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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023172912
(43)【公開日】2023-12-06
(54)【発明の名称】評価システムおよび評価方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 5/00 20060101AFI20231129BHJP
【FI】
G01N5/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023078543
(22)【出願日】2023-05-11
(31)【優先権主張番号】P 2022083908
(32)【優先日】2022-05-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】高田 尚紀
(72)【発明者】
【氏名】井上 徹朗
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 章史
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 紀博
(72)【発明者】
【氏名】清水 淳平
(57)【要約】
【課題】吸水性樹脂の吸水特性のうち加圧下吸収倍率を自動的に測定できる評価システムを提供する。
【解決手段】
評価システム1は、所定の量の吸水性樹脂をセルに供給する第1供給手段10と、セルに供給された吸水性樹脂を、メッシュ状の底部を備えるシリンダ内に供給する第2供給手段20と、シリンダの底部に供給された吸水性樹脂を均一に分散させる分散手段30と、シリンダを載置するためのプレートを備えるとともに吸水性樹脂に吸収させる液体を張るトレーに、液体を供給するとともに液面を一定に保持する保持手段40と、トレーに備えたプレートに、シリンダ、ピストン、93、および重り94を含む構成部分Aを載置する載置手段50と、プレートに構成部分が載置されることで液体を吸収して膨張した吸水性樹脂の吸水特性を測定する測定手段60と、を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸水性樹脂の吸水特性の評価システムであって、
所定の量の前記吸水性樹脂をセルに供給する第1供給手段と、
前記セルに供給された前記吸水性樹脂を、メッシュ状の底部を備えるシリンダ内に供給する第2供給手段と、
前記シリンダの前記底部に供給された前記吸水性樹脂を均一に分散させる分散手段と、
前記シリンダを載置するためのプレートを備えるとともに前記吸水性樹脂に吸収させる液体を張るトレーに、前記液体を供給するとともに液面を一定に保持する保持手段と、
前記トレーに備えた前記プレートに前記シリンダ、ピストン、および重りを含む構成部分を載置する載置手段と、
前記プレートに前記構成部分が載置されることで前記液体を吸収して膨張した前記吸水性樹脂の吸水特性を測定する測定手段と、を有する、評価システム。
【請求項2】
前記保持手段は、
前記液面を検知する検知手段と、
前記検知手段によって検知する前記液面の高さに基づいて、前記トレーに供給する前記液体の量を制御する制御手段と、を有する、請求項1に記載の評価システム。
【請求項3】
前記保持手段は、サイフォンの原理を利用して前記液面を一定に保持する、請求項1または2に記載の評価システム。
【請求項4】
前記トレー内の前記液体を廃棄する廃棄部をさらに有する、請求項1または2に記載の評価システム。
【請求項5】
吸水性樹脂の吸水特性の評価方法であって、
所定の量の前記吸水性樹脂をセルに供給して、
前記セルに供給された前記吸水性樹脂をメッシュ状の底部を備えるシリンダに供給して、
前記シリンダに供給された前記吸水性樹脂を均一に分散させ、
前記シリンダを載置するためのプレートを備えるとともに前記吸水性樹脂に吸収させる液体を張るトレーに、前記液体を供給するとともに液面を一定に保持して、
前記トレーに備えた前記プレートに、前記シリンダ、ピストン、および重りを含む構成部分を載置して、
前記プレートに載置された前記構成部分の前記シリンダの前記底部から前記液体が入り、前記液体を吸収して膨張した前記吸水性樹脂の吸水特性を測定する、評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸水性樹脂の吸水特性の評価システムおよび評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、紙オムツ、生理用ナプキン、失禁パット等の衛生材料には、体液吸収の観点から、その構成材としての吸水性樹脂が、吸水剤として幅広く利用されている。上記吸水性樹脂には、その原料として多くの単量体や親水性高分子が使用されているが、吸水性能の観点から、アクリル酸及び/又はその塩を単量体として用いたポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂が、工業的に最も多く生産されている。
【0003】
吸水性樹脂が備えるべき吸水特性としては、体液等の水性液体に接した際の優れた吸水量や吸水速度、ゲル強度、水性液体を含んだ基材から水を吸い上げる吸引力等が挙げられる。吸水特性の分析項目として加圧下吸収倍率(AAP:Absorption Against Pressure)が知られている。
【0004】
加圧下吸収倍率を測定するには、所定の量の吸水性樹脂を準備して、準備した吸水性樹脂をシリンダの底部(底部がメッシュ状の構造)に入れ均一に分散させる工程、該吸水性樹脂を入れたシリンダに、重りをつけたピストンを挿入する工程、該ピストンを挿入したシリンダを、液面が一定になるように液体(例えば水)を保持したトレーに載置する工程を含み、これらの工程によりシリンダ内の吸水性樹脂に液体を吸収させて、吸水性樹脂の単位重さ当たりの吸収量を計測している。
【0005】
従来から、この加圧下吸収倍率を測定するにあたって、上記の工程の大半が手動で行われており、自動化が求められている。
【0006】
これに関連して、下記の特許文献1には、所定の量の超吸収体粉末を自動的に計量供給することのできる方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2010-539272号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記の計量供給方法は、加圧下吸収倍率の測定のうちの一部の工程(定量の超吸収体を輸送)であるため、依然として加圧下吸収倍率を自動的に測定できていない。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するために発明されたものであり、吸水性樹脂の吸水特性のうち加圧下吸収倍率を自動的に測定できる評価システムおよび評価方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成する本発明に係る評価システムは、以下の構成を有する。
【0011】
(1)
吸水性樹脂の吸水特性の評価システムであって、
(i)所定の量の前記吸水性樹脂をセルに供給する第1供給手段と、
(ii)前記セルに供給された前記吸水性樹脂を、メッシュ状の底部を備えるシリンダ内に供給する第2供給手段と、
(iii)前記シリンダの底部に供給された前記吸水性樹脂を均一に分散させる分散手段と、
(iv)前記シリンダを載置するためのプレートを備えるとともに前記吸水性樹脂に吸収させる液体を張るトレーに、前記液体を供給するとともに液面を一定に保持する保持手段と、
(v)前記トレーに備えた前記プレートに前記シリンダ、ピストン、および重りを含む構成部分を載置する載置手段と、
(vi)前記プレートに前記構成部分が載置されることで前記液体を吸収して膨張した前記吸水性樹脂の吸水特性を測定する測定手段と、を有する。
【0012】
(2)
前記保持手段は、
前記液面を検知する検知手段と、
前記検知手段によって検知する前記液面の高さに基づいて、前記トレーに供給する前記液体の量を制御する制御手段と、を有する、(1)に記載の評価システム。
【0013】
(3)
前記保持手段は、サイフォンの原理を利用して前記液面を一定に保持する、(1)または(2)に記載の評価システム。
【0014】
(4)
前記トレー内の前記液体を廃棄する廃棄部をさらに有する、(1)~(3)のいずれか1つに記載の評価システム。
【0015】
また、上記目的を達成する本発明に係る評価方法は、吸水性樹脂の吸水特性の評価方法である。評価方法は、所定の量の前記吸水性樹脂をセルに供給して、前記セルに供給された前記吸水性樹脂をメッシュ状の底部を備えるシリンダに供給して、前記シリンダに供給された前記吸水性樹脂を均一に分散させ、前記シリンダを載置するためのプレートを備えるとともに前記吸水性樹脂に吸収させる液体を張るトレーに、前記液体を供給するとともに液面を一定に保持して、前記トレーに備えた前記プレートに前記シリンダ、ピストン、および重りを含む構成部分を載置して、前記プレートに載置された前記構成部分の前記シリンダの前記底部から液体が入り、前記液体を吸収して膨張した前記吸水性樹脂の吸水特性を測定する。
【発明の効果】
【0016】
上述の評価システムおよび評価方法によれば、吸水性樹脂の吸水特性のうち加圧下吸収倍率を自動的に測定できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態に係る評価システムによって評価される吸水性樹脂の加圧下吸収倍率を測定する測定装置を示す概略図である。
図2】本実施形態に係る評価システムの一部を示す概略図である。
図3】本実施形態に係る評価システムの載置手段によって、1つのトレーにおいて複数の構成部分Aを載置する様子を示す概略図である。
図4】変形例に係る保持手段によって、トレーの液面を一定に保持する様子を示す概略図である。
図5】廃棄部の構成を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態を、図1図3を参照しつつ説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0019】
図1は、本発明の実施形態に係る評価システム1によって評価される吸水性樹脂の加圧下吸収倍率を測定する測定装置90を示す概略図である。図2は、本実施形態に係る評価システム1の一部を示す概略図である。図3は、本実施形態に係る評価システム1の載置手段50によって、1つのトレー91において複数の構成部分Aを載置する様子を示す概略図である。
【0020】
本実施形態に係る評価システム1は、吸水性樹脂の吸水特性のうち特に加圧下吸収倍率を測定して評価することができる。吸水性樹脂(SAP/Super Absorbent Polymer)は、水膨潤性水不溶性の高分子ゲル化剤であり、紙オムツや生理用ナプキン等の吸収性物品、農園芸用の保水剤、工業用の止水剤等、様々な分野で多用されている。上記吸水性樹脂は、その原料として多くの単量体や親水性高分子が使用されているが、吸水性能の観点から、アクリル酸及び/又はその塩を単量体として用いたポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂が、工業的に最も多く生産されている。
【0021】
まず、図1を参照して、評価システム1によって評価される吸水性樹脂の加圧下吸収倍率を測定する測定装置90の構成について説明する。
【0022】
測定装置90は、図1に示すように、吸水性樹脂に吸収させるための液体Lが配置されるトレー91と、トレー91に備えられるプレート95と、プレート95に載置されるシリンダ92と、シリンダ92内を上下方向にスライド移動可能に配置されるピストン93と、ピストン93を介して吸水性樹脂を加圧するための重り94と、を有する。液体Lは特に限定されないが、例えば生理食塩水である。
【0023】
トレー91は、縦壁部91Aを有するように構成されており、内部に液体Lが配置される。トレー91の上方には、プレート95が配置されている。プレートは、水が通過する構造であれば特に限定されず、メッシュ状、フィルター状であってよい。例えば、ガラスフィルターが用いられる。プレート95の上方には、ろ紙96が配置されている。ろ紙96は、プレート95上の余剰な液体Lを吸収して、液面とプレート95の位置を同一にすることができる。
【0024】
シリンダ92は、図1に示すように、メッシュ状の底部92Aを有する。メッシュ状の底部は、配置された吸水性樹脂を保持できるとともに水が通過するものであれば特に限定されず、金属網、樹脂網であってよい。例えば、ステンレスの金属網を用いることができる。シリンダ92は、図1に示すように、縦壁部92Bを有するように構成されており、底部92A上に吸水性樹脂Sが配置される。
【0025】
ピストン93は、図1に示すように、シリンダ92の内径よりもわずかに小さい外径を備える。ピストン93は、シリンダ92の内部を上下方向にスライド移動することができ、重り94の重さをシリンダ92に配置された吸水性樹脂Sに付加することができる。
【0026】
測定装置90はさらに、図1に示すように、トレー91の下に設置される温調装置97と、トレー91内に設置される液温センサー(例えば熱電対)98と、温調装置97の出力を制御する制御部99と、を有する。この構成において、液温センサー98によってトレー91内の液体Lの温度が一定となるように、温調装置97の出力を制御する。これによって、測定時の液温管理を好適に行うことができる。温調装置97はシリコンラバーヒーターであってもよい。
【0027】
なお、測定時の液温管理の方法は上記に限定されず、トレー91に覆い(蓋またはカバー)を被せて、外気温による液温変化を抑制してもよい。
【0028】
次に、図1図3を参照して、本実施形態に係る評価システム1の構成について説明する。評価システム1は、図2に示すように、所定の量の吸水性樹脂をセルC1に供給する第1供給手段10と、セルC1からシリンダ92に吸水性樹脂Sを供給する第2供給手段20、シリンダ92に供給された吸水性樹脂Sをシリンダ92内において均一に分散させる分散手段30、図1に示すように、トレー91に液体Lを供給して液面を一定に保持する保持手段40、図3に示すように、トレー91にシリンダ92を載置する載置手段50、図1に示すように、吸水性樹脂Sの吸水特性を測定する測定手段60と、トレー91内の液体Lを廃棄することのできる廃棄部70と、を有する。以下、各構成について説明する。
【0029】
吸水性樹脂のAAP測定では、測定する吸水性樹脂の重量を精密に秤量供給する必要がある。このため、本実施形態の評価システム1において、第1供給手段10は、精密に秤量できる装置であることが好ましく、例えば、スクリューコンベアを用いた計量供給機等、振動型秤量供給機、回転型秤量供給機が挙げられる。
【0030】
例えば、特表2010-539272号公報の段落「0011」、「0012」、「0015」、[0016]、[0020]、[0023]~[0027]、[0036]等に例示されている各種のスクリューコンベアを用いた計量供給機、unchained labs社のApplication Note(2016年、Eliminate the Bottleneck in Powder Dispensing)に記載されているパウダーディスペンスシステム(The freeslate jr. for powder dispense)、特開2022-72040号公報において開示されている振動型秤量供給機(段落「0011」~段落「0025」、段落「0170」~段落「0174」、図3図13、および図28図30)、回転型秤量供給機(段落「0175」~段落「0190」、および図31図43)などを使用することができる。
【0031】
第2供給手段20は、図2に示すように、ターンテーブルTによって搬送されるセルC1を回転させて傾斜させる。本実施形態において、第2供給手段20は、例えば、駆動モーターである。第2供給手段20によって、セルC1が傾斜されることで、ロートRを介してセルC1からシリンダ92に吸水性樹脂Sを供給する。ロートRは、図2に示すように、シリンダ92から所定の高さだけ立ち上がった治具Jに固定されている。シリンダ92は、例えばベルトBによって搬送される。吸水性樹脂Sが配置されていないシリンダ92が上流側から搬送されて、第2供給手段20によって吸水性樹脂Sが供給されたシリンダ92は下流側に搬送される。第2供給手段20は、セルC1に供給された吸水性樹脂Sをシリンダ92に供給することができる限りにおいて、上記の構成に限定されない。
【0032】
分散手段30は、図2に示すように、ベルトB上であって、ロートRの下方に配置されている。分散手段30は、ベルトB上又はベルトB下にリフトアップ又はリフトダウンできる構成となっている。そして、シリンダ92の移動時に分散手段30がベルト下方に配置され、シリンダ92の振動時に分散手段30がベルト上方に配置される。本実施形態において、分散手段30は、後述する(ii)である。
【0033】
保持手段40は、図1に示すように、トレー91における液面を検知する検知手段41、トレー91に液体Lを供給するシリンジ42、トレー91にある液体Lを廃棄する廃棄部70、及び検知手段41によって検知する液面の高さになるように、トレー91に供給する液体Lの量を制御する制御手段43と、を有する。
【0034】
検知手段41は、水に接触するタイプ(接触式)と水に接触しないタイプ(非接触式)がある。接触式は、液面検知センサー、フロートを用いることができる。非接触式は、液面検知レーザーを用いることができる。これらの手段は公知のものを用いることができるため、詳細な説明は省略する。制御手段43は、例えばCPUである。
【0035】
検知手段41によってトレー91の液面の高さを検知しておいて、吸水性樹脂Sが液体Lを吸収して、トレー91の液面の高さが低くなった場合、検知手段41は液面の高さが所定の高さより低くなったことを検知して、信号を制御手段43に送信する。
【0036】
そして、信号を受信した制御手段43はシリンジ42に信号を送信して、シリンジ42内の液体Lをトレー91に供給させる。以上の工程によってトレー91の液面の高さを一定にすることができる。
【0037】
載置手段50は、図3に示すように、液体Lが充填されているトレー91に対して、吸水性樹脂が均一に分散された複数のシリンダ92と後述するピストン93及び重り94を設置した構成部分Aを載置する。1つのトレー91において載置する構成部分Aの数は限定されず、一つでもよいし複数でもよいが、複数置く方が、作業効率が向上し好ましい。
【0038】
載置手段50としては、シリンダ92を把持して、トレー91の上方に配置することができるものであれば特に限定されないが、例えば小型のクレーンを用いることができる。
【0039】
測定手段60は、吸水性樹脂の吸水特性のうち、加圧下吸収倍率を測定する。測定手段60としては、制御手段43(CPU)を用いることができる。前記の吸水性樹脂Sが供給されたシリンダ92にピストン93を挿入した後、それらの重量(吸水性樹脂S、シリンダ92、及びピストン93の総重量)を計量する。計量後、ロボットアームを用いて重り94をピストン93の上に積載させる(吸水性樹脂S、シリンダ92、及びピストン93、及び重り94を設置したひとまとまりを構成部分Aと称する)。前記構成部分Aを生理食塩水に浸かったプレート95上のろ紙96の上に置き、シリンダ92に配置されている吸水性樹脂Sを膨潤させる。膨潤後、構成部分Aをろ紙96から離した後、おもり94を取り除いた構成部分B(吸水性樹脂S、シリンダ92、及びピストン93)の重量を計量する。
【0040】
加圧下吸収倍率(AAP)は以下の式から算出することができる。
【0041】
AAP=(Wb-Wa)/Wsa
ここで、Waは吸水性樹脂が液体Lを吸収する前の状態における、吸水性樹脂が配置されたシリンダ92およびピストン93の重さである。Wbは、吸水性樹脂が液体Lを吸収した後の状態における、吸水性樹脂が配置されたシリンダ92およびピストン93の重さである。すなわち、Wb-Waは、吸水性樹脂の液体Lの吸収量に相当する。Wsaは、液体Lを吸収する前の状態における、吸水性樹脂の重さである。
【0042】
すなわち、AAPは、吸水性樹脂の単位重さ当たりの吸収量に相当する。
【0043】
廃棄部70は、トレー91内の液体Lを廃棄することができる。廃棄部70は、例えば、廃棄孔である。廃棄孔が電磁弁であってもよい。電磁弁により、液体の排出するタイミング、及び排出孔の大きさの調整を自動的に行うことが可能となる。例えば、電磁弁が備わった廃棄部70は、所定時間(数秒間)ごとに所定時間(数秒間)廃棄する操作を設定し自動化することが出来る。この電磁弁が備わった廃棄部70より、廃棄部からは汚い(もしくは、古い)生理食塩水が定常的に排出され、常にフレッシュな生理食塩水がシリンジ42から供給される。廃棄部70は、図5に示すように、液体を吸収する材料であってよく、例えば綿で作られた織布(タオルの断片)を用いることができる。なお、廃棄部は、織布の代わりに、クレンメを使用してもよい。クレンメを使用することにより、生理食塩水の排出速度を任意に調整できる。さらに廃棄部は、織布やクレンメ以外に、電動の排水ポンプを用いてもよい。
【0044】
例えば、複数のシリンダをトレーに設置して測定する場合、液体Lがトレー91上に滞留して、場所によって濃度や成分に偏りが生じたり、不純物が液体Lに混入したりする可能性がある。このような液体Lを吸水性樹脂Sに吸収させて、加圧下吸収倍率を測定した場合、吸水性樹脂の吸水特性を正確に分析できない可能性がある。
【0045】
これに対して、本実施形態に係る評価システム1は、トレー91内の廃棄部70で液体Lを排出しつつシリンジ42から供給されたフレッシュな液体Lを供給している。そのため、絶えず液体が入れ替わる状態になっていることからトレー内の液体Lは、常にフレッシュであり、且つ液面が一定に保持される。さらに、トレー内の場所によって液体Lの濃度に偏りが生じたり、不純物が混在している状態(混じって存在している状態)を好適に抑制したりすることができる。したがって、加圧下吸収倍率を測定した場合、吸水性樹脂の吸水特性を正確に分析できる。
【0046】
次に、吸水性樹脂の吸水特性の評価方法について説明する。
【0047】
まず、所定の量の吸水性樹脂を入れるためのセルC1を準備して、ターンテーブルTによって順次、下流へ移動させる(図2のセル側の矢印参照)。
【0048】
次に、第1供給手段10によって所定の量の吸水性樹脂をセルC1に供給する。このとき、例えば0.2~5gの吸水性樹脂を、第1供給手段10によってセルC1に供給する。
【0049】
次に、図2に示すように、第2供給手段20によって、セルC1を回転させて傾斜させることによって、セルC1内の吸水性樹脂をシリンダ92に供給する。このとき、シリンダ92は、ベルトBによって上流から下流(図2のベルト側の矢印参照)に搬送されている。
【0050】
次に、分散手段30によって、シリンダ92内において高さが略一定となるように、吸水性樹脂を均一に分散させる。このとき、シリンダ92は、分散手段30の上方に配置される(図2の状態参照)。
【0051】
一方トレー91側では、図1に示すように、保持手段40によって、トレー91に液体Lを供給するとともに液面を一定に保持する。このとき、トレー91内の液体Lは、廃棄部70から廃棄されつつ、シリンジ42から液体Lが供給される。
【0052】
次に、図3に示すように、載置手段50によって、液体Lが配置されたトレー91に、吸水性樹脂Sが配置されたシリンダ92を載置する。
【0053】
次に、測定手段60によって、吸水性樹脂Sの吸水特性のうち、加圧下吸収倍率を測定する。
【0054】
以上説明したように、本実施形態に係る評価システム1は、吸水性樹脂Sの吸水特性の評価システム1である。評価システム1は、所定の量の吸水性樹脂SをセルC1に供給する第1供給手段10と、セルC1に供給された吸水性樹脂を、メッシュ状の底部92Aを備えるシリンダ92内に供給する第2供給手段20と、シリンダ92の底部92Aに供給された吸水性樹脂Sを均一に分散させる分散手段30と、シリンダ92を載置するためのプレート95を備えるとともに吸水性樹脂Sに吸収させる液体Lを張るトレー91に、液体Lを供給するとともに液面を一定に保持する保持手段40と、トレー91に備えたプレート95に、シリンダ92、ピストン93、および重り94を含む構成部分Aを載置する載置手段50と、プレート95に構成部分Aが載置されることで液体Lを吸収して膨張した吸水性樹脂Sの吸水特性を測定する測定手段60と、を有する。このように構成された評価システム1によれば、吸水性樹脂の吸水特性のうち加圧下吸収倍率を自動的に測定できる。
【0055】
また、分散手段30は、図2に示すように、以下の(i)~(ii)のうち、(ii)を少なくとも備える。このように構成された評価システム1によれば、容易に吸水性樹脂を均一に分散することができる。AAPの測定結果のバラツキがなく安定した数値とするために、(i)と(ii)を組み合わせることが好ましい。
(i)シリンダ内に発生する気流により吸水性樹脂を舞散らす方法。
【0056】
シリンダ、又はピストンを固定し、シリンダ内のピストンを往復させることで気流を発生させる。この発生した気流により、シリンダ内の吸水性樹脂が舞い散り分散する。ピストンがシリンダの底部に付かないように往復させて、シリンダ内に気流を発生させるようにする。
(ii)シリンダを振動させる方法。
【0057】
シリンダの振動が吸水性樹脂に伝搬することで吸水性樹脂が振動・分散する。シリンダを振動させる装置として、電磁振動機が挙げられる(図2の分散方法30にあたる)。吸水性樹脂が供給されたシリンダ92を電磁振動機上に設置し振動を与えることで吸水性樹脂を均一に散らすようにする。電磁振動機の振幅は特に限定されないが、例えば1~3mmである。また、電磁振動機によって振動させる時間は特に限定されないが、例えば3~60秒である。
【0058】
また、保持手段40は、液面を検知する検知手段41と、検知手段41によって検知する液面の高さに基づいて、トレー91に供給する液体Lの量を制御する制御手段43と、を有する。このように構成された評価システム1によれば、確実に液面を所定の高さに保持することができる。
【0059】
また、評価システム1は、トレー91内の液体Lを廃棄する廃棄部70をさらに有する。このように構成された評価システム1によれば、トレー91内の液体Lは、廃棄部70から廃棄されつつ、シリンジ42から液体Lが供給されるため、常にフレッシュな液体Lを、吸水性樹脂に吸収させることができ、場所によって濃度や成分に偏りが生じたり、不純物が液体Lに混入したりすることを好適に抑制することができる。
【0060】
また、本実施形態に係る評価方法は、吸水性樹脂Sの吸水特性の評価方法であって、
(i)所定の量の吸水性樹脂SをセルC1に供給して、
(ii)セルC1に供給された吸水性樹脂Sをメッシュ状の底部92Aを備えるシリンダ92に供給して、
(iii)シリンダ92に供給された吸水性樹脂Sを均一に分散させ、
(iv)シリンダ92を載置するためのプレート95を備えるとともに吸水性樹脂Sに吸収させる液体Lを張るトレー91に、液体Lを供給するとともに液面を一定に保持して、
(v)トレー91に備えたプレート95にシリンダ92、ピストン93、および重り94を含む構成部分Aを載置して、
(vi)プレート95に載置された構成部分Aのシリンダ92の底部から液体Lが入り、液体Lを吸収して膨張した吸水性樹脂Sの吸水特性を測定する。この評価方法によれば、吸水性樹脂Sの吸水特性のうち加圧下吸収倍率を自動的に測定できる。
【0061】
以上実施形態を通じて、本発明を説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内で種々改変することができる。
【0062】
また、上述した実施形態では、保持手段40は、検知手段41と、制御手段43と、を有した。しかしながら、保持手段140は、サイフォンの原理を利用して液面を一定に保持する構成であってもよい。保持手段140における、サイフォンの原理を利用して液面を一定に保つ構成は、US6562879B1に開示されている構成を採用することができる。保持手段140は、図4に示すように、液体が収容される収容部141と、収容部141の内部に配置される空気吸入パイプ142と、トレー91および収容部141を連結する導入管143と、を有する。この保持手段によれば、制御手段43が不要となるため、簡易な構成で液面を一定に保持することができる。
【符号の説明】
【0063】
1 評価システム、
10 第1供給手段、
20 第2供給手段、
30 分散手段、
40、140 保持手段、
41 検知手段、
42 シリンジ、
43 制御手段、
50 載置手段、
60 測定手段、
70 廃棄部、
90 測定装置、
91 トレー、
92 シリンダ、
92A シリンダの底部、
93 ピストン
94 重り
95 プレート、
C1 セル、
S 吸水性樹脂。
図1
図2
図3
図4
図5