(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023172996
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】基体および基体の製造方法
(51)【国際特許分類】
C30B 29/16 20060101AFI20231130BHJP
C30B 25/18 20060101ALI20231130BHJP
C23C 16/40 20060101ALI20231130BHJP
H01L 21/365 20060101ALI20231130BHJP
H01L 21/368 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
C30B29/16
C30B25/18
C23C16/40
H01L21/365
H01L21/368 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022084916
(22)【出願日】2022-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】504255685
【氏名又は名称】国立大学法人京都工芸繊維大学
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100174388
【弁理士】
【氏名又は名称】龍竹 史朗
(72)【発明者】
【氏名】西中 浩之
(72)【発明者】
【氏名】加藤 貴大
(72)【発明者】
【氏名】島添 和樹
【テーマコード(参考)】
4G077
4K030
5F045
5F053
【Fターム(参考)】
4G077AA03
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5F053HH05
(57)【要約】
【課題】高い性能と信頼性を有する半導体装置を実現することができる基体および基体の製造方法を提供する。
【解決手段】基体は、YSZ基板である基板1と、基板1上に、ビックスバイト型結晶構造を有するβ-Fe
2O
3結晶から形成された第1酸化物層2と、第1酸化物層2上に、ビックスバイト型結晶構造を有するδ-Ga
2O
3結晶から形成された第2酸化物層3と、を備える。第1酸化物層2の厚さは、2.5nm以上且つ590.2nm以下である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
立方晶系の結晶構造を有する基板と、
前記基板の上方に位置し、ビックスバイト型結晶構造を有する第1酸化物結晶から形成された第1酸化物層と、
前記第1酸化物層上に、ガリウムを含み且つビックスバイト型結晶構造を有する第2酸化物結晶から形成された第2酸化物層と、を備える、
基体。
【請求項2】
前記第2酸化物結晶は、δ-Ga2O3である、
請求項1に記載の基体。
【請求項3】
前記第1酸化物結晶は、β-Fe2O3結晶、Mn2O3結晶、Y2O3結晶、Pr2O3結晶、La2O3結晶、Sm2O3結晶またはGd2O3結晶である、
請求項1または2に記載の基体。
【請求項4】
前記第1酸化物層の厚さは、2.5nm以上且つ590.2nm以下である、
請求項1または2に記載の基体。
【請求項5】
前記基板と前記第1酸化物層との間に介在し、ビックスバイト型結晶構造を有する前記第1酸化物結晶とは異なる第3酸化物結晶から形成された第3酸化物層を更に備える、
請求項1または2に記載の基体。
【請求項6】
前記基板は、安定化ジルコニア基板、MgO基板、SrTiO3基板、MgAl2O4基板、Si基板、GaAs基板、NiO基板またはCeO2基板である、
請求項1または2に記載の基体。
【請求項7】
前記安定化ジルコニア基板は、イットリウム安定化ジルコニア基板である、
請求項6に記載の基体。
【請求項8】
立方晶系の結晶構造を有する基板を準備する準備工程と、
ミストCVD法により、前記基板の上方に、ビックスバイト型結晶構造を有する第1酸化物結晶を成長させることにより第1酸化物層を形成する第1成長工程と、
ミストCVD法により、前記第1酸化物層上に、ガリウムを含み且つビックスバイト型結晶構造を有する第2酸化物結晶を成長させることにより第2酸化物層を形成する第2成長工程と、を含む。
基体の製造方法。
【請求項9】
前記第2成長工程において、成長温度は、600℃以上且つ650℃以下である、
請求項8に記載の基体の製造方法。
【請求項10】
前記第1成長工程において、成長温度は、475℃以上且つ550℃以下である、
請求項8または9に記載の基体の製造方法。
【請求項11】
前記準備工程の後且つ前記第1成長工程の前に、ミストCVD法により、前記基板上に、ビックスバイト型結晶構造を有し且つ前記第1酸化物結晶とは異なる第3酸化物結晶を成長させることにより第3酸化物層を形成する第3成長工程を更に含む、
請求項8または9に記載の基体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基体および基体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
SiCのようなバンドギャップが比較的大きいいわゆるワイドギャップ半導体は、絶縁破壊電界強度、熱伝導度が比較的高いという特徴を有する。このようなワイドギャップ半導体の中でも特に、酸化ガリウム(Ga2O3)は、SiCよりも大きなバンドギャップを持ち、半導体材料をパワーデバイスに用いる際の性能指数であるバリガ指数が、SiCに比べて数倍大きくパワーデバイスへの適用が期待されている。これに対して、コランダム型結晶構造を有する下地基板と、コランダム型結晶構造を有する半導体層と、コランダム型結晶構造を有する絶縁膜と、を備え、下地基板、半導体層、絶縁膜が、酸化ガリウム、酸化インジウム、酸化鉄等或いはこれらの混晶から形成された半導体装置が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ワイドギャップ半導体から形成された半導体装置は、透明電極材料としてよく用いられているITO(Indium Tin Oxide)から形成された透明電極と組み合わせた構造として、太陽電池、センサ等に適用される場合がある。一方、ITOは、ビックスバイト型結晶構造とコランダム型結晶構造とを持ち、ビックスバイト型結晶構造が最も安定している。しかしながら、特許文献1に記載された半導体装置では、コランダム型の半導体層、絶縁膜を備えるため、半導体層、絶縁膜等の上に比較的不安定なコランダム型結晶構造を有するITOを成長させざるを得ないため、その分、半導体装置の性能および信頼性が低下してしまう。
【0005】
本発明は、上記事由に鑑みてなされたものであり、高い性能と信頼性を有する半導体装置を実現することができる基体および基体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る基体は、
立方晶系の結晶構造を有する基板と、
前記基板の上方に位置し、ビックスバイト型結晶構造を有する第1酸化物結晶から形成された第1酸化物層と、
前記第1酸化物層上に、ガリウムを含み且つビックスバイト型結晶構造を有する第2酸化物結晶から形成された第2酸化物層と、を備える。
【0007】
本発明に係る基体の製造方法は、
立方晶系の結晶構造を有する基板を準備する準備工程と、
ミストCVD法により、前記基板の上方に、ビックスバイト型結晶構造を有する第1酸化物結晶を成長させることにより第1酸化物層を形成する第1成長工程と、
ミストCVD法により、前記第1酸化物層上に、ガリウムを含み且つビックスバイト型結晶構造を有する第2酸化物結晶を成長させることにより第2酸化物層を形成する第2成長工程と、を含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、基体が、ビックスバイト型結晶構造を有する第1酸化物結晶から形成された第1酸化物層と、第1酸化物層上に、ガリウムを含み且つビックスバイト型結晶構造を有する第2酸化物結晶から形成された第2酸化物層と、を備える。これにより、基体の第1酸化物層、第2酸化物層に、安定したビックスバイト型結晶構造を有するITOを成長させて透明電極を形成することができるので、高い性能と信頼性とを備える半導体装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】実施形態に係るミストCVD装置の概略構成図である。
【
図4】(A)は比較例1および実施例1乃至4に係る基体についてX線回折測定により得られたプロファイルを示す図であり、(B)は実施例1、5乃至8に係る基体についてX線回折測定により得られたプロファイルを示す図である。
【
図5】(A)は比較例2乃至4および実施例9に係る基体についてX線回折測定により得られたプロファイルを示す図であり、(B)は比較例5、6および実施例9乃至11に係る基体についてX線回折測定により得られたプロファイルを示す図である。
【
図6】実施例10に係る基体についてX線回折測定により得られたプロファイルを示す図である。
【
図7】実施例10に係る基体についてφ測定法によるX線回折測定を行った結果を示す図である。
【
図8】(A)は実施例10に係る基体の基板のTEM回折スポットを示す図であり、(B)実施例10に係る基体の第2酸化物層のTEM回折スポットを示す図である。
【
図9】比較例7、8および実施例12乃至22に係る基体についてX線回折測定により得られたプロファイルを示す図である。
【
図10】比較例9乃至12および実施例23乃至25に係る基体についてX線回折測定により得られたプロファイルを示す図である。
【
図11】実施例23に係る基体についてX線回折測定により得られたプロファイルを示す図である。
【
図12】実施例23に係る基体についてφ測定法によるX線回折測定を行った結果を示す図である。
【
図13】(A)は比較例13に係る基体についてX線回折測定により得られたプロファイルを示す図であり、(B)は比較例14に係る基体についてX線回折測定により得られたプロファイルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態に係る基体について図面を参照しながら説明する。
図1(A)に示すように、本実施形態に係る基体10は、基板1と、基板1上に形成された第1酸化物層2と、第1酸化物層上に形成された第2酸化物層3と、を備える。基板1は、立方晶系の結晶構造を有する基板である。このような基板としては、立方晶系の結晶構造で安定化した安定化ジルコニア基板、MgO基板、SrTiO
3基板、MgAl
2O
4基板、Si基板、GaAs基板、NiO基板またはCeO
2基板が挙げられる。安定化ジルコニア基板としては、イットリウム安定化ジルコニア基板(YSZ基板)が挙げられる。
【0011】
第1酸化物層2は、ビックスバイト型結晶構造を有する第1酸化物結晶から形成されている。この第1酸化物結晶としては、β-Fe2O3結晶、Mn2O3結晶、Y2O3結晶、Pr2O3結晶、La2O3結晶、Sm2O3結晶、Gd2O3結晶が挙げられる。また、第1酸化物層2の厚さは、2.5nm以上且つ590.2nm以下であることが好ましい。第1酸化物層2がβ-Fe2O3結晶から形成されている場合、第1酸化物層2の厚さが2.5nm未満、または、590.2nmを超えると、第1酸化物層2上に、例えばビックスバイト型結晶構造を有するδ-Ga2O3結晶が成長しなくなってしまうためである。
【0012】
第2酸化物層3は、ガリウムを含み且つビックスバイト型結晶構造を有する第2酸化物結晶から形成され、δ-Ga2O3結晶から形成されている。
【0013】
本実施形態に係る基体の製造方法では、ミストCVD(Chemical Vapor Deposition)法を用いて、基板1上に第1酸化物結晶を成長させることにより第1酸化物層2を形成する第1成長工程と、第1酸化物層2上に第2酸化物結晶を成長させることにより第2酸化物層3を形成する第2成長工程と、が順に行われる。ミストCVD法を用いた基体の製造では、
図2に示すようなミストCVD装置が使用される。このミストCVD装置は、ガス供給源21と流量計23、53と原料供給容器31と貯水容器33と超音波振動子35と反応容器41とヒータ42とサセプタ43とを備える。ガス供給源21と原料供給容器31とはガス供給管P1を介して接続されている。原料供給容器31と反応容器41とはガス供給管P2を介して接続されている。また、ガス供給管P2には、ガス供給管P4を介してガス供給源51が接続されている。更に、反応容器41には、反応容器41内の余分なガスを排出するための排気管P3が接続されている。流量計23、53は、それぞれ、ガス供給管P1、P4に介挿され、管内を流れるガスの流量を検出する。原料供給容器31には、第1酸化物層2、第2酸化物層3を形成する酸化物の前駆体原料を溶媒(例えば水、塩酸、アンモニア・メタノール溶液)に溶解させてなる原料溶液32が貯留されている。
図2では原料供給容器31は一つのみが記載されており、第1酸化物層2と第2酸化物層3を順次形成することができるが、第1酸化物層2用と第2酸化物層3用の二つの原料供給容器31を備えて、第1酸化物層2を形成する時と第3酸化物層4を形成する時とで切り替えて連続して形成することもできる。
【0014】
第1酸化物層2を形成する酸化物の前駆体原料としては、β-ジケトン化合物、アルコール化合物、ハロゲン化物等から選択される1種類または複数種類と鉄との化合物が挙げられ、例えば鉄(III)アセチルアセトナート(Fe(C5H7O2)3)が採用される。なお、ハロゲン化物としては、塩化鉄、臭化鉄等を採用することができる。また、第2酸化物層3を形成する酸化物の前駆体原料としては、β-ジケトン化合物、アルコール化合物、ハロゲン化物等から選択される1種類または複数種類の化合物とガリウムとの化合物が挙げられ、例えばガリウム(III)アセチルアセトナート(Ga(C5H7O2)3)が採用される。なお、ハロゲン化物としては、塩化ガリウム、臭化ガリウム等を採用することができる。
【0015】
ガス供給源21は、霧状の原料溶液を、反応容器41内に送り込むための空気、窒素または酸素等のキャリアガスを原料供給容器31へ供給する。また、ガス供給源51は、霧状の原料溶液を希釈するための空気、窒素または酸素等の希釈用ガスをガス供給管P2へ供給する。貯水容器33には、超音波整合用の水34が貯められており、原料供給容器31は、その一部が貯水容器33に貯められた水34に浸かった状態で貯水容器33の内側に配置されている。貯水容器33には、超音波振動子35が固定されている。超音波振動子35で発生した超音波は、貯水容器33に貯められた整合用の水34を介して原料供給容器31に貯められた原料溶液32に伝達する。
【0016】
次に、ミストCVD装置の動作について説明する。まず、超音波振動子35が振動することにより、整合用の水34を介して原料溶液32に振動エネルギが伝達し、その振動エネルギにより原料溶液32が霧状(ミスト)になる。そして、霧状になった原料溶液が、ガス供給源21から原料供給容器31内に供給されるキャリアガスにより、ガス供給管P2へ流出する。ガス供給管P2へ流出した霧状の原料溶液とキャリアガスとは、ガス供給源51からガス供給管P4を通じてガス供給管P2内へ流入する希釈用ガスと混合されて反応容器41内に送り込まれる。このとき、流量計23を確認しながらガス供給管P1を流れるキャリアガスの流量を調節することにより、反応容器41に送り込む原料溶液の量を調節する。反応容器41内に送り込まれた霧状の原料溶液は、反応容器41内でサセプタ43に支持された基板1の表面に供給される。基板1の表面に供給された霧状の原料溶液が、ヒータ42により加熱されると、その原料溶液中の金属化合物と水とが化学反応し、基板1の表面に金属酸化物が成長する。
【0017】
第1成長工程では、原料溶液として、鉄を含む前駆体原料を溶媒に溶解させたものを使用する。また、成長温度は、475℃以上且つ550℃以下に設定されることが好ましい。特に、第1酸化物結晶が、β-Fe2O3結晶である場合、成長温度が475℃を超えると、コランダム型結晶構造を有するα-Fe2O3結晶に相転移してしまう。このため、ビックスバイト型結晶構造を有する第1酸化物結晶を基板1上に成長させる観点から成長温度は475℃以下であることが好ましい。なお、第1酸化物層の結晶性の観点から、525℃以上且つ550℃以下がより好ましい。この第1成長工程では、ビックスバイト型結晶構造を有するβ-Fe2O3結晶を基板1上に成長させる。
【0018】
第2成長工程では、原料溶液として、Gaを含む前駆体原料を溶媒に溶解させたものを使用する。また、成長温度は、600℃以上且つ650℃以下に設定されることが好ましい。この第2成長工程では、ビックスバイト型結晶構造を有するδ-Ga2O3結晶を第1酸化物層2上に成長させる。
【0019】
以上説明したように、本実施形態に係る基体10は、基体10が、ビックスバイト型結晶構造を有するβ-Fe2O3結晶から形成された第1酸化物層2と、第1酸化物層2上にビックスバイト型結晶構造を有するδ-Ga2O3結晶から形成された第2酸化物層3と、を備える。これにより、基体10の第1酸化物層2、第2酸化物層3に、安定したビックスバイト型結晶構造を有するITOを成長させて透明電極を形成することができるので、高い性能と信頼性とを備える半導体装置を実現することができる。
【0020】
また、本実施形態に係る基体10の製造方法で採用するミストCVD法は、非真空プロセスであるため、真空雰囲気を実現するための構成を設ける必要が無く、その分、装置の簡素化を図ることができる。また、ミストCVD法によれば、一般的にスパッタ法や他のCVD法に比べて、歪みやダメージの少ない薄膜が作製できる。
【0021】
以上、本発明の実施の形態に係る基体10および基体10の製造方法について説明したが、本発明は前述の実施の形態に限定されない、例えば
図3に示すように、本実施形態に係る基体20は、基板1と第1酸化物層2との間に介在し、ビックスバイト型結晶構造を有する第1酸化物層2を形成する第1酸化物結晶とは異なる第3酸化物結晶から形成された第3酸化物層4を更に備えるものであってもよい。なお、
図3において
図1と同様の構成は
図1と同一の符号を付している。第3酸化物層4は、例えばビックスバイト型結晶構造を有するIn
2O
3結晶から形成されている。
【0022】
本変形例に係る基体20の製造方法は、基板1を準備する準備工程の後且つ実施の形態で説明した第1成長工程の前に、ミストCVD法により、基板1上に、ビックスバイト型結晶構造を有する前述の第3酸化物結晶を成長させることにより第3酸化物層4を形成する第3成長工程を含む。この第3成長工程では、基板1上に例えばビックスバイト型結晶構造を有するIn2O3結晶を成長させることにより第3酸化物層4を形成する。そして、基体20の製造方法では、第3成長工程の後、第3酸化物層4上に実施の形態で説明した第1酸化物層2を形成する第1成長工程、第1酸化物層2上に実施の形態で説明した第2酸化物層3を形成する第2成長工程が順に行われる。
【0023】
実施の形態では、基板1と第1酸化物層2と第2酸化物層3とを備える基体10について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば基板1上にビックスバイト型結晶構造を有する酸化物層が1層形成されているものであってもよい。
【0024】
実施の形態において、第1酸化物層2、第2酸化物層3を製造するのに用いる方法は、ミストCVD法に限定されるものではなく、MBE(Molecular Beam Epitaxy)法、他のCVD法等が採用されてもよい。また、ミストCVD法において霧状の原料溶液を生成する方法として、例えば2流体スプレーノズルを用いる方法が採用されてもよい。
【実施例0025】
本発明に係る基体について、実施例および比較例に基づいて説明する。
【0026】
第1酸化物層を形成する際の成長温度、成長時間の少なくとも一方が互いに異なる比較例1および実施例1乃至8に係る基体について結晶構造を評価した結果について説明する。比較例1および実施例1乃至8に係る基体は、基板としてYSZ基板を用い、基板上にFe2O3結晶を成長させることにより第1酸化物層を形成する第1成長工程を行うことにより作製した。比較例1および実施例1乃至8に係る第1成長工程では、前駆体原料として、鉄(III)アセチルアセトナートを採用し、前駆体原料を純水および塩酸の混合液に前駆体原料の濃度が0.02mol/Lとなるように溶解させて得られる原料溶液を使用した。また、前述の反応容器41に送り込むキャリアガスの流量を3mol/L、希釈ガスの流量を3mol/Lとした。また、比較例1および実施例1乃至8に係る第1成長工程における成長温度(第1成長温度)および成長時間(第1酸化物層成長時間)は、それぞれ、下記表1に示すように設定した。
【0027】
【0028】
比較例1および実施例1乃至8に係る基体について、2θ-ω測定法によるX線回折測定を行い、結晶構造を評価した。X線回折測定には、CuKα(波長:1.5418A)であり出力40kV、40mAの封入管型X線源を備えたD8 DISCOVER(Bruker社製)を使用した。
図4(A)に示すように、実施例1乃至4に係る基体では、β-Fe
2O
3の(222)面に対応する回折ピークが観測された。一方、比較例1に係る基体では、β-Fe
2O
3に対応する回折ピークが観測されず、α-Fe
2O
3の(104)面に対応する回折ピークが観測された。これは、成長温度が575℃では、力学的に不安定なβ-Fe
2O
3がα-Fe
2O
3 に相転移してしまうことに起因すると考えられる。このことから、成長温度は、475℃以上且つ550℃以下が好ましいことが判った。また、実施例1、2では、ラウエフリンジを反映したプロファイルが観測されたことから、成長温度が525℃乃至550℃であれば第1酸化物層の結晶性が向上することが判った。
【0029】
また、
図4(B)に示すように、実施例1、5乃至8に係る基体の全てについてβ-Fe
2O
3の(222)面に対応する回折ピークが観測された。特に、実施例7に係る基体では、ララウエフリンジを反映したプロファイルが比較的明瞭に観測された。このことから、第1成長工程における成長時間は、10min程度が好ましいことが判った。
【0030】
次に、第2酸化物層を形成する第2成長工程における成長温度、成長時間の少なくとも一方が互いに異なる比較例2乃至6および実施例9乃至11に係る基体について、第2酸化物層の結晶構造を評価した結果について説明する。比較例2乃至6および実施例9乃至11に係る基体は、基板としてYSZ基板を用い、基板上にFe2O3結晶を成長させることにより第1酸化物層を形成する第1成長工程を行い、その後、第1酸化物層上にGa2O3結晶を成長させることにより第2酸化物層を形成する第2成長工程を行うことにより作製した。比較例2乃至6および実施例9乃至11に係る第1成長工程では、前駆体原料として、鉄(III)アセチルアセトナートを採用し、前駆体原料を純水および塩酸の混合液に前駆体原料の濃度が0.02mol/Lとなるように溶解させて得られる原料溶液を使用した。また、前述の反応容器41に送り込むキャリアガスの流量を3mol/L、希釈ガスの流量を5mol/Lとした。また、比較例2乃至4および実施例9の全てについて、第1成長工程における成長温度および成長時間を500℃、10minに設定した。また、比較例2乃至6および実施例9乃至11に係る第2成長工程では、前駆体原料として、ガリウム鉄(III)アセチルアセトナートを採用し、前駆体原料を純水および塩酸の混合液に前駆体原料の濃度が0.05mol/Lとなるように溶解させて得られる原料溶液を使用した。また、前述の反応容器41に送り込むキャリアガスの流量を3mol/L、希釈ガスの流量を5mol/Lとした。また、比較例2乃至6および実施例9乃至11に係る第2成長工程における成長温度(第2成長温度)および成長時間(第2酸化物層成長時間)は、それぞれ、下記表2に示すように設定した。
【0031】
【0032】
比較例2乃至6および実施例9乃至11に係る基体について、前述の比較例1および実施例1乃至8に係る基体について行った結晶構造の評価と同様の方法で結晶構造を評価した。
図5(A)に示すように、成長温度が750℃である比較例2に係る基体では、β-Fe
2O
3の(222)面に対応する回折ピークもδ-Ga
2O
3に対応する回折ピークも観測されなかった。また、成長温度が550℃以下である比較例3、4に係る基体では、β-Fe
2O
3の(222)面に対応する回折ピークが観測されたが、δ-Ga
2O
3に対応する回折ピークは観測されなかった。一方、成長温度が650℃である実施例9に係る基体では、β-Fe
2O
3の(222)面に対応する回折ピークに加えて、33.5deg付近にδ-Ga
2O
3の(222)面に対応する回折ピークが観測された。また、
図5(B)に示すように、成長温度がそれぞれ700℃、675℃である比較例5、6に係る基体では、β-Fe
2O
3の(222)面に対応する回折ピークもδ-Ga
2O
3に対応する回折ピークも観測されなかった。一方、成長温度が650℃、625℃、600℃である実施例9乃至11に係る基体では、いずれも、β-Fe
2O
3の(222)面に対応する回折ピークに加えて、δ-Ga
2O
3の(222)面に対応する回折ピークが観測された。このことから、第2成長工程における成長温度は、600℃以上且つ650℃以下が好ましいことが判った。また、実施例9に係る基体のX線回折測定の結果では、β-Fe
2O
3の(222)面に対応する回折ピークが実施例10、11に係る結果に比べてブロードなプロファイルが観測された。このことから、β-Fe
2O
3の結晶性をなるべく維持する観点から成長温度は625℃程度が好ましいことが判る。更に、実施例10に係る基体について、測定対象となる角度範囲の上限を40度まで広げて測定を行ったところ、
図6に示すように、YSZ基板の(111)面に対応する回折ピーク、β-Fe
2O
3の(222)面に対応する回折ピークおよびδ-Ga
2O
3の(222)面に対応する回折ピーク以外の回折ピークが確認されなかった。即ち、δ-Ga
2O
3以外のGa
2O
3結晶多形が形成されていないことが判った。
【0033】
また、実施例10に係る基体については、φ測定法によるX線回折測定を行い結晶の配向特性を評価した。ここで、Fe
2O
3からなる第1酸化物層およびGa
2O
3からなる第2酸化物層については、それぞれ、{484}面からの反射X線強度、基板については{242}面からの反射X線強度を測定した。
図7に示すように、実施例10に係る基体の基板、第1酸化物層および第2酸化物層では、基体を360度回転させたときに120度間隔で3つの対称ピークが観測された。このことからも、第1酸化物層が、立方晶系の結晶構造を有するFe
2O
3結晶、即ち、β-Fe
2O
3結晶から形成され、第2酸化物層が、立方晶系の結晶構造を有するGa
2O
3結晶、即ち、δ-Ga
2O
3結晶から形成されていることが確認できた。更に、実施例10に係る基体について、透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope:TEM)によるGa
2O
3結晶から形成された第2酸化物層の結晶構造の解析を行った。この結晶構造の解析は、弾性散乱電子を利用する制限視野電子線回折(Selected Area Electron Diffraction:SAED)法により行った。また、透過型電子顕微鏡として、JEOL JEM-4000 EX-II(日本電子社製)を使用した。実施例10に係る基体の基板についてSAED法による測定を行ったところ、
図8(A)に示すようなYSZ基板に対応する回折スポットが観測された。また、実施例10に係る基体の第2酸化物層についてSAEDによる測定を行ったところ、
図8(B)に示すような回折スポットが観測された。ここで、
図8(B)に示す回折スポットのうちYSZ基板に対応する回折スポットと形状が一致する部分に基づいて、
図8(B)に示す回折スポットの間隔から面指数と面間隔との組み合わせを見積もった。
図8(B)に示す回折スポットの間隔から見積もった面指数と面間隔との組み合わせ、δ-Ga
2O
3結晶の面間隔の理論値とを下記表3に示す。
【0034】
【0035】
表3に示すように、
図8(B)に示す回折スポットの間隔から見積もった面間隔とその理論値とは略一致することが判った。このことからも、第2酸化物層は、立方晶系のビックスバイト型結晶構造を有するδ-Ga
2O
3結晶から形成されていることが確認できた。
【0036】
次に、第2酸化物層の膜厚が互いに異なる比較例7、8および実施例12乃至22に係る基体について、第2酸化物層の結晶構造を評価した結果について説明する。比較例7、8および実施例12乃至22に係る基体は、基板としてYSZ基板を用い、基板上にFe2O3結晶を成長させることにより第1酸化物層を形成する第1成長工程を行い、その後、第1酸化物層上にGa2O3結晶を成長させることにより第2酸化物層を形成する第2成長工程を行うことにより作製した。比較例7、8および実施例12乃至22に係る第1成長工程では、前駆体原料として、鉄(III)アセチルアセトナートを採用し、前駆体原料を純水および塩酸の混合液に前駆体原料の濃度が0.02mol/Lとなるように溶解させて得られる原料溶液を使用した。また、前述の反応容器41に送り込むキャリアガスの流量を3mol/L、希釈ガスの流量を5mol/Lとした。また、比較例7、8および実施例12乃至22について、第1成長工程における成長温度(第1成長温度)および第1成長工程で形成する第1酸化物層の膜厚(第1酸化物層成長膜厚)は、それぞれ、下記表4に示すように設定した。
【0037】
【0038】
また、比較例7、8および実施例12乃至22に係る第2成長工程では、前駆体原料として、ガリウム鉄(III)アセチルアセトナートを採用し、前駆体原料を純水および塩酸の混合液の混合液に前駆体原料の濃度が0.05mol/Lとなるように溶解させて得られる原料溶液を使用した。また、前述の反応容器41に送り込むキャリアガスの流量を3mol/L、希釈ガスの流量を5mol/Lとした。また、比較例2乃至6および実施例9乃至11に係る第2成長工程における成長温度および成長時間は、それぞれ、625℃、10minに設定した。
【0039】
比較例7、8および実施例12乃至22に係る基体について、前述の比較例1および実施例1乃至8に係る基体について行った結晶構造の評価と同様の方法で結晶構造を評価した。
図9に示すように、第1酸化物層の膜厚が2.5nm以上且つ590.2nm以下の範囲内である実施例12乃至22に係る基体では、いずれも、33.5deg付近にδ-Ga2O3の(222)面に対応する回折ピークが観測された。一方、第1酸化物層の膜厚がそれぞれ885.3nm、0.8nmである比較例7、8に係る基体では、いずれも、33.5deg付近にδ-Ga2O3の(222)面に対応する回折ピークが観測されなかった。このことから、第1酸化物層の膜厚は、2.5nm以上且つ590.2nm以下であることが好ましいことが判った。
【0040】
次に、第3酸化物層を備えており、第2酸化物層を形成する第2成長工程における成長温度、成長時間の少なくとも一方が互いに異なる比較例9乃至11および実施例23乃至25に係る基体について、第2酸化物層の結晶構造を評価した結果について説明する。比較例9乃至11および実施例23乃至25に係る基体は、基板としてYSZ基板を用い、基板上にIn2O3結晶を成長させることにより第3酸化物層を形成する第3成長工程を行った後、Fe2O3結晶を成長させることにより第1酸化物層を形成する第1成長工程を行うことにより作製した。比較例9乃至11および実施例23乃至25に係る第3成長工程では、前駆体原料として、Inアセチルアセトナートを採用し、前駆体原料を純水および塩酸の混合液に前駆体原料の濃度が0.05mol/Lとなるように溶解させて得られる原料溶液を使用した。また、前述の反応容器41に送り込むキャリアガスの流量を3mol/L、希釈ガスの流量を5mol/Lとした。また、比較例9乃至11および実施例23乃至25に係る第3成長工程における成長温度および成長時間は、500℃、3minに設定した。また、比較例9乃至11および実施例23乃至25に係る第1成長工程では、前駆体原料として、鉄(III)アセチルアセトナートを採用し、前駆体原料を純水および塩酸の混合液に前駆体原料の濃度が0.02mol/Lとなるように溶解させて得られる原料溶液を使用した。また、前述の反応容器41に送り込むキャリアガスの流量を3mol/L、希釈ガスの流量を3mol/Lとした。また、比較例9乃至12および実施例23乃至25に係る第1成長工程における成長温度(第1成長温度)および成長時間(第1酸化物層成長時間)は、それぞれ、下記表5に示すように設定した。
【0041】
【0042】
比較例9乃至11および実施例23乃至25に係る基体について、前述の比較例1および実施例1乃至8に係る基体について行った結晶構造の評価と同様の方法で結晶構造を評価した。
図10に示すように、第1成長工程における成長温度が650℃である比較例9に係る基体並びに成長温度が400℃以下である比較例10乃至12に係る基体では、β-Fe
2O
3の(222)面に対応する回折ピークが観測されなかった。一方、成長温度が450℃以上且つ550℃以下である実施例23乃至25に係る基体では、それぞれ、β-Fe
2O
3の(222)面に対応する回折ピークが観測された。このことから、In
2O
3結晶からなる第3酸化物層上に、β-Fe
2O
3結晶からなる第1酸化物層を形成する場合の第1成長工程における成長温度は、450℃以上且つ550℃以下が好ましいことが判った。
【0043】
次に、基板と第3酸化物層と第1酸化物層と第2酸化物層とを備える実施例26に係る基体について結晶構造を評価した結果について説明する。実施例26に係る基体は、基板としてYSZ基板を用い、基板上にIn2O3結晶を成長させることにより第3酸化物層を形成する第3成長工程を行った後、第3酸化物層上にFe2O3結晶を成長させることにより第1酸化物層を形成する第1成長工程を行い、その後、第1酸化物層上にGa2O3結晶を成長させることにより第2酸化物層を形成する第2成長工程を行うことにより作製した。実施例26に係る第3成長工程は、前述の比較例9乃至11および実施例23乃至25に係る第3成長工程と同じ作製方法および作製条件を採用した。また、実施例26に係る第1成長工程および第2成長工程は、実施例10に係る第1成長工程および第2成長工程と同じ作製方法および作製条件を採用した。
【0044】
実施例26に係る基体について、前述の比較例1および実施例1乃至8に係る基体について行った結晶構造の評価と同様の方法で結晶構造を評価した。
図11に示すように、実施例23に係る基体では、In
2O
3の(222)面に対応する回折ピーク、β-Fe
2O
3の(222)面に対応する回折ピークに加えて、δ-Ga
2O
3の(222)面に対応する回折ピークが観測された。特に、δ-Ga
2O
3の(222)面に対応する回折ピークの強度は、実施例10に係るδ-Ga
2O
3の(222)面に対応する回折ピークの強度よりも大きくなった。このことから、In
2O
3の結晶から形成された第3酸化物層を基板と第1酸化物層との間に介在させることにより、第3酸化物層と第1酸化物層との間での格子定数差が、基板と第1酸化物層との間での格子定数差に比べて小さくなったことが影響していると考えられる。
【0045】
また、実施例26に係る基体について、φ測定法によるX線回折測定を行い結晶の配向特性を評価した。ここで、Fe
2O
3からなる第1酸化物層、Ga
2O
3からなる第2酸化物層およびIn
2O
3からなる第3酸化物層については、それぞれ、{484}面からの反射X線強度、基板については{242}面からの反射X線強度を測定した。
図12に示すように、実施例10に係る基体の基板、第1酸化物層および第2酸化物層では、基体を360度回転させたときに120度間隔で3つの対称ピークが観測された。このことからも、第1酸化物層が、立方晶系の結晶構造を有するFe
2O
3結晶、即ち、β-Fe
2O
3結晶から形成され、第2酸化物層が、立方晶系の結晶構造を有するGa
2O
3結晶、即ち、δ-Ga
2O
3結晶から形成されていることが確認できた。
【0046】
次に、第1酸化物層を備えていない基体における第2酸化物層の結晶構造について評価した結果について説明する。比較例13に係る基体は、基板としてYSZ基板を用い、基板上にIn2O3結晶を成長させることにより第3酸化物層を形成する第3成長工程を行った後、第3酸化物層上にGa2O3結晶を成長させることにより第2酸化物層を形成する第2成長工程を行うことにより作製した。また、比較例14に係る基体は、基板としてYSZ基板を用い、基板上にGa2O3結晶を成長させることにより第2酸化物層を形成する第2成長工程を行うことにより作製した。比較例13に係る第3成長工程は、前述の比較例9乃至11および実施例23乃至25に係る第3成長工程と同じ作製方法および作製条件を採用した。また、比較例13、14に係る第2成長工程は、実施例10に係る第2成長工程と同じ作製方法および作製条件を採用した。
【0047】
比較例13、14に係る基体について、前述の比較例1および実施例1乃至8に係る基体について行った結晶構造の評価と同様の方法で結晶構造を評価した。
図13(A)に示すように、In
2O
3からなる第3酸化物層上にGa
2O
3からなる第2酸化物層が形成された比較例13に係る基体では、斜方晶系の結晶構造を有するκ-Ga
2O
3の(004)面に対応する回折ピークが観測されたが、δ-Ga
2O
3に対応する回折ピークが観測されなかった。また、
図13(B)に示すように、基板上に直接Ga
2O
3から形成された第2酸化物層が形成された基体でも、κ-Ga
2O
3の(004)面に対応する回折ピークが観測されたが、δ-Ga
2O
3に対応する回折ピークが観測されなかった。このことから、β-Fe
2O
3から形成された第1酸化物層がδ-Ga
2O
3から形成された第2酸化物層を形成する上で重要であることが判った。
1:基板、2:第1酸化物層、3:第2酸化物層、4:第3酸化物層、10,20:基体、21,51:ガス供給源、23,53:流量計、31:原料供給容器、32:原料溶液、33:貯水容器、34:水、35:超音波振動子、41:反応容器、42:ヒータ、43:サセプタ、P1,P2,P4:ガス供給管、P3:排気管