(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023172908
(43)【公開日】2023-12-06
(54)【発明の名称】分析装置、分析方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G01N 11/00 20060101AFI20231129BHJP
G01N 33/86 20060101ALI20231129BHJP
G01N 11/04 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
G01N11/00 C
G01N33/86
G01N11/04 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023077387
(22)【出願日】2023-05-09
(31)【優先権主張番号】P 2022084530
(32)【優先日】2022-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2022092340
(32)【優先日】2022-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 昌造
【テーマコード(参考)】
2G045
【Fターム(参考)】
2G045AA10
2G045CA25
2G045CA26
(57)【要約】
【課題】測定結果を短時間で得ることができるようにすることである。
【解決手段】実施形態の分析装置は、保持部と、測定部と、を持つ、保持部は、被検体から採取された血液試料を保持する。測定部は、保持された血液試料と接触する媒介物質を介して、保持された血液試料の粘弾性及び粘性のうち少なくとも一方に関する測定を行う。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体から採取された血液試料を保持する保持部と、
前記保持された血液試料と接触する媒介物質を介して、前記保持された血液試料の粘弾性及び粘性のうち少なくとも一方に関する測定を行う測定部と、
を備える分析装置。
【請求項2】
前記測定の結果に基づいて、前記保持された血液試料の粘弾性及び粘性のうち少なくともいずれか一方に関する指標を算出する演算部をさらに備える、
請求項1に記載の分析装置。
【請求項3】
前記媒介物質を前記保持部から吸引し及び/又は前記保持部へ吐出する動作機構をさらに備え、
前記測定部は、前記動作機構の動作に対する前記保持部内の圧力の応答を測定することにより、前記保持された血液試料の粘弾性及び粘性のうち少なくとも一方に関する測定を行う、
請求項1に記載の分析装置。
【請求項4】
前記媒介物質において加熱によりバブルを発生させる発生部をさらに備え、
前記測定部は、前記バブルの幾何学的特徴、及び/又は前記バブルの発生による応答を測定することにより、前記保持された血液試料の粘弾性及び粘性のうち少なくとも一方に関する測定を行う、
請求項1に記載の分析装置。
【請求項5】
前記測定部は、前記バブルのサイズ、または前記バブルの発生による前記保持部からの前記血液試料の流出量に基づいて、前記保持された血液試料の粘弾性及び粘性のうち少なくとも一方に関する測定を行う、
請求項4に記載の分析装置。
【請求項6】
前記保持部は、測定領域を形成する測定流路を備え、
前記測定流路には、前記測定流路に前記血液試料を流入させる流入口と、前記測定流路から前記血液試料を流出させる流出口とが設けられる、
請求項1から5のいずれか一項に記載の分析装置。
【請求項7】
前記流入口に接続され、前記測定流路に前記血液試料を流入させる流入用チューブと、前記流出口に接続され、前記測定流路内の前記血液試料を排出させる流出用チューブと、をさらに備え、
前記測定流路、前記流入用チューブ、または前記流出用チューブのうち少なくともいずれか1つは、取外し可能とされている、
請求項6に記載の分析装置。
【請求項8】
被検体から採取された血液試料を保持する保持部を備える分析装置のコンピュータが、前記保持された血液試料と接触する媒介物質を介して、前記保持された血液試料の粘弾性及び粘性のうち少なくとも一方に関する測定を行う、
分析方法。
【請求項9】
被検体から採取された血液試料を保持させる保持部を備える分析装置のコンピュータに、前記保持された血液試料と接触する媒介物質を介して、前記保持された血液試料の粘弾性及び粘性のうち少なくとも一方に関する測定を行わせる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、分析装置、分析方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
人体の血液を分析して血液の粘弾性を測定する測定装置がある。従来の測定装置では、リアルタイムでの測定ができず、試料を測定装置に設置してから、粘弾性を測定した結果が得られるまでに時間がかかる。さらに、使用された試料は、廃棄され、結果として消費される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-152663号公報
【特許文献2】特開2007-17207号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題は、測定結果を短時間で得ることができるようにすることである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の分析装置は、保持部と、測定部と、を持つ、保持部は、被検体から採取された血液試料を保持する。測定部は、保持された血液試料と接触する媒介物質を介して、保持された血液試料の粘弾性及び粘性のうち少なくとも一方に関する測定を行う。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】実施形態の分析装置100の構成の一例を示す図。
【
図4】第1の実施形態の試料LBの粘弾性を算出する際の測定器1の動作を説明する図。
【
図5】第2の実施形態の試料LBの粘弾性を算出する際の測定器1の動作を説明する図。
【
図7】第3の実施形態の測定器1の変形例を示す図。
【
図8】第4の実施形態の分析システムを示すブロック図。
【
図9】第4の実施形態の分析システムの分析処理を示すフローチャート。
【
図10】第4の実施形態に係る流路デバイスの第1構造例を示す図。
【
図11】第1構造例に係る粘弾性測定方法の第1工程を示す図。
【
図12】第1構造例に係る粘弾性測定方法の第2工程を示す図。
【
図13】第1構造例に係る粘弾性測定方法の第3工程を示す図。
【
図14】第4の実施形態に係る流路デバイスの第2構造例を示す図。
【
図15】第2構造例に係る粘弾性測定方法の第1工程を示す図。
【
図16】第2構造例に係る粘弾性測定方法の第2工程を示す図。
【
図17】第2構造例に係る粘弾性測定方法の第3工程を示す図。
【
図19】第4の実施形態に係る分析システムの利用例を示す概念図。
【
図20】第5の実施形態に係る分析システムの利用例を示す概念図。
【
図21】第5の実施形態に係る流路デバイスの構成例。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照しながら、実施形態の分析装置、分析方法、およびプログラムについて説明する。
【0008】
[第1の実施形態]
図1は、実施形態の分析装置100の構成の一例を示す図である。分析装置100は、例えば、操作部110と、測定装置120と、オンライン部130と、表示部140と、印刷部150と、処理回路160と、メモリ170と、を備える。分析装置100は、測定装置120の検出結果に基づいて人体の血液(以下、試料、血液試料)の粘弾性を算出する。
【0009】
操作部110は、例えば、キーボード、マウス、ボタン、タッチキーパネルなどの入力インターフェースを備える。なお、本明細書において入力インターフェースはマウス、キーボードなどの物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、装置とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を制御回路へ出力する電気信号の処理回路も入力インターフェースの例に含まれる。
【0010】
操作部110では、様々な操作が行われる。操作部110で行われる操作としては、例えば、分析条件の設定、被検体の被検体IDや被検体名などの被検体情報の入力、被検体の被検試料毎の測定項目の選択、各項目のキャリブレーション操作、被検試料分析操作などが挙げられる。
【0011】
測定装置120は、人体の試料の粘弾性を算出するためのデータ(以下、算出要素データ)を検出する。
図2は、測定装置120の概要を示す説明図である。測定装置120は、例えば、測定器1と、廃棄瓶2と、チューブ3と、を備える。チューブ3は、例えば、図示しない注射器を介して被検体Mの血管と流通可能とされ、血管内の試料の一部が第1チューブ3A及び第2チューブ3B内に供給される。第1チューブ3A及び第2チューブ3Bに供給された試料は、測定器1に運搬される。測定に利用された試料は、廃棄されてもよいし、還元チューブ3Cを流通して被検体Mに還元されてもよい。
【0012】
第1チューブ3A及び第2チューブ3Bの途中には、抗凝固剤と試料を混合するための混合用の領域が設けられている。第1チューブ3Aには、第1抗凝固剤収容体4が接続され、第2チューブ3Bには、第2抗凝固剤収容体5が接続されている。第1抗凝固剤収容体4には、低濃度の抗凝固剤が収容されている。第2抗凝固剤収容体5には、高濃度の抗凝固剤が収容されている。
【0013】
第1チューブ3Aには、低濃度の抗凝固剤が混合された試料(以下、第1試料)LB1が流入する。第2チューブ3Bには、高濃度の抗凝固剤が混合された試料(以下、第2試料)LB2が流入する。以下の説明において、第1試料LB1と第2試料LB2を区別しない場合に、試料LBと総称する。抗凝固剤は、低濃度の高濃度の複数種類の濃度のものが用意されている。抗凝固剤としては、さらに多くの種類の濃度のものが用意されていてもよい。
【0014】
濃度が異なる抗凝固剤が混合された2つの試料LBの粘弾性測定を行うことで、抗凝固剤が試料LBの粘弾性に与える影響を測定してもよい。これにより試料LBが所定の粘弾性(凝固能)になる抗凝固剤の量を取得することが可能となる。チューブ3の途中に生理食塩水を混合する領域を設けてもよい。チューブ3で運搬される試料LBに所定量の抗凝固剤を添加することで、流路の詰まりを防止してもよい。抗凝固剤を添加する場合は、分析装置100は、添加した抗凝固剤の量をユーザに報告してよい。
【0015】
測定器1には、さらに、第1標準試料収容体6及び第2標準試料収容体7が、第3チューブ8A及び第4チューブ8Bを介してそれぞれが接続されている。第1標準試料収容体6には、低濃度の抗凝固剤が混合された標準試料(以下、第1標準試料LH1)が収容されている。第2標準試料収容体7には、高濃度の抗凝固剤が混合された標準試料(以下、第2標準試料LH2)が収容されている。以下の説明において、第1標準試料LH1と第2標準試料LH2を区別しない場合に、標準試料LHと総称する。
【0016】
測定器1は、運搬された試料LBの算出要素データを検出し、試料LBの一部を被検体Mに還元し、他の一部を廃棄瓶2に排出して廃棄物とする。測定器1は、試料LBの全部を廃棄瓶2に排出してもよいし、試料LBの全部を被検体Mに還元してもよい。廃棄瓶2に排出された試料LBは、所定の処理が施された後に廃棄される。測定器1の具体的な構成については、後に複数の例を挙げて更に説明する。
【0017】
オンライン部130は、処理回路160により算出された試料LBの粘弾性などの情報を外部の情報システムなどに出力する。表示部140は、処理回路160により算出された試料LBの粘弾性などの情報を表示する。印刷部150は、処理回路160により算出された試料LBの粘弾性などの情報を印刷する。
【0018】
処理回路160は、例えば、システム制御機能161と、測定制御機能162と、演算機能163と、を備える。処理回路160は、例えば、ハードウェアプロセッサがメモリ(記憶回路)170に記憶されたプログラムを実行することにより、これらの機能を実現するものである。
【0019】
ハードウェアプロセッサとは、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit; ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device; SPLD)または複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device; CPLD)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array; FPGA))などの回路(circuitry)を意味する。メモリ170にプログラムを記憶させる代わりに、ハードウェアプロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むように構成しても構わない。この場合、ハードウェアプロセッサは、回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。上記のプログラムは、予めメモリ170に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROM等の非一時的記憶媒体に格納されており、非一時的記憶媒体が分析装置100のドライブ装置(不図示)に装着されることで非一時的記憶媒体からメモリ170にインストールされてもよい。ハードウェアプロセッサは、単一の回路として構成されるものに限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのハードウェアプロセッサとして構成され、各機能を実現するようにしてもよい。また、複数の構成要素を1つのハードウェアプロセッサに統合して各機能を実現するようにしてもよい。
【0020】
システム制御機能161は、操作部110により出力される操作者のコマンド信号、分析条件、被検体情報、被検体の試料LB毎の測定項目などの情報を取得する。システム制御機能161は、取得した情報に基づいて、測定制御機能162を介した測定装置120の制御やキャリブレーションテーブルの作成、分析データの算出と出力に関する制御などシステム全体を制御する。
【0021】
測定制御機能162は、システム制御機能161の指示に従い、測定装置120における各部材を制御する。測定制御機能162における制御は、以下に説明する複数の測定装置120ごとに異なる。このため、分析制御機能における制御は、個別の測定装置120の説明に合わせて説明する。
【0022】
演算機能163は、測定装置120により検出された各情報を取得する。演算機能163は、取得した各情報に基づいて、被検体の試料LBの粘弾性を算出する。演算機能163は、算出した粘弾性の情報をオンライン部130、表示部140、及び印刷部150にそれぞれ出力する。演算機能163は、測定部の一例である。演算機能163は、保持された血液試料と接触する媒介物質を介して、保持された血液試料の粘弾性及び粘性のうち少なくとも一方に関する測定を行う。また、演算機能163は、演算部の一例である。演算機能163は、測定の結果に基づいて、保持された血液試料の粘弾性及び粘性のうち少なくともいずれか一方に関する指標を算出する。
【0023】
分析装置100は、測定装置120により算出要素データを検出する前に、演算機能163において、粘弾性が既知である標準試料LHを用いて検量線を作成する。演算機能163が検量線を作成した後、測定装置120は、被検体から採取した試料LBの算出要素データを検出し、演算機能163により試料LBの粘弾性を算出する。演算機能163は、さらに、算出した粘弾性を評価する。なお、演算機能163により算出する値としては、粘弾性の値そのものに替えて、粘弾性と相関を有する他の指標、例えば、動的弾性率などでもよい。演算機能163は、演算部の一例である。
【0024】
検量線の作成により発生した廃棄物(標準試料LH)は、算出要素データの検出時に廃棄される試料LBと同様に、廃棄瓶2に排出されて廃棄物となる。廃棄瓶2の排出された廃棄物が所定量を超えた場合、システム制御機能161は、その旨を示す廃棄物超過情報を作成し、オンライン部130、表示部140、または印刷部150により廃棄物超過情報をユーザに報告する。
【0025】
なお、測定器1やチューブ3内に残存する標準試料LHが被検体Mに影響しない場合、測定に用いた試料LBは被検体Mに還元してもよい。試料LBを被検体に還元する例については後述する。また、被検体Mから取得した試料LBに抗凝固剤を添加し、試料LBの抗凝固剤に対する影響を測定してもよい。抗凝固剤としては、例えば、ヘパリンが挙げられるが、抗凝固剤は、他のものでもよい。抗凝固剤を含む試料に対して、抗凝固剤の中和剤、例えば、ヘパリナーゼを添加してもよい。抗凝固剤の中和剤は、他のものでもよい。
【0026】
続いて、第1の実施形態の測定装置120における測定器1について説明する。
図3は、第1の実施形態の測定器1の一例を示す図である。第1の実施形態の測定器1は、例えば、取付流路11と、供給管12と、ポンプ13と、第1バルブ14と、シリンジ15と、第2バルブ16と、廃棄管17と、第1逆止弁18と、第2逆止弁19と、を備える。
【0027】
取付流路11には、測定領域が形成されている。測定領域は、第1バルブ14及び第2バルブ16が閉じられることにより、密閉空間として形成される。測定領域は、密閉領域の一例である。測定領域には、試料LBや生理食塩水などの液状をなす媒介物質LSなどが満たされる。
図3には、媒介物質LSが満たされた状態を示している。媒介物質は水でもよいし、水や生理食塩水以外、特に、試料LBを被検体Mに還元しない場合には、水や生理食塩水以外でもよい。取付流路11は、測定器1から取外し可能とされている。取付流路11は、保持部の一例である。取付流路11は、被検体Mから採取された血液試料を保持する。
【0028】
供給管12は、取付流路11における上端に接続されている。供給管12は、媒介物質LSを測定領域に供給する。ポンプ13及び第1バルブ14は、供給管12に設けられている。ポンプ13及び第1バルブ14は、処理回路160に接続されている。ポンプ13は、処理回路160における測定制御機能162の制御に応じて、作動したり停止したりする。第1バルブ14は、測定制御機能162の制御に応じて開閉する。
【0029】
第1バルブ14が開放することにより、供給管12と測定領域は連通し、第1バルブ14が閉鎖することにより供給管と測定領域は遮断される。ポンプ13は、第1バルブ14が開いた状態で作動することにより、供給管12を通じて測定領域に媒介物質LSを供給する。ポンプ13は、供給機構または動作機構の一例である。動作機構は、媒介物質を保持部から吸引し及び/又は保持部へ吐出する。演算機能163(測定部)は、動作機構の動作に対する保持部内の圧力の応答を測定することにより、保持された血液試料の粘弾性及び粘性のうち少なくとも一方に関する測定を行う。
【0030】
シリンジ15は、測定領域における上端部に接続されている。シリンジ15を作動させることにより、後に説明するように、測定領域内に試料LBが流入したり、測定領域から試料LBが排出されたりする。シリンジ15には、プレッシャモニタ15A設けられている。プレッシャモニタ15Aは、シリンジ15の動作に応じた測定領域内の圧力を検出する。プレッシャモニタ15Aは、検出した圧力に基づく圧力データを生成する。プレッシャモニタ15Aは、生成した圧力データを処理回路160に送信する。
【0031】
第2バルブ16は、チューブ3に設けられている。第2バルブ16は、測定制御機能162の制御に応じて開閉する。第2バルブ16が開放することにより、チューブ3内の試料LBが測定領域に流入可能となる。第2バルブ16が閉鎖することにより、チューブ3内の試料LBはチューブ3内に滞留する。
【0032】
取付流路11における測定領域には、チューブ3が接続される流入口及び廃棄管17が接続される流出口が設けられている。チューブ3は、流入口に接続され、取付流路11に試料LBを流入させる。チューブ3内を流通する試料LBは、流入口を通じて測定領域内に流入する。チューブ3における第1チューブ3A及び第2チューブ3Bは、流入用チューブの一例である。
【0033】
測定領域から排出される試料LBや媒介物質LSは、流出口を通じて廃棄管17に排出される。試料LBは、一方通行により、流入口から測定領域に流入され、流出口から流出される。廃棄管17は、流出口に接続されて廃棄瓶2内に通じており、測定領域内の試料を排出させる。廃棄管17は、流出用チューブの一例である。測定領域から排出される試料LBや媒介物質LSは、廃棄管17を通じて廃棄瓶2に排出される。被検体Mから供給された試料LBは、チューブ3及び取付流路11の測定領域内のみを移動する。チューブ3及び廃棄管17は、いずれも測定器1から取外し可能とされている。取付流路11、チューブ3、及び廃棄管17の一部または全部は、測定器1から取外しできないようにされていてもよい。
【0034】
第1逆止弁18は、流入口とチューブ3の間に設けられている。第1逆止弁18は、流入口に設けられたチューブ3に対する取付流路11からの逆流を防止する。第2逆止弁19は、流出口と廃棄管17の間に配置される。第2逆止弁19は、廃棄管17から取付流路11への逆流を防止する。
【0035】
次に、第1の実施形態の分析装置100における測定器1を用いて、試料LBの粘弾性を算出する手順について、
図3及び
図4を参照して説明する。
図4は、第1の実施形態の試料LBの粘弾性を算出する際の測定器1の動作を説明する図である。
図4に示す状態は、
図3に示す状態に続く状態である。
【0036】
分析装置100は、試料LBの粘弾性の算出に先立ち、粘弾性が既知の標準試料を用いた場合にプレッシャモニタ15Aが検出した圧力を算出して検量線を作成する。検量線は、例えば、以下に説明する試料LBの粘弾性を算出する手順において、試料LBとして標準試料LHを用いることにより作成する。
【0037】
試料LBの粘弾性を算出する際には、まず、
図3に示すように、分析装置100において、測定領域に対して試料LBを供給するためのチューブ3が測定領域の流入口に接続される。続いて、測定制御機能162は、
図4の左図に示すように、第1バルブ14を閉じ、第2バルブ16を開いた状態でシリンジ15により測定領域内の媒介物質LSを吸引する。
【0038】
シリンジ15が媒介物質LSを吸引する吸引力により、測定領域には、試料LBが流入する。プレッシャモニタ15Aは、試料LBが測定領域に流入するときの測定領域内の圧力(以下、流入時圧力)を検出する。プレッシャモニタ15Aは、検出した流入時圧力に基づく圧力データ(以下、第1圧力データ)を生成する。プレッシャモニタ15Aは、生成した第1圧力データを処理回路160に送信する。
【0039】
続いて、測定制御機能162は、
図4の右図に示すように、第1バルブ14を閉じたまま第2バルブ16を閉じてポンプ13を作動させ、測定領域に媒介物質LSを供給して測定領域に残存する試料LBを排出させる。このとき、測定領域に残存する試料LBは、廃棄試料LCとなる。測定に利用された試料LBは、被検体Mに還元される流路に流出し、媒介物質LSは廃棄瓶2に廃棄するようにしてもよい。
【0040】
プレッシャモニタ15Aは、廃棄試料LCが測定領域から流出するときの測定領域内の圧力(以下、流出時圧力)を検出する。プレッシャモニタ15Aは、検出した流出時圧力に基づく圧力データ(以下、第2圧力データ)を生成する。プレッシャモニタ15Aは、生成した第2圧力データを処理回路160に送信する。
【0041】
処理回路160では、演算機能163において、送信された第1圧力データ及び第2圧力を取得し、第1圧力データ及び第2圧力データ示す圧力を、予め作成した検量線に参照する。演算機能163は、第1圧力データ及び第2圧力データが示す流入時圧力及び流出時圧力を検量線に参照した結果に基づいて、試料LBの粘弾性を算出する。演算機能163は、流入時圧力または流出時圧力の一方を検量線に参照した結果に基づいて、試料LBの粘弾性を算出してもよい。
【0042】
測定器1により試料LBを測定領域に流入させて第1圧力データ及び第2圧力データを生成した後は、第1バルブ14及び第2バルブ16を閉鎖させ、試料LBが排出しない状態としてから取付流路11を取り外す。測定器1における流入口や流出口は、例えば、蓋を付け、測定領域と外気との連通を防止する。
【0043】
演算機能163は、流入時圧力または流出時圧力の一方を、予め作成した検量線に参照して試料LBの粘性を算出してもよい。測定制御機能162は、演算機能163により算出された試料LBの粘弾性を、オンライン部130、表示部140、または印刷部150によりユーザに報告してよい。分析装置100は、上記の手順を繰り返すことにより、試料LBの粘弾性を所定の間隔で取得してもよい。
【0044】
測定制御機能162は、例えば、試料LBの粘弾性に予め規定の範囲を設定しておいてもよい。この場合、測定制御機能162は、演算機能163により算出された粘弾性が予め規定した範囲から外れる場合に、その旨をオンライン部130、表示部140、または印刷部150によりユーザに報告してよい。
【0045】
あるいは、測定制御機能162は、演算機能163により算出される試料LBの粘弾性を用いて試料LBの粘弾性の変化量を算出し、粘弾性の変化量から所定の時間内に粘弾性の値が範囲外になるかを判断してよい。この場合、測定制御機能162は、粘弾性の変化量から所定の時間内に粘弾性の値が範囲外になると判断した場合、その旨をオンライン部130、表示部140、または印刷部150によりユーザに報告してよい。ここでの粘弾性の範囲及び判断に利用する時間は、予め分析装置100により記憶されていてもよいし、ユーザが設定してもよい。
【0046】
第1の実施形態の分析装置100において測定器1は、測定領域において、シリンジ15により試料LBを吸引したり排出したりする際の圧力に基づいて、試料LBの粘弾性を算出する。このため、試料LBを測定器1に流入させた状態で試料LBの粘弾性を算出できるので、リアルタイムで試料LBの粘弾性を測定することができる。
【0047】
また、被検体Mから供給された試料LBは、チューブ3及び取付流路11の流路内のみを移動する。このため、使用済の試料LBを被検体Mに還元することができるとともに、測定器1を汚染させないようにすることができる。
【0048】
[第2の実施形態]
次に、第2の実施形態について説明する。第2の実施形態の分析装置100は、第1の実施形態と比較して、測定器1の構成が主に異なる。第2の実施形態の測定器1では、測定領域に供給管12が接続されておらず、ポンプ13や第1バルブ14が設けられていない。また、測定領域を介したシリンジ15に設けられたプレッシャモニタ15Aと、測定領域内の試料との間には、空気が介在されている。プレッシャモニタ15Aと測定領域内の試料は、直接接触していてもよい。この場合、シリンジ15(プレッシャモニタ15A)に試料が接触して汚染されることがあるので、シリンジ15(プレッシャモニタ15A)の洗浄が求められる。
【0049】
第1の実施形態の測定器1では、測定領域に媒介物質LSが満たされた状態で試料LBを吸引したり排出させたりする。これに対して、第2の実施形態では、測定領域に液体を導入させることなく、測定領域には、気体が充満した状態で試料LBを吸引したり、排出させたりする。
【0050】
次に、第2の実施形態の分析装置100における測定器1を用いて、試料LBの粘弾性を算出する手順について、
図1~
図3、及び
図5を参照して説明する。
図5は、第2の実施形態の試料LBの粘弾性を算出する際の測定器1の動作を説明する図である。第2の実施形態においても、試料LBの粘弾性の算出に先立ち、粘弾性が既知の標準試料LHを用いた場合にプレッシャモニタ15Aが検出した圧力を算出して検量線を作成する。
【0051】
続いて、試料LBの粘弾性を算出する際には、まず、
図5の左図に示すように、分析装置100において、測定領域に試料LBを供給するためのチューブ3が測定領域の流入口に接続される。このとき、チューブ3により供給される試料LBは、シリンジ15が作動していないことから、測定領域には流入せずに、そのまま廃棄管17に流入する。
【0052】
続いて、測定制御機能162は、第2バルブ16を開いた状態でシリンジ15により測定領域内を吸引する。シリンジ15が測定領域内の空気を吸引する吸引力により、
図5の中図に示すように、測定領域には、試料LBが流入する。プレッシャモニタ15Aは、試料LBが測定領域に流入するときの流入時圧力を検出する。プレッシャモニタ15Aは、検出した流入時圧力に基づく第1圧力データを生成して処理回路160に送信する。
【0053】
続いて、測定制御機能162は、
図5の右図に示すように、第2バルブ16を閉じてシリンジ15により測定領域内に圧力を付与する。測定領域内では、シリンジ15により付与される圧力により、廃棄試料LCが排出口より廃棄管17に流出される。測定に利用された試料は、被検体Mに還元される流路に流出するようにしてもよい。
【0054】
プレッシャモニタ15Aは、試料LB(廃棄試料LC)が測定領域から流出するときの流出時圧力を検出する。プレッシャモニタ15Aは、検出した流出時圧力に基づく第2圧力データを生成して処理回路160に送信する。
【0055】
処理回路160では、演算機能163において、送信された第1圧力データ及び第2圧力を取得し、第1圧力データ及び第2圧力データ示す圧力を、予め作成した検量線に参照する。演算機能163は、第1圧力データ及び第2圧力データが示す流入時圧力及び流出時圧力を検量線に参照した結果に基づいて、試料LBの粘弾性を算出する。
【0056】
第2の実施形態の分析装置100は、第1の実施形態の分析装置100と同様の作用効果を奏する。さらに、第2の実施形態の分析装置100では、測定領域に媒介物質LSが満たされていない。このため、試料LBの粘性を測定する際の測定感度を向上させることができる。
【0057】
[第3の実施形態]
次に、第3の実施形態について説明する。第3の実施形態の分析装置100は、第1の実施形態と比較して、測定器1の構成が主に異なる。
図6は、第3の実施形態の測定器1の一例を示す図である。第3の実施形態の測定器1は、例えば、取付流路21と、供給管22と、ポンプ23と、シリンジ24と、第1バルブ25と、第2バルブ26と、接続管27Aと、廃棄管27Bと、逆止弁28と、還元チューブ3Cと、を備える。このうち、取付流路21、供給管22、ポンプ23、及びシリンジ24は、第1の実施形態の取付流路11、供給管12、ポンプ13、及びシリンジ15と同様の構成を有する。第3の実施形態の測定器1においては、供給管22にバルブ22Aが設けられている。
【0058】
第1バルブ25は、第1チューブ3Aと、第2チューブ3Bと、測定領域の流入口と、の間に設けられた三方弁である。第1チューブ3Aは、第1試料LB1または第1標準試料LH1が流通する流路を形成する。第2チューブ3Bは、第2試料LB2または第2標準試料LH2が流通する流路を形成する。第1バルブ25は、測定制御機能162の制御に基づいて、測定領域の流入口に接続される流路を、第1チューブ3Aと第2チューブ3Bの間で切り替える。
【0059】
第2バルブ26は、接続管27Aと、廃棄管27Bと、還元チューブ3Cとの間に設けられた三方弁である。第2バルブ26は、測定制御機能162の制御に基づいて、接続管27Aと連通する流路を、廃棄管27Bと還元チューブ3Cとの間で切り替える。接続管27Aは、測定領域の排出口に接続されている。接続管27Aは、測定領域の排出口と第2バルブ26とを連通する。
【0060】
廃棄管27Bは、第2バルブ26に接続され、廃棄瓶2内の大気中に通じている。還元チューブ3Cは、被検体Mに通じている。第1チューブ3Aにより供給される第1標準試料LH1、第2チューブ3Bにより供給される第2標準試料LH2、及び測定領域を満たす媒介物質LSの一部または全部は、廃棄管27Bを介して廃棄瓶2に排出される。第1チューブ3Aにより供給される第1試料LB1及び第2チューブ3Bにより供給される第2試料LB2は、還元チューブ3Cを通じて被検体Mに還元される。逆止弁28は、流出口と接続管27Aの間に設けられている。逆止弁28は、接続管27Aから取付流路21への逆流を防止する。
【0061】
次に、第3の実施形態の分析装置100における測定器1を用いて、試料LBの粘弾性を算出する手順について、
図1、
図2、及び
図6を参照して説明する。第3の実施形態においても、試料LBの粘弾性の算出に先立ち、粘弾性が既知の標準試料LHを用いた場合にプレッシャモニタ24Aが検出した圧力を算出して検量線を作成する。ここでは、第1標準試料LH1及び第2標準試料LH2を用いて、標準試料LHに混合される抗凝固剤が高濃度である場合と低濃度である場合の検量線を作成する。
【0062】
検量線を作成する際には、測定制御機能162は、第1バルブ25及び第2バルブ26を制御し、第1標準試料LH1が流通する第1チューブ3Aまたは第2標準試料LH2が流通する第2チューブ3Bを測定領域の流入口に接続するとともに、廃棄管27Bを接続管27Aに接続する。こうして、標準試料LHを測定領域の流入口から測定領域に流入させて流出口から排出させる。
【0063】
やがて、接続管27A内の領域Xが標準試料LHにより満たされると、第1バルブ25及び第2バルブ26を閉鎖して、シリンジ24により測定領域内の媒介物質LSを吸引する。プレッシャモニタ24Aは、領域Xが標準試料LHにより満たされた状態でシリンジ24により媒介物質LSを吸引したときの圧力を検出し、圧力データを生成して処理回路160に送信する。演算機能163は、プレッシャモニタ24Aが検出した圧力に基づいて検量線を作成する。
【0064】
プレッシャモニタ24Aによる圧力の検出が終了した後は、第2バルブ26により接続管27Aと廃棄管27Bを連通させ、ポンプ13を作動させて測定領域に媒介物質LSを供給して、領域Xに残存する標準試料LHを廃棄瓶2に廃棄する。こうして、検量線が作成される。
【0065】
続いて、試料LBの粘弾性を算出する。試料LBの粘弾性を算出する際には、第1試料LB1が流通する第1チューブ3Aまたは第2試料LB2が流通する第2チューブ3Bを測定領域の流入口に接続するとともに、還元チューブ3Cを接続管27Aに接続する。こうして、試料LBを測定領域の流入口から測定領域に流入させて流出口から排出させ、還元チューブ3Cを介して被検体Mに還元させる。
【0066】
やがて、接続管27A内の領域Xが試料LBにより満たされると、第1バルブ25及び第2バルブ26を閉鎖して、シリンジ24により測定領域内の媒介物質LSを吸引する。プレッシャモニタ24Aは、領域Xが標準試料LHにより満たされた状態でシリンジ24により媒介物質LSを吸引したときの圧力を検出し、圧力データを生成して処理回路160に送信する。演算機能163は、プレッシャモニタ24Aが検出した圧力を検量線に参照して試料LBの粘弾性を算出する。
【0067】
第3の実施形態の分析装置100は、第1の実施形態の分析装置100と同様の作用効果を奏する。さらに、第3の実施形態の分析装置100では、粘弾性の算出の際に圧力の検出に利用した試料を被検体Mに還元する。このため、試料LBを被検体Mに確実に還元することができる。したがって、リアルタイムでの試料の粘弾性の測定を容易に行うことができる。
【0068】
図7は、第3の実施形態の測定器1の変形例を示す図である。
図6に示す第3の実施形態の測定器1では、第1試料LB1と第1標準試料LH1をそれぞれ第1チューブ3Aに流通させ、第2試料LB2と第2標準試料LH2をそれぞれ第2チューブ3Bに流通させる。ここで、例えば、標準試料が被検体Mに与える影響が小さい場合には、試料LBと標準試料LHを共通の流路に流通させてもよいが、標準試料が被検体Mに与える影響が大きい場合には、試料LBと標準試料LHを共通の流路を分けた方がよい。
【0069】
図7に示す測定器1は、
図6に示す測定器1と比較して、第3チューブ8A、第4チューブ8B、及び第3バルブ29が測定器に接続されている点で異なる。第3チューブ8Aには、第1標準試料LH1が流通し、第4チューブ8Bには、第2標準試料LH2が流通する。
【0070】
第3バルブ29は、第3チューブ8Aと、第4チューブ8Bと、測定領域の流入口との間に設けられた三方弁である。第3バルブ29は、測定制御機能162の制御に基づいて、測定領域の流入口と連通する流路を、第3チューブ8Aと第4チューブ8Bとの間で切り替える。第3チューブ8Aには第1標準試料LH1が流通し、第4チューブ8Bには第2標準試料LH2が流通する。
【0071】
変形例の測定器1では、例えば、領域Xが標準試料LHで満たされた状態で圧力データを検出して検量線を作成する。その後、領域Xの流路に残存する標準試料LHを排出し、例えば媒介物質を流通させて流路を洗浄してから領域Xが試料LBで満たされた状態で圧力を検出する。このため、試料LBを還元する際に、標準試料が試料LBに混合しにくくすることができる。
【0072】
変形例の測定器1では、測定領域に対して、第1試料LB1及び第2試料LB2を第1チューブ3A及び第2チューブ3Bから供給し、第1標準試料LH1及び第2標準試料LH2を第3チューブ8A及び第4チューブ8Bから供給する。このため、被検体Mの試料の流路と標準試料の流路を分けることができるので、標準試料が被検体Mに混入されにくくすることができる。
【0073】
上記各実施形態では、分析装置100における演算機能163が粘弾性を算出するが、演算機能163は、粘弾性に代えて、粘性を算出してもよいし、粘性に関する指標、例えば、粘性自体のほか、粘性係数、粘性率、動粘度などを算出してもよい。演算機能163は、粘弾性及び粘性または粘弾性及び粘性に関する指標の一部または全部を算出してもよい。
【0074】
[第4の実施形態]
第4の実施形態に係る分析システムを
図8のブロック図を参照して説明する。
分析システムは、分析装置1と流路デバイス2とを含む。分析装置1は、処理回路10と、メモリ11と、入力インタフェース12と、出力インタフェース13と、通信インタフェース14とを含む。
【0075】
処理回路10は、フロー制御機能101と、バブル発生機能102と、測定機能103と、作成機能104と、出力制御機能105と、システム制御機能106とを含む。
【0076】
フロー制御機能101は、流路デバイス2内の測定領域に対する、対象試料と媒介物質との流入を制御する。対象試料は、ここでは血液、全血、血漿などを想定するが、対象試料の粘性および粘弾性のうち少なくとも一方の指標を測定したい液体であればどのような物質を対象試料としてもよい。媒介物質は、水、生理食塩水を想定するが、リンゲル液、油などでもよい。なお、以下では指標として、粘弾性を測定する場合を例に説明する。
【0077】
バブル発生機能102は、測定領域内の液体を加熱し、バブルを発生させる。ここで液体とは、媒介物質または媒介物質と対象試料とが混合された液体をいう。
測定機能103は、バブルの幾何学的特徴(サイズ等)、及び/またはバブルの発生による応答(測定領域からの対象試料の流出量)に基づき、対象試料の粘弾性を測定する。測定機能103は、測定部の一例である。測定機能103は、保持された血液試料と接触する媒介物質を介して、保持された血液試料の粘弾性及び粘性のうち少なくとも一方に関する測定を行う。また、測定機能103は、演算部の一例である。測定機能103は、測定の結果に基づいて、保持された血液試料の粘弾性及び粘性のうち少なくともいずれか一方に関する指標を算出する。
【0078】
作成機能104は、粘弾性が既知である標準試料について測定した定量値と、既知の粘弾性の値とに基づいて検量線を作成する。
出力制御機能105は、対象試料の粘弾性の測定結果などを外部に出力する。
システム制御機能106は、粘弾性の測定処理に関する全般的な制御を実施する。
【0079】
メモリ11は、種々の情報を記憶するROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、及び集積回路記憶装置等の記憶装置である。また、メモリ11は、CD-ROMドライブ、DVDドライブ、及びフラッシュメモリ等の可搬性記憶媒体との間で種々の情報を読み書きする駆動装置等であってもよい。なお、メモリ11は、必ずしも単一の記憶装置により実現される必要はない。例えば、メモリ11は、複数の記憶装置により実現されても構わない。また、メモリ11は、分析装置1とネットワークを介して接続された他のコンピュータ内にあってもよい。
【0080】
メモリ11は、本実施形態に係る処理プログラム等を記憶している。なお、このプログラムは、例えば、メモリ11に予め記憶されていてもよい。また、例えば、非一過性の記憶媒体に記憶されて配布され、非一過性の記憶媒体から読み出されてメモリ11にインストールされてもよい。
【0081】
入力インタフェース12は、ユーザから各種の入力操作を受け付け、受け付けた入力操作を電気信号に変換して処理回路10へ出力する。本実施形態に係る入力インタフェース12は、例えば、マウス、キーボード、トラックボール、スイッチ、ボタン、ジョイスティック、タッチパッド、及び操作面へ触れることで指示が入力されるタッチパネル等の入力機器に接続されている。また、入力インタフェース12に接続される入力機器は、ネットワーク等を介して接続された他のコンピュータに設けられた入力機器でもよい。
【0082】
出力インタフェース13は、粘弾性の測定結果などの分析装置1で生成されたデータをディスプレイ、プリンタ、プロジェクタ、スピーカなどの出力機器に出力する。なお、スピーカから出力される場合は、当該データが音声信号に変換されて出力される。また、出力機器は、分析装置1に搭載されていてもよいし、分析装置1の外部に配置され、有線または無線により接続されてもよい。
【0083】
通信インタフェース14は、医療情報管理アプリケーション、病院情報システム、放射線部門情報システムなどとの間でデータ通信を行う。
【0084】
流路デバイス2は、測定領域を有し、測定領域内に対象試料および媒介物質が流入することで、対象試料の粘弾性が判定される流路である。流路デバイス2の詳細については、
図10以降を参照して後述する。
【0085】
次に、本実施形態に係る分析システムの分析処理の一例について
図9のフローチャートを参照して説明する。
【0086】
ステップSA1では、処理回路10が、流路デバイス2を用いて、試料の粘弾性測定の前に、粘弾性の値が既知である標準試料について、粘弾性と相関関係がある定量値を測定する。具体的に、ここではバブル発生方式による粘弾性測定を想定し、フロー制御機能101により処理回路10が、測定領域内に媒介物質および標準試料を流入させる。バブル発生機能102により処理回路10が測定領域内にバブルを発生させる。測定機能103により処理回路10が測定領域内のバブルサイズまたは標準試料の流出量を測定する。すなわち、定量値として、バブルサイズまたは標準試料の流出量を用いる。バブルサイズは、例えばカメラによりバブルを撮像し、画像からバブルのサイズを測定すればよい。流出量は、目盛り付き容器または体積測定カメラなどによって流出量を測定すればよい。測定機能103により処理回路10は、粘弾性が異なる2以上の標準試料について上述の測定方法により粘弾性を測定する。
【0087】
ステップSA2では、作成機能104により処理回路10が、2以上の標準試料のそれぞれについてステップSA1で測定された測定値と既知の粘弾性の値とに基づき、検量線を作成する。
【0088】
ステップSA3では、処理回路10が、対象試料の定量値を測定する。対象試料の粘弾性の測定方法としては、ステップSA1と同様の方法を用いればよい。すなわち、フロー制御機能101により処理回路10が、測定領域内に媒介物質および対象試料を流入させる。バブル発生機能102により処理回路10が測定領域内にバブルを発生させる。測定機能103により処理回路10が、測定領域内のバブルサイズまたは対象試料の流出量を測定する。
【0089】
ステップSA4では、測定機能103により処理回路10が、標準試料の検量線を用いて、対象試料の粘弾性を測定する。例えば、標準試料のバブルサイズと標準試料の粘弾性との対応関係を予め検量線として生成した場合、検量線に基づき、測定領域内の液体のバブルサイズに対応する粘弾性の値を、対象試料の粘弾性として算出すればよい。
【0090】
ステップSA5では、出力制御機能105により処理回路10が、対象試料の測定結果を出力する。例えば、分析装置1に接続された外部ディスプレイまたは分析装置1にディスプレイが備え付けられる場合は当該ディスプレイに、測定結果として対象試料の粘弾性の値が出力されればよい。または、対象試料の粘弾性が、分析装置1に接続されたプリンタから紙媒体に印刷されて出力されてもよい。または、分析装置1に接続されるスピーカから、音声により対象試料の粘弾性の情報が出力されてもよい。
【0091】
ステップSA6では、フロー制御機能101により処理回路10が、媒介物質を測定領域内に流入させ、測定済みの対象試料を廃棄する。
【0092】
ステップSA7では、システム制御機能106により処理回路10が、直前の粘弾性の測定タイミングから、所定期間を経過したか否かを判定する。所定期間を経過した場合、ステップSA3に戻り、同様の処理を繰り返す。所定期間を経過していない場合、ステップSA8に進む。
【0093】
ステップSA8では、システム制御機能106により処理回路10が、対象試料の分析処理の終了指示があるか否かを判定する。例えばユーザから測定終了の指示があれば、分析処理を終了する。分析処理を終了しない場合は、ステップSA7に戻り同様の処理を繰り返す。
【0094】
なお、ステップSA1およびステップSA2における標準試料の検量線の作成は、対象試料の測定のたびに実行してもよいし、一度検量線を作成した後は、その後の対象試料の粘弾性測定に際し、同じ検量線を用いてもよい。
【0095】
さらに、ステップSA4において、測定機能103により処理回路10が、測定した対象試料の粘弾性の値が所定範囲外(粘弾性の許容範囲外)である場合、ユーザに情報を通知してもよい。例えば出力制御機能105により処理回路10が、粘弾性の値が所定範囲外である旨のアラートをディスプレイに表示させればよい。また、測定機能103により処理回路10が、所定期間ごとに、時系列に沿って対象試料の粘弾性の値を測定することにより得られる粘弾性の値の時系列変化、つまり、粘弾性の変化量から、所定期間内に粘弾性の値が所定範囲外になると判定される場合、ユーザに情報を通知してもよい。例えば、測定機能103により処理回路10が、粘弾性の変化量として粘弾性の値の時系列データの傾きを算出し、当該傾きに基づいて所定期間内に粘弾性の値が所定範囲外となるか否かを判定すればよい。所定期間内に粘弾性の値が所定範囲外になると判定される場合、出力制御機能105により処理回路10が、例えばアラートをディスプレイに表示すればよい。
【0096】
次に、流路デバイス2の構造例および流路デバイス2を用いた粘弾性測定方法について
図10から
図12を参照して説明する。
図10は、流路デバイス2の第1構造例を示す。
【0097】
流路デバイス2は、ポンプ301と、シリンジ302と、バブル発生機構303と、試料流入路304と、流出路305と、媒介物質流入路306と、測定流路307と、第1逆止弁308と、第2逆止弁309と、第1開閉弁310と、第2開閉弁311とを含む。
【0098】
ポンプ301は、媒介物質流入路306に接続され、図示しないが媒介物質が格納される容器から媒介物質を吸い上げて媒介物質流入路306に流入させる。本実施形態に係るポンプ301は、フロー制御機能101により媒介物質の流入を制御することを想定する。
シリンジ302は、測定流路307に接続され、測定流路307内の液体の吸引および吐出を行う。
バブル発生機構303は、測定流路307内の液体を加熱してバブルを発生させる。バブル発生機構303は、例えば薄膜のヒータが測定流路307に配置され、当該ヒータに通電が行われると、当該ヒータに接する液体において膜沸騰が起こり、バブルが発生する。なお、血液が直接加熱されると熱変性が生じるため、測定領域内において媒介物質のみを加熱できるように、バブル発生機構303を、例えば後述の媒介物質流入路306に対向する位置に配置するおよび/またはシリンジ302側に配置してもよい。
【0099】
試料流入路304は、測定流路307に接続され、対象試料を測定流路307に流入させる流路である。
流出路305は、測定流路307に接続され、対象試料を測定流路307から流出させる流路である。
【0100】
媒介物質流入路306は、測定流路307に接続され、媒介物質を測定流路307に流入させる流路である。
測定流路307は、試料流入路304と、流出路305と、媒介物質流入路306とに接続され、液体のバブルが形成される密閉領域である。測定流路307は、保持部の一例である。測定流路307は、被検体から採取された血液試料を保持する。
【0101】
第1逆止弁308は、試料流入路304から測定流路307に対してのみ対象試料が流れるように配置される。すなわち、測定流路307からの試料流入路304への逆流を防止する。
第2逆止弁309は、測定流路307から流出路305に対してのみ対象試料が流れるように配置される。すなわち、流出路305から測定流路307への逆流を防止する。
【0102】
第1開閉弁310は、試料流入路304に配置され、開閉が制御されることで、対象試料の流入を制御する。なお、第1開閉弁310は、フロー制御機能101により対象試料の流入を制御することを想定する。
第2開閉弁311は、媒介物質流入路306に配置され、開閉が制御されることで、媒介物質の流入を制御する。なお、第2開閉弁311は、フロー制御機能101により媒介物質の流入を制御することを想定する。
【0103】
フロー制御機能101により処理回路10が、ポンプ301およびシリンジ302の駆動、流路デバイス2の弁の開閉、およびバブル発生機構303の駆動を電子制御することを想定する。なお、ポンプ301、シリンジ302、バブル発生機構303、第1開閉弁310および第2開閉弁311は、一般的な電子制御が可能な機構を用いればよいため、ここでの詳細な説明は省略する。
【0104】
また、流路デバイス2は、1回の分析処理ごとなどで使い捨て可能な材質で形成されてもよい。例えば、試料流入路304と、流出路305と、媒介物質流入路306と、測定流路307と、第1逆止弁308と、第2逆止弁309と、第1開閉弁310と、第2開閉弁311とのうちの少なくとも1つの構成は、ポリ塩化ビニルなどの熱可塑性樹脂、シリコンなどの合成樹脂で形成されればよい。これにより、対象試料の測定処理ごとに流路デバイスを取り換えることで、汚染を防止することができる。
【0105】
次に、第1構造例に係る粘弾性測定方法の第1工程について
図11に示す。
図11では、測定流路307内が媒介物質で満たされた状態を初期状態とする。当該初期状態から、フロー制御機能101により処理回路10は、第1開閉弁310を開き、第2開閉弁311を閉じる。フロー制御機能101により処理回路10は、シリンジ302を駆動し、シリンジ302が吸引動作を行うことにより、測定流路307の媒介物質がシリンジ302側に吸い上げられ、シリンジ302が吸引した体積に対応する液量の対象試料が測定流路307内に流入する。
【0106】
次に、流路デバイス2の第1構造例に係る粘弾性測定方法の第2工程について
図12に示す。
図12では、フロー制御機能101により処理回路10は、第1開閉弁310および第2開閉弁311の両方を閉じる。バブル発生機能102により処理回路10は、バブル発生機構303を駆動し、測定流路307内の液体を加熱してバブルを発生させる。測定機能103により処理回路10は、発生したバブルサイズまたは流出路305から流出した液体の体積を測定する。バブルサイズは、液体の粘弾性によって異なる。具体的には、対象試料の粘弾性が大きいほどバブルサイズは小さく、対象試料の粘弾性が小さいほどバブルサイズは大きくなる。そこで、
図9に示したように、標準試料のバブルサイズと標準試料の粘弾性との対応関係を予め検量線として生成しておくことにより、測定した液体のバブルサイズに対応する検量線での粘弾性の値を、対象試料の粘弾性として算出できる。
【0107】
また、バブルサイズのほか、上述した粘弾性と、流出路305から流出する対象試料の体積との関係性から、粘弾性を計測してもよい。すなわち、対象試料の粘弾性が高い場合は、液体のバブルサイズが小さくなるため、測定流路307から流出路305に押し出される対象試料の体積(液量)は少なくなる。一方、対象試料の粘弾性が低い場合は、液体のバブルサイズが大きくなるため、測定流路307から流出路305に押し出される対象試料の体積(液量)は大きくなる。よって、上述の関係性から、標準試料が押し出される体積と標準試料の粘弾性との対応関係を予め検量線として生成しておくことにより、測定流路307から流出路305に押し出された対象試料の体積に対応する検量線での粘弾性の値を、対象試料の粘弾性として算出できる。
【0108】
次に、流路デバイス2の第1構造例に係る粘弾性測定方法の第3工程について
図13に示す。
上述の第2工程により、対象試料の粘弾性測定が終了した場合、フロー制御機能101により処理回路10は、第1開閉弁310を閉じ、第2開閉弁311を開く。フロー制御機能101により処理回路10は、ポンプ301を動作させ、測定流路307内の液体を流出路305に押し出すように、媒介物質を測定流路307に流入させる。
これにより、測定流路307内の液体を流して廃棄することができ、次の粘弾性測定に備えることができる。また、対象試料は流路デバイス2内でのみ移動する、具体的には試料流入路304、流出路305および測定流路307のみの間で移動するため、分析装置の他の構成を汚染させずに粘弾性測定を継続して実行できる。
【0109】
次に、第4の実施形態に係る流路デバイス2の第2構造例について
図14に示す。
流路デバイス2の第2構造例は、第1構造例と比較して、測定流路307にシリンジ302を配置しない場合を示す。第2構造例に係る流路デバイス2は、ポンプ301と、バブル発生機構303と、試料流入路304と、流出路305と、測定流路307と、第1開閉弁310とを含む。
図14では、第1逆止弁308を設置しない例を示すが、第1逆止弁308と第2逆止弁309とが第1構造例と同様に配置されてもよい。
【0110】
次に、第2構造例に係る粘弾性測定方法の第1工程について
図15に示す。
図15では、フロー制御機能101により処理回路10は、試料流入路304の第1開閉弁310を開き、対象試料を測定流路307に流入させる。なお、シリンジにより流入させる場合と比較すると、少量の対象試料が測定流路307に流入する。
【0111】
次に、第2構造例に係る粘弾性測定方法の第2工程について
図16に示す。
フロー制御機能101により処理回路10は、第1開閉弁310を閉じる。バブル発生機能102により処理回路10は、バブル発生機構303を駆動し、測定流路307内の液体を加熱してバブルを発生させる。測定機能103により処理回路10は、流路デバイス2の第1構造例の場合と同様に、発生したバブルサイズまたは流出路305から流出した液体の体積を測定する。
【0112】
次に、第2構造例に係る粘弾性測定方法の第3工程について
図17に示す。
対象試料の粘弾性測定が終了した場合、フロー制御機能101により処理回路10は、第1開閉弁310を閉じ、第2開閉弁311を開き、ポンプ301により媒介物質を測定流路307に流入させる。これにより試料を測定流路307の密閉領域から排出することができる。
【0113】
流路デバイス2の第2構造例によっても、対象試料は試料流入路304、流出路305および測定流路307のみの間で移動するため、分析装置1を含む分析システムの他の構成を汚染させずに粘弾性測定を実行できる。
【0114】
次に、流路デバイス2の第2構造例の変形例について
図18に示す。
第2構造例の変形例では、測定流路307内で発生するバブルに対して、対象試料の影響を大きく与えるため、流出路305の流路を細くするか、流路を長くするように設計する。
図18には、流路デバイス2の第2構造例における流出路305を、細くかつ長く設計した例を示す。なお、図示しないが、流出路305に第2逆止弁309を配置してもよい。
【0115】
上述した流路デバイス2の第2構造例または当該第2構造例の変形例において、バブルの収縮によって対象試料を測定流路307内に流入させるようにしてもよい。例えば、第1開閉弁310を開いた状態でバブルが消失することにより、バブルの体積に相当する液量の対象試料が測定流路307内に吸い上げられることになるためである。よって、バブル発生機能102により処理回路10が、第1開閉弁310が開いた状態でバブルを発生および消失させることで、第1開閉弁310を開いて測定流路307内に対象試料を流入させる場合よりも多くの対象試料を測定流路307内に流入させることができる。
【0116】
次に、第4の実施形態に係る分析システムの利用例を示す概念図を
図19に示す。
ここでは、患者Pと分析装置1とを含む分析システムが図示される。患者Pから採血した血液を対象試料とし、採血用チューブを介して流路デバイス2に対象試料が流入し、対象試料の粘弾性が測定される。
【0117】
図19に示す分析システムでは、分析装置1と、流路デバイス2と、第1標準試料容器1201と、第2標準試料容器1203と、媒介物質容器1205と、廃棄容器1207とを含む。
【0118】
流路デバイス2では、試料流入路304が患者からの採血用チューブに接続される。媒介物質流入路306が媒介物質容器1205内の媒介物質1206をポンプ301により吸い上げ可能に接続される。流出路305が測定済みの測定試料を含む液体を廃棄容器1207に排出可能に接続される。
【0119】
第1標準試料容器1201は、検量線作成用である、第1標準試料1202を格納する容器である。
第2標準試料容器1203は、検量線作成用である、第2標準試料1204を格納する容器である。なお、第1標準試料1202と第2標準試料1204とは、それぞれ粘弾性が異なり、かつそれぞれの粘弾性の値が既知である。
【0120】
媒介物質容器1205は、媒介物質1206を格納する。
廃棄容器1207は、流出路305から排出された液体を、外気および人手に触れずに廃棄可能とする容器である。
【0121】
各流路(試料流入路304、流出路305、媒介物質流入路306および測定流路307)は、所定の温度となるように管理(恒温管理)される。
【0122】
患者Pの対象試料を測定する前段階として、第1標準試料1202および第2標準試料1204を用いて、上述した粘弾性測定方法(
図9のステップSA1およびステップSA2)により検量線を作成する。
その後、上述した対象試料の粘弾性測定を実施する(
図9のステップSA3~ステップSA8)。患者Pの対象試料の測定のたびに、流路デバイス2の第1開閉弁310および第2開閉弁311を閉じ、流出路305から測定済みの液体を廃棄容器1207に廃棄する。分析装置1側の取付口は、蓋を付けて外気との連通を防止する。
【0123】
以上に示した第4の実施形態によれば、測定流路内にバブルを発生させる流路デバイスを用いて、患者の血液などの対象試料を測定領域に流入させ、バブルサイズ、またはバブル発生により測定領域から流出した流出量を計測する。バブルサイズまたは流出量と検量線とに基づき、対象試料の粘弾性を測定する。
これにより、検量線との比較で対象試料の粘弾性の値を短時間で得ることができる。また、流路デバイスを使い捨て可能な材料で形成することにより、分析装置および医療従事者の汚染、感染を防止することができる。すなわち、手術、診療などの医療行為における利便性を向上させることができる。
【0124】
[第5の実施形態]
第5の実施形態では、抗凝固剤を用いた場合の対象試料の粘弾性を測定する場合を想定する。
【0125】
第5の実施形態に係る分析システムの利用例を
図20に示す。
例えば、術中の患者の血液および輸血した血液の粘弾性をリアルタイムに測定したい場合を想定し、患者から取得した血液に抗凝固剤(ヘパリン、クエン酸ナトリウムなど)を添加したものを対象試料として、当該対象試料に対する抗凝固剤の影響を測定することを想定する。
【0126】
図20に示す分析システムは、
図19に示した分析装置1と、流路デバイス2と、第1標準試料容器1201と、第2標準試料容器1203と、媒介物質容器1205と、廃棄容器1207とに加え、第1混合薬剤容器1301と、第2混合薬剤容器1303とを含む。
第1混合薬剤容器1301は、第1抗凝固剤1302を格納する容器である。
第2混合薬剤容器1303は、第2抗凝固剤1304を格納する容器である。第2抗凝固剤1304は、第1抗凝固剤1302と比較して、種類が異なる薬剤を想定し、第1抗凝固剤1302の抗凝固能と比較して、同じ抗凝固能を持たない、すなわち抗凝固能が低いまたは高い薬剤であることを想定する。
【0127】
分析システムが、患者から取得した血液に異なる2つの抗凝固剤をそれぞれ添加し、2つの混合試料について、それぞれ粘弾性測定を実施する。なお、採血用チューブ中に対象試料と抗凝固剤それぞれとを混合させるための混合部1305および1306を配置してもよい。
【0128】
次に、第5の実施形態に係る流路デバイス2の構成例について
図21に示す。
図21に示す流路デバイス2は、
図10に示す流路デバイス2の構成と比較して、第1抗凝固剤1302が添加された対象試料が流入する第1試料流入路1401と、抗凝固剤を添加しない、対象試料単体が流入する第2試料流入路1402とを含む点が異なる。なお、第2試料流入路1402は、第2抗凝固剤1304が流入されてもよい。
なお、第1開閉弁310は、第1試料流入路1401と第2試料流入路1402とにそれぞれ設置される場合を想定するが、測定流路307に流入する流路が、第1試料流入路1401と第2試料流入路1402とで切り替えられるような弁で構成されてもよい。
【0129】
測定すべき対象試料が2つあるため、第1試料流入路1401から流入される対象試料について粘弾性を測定し、次に第2試料流入路1402から流入される対象試料について粘弾性を測定し、と交互に粘弾性を測定する。これにより、例えば第2試料流入路1402には抗凝固剤が添加されない場合、第1試料流入路1401から流入する抗凝固剤混入試料の粘弾性と、第2試料流入路1402から流入する抗凝固剤なしの粘弾性とを比較することで、測定機能103により処理回路10が、所定の粘弾性、すなわち所定の凝固能になる抗凝固剤の量を算出することができる。
【0130】
なお、心臓の外科手術などにおいては、患者に既にヘパリンなどの抗凝固剤が注入されている場合に、ヘパリン中和効果がある抗凝固剤に対する中和剤を投与し、抗凝固剤混入試料に対する中和剤の影響度(凝固能)を測定してもよい。中和剤としては、例えばヘパリナーゼ、硫酸プロタミンが挙げられる。具体的には、第1混合薬剤容器1301に第1中和剤、第2混合薬剤容器1303に第2中和剤がそれぞれ格納され、患者から取得した抗凝固剤混入試料に対して、第1中和剤および第2中和剤がそれぞれ添加され、2つの混合試料が生成される。その後は同様に混合試料について粘弾性測定が実施されればよい。
【0131】
以上に示した第5の実施形態によれば、第4の実施形態と同様に、検量線との比較で対象試料の粘弾性の値を短時間で得ることができる。さらに、対象試料に対する抗凝固剤の影響または抗凝固剤混入試料に対する中和剤の影響を確認できるため、患者に対して添加する抗凝固剤の適正量を把握することができる。
【0132】
なお、上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable GateArray:FPGA))などの回路を意味する。プロセッサが例えばCPUである場合、プロセッサは記憶回路に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。一方、プロセッサが例えばASICである場合、プログラムが記憶回路に保存される代わりに、当該機能がプロセッサの回路内に論理回路として直接組み込まれる。なお、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。さらに、図における複数の構成要素を1つのプロセッサへ統合してその機能を実現するようにしてもよい。
【0133】
加えて、実施形態に係る各機能は、前記処理を実行するプログラムをワークステーション等のコンピュータにインストールし、これらをメモリ上で展開することによっても実現することができる。このとき、コンピュータに前記手法を実行させることのできるプログラムは、磁気ディスク(ハードディスクなど)、光ディスク(CD-ROM、DVDなど)、半導体メモリなどの記憶媒体に格納して頒布することも可能である。
【0134】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、被検体から採取された血液試料を保持する保持部と、保持された血液試料と接触する媒介物質を介して、保持された血液試料の粘弾性及び粘性のうち少なくとも一方に関する測定を行う測定部と、を持つことにより、測定結果を短時間で得ることができる。
【0135】
(付記1)
試料を流通させる流路内における密閉領域内の圧力を検出する検出部を備える測定装置と、
前記密閉領域の圧力に基づいて、前記試料の粘弾性または粘性のうち少なくともいずれか一方に関する指標を算出する演算部と、を備える、
分析装置。
【0136】
(付記2)
前記測定装置は、前記密閉領域における前記試料を吸引するシリンジを更に備え、
前記密閉領域の圧力は、前記シリンジの動作に応じた圧力を含んでよい。
【0137】
(付記3)
前記密閉領域に前記試料を流入させる流入口と、
前記密閉領域から前記試料を流出させる流出口と、を更に備えてよい。
【0138】
(付記4)
一方通行により、前記流入口から前記密閉領域に前記試料を流入させ、前記流出口から前記試料を流出させてよい。
【0139】
(付記5)
前記密閉領域に液状の媒介物質を供給する供給機構を更に備えてよい。
【0140】
(付記6)
前記試料が満たされた前記密閉領域に前記供給機構により、前記媒介物質を供給して、前記密閉領域内の前記試料を排出させてよい。
【0141】
(付記7)
前記密閉領域は取付流路を通じて形成され、
前記流入口に接続され、前記取付流路に前記試料を流入させる流入用チューブ及び前記流出口に接続され、前記密閉領域内の試料を排出させる流出用チューブと、を更に備え、
前記取付流路、前記流入用チューブ、または前記流出用チューブのうち少なくともいずれか1つは、取外し可能とされてよい。
【0142】
(付記8)
前記密閉領域を介した前記検出部と前記試料の間に空気が介在されていてよい。
【0143】
(付記9)
被検体から取り出した前記試料を前記密閉領域に流入させ、
前記密閉領域より排出された前記試料を前記被検体に還元してよい。
【0144】
(付記10)
前記試料に抗凝固剤が混合されてよい。
【0145】
(付記11)
前記抗凝固剤は、複数種類の濃度のいずれかであってよい。
【0146】
(付記12)
試料を流通させる流路内における密閉領域内における前記試料を吸引または排出するシリンジの動作に応じた前記密閉領域の圧力を検出し、
前記密閉領域の圧力に基づいて、前記試料の粘弾性または粘性のうち少なくともいずれか一方に関する指標を評価する、
分析方法。
【0147】
(付記13)
測定領域に対する、対象試料と媒介物質との流入を制御する制御部と、
前記測定領域内の液体を加熱し、バブルを発生させる発生部と、
前記バブルのサイズ、または前記バブルの発生による前記測定領域からの前記対象試料の流出量に基づき、前記対象試料の粘性および粘弾性のうち少なくとも一方の指標を測定する測定部と、
を具備する分析装置。
【0148】
(付記14)
前記測定領域を形成する測定流路と、
前記測定流路に接続され、前記対象試料を前記測定領域に流入させる第1流入路と、
前記測定流路に接続され、前記媒介物質を前記測定領域に流入させる第2流入路と、
前記対象試料および前記媒介物質が前記測定流路から流出する流出路と、により形成される流路デバイスを用いて、前記対象試料の前記指標を測定してよい。
【0149】
(付記15)
前記流路デバイスは、
前記測定流路から前記第1流入路への液体の流入を防止する第1逆止弁と、
前記流出路から前記測定流路への液体の流入を防止する第2逆止弁と、をさらに具備してよい。
【0150】
(付記16)
前記指標の測定後、前記第2流入路から前記媒介物質を前記測定流路に流入することで、前記測定領域内の試料を排出してよい。
【0151】
(付記17)
前記測定流路、前記第1流入路、前記第2流入路および前記流出路の少なくとも1つは、使い捨て可能に形成されてよい。
【0152】
(付記18)
前記対象試料は、前記流路デバイス内にのみ接触してよい。
【0153】
(付記19)
前記指標の測定結果を出力する出力部をさらに具備してよい。
【0154】
(付記20)
前記測定部は、前記指標の値が所定範囲外である場合、ユーザに情報を通知してよい。
【0155】
(付記21)
前記測定部は、時系列に沿って前記指標を測定することにより得られる前記指標の変化量から、所定期間内に前記指標の値が所定範囲外となると判定される場合、ユーザに情報を通知してよい。
【0156】
(付記22)
測定領域に対する、対象試料と媒介物質との流入を制御し、
前記測定領域内の液体を加熱し、バブルを発生させ、
前記バブルのサイズ、または前記バブルの発生による前記測定領域からの前記対象試料の流出量に基づき、前記対象試料の粘性および粘弾性のうち少なくとも一方の指標を測定する、
分析方法。
【0157】
(付記23)
コンピュータに、
測定領域に対する、対象試料と媒介物質との流入を制御する制御機能と、
前記測定領域内の液体を加熱し、バブルを発生させる発生機能と、
前記バブルのサイズ、または前記バブルの発生による前記測定領域からの前記対象試料の流出量に基づき、前記対象試料の粘性および粘弾性のうち少なくとも一方の指標を測定する測定機能と、
を実現させる分析プログラム。
【0158】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0159】
1…測定器
2…廃棄瓶
3…チューブ
3A…第1チューブ
3B…第2チューブ
3C…還元チューブ
4…第1抗凝固剤収容体
5…第2抗凝固剤収容体
6…第1標準試料収容体
7…第2標準試料収容体
8A…第3チューブ
8B…第4チューブ
11,21…取付流路
12,22…供給管
13,23…ポンプ
14,25…第1バルブ
15,24…シリンジ
15A,24A…プレッシャモニタ
16,26…第2バルブ
17,27B…廃棄管
27A…接続管
29…第3バルブ
100…分析装置
110…操作部
120…測定装置
130…オンライン部
140…表示部
150…印刷部
160…処理回路
161…システム制御機能
162…測定制御機能
163…演算機能
170…メモリ
ID…被検体
LB…試料
LB1…第1試料
LB2…第2試料
LC…廃棄試料
LH…標準試料
LH1…第1標準試料
LH2…第2標準試料
LS…媒介物質
M…被検体
X…領域
1…分析装置
2…流路デバイス
10…処理回路
11…メモリ
12…入力インタフェース
13…出力インタフェース
14…通信インタフェース
101…フロー制御機能
102…バブル発生機能
103…測定機能
104…作成機能
105…出力制御機能
106…システム制御機能
301…ポンプ
302…シリンジ
303…バブル発生機構
304…試料流入路
305…流出路
306…媒介物質流入路
307…測定流路
308…第1逆止弁
309…第2逆止弁
310…第1開閉弁
311…第2開閉弁
1201…第1標準試料容器
1202…第1標準試料
1203…第2標準試料容器
1204…第2標準試料
1205…媒介物質容器
1206…媒介物質
1207…廃棄容器
1301…第1混合薬剤容器
1302…第1抗凝固剤
1303…第2混合薬剤容器
1304…第2抗凝固剤
1305,1306…混合部
1401…第1試料流入路
1402…第2試料流入路
P…患者