(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023172941
(43)【公開日】2023-12-06
(54)【発明の名称】外科用器具システム
(51)【国際特許分類】
A61B 17/90 20060101AFI20231129BHJP
【FI】
A61B17/90
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023084030
(22)【出願日】2023-05-22
(31)【優先権主張番号】10 2022 205 192.0
(32)【優先日】2022-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】502154016
【氏名又は名称】アエスキュラップ アーゲー
【住所又は居所原語表記】Am Aesculap-Platz, 78532 Tuttlingen Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フランツ-ペーター ファームバッハ
(72)【発明者】
【氏名】スヴェニア アンホーン
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160LL12
4C160LL27
4C160LL28
(57)【要約】 (修正有)
【課題】患者に適合した方法で特に多目的に使用することが可能になると同時に、シンプルな構造を可能にし、術後結果を改善できる外科用器具システムを提供する。
【解決手段】膝関節全置換術に使用するための外科用器具システムであって、遠位大腿骨に取り付けられるように規定され、ブロック前側部と、近位遠位軸に沿って反対側にあるブロック後側部と、を有する、基準ブロックと、要素後側部と、近位遠位軸に沿って反対側にあり、遠位大腿骨の外側顆及び/又は内側顆に接触するように規定された接触面と、を有する、少なくとも1つの代償要素と、基準ブロック上に配置される少なくとも1つの接続部と、代償要素上に配置される少なくとも1つの補完接続部と、を有する接続システムを有し、前記接続システムは、代償要素をブロック前側部に取り外し可能に取り付けるように規定されている、接続システムと、を備える外科用器具システム。
【選択図】
図17
【特許請求の範囲】
【請求項1】
膝関節全置換術に使用するための外科用器具システム(1a、1b、1c、1d)であって、
遠位大腿骨に取り付けられるように規定され、ブロック前側部(4a、4b、4c、4d)と、近位遠位軸(SI)に沿って反対側にあるブロック後側部(5a、5b、5c、5d)と、を有する、基準ブロック(2a、2b、2c、2d)と、
要素後側部(7a、7b、7c、7d)と、前記近位遠位軸(SI)に沿って反対側にあり、前記遠位大腿骨の外側顆及び/又は内側顆に接触するように規定された接触面(8a、8b、8c、8d)と、を有する、少なくとも1つの代償要素(3a、3b、3c、3d)と、
前記基準ブロック(2a、2b、2c、2d)上に配置される少なくとも1つの接続部(9a、9b、9c1、9c2、9d1、9d2、9d3)と、前記代償要素(3a、3b、3c、3d)上に配置される少なくとも1つの補完接続部(10a、10b、10c、10d)と、を有する接続システムを有し、前記接続システムは、前記代償要素(3a、3b、3c、3d)を前記ブロック前側部(4a、4b、4c、4d)に取り外し可能に取り付けるように規定されている、前記接続システムと、を備え、
取り付け状態の前記代償要素(3a、3b、3c、3d)は、少なくとも前後軸(AP)に関し、前記ブロック前側部(4a、4b、4c、4d)を完全には覆わず、前記接続システムは、前記代償要素(3a、3b、3c、3d)が、前記接続システムによって、少なくとも前記前後軸(AP)に関し、前記ブロック前側部(4a、4b、4c、4d)上の異なる位置に取り付け可能なように規定されていることを特徴とする、外科用器具システム(1a、1b、1c、1d)。
【請求項2】
前記少なくとも1つの接続部(9a、9b、9c1、9c2、9d1、9d2、9d3)は、前記ブロック前側部(4a、4b、4c、4d)上に配置され、
前記少なくとも1つの補完接続部(10a、10b、10c、10d)は、前記要素後側部(7a、7b、7c、7d)上に配置されることを特徴とする、請求項1に記載の外科用器具システム(1a、1b、1c、1d)。
【請求項3】
前記少なくとも1つの接続部(9a、9b、9c1、9c2、9d1、9d2、9d3)は、前記基準ブロックに凹んだ雌型接続部であり、
前記少なくとも1つの補完接続部(10a、10b、10c、10d)は、前記代償要素(3a、3b、3c、3d)から突出した雄型接続部であることを特徴とする、請求項1または2に記載の外科用器具システム(1a、1b、1c、1d)。
【請求項4】
前記ブロック前側部(4a、4b、4c、4d)は、前記基準ブロック(2a、2b、2c、2d)の内外軸(ML)に沿って間隔をあけて配置された内側部(11a、11b、11c、11d)と、外側部(12a、12b、12c、12d)と、を有し、
これらの部分は、いずれも、前記接続システムの前記少なくとも1つの接続部(9a、9b、9c1、9c2、9d1、9d2、9d3)を有し、
前記少なくとも1つの代償要素(3a、3b、3c、3d)は、前記外側顆に接触するために、前記外側部(12a、12b、12c、12d)に取り付け可能であり、前記内側顆に接触するために、前記内側部(11a、11b、11c、11d)に取り付け可能であることを特徴とする、先行する請求項の1つに記載の外科用器具システム(1a、1b、1c、1d)。
【請求項5】
前記接続システムは、前記基準ブロック(2c、3d)上に配置され、前記前後軸(AP)に沿って間隔をあけて配置される複数の接続部(9c1、9c2、9d1、9d2、9d3)を備え、
前記代償要素(3c、3d)の異なる位置決めのための前記少なくとも1つの補完接続部(10c、10d)は、間隔をあけて配置される前記接続部(9c1、9c2、9d1、9d2、9d3)のうちの1つに選択的に接続可能であることを特徴とする、先行する請求項の1つに記載の外科用器具システム(1c、1d)。
【請求項6】
間隔をあけて配置される前記接続部(9d1、9d2、9d3)は、いずれも、前記ブロック前側部(4d)に組み込まれた少なくとも1つの孔部(21d)を備え、
前記少なくとも1つの補完接続部(10d)は、前記要素後側部(7d)に配置され、前記代償要素(3d)の前記取り付け状態において、前記孔部(21d)の1つに軸方向に挿入される少なくとも1つのピン(22d)を備えることを特徴とする、請求項5に記載の外科用器具システム(1d)。
【請求項7】
間隔をおいて配置された前記接続部(9d1,9d2,9d3)は、それぞれ、孔部の対(D1、D2、D3)として設計され、
前記少なくとも1つの補完接続部(10d)は、それぞれ、ピンの対(Z)として設計されることを特徴とする、請求項6に記載の外科用器具システム(1d)。
【請求項8】
間隔をあけて配置された前記接続部(9c1,9c2)は、それぞれ、アンダーカット溝(17c1,17c2)として設計され、
前記少なくとも1つの補完接続部(10c)は、前記代償要素(3c)の前記取り付け状態において、前記アンダーカット溝(17c1,17c2)の1つに前記長手方向に押し込まれるストリップ(18c)として設計されることを特徴とする、請求項5に記載の外科用器具システム(1c)。
【請求項9】
前記少なくとも1つの接続部(9b)は、前記ブロック前側部(4b)内に組み込まれ、前記前後軸(AP)に沿って細長いガイド穴(15b)であり、
前記代償要素(3b)の異なる位置決めのための前記補完接続部(10b)は、前記ガイド穴(15b)の前記長手方向に変位可能なように、前記長手方向に垂直に、形状適合により係合することを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載の外科用器具システム(1b)。
【請求項10】
前記ガイド穴(15b)は、部分的に前記内外方向に細長いことを特徴とする、請求項9に記載の外科用器具システム(1b)。
【請求項11】
前記ガイド穴(15b)は、前記長手方向において一端が開口しており、前記基準ブロック(2b)の周囲輪郭(UR)上に配置される前記補完接続部(10b)を導入するための導入開口部(154b)を有することを特徴とする、請求項9または10に記載の外科用器具システム(1b)。
【請求項12】
前記少なくとも1つの接続部(9a)は、前記ブロック前側部(4a)に組み込まれた円柱状孔部(13a)であり、
前記少なくとも1つの補完接続部(10a)は、円柱状ピン(14a)であり、
前記円柱状ピン(14a)は、前記要素後側部(7a)上に偏心して配置され、前記代償要素(3a)の前記取り付け状態において、前記孔部(13a)に軸方向に挿入され、
前記代償要素(3a)は、前記ピン(14a)の偏心配置により、後者の前記長手方向軸(L)を中心とする回転によって、少なくとも前記前後軸(AP)に関して異なる位置決めが可能であることを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載の外科用器具システム(1a)。
【請求項13】
前記代償要素(3a)及び/又は前記接触面(8a)は、円形の周囲輪郭(U)を有することを特徴とする、請求項12に記載の外科用器具システム(1a)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膝関節全置換術に使用するための外科用器具システムに関し、外科用器具システムは、基準ブロックであって、遠位大腿骨に取り付けられるように規定され、ブロック前側部と、近位遠位軸に沿って反対側にあるブロック後側部と、を有する、基準ブロックと、少なくとも1つの代償要素であって、要素後側部と、近位遠位軸に沿って反対側にあり、遠位大腿骨の外側顆及び/又は内側顆に接触するように規定された接触面と、を有する、少なくとも1つの代償要素と、接続システムであって、基準ブロック上に配置される少なくとも1つの接続部と、代償要素上に配置される少なくとも1つの補完接続部と、を有する接続システムを有し、前記接続システムは、代償要素をブロック前側部に取り外し可能に取り付けるように規定されている、接続システムと、を備える。
【背景技術】
【0002】
この種の外科用器具システムは米国特許第10130375号から公知であり、膝関節全置換術(TKAと略記)に使用される。公知の外科用器具システムは、基準ブロックと、シムと呼ばれる少なくとも1つの代償要素を備えている。基準ブロックは、遠位大腿骨に取り付けられるように規定されており、ブロック前側部と、ブロック前側部の反対側にあるブロック後側部と、を有する。使用時、ブロック前側部は大腿骨の遠位顆に面する。代償要素は、要素後側部と、要素後側部の反対側にある接触面と、を有する。この接触面は、大腿骨遠位顆の一つに接触するように規定されている。公知の外科用器具システムでは、代償要素の取り付け状態においてブロック前側部が完全に覆われるように、接触面は、ブロック前側部に適合している。代償要素を取り外し可能に取り付けるために、基準ブロックは、一種のプラグレセプタクルを備えている。代償要素には、後側部にプラグレセプタクルに取り外し可能に挿入可能な突起が設けられている。プラグレセプタクルと突起は、一種の接続システムを形成する。
【0003】
本発明の目的は、冒頭に述べたタイプの外科用器具システムを提供することであり、これにより、それぞれの患者に適合した方法で外科用器具システムを特に多目的に使用することが可能になると同時に、シンプルな構造を可能にし、術後結果を改善できる。
【0004】
本目的は、取り付け状態の少なくとも1つの代償要素が、少なくとも基準ブロックの前後軸に関し、ブロック前側部を完全には覆わず、また、代償要素が、接続システムによって、少なくとも前後軸に関し、ブロック前側部(4a、4b、4c、4d)上の異なる位置に取り付け可能なように、接続システムが規定されていることによって達成される。本発明による解決策により、代償要素によって代償されるべき顆骨及び/又は軟骨の摩耗の位置及び/又は局所的特性を考慮して、適合した方法で代償要素を位置決めすることを可能にする。基準ブロック上への代償要素の異なる位置決めは、代償されるべき欠損の大きさ、及び/又は、代償されるべき欠損が、前後軸に関して、遠位大腿骨の内側顆及び/又は外側顆の上部、中心部、または下部のいずれの領域に位置するかに依存する。本目的のために、本発明に従って、接続システムは、代償要素がブロック前側部上に前後軸に沿って異なる位置に取り付け可能であるように規定される。取り付けられた状態の代償要素は、少なくとも前後軸に関して、ブロック前側部を完全には覆わないので、代償要素のそれぞれの想定位置に関わらず、接触面とそれぞれの顆との間の接触点を外科医が理想的にその視界が制限されずに見ることが、同時に可能となる。本発明による解決策の結果、外科用器具システムは、柔軟な方法で使用することができ、代償されるべき顆摩耗の形状および位置に適応可能である。同時に改善された、またはいかなる場合でも損なわれない接触点の視認性と相まって、術後結果が改善できる。
【0005】
基準ブロックは、好ましくは、遠位大腿骨への髄内取り付け用に規定される。本目的のために、好ましくは、基準ブロックは、ブロック前側部とブロック後側部との間に延び、髄内ロッドを受け入れるように規定された通路を有する。このような髄内取り付けは、原理的に当業者に公知であるため、これ以上の説明は必要ない。代替的または付加的に、基準ブロックを髄外取り付け用に規定することもできる。これも同様に、当業者に原則的に知られている方法で行われる。外科用器具システムを使用する場合、ブロック前側部は、遠位大腿骨に面し、近位側を向いている。反対側のブロック後側部は、遠位側を向いている。ブロック後側部は、好ましくは、大腿骨切断ガイドを取り外し可能に取り付けるために規定される。取り付けられた状態において、少なくとも1つの代償要素によって顆摩耗の代償が行われると、基準ブロックは、大腿骨切断ガイドを使用しながら大腿骨遠位部で実施される鋸切断のための基準として機能することができる。好ましくは、基準ブロックは、近位遠位軸、前後軸、および内外軸を有し、これらは相互に直交し、したがって直交座標基準軸系を形成する。完全を期すために、基準ブロックの前述の軸は、外科用器具システムが使用される場合、好ましくは患者の対応する体軸に対応することに留意されたい。すなわち、前後軸は基準ブロックの縦軸とも、内外軸は基準ブロックの横軸とも、近位遠位軸は基準ブロックの長手方向軸とも呼ぶことができる。本発明の実施形態では、基準ブロックは、一体型またはモノブロックの設計を有する。他の実施形態では、基準ブロックは、多部品からなる設計を有する。
【0006】
外科用器具システムの使用時には、少なくとも1つの代償要素は、その要素後側部においてブロック前側部に面する。反対側の接触面は、遠位大腿骨に面する。代償要素の取り付け状態において、代償要素の近位遠位軸は、好ましくは基準ブロックの近位遠位軸と平行に位置合わせされる。取り付け状態において、代償要素は、ブロック前側部を完全には覆っておらず、及び/又は不完全に覆っている。前述の覆いまたは重なりは、少なくとも前後軸、したがって基準ブロックの垂直方向において完全ではない。好ましくは、重なりは、さらに、基準ブロックの内外軸、すなわち基準ブロックの横方向においても不完全である。言い換えれば、代償要素は、ブロック前側部ほどの高さを有さず、任意でさらにブロック前側部ほど広くない。その結果、代償要素の周囲輪郭がブロック前側部の周囲輪郭を越えて突出することなく、代償要素をブロック前側部の異なる位置に配置することができる。これにより、前述の接触点の視認性の向上が促進される。少なくとも1つの代償要素は、近位遠位軸に沿って規定された厚さを有する。外科用器具システムは、好ましくは、異なって規定された厚さを有する複数の異なる代償要素を有し、これらは、異なる度合いの顆骨及び/又は軟骨の摩耗を代償するように規定される。本発明の実施形態では、少なくとも1つの代償要素は、一体型またはモノブロック設計を有する。他の実施形態では、代償要素は多部品からなる設計を有する。
【0007】
接続システムは、部分的に基準ブロック上に配置及び/又は形成され、部分的に少なくとも1つの代償要素上に配置される、及び/又は形成される。したがって、接続システムは、基準ブロック上に配置された及び/又は形成された少なくとも1つの接続部と、代償要素上に配置された及び/又は形成された少なくとも1つの補完接続部と、を有する。外科用器具システムが複数の代償要素を有する場合、各代償要素は、少なくとも1つの補完接続部を有し、全ての補完接続部は、接続システムに関連付けられる。代償要素を基準ブロックに取り外し可能に取り付けるために、少なくとも1つの接続部と少なくとも1つの補完接続部は、形状適合により及び/又は力嵌めにより相互作用する。異なる実施形態における接続部と補完接続部との間の取り外し可能な接続は、例えば、プラグ接続、クランプ接続、ラッチ接続、舌溝接続、ガイド穴接続などである。原理的には磁気接続も考えられる。異なる位置での代償要素の位置決めを可能にするため、本発明の実施形態では、複数の接続部が、例えば、基準ブロック上に相互に間隔をあけて配置される、及び/又は構成される。他の実施形態では、例えば、1つの接続部のみが基準ブロック上に存在し、前述の1つの接続部は、前述の補完接続部に接続された状態にあり、基準部に対して代償要素の少なくとも1つの自由度を許容する。例えば、異なる位置決めのために、代償要素を基準ブロックに対して回転させる、枢動させる、及び/又は直線運動させることができる。その結果、すでにブロック前側部に取り付けられた状態の代償要素を、異なる位置へ回転させる、揺動させる、及び/又は押すことができる。
【0008】
一実施形態では、少なくとも1つの接続部は、ブロック前側部上に配置され、少なくとも1つの補完接続部は、要素後側部上に配置される。このような配置は、代償要素を取り付ける際に、製造上及び/又は人間工学上の利点を提供することができる。しかしながら、このような配置は必須ではない。他の実施形態では、補完接続部は、代償要素上の周囲輪郭、すなわち横方向、上側及び/又は下側、に配置される。同じことが、少なくとも1つの接続部を基準ブロック上に配置する場合にもあてはまり、基準ブロックのブロック後側部上に配置することも考えられる。
【0009】
一実施形態では、少なくとも1つの接続部は、基準ブロックに凹んだ雌型接続部であり、少なくとも1つの補完接続部は、代償要素から突出した雄型接続部である。このような設計は、特に代償要素を取り付ける際に、製造上及び/又は使用時の人間工学上の利点を提供することができる。少なくとも1つの接続部は、好ましくは、ブロック前側部に凹んでいる。少なくとも1つの接続部は、好ましくは要素後側部から突出している。凹部、すなわち雌型部の設計は、特に、孔部、窪み、凹部、溝、スロットなどとして具現化することができる。突出した、すなわち雄型部の設計は、特にピン、スタッド、ボルト、ストリップ、フックなどとして具体化することができる。さらなる実施形態では、雄型部分と雌型部分が逆に割り当てされる。
【0010】
一実施形態では、ブロック前側部は、基準ブロックの内外軸に沿って間隔をあけて配置された内側部と外側部とを有し、これらの部分は、いずれも、接続システムの少なくとも1つの接続部を有する。少なくとも1つの代償要素は、外側顆に接触するために、外側部に取り付けることができ、少なくとも1つの代償要素は、内側顆に接触するために、内側部に取り付けることができる。その結果、さらに汎用性が高く、特に適応性の高い使用が可能になる。なぜならば、本発明のこの実施形態における少なくとも1つの代償要素は、外側顆または内側顆の摩耗を代償するように選択的に規定されるからである。このために、代償要素は外側部または内側部のいずれかに選択的に取り付けることができる。本目的のために、ブロック前側部の両方の部分の接続システムは、少なくとも1つの接続部を有する。したがって、これらの接続部は、それぞれ外側接続部または内側接続部とも呼ぶことができる。代償要素は、少なくとも前後軸に関して、内側部上と外側部上とで異なる位置に配置することができる。
【0011】
一実施形態では、接続システムは、基準ブロック上に配置され、前後軸に沿って間隔をあけて配置される複数の接続部を有する。代償要素の異なる位置決めのための少なくとも1つの補完接続部は、間隔をあけて配置された接続部のうちの1つに選択的に接続可能である。間隔をあけて配置された接続部は、いわば、少なくとも1つの代償要素を取り付けることができる複数の異なる接続点、インターフェース、取り付け点などを規定する。ブロック前側部が内側部と外側部とを有する場合、間隔をあけて配置された複数の接続部は、2つの部分の一方のみに配置することができ、両方の部分に配置することもできる。実施形態では、内外軸に沿って間隔をおいて配置された複数の接続部は、さらに、内側部上に配置される、及び/又は形成される。その結果、少なくとも1つの代償要素は、内外方向において異なってオフセットされるように、ブロック前側部に取り付けられることができる。したがって、内外軸に沿って間隔をおいて配置された複数の接続部を、代替的にまたは追加的に、ブロック前側部の側方に配置する及び/又は形成することができる。
【0012】
一実施形態では、間隔をあけて配置される接続部は、いずれも、ブロック前側部に組み込まれた少なくとも1つの孔部を備え、少なくとも1つの補完接続部は、少なくとも1つのピンを備え、少なくとも1つのピンは、要素後側部に配置され、代償要素の取り付け状態において、少なくとも1つの孔部に軸方向に挿入される。この実施形態では、特に製造が容易である。さらに、得られる構造は特に堅牢である。孔部は、それぞれ、ピンを挿入して代償要素を取り付けるための、少なくとも1つの差込み点を規定する。挿入された状態では、ピンは、前後軸と内外軸に沿って孔部内に形状適合によって保持される。ピンは、近位遠位軸に沿って摺動式に孔部内に挿入され、孔部から抜き出すことができる。孔部及び/又はピンの具体的な形状によっては、ピンは孔部に対してピンの長手方向軸を中心に回転可能に、または孔部と共に回転するように孔部に係合することができる。間隔をおいて配置された複数の接続部のそれぞれは、少なくとも1つの孔部を備える。設計の実施形態では、間隔をおいて配置された複数の接続部は、それぞれ複数の孔部を備える。後者の場合、代償要素の補完接続部は、対応する数のピンを備える。
【0013】
一実施形態では、間隔をあけて配置された接続部は、それぞれ孔部の対として設計され、少なくとも1つの補完接続部は、ピンの対として設計される。孔部の対での孔部は、それぞれ、好ましくは円柱状の断面を有して具現化される。同じことが、好ましくは、ピンの対でのピンにも、変えるべきところを変えて適用される。この場合も、製造上の利点がある。それにもかかわらず、孔部の対およびピンの対としての設計により、簡単な方法で、少なくとも1つの代償要素をブロック前側部の平面内で回転可能に固定して取り付けすることができる。それぞれの孔部の対での2つの孔部は、ブロック前側部の平面内で、従って、前後軸及び/又は内外軸に沿って、相互に間隔をあけて配置される。同じことが、2つのピンにも、変えるべきところは変えて適用される。
【0014】
一実施形態では、間隔をあけて配置された接続部は、それぞれ、アンダーカット溝として設計され、少なくとも1つの接続部は、代償要素の取り付け状態において、アンダーカット溝に溝の長手方向に押し込まれるストリップとして設計される。アンダーカット溝は、いずれも、前後方向及び/又は内外方向に細長くなるように、ブロック前側部に組み込まれている。代償要素を取り付けるために、ストリップをアンダーカット溝に溝の長手方向に押し込むことができる。従って、外科用器具システムを使用する際、代償要素は外側から横方向に、または上方または下方から、すでに遠位大腿骨に取り付けられている基準ブロックの前側部に押し込まれる。これにより、人間工学的な利点が得られる。溝はいずれもアンダーカットされている。補完ストリップは、アンダーカットに対応した設計になっている。その結果、溝に押し込まれた状態のストリップ、ひいては補完要素は、溝の長手方向の広がりに対して垂直に、形状適合により溝内に保持される。その結果、代償要素はブロック前側部から法線方向に単純に取り外すことはできず、分解のためには、溝に沿ってブロック前側部から基準ブロックを引き出す必要がある。アンダーカット溝は、それぞれ、代償要素を異なる位置に取り付けるための接続点を形成する。アンダーカット溝は、前後軸に沿って相互に離間するようにブロック前側部に配置される。さらに、アンダーカット溝は、内外軸に沿って相互に離間するようにブロック前側部に配置することもできる。ブロック前側部が内側部及び外側部を有する場合、2つの部分の各々は、前後軸及び/又は内外軸に沿って間隔をあけて配置される複数のアンダーカット溝を有することができる。
【0015】
一実施形態では、少なくとも1つの接続部は、ブロック前側部内に組み込まれ、前後軸に沿って細長いガイド穴であり、代償要素の異なる位置決めのための補完接続部は、ガイド穴の長手方向に変位可能なように、長手方向に垂直に、形状適合により係合する。従って、本発明のこの実施形態では、前後軸に沿って相互に離間するように配置された複数の接続部が、ブロック前側部上に配置されることはない。その代わりに、少なくとも1つの接続部が前後軸に沿って延びている。代償要素を異なって位置決めするため、補完接続部は、ガイド穴に沿って変位することができ、それに応じて、少なくとも基準ブロックの垂直方向に関して異なる位置でブロック前側部上に取り付けられる。ガイド穴と相互作用する場合、補完接続部は、ガイド要素として機能し、例えばガイドピン、ガイドボルト、ガイドスタッド、または他の適切な方法で設計することができる。ブロック前側部が内側部および外側部を有する場合、2つの部分のそれぞれは、それぞれ、好ましくは少なくとも1つのガイド穴を備える。
【0016】
一実施形態では、ガイド穴は、部分的に内外方向に細長い。その結果、補完接続部を変位させることにより、代償要素を、前後軸だけでなく、さらに内外軸に関しても、ガイド穴に沿って異なる位置に配置することができる。その結果、代償されるべき顆欠損に対するさらに改善された適合性が達成される。
【0017】
一実施形態では、ガイド穴は、長手方向において一端が開口しており、基準ブロックの周囲輪郭上に配置される補完接続部を導入するための導入開口部を有する。したがって、導入開口部は、基準ブロックの上側、下側、内側または外側に配置することができる。代償要素を取り付けるために、補完接続部をブロック前側部の平面内の導入開口部に押し込むことができる。これにより、外科用器具システムの使用に人間工学的な利点がもたらされる。
【0018】
一実施形態では、少なくとも1つの接続部は、ブロック前側部に組み込まれた円柱状孔部であり、少なくとも1つの補完接続部は、円柱状ピンであり、円柱状ピンは、要素後側部上に偏心して配置され、代償要素の取り付け状態において、孔部に軸方向に挿入され、代償要素は、ピンの偏心配置により、後者の長手方向軸を中心とする回転によって、少なくとも前後軸に関して異なる位置決めが可能である。異なる位置決めのため、代償要素は、近位遠位軸に関して異なる方向に回転可能に位置決めされることができる。この目的のために、一方では、孔部が円柱状に具現化されている。さらに、ピンは、円柱状に具現化され、要素後側部に偏心して配置されている。ピンの偏心配置の結果、ピンの長手方向軸を中心とした回転は、基準ブロックに対する代償要素の方向が異なるだけでなく、さらに、基準ブロックに対する代償要素の変位を引き起こす。この変位は、前後軸及び/又は内外軸に沿って行われる。最もシンプルなケースでは、ブロック前側部には、円柱状かつ偏心して配置されたピンを受けるための単一の円柱状孔部しかない。ブロック前側部が内側部と外側部とを有する場合、好ましくは、2つの部分のそれぞれが円柱状孔部を備える。本発明のこの実施形態は、円柱状孔部の形態の接続部をブロック前側部に1つだけ組み込めばよいので、製造の点で利点がある。
【0019】
一実施形態では、代償要素及び/又は接触面は、円形の周囲輪郭を有する。発明者らは、要素後側部の円柱状ピンの偏心配置と組み合わせた円形の周囲輪郭が、特に有利であることを認識している。
【0020】
本発明のさらなる利点および特徴は、特許請求の範囲および図面によって例示される本発明の好ましい例示的実施形態の説明から得られる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】基準ブロックのブロック前側部方向から見た、本発明による外科用器具システムの一実施形態を概略透視図で示し、外科用器具システムは基準ブロックと少なくとも1つの代償要素を有する。
【0022】
【
図2】
図1による外科用器具システムの少なくとも1つの代償要素を、要素後側部方向から見た概略詳細図である。
【0023】
【0024】
【
図4】
図1による外科用器具システムの概略背面図である。
【0025】
【
図5】
図1および
図4による外科用器具システムの概略平面図である。
【0026】
【
図6】本発明による外科用器具システムのさらなる実施形態を概略透視図で示す。
【0027】
【
図7】
図6による外科用器具システムの代償要素の概略背面図を示す。
【0028】
【
図8】
図6による外科用器具システムの代償要素の透視背面図を示す。
【0029】
【
図9】
図6による外科用器具システムを概略背面図で示す。
【0030】
【
図10】
図6による外科用器具システムを概略正面図で示す。
【0031】
【
図11】本発明による外科用器具システムのさらなる実施形態を概略透視図で示す。
【0032】
【
図12】
図11による外科用器具システムの代償要素を概略背面図で示す。
【0033】
【
図13】
図11による外科用器具システムの代償要素を透視背面図で示す。
【0034】
【
図14】
図11による外科用器具システムを概略背面図で示す。
【0035】
【0036】
【0037】
【
図17】本発明による外科用器具システムのさらなる実施形態を概略透視図で示す。
【0038】
【
図18】
図17による外科用器具システムの代償要素を概略背面図で示したものである。
【0039】
【
図19】
図17による外科用器具システムの代償要素を透視背面図で示したものである。
【0040】
【
図20】
図17による外科用器具システムを概略背面図で示す。
【0041】
【
図21】
図17による外科用器具システムを概略正面図で示す。
【発明を実施するための形態】
【0042】
図1に照らし、膝関節全置換術に使用するための外科用器具システム1aが提供される。具体的には、外科用器具システム1aは、切断治具としても知られる大腿骨切断ガイドを位置決め及び/又は位置合わせし、遠位大腿骨の鋸切断を実施するのに役立つ。この際、外科用器具システム1aは、顆骨及び/又は軟骨の欠損を代償することができる。外科用器具システム1aは、アライメントシステムとも呼ばれることがある。
【0043】
外科用器具システム1aは、基準ブロック2aと少なくとも1つの代償要素3aを有する。
【0044】
基準ブロック2aは、患者(詳細には図示せず)の遠位大腿骨に取り付けられるように規定されており、ブロック前側部4aと、近位遠位軸SI(
図5)に沿って反対側のブロック後側部5a(
図4)と、を有する。外科用器具システム1aの使用において、ブロック前側部4aは、遠位大腿骨、より具体的にはその顆に面している。ブロック後側部5aは、遠位大腿骨から離れる方を向く。
【0045】
遠位大腿骨への基準ブロック2aの取り付けは、当業者に原理的に知られた方法で行われる。例えば、髄内及び/又は髄外に取り付けすることができる。髄内取り付けの場合、図示の実施形態の場合の基準ブロック2aは、ブロック前側部4aとブロック後側部5aとの間に連続して延び、髄内ロッドを受容するように規定された通路6aを有する。取り付けに関するさらなる詳細は、本発明にとって必須ではないので、この点に関するさらなる説明は省略することができる。
【0046】
基準ブロック2aは、アライメントプレートとも呼ぶことができる。図示の実施形態では、基準ブロック2aは、ほぼ矩形の周囲輪郭を有する板状の設計を有する。前述の近位遠位軸SIとは別に、基準ブロック2aは、前後軸APおよび内外軸MLを有する。前述の軸SI、AP、MLは、直交軸系を形成する。外科用器システム1aの実際の使用における前述の軸SI、AP、MLは、好ましくは、患者のそれぞれの解剖学的体軸に対応する。
【0047】
基準ブロック2aの寸法に関して、前後軸APは、基準ブロック2aの縦軸及び/又はZ軸と呼ぶこともできる。内外軸MLは、基準ブロック2aの横軸及び/又はY軸と呼ぶこともできる。近位遠位軸SIはまた、基準ブロック2aの長手方向軸及び/又はX軸と呼ぶこともできる。
【0048】
詳細は図示しないが、ブロック後側部5aは、既述の大腿骨切断ガイドを取り外し可能に取り付けるように規定されている。ブロック後側部5aは、前述の大腿骨切断ガイドとの組合せのみでの使用が必須でないように、追加または代替の構成要素を受容するように規定することができる。
【0049】
さらに、図示の実施形態では、基準ブロック2aは、機能ユニットFを有し、機能ユニットFは、内外軸MLに関してほぼ中心となるように配置され、前後軸APに関して上側に配置される。機能ユニットFは、基準ブロック2aを、さらなる構成要素(より詳細には特定されない)に取り外し可能に結合するために設けられている。しかしながら、この態様は本発明にとって必須ではない。したがって、機能ユニットFの構造的及び/又は機能的特徴に関するこれ以上の説明は省略することができる。
【0050】
少なくとも1つの代償要素3a(特に
図2、3参照)は、要素後側部7aと、反対側の接触面8aと、を有する。接触面8aは、遠位大腿骨に接触するように規定されている。まだ詳細に説明されていない方法で、少なくとも1つの代償要素3aは、ブロック前側部4aに取り外し可能に取り付けられるように規定されている。
図1に示される取り付け状態では、接触面8aは、ブロック前側部4aに対して平行に配置され、ブロック前側部4aから離れる方向を向いている。外科用器具システム1aの使用に際し、接触面8aは、遠位大腿骨を向き、遠位大腿骨の外側顆または内側顆のいずれかに接する。代償要素3aを取り付けた状態の要素後側部7aは、ブロック前側部4aに平行に向けられ、ブロック前側部4aに面している。
【0051】
代償要素3aを取り外し可能に取り付けるために提供されるのは、基準ブロック2a上に配置された少なくとも1つの接続部9aと、代償要素3a上に配置された補完接続部10aと、を有する接続システムである。接続システムは、代償要素3aが、少なくとも前後軸APに関して異なる位置で、接続システムによって、ブロック前側部4a上に取り付けられるように規定されている。取り付けられた状態の代償要素3aは、少なくとも前後軸APに関して、ブロック前側部4aを完全には覆わない。言い換えれば、代償要素3a、特にその接触面8aは、ブロック前側部4aほどの高さを有していない。本実施例では、代償要素3a、従ってその接触面8aも、内外軸MLに関してブロック前側部よりも小さく、すなわち横方向にはそれほど広くない。まだ詳細に説明されていない接続システムの設計により、代償要素3aは、代償対象の骨及び/又は軟骨の欠損に適合した方法で、ブロック前側部4aに対して相対的に位置決めされ得る。上述の方法による代償要素3aは、ブロック前側部4aよりも小さいので、接触面8aとそれぞれの遠位顆との間の接触点を、妨げられず理想的に見ることができることが保証される。
【0052】
図示の実施形態では、ブロック前側部4aは、内側部11aと、外側部12a、とを有する。ブロック前側部4aの内側部11aと外側部12aは、通路6aによって互いから離間しており、この範囲で、内外軸MLに沿って互いから離間している。
図1によって示された状態の代償要素3aは、内側部11aに取り付けられている。このため、内側部11aは、接続部9aを有する。外側部12aへの代償要素3aの別の取り付けのために、外側部12aは、現状、接続システムのさらなる接続部9a’を有する。従って、代償要素3aは、内側部11aまたは外側部12aに選択的に適用することができる。これは、内側顆または外側顆のいずれの軟骨及び/又は骨の欠損を代償する必要があるかどうかによる。
【0053】
さらに、外科用器具システム1aは、好ましくは、主に近位遠位軸に関する厚さが互いに異なり得る複数の代償要素を有する。例えば、1mm、2mm、3mm、4mmなどの異なる代償要素の異なる厚さが考えられる。使用する代償要素の厚さは、通常、骨または軟骨の欠損の症状、または顆の摩耗の程度に依存する。
【0054】
図示の実施例では、摩耗していない、または実質的に重要でない程度に磨耗している顆の代償面としてブロック前側部4aが機能できるように、基準ブロック2aが規定されている。これは、顕著な摩耗がない場合には、代償要素の取り付けが必要ないということを意味する。
【0055】
図1では、外科用システム1aは、代償要素3aに加えて、さらなる代償要素3a’がブロック前側部4aに取り付けられている状態で示されている。さらなる代償要素3a’は、現在、外側部12a上に取り付けられている。図示の構成では、さらなる代償要素3a’は、設計に関して代償要素3aと同一であるため、それに関するさらなる説明は省くことができる。さらなる代償要素3a’の代わりに、例えば、異なる厚さを有する代償要素を使用してもよいことが理解される。
【0056】
接続システム、従って接続部9a及び補完接続部10aに関連する更なる説明は、ブロック前側部の代償要素3a及び内側部11aを参照して提供される。関連する説明は、その上に配置されたさらなる接続部9a’を有する外側部12a、およびさらなる代償要素3a’にも容易に適用できることが理解される。
【0057】
図1から
図5による実施形態では、接続部9aは、円柱状孔部13aであり、補完接続部10aは、要素後側部7aに偏心して配置された円柱状ピン14aである。その結果、
図1に示す取り付け状態の代償要素3aは、円柱状ピン14aが長手方向軸L(
図3)を中心に回転することにより、基準ブロック2a上で、ブロック前側部4aに対して異なる位置に配置することができる。長手方向軸Lを中心とした前述の回転の結果、代償要素3aの向きと円柱状ピン14aの偏心配置により、前後軸に関する位置決めも変化する。この場合、内外軸MLに関する位置も変化する。代償要素3aを取り付けるために、円柱状ピン14aは、近位遠位軸SIに平行な向きの長手方向軸Lに沿って、円柱状孔部13aに挿入される。挿入された状態において、円柱状ピン14aは、円柱状孔部13a内での半径方向の形状適合により保持される。この程度において、円柱状ピン14aは、前後軸AP及び内外軸MLに関して不動である。異なる位置決めのため、代償要素3aは、長手方向軸Lを中心に回転され、その過程で円柱状ピン14aは、円柱状孔部13aに対して周方向に摺動する。その結果、接触面8aは、代償されるべき顆部摩耗の位置に合わせて、さらに上方、下方、内方及び/又は外方に位置決めすることができる。
【0058】
図示の実施形態では、代償要素3aは、円形の周囲輪郭Uを有する(
図2、3)。同じことが、変更すべきところは変更して接触面8aにも適用される。円形周囲輪郭Uは、特に、回転可能に位置決めするための接続システムの本設計の文脈において、特別な利点を提供する。円形円柱状の周囲輪郭Uは、仮想中心Mを有し、円柱状ピン14aは、中心Mから離れて配置され、この程度において偏心して配置される。
【0059】
図1から
図5に示す実施形態では、円柱状孔部13aの形状の雌型接続部としての接続部9aは、ブロック前側部4aに凹んでいる。補完接続部10aは、これに対応して円柱状ピン14aの形状の雄型接続部として構成され、要素後側部7aから軸方向に突出している。変形実施形態では、雌型接続部と雄型接続部の配置を逆にすることができる。従って、基準ブロックは、好ましくは取り外し可能な円柱状ピンを有し、代償要素は、円柱状孔部を有することができる。従って、
図1から
図5に示された雄型接続部と雌型接続部の配置は、必須のものではない。
【0060】
本発明による外科用器具システム1b、1c、1dのさらなる実施形態を
図6から
図21に示す。外科用器具システム1b、1c、1dは、その機能性および設計の点で、
図1から
図5による外科用器具システム1aと実質的に同一である。したがって、繰り返しを避けるために、
図1から
図5による外科用器システム1aに関連する外科用器具システム1b、1c、1dの間の主要な相違点のみを説明する。ここで、機能的に同一の構成要素及び/又は部分は、いずれも、対応する添え字を付加しながら、同一の参照符号で識別される。
【0061】
外科用器具システム1bは、接続部9bが、ブロック前側部4aに組み込まれ、前後軸APに沿って細長いガイド穴15bである点で大きく異なる。代償要素3bの異なる位置決めのための補完接続部10bは、長手方向に変位可能なように、ガイド穴15bに、ガイド穴15bの長手方向に対して垂直に形状適合により係合する。
【0062】
図示の実施形態では、ガイド穴15bは、部分的に、前後軸APに沿って、より具体的には前後軸APと平行に延びている。さらに、ガイド穴15bは、部分的に、内外軸MLに沿って延びており、本実施例では、平行な方向である。本実施例のガイド穴15bは、具体的には、最も広い意味でフック状の長手方向の範囲を有する。前述の長手方向の範囲は、ガイド穴15bの第1の長手方向部分151b、横断部152b、および第2の長手方向部分153bによって形成される。
【0063】
さらに、ガイド穴15bは、長手方向に関して一端が開放されており、この範囲で導入開口部154bを有している。導入開口部154bは現状、基準ブロック2bの周囲輪郭URの上側(より詳細には言及されない)に配置される。導入開口部154bは、補完接続部10bを導入するために設けられている。
【0064】
図示の実施形態では、補完接続部10bは、ガイドピン16bである。ガイドピン16bは、要素後側部7b上に配置され、要素後側部7bの法線方向に沿って突出している。ガイドピン16bは、シャンク部161bと、ヘッド部162bと、を有する。シャンク部161bは、その直径(より詳細には言及されない)に関して、ガイド穴15bのスロット幅(より詳細には言及されない)に適合している。代償要素3bの取り付け状態において、シャンク部161bは、ガイド穴15bの長手方向に対して垂直に、かつ、ブロック前側部4bの平面内において、ガイド穴15bに形状適合により保持される。シャンク部161bは、ガイド穴15bの長手方向に摺動することにより移動可能である。
【0065】
ヘッド部162bは、要素後側部7bから離れる方向を向いたシャンク部161bの端部に配置されている。ヘッド部162bは、シャンク部161bに比べて大きな直径を有する。ヘッド部162bは、代償要素を、ブロック前側部4bの法線方向に外れないように取り付ける役割を果たす。言い換えれば、ヘッド部162bは、代償要素3bがブロック前側部4bの法線方向に抜けないように、ブロック後側部5bの後方に係合する(
図9)。
【0066】
代償要素3bを基準ブロック2bに取り付けるために、ガイドピン16bは、導入開口部154b内に、シャンク部161bの半径方向に導入される。その際、上述の方法でヘッド部162bがガイド穴15bの後方に係合する。代償要素3bを位置決めするために、シャンク部161bは、ガイド穴15bの長手方向に沿って、したがって第1の長手方向部分151b内に配置され、任意選択で横断部152b及び/又は第2の長手方向部分153bに沿って配置される。
【0067】
シャンク部161bは、現在、円柱状の断面を有し、そのため、基準ブロック2bのガイド穴15bに、前記シャンク部161bの長手方向軸(より詳細には言及されない)を中心にガイド穴15bに対して回転可能に保持される。その結果、必要に応じて、接触面8bも回転式に適合するように位置合わせされることができる。
【0068】
図示の実施形態の場合のガイド穴15bは、ブロック前側部4bの内側部11bに組み込まれ、ブロック前側部4bと後側部5bとの間の奥行き方向に連続して延びている。
【0069】
外科用器具システム1bの接続システムは、現状、外側部12bに組み込まれた更なる接続部9b’を有する。更なる接続部9b’の配置及び/又は設計は、接続部9bと鏡面対称であり、それ以外は同一である。従って、更なる接続部9b’は、更なるガイド穴15b’である。代償要素3bは、内側部11bまたは外側部12bに選択的に取り付けることができる。
【0070】
さらに、
図6から
図10に示された代償要素3bの実質的に正方形の周囲輪郭の代わりに、円形またはその他の設計の周囲輪郭を設けてもよいことが理解される。この限りにおいて、図示された正方形の周囲輪郭は、純粋に例示的なものとして理解されるべきである。同じことが、現在示されている、ガイド穴15b、15b’のフック状の長手方向の範囲にも、変更すべきところは変更して適用される。
【0071】
図11から
図16による外科用器具システム1cは、前後軸APに沿って間隔をあけて配置された複数の接続部9c1、9c2が基準ブロック2c上に配置されている点で、器具システム1a、1bとは実質的に異なる。代償要素3cの異なる位置決めのために、その補完接続部10cは、間隔をあけて配置された接続部9c1、9c2のうちの1つに選択的に接続することができる。
【0072】
図示の実施形態の場合、ブロック前側部4cの内側部11cと外側部12cは、それぞれ、対応して垂直方向に間隔をあけて配置された複数の接続部を有し、第1の内側接続部9c1、第2の内側接続部9c2、第1の外側接続部9c1’、および第2の外側接続部9c2’と呼ぶこともできる。ブロック前側部4cの各部分につき、現在のそれぞれ2つの接続部より多く、例えば3つ、4つ、5つ、または、さらに多くの接続部があってもよいことが理解される。
【0073】
前述の接続部は、いずれも、代償要素の異なる位置決めのための取り付け点、インターフェース、またはその他の接続点を規定する。既に説明した実施形態と同様に、代償要素3cは、内側部11cまたは外側部12cに選択的に取り付け可能である。代償要素3cとは別に、
図11、
図15、
図16に示す構成は、さらなる代償要素3c’を備えているが、これは、純粋に例示的なものとして理解されたい。
【0074】
この場合、間隔をあけて配置された複数の接続部9c1、9c2は、それぞれアンダーカット溝17c1、17c2として設計される。外側部12cに配置される更なる接続部9c1’、9c2’についても、変更すべきところは変更して、同様のことが当てはまる。
【0075】
アンダーカット溝17c1,17c2は、第1のアンダーカット溝17c1および第2のアンダーカット溝17c2とも呼ぶことができる。アンダーカット溝17c1,17c2は、現状、その向きが異なるだけであり、第1のアンダーカット溝17c1は、内外の軸MLに細長く平行である。第2のアンダーカット溝17c2は、前後軸APに細長く平行である。
【0076】
図6~
図10による実施形態のガイド穴15bとは対照的に、アンダーカット溝17c1,17c2は、ブロック前側部4とブロック後側部5cとの間に連続して延びていない。その代わりに、アンダーカット溝17c1、17c2は、ブロック後側部5cを貫通することなく、ブロック前側部4cに組み込まれている。このことは、例えば
図15、16で詳細に見ることができる。
【0077】
代償要素3cの補完接続部10cは、ストリップ18cとして設計されている。ストリップ18cは、要素後側部7c上に配置され、要素後側部7cの法線方向に突出している。ストリップ18cは、アンダーカット溝17c1、17c2の断面に対応する断面形状(より詳細には言及されない)を有する。その結果、代償要素3cは、近位遠位軸に関して形状適合するように、ブロック前側部に取り付けることができる。ストリップ18cは、丸みを帯びた前端部分181cを有する。溝17c1,17c2の前述のアンダーカットは、現状、最も広い意味で鳩尾型に設計されている。ストリップ18cの断面も同様である。溝17c1、17c2およびストリップ18cは、一種の鳩尾型ガイドを形成する。
【0078】
代償要素3cを基準ブロック2cに取り付けるために、丸みを帯びた前端部分181cを先頭にして、ストリップ18cを、内側部11cの溝17c1、17c2の1つまたは外側部12cの対応する溝の1つに押し込む。これは、丸みを帯びた前端部分181cがそれぞれの溝の端部に衝突する端部位置(これ以上詳細には説明されない)に達するまで行われる。代償要素3cの異なる位置決めのために、ストリップ18cは、下側の第1の溝17c1または上側の第2の溝17c2に選択的に押し込むことができる。
【0079】
図11から
図16に見られるアンダーカット溝17c1,17c2の配置、およびその長手方向の向きは、純粋に例示的なものとして理解されたい。図示されていない実施形態では、第1のアンダーカット溝17c1に対応する態様で、例えば、内外の軸MLと平行に細長い複数のアンダーカット溝が、基準ブロック2cの高さにわたって分布するように内側部11cに配置される。同様のことが、変更すべきところは変更して、外側部12cにも適用できる。
【0080】
さらに、基準ブロック2cは、髄内ロッドを受け入れるための通路6cを有する。通路6cには現在、挿入部品19cが設けられている。挿入部品19cは、髄内ロッドを直接受け入れるためのレセプタクル孔部20cを備えている。このような挿入部品は、
図1から
図10による実施形態にも存在し得ることが理解される。
【0081】
代償要素3cは、角が丸みを帯びた略矩形の周囲輪郭(より詳細には言及されない)を有する。この設計は、純粋に例示的なものであると理解される。丸みを帯びた矩形の周囲輪郭の代わりに、例えば、
図1~
図5による実施形態のような円形の周囲輪郭、または
図6から
図10による実施形態のような略正方形の周囲輪郭を設けることもできる。
【0082】
図17から
図21に示す外科用器具システム1dは、
図11から
図16の外科用器具システム1cに対応するように、前後軸APに沿って間隔をあけて配置された複数の接続部9d1、9d2、9d3、9d1’、9d2’、9d3’を有している。前述の接続部9d1,9d2,9d3,9d1’,9d2’,9d3’は、ブロック前側部4dの外側部12dと同様に、内側部11dにも配置されている。従って、複数の接続部は、第1の内側接続部9d1、第2の内側接続部9d2、第3の内側接続部9d3、第1の外側接続部9d1’、第2の外側接続部9d2’、および第3の外側接続部9d3’と呼ぶこともできる。
【0083】
図面に示されていない実施形態では、現在示されている3つの接続部よりも少ない数または多い数の接続部が、ブロック前側部4dのそれぞれの部分に存在する。
【0084】
接続部9d1、9d2、9d3、9d1’、9d2’、9d3’のそれぞれは、取り付け点及び/又は接続点を規定する。
図17、20、21に示す構成では、代償要素3dは、第1の内側接続部9d1に取り付けられ、さらなる代償要素3d’は、第3の外側接続部9d3に取り付けられている。これもまた、純粋に例示的なものとして理解されるべきである。
【0085】
接続部9d1、9d2、9d3、9d1’、9d2’、9d3’は、それぞれ、ブロック前側部4dに組み込まれた少なくとも一つの孔部21dを有する。現状、孔部は、それぞれ貫通孔部として、ブロック前側部4dとブロック後側部5dとの間で連続的に細長く、近位遠位軸SIに平行に方向づけられている。
【0086】
代償要素3dの補完接続部10dは、それぞれ、対応する孔部21dに寸法的に適合する少なくとも1つのピン22dを対応して備えている。少なくとも1つのピン22dは、要素後側部7d上に配置され、要素後側部7dの法線方向に突出している。
【0087】
図示の実施形態では、基準ブロック2dの前述の接続部9d1、9d2、9d3、9d1’、9d2’、9d3’のそれぞれは、複数の孔部21dを有する。より具体的には、現在、1つの接続部につきちょうど2つの孔部21dがある。したがって、孔部は、孔部の対を形成する。言い換えれば、接続部9d1、9d2、9d3、9d1’、9d2’、9d3’は、それぞれ、孔部の対D1、D2、D3、D1’、D2’、D3’として設計されている。図示の実施形態における孔部の対での孔部は、前後軸APに関して互いに重なって配置されている。図示しない実施形態では、互いに隣り合う配置が代替的または追加的に設けられる。
【0088】
補完接続部10dは、接続部に対応するように、ピンの対Zとして設計されており、その結果、1つのピンだけでなく、隣接して配置された2つのピン22dを有している。
【0089】
図面に図示されていない実施形態では、接続部は、それぞれ単一の孔部のみを有し、補完接続部は、単一のピンのみを有する。
【0090】
孔部の対またはピンの対としての本発明の設計は、それぞれ特に頑丈であり、さらに、ブロック前側部に関して、代償要素の意図しない回転を妨げる。
【外国語明細書】