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特開2023-172939ライチ酵素、その製造方法、及び用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023172939
(43)【公開日】2023-12-06
(54)【発明の名称】ライチ酵素、その製造方法、及び用途
(51)【国際特許分類】
   C12N 9/00 20060101AFI20231129BHJP
   A23L 33/105 20160101ALI20231129BHJP
   C12N 1/16 20060101ALN20231129BHJP
   C12N 1/20 20060101ALN20231129BHJP
【FI】
C12N9/00
A23L33/105
C12N1/16 Z
C12N1/20 Z
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023083939
(22)【出願日】2023-05-22
(31)【優先権主張番号】202210565739.1
(32)【優先日】2022-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】522072334
【氏名又は名称】仙楽健康科技股▲フン▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110003007
【氏名又は名称】弁理士法人謝国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】甘▲タン▼
(72)【発明者】
【氏名】紀素英
(72)【発明者】
【氏名】韓鐸
(72)【発明者】
【氏名】湯新
(72)【発明者】
【氏名】孫▲シュァン▼
【テーマコード(参考)】
4B018
4B065
【Fターム(参考)】
4B018LB01
4B018LB08
4B018LE05
4B018MD52
4B018ME11
4B018MF13
4B065AA02X
4B065AA30X
4B065AA72X
4B065AA76X
4B065AA77X
4B065AA78X
4B065AA79X
4B065AC20
4B065BC03
4B065BD18
4B065BD35
4B065BD36
4B065BD37
4B065BD38
4B065CA27
4B065CA41
4B065CA42
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ライチ酵素、その製造方法及び用途を提供する。
【解決手段】ライチ酵素の、組成物の製造における用途であって、前記組成物は腸管バリア機能を向上させ、腸管免疫を双方向に調節し、腸管炎症を改善し、腸管定常状態を維持し、又は腸管健康を改善するために用いられる、用途を提供する。ライチ酵素の製造方法は、(1)一次発酵;(2)一次発酵後の生成物に押出及び濾過を行い、一次発酵濾液を得ること;(3)二次発酵;及び(4)二次発酵液を濾過し、滅菌してライチ酵素を得ること、を含む。本発明のライチ酵素は腸管バリア機能を向上させ、腸管免疫を双方向に調節し、腸管炎症を改善し、腸管定常状態を維持し、さらに腸管健康を改善するために用いられる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ライチ酵素の、組成物の製造における用途であって、
前記組成物は腸管バリア機能を向上させ、腸管免疫を双方向に調節し、腸管炎症を改善し、腸管定常状態を維持し、又は腸管健康を改善するために用いられる、用途。
【請求項2】
ライチ酵素は以下の方法で製造され、当該方法は、
(1)ライチ果実液及びライチ果実滓に第一炭素源を添加し、酵母菌と乳酸菌の混合菌剤である第一菌剤を接種し、20-45℃で密封静置して24-96時間発酵することを含む、一次発酵;
(2)一次発酵後の生成物に押出及び濾過を行い、一次発酵濾液を得ること;
(3)一次発酵濾液に第二炭素源を添加し、酢酸菌である第二菌剤を接種し、15-40℃で3-15日間で静置するか又は通気培養して二次発酵液を得ることを含む、二次発酵;及び
(4)二次発酵液を濾過し、滅菌してライチ酵素を得ること、を含む、請求項1に記載の用途。
【請求項3】
第一炭素源はフルクトース、スクロース、黒砂糖、マルトース、アラビノースのうちの一種又は複数種であり、第一炭素源の添加量は0-5wt%である、請求項2に記載の用途。
【請求項4】
前記酵母菌はHansenula anomala、清酒酵母、Saccharomyces rouxii Boutroux、Saccharomyces cerevisiae、Saccharomyces willianus、Pichia pastoris又はRhodotorula mucilaginosaのうちの一種又は複数種であり;
前記乳酸菌はLactobacillus plantarum、Lactobacillus reuteri、Lactobacillus sakei、Lactobacillus casei、Lactobacillus gasseri又はLactobacillus paracaseiのうちの一種又は複数種であり;
酵母菌:乳酸菌の重量比は50:1-500:1であり;
第一菌剤の添加量はライチの総質量の0.1‰-10‰である、請求項2に記載の用途。
【請求項5】
第二炭素源はラクトース、赤砂糖、グルコース、糖蜜又は蜂蜜のうちの一種又は複数種であり、
第二炭素源の添加量は一次発酵濾液の総質量の1%-20%である、請求項2に記載の用途。
【請求項6】
第二菌剤はAcetobacter pasteurianus、Acetobacteraceti aceti、Acetobacter ghanensis、Acetobacter rancens又はAcetobacter acetiのうちの一種又は複数種であり;
第二菌剤の添加量は一次発酵濾液の総質量の0.1‰-10‰であり;
静置培養は8層のガーゼで密封して静置培養することであり;
通気培養の通気量は0.1-20mL/min/mL発酵液である、請求項2に記載の用途。
【請求項7】
ライチ酵素の製造方法であって、
(1)ライチ果実液及びライチ果実滓に第一炭素源を添加し、酵母菌と乳酸菌の混合菌剤である第一菌剤を接種し、20-45℃で密封静置して24-96時間発酵することを含む、一次発酵;
(2)一次発酵後の生成物に押出及び濾過を行い、一次発酵濾液を得ること;
(3)一次発酵濾液に第二炭素源を添加し、酢酸菌である第二菌剤を接種し、15-40℃で3-15日間で静置するか又は通気培養して二次発酵液を得ることを含む、二次発酵;及び
(4)二次発酵液を濾過し、滅菌してライチ酵素を得ること、を含む、方法。
【請求項8】
ライチ果実を洗浄し圧搾する前処理ステップを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
第一炭素源はフルクトース、スクロース、黒砂糖、マルトース、アラビノースのうちの一種又は複数種であり、
第一炭素源の添加量は0-5wt%である、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記酵母菌はHansenula anomala、清酒酵母、Saccharomyces rouxii Boutroux、Saccharomyces cerevisiae、Saccharomyces willianus、Pichia pastoris又はRhodotorula mucilaginosaのうちの一種又は複数種であり;
前記乳酸菌はLactobacillus plantarum、Lactobacillus reuteri、Lactobacillus sakei、Lactobacillus casei、Lactobacillus gasseri又はLactobacillus paracaseiのうちの一種又は複数種であり;
酵母菌:乳酸菌の重量比は50:1-500:1であり;
第一菌剤の添加量はライチの総質量の0.1‰-10‰である、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
第二炭素源はラクトース、赤砂糖、グルコース、糖蜜又は蜂蜜のうちの一種又は複数種であり、
第二炭素源の添加量は一次発酵濾液の総質量の1%-20%である、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
第二菌剤はAcetobacter pasteurianus、Acetobacteraceti aceti、Acetobacter ghanensis、Acetobacter rancens又はAcetobacter acetiのうちの一種又は複数種であり;
第二菌剤の添加量は一次発酵濾液の総質量の0.1‰-10‰であり;
静置培養は8層のガーゼで密封して静置培養することであり;
通気培養の通気量は0.1-20mL/min/mL発酵液である、請求項7に記載の方法。
【請求項13】
請求項7-12のいずれか1項に記載の方法で製造された、ライチ酵素。
【請求項14】
請求項13に記載のライチ酵素を含み、
腸管バリア機能を向上させ、腸管免疫を双方向に調節し、腸管炎症を改善し、腸管定常状態を維持し、又は腸管健康を改善するために用いられる、組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は微生物発酵の分野に属し、特にライチ酵素が腸管バリア機能を向上させ、腸管免疫を双方向に調節し、腸管炎症を改善し、腸管定常状態を維持し、又は腸管健康を改善する用途に関する。
【背景技術】
【0002】
ライチは、中国の南方の一般的な果実であり、味が甘く、性質が温和であり、脾臓の機能を高め、肝臓の機能を高め、気の働きを良くし、血の機能を高め、脾胃を温めて痛みを止め、心気を補い精神を安定さる等の効果を有する。酵素は、動物、植物、菌類等を原料とし、補助材料を添加するか又は添加せず、微生物発酵により得られた特定の生物活性成分を含有する製品であり、その生物活性成分は多糖、オリゴ糖、ポリフェノール、タンパク質、及びポリペプチド、アミノ酸、ビタミン等を含む。酵素は、新陳代謝を促進し、酒を解し肝臓を保護し、美白する等の効果を有する。
【0003】
従来のライチ加工プロセスは、プロセスが複雑であり、製造周期が長いか、又は特定の設備を導入する必要があり、大規模な産業化製造に不利である。従来の酵素製品において、腸管バリア、腸管免疫機能を改善できる製品が少なく、また改善メカニズムを明確に説明できない現象も存在する。本発明は、独特な発酵プロセスとプロバイオティクスの組み合わせにより、ライチ酵素を取得し、かつ腸管バリア機能を意図的に向上させ、腸管免疫を双方向に調節する。同時に、本発明も改善されたメカニズムを明確に説明する。本発明の技術的意義は、酵素製品の機能を拡張するだけでなく、製品の適用性についてメカニズムの説明を提供することである。
【発明の概要】
【0004】
従来の酵素製品において、腸管バリア、腸管免疫機能を改善することができる製品が少ない。これに鑑み、本発明者は、腸管バリア機能を向上させ、腸管免疫を双方向に調節し、腸管炎症を改善し、腸管定常状態を維持し、さらに腸管健康を改善することができるライチ酵素を開発した。
【0005】
また、本発明はライチ酵素の、組成物の製造における用途を提供し、前記組成物は腸管バリア機能を向上させ、腸管免疫を双方向に調節し、腸管炎症を改善し、腸管定常状態を維持し、又は腸管健康を改善するために用いられる。
【0006】
また、本発明は、腸管バリア機能を向上させ、腸管免疫を双方向に調節し、腸管炎症を改善し、腸管定常状態を維持し、又は腸管健康を改善するためのライチ酵素を提供する。
【0007】
ある実施形態において、ライチ酵素は本発明のライチ酵素である。
【0008】
また、本発明はライチ酵素の製造方法を提供し、当該製造方法は、
(1)ライチ果実液及びライチ果実滓に第一炭素源を添加し、酵母菌と乳酸菌の混合菌剤である第一菌剤を接種し、20-45℃で密封静置して24-96時間発酵することを含む、一次発酵;
(2)一次発酵後の生成物に押出及び濾過を行い、一次発酵濾液を得ること;
(3)一次発酵濾液に第二炭素源を添加し、酢酸菌である第二菌剤を接種し、15-40℃で3-15日間で静置するか又は通気培養して二次発酵液を得ることを含む、二次発酵;及び
(4)二次発酵液を濾過し、滅菌してライチ酵素を得ること、を含む。
【0009】
ある実施形態において、方法は、ライチ果実を洗浄し圧搾する前処理ステップを含む。
【0010】
ある実施形態において、第一炭素源は、フルクトース、スクロース、黒砂糖、マルトース、アラビノースのうちの一種又は複数種である。
【0011】
ある実施形態において、第一炭素源の添加量は0-5wt%である。
【0012】
ある実施形態において、酵母菌は、Hansenula anomala、清酒酵母、Saccharomyces rouxii Boutroux、Saccharomyces cerevisiae、Saccharomyces willianus、Pichia pastoris又はRhodotorula mucilaginosaのうちの一種又は複数種である。好ましくは、酵母菌はHansenula anomala、清酒酵母、Saccharomyces cerevisiaeのうちの一種又は複数種である。
【0013】
ある実施形態において、乳酸菌は、Lactobacillus plantarum、Lactobacillus reuteri、Lactobacillus sakei、Lactobacillus casei、Lactobacillus gasseri又はLactobacillus paracaseiのうちの一種又は複数種である。
【0014】
ある実施形態において、酵母菌:乳酸菌の重量比は50:1-500:1である。好ましくは、酵母菌:乳酸菌の重量比は300:1-500:1である。
【0015】
ある実施形態において、第一菌剤の添加量はライチの総質量の0.1‰-10‰である。
【0016】
ある実施形態において、第二炭素源は、ラクトース、赤砂糖、グルコース、糖蜜又は蜂蜜のうちの一種又は複数種である。
【0017】
ある実施形態において、第二炭素源の添加量は一次発酵濾液の総質量の1%-20%である。
【0018】
ある実施形態において、第二菌剤はAcetobacter pasteurianus、Acetobacteraceti aceti、Acetobacter ghanensis、Acetobacter rancens又はAcetobacter acetiのうちの一種又は複数種である。
【0019】
ある実施形態において、第二菌剤の添加量は一次発酵濾液の総質量の0.1‰-10‰である。
【0020】
ある実施形態において、静置培養は8層のガーゼで密封して静置培養することである。
【0021】
ある実施形態において、通気培養の通気量は0.1-20mL/min/mL発酵液である。
【0022】
別の態様では、本発明のライチ酵素を含む組成物を提供する。組成物は医薬品であってもよい。又は、組成物は、食品又は機能性食品であってもよく、ドリンク、飲料、ゼリー、又はゲルキャンディ形態である。ある実施形態において、ライチ酵素は液体である。
【0023】
本発明の利点は、以下を含む:
1.腸管バリア機能を向上させ、腸管免疫を双方向に調節し、腸管炎症を改善し、腸管定常状態を維持し、さらに腸管健康を改善するライチ酵素を提供し;及び
2.新たなライチ酵素の製造プロセスを提供し、異なる菌剤の配合を採用し、段階的に二次発酵を行う。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1は、異なる濃度のライチ酵素のリポ多糖(LPS)処理ヒト結腸癌細胞Caco-2の経上皮電気抵抗値(Trans epithelial electric resistance、TEER)への影響を示す。ライチ酵素の濃度が0.1μg/mLより大きい場合、腸管細胞の経上皮電気抵抗値(p<0.05)を顕著に向上させることができ、ライチ酵素が腸管バリアを修復することができ、腸管バリア機能を向上させる作用を有することを示す。注意:###はブランク対照群に比べて極めて有意差(p<0.0001)があることを示し;nsはモデル群(LPS群)に比べて有意差がないことを示し;*はモデル群(LPS群)に比べて有意差(p<0.05)があることを示す。
【0025】
図2は、異なる濃度のライチ酵素のマクロファージRAW264.7のNO放出量に対する影響を示す。異なる濃度のライチ酵素は、マクロファージRAW264.7がNOを分泌することを促進することができ、酵素サンプルがマクロファージを活性化させ、免疫調節に関与することができることを示す。注意:図中の異なるアルファベットは有意差(p<0.05)があることを示し、同じアルファベットを含むことは有意差がないことを示す。単一因子分散分析(ONE-WAY ANOVA)におけるDuncanマルチ範囲検定で有意差分析を行い、p<0.05を有意差閾値として定義する。
【0026】
図3は、異なる濃度のライチ酵素のリポ多糖(LPS)によって誘導されたマクロファージRAW264.7のNO放出量への影響を示す。ライチ酵素は、一定の濃度範囲内に炎症細胞がNOを放出することを抑制することができ、抗炎症活性を有し、その抗炎症活性を有する濃度範囲は0.1-8μg/mLである。マクロファージの実験結果は、ライチ酵素の免疫への調節が双方向性を有し、腸管の定常状態を維持することに役立つことを示す。注意:####はブランク対照群と比べて極めて有意差(p<0.0001)があることを示し;nsはモデル群(LPS群)と比べて有意差がないことを示し、*はモデル群(LPS群)と比べて有意差(p<0.05)があることを示し、**はモデル群(LPS群)と比べて極めて有意差(p<0.01)があることを示し、***はモデル群(LPS群)と比べて極めて有意差(p<0.001)があることを示し、****はモデル群(LPS群)と比べて極めて有意差(p<0.0001)があることを表す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下の詳細な説明及び添付のクレームを読むことにより、本発明のこれら及び他の態様、特徴、及び利点は、当業者にとって明らかである。本発明の一態様の任意の特徴は、本発明の任意の他の態様に使用することができる。用語「含む」は開放式であることを意図し、かつ適切な場合に「からなる」で置き換えることができる。本明細書において、特に指摘しない限り、パーセントは、重量/重量パーセントを指す。実施例において、又はさらに明確的に説明する以外に、明細書及びクレームにおいて、物質の品質、物理的性質等を示す全ての数字は、「約」で修飾されていると理解すべきであり、前記数値±10%又は5%を表すことができる。
【0028】
本明細書で使用されるように、「酵素」は、動物、植物、菌類等を原料とし、補助材料を添加するか又は添加せず、微生物発酵により得られた特定の生物活性成分を含有する製品を指す。本発明ではライチ酵素を提供し、ライチを原料として炭素源を添加した場合に微生物発酵により得られた製品を指す。
【0029】
本明細書に使用されるように、「生物活性成分」は、発酵により製造されて生命現象に影響を与える微量又は少量の物質を指す。生物活性成分は、多糖、オリゴ糖、ポリフェノール、タンパク質及びポリペプチド、アミノ酸、ビタミン等を含むことができる。
【0030】
本発明はライチ酵素の製造方法を提供し、当該製造方法は二段階発酵過程を含む。具体的には、方法は一次発酵を含み、それはライチ果実液とライチ果実滓に第一炭素源を添加し、第一菌剤を接種し、第一温度で第一時間帯で密封静置発酵することを含み、第一菌剤は酵母菌と乳酸菌の混合菌剤である。酵母菌は、Hansenula anomala、清酒酵母、Saccharomyces rouxii Boutroux、Saccharomyces cerevisiae、Saccharomyces willianus、Pichia pastoris又はRhodotorula mucilaginosaのうちの一種又は複数種であってもよい。乳酸菌は、Lactobacillus plantarum、Lactobacillus reuteri、Lactobacillus sakei、Lactobacillus casei、Lactobacillus gasseri又はLactobacillus paracaseiのうちの一種又は複数種であってもよい。
【0031】
第一温度の範囲は、20-45℃であってもよく、例えば21℃、22℃、23℃、24℃、25℃、26℃、27℃、28℃、29℃、30℃、31℃、32℃、33℃、34℃、35℃、36℃、37℃、38℃、39℃、40℃、41℃、42℃、43℃、44℃又はその間の任意の範囲である。第一時間帯の範囲は、24-96時間であってもよく、例えば25、30、35、40、45、50、55、60、75、70、75、80又は90時間である。
【0032】
第一炭素源は、フルクトース、スクロース、黒砂糖、マルトース、アラビノースのうちの一種又は複数種であってもよい。第一炭素源の添加量は、0-5wt%であってもよく、例えば1wt%、1.5wt%、2wt%、2.5wt%、3wt%、3.5wt%、又は4wt%である。第一炭素源は、二種以上の糖類、例えば重量パーセントが同じである二種以上の糖類を含むことができる。ある実施形態において、第一炭素源は、フルクトース:黒砂糖=1:1である。ある実施形態において、第一炭素源は、スクロースである。ある実施形態において、第一炭素源は、マルトース:アラビノース=1:1である。ある実施形態において、第一炭素源はマルトースである。ある実施形態において、第一炭素源は、フルクトース:スクロース:黒砂糖が1:1:1である。ある実施形態において、第一炭素源は、スクロース:アラビノース=1:1である。
【0033】
酵母菌:乳酸菌の重量比は、50:1-500:1であってもよく、例えば50:1、60:1、70:1、80:1、90:1、100:1、200:1、300:1又は400:1である。
【0034】
第一菌剤の添加量は、ライチの総質量の0.1‰-10‰であってもよく、例えば0.5‰、0.9‰、1‰、2‰、3‰、4‰、5‰、6‰、7‰、8‰又は9‰である。
【0035】
ある実施形態において、第一菌剤は、酵母菌:乳酸菌が400:1であり;酵母菌は清酒酵母であり;乳酸菌はLactobacillus paracasei:Lactobacillus reuteri:Lactobacillus gasseriが1:1:1である。ある実施形態において、第一菌剤の添加量はライチの総質量の0.9‰である。
【0036】
ある実施形態において、第一菌剤は酵母菌:乳酸菌が100:1であり;酵母菌はSaccharomyces cerevisiae:Pichia pastoris:Saccharomyces rouxii Boutrouxが1:1:1であり;乳酸菌はLactobacillus plantarum:Lactobacillus casei:Lactobacillus reuteriが1:1:1である。ある実施形態において、第一菌剤の添加量はライチの総質量の5‰である。
【0037】
ある実施形態において、第一菌剤は酵母菌:乳酸菌が50:1であり;酵母菌はSaccharomyces willianus:Rhodotorula mucilaginosa:Saccharomyces rouxii Boutrouxが1:1:1であり;乳酸菌はLactobacillus sakei:Lactobacillus caseiが1:1である。ある実施形態において、第一菌剤の添加量はライチの総質量の0.1‰である。
【0038】
ある実施形態において、第一菌剤は酵母菌:乳酸菌が300:1であり;酵母菌はHansenula anomalaであり;乳酸菌はLactobacillus gasseriである。ある実施形態において、第一菌剤の添加量はライチの総質量の10‰である。
【0039】
ある実施形態において、第一菌剤は酵母菌:乳酸菌が500:1であり;酵母菌はSaccharomyces cerevisiae:清酒酵母が1:1であり;乳酸菌はLactobacillus plantarum:Lactobacillus gasseri:Lactobacillus sakeiが1:1:1である。ある実施形態において、第一菌剤の添加量はライチの総質量の8‰である。
【0040】
ある実施形態において、第一菌剤は酵母菌:乳酸菌が200:1であり;酵母菌はRhodotorula mucilaginosaであり;乳酸菌はLactobacillus plantarum:Lactobacillus sakeiが1:1である。ある実施形態において、第一菌剤の添加量はライチの総質量の2‰である。
【0041】
ある実施形態において、第一菌剤は酵母菌:乳酸菌が150:1であり;酵母菌はSaccharomyces cerevisiaeであり;乳酸菌はLactobacillus caseiである。ある実施形態において、第一菌剤の添加量はライチの総質量の4‰である。
【0042】
一次発酵後の生成物に押出及び濾過を行い、一次発酵濾液を得ることができる。該過程は本分野の既知の様々な方式で行うことができ、例えばフィルタープレスで行うことができる。一次発酵過程の前にライチ果実の洗浄及び圧搾の前処理ステップを行うことができる。
【0043】
ライチ酵素の製造方法は、さらに二次発酵過程を含み、それは一次発酵濾液に第二炭素源を添加し、第二菌剤を接種し、第二温度で第二時間帯で静置するか又は通気培養してライチ酵素を得ることを含み、第二菌剤は酢酸菌である。第二菌剤は、Acetobacter pasteurianus、Acetobacteraceti aceti、Acetobacter ghanensis、Acetobacter rancens又はAcetobacter acetiのうちの一種又は複数種であってもよい。第二炭素源は、ラクトース、赤砂糖、グルコース、糖蜜又は蜂蜜のうちの一種又は複数種であってもよい。第二炭素源は、二種以上の糖類、例えば重量パーセントが同じである二種以上の糖類を含むことができる。第二炭素源の添加量は、一次発酵濾液の総質量の1%-20%であり、例えば2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%又は19%である。ある実施形態において、第二炭素源はラクトースである。ある実施形態において、第二炭素源は赤砂糖である。ある実施形態において、第二炭素源は糖蜜:ラクトースが1:1である。ある実施形態において、第二炭素源はグルコースである。ある実施形態において、第二炭素源は蜂蜜である。ある実施形態において、第二炭素源はグルコース:蜂蜜が1:1である。
【0044】
第二温度の範囲は、15-40℃であってもよく、例えば16℃、17℃、18℃、19℃、20℃、21℃、22℃、23℃、24℃、25℃、26℃、27℃、28℃、29℃、30℃、31℃、32℃、33℃、34℃、35℃、36℃、37℃、38℃、39℃又はその間の任意の範囲である。第二時間帯の範囲は、3-15日であってもよく、例えば4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日又は15日である。
【0045】
第二菌剤の添加量は、一次発酵濾液の総質量の0.1‰-10‰であってもよく、例えば0.5‰、1‰、2‰、3‰、4‰、5‰、6‰、7‰、8‰又は9‰である。
【0046】
ある実施形態において、第二菌剤はAcetobacteraceti aceti:Acetobacter acetiである。ある実施形態において、第二菌剤の添加量は一次発酵濾液の総質量の1‰である。
【0047】
ある実施形態において、第二菌剤はAcetobacter pasteurianusである。ある実施形態において、添加量は一次発酵濾液の総質量の5‰である。
【0048】
ある実施形態において、第二菌剤はAcetobacter acetiである。ある実施形態において、添加量は一次発酵濾液の総質量の9‰である。
【0049】
ある実施形態において、第二菌剤はAcetobacter ghanensis:Acetobacter aceti:Acetobacter pasteurianusが1:1:1である。ある実施形態において、添加量は一次発酵濾液の総質量の0.1‰である。
【0050】
ある実施形態において、第二菌剤はAcetobacter rancens:Acetobacteraceti aceti:Acetobacter pasteurianusが1:1:1である。ある実施形態において、添加量は一次発酵濾液の総質量の0.9‰である。
【0051】
ある実施形態において、第二菌剤はAcetobacter rancensである。ある実施形態において、添加量は一次発酵濾液の総質量の3‰である。
【0052】
ある実施形態において、第二菌剤はAcetobacter ghanensisである。ある実施形態において、添加量は一次発酵濾液の総質量の10‰である。
【0053】
ある実施形態において、接種用の酵母菌の含有量はいずれも少なくとも1.0×10CFU/gであり、例えば1.5×10CFU/g、2×10CFU/g、2.5×10CFU/g、3×10CFU/g、3.5×10CFU/g、4×10CFU/g、4.5×10CFU/g、5×10CFU/g、5.5×10CFU/g、6×10CFU/g、6.5×10CFU/g、7×10CFU/g、7.5×10CFU/g、8×10CFU/g、8.5×10CFU/g、9×10CFU/g又は9.5×10CFU/gである。
【0054】
ある実施形態において、接種用の乳酸菌含有量はいずれも少なくとも1.0×10CFU/gであり、例えば1.5×10CFU/g、2×10CFU/g、2.5×10CFU/g、3×10CFU/g、3.5×10CFU/g、4×10CFU/g、4.5×10CFU/g、5×10CFU/g、5.5×10CFU/g、6×10CFU/g、6.5×10CFU/g、7×10CFU/g、7.5×10CFU/g、8×10CFU/g、8.5×10CFU/g、9×10CFU/g又は9.5×10CFU/gである。
【0055】
ある実施形態において、接種用の酢酸菌の原始菌含有量はいずれも少なくとも1.5×10CFU/g、2×10CFU/g、2.5×10CFU/g、3×10CFU/g、3.5×10CFU/g、4×10CFU/g、4.5×10CFU/g、5×10CFU/g、5.5×10CFU/g、6×10CFU/g、6.5×10CFU/g、7×10CFU/g、7.5×10CFU/g、8×10CFU/g、8.5×10CFU/g、9×10CFU/g又は9.5×10CFU/gである。
【0056】
本明細書において、静置培養は、当業者に知られている任意の形式の静置培養であってもよく、例えば8層のガーゼで密封して静置培養する。また、通気培養は、当業者に知られている任意の形式の通気培養であってもよい。通気量は、0.1-20mL/min/mL発酵液であってもよく、例えば0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18又は19mL/min/mL発酵液である。
【0057】
本方法により製造されたライチ酵素を添加成分として製品に添加することができ、例えば食品又は機能性食品に添加し、又は食品又は機能性食品として用いられる。ライチ酵素の形態は特に限定されない。例えば、ライチ酵素は液体であってもよい。本発明のライチ酵素は、腸管バリア機能を向上させ、免疫(例えば腸管免疫)を双方向に調節し、腸管炎症を改善し、腸管定常状態を維持し、さらに腸管健康を改善するために用いられる。本発明のライチ酵素は、マクロファージのNO分泌を調節してこれらの効果を実現することができる。また、本発明のライチ酵素は、マクロファージを活性化してNOを生成し、非特異的免疫効用を発揮することができる。また、本発明のライチ酵素は、LPSで誘導された炎症細胞のNOの放出ことを抑制することができ、抗炎症活性を有する。
【0058】
以上、本発明の複数の実施形態について説明した。しかしながら、理解すべきことは、本発明の本質及び範囲から逸脱することなく様々な調整を行うことができることである。それに応じて、他の実施形態は以下のクレームの範囲内にある。
【0059】
以下に実施例を参照して本願をさらに詳細に説明する。しかしながら、当業者であれば、これらの実施形態は説明の目的のためだけに提供されるものであり、本願を限定することを意図するものではないことを理解すべきである。
【0060】
実施例
以下に実施例を参照しながら、本出願の実施形態を詳細に説明するが、当業者であれば、以下の実施例は本出願を説明するためのものに過ぎず、本出願の範囲を限定するものと見なされないと理解すべきである。実施例において具体的な条件を明記していないものは、通常の条件又はメーカーが提案した条件に応じて行われる。使用される試薬又は機器は、メーカーを明記していないものであり、いずれも市販により取得できる従来の製品である。特に指定しない限り、列挙された全ての量はいずれも総重量の重量パーセントに基づいて説明される。本願は、記載された具体的な実施例に限定されていると解釈すべきではない。
【0061】
実施例に使用される菌剤は以下のとおりである:
清酒酵母:Saccharomyces sake CCTCC CY 20081270(典型的な培養物寄託センターから購入される);Saccharomyces cerevisiae:Saccharomyces sp.GDMCC 2.115(広東省微生物菌種寄託センター(Guangdong Microbial Culture Collection Center)から購入される);Pichia anomala:Pichia anomala CICC 1859(中国工業微生物菌種寄託(China Center of Industrial Culture Collection)センターから購入される);Saccharomyces rouxii Boutroux:Saccharomyces rouxii Boutroux GDMCC 2.55(広東省微生物菌種寄託センターから購入される);Saccharomyces willianus:Saccharomyces willianus Saccardo GDMCC 2.60(広東省微生物菌種寄託センターから購入される);Rhodotorula mucilaginosa:Rhodotorula mucilaginosa CICC 13237(中国工業微生物菌種寄託センターから購入される);Hansenula anomala:Hansenula anomala var.Anomala CICC 1641 (中国工業微生物菌種寄託センターから購入される)。
【0062】
Lactobacillus paracasei:Lactobacillus paracasei CGMCC 1.9089(中国微生物菌種寄託管理委員会普通微生物センター(China General Microbiological Culture Collection Center)から購入される);Lactobacillus plantarum:Lactobacillus plantarum CGMCC 1.572(中国微生物菌種寄託管理委員会普通微生物センターから購入される);Lactobacillus casei:Lactobacillus casei CGMCC 1.575(中国微生物菌種寄託管理委員会普通微生物センターから購入される);Lactobacillus reuteri:Lactobacillus reuteri CICC 6121(中国工業微生物菌種寄託センターから購入される);Lactobacillus sakei:Lactobacillus sakei subsp.sakei CICC 21858(中国工業微生物菌種寄託センターから購入される);Lactobacillus gasseri:Lactobacillus gasseri FRI 2008082(NING BO TESTOBIO有限責任会社)である。
【0063】
Acetobacteraceti aceti:Acetobacteraceti aceti ATCC 15973(米国典型培養物寄託センター(American type culture collection)からのもの);Acetobacter aceti:Acetobacter aceti BNCC 159639(BeNa Culture Collection(BNCC)から購入される);Acetobacter pasteurianus:Acetobacter pasteurianus GDMCC 1.67(広東省微生物菌種寄託センターから購入される);Acetobacter ghanensis:Acetobacter ghanensis CICC 7002(中国工業微生物菌種寄託センターから購入される);Acetobacter rancens:Acetobacter rancens BNCC 183824(BeNa Culture Collection(BNCC)から購入される)。以上の菌株を菌粉で購入し、酵母菌の原始菌含有量はいずれも1.0×10CFU/gであり、乳酸菌の原始菌含有量はいずれも1.0×10CFU/gであり、酢酸菌の原始菌含有量はいずれも1.0×10CFU/gである。実験過程において菌株菌粉として添加する。
【0064】
実施例1:ライチ酵素の調製
(1)前処理:5トンのライチ果実を洗浄し、圧搾し、
(2)一次発酵:果実液と果実滓の混合物に糖1を添加し、菌剤1を接種し、30℃で密封静置して72h発酵し、
(3)濾過:フィルタープレスで押圧し、一次発酵濾液を得て、一次発酵濾液の質量がライチ果実の総質量の60%より大きく、
(4)二次発酵:一次発酵濾液に糖2を添加し、菌剤2を接種し、15℃で5日間通気培養し、
(5)濾過し、滅菌した。
【0065】
本実施例において、糖1はフルクトース:黒砂糖=1:1であり;糖1の添加量は2%(w/w)であり;菌剤1は酵母菌:乳酸菌が400:1であり;酵母菌は清酒酵母であり;乳酸菌はLactobacillus paracasei:Lactobacillus reuteri:Lactobacillus gasseriが1:1:1であり;菌剤1の添加量はライチの総質量の0.9‰である。
【0066】
本実施例において、糖2はラクトースであり;糖2の添加量は一次発酵濾液の総質量の15%であり;菌剤2はAcetobacteraceti aceti:Acetobacter acetiが1:1であり;菌剤2の添加量は一次発酵濾液の総質量の1‰であり;培養方式は通気量が1mL/min/mL発酵液の通気培養である。
【0067】
上記方法によりライチ酵素を調製した。
【0068】
実施例2:ライチ酵素の調製
(1)前処理:5トンのライチ果実を洗浄し、圧搾し、
(2)一次発酵:果実液と果実滓の混合物に糖1を添加し、菌剤1を接種し、21℃で96h密封静置発酵し、
(3)濾過:フィルタープレスで押圧し、一次発酵濾液を得て、一次発酵濾液の質量がライチ果実の総質量の60%より大きく、
(4)二次発酵:一次発酵濾液に糖2を添加し、菌剤2を接種し、37℃で7日間通気培養し、
(5)濾過し、滅菌した。
【0069】
本実施例において、糖1はスクロースであり;糖1の添加量は5%(w/w)であり;菌剤1は酵母菌:乳酸菌が100:1であり;酵母菌はSaccharomyces cerevisiae:Pichia pastoris:Saccharomyces rouxii Boutrouxが1:1:1であり;乳酸菌はLactobacillus plantarum:Lactobacillus casei:Lactobacillus reuteriが1:1:1であり;菌剤1の添加量はライチの総質量の5‰である。
【0070】
本実施例において、糖2は赤砂糖であり;糖2の添加量は一次発酵濾液の総質量の1%であり;菌剤2はAcetobacter pasteurianusであり;菌剤2の添加量は一次発酵濾液の総質量の5‰であり;培養方式は通気量が15mL/min/mLの発酵液の通気培養である。
【0071】
実施例3:ライチ酵素の調製
(1)前処理:5トンのライチ果実を洗浄し、圧搾し、
(2)一次発酵:果実液と果実滓の混合物に糖1を添加し、菌剤1を接種し、45℃で密封静置して24h発酵し、
(3)濾過:フィルタープレスで押圧し、一次発酵濾液を得て、一次発酵濾液の質量がライチ果実の総質量の60%より大きく、
(4)二次発酵:一次発酵濾液に糖2を添加し、菌剤2を接種し、30℃で3日間通気培養し、
(5)濾過し、滅菌した。
【0072】
本実施例において、糖1はマルトース:アラビノースが1:1であり;糖1の添加量は4%(w/w)であり;菌剤1は酵母菌:乳酸菌が50:1であり;酵母菌はSaccharomyces willianus:Rhodotorula mucilaginosa:Saccharomyces rouxii Boutrouxが1:1:1であり;乳酸菌はLactobacillus sakei:Lactobacillus caseiが1:1であり;菌剤1の添加量はライチの総質量の0.1‰である。
【0073】
本実施例において、糖2は糖蜜:ラクトースが1:1であり;糖2の添加量は一次発酵濾液の総質量の5%であり;菌剤2はAcetobacter acetiであり;菌剤2の添加量は一次発酵濾液の総質量の9‰であり;培養方式は通気量が20mL/min/mL発酵液の通気培養である。
【0074】
実施例4:ライチ酵素の調製
(1)前処理:5トンのライチ果実を洗浄し、圧搾し、
(2)一次発酵:果実液と果実滓の混合物に糖1を添加し、菌剤1を接種し、39℃で25h密封静置発酵し、
(3)濾過:フィルタープレスで押圧し、一次発酵濾液を得て、一次発酵濾液の質量がライチ果実の総質量の60%より大きく、
(4)二次発酵:一次発酵濾液に糖2を添加し、菌剤2を接種し、25℃で10日間通気培養し、
(5)濾過し、滅菌した。
【0075】
本実施例において、糖1はマルトースであり;糖1の添加量は1%(w/w)であり;菌剤1は酵母菌:乳酸菌が300:1であり;酵母菌はHansenula anomalaであり;乳酸菌はLactobacillus gasseriであり;菌剤1の添加量はライチの総質量の10‰である。
【0076】
本実施例において、糖2はグルコースであり;糖2の添加量は一次発酵濾液の総質量の18%であり;菌剤2はAcetobacter ghanensis:Acetobacter aceti:Acetobacter pasteurianusが1:1:1であり;菌剤2の添加量は一次発酵濾液の総質量の0.1‰であり;培養方式は通気量が3mL/min/mLの通気培養である。
【0077】
実施例5:ライチ酵素の調製
(1)前処理:5トンのライチ果実を洗浄し、圧搾し、
(2)一次発酵:果実液と果実滓の混合物に糖1を添加し、菌剤1を接種し、25℃で密封静置して48h発酵し、
(3)濾過:フィルタープレスで押圧し、一次発酵濾液を得て、一次発酵濾液の質量がライチ果実の総質量の60%より大きく、
(4)二次発酵:一次発酵濾液に糖2を添加し、菌剤2を接種し、40℃で9日間通気培養し、
(5)濾過し、滅菌した。
【0078】
本実施例において、糖1はフルクトース:スクロース:黒砂糖が1:1:1であり;糖1の添加量が3%(w/w)であり;菌剤1は酵母菌:乳酸菌が500:1であり;酵母菌はSaccharomyces cerevisiae:清酒酵母が1:1であり;乳酸菌はLactobacillus plantarum:Lactobacillus gasseri:Lactobacillus sakeiが1:1:1であり;菌剤1の添加量はライチの総質量の8‰である。
【0079】
本実施例において、糖2は蜂蜜であり;糖2の添加量は一次発酵濾液の総質量の20%であり;菌剤2はAcetobacter rancens:Acetobacteraceti aceti:Acetobacter pasteurianusが1:1:1であり;菌剤2の添加量は一次発酵濾液の総質量の0.9‰であり;培養方式は通気量が5mL/min/mLの発酵液の通気培養である。
【0080】
実施例6:ライチ酵素の調製
(1)前処理:5トンのライチ果実を洗浄し、圧搾し、
(2)一次発酵:果実液と果実滓の混合物に糖1を添加し、菌剤1を接種し、32℃で密封静置して86h発酵し、
(3)濾過:フィルタープレスで押圧し、一次発酵濾液を得て、一次発酵濾液の質量がライチ果実の総質量の60%より大きく、
(4)二次発酵:一次発酵濾液に糖2を添加し、菌剤2を接種し、35℃で15日間通気培養し、
(5)濾過し、滅菌した。
【0081】
本実施例において糖1の添加量は0%であり;菌剤1は酵母菌:乳酸菌が200:1であり;酵母菌はRhodotorula mucilaginosaであり;乳酸菌はLactobacillus plantarum:Lactobacillus sakeiが1:1であり;菌剤1の添加量はライチの総質量の2‰である。
【0082】
本実施例において糖2はグルコース:蜂蜜が1:1であり;糖2の添加量は一次発酵濾液の総質量の10%であり;菌剤2はAcetobacter rancensであり;菌剤2の添加量は一次発酵濾液の総質量の3‰であり;培養方式は通気量が0.1mL/min/mL発酵液の通気培養である。
【0083】
実施例7:ライチ酵素の調製
(1)前処理:5トンのライチ果実を洗浄し、圧搾し、
(2)一次発酵:果実液と果実滓の混合物に糖1を添加し、菌剤1を接種し、28℃で65h密封静置発酵し、
(3)濾過:フィルタープレスで押圧し、一次発酵濾液を得て、一次発酵濾液の質量がライチ果実の総質量の60%より大きく、
(4)二次発酵:一次発酵濾液に糖2を添加し、菌剤2を接種し、28℃で13日間静置培養し、
(5)濾過し、滅菌した。
【0084】
本実施例において、糖1はスクロース:アラビノースが1:1であり;糖1の添加量は2.5%(w/w)であり;菌剤1は酵母菌:乳酸菌が150:1であり;酵母菌はSaccharomyces cerevisiaeであり;乳酸菌はLactobacillus caseiであり;菌剤1の添加量はライチの総質量の4‰である。
【0085】
本実施例において、糖2は赤砂糖であり;糖2の添加量は一次発酵濾液の総質量の3%であり;菌剤2はAcetobacter ghanensisであり;菌剤2の添加量は一次発酵濾液の総質量の10‰であり;静置培養は8層のガーゼで密封して静置培養することである。
【0086】
実施例8:効果試験方法
ライチ酵素の実験処理方式:
1mgのライチ酵素サンプルを秤量して1mLのPBSに溶解し、1mg/mLの母液を調製し、次に31.25、62.5、125、250、500、1000倍のサンプル液に希釈し、それに対応する濃度は32、16、8、4、2、1 μg/mLである。
【0087】
ヒト結腸癌細胞Caco-2腸管バリア機能試験実験
細胞培養及び細胞単層バリアモデルの確立:
液体窒素に保存されたCaco-2細胞を蘇生し、細胞壁接着融合率が85%に達する場合、37℃で細胞を約5min消化した後に継代培養を行った。ここで、完全培地には、1%の100μg/mLストレプトマイシン、100U/mLペニシリン及び10%のウシ胎児血清が含まれている。
【0088】
単層バリアモデルを確立する前に、予め冷却されたPBS溶液で移行カップTranswellの上室を湿潤し、その後に細胞を1x10個の細胞数/孔の密度でTranswellプレートの上室に接種し、かつ無血清の培地を用いて細胞を24h飢餓し、その後に完全培地に交換した。細胞が連続的に18~21日成長した後にTranswellプレートの上室に連続的で緻密な細胞単層を形成することができ、この時に後続の実験処理を行うことができる。
【0089】
実験全体は三つの群に分けられた:ブランク群、リポ多糖(LPS)モデリング群、酵素処理群。実験は段階的にインキュベートしたモデルを選択し、ブランク群は、完全培地のみを添加し、いずれの実験処理を行わないことを代表し;モデリング群は、完全培地に最終濃度が5μg/mLのLPSを添加し、細胞と共に24hインキュベートした後にPBSで洗浄した必要があることを代表し;酵素処理群は、LPSとCaco-2細胞を共に24hインキュベートした後にPBSで洗浄し、この時に異なる濃度のライチ酵素液(実施例5)とCaco-2細胞を共に6hインキュベートしたことを代表した。
【0090】
腸管細胞膜貫通抵抗値(TEER)の検出
Caco-2細胞を24ウェルのTranswellセルに接種した。細胞を18~21日間連続的に培養した後、TEER値が300~1000Ω・cmに達すると、緻密な細胞単層が形成されたことを示す。その後、下室に最終濃度が5μg/mLであるLPSを添加して上層細胞と24h作用し、その後に細胞TEER値を測定し、抵抗値が20%を超えるとモデリングに成功したと考えられた。その後、さらにライチ酵素を添加して細胞と合計6hインキュベートし、再びTEER値を測定した。最後に、腸管細胞TEERの相対変化値を計算した。
【0091】
Caco-2上皮細胞単層のTEER値は、腸上皮のバリア機能を反映することができ、LPSモデリングを採用した後に腸管バリア機能が損傷され、ライチ酵素の介入は上皮細胞単層のTEER値を上昇させることができれば、それが損傷された腸バリアを回復する作用を有することを説明した。
【0092】
図1から分かるように、ライチ酵素は、濃度が0.1μg/mLより大きい場合、腸管細胞の経上皮電気抵抗値を顕著に向上させる作用(p<0.05)を有し、ライチ酵素が腸管バリア機能を修復することができることを説明した。
【0093】
マクロファージRAW264.7免疫活性試験実験
マクロファージRAW264.7の一酸化窒素(NO)分泌量の測定:
一酸化窒素(NO)は、マクロファージにより生成された主要な効果分子であり、マクロファージが活性化された後、生成されたNOが非特異的免疫の主要な細胞毒性効果を発揮する。ライチ酵素がNOの分泌に影響を与えることができれば、ライチ酵素が免疫を調節することができることを示す。本実験は、ライチ酵素のマクロファージのNO分泌量に対する影響を測定した。
【0094】
対数増殖期細胞を、各ウェル5×10個の細胞に応じて24ウェルプレートに添加し、各濃度のライチ酵素1、2、4、8、16、32μg/mLを添加して24h刺激し、上清を吸引し、50μL/ウェルに応じて、96ウェルプレートに添加し、同時にブランク対照を設置し;各ウェルに50μLの室温Griess Iを添加し、軽く均一に混合し;各ウェルに50μlの室温Griess IIを添加し軽く均一に混合し;マイクロプレートリーダーで540nmでの吸光度を測定した。
【0095】
図2から分かるように、異なる濃度のライチ酵素(実施例5)は、マクロファージがNOを分泌することを促進することができ、酵素サンプルがマクロファージを活性化し、免疫調節に関与することができることを示している。
【0096】
マクロファージRAW264.7の炎症モデル実験
マクロファージRAW264.7を10%ウシ胎児血清(FBS)及び1%ペニシリン、ストレプトマイシンを含有するDMEM培地で培養し、二酸化炭素培養器の条件は37℃、5%COであった。細胞が培養皿の80%まで成長する時に継代を行い、継代時にピペットで吸引された培地で繰り返して吸引して細胞を脱壁させかつ単細胞懸濁液を形成し、200gで3分間遠心分離し、上清を捨て、新鮮な培地を添加して均一に吹き付けた後に培養皿に接種した。マクロファージRAW264.7を各ウェル5x10の密度で六ウェルプレートに接種し、各処理に3つのウェルを設けた。壁を貼り付けかつ孔面積の70%まで成長する時に処理を開始し、異なる濃度(0.01、0.1、1、2、4、8、16 μg/mL)のライチ酵素(実施例5)及びLPS(0.1μg/mL)を含有する特製DMEM培地で細胞を24h処理した。終了した後、培地上清液を収集し、各サンプルに50μLを取って96ウェルプレートに添加して検出し、各ウェルに50μLのGriess試薬Iを添加し、さらに50μLのGriess試薬IIを添加し、発色反応が発生した後、540nmで吸光度値を検出した。
【0097】
評価基準:
マクロファージがLPS等の刺激を受けると、誘導型一酸化窒素合成酵素が顕著に増加し、それにより大量のNOを生成して免疫応答を行う。NOは、一定の細胞毒性を有し、さらに生体に損傷を与え、それにより炎症部位の滲出及び水腫を促進する。NOの生成を抑制する程度は、抗炎症活性を検出する直接的な指標である。ライチ酵素サンプルを添加することでNOの生成を抑制することができれば、ライチ酵素が良好な抗炎症活性を有することを説明する。
【0098】
図3から分かるように、異なる濃度のライチ酵素は、LPSで誘導された炎症細胞のNO放出を抑制することができ、ライチ酵素が抗炎症活性を有することを示している。抗炎症活性を有する濃度範囲は0.1-8μg/mLであった。図2図3の実験結果により、ライチ酵素の免疫への調節は、双方向性を有し、腸管定常状態の維持に役立つことが明らかになった。
【0099】
実施例1-7のライチ酵素の効果比較
実施例1-7のライチ酵素を利用し、サンプル濃度が4μg/mLで上記のヒト結腸癌細胞Caco-2腸管バリア機能試験実験、マクロファージRAW264.7免疫活性試験実験及びマクロファージRAW264.7の炎症モデル実験を行い、かつ各ライチ酵素の効果を比較した。表1に、ライチ酵素の効果を示した。
【0100】
表1:異なる実施例の効果
注:経上皮電気抵抗値回復率=酵素介入群経上皮電気抵抗値/初期経上皮電気抵抗値*100%
抗炎症効率=(モデル群NO放出量-サンプル群NO放出量)/モデル群NO放出量*100%
【0101】
表1から分かるように、実施例7で得られたライチ酵素の効果が最も低い。実施例1-5ではいずれも第一炭素源を添加しかつ通気培養の方式を採用したが、実施例6では第一炭素源を添加せずかつ二次発酵過程において通気量が0.1mL/min/mLであり、実施例7では第一炭素源を添加しかつ二次発酵過程において静置培養の方式を採用し、その結果、第一炭素源の添加及び二次発酵過程の通気培養が発酵過程に対して有利な変化を生成し、さらにライチ酵素の腸管健康に対する有益な効果を強化したことを示した。実施例5で得られたライチ酵素を用いて経上皮電気抵抗値回復率、免疫活性試験における一酸化窒素(NO)放出量、炎症モデルにおける一酸化窒素(NO)放出量及び抗炎症効率に最適な効果を得た。発明者らは、長期の研究において菌株及び培養パラメータを調整することにより、実施例5以外の他の培養菌株又は条件(例えば実施例1-4及び6)がこのような高い抗炎症効率を実現することができない;かつ実施例5における単一の菌を使用して行われた実験により得られた効果の和が本発明の実施例5の菌を組み合わせて得られた効果よりはるかに低いことを発見した。
【0102】
上記実施例は本発明の好ましい実施形態であるが、本発明の実施形態は上記実施例に限定されず、本発明の精神的実質と原理から逸脱せずに行われた他の任意の変更、修飾、代替、組み合わせ、簡略化は、いずれも等価の置換方式であり、いずれも本発明の保護範囲内に含まれる。
図1
図2
図3