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  • 特開-羽口の開口装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023172907
(43)【公開日】2023-12-06
(54)【発明の名称】羽口の開口装置
(51)【国際特許分類】
   C21B 7/16 20060101AFI20231129BHJP
【FI】
C21B7/16 303
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023076551
(22)【出願日】2023-05-08
(31)【優先権主張番号】P 2022083688
(32)【優先日】2022-05-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001542
【氏名又は名称】弁理士法人銀座マロニエ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中内 健
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 健也
(72)【発明者】
【氏名】石川 和輝
(72)【発明者】
【氏名】岡本 悠揮
(57)【要約】
【課題】休風後再稼働に備えて羽口開口を実施する場合に、閉塞材を安全かつ迅速に除去することができる羽口の開口装置を提供する。
【解決手段】閉塞した羽口を開口するための羽口の開口装置であって、上部板と、下部板と、上部板と下部板との間に設けられ、上部板が垂直方向に上昇・下降可能となるよう構成された機構と、上部板に設けられたレールと、レール上に設けられ、レールに沿って水平方向に前進・後退可能な台座と、を有する台車と、台車の台座の上に設けられ、閉塞した羽口を開口するための打撃部を有する打撃装置と、を有し、打撃装置の打撃部を羽口に対して水平方向、垂直方向ともに位置決めが可能に構成する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
閉塞した羽口を開口するための羽口の開口装置であって、
上部板と、下部板と、上部板と下部板との間に設けられ、上部板が垂直方向に上昇・下降可能となるよう構成された機構と、上部板に設けられたレールと、レール上に設けられ、レールに沿って水平方向に前進・後退可能な台座と、を有する台車と、
前記台車の台座の上に設けられ、閉塞した羽口を開口するための打撃部を有する打撃装置と、
を有し、前記打撃装置の打撃部を羽口に対して水平方向、垂直方向ともに位置決めが可能に構成した、羽口の開口装置。
【請求項2】
前記打撃装置の打撃部が、金属棒である、請求項1に記載の羽口の開口装置。
【請求項3】
前記打撃装置の打撃部が金属パイプであり、当該金属パイプは気体を吹き付け可能である、請求項1に記載の羽口の開口装置。
【請求項4】
前記台車の上部板に立設された防風板と、防風板に開けられ、前記打撃装置の打撃部を通すことができる穴と、を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の羽口の開口装置。
【請求項5】
前記台車の下部板に立設された把持部を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の羽口の開口装置。
【請求項6】
前記上部板と下部板との間に設けられた機構が、可動支持部を有する十字型に構成されるとともに、上部板を垂直方向に上昇・下降することができる空圧ポンプを有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の羽口の開口装置。
【請求項7】
前記台座が、台車を動かさずに前記打撃装置の打撃部を上下方向に動かすことができる稼働装置を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の羽口の開口装置。
【請求項8】
前記打撃装置の打撃部はさらに斜め方向に位置決め可能である、請求項7に記載の羽口の開口装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、閉塞した羽口を開口するための羽口の開口装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高炉のメンテナンス時には、羽口から高炉内への送風を止めて休風状態にする。このとき、羽口から高炉内に空気が流入すると、高炉内に残留しているコークスの燃焼、鉄滓の生成等の炉内反応が発生するので、これを抑制するために羽口に粘土やプラスチック耐火物を充填して閉塞している。その際、炉熱の回復前に、充填した閉塞材が自然開口や亀裂発生などによって部分的に開口し、開口した部分から少量でも送風が行われると、羽口前面で溶銑滓が生成されてしまう。しかしながら、生成された溶銑滓の流出経路が確保されていないので、羽口前面近傍に滞留し、羽口の溶損を誘発することになる。このため、閉塞材の充填は強固に且つ厚く詰められる傾向にある。
【0003】
羽口に充填された閉塞材の貫通作業は、一般的には、送風支管の開口窓から棒鋼等を挿入し、作業員が棒鋼などで閉塞材を突き抜く作業であり、作業間に高温の熱風が開口窓から吹き返してくるので、作業の安全が確保できる程度に炉内圧力を減圧して作業を実施する。または、減圧下での作業でも困難な場合には、休風して羽口に充填された閉塞材を除去する。羽口に充填された閉塞材の貫通作業において、羽口内面に付着している閉塞材等の付着物を除去しないと、各羽口の送風量のばらつきの発生や、羽口1本あたりに所定の風量を供給することができない。その場合、所望の熱および衝風エネルギーが充分に供給されないので、上述したような羽口の溶損を再び引き起こしてしまう恐れがある。
【0004】
閉塞した羽口の開口方法としては、作業員による送風支管の開口窓から棒鋼等を挿入して閉塞材を突き抜く方法や、あるいは特許文献1で示されるように、短時間で閉塞材を除去するために削岩機を設置した台車などの開口装置を使用する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001-342508号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の開口装置を使用した開口作業でも、送風中に羽口開口をする際、高温の熱風が開口窓から吹き出すため、作業員の安全に配慮し通常減圧して実施している(通常0.05~0.15MPa)。自然開口がないよう充填された閉塞材を除去するには、かなりの回数の棒鋼の突き込みを繰返さなければならなかった。また、貫通後も内面の一部に付着した材料を突き落とすには、内部を覗き込み長尺の棒鋼の先をその位置に当るよう閉塞材に対して垂直方向、斜め方向に正確に突き込んだりしなければならなかった。そのため、高温の熱風が勢いよく噴き出す可能性のある環境での作業となっていた。また、高炉によっては羽口開口作業を行う空間が狭く、安全上また作業環境上悪条件の中での作業となっていた。さらに、特許文献1には、羽口開口作業に用いる台車の記載があるものの、その具体的な構造等は開示されていない。
【0007】
本発明の目的は、上記従来技術の問題点を解決し、休風後再稼働に備えて羽口開口を実施する場合に、閉塞材を安全かつ迅速に除去することができる羽口の開口装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の羽口の開口装置は、前述の課題を解決すべく開発されたものであり、閉塞した羽口を開口するための羽口の開口装置であって、上部板と、下部板と、上部板と下部板との間に設けられ、上部板が垂直方向に上昇・下降可能となるよう構成された機構と、上部板に設けられたレールと、レール上に設けられ、レールに沿って水平方向に前進・後退可能な台座と、を有する台車と、前記台車の台座の上に設けられ、閉塞した羽口を開口するための打撃部を有する打撃装置と、を有し、前記打撃装置の打撃部を羽口に対して水平方向、垂直方向ともに位置決めが可能に構成した、羽口の開口装置である。
【0009】
なお、本発明の羽口の開口装置においては、
(1)前記打撃装置の打撃部が、金属棒であること、
(2)前記打撃装置の打撃部が金属パイプであり、当該金属パイプは気体を吹き付け可能であること、
(3)前記台車の上部板に立設された防風板と、防風板に開けられ、前記打撃装置の打撃部を通すことができる穴と、を有すること、
(4)前記台車の下部板に立設された把持部を有すること、
(5)前記上部板と下部板との間に設けられた機構が、可動支持部を有する十字型に構成されるとともに、上部板を垂直方向に上昇・下降することができる空圧ポンプを有すること、
(6)前記台座が、台車を動かさずに前記打撃装置を上下方向に動かすことができる稼働装置を有すること、
(7)前記打撃装置の打撃部はさらに斜め方向に位置決め可能であること、
がそれぞれ好ましい態様となるものと考えられる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の羽口の開口装置によれば、羽口開口を実施する場合に閉塞材を迅速に除去することができる高炉送風羽口の開口を提供することができ、開口時の減圧時間が短縮され、いち早く復旧に移行することができる。また、作業員の安全性の向上および作業負荷を低減することができ、安全性や作業負荷に対しての減圧時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】高炉の炉体断面の一部を示す断面模式図である。
図2】本発明に係る羽口の開口装置の一実施形態を説明するための模式図である。
図3】本発明に係る羽口の開口装置の他の実施形態を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について具体的に説明する。なお、以下の実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであり、構成を下記のものに特定するものでない。すなわち、本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0013】
<本発明の対象となる高炉操業方法の一例について>
図1は、高炉の炉体断面の一部を示す断面模式図である。図1に示すように、本実施の形態にかかる高炉は、シャフト部、炉腹部、朝顔部、炉床、及び羽口を有する。図1に示す実施形態において、高炉を長期間休風する場合、高炉の羽口直上の原料充填層表面の高さを高炉の朝顔部の上端よりも減じて休風する。その後、羽口から熱風を送風して高炉を通常操業に戻すには、まず、出銑口からバーナを挿入し、バーナから酸素含有ガスまたは酸素含有ガスおよび可燃ガスを吹き込み、炉内に残留したコークスを燃焼させて炉内残留物の体積を減少させる。次に、休風時閉塞した羽口を、羽口開口装置で貫通させたのち、通常操業に戻している。
【0014】
<本発明に係る羽口の開口装置の一例について>
本発明は、羽口から高炉内への送風を止めて休風状態になった高炉のメンテナンス状態から、いち早く復旧に移行するために、作業員の安全性と作業負荷を確保して羽口の閉塞材の貫通する開口作業を実施可能とする羽口の開口装置にかかる。この羽口の開口装置を用いた羽口開口作業においては、メンテナンス状態の高炉の羽口前において、複数の作業員により、羽口の閉塞材を貫通する作業が実施される。
【0015】
図2は、本発明に係る羽口の開口装置の一実施形態を説明するための模式図である。図2に示す実施形態において、羽口の開口装置1は、上部板2と、下部板3と、上部板2と下部板3との間に設けられ、上部板2が垂直方向に上昇・下降可能となるよう構成された機構4と、上部板2に設けられたレール5と、レール5上に設けられ、レール5に沿って水平方向に前進・後退可能な台座6と、を有する台車21と、台車21の台座6の上に設けられ、閉塞した羽口を開口するための打撃部32を有する打撃装置31と、から構成されている。上述したように構成された本発明の羽口の開口装置1は、打撃装置31の打撃部32を羽口に対して水平方向、垂直方向ともに位置決めが可能である。
【0016】
本実施形態において、台車21は、さらに、上部板2の前先端に立設して、中央に穴8が開いた防風板7と、下部板3の後先端に立設して、人が手で握る把持部9を備えている。台車21は、さらに、下部板3の下側にストッパー10を有する車輪11を備えている。上部板2と下部板3との間の機構4は、可動支持部12を有する十字型として構成され、図示しない空圧ポンプの作動により、上部板2を垂直方向に上昇・下降することができる。
【0017】
また、本実施形態において、打撃装置31は、例えば、削岩機である。打撃装置31は、台車21の台座6の上に乗せられた状態で使用される。打撃装置31には、開口部を閉止している羽口を開口する金棒又は金属パイプからなる打撃部32が取り付け可能に構成される。具体的には、打撃装置31は、先端に金棒又は金属パイプからなる打撃部32を備え、台座6の上に載置され、金棒又は金属パイプからなる打撃部32は、羽口開口用台車21の穴8を通って配置される。
【0018】
また、打撃装置31は、先端に備える打撃部32が金属パイプである場合、閉塞材の貫通作業に伴い、金属パイプを通して羽口の開口部に対し、気体を吹き付け可能に構成されてもよい。その場合、打撃装置31の側面から気体が入れられ、金属パイプの先端から気体を吹きかけながら開口作業が可能となる。それにより、開口作業により生じる閉塞材(粘土)のカスを気体の圧力で吹き飛ばすことができる。また、羽口が開口した場合に、開口した穴の側面にこびりついた閉塞材(粘土)を除去することもでき、手動により金棒で除去するのに比べ、穴側面の表面が傷つくのを防止できる。
【0019】
次に、本発明に係る羽口の開口装置の使い方を説明する。作業者は、穴8に金棒又は金属パイプからなる打撃部32が通るように打撃装置31(削岩機)を、羽口開口用の台車21の台座6の上に載置し、機構4を操作して垂直方向に台車21の上部板2を動かし位置を決める。作業者は、台車21の把持部9を手に持って、打撃装置31を備えた開口装置1を動かし、羽口開口作業の対象となる羽口開口部の前で車輪11のストッパー10をかけ、固定する。作業者は、台車21の上に載置された削岩機からなる打撃装置31の取手をもち、台座6の車輪11とレール5を介して打撃装置31を水平方向に移動させて、金棒又は金属パイプからなる打撃部32を、穴8を介して開口部に突き込み、開口作業を行う。この際、開いた穴8から熱風が吹くことがあるが、本発明の羽口の開口装置1を用いずに実施した場合に比べ、開口部と距離を保て、また、本発明の羽口の開口装置1は防風板7を備えるため、安全に作業を継続することができる。
【0020】
本発明の羽口の開口装置1は、上記で説明した構造を有することにより、水平方向、垂直方向ともに柔軟に打撃装置31が狙う位置を決めることができ、効率的に羽口の開口作業を行うことが可能となる。また、本発明の羽口の開口装置1を用いず、人の手によって直接削岩機を動かす場合、削岩機は非常に重いため、力が分散してしまう。本発明の羽口の開口装置1を用いることで、開口部に効率的に力を伝えることができ、作業効率が上がる。
【0021】
本発明の羽口の開口装置によれば、羽口開口作業を実施する場合に閉塞材を迅速に除去することができ、開口時の減圧時間が短縮され、いち早く復旧に移行することができる。また、作業員の安全性の向上および作業負荷を低減することができ、安全性や作業負荷に対しての減圧時間を短縮することができる。
【0022】
図3は、本発明に係る羽口の開口装置の他の実施形態を説明するための模式図である。図3に示す例において、図2に示す例と同じ部材には、図2と同じ符号を付し、その説明を省略する。図3に示す例において、図2に示す例と異なる点は、台車21上の台座6の構成である。すなわち、図3に示す例では、台座6を、台座上部板41と、台座下部板42と、台座上部板41と台座下部板42とを接続する稼働装置43と、から構成する。そして、稼働装置43を、台座上部板41を支持する第1支持部材44と、台座下部板42を支持する第2支持部材45と、第1支持部材44と第2支持部材45とを回動可能に接続する接続部46と、から構成する。
【0023】
図3に示す実施形態では、台座6が上記構成をとることで、台座上部板41が稼働装置43の接続部46を軸に回転できる、これにより、台車21を動かすことなく、台座6のみで、打撃装置31の打撃部32を羽口に対して上下方向に動かすことができる。その結果、打撃装置31の打撃部32はさらに斜め方向に位置決め可能となり、羽口のテーパ角度に沿って打撃部32を移動可能とすることができ、より正確に打撃部32を羽口に対して駆動させることができる。なお、打撃部32の斜め方向の最大角度は羽口のテーパの角度とすることが好ましい。
【実施例0024】
図2に示す構成の台車21に打撃装置31を載置した羽口の開口装置1を用いて、製鉄所におけるメンテナンス状態の高炉において、メンテナンス終期に羽口開口作業を実施した。本願発明の羽口開口装置を用いたことにより、開口作業におけるケガ人は一人も出すことなく、安全に作業を完了できた。また、従来、20日かかってきた開口作業期間を、10日に短縮することができ、良好な効果が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明に係る羽口の開口装置によれば、高炉の再稼働だけでなく、高炉以外の様々の竪型溶解炉においても、安定した操業方法を提供できる。
【符号の説明】
【0026】
1 開口装置
2 上部板
3 下部板
4 機構
5 レール
6 台座
7 防風板
8 穴
9 把持部
10 ストッパー
11 車輪
12 可動支持部
21 台車
31 打撃装置
32 打撃部
41 台座上部板
42 台座下部板
43 稼働装置
44 第1支持部材
45 第2支持部材
46 接続部
図1
図2
図3