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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023172976
(43)【公開日】2023-12-06
(54)【発明の名称】ゲル皮膜及び経口固形組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/30 20060101AFI20231129BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20231129BHJP
   A61K 9/28 20060101ALI20231129BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20231129BHJP
   A61K 47/04 20060101ALI20231129BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20231129BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20231129BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20231129BHJP
   A61K 31/167 20060101ALI20231129BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20231129BHJP
   A61K 9/00 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
A61K47/30
A61K9/20
A61K9/28
A61K47/02
A61K47/04
A61K47/12
A61K47/26
A61K47/36
A61K31/167
A61P29/00
A61K9/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023176052
(22)【出願日】2023-10-11
(62)【分割の表示】P 2023537423の分割
【原出願日】2023-05-11
(31)【優先権主張番号】P 2022084151
(32)【優先日】2022-05-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2023072747
(32)【優先日】2023-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2023072748
(32)【優先日】2023-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2023072749
(32)【優先日】2023-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】720002207
【氏名又は名称】共和薬品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118382
【弁理士】
【氏名又は名称】多田 央子
(74)【代理人】
【識別番号】100094477
【弁理士】
【氏名又は名称】神野 直美
(74)【代理人】
【識別番号】100078813
【弁理士】
【氏名又は名称】上代 哲司
(72)【発明者】
【氏名】新垣 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】浅井 翔太
(72)【発明者】
【氏名】谷口 史恭
(72)【発明者】
【氏名】山下 順也
【テーマコード(参考)】
4C076
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA36
4C076BB01
4C076CC01
4C076EE01
4C076EE30
4C076EE31
4C076EE32
4C076FF21
4C076FF35
4C206AA01
4C206GA02
4C206GA31
4C206KA01
4C206MA03
4C206MA05
4C206MA55
4C206MA72
4C206NA10
4C206ZA07
4C206ZA08
(57)【要約】
【課題】ゲル皮膜を備える経口固形組成物であって、保存による変色が抑制されたものを提供する。
【解決手段】水分との接触によりゲル化する高分子を含有するゲル皮膜と経口固形製剤を備える経口固形組成物であって、密封包装されているか、又は乾燥剤と共に気密包装されている、経口固形組成物。プラスチックボトル、プラスチックシートで成型された袋、若しくはアルミニム層を備えるシートで成型された袋で密封包装されているか、又はプラスチックボトルで気密包装されていることができる。また、PTP包装又はSP包装された経口固形組成物が、密封包装されているか、又は乾燥剤と共に気密包装されていてもよい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水分との接触によりゲル化する高分子を含有するゲル皮膜と経口固形製剤を備える経口固形組成物であって、密封包装されているか、又は乾燥剤と共に気密包装されている、経口固形組成物。
【請求項2】
プラスチックボトル、プラスチックシートで成型された袋、若しくはアルミニウム層を備えるシートで成型された袋で密封包装されているか、又はプラスチックボトルで気密包装されている、請求項1に記載の経口固形組成物。
【請求項3】
PTP包装又はSP包装された経口固形組成物が、密封包装されているか、又は乾燥剤と共に気密包装されている、請求項1又は2に記載の経口固形組成物。
【請求項4】
アルミニウム層を備えるシートで成型された袋のアルミニウム層の厚さが5~40μmである、請求項2に記載の経口固形組成物。
【請求項5】
密封包装の場合に、経口固形組成物と共に乾燥剤が密封包装されている、請求項1又は2に記載の経口固形組成物。
【請求項6】
水分との接触によりゲル化する高分子が多糖類である、請求項1又は2に記載の経口固形組成物。
【請求項7】
経口固形製剤が錠剤である、請求項1又は2に記載の経口固形組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲル皮膜、ゲル皮膜を備える経口固形組成物、並びにゲル皮膜を形成するためのコーティング液及びコーティング用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
錠剤やカプセル剤のような経口固形製剤は、嚥下障害がある高齢者、錠剤の服用が苦手な小児、ドライマウスの患者などにとって服薬時の負担が大きく、その結果、アドヒアランスが低下して、十分な治療効果が得られない場合がある。
【0003】
従って、固形製剤の嚥下が困難な患者にも服用できるよう、少量の水で又は水なしで口腔中で崩壊させることができ、嚥下し易い口腔内崩壊錠が広く用いられている。
しかし、口腔内崩壊錠は、咽頭部に製剤成分が残留し易く、所定量の薬物が吸収されない場合がある。また、口腔内で製剤を崩壊させるため、苦みのある薬物を含む場合は、口腔内での苦味を抑制するために、薬物自体や薬物含有顆粒にコーティングを施して苦味マスキングしたり、人工甘味料を添加して矯味するといった方法が採られている。コーティングは、その操作が煩雑であるため、口腔内崩壊錠の製造がコスト高になる。また、甘味剤を用いる場合は、スクラロースやアスパルテームなどの人工甘味料を使用する場合が多く、人工甘味料特有の苦味が口腔内に残ることもある。
【0004】
一方で、固形製剤の嚥下が困難な患者の服薬サポートとして、服薬ゼリーが市販されている。これは、錠剤などの固形製剤の服用時に、服薬ゼリーを同時に飲むことで、固形製剤の嚥下を助けるものである。しかし、医薬品は水だけで服薬することが推奨されており、市販の服薬ゼリーを用いて固形製剤を服用すると、消化管内で服薬ゼリーが有効成分の溶出を阻害し、十分な治療効果が得られないことが懸念される。
【0005】
また、固形製剤にゼリー状皮膜を施すことが従来提案されている。
例えば、特許文献1は、カプセル剤や錠剤などの表面を、水分で潤滑化する水溶性高分子で覆うことにより、嚥下が容易になることを教えている。
また、特許文献2は、微小なペレットの表面を、膨潤剤を含む外層で覆うことにより、水と接触したとき均質な分散体となって個々のツブツブが感じられないものになることを教えている。
また、特許文献3は、カプセル剤や錠剤などの表面に、水溶性ポリマーを含むコーティング層を設け、さらにその外側に唾液分泌増強剤を設けることにより、唾液又は水分と接触してコーティング層が粘稠な塊状物となり、口腔内粘膜に接着しないことを教えている。
また、特許文献4は、糖アルコールを含む粒子を、水に触れると滑り性を示すゲル化剤を含む層で覆うことにより、服用が容易になることを教えている。
しかし、特許文献1~4の固形製剤は、服用を容易にするためのゼリー状皮膜が消化管内での薬物の溶出を阻害する。例えば、特許文献4は、ゲル化剤を含む層で有効成分含有粒子を覆うことにより、水中での有効成分の溶出が遅延したことを示している(図1)。従って、これらの固形製剤は、服薬ゼリー併用時と同様に、十分な治療効果が得られないことが懸念される。
【0006】
この問題を解決する固形製剤として、特許文献5は、固形医薬製剤を、水溶性高分子を含有するアンダーコート、及び水分との接触によりゲル化する高分子を含有するゲルコートで、この順に被覆し、アンダーコートに炭酸塩を配合しゲルコートに酸性物質を配合するか、又はアンダーコートに酸性物質を配合しゲルコートに炭酸塩を配合することにより、口中で水分と接触してゲルコートがゲル化するため嚥下し易くなり、また、嚥下後は水分により各コートの水溶性高分子が溶解して、炭酸塩と酸性物質とが反応して発泡するため、消化管内で被覆層が消失して、固形医薬製剤から速やかに薬物が溶出することを開示している。
【0007】
医薬品や食品サプリメントのうち、錠剤やカプセル剤のような固形製剤は、一般に、PTP(Press Through Package)包装や、SP(Strip Package)包装で個別包装されている。PTP包装は、プラスチック製の凹部に錠剤などを入れ、アルミニウムシートでシールしたもので、凹部を押すことにより錠剤などを取り出すことができる。また、SP包装は、フィルム状の袋に錠剤などを入れ、ヒートシールで密閉したものである。これらは簡便で衛生的な包装であり、ある程度の防湿性を有するため多用されている。
また、1回服用量が多い医薬品や食品サプリメントは、ボトルに入れて販売されることが多い。ボトルは、1錠ずつ出す手間がかからないため、長期間飲む製剤や1日服用回数が多い製剤に適している。
【0008】
ここで、ゲル皮膜を表面に備える固形製剤は、保存により表面にカビが生え易い。このため、包装や、保存時の温度及び湿度などの管理に気を遣う必要があるという難点がある。
【0009】
また、ゲル皮膜を表面に備える固形製剤は、その嚥下容易性を一層向上させるために、水分との接触によりゲル化する高分子の配合量を増やしたい場合がある。しかし、水分との接触によりゲル化する高分子の配合量を増やすと、コーティング液の粘度が高くなり、コーティング装置のノズルに詰まる恐れがある。増粘剤の配合量に見合うように、コーティング液の溶媒量を増やせば、コーティング液の粘度が高くなり過ぎず、コーティング装置のノズルに詰まることを避けられるが、コーティング液が多くなってコーティングに時間がかかる。
【0010】
また、錠剤やカプセル剤のような固形製剤には、製造又は調剤時の正しい取り扱いと、正しい服用のために、通常、識別コードや商品名が表示されている。特に、商品名が表示されていれば、PTP包装から取り出した後でも商品名が分かるため、調剤間違いや服用間違いを減らすことができる。ところが、商品名は細かい文字を多く表示することになるため、刻印では明確に表示できない場合が多い。
細かい文字を明確に表示できる技術として、インクジェット印刷、熱転写印刷、レーザー照射などが知られている。中でも、レーザー照射は曲面にも印刷し易い、非接触で印刷できるといったメリットがある。これは、紫外線レーザーを酸化チタン(TiO2)に照射したときに生じる色調変化を利用した技術であり、酸化チタンを含むコーティング層で固形製剤を被覆し、紫外線レーザーを照射することでコーティング層に文字を表示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開昭61-161215号
【特許文献2】特開昭63-196511号
【特許文献3】特表2000-516222号
【特許文献4】国際公開2017/057147号
【特許文献5】特許6964369号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、経口固形製剤を被覆するゲル皮膜(本発明において、水分との接触によりゲル化する高分子を含む皮膜を「ゲル皮膜」という。)であって、経口固形製剤の嚥下を容易にし、かつ経口固形製剤からの有効成分の溶出遅延が抑制されるゲル皮膜を提供することを第1の課題とする。また、本発明は、経口固形製剤をゲル皮膜を備える経口固形組成物であって、嚥下が容易であり、かつ経口固形製剤からの有効成分の溶出遅延が抑制された経口固形組成物を提供することも第1の課題とする。
【0013】
本発明者は、ゲル皮膜で経口固形製剤を被覆してなる経口固形組成物は、保存中にゲル皮膜が変色し易いことを見出した。そこで、本発明は、ゲル皮膜を備える経口固形組成物であって、保存による変色が抑制されたものを提供することを第2の課題とする。
【0014】
本発明は、ゲル皮膜であって、この高分子の配合量を増やしても短時間で皮膜を形成することができ、かつカビが生え難いゲル皮膜を提供することを第3の課題とする。また、本発明は、ゲル皮膜を備える経口固形組成物であって、水分との接触によりゲル化する高分子の配合量を増やしても短時間でゲル皮膜を形成することができ、かつゲル皮膜表面にカビが生え難い経口固形組成物を提供することも第3の課題とする。
【0015】
本発明者は、紫外線レーザーは、通常のコーティング層には識別可能に文字などを表示することができるが、ゲル皮膜には識別可能に文字などを表示することが難しいことを見出した。
そこで、本発明は、刻印又は着色剤を用いずに、表面に鮮明に文字などが表示されたゲル皮膜を提供することを第4の課題とする。また、本発明は、ゲル皮膜を備える経口固形組成物であって、刻印又は着色剤を用いずに、ゲル皮膜表面に鮮明に文字などが表示された経口固形組成物を提供することも第4の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者は、上記課題を解決するために検討を重ね、以下の知見を得た。
(1) 経口固形製剤を、水分との接触によりゲル化する高分子、炭酸塩、及び酸性物質を含有するゲル皮膜で被覆することにより、口中で水分と接触してゲルコートがゲル化するため嚥下し易くなり、また、嚥下後は水分により水溶性高分子が溶解して、炭酸塩と酸性物質とが反応して発泡するため、消化管内でゲル皮膜が消失して、経口固形製剤から速やかに有効成分が溶出する。
【0017】
(2) ゲル皮膜を備える経口固形組成物を、医薬品や食品サプリメントに通常使用されている包装材料で包装すると保存中に変色し易いが、密封包装するか、又は乾燥剤と共に気密包装すれば、保存による変色が効果的に抑制される。
【0018】
(3-1) ゲル皮膜は、ゲル皮膜中のグリセリンの濃度を、ゲル皮膜の全量に対して、2質量%以下にすることによりカビの発生を抑えることができる。
(3-2) 水分との接触によりゲル化する高分子を分散させたコーティング液で経口固形製剤をコーティングすれば、水分との接触によりゲル化する高分子を多量に含む場合でも、コーティング液が高粘度になってコーティング装置のノズルに詰まることがなく、また、粘度を下げるために溶媒量を増やす必要がないため、短時間でゲル皮膜を形成することができる。
【0019】
(4) ゲル皮膜に酸化チタン(TiO2)を配合し、紫外線レーザー照射することによりゲル皮膜表面に文字などを表示させる場合、酸化チタン濃度が高すぎると却って文字などを表示し難い。酸化チタン濃度をゲル皮膜全量に対して20質量%以下にすることにより、紫外線レーザー照射で識別可能に文字などを表示することができる。
【0020】
本発明は、上記知見に基づき完成されたものであり、以下の〔1-1〕~〔4-12〕を提供する。
第1実施形態
〔1-1〕 水分との接触によりゲル化する高分子、炭酸塩、及び酸性物質を含有する、速崩壊性ゲル皮膜。
〔1-2〕 炭酸塩を、速崩壊性ゲル皮膜の全量に対して、0.5~60質量%含む、〔1-1〕に記載の速崩壊性ゲル皮膜。
〔1-3〕 酸性物質を、速崩壊性ゲル皮膜の全量に対して、0.5~40質量%含む、〔1-1〕又は〔1-2〕に記載の速崩壊性ゲル皮膜。
〔1-4〕 酸性物質を、炭酸塩の1質量部に対して、0.1~1質量部含む、〔1-1〕~〔1-3〕の何れかに記載の速崩壊性ゲル皮膜。
〔1-5〕 〔1-1〕~〔1-4〕の何れかに記載の速崩壊性ゲル皮膜と経口固形製剤を備える、経口固形組成物。
〔1-6〕 経口固形製剤が錠剤である、〔1-5〕に記載の経口固形組成物。
【0021】
〔1-7〕 水分との接触によりゲル化する高分子、炭酸塩、及び酸性物質を含む、コーティング用固形組成物。
〔1-8〕 水分との接触によりゲル化する高分子が多糖類である、〔1-7〕に記載のコーティング用固形組成物。
〔1-9〕 水分との接触によりゲル化する高分子の濃度が、コーティング用固形組成物の全量に対して、16~56質量%である、〔1-7〕又は〔1-8〕に記載のコーティング用固形組成物。
〔1-10〕 炭酸塩の濃度が、コーティング用固形組成物の全量に対して、0.5~60質量%である、〔1-7〕~〔1-9〕の何れかに記載のコーティング用固形組成物。
〔1-11〕 酸性物質の濃度が、コーティング用固形組成物の全量に対して、0.5~40質量%である、〔1-7〕~〔1-10〕の何れかに記載のコーティング用固形組成物。
〔1-12〕 酸性物質の含有量が、炭酸塩の1質量部に対して、0.1~1質量部である、〔1-7〕~〔1-11〕の何れかに記載のコーティング用固形組成物。
〔1-13〕 水分との接触によりゲル化する高分子、炭酸塩、及び酸性物質を含む固形組成物の、コーティング用組成物としての使用。
〔1-14〕 水分との接触によりゲル化する高分子、炭酸塩、及び酸性物質を含む固形組成物の、コーティング用組成物の製造のための使用。
【0022】
第2実施形態
〔2-1〕 水分との接触によりゲル化する高分子を含有するゲル皮膜と経口固形製剤を備える経口固形組成物であって、密封包装されているか、又は乾燥剤と共に気密包装されている、経口固形組成物。
〔2-2〕 プラスチックボトル、プラスチックシートで成型された袋、若しくはアルミニウム層を備えるシートで成型された袋で密封包装されているか、又はプラスチックボトルで気密包装されている、〔2-1〕に記載の経口固形組成物。
〔2-3〕 PTP包装又はSP包装された経口固形組成物が、密封包装されているか、又は乾燥剤と共に気密包装されている、〔2-1〕又は〔2-2〕に記載の経口固形組成物。
〔2-4〕 アルミニウム層を備えるシートで成型された袋のアルミニウム層の厚さが5~40μmである、〔2-2〕又は〔2-3〕の何れかに記載の経口固形組成物。
〔2-5〕 密封包装の場合に、経口固形組成物と共に乾燥剤が密封包装されている、〔2-1〕~〔2-4〕の何れかに記載の経口固形組成物。
〔2-6〕 水分との接触によりゲル化する高分子が多糖類である、〔2-1〕~〔2-5〕の何れかに記載の経口固形組成物。
〔2-7〕 経口固形製剤が錠剤である、〔2-1〕~〔2-6〕の何れかに記載の経口固形組成物。
【0023】
第3実施形態
〔3-1〕 水分との接触によりゲル化する高分子を含み、グリセリン濃度がゲル皮膜全量に対して2質量%以下であり、水分との接触によりゲル化する高分子の一部又は実質的に全部が分散されたコーティング液を用いて形成されたゲル皮膜。
〔3-2〕 水分との接触によりゲル化する高分子が多糖類である、〔3-1〕に記載のゲル皮膜。
〔3-3〕 コーティング液に水以外の極性溶媒が含まれる〔3-1〕又は〔3-2〕に記載のゲル皮膜。
〔3-4〕 さらに、炭酸塩及び/又は酸性物質を含む、〔3-1〕~〔3-3〕の何れかに記載のゲル皮膜。
〔3-5〕 〔3-1〕~〔3-4〕の何れかに記載のゲル皮膜と経口固形製剤を備える、経口固形組成物。
〔3-6〕 経口固形製剤が錠剤である、〔3-5〕に記載の経口固形組成物。
【0024】
〔3-7〕 水分との接触によりゲル化する高分子を含み、グリセリン濃度が、コーティング液中の固形分の全量に対して2質量%以下であり、水分との接触によりゲル化する高分子の一部又は実質的に全部が分散されたコーティング液。
〔3-8〕 水分との接触によりゲル化する高分子が多糖類である、〔3-7〕に記載のコーティング液。
〔3-9〕 コーティング液に水以外の極性溶媒が含まれる〔3-7〕又は〔3-8〕に記載のコーティング液。
〔3-10〕 さらに、炭酸塩及び/又は酸性物質を含む、〔3-7〕~〔3-9〕の何れかに記載のコーティング液。
〔3-11〕 水分との接触によりゲル化する高分子を含み、グリセリン濃度が、コーティング液中の固形分の全量に対して2質量%以下であり、水分との接触によりゲル化する高分子の一部又は実質的に全部が分散された液体の、コーティング液としての使用。
〔3-12〕 水分との接触によりゲル化する高分子を含み、グリセリン濃度が、コーティング液中の固形分の全量に対して2質量%以下であり、水分との接触によりゲル化する高分子の一部又は実質的に全部が分散された液体の、コーティング液の製造のための使用。
【0025】
第4実施形態
〔4-1〕 水分との接触によりゲル化する高分子と、ゲル皮膜全量に対して20質量%以下の酸化チタン(TiO2)を含有し、刻印又は着色剤を用いずに、表面にマーキングが施されたゲル皮膜。
〔4-2〕 ゲル皮膜中の酸化チタン(TiO2)の濃度が、ゲル皮膜全量に対して0.1質量%以上である、〔4-1〕に記載のゲル皮膜。
〔4-3〕 水分との接触によりゲル化する高分子が多糖類である、〔4-1〕又は〔4-2〕に記載のゲル皮膜。
〔4-4〕 さらに、炭酸塩及び/又は酸性物質を含む、〔4-1〕~〔4-3〕の何れかに記載のゲル皮膜。
〔4-5〕 紫外線レーザーの照射により表面にマーキングが施されている、〔4-1〕~〔4-4〕の何れかに記載のゲル皮膜。
〔4-6〕 水分との接触によりゲル化する高分子の一部又は実質的に全部が分散されたコーティング液を用いて形成されたものである、〔4-1〕~〔4-5〕の何れかに記載のゲル皮膜。
〔4-7〕 〔4-1〕~〔4-6〕の何れかに記載のゲル皮膜と経口固形製剤を備える、経口固形組成物。
〔4-8〕 経口固形製剤が錠剤である、〔4-7〕に記載の経口固形組成物。
〔4-9〕 紫外線レーザーの照射により表面にマーキングが施されている、〔4-7〕又は〔4-8〕に記載の経口固形組成物。
【0026】
〔4-10〕 水分との接触によりゲル化する高分子と、全量に対して20質量%以下の酸化チタンを含み、表面にマーキングが施されたゲル皮膜を形成するためのコーティング用組成物。
〔4-11〕 水分との接触によりゲル化する高分子が多糖類である、〔4-10〕に記載のコーティング組用成物。
〔4-12〕 さらに、炭酸塩及び/又は酸性物質を含む、〔4-10〕又は〔4-11〕に記載のコーティング用組成物。
〔4-13〕 水分との接触によりゲル化する高分子と、全量に対して20質量%以下の酸化チタンを含む組成物の、表面にマーキングが施されたゲル皮膜を形成するためのコーティング用組成物としての使用。
〔4-14〕 水分との接触によりゲル化する高分子と、全量に対して20質量%以下の酸化チタンを含む組成物の、表面にマーキングが施されたゲル皮膜を形成するためのコーティング用組成物の製造のための使用。
【発明の効果】
【0027】
第1実施形態
経口固形製剤を本発明の第1実施形態の速崩壊性ゲル皮膜で被覆してなる経口固形組成物は、服用時は、唾液や水でゲル皮膜に含まれる水溶性高分子がゲル化して滑らかになるため、嚥下し易い。また、消化管内では、さらに水分を吸って、水溶性高分子が溶解してゲル皮膜が崩壊するため、炭酸塩と酸性物質が接触して炭酸ガスを発泡し、ゲル皮膜が消失する。従って、ゲル皮膜の存在により経口固形製剤からの有効成分の溶出が遅延しない、又はほとんど遅延しない。また、この経口固形組成物は、同じ層中に炭酸塩と酸性物質が配合されているが、嚥下が容易であるため、口中に留まり難い。従って、口中では、ゲル皮膜がほとんど崩壊せず、有効成分は実質的に溶出しない。
この経口固形組成物は、一つの層中に炭酸塩と酸性物質を含むにも拘わらず、保存安定性が良好であり、保存によるゲル皮膜の変質及び崩壊が抑制されている。
この経口固形組成物は、ゲル皮膜形成を1回のコーティング操作で行えるため、製造が容易で、コストを抑えることができ、実用性が高い。
【0028】
第2実施形態
ゲル皮膜を備える経口固形組成物は、錠剤やカプセル剤などの包装として一般に使用されているPTP包装やSP包装で包装すると保存中に変色し易いが、本発明の第2実施形態の経口固形組成物は密封包装されているか、又は乾燥剤と共に気密包装されているため、ゲル皮膜の変色が抑制されている。
【0029】
第3実施形態
本発明の第3実施形態のゲル皮膜は、グリセリン濃度が2質量%以下に抑えられているため、カビが生え難い。このため、通常の条件で流通させたり保存したりすることができ、即ち特別な管理を要さない。また、経口固形組成物の包装として通常使用されているものを採用してもカビが発生し難い。
【0030】
また、第3実施形態のゲル皮膜は、水分との接触によりゲル化する高分子を分散させたコーティング液で経口固形製剤をコーティングすることにより形成されるものであるため、この高分子を多量に含む場合でも、コーティング液の粘度が高くなり過ぎない。従って、コーティング中にコーティング装置のノズルにコーティング液が詰まることが避けられる。また、溶媒を増やすことでコーティング液中のこの高分子の濃度を低くする必要がないため、短時間でゲル皮膜を形成することができる。
【0031】
第4実施形態
本発明の第4実施形態のゲル皮膜は、酸化チタンを適切な濃度で含有するという簡単な方法で、刻印又は着色剤を用いずに、識別可能に文字などが表示されたものとなっている。文字などの表示、即ちマーキングは、紫外線レーザーを用いて行えるため、細かい文字などが識別可能に、例えば高コントラストで表示されたものとすることができる。
このゲル皮膜は、紫外線レーザー照射によりマーキングされたものとすることができるため、錠剤やカプセル剤の曲面に文字などが表示されたものとすることができる。また、熱転写印刷では成分の分解を招く可能性があり、インクジェット印刷では錠剤間の接触によりインクで錠剤が汚れたりする可能性があるが、紫外線レーザー照射してゲル皮膜の成分を変色させることでマーキングされたものとすることができるため、このような懸念がない。
また、経口固形製剤を第4実施形態のゲル皮膜で被覆した経口固形組成物は、服用時は、唾液や水でゲル皮膜に含まれる水溶性高分子がゲル化して滑らかになるため、嚥下し易い。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】ゲル皮膜を備える錠剤又は通常のフィルムコーティング層を備える錠剤をヒト患者に経口投与した後の、有効成分の血漿中濃度の推移を示す図である。
図2】第3実施形態の実施例3-1、比較例3-1、3-2の錠剤を高湿度下に静置した後のカビ発生の状態を示す写真である。
図3】第4実施形態の実施例4-1~4-6及び比較例4-1~4-4の錠剤の表面のマーキングの状態を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
(1)第1実施形態
(1-1)速崩壊性ゲル皮膜
本発明の第1実施形態の速崩壊性ゲル皮膜は、水分との接触によりゲル化する高分子、炭酸塩、及び酸性物質を含有するゲル皮膜である。このゲル皮膜は、水分との接触によりゲル化する高分子、炭酸塩、及び酸性物質を含有する単一の層である。
【0034】
水分との接触によりゲル化する高分子
水分との接触によりゲル化する高分子としては、例えば、キサンタンガム、カラヤガム、ローカストビーンガム、トラガントガム、グァーガム、タマリンドシードガム、タラガム、アラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、アルファー化デンプン、カラギーナン、ジェランガム、デキストラン、デキストリン、プルラン、ガラクトマンナン、寒天のような多糖類及びその誘導体;カルボキシビニルポリマーのようなビニルポリマー;カゼイン、ゼラチンのようなタンパク質などが挙げられる。
中でも、多糖類、ビニルポリマーが好ましく、アルギン酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー、キサンタンガムがより好ましく、キサンタンガムがさらに好ましい。
水分との接触によりゲル化する高分子は、1種又は2種以上を使用できる。
【0035】
水分と接触してゲル化する高分子の濃度は、ゲル皮膜全量に対して、16質量%以上、22質量%以上、28質量%以上、又は34質量%以上とすることができる。この範囲であれば、嚥下容易な皮膜となる。また、水分と接触してゲル化する高分子の濃度は、ゲル皮膜全量に対して、56質量%以下、50質量%以下、44質量%以下、又は38質量%以下とすることができる。この範囲であれば、ゲル皮膜表面のベタツキを抑えることができる。
ゲル皮膜全量に対する水分と接触してゲル化する高分子の濃度としては、16~56質量%、16~50質量%、16~44質量%、16~38質量%、22~56質量%、22~50質量%、22~44質量%、22~38質量%、28~56質量%、28~50質量%、28~44質量%、28~38質量%、34~56質量%、34~50質量%、34~44質量%、34~38質量%が挙げられる。
【0036】
炭酸塩
炭酸塩は、水溶性炭酸塩、水不溶性又は水難溶性の炭酸塩の何れも使用できる。水溶性の炭酸塩としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸アンモニウムなどが挙げられ、水不溶性又は水難溶性の炭酸塩としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなどが挙げられる。中でも、水溶性の炭酸塩が好ましく、炭酸水素塩がより好ましく、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムがさらに好ましい。
炭酸塩は、1種又は2種以上を使用できる。
なお、炭酸塩は、炭酸を発生させる目的で配合していない場合も、本発明でいう炭酸塩に該当する。
【0037】
炭酸塩の濃度は、速崩壊性ゲル皮膜の全量に対して、0.5質量%以上とすることができ、1質量%以上が好ましく、3質量%以上がより好ましく、5質量%以上がさらに好ましく、9質量%以上がさらにより好ましい。この範囲であれば、消化管内でゲル皮膜を崩壊させることができる程度に炭酸を発生させることができる。
また、炭酸塩の濃度は、速崩壊性ゲル皮膜の全量に対して、60質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましく、40質量%以下がさらに好ましく、30質量%以下がさらにより好ましい。25質量%以下、又は20質量%以下とすることもできる。この範囲であれば、経口固形組成物の服用前に炭酸が発生してゲル皮膜が崩壊することが抑制される。
炭酸塩の濃度としては、0.5~60質量%、0.5~50質量%、0.5~40質量%、0.5~30質量%、0.5~25質量%、0.5~20質量%、1~60質量%、1~50質量%、1~40質量%、1~30質量%、1~25質量%、1~20質量%、3~60質量%、3~50質量%、3~40質量%、3~30質量%、3~25質量%、3~20質量%、5~60質量%、5~50質量%、5~40質量%、5~30質量%、5~25質量%、5~20質量%、9~60質量%、9~50質量%、9~40質量%、9~30質量%、9~25質量%、9~20質量%が挙げられる。
【0038】
酸性物質
酸性物質は、炭酸塩と反応して炭酸を生成するものであればよい。
例えば、アジピン酸、アスコルビン酸、L-アスパラギン酸、L-グルタミン酸、安息香酸、エリソルビン酸、酢酸、酒石酸、フマル酸、フタル酸、マロン酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、マレイン酸、タンニン酸、サリチル酸などの有機酸;塩酸、リン酸などの無機酸が挙げられる。中でも、有機酸が好ましい。酸性物質は、水和物であってもよい。
酸性物質は、1種又は2種以上を使用できる。
なお、酸性物質は、炭酸を発生させる目的で配合していない場合も、本発明でいう酸性物質に該当する。
【0039】
酸性物質の濃度は、速崩壊性ゲル皮膜の全量に対して、0.5質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましく、3質量%以上がさらに好ましく、5質量%以上がさらにより好ましい。この範囲であれば、消化管内でゲル皮膜を崩壊させることができる程度に炭酸を発生させることができる。
また、酸性物質の濃度は、速崩壊性ゲル皮膜の全量に対して、40質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、20質量%以下がさらに好ましい。15質量%以下とすることもできる。この範囲であれば、経口固形組成物の服用前に炭酸が発生してゲル皮膜が崩壊することが抑制される。
酸性物質の濃度としては、0.5~40質量%、0.5~30質量%、0.5~20質量%、0.5~15質量%、1~40質量%、1~30質量%、1~20質量%、1~15質量%、3~40質量%、3~30質量%、3~20質量%、3~15質量%、5~40質量%、5~30質量%、5~20質量%、5~15質量%が挙げられる。
【0040】
また、酸性物質の含有量は、炭酸塩の1質量部に対して、0.1質量部以上が好ましく、0.3質量部以上がより好ましく、0.45質量部以上がさらに好ましい。また、1質量部以下が好ましく、0.7質量部以下がより好ましく、0.5質量部以下がさらに好ましい。この範囲であれば、消化管内でゲル皮膜を崩壊させることができる程度に炭酸を発生させることができる。
炭酸塩の1質量部に対する酸性物質の含有量としては、0.1~1質量部、0.1~0.7質量部、0.1~0.5質量部、0.3~1質量部、0.3~0.7質量部、0.3~0.5質量部、0.45~1質量部、0.45~0.7質量部、0.45~0.5質量部が挙げられる。
【0041】
炭酸塩と酸性物質との好ましい組み合わせとしては、炭酸ナトリウムとアスコルビン酸との組み合わせ、炭酸ナトリウムとクエン酸との組み合わせ、炭酸ナトリウムと酒石酸との組み合わせ、炭酸ナトリウムとリンゴ酸との組み合わせ、炭酸ナトリウムとアスパラギン酸との組み合わせ、炭酸ナトリウムとグルタミン酸との組み合わせ、炭酸カリウムとアスコルビン酸との組み合わせ、炭酸カリウムとクエン酸との組み合わせ、炭酸カリウムと酒石酸との組み合わせ、炭酸カリウムとリンゴ酸との組み合わせ、炭酸カリウムとアスパラギン酸との組み合わせ、炭酸カリウムとグルタミン酸との組み合わせ、炭酸水素ナトリウムとアスコルビン酸との組み合わせ、炭酸水素ナトリウムとクエン酸との組み合わせ、炭酸水素ナトリウムと酒石酸との組み合わせ、炭酸水素ナトリウムとリンゴ酸との組み合わせ、炭酸水素ナトリウムとアスパラギン酸との組み合わせ、炭酸水素ナトリウムとグルタミン酸との組み合わせ、炭酸水素カリウムとアスコルビン酸との組み合わせ、炭酸水素カリウムとクエン酸との組み合わせ、炭酸水素カリウムと酒石酸との組み合わせ、炭酸水素カリウムとリンゴ酸との組み合わせ、炭酸水素カリウムとアスパラギン酸との組み合わせ、炭酸水素カリウムとグルタミン酸との組み合わせ、炭酸アンモニウムとアスコルビン酸との組み合わせ、炭酸アンモニウムとクエン酸との組み合わせ、炭酸アンモニウムと酒石酸との組み合わせ、炭酸アンモニウムとリンゴ酸との組み合わせ、炭酸アンモニウムとアスパラギン酸との組み合わせ、炭酸アンモニウムとグルタミン酸との組み合わせなどが挙げられる。
これらの組み合わせにおいて、アスコルビン酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、アスパラギン酸、グルタミン酸は水和物であってもよい。
【0042】
添加物
本発明のゲル皮膜には、本発明の効果を損なわない範囲で、一般に経口固形製剤のコーティング層に配合される任意の添加物を配合することができる。
添加物としては、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、流動化剤、光沢化剤、安定化剤、抗酸化剤、乳化剤、面活性剤、可溶化剤、懸濁化剤、緩衝剤、pH調整剤、粘稠剤、吸着化剤、着色剤、矯味剤、甘味剤、香料、保存剤又は防腐剤、発泡剤、消泡剤、溶剤、水溶性コーティング剤、可塑剤などが挙げられる。添加物は、1種又は2種以上を使用できる。
下記例示した添加物の中には、水分との接触によりゲル化する高分子に該当するものもあるが、ゲル化剤以外に下記機能も有することを意味する。
【0043】
賦形剤としては、エリスリトール、乳糖・結晶セルロース球状顆粒、アメ粉、アラビアゴム、アラビアゴム末、アルファー化デンプン、部分アルファー化デンプン、デンプン(小麦デンプン、コメデンプン、バレイショデンプン、トウモロコシデンプン)、イソマル水和物(ISOMALT)、カオリン、還元パラチノース、キシリトール、L-グルタミン、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、ケイ酸処理結晶セルロース、ケイ酸マグネシウム、軽質無水ケイ酸、結晶セルロース、合成ケイ酸アルミニウム、合成ヒドロタルサイト、酸化チタン、β-シクロデキストリン、水酸化アルミニウムゲル、精製白糖、精製白糖球状顆粒、ゼラチン、D-ソルビトール、タルク、中鎖脂肪酸トリグリセリド、沈降炭酸カルシウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、デンプングリコール酸ナトリウム(カルボキシメチルスターチナトリウム)、トレハロース水和物、乳糖水和物、白糖、白糖・デンプン球状顆粒、ヒドロキシプロピルスターチ、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、ブドウ糖、プルラン、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(N)、ポリオキシエチレン(N)ポリオキシプロピレン(N)グリコール、マクロゴール(マクロゴール4000、マクロゴール6000)、マルチトール、D-マンニトール、無水乳糖、無水リン酸水素カルシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、モノステアリン酸グリセリン、リン酸一水素カルシウム、リン酸水素カルシウム水和物などが挙げられる。
【0044】
結合剤としては、アラビアゴム、アラビアゴム末、アルファー化デンプン、部分アルファー化デンプン、デンプン(小麦デンプン、コメデンプン、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン)、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、ゼラチン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、デキストリン、デンプングリコール酸ナトリウム(カルボキシメチルスターチナトリウム)、ヒドロキシプロピルスターチ、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、プルラン、マクロゴール(マクロゴール400、マクロゴール4000、マクロゴール6000)、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー分散液、アミノアルキルメタクリレートコポリマー(アミノアルキルメタクリレートコポリマーEなど)、アンモニオアルキルメタクリレートコポリマー(アミノアルキルメタクリレートコポリマーRS)、エチルセルロース、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルエチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルエチルセルロースカルシウム、カンテン末、グァーガム、コポリビドン、セタノール、セラック、デキストリン、ヒドロキシエチルセルロース、ヒプロメロース酢酸エステルコハク酸エステル、ヒプロメロースフタル酸エステル、ペクチン、ポビドン、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、ポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体、ポリビニルアルコール(部分けん化物)、ポリビニルアルコール・ポリエチレングリコール・グラフトコポリマー、メタクリル酸コポリマー(乾燥メタクリル酸コポリマーLD、メタクリル酸コポリマーL、メタクリル酸コポリマーLD、メタクリル酸コポリマーS)、メチルセルロース、エチルセルロースなどが挙げられる。
【0045】
崩壊剤としては、デンプン(小麦デンプン、コメデンプン、バレイショデンプン、トウモロコシデンプン)、デンプングリコール酸ナトリウム(カルボキシメチルスターチナトリウム)、ヒドロキシプロピルスターチ、ヒドロキシプロピルセルロース、部分アルファー化デンプン、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、軽質無水ケイ酸、結晶セルロース、合成ケイ酸アルミニウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、カルメロース、カルメロースカルシウム、ケイ酸カルシウム、ラウリル硫酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0046】
滑沢剤としては、タルク、モノステアリン酸グリセリン、ジメチルポリシロキサン(内服用)、ショ糖脂肪酸エステル、ステアリン酸、ステアリン酸塩(ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、フマル酸ステアリルナトリウム)、dl-ロイシンなどが挙げられる。
【0047】
流動化剤としては、ケイ酸カルシウム、タルク、軽質無水ケイ酸、合成ケイ酸アルミニウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムなどが挙げられる。
【0048】
光沢化剤としては、カルナウバロウ、精製パラフィン・カルナウバロウ混合ワックス、サラシミツロウ、精製セラックなどが挙げられる。
【0049】
安定化剤としては、メグルミン、クエン酸水和物、安息香酸ナトリウム、エデト酸ナトリウム水和物、ジブチルヒドロキシトルエン、キシリトール、D-ソルビトール、乳糖水和物、D-マンニトール、クエン酸ナトリウム水和物、酒石酸、無水クエン酸、DL-リンゴ酸、タルク、軽質無水ケイ酸、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、モノステアリン酸グリセリン、ショ糖脂肪酸エステル、ステアリン酸、ラウリル硫酸ナトリウム、マクロゴール(マクロゴール400、マクロゴール4000など)、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルアルコール(部分けん化物)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(N)、L-アスパラギン酸、L-アスパラギン酸ナトリウム水和物、DL-アラニン、L-アラニン、L-アルギニン、塩化ナトリウム、乾燥水酸化アルミニウムゲル、キサンタンガム、グリシン、酢酸、酢酸ナトリウム水和物、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、トコフェロール、乳酸、濃グリセリン、ブチルヒドロキシアニソール、フマル酸、プロピレングリコール、没食子酸プロピル、ポリソルベート80、無水リン酸一水素ナトリウムなどが挙げられる。
【0050】
抗酸化剤としては、無水クエン酸、クエン酸水和物、大豆レシチン、ジブチルヒドロキシトルエン、トコフェロール、没食子酸プロピルなどが挙げられる。
【0051】
乳化剤としては、モノステアリン酸グリセリン、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(N)、ポリソルベート80、中鎖脂肪酸トリグリセリド、大豆レシチン、ラウロマクロゴールなどが挙げられる。
【0052】
界面活性剤としては、モノステアリン酸グリセリン、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(N)、ポリソルベート80、ラウロマクロゴール、マクロゴール(マクロゴール400など)、ポリオキシエチレン(N)ポリオキシプロピレン(N)グリコールなどが挙げられる。
【0053】
可溶化剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(N)、ポリソルベート80、ラウロマクロゴール、ポリオキシエチレン(N)ポリオキシプロピレン(N)グリコール、中鎖脂肪酸トリグリセリド、大豆レシチン、メグルミン、D-マンニトール、クエン酸ナトリウム水和物、無水クエン酸、ショ糖脂肪酸エステル、マクロゴール(マクロゴール4000、マクロゴール6000など)、ポリビニルアルコール(部分けん化物)、L-アスパラギン酸、L-アルギニン、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、乳酸、濃グリセリン、ヒドロキシプロピルセルロース、β-シクロデキストリン、グリセリン、ダイズ油、トリアセチンなどが挙げられる。
【0054】
懸濁化剤としては、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(N)、ポリソルベート80、大豆レシチン、ショ糖脂肪酸エステル、マクロゴール(マクロゴール4000、マクロゴール6000など)、水酸化ナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、グリセリン、D-ソルビトール、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、カルボキシビニルポリマー、乾燥水酸化アルミニウムゲル、キサンタンガム、ブチルヒドロキシアニソール、プロピレングリコール、結晶セルロース、アラビアゴム、アラビアゴム末、ヒプロメロース、カンテン末、ポビドン、メチルセルロース、カオリン、カラギーナン、カルメロースナトリウム、グリセリン脂肪酸エステル、ケイ酸マグネシウムアルミニウムなどが挙げられる。
【0055】
緩衝剤としては、クエン酸ナトリウム水和物、無水クエン酸、炭酸水素ナトリウム、乳酸、クエン酸水和物、安息香酸ナトリウム、酒石酸、DL-リンゴ酸、塩化ナトリウム、酢酸、酢酸ナトリウム水和物、無水リン酸一水素ナトリウム、L-グルタミン酸、希塩酸などが挙げられる。
【0056】
pH調整剤としては、L-グルタミン、クエン酸ナトリウム水和物、無水クエン酸、炭酸水素ナトリウム、乳酸、クエン酸水和物、酒石酸、DL-リンゴ酸、酢酸、酢酸ナトリウム水和物、無水リン酸一水素ナトリウム、希塩酸、水酸化ナトリウム、メグルミン、コハク酸、アンモニア水などが挙げられる。
【0057】
粘稠剤としては、グァーガム、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシビニルポリマー、キサンタンガム、プロピレングリコール、ヒプロメロース、カラギーナン、カルメロースナトリウム、濃グリセリン、ゼラチン、ヒドロキシエチルセルロース、カロブビーンンガム、α-シクロデキストリン、ローカストビーンガムなどが挙げられる。
【0058】
吸着化剤としては、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、カオリン、軽質無水ケイ酸、合成ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、沈降炭酸カルシウムなどが挙げられる。
【0059】
着色剤としては、酸化チタン、インジゴカルミン、黄色三二酸化鉄、カルミン、黒酸化鉄、三二酸化鉄、合成食用色素(食用青色1号、食用青色2号アルミニウムレーキ、食用黄色4号、食用黄色4号アルミニウムレーキ、食用黄色5号、食用赤色2号、食用赤色3号、食用赤色102号など)、天然食用色素などが挙げられる。
【0060】
矯味剤としては、エリスリトール、キシリトール、精製白糖、D-ソルビトール、乳糖水和物、白糖、ブドウ糖、D-マンニトール、アスパルテーム、カカオ末、還元麦芽糖水アメ、還元水アメ、カンゾウ、カンゾウエキス、クエン酸水和物、クエン酸ナトリウム水和物、L-グルタミン酸、コハク酸、サッカリン、サッカリンナトリウム水和物、酒石酸、スクラロース、ステビア抽出精製物、ハッカ油、無水クエン酸、l-メントール、DL-リンゴ酸などが挙げられる。
【0061】
甘味剤としては、キシリトール、精製白糖、D-ソルビトール、乳糖水和物、白糖、ブドウ糖、D-マンニトール、アスパルテーム、還元麦芽糖水アメ、カンゾウ、カンゾウエキス、サッカリン、サッカリンナトリウム水和物、スクラロース、ステビア抽出精製物、マルチトール、アセスルファムカリウム、タウマチン(ソーマチン)などが挙げられる。
【0062】
香料としては、ハッカ油、l-メントール、バニリンなどが挙げられる。
【0063】
保存剤又は防腐剤としては、クエン酸水和物、安息香酸ナトリウム、エデト酸ナトリウム水和物、ジブチルヒドロキシトルエン、パラオキシ安息香酸エステル(パラオキシ安息香酸イソブチル、パラオキシ安息香酸イソプロピル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸ブチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸メチルなど)などが挙げられる。
【0064】
発泡剤としては、炭酸水素塩(炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムなど)、炭酸塩(炭酸マグネシウム、炭酸カルシウムなど)などが挙げられる。
【0065】
消泡剤としては、ジメチルポリシロキサン(内服用)などが挙げられる。
【0066】
溶剤としては、エタノール、水などが挙げられる。
【0067】
水分との接触によりゲル化する高分子は水溶性高分子であるが、本発明の第1実施形態のゲル皮膜は、水分との接触によりゲル化する水溶性高分子の他に、一般に、経口固形製剤の水溶性コーティング剤として使用される、水分と接触してもゲル化しない水溶性高分子を含むことができる。
このような水溶性高分子として、例えば、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキプロピルセルロース、ヒドロキプロピルメチルセルロース(ヒプロメロース)、ヒドロキプロピルセルロースフタル酸エステル、カルボキシメチルエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、フタル酸ヒプロメロース、酢酸コハク酸ヒプロメロース、酢酸セルロース、酢酸フタル酸セルロースのようなセルロース系コーティング剤;カルボキシビニルポリマー、ポリビニルアルコール、ポビドン、コポリビドン、ポリビニルアルコール-ポリエチレングリコールコポリマーのようなビニルポリマー;ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレングリコール;ポリエチレングリコール(マクロゴール);メタクリレートポリマー又はメタクリル酸ポリマーなどが挙げられる。
メタクリレートポリマー又はメタクリル酸ポリマーとしては、レーム社のアミノアルキルメタクリレートコポリマーE(オイドラギット(登録商標)E100、EPOなど)、メタクリル酸コポリマーLD(オイドラギットL30D-55、L100-55など)、メタクリル酸コポリマーL(オイドラギットL100など)、メタクリル酸コポリマーS(オイドラギットS100など)などが挙げられる。
中でも、セルロース系コーティング剤、ビニルポリマーが好ましく、ヒドロキプロピルセルロース、ヒドロキプロピルメチルセルロース、ポビドンがより好ましく、ヒドロキシプロピルメチルセルロースがさらに好ましい。
【0068】
水分との接触によりゲル化する水溶性高分子に加えて、水分と接触してもゲル化しない水溶性高分子を含む場合、水分との接触によりゲル化する水溶性高分子の濃度は、これら水溶性高分子の全量に対して、19質量%以上、28質量%以上、又は37質量%以上とすることができ、また、61質量%以下、53質量%以下、又は43質量%以下とすることができる。
水分との接触によりゲル化する水溶性高分子と水分と接触してもゲル化しない水溶性高分子の全量に対する、水分との接触によりゲル化する高分子の濃度としては、19~61質量%、19~52質量%、19~43質量%、28~61質量%、28~52質量%、28~43質量%、37~61質量%、37~52質量%、37~43質量%が挙げられる。
【0069】
可塑剤としては、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリアセチン(グリセリン三酢酸)のようなグリセリン脂肪酸エステル、流動パラフィン、ソルビタンモノラウレート、モノステアリン、クエン酸トリエチル、クエン酸トリブチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジブチル、ポロキサマー、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油などが挙げられる。
【0070】
なお、ゲル皮膜は、プルランを含まないものとすることができ、また含んでいても0.5質量%未満とすることができる。
また、ゲル皮膜は、糖アルコール(特に、エリスリトール)を含まないものとすることができ、また含んでいても40質量%未満又は90質量%超とすることができる。
また、ゲル皮膜は、多価金属化合物を含まないものとすることができる。
【0071】
膜厚
速崩壊性ゲル皮膜の厚みは、0.02mm以上、0.03mm以上、0.04mm以上、又は0.05mm以上とすることができ、また、0.4mm以下、0.3mm以下、0.2mm以下、又は0.1mm以下とすることができる。この範囲であれば、嚥下を容易にすることができると共に、経口固形製剤中の有効成分を速やかに溶出させることができる。膜厚は、複数層の速崩壊性ゲル皮膜からなる場合は、合計の厚さである。
速崩壊性ゲル皮膜の厚みとしては、0.02~0.4mm、0.02~0.3mm、0.02~0.2mm、0.02~0.1mm、0.03~0.4mm、0.03~0.3mm、0.03~0.2mm、0.03~0.1mm、0.04~0.4mm、0.04~0.3mm、0.04~0.2mm、0.04~0.1mm、0.05~0.4mm、0.05~0.3mm、0.05~0.2mm、0.05~0.1mmが挙げられる。
【0072】
(1-2)経口固形組成物
本発明の第1実施形態の経口固形組成物は、上記説明した第1実施形態の速崩壊性ゲル皮膜と経口固形製剤を備える組成物である。第1実施形態の経口固形組成物は、上記説明した第1実施形態の速崩壊性ゲル皮膜で経口固形製剤を被覆してなるものとすることができる。
【0073】
経口固形製剤は、特に限定されず、例えば、散剤、顆粒剤、細粒剤、ドライシロップ、カプセル剤(硬カプセル剤、軟カプセル剤)、錠剤、フィルム剤、舐剤、チューイングガム剤などが挙げられる。特殊な錠剤として、口腔内崩壊錠、チュアブル錠、発泡錠、分散錠、溶解錠、トローチ剤なども挙げられる。特に、嚥下し難い製剤である錠剤が好適である。
第1実施形態の速崩壊性ゲル皮膜は、経口固形組成物からの成分の溶出を阻害しない又はほとんど阻害しないため、経口固形組成物の有効成分は特に限定されない。有効成分は1種又は2種以上であり得る。従って、経口固形組成物は、医薬組成物、医薬部外品組成物、又は食品組成物として広く使用できる。
経口固形製剤は、最長径が0.1~20mmであればよい。
【0074】
経口固形製剤を覆うゲル皮膜の厚さを示すゲル皮膜の質量の比率は、経口固形製剤の全量に対して、0.1質量%以上、0.5質量%以上、1質量%、又は2質量%以上とすることができる。また、30質量%以下、20質量%以下、10質量%以下、又は7質量%以下とすることができる。この範囲であれば、嚥下を容易にすることができると共に、経口固形製剤中の有効成分を速やかに溶出させることができる。
経口固形組成物の全量に対するゲル皮膜の質量の比率としては、0.1~30質量%、0.1~20質量%、0.1~10質量%、0.1~7質量%、0.5~30質量%、0.5~20質量%、0.5~10質量%、0.5~7質量%、1~30質量%、1~20質量%、1~10質量%、1~7質量%、2~30質量%、2~20質量%、2~10質量%、2~7質量%が挙げられる。
【0075】
第1実施形態の経口固形組成物は、組成が同一又は異なる速崩壊性ゲル皮膜を複数備えることもできる。速崩壊性ゲル皮膜を複数備える場合は、それらの合計厚さを上記範囲にすることができる。
【0076】
また、速崩壊性ゲル皮膜と経口固形製剤との間、及び/又は速崩壊性ゲル皮膜の外側に、それぞれ1又は2以上の水溶性高分子含有層を備えていてよい。速崩壊性ゲル皮膜以外の水溶性高分子含有層は、炭酸塩又は酸性物質を含んでいてもよく、炭酸塩及び酸性物質を含まなくてもよい。速崩壊性ゲル皮膜と経口固形製剤との間に別の水溶性高分子含有層を備えるときは、酸や塩基に不安定な有効成分の安定性が向上する。また、ゲル皮膜はベタベタした感触を与えるが、速崩壊性ゲル皮膜の外側に別の水溶性高分子含有層を備えるときは、べたつかない経口固形組成物となる。
この水溶性高分子層の水溶性高分子としては、例えば、速崩壊性ゲル皮膜に配合できる水溶性コーティング剤(水溶性高分子)として例示した、水と接触してもゲル化しない高分子を使用することができる。また、水分と接触してゲル化する高分子も水溶性高分子であるから、使用できる。また、この水溶性高分子層に配合できる添加物は、例えば、速崩壊性ゲル皮膜に配合できる添加物として例示したものを使用することができる。水溶性高分子及び添加物は、1種又は2種以上を配合できる。
【0077】
経口固形製剤をゲル皮膜で被覆するにあたっては、常法に従い、流動層コーティング機、ワースター式流動層コーティング機、遠心流動コーティング機、転動流動コーティング機、パン型コーティング装置などの装置を用いてコーティングすることができる。
【0078】
(1-3)コーティング用固形組成物
本発明の第1実施形態は、水分との接触によりゲル化する高分子、炭酸塩、及び酸性物質を含有するコーティング用固形組成物を包含する。この組成物は、経口固形製剤を被覆するためのコーティング用固形組成物とすることができる。第1実施形態のコーティング用固形組成物は溶媒を実質的に含まず、中でも溶媒を含まない。従って、粉末状、顆粒状、ブロック状などの固体組成物である。このコーティング用固形組成物と溶媒と混合して得たコーティング液で経口固形製剤をコーティングすることにより、ゲル皮膜を備える経口固形組成物を製造することができる。従って、本発明は、第1実施形態のコーティング用固形組成物と溶媒と混合して得たコーティング液で経口固形製剤をコーティングする工程を含む、ゲル皮膜を備える経口固形組成物の製造方法を包含する。
水分との接触によりゲル化する高分子、炭酸塩、酸性物質、及び配合できる添加物の種類は、ゲル皮膜について述べた通りである。
【0079】
水分と接触してゲル化する高分子の濃度は、コーティング用固形組成物の全量に対して、16質量%以上、22質量%以上、28質量%以上、又は34質量%以上とすることができる。この範囲であれば、嚥下容易な皮膜を形成できる。また、水分と接触してゲル化する高分子の濃度は、コーティング用固形組成物の全量に対して、56質量%以下、50質量%以下、44質量%以下、又は38質量%以下とすることができる。この範囲であれば、ゲル皮膜表面のベタツキを抑えることができる。
コーティング用固形組成物の全量に対する、水分と接触してゲル化する高分子の濃度としては、16~56質量%、16~50質量%、16~44質量%、16~38質量%、22~56質量%、22~50質量%、22~44質量%、22~38質量%、28~56質量%、28~50質量%、28~44質量%、28~38質量%、34~56質量%、34~50質量%、34~44質量%、34~38質量%が挙げられる。
【0080】
水分との接触によりゲル化する水溶性高分子に加えて、水分と接触してもゲル化しない水溶性高分子を含む場合、水分との接触によりゲル化する水溶性高分子の濃度は、これら水溶性高分子の全量に対して、19質量%以上、28質量%以上、又は37質量%以上とすることができ、また、61質量%以下、52質量%以下、又は43質量%以下とすることができる。
水分との接触によりゲル化する水溶性高分子と水分と接触してもゲル化しない水溶性高分子の全量に対する、水分との接触によりゲル化する高分子の濃度としては、19~61質量%、19~52質量%、19~43質量%、28~61質量%、28~52質量%、28~43質量%、37~61質量%、37~52質量%、37~43質量%が挙げられる。
【0081】
炭酸塩の濃度は、コーティング用固形組成物の全量に対して、0.5質量%以上とすることができ、1質量%以上が好ましく、3質量%以上がより好ましく、5質量%以上がさらに好ましく、9質量%以上がさらにより好ましい。この範囲であれば、消化管内でゲル皮膜を崩壊させることができる程度に炭酸を発生させることができる。
また、炭酸塩の濃度は、コーティング用固形組成物の全量に対して、60質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましく、40質量%以下がさらに好ましく、30質量%以下がさらにより好ましい。25質量%以下、又は20質量%以下とすることもできる。この範囲であれば、経口固形組成物の服用前に炭酸が発生してゲル皮膜が崩壊することが抑制される。
コーティング用固形組成物の全量に対する炭酸塩の濃度としては、0.5~60質量%、0.5~50質量%、0.5~40質量%、0.5~30質量%、0.5~25質量%、0.5~20質量%、1~60質量%、1~50質量%、1~40質量%、1~30質量%、1~25質量%、1~20質量%、3~60質量%、3~50質量%、3~40質量%、3~30質量%、3~25質量%、3~20質量%、5~60質量%、5~50質量%、5~40質量%、5~30質量%、5~25質量%、5~20質量%、9~60質量%、9~50質量%、9~40質量%、9~30質量%、9~25質量%、9~20質量%が挙げられる。
【0082】
酸性物質の濃度は、コーティング用固形組成物の全量に対して、0.5質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましく、3質量%以上がさらに好ましく、5質量%以上がさらにより好ましい。この範囲であれば、消化管内でゲル皮膜を崩壊させることができる程度に炭酸を発生させることができる。
また、酸性物質の濃度は、コーティング用固形組成物の全量に対して、40質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、20質量%以下がさらに好ましい。15質量%以下とすることもできる。この範囲であれば、経口固形組成物の服用前に炭酸が発生してゲル皮膜が崩壊することが抑制される。
コーティング用固形組成物の全量に対に対する酸性物質の濃度としては、0.5~40質量%、0.5~30質量%、0.5~20質量%、0.5~15質量%、1~40質量%、1~30質量%、1~20質量%、1~15質量%、3~40質量%、3~30質量%、3~20質量%、3~15質量%、5~40質量%、5~30質量%、5~20質量%、5~15質量%が挙げられる。
【0083】
また、酸性物質の含有量は、炭酸塩の1質量部に対して、0.1質量部以上が好ましく、0.3質量部以上がより好ましく、0.45質量部以上がさらに好ましい。また、1質量部以下が好ましく、0.7質量部以下がより好ましく、0.5質量部以下がさらに好ましい。この範囲であれば、消化管内でゲル皮膜を崩壊させることができる程度に炭酸を発生させることができる。
炭酸塩の1質量部に対する酸性物質の含有量としては、0.1~1質量部、0.1~0.7質量部、0.1~0.5質量部、0.3~1質量部、0.3~0.7質量部、0.3~0.5質量部、0.45~1質量部、0.45~0.7質量部、0.45~0.5質量部が挙げられる。
【0084】
(2)第2実施形態
包装された経口固形組成物
本発明の第2実施形態の包装された経口固形組成物は、水分との接触によりゲル化する高分子を含有するゲル皮膜と経口固形製剤を備える経口固形組成物であって、密封包装されているか、又は乾燥剤と共に気密包装されているものである。経口固形組成物は、水分との接触によりゲル化する高分子を含有する皮膜で経口固形製剤を被覆してなる経口固形組成物とすることができる。
【0085】
ゲル皮膜
水分との接触によりゲル化する高分子の種類と濃度、配合できる添加物の種類と濃度、ゲル皮膜の膜厚などは、第1実施形態と同じである(但し、第2実施形態のゲル皮膜に対応するのは第1実施形態の速崩壊性ゲル皮膜である)。
【0086】
ゲル皮膜は、さらに、炭酸塩及び酸性物質を含むことができる。これにより、嚥下後は水分との接触により水溶性高分子が溶解して、炭酸塩と酸性物質が反応して発泡するため、消化管内でゲル皮膜が消失して、ゲル皮膜で被覆された経口固形製剤から速やかに有効成分が溶出する。ゲル皮膜は、水分との接触によりゲル化する高分子、炭酸塩、及び酸性物質を含む単一の層とすることができる。炭酸塩と酸性物質の種類、濃度及び量、層構成などは、第1実施形態と同じである。このゲル皮膜は、第2実施形態の第1局面の速崩壊性ゲル皮膜である。
第1局面の速崩壊性ゲル皮膜は、本発明の第1実施形態の速崩壊性ゲル皮膜と同じである。従って、第2実施形態の第1局面の速崩壊性ゲル皮膜を備える経口固形組成物は、第1実施形態の経口固形組成物が密封包装されているか、又は乾燥剤と共に気密包装されているものである。
【0087】
ゲル皮膜は、複数層からなるものであってもよい。例えば、水分との接触によりゲル化する高分子と炭酸塩を含む層と、水分との接触によりゲル化する高分子と酸性物質を含む層を備える多層ゲル皮膜であってもよい(第2実施形態の第2局面の速崩壊性ゲル皮膜)。炭酸塩と酸性物質の種類、濃度及び量、層構成などは、第1実施形態と同じである。
【0088】
また、ゲル皮膜は、炭酸塩又は酸性物質を含むことにより、2層以上の構造の速崩壊性ゲル皮膜を構成する層の一つとすることもできる(第2実施形態の第3局面の速崩壊性ゲル皮膜)。例えば、速崩壊性ゲル皮膜は、水溶性高分子を含有するアンダーコート、及び水分との接触によりゲル化する高分子を含有するゲルコートをこの順に備え、アンダーコートが炭酸塩を含有しゲルコートが酸性物質を含有するか、又はアンダーコートが酸性物質を含有しゲルコートが炭酸塩を含有する皮膜とすることができる。
さらに、アンダーコートとゲルコートの間に、水溶性高分子を含有する分離コートを備えることもできる。これにより、服用前に炭酸塩と酸性物質が接触して発泡することを一層効果的に抑制することができる。
水溶性高分子としては、ゲル皮膜に配合できる水溶性コーティング剤(水溶性高分子)として例示したものが挙げられるが、水分との接触によりゲル化する高分子であってもよい。
【0089】
第3局面の速崩壊性ゲル皮膜における炭酸塩の濃度は、速崩壊性ゲル皮膜の全量に対して、1重量%以上が好ましく、3重量%以上がより好ましく、5重量%以上がさらに好ましい。この範囲であれば、消化管内で速崩壊性ゲル皮膜を崩壊させることができる程度に炭酸を発生できる。
また、炭酸塩の濃度は、速崩壊性ゲル皮膜の全量に対して、25重量%以下が好ましく、20重量%以下がより好ましく、15重量%以下がさらに好ましい。この範囲であれば、経口固形組成物の服用前に炭酸が発生して速崩壊性ゲル皮膜が崩壊することが抑制される。
第3局面の速崩壊性ゲル皮膜の全量に対する炭酸塩の濃度としては、1~25質量%、1~20質量%、1~15質量%、3~25質量%、3~20質量%、3~15質量%、5~25質量%、5~20質量%、5~15質量%などが挙げられる。
【0090】
第3局面の速崩壊性ゲル皮膜における酸性物質の濃度は、速崩壊性ゲル皮膜の全量に対して、0.1重量%以上が好ましく、1重量%以上がより好ましく、3重量%以上がさらに好ましい。この範囲であれば、消化管内で速崩壊性ゲル皮膜を崩壊させることができる程度に炭酸を発生できる。
また、酸性物質の濃度は、速崩壊性ゲル皮膜の全量に対して、20重量%以下が好ましく、15重量%以下がより好ましく、10重量%以下がさらに好ましい。この範囲であれば、医薬組成物の服用前に炭酸が発生して速崩壊性ゲル皮膜が崩壊することが抑制される。
第3局面の速崩壊性ゲル皮膜の全量に対する酸性物質の濃度としては、0.1~20質量%、0.1~15質量%、0.1~10質量%、1~20質量%、1~15質量%、1~10質量%、3~20質量%、3~15質量%、3~10質量%が挙げられる。
【0091】
また、第3局面の速崩壊性ゲル皮膜における酸性物質の含有量は、炭酸塩の1重量部に対して、0.1重量部以上が好ましく、0.3重量部以上がより好ましく、0.45重量部以上がさらに好ましい。また、1重量部以下が好ましく、0.7重量部以下がより好ましく、0.5重量部以下がさらに好ましい。この範囲であれば、消化管内で速崩壊性ゲル皮膜を崩壊させることができる程度に炭酸を発生できる。
第3局面の速崩壊性ゲル皮膜における、炭酸塩の1重量部に対する酸性物質の含有量としては、0.1~1質量部、0.1~0.7質量部、0.1~0.5質量部、0.3~1質量部、0.3~0.7質量部、0.3~0.5質量部、0.45~1質量部、0.45~0.7質量部、0.45~0.5質量部が挙げられる。
【0092】
経口固形組成物
本発明の第2実施形態において、経口固形組成物は、上記説明した第2実施形態のゲル皮膜と経口固形製剤を備える組成物である。経口固形組成物は、第2実施形態のゲル皮膜で経口固形製剤を被覆したものとすることができる。
経口固形製剤の剤型、有効成分、サイズ、ゲル皮膜の厚さを示す経口固形組成物の全量に対するゲル皮膜の質量の比率、ゲル皮膜の形成に使用できる装置などは、第1実施形態と同じである(但し、第2実施形態のゲル皮膜に対応するのは第1実施形態の速崩壊性ゲル皮膜である)。また、医薬組成物、医薬部外品組成物、又は食品組成物であり得ることも第1実施形態と同じである。
経口固形組成物は、組成が同一又は異なるゲル皮膜を複数備えることもできる。ゲル皮膜を複数備える場合は、それらの合計厚さを上記範囲にすることができる。また、ゲル皮膜と経口固形製剤との間、及び/又はゲル皮膜の外側に、1又は2以上の水溶性高分子含有層を備えていてよい。水溶性高分子含有層は、水分との接触によりゲル化する高分子、水分と接触してもゲル化しない高分子の何れを含むものであってもよい。
【0093】
包装
密封包装は、気体、液体、及び固体の侵入を防ぐ包装である。例えば、プラスチックボトル、プラスチックシートで成型された袋、又はアルミニウム層を備えるシートで成型された袋(アルミピローなど)などで密封包装されていればよい。アルミニウム層を備えるシートは、アルミニウム層だけからなるシートの他に、1層又は2層以上のアルミニウム層と1層又は2層以上のプラスチック層が積層されたシートであってもよい。アルミニウム層とプラスチック層が積層されたシートは、アルミニウムシートとプラスチックシートが積層されたシート、プラスチックシートとアルミニウム蒸着層を備えるシートを含む。
ボトルは継ぎ目がない一体型のボトルとすればよい。プラスチックシートで成型された袋、アルミニウム層を備えるシートで成型された袋の密封は、例えば、シート間の接合面にPETアルミ蒸着フィルムのような接着剤として機能するプラスチック層含有フィルムを介在させたり、溶接することで行える。また、プラスチックシートで成型された袋、アルミニウム層を備えるシートで成型された袋は継ぎ目がない一体型の袋であってもよい。医薬製剤や食品サプリメントをアルミピロー包装した製品が市販されているが、通常はアルミピローで密封包装されている。また、市販品を包装しているアルミピローは、通常、1層また2層以上のアルミニウムフィルム層と1層また2層以上のプラスチック層が積層したシートで成型されているか、又は1層また2層以上のプラスチックシートと1層また2層以上のアルミニウム蒸着層を有するシートで成型されている。アルミニウム層を備えるシートは、アルミニウム層だけからなるシートの他に、1層又は2層以上のアルミニウム層と1層又は2層以上のプラスチック層が積層されたシートであってもよい。アルミニウム層とプラスチック層が積層されたシートは、アルミニウムシートとプラスチックシートが積層されたシート、プラスチックシートとアルミニウム蒸着層を備えるシートを含む。
【0094】
気密包装は、液体及び固体の侵入を防ぐ包装である。例えば、プラスチックボトル、プラスチックシートで成型された袋、又はアルミニウム層を備えるシートで成型された袋などで気密化されていればよい。蓋部と本体部を有するボトルは、通常、気密容器である。医薬製剤や食品サプリメントをプラスチックボトルで包装した製品が市販されているが、通常はプラスチックボトルで気密包装されている。中でも、本体部と蓋部との接触面にパッキングを設けたプラスチックボトルが好ましい。プラスチックボトル壁はアルミニウム層を備えることができる。プラスチックシートで成型された袋、又はアルミニウム層を備えるシートで成型された袋の気密化は、例えば、接着剤でシート間を接合することにより行える。
【0095】
経口固形組成物はそのままプラスチックボトル、プラスチックシートで成型された袋、アルミニウム層を備えるシートで成型された袋などに密封包装又は気密包装されていてもよく、或いはPTP包装やSP包装された経口固形組成物がプラスチックボトル、プラスチックシートで成型された袋、アルミニウム層含有シートで成型された袋などに密封包装又は気密包装されていてもよい。
【0096】
プラスチックとしては、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリオレフィン樹脂、環状オレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、フッ素樹脂、ポリビニルアルコール樹脂などが挙げられる。
プラスチックボトル(本体部、蓋部)又は袋は、1種又は2種以上のプラスチックを含むものであればよい。2種以上のプラスチックを含む場合、2種以上のプラスチックの混合物を含んでいてもよく、互いに異なるプラスチックを含む層が積層されたボトル又は袋であってもよく、部分により異なるプラスチックを含むボトル、キャップ又は袋であってもよい。
【0097】
ポリ塩化ビニル樹脂としては、ポリ塩化ビニル(塩化ビニル単独重合体)、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル・(メタ)アクリル酸共重合体、塩化ビニル・(メタ)アクリル酸メチル共重合体、塩化ビニル・(メタ)アクリル酸エチル共重合体、塩化ビニル・エチレン共重合体、塩化ビニル・プロピレン共重合体、塩化ビニル・塩化ビニリデン共重合体などが挙げられる。
ポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン(低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレンなど)、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・α-オレフィン共重合体、プロピレン・α-オレフィン共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・メタクリル酸共重合体、エチレン・アクリル酸エチル共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸エチル共重合体などが挙げられる。
スチレン樹脂としては、スチレン単独重合体、スチレン・エチレン共重合体、スチレン・α-オレフィン(プロピレン、ブテン、ペンテン、メチルペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、ノネン、又はデセンなど)共重合体、スチレン・アクリロニトリル共重合体などが挙げられる。
ポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートのようなポリアルキレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレートのようなポリアルキレンナフタレート、ポリ(1,4-シクロヘキシレンジメチレンテレフタレートのようなポリシクロアルキレンテレフタレートなどが挙げられる。
環状オレフィン樹脂(COP)は、環状オレフィンコポリマー(COC)を含む。
フッ素樹脂としては、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロテトラフルオロエチレンなどが挙げられる。
ポリビニルアルコール樹脂としては、ポリビニルアルコール、エチレン・ビニルアルコール共重合体などが挙げられる。
中でも、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリオレフィン樹脂が好ましく、塩化ビニルの単独重合体、ポリプロピレンがより好ましい。
【0098】
プラスチックには、可塑剤などの添加物を配合することができる。また、紫外線吸収剤、紫外線散乱剤、着色剤などを配合すれば、ゲル皮膜の変色を一層効果的に抑制できる。
【0099】
プラスチックボトルのボトル壁(蓋部と本体部を有するボトルでは少なくとも本体部壁)の厚さは、0.5mm以上、1mm以上、又は2mm以上とすることができる。この範囲であれば、ゲル皮膜の変色を抑制できる。また、プラスチックボトルのボトル壁(蓋部と本体部を有するボトルでは少なくとも本体部壁)の厚さは10mm以下とすればよく、この範囲であれば、扱い易く低コストなボトルとなる。プラスチックボトルのボトル壁の厚さとしては、0.5~10mm、1~10mm、2~10mmが挙げられる。
プラスチックボトルの形状は限定されない。例えば、筒状(円筒状、角筒状)とすることができ、筒部は中央部、下部、又は上部が膨らんでいたり、へこんでいたりしてもよい。プラスチックボトルのサイズは、経口固形組成物が1個以上入るサイズであればよい。
【0100】
プラスチックシートで成型された袋又はアルミニウム層を有するシートで成型された袋の厚さは、10μm以上、20μm以上、又は40μm以上とすることができる。この範囲であれば、ゲル皮膜の変色を抑制できる。また、プラスチックシートで成型された袋又はアルミニウム層を含むシートで成型された袋の厚さは80μm以下とすればよく、この範囲であれば、コストを抑えることができる。
また、アルミニウム層を含むシート(アルミニウム層とプラスチック層を備える積層体である場合、及びプラスチックシートにアルミニウムを蒸着したものである場合)のアルミニウム層の厚さは、5μm以上、10μm以上、15μm以上、又は20μm以上とすることができる。この範囲であれば、ゲル皮膜の変色を抑制できる。また、この場合のアルミニウム層の厚さは、40μm以下とすればよく、この範囲であれば、コストを抑えることができる。
袋のサイズは、経口固形組成物が1個以上入るサイズであればよい。
【0101】
上記の通り、気密包装の場合、経口固形組成物と共に乾燥剤を包装する。また、密封包装の場合も、経口固形組成物と共に乾燥剤を包装することができ、これにより、ゲル皮膜の変色が一層効果的に抑制される。「経口固形組成物と共に乾燥剤を包装する」は、一つの容器空間(ボトル又は袋など)内に、ゲル皮膜を備える経口固形組成物と共に乾燥剤を収容することをいう。
乾燥剤としては、シリカゲル、アロフェン、シブレット、ゼオライト、塩化カルシウム、塩化マグネシウムなどが挙げられる。中でも、シリカゲル、塩化カルシウムが好ましい。乾燥剤は1種又は2種以上を使用できる。
【0102】
(3)第3実施形態
(3-1)ゲル皮膜
本発明の第3実施形態のゲル皮膜は、水分との接触によりゲル化する高分子を含み、グリセリン濃度がゲル皮膜全量に対して2質量%以下であり、水分との接触によりゲル化する高分子の一部又は実質的に全部(特に、全部)が分散されたコーティング液を用いて形成されたゲル皮膜である。
【0103】
グリセリン
第3実施形態のゲル皮膜は、グリセリン濃度が、ゲル皮膜の全量に対して、2質量%以下であり、また1.8質量%以下、1.6質量%以下、1.4質量%以下、1.2質量%以下、又は1質量%以下とすることができる。グリセリンを実質的に含まない(特に、含まない)こともできる。これによりカビの発生を抑えることができる。
本発明において、グリセリン濃度は、配合するグリセリンの製品が水を含む場合は、その中に含まれるグリセリンのゲル皮膜全量に対する濃度である。
【0104】
水分との接触によりゲル化する高分子の種類と濃度は、第1実施形態の速崩壊性ゲル皮膜の場合と同じである。高分子濃度がこの範囲であれば、嚥下容易な皮膜となり、かつカビの発生やゲル皮膜表面のベタツキを抑えることができる。
配合できる添加物の種類と濃度又は量、ゲル皮膜の膜厚は、第1実施形態の速崩壊性ゲル皮膜と同じである(但し、第3実施形態のゲル皮膜に対応するのは第1実施形態の速崩壊性ゲル皮膜である)。
また、ゲル皮膜が、炭酸塩及び酸性物質を含む単一層である第1局面の速崩壊性ゲル皮膜、炭酸塩及び酸性物質を含む複数層からなる第2局面の速崩壊性ゲル皮膜、又は炭酸塩若しくは酸性物質を含む第3局面の速崩壊性ゲル皮膜であり得ることは、第2実施形態と同じである。炭酸塩及び酸性物質の種類、濃度又は量、層構成などは、第2実施形態と同じである。但し、第3実施形態の速崩壊性ゲル皮膜は、グリセリン濃度がゲル皮膜の全量に対して2質量%以下であり、水分との接触によりゲル化する高分子の一部又は実質的に全部が分散されたコーティング液を用いて形成されたものである。
【0105】
(3-2)コーティング液
本発明の第3実施形態は、水分との接触によりゲル化する高分子を含み、グリセリン濃度が、コーティング液中の固形分の全量に対して2質量%以下であり、水分との接触によりゲル化する高分子の一部、実質的に全部、又は全部が分散されたコーティング液を包含する。このコーティング液は、経口固形製剤をコーティングするためのものとすることができる。第3実施形態のゲル皮膜はこのコーティング液を用いて形成すればよい。
【0106】
コーティング液には、水分との接触によりゲル化する高分子の一部、実質的に全部、又は全部が分散状態で含まれる。従って、コーティング液に含まれる溶媒の一部、実質的に全部、又は全部は、水分との接触によりゲル化する高分子が溶解しない溶媒とすればよく、中でも、コーティング液に含まれる溶媒の実質的に全部、特に全部が、水分との接触によりゲル化する高分子が溶解しない溶媒であることが好ましい。このような溶媒として、低級アルコール(メタノール、エタノール、イソプロパノールなど)のような水以外の極性溶媒、アセトンのような非極性溶媒が挙げられる。中でも、水以外の極性溶媒が好ましく、エタノールがより好ましい。
また、コーティング液に含まれる溶媒が水である場合でも、水分との接触によりゲル化する高分子が、過飽和により一部分散状態で含まれていてもよい。
第3実施形態のコーティング液は、第1実施形態について例示した添加物の1又は2以上を含むことができる。
【0107】
(3-3)経口固形組成物
本発明の経口固形組成物は、上記説明した第3実施形態のゲル皮膜と経口固形製剤を備える組成物である。本発明の経口固形組成物は、第3実施形態のゲル皮膜で経口固形製剤を被覆したものとすることができる。
【0108】
経口固形製剤の剤型、有効成分、サイズ、ゲル皮膜の厚さを示す経口固形組成物の全量に対するゲル皮膜の質量の比率、ゲル皮膜の形成に使用できる装置などは、第1実施形態と同じである(但し、第3実施形態のゲル皮膜に対応するのは第1実施形態の速崩壊性ゲル皮膜である)。また、医薬組成物、医薬部外品組成物、又は食品組成物である得ることも第1実施形態と同じである。
経口固形組成物は、組成が同一又は異なるゲル皮膜を複数備えることもできる。ゲル皮膜を複数備える場合は、それらの合計厚さを上記範囲にすることができる。また、ゲル皮膜と経口固形製剤との間に、及び/又はゲル皮膜の外側に、1又は2以上の水溶性高分子含有層を備えていてよい。水溶性高分子含有層は、水分との接触によりゲル化する高分子、水分と接触してもゲル化しない高分子の何れを含むものであってもよい。
【0109】
第3実施形態の経口固形組成物は、水分との接触によりゲル化する高分子が分散されたコーティング液を用いて経口固形製剤をコーティングして、グリセリン濃度がゲル皮膜の全量に対して2質量%以下になるようにゲル皮膜を形成することにより製造できる。従って、第3実施形態は、第3実施形態のコーティング液で経口固形製剤を被覆する工程を含む、経口固形組成物の製造方法を包含する。第3実施形態のコーティング液を用いて経口固形製剤をコーティングすれば、グリセリン濃度がゲル皮膜の全量に対して2質量%以下であるゲル皮膜が形成される。
【0110】
(4)第4実施形態
(4-1)ゲル皮膜
本発明の第4実施形態のゲル皮膜は、水分との接触によりゲル化する高分子と、ゲル被膜全量に対して20質量%以下の酸化チタン(TiO2)を含有し、刻印又は着色剤を用いずに、表面にマーキングが施されたゲル皮膜である。
【0111】
酸化チタンの濃度は、ゲル皮膜全量に対して、20質量%以下であるが、15質量%以下、10質量%以下、8質量%以下、6質量%以下、又は4質量%以下とすることができる。また、酸化チタンの濃度は、ゲル皮膜全量に対して、0質量%を超えていればよいが、0.1質量%以上、0.2質量%以上、0.3質量%以上、0.4質量%以上、0.5質量%以上、0.6質量%以上、0.8質量%以上、1質量%以上、1.5質量%以上、又は2質量%以上とすることができる。この範囲であれば、紫外線レーザーの照射により文字などを識別可能に表示することができる。
ゲル皮膜全量に対する酸化チタンの濃度としては、0を超えて20質量%以下、0を超えて15質量%以下、0を超えて10質量%以下、0を超えて8質量%以下、0を超えて6質量%以下、0を超えて4質量%以下、0.1~20質量%、0.1~15質量%、0.1~10質量%、0.1~8質量%、0.1~6質量%、0.1~4質量%、0.2~20質量%、0.2~15質量%、0.2~10質量%、0.2~8質量%、0.2~6質量%、0.2~4質量%、0.3~20質量%、0.3~15質量%、0.3~10質量%、0.3~8質量%、0.3~6質量%、0.3~4質量%、0.4~20質量%、0.4~15質量%、0.4~10質量%、0.4~8質量%、0.4~6質量%、0.4~4質量%、0.5~20質量%、0.5~15質量%、0.5~10質量%、0.5~8質量%、0.5~6質量%、0.5~4質量%、0.6~20質量%、0.6~15質量%、0.6~10質量%、0.6~8質量%、0.6~6質量%、0.6~4質量%、0.8~20質量%、0.8~15質量%、0.8~10質量%、0.8~8質量%、0.8~6質量%、0.8~4質量%、1~20質量%、1~15質量%、1~10質量%、1~8質量%、1~6質量%、1~4質量%、1.5~20質量%、1.5~15質量%、1.5~10質量%、1.5~8質量%、1.5~6質量%、1.5~4質量%、2~20質量%、2~15質量%、2~10質量%、2~8質量%、2~6質量%、2~4質量%が挙げられる。
【0112】
水分との接触によりゲル化する高分子の種類と濃度、配合できる添加物の種類と濃度などは第1実施形態と同じである(但し、第4実施形態のゲル皮膜に対応するのは第1実施形態の速崩壊性ゲル皮膜である。)。第4実施形態のゲル皮膜は、酸化チタン以外の着色剤を含まないことができる。
ゲル皮膜の膜厚は、第1実施形態の速崩壊性ゲル皮膜と同じである。この範囲であれば、鮮明にマーキングされたものとなると共に、経口固形製剤中の有効成分を速やかに溶出させることができる。
【0113】
マーキング
「マーキング」は、文字、数字、記号などを表示することをいう。
第4実施形態のゲル皮膜は、経口固形製剤表面の形状を変える刻印によりゲル皮膜表面にマーキングされたものではなく、また、インクなどの着色剤を用いてゲル皮膜表面にマーキングされたもの、即ち印刷によりゲル皮膜表面にマーキングされたものでもない。第4実施形態のゲル皮膜は、紫外線レーザーによりマーキングされたものとすることができる。
【0114】
また、ゲル皮膜が、20質量%以下の酸化チタンと、炭酸塩及び酸性物質を含む単一層である第1局面の速崩壊性ゲル皮膜、20質量%以下の酸化チタンと、炭酸塩及び酸性物質を含む複数層からなる第2局面の速崩壊性ゲル皮膜、又は20質量%以下の酸化チタンと、炭酸塩若しくは酸性物質を含む第3局面の速崩壊性ゲル皮膜であり得ることは、第2実施形態と同じである。炭酸塩及び酸性物質の種類、濃度又は量、層構成などは、第2実施形態と同じである。
【0115】
(4-2)コーティング用組成物
本発明の第4実施形態は、水分との接触によりゲル化する高分子と、全量に対して20質量%以下の酸化チタンを含み、表面にマーキングが施されたゲル皮膜を形成するためのコーティング用組成物を提供する。この組成物は固形であり、従って、酸化チタンの濃度は固形分の全量に対する濃度である。このコーティング用組成物は、経口固形製剤をコーティングするためのものとすることができる。
このコーティング用組成物と溶媒を混合して得たコーティング液で経口固形製剤をコーティングすることによりゲル皮膜で被覆された経口固形組成物が得られる。溶媒としては、水、エタノールのような低級アルコールなどの極性溶媒、アセトンなどの非極性溶媒などが挙げられ、当業者であれば適した溶媒を選択できる。
コーティング液には、水分との接触によりゲル化する高分子の一部、実質的に全部、又は全部が分散状態で含まれることが好ましい。従って、コーティング液に含まれる溶媒の一部、実質的に全部、又は全部は、水分との接触によりゲル化する高分子が溶解しない溶媒であることが好ましく、中でも、コーティング液に含まれる溶媒の実質的に全部、特に全部が水分との接触によりゲル化する高分子が溶解しない溶媒であることがより好ましい。このような溶媒として、低級アルコール(メタノール、エタノール、イソプロパノールなど)のような水以外の極性溶媒、アセトンのような非極性溶媒が挙げられる。中でも、水以外の極性溶媒が好ましく、エタノールがより好ましい。また、コーティング液に含まれる溶媒が水であるとき、水分との接触によりゲル化する高分子が、過飽和により一部分散状態で含まれていてもよい。
第4実施形態のコーティング用組成物は、第1実施形態について例示した添加物の1又は2以上を含むことができる。
従って、第4実施形態のゲル皮膜は、水分との接触によりゲル化する高分子の一部又は全部が分散されたコーティング液を用いて形成された被膜であることが好ましい。
【0116】
(3)経口固形組成物
本発明の第4実施形態の経口固形組成物は、上記説明した第4実施形態のゲル皮膜と経口固形製剤を備える組成物である。第4実施形態の経口固形組成物は、第4実施形態のゲル皮膜で経口固形製剤を被覆したものとすることができる。
【0117】
経口固形製剤の剤型、有効成分、サイズ、ゲル皮膜の形成に使用する装置などは、第1実施形態と同じである(但し、第4実施形態のゲル皮膜に対応するのは第1実施形態の速崩壊性ゲル皮膜である。)。ゲル皮膜の厚さを示す経口固形組成物の全量に対するゲル皮膜の質量の比率は、第1実施形態と同じであり(但し、第4実施形態のゲル皮膜に対応するのは第1実施形態の速崩壊性ゲル皮膜である。)、この範囲であれば、ゲル皮膜表面に鮮明にマーキングを施すことができると共に、経口固形製剤中の有効成分を速やかに溶出させることができる。医薬組成物、医薬部外品組成物、又は食品組成物であり得ることも第1実施形態と同じである。
経口固形組成物は、組成が同一又は異なるゲル皮膜を複数備えることもできる。ゲル皮膜を複数備える場合は、それらの合計厚さを上記範囲にすることができる。また、ゲル皮膜と経口固形製剤との間に、1又は2以上の水溶性高分子含有層を備えていてよい。水溶性高分子含有層は、水分との接触によりゲル化する高分子、水分と接触してもゲル化しない高分子の何れを含むものであってもよい。
【0118】
(4-4)ゲル皮膜・経口固形組成物の製造方法
本発明の第4実施形態のゲル皮膜は、水分との接触によりゲル化する高分子と、ゲル皮膜全量に対して20質量%以下の酸化チタンを含有するゲル皮膜の表面に紫外線レーザーを照射する工程を含む方法で製造することができる。紫外線レーザーを照射することにより、文字、数字、記号などを表示すればよい。通常は、ゲル皮膜で経口固形製剤を被覆した後に、ゲル皮膜表面に、紫外線レーザーを照射すればよい。
従って、第4実施形態の経口固形組成物は、水分との接触によりゲル化する高分子と、ゲル皮膜全量に対して20質量%以下の酸化チタンを含有するゲル皮膜で経口固形製剤を被覆する工程と、このゲル皮膜の表面に紫外線レーザーを照射する工程を含む方法で製造することができる。
ゲル皮膜の形成に使用できる装置は、第1実施形態と同じである(但し、第4実施形態のゲル皮膜に対応するのは第1実施形態の速崩壊性ゲル皮膜である。)。
【0119】
紫外線レーザーの波長は、200nm以上、250nm以上、300nm以上、又は350nm以上とすることができ、また、550nm以下、500nm以下、450nm以下、又は400nm以下とすることができる。この範囲であれば、文字、数字、記号などを鮮明に表示することができる。
紫外線レーザーの波長としては、200~550nm、200~500nm、200~450nm、200~400nm、250~550nm、250~500nm、250~450nm、250~400nm、300~550nm、300~500nm、300~450nm、300~400nm、350~550nm、350~500nm、350~450nm、350~400nmが挙げられる。
紫外線レーザーの出力は、0.1W以上、1W以上、5W以上、又は10W以上とすることができ、また、50W以下、40W以下、30W以下、又は20W以下とすることができる。この範囲であれば、文字、数字、記号などを鮮明に表示することができる。
紫外線レーザーの出力としては、0.1~50W、0.1~40W、0.1~30W、0.1~20W、1~50W、1~40W、1~30W、1~20W、5~50W、5~40W、5~30W、5~20W、10~50W、10~40W、10~30W、10~20Wが挙げられる。
【実施例0120】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
(1)第1実施形態
(1-1)ゲル皮膜の崩壊・溶解性・滑り性の評価
アセトアミノフェンを含有する素錠の製造
アセトアミノフェン0.4 kg、D-マンニトール2.64 kg(グラニュトールS、フロイント産業株式会社)、結晶セルロース0.8 kg(セオラスPH-102、旭化成株式会社)、クロスカルメロースナトリウム120 g(Ac-Di-Sol、Dupont社)及びステアリン酸マグネシウム40 g(ステアリン酸マグネシウム植物性、太平化学産業株式会社)を、容器回転型混合機(タンブラー型混合機TM-15S、昭和化学機械工作所)に入れて混合した。混合品について、ロータリー式打錠機(VIRGO24、菊水製作所)を用いて、錠剤重量が400 mg、錠剤厚みが4.7 mmになるように打錠し、素錠とした。
【0121】
素錠の1錠あたりの成分含有量を表1-1に示す。
【表1-1】
【0122】
速崩壊性ゲル皮膜で被覆した錠剤の製造
無水エタノールにキサンタンガム(サンエースS、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社)、タルク(ML-115、富士タルク工業株式会社)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC-SL、日本曹達株式会社)、グリセリン(濃グリセリン、阪本薬品工業株式会社)、炭酸水素ナトリウム(炭酸水素ナトリウム、旭硝子株式会社)、及びクエン酸水和物(クエン酸水和物、昭和化工株式会社)を溶解、分散させ、ゲルコート溶液を調整した。上記製造した重量400 mgのアセトアミノフェン含有素錠に、コーティング機(HICOATER、フロイント産業株式会社)を用いて、所定の重量になるようにフィルムコーティングを行い、ゲル皮膜で被覆した錠剤を得た。
【0123】
実施例1-1~1-7及び比較例1-1~1-3で得た錠剤のゲル皮膜の組成を表1-2に示す。
【表1-2】
【0124】
試験1(ゲル皮膜の崩壊・溶解性の評価)
実施例1-1~1-7及び比較例1-1~1-3で得た錠剤について、溶出試験を行い、ゲル皮膜の崩壊・溶解性を評価した。
(溶出試験)
溶出試験は日局第2法(回転パドル法)に従い、試験液は水900mLを用いて行い、操作条件は、試験液温度37℃、パドル回転数50rpmで実施した(NTR-6400AC、富山産業株式会社)。試験開始5分後、10分後、15分後にサンプリングした溶出液について、高速液体クロマトグラフィーによりアセトアミノフェンの溶出量を定量し、溶出挙動を評価した。
【0125】
<HPLC条件>
カラム:InertSustain C18(4.6×150mm)
カラム温度:40℃
展開溶媒:薄めた酢酸(1→1000)/アセトニトリル混液(17:3)
展開溶媒の流量:1.0mL/分
検出器:紫外可視吸光度検出器
【0126】
15分後のアセトアミノフェンの溶出率を表1-2に示す。酸性物質と炭酸塩を含むゲル皮膜を備える実施例1-1~1-7の錠剤は、溶出率が88%以上であった。また、皮膜を備えない比較例1-2の素錠の溶出率は98.8%と非常に良好であった。また、水分と接触してもゲル化しない水溶性高分子だけを含む皮膜を備える比較例1-3の錠剤の溶出率は97.9%と非常に良好であった。一方、ゲル皮膜を備えるが、ゲル皮膜に炭酸塩を配合していない比較例1-1の錠剤は、溶出率が83.6%と低かった。比較例1-1の錠剤は、ゲル皮膜の崩壊が遅く、有効成分の溶出を阻害していることが分かる。
「経口固形製剤の処方変更の生物学的同等性試験ガイドライン」によれば、標準製剤が15分以内に85%以上溶出する場合、被験製剤も15分以内に85%以上溶出すれば生物学的に同等であるとされている(令和2年3月19日 薬生薬審発0319第1号別紙3)。通常、比較例1-3(溶出率97.9%)が標準製剤となるため、85%以上の溶出率を示す場合に、標準製剤と生物学的に同等なものとなる。
【0127】
試験2(ゲル皮膜の滑り性の評価)
実施例1-1~1-7及び比較例1-1~1-3で得た錠剤について、アクリル板上での滑り性を評価した。
アクリル板を水平に対して20°傾けて設置し、湿ったスポンジで錠剤底面を少し濡らし、アクリル板の上部に設置した。その後、設置した錠剤よりも高い位置(上流部)から、約50mLの水をゆっくりと流し、錠剤が流れるかどうかを評価した。流水で流れた場合を〇、流れなかった場合を×と判定した。
【0128】
結果を表1-2に併記する。実施例1-1~1-7及び比較例1-1で得られた全てのゲル皮膜被覆錠剤が速やかにアクリル板を滑り落ち、ゲル皮膜が機能していることが確認された。一方、皮膜を備えない比較例1-2の錠剤、及び水分と接触してもゲル化しない水溶性高分子だけを含む皮膜を備える比較例1-3の錠剤は、アクリル板への付着力が強く流れ落ち難かった。水分との接触によりゲル化する皮膜を備えることで、滑り性が良くなることが分かる。
【0129】
(1-2)ゲル皮膜の安定性の評価
ゲル皮膜を備える錠剤の製造
アセトアミノフェン200 g、D-マンニトール1.32 kg(グラニュトールS、フロイント産業株式会社)、結晶セルロース400 g(セオラスPH-102、旭化成株式会社)、クロスカルメロースナトリウム60 g(Ac-Di-Sol、Dupont社)、及びステアリン酸マグネシウム20 g(植物性、太平化学産業株式会社)を、容器回転型混合機(タンブラー型混合機TM-15S、昭和化学機械工作所)に入れて混合した。混合品について、ロータリー式打錠機(VIRGO24、菊水製作所)を用いて、錠剤重量が400 mg、錠剤厚みが4.7 mmになるように打錠し、素錠とした。
【0130】
上記素錠を、1錠あたり、キサンタンガム6.94mg、タルク0.99mg、ヒドロキシプロピルセロース3.96mg、グリセリン(濃グリセリン)0.89mg、炭酸水素ナトリウム5.34mg、クエン酸水和物2.38mgを含む1層構造のゲル皮膜で被覆した。
また、別途、上記素錠を、1錠あたり、ヒプロメロース5.33mg、炭酸水素ナトリウム2.67mgを含むアンダーコートで被覆し、さらに、キサンタンガム6.94mg、タルク1.98mg、ヒドロキシプロピルセロース7.92mg、グリセリン(濃グリセリン)1.78mg、クエン酸水和物1.19mgを含むゲルコートで被覆し、2層構造のゲル皮膜を備える錠剤を得た。
【0131】
溶出試験
各錠剤を40℃、75%RHの条件下で6か月保存した。
保存前後の各錠剤について、溶出試験を行い、ゲル皮膜の崩壊と溶解性を評価した
溶出試験は日局第2法(回転パドル法)に従い、試験液は水900mLを用いて行い、操作条件は、試験液温度37℃、パドル回転数50 rpmで実施した(NTR-6100AC、富山産業株式会社)。試験開始5分後、10分後、15分後にサンプリングした溶出液について、高速液体クロマトグラフィーによりアセトアミノフェンの溶出量を定量し、溶出挙動を評価した。
【0132】
<HPLC条件>
カラム:InertSustain C18(4.6×150mm)
カラム温度:40℃
展開溶媒: 薄めた酢酸(1→1000)/アセトニトリル混液(17:3)
展開溶媒の流量:1.0mL/分
検出器:紫外可視吸光度検出器
【0133】
1層構造のゲル皮膜を備える錠剤の試験開始15分後のアセトアミノフェンの溶出率は、保存前90.2%、6か月保存後97.5%であり、保存してもゲル皮膜が実質的に変質又は崩壊しなかった。2層構造のゲル皮膜を備える錠剤の試験開始15分後のアセトアミノフェンの溶出率は、保存前96.9%、6か月保存後96.1%であり、保存してもゲル皮膜が変質又は崩壊しなかった。1層構造のゲル皮膜はその皮膜中に炭酸水素ナトリウムとクエン酸水和物を含むが、両者が別層に含まれる2層構造のゲル皮膜と同様に安定であることが分かる。
【0134】
(1-3)生物学的同等性試験
錠剤の製造
直径13.0mm、厚み6mm、重量250mgの素錠を常法に従い製造した。素錠には、有効成分40質量%、結晶セルロース43%、ヒドロキシプロピルセルロース2.4%、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース10%、形質無水ケイ酸0.5質量%、クロスポビドン3.1質量%、ステアリン酸マグネシウム1質量%が含まれる。
【0135】
(ゲル皮膜によるコーティング)
無水エタノールにキサンタンガム(サンエースS、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社)、タルク(ML-115、富士タルク工業株式会社)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC-SL、日本曹達株式会社)、酸化チタン(KRONOS 1171、Kronos Worldwide, Inc.)を溶解又は分散させ、ゲルコート液を調整した。
上記素錠に、コーティング機(HICOATER、フロイント産業株式会社)を用いて、素錠に対するゲル皮膜の質量比が3.8質量%となるようにフィルムコーティングを行い、ゲル皮膜で被覆した錠剤を得た。
【0136】
(通常のフィルムコーティング)
精製水に、OPADRYII 85F420044 Yellowを溶解・分散させコーティング液を調製した。
上記素錠に、コーティング機(HICOATER、フロイント産業株式会社)を用いて、素錠に対する皮膜の質量比が3.8質量%となるようにフィルムコーティングを行い、皮膜で被覆した錠剤を得た。
【0137】
生物学的同等性試験
健康成人男性15名を対象に通常のフィルムコーティング錠及びゲル皮膜によるフィルムコーティング錠を用いて、休薬期間を設けた経口単回投与クロスオーバー法による生物学的同等性試験を実施した。それぞれ投与後48時間まで血漿中の有効成分濃度を測定し、薬物動態学的パラメータのAUC(血漿中濃度-時間曲線下面積)及びCmaxを比較した。
平均血漿中濃度推移グラフを図1に示す。通常のフィルムコーティング錠及びゲル皮膜によるフィルムコーティング錠におけるAUC及びCmaxについて、両製剤は生物学的に同等であることが検証された。
この結果から,ゲル皮膜が有効成分の血漿中濃度推移に影響しないことが分かる。
【0138】
(2)第2実施形態
色安定性の評価
ゲル皮膜で被覆した錠剤の製造
乳糖水和物3.384 kg(ダイラクトーズF、フロイント産業株式会社)、ヒドロキシプロピルセルロース180 g(HPC-L-FP、日本曹達株式会社)、及びステアリン酸マグネシウム36 g(植物性、太平化学産業株式会社)を、容器回転型混合機(タンブラー型混合機TM-15S、昭和化学機械工作所)に入れて混合した。混合品について、ロータリー式打錠機(VIRGO24、菊水製作所)を用いて、錠剤重量が180 mg、錠剤厚みが2.9 mmになるように打錠し、素錠とした。
【0139】
無水エタノールにキサンタンガム(サンエースS、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社)、タルク(ML-115、富士タルク工業株式会社)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC-SL、日本曹達株式会社)、酸化チタン(KRONOS 1171、Kronos Worldwide, Inc.)を溶解又は分散させ、ゲルコート液を調整した。キサンタンガムはゲルコート液中に分散している。
上記素錠に、コーティング機(HICOATER、フロイント産業株式会社)を用いて、素錠に対するゲル皮膜の質量比が3質量%となるようにフィルムコーティングを行い、ゲル皮膜で被覆した錠剤を得た。
ゲル皮膜の組成を表2-1に示す。表2-1に示すゲル皮膜の各成分分量は、コーティングされた固形組成物1錠に含まれる各成分分量と同じである。
【表2-1】
【0140】
上記の錠剤を表2-2に示す包装資材を用いて包装し、55℃、75%RHの条件下で4週間静置した。
表2-2の(1)~(8)、(11)、(12)で使用したアルミピロー(アルミネートジップ袋,株式会社メイワパックス)は、アルミニウム・ポリエチレンラミネートフィルム(PET#12/AC/PE15μm/AL#9/AC/PE40μm)で構成され、接合部はアルミニウム蒸着したPETフィルムで密封されている。ボトルは、ポリエチレン製の厚さ2mmの本体部と、ポリプロピレン製のキャップを備えるものであり、蓋部と本体部との間にパッキングが挟持されている。PTP包装は下記に示すプラスチック製の凹部とアルミニウムシートからなるものである。乾燥剤を同封したものについては、乾燥剤として塩化カルシウムを使用した。
4週間の静置前後に、錠剤表面の色彩を分光測色計(SE7700、日本電飾工業株式会社)で測定し、静置前後の色差(ΔE)を求めた。
【0141】
【表2-2】
【0142】
錠剤をアルミピローで密封包装するか、又は乾燥剤と共にボトルで気密包装することによりΔEが5以下となり(経時比較した場合、ほぼ同一と認めることができる)、変色が大きく抑えられた。乾燥剤を密封容器に同封することで変色が顕著に抑制された。一方、乾燥剤を同封せずにボトルで錠剤を気密包装した場合(表2-2の(9))、ΔEが5を超え、変色が感じられる程度の色差となった。
【0143】
(3)第3実施形態
ゲル皮膜で被覆した錠剤の製造
D-マンニトール3.384 kg(グラニュトールF、フロイント産業株式会社)、ヒドロキシプロピルセルロース180 g(HPC-L-FP、日本曹達株式会社)、及びステアリン酸マグネシウム36 g(植物性、太平化学産業株式会社)を、容器回転型混合機(タンブラー型混合機TM-15S、昭和化学機械工作所)に入れて混合した。混合品について、ロータリー式打錠機(VIRGO24、菊水製作所)を用いて、錠剤重量が180 mg、錠剤厚みが2.9 mmになるように打錠し、素錠とした。
【0144】
(実施例3-1~3-3)
無水エタノールにキサンタンガム(サンエースS、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社)、タルク(ML-115、富士タルク工業株式会社)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC-SL、日本曹達株式会社)、酸化チタン(KRONOS 1171、Kronos Worldwide, Inc.)を溶解又は分散させ、ゲルコート液を調整した。キサンタンガムはゲルコート液中に分散している。
上記素錠に、コーティング機(HICOATER、フロイント産業株式会社)を用いて、フィルムコーティングを行い、ゲル皮膜で被覆した錠剤を得た。
【0145】
(実施例3-4、比較例3-1, 3-2)
無水エタノールにキサンタンガム(サンエースS、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社)、タルク(ML-115、富士タルク工業株式会社)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC-SL、日本曹達株式会社)、グリセリン(濃グリセリン、阪本薬品工業株式会社)、酸化チタン(KRONOS 1171、Kronos Worldwide, Inc.)を溶解又は分散させ、ゲルコート液を調整した。キサンタンガムはゲルコート液中に分散している。なお、濃グリセリン中のグリセリン濃度は98~101%である。
上記素錠に、コーティング機(HICOATER、フロイント産業株式会社)を用いてフィルムコーティングを行い、ゲル皮膜で被覆した錠剤を得た。
【0146】
(比較例3-3)
ゲルコート液の調製に用いた無水エタノールを同量の精製水に替えた他は、実施例3-1と同じゲルコート液を用い、実施例3-1と同じ手順で、フィルムコーティングを行った。
キサンタンガムはゲルコート液に溶解しており、ゲルコート液は高粘度であった。コーティング操作中に、ゲルコート液がコーティング装置のノズルに詰まり、素錠に皮膜を形成することができなかった。
【0147】
実施例3-1~3-4及び比較例3-1~3-3で得た錠剤のゲル皮膜の組成を表3-1に示す。
表3-1に示すゲル皮膜の各成分分量は、コーティング液の固形分の全量に対する各成分分量と同じである。
【表3-1】
【0148】
安定性試験
実施例3-1~3-4及び比較例3-1、3-2の錠剤の各30個を、25℃、75%RHの条件下で30日間静置し、表面のカビの発生の有無を目視で観察した。30個中のカビが生えた錠剤の個数を表3-1に併記する。
実施例3-1、3-4、比較例3-1、3-2を対比すると、ゲル皮膜中のグリセリン濃度の2.0質量%と4.9質量%の間にカビが生えるグリセリン濃度の臨界点があることが分かる。実施例3-1、比較例3-1、比較例3-2の錠剤の表面の写真を図2に示す。比較例3-1、3-2の錠剤の表面にはカビが生えているが、実施例3-1の錠剤の表面にはカビが生えていないことが観察される。
また、実施例3-2は、比較例3-1と比べて水分との接触によりゲル化する高分子であるキサンタンガムの含有量が多いが、貧溶媒である無水エタノールにキサンタンガムを分散させたゲルコート液を用いたため、ゲルコート液の粘度が高くなりすぎず、従ってコーティング装置のノズルに詰まることがなく、素錠をゲル皮膜で被覆することができた。
【0149】
(4)第4実施形態
ゲル皮膜で被覆した錠剤の製造
D-マンニトール3.384 kg(グラニュトールF、フロイント産業株式会社)、ヒドロキシプロピルセルロース180 g(HPC-L-FP、日本曹達株式会社)、及びステアリン酸マグネシウム36 g(植物性、太平化学産業株式会社)を、容器回転型混合機(タンブラー型混合機TM-15S、昭和化学機械工作所)に入れて混合した。混合品について、ロータリー式打錠機(VIRGO24、菊水製作所)を用いて、錠剤重量が180 mg、錠剤厚みが2.9 mmになるように打錠し、素錠とした。
【0150】
無水エタノールにキサンタンガム(サンエースS、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社)、酸化チタン(KRONOS 1171、Kronos Worldwide, Inc.)、タルク(ML-115、富士タルク工業株式会社)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC-SL、日本曹達株式会社)を溶解又は分散させ、ゲルコート液を調整した。上記素錠に、コーティング機(HICOATER、フロイント産業株式会社)を用いてフィルムコーティングを行い、ゲル皮膜で被覆した錠剤を得た。
【0151】
実施例4-1~4-6及び比較例4-1~4-4で得た錠剤のゲル皮膜の組成を表4-1に示す。
【表4-1】
【0152】
印刷文字の識別性の評価
各錠剤に、レーザー照射装置(社名・型番)を用いて、「ピタバスタチン」「2」「アメル」を表示した。波長は355nmとした。また、エキスパンダは6000mmとし、パルスエネルギーは、40%とした。
【0153】
実施例4-1~4-6、及び比較例4-1~4-4の錠剤の文字表示面の写真を光学顕微鏡で撮影し、8bitのグレースケールに変換した。実施例4-1~4-4、比較例4-3、比較例4-4の各錠剤の文字部分と背景部分のそれぞれ5カ所のグレー値(輝度値)をImageJ(ImageJは、米国国立衛生研究所で開発され、汎用されているソフトである。)を用いて測定し、平均値を求めた。グレー値は、黒を0、白を255とし、256階調のどこに当たるかを示す値である。文字部分と背景部分のグレー値の平均値の差を見やすさの指標とした。なお、CT装置の濃度スケールは8ビット(28=256階調)であることから、256階調で示したグレー値は、通常用いられる精度である。このΔが16以上の場合に、文字が鮮明に識別できる(MEDICAL IMAGING TECHNOLOGY Vol.27, No.4, 2009, 258-262)。
背景部分と文字部分のグレー値の平均値の差(Δ)を表4-1に併記する。
比較例4-1の錠剤は文字が全く表示されなかったため、5カ所のグレー値(輝度値)をImageJを用いて測定し、最大値と最小値の差をΔとした。
また、実施例4-1~4-6及び比較例4-1~4-4の錠剤の印刷面の写真を図3に示す。
【0154】
酸化チタン濃度20質量%以下の場合、それを超える場合に比べてグレー値の差が格段に大きかった。また、酸化チタンを含まない場合は、文字は全く印刷されなかった。酸化チタンを20質量%以下の濃度で含む場合に文字が識別可能に表示されることが分かる。また、実施例4-5はキサンタンガムが非常に多く、実施例4-6はキサンタンガムが非常に少ないが、文字は鮮明に識別できた。
比較例4-2は、実施例4-1において、キサンタンガムを含まず、その分ヒドロキシプロピルセルロースを多く含む。比較例4-2の錠剤は文字が鮮明に印刷された。
【0155】
ゲル皮膜の滑り性の評価
実施例4-1~4-6及び比較例4-1~4-4の錠剤について、以下の方法でアクリル板上での滑り性を評価した。
アクリル板を水平に対して20°傾けて設置し、湿ったスポンジで錠剤底面を少し濡らし、アクリル板の上部に設置した。その後、設置した錠剤よりも高い位置(上流部)から、約50mLの水をゆっくりと流し、錠剤が流れるかどうかを評価した。流水で流れた場合を〇、流れなかった場合を×と判定した。
結果を表4-1に併記する。キサンタンガムを含まない比較例4-2の錠剤は、滑り性が悪かったが、キサンタンガムを含む実施例4-1~4-6及び比較例4-1、4-3、4-4の錠剤は滑り性が良好であった。
【産業上の利用可能性】
【0156】
錠剤などの経口固形製剤を速崩壊性ゲル皮膜で覆った第1実施形態の経口固形組成物は、嚥下障害のある患者でも、口腔内の少量の唾液で表面が滑らかになり、嚥下し易い。このため、嚥下困難な患者の服薬アドヒアランスが向上する点で、実用価値が高い。さらに、消化管内でゲル皮膜が速やかに崩壊、消失するため、有効成分の薬効を妨げない。
ゲル皮膜で被覆された経口固形組成物は一般に保存により変色し易いが、第2実施形態の経口固形組成物は、保存しても変色し難い。従って、この経口固形組成物は実用性が高い。
ゲル皮膜で被覆された経口固形組成物は一般にカビが発生し易いが、第3実施形態の経口固形組成物はカビの発生が抑えられている。また、嚥下容易性を向上させるために水分との接触でゲル化する高分子の含有量を増やしても、コーティング装置に詰まることなく、また適度な時間内にコーティングを完了できる。
第4実施形態のゲル皮膜を備える経口固形組成物は、ゲル皮膜で被覆されているにも拘らず、紫外線レーザー照射により鮮明に文字、数字、記号などが印刷されたものとすることができる。
図1
図2
図3