、前端部921と、背面壁930と、上面壁と、下面壁と、1対の側面壁942とを有している。
【0065】
前面壁920は、バンパリインフォースメントに対向して配置されている。前端部921は、第1締結部材970および第2締結部材980によってバンパリインフォースメントと接続されている。比較例における前端部921には、リブは設けられていない。
【0066】
前面壁920は、前端部がリブを含む場合と比較して機械的強度が低いため、衝撃荷重が加わることにより前面壁920が割れやすくなる。比較例における前面壁920においては、第1締結部材970および第2締結部材980の各々に衝撃荷重が加わると、第1締結部材970および第2締結部材980の各々との接続部が破壊されて割れる。
【0067】
衝撃荷重が加わることによって前面壁920が割れると、第1締結部材970によって第1工業用木材951が2つに裂かれるように部分的に潰され、第2締結部材980によって第2工業用木材952が突き刺されつつ部分的に潰される。これにより、比較例における衝撃吸収部材90の衝撃エネルギーの吸収率は低くなる。
【0068】
一方、本発明の車両用バンパ装置4は、前端部121にリブ121rを有しているため、前面壁120が割れることが抑制されている。これにより、第1工業用木材151および第2工業用木材152の各々に前面壁120を介して衝撃荷重を加えることができるため、第1工業用木材151および第2工業用木材152の各々を前面壁120で押し潰すように変形させることができる。その結果、本実施形態における衝撃吸収部材20の衝撃エネルギーの吸収率を向上することができる。
【0069】
本発明の一実施形態に係る車両用バンパ装置4においては、少なくとも1つの欠除部が設けられた少なくとも1つの工業用木材を衝撃吸収部材20の内部に配置することによって、衝撃吸収部材20に衝撃荷重が加わった際のエネルギー吸収率を安定化することができる。
【0070】
本発明の一実施形態に係る車両用バンパ装置4においては、少なくとも1つの欠除部は、車両幅方向(Y方向)に少なくとも1つの工業用木材を貫通した貫通孔であることにより、少なくとも1つの工業用木材が車両1の車両前後方向(X方向)の前側から潰れてスムーズに変形させることができる。
【0071】
本発明の一実施形態に係る車両用バンパ装置4においては、第1工業用木材151をサイドメンバ2の外側部分2a側に配置し、第2工業用木材152を内側部分2b側に配置することによって、サイドメンバ2の外側部分2aと内側部分2bとに分散して衝撃荷重を分担させることができる。
【0072】
本発明の一実施形態に係る車両用バンパ装置4においては、車両上下方向(Z方向)に延在した第1締結部材170によって第1工業用木材151を間に挟んでサイドメンバ2の外側部分2aに衝撃荷重を加え、かつ、車両前後方向(X方向)に延在した第2締結部材180によって第2工業用木材152を間に挟んでサイドメンバ2の内側部分2bに衝撃荷重を加えることによって、内側部分2bと比較して外側部分2aへの衝撃荷重の伝達面積を大きくすることができるため、外側部分2aおよび内側部分2bの各々に生ずる衝撃応力を均等にすることができる。
【0073】
本発明の一実施形態に係る車両用バンパ装置4においては、少なくとも1つの工業用木材が中密度繊維板であることによって、衝撃吸収部材20としての衝撃荷重に対する必要な耐荷重を得つつ、衝撃吸収部材20の重量が大きくなりすぎることを抑制することができる。
【0074】
本発明の一実施形態に係る車両用バンパ装置4においては、前端部121に格子状のリブ121rを設けることにより、衝撃吸収部材20の前面壁120が衝撃荷重によって割れることを抑制することができるため、少なくとも1つの工業用木材に前面壁120を介して衝撃荷重を加えることによって、少なくとも1つの工業用木材を押し潰すように変形させることができる。ひいては、衝撃吸収部材20のエネルギー吸収率を向上することができる。
【0075】
なお、今回開示した上記実施形態はすべての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。したがって、本開示の技術的範囲は、上記した実施形態のみによって解釈されるものではない。また、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。上述した実施形態の説明において、組み合わせ可能な構成を相互に組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0076】
1 車両、2 サイドメンバ、2a 外側部分、2b 内側部分、2c,131 フランジ部、2h,131h 締結孔、3 フロントバンパ、4,9 車両用バンパ装置、10 バンパリインフォースメント、20,90 衝撃吸収部材、100 前面部、100h,124h 第2貫通孔、101 上面部、101h,102h 第1貫通孔、102 下面部、110,910 筐体、120,920 前面壁、121,921 前端部、121r リブ、122 筒状部、123 被締結部、123b 下端部、123t 上端部、125 第2ナット、130,930 背面壁、140 上面壁、141 下面壁、142,942 側面壁、151,951 第1工業用木材、151h,152h 欠除部、152,952 第2工業用木材、160 中空部、170,970 第1締結部材、171 第1ボルト、171a,181a 軸部、172 第1ナット、180,980 第2締結部材、181 第2ボルト。