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特開2023-173009射出成形機およびオペレータ支援方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173009
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】射出成形機およびオペレータ支援方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/76 20060101AFI20231130BHJP
   B29C 45/54 20060101ALI20231130BHJP
   B22D 17/32 20060101ALI20231130BHJP
   B22D 46/00 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
B29C45/76
B29C45/54
B22D17/32 Z
B22D46/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022084940
(22)【出願日】2022-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100097696
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 嘉昭
(74)【代理人】
【識別番号】100147072
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 裕通
(72)【発明者】
【氏名】油布 拓也
(72)【発明者】
【氏名】内藤 章弘
(72)【発明者】
【氏名】尾辻 靖貴
【テーマコード(参考)】
4F206
【Fターム(参考)】
4F206AR02
4F206AR08
4F206AR10
4F206AR16
4F206AR20
4F206JA07
4F206JD01
4F206JL02
4F206JN03
4F206JN11
4F206JN21
4F206JP11
4F206JP13
4F206JP14
4F206JP18
4F206JP21
4F206JP22
4F206JP27
4F206JQ88
4F206JT02
4F206JT33
(57)【要約】
【課題】消費電力量の削減に関係するオペレータ支援情報を出力する射出成形機を提供する。
【解決手段】射出成形機の制御装置(4)はオペレータ支援情報を出力するようにする。オペレータ支援情報は、支援対象設定データと制御対象予測電力量の組からなる情報である。支援対象設定データは、成形条件を構成する1個または複数個の設定データからなり、制御対象予測電力量は、支援対象設定データに関連して制御される制御対象について、支援対象設定データの変更に対して予測される消費電力量である。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御装置を備え、
前記制御装置は1組または複数組のオペレータ支援情報を出力するようになっており、
前記オペレータ支援情報は、支援対象設定データと制御対象予測電力量の組からなる情報であり、
前記支援対象設定データは、成形条件を構成する1個または複数個の設定データからなり、
前記制御対象予測電力量は、前記支援対象設定データに関連して制御される制御対象について、前記支援対象設定データの変更に対して予測される消費電力量である、射出成形機。
【請求項2】
前記射出成形機は複数個のサーボモータを備え、
少なくとも1組の前記オペレータ支援情報は、前記制御対象が前記支援対象設定データに関連して制御される1個の前記サーボモータであり、前記制御対象予測電力量が1個の前記サーボモータに対して予測される消費電力である、請求項1に記載の射出成形機。
【請求項3】
前記射出成形機はヒータを備え、
少なくとも1組の前記オペレータ支援情報は、前記制御対象が前記ヒータであり、前記制御対象予測電力量が前記ヒータに対して予測される消費電力である、請求項1に記載の射出成形機。
【請求項4】
前記オペレータ支援情報の1組は、前記支援対象設定データが計量工程のスクリュ回転数であり、前記制御対象がスクリュを回転させる可塑化サーボモータである、請求項2に記載の射出成形機。
【請求項5】
前記オペレータ支援情報の1組は、前記支援対象設定データが保圧工程の保圧時間であり、前記制御対象がスクリュを軸方向に駆動する射出サーボモータである、請求項2または4に記載の射出成形機。
【請求項6】
前記オペレータ支援情報の1組は、前記支援対象設定データが可塑化工程の背圧であり、前記制御対象がスクリュを軸方向に駆動する射出サーボモータとスクリュを回転させる可塑化スクリュの少なくともいずれか一個である、請求項2または4に記載の射出成形機。
【請求項7】
前記制御装置において、前記スクリュ回転数について推奨する設定データが計算されて表示されると共に、推奨する設定データに対応する前記制御対象予測電力量が表示される、請求項4に記載の射出成形機。
【請求項8】
前記制御装置において、前記保圧時間について推奨する設定データが計算されて表示されると共に、推奨する設定データに対応する前記制御対象予測電力量が表示される、請求項5に記載の射出成形機。
【請求項9】
制御装置を備えた射出成形機において、
前記制御装置において、支援対象設定データと制御対象予測電力量の組からなるオペレータ支援情報を1組または複数組出力するようにし、
前記支援対象設定データは、成形条件を構成する1個または複数個の設定データからなり、
前記制御対象予測電力量は、前記支援対象設定データに関連して制御される制御対象について、前記支援対象設定データの変更に対して予測される消費電力量である、オペレータ支援方法。
【請求項10】
前記射出成形機は複数個のサーボモータを備え、
少なくとも1組の前記オペレータ支援情報は、前記制御対象が前記支援対象設定データに関連して制御される1個の前記サーボモータであり、前記制御対象予測電力量が1個の前記サーボモータに対して予測される消費電力である、請求項9に記載のオペレータ支援方法。
【請求項11】
前記射出成形機はヒータを備え、
少なくとも1組の前記オペレータ支援情報は、前記制御対象が前記ヒータであり、前記制御対象予測電力量が前記ヒータに対して予測される消費電力である、請求項9に記載のオペレータ支援方法。
【請求項12】
前記オペレータ支援情報の1組は、前記支援対象設定データが計量工程のスクリュ回転数であり、前記制御対象がスクリュを回転させる可塑化サーボモータである、請求項10に記載のオペレータ支援方法。
【請求項13】
前記オペレータ支援情報の1組は、前記支援対象設定データが保圧工程の保圧時間であり、前記制御対象がスクリュを軸方向に駆動する射出サーボモータである、請求項10または12に記載のオペレータ支援方法。
【請求項14】
前記オペレータ支援情報の1組は、前記支援対象設定データが可塑化工程の背圧であり、前記制御対象がスクリュを軸方向に駆動する射出サーボモータである、請求項10または12に記載のオペレータ支援方法。
【請求項15】
前記制御装置において、前記スクリュ回転数について推奨する設定データを計算して表示すると共に、推奨する設定データに対応する前記制御対象予測電力量を表示する、請求項12に記載のオペレータ支援方法。
【請求項16】
前記制御装置において、前記保圧時間について推奨する設定データを計算して表示すると共に、推奨する設定データに対応する前記制御対象予測電力量を表示する、請求項13に記載のオペレータ支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーボモータを備えた射出成形機、および射出成形機に関してオペレータに消費電力量削減につながる情報を提供するオペレータ支援方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
射出成形機は金型を型締めする型締装置、射出材料を溶融して金型に射出する射出装置等を備えており、これらをサーボモータで駆動する射出成形機は電動射出成形機と呼ばれている。このような射出成形機は、工場から供給される三相交流電力をコンバータにより直流電力に変換し、直流電力をインバータにより所望の周波数で所望の電流の三相交流電流に変換してサーボモータに供給する。これによって各装置が駆動される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5654250号公報
【0004】
特許文献1には、サーボモータの制御方法について2個の異なる制御モードを用意して、成形サイクルを構成している少なくとも2個の工程に対して、オペレータが所望の制御モードを選択できる射出成形機が記載されている。2個の異なる制御モードは、一方が他方に対して消費電力が小さくなるような制御モードになっており、消費電力が小さい制御モードを選択すると省エネルギーな運転が可能になっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、産業界において持続可能な開発目標に沿うことが要求されてきており、射出成形機についても消費される電力量の削減が求められている。特許文献1に記載の射出成形機は、電力消費が少ない制御モードを選択すると省エネルギーでの運転が可能になり、電力量を削減でき優れている。しかしながら解決すべき課題も見受けられる。この文献に記載の射出成形機は、単にサーボモータの制御について異なる2個の制御モードから選択することができるだけで、いずれの制御モードが選択されても、オペレータが設定した成形条件にしたがって運転するだけになっている。成形条件によっては、設定データを見直すことによって電力量を削減できることがあるはずであるが、そのような成形条件の見直しについて考慮されていない。
【0006】
本開示において、消費電力量の削減に関係するオペレータ支援情報を出力する射出成形機を提供する。
【0007】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述及び添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、制御装置を備えた射出成形機を対象とする。制御装置は1組または複数組のオペレータ支援情報を出力するようにする。オペレータ支援情報は、支援対象設定データと制御対象予測電力量の組からなる情報である。支援対象設定データは、成形条件を構成する1個または複数個の設定データからなり、制御対象予測電力量は、支援対象設定データに関連して制御される制御対象について、支援対象設定データの変更に対して予測される消費電力量である。
【発明の効果】
【0009】
本開示は、消費電力量の削減につながる成形条件の見直しのための情報をオペレータに提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施の形態に係る射出成形機を示す正面図である。
図2】本実施の形態に係る射出成形機における、サーボモータへの電力供給系統図である。
図3A】成形サイクルの各工程を示すタイムチャートである。
図3B】スクリュ回転数に対する射出材料の輸送流速の変化を示すグラフである。
図3C】スクリュ回転数に対する計量時間の変化を示すグラフである。
図3D】スクリュ回転数に対する可塑化サーボモータの消費電力の変化を示すグラフである。
図3E】スクリュ回転数に対する可塑化サーボモータの消費電力量の変化を示すグラフである。
図4】射出工程と保圧工程において経過時間に対する、スクリュ位置の変化、成形品重量の変化、射出サーボモータの消費電力の変化、および射出サーボモータの消費電力量の変化を示すグラフである。
図5】スクリュに印可する背圧に対する射出サーボモータの消費電力量の変化を示すグラフである。
図6】本実施の形態に係る電力削減支援画面である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。ただし、以下の実施の形態に限定される訳ではない。説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜簡略化されている。各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。また、図面が煩雑にならないように、ハッチングが省略されている部分がある。
【0012】
後で詳しく説明する本実施の形態に係るオペレータ支援方法は、サーボモータ、ヒータ等を備えた射出成形機において、オペレータに対して、サーボモータ、ヒータ等における消費電力量の削減につながる情報を提供する方法になっている。射出成形機は竪型射出成形機であっても実施できるが、以下の説明では横型の射出成形機を例として説明する。
【0013】
<射出成形機>
本実施の形態に係る射出成形機1は、図1に示されているように、型締装置2と、射出装置3と、突出装置5、等を備えている。射出成形機1はコントローラつまり制御装置4を備えており、型締装置2、射出装置3、突出装置5等は、制御装置4によって制御されるようになっている。制御装置4にはモニタ4aが設けられており、各種画面が表示されるようになっている。
【0014】
<型締装置>
型締装置2は、ベッドBに固定されている固定盤7と、ベッドB上をスライド自在に設けられている可動盤8と、型締ハウジング9と、を備えている。固定盤7と型締ハウジング9は複数本のタイバー11、11、…により連結されており、可動盤8は固定盤7と型締ハウジング9の間でスライド自在になっている。型締ハウジング9と可動盤8の間には型締機構が、すなわち本実施の形態においてはトグル機構13が設けられている。固定盤7と可動盤8には、それぞれ固定側金型15、可動側金型16が設けられている。従って、トグル機構13を駆動すると金型15、16が型開閉される。なお、成形品を突き出す突出装置5は、可動盤8に設けられている。
【0015】
<射出装置>
射出装置3は、加熱シリンダ19と、加熱シリンダ19内に設けられているスクリュ20と、スクリュ駆動装置22と、を備えている。加熱シリンダ19はスクリュ駆動装置22に支持されており、スクリュ20はスクリュ駆動装置22によって回転方向と軸方向とに駆動されるようになっている。加熱シリンダ19にはホッパ23と、射出ノズル24とが設けられている。また、加熱シリンダ19にはヒータ25、25、…が設けられている。
【0016】
射出装置3を前進させて射出ノズル24を固定側金型15にタッチさせる。制御装置4からの指令によりヒータ25、25、…に電力を供給して加熱シリンダ19を加熱する。そして、ホッパ23から射出材料を供給してスクリュ20を回転する。そうすると、射出材料が溶融し、スクリュ20の先端に送られる。すなわち計量される。射出材料が計量されたら、制御装置4の指令によりスクリュ駆動装置22を制御してスクリュ20を軸方向に駆動する。そうすると射出材料がスクリュ20の前進に伴って前方に押し出される。すなわち、射出材料が金型15、16に射出される。
【0017】
<電力供給系統>
本実施の形態に係る射出成形機1は、サーボモータによって駆動されるようになっている。電力供給の系統を説明する。本実施の形態に係る射出成形機1には、図2に示されているように、コンバータ30が設けられている。コンバータ30は工場の三相交流電源31に接続されていると共に、射出成形機1内に設けられている直流電圧線33に接続されている。直流電圧線33には、複数個のインバータつまりサーボアンプ35、36、37、38、…が接続されている。そしてそれぞれのサーボアンプ35、36、37、38、…には、サーボモータ41、42、43、44、…が設けられている。つまり射出サーボモータ41、可塑化サーボモータ42、型開閉サーボモータ43、突出サーボモータ44、…である。
【0018】
三相交流電源31からの三相交流電力はコンバータ30によって直流電力に変換され直流電圧線33に供給される。そして直流電力はサーボアンプ35、36、37、38、…によって所望の周波数所望の電流の三相交流電力に変換されて、それぞれのサーボモータ41、42、43、44、…に供給される。これによってサーボモータ41、42、43、44、…が駆動される。次に説明する本実施の形態に係るオペレータ支援方法は、これらのサーボモータ41、42、43、44、…で消費される電力量、つまりサーボアンプ35、36、37、38、…で消費される電力量について削減につながる情報を提供する方法になっている。
【0019】
<オペレータ支援方法>
本実施の形態に係るオペレータ支援方法は、成形条件の設定データの変更に関する情報であって、消費電力量の低減につながる情報をオペレータに提供する方法になっている。制御装置4が実施し、具体的には次に説明するオペレータ支援情報を提供するようになっている。
【0020】
<オペレータ支援情報>
オペレータ支援情報は、支援対象設定データと、制御対象予測電力量の組からなる。支援対象設定データは、成形条件を構成する1個または複数個の設定データからなる。例えば、計量工程において設定されているスクリュ回転数を支援対象設定データとすることができる。制御対象予測電力量は、支援対象設定データに関連して制御される制御対象について、支援対象設定データを変更したとした場合に予測される消費電力量である。制御対象として、例えばサーボモータ41、42、43、44、…のいずれか1個が該当する。あるいは制御対象としてヒータ25、25、…が該当することもある。支援対象設定データがスクリュ回転数である場合、制御対象予測電力量は可塑化サーボモータ42の予測電力量になる。
【0021】
制御装置4は、支援対象設定データを変更すると仮定した場合に、制御対象予測電力量がどのように変化するかを計算し、オペレータ支援情報としてオペレータに提供する。オペレータはこれを参考として支援対象設定データを変更し、消費電力量を低減することができるようになっている。本実施の形態に係る射出成形機1は、複数組のオペレータ支援情報を提供するようになっている。本実施の形態に係る射出成形機1で提供している複数組のオペレータ支援情報を1組ずつ説明する。
【0022】
<オペレータ支援情報(1)>
最初に説明する1組目のオペレータ支援情報は、支援対象設定データが計量工程におけるスクリュ回転数であり、制御対象予測電力量が可塑化サーボモータ42の計量工程における予測電力量である。制御装置4は、スクリュ回転数について変更した場合に可塑化サーボモータ42の電力量がどのように変化するかの情報を提供することになる。制御装置4がどのようにオペレータ支援情報を提供するか、説明する。
【0023】
図3Aにおいて、成形サイクル1は、制御装置4において現在設定されている成形条件に従って、成形サイクルを実施したときのタイムチャートになっている。すなわち金型15、16(図1参照)を型締めする型締工程が実施され、金型15、16に射出材料を充填する射出工程および保圧工程が実施される。続いて射出材料の固化を待つ冷却工程を実施し、金型15、16を型開きする型開工程、成形品を突き出す突出工程により成形品を得る。冷却工程では、次の成形サイクルに備えて射出材料を計量する計量工程を実施している。つまりスクリュ20(図1参照)を回転して射出材料をスクリュ20の前方に送り出し、所定量の射出材料を計量している。計量工程が完了したら冷却工程の完了まで待機することになる。
【0024】
計量工程ではスクリュ20を回転して射出材料を加熱シリンダ19(図1参照)の前方に輸送するが、スクリュ回転数と射出材料の輸送流速は図3Bのグラフ51の関係になっている。つまり、スクリュ回転数が増加すると射出材料の輸送流速は増加する。制御装置4には、スクリュ回転数と射出材料の輸送流速の関係が予め格納されている。ところで計量工程に要する時間つまり計量時間は、計量する射出材料の量と、射出材料の輸送流速とによって計算できる。ここで計量する射出材料の量は成形対象の成形品によって決定され、そして射出材料の輸送流速とスクリュ回転数の関係は制御装置4に格納されている。したがって、制御装置4は、スクリュ回転数によって計量時間がどのようになるのかを計算することができる。制御装置4が計算したスクリュ回転数と計量時間の関係を図3Cのグラフ52に示す。
【0025】
ところで、可塑化サーボモータ42を駆動する電力はスクリュ回転数によって図3Dのグラフ53のように変化する。制御装置4にはこの関係も格納されている。可塑化サーボモータ42の計量工程における電力量は、このような電力を計量時間だけ積算すると得られる。計量時間は図3Cのグラフ52に示されているようにスクリュ回転数によって変化し、この関係は前記したように制御装置4が計算している。そうすると、制御装置4はスクリュ回転と可塑化サーボモータ42の計量工程における電力量の関係を計算できることになる。この関係が図3Eのグラフ55に示されている。図3Cのグラフ52、図3Eのグラフ55から分かるように、スクリュ回転数を小さくすると計量時間は長くなるが可塑化サーボモータ42の電力量は小さくなる。
【0026】
図3Eにおいて、現在設定されているスクリュ回転数は、現在設定値57として示され、そのときの可塑化サーボモータ42(図2参照)の電力量は現在電力量58として示されている。ここで、例えばスクリュ回転数を第1の変更例60のように変更すると仮定した場合、可塑化サーボモータ42(図2参照)の電力量は予測電力量61に低下することが予測される。ところで図3Cにおいてスクリュ回転数の現在設定値64に対して計量時間は符号65で示された時間になっている。これが図3Aの成形サイクル1において計量工程として示されている。ここでスクリュ回転数を第1の変更例67(図3Eにおける第1の変更例60に対応)のように変更すると計量時間は符号68で示されているように長くなる。図3Aにはスクリュ回転数を第1の変更例60、67に変更した場合の各工程のタイムチャートが成形サイクル2として示されている。成形サイクル2では、成形サイクル1に比して計量工程が長くなっていると共に待機が短くなっている。
【0027】
図3Eにおいて、スクリュ回転数をさらに低下させて、第2の変更例62にすると仮定する。そうすると可塑化サーボモータ42(図2参照)の電力量は予測電力量63に低下することが予測される。つまり大幅に電力量が削減できることが分かる。このとき、図3Cにおいて示されているように、スクリュ回転数が第2の変更例69(図3Eにおける第2の変更例62に対応)にすると計量時間が符号70で示されているように長くなる。図3Aにはスクリュ回転数を第2の変更例62、69に変更した場合の、各工程のタイムチャートが成形サイクル3として示されている。成形サイクル3では、計量工程が長くなっているが、待機は無くなっている。ただし、冷却工程の長さは成形サイクル1と成形サイクル3とで等しい。
【0028】
ここで、スクリュ回転数をさらに低下させると仮定すると、図3Cのグラフ52から分かるように、さらに計量時間が長くなってしまう。そうすると、冷却工程が長くなり、結果的に成形サイクルが長くなってしまう。成形サイクルが長いと生産性が低下してしまうので好ましくない。制御装置4(図1参照)は、図3Eに示されているように、スクリュ回転数として例えば第2の変更例62を推奨するようにし、そのときに予想される可塑化サーボモータ42(図2参照)の予測電力量63をオペレータに提供する。なお、このような推奨する設定値と予測される電力量を含んだオペレータ支援情報については、後で説明する電力削減支援画面において表示されるようになっている。
【0029】
<オペレータ支援情報(2)>
2組目として説明するオペレータ支援情報は、支援対象設定データが保圧工程における保圧時間であり、制御対象予測電力量が射出サーボモータ41(図2参照)の保圧工程における予測電力量である。制御装置4(図1参照)は、保圧時間について変更したとした場合に射出サーボモータ41の電力量がどのように変化するか、についての情報を提供することになる。
【0030】
図4のグラフ72は、金型15、16(図1参照)に射出材料を射出する射出工程と、射出材料に圧力を印可する保圧工程において、時間と共に変化するスクリュ位置を示すグラフになっている。スクリュ位置が変化して金型15、16に射出材料が充填されると、成形品重量が増加する。グラフ73は成形品重量が増加する様子を示している。グラフ73から分かるように成形品重量は射出工程において大きく増加し、そして保圧工程においては増加率が小さくなり、やがて成形品重量は一定に達している。射出工程と保圧工程において、射出サーボモータ41(図2参照)において消費される消費電力はグラフ75に示され、そしてこれを積算したもの、つまり保圧工程における射出サーボモータ41の電力量がグラフ76に示されている。
【0031】
制御装置4(図1参照)は、成形サイクルのたびに保圧工程においてスクリュ位置の変化を監視するようにする。そうすると、タイミング78以降の時間帯79でスクリュ位置がほとんど変化していないことが検出される。この時間帯79は、成形品重量が変化せず、実質的にゲートから金型15、16内に射出材料が入っていかないことを示している。そうすると、その後において射出材料に圧力を印可する符号81の時間帯の電力が無駄になっていることが分かる。制御装置4は、保圧時間として符号82で示されている時間を推奨する。つまり、タイミング78以降、保圧を実施しないことを推奨する。そしてこのようにしたときの射出サーボモータ41(図2参照)の予測電力量84を併せてオペレータに提供するようにする。なお、このとき射出サーボモータ41の電力量の予測削減量85を提供するようにしてもよい。
【0032】
<オペレータ支援情報(3)>
3組目として説明するオペレータ支援情報は、支援対象設定データが計量工程における背圧であり、制御対象予測電力量が射出サーボモータ41(図2参照)の計量工程における予測電力量である。制御装置4は、背圧について変更した場合に射出サーボモータ41の電力量がどのように変化するかの情報を提供することになる。
【0033】
図5には、背圧を変化させたときに計量工程において消費される射出サーボモータ41(図2参照)の電力量がグラフ87として示されている。制御装置4(図1参照)は、現在の背圧の設定値88に対して、例えば変更値91にする場合について情報提供する。この場合、射出サーボモータ41の電力量は現在の電力量89から、予測電力量92に削減されることことが予想される。予測電力量92も併せてオペレータに情報提供する。なお、オペレータ支援情報の中には、1組目、2組目として説明したオペレータ支援情報のように、推奨する設定値を提案することができる支援対象設定データもある。しかしながら支援対象設定データとして推奨する設定値の提案が難しいものもある。背圧はこのような支援対象設定データであると言える。したがって、背圧に関して制御装置4は推奨する設定値は提案せず、背圧を例として変更値91にしたら予測電力量92に変化する、等の参考情報を提供するに留めている。
【0034】
なお、支援対象設定データを計量工程における背圧とし、制御対象を可塑化サーボモータ43(図2参照)とすることもできる。つまり可塑化サーボモータ43についての制御対象予測電力量を扱うことになる。この場合、背圧を小さくすると、可塑化サーボモータ43の駆動に要する電力量は小さくなる。さらには、支援対象設定データを計量工程における背圧とし、制御対象を射出サーボモータ41(図2参照)と可塑化サーボモータ43とすることもできる。つまり制御対象予測電力量は、射出サーボモータ41と可塑化サーボモータ43の消費電力量の予測になる。
【0035】
<他のオペレータ支援情報>
上で説明した1組目、2組目、3組目のオペレータ支援情報は制御対象予測電力量における制御対象がいずれもサーボモータ41、42、…であった。制御対象予測電力量における制御対象がヒータ25、25、…となるオペレータ支援情報もある。このようなオペレータ支援情報では、例えば支援設定対象データを、樹脂種類と加熱シリンダ19(図1参照)の目標温度とから構成する。そうすると制御対象予測電力量がヒータ25、25、…において予測される消費電力量になる。樹脂種類を変更したり、目標温度を所定の大きさだけ低下させたりすると、ヒータ25、25、…において予測される消費電力量は変化する。そこで、支援対象設定データとして樹脂種類の変更や目標温度の変更を推奨し、そのときの制御対象予測電力量を提供することができる。
【0036】
<電力削減支援画面>
図6に示されている、本実施の形態に係る電力削減支援画面94は、制御装置4(図1参照)のモニタ4aに表示されるようになっている。電力削減支援画面94は、オペレータ支援情報について表示して、オペレータに対して電力量の削減につながる成形条件の変更に関する情報を提供するようになっている。画面において上段にプルダウンメニュー95が設けられており、プルダウンメニュー95において表示させたいオペレータ支援情報を選択するようになっている。図6において「オペレータ支援情報(1)」が選択されている様子が示されている。この場合、画面の下段において1組目のオペレータ支援情報が表示される。
【0037】
1組目のオペレータ支援情報は前記したように、支援対象設定データが計量工程におけるスクリュ回転数であり、制御対象予測電力量が可塑化サーボモータ42(図2参照)の計量工程における予測電力量になっている。電力削減支援画面94には、支援対象設定データであるスクリュ回転数について現在の設定値の表示欄96と、可塑化サーボモータ42の計量工程における電力量の表示欄97とが設けられている。そして、スクリュ回転数として推奨する設定値の表示欄98と、そのときに予測される可塑化サーボモータ42の予測電力量の表示欄99とが設けられている。オペレータは、これらの表示欄96、97、98、99に表示されているオペレータ支援情報を参考にして、成形条件を見直す。
【0038】
<本実施の形態の変形例>
本実施の形態は色々な変形が可能である。例えば、オペレータに提供するオペレータ支援情報は、支援対象設定データと制御対象予測電力量とからなるよう説明した。しかしながら制御対象についての予測電力量の代わりに予測平均電力であってもよい。瞬時値である電力を時間平均して得られる平均電力は、実質的に電力量と同等の概念になるからである。また、オペレータに提供する制御対象予測電力量は、支援対象設定データを変更することによって、変化が予測される制御対象についての電力量の減少分、つまり制御対象予測電力量減少分であってもよい。電力量の減少分を予測して、これをオペレータに提供する場合であっても、実質的に制御対象予測電力量を提供していることと同等であるからである。
【0039】
他にも変形が可能である。例えば、支援対象設定データを、計量工程におけるスクリュ回転数と、背圧との2個の設定データから構成するようにすることもできる。この場合には支援対象設定データに関連するサーボモータは、射出サーボモータ41と可塑化サーボモータ42の2個になるので、サーボモータ予測電力量は、これら2個のサーボモータ41、42の電力量を合計したものになる。
【0040】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は既に述べた実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることはいうまでもない。以上で説明した複数の例は、適宜組み合わせて実施されることもできる。
【符号の説明】
【0041】
1 射出成形機 2 型締装置
3 射出装置 4 制御装置
5 突出装置
7 固定盤 8 可動盤
9 型締ハウジング 11 タイバー
13 トグル機構 15 固定側金型
16 可動側金型 19 加熱シリンダ
20 スクリュ 22 スクリュ駆動装置
23 ホッパ 24 射出ノズル
30 コンバータ 31 三相交流電源
33 直流電圧線
35、36、37、38 サーボアンプ
41、42、43、44 サーボモータ
B ベッド


図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図4
図5
図6