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▶ 日本ソリッド株式会社の特許一覧

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  • 特開-耐風機能を備えた沈殿池 図1
  • 特開-耐風機能を備えた沈殿池 図2
  • 特開-耐風機能を備えた沈殿池 図3
  • 特開-耐風機能を備えた沈殿池 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023172981
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】耐風機能を備えた沈殿池
(51)【国際特許分類】
   B01D 21/02 20060101AFI20231130BHJP
【FI】
B01D21/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022084885
(22)【出願日】2022-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】000229162
【氏名又は名称】日本ソリッド株式会社
(72)【発明者】
【氏名】波多野 倫
(57)【要約】
【課題】
風の影響を受けることがない、耐風機能を有する沈殿池を提供する。
【解決手段】
沈殿池内の水面部を、水面から5~50cm突出した浮体によって区画し、かつ区画された一区画内の表面積が1~20mである、耐風機能を備えた沈殿池。

【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
沈殿池内の水面部を、水面から5~50cm突出した浮体によって区画し、かつ区画された一区画内の表面積が1~20cmであることを特徴とする耐風機能を備えた沈殿池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上下水道、工業用水、製造用水、産業排水の処理に用いられる沈殿池に係り、さらに詳しくは耐風機能を備えた沈殿池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、沈殿池は産業の発達に伴い、水処理を行う必要があり、各地に多数の沈殿池が設置されている。しかしながら従来の沈殿池は、温度や風の影響を受け易く、特に風の影響は処理能力に悪影響を及ぼしていた。なかでも臨海地域に設置された沈殿池はその影響が大きかった。
すなわち、陸地は比熱が小さく暖まりやすく、冷え易く、一方海洋は比熱が大きいために暖まりにくく、冷えにくい性質を有する。この現象から昼間は海から陸地へ風が吹き、夜間は陸地から海に風が吹くようになる。従って特に臨海地域に設置された沈殿池は、これらの風の影響を受け所期の目的が達成されなかった。
【0003】
そもそも風は常に流れており、その風向も風速も変動している。そして風の乱れは、強弱、種々雑多の渦の不規則な流れと考えられている。すなわち一定に流れているわけではなく、絶えず早くなったり、遅くなったり、また上下、左右に変動しながら流れている。風は風向と風速の要素を持ち、立体的には水平縦(進行方向)、水平横(進行方向に直角)、鉛直(上下の方向)の3方向を持った動きである。そして風は周期が短く、細かい変動の非常に短時間の間に頻繁に風速が変化する特長を有している。
【0004】
前記したように特に臨海地域においては、日の出後3~4時間後の9時~11時頃より海から陸に向かって21時頃まで吹き続くことが多く、また日没後1~2時間後の19時~23時頃から陸から海に向かって日ノ出後まで吹き続くことが多い。
【0005】
従って臨海地域における沈殿池は、常に均一には流れない。前記したように一日中風の影響を受けるため、吹風流となり沈殿地内の流れが偏流することにより、水処理面積の減少を来し、またキャリーオーバーによる濁質の流出、温度対流による処理水質の悪化を来していた。また運転管理も極めて困難であった。
【0006】
これらの問題を解決する方法として、例えば沈殿池の天井部を覆う沈殿池が提案されている(特許文献1)。また取水口の水面部に水面保護材を設けた沈降分離装置も提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2013―146685号
【特許文献2】特開2019―122918号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の沈殿面積は、風の影響による諸問題を設計数値化されずに、諸問題をかかえている現状であり、沈殿池は風と水の流れを秩序する必要があった。
本発明は、風の影響を受け易い沈殿池の偏流による水処理面積(有効水処理面積)の減少、キャリーオーバーによる濁質の流出防止、沈殿池効率の低下に伴う処理水量の減少、温度対流による処理水質の悪化防止、運転管理の困難性を解決する方法について種々研究を行った結果本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明は、沈殿池内の水面部を水面から5~50cm突出した浮体によって区画し、かつ区画された一区画内の表面積が1~20mであることを特徴とする耐風機能を備えた沈殿池である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の沈殿池は風の影響を受けることがないため、偏流が生起することなく、水処理面積を有効に活用することができ、またキャリーオーバーによる濁質の流出を防止し、温度対流による処理水の悪化を防止することができるため、運転管理も容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】水面部に浮体を三角形状に連結した状態の平面図。
図2】水面部に浮体を四角形状に連結した状態の平面図。
図3】水面部に浮体を六角形状に連結した状態の平面図。
図4】円形沈殿池の水面部に浮体を四角形状に連結した状態の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に使用する浮体Fの形態としては、例えば円筒体、長方型板状体あるいは、円筒体の上部に長方型板状体を一体に設けたような浮体が挙げられる。
【0013】
これらの浮体Fを連結して沈殿池の水面部を水流に対して、図1に示すよう三角状に区画して設けたり、図2に示すように四角形状に区画して設けたり、さらには図3に示すように六角形状に区画して設けたりすることによって多数の区画部を設けることができる。
更に図4に示すように円形沈殿池では、沈殿池の中心から外周に向う水流に対して、台形の四角形状に区画部を設けること
ができる。
この際浮体の水面部からの突出部の高さは5~50cmであることが必要である。5cm未満であると、本願発明の目的が達成されず、他方60cmより高くすると吹風流となり、また風圧により浮体Fが損傷するようになる。
【0014】
本発明は、前記浮体Fの突出高さに加え、区画された一区画内の表面積が1~20mであることが必要である。表面積が1m未満であると風向を変えることができず、一方20m以上になると風の分散を行うことができない。
【0015】
本発明に用いる浮体Fは、各浮体の下部に垂下膜を設けたもの、例えば「パトレシア」(日本ソリッド株式会社製商品名)のような水流傾斜膜を使用することができる。また区画された浮体Fの下部に任意の形状に垂下膜列を設けることもできる。
【符号の説明】
【0016】
F・・・・浮体
図1
図2
図3
図4