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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023172903
(43)【公開日】2023-12-06
(54)【発明の名称】軸受及び製造方法
(51)【国際特許分類】
   F16C 9/02 20060101AFI20231129BHJP
   F16C 3/06 20060101ALI20231129BHJP
   F16C 17/10 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
F16C9/02
F16C3/06
F16C17/10 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023072987
(22)【出願日】2023-04-27
(31)【優先権主張番号】2207594.9
(32)【優先日】2022-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(71)【出願人】
【識別番号】511128228
【氏名又は名称】マーレ エンジン システムズ ユーケイ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】MAHLE Engine Systems UK Ltd.
(71)【出願人】
【識別番号】506292974
【氏名又は名称】マーレ インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】MAHLE International GmbH
【住所又は居所原語表記】Pragstrasse 26-46, D-70376 Stuttgart, Germany
(71)【出願人】
【識別番号】523159672
【氏名又は名称】マーレ フランス エスアエス
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ボルペー オリヴィエ
(72)【発明者】
【氏名】メリット デーヴィッド
【テーマコード(参考)】
3J011
3J033
【Fターム(参考)】
3J011AA02
3J011BA02
3J011BA07
3J011DA02
3J011JA02
3J011KA08
3J011MA02
3J011NA01
3J011PA02
3J033AA02
3J033AA05
3J033AC01
3J033CA01
3J033CA10
3J033GA05
(57)【要約】      (修正有)
【課題】シャフトの動きを制御し、エンジンノイズを抑制しながら、軸受から放熱するために十分な油量を提供する。
【解決手段】第1ハーフシェル110と偏心の第2ハーフシェル140とを備えた軸受であって、第1ハーフシェルと第2ハーフシェルとは、ジョイントにより接続されて円筒軸受を形成するように構成される。第1ハーフシェルは、第1ハーフシェルのクラウンにおいて第1クラウン厚さWIを有し、クラウンとジョイントとの間において第1壁厚さを有する。第2ハーフシェルは、第2ハーフシェルのクラウンにおいて第2クラウン厚さWI’を有し、クラウンとジョイントとの間において第2壁厚さを有する。第2クラウン厚さは、第1クラウン厚さよりも大きく、第1壁厚さは、ジョイントから10度-60度の間の厚さの等しい点において、第2壁厚さと等しい。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ハーフシェルと偏心の第2ハーフシェルとを備えた軸受であって、
前記第1ハーフシェルと前記第2ハーフシェルとは、ジョイントにより接続されて円筒軸受を形成するように構成され、
前記第1ハーフシェルは、前記第1ハーフシェルのクラウンにおいて第1クラウン厚さを有し、前記クラウンと前記ジョイントとの間において第1壁厚さを有し、
前記第2ハーフシェルは、前記第2ハーフシェルのクラウンにおいて第2クラウン厚さを有し、前記クラウンと前記ジョイントとの間において第2壁厚さを有し、
前記第2クラウン厚さは、前記第1クラウン厚さよりも大きく、
前記第1壁厚さは、前記ジョイントから10度-60度の間の厚さの等しい点において、前記第2壁厚さと等しい、軸受。
【請求項2】
前記第1壁厚さは、前記ジョイントから15度より大きい、又は17.5度より大きい、又は20度より大きい、又は22.5度より大きい、及び/又は前記ジョイントから45度より小さい、又は35度より小さい厚さの等しい点において、前記第2壁厚さと等しい、請求項1に記載の軸受。
【請求項3】
前記第1壁厚さは、前記ジョイントから25度の角距離における厚さの等しい点において、前記第2壁厚さと等しい、請求項1又は2に記載の軸受。
【請求項4】
前記第2クラウン厚さは、前記第1クラウン厚さよりも少なくとも6μmより大きく、好ましくは、前記第1クラウン厚さよりも、6μmと20μmとの間の分だけ大きく、又は10μmと16μmとの間の分だけ大きい、請求項1-3のいずれか1項に記載の軸受。
【請求項5】
前記第2ハーフシェルは、偏心点において第2クラウン厚さから第2壁厚さを引いた値によって定義される第2偏心量を有し、好ましくは、前記偏心点は前記ジョイントから25度の角距離にある、請求項1-4のいずれか1項に記載の軸受。
【請求項6】
前記第2偏心量は、10μmと35μmとの間にあり、又は10μmと30μmとの間にあり、11μmと21μmとの間にあり、又は15μmと17μmとの間にある、請求項5に記載の軸受。
【請求項7】
前記第1ハーフシェルは、偏心のハーフシェルであり、偏心点において第1クラウン厚さから第1壁厚さを引いた値によって定義される第1偏心量を有し、好ましくは、前記偏心点は前記ジョイントから25度の角距離にある、請求項1-6のいずれか1項に記載の軸受。
【請求項8】
前記第1偏心量は、1μmと10μmとの間にあり、又は1μmと5μmとの間にあり、又は2μmと4μmとの間にある、請求項7に記載の軸受。
【請求項9】
前記第2偏心量は、前記第1偏心量よりも大きい、請求項7又は8及び請求項5又は6に記載の軸受。
【請求項10】
前記第1ハーフシェルは、少なくとも140度、又は少なくとも160度、又は少なくとも170度の角距離にわたって、又は軸受面全体にわたって、一定の曲率半径を有する第1軸受面を有し、及び/又は
前記第2ハーフシェルは、少なくとも140度、又は少なくとも160度、又は少なくとも170度の角距離にわたって、又は軸受面全体にわたって、一定の曲率半径を有する第2軸受面を有する、請求項1-9のいずれか1項に記載の軸受。
【請求項11】
前記第1ハーフシェルは、負荷がかけられるハーフシェルとして構成され、
前記第2ハーフシェルは、負荷がかけられないハーフシェルとして構成されている、請求項1-10のいずれか1項に記載の軸受。
【請求項12】
前記軸受は、レシプロエンジンのためのコネクティングロッド大端部軸受であり、好ましくは、前記第1ハーフシェルは、コネクティングロッド大端部軸受のロッド側であり、前記第2ハーフシェルは、コネクティングロッド大端部軸受のキャップ側である、請求項1-11のいずれか1項に記載の軸受。
【請求項13】
前記軸受は、レシプロエンジンのための主軸受である、請求項1-12のいずれか1項に記載の軸受。
【請求項14】
軸受の製造方法であって、
第1クラウン厚さと、前記第1クラウンとジョイント面との間の第1壁厚さと、を有する第1ハーフシェルを形成するステップと、
第2クラウン厚さと、前記第2クラウンとジョイント面との間の第2壁厚さと、を有する第2ハーフシェルを形成するステップと、を含み、
前記第2クラウン厚さは、前記第1クラウン厚さよりも大きく、
前記第1壁厚さは、前記ジョイント面から10度-60度の間の厚さの等しい点において、前記第2壁厚さと等しい、軸受の製造方法。
【請求項15】
第1曲率半径を有する第1ハーフシェルの第1軸受面を形成するステップであって、
前記第1軸受面の中央は、第1ハーフシェルの幾何学的な中央に対してオフセットされている、
第1軸受面を形成するステップと、
第1ボアとは異なる第2曲率半径を有する第2ハーフシェルの偏心の第2軸受面を形成するステップであって、
前記第2軸受面の中央は、前記第2ハーフシェルの幾何学的な中央に対してオフセットされている、
第2軸受面を形成するステップと、
を含む請求項14に記載の軸受の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸受と軸受の製造方法とに関する。この軸受は、主軸受、コネクティングロッド軸受、ジャーナル軸受等のような、レシプロエンジンの軸受でもよい。
【背景技術】
【0002】
軸受、又は軸受要素は、例えば、クランクシャフト及び/又はカムシャフトのサポート用軸受や、コネクションロッドの大端部軸受及び小端部ブッシュのように、エンジンに一般に用いられる。
【0003】
従来、内燃機関に用いられる軸受は積層構造を有し、強靭な裏当材を備える基材は、クランクシャフトジャーナルのような協働する可動部に面して用いられる摺動面を設けるために、好ましいトライボロジー特性を有する1層以上の層でコーティングされている。既知の軸受シェルにおいて、基材は、ライニング層(通常は、100-300μm厚のアルミ合金又は青銅製)でコーティングされた裏当(通常は、1-3mm厚のスチール製)を備え、基材は、さらにオーバーレイがコーティングされている。このオーバーレイは、典型的には6-25μm厚であり、プラスチックポリマーベースの複合層(例えば、ポリアミドイミドのオーバーレイ)、又は金属合金層(例えば、スズ系の合金のオーバーレイ)によって形成されてもよい。
【0004】
このような軸受要素は、回転可能なシャフトを受け入れて支持するためのボアを定義するために組み合わされる一対の相補的な軸受シェル(一般に、上部及び下部の軸受シェルとして配置される)を典型的には備える。軸受要素の支持構造は、例えばエンジンキャップとエンジンプロックとを備えるエンジンハウジング、又はコネクティングロッドハウジングのようなハウジングの2つの相補的なセクション又は部分によって一般的には提供され、これら2つの相補的なセクション又は部分は、シャフト及び軸受シェルの周りで組み合わされて、シャフトに接して支持する滑り面を提供する。
【0005】
このような軸受要素は、軸受シェルと回転シャフトとの間に位置する軸受隙間の中に潤滑油の薄膜を維持するために、流体力学的な潤滑剤を必要とする。潤滑剤がなければ軸受の摩擦の増大、温度上昇、急速な摩耗につながり、金属同士が接触するリスクを向上させ、最終的なシャフトの焼き付け及び/又はクランクシャフトの損傷につながることになる、滑り面とシャフトとの間の直接的な接触を防ぐために、潤滑剤が必要とされる。
【0006】
軸受に油をさすため、内燃機関には、軸受シェルと回転シャフトとの間の軸受隙間に、圧力をかけて潤滑油を送り込むオイルポンプが典型的には設けられる。この潤滑油は、一方又は両方の軸受シェルの内側表面に(例えば、一方又は両方の軸受シェルの内側表面の溝に)送り込まれる。エンジンに用いられる軸受要素は、組み合わせられてシャフトの孔を形成する2つの軸受シェルが典型的には備えられるので、その構造上、ジョイント面(軸受シェルが組み合わせられたときに互いに突き当たる、両方の軸受シェルの両端の内側と外側との曲面を接続する短い面)において油が軸方向に漏れることがある。これにより、油が軸受隙間を通過し、走行面から出ることになる。したがって、一般に、エンジンは、走行面とシャフトとの間の油の薄膜を維持するため必要な油圧を維持するために、また、上述の好ましくない影響を避けるために、高い流量を有するオイルポンプを必要とする。
【0007】
エンジン用の軸受要素の製造では、軸受シェルの両端においてリリーフ領域のある各軸受シェルを設けることが一般的である。このリリーフ領域は、ジョイント面のリリーフ領域(ボアリリーフ領域)及び/又は偏心のリリーフ領域を備え得る。端面に隣接するリリーフ領域は、軸受隙間を局所的に増大させ、軸受隙間は隣接する端面に向かって増大する。
【0008】
偏心のリリーフ領域は、クラウン(円周方向における端面と端面との間の中間部)よりも大きな軸受隙間を提供するために機械加工(例えば、ボア加工)された領域である。一般に、偏心のリリーフ領域は、クラウンまで、又はクラウンの近くまで広がっている。例えば、偏心のレリーフは、シャフトの回転中心に対して、対応する軸受シェルから僅かに離れた曲率中心の周りで湾曲するように機械加工され得て、回転軸とクラウンにおける内面と間の距離よりも僅かに大きい曲率半径を有する。偏心量は、使用時に、シャフトの動きを制御し、エンジンノイズを抑制しながら、軸受から放熱するために十分な油量を提供する。偏心のリリーフ領域は、隣接する端面から90度を超えない範囲に典型的には広がっている。
【0009】
クラッシュリリーフやボアリリーフとしても知られる、ジョイント面のリリーフの区域を除外するために、ある特定の高さ又は角度における軸受の壁厚さの最小値を測定することが受け入れられる。
【0010】
偏心量は、クラウンにおけるシェルの厚さから、特定の偏心角度又は偏心点におけるシェルの壁の厚さを引いた差によって定義される。偏心角度は、軸受の外面の幾何学的な中央に対する、ハーフシェルのジョイント面からの角度として定義される。
【0011】
従来、上下の両方のハーフベアリングは同一の輪郭で設計され、通常、偏心のベアリングにおいて、両方の軸受ハーフシェルは、同じ厚さの輪郭と同じ偏心量とを有する。
【0012】
しかしながら、エンジンのクランクシャフトやコンロッドの流体軸受における負荷や歪みの非対称性のために、場合によっては、非同一の軸受面を有するハーフシェルを備えた軸受もある。
【0013】
そのような先行技術の軸受が、DE2359634Aに開示されており、「デルタウォール」軸受として知られている。DE2359634Aは、2つの軸受シェルの半分からなるラジアル滑り軸受を開示しており、この2つの半円状の軸受シェルの半分は、異なる内径を有する。この各軸受シェルの半殻の壁厚さは均一であり、半径の大きい(つまり壁が薄い)軸受シェルの半分は、走行中の大きな弾性の復元力を受ける軸受ブラケット側に配置される。厚い方の軸受のハーフシェルは、走行中に負荷がかけられる軸受の半分に配置され、一方で薄い方のハーフシェルは、負荷がかけられない軸受の半分に配置される。
【0014】
一方でDE3262556D1において、偏心の軸受面のハーフシェルは、コンロッド大端部軸受の負荷がかけられないキャップ側に用いられ、一方で非偏心の軸受面は、軸受の負荷がかけられるロッド側に用いられる。DE3262556D1には、軸受が比較的高い引張荷重の下で変形するときに、軸受シェルの偏心の半分が、動作状態において軸受の円形状-円筒形状が確立されるような方法で変形することが記載されている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、これから参照されるべき添付された独立請求項により定義されるような、軸受及び軸受の製造方法を提供する。本発明の好ましい又は有利な特徴は、従属項に記載される。
【0016】
よって、本発明の第1局面は、第1ハーフシェルと第2ハーフシェルとを備えた軸受を提供し得て、第1ハーフシェルと第2ハーフシェルとは、ジョイントにより接続されて円筒軸受を形成するように構成されている。第2軸受ハーフシェルは、偏心の第2ハーフシェルである(すなわち、ハーフシェルは偏心の軸受面を有している)。
【0017】
第1ハーフシェルは、第1ハーフシェルのクラウンにおいて第1クラウン厚さを有し、クラウンとジョイントとの間に第1壁厚さを有する。第2ハーフシェルは、第2ハーフシェルのクラウンにおいて第2クラウン厚さを有し、クラウンとジョイントとの間に第2壁厚さを有する。第2クラウン厚さは、第1クラウン厚さよりも大きい。
【0018】
第1壁厚さは、ジョイントから10度-60度の間の厚さの等しい点において、第2壁厚さと等しくなり得る。
【0019】
この2つの軸受ハーフシェルは、それぞれのジョイント面を接続して円筒形状のシェルを形成する半円筒形状のハーフシェルであるので、2つのハーフシェルが接続されたときに、円筒軸受は180度離れた2つのジョイントを備える。等距離点は、円筒軸受の幾何学的な中央に対して、ジョイントから、又はハーフシェルのジョイント面から測定された角距離として定義される。
【0020】
各軸受ハーフシェルは、湾曲したシェルの内側(凹状側)に軸受面を備える。ハーフシェルは偏心の軸受面を有し得るので、軸受の幾何学的な中央は、軸受の外周面に対して定義される。2つのハーフシェルが互いに接続されたとき、ハーフシェルの外側表面は、軸受ハウジングの円筒形状のボアに受け入れられるように構成された円筒軸受を形成する。第2ハーフシェルの軸受面の偏心量に起因して、第2軸受シェルの厚さは、クラウンとジョイント面との間で変化する。これにより、第2壁厚さは、ハーフシェル上の角度位置によって変化する。
【0021】
第1軸受ハーフシェルは、第1軸受ハーフシェルが偏心しないように、半円形状の輪郭と均一な壁厚さとを有し得る。代替的には、第1ハーフシェルは、偏心の第1ハーフシェル(すなわち、偏心の軸受面を有するハーフシェル)であり得る。第1ハーフシェルが偏心している場合には、第1軸受シェルの厚さはクラウンとジョイント面との間で変化するので、第1壁厚さはハーフシェル上の角度位置によって変化する。
【0022】
軸受ハーフシェルの壁厚さは、軸受の含む層数に関わらず、軸受の総計の厚さになる。よって、壁厚さは、軸受の円筒形状の外側表面と、使用時に走行することになるジャーナルが接触する偏心の軸受面と、の間の軸受シェルの厚さである。
【0023】
よって、本発明の軸受は、異なる厚さのクラウンを有し、第1壁厚さと第2壁厚さとが等しい、ジョイントから10度-60度の間の厚さの等しい点を有する、2つの軸受ハーフシェルを備える。この異なるクラウン厚さと厚さの等しい点において一致する壁厚さとは、第1軸受ハーフシェルと第2軸受ハーフシェルとが異なる偏心量を有することを意味する。
【0024】
本願の発明者らは、レシプロエンジン又はピストンエンジンの軸受において、円筒形状の軸受のハーフシェルは、走行中に高い非対称の負荷がかかる状態を経験し得ることを理解している。例えば、コネクティングロッド(コンロッド)軸受では、一方のハーフシェルは比較的硬い上部(ロッド)側に保持される間、他方のハーフシェルは比較的フレキシブルな下方(キャップ)側に保持される。このような用途として従来の対称軸受ハーフシェルが使用されたとき、高いピーク油膜圧力(POFP)が、コンロッド大端部の硬い中央部によって引き起こされる。軸受の偏心量を減らすことは高いPOFPを減少させ得るが、このような軸受は下方シェル(キャップ側シェル)の偏心量を減らすと、ボアリリーフの端部に近い領域において、エンジンスピードが高い際に接触の激しさ及び焼き付けのリスクが増加する。
【0025】
本発明は、異なる偏心量を有するハーフシェルを有しており、第1ハーフシェルが、POFPを減らす小さい偏心量を備え、一方で第2ハーフシェルが、エンジンスピードが高い際の接触の激しさと焼き付けリスクとを抑制する大きい偏心量を保持することよって、これらの問題を解決する。2つの偏心したハーフシェルの軸受ボアの間でのスムーズな移動を提供するために、ハーフシェルの壁厚さが厚さの等しい点において一致するように構成されているので、第2ハーフシェルの大きい偏心量は、第1ハーフシェルよりも大きいクラウン厚さを持つ第2ハーフシェルを設けることによって達成される。
【0026】
本発明は、2つの軸受の半分のクラウン厚さを変えることによって、多くの先行技術の軸受とは異なる。例えば、DE3262556D1では、両方のクラウン厚さは同一であり、2つの軸受シェルが同じ壁厚さを有する点はない。DE3262556D1のデルタウォール軸受は、異なるクラウン厚さを有する2つのハーフシェルが開示されてはいるが、これらの半分の軸受は均一な厚さを有するものであり、ハーフシェルの壁はジョイント面から10度-60度の間の点において等しくない。
【0027】
第1ハーフシェルの輪郭の厚さは、好ましくは第1クラウンに対して対称であり、第2ハーフシェルの輪郭の厚さは、好ましくは第2クラウンに対して対称である。
【0028】
第1壁厚さは、厚さの等しい点における第1ハーフシェルの厚さである。第2壁厚さは、厚さの等しい点における第2ハーフシェルの厚さである。厚さの等しい点は、ジョイントからの角距離、又はハーフシェルのそれぞれのジョイント面からの角距離によって定義される位置である。ハーフシェルはいずれの端部にもジョイント面を有するので、よって各ハーフシェルは、クラウンに対して対称に配置された2つの厚さの等しい点を有する。
【0029】
厚さの等しい点は、第1ハーフシェルの壁厚さが第2ハーフシェルの壁厚さと等しい点である。厚さの等しい点の角度位置は軸受の種類によって変化し得るが、ジョイント面(ハーフシェルの端部)から10度-60度の間に配置されるべきである。換言すれば、厚さの等しい点は、それぞれのハーフシェルのクラウンから30度-80度の間にあり得る。
【0030】
特に好ましい実施形態において、例えば、2つのハーフシェルは、厚さの等しい点がジョイントから25度の角度位置に配置されるように構成され得る。よって、ジョイントから25度の角度位置において、第1ハーフシェルは第1壁厚さを有し、第2ハーフシェルは第1壁厚さと同一の第2壁厚さを有する。
【0031】
好ましくは、厚さの等しい点は、軸受のボアリリーフ領域やクラッシュリリーフ領域にはない。ボアリリーフ領域は、典型的にはジョイントから10度-15度より小さい角距離にわたって延びている。
【0032】
第1壁厚さは、ジョイントから15度より大きい、又は17.5度より大きい、又は20度より大きい、又は22.5度より大きい厚さの等しい点において、第2壁厚さと等しくなり得る。厚さの等しい点は、ジョイントから45度より小さく、例えば、ジョイントから35度より小さく配置され得る。
【0033】
特に好ましい実施形態において、第1壁厚さは、ジョイントから25度の角距離における厚さの等しい点において、第2壁厚さと等しくなり得る。
【0034】
厚さの等しい点は、代替的に、厚さの等しい位置又は等厚位置と記述され得る。
【0035】
第1ハーフシェルと第2ハーフシェルとは、ジョイントにおいて同じ厚さを有し得る。
【0036】
軸受ハーフシェルのクラウンは、半円筒形状のハーフシェルの中央である。よって、第1クラウン厚さと第2クラウン厚さとは、ジョイントから90度の角距離において測定される。
【0037】
軸受の寸法は、軸受の意図される用途に応じて変化し得る。
【0038】
いくつかの特に好ましい実施形態において、第2クラウン厚さは、第1クラウン厚さよりも少なくとも6μmだけ大きい。例えば、第2クラウン厚さは、第1クラウン厚さよりも6μmと20μmとの間の分だけ大きくなり得て、又は第1クラウン厚さよりも10μmと16μmとの間の分だけ大きくなり得る。発明者らは、このようなクラウン厚さの差が、例えば、自動車用のレシプロエンジンのための主軸受やコンロッド大端部軸受などの軸受である、乗用車のエンジンの軸受のために、特に有利であることを発見した。
【0039】
「偏心」軸受は、半円形状の代わりに、軸受の壁厚さの変化に起因する楕円形状つまり「レモン」形状の横断面の軸受面を有する。偏心量は、典型的には軸受のクラウンと、クラウン又はジョイント面から所定角度での軸受の部分と、の間の軸受厚さの差として定義される。
【0040】
軸受の偏心量の理論上の最大値は、軸受の半径とジャーナルの半径(ラジアルオイル隙間)との間の差の値に等しい。これら半径の間の大きな差は、特に高速回転の際に、安定した流体力学的な潤滑剤の定着に寄与する。一方で、ジャーナルの直径よりも著しく大きい直径を持つ軸受は、低負荷下において振動及びノッキングが発生し得る。
【0041】
オイル隙間を変えずに軸受の偏心量を大きくするために、軸受面の内側が、軸受の壁厚さを変えることによって非円形状のレモン形状に加工される。軸受の壁は中央のクラウンにおいて最も厚く、ハーフシェルのいずれかの端部におけるジョイント面に向かって徐々に薄くなる。
【0042】
本発明において、第2ハーフシェルは第2偏心量を有し得る。第2偏心量は、第2クラウン厚さから、偏心角度又は偏心点におけるシェルの壁厚さを引いた値によって定義され得る。偏心点の正確な位置は業界によって異なり、その理由は、異なる出典では偏心量を定量化するために異なる方法が用いられるからである。
【0043】
好ましい実施形態において、好ましくは、偏心角度は、軸受の外側表面の幾何学的な中央に対して、ジョイントから25度として定義され得る。
【0044】
好ましい実施形態において、第1ハーフシェルは、第1偏心量を持つ偏心のハーフシェルである。第1偏心量は、第1クラウン厚さから偏心角度又は偏心点における第2壁厚さを引いた値によって定義され得る。
【0045】
本発明の好ましい実施形態において、第1偏心量は、1μmと10μmとの間にあり得て、又は1μmと5μmとの間にあり得て、又は2μmと4μmとの間にあり得る。
【0046】
好ましい実施形態において、第2偏心量は、10μmと35μmとの間にあり得て、又は10μmと30μmとの間にあり得て、又は11μmと21μmとの間にあり得て、又は15μmと17μmとの間にあり得る。偏心量の大きさは、軸受について意図される用途に応じて変化し得る。例えば、高負荷又はモータースポーツの用途において、より大きい偏心量が望まれ得る。
【0047】
特に好ましくは、第2ハーフシェルは、第1ハーフシェルの第1偏心量よりも大きい第2偏心量を有する。換言すれば、第2クラウン厚さと偏心点における第2壁厚さとの間の差が、第1クラウン厚さと偏心点における第1壁厚さとの差よりも大きい。
【0048】
好ましい実施形態において、偏心点は、厚さの等しい点と同じである。特に好ましくは、偏心点はジョイントから25度にあり、厚さの等しい点はジョイントから25度にある。
【0049】
この実施形態において、厚さの等しい点において第1壁厚さと一致することは、異なる偏心量が主にクラウン厚さの差によって決定されることを意味する。第2偏心量は、いくつかの好ましい実施形態において、第1偏心量よりも6μmと20μmとの間の分だけ大きくなり得て、又は第1偏心量よりも10μmと16μmとの間の分だけ大きくなり得る。
【0050】
好ましくは、第1ハーフシェルは、少なくとも140度、又は少なくとも160度、又は少なくとも170度の角距離にわたって、又は軸受面全体にわたって、一定の曲率半径を有する第1軸受面を有する。
【0051】
好ましくは、第2ハーフシェルは、少なくとも140度、又は少なくとも160度、又は少なくとも170度の角距離にわたって、又は軸受面全体にわたって、一定の曲率半径を有する第2軸受面を有する。
【0052】
好ましくは、第1ハーフシェル及び第2ハーフシェルの軸受面には、それぞれに1つのボアが形成され、ボアは均一な曲率半径を付与する。しかしながら、軸受面には、ジョイント面に隣接するボアリリーフ領域が設けられ得る。ジョイント面リリーフとしても知られるボアリリーフは、典型的にはハーフシェルの比較的小さい端部領域にわたって形成されており、例えば、ジョイント面から最大で10度又は14度まで延ばされ得る。軸受面には、ジョイント面から最大で10度又は15度まで延びるボアリリーフ領域が設けられ得る。他の実施形態では、また、軸受がボアリリーフ領域の外側よりも大きい角度において厚さの等しい点も備えさえすれば、軸受面には、ジョイント面から最大で20度まで延びるボアリリーフ領域が設けられ得る。ボアリリーフ領域(存在する場合)以外では、好ましくは、軸受面は均一な曲率半径を有する。
【0053】
本発明の軸受において、好ましくは、第1ハーフシェルは、負荷がかけられるハーフシェルとして構成され、第1ハーフシェルは、負荷がかけられないハーフシェルとして構成される。よって、第2ハーフシェルは、第1ハーフシェルよりも大きい偏心量を有しており、好ましくは、負荷がかけられないハーフシェルとして用いられる。第2ハーフシェルは、より厚いクラウンを有しており、好ましくは、負荷がかけられない位置において用いられる。これは、デルタウォールについての先行技術によって教示される構成とは明白に逆である。DE2359634Aにおいて、より厚い軸受ハーフシェルは、走行している間は負荷がかけられる。
【0054】
本発明の好ましい実施形態に係る軸受は、特に流体潤滑や流体力学的な用途における使用に適し得る。この軸受は、流体軸受であり得る。軸受の特に有利な用途は、燃焼機関の滑り軸受や、例えばクランクシャフト及び/又はカムシャフトのサポート用軸受、大端部軸受及び小端部ブッシュなどがある。本発明の好ましい実施形態に係る軸受は、特に、従来型のエンジンよりもエンジンの寿命にわたって実質的に多数の始動にさらされるエンジンであり、均一な潤滑油の流体力学的な薄膜が軸受面/滑り面に定着する前にクランクシャフトが静止状態から定期的に加速される、アイドリングストップエンジン技術が装備されたエンジンを含む車両のエンジンでの使用に適し得る。
【0055】
この軸受は、コンロッド大端部軸受、コンロッド小端部軸受、主軸受、ジャーナル軸等のような、エンジンのための滑り要素であり得る。特に好ましくは、軸受は、自動車のエンジン、陸上配備型の発電機、又は船舶のエンジンなどのエンジンでの使用に適し得る。
【0056】
1つの好ましい実施形態において、この軸受は、レシプロエンジンのためのコネクティングロッド大端部軸受である。第1ハーフシェルは、好ましくはコネクティングロッド大端部軸受のロッド側であり、第2ハーフシェルは、好ましくはコネクティングロッド大端部軸受のキャップ側である。この構成において、第1ハーフシェルは負荷がかけられるハーフシェルとなるように構成され、一方でより偏心する第2ハーフシェルは負荷がかけられないハーフシェルとなるように構成されている。
【0057】
他の好ましい実施形態において、この軸受は、レシプロエンジンのための主軸受となり得る。
【0058】
好ましくは、第1軸受シェル及び第2軸受シェルの少なくとも1つには、識別マーク(又はポカよけ)が設けられている。これは、適切な配置にする(例えば、上側と下側の軸受シェルとして配置される)ための一助となり得る。
【0059】
この軸受は、裏当層及び/又は裏当層の凹状面上のライニング層を備え得る。基材は、軸受のライニング層の凹状面上のオーバーレイ、及び軸受のオーバーレイとライニング層との間の1つ又は複数の中間にある層の、一方又は両方を任意に有し得る。
【0060】
上記参照の壁厚さは、何層あるかに関係なく、外側表面から軸受面/滑り面までの軸受シェルの総計の厚さに関連する。
【0061】
適切な軸受シェルは、鋼製の裏当、アルミニウムベース又は銅ベース(銅-錫、青銅ベースの合金を含む)の合金製の軸受のライニング層、任意の中間層、及びスプレー又は印刷によって軸受のライニング層又は中間層に適用され得るポリマーオーバーレイ又は滑り層を有し得る。このオーバーレイは、代替的に、電気めっき又はスパッタリングによって堆積された金属ベースのオーバーレイ層であり得る。
【0062】
軸受シェルの湾曲した内側表面は、典型的には、耐摩耗性や耐疲労性などのハードな特性及び耐焼き付け性などのソフトな特性をバランス良く有し、適合性及び埋込み性が改良された滑り面が要求される。それにより、軸受のライニング層又はいくつかのオーバーレイ層は、軸受シェルの滑り面を提供する。典型的には、アルミニウムベースの合金製の軸受のライニング層を持つ軸受シェルは、適した滑り面を提供し得て、オーバーレイを必要とし得ない。対照的に、銅ベースの合金製の軸受のライニング層を持つ軸受シェルの銅ベースの合金は、滑り面に適した特性を提供し得ず、オーバーレイが設けられ得る。他の適切なオーバーレイ材料は、当業者には容易に明らかになるだろう。
【0063】
適切なオーバーレイ材料は、以下のいずれかを含み得る。それは、ポリアミドイミド樹脂、エポキシ樹脂、フッ素重合体(例えばPTFE)、又はこれら材料のいくつかの組合せである。他の適切な材料は、当業者には容易に明らかになるだろう。このポリマーは、微粒子とプラスチックポリマーマトリックスとの複合材料を備え得る。微粒子は、硬質微粒子(例えば、セラミックパウダー、シリカ、アルミニウムフレーク等のような金属パウダー)及び/又は軟質微粒子(例えば、MoS2及びグラファイト、及びPTFE等のようなフッ素重合体)であり得る。ポリマーは、ポリアミドイミドプラスチックポリマー材料のマトリックスを備え得て、マトリックス全体に分散された、約5-約15vоl%の間の値の金属パウダー、約1-約15vоl%の間の値のフッ素重合体、残りは偶発的な不純物を除いたポリイミドアミド樹脂を有している。
【0064】
第2局面
本発明の第2曲面において、半円筒形状の第1ハーフシェルと半円筒形状の第2ハーフシェルとを備える軸受が提供され得て、第1ハーフシェル及び第2ハーフシェルは、ジョイントにおいて接続して円筒軸受を形成するように構成されている。第1ハーフシェルは、第1ハーフシェルのクラウンにおいて第1クラウン厚さを有し、クラウンとジョイントとの間において第1壁厚さを有し、少なくとも140度の角距離にわたって一定の曲率半径を有する第1軸受面を有する。第2ハーフシェルは、第2ハーフシェルのクラウンにおいて第2クラウン厚さを有し、クラウンとジョイントとの間において第2壁厚さを有し、少なくとも140度の角距離にわたって一定の曲率半径を有する第2軸受面を有する。好ましくは、第1壁厚さは、ジョイントから10度-60度の間の厚さの等しい点において、第2壁厚さと等しく、第2クラウン厚さは、第1クラウン厚さよりも大きい。
【0065】
本発明の第1局面に関する上述された軸受の全ての特徴は、第2局面にも同様に適用可能である。
【0066】
製造方法
本発明の第3局面において、軸受の製造方法が提供され得て、第1クラウン厚さと、第1クラウンとジョイント面との間の第1壁厚さと、を有する第1ハーフシェルを形成するステップと、第2クラウン厚さと、第2クラウンとジョイント面との間の第2壁厚さと、を有する第2ハーフシェルを形成するステップと、を含み、第2クラウン厚さは、第1クラウン厚さよりも大きく、第1壁厚さは、前記ジョイント面から10度-60度の間の厚さが等しい点において、前記第2壁厚さと等しい。この方法は、第1曲率半径を有する第1ハーフシェルの第1軸受面を形成するステップを備え得る。第1ハーフシェルの軸受面は、半円形状(すなわち、非偏心)であり得て、その場合には、第1軸受面の中央は、第1ハーフシェルの外側表面の幾何学的な中央と同じになるだろう。代替的に、第1ハーフシェルは偏心であり得て、その場合には、第1軸受面の幾何学的な中央は、第1ハーフシェルの幾何学的な中央に対してオフセットされ得る。
【0067】
このステップは、ボア加工工具の軸が軸受シェルの軸に平行に合わされた状態で、ハーフシェルの凹状側をドリル加工又はボア加工することよって実行され得る。このボアの輪郭は、得られた表面の曲率半径がボア加工具の有する曲率半径を選択することによって制御され得るような、円形状である。
【0068】
この方法は、第1軸受面とは異なる第2曲率半径を有する第2ハーフシェルの第2軸受面を形成するステップであって、第2軸受面の中央は、第2ハーフシェルの幾何学的な中央に対してオフセットされている、第2軸受面を形成するステップを備え得る。
【0069】
第2の軸受面は、ボア加工具の中央を軸受の外径として定義するカップの中央からオフセットした状態でボア加工することによって形成される。したがって、ボアは円形(軸受が円形ハウジングに装着されるとき)であり、第2曲率半径は外径の曲率半径よりも大きくなる。
【0070】
好ましくは、第1ハーフシェル及び第2ハーフシェルの両方は、偏心の軸受ハーフシェルとして形成され、その場合には、第1ハーフシェルは同じ方法により加工され得る。
【0071】
好ましくは、第2軸受面の曲率半径は、第1軸受面の曲率半径よりも大きい。
【0072】
第1曲率半径及び第2曲率半径は、第1ハーフシェル及び第2ハーフシェルの厚さが等しい点が、ジョイント面から10度-60度の間のどこかにあるように選択されなければならない。
【0073】
この方法は、第1偏心量を有する第1ハーフシェルを形成するステップと、第1偏心量よりも大きい第2偏心量を有する第2ハーフシェルを形成するステップとを含み得る。
【0074】
この方法は、第1ハーフシェル及び/又は第2ハーフシェル上にボアリリーフ領域又はジョイントリリーフ領域を形成するステップを含み得る。ボアリリーフ領域は、それぞれ第1軸受シェル又は第2軸受シェルから材料を除去することによって形成され得る。ボアリリーフ領域は、厚さの等しい点ボアリリーフ領域に配置されないように、ジョイント面の10度又は15度以内に形成され得る。
【0075】
この方法は、この技術分野の従来技術のように、各軸受ハーフシェルの軸受面に摺動層を塗布するステップを含み得る。
【0076】
本発明の第1局面及び第2局面に関する上述された軸受の全ての特徴は、第3局面にも同様に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0077】
次に、本発明のいくつかの例又は好ましい実施形態を、単なる例示として、添付図面を参照して詳細に述べる。
図1図1は、「デルタウォール」設計に係る先行技術の滑り軸受の概略図を示す。
図2図2は、本発明の実施形態に係る軸受を端部から見た概略図を示す。
図3図3は、本発明の実施形態に係る大端部軸受を備える、内燃機関のためのコネクティングロッドの概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0078】
図1は、先行技術に知られる「デルタウォール」設計を有する滑り軸受10と、軸受10の中に配置された軸受ジャーナル20とを示す。
【0079】
このデルタウォールの軸受10は、半円筒形状の第1ハーフシェル30と半円筒形状の第2ハーフシェル40とを含む。この2つのハーフシェルの壁厚さは異なり、第1ハーフシェル30は第2ハーフシェル40よりも厚い壁を有しているが、各ハーフシェルの壁厚さはそのハーフシェルにわたって均一である。壁厚さの差が、ジャーナルに面する軸受面の曲率半径の差につながっている。より厚い第1ハーフシェルは、第1軸受面のより小さい曲率半径rにつながり、第1軸受面とジャーナルとの間の隙間が小さくなる。第2ハーフシェルは、薄いシェル壁を有し、第2軸受面は大きい曲率半径Rを有するので、ジャーナルと第2ハーフシェルとの間には大きな隙間がある。
【0080】
DE2359634A1は、デルタウォール軸受10に関しており、より大きい曲率半径Rを持つ軸受面(この場合は第2ハーフシェル40)がコンロッド大端部軸受のよりフレキシブルなキャップ側に配置されるべきであることを教示する。この文献は、より厚い第1ハーフシェル20をロッド側に配置することによって、コンロッドが圧縮荷重をうけた時に、第1ハーフシェル20の厚さが増加し曲率半径rが減少することによって、軸受の耐加重が増加することを教示する。引張応力が生じた場合には、より薄い第2ハーフシェル40が変形するが、大きな曲率半径によって許容される横方向の遊びが大きくなるため、DE2359634A1は、ジョイントの近傍における横方向の詰まりが防止されることを教示する。よってDE2359634A1は、より厚いクラウンを有するハーフシェルは負荷がかけられない位置に配置される本発明からは遠ざかるような教示しかしていない。
【0081】
デルタウォールの軸受10は、ハーフシェルとハーフシェルとの間のジョイントのすぐ近くの領域にジョイント面のリリーフが設けられ得て、ジョイント面のリリーフは、典型的にはジョイントから数度の角距離にわたっているが、図示を容易にするために、図1ではジョイント面のリリーフは省略されている。
【0082】
図2は、本発明の軸受10の好ましい実施形態を示す。相対的な寸法は、図示のために誇張されている。
【0083】
軸受100は、2つの半円筒形状のハーフシェルで構成された円筒軸受である。各ハーフシェルは、半円筒形状の外側表面と2つのジョイント面125とを有しており、図に示すように2つのハーフシェルが円筒軸受に組み合せて接続されるときに、軸受100の外側表面は円筒形の形状になる。
【0084】
軸受ジャーナル200は、軸受100の内部の位置に図示されている。
【0085】
軸受100は、半円筒形状の第1ハーフシェル110と半円筒形状の第2ハーフシェル140とで構成されている。
【0086】
第1ハーフシェルは第1クラウン厚さWを有し、第1クラウン厚さWは、ハーフシェルの両端における2つのジョイント面125の間の中間にある第1クラウン120におけるシェル壁の厚さである。軸受シェルのためのクラウン厚さの範囲は技術的に知られており、正確な厚さは、所定の軸受について意図される用途に応じて変化し得る。
【0087】
第1ハーフシェルの凹状の内側表面は、第1ハーフシェルの第1軸受面130を形成する。使用時において、上述のように、軸受面はさらなる層群によって覆われることになるが、図示を簡単にするために、これらのさらなる層群は図には示されていない。
【0088】
第1軸受面は、第1ハーフシェルが半周にわたって均一な壁厚さを有さないように、偏心している。その代わりに、第1ハーフシェルは、第1クラウン120において最も厚く、2つのジョイント面125においてより薄くなる。
【0089】
第2ハーフシェル140は、第2クラウン厚さW’を有し、第2クラウン厚さW’は、ハーフシェルの両端である2つのジョイント面125の間の中間にある第2クラウン150におけるシェル壁の厚さである。軸受シェルのためのクラウン厚さの範囲は技術的に知られており、正確な厚さは、所定の軸受について意図される用途に応じて変化し得る。
【0090】
第2ハーフシェルの凹状の内側表面は、第2ハーフシェルの第2軸受面160を形成する。
【0091】
第2ハーフシェル140は、均一な壁厚さを有していない。その代わりに、第2ハーフシェルは、第2クラウン150において最も厚く、2つのジョイント面125においてより薄くなるので、第2軸受面160が偏心している。第2クラウン厚さW’は、第2ハーフシェル140が第1ハーフシェル110よりも著しく大きい偏心量を有するように、第2クラウン厚さWよりも著しく大きい。
【0092】
ジョイント面125の両側にある4箇所の厚さの等しい点においては、第1ハーフシェル及び第2ハーフシェルの両方の壁の厚さが等しいが、これは、全ての壁が厚さWIIを有するからである。円筒状の外側表面に対する軸受100の幾何学的な中央から測定される、ジョイント面からのこの角距離において、各ハーフシェルの壁は同じ厚さを有する。ジョイント面125からのこの角距離は、等しい厚さの点として定義される。
【0093】
本発明の範囲において種々の実施形態が可能であり、よって厚さの等しい点の正確な位置は、ジョイント面125から約10度-60度の範囲内で、又はジョイント面125から約15度-60度、約20度-60度の範囲内で変化し得る。
【0094】
図2に示される好ましい実施形態において、第1ハーフシェル及び第2ハーフシェル両方の壁がジョイント面125から25度においてWIIの厚さを有するように、ジョイント面125から角距離25度において厚さの等しい点が配置される。両方のハーフシェルは、それぞれのクラウンについて対称であるので、シェルの壁は、ハーフシェルのいずれの端部においてもジョイント面から25度においてWIIの厚さを有する。
【0095】
各ハーフシェルの偏心量は、クラウン厚さと軸受の外面の幾何学的な中央に対する偏心点における壁厚さとの差により定義され、好ましい実施形態において偏心点はジョイントから25度であり得る。本実施形態における偏心角度は厚さの等しい点の角度位置と同じであるが、これは本質的ではない。その理由は、厚さの等しい点は異なった角度において配置され得て、偏心量の代替の定義がこの技術分野においては用いられるからである。
【0096】
本実施形態において、偏心角度は厚さの等しい点の角度位置と同じであるので、第1ハーフシェル110の偏心量はW-WII=第1偏心量として計算され得て、第2ハーフシェル140の偏心量はW’-WII=第2偏心量として計算され得る。
【0097】
特に好ましい実施形態において、第2ハーフシェル140は16μmの第2偏心量を有するが、第1ハーフシェル110はわずか3μmの第1偏心量しか有しない。この差は、第2クラウンと第1クラウンとの間の厚さの差によって生じる。
【0098】
とW’との間の差は、偏心量の差と等しい(WはW’よりも薄いとき)。この例では、偏心量の差は16μm-3μm=13μmであり、そのためWはW’よりも13μm小さい。
【0099】
とW’との正確な値は、上述の条件を維持しながら、軸受について必要な全ての隙間を得るために簡単に調整され得る。
【0100】
見やすくするため図2には図示されてはいないが、第1ハーフシェル及び第2ハーフシェルの両方には、ジョイント面の両側にジョイント面のリリーフ領域が設けられる。このようなジョイント面のリリーフ領域は、ジョイントの両側に10度までだけ、又は15度までだけ延ばされるべきである。厚さの等しい点は、ジョイント面のリリーフ領域には配置されない。
【0101】
図3は、内燃機関のためのコンロッド大端部軸受として使用される軸受100を示す。この実施形態において、より偏心の小さい第1ハーフシェル110は、使用時に負荷がかけられるロッド側のハーフシェルとして用いられ、一方でより偏心の大きい第2ハーフシェル140は、負荷がかけられないが、よりフレキシブルなコンロッド300のエンドキャップ310上のキャップ側のハーフシェルとして配置される。この配置は、負荷がかけられるロッド側のハーフシェルとして厚いハーフシェルが用いられた、デルタウォールの先行技術の軸受に用いられた配置とは反対である。
【0102】
本発明に係る軸受シェルは、ストリップ材料から製造される。例えば、ダイプレスやロールフォーミングによって、ストリップ材料からブランクが打ち抜かれて、半円形状の軸受シェルが形成される。それから、所望のオーバーハングが部分的に表面をクリアリングすることよって作られ、次いで、軸受シェルの幅が最終寸法にさせられ、エッジが壊される。軸受面の偏心の輪郭は、偏心のハーフシェルを製造するために知られている方法である、ドリル加工又はブローチ加工によって製造される。しかしながら、先行技術の方法とは対照的に、第1ハーフシェルと第2ハーフシェルとは、異なる直径のドリルビットを使用して製造される。
【0103】
軸受面は、ドリルビットの中央を軸受ハーフシェルの幾何学的な中央からオフセットして配置することによって偏心させられる。よってドリルビットの外周は、ハーフシェルの凹状の内側に一定の曲率半径の軸受面を形成し、ハーフシェルには、クラウンにおいて最も厚く、ジョイント面の近くの端部に向かって薄くなる、不均一な厚みが付与される。
【0104】
異なる偏心量を有するが、厚さの等しい点において等しい壁厚さの2つのハーフシェルを製造するために、異なる直径のドリルビットが用いられる。
【0105】
このハーフシェルには、既知の方法を用いてジョイント面のリリーフ領域が設けられ得る。
【0106】
最後に、摺動層が軸受の内側に塗布される。これは、電着塗装によって、スプレーによって、又は電子ビーム蒸着又はスパッタリングのようなPVD法によって、既知の方法で行われ得る。この摺動層は、金属層のいずれかの輪郭全体にわたって均一な厚さで延びている。例えば、鋼製の支持層とアルミ合金製の軸受金属層とからなる2層の滑り軸受の場合、摺動層が省略され得る。本発明は、青銅層の上をカウンターローターが直接的に走行する、摺動層の無い青銅製の軸受にも適用される。軸受シェルの内側の本発明に係る輪郭は、固体材料(青銅)により作られた軸受シェルの場合、及び鋼製の支持層と支持層の上に適用された金属製の軸受の層との軸受シェルの場合、の両方で形成され得る。この金属製の軸受の層は、好ましくは、例えば電気的に摺動層が塗布された青銅により構成される。摺動層は、例えば、アルミ-錫合金により形成され得る。
図1
図2
図3
【外国語明細書】