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特開2023-172950マイクロチャンネルプレート及びチャネル開口の一方側に選択的に形成された金属接点を有するマイクロチャンネルプレートの製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023172950
(43)【公開日】2023-12-06
(54)【発明の名称】マイクロチャンネルプレート及びチャネル開口の一方側に選択的に形成された金属接点を有するマイクロチャンネルプレートの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01J 31/50 20060101AFI20231129BHJP
   H01J 43/24 20060101ALI20231129BHJP
   H01J 40/16 20060101ALI20231129BHJP
   H01J 40/06 20060101ALI20231129BHJP
   H01J 9/12 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
H01J31/50 D
H01J43/24
H01J40/16
H01J40/06
H01J9/12 D
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023084730
(22)【出願日】2023-05-23
(31)【優先権主張番号】17/752,151
(32)【優先日】2022-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】512169604
【氏名又は名称】エルビット システムズ オブ アメリカ,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】ステファン ダブリュ.キャロル
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム ジェイ.バニー
(72)【発明者】
【氏名】クーパー グレイ テンプル
(72)【発明者】
【氏名】マシュー ロバート カーティス
【テーマコード(参考)】
5C038
【Fターム(参考)】
5C038BB06
(57)【要約】
【課題】 改善されたマイクロチャネルプレートを提供すること。
【解決手段】 暗視システム、マイクロチャネルプレート(MCP)及びのMCPチャネル開口の一方側に電極コンタクト金属を選択的に蒸着するための遊星蒸着システム及び方法が提供される。1つ以上のMCPは、その中心プラッタ軸を中心に回転するプラッタの面に取り外し可能に固定できる。回転するプラッタは、コンタクト金属の蒸着源を取り囲む回転リング固定具上に傾けることができる。したがって、回転するプラッタは、コンタクト金属の蒸着源の周りを周回するようにさらに回転する。可変サイズのマスク開口を有するマスクが、回転するプラッタと蒸着源との間に配置される。マスクは回転するプラッタと共に蒸着源の周りを周回するが、マスクは回転するプラッタのように自身の軸に沿って回転しない。
【選択図】 図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
暗視システムであって、
レンズとアイピースとの間に配置されるイメージ増強管であって、該イメージ増強管は、
光電陰極と、
蛍光体被覆陽極と、
前記光電陰極と前記蛍光体被覆陽極との間に間隔を置いて配置されるマイクロチャネルプレートであって、該マイクロチャネルプレートは、前記光電陰極に対向する離隔された複数のチャネル開口を含み、該チャネル開口の第1の側には、該第1の側と半径方向において反対にある前記チャネル開口の第2の側から生成される第1の衝突電子を引き出すために、マスク開口を介してコンタクト金属が蒸着されている、マイクロチャネルプレートと、
を含む、イメージ増強管、
を含む、暗視システム。
【請求項2】
前記コンタクト金属は、前記チャネル開口のそれぞれから、それぞれの対応するチャネルを介して第1の衝突電子を引き出すための電界を生成するために電圧源に連結されている、請求項1に記載の暗視システム。
【請求項3】
前記チャネル開口は、前記光電陰極に面する前記マイクロチャネルプレートの入力面から、該入力面から第1の距離のところまで直径が減少する漏斗状のチャネル開口である、請求項1に記載の暗視システム。
【請求項4】
前記マイクロチャネルプレートは複数のチャネルを含み、該複数のチャネルのそれぞれは、前記光電陰極に面する前記マイクロチャネルプレートの面の法線に対して5~16°のチャネルバイアス角度でバイアスされたチャネル中心軸を有する、請求項1に記載の暗視システム。
【請求項5】
前記光電陰極は、前記チャネル開口の第2の側に主に衝突し、前記第2の側からのみ前記第1の衝突電子を生成する一次電子を生成するように構成されている、請求項1に記載の暗視システム。
【請求項6】
前記複数のチャネル開口のそれぞれの第2の側には実質的にコンタクト金属がない、請求項1に記載の暗視システム。
【請求項7】
前記複数のチャネル開口のそれぞれの第1の側は、前記複数のチャネル開口のそれぞれの周りの円周距離の1/2未満であり、前記第1の側と半径方向において反対の前記複数のチャネル開口のそれぞれの第2の側は、前記複数のチャネル開口のそれぞれの周りの円周距離の1/2未満である、請求項1に記載の暗視システム。
【請求項8】
マイクロチャネルプレートにコンタクト金属を蒸着するための蒸着システムであって、
コンタクト金属の蒸着源と、
プラッタ中心軸を有するプラッタであって、該プラッタは前記マイクロチャネルプレートを保持し、傾斜しながら前記プラッタ中心軸の周りを回転し、前記蒸着源の周りも回転するように構成されている、プラッタと、
前記プラッタと前記蒸着源との間に配置されるマスクであって、該マスクは、前記マイクロチャネルプレート内の複数のチャネル開口のそれぞれの第1の側のみを前記蒸着源に露出するマスク開口を含む、マスクと、
を含む、蒸着システム。
【請求項9】
前記プラッタは第1の軸に対して第1の角度φ1で傾斜され、前記プラッタ中心軸は、第2の軸に対して第2の角度φ2で前記蒸着源の周りを回転するようさらに構成され、該第2の軸は該第1の軸に対して垂直である、請求項8に記載の蒸着システム。
【請求項10】
前記チャネル開口は、それぞれのチャネル中心軸に沿って延在し、該チャネル中心軸のそれぞれは、前記蒸着源の作動時に前記マスク開口を介して且つ前記チャネル開口の第1の側でのみコンタクト金属を受け取るために、前記チャネル開口からそれぞれのチャネル中心軸に沿って前記プラッタ中心軸の方に延びるチャネルバイアス角度でバイアスされている、請求項8に記載の蒸着システム。
【請求項11】
前記チャネルバイアス角度は、前記マイクロチャネルプレートの入力面の法線に対して5°~16°である、請求項10に記載の蒸着システム。
【請求項12】
前記第1の角度及び前記第2の角度は、前記チャネル開口内に蒸着される前記コンタクト金属の量を対応して調整するために調整可能である、請求項9に記載の蒸着システム。
【請求項13】
前記複数のチャネル開口のそれぞれの第1の側は、前記複数のチャネル開口のそれぞれの周りの円周距離の1/2未満であり、前記第1の側と半径方向において反対の前記複数のチャネル開口のそれぞれの第2の側は、前記複数のチャネル開口のそれぞれの周りの円周距離の1/2未満である、請求項8に記載の蒸着システム。
【請求項14】
前記マスク開口は、前記蒸着源に対する前記チャネル開口のそれぞれの第1の側の前記それぞれのチャネル中心軸の周りの半径方向の露出サイズを対応して調整するために、くさび形の開口から半円形の開口に調整可能である、請求項8に記載の蒸着システム。
【請求項15】
前記くさび形の開口は、前記複数のチャネル開口のそれぞれの周りの円周距離の1/2未満にコンタクト金属を生成し、半円形の開口は、前記複数のチャネル開口のそれぞれの周りの円周距離の約1/2にコンタクト金属を生成する、請求項14に記載の蒸着システム。
【請求項16】
前記チャネル開口は、前記マイクロチャネルプレートの入力面から、前記入力面から第1の距離のところまで直径が減少する漏斗状のチャネル開口である、請求項8に記載の蒸着システム。
【請求項17】
コンタクト金属をマイクロチャネルプレートのチャネル内に選択的に蒸着するための蒸着方法であって、
前記マイクロチャネルプレートをプラッタ上に固定することと、
前記プラッタを、そのプラッタ中心軸を中心に回転させることと、
前記プラッタを傾斜させることと、
回転する前記プラッタに対して固定位置で且つ回転する前記プラッタとコンタクト金属の蒸着源との間でマスク開口を維持しながら、該蒸着源の周りで前記プラッタを回転させることと、
前記蒸着源を作動させて前記チャネル内にコンタクト金属を選択的に蒸着することと、
を含む蒸着方法。
【請求項18】
前記固定することは、
前記チャネルのチャネル中心軸を、チャネル開口からそれぞれのチャネルに沿って且つプラッタ中心軸の方に延びるように配置して、前記蒸着源の作動時に、前記マスク開口を介して且つ前記チャネル開口の第1の側でのみコンタクト金属を受け取るようにすること、
を含む、請求項17に記載の蒸着方法。
【請求項19】
前記傾斜させること及び前記回転させることは、
第1の軸に対して第1の角度φ1で前記プラッタを傾斜させることと、
第2の軸に対して第2の角度φ2で前記プラッタを回転させることであって、該第2の軸は該第1の軸に対して垂直である、ことと、
を含む、請求項17に記載の蒸着方法。
【請求項20】
前記固定することの前に、
マイクロチャネルプレートの両面に対して前記チャネル中心軸において、それぞれのガラスクラッドで取り囲まれたガラスコアを形成することと、
前記ガラスコアと取り囲む前記ガラスクラッドとの間の境界で、前記ガラスクラッドを前記プレート内に第1の距離エッチングすることと、
前記ガラスコアをエッチングして、漏斗状の複数の離隔されたチャネルが残るように残りの前記ガラスクラッドから前記コアを完全に取り除くことと、
をさらに含む、請求項18に記載の蒸着方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
例示の実施形態は概して暗視システムに関し、より具体的には、イメージ増強管と、マスク遊星蒸着システム(masked planetary evaporative deposition system)を用いるイメージ増強管の改良されたマイクロチャネルプレート(MCP)の製造方法と関する。MCPは、MCPの開口面積比(OAR)、第1の打撃効率(FSE)、二次電子増幅及び全信号対雑音比(SNR)を高めるために、チャネル開口の片側でのみチャネル開口内に所定の距離を延びる金属接点を有するチャネル開口を含む。
【背景技術】
【0002】
暗視ゴーグル等の暗視システムは、一般的にイメージ増強管を含む。イメージ増強管又は「イメージインテンシファイア」は、光電陰極とセンサアノードとの間に配置された電子増倍管を含み得る。光電陰極は、物体からレンズを通して送信される光子の形で光を検出する。イメージインテンシファイアは、MCP等の電子増倍器を含み、光電陰極から放出される光電子又は「電子」を増幅又は増大させる。増大された電子は陽極に引き寄せられ、陽極でスクリーンに表示される光子に変換される。陽極又はスクリーンは、増加又は増大された数の電子を受け取ると、それらの電子を感知し、スクリーン上の画像の強化された表現を生成するセンサを含み得る。光電陰極、電子増倍体及び陽極は、光電陰極、電子増倍体及びセンサ陽極の間の間隙を有する真空ハウジング内で通常支持されて利得を提供し、それらの間の電子の流れを促進する。暗視システムは、暗視システム上に配置された1つ以上のアイピース又はスクリーンとユーザの眼との間にゴーグルをさらに含み得る。
【0003】
MCPは電子増倍器の1種である。MCPは、光電陰極と蛍光体で覆われたセンサアノードとの間に配置される。光電陰極は、低光量画像から生成される光子のパターンに対応する電子のパターンを生成する。静電場の使用を通じで、光電陰極から放出される光電子のパターンはMCPの面に向けられる。MCP入力面は実質的に平面で、入力面にわたって配置された開口を有し、各開口は、入力面から、入力面に実質的に平行な反対側の出力面に延びるマイクロチャネル又は「チャネル」として延びる。入力電子がチャネル開口の内面に衝突すると二次電子が生成される。したがって、MCPはそのマイクロチャネルから、光電陰極から送られる一次電子に依存して比例数の二次電子を放出する。二次電子は、それによって電子シャワーを形成し、最初の低光量画像に応答して光電陰極によって生成される電子を増幅する。光電陰極によって生成されたものよりはるかに高い強度の電子シャワーは、その後、蛍光体で覆われた陽極のリン光スクリーンに向けられる。スクリーン上の蛍光体層は、暗視システムのアイピースに表示されるような低照度レベルの画像を複製する可視光の画像を生成する。
【0004】
MCPは、平行方向に一緒に融合された非常に小さな円筒管又はガラス繊維の束から形成できる。その後、束がスライスされてMCPが形成され得る。そのため、ガラス繊維の束は、その長さがMCPの厚さに沿って概して配置されている。したがって、MCPは、MCPの入力面と出力面との間に非常に多くの中空管又はマイクロチャネルを含み得る。各チャネルは、MCPの入力面と出力面との間で電子通路を形成できる。
【0005】
多くの場合、各管は、MCPの平坦な入力面及び出力面の法線に対してわずかに角度を有する。例えば、各チャネルの中心軸は、MCPの平坦な入力及び面の法線に対してチャネルバイアス角度(CBA)でバイアスすることができ、CBAは通常、法線から5°~16°である。CBAは、MCP入力面に対して垂直なチャネルに入る電子がチャネル壁
(又は弓状の側面)に当たることを確かにし、イメージインテンシファイアの動作の間に生じる正イオンが損傷を引き起こし得る光電陰極に移動しないようにするのに役立つ。チャネルの中心軸を囲むチャネル壁又は弓状の側面の物理的特性は、一般に、1つの高エネルギー電子によって側面が接触される毎に複数の電子が放出されるようなものである。チャネルの中心軸の周りに湾曲するチャネル側面の材料は、1より大きい電子放出率を生成するための高い二次電子放出係数を有する。
【0006】
MCPの入力及び出力面には、連続した金属接点がある。MCPの入力面上の入力金属接点は、MCPの出力面上の出力金属接点とは異なる電圧にバイアスされていることが好ましい。入力面に適用されるコンタクト金属(contact metal)は、しばしば入力電極と呼ばれるのに対して、出力面にわたって適用されるコンタクト金属は、しばしば出力電極と呼ばれる。入力電極及び出力電極は、各チャネルを通して電場を生成するために電圧バイアスされる。電場は、入力チャネル開口で生成された二次電子がMCPを通ってアノードの方に引き寄せられる。各チャネルにわたる静電場は、各チャネルの長さに沿って二次電子を増加させ続けるか又はカスケードさせ、カスケードされた電子は、他の静電場の影響下でMCPの個々のチャネルから出て、蛍光体で覆われたスクリーン陽極上に増殖した電子をさらに加速させる。チャネルから放出された電子の数は、他のチャネルから放出された電子の数と平均化され、MCPの全体的な増幅又は増大を生み出す。
【0007】
MCPの固有の問題の1つは、光電陰極から放出された光電子が、わずかに角張ったチャネルの1つ内に入らず、代わりにチャネル開口間の入力面領域に影響を与え得ることである。チャネル開口間の領域はMCPの入力面上にあるコンタクト金属を含むため、一部の電子がその領域にぶつかって、そこから望ましくない電子の散乱又は跳ね返りが生じる。これは画像の忠実度の損失を引き起こし得るが、より深刻なのは、これらの電子の多くが吸収されて増幅プロセスに参加できなくなるため、MCPの全体的なSNRが低下する。光電陰極からMCPに衝突する電子は「一次電子」と呼ばれる。一次電子は、MCPに最初に衝突する電子又は光電子である。一次電子がMCPに、より具体的にはMCPの入力面近くのチャネル開口の壁又は側面に衝突(strike)すると、それらは「第1の衝突電子(first strike electrons)」と呼ばれる一群の二次電子を生成する。したがって、チャネルに入ってチャネルの壁に衝突する一次電子は、その衝撃から二次電子を放出する。一次電子の衝撃によって生成される二次電子の数は「第1の衝突の効率(first strike efficiency)」と呼ばれる。
【0008】
上の例では、チャネル開口の間の領域から散乱した一次電子は、光電陰極の原点の適切な位置と整列していない別のチャネルに入り得る。開口の間の領域から生じる第1の衝突電子がバイアス下で跳ね返るか又は散乱して近くの別のチャネルに入ることにより、MCPの出力でハロー効果が引き起こされ得る。近くのチャネル開口に送られた散乱した第1の衝突電子は、イメージインテンシファイアによって生成される画像を視覚的に歪めることによって、全体的なイメージの忠実度も低下させる。他の例では、誤った電子は、開口間のMCPの入力面上のコンタクト金属によって単に吸収され、検出器陽極によって生成される画像又は信号の一部を生成するために増幅されず、SNRが低下する。
【0009】
この課題に対する1つの解決策はチャネルの直径を大きくすることである。各チャネルの周りにエッチングバリアを用いることで、各チャネルの直径を大きくすることができるため、チャネル開口間の面積に対するチャネルの全開口面積の比率を改善できる。この技術により、理論的なOARが65%を超えるMCPを生成できる。しかしながら、OARを高めることで、電子がチャネルに入ってSNRイメージ倍増を改善する確率が高まる一方で、チャネル開口間にある比較的薄い残りクラッドがMCPの全体的な構造的完全性を低下させる。
【0010】
OAR及びSNRに理論的制限を有する従来のMCPに加えて、MCPの入力面上のコンタクト金属もSNR及び利得に悪影響を及ぼし得る。チャネルの入力側開口の内部に通常延びるコンタクト金属に一次電子が衝突すると、二次電子が抑制され、第1の衝突電子が生成されない。その側にコンタクト金属を含まないチャネル開口の典型的な側は1よりも大きい電子放出係数を有する。しかしながら、MCPの入力面上のコンタクト金属も入力側チャネル開口内に延び得るため、一次電子は、電子放出係数が1よりはるかに小さいコンタクト金属に衝突し得る。通常、コンタクト金属の電子放出率は約0.8であるため、入力側チャネル開口の内壁でコンタクト金属に衝突する電子の約20%は、コンタクト金属コーティングを含まないチャネル内のはるかに高い電子放出係数に対して直ちに失われる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記で概要を説明した課題の大半は、イメージ増強管及びMCPを有する改善された暗視システムと、その製造方法とによって解決される。MCPの構造的完全性及び製造歩留まりに悪影響を及ぼすことなく、OARを80%よりも高めるためのチャネル開口形成の改善が可能である。MCPチャネル開口の改善は、各開口上にコンタクト金属を選択的に形成して各チャネルにわたって適切な静電場を維持しながら、一次電子の衝突から生成される第1の衝突電子を増やすことによって行われる。各チャネルは、MCPの入力及び出力面に対してCBAでバイアスさせることができる。また、各チャネルの開口を先細にすることもできる。各チャネル開口の先細形状の側壁面は、入力面での開口間の面積が最も小さい大きくされた先細開口により、一次電子の大半を受け取る入口部を定義する。チャネル開口にあるMCPの反対側の出力面も、入力側の先細チャネル開口からチャネルを通って出力側に静電界を生成するために、電圧源に連結されたコンタクト金属コーティングを含む。それにより、コンタクト金属は、通常、チャネル直径(D)の3/4を超えない距離だけチャネル内に部分的に入るように入力チャネル開口の片側のみに選択的に適用される。DはMCPの表面で測定できるか又は先細になっている場合は、チャネルの先細部分を超えて測定される。
【0012】
MCP入力面の平面の法線に対してCBAで各チャネルをバイアスさせ、入力面でチャネル開口を先細にすることにより、一次電子を受け取るために利用できる面がより大きくなる。したがって、OARの増加が利用でき、MCPのSNR及び利得も増加する。入力面におけるチャネル開口の一次電子衝突側又はチャネル開口の「シャワー(showered)」側とは反対のチャネル開口の「遮蔽(shaded)」側にコンタクト金属を配置することにより、より多くの第1の衝突電子を生成できる。これは、チャネル開口がバイアスされているため、一次電子は本質的にチャネル開口の遮蔽側ではなくシャワー側に接触することによるものである。MCPの入力面に漏斗状のチャネル開口を形成するためにチャネル開口を先細にすると共に、各チャネル開口の遮蔽領域にのみコンタクトメタルを配置することにより、一次電子及び第1の衝突電子が吸収されないようにすることができる。MCPの改善された性能は、暗視システム内の改善されたイメージ増強管をもたらす。
【0013】
漏斗状のチャネル開口を、その開口の選択された遮蔽側にのみに配置されるコンタクト金属と組み合わせることの重要な特徴は、コンタクト金属が蒸着されると、テーパ状の開口と反対側からの蒸着角度により、チャネル開口の片側でより多くの表面積が利用可能になることである。改善された漏斗状と、チャネル内へのメタライゼーション深さを選択することと、弓状の遮蔽側の周囲のみに円周方向にメタライゼーションを選択することとの組み合わせは、改善されたMCP性能のためにコンタクト金属の配置を最適化できるという主要な利点を与える。したがって、MCPの入力面上にコンタクト金属を生成するために用いられるメタライゼーションは、複数のチャネル開口のそれぞれの内に異なる深さで、チャネル開口のそれぞれの周りで異なる円周距離で且つチャネル開口のそれぞれの遮蔽側のみに選択的に配置できる。
【0014】
本開示の少なくとも1つの例によれば、暗視システムが提供される。暗視システムは、レンズとアイピースとの間に配置されるイメージインテンシファイアを含むことができる。イメージ増強管は、光電陰極と、蛍光体被覆陽極とを含むことができる。光電陰極と陽極との間にMCPがある。MCPは、光電陰極と蛍光体被覆陽極との間で離隔された配置され、離隔された複数のチャネル開口を含む。チャネル開口は漏斗状であり、MCP入力面で光電陰極に面し、光電陰極からの入射電子を受け取る。コンタクト金属は、遊星蒸着システムを介してチャネル開口の第1の側、とりわけ、複数の平行な離隔されたチャネル開口のそれぞれの遮蔽側のみに適用される。
【0015】
MCPの面におけるチャネル開口の第1の側(又は遮蔽側)は、複数のチャネル開口のそれぞれの周りの円周距離の1/2以下である。各チャネル開口の第2の側は、第1の側と半径方向に反対にあり、各開口の周りの円周距離の1/2以下であることが好ましい。コンタクト金属は好ましくは、チャネル開口の第2の側(又はシャワー側)から生成された第1の衝突電子を引き寄せる。第1の側は、チャネル開口の入力側の内面のまわりの1/2以下で円周方向に選択的に配置されたコンタクト金属を含むことができる。したがって、第1の側及び第2の側は弓状パターンで内壁の周りに延び、それぞれは互いに対して反対側にあり、各チャネルの中心軸から等距離である。コンタクト金属を含む第1の側は、遊星蒸着システムの配置に応じて、各チャネル開口内に選択可能な距離を延ばすことができる。
【0016】
本開示の別の例によれば、MCP上にコンタクト金属を蒸着するためのシステムが提供される。本システムは、コンタクト金属の蒸着源と、蒸着源から離隔されたプラッタとを含む。プラッタは、プラッタの中心において、プラッタの実質的に平坦な対向面を通って垂直に延びるプラッタ中心軸を有する。プラッタは複数のMCPを保持し、蒸着源を周回する(又は周りを回る)傾斜位置で保持されながら、自身のプラッタ中心軸の周りを回転するように構成されている。マスクは、プラッタと蒸着源との間に配置されている。マスクは、MCPを含むプラッタの調節可能な可変領域を蒸着源に露出する調節可能なマスク開口を含む。重要なことに、マスクは回転プラッタに対して固定されているため、マスク開口も回転プラッタ及びその上に取り付けられたMCPに対して固定されている。
【0017】
MCP、とりわけ、各MCPのチャネル開口はバイアス方向でプラッタに取り付けられている。各MCPのチャネル開口はCBA、とりわけ、CBAに沿ったベクトルが各チャネル開口からそれぞれのチャネル中心軸に沿ってプラッタ中心軸に向かって延びるように配置されている。MCPが保持されているプラッタの平面は垂直軸から傾斜されている。プラッタは、第1の軸に対して第1の角度φ1で傾斜することができる。1つの例によれば、第1の軸は垂直軸であり得る。回転可能なプラッタは傾斜位置で保持され、さらに、第2の軸に対して第2の角度φ2で蒸着源の周りを回転するように構成されている。1つの例によれば、第2の軸は水平軸であり得る。
【0018】
別の例によれば、チャネル開口は漏斗状のチャネル開口であり得る。漏斗状のチャネル開口の先細の第1及び第2の側は、入力面からチャネル内に第1の距離延びる。コンタクト金属は電気的にバイアスされるように構成され、先細の第1の側面のみに沿って直径(D)の3/4未満である第1の距離延びる。チャネルの直径(D)は、先細又は漏斗距離を超えてチャネルのさらに下方で測定される。
【0019】
本開示のさらに別の例によれば、MCPのチャネルにコンタクト金属を選択的に蒸着する方法が提供される。本方法はMCPをプラッタ上に固定することを含む。次に、コンタクト金属の蒸着源に対してプラッタを傾けながら、自身のプラッタ中心軸を中心にプラッタを回転させることができる。少なくとも1つのMCPを含む回転及び傾斜したプラッタは、MCPが固定され、回転及び周回するプラッタの間にマスクを維持しながら、蒸着源の周りを回転(又は周回)される。それ自身のプラッタ中心軸の周りを回転し、蒸着源の周りを回転又は周回するプラッタは、遊星蒸着方法論を実現する。マスクは回転プラッタに対して固定され、具体的に、マスク内の開口は、プラッタ上の各MCPのチャネル開口を蒸着源に選択的に露出するために回転プラッタに対して固定されている。
【0020】
別の例によれば、各チャネルのチャネル中心軸は、対応するMCPがプラッタ上に取り付けられている場合、プラッタ中心軸の方を指すベクトルに沿ってチャネルバイアス角で延びるように配置される。各チャネル開口のCBAがプラッタの中心の方を向くように各MCPを配置することで、蒸着源が作動された場合に、マスク開口を介してチャネル開口の第1の側のみにコンタクト金属を蒸着できる。異なる第1及び第2の角度で蒸着源に対してプラッタを傾斜させ回転させることで、遊星蒸着システム及び方法は、チャネル側壁内に異なる距離でコンタクト金属を蒸着できる。マスク開口をくさび形から半円形に変化させることで、遊星蒸着システム及び方法は、チャネル側壁の周りを異なる円周距離で、具体的には第1の又は遮蔽側の周りを異なる円周距離でコンタクト金属を蒸着できる。
【0021】
別の例によれば、本方法は、MCPをプラッタに固定する前に、チャネル開口のそれぞれのために漏斗状のチャネル開口を形成することをさらに提供する。ガラスコアは、それぞれをガラスクラッドで取り囲むことにより形成される。次に、ガラスコアと周囲のガラスクラッドとの間の境界で、ガラスクラッドがプレート内に第1の距離エッチングされる。次に、ガラスコアをエッチングし、残りのガラスクラッドから完全に取り除いて、漏斗状の複数の離隔されたチャネルが形成される。次に、漏斗状の複数の離隔されたチャネルの第1の側のみに沿って、複数の離隔されたチャネルのそれぞれの1/2を超えない範囲で半径方向にコンタクト金属が形成される。第1の側にあるコンタクト金属は、各チャネルの中心軸の周りで、先細の漏斗状の開口に沿って各チャネルに下方に好ましくは、離隔されたチャネルのそれぞれの中心軸の周りの距離の1/2未満で弓形のパターンで形成される。離隔されたチャネルのそれぞれは、一次電子が光電陰極からMCP入力面に到達する法線に対してCBAで互いに平行である。重要なことは、CBAのため且つ開口を漏斗状にでき、チャネル開口の遮蔽側又は第1の側で、より大きなサイズのコンタクト金属で先細になっているため、先細のチャネル開口の第2の側又はシャワー側は、全体的なMCP性能を高めるために、より大きな第1の衝突電子を生成する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
本開示の例は、添付図面に関連して以下の詳細な説明を読んだ場合に最も良く理解される。一般的な慣行に従って、図面の様々な特徴は縮尺通りに描かれていないか又は部分的な斜視図でのみ示されている。様々な実施形態の寸法は、明確にするために任意に拡大又は縮小して示されている。同様の参照符号は、図面内の同様の要素を表すために用いられる。図面には下記の特徴及び要素が含まれ、次の各図面を参照する。
図1図1は、MCPを有するイメージ増強管を利用した暗視システムの部分ブロック図である。
図2図2は、図1の区画2-2に沿ったMCPの部分上面図である。
図3図3は、図2の区画3-3に沿った部分断面図であり、CBAで整列された各チャネル中心軸と、各チャネル開口の近くの各チャネル壁の第1のシャワー衝突側に一次電子が衝突する第1の衝突角とを示す。
図4図4は、コンタクト金属が存在しない漏斗状のチャネル開口のシャワー側である第2の側と半径方向の反対側にある例示の漏斗状のチャネル開口の遮蔽側である第1の側のみに有利に形成されたコンタクト金属の部分断面図である。
図5図5は、コンタクト金属と、チャネル開口の第1の側に選択的且つ調整可能に形成されたコンタクト金属の深さ及び円周方向寸法とを示す前面図である。
図6図6は、MCPチャネルの漏斗状の開口の初期製造におけるガラスコア及びクラッドの部分断面図である。
図7図7は、コアとクラッドとの境界でのガラスクラッドの選択的エッチング後の図6の区画の部分断面図である。
図8図8は、ガラスコアをエッチングしてクラッドからコアを完全に取り除いた後の図7の区画の部分断面図である。
図9図9は、漏斗状の開口の遮蔽側である第1の側に沿ってコンタクト金属を形成した後の図8の区画の部分断面図である。
図10図10は、コンタクト金属の蒸着源を取り囲む複数のプラッタ上に取り付けられたMCPの入力面にコンタクト金属を選択的に蒸着するための遊星蒸着システム、具体的には、チャネル開口の遮蔽側である第1の側にコンタクト金属を選択的に蒸着するための蒸着システムの上面図である。
図11a図11aは、調整可能なマスク開口、とりわけ、半円状のマスク開口、くさび形のマスク開口及び反対側のくさび形のマスク開口の上面図である。
図11b図11bは、調整可能なマスク開口、とりわけ、半円状のマスク開口、くさび形のマスク開口及び反対側のくさび形のマスク開口の上面図である。
図11c図11cは、調整可能なマスク開口、とりわけ、半円状のマスク開口、くさび形のマスク開口及び反対側のくさび形のマスク開口の上面図である。
図12図12は、プラッタの面に取り付けられた複数のMCPと、プラッタの中心軸の方に向けられたそれらのベクトルCBAの上面図である。
図13図13は、プラッタの中心軸の方に向けられた各チャネルのCBAを示す図12の部分13-13に沿ったMCPの部分断面図である。
図14図14は、蒸着源に面するか又は蒸着源の見通し線に入る斜め又は遮蔽側である第1の側のチャネル開口にコンタクト金属が得られる、傾斜し、回転し、周回するMCP搭載プラッタの間に配置された開口を有するマスクを示す遊星蒸着システムの側面図である。
図15図15は、マスク開口の調整可能なサイズ及び調整可能な傾斜角及び軌道角に応じて、複数のチャネル開口のそれぞれの遮蔽側である第1の側のみを蒸着源に露出するためにマスク開口の下で回転するMCPが取り付けられたプラッタと共に蒸着源から見た上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下の説明は、様々な例示の実施形態に関する。しかしながら、当業者であれば、本願で開示する例は広範に適用可能であり、任意の実施形態の説明は、その実施形態を例示することのみを意図しており、特許請求の範囲を含む開示の範囲がその実施形態に限定されることを示唆することを意図していないことを理解するであろう。
【0024】
上述のように、図面は必ずしも縮尺通りでない。本願の特定の特徴及び構成要素は、縮尺が誇張されているか又はある程度図式化された形で示されることがあり、従来の要素の一部の詳細は、明確さ及び簡潔さのために示されないことがある。
【0025】
以下の説明及び特許請求の範囲において、「含む(including)」及び「含む(comprising)」という用語はオープンエンドな意味合いで用いれているため、「限定されないが、含む」を意味すると解釈すべきである。「連結」という用語も、間接的又は直接的な接続のいずれかを意味することを意図している。そのため、第1の装置が第2の装置に連結されている場合、その接続は、2つの装置の直接接続を介したものであり得るか又は他の装置、コンポーネント、ノード及び接続を介して確立された間接接続を介したものであり得る。加えて、本願で用いる「軸」及び「軸方向に」という用語は、概して、所与の軸(例えば、本体、開口、チャネル、出口又はポートのx、y若しくはz方向又は中心軸)に沿うか又は平行であることを意味するのに対して、「半径」及び「半径方向」は、概して、所与の軸に対して垂直であることを意味する。例えば、軸方向距離は中心軸に沿って測定された距離を意味し、半径方向距離は、中心軸に対して垂直に測定された距離を意味する。半径方向に反対にとは中心軸の反対側にあり、中心軸からの軸方向距離の部分的に周囲にあり且つ離隔された弓形パターンにあることを意味する。
【0026】
次に図1を参照して、暗視システム12の部分ブロック図を示す。暗視システム12は、一対のレンズ16及び18の間に配置されたイメージ増強管14を含む。レンズ16は、物体15からの光子をイメージ増強管14に集中させる焦点レンズであり得る。レンズ18は、イメージ増強管14から生成された出射光子をユーザの眼に向けるアイピースであり得る。暗視システム12は、例えば、アイピース18はゴーグルであってもよく、アイピース18は2つのアイピースを含むことができる。
【0027】
イメージインテンシファイア14は真空管であり、第三世代(GaAs光電陰極)又は第二世代(多アルカリ光電陰極)イメージインテンシファイア繊維に基づくものであり、かなりよく知られている。イメージインテン増強管14内には光電陰極20がある。光電陰極20は、ガラス製のフェイスプレートを含み、フェイスプレートの後ろ側の面にはGaAsがコーティングされている。GaP、GaIn、AsP、InAsP、InGaAs等を他のIII-V族材料を用いることができる。あるいは、光電陰極20はバイアルカリ光電陰極として知られ得る。光電陰極20の光放出性半導体材料は、イメージ増強管14の光子受容面に到着する光子を吸収する。光電陰極20によって吸収される光子は、半導体材料のキャリア密度を増加させ、それにより、材料に光電陰極20の後ろ側の電子放出面から放出される電子21の光電流を発生させる。
【0028】
1つの例によれば、光電陰極20は、非可視又は可視の低光源を変換する。非可視光源は、近赤外又は短波赤外を可視にできる。電子倍増管22は電子21を受信し、それらの電子を倍増して倍増電子23を生成する。一般的な電子倍増管はマイクロチャネルプレート(MCP)を含む。MCP22は、通常、それぞれが外側のガラスクラッドで覆われたコアを有する複数のガラス繊維を介して形成される。複数のコアのそれぞれは取り外すことができるため、MCPの入力面から出力面への間隔をあけた複数のマイクロチャネ又は「チャネル」が残る。各チャネル開口の内壁又は側面は、二次電子のシャワーを生成するために高い電子放射率係数を有する。チャネルは互いに離隔され、入力平面又は入力面から、倍増された電子が放出される出力平面又は出力面に延びる。二次放出電子は、初期の低レベル画像に応答して光電陰極によって生成された電子を増幅する。電子のシャワーは、光電陰極によって生成されたものよりも大きな強度で生成されるため、MCP22は増幅及び利得を有する。
【0029】
電圧源は、MCP22を介して光電陰極20からMCP22へ、また、MCP22の後ろ側の放射面からアノード24に電子を引き寄せるために、イメージインテンシファイア14の様々な要素の間に適用できる。電圧源は、イメージインテンシファイア14を介して一次電子及び二次電子の両方を引き寄せて、蛍光体で覆われたスクリーン又はアノード24に印加される増殖電子に所望のエネルギーを与える静電界を生成する。蛍光体で覆われたスクリーンは、光電陰極20から開始される倍増された電子パターンを、ターゲット15から最初に受信した低レベル画像の可視光画像に変換する。放出された光子は、光ファイバの束等の光学系によってイメージインテンシファイア14からアイピース18に向けられる。アイピース18を通して見た場合、ユーザは、MCP22の増幅された利得及び電子増倍の使用を通じて、ターゲット画像15から反射又は生成された低レベルの可視又は非可視光子を識別できる。
【0030】
次に図2は、MCP22の光電陰極20から見た場合の上面図を示す。具体的には、図1の区画2-2に沿った上面図を示す。複数のチャネルがMCP22にわたって完全に貫通している。各チャネル26は、MCP22の入力及び出力側に隣接する開口を含む。MCP22は、光電陰極側から図2に示しているため、入力側又は入力面は、図1に示すように、光電陰極20から一次電子21を受け取る電子受け取り側である。各チャネル26は、その入力及び出力側開口と共にチャネル及び開口の間で同じ直径であることが好ましい。したがって、チャネル26の寸法はMCP22にわたって一貫していることが好ましい。チャネル26間のピッチ又は間隔も一貫しているべきである。チャネルの側部の組成、製造、エッチング及びクリーニングにおける欠陥により、一部のチャネル26は他よりも直径が大きいことがあり、MCP22の出力面で倍増された電子の放出が不均一になり得る。さらに、そのような欠陥はチャネルの側部又は壁のエッチングスルーを生じさせ、ガラス表面の点が放出点となる。開口間の空間に対する開口面積の比は、可能な限り高い開口面積比(OAR)を有することが望ましい。従来の非漏斗状のチャネルは、MCPに必要な全体的な構造強度を維持するために開口間に十分なチャネル壁材料を保持する必要があるため、OARは70%未満である。
【0031】
次に、図3は、図2の平面3-3の断面図を示す。図3は、MCP22のハニカム構造内の複数のチャネル26をより詳細に示す。チャネル26は最適なCBAで適切に傾斜又はバイアスされていれば、チャネルはかなり信頼性の高い電子倍増管を提供する。入力面にわたって適用されるコンタクト金属30に供給される電圧源Vと出力面にわたって連続的に適用されるコンタクト金属32との間に電場が形成される。したがって、チャネル26はMCP22の入力面と出力面との間に存在する開口であり、二次放出を抑制するか又は光電陰極の正イオン衝撃を生じさせ得る残留不純物を除去するために洗浄することができる。各チャネル26を通る加速静電場は、入力面及び出力面にコンタクト金属を適用し、コンタクト金属を電圧供給Vでバイアスすることによって生じる。コンタクト金属はインコネル又はニクロム等の良好な導電性材料を含むことができる。コンタクト金属30及び32は部分的にチャネル内に延び得る。傾斜角又はCBAはチャネル26の中心軸に沿って取られ、チャネルが互いに平行であるため、各チャネル26にわたって実質的に同一である。CBAは、MCP平面入力面の法線に対して5°~16°の間であり得る。
【0032】
光電陰極20(図1)から送られた電子21は、第1の入射角(FSA)で各チャネル26の側面に衝突する。本願では、光電陰極20から送られた電子は一次電子21と呼ぶ。二次電子は一次電子21の第1の衝突から生じるため、本願では、一次電子21の第1の衝突から生じる二次電子を第1の衝突電子と呼ぶ。第1の衝突電子は一次電子の第1の衝突から生じる電子のみである。第1の衝突電子36は二次電子に加えて一次電子も多分含む。各チャネルのさらに下で二次電子から生じる後続の衝突は二次電子衝突であるが、第1の衝突電子とは呼ばれない。何故なら、第1の衝突電子は、光電陰極からの一次電子の第1の衝突によって生成された電子のためのみに確保されているからである。第1の衝突電子からの又はその後に生成された二次衝突電子からの二次電子は、各チャネル26の下流でバイアスされ、各チャネル26の下流では、三次等の衝突電子がそれらのチャネルの軸方向中心を取り囲む対向する弓状表面上で生じて、倍増効果をさらに高める。各チャネルの入力面から出力面にかけて複数回の衝突が起こり、利得を伴う倍増された電子が生じる得るが、一次電子21のみの最初の衝突は第1の衝突電子36を生成する。各チャネル26は、チャネルバイアス角に対する第1の衝突角FSAで一次電子21の第1の衝突から第1の衝突電子36を生成することが理解されよう。FSAはMCP22の入力面に対して垂直である。第1の衝突角はMCP22の入力面に対して垂直であるが、CBAに対して鋭角である。したがって、CBAは、MCP入力面の法線に対して5~16°であることが好ましく、5~8°であることがより好ましい。
【0033】
MCPの全体的な電子倍増、増幅及び利得の大部分は、入力イベントに応答して生成される電子の平均数に依存する。入力イベントに応答して生成されるこれらの電子又は一次電子21入力イベントに応答して生成される第1の衝突電子36は、MCP22の全体的な性能に大きな影響を与える。後述するように、図4を参照して、第1の衝突電子36の生成を増やす一つの方法は、第1の衝突電子が通常生成されない領域にコンタクト金属を選択的に適用し、第1の衝突電子が生成される表面積を増やすことである。現在市販されているMCP22の厚さは通常20ミル以下である。チャネル26の断面直径は通常3~8ミクロンである。
【0034】
コアのピッチ又は直径のいずれかに不整合があると、他のチャネルよりも大きいチャネルの割合が生じ、大きくなったこれらのチャネルで過度に大きな電子放出点が形成され得る。したがって、直径がより大きいチャネルで第1の衝突電子が形成される機会が多い場所で電子放出強度値が大きくなる。しかしながら、より大きな強度は、蛍光体被覆光ファイバによって読み取られる非常に少数のピクセルで局在化される。チャネルの直径が一貫しない場合に、増大し、局在化された強度の別の原因は、入力側コンタクト金属30に衝突する第1の衝突電子がコンタクト金属から反射するか又は跳ね返ってより大きなチャネルに又は隣接チャネルのエッチスルーによって引き起こされるチャネルに入るより大きな機会がもたらされる。不均一で周期的に鋭い電子放出点は、クラッドのエッチスルーを介して一緒に結合された隣接チャネルによって大きくなったチャネルから形成される。MCP22のOAR、SNR及びMTFを大きくする1つの技術は、チャネル開口26を漏斗状の又は先細の開口に形成することである。
【0035】
第1の衝突角(FSA)の差は、チャネル開口が漏斗状(先細)であるか又は先細でないかに依存し得る。第1の衝突角はチャネルバイアス角に対して相対的であり、第1の衝突角は通常MCPの入力面に対して垂直であるのに対して、CBAは、各平行に離隔されたチャネルが延びる中心軸に沿った角度である。各チャネルはCBAでバイアスされているため、CBAも入力面の法線に対して相対的であると考えられる。第1の衝突電子の数の増加は、チャネル開口の側が非先細ではなく先細の場合に、チャネルのシャワー側に衝突する一次電子の数が増加するためである。チャネルのシャワー側を法線方向の方に先細にさせることにより、第1の衝突電子がより多く生成され、それによりMCPの効率が高まる。シャワー側表面の表面積を増やすことでMCPの性能が高まるが、その面上のコンタクト金属の配置は悪影響を及ぼし得る。したがって、漏斗状のチャネル開口を、図4に示すように、チャネル開口のシャワー面ではなく遮蔽面にある選択的に配置されたコンタクト金属と組み合わせることが有益である。
【0036】
図4は、MCP22の入力面又は電子受信面上及びチャネル開口26の遮蔽側である第1の側にのみ形成されたコンタクト金属30を示す。チャネル開口の遮蔽側は、チャネル26の漏斗状の開口と垂直な見通し線の関係にない。初期電子衝撃(すなわち、一次電子21衝撃)の領域では、チャネル26の内面は、コンタクト金属30の低電子放射率導電材料で意図的に被覆されない高い二次電子放射率係数を有する。チャネル26の電子増幅は、二次電子の第2又は第3の衝突が起きるまで遅らされるのではなく、チャネル26のシャワー側である第2の側への衝撃に際して直ちに始まる。一次電子がシャワー側の金属化材料に接触すると、金属は一次電子を吸収し、十分な第1の衝突電子が生成されないため、チャネル26内での増幅が少なくなる。コンタクト金属は各チャネル26の遮蔽側又は第1の側のみに意図的に配置される。1つの例によれば、コンタクト金属30は、チャネル開口が先細であるかどうかに関わらず、チャネルの側面に沿って3/4D未満の距離チャネル開口に意図的に配置され、距離Dは、チャネル開口が先細である場合、先細又は漏斗がもはや存在しなくなった後のチャネルの直径である。
【0037】
(先細であるか否かにかかわらず)開口の遮蔽側である第1の側にのみMCPの入力面にコンタクト金属30を形成することにより、静電場42を十分な生成を可能にし、静電場42は、本質的に、シャワー側である第2の側から生成された第1の衝突電子36をチャネル26内へとさらに下方に効率的に押すか又は静電的にバイアスする。したがって、遮蔽側である第1の側にのみコンタクト金属30を慎重且つ選択的に配置することにより、第1の衝突効率が最大化され、有意な静電場42が生成され、各チャネルのさらに下方でより効果的な二次衝突電子が生成される。
【0038】
図5に記載されているように、図4の平面5-5に沿った表面領域は、チャネル26の第1の側にあるコンタクト金属を示す。チャネルの遮蔽側である第1の側のコンタクト金属30は、MCPの入力面から下方に3/4D以下の距離各チャネル内に延びる(開口が漏斗状の場合、漏斗状の開口を越えて測定)。
【0039】
次に、図6図8を参照して、MCPを製造する方法を示す。図示を容易にするために、形成されるべき図示のチャネルはチャネルバイアス角に沿ってバイアスされていない。しかしながら、チャネルは電子増幅及び利得を最大化するために適切なチャネルバイアス角でバイアスされ得ることが理解されよう。図6は、今後のMCPの両面に対して第1の角度で配置されたそれぞれのガラスクラッドによって取り囲まれた複数のガラスコアを示す。図面を簡潔にするために、それぞれが自身のガラスクラッド54によって取り囲まれた2つのガラスコア52のみを示す。コア52はアルカリ耐性の酸可溶性ガラスで作ることができるのに対して、クラッド54はアルカリ可溶性の酸耐性ガラスで作ることができる。
【0040】
図7を参照して、アルカリ材料のエッチング組成物(etched composition)は、クラッド54の一部、特にコア/クラッド界面を優先的にエッチングして、MCP入力面の入力プレート面に溝を生成することができる。各溝60は界面内で距離D延在する。コア/クラッド界面はガラス繊維が形成されるときに相当な機械的ストレスを受けるため、水酸化ナトリウム等の特定種類のエッチング組成物は、その領域における高い化学的及び機械的ストレスのために露出した界面を攻撃できる。各チャネルに漏斗状の開口を形成するために、界面領域は、コア52がまだある状態でチャネルの入力端及び出力端でのみ露出される。図面を簡素にするために、2つのチャネルのみについて、チャネル開口の入力面のみを示す。
【0041】
次に、図8に示すように、ガラスコア52は、例えば、酸ベースのエッチング組成物を用いた酸脱コアプロセスによってエッチングされることが好ましい。コア52が取り除かれた後、図8に示すように、中空チャネル26の開口は入力面から出力面にかけてMCPを完全に貫通し、各チャネル26は少なくとも入力面に漏斗状の開口を有する。したがって、漏斗状の開口は、各チャネル内に距離D延びる先細の側面を有する。Dは、漏斗状の開口からチャネルのさらに奥の点で測定されたチャネル26の直径と実質的に同じである。
【0042】
次に図9を参照して、コンタクト金属30は、複数の離隔されたチャネル開口26の遮蔽側である第1の側のみに沿って示される。1つの例によれば、チャネル開口26は、図9に示すように漏斗状であり得る。コンタクト金属30は、チャネル開口の第1の側のそれぞれに、開口の側面に沿って下方に3/4D以下の距離開口内に形成されている。図9は、図面を簡単にするためにチャネルを垂直に示しているが、チャネル26はそれにもかかわらず、CBAでバイアスされていることが理解されよう。一次電子21は、チャネル開口の第2の又はシャワー側31aにのみ衝突する。一次電子21は、開口から開口内に第1の距離延びるシャワー側31aに沿って衝突する。チャネル開口が漏斗状の場合、第1の距離は、先細になった漏斗状の部分に対応し得る。一次電子21は、各開口の第2の側31aに、例えば、その開口の先細部分でのみ、具体的にコンタクト金属30が形成されている第1の側の半径方向の反対側に衝突する。したがって、第1の衝突電子36は、光電陰極に面するマイクロチャネルプレート入力面の法線により近いテーパ角度で、開口の最も効率的な幾何学的位置で有益に得られる。
【0043】
コンタクト金属の蒸着が蒸着源と、コンタクト金属30が蒸着される露出した第1の側31bとの間で見通し線62に沿って行われるように蒸着窓が現れる。コンタクト金属30は、図10図15を参照してさらに説明する遊星蒸着システム及び方法を用いて蒸着される。
【0044】
次に図10を参照して、遊星蒸着システム70の上面図を示す。蒸着システム70は、電子ビーム蒸着源74を取り囲む一連のプラッタ72を利用する。蒸着源74(又は他の見通し線の薄膜蒸着源)は、インコネル又はニクロム等のコンタクト金属の原料物質を真空蒸着するために、ターゲット物体にコンタクト金属の蒸気粒子を向ける。ターゲット物体は各プラッタ72の面に取り付けられた複数のMCP22である。MCP22と接触すると、供給されたコンタクト金属はその後凝縮して固体状態に戻る。MCP22は対応するプラッタ72に取り付けられ、各プラッタ72は、その中心軸78を中心に回転76するように構成されている。各プラッタ72は、リング固定具80に取り付けられている間に、そのプラッタ中心軸76を中心に回転するように構成されている。リング固定具80は、好ましくは蒸着源74が存在するその中心軸を中心に回転82する。蒸着システム70は、その中心軸78を中心に回転し、さらにリング固定具80の軸中心に配置された蒸着源74の周りを回転する回転プラッタ72を含む。リング固定具80の軸中心に配置された蒸着源74は、リング固定具平面から固定具80の中心軸に上方又は下方に沿うことができる。したがって、遊星蒸着システム70は、MCP22上に均一に且つMCP入力面に選択的に且つ入力面において各チャネル開口内に部分的にコンタクト金属を蒸着するためのシステムを含む。図面を簡潔且つ明瞭にするために、図10は、蒸着源74と各プラッタ72との間に構成されたマスクを示さない。しかしながら、図11はマスク等を示す。
【0045】
図11aは、マスク82aで部分的に覆われたプラッタ72の上面図である。マスク82aは、ターゲット材料上への原料物質の蒸着又は堆積をブロックする任意の材料を含む。マスク82aは、マスク82aに開口84aがある場合のみを除き、プラッタ72を覆う限り任意の形状とすることができる。マスク82aは、蒸着源74とプラッタ72との間に配置され、開口84aは固定されているのに対して、プラッタ72はそのプラッタ中心軸78を中心に回転76する。マスク82aは、蒸着配置制御を最大化するためにプラッタ72の可能な限り近くに配置されることが好ましく、この目標を達成するために、数インチ未満プラッタ72の前方にあることが好ましい。図11aでは、マスク開口84aが半円形として示されている。半円形の形状は、以下でさらに説明するように、各チャネル開口の遮蔽側である第1の側31bに、半円形、円弧状、円周方向の距離でコンタクト金属30を形成する。
【0046】
図11bもマスク82bで覆われたプラッタ72の上面図である。マスク82bはくさび形の開口84bを含む。くさび形は、遮蔽側である第1の側31bの周りの半円、円弧状、円周距離にコンタクト金属30を対応して形成する。第1の側31bの周りの円周距離はくさびの大きさに、とりわけ、開口84bの三角形の辺88aの長さに依存する。図11cは、より小さいくさび形の開口84cと、開口84cの三角形の辺88bの相応に短い長さとを示す。したがって、開口84cを有するマスク82cは、開口84bを有するマスク82bよりも第1の側31bの周りにより小さい円周距離を形成し、その円周距離は、半円形の開口84aを有するマスク82aよりも第1の側31bの周りの円周距離よりも確実に小さい。また、図11cに記載されているように、コンタクト金属を、場合によっては遮蔽側以外に、場合によってはその中心軸78を中心とするプラッタ72の回転毎に2回、多数の異なる方法で蒸着できることを示すために、2つの開口84cが設けられ得る。
【0047】
図12は、各プラッタ72の面に取り付けられた複数のMCP22の上面図である。部分的には、遮蔽側である第1の側31bのみへの蒸着を実現するために、各チャネルのCBA、特にCBAのベクトルは、プラッタ中心軸78に向けられて90(又はバイアスされて)いなければならない。MCP22を形成する各チャネルのコア及びクラッドは、同じ方向に延びる同じCBAベクトルで同時に生成されるため、各プラッタ上のMCPは、プラッタ72に取り付けられた各MCPの各チャネルのCBAが矢印90に示すように方向付けられるようにするために、各チャネル内に下方に見る各チャネルのCBAが配置されるように配置できる。
【0048】
図13は、プラッタ中心軸78の方に方向付けられた各チャネル26のCBAを示す、図12の部分13-13に沿ったMCPの部分断面図である。とりわけ、各MCPのチャネル開口は、それらがCBAでバイアスされるようにプラッタ72上に配置されている。CBAは、各チャネル中心軸に沿ってチャネル開口からプラッタ中心軸78の方に延びており、蒸着源74が作動させると、マスク開口84a、84b又は84cを介して、シャワーの第2の側31aではなく遮蔽側である第1の側31bでのみコンタクト金属30を受ける。簡潔性及び明確性のために、図13は2つのチャネル26と、それらのチャネル開口の対応する第1の側31b及び第2の側31aのみを示す。しかしながら、各MCPは1000以上のチャネルを含むことが理解されよう。
【0049】
図14は、開口84を有するマスク82が、MCPが取り付けられた、傾斜し、回転し、周回するプラッタ72の間に配置され、その結果、蒸着源74に面し且つその見通し線上にあるチャネル開口の斜線又は遮蔽側である第1の側31bにコンタクト金属30が蒸着される遊星蒸着システム70の部分側面図である。プラッタ72が回転するにつれて、マスク開口84の位置はMCPチャネル、とりわけチャネル開口に対して変化することに留意されたい。マスク開口84の量又は角度を変化させることにより、コンタクト金属30が第1の側31bに蒸着されるチャネル開口の周りの円周距離は、それに応じて変化する。図14は、コンタクト金属が各チャネル開口に蒸着できる深さのさらなる変化を示す。例えば、第1の軸94に対する第1の傾斜角度φ1を変更することにより、蒸着の深さを変化させることができる。第1の角度φ1を小さくすることにより、蒸着の深さを大きくすることができる。また、例えば、蒸着源74の周りの回転角度を、第2の軸96に対して第2の角度φ2に変化させることにより、蒸着の深さを変えることができる。第2の角度φ2を小さくすることにより、蒸着の深さを小さくすることができる。第1の軸94及び第2の軸96は互いに垂直であり得る。例えば、第1の軸94が垂直軸であり、第2の軸96が水平軸であり得る。第1の軸94に対する第1の傾斜角度φ1は0~15°であることが好ましく、第2の軸96に対する第2の回転又は軌道角度φ2は65~80°であることが好ましい。
【0050】
図15は、蒸着源74から見た上面図である。MCPが取り付けられたプラッタ72を鎖線で示し、マスク82、より具体的にはマスク82内の開口84の背後で回転する。開口84の量は、蒸着源74に露出された第1の側31bに沿って円周距離98を相応に変化させることで調整できる。リング固定具及びプラッタの両方が回転する遊星動作を用いることにより、第1の側31bにのみコンタクト金属30をより均一に蒸着できる。また、重要なことに、リング固定具に固定され且つリング固定具とともに回転し、プラッタの前方にとどまるが、プラッタと共にその自身の軸又はプラッタの中心軸を中心に回転しないマスク82を用いることで、第1の側31bの周りに円周方向にコンタクト金属が選択的に配置される。したがって、MCP電極は、マスク設計及び開口構成によって決定されるように、第1の側のチャネル壁に蒸着される。マスク開口は、チャネル開口へのコンタクト金属の完全に設定可能な円周方向の被覆及び位置を提供し、各MCPは同じ蒸着に曝されるため蒸着の均一性を提供し、任意の非回転方法と比較して、電極コンタクト金属伝導率の改善を提供する。したがって、遊星蒸着システム及び方法は、調整可能なマスクを介した回転コンタクト金属の蒸着によってもたらされる高い歩留まりと、高められたMCP SNR性能を組み合わせる。
【0051】
様々な例示の実施形態の構成及び配置は例示にすぎないことに注意することが重要である。本開示ではいくつかの実施形態のみを詳細に説明したが、本開示に触れた当業者は、本願に記載の主題の新規な教示及び利点から実質的に逸脱することなく、多くの変更(例えば、様々な要素のサイズ、寸法、構造、形状及び比率、パラメータの値、取り付け配置、材料の使用、色、向き等の変更)が可能であることを容易に理解するであろう。例えば、一体的に形成されたものとして示す要素は複数の部分又は要素から構成されてもよく、要素の位置は逆転されてもいいし、さもなければ変更されてもよく、個別の要素又は位置の性質又は数は修正又は変更されてもよい。任意のプロセス又は方法ステップの順序又はシーケンスは、代替的な実施形態に従って変更又は並び替えされて、もよい。加えて、当業者によって理解されるように、特定の実施形態からの特徴は他の実施形態からの特徴と組み合わせられ得る。本発明の範囲から逸脱することなく、様々な例示の実施形態の設計、動作条件及び配置に他の置換、修正、変更及び省略も行われ得る。
【0052】
本願で用いる「約」、「略」、「実質的に」、「一般的に」等の用語は、記載された値又は範囲の±10%を意味する。加えて、本願で用いる単数形の「a」、「an」及び「the」は、文脈上で別段明示がない限り複数形も含むことを意図する。「及び/又は」という用語は、列挙された関連する項目のうちの1つ以上の任意の及び全ての組み合わせを含む。例えば、「特徴」への言及は、そのような複数の「特徴」を含む。「X及び/又はY」の文脈で用いられる「及び/又は」という用語は、「X」、「Y」又は「X及びY」として解釈すべきである。
【0053】
詳細な説明、図面及び特許請求の範囲に記載の例示の実施形態は限定を意味するものではない。本願で提示する主題の精神又は範囲から逸脱することなく、他の実施形態を用いてもいいし、他の変更を加えてもよい。加えて、各実施形態の特定の態様は本開示の他の実施形態と併せて用いてもよく、それ故に当該技術分野で理解されるように、開示した実施形態が組み合わせられ得る。本願で一般的に説明し、図示した本開示の態様は、広範で多種多様な構成で配置、置換、結合、分離及び設計でき、それらの全てが本願で明示的に意図されることが容易に理解されよう。
【0054】
なお、様々な実施形態を説明するために本願で「例示」という用語を用いることは、可能性のある実施形態(そのような用語は、そのような実施形態が必ずしも特別であるか又は最上級の例であることを意味するものではない)の可能性のある例、表現及び/又は説明であることを示すことを意図する。また、本願で用いる「実質的に」という用語及び同様の用語は、本開示の主題が関連する当業者により許容される一般的な用法と調和した広い意味を有することを意図する。本開示に触れた当業者であれば、これらの用語は、記載及びクレームされた特定の特徴の範囲を、提供された正確な数値範囲に制限することなく説明できるようにすることを意図していることを理解すべきである。したがって、これらの用語は、記載及びクレームされた主題の実質的でないか又は取るに足らない(例えば、所与の角度又は他の値の±5%以内の)修正又は変更は、添付の特許請求の範囲に記載された発明の範囲内にあるとみなされることを示すものと解釈すべきである。値に関して用いられる「約」という用語は、関連する値の±5%を意味する。
【0055】
本願で用いられる「連結された」等の用語は、2つの部材が互いに直接又は間接的に連結されていることを意味する。そのような結合は固定(例えば、永久)又は可動(例えば、取り外し可能又は解除可能)である。そのような結合は、2つの部材又は2つの部材と追加の中間部材とが互いに一体的に単一の本体として形成されているか又は2つの部材又は2つの部材と追加の中間部材とが互いに取り付けられた状態で実現され得る。
【0056】
なお、本願の図は方法ステップの特定の順序及び構成を示し得るが、これらのステップの順序は図示されているものと異なり得ることを理解すべきである。例えば、2つ以上のステップは同時に又は部分的に同時に行われ得る。また、個別ステップとして行われる一部の方法ステップは組合され得るか、組み合わされたステップとして行われるステップは個別ステップに分離され得るか、特定のプロセスのシーケンスは逆にされ得るか又はさもなければ変更され得るか、個別プロセスの性質又は数は修正又は変更され得る。任意の要素又は装置の順序又はシーケンスは、代替的な実施形態に従って変更又は置換され得る。したがって、そのような変更の全ては、添付の特許請求の範囲に定義された本開示の範囲に含まれることを意図する。
【0057】
これ以上詳細に説明しなくても、当業者であれば、上記の説明を用いて本発明を最大限に利用することができると考えられる。本願で開示の例及び実施形態は例示にすぎず、いかなる意味においても本開示の範囲を限定するものではないと解釈すべきである。当業者であれば、説明した基礎となる原理から逸脱することなく上述の実施形態の詳細に変更が加えられ得ることが明らかであろう。すなわち、上記の説明で具体的に開示された実施形態の様々な変更及び改良は添付の特許請求の範囲内にある。例えば、説明した様々な実施形態の特徴の任意の適切な組み合わせが考えられる。
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【外国語明細書】