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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023172937
(43)【公開日】2023-12-06
(54)【発明の名称】産業用安全帽
(51)【国際特許分類】
   A42B 3/12 20060101AFI20231129BHJP
   A42B 3/14 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
A42B3/12
A42B3/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023083781
(22)【出願日】2023-05-22
(31)【優先権主張番号】P 2022084134
(32)【優先日】2022-05-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000149930
【氏名又は名称】株式会社谷沢製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】崔 成根
(72)【発明者】
【氏名】宍戸 隆秀
(72)【発明者】
【氏名】乗川 佑介
【テーマコード(参考)】
3B107
【Fターム(参考)】
3B107BA08
3B107DA04
3B107DA05
3B107DA17
(57)【要約】
【課題】本発明は、究極的な帽体と内装体の一体成型を実現する固有の構造を創出することを目的とする。
【解決手段】帽体1の頭頂部内面には、内面から環状に立ち上がった環状壁部50と、環状壁部50の人頭側端縁から垂直に延びる頭頂部受け部60とを備え、環状壁部50および頭頂部受け部60が金型による一体成型により帽体1と一体に形成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬質の帽体と該帽体の内面に構成され人頭に接する内装体とを備える産業用安全帽において、
前記帽体の内面から環状に立ち上がった環状壁部と、
前記環状壁部の人頭側端縁から垂直に延びる頭頂部受け部と
を備え、
前記頭頂部受け部が前記内装体の一部を成すと共に、前記帽体と前記環状壁部と前記頭頂部受け部とが金型による一体成型により一体に形成されることを特徴とする産業用安全帽。
【請求項2】
請求項1記載の産業用安全帽において、
前記頭頂部受け部は、前記環状壁部の周方向外方にのみ延出されることを特徴とする産業用安全帽。
【請求項3】
請求項1または2記載の産業用安全帽において、
前記環状壁部は、該環状壁部を部分的に切り欠いて貫通させた環状壁貫通部を有することを特徴とする産業用安全帽。
【請求項4】
請求項3記載の産業用安全帽において、
前記環状壁貫通部は、前記環状壁部の前方側を部分的に切り欠いて貫通させた前側環状壁貫通部と、該環状壁部の後方側を部分的に切り欠いて貫通させた後側環状壁貫通部と有することを特徴とする産業用安全帽。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬質の帽体と人頭に接する内装体とを備えた産業用安全帽に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の産業用安全帽としては、本願出願人による下記特許文献1がある。下記特許文献1の安全帽では、互に間隔を存して頭頂部側から下方に延びる4つ以上の帯状の脚部からなるハンモックの各脚部間に、脚部同士を繋いで周方向に延びる桁部を設け、桁部に、桁部と帽体との間の空隙を保持する空隙保持部を設ける。空隙保持部は、互いに間隔を存して配設された複数の板状部によって構成されて、脚部の撓みや伸びに応じて板状体が帽体の内面に当接することにより桁部と帽体との間の空隙を保持する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-199680号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように、従来の産業用安全帽は、内装体であるハンモック側から帽体への板状体など何らかの延設物を設けて、帽体と内装体の一体性を持たせるものであった。
【0005】
そして、本願出願人は、こららの一体性の研究を進めて、究極的な帽体と内装体の一体成型を実現する固有の構造を鋭意研究するに至った。
【0006】
上記の点に鑑み、本発明は、究極的な帽体と内装体の一体成型を実現する固有の構造を創出することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1発明の産業用安全帽は、硬質の帽体と該帽体の内面に構成され人頭に接する内装体とを備える産業用安全帽において、
前記帽体の内面から環状に立ち上がった環状壁部と、
前記環状壁部の人頭側端縁から垂直に延びる頭頂部受け部と
を備え、
前記頭頂部受け部が前記内装体の一部を成すと共に、前記帽体と前記環状壁部と前記頭頂部受け部とが金型による一体成型により一体に形成されることを特徴とする。
【0008】
第1発明の産業用安全帽によれば、本願発明者らは、鋭意研究により、究極的な帽体と内装体の一体成型を実現する固有の構造は、(内装体側から帽体への一体性ではなく)帽体側から内装体との一体性を持たせ、内装体を帽体側から支持する固有の構造が必要との知見に至った。
【0009】
本願発明は、かかる知見に基づくものであり、帽体の内面から環状に立ち上がった環状壁部により、ハンモックの代わりとなる頭頂部受け部を支持させる。
【0010】
これにより、帽体と環状壁部と頭頂部受け部とが一体成型により一体に形成されても、環状壁部により頭頂部受け部を十分に支持することができる。
【0011】
ここで、頭頂部受け部は、環状壁部の人頭側端縁から垂直、すなわち、人頭に沿うように延出される。そのため、ハンモックと同様に人頭(特に、頭頂部)を包み込むように配置され、帽体と環状壁部と頭頂部受け部とが一体成型により一体に形成されても、被り心地に遜色がない。
【0012】
このように、第1発明の産業用安全帽によれば、究極的な帽体と内装体の一体成型を実現する固有の構造を創出することができる。
【0013】
第2発明の産業用安全帽は、第1発明において、
前記頭頂部受け部は、前記環状壁部の周方向外方にのみ延出されることを特徴とする。
【0014】
第2発明の産業用安全帽によれば、頭頂部受け部を環状壁部からその周方向外方にのみ形成することで、頭頂部側である周方向内方に空間を持たせ、頭頂部の蒸れを抑制して快適な被り心地を維持することができる。
【0015】
このように、第2発明の産業用安全帽によれば、被り心地を維持しながら、究極的な帽体と内装体の一体成型を実現する固有の構造を実際に創出することができる。
【0016】
第3発明の産業用安全帽は、第1または第2発明において、
前記環状壁部は、該環状壁部を部分的に切り欠いて貫通させた環状壁貫通部を有することを特徴とする。
【0017】
第3発明の産業用安全帽によれば、通常のヘルメットにおける内装体(ハンモック)では、衝撃吸収の際に、内装体が変形して衝撃エネルギーを吸収するところ、環状壁部を部分的に切り欠いて貫通させた環状壁貫通部を設けることで、環状壁部および環状壁部を介した頭頂部受け部の帽体内面側への変形をより許容させることができ、衝撃が帽体に集中すること回避することができる。
【0018】
なお、環状壁貫通部は、環状壁部に設けた開口部、例えば、帽体の頭頂部の内面形状に沿わせた楕円形状や長方形状や複数の円形のほか、人頭側から帽体内面に延びる複数のスリット等であってもよい。
【0019】
このように、第3発明の産業用安全帽によれば、被り心地を維持しながら、究極的な帽体と内装体の一体成型を実現する固有の構造を衝撃吸収性能を高めた形態で実際に創出することができる。
【0020】
第4発明の産業用安全帽は、第3発明において、
前記環状壁貫通部は、前記環状壁部の前方側を部分的に切り欠いて貫通させた前側環状壁貫通部と、該環状壁部の後方側を部分的に切り欠いて貫通させた後側環状壁貫通部と有することを特徴とする。
【0021】
第4発明の産業用安全帽によれば、環状壁貫通部を環状壁部の前方側と後方側とに設けることで、環状壁部の帽体側への変形を許容して衝撃吸収性を高めつつ、環状壁部により区画される空間に積極的に通気を確保してヘルメットの装着時の蒸れを低減することもできる。
【0022】
このように、第4発明の産業用安全帽によれば、被り心地の快適性を高めると共に、究極的な帽体と内装体の一体成型を実現する固有の構造を衝撃吸収性能を高めた形態で実際に創出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施形態である産業用安全帽を示す斜視図。
図2図1の産業用安全帽のおいて顎紐を取り外した状態の斜視図。
図3図1の産業用安全帽の壁部の変更例を示す説明図。
図4図1の産業用安全帽の環状壁部の変更例を示す説明図。
図5図1の産業用安全帽の壁部および環状壁部の変更例を示す説明図。
図6図1の産業用安全帽の固定部の変更例を示す説明図。
図7図1の産業用安全帽の顎紐との接続部の変更例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実施形態として挙げる産業用安全帽は、図1および図2に示すように、硬質の帽体1と、帽体1の内面に構成される内装体の構成要素21~63とを備える。
【0025】
まず、帽体1の内面には、放射状に該内面から立ち上がった複数の壁部21~24と、壁部21~24の人頭側端縁から垂直に延びる頭部受け部31~33とを備え、壁部21~24および頭部受け部31~33が一体成型により帽体1と一体に形成されている。
【0026】
複数の壁部21~24は、(1)前側正面位置を除いて該前側正面位置を挟むように帽体1の内面の頭頂部から右前(紙面右上)に延びるラインに沿って帽体1から立ち上がった右前側壁部21(前側壁部に相当する)と、頭頂部から左前(紙面右下)に延びるラインに沿って帽体1から立ち上がった左前側壁部22(前側壁部に相当する)と、(2)後側正面位置を除いて該後側正面位置を挟むように頭頂部から右後(紙面左上)に延びるラインに沿って帽体1から立ち上がった右後側壁部23(後側壁部に相当する)と、頭頂部から左後(紙面左下)に延びるラインに沿って帽体1から立ち上がった左後側壁部23(後側壁部に相当する)とから構成される。
【0027】
ここで、右前側壁部21と右後側壁部23とが頭頂部付近で連結されて一体を成し、右前方から右後方へ延びるアーチ形状に形成される。同様に、左前側壁部22と左後側壁部24とが頭頂部付近で連結されて一体を成し、左前方から左後方へ延びるアーチ形状に形成される。
【0028】
なお、本実施形態では、右前側壁部21と右後側壁部23とが、後述する環状壁部50を介して連結されているが、環状壁部50を介しても介さなくてもよい。同様に、左前側壁部22と左後側壁部24とが、後述する環状壁部50を介して連結されているが、環状壁部50を介しても介さなくてもよい。
【0029】
頭部受け部31~33は、右前側壁部21の人頭側の端縁においてこれと垂直に両方向に延びる右前頭部受け部31と、左前側壁部22の人頭側の端縁においてこれと垂直に両方向に延びる左前側頭部受け部32と、右後側壁部23の人頭側の端縁においてこれと垂直に両方向に延びる右後側頭部受け部33と、左後側壁部24の人頭側の端縁においてこれと垂直に両方向に延びる左後側頭部受け部34とを備える。
【0030】
頭部受け部31~33は、壁部21~24の人頭側端縁から垂直、すなわち、人頭の形状に沿うように延出される。そのため、かかる頭部受け部31~33が、通常のハンモックと同様に人頭を包み込むように配置され、ハンモックの代わりとして機能する。
【0031】
なお、頭部受け部31~33は、人頭の全体を覆うほど延出されるものではなく、図中に示すように、部分的にハンモック相当領域となるように延出される。
【0032】
また、右前側壁部21と右後側壁部23とが連結されて一体を成し、左前側壁部22と左後側壁部24とが連結されて一体を成すように、右前側頭部受け部31と右後側頭部受け部33とが連結されて一体を成し、左前側頭部受け部32と左後側頭部受け部34とが連結されて一体に形成される。
【0033】
なお、本実施形態では、右前側壁部21と右後側壁部23とが、後述する環状壁部50を介して連結されていることから、右前側頭部受け部31と右後側頭部受け部33とが環状壁部50の頭頂部受け部60の一部を介して連結されているが、右前側頭部受け部31と右後側頭部受け部33とが直接連結されてもよい。
【0034】
同様に、左前側壁部22と左後側壁部24とが、後述する環状壁部50を介して連結されていることから、左前側頭部受け部32と左後側頭部受け部34とが環状壁部50の頭頂部受け部60の一部を介して連結されているが、左前側頭部受け部32と左後側頭部受け部34とが直接連結されてもよい。
【0035】
なお、この場合、環状壁部50および頭頂部受け部60自体を省略してもよい。
【0036】
また、本実施形態では、右前側壁部21と右後側壁部23とが連結されてアーチ型の形状を成し、左前側壁部22と左後側壁部24とが連結されてアーチ型の形状を成す場合について説明したが、これに限定されるものではなく、連結の組み合わせは任意でよい。
【0037】
例えば、右前側壁部21と左前側壁部22とを頭頂部付近で連結してアーチ型の形状を成し、右後側壁部23と左後側壁部24とを頭頂部付近で連結してアーチ型の形状を成すようにしてもよい。
【0038】
また、右前側壁部21と左後側壁部24とを頭頂部を越えて互いに連結させ、左前側壁部22と右後側壁部23とを頭頂部を越えて互いに連結させてもよい。
【0039】
なお、これらの場合にも、適宜、環状壁部50および頭頂部受け部60自体を省略してもよい。
【0040】
次に、右前側壁部21と左前側壁部22との間には、これらの前端同士を人頭に沿って繋ぐ前側懸架部35が形成されている。
【0041】
また、前側懸架部35は、その両端を前側壁部21,22を跨いで延出させた一対の前側延出懸架部と35A,35Bを備える。
【0042】
そして、帽体1と右前側壁部21と左前側壁部22と前側懸架部35(前側延出懸架部35A,35Bを含む)とが一体成型により一体に形成されている。
【0043】
同様に、右後側壁部23と左後側壁部24との間には、これらの後端同士を繋ぐように互いに相手側に延びた舌片状の右後側懸架部36(後側懸架部に相当する)および左後側懸架部37(後側懸架部に相当する)が設けられ、帽体1と後前側壁部23と左後側壁部24と後側懸架部36,37とが一体成型により一体に形成されている。
【0044】
前側懸架部35は、人頭の額の上方位置で鉢巻状に形成され、通常のヘッドバンドの代わりとなる。また、前側延出懸架部と35A,35Bは、前側懸架部35をほぼ同一円上で(前側壁部21,22を跨いで)そのまま延出させた位置に設けられ、前側懸架部35と同様に通常のヘッドバンドの代わりとなる。
【0045】
後側懸架部36,37は、人頭のうなじ位置(正確にはうなじのやや上方位置)で鉢巻状に形成され、通常のヘッドバンドの代わりとなるが、右後側懸架部36と左後側懸架部37とが互いに重なり合った任意の位置で固定できる固定部40を備えることで、通常のサイズ調整機構としての機能を備える。
【0046】
固定部40は、本実施形態では、右後側懸架部36に延出方向に沿って一定の間隔で設けられた複数の貫通孔46と、左後側懸架部37に延出方向に沿って一定の間隔で設けられた複数の貫通孔47と、これら2種類の貫通孔の任意の組み合わせでこれらを重ねて貫通させる固定部40としてのビス41とにより構成しているが、後述するように、固定方法は固定に限定されるものではない。例えば、通常のサイズ調整機構を後側懸架部36,37の間に設けてもよい。
【0047】
前側延出懸架部35A,35Bと後側懸架部36,37にとの間に顎紐70が渡されるようになっている。
【0048】
すなわち、顎紐70の2つの耳下紐70A,70Aの両端の接続片71,73と72,74とに設けられた突起が、前側延出懸架部35A,35Bにそれぞれ形成された貫通孔35C,35Cと後側懸架部36,37に形成された貫通孔46,47との間に係合されて渡される。なお、顎紐70は、耳下紐70Aに顎下紐70Bが吊られている。
【0049】
なお、本実施形態では、後側懸架部36,37には、後側延出懸架部を設けない構成について説明したが、前側延出懸架部35A,35Bと同様に、右後側懸架部36を右後側壁部33を跨いで延出させると共に、左後側懸架部37を左後側壁部34を跨いで延出させ、一対の後側延出懸架部を形成してもよい。
【0050】
この場合、顎紐70の耳下紐70Aとの接続位置は、前側延出懸架部35A,35Bと後側懸架部36,37に限らず、前側は、前側懸架部35と前側延出懸架部35A,35Bとから、後側は、後側懸架部36,37と後側延出懸架部とからそれぞれに任意の接続位置を選択することができる。
【0051】
さらに、後側延出懸架部を設けた場合には、前側延出懸架部35A,35Bと後側延出懸架部とを連結することで、前側懸架部35および後側懸架部36,37を合わせて、鉢巻状の環状帯を形成してよい。
【0052】
かかる環状帯は、ヘッドバンドと同じく人頭に対して鉢巻状に沿わせることができ、フィット感をより向上させることができる。また、このとき、前側懸架部35と後側懸架部36,36と一対の前側延出懸架部35A,35Bとかかる一対の後側延出懸架部とが連結されることから、環状帯全体で衝撃等を吸収することができ、安全帽自体の強度を向上させることができる。
【0053】
また、本実施形態では、顎紐70(耳下紐70A)の接続片71~74の突起を、前側延出懸架部35A,35Bおよび後側懸架部36,37の貫通孔35C,46,47に貫通させて接続したがこれに限定されるものではなく、後述するように、任意の接続方法が採用され得る。
【0054】
さらに、本実施形態において、前側懸架部35および前側延出懸架部35A,35Bは、右前側頭部受け部31および左前側頭部受け部32とも一体成型により一体に構成されているが、これに限定されるものではく、前側懸架部35および前側延出懸架部35A,35Bは、右前側頭部受け部31および左前側頭部受け部32と分離されていてもよい。
【0055】
同様に、後側懸架部36は、右後側頭部受け部33とも一体に構成され、後側懸架部37は、左後側頭部受け部34とも一体に構成されているが、これに限定されるものではく、後側懸架部36は、右後側頭部受け部33と分離され、後側懸架部37は、左後側頭部受け部37と分離されてもよい。
【0056】
また、本実施形態では、前側延出懸架部と35A,35Bは、前側懸架部35をほぼ同一円上で(前側壁部21,22を跨いで)そのまま延出させた位置に設けたが、これに限定されるものではなく、例えば、顎紐70の取り付け位置として適した位置に(同一円上
とならない位置で)延出させてもよい。
【0057】
次に、帽体1の頭頂部内面には、内面から環状に立ち上がった環状壁部50と、環状壁部50の人頭側端縁から垂直に延びる頭頂部受け部60とを備え、環状壁部50および頭頂部受け部60が一体成型により帽体1と一体に形成されている。
【0058】
環状壁部50は、帽体1の頭頂部中心を囲うように環状に立ち上がった壁部であって、本実施形態は、環状壁部50は、1つであるが、頭頂部中心を囲うように同心円状に複数の環状壁部を形成してもよい。なお、この場合、壁部21~24および頭部受け部31~34を省略または小さく(ラインを短く)設けてもよい。
【0059】
頭頂部受け部60は、環状壁部50の人頭側の端縁において環状壁部50と垂直に周方向外方に延びる。特に、前方側に大きく延出された前方側頭頂部受け部61と、後方側に大きく延出された後方側頭頂部受け部63とを備え、前方側頭頂部受け部61と後方側頭頂部受け部63との間は、これらほどの張り出しのない延出部で連結されて前方側頭部受け部61と後方側頭頂部受け部63とが一体となっている。
【0060】
頭頂部受け部60は、環状壁部50の人頭側端縁から垂直、すなわち、人頭の頭頂部形状に沿うように形成される。そのため、頭頂部受け部60は、通常のハンモックと同様に人頭を包み込むように配置され、ハンモックの代わりとして機能する。
【0061】
なお、本実施形態では、環状壁部50と頭頂部受け部60とを帽体1と一体成型により一体に構成する金型の関係上、頭頂部受け部60は環状壁部50の周方向外方にのみ構成されているが、これに限定されるものではなく、周方向内方にも(環状壁部50から垂直に左右方向に)延出されるようにしてもよい。
【0062】
また、本実施形態では、環状壁部50と壁部21~24とが連結されると共に、頭頂部受け部60と頭部受け部31~33とが連結される場合について説明したが、これに限定されるものではなく、環状壁部50と壁部21~24とは分離されて設けられてもよく、頭頂部受け部60と頭部受け部31~33とが分離されて設けられてもよい。
【0063】
以上が本実施形態の産業用安全帽の構成であり、かかる産業業安全帽は、本願発明者らによる鋭意研究により、究極的な帽体と内装体の一体成型を実現する固有の構造は、(内装体側から帽体への一体性ではなく)帽体側から内装体との一体性を持たせ、内装体を帽体側から支持するとの知見に基づくものである。
【0064】
かかる知見に基づき、本実施形態の産業用安全帽では、帽体1の内面おいて放射状に内面から立ち上がる壁部21~24により、ハンモックの代わりとなる頭部受け部31~34、さらにヘッドバンドの代わりのとなる前側懸架部35(前側延出懸架部35A,35Bを含む)および後側懸架部36,37を支持させ、帽体1と壁部21~24と頭部受け部31~34、前側懸架部35(前側延出懸架部35A,35Bを含む)および後側懸架部36,37が一体成型により一体に形成されても、壁部21~24により頭部受け部31~34、前側懸架部35(前側延出懸架部35A,35Bを含む)および後側懸架部36,37を十分に支持することができる。
【0065】
また、帽体1の内面から環状に立ち上がった環状壁部50により、ハンモックの代わりとなる頭頂部受け部60を支持させ、帽体1と環状壁部50と頭頂部受け部60とが一体成型により一体に形成されても、環状壁部50により頭頂部受け部60を十分に支持することができる。
【0066】
さらに、壁部21~24および環状壁部50を一体成型により一体に“連結させて”形成することで、全体の壁部21~24,50の支持力を高めることができると共に、頭部受け部31~34および頭頂部受け部60、さらに前側懸架部35(前側延出懸架部35A,35Bを含む)および後側懸架部36,37を、一体成型により“部分体に連結させて”形成することで、これら人頭と接する部分31~34,60,35~37の強度も高めることができる。
【0067】
そして、頭部受け部31~34および頭頂部受け部60とは、人頭に沿うように、壁部21~24および環状壁部50から延出されるため、通常のハンモックと同様に人頭を包み込むように配置され、帽体1と一体成型により一体に形成されても、被り心地に遜色がない。
【0068】
また、ヘッドバンドの取り付け位置では、壁部21~24により違和感を感じることがあるところ、本実施形態では壁部21~24は、それぞれ人頭の前側位置および後側位置を除いて設けられている。そのため、ヘッドバンドの代わりのとなる前側懸架部35(前側延出懸架部35A,35Bを含む)および後側懸架部36,37によれば、前頭部および後頭部に違和感を感じることなく、ヘッドバンドと同様に人頭に鉢巻状に沿うようにフィットして配置され、帽体1と一体成型により一体に形成されても、被り心地に遜色がない。
【0069】
このように、本実施形態の産業用安全帽によれば、究極的な帽体と内装体の一体成型を実現する固有の構造を創出することができる。
【0070】
なお、本実施形態では、帽体と内装体とを金型により同一材料を用いて一体成型する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、一体成型であれば、いわゆる二色成形などにより部分的に材質を変えて射出成形してもよい。
【0071】
例えば、二色成形により、人頭に接する頭部受け部31~34や頭頂部受け部60を帽体1や壁部21~24、環状壁部50より柔らく弾力性のある材質とすることが好ましい。
【0072】
次に、説明を後回しにした本実施形態の変更例について説明する。
【0073】
まず、図3に模式的に示すように、複数の壁部21~24には、これを部分的に切り欠いて貫通させた貫通部25を有する。
【0074】
貫通部25は、帽体1の内面形状に沿わせた1または複数の楕円形状や長方形状の開口で構成されるが、これらに加えてまたは代えて、複数の円形を内面形状の開口を帽体1の内面に沿って整列させてもよい。この場合、複数の貫通部25は、人頭と帽体1の頭頂部との距離、すなわち、壁部21の高さが高くなるほど形や大きさが大きくなるように変更される。
【0075】
このように、壁部21~24に貫通部25を設けることで、通常のヘルメットにおける内装体(ハンモック)では、衝撃吸収の際に、内装体が変形して衝撃エネルギーを吸収するところ、壁部21~24を部分的に切り欠いて貫通させた貫通部25を設けることで、壁部21~24および壁部21~24を介した頭部受け部31~34の帽体内面側への変形をより許容させることができ、衝撃が帽体に集中すること回避することができる。
【0076】
加えて、かかる貫通部25を設けることで、壁部21~24により区画される空間同士が貫通部25により連通されることから、積極的に通気を確保してヘルメットの装着時の蒸れを低減することもできる。
【0077】
次に、図4に模式的に示すように、環状壁部50には、これを部分的に切り欠いて貫通させた環状壁貫通部55を有する。
【0078】
環状壁貫通部55は、例えば、環状壁部50の前方側を部分的に切り欠いて貫通させた前側環状壁貫通部55Aと、後方側を部分的に切り欠いて貫通させた後側環状壁貫通部55Bとから構成される。
【0079】
このように、環状壁貫通部55を設けることで、上述の貫通部25と同様に、通常のヘルメットにおける内装体(ハンモック)では、衝撃吸収の際に、内装体が変形して衝撃エネルギーを吸収するところ、環状壁部50を部分的に切り欠いて貫通させた環状壁貫通部55を設けることで、環状壁部50および環状壁部50を介した頭頂部受け部60の帽体内面側への変形をより許容させることができ、衝撃が帽体に集中すること回避することができる。
【0080】
さらに、環状壁貫通部55を環状壁部の前方側と後方側とに設けて前側環状壁貫通部55Aと後側環状壁貫通部55Bとすることで、(環状壁部50の帽体側への変形を許容して衝撃吸収性を高めつつ、)環状壁部50により区画される空間に積極的に通気を確保してヘルメットの装着時の蒸れを低減することもできる。
【0081】
なお、貫通部25は、壁部に設けた開口部、例えば、帽体の内面形状に沿わせた楕円形状や長方形状や複数の円形のほか、図5に示すように、人頭側から帽体内面に延びる複数のスリット26や微細孔(微細孔を全体的にまたは部分的に設ける場合を含む)等であってもよい。この場合、スリット26の形成に際して、頭部受け部31~34も分断されて断片状に形成される(図5では、壁部21~24の上端縁から一方に垂直に延びた頭部受け部31~34が分断されて断片状となっている)。
【0082】
同様に、環状壁貫通部55は、環状壁部50に設けた開口部、例えば、帽体の頭頂部の内面形状に沿わせた楕円形状や長方形状や複数の円形のほか、人頭側から帽体内面に延びる複数のスリット56や微細孔(微細孔を全体的にまたは部分的に設ける場合を含む)等であってもよい。この場合、スリット56の形成に際して、頭頂部受け部61,63も分断されて断片状に形成される(図5では、環状壁部50の前側の上端縁から前側に一方に垂直に延びた前側頭頂部受け部61と、後側の上端縁から一方に垂直に延びた後側頭頂部受け部63とが、それぞれ分断されて断片状となっている)。
【0083】
次に、図6を参照して、固定部40の変更例について説明する。
【0084】
固定部40は、右後側懸架部36(一対の舌片の一方)に形成された複数の固定用スリット38と、左後側懸架部37(一対の舌片の他方)に形成された一または複数の係合突起部39とを備える。
【0085】
係合突起部39は、金型による一体成型により左後側懸架部37と一体に形成された断面T字型の形状であって、固定用スリット38に嵌合するくびれ部39Aと、嵌合したくびれ部39Aが係合固定される突起部39Bとを有する。
【0086】
ここで、固定用スリット38の深さ等については、固定用スリット38にくびれ部39Aが嵌合して押し込まれて突き当たった状態で、右後側懸架部36と左後側懸架部37が完全に重なった状態となり、側面同士が面一となるように設計されている。
【0087】
このように構成された固定部40によれば、帽体1と一対の後側壁部23,24と後側懸架部36,37とを金型による一体成型により一体に形成した場合にも固定部40の穴あけ加工等を不要とながら、係合突起部39を複数の固定用スリット38の任意の位置に組み合わせてサイズ調整が可能となる。
【0088】
なお、前側懸架部についても、固定用スリット38と係合突起部39とによる同様の構成による固定部やサイズ調整機構を設けてもよい。
【0089】
また、図7を参照して、顎紐70の帽体1との接続方法についても、帽体1の内面に、(係合突起部39と同様の)顎紐係合突起部80を設けるようにしてもよい。
【0090】
顎紐係合突起部80は、金型による一体成型により帽子1と一体に形成された断面T字型の形状であって、突起部85とくびれ部86とをする。
【0091】
この場合、顎紐70の接続片71´~74´は、突起部85に対応した形状の挿通部75と、挿通部75からくびれて連通する係合部76を有する。
【0092】
以上のように構成された顎紐70は、突起部85の端面の形に接続片71´~74´の挿通部75を合わせて帽体1の内面側へを押し込むことで、挿通部75にくびれ部86が一次的に係合した状態となる。この状態から、くびれ部86が係合部76側となるよう接続片71´~74´を移動させることで、くびれ部86が係合部76に係合されて脱落しない状態を実現することができる。
【符号の説明】
【0093】
1…帽体、21…右前側壁部(壁部)、22…左前側壁部(壁部)、23…右後側壁部(壁部)、24…左後側壁部(壁部)、25…貫通部、26…スリット、31…右前側頭部受け部(頭部受け部)、32…左前側頭部受け部(頭部受け部)、33…右後側頭部受け部(頭部受け部)、34…左後側頭部受け部(頭部受け部)、35…前側懸架部、35A,35B…前側延出懸架部、35C…貫通孔、36,37…後側懸架部、38…固定用スリット、39…係合突起部、39A…くびれ部、39B…突起部、40…固定部、41…ビス(固定部)、46,47…貫通孔、50…環状壁部、55…環状壁貫通部、55A…前側環状壁貫通部、55B…後側環状壁貫通部、56…スリット、60…頭頂部受け部、61…前側頭頂部受け部(頭頂部受け部)、63…後側頭頂部受け部(頭頂部受け部)、70…顎紐、70A…耳下紐、70B…顎下紐、71~74,71´~74´…接続片、75…挿通部、76…係合部、85…突起部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7