(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173012
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】シートスライド装置
(51)【国際特許分類】
B60N 2/08 20060101AFI20231130BHJP
【FI】
B60N2/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022084947
(22)【出願日】2022-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】000143639
【氏名又は名称】株式会社今仙電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三好 健介
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087BA02
3B087BC04
3B087BC05
3B087BC06
3B087BC08
3B087BC16
(57)【要約】
【課題】ロック部材によるロック強度を確保しつつ、ロック部材の衝突によって生じる衝突音を抑制したシートスライド装置を提供する。
【解決手段】シートスライド装置1は、ロアレール2と、アッパーレール3と、ロック部材4と、レバー5と、ダンパ6と、を備える。ロック部材4は、ロック位置とロック解除位置との間で移動可能なロック片41を備える。ダンパ6は、第一ダンパ部61と、第二ダンパ部62と、を備える。第一ダンパ部61は、ロック位置よりも前でロック片41と接触して、ロック片41の移動速度を低下させるが、ロック位置に到達する前にロック片41を停止させない。第二ダンパ部62は、第一ダンパ部61よりもバネ定数が大きく、第一ダンパ部61を介してロック片41が接触し、ロック片41の移動速度を低下させる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のシートの前後位置を調節するためのシートスライド装置であって、
車体に固定可能なロアレールと、
前記シートに固定可能なアッパーレールと、
前記ロアレールと前記アッパーレールとを解除可能にロックするロック部を有し、前記ロック部が、前記ロアレールと前記アッパーレールとが相対移動できないようにロックするロック位置と、前記ロアレールと前記アッパーレールとが相対移動可能になるロック解除位置との間で移動可能であるロック部材と、
前記ロック部の前記ロック位置と前記ロック解除位置とを切り替えるレバーと、
前記ロック部が前記ロック解除位置から前記ロック位置に移動する際の前記ロック部の移動速度を低下させるダンパと、
を備え、
前記ダンパは、
前記ロック位置よりも前で前記ロック部と接触して前記ロック部の移動速度を低下させると共に、前記ロック部が前記ロック位置に到達する前に前記ロック部を停止させない第一ダンパ部と、
前記第一ダンパ部よりもバネ定数が大きく、前記第一ダンパ部を介して前記ロック部が接触し、前記ロック部の移動速度を低下させる第二ダンパ部と、
を備えるシートスライド装置。
【請求項2】
前記第一ダンパ部の一端部は固定されており、前記第一ダンパ部の他端部は前記車両の上下方向に移動可能である、
請求項1に記載のシートスライド装置。
【請求項3】
前記第一ダンパ部は、前記ロック部よりも柔軟性を有する材料から構成されている、
請求項1または2に記載のシートスライド装置。
【請求項4】
前記第一ダンパ部および/または前記第二ダンパ部は、高分子材料製である、
請求項1または2に記載のシートスライド装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートスライド装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のシートの前後位置を調節するためのシートスライド装置が知られている。このようなシートスライド装置は、例えば特許文献1に開示されている。
【0003】
シートの前後位置を調節する際には、まず、搭乗者がレバーの操作部を持ち上げ、ロック部材をロック解除位置に移動させる。ロック部材がロック解除位置に移動することにより、ロアレールとアッパーレールとは前後方向に摺動可能になり、シートの前後位置の調節が可能になる。
【0004】
シートの前後位置を調節した後、搭乗者がレバーから手を離すと、ロック部材がロック位置に戻り、再度、ロアレールとアッパーレールとをロックする。ロック部材がロック位置に戻る際の移動速度が大きいと、ロック部材がロアレールおよび/またはアッパーレールと衝突し、衝突音が発生することがある。衝突音が大きい場合、搭乗者が不快感を覚えることがある。
【0005】
従来のシートスライド装置の中には、ロック部材の移動速度を低下させるためのダンパをさらに備えているものもある。ここで、
図9Aから
図9Cを参照して、従来のダンパDについて簡単に説明する。従来のダンパDは、弾性変形可能な一つの板状部材から成り、アッパーレールに取り付けられている。ダンパDは、ロック部材Lに接触しており、ロック部材Lを下方に付勢している。ロック部材Lがロック解除位置(
図9B)からロック位置(
図9C)に戻る際に、ロック部材Lは、ダンパDの付勢力に抗して移動することになる。したがって、ダンパDによって、ロック部材Lの移動速度を低下させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来のダンパは一つの部材から構成されているため、バネ定数は一定である。ダンパのバネ定数が大きいと、ロック部材の移動速度を大きく低下させることはできるものの、ロック部材がロック位置まで完全に戻らないおそれがある。ロック部材がロック位置まで完全に戻らないと、必要なロック強度を確保できない。逆に、バネ定数が小さいと、ロック部材の移動速度を十分に低下させることができず、衝突音を十分に抑制できないおそれがある。
【0008】
このように、従来のダンパは、ロック部材によるロック強度の確保と衝突音の十分な抑制とを両立するのが難しい場合があった。
【0009】
本発明は、ロック部材によるロック強度を確保しつつ、ロック部材の衝突によって生じる衝突音を抑制したシートスライド装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は以下に掲げる態様の発明を提供する。
(項目1)
車両のシートの前後位置を調節するためのシートスライド装置であって、
車体に固定可能なロアレールと、
前記シートに固定可能なアッパーレールと、
前記ロアレールと前記アッパーレールとを解除可能にロックするロック部を有し、前記ロック部が、前記ロアレールと前記アッパーレールとが相対移動できないようにロックするロック位置と、前記ロアレールと前記アッパーレールとが相対移動可能になるロック解除位置との間で移動可能であるロック部材と、
前記ロック部の前記ロック位置と前記ロック解除位置とを切り替えるレバーと、
前記ロック部が前記ロック解除位置から前記ロック位置に移動する際の前記ロック部の移動速度を低下させるダンパと、
を備え、
前記ダンパは、
前記ロック位置よりも前で前記ロック部と接触して前記ロック部の移動速度を低下させると共に、前記ロック部が前記ロック位置に到達する前に前記ロック部を停止させない第一ダンパ部と、
前記第一ダンパ部よりもバネ定数が大きく、前記第一ダンパ部を介して前記ロック部が接触し、前記ロック部の移動速度を低下させる第二ダンパ部と、
を備えるシートスライド装置。
【0011】
(項目2)
前記第一ダンパ部の一端部は固定されており、前記第一ダンパ部の他端部は前記車両の上下方向に移動可能である、
項目1に記載のシートスライド装置。
【0012】
(項目3)
前記第一ダンパ部は、前記ロック部よりも柔軟性を有する材料から構成されている、
項目1または2に記載のシートスライド装置。
【0013】
(項目4)
前記第一ダンパ部および/または前記第二ダンパ部は、高分子材料製である、
項目1から3のいずれか1項に記載のシートスライド装置。
【発明の効果】
【0014】
本発明のシートスライド装置のダンパは、第一ダンパ部および第二ダンパ部を備えている。ロック部がロック解除位置からロック位置に戻る際に、まず、第一ダンパ部によってロック部の移動速度を低下させ、その後、第二ダンパ部によってさらにロック部の移動速度を低下させて、ロック部をロック位置まで戻すことができる。これにより、ロック部材の衝突音を抑制しつつ、ロック部材によるロック強度を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】シートおよびシートスライド装置の概略側面図である。
【
図4】組立後のシートスライド装置の部分断面斜視図である。
【
図6A】ロック片(ロック部の一例)がロック位置にあるとき(すなわち、レバーの非操作時)のシートスライド装置の断面図である。
【
図6B】ロック片がロック解除位置にあるとき(すなわち、レバーのロック解除操作時)のシートスライド装置の断面図である。
【
図7A】ロック片がロック解除位置からロック位置に戻る途中のシートスライド装置の部分断面図である。
【
図7B】ロック片がロック位置まで戻った状態のシートスライド装置の部分断面図である。
【
図9B】従来のダンパの動作機構を示す断面図である。
【
図9C】従来のダンパの動作機構を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図面を参照しつつ、本発明のシートスライド装置1について説明する。以下では、「車両上下方向」、「車両前後方向」、「車両左右方向(車幅方向)」をそれぞれ単に「上下方向」、「前後方向」、「左右方向」と表記する。
【0017】
シートスライド装置1は、車両のシートSの前後位置を調節するための装置である。
図1および
図2に示すように、シートスライド装置1は、主に、ロアレール2と、アッパーレール3と、ロック部材4と、レバー5と、ダンパ6と、を備える。ロアレール2、アッパーレール3、ロック部材4、およびダンパ6は、一つのシートSに対し、左右一対(すなわち、インナ側とアウタ側に)設けられている。
図1および
図2では、左右一対の各構成要素のうちの一方のみを示している。
【0018】
ロアレール2は、ブラケットBを介して車両のフロアに固定されている。アッパーレール3は、シートSに固定されると共に、ロアレール2に組み付けられている。搭乗者がレバー5を操作していないとき、アッパーレール3は、ロック部材4によってロアレール2とロックされており、ロアレール2に対して前後方向に移動できないようになっている。搭乗者がレバー5を持ち上げると、ロック部材4によるロックが解除され、アッパーレール3は、ロアレール2に対して前後方向に移動可能になる。こうして、搭乗者はシートSの前後位置を調節できる。
【0019】
以下、各構成要素について詳述する。
【0020】
<1-1 ロアレールおよびアッパーレール>
主に
図2を参照して、ロアレール2について説明する。
【0021】
ロアレール2は、前後方向に延びる長尺な部材から成る。ロアレール2は、底壁21と、側壁22と、上壁23と、フランジ部24と、を備える。側壁22、上壁23およびフランジ部24はそれぞれ一対設けられている。ロアレール2は、例えば金属製であり、プレス加工によって一体成形される。
【0022】
底壁21は、前後方向に延びる略平板状である。側壁22は、底壁21の左右両端から、底壁21と略直角を成して上方に延びている。上壁23は、側壁22の上端から相手側の側壁22に向けて延びている。フランジ部24は、上壁23の端部から下方に、側壁22と略平行に延びている。
【0023】
各フランジ部24には、複数の切欠き24aが前後方向に間隔をあけて形成されている。複数の切欠き24aを設けることによって、各フランジ部24の下端には複数のロック歯24bが形成されている。ロック部材4によってロアレール2とアッパーレール3とがロックされているとき、ロック歯24bは、ロック部材4の貫通穴41a(
図5A参照)内に配置されている。
【0024】
次に、主に
図2および
図3を参照して、アッパーレール3について説明する。
【0025】
アッパーレール3は、前後方向に延びる長尺な部材から成る。アッパーレール3は、上壁31と、側壁32と、底壁33と、フランジ部34と、を備える。側壁32、底壁33およびフランジ部34はそれぞれ一対設けられている。アッパーレール3は、例えば金属製であり、プレス加工によって一体成形される。
【0026】
上壁31は、前後方向に延びる略平板状である。側壁32は、上壁31の左右両端から、上壁31と略直角を成して下方に延びている。底壁33は、側壁32から離れるように、側壁32から斜め上方に向けて延びている。フランジ部34は、側壁32に近づくように底壁33から斜め上方に向けて延びている。
【0027】
図2に示すように、上壁31と側壁32との間のコーナ部には、切欠き31aが設けられている。
図4に示すように、切欠き31aには、弾性部材7が係止される。
【0028】
図3に示すように、各側壁32には、複数の切欠き32aが、前後方向に、ロアレール2の切欠き24aと同じ間隔で形成されている。複数の切欠き32aを設けることにより、各側壁32には、複数のロック歯32bが形成されている。ロック部材4によってロアレール2とアッパーレール3とがロックされているとき、ロック歯32bは、ロック部材4の貫通穴41a(
図5A参照)内に配置されている。
【0029】
各側壁32には、上下方向に延びる切欠き32cが設けられている。切欠き32c内には、ロック部材4の凸部44b(
図5A参照)が圧入される。
【0030】
アッパーレール3は、ロアレール2の一対のフランジ部24間にアッパーレール3の両方の側壁32が配置され、ロアレール2の側壁22とフランジ部24との間に、アッパーレール3のフランジ部34が配置されるように、ロアレール2に組み付けられる。
【0031】
ロアレール2の底壁21と側壁22との間のコーナ部と、アッパーレール3の底壁33との間には、
図2に示すボール等の転動部材9が配置されている。また、ロアレール2の側壁22の上端と、アッパーレール3のフランジ部34の上端との間にも、転動部材9が配置されている。この転動部材9により、ロアレール2とアッパーレール3とは、前後方向に円滑にスライドできるようになっている。
【0032】
<1-2 ロック部材>
主に
図4、
図5Aおよび
図5Bを参照して、ロック部材4について説明する。
【0033】
図5Aに示すように、ロック部材4は、ロック片41(ロック部の一例)と、被押圧部42と、延出部43と、立上部44と、装着部45と、垂下部46と、を備える。ロック部材4は、バネ鋼などの弾性変形可能な一枚の板材を、例えばプレス加工することにより製造される。
【0034】
図5Aに示すように、ロック片41には、複数の貫通穴41aが設けられている。ロック片41のうち、前後方向において複数の貫通穴41aに隣接する部分は、ロック歯41bとして機能する。ロアレール2のロック歯24bおよびアッパーレール3のロック歯32bが、貫通穴41a内に挿入され、ロック部材4のロック歯41bが、ロアレール2の切欠き24aおよびアッパーレール3の切欠き32a内に挿入されると、ロアレール2とアッパーレール3とは前後にスライド不能になる。
【0035】
被押圧部42は、ロック片41の前方に設けられている。被押圧部42上にはレバー5の押圧部53が配置される(
図4参照)。レバー5の操作部51を持ち上げた際(すなわち、ロック解除操作を行った際)に、被押圧部42はレバー5の押圧部53によって下方に押圧される。
【0036】
二つの延出部43は、左右方向に離隔されていると共に、前後方向に延びている。二つの立上部44は、二つの延出部43のそれぞれの前端から、やや後方傾斜しながら立ち上がっている。二つの立上部44は、それらの上部で互いに接続されている。二つの立上部44の間には、上方が閉鎖された開口部44aが形成されている。開口部44aには、レバー5のアーム部52が挿入される(
図4参照)。
【0037】
図5Aおよび
図5Bに示すように、各立上部44は、外方に突出する凸部44bを備える。凸部44bは、アッパーレール3の切欠き32cに挿入される。前記の通り、立上部44は後方に傾斜しながら立ち上がっているため、凸部44bも後方に傾斜している。凸部44bの前後方向における幅W(すなわち、凸部44bの上部後端と下部前端との間の距離)は、アッパーレール3の切欠き32cの幅よりも大きくなっている。そのため、凸部44bを切欠き32cに挿入したとき、凸部44bは切欠き32c内に圧入されることになる。凸部44bが切欠き32cに圧入されると、凸部44bの上部後端は切欠き32cの後方側の内面に接触し、凸部44bの下部前端は切欠き32cの前方側の内面に接触する。そして、凸部44bは、切欠き32cの前方および後方の内面に接触した時点で弾性変形し、前後方向に保持荷重を発生させる。凸部44bはこの保持荷重によって切欠き32c内で固定される。そのため、ロック部材4は負荷が入力されても、前後にガタつくことはない。
【0038】
装着部45は、ロック部材4を固定部材8によってアッパーレール3に固定するための部分である。
図4に示すように、ロック部材4は、装着部45を固定部材8によってアッパーレール3に取り付け、固定部材8をカシメることにより、アッパーレール3に固定される。
【0039】
図5Aに示すように、垂下部46は、装着部45の前端から下方に延びている。垂下部46は、開口部46aを有している。
図4に示すように、開口部46aには、レバー5のアーム部52が挿入される。
【0040】
<1-3 レバーおよび弾性部材>
主に
図2および
図4を参照して、レバー5および弾性部材7について説明する。
【0041】
図2に示すように、レバー5は、操作部51と、左右一対のアーム部52と、各アーム部52の後端にそれぞれ設けられた押圧部53と、を備える(
図2では、レバー5の左側部分は省略している)。レバー5は、例えば、一本のパイプをプレス加工することにより一体成形される。一対のアーム部52は、操作部51を介して一体的に接続されている。各アーム部52の下面には、切欠き52aが設けられている。
【0042】
弾性部材7は、レバー5を上方に付勢している。弾性部材7は、例えば一本の線状バネを折り曲げることにより構成されている。弾性部材7は、アッパーレール3の切欠き31aおよびレバー5の切欠き52aに係止されている。
【0043】
図4に示すように、アーム部52は、ロック部材4の開口部46aおよび開口部44aに挿入される。垂下部46は、アーム部52を挿入するための目印、およびアーム部52を真っ直ぐ挿入するためのガイドとして機能する。押圧部53は、ロック部材4の被押圧部42上に配置される。
【0044】
レバー5に係止された弾性部材7はレバー5の重さ(すなわち、下方荷重)を受け止めることになるが、この下方荷重よりも弾性部材7の上向きの付勢力の方が大きい。すなわち、レバー5は、弾性部材7によって上方に付勢されている。したがって、アーム部52は、開口部44aの上縁と接触している。後述するように、レバー5は、操作部51を持ち上げた際に(すなわち、ロック解除操作を行った際に)、アーム部52と開口部44aの上縁との接触部分P1を中心として回転する。
【0045】
<1-4 ダンパ>
主に
図2、
図6Aおよび
図6Bを参照して、ダンパ6について説明する。
【0046】
ダンパ6は、ロック片41がロック解除位置からロック位置に移動する際のロック片41の移動速度を低下させる。これにより、ロック部材4が、ロアレール2および/またはアッパーレール3と衝突した際の衝突音を抑えることができる。
【0047】
ダンパ6は、第一ダンパ部61と、第二ダンパ部62と、接続部63と、固定部64と、を備える。ダンパ6は、固定部64によって、アッパーレール3に固定されている。第一ダンパ部61と第二ダンパ部62とは、接続部63によって接続されている。
【0048】
第一ダンパ部61および/または第二ダンパ部62は、好ましくは、ロック部材4(ロック片41)よりも柔軟性を有する材料から作製される。第一ダンパ部61および/または第二ダンパ部62は、好ましくは、弾性変形可能な材料から作製される。第一ダンパ部61および/または第二ダンパ部62は、例えば、樹脂やゴムなどの高分子材料製である。ダンパ6は、好ましくは一体成形品であり、ダンパ6全体が上記材料から作製される。
【0049】
第一ダンパ部61は、ロック片41が衝突すると、弾性変形し、ロック片41の上方への移動速度を低下させる。第一ダンパ部61のバネ定数は、ロック片41の上方への移動速度を低下させることはできるものの、ロック片41がロック位置に到達する前にロック片41を停止させてしまうほど大きくはない。
【0050】
一実施形態では、第一ダンパ部61は、所定の厚みを有する板状である。第一ダンパ部61の一端部は接続部63と接続されており、第一ダンパ部61の他端部は自由端となっている。このように、第一ダンパ部61は、片持ち梁構造である。第一ダンパ部61は、その一端部を中心として、上下動可能になっている。
【0051】
第一ダンパ部61は、ロック片41の上方に配置されている。
図6Aに示すように、ロック片41がロック位置にあるとき、第一ダンパ部61は、ロック片41および第二ダンパ部62と接触している。
【0052】
図6Bに示すように、ロック片41がロック解除位置にあるとき、第一ダンパ部61は、ロック片41と離隔している。第一ダンパ部61の他端部の下端は、ロック片41が接触していない状態において、切欠き24aおよび切欠き32aの上縁よりも下方に位置している。より詳細には、第一ダンパ部61の他端部の下端は、ロック歯24bおよびロック歯32bの下端よりもわずかに上方に配置されている。これにより、ロック部材4のロック歯41bが、切欠き24aおよび切欠き32a内に挿入される瞬間に、ロック片41が第一ダンパ部61と接触する。
【0053】
第二ダンパ部62は、第一ダンパ部61が衝突すると、弾性変形して、ロック片41および第一ダンパ部61の上方への移動速度を低下させると共に、ロック片41をロック位置で停止させる。
【0054】
一実施形態では、第二ダンパ部62は、中空内部を有する三角形状の両持ち梁構造である。このような構造により、第二ダンパ部62のバネ定数を第一ダンパ部61のバネ定数よりも大きくすることができる。
【0055】
第二ダンパ部62は、第一ダンパ部61の上方に配置されている。
図6Aに示すように、ロック片41がロック位置にあるとき、第二ダンパ部62は、第一ダンパ部61と接触している。
図6Bに示すように、ロック片41がロック解除位置にあるとき、第二ダンパ部62は、第一ダンパ部61と接触しておらず、第一ダンパ部61と離隔している。
【0056】
<2 ロック解除操作およびロック操作>
図6Aから
図7Bを参照して、ロック解除操作およびロック操作について説明する。
【0057】
ロック片41がロック位置にある状態(
図6A参照)から、搭乗者がレバー5の操作部51を持ち上げると、レバー5は、アーム部52と開口部44aの上縁との接触部分P1を中心として回転する。すなわち、レバー5は、接触部分P1よりも前方部分が上方に移動し、接触部分P1よりも後方部分が下方に移動するように、回転する。
【0058】
図6Bに示すように、レバー5の回転により、レバー5の押圧部53は、ロック部材4の被押圧部42を下方に押圧する。被押圧部42が押圧部53によって押圧されることにより、主に延出部43が弾性変形し、ロック片41が下方に移動する。ロック片41が下方に移動することにより、ロック歯41bが、ロアレール2の切欠き24a内およびアッパーレール3の切欠き32a内から離脱する。こうして、ロック片41がロック解除位置に移動し、ロアレール2とアッパーレール3とのロックが解除される。ロック解除されることにより、アッパーレール3はロアレール2に対して前後方向にスライド可能になるため、搭乗者は、シートSの前後位置を調節することができる。
【0059】
シートSの前後位置を調節した後、搭乗者がレバー5の操作部51から手を離すと、レバー5の自重およびロック部材4の弾性力(復元力)により、レバー5は、操作部51が下方に移動し、押圧部53が上方に移動するように、逆回転する。また、ロック片41は、ロック部材4の弾性力により、ロック解除位置からロック位置に戻ろうとする。
【0060】
図7Aに示すように、ロック歯41bが、ロアレール2の切欠き24aおよびアッパーレール3の切欠き32aに進入する瞬間、ロック片41が、ダンパ6の第一ダンパ部61と衝突する。ロック片41が第一ダンパ部61と衝突することにより、ロック片41の上方への移動速度が低下する。第一ダンパ部61のバネ定数は、ロック片41の上方への移動速度を低下させることはできるものの、ロック片41がロック位置に到達する前にロック片41を停止させてしまうほど大きくはない。そのため、ロック片41は、第一ダンパ部61を持ち上げながら上方に移動する。
【0061】
図7Bに示すように、ロック片41がさらに上昇すると、第一ダンパ部61が第二ダンパ部62に衝突する。第一ダンパ部61が第二ダンパ部62に衝突すると、ロック片41は、第二ダンパ部62によってさらに減速され、ロック位置で停止する。
【0062】
<3 特徴>
シートスライド装置1がダンパ6を備えていることにより、相対的にバネ定数の小さい第一ダンパ部61によって、まず、ロック片41の移動速度を低下させ、その後、第一ダンパ部61よりもバネ定数の大きい第二ダンパ部62によってさらにロック片41の移動速度を低下させて、ロック片41をロック位置で停止させることができる。これにより、ロック部材4がロアレール2および/またはアッパーレール3に衝突した際の衝突音を抑制できる。また、第一ダンパ部61のバネ定数は、ロック片41がロック位置に到達する前に、ロック片41の移動を停止させてしまうほど大きくはない。したがって、ロック片41をロック位置まで戻して停止させることができるため、ロック強度を確保することができる。
【0063】
第一ダンパ部61が、樹脂やゴムなど、ロック片41よりも柔軟性を有する材料から作製されていることにより、ロック片41が第一ダンパ部61に衝突した際の衝突音を軽減できる。さらに、第一ダンパ部61が第二ダンパ部62と衝突した際の衝突音も軽減できる。
【0064】
第二ダンパ部62が、樹脂やゴムなどの高分子材料製であることにより、第一ダンパ部61が第二ダンパ部62と衝突した際の衝突音を軽減できる。
【0065】
<4 変形例>
本発明は、上記実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。本発明は、例えば、以下の変形例に示す構成に変更可能である。以下で説明する変形例は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜組み合わせ可能である。
【0066】
(1)ロック部材4は、ロック片41が上下動するタイプに限定されず、
図8に示すように、ロック部材4が回転するタイプであってもよい。
【0067】
(2)ダンパ6は、第一ダンパ部61と第二ダンパ部62との間に、少なくとも一つの第三ダンパ部をさらに備えていてもよい。
【0068】
(3)第一ダンパ部61は、ロック片41がロック解除位置にあるときにも、ロック片41と接触していてもよい。
【符号の説明】
【0069】
1 シートスライド装置
2 ロアレール
3 アッパーレール
4 ロック部材
41 ロック片(ロック部)
5 レバー
6 ダンパ
61 第一ダンパ部
62 第二ダンパ部
S シート