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特開2023-173006被膜剥離方法、被膜剥離管の製造方法および被膜剥離装置
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  • 特開-被膜剥離方法、被膜剥離管の製造方法および被膜剥離装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173006
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】被膜剥離方法、被膜剥離管の製造方法および被膜剥離装置
(51)【国際特許分類】
   B29B 17/02 20060101AFI20231130BHJP
【FI】
B29B17/02 ZAB
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022084936
(22)【出願日】2022-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】000208695
【氏名又は名称】第一高周波工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100365
【弁理士】
【氏名又は名称】増子 尚道
(74)【代理人】
【識別番号】100100066
【弁理士】
【氏名又は名称】愛智 宏
(72)【発明者】
【氏名】羽石 亮平
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 修也
(72)【発明者】
【氏名】吉田 博隆
【テーマコード(参考)】
4F401
【Fターム(参考)】
4F401AA03
4F401AA09
4F401AA10
4F401AA13
4F401AD02
4F401CA35
4F401CA39
4F401CA48
4F401CA59
4F401CB04
(57)【要約】
【課題】フランジを備えたライニング管から効率良く被膜を剥離除去する。
【解決手段】管本体2の端部にフランジ3を有すると共に少なくとも管本体内周面とフランジ表面に被膜4,5を有するライニング管1から被膜を剥離する被膜剥離装置11で、ライニング管を管軸周りに回転させる回転装置と、管本体端部及びフランジを同時に加熱可能な誘導加熱コイル12と、回転装置によってライニング管が回転されることにより管本体端部の被膜が周方向に切断されるように管本体の端部の被膜に対して切り込みを入れる切込装置21を備え、誘導加熱コイルは、管本体端部内周面に対向するように配置して管本体端部を加熱可能な管本体加熱コイル部13と、フランジ表面に対向するように配置してフランジを加熱可能なフランジ加熱コイル部14を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ライニング管から被膜を剥離する被膜剥離方法であって、
前記ライニング管は、
管本体と、
前記管本体の少なくとも一端に備えられたフランジと、
少なくとも前記管本体の内周面および前記フランジの表面に形成された被膜と
を備えており、
前記被膜剥離方法は、
前記ライニング管を管軸周りに回転させる回転操作と、
前記管本体の一端部を前記管本体の内側から加熱する管本体加熱操作と、
前記フランジを前記フランジの表面側から加熱するフランジ加熱操作と、
前記回転操作により前記ライニング管が回転されることによって前記管本体の一端部の被膜が周方向に切断されるように当該管本体の一端部の被膜に対して切り込みを入れる切込操作と
を同時に行う加熱切断工程を含む
ことを特徴とする被膜剥離方法。
【請求項2】
前記管本体加熱操作および前記フランジ加熱操作は、誘導加熱コイルを使用して行い、
当該誘導加熱コイルは、
前記管本体の内周面に対向させるように配置可能な管本体加熱コイル部と、
前記フランジの表面に対向させるように配置可能なフランジ加熱コイル部と
を有する
請求項1に記載の被膜剥離方法。
【請求項3】
前記管本体加熱コイル部と、前記フランジ加熱コイル部は、連続した導電体により一連に形成されている
請求項2に記載の被膜剥離方法。
【請求項4】
前記フランジ加熱コイル部の巻数が、前記管本体加熱コイル部の巻数より多い
請求項2または3に記載の被膜剥離方法。
【請求項5】
前記管本体加熱操作および前記フランジ加熱操作は、前記被膜が軟化する温度以上で且つ前記被膜が粘性を持つ温度未満で行う
請求項1から3のいずれか一項に記載の被膜剥離方法。
【請求項6】
前記切込操作において切り込みを入れる場所である切込点が、
前記管本体の管軸方向について前記管本体加熱コイル部による加熱範囲と重なり、且つ、前記管本体の周方向について前記管本体加熱コイル部による加熱範囲から外れる位置
になるようにする
請求項2または3に記載の被膜剥離方法。
【請求項7】
前記切込操作は、前記被膜に対して切断刃を押し当てることにより行う
請求項6に記載の被膜剥離方法。
【請求項8】
ライニング管から被膜を剥離する被膜剥離方法であって、
前記ライニング管は、
管本体と、
前記管本体の少なくとも一端に備えられたフランジと、
少なくとも前記管本体の内周面および前記フランジの表面に形成された被膜と
を備えており、
前記被膜剥離方法は、
前記ライニング管を管軸周りに回転させる回転操作と、
前記管本体の一端部を前記管本体の外側から加熱する管本体加熱操作と、
前記フランジを前記フランジの裏面側から加熱するフランジ加熱操作と、
前記回転操作により前記ライニング管が回転されることによって前記管本体の一端部の被膜が周方向に切断されるように当該管本体の一端部の被膜に対して切り込みを入れる切込操作と
を同時に行う加熱切断工程を含み、
前記管本体加熱操作および前記フランジ加熱操作は、誘導加熱コイルを使用して行い、
当該誘導加熱コイルは、
前記管本体の外周面に対向させるように配置可能な管本体加熱コイル部と、
前記フランジの裏面に対向させるように配置可能なフランジ加熱コイル部と
を有する
ことを特徴とする被膜剥離方法。
【請求項9】
ライニング管から被膜を剥離除去した被膜剥離管を製造する方法であって、
前記ライニング管は、
管本体と、
前記管本体の少なくとも一端に備えられたフランジと、
少なくとも前記管本体の内周面および前記フランジの表面に形成された被膜と
を備えており、
前記方法は、
前記ライニング管を用意する工程と、
前記ライニング管を用意する工程の後、前記ライニング管を管軸周りに回転させる回転操作、前記管本体の一端部を前記管本体の内側から加熱する管本体加熱操作、前記フランジを前記フランジの表面側から加熱するフランジ加熱操作、および、前記回転操作により前記ライニング管が回転されることによって前記管本体の一端部の被膜が周方向に切断されるように当該管本体の一端部の被膜に対して切り込みを入れる切込操作、を同時に行う加熱切断工程と
を含む
ことを特徴とする被膜剥離管の製造方法。
【請求項10】
管本体の端部にフランジを有するとともに少なくとも当該管本体の内周面とフランジの表面に被膜を有するライニング管から前記被膜を剥離する被膜剥離装置であって、
前記ライニング管を管軸周りに回転させる回転装置と、
前記管本体の端部および前記フランジを同時に加熱可能な誘導加熱コイルと、
前記回転装置によって前記ライニング管が回転されることにより前記管本体の端部の被膜が周方向に切断されるように当該管本体の端部の被膜に対して切り込みを入れる切込装置と
を備え、
前記誘導加熱コイルは、
前記管本体の端部の内周面に対向するように配置して当該管本体の端部を加熱可能な管本体加熱コイル部と、
前記フランジの表面に対向するように配置して当該フランジを加熱可能なフランジ加熱コイル部と
を有する
ことを特徴とする被膜剥離装置。
【請求項11】
前記管本体加熱コイル部と、前記フランジ加熱コイル部は、連続した導電体により一連に形成されている
請求項10に記載の被膜剥離装置。
【請求項12】
前記フランジ加熱コイル部の巻数が、前記管本体加熱コイル部の巻数より多い
請求項11に記載の被膜剥離装置。
【請求項13】
前記切込装置により切り込みが入れられる場所である切込点が、
前記管本体の管軸方向について前記管本体加熱コイル部による加熱範囲と重なり、且つ、前記管本体の周方向について前記管本体加熱コイル部による加熱範囲から外れる位置
にある
請求項10から12のいずれか一項に記載の被膜剥離装置。
【請求項14】
前記切込装置は、前記切込点において前記被膜に押し当てることにより前記被膜に切り込みを入れることが可能な切断刃を有し、
当該切断刃が、
前記管本体の管軸方向について前記管本体加熱コイル部と重なり、且つ、前記管本体の周方向について前記管本体加熱コイル部から外れる位置
に配置されている
請求項13に記載の被膜剥離装置。
【請求項15】
管本体の端部にフランジを有するとともに少なくとも当該管本体の内周面とフランジの表面に被膜を有するライニング管から前記被膜を剥離する被膜剥離装置であって、
前記ライニング管を管軸周りに回転させる回転装置と、
前記管本体の端部および前記フランジを同時に加熱可能な誘導加熱コイルと、
前記回転装置によって前記ライニング管が回転されることにより前記管本体の端部の被膜が周方向に切断されるように当該管本体の端部の被膜に対して切り込みを入れる切込装置と
を備え、
前記誘導加熱コイルは、
前記管本体の端部の外周面に対向するように配置して当該管本体の端部を加熱可能な管本体加熱コイル部と、
前記フランジの裏面に対向するように配置して当該フランジを加熱可能なフランジ加熱コイル部と
を有する
ことを特徴とする被膜剥離装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被膜剥離方法、被膜剥離管の製造方法および被膜剥離装置に係り、特に、管端にフランジを備えたライニング鋼管などの管状部材の管内周面とフランジ表面とに形成された樹脂やゴムなどの被膜を剥離する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼管等の金属管の内面にポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、並びに塩化ビニル等の樹脂材料や、ゴム材料を定着させることにより被膜を形成したライニング管が様々な産業分野で使用されている。
【0003】
例えば、ポリエチレン粉体を鋼管の表面に熱融着して被膜を形成したポリエチレン粉体ライニング鋼管(PEL)は、被膜の化学的・物理的安定性や加工のしやすさ等の優れた特長を有することから、防食鋼管として各種流体の輸送用配管として用いられている。
【0004】
また、このようなライニング管として、管端にフランジを備えたものがある。フランジを備えたライニング管には、管本体の内周面に連続してフランジの表面にも被膜が形成されているものや、さらにフランジの裏面、管本体の外周面に至るまで、管全体に被膜が形成されているものなどがある。
【0005】
一方、このようなライニング管では、資源の有効利用のため、被膜が劣化した場合にこれを貼り替えてライニング管を再生(再製造)するリサイクルが行われている。この場合、ライニング管から被膜を剥がして金属管と被膜を分離する必要がある。また、ライニング管を廃棄する場合も金属と被膜を分別する必要から同様の処理が必要となる。
【0006】
さらに、ライニング管から被膜を剥離する発明を開示する文献として、下記特許文献がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭63-100000号公報
【特許文献2】特開2021-016975号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、ライニング管から被膜を剥がす従来の提案は、上記特許文献記載の発明を含め、いずれもフランジを備えていない管に関するもので、フランジに形成されている被膜を剥離する技術の検討は十分になされていないのが現状である。
【0009】
したがって、本発明の目的は、フランジを備えたライニング管から効率良く被膜を除去することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
〔第1の発明〕
前記課題を解決し目的を達成するため、本願の第1の発明に係る被膜剥離方法は、ライニング管から被膜を剥離する被膜剥離方法であって、前記ライニング管は、管本体と、管本体の少なくとも一端に備えられたフランジと、少なくとも管本体の内周面およびフランジの表面に形成された被膜とを備えており、当該被膜剥離方法は、ライニング管を管軸周りに回転させる回転操作と、管本体の一端部を管本体の内側から加熱する管本体加熱操作と、フランジをフランジの表面側から加熱するフランジ加熱操作と、前記回転操作によりライニング管が回転されることによって管本体の一端部の被膜が周方向に切断されるように当該管本体の一端部の被膜に対して切り込みを入れる切込操作とを同時に行う加熱切断工程を含む。
【0011】
本願の第1の発明に係る被膜剥離方法は、フランジを備えたライニング管から被膜を剥離する方法に関するもので、ライニング管を管軸(管の長さ方向の中心軸)周りに回転させながら、管本体の加熱と、フランジの加熱と、被膜の切断を同時に行うにより、効率良く被膜を剥離する。
【0012】
特に、上記方法では、管本体加熱操作およびフランジ加熱操作を、誘導加熱コイルを使用して行い、当該誘導加熱コイルは、管本体の内周面に対向させるように配置可能な管本体加熱コイル部と、フランジの表面に対向させるように配置可能なフランジ加熱コイル部とを有することが好ましい。
【0013】
これは、管本体内周面に対向するように配置した管本体加熱コイル部によって管本体の被膜被着面を、また、フランジ表面に対向するように配置したフランジ加熱コイル部によってフランジの被膜被着面をそれぞれ均一に同時に加熱し、管本体端部の被膜とフランジ表面の被膜を一体に(一緒に)剥離するためである。
【0014】
また、ここで言う「対向」とは、必ずしも二つの面(コイルが形成する面と被加熱面)が平行となっている状態を表すものではなく、二つの面が互いに向き合っている状態を言う。例えば、管本体の内周面と管本体加熱コイル部は、必ずしも管本体内面の形状に沿った曲面形状にする必要はなく、平面形状としても良い。なお、効率的で均一な加熱が容易なのは、コイルが形成する面と被加熱面が平行である場合である。
【0015】
また、フランジ付ライニング管は、使用時にフランジ同士を合わせるようにして(重ね合わせたフランジ同士によってフランジ表面に形成されている被膜が挟持されるように)ライニング管同士が接続されるが、上記フランジの「表面」とは、この合わせ面(被膜が形成されている面)を意味する。
【0016】
また、管本体加熱コイル部とフランジ加熱コイル部は、連続した導電体により一連に(ひと続きに)形成してある(言い換えれば、1つの連続したコイルとして一体に形成してある)ことが好ましい。
【0017】
これは、誘導加熱コイルへの給電配線を単純化するとともに、管本体コイル部とフランジ加熱コイル部とを個々に出力制御する必要性を排除し、誘導加熱コイルの制御および操作を簡便化するためである。
【0018】
また、フランジ加熱コイル部の巻数が、管本体加熱コイル部の巻数より多いことが好ましい。
【0019】
一般に、誘導加熱コイルの加熱効率は、コイルの巻数の二乗に比例するため、コイルに同じ大きさ、かつ同じ周波数の電流を流す場合は、コイルの巻数が多いほど加熱効率が高くなる。また、フランジの肉厚は管本体の肉厚より一般に厚く、フランジに形成されている被膜の厚さも管本体の被膜より厚いことが多い。したがって、フランジ加熱コイル部の巻数を、管本体加熱コイル部の巻数より多くすることで、このようなフランジ付ライニング管の端部被膜を良好に、すなわち、肉厚が厚く温度が上昇し難いフランジ部分も十分に加熱してフランジに形成されている厚い被膜も管本体の被膜と一緒に剥離することが可能となる。
【0020】
また、コイルの巻数が多ければ、フランジ加熱コイル部の最外周よりもフランジの直径が小さい管を加熱する場合であっても、フランジ部に対向するコイルの面積が確保できるため、加熱効率を下げることなく、複数サイズの管に対応できる。
【0021】
さらに、管本体加熱操作およびフランジ加熱操作は、被膜が軟化する温度以上で且つ被膜が粘性を持つ温度未満で行うことが好ましい。
【0022】
被膜が軟化する温度以上で行うのは、被膜を被着面(管本体内周面およびフランジ表面)から剥がしやすくするとともに、前記切込操作と回転操作による被膜の切断を行いやすくするためである。また、粘性を持つ温度未満で行うのは、被着面から剥れた被膜が垂れ下がって誘導加熱コイルに付着したり、切込操作で切断刃(後述する)を使用するときに被膜が切断刃に付着して切断が妨げられることを回避するためである。
【0023】
また、切込操作において切り込みを入れる場所である切込点は、管本体の管軸方向について管本体加熱コイル部による加熱範囲と重なるようにすることが好ましい。
【0024】
これは、管本体内周面の被膜をより確実に切断するためである。本発明では、管本体の被膜を周方向に切断するために切込操作において被膜に対して切り込みを入れ、この切込点がライニング管の回転によって管本体の内周面(被膜)に対して相対的に周方向へ移動することで被膜が周方向に切断されるが、切込点を管本体の管軸方向について管本体加熱コイル部による加熱範囲と重なる(加熱範囲内に位置する)ようにすることにより、加熱されて柔らかくなった被膜を確実に切断することが可能となる。
【0025】
また上記切込点は、管本体の周方向については管本体加熱コイル部による加熱範囲から外れる位置になるようにすることが好ましい。切込操作を行う手段(例えば切断刃)と、管本体加熱コイル部とが干渉する(ぶつかり合って互いに邪魔になる、或いは切込操作を行う手段がコイル部による加熱を阻害する)ことを避けるためである。
【0026】
切込操作を実施する手段は、典型的には後に述べる実施形態のように切断刃とする。つまり、切断刃を被膜に押し当てることにより前記切込操作を行う。ただし、当該手段は必ずしも切断刃のような機械的な手段に限られるわけではなく、例えばレーザ光を切込点に照射するなど他の方法によって切込操作を行うことも可能である。
【0027】
また、本願の第1の発明に係る被膜剥離管の製造方法は、上記第1の発明に係る被膜剥離方法と同様の特徴を備えたもので、例えばライニング管を再生する(劣化し或いは破損した被膜を除去して新たな被膜を形成することで再生ライニング管を作製する)場合に、その原材料(原料資材)となる被膜剥離管(ライニング管から被膜を剥離除去した金属管)を製造する方法である。
【0028】
具体的には、当該被膜剥離管の製造方法は、ライニング管から被膜を剥離除去した被膜剥離管を製造する方法であって、ライニング管は、管本体と、管本体の少なくとも一端に備えられたフランジと、少なくとも管本体の内周面およびフランジの表面に形成された被膜とを備えており、当該方法は、
(1)ライニング管を用意する工程と、
ライニング管を用意する工程の後、
(2a)ライニング管を管軸周りに回転させる回転操作、
(2b)管本体の一端部を管本体の内側から加熱する管本体加熱操作、
(2c)フランジをフランジの表面側から加熱するフランジ加熱操作、および、
(2d)前記回転操作によりライニング管が回転されることによって管本体の一端部の被膜が周方向に切断されるように当該管本体の一端部の被膜に対して切り込みを入れる切込操作
を同時に行う加熱切断工程と
を含む。
【0029】
なお、上記製造方法においても前記被膜剥離方法で述べた好ましい態様の各特徴を備えるようにしても良い。
【0030】
また、本願の第1の発明に係る被膜剥離装置は、前記第1の発明に係る被膜剥離方法や各態様と同様の特徴を備えたものである。
【0031】
具体的には、当該被膜剥離装置は、管本体の端部にフランジを有するとともに少なくとも当該管本体の内周面とフランジの表面に被膜を有するライニング管から被膜を剥離する被膜剥離装置であって、ライニング管を管軸周りに回転させる回転装置と、管本体の端部およびフランジを同時に加熱可能な誘導加熱コイルと、回転装置によってライニング管が回転されることにより管本体の端部の被膜が周方向に切断されるように当該管本体の端部の被膜に対して切り込みを入れる切込装置とを備え、前記誘導加熱コイルは、管本体の端部の内周面に対向するように配置して当該管本体の端部を加熱可能な管本体加熱コイル部と、フランジの表面に対向するように配置して当該フランジを加熱可能なフランジ加熱コイル部とを有する。
【0032】
上記被膜剥離装置では、管本体加熱コイル部とフランジ加熱コイル部が、連続した導電体により一連に形成されていることがある。
【0033】
また、上記被膜剥離装置では、フランジ加熱コイル部の巻数が、管本体加熱コイル部の巻数より多いことがある。
【0034】
また、上記被膜剥離装置では、切込装置により切り込みが入れられる場所である切込点が、管本体の管軸方向について管本体加熱コイル部による加熱範囲と重なり(言い換えれば、管本体加熱コイル部の先端から基端までの範囲内に位置し)、且つ、管本体の周方向について管本体加熱コイル部による加熱範囲から外れる位置にある場合がある。
【0035】
さらに上記切込装置は、切込点において被膜に押し当てることにより被膜に切り込みを入れることが可能な切断刃を有し、当該切断刃が、管本体の管軸方向について管本体加熱コイル部と重なり(言い換えれば、管本体加熱コイル部の先端から基端までの範囲内に配置され)、且つ、管本体の周方向について管本体加熱コイル部から外れる位置に配置されていることがある。
【0036】
〔第2の発明〕
本願の第2の発明に係る被膜剥離方法は、管本体およびフランジについて前記第1の発明とは反対側の面から、すなわち管本体については外面側から、フランジについては裏面側からそれぞれ加熱を行うものである。
【0037】
より具体的には、当該第2の発明に係る被膜剥離方法は、ライニング管から被膜を剥離する被膜剥離方法であって、ライニング管は、管本体と、管本体の少なくとも一端に備えられたフランジと、少なくとも管本体の内周面およびフランジの表面に形成された被膜とを備えており、当該被膜剥離方法は、ライニング管を管軸周りに回転させる回転操作と、管本体の一端部を管本体の外側から加熱する管本体加熱操作と、フランジをフランジの裏面側から加熱するフランジ加熱操作と、回転操作によりライニング管が回転されることによって管本体の一端部の被膜が周方向に切断されるように管本体の一端部の被膜に対して切り込みを入れる切込操作とを同時に行う加熱切断工程を含み、管本体加熱操作およびフランジ加熱操作を、誘導加熱コイルを使用して行い、当該誘導加熱コイルは、管本体の外周面に対向させるように配置可能な管本体加熱コイル部と、フランジの裏面に対向させるように配置可能なフランジ加熱コイル部とを有する。
【0038】
なお、上記フランジの「裏面」とは、第1の発明の「表面」とは逆側の面(フランジの背面側の面)を意味する。また、上記「対向」の意味は、第1の発明において説明した「対向」の意味内容と同様である。
【0039】
上記第2の発明の利点を第1の発明と比較して述べれば、次のとおりである。
【0040】
ライニング管の加熱に伴い、被膜を構成する樹脂やゴム或いは被膜を接着している接着剤が分解してガスが発生し、被膜に膨れや垂れ下がりが生じる場合がある。この膨れや垂れ下がりによって被膜がコイルに付着すると加熱に悪影響を及ぼすおそれがあることから、これを回避する観点からは、管の外側から加熱を行う上記第2の発明が有利である。
【0041】
一方、第2の発明では、被膜が備えられた剥離面(管内周面及びフランジ表面)の加熱は熱伝導によることとなるため、加熱効率の点では、剥離対象(管本体内面及びフランジ表面の被膜)から近い金属部を加熱できる前記第1の発明の方が第2の発明より有利である。
【0042】
さらに、本願の第2の発明に係る被膜剥離装置は、上記第2の発明に係る被膜剥離方法と同様の特徴を備えるものである。
【0043】
具体的には、当該被膜剥離装置は、管本体の端部にフランジを有するとともに少なくとも当該管本体の内周面とフランジの表面に被膜を有するライニング管から被膜を剥離する被膜剥離装置であって、ライニング管を管軸周りに回転させる回転装置と、管本体の端部およびフランジを同時に加熱可能な誘導加熱コイルと、回転装置によってライニング管が回転されることにより管本体の端部の被膜が周方向に切断されるように当該管本体の端部の被膜に対して切り込みを入れる切込装置とを備え、前記誘導加熱コイルは、管本体の端部の外周面に対向するように配置して当該管本体の端部を加熱可能な管本体加熱コイル部と、フランジの裏面に対向するように配置して当該フランジを加熱可能なフランジ加熱コイル部とを有する。
【0044】
なお、上記第2の発明に係る被膜剥離方法および被膜剥離装置についても、前記第1の発明と同様に、第1の発明の説明において述べた各態様の特徴を備えるよう構成することが可能である。
【発明の効果】
【0045】
本発明によれば、フランジを備えたライニング管から効率良く被膜を除去することが出来る。
【0046】
本発明の他の目的、特徴および利点は、図面に基いて述べる以下の本発明の実施の形態の説明により明らかにする。なお、本発明は、当該実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の範囲内で種々の変更を行うことができることは当業者に明らかである。また、各図中、同一の符号は、同一又は相当部分を示す。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1図1は、本発明の第1の実施形態に係る被膜剥離装置を示す斜視図(右側部分(図の手前側)をライニング管とともに切り欠いて示している/図5のB-B矢視断面)である。
図2図2は、前記第1実施形態に係る被膜剥離装置を示す側面図(前記図1と同様に右側部分(図の手前側)をライニング管とともに切り欠いて示している/図5のB-B矢視断面)である。
図3図3は、前記第1実施形態に係る被膜剥離装置を示す平面図(前記図1と同様に右側部分(図の手前側)をライニング管とともに切り欠いて示している)である。
図4図4は、前記第1実施形態に係る被膜剥離装置の誘導加熱コイルを示す斜視図である。
図5図5は、前記第1実施形態に係る被膜剥離装置を示す正面図(図2のA-A矢視断面)である。
図6図6は、本発明の第2の実施形態に係る被膜剥離装置を示す斜視図(回転装置、切断装置及び電源装置は図示していない)である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
〔第1実施形態/被膜剥離装置〕
図1から図5に示すように、本発明の第1の実施形態に係る被膜剥離装置11は、フランジ付ライニング管1の端部から被膜4,5を剥離する装置で、ライニング管1を管軸周りに回転させる回転装置31(図5参照)と、管本体2の端部とフランジ3とを同時に加熱可能な誘導加熱コイル(以下、単に「コイル」と言うことがある)12と、管本体端部内周面に形成された被膜4を周方向に切断する切断装置21とを有する。
【0049】
なお、各図には上下、左右および前後の各方向を表す互いに直交する二次元ないし三次元直交座標を適宜表示してこれらの方向に基いて以下の説明を行うが、各方向は説明の便宜上のものであって本発明の各部構成について何ら限定を加えるものではない(後述する第2実施形態についても同様)。また、本実施形態は前記第1の発明に対応するものであり、後に述べる第2実施形態は、前記第2の発明に対応するものである。
【0050】
誘導加熱コイル12は、上下方向に直交する面内(前後方向及び左右方向に平行な面内)で導電体を引き回すことにより形成した管本体加熱コイル部13と、前後方向(管軸方向)に直交する面内(上下方向及び左右方向に平行な面内)で導電体を引き回すことにより形成したフランジ加熱コイル部14とを有し、管本体加熱コイル部13とフランジ加熱コイル部14とが互いに直交する形状となっている。
【0051】
したがって、管本体加熱コイル部13を管本体2の端部内周面(図1及び図2等に示した例では上側の内周面)に対向させるように管本体2の一端から管本体2の内部に差し込むと、フランジ加熱コイル部14がフランジ3の表面(後面)に対向するように(言い換えれば、フランジ加熱コイル部14がフランジ3と平行に)なる。
【0052】
各コイル部13,14の導電体はひと続きの連続した導電路を形成しており(つまり電気的には管本体加熱コイル部13とフランジ加熱コイル部14は直列に繋がっている)、当該導電路は一端が電源装置15の一方の端子16aに溶接されることにより物理的(機械的)に支持され且つ電気的に接続され、他端が電源装置15の他方の端子16bに溶接されることにより物理的(機械的)に支持され且つ電気的に接続されている。
【0053】
また、各コイル部13,14の巻数は管本体加熱コイル部13よりフランジ加熱コイル部14の方が多く、本実施形態の場合、管本体加熱コイル部13が1巻であるのに対して、フランジ加熱コイル部14は2巻である。これは、肉厚が厚く温度が上昇し難いフランジ3を管本体2と同時に同程度に加熱して管本体2に形成されている被膜4とフランジ3に形成されている被膜5を一緒に剥離するためである。
【0054】
なお、各コイル部13,14を形成する上記導電体は、導電材料からなる中空管である。コイル12への通電時に内部に冷却水を通過させてコイル12を冷却できるようにするためである。
【0055】
一方、管本体内周面の被膜4を切断する切断装置21は、管本体内周面の被膜4を切断する切断刃23を有しライニング管1の内部に挿入可能な切断装置本体22と、切断装置本体22をライニング管1内に支持する支持ロッド24とを備えている。
【0056】
切断刃23は、円盤状の金属部材の周縁に刃を形成したもので、管軸方向(前後方向)に延びる支軸23aを中心として回転可能で且つ管本体内周面の被膜4に向けて(下方に)付勢されるように切断装置本体22に支持させてある。切断刃23は、ライニング管1の内周面(被膜4の表面)に押し付けることにより、ライニング管内周面の被膜4に切り込みを入れ、ライニング管1の管軸周りの回転に伴ってライニング管1(管本体2)の内周面を転動(管本体2に対して相対的に周方向へ移動)することによりライニング管内周面の被膜4を周方向に切断する。
【0057】
切断刃23の前後方向(管軸方向)の配置位置は、管本体加熱コイル部13と重なる位置、つまり、管本体加熱コイル部13の前端より後方で且つ管本体加熱コイル部13の前後方向の中間点より前方の位置とする。管本体加熱コイル部13によって加熱され柔らかくなった被膜4を切断できるようにするためである。
【0058】
また、切断刃23の周方向の配置位置は、管本体加熱コイル部13による加熱の邪魔にならないように管本体加熱コイル部13から外れる位置、すなわち、管本体加熱コイル部13を周方向の上端部に配置するのに対して、切断刃23は周方向の下端部とする。
【0059】
ライニング管1を回転させる回転装置31(図5参照/他の図には示していない)は、ライニング管1を管軸周りに(ライニング管1の軸線を中心として)回転させることが出来るものであれば、その構造を特に問わない。
【0060】
一例を挙げれば、図5に示すようにライニング管1の管本体2を下方から支持して回転させる一対のローラ32,33を備えるものとすることが出来る。一対のローラ32,33のうち一方のローラ32は、ライニング管1を回転させる駆動ローラであり、他方のローラ33は、ライニング管1の回転を受けて回転する従動ローラである。駆動ローラ32にはハンドル(図示せず)を接続してあり、当該ハンドルを手で回すことにより駆動ローラ32を回転させることが出来る(符号R1参照)。ライニング管1は、駆動ローラ32の回転を受けて管軸周りに回転する(符号R2参照)。従動ローラ33は、ライニング管1の回転を受けて回転する(符号R3参照)。
【0061】
なお、上記のような手動方式ではなく、例えば電動機のような動力駆動装置を駆動ローラ32に接続して駆動ローラ32を動力駆動することも可能である。また、ライニング管1の長さ方向(前後方向)について複数箇所で(例えばライニング管1の前端部と後端部、更にこれらに加えて1以上の中間部において)ライニング管1を支持できるように、上記一対のローラ32,33のほかに、共に従動ローラからなる一対のローラ(図示せず)をライニング管1の長さ方向の適宜位置に配置しても良い。
【0062】
〔第1実施形態/被膜剥離方法〕
上記被膜剥離装置11を使用してライニング管1から被膜4,5を剥離する方法について述べる。
【0063】
まず、フランジ付ライニング管1、例えば、被膜4,5が劣化し或いは破損したライニング管1を回転装置31にセットする(一対のローラ32,33の間に支持させる)。
【0064】
次に、誘導加熱コイル12と切断装置21をライニング管1の端部に配置する。このとき、前記図1図3および図5に示したように、管本体加熱コイル部13が管本体2の内周面に対向し、フランジ加熱コイル部14がフランジ3の表面に対向するようにする。また同時に、切断装置21の切断刃23が管本体内周面の被膜4に押し付けられるようにする。
【0065】
そして、誘導加熱コイル12に通電するとともに、回転装置31を駆動して(手動式の場合はハンドルを回して)ライニング管1を管軸周りに複数回回転させる。管本体2は、回転して管本体加熱コイル部13に対向する位置に来るたびに当該コイル部13によって加熱され、また、フランジ3は、フランジ加熱コイル部14に対向する位置に来るたびに当該コイル部14によって加熱されるから、管本体2の端部(後端部)全体とフランジ3全体の温度が次第に上昇する。
【0066】
なお、誘導加熱コイル12による加熱温度は、被膜4,5が軟化する温度以上で且つ被膜4,5が粘性を持つ温度未満で行うことが好ましい。被膜4,5が軟化する温度以上で行うのは、被膜4,5を被着面(管本体2の内周面およびフランジ3の表面)から剥がしやすくするとともに、切断刃23によって被膜4が切断されやすくするためである。また、粘性を持つ温度未満で行うのは、被着面から剥れた被膜4,5が垂れ下がって誘導加熱コイル12に付着したり、切断刃23に被膜4が付着して切断が妨げられることを防ぐためである。
【0067】
また上記加熱操作と同時に、切断刃23によって管本体内周面の被膜4が周方向に切断されるから、フランジ部分を含めたライニング管1の端部の被膜4,5が分離されることとなる。
【0068】
上記切断刃23により切断され分離された被膜4,5は、適当な(被膜4,5を引っ掛け或いは掴んで引き出すことが可能な)工具を使用して引き剥がし、管本体2から引き出せば良い。なお、ライニング管1が前端にもフランジを備えている場合には、当該前端部についても上記被膜剥離装置11を使用して後端部と同様に被膜を除去すれば良い。また、管本体2の中間部の被膜については、他の(既存の/公知の)剥離装置を使用して除去すれば良い。
【0069】
上記方法により、例えば再生ライニング管の原料資材(原材料)となる被膜剥離管(被膜を除去した金属管)を製造することが出来る。なお、再生ライニング管を作製するには、当該被膜剥離管に公知の方法で新しい被膜を形成すれば良い。
【0070】
このように本実施形態の被膜剥離装置ならびに被膜剥離方法によれば、ライニング管端部(管本体端部とフランジ)の被膜を分離し、管本体端部の被膜とフランジ表面の被膜を一緒に効率良く除去することが出来る。また、本実施形態によれば、剥離対象(管本体内周面及びフランジ表面の被膜)から近い金属部を加熱することが出来るから加熱効率も良好である。
【0071】
〔第2実施形態/被膜剥離装置〕
図6は、第2の実施形態に係る被膜剥離装置を示すものである。この図に示すように第2の実施形態に係る被膜剥離装置は、前記第1実施形態に係る被膜剥離装置と同様に、回転装置と誘導加熱コイル12と切断装置とを備え、回転装置と切断装置は第1実施形態と同様の構造を有するが、誘導加熱コイル12の配置構成が異なる。
【0072】
具体的には、誘導加熱コイル12は、管本体2の外周面(本実施形態の場合、上部外周面)に対向する管本体加熱コイル部13と、フランジ3の裏面(前面)に対向するフランジ加熱コイル部14とを有する。なお、管本体加熱コイル部13とフランジ加熱コイル部14を連続した導電体により一連に形成してある点、および、フランジ加熱コイル部14の巻数が管本体加熱コイル部13の巻数より多い点は、第1実施形態と同様である。また図6には、回転装置、切断装置および切断刃は図示されていない。
【0073】
切断装置に含まれる切断刃の前後方向の配置位置は、第1実施形態と同様に管本体加熱コイル部13によって加熱され柔らかくなった被膜を切断できるように、管本体加熱コイル部13と重なる位置(管本体加熱コイル部13の前端より後方で且つ管本体加熱コイル部13の前後方向の中間点より前方の位置)とする。
【0074】
本実施形態によれば、ライニング管1の加熱に伴って管本体2の内周面およびフランジ3の表面(後面)に形成されている被膜に膨れや垂れ下がりが生じたとしても、菅本体加熱コイル部13は管本体2の外側に配置され、また、フランジ加熱コイル部14は被膜形成面とは反対側の面である、フランジ3の裏面に配置されているから、これらに被膜が接触するおそれがない。
【符号の説明】
【0075】
1 ライニング管
2 管本体
3 フランジ
4,5 被膜
11 被膜剥離装置
12 誘導加熱コイル
13 管本体加熱コイル部
14 フランジ加熱コイル部
15 電源装置
16a,16b 端子
21 切断装置
22 切断装置本体
23 切断刃
23a 支軸
24 支持ロッド
31 回転装置
32 駆動ローラ
33 従動ローラ
図1
図2
図3
図4
図5
図6