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特開2023-172960光干渉断層撮影で取得した測定データから補正された高さ信号を判断する方法及び関連する測定装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023172960
(43)【公開日】2023-12-06
(54)【発明の名称】光干渉断層撮影で取得した測定データから補正された高さ信号を判断する方法及び関連する測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/02 20060101AFI20231129BHJP
   B23K 26/046 20140101ALI20231129BHJP
   B23K 26/03 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
G01B11/02 G
B23K26/046
B23K26/03
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023085601
(22)【出願日】2023-05-24
(31)【優先権主張番号】10 2022 113 157.2
(32)【優先日】2022-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】523195267
【氏名又は名称】レスミュラー ラザーテヒニク ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 有一
(72)【発明者】
【氏名】エックハルト レスミュラー
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン トルケンブロート
【テーマコード(参考)】
2F065
4E168
【Fターム(参考)】
2F065AA24
2F065AA25
2F065FF51
2F065GG04
2F065JJ01
2F065JJ09
2F065LL13
2F065MM16
2F065MM26
2F065MM28
2F065PP03
2F065PP12
4E168BA00
4E168CA01
4E168CA15
4E168CB04
4E168CB08
4E168CB13
(57)【要約】      (修正有)
【課題】光干渉断層撮影で得られた測定データから補正された高さ信号を判断する方法を提供する。
【解決手段】測定データ(36)を取得するステップと、測定データを変換する第1の変換を実行するステップであって、バックグラウンド信号を対象とし、高さ信号(38)を取得するステップと、高さ信号のバックグラウンド成分を判断するステップと、バックグラウンド補償された高さ信号(40)を取得するステップと、バックグラウンド補償された高さ信号を逆変換を行い、補償された測定データ(42)を取得するステップと、オブジェクト信号に対して分散補償を行い、バックグラウンド補償された測定データ(43)を取得するステップと、分散補償されるとともにバックグラウンド補償された測定データを変換することを備える第2の変換を行い、高さ信号(44)を取得するステップと、を備える。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光干渉断層撮影で取得した測定データ(36)から補正された高さ信号(44)を判断する方法であって、
前記測定データ(36)は、サンプルアーム(24)に導かれたサンプル光と参照アーム(26)に導かれた参照光との干渉に基づき、前記サンプルアーム(24)及び前記参照アーム(26)は、分散が異なり、
前記測定データ(36)は、オブジェクト信号と、前記オブジェクト信号に重畳されたバックグラウンド信号と、を含み、前記オブジェクト信号及び前記バックグラウンド信号は、異なる分散を伴い、
前記測定データ(36)を取得するステップと、
前記測定データ(36)を変換することを備える第1の変換を実行するステップであって、前記第1の変換は、バックグラウンド信号を対象とし、それによって、高さ信号(38)を取得する、ステップと、
前記高さ信号(38)のバックグラウンド成分を判断するステップと、
前記高さ信号(38)のバックグラウンド成分を補償し、それによって、バックグラウンド補償された高さ信号(40)を取得するステップと、
前記バックグラウンド補償された高さ信号(40)を逆変換することを備える逆変換を行い、それによって、バックグラウンド補償された測定データ(42)を取得するステップと、
前記オブジェクト信号に対して分散補償を行い、それによって、分散補償されるとともにバックグラウンド補償された測定データ(43)を取得するステップと、
前記分散補償されるとともにバックグラウンド補償された測定データ(43)を変換することを備える第2の変換を行い、それによって、分散補償されるとともにバックグラウンド補償された高さ信号(44)を取得するステップと、
を備える方法。
【請求項2】
前記補償は、前記高さ信号(38)から前記バックグラウンド成分の少なくとも一部を減算することを備える、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の変換の前に、前記バックグラウンド信号に対して分散補償を行うステップを更に備える、請求項1~2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
前記補償は、既定のしきい値(46)を超えない高さ値について、前記高さ信号(38)のデータ点のクリッピング及び/又は上書きを行うことを備える、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記しきい値(46)は、最大100μm、特に、最大50μmである、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記第1の変換及び/又は前記第2の変換及び/又は前記逆変換は、フーリエ変換、特に、高速フーリエ変換を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記オブジェクト信号の分散補償を行うことは、前記バックグラウンド補償された測定データ(42)に分散補正曲線(52)を乗算することを備える、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記方法のステップの少なくとも一つ、特に、全ては、少なくとも一つのフィールドプログラマブルゲートアレイで行われる計算に基づく、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
測定装置(10)、特に、高エネルギー加工ビーム(16)を使用してワークピース(14)を加工するための加工システム(12)の測定装置(10)であって、
サンプルビーム(20)及び参照ビーム(22)を生成するように適合された光干渉断層計(18)であって、
前記サンプルビーム(20)を光学的に導くことができるサンプルアーム(24)と、
前記参照ビーム(22) を光学的に導くことができる参照アーム(26)と、
測定データを生成するために前記サンプルビーム(20)と前記参照ビーム(24)とを干渉させることによって光干渉断層撮影測定を行うように適合されたサンプル部(28)と、
前記測定データ(36)から分散補償されるとともにバックグラウンド補償された高さ信号(44)を判断するために、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法を実行するようにプログラムされた制御装置(30)と、
を備える、光干渉断層計(18)を備える測定装置。
【請求項10】
前記制御装置(30)は、少なくとも一つのフィールドプログラマブルゲートアレイを備え、前記方法の実行は、前記少なくとも一つのフィールドプログラマブルゲートアレイで行われる計算に基づく、請求項1~9のいずれか一項に記載の測定装置。
【請求項11】
高エネルギー加工ビーム(16)を使用してワークピース(14)を加工するための加工システム(12)であって、
請求項10に記載の測定装置(10)と、
前記加工ビーム(16)を生成するように適合された加工ビーム源(34)と、前記加工ビームを前記ワークピース上に投射及び/又は集束させるように適合された加工ビーム光学系(48)と、を備える加工装置(32)と、
を備える加工システム。
【請求項12】
プロセッサによって実行されるときに、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法を実行させる命令を備えるプログラムコード。
【請求項13】
請求項12に記載のプログラムコードが格納された機械可読媒体を備えるコンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光干渉断層撮影で取得した測定データから補正された高さ信号を判断する方法に関する。また、本発明は、そのような方法に従って動作する測定装置、測定装置を備える加工システム、プログラムコード及びプログラムコードを含むコンピュータプログラム製品に関する。
【背景技術】
【0002】
特に、レーザ溶接の分野又はワークピースを高エネルギーの加工ビームで加工する他の加工方法の分野において、光干渉断層撮影(OCT)は、加工されるワークピース又は加工結果を特徴付けるとともに進行中の加工プロセスを監視する測定方法として使用される。光干渉断層撮影は、サンプルビームのサンプルアームを通じたワークピースへの照射及びこのビームと参照アームで光学的に導かれた参照ビームとの干渉に基づく。多くの場合、サンプルビームは、加工ビームに結合され、加工ビームと共にワークピース上に投影及び/又は集光される。サンプルビームは、加工ビームに対して相対的に変位可能であり、これにより、加工領域の前方、内部及び/又は後方での測定が可能になる。
【0003】
光学特性に関しては、サンプルアームと参照アームとを可能な限り一致させる。例えば、可変長の参照アームが使用され、ワークピースまでの距離、すなわち、サンプルアームの長さが変化したときに、再調整が可能である。サンプルアームと参照アームとの間の分散差又はその補償も、光干渉測定の品質に関して重要な役割を果す。ドイツ国特許出願公開第10 2015 015 112号は、互いに可変距離で配置された二つの透過回折格子を有する分散補償装置を記載している。入射光ビームは、第1の透過回折格子を通過するときに波長の関数として分割される。この回折格子の配置により、例えば、更に強く屈折した短波長成分は、更に弱く屈折した長波長成分よりも長い距離を進み、その距離の差は、回折格子間の距離を変更することによって調整可能である。これによって、サンプルアームの分散を参照アームでシミュレートすることができる。
【0004】
サンプルアームの分散と参照アームの分散との正確な位置合わせは、現実の条件下では困難な場合があるので、場合によっては、ソフトウェアベースの分散補償が代替的又は追加的に実行される。Marks等は、例えば、論文“Digital algorithm for dispersion correction in optical coherence tomography for homogeneous and stratified media”(Applied Optics 42, 2, 204, 10 January 2003)において、対応するアルゴリズムを記載している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
選択された分散補償技術に関係なく、記載されたタイプのOCT測定中に、バックグラウンド成分が、取得したスペクトルに出現することがある。その結果、測定データから取得した高さ信号にバックグラウンド線が出現する。これらは、例えば、光学セットアップの保護眼鏡又は他の要素によって引き起こされる。これらのバックグラウンド成分は、実際のオブジェクト信号、すなわち、実際に測定される物体、例えば、対象としているワークピースに由来する測定信号とは異なる分散を伴う。
【0006】
関心のある成分を更に明瞭に見るとともにエラーを少なくしながら評価するために、そのようなバックグラウンド成分を除去することが望ましい。このための一般的な手法は、OCT測定信号のない静的なバックグラウンドを記録するとともに保存し、かつ、OCT測定を行う度にそれを差し引くことである。しかしながら、この手法は、例えば、環境の影響又は光学的セットアップの少しの変更によってバックグラウンド信号が変化する可能性があるためにある程度の不正確さを伴う。
【0007】
また、ソフトウェアベースの分散補償アルゴリズムを使用するときに測定データを高さ信号に変換する際にバックグラウンド成分に起因する信号の非常に強力な広がりが発生する可能性があることも明らかになっている。狭い高さのピークの代わりに、広がった低振幅の信号が発生し、それは、バックグラウンドノイズと区別することが困難であり、低い精度でしか除去することができない。
【0008】
従来技術に基づいて、本発明は、OCT測定信号からバックグラウンド信号を簡単かつ効果的にフィルタリングすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的は、請求項1の特徴を有する方法、請求項9の特徴を有する測定装置、請求項10の特徴を有する加工システム、請求項12の特徴を有するプログラムコード及び請求項13の特徴を有するコンピュータプログラム製品によって達成される。実施形態を、従属請求項で見つけることができる。
【0010】
本発明は、測定データの双対変換を提供する。いくつかの実施形態では、先ず、バックグラウンド信号に対して最適化された分散補償パラメータを使用して、測定データから高さ信号を計算する。次に、逆変換を実行する。逆変換されたデータを、分散補償する。このために、例えば、バックグラウンドではなく実際の信号に対して最適化された分散補償パラメータが使用されてもよい。次に、別の高さ信号を計算する。実際の測定に由来する高さ信号を最適に精緻化するが除去が困難な広がったバックグラウンド信号をもたらす分散補償及び変換を行う代わりに、最初の変換は、バックグラウンドに焦点を当てる。これによって、バックグラウンド成分を簡単に検出することができるとともに高い精度で除去することができる。逆変換が完了した次のステップでのみ実際の信号すなわちオブジェクト信号が考慮される。結果として得られるバックグラウンド補償された高さ信号は、バックグラウンドが効果的に除去されているために高品質なものとなる。
【0011】
本発明は、光干渉断層撮影で取得した測定データから補正された高さ信号を判断する方法に関する。測定データは、サンプルアームに導かれたサンプル光と参照アームに導かれた参照光との干渉に基づき、サンプルアーム及び参照アームは、分散が異なる。測定データは、オブジェクト信号と、オブジェクト信号に重畳されたバックグラウンド信号と、を含み、オブジェクト信号及びバックグラウンド信号は、異なる分散を伴う。方法は、測定データを取得するステップを備える。方法は、測定データを変換することを備える第1の変換を実行するステップであって、第1の変換は、バックグラウンド信号を対象とし、それによって、高さ信号を取得する、ステップを更に備える。方法は、高さ信号のバックグラウンド成分を判断するステップと、高さ信号のバックグラウンド成分を補償し、それによって、バックグラウンド補償された高さ信号を取得するステップと、バックグラウンド補償された高さ信号を逆変換することを備える逆変換を行い、それによって、バックグラウンド補償された測定データを取得するステップと、を更に備える。方法は、オブジェクト信号に対して分散補償を行い、それによって、分散補償されるとともにバックグラウンド補償された測定データを取得することを更に備える。方法は、分散補償されるとともにバックグラウンド補償された測定データを変換することを備える第2の変換を行い、それによって、分散補償されるとともにバックグラウンド補償された高さ信号を取得することを更に備える。
【0012】
本発明による特徴によって、OCT測定信号からバックグラウンド信号を簡単かつ効果的に除去することができる。したがって、実際のオブジェクト信号を、更に少ない不確実性で判断することができる。これによって、測定データから差し引かれる静的バックグラウンドの使用に関する問題及び不正確さが回避される。さらに、ソフトウェアベースの分散補償を、バックグラウンド成分がデータを見劣りさせることなく有意なバックグラウンド成分を有する測定にも適用することができる。本発明によって、静的なOCTバックグラウンド成分が実際のオブジェクト信号とは明らかに異なる分散を伴う測定セットアップであってもバックグラウンド補正を行うことが可能になる。
【0013】
測定データを、加工レーザのような高エネルギー加工ビームを使用したワークピースの加工前、加工中及び/又は加工後に取得することができる。加工を、送りを使用して行ってもよい。例えば、加工ビームは、一定の加工方向又は可変の加工方向を画定してもよい加工経路に沿ってワークピースに対して相対的に移動される。一定の送り速度又は可変の送り速度を使用してもよい。サンプル光を生じさせるサンプルビームを、測定データを取得するためにワークピースに導いてもよい。参照光を生じさせる参照ビームは、同時に参照アーム内を進行してもよい。サンプルビーム及び/又は参照ビームは、例えば、光干渉断層撮影で生成される。サンプルビームは、加工ビームに対して、特に、一つの空間方向又は二つの空間方向において、例えば、加工方向の平行方向及び/又は横方向に変位可能である。例えば、プロセスの監視及び/又はプロセスパラメータの制御及び/又は調整に有用となることができる加工ビームのワークピースへの侵入深さを加工中に測定するために、サンプルビームは、加工ビームとワークピースとの相互作用の結果として形成されるキーホールに導かれる。
【0014】
サンプルビーム及び参照ビームを、ビームスプリッタを使用して光源ビーム、特に、広帯域低コヒーレンス光ビームから生成してもよい。光干渉断層計は、光源ビームを生成するように適合されたサンプル光源を備えてもよい。
【0015】
オブジェクト信号は、特に、ワークピース上の測定に起因する信号である。バックグラウンド信号は、特に、光学セットアップの光学素子、例えば、保護ガラス、窓等での反射に起因する信号である。バックグラウンド信号は、略静的であってもよい。オブジェクト信号及びバックグラウンド信号は、協働して、測定信号、すなわち、測定の過程で取得される全体的な信号又は少なくともその一部を形成してもよい。
【0016】
第1の変換及び/又は第2の変換は、測定データ又は分散補償されるとともにバックグラウンド補償された測定データから高さ信号、すなわち、高さの関数としての一定の信号振幅を有するスペクトルを生成する。高さは、測定点における高さとして解釈される。したがって、高さ信号は、高さの測定値を提供する。高さ測定を経時的に行う場合、高さ測定を、特定の測定点における測定された高さが経時的にどのように変化するかを判断するために使用することができ、それは、例えば、浸透深度を測定するために有用である。代替的又は追加的に、これは、高さプロファイルを判断するのに役立つ。このために、例えば、特定の測定位置で特定の定められた時間に測定が行われ、それぞれの高さ値が記録される。取得した高さ値を測定位置上にプロットすると、高さプロファイルが得られる。
【0017】
分散補償を、少なくとも一つの既定することができる分散補償パラメータ及び/又は既定の分散補償パラメータに従って行ってもよい。分散補償パラメータによって、分散補償がどのように行われるかを調整することができる。分散補償ソフトウェアを備える所与のシステムにおいて、どの分散補償パラメータに対して特に強力な分散補償信号が予測の高さ値の範囲内で取得されるかを経験的に判断することができる。同様に、どの分散補償パラメータのバックグラウンド成分が特に明らかになるかを経験的に判断することができる。この点で、本発明は、特定の分散補償パラメータ又は特定のアルゴリズムに限定されるものではない。決定的な要因は、最初にバックグラウンドを考慮するとともに補正して補正後にオブジェクト信号の分散補償を行うことである。
【0018】
使用されるソフトウェアに応じて、複数の分散補償パラメータが既定することができるようにしてもよい。本開示の文脈における分散補償パラメータへの言及は、少なくとも一つの分散補償パラメータへの言及と等しいものとする。
【0019】
第1の変換及び/又は第2の変換及び/又は逆変換は、フーリエ変換、特に、高速フーリエ変換を含んでもよい。これによって、高い計算効率が保証される。
【0020】
オブジェクト信号の分散補償を行うことは、バックグラウンド補償された測定データに分散補正曲線を乗算することを備える。分散補正曲線は、静的であってもよい。特に、分散補正曲線は、実数部と、虚数部と、を備える。乗算は、複素信号を提供してもよい。乗算は、位相シフトを引き起こしてもよい。分散補償パラメータは、分散係数を備えてもよい。いくつかの実施形態では、分散係数を、分散補正曲線を定義する関数の引数として使用可能な多項式を定義するために使用することができる。
【0021】
補償は、高さ信号からバックグラウンド成分の少なくとも一部を減算することを備えてもよい。これによって、不要なバックグラウンドを少なくとも部分的に除去する。減算は、特定の高さ値をゼロに設定することを有してもよい。代替的又は追加的に、減算は、高さ信号における単一又は複数のピークのモデル化を有してもよい。例えば、それを、適切な関数及び適切な関数パラメータを選択することによって近似することができる。その後、取得した関数によって提供される値を、少なくとも特定の値範囲で減算することができる。
【0022】
いくつかの実施形態において、方法は、第1の変換の前に、バックグラウンド信号に対して分散補償を行うステップを更に備えてもよい。そのような分散補償を行うことは、オブジェクト信号に対する分散補償と同様に、適切な分散補正曲線を乗算すること及び/又は少なくとも一つの分散補正パラメータによって定義されることを備えてよい。そのような分散補正曲線及び/又はそのような分散補正パラメータは、バックグラウンド信号に対して最適化されてもよい。
【0023】
特に、第1の変換の前に分散補償を行わない場合、バックグラウンドピークを非常に検出しやすくなる。換言すれば、第1の変換の間に処理された測定データは、分散補償されていない。この場合、バックグラウンドピークは非常に狭く、したがって、減算が容易である。
【0024】
補償が、既定のしきい値を超えない高さ値の高さ信号のデータ点のクリッピング及び/又は上書きを行うことを備える場合、特定のバックグラウンド成分を特に確実に除去することができる。場合によっては、しきい値が最大100μm、特に、最大50μmであることが適切である。しきい値より下の領域には多くのバックグラウンドピークが出現するのに対し、しきい値より上には関連する測定情報が出現する。したがって、単に低域でクリッピング又は上書きすることによって、更なる調整又は計算を必要とすることなく多くのバックグラウンド成分を最初のステップで既に除去することができる。
【0025】
前述の方法のステップを、部分的に自動化された方法又は自動化された方法で実行することができる。いくつかの実施形態において、前記方法のステップの少なくとも一つ、特に、全ては、少なくとも一つのフィールドプログラマブルゲートアレイで行われる計算に基づく。これによって、高い計算効率が保証される。そして、分散補償されるとともにバックグラウンド補償された高さ信号を、コンピュータで実行される制御ソフトウェアに既に供給することができ、コンピュータで分散補償を行う必要がない。
【0026】
また、本発明は、測定装置、特に、高エネルギー加工ビームを使用してワークピースを加工するための加工システムのための測定装置に関する。測定装置は、サンプルビーム及び参照ビームを生成するように適合された光干渉断層計を備える。光干渉断層計は、サンプルビームを光学的に導くことができるサンプルアームと、参照ビームを光学的に導くことができる参照アームと、測定データを生成するためにサンプルビームと参照ビームを干渉させることによって光干渉断層撮影測定を行うように適合されたサンプル部と、制御装置と、を備える。ここで、サンプルビームがサンプル光を提供してもよいこと及び/又は参照ビームが参照光を提供してもよいことが理解される。制御装置は、測定データから分散補償されるとともにバックグラウンド補償された高さ信号を判断するために、特に、部分的に自動化された方法又は自動化された方法で本発明による方法を実行するようにプログラムされている。
【0027】
また、本発明は、高エネルギー加工ビームを用いてワークピースを加工するための加工システムに関する。加工システムは、本発明による測定装置と、加工装置と、を備える。加工装置は、加工ビームを生成するように適合された加工ビーム源と、加工ビームをワークピース上に投射及び/又は集束するように適合された加工ビーム光学系と、を備える。
【0028】
加工装置は、産業用ロボットを備えてもよい、及び/又は、産業用ロボット上に部分的又は全体的に配置されてもよい。加工装置は、加工ヘッドを備えてもよい。加工ヘッドは、産業用ロボットによって支持されてもよい。加工中、加工ビーム光学系に対するワークピースの相対的な送りを設けてもよく、送りは、ワークピースを移動させることによって、及び/又は、加工ビーム光学系及び加工ヘッドをそれぞれ移動させることによって生成されてもよい。
【0029】
加工ビームをワークピースに対して相対的に変位可能にする加工スキャナを設けてもよい。加工スキャナは、ワークピース上の加工位置を一つ又は二つの空間方向に移動させることができる。例えば、加工スキャナは、少なくとも一つの可動ミラー、特に、二つの可動ミラーを有し、それによって、加工ビームを目標方向に変位させることができる。
【0030】
サンプルビームは、加工ビーム及び/又は加工ビーム光学系に結合可能であってもよい。サンプルビームを加工ビーム又はスポットパターンに対して相対的に変位可能にするサンプルスキャナを設けてもよい。サンプルスキャナに加えて、加工スキャナを使用してサンプルビームを変位させてもよい。この構成では、例えば、加工ビームはサンプルスキャナではなく加工スキャナを介して案内され、サンプルビームはサンプルスキャナと加工スキャナの両方を介して案内される。従って、加工用スキャナが移動していても、サンプルビームはサンプルスキャナによって加工ビームに対して相対的に変位可能である。
【0031】
また、本発明は、プロセッサによって実行されるときに、本発明による方法を実行させる命令を備えるプログラムコードに関する。プログラムコードは、グラフィック処理装置(GPU)及び/又はマイクロコントローラ及び/又はフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)において実行/計算されるように意図してもよい。したがって、方法の基礎となる計算は、コンピュータとは無関係に行うことができる、及び/又は、任意のプロセッサによって行うことができる。
【0032】
また、本発明は、本発明によるプログラムコードが格納された機械可読媒体を備えるコンピュータプログラム製品に関する。機械可読媒体は、どのようなメモリであってもよい。機械可読媒体は、特に、フラッシュメモリ、EEPROM(電気的に消去可能なプログラマブル読み取り専用メモリ)、又は、FPGAがコンフィギュレーションをロードできる他のメモリであってもよい。したがって、コンピュータプログラム製品は、コンピュータでの使用又はGPU、FPGA若しくはマイクロコントローラでの使用を意図してもよい。
【0033】
特に、装置及び手順に関して記載されている全ての特徴及び特性が本発明による方法に準用することができ、本発明の意味において適用可能であり、同様に開示されているとみなされることが指摘される。その逆も同様である。このことは、方法に関して記載された構造的特徴、すなわち、装置による特徴も装置の特許請求の範囲内で考慮され、特許請求の範囲に記載され、かつ、開示されたものとみなされることを意味する。
【0034】
以下、本発明を、添付図を参照して例示的に説明する。図面、説明及び特許請求の範囲は、多数の特徴を組み合わせて含んでいる。当業者は、特徴を個々にも適切に考慮し、特許請求の範囲内で組み合わせて合理的に使用する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1図1は、OCT測定データを生成することができる測定装置を備える、高エネルギー加工ビームを使用してワークピースを加工するための加工システムの概略図である。
図2図2は、測定データを高さ信号に変換する例を視覚化したものである。
図3図3は、高さ信号の一例を示す。
図4図4は、高さ信号の他の例を示す。
図5図5は、バックグラウンド補償された高さ信号を示す。
図6図6は、バックグラウンド補償された測定データの例を示す。
図7図7は、分散補正曲線の一例を示す。
図8図8は、複素信号の例を示す。
図9図9は、測定データのバックグラウンド補償のシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1は、測定装置10及び加工装置32を備える加工システム12を示す。加工装置32は、加工用レーザとして構成された加工ビーム源50を備える。加工ビーム源50は、ワークピース14を加工するために、ワークピース14に導くことができる加工ビーム16を生成する。これを、例えば、加工レーザビームとすることができる。
【0037】
加工装置32は、加工ビーム16を変位可能にする加工スキャナ52を備える。加工スキャナ52は、例えば、加工ビーム16を二つの空間方向、例えば、加工方向54に対して平行かつ横方向に自動的に変位可能にするミラー配置を備える。加工ビーム16は、加工装置32の概略的に示した加工ビーム光学系56を介してワークピース14上に集束される。
【0038】
この場合、加工装置32は、例えば、図示しない産業用ロボットに取り付けることができる加工ヘッド58を有する。
【0039】
加工システム12は、測定装置10を更に備える。測定装置10は、光干渉断層計18を備える。光干渉断層計18は、サンプルビーム源60と、それに結合されたビームスプリッタ62と、を備える。試料アーム24及び参照アーム26は、ビームスプリッタ62から延在する。サンプルビーム20は、サンプルアーム24に光学的に導かれる。参照ビーム22は、参照アーム26に光学的に導かれる。
【0040】
試料アーム24及び参照アーム26は、試料ユニット64に接続され、試料ユニット64内で試料ビーム20と参照ビーム22とが互いに干渉する。図示の場合、サンプルユニット64は、サンプルビーム20と参照ビーム22との干渉に基づいて光干渉測定を可能にする分光計を備える。これらの測定によって、例えば、加工すべき及び/又は既に加工された及び/又は現在加工されているワークピース14の一部の高さ又は深さプロファイルを判断するために、光干渉断層撮影を行うことができる。また、例えば、加工ビーム16のワークピース14への、特に、(「キーホール」とも称する)形成される蒸気キャビティへの侵入深さを判断することも可能である。
【0041】
サンプルアーム24は、ビームスプリッタ62からワークピース14まで延在する。参照アーム26は、ビームスプリッタ62から反射鏡66が配置された端部まで延在する。図示の場合、反射鏡66は、参照アーム26の光路長を調整可能にする光路長調整ユニット68に属するミラーである。これによって、参照アーム26の光路長を試料アーム24の光路長に調整することができる。
【0042】
サンプルビーム24は、加工ビーム16に結合可能である。図示の場合、サンプルビーム20は、部分的に透明なミラー70に導かれる。それによって、加工ビーム16を偏向させ、サンプルビーム24を加工ビーム16に結合させる。
【0043】
測定装置10は、サンプルスキャナ72を更に備える。サンプルスキャナ72は、例えば、サンプルビーム20を二つの空間方向、例えば、加工方向54に対して平行及び横方向に自動的に変位可能にするミラー配置を備える。本加工システム12では、二つのビームの衝突位置を互いに独立して設定するように、サンプルビーム20が加工ビーム16に対して偏向可能である。図1に見られるように、サンプルスキャナ72は、サンプルビーム20のみを偏向させ、それに対し、加工スキャナ52は、加工ビーム16とサンプルビーム20の両方を偏向させる。これによって、前述の加工ビーム16とサンプルビーム20の独立した変位が可能になる。
【0044】
さらに、制御装置30を設ける。それは、測定装置10の一部であってもよい。測定装置10及び加工装置32は、別々の制御装置を有していてもよい。図1に一例として示す制御装置30は、加工システム12の構成要素を制御する共通の制御装置である。
【0045】
制御装置30を、本明細書で説明する方法を実行するように適合させることができる。このために、制御装置30は、適切なプログラミング又はプログラムコードを有してもよい。特に、フラッシュメモリ又はEEPROMのような機械可読媒体を備えるコンピュータプログラム製品74を設けてもよい。プログラムコードは、そこに格納されていてもよい。特に、グラフィック処理装置(GPU)及び/又はマイクロコントローラ及び/又はフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)において実行されることが意図されている。
【0046】
いくつかの実施形態において、説明した方法の基礎となる計算は、一つ以上のフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)で完全に行われる。それは、制御装置30の一部であってもよい。
【0047】
測定装置10の設計は例示的なものとして理解すべきである。特に、後に説明する補正された高さ信号を判断する方法は、原理的には、OCT測定データを供給するあらゆる測定システムに適用可能である。
【0048】
以下、補正された高さ信号の判断について説明する。先ず、光干渉断層撮影で測定データを取得する。図示の例では、これを、測定装置10を使用して行う。測定データは、図2に示すように、スペクトルの形態で利用可能である。高速フーリエ変換(FFT)のような適切な変換を行うことによって、一般に知られている方法で測定データから高さ信号を取得することができる。そのような高さ信号は、高さに依存した強度を有する。図2は、特定の高さ値に単一のピークを持つ高さ信号の例を示す。ここでは、例えば、特定の侵入深さのような特定の高さ値又は距離値が測定された。
【0049】
図3は、測定データの変換時に通常取得するような高さ信号の例を示す。測定データは、ワークピース14上での測定に起因するオブジェクト信号と、例えば、保護眼鏡等による少なくとも本質的に静的な測定バックグラウンドに起因するバックグラウンド信号の両方を含む。そのような測定データに基づいて、図3に示す高さ信号を取得するために、ソフトウェアベースの分散補償を行った。このために、オブジェクト信号の分散補償を引き起こす分散補償パラメータを選択した。その結果、オブジェクト信号に起因する中程度の高さ値の範囲に顕著なピークが得られた。さらに、この例で明らかなのは、低い高さ値の範囲にある低い強度の二つの幅広いピークである。これらは、バックグラウンド信号によるものである。オブジェクト信号に狙いを定めた分散補償を行ったために、バックグラウンドのピークが広がってしまい、バックグラウンドノイズとの区別がつきにくくなってしまった。
【0050】
図4は、本明細書で説明する方法による手順を示す。ここで、測定データは、先ず、バックグラウンドを対象とした変換を用いて変換される。このために、分散補償を行わない又はバックグラウンド信号を更に顕著にする変換の前に分散補償を行う。後者の場合については後述する。図示の例では、この結果、二つの狭い大振幅のバックグラウンドピークが生じ、これを認識及び分離することは容易である。一方、オブジェクト信号の範囲では、広がったピークが発生し、これを分離するのは更に困難になる。しかしながら、これは問題ではない。その理由は、この方法が最初にバックグラウンド信号のみを扱うからである。
【0051】
図5は、バックグラウンドの一部が減算された後の図4の高さ信号を示す。一般に、バックグラウンド成分は補償される。先ず、高さ信号は、しきい値46より下でクリップされる。したがって、高さ信号の値は、しきい値46の下でゼロに設定される。これは、例えば、50μmである。例えば、侵入深さ測定では、オブジェクト信号すなわち侵入深さに関連する信号では、そのような低い値は予測されない。したがって、高さ信号のクリッピングは、オブジェクト信号に対しては問題なく、バックグラウンド信号のかなりの部分を既に簡単かつ確実に除去する。しかしながら、そのようなしきい値に基づくクリッピングが純粋にオプションであるとともに測定状況及び所望の測定情報に応じて省略することができることを理解すべきである。
【0052】
さらに、高さ信号の検出したバックグラウンドピークを補償することによって、バックグラウンド減算を行う。これを、バックグラウンドピークの部分的又は完全な減算によって行うことができる。このために、スペクトルから個々のピークを減算するための任意の適切な方法を、一般的に知られている方法で適用することができる。例えば、ピークをフィッティングし、その過程でモデル化された関数を減算することができる。また、ピークの最大値を検索するとともにピーク幅を判断してもよく、これに基づいて減算するピークをモデル化してもよい。
【0053】
バックグラウンド信号の少なくとも一部を減算することによって、図5に示すバックグラウンド補償された高さ信号を取得する。次のステップでは、それを、バックグラウンド補償された測定データを取得するために逆変換してもよい。別の変換では、これらのデータから再び高さ信号を取得し、今度はオブジェクト信号を対象とした分散補償を行ってもよい。
【0054】
図6は、上記のようにして取得したバックグラウンド補償された測定データ50の一例を示す。
【0055】
図7は、分散補正曲線52の一例を示す。本実施例では、分散補正曲線は、複素曲線である。分散補正曲線は、実数部54と、虚数部56と、を備える。例えば、実数部は、余弦関数であり、虚数部は、負の正弦関数である。これらの関数の各引数として2次の多項式を使用する。分散補正曲線は、分散補償パラメータによって調整可能な位相シフトを画定する。分散補償パラメータは、前述の多項式の係数であってもよい。
【0056】
図6に示す測定データ50に図7に示す複素分散補正曲線52を乗算することによって、図8に例として示す複素信号58を生成する。複素信号58は、実数部60と、虚数部62と、を備える。
【0057】
分散補償されるとともにバックグラウンド補償された高さ信号を取得するために、乗算によって取得した複素信号58に対して高速フーリエ変換を行う。
【0058】
これに類似して、バックグラウンド信号を対象とする第1の変換の前に分散補正曲線を使用してもよいことが理解される。そのような曲線を、主にバックグラウンド信号に対して分散補償を行うように選択してもよいが、図示の例では、第1の変換の前に分散補償を行わない。
【0059】
図9は、手順全体を再度示す。先ず、測定データ36を取得し、バックグラウンド信号を対象とする第1の変換(T1)において高さ信号38に変換する。いくつかの実施形態において、分散補正を第1の変換(T1)の前に行ってもよい。高さ信号38において、上述のようにバックグラウンド成分が補償され、これによって、バックグラウンド補償された高さ信号40を生成する(Corr.)。 これを、バックグラウンド補償された測定データ42を取得するために逆変換する(T-1)。バックグラウンド補償された測定データ42は、分散補償され、それによって、分散補償されるとともにバックグラウンド補償された測定データ43が生成する。第2の変換(T2)において、分散補償されるとともにバックグラウンド補償された高さ信号44を、分散補償されるとともにバックグラウンド補償された測定データ43から取得する。
【0060】
分散補償パラメータの所定の値をプリセットすることによって分散補償動作を制御することができる分散補償ソフトウェアを使用する場合、以下の手順に従う。第1の変換を行う前に、バックグラウンド信号の分散補償を引き起こす分散補償パラメータの第1の値を選択する。特に、これは、分散補償の不存在を含んでもよく、選択した値が分散補償を引き起こさないことを意味する。しかしながら、第2の変換を行う前に、分散補償パラメータの第2の値を選択し、第2の値は、第1の値とは異なり、オブジェクト信号に対する分散補償を引き起こす。
【0061】
上記のように二つの変換を連続して行うことによって、バックグラウンド信号を最初に容易に検出するとともに確実に補償した後に逆変換を行い、このように補正した測定データを分散補償し、更にオブジェクト信号が出現するように変換することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【手続補正書】
【提出日】2023-08-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0061
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0061】
上記のように二つの変換を連続して行うことによって、バックグラウンド信号を最初に容易に検出するとともに確実に補償した後に逆変換を行い、このように補正した測定データを分散補償し、更にオブジェクト信号が出現するように変換することができる。
本明細書に開示される発明は以下を含む。
[態様1]
光干渉断層撮影で取得した測定データ(36)から補正された高さ信号(44)を判断する方法であって、
前記測定データ(36)は、サンプルアーム(24)に導かれたサンプル光と参照アーム(26)に導かれた参照光との干渉に基づき、前記サンプルアーム(24)及び前記参照アーム(26)は、分散が異なり、
前記測定データ(36)は、オブジェクト信号と、前記オブジェクト信号に重畳されたバックグラウンド信号と、を含み、前記オブジェクト信号及び前記バックグラウンド信号は、異なる分散を伴い、
前記測定データ(36)を取得するステップと、
前記測定データ(36)を変換することを備える第1の変換を実行するステップであって、前記第1の変換は、バックグラウンド信号を対象とし、それによって、高さ信号(38)を取得する、ステップと、
前記高さ信号(38)のバックグラウンド成分を判断するステップと、
前記高さ信号(38)のバックグラウンド成分を補償し、それによって、バックグラウンド補償された高さ信号(40)を取得するステップと、
前記バックグラウンド補償された高さ信号(40)を逆変換することを備える逆変換を行い、それによって、バックグラウンド補償された測定データ(42)を取得するステップと、
前記オブジェクト信号に対して分散補償を行い、それによって、分散補償されるとともにバックグラウンド補償された測定データ(43)を取得するステップと、
前記分散補償されるとともにバックグラウンド補償された測定データ(43)を変換することを備える第2の変換を行い、それによって、分散補償されるとともにバックグラウンド補償された高さ信号(44)を取得するステップと、
を備える方法。
[態様2]
前記補償は、前記高さ信号(38)から前記バックグラウンド成分の少なくとも一部を減算することを備える、態様1に記載の方法。
[態様3]
前記第1の変換の前に、前記バックグラウンド信号に対して分散補償を行うステップを更に備える、態様1~2のいずれか一つに記載の方法。
[態様4]
前記補償は、既定のしきい値(46)を超えない高さ値について、前記高さ信号(38)のデータ点のクリッピング及び/又は上書きを行うことを備える、態様1~3のいずれか一つに記載の方法。
[態様5]
前記しきい値(46)は、最大100μm、特に、最大50μmである、態様4記載の方法。
[態様6]
前記第1の変換及び/又は前記第2の変換及び/又は前記逆変換は、フーリエ変換、特に、高速フーリエ変換を含む、態様1~5のいずれか一つに記載の方法。
[態様7]
前記オブジェクト信号の分散補償を行うことは、前記バックグラウンド補償された測定データ(42)に分散補正曲線(52)を乗算することを備える、態様1~6のいずれか一つに記載の方法。
[態様8]
前記方法のステップの少なくとも一つ、特に、全ては、少なくとも一つのフィールドプログラマブルゲートアレイで行われる計算に基づく、態様1~7のいずれか一つに記載の方法。
[態様9]
測定装置(10)、特に、高エネルギー加工ビーム(16)を使用してワークピース(14)を加工するための加工システム(12)の測定装置(10)であって、
サンプルビーム(20)及び参照ビーム(22)を生成するように適合された光干渉断層計(18)であって、
前記サンプルビーム(20)を光学的に導くことができるサンプルアーム(24)と、
前記参照ビーム(22) を光学的に導くことができる参照アーム(26)と、
測定データ(36)を生成するために前記サンプルビーム(20)と前記参照ビーム(24)とを干渉させることによって光干渉断層撮影測定を行うように適合されたサンプル部(28)と、
前記測定データ(36)から分散補償されるとともにバックグラウンド補償された高さ信号(44)を判断するために、態様1~8のいずれか一つに記載の方法を実行するようにプログラムされた制御装置(30)と、
を備える、光干渉断層計(18)を備える測定装置。
[態様10]
前記制御装置(30)は、少なくとも一つのフィールドプログラマブルゲートアレイを備え、前記方法の実行は、前記少なくとも一つのフィールドプログラマブルゲートアレイで行われる計算に基づく、態様9に記載の測定装置。
[態様11]
高エネルギー加工ビーム(16)を使用してワークピース(14)を加工するための加工システム(12)であって、
態様9に記載の測定装置(10)と、
前記高エネルギー加工ビーム(16)を生成するように適合された加工ビーム源(34)と、前記高エネルギー加工ビーム(16)を前記ワークピース(14)上に投射及び/又は集束させるように適合された加工ビーム光学系(48)と、を備える加工装置(32)と、
を備える加工システム。
[態様12]
プロセッサによって実行されるときに、態様1~8のいずれか一つに記載の方法を実行させる命令を備えるプログラムコード。
[態様13]
態様12に記載のプログラムコードが格納された機械可読媒体を備えるコンピュータプログラム製品。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光干渉断層撮影で取得した測定データ(36)から補正された高さ信号(44)を判断する方法であって、
前記測定データ(36)は、サンプルアーム(24)に導かれたサンプル光と参照アーム(26)に導かれた参照光との干渉に基づき、前記サンプルアーム(24)及び前記参照アーム(26)は、分散が異なり、
前記測定データ(36)は、オブジェクト信号と、前記オブジェクト信号に重畳されたバックグラウンド信号と、を含み、前記オブジェクト信号及び前記バックグラウンド信号は、異なる分散を伴い、
前記測定データ(36)を取得するステップと、
前記測定データ(36)を変換することを備える第1の変換を実行するステップであって、前記第1の変換は、バックグラウンド信号を対象とし、それによって、高さ信号(38)を取得する、ステップと、
前記高さ信号(38)のバックグラウンド成分を判断するステップと、
前記高さ信号(38)のバックグラウンド成分を補償し、それによって、バックグラウンド補償された高さ信号(40)を取得するステップと、
前記バックグラウンド補償された高さ信号(40)を逆変換することを備える逆変換を行い、それによって、バックグラウンド補償された測定データ(42)を取得するステップと、
前記オブジェクト信号に対して分散補償を行い、それによって、分散補償されるとともにバックグラウンド補償された測定データ(43)を取得するステップと、
前記分散補償されるとともにバックグラウンド補償された測定データ(43)を変換することを備える第2の変換を行い、それによって、分散補償されるとともにバックグラウンド補償された高さ信号(44)を取得するステップと、
を備える方法。
【請求項2】
前記補償は、前記高さ信号(38)から前記バックグラウンド成分の少なくとも一部を減算することを備える、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の変換の前に、前記バックグラウンド信号に対して分散補償を行うステップを更に備える、請求項に記載の方法。
【請求項4】
前記補償は、既定のしきい値(46)を超えない高さ値について、前記高さ信号(38)のデータ点のクリッピング及び/又は上書きを行うことを備える、請求項に記載の方法。
【請求項5】
前記しきい値(46)は、最大100μmである、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記第1の変換及び/又は前記第2の変換及び/又は前記逆変換は、フーリエ変換を含む、請求項に記載の方法。
【請求項7】
前記オブジェクト信号の分散補償を行うことは、前記バックグラウンド補償された測定データ(42)に分散補正曲線(52)を乗算することを備える、請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記方法のステップの少なくとも一つは、少なくとも一つのフィールドプログラマブルゲートアレイで行われる計算に基づく、請求項に記載の方法。
【請求項9】
測定装置(10)であって、
サンプルビーム(20)及び参照ビーム(22)を生成するように適合された光干渉断層計(18)であって、
前記サンプルビーム(20)を光学的に導くことができるサンプルアーム(24)と、
前記参照ビーム(22) を光学的に導くことができる参照アーム(26)と、
測定データ(36)を生成するために前記サンプルビーム(20)と前記参照ビーム(24)とを干渉させることによって光干渉断層撮影測定を行うように適合されたサンプル部(28)と、
前記測定データ(36)から分散補償されるとともにバックグラウンド補償された高さ信号(44)を判断するために、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法を実行するようにプログラムされた制御装置(30)と、
を備える、光干渉断層計(18)を備える測定装置。
【請求項10】
前記制御装置(30)は、少なくとも一つのフィールドプログラマブルゲートアレイを備え、前記方法の実行は、前記少なくとも一つのフィールドプログラマブルゲートアレイで行われる計算に基づく、請求項に記載の測定装置。
【請求項11】
高エネルギー加工ビーム(16)を使用してワークピース(14)を加工するための加工システム(12)であって、
請求項に記載の測定装置(10)と、
前記高エネルギー加工ビーム(16)を生成するように適合された加工ビーム源(34)と、前記高エネルギー加工ビーム(16)を前記ワークピース(14)上に投射及び/又は集束させるように適合された加工ビーム光学系(48)と、を備える加工装置(32)と、
を備える加工システム。
【請求項12】
プロセッサによって実行されるときに、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法を実行させる命令を備えるプログラムコード。
【請求項13】
請求項12に記載のプログラムコードが格納された機械可読媒体を備えるコンピュータプログラム製品。
【外国語明細書】