(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173015
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】組電池、及び組電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 50/293 20210101AFI20231130BHJP
H01M 50/209 20210101ALI20231130BHJP
H01M 50/289 20210101ALI20231130BHJP
H01M 50/291 20210101ALI20231130BHJP
H01M 50/227 20210101ALI20231130BHJP
【FI】
H01M50/293
H01M50/209
H01M50/289 101
H01M50/291
H01M50/227
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022084954
(22)【出願日】2022-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】近藤 敦美
(72)【発明者】
【氏名】萩原 敬三
(72)【発明者】
【氏名】吉成 博昭
【テーマコード(参考)】
5H040
【Fターム(参考)】
5H040AA01
5H040AA03
5H040AA28
5H040AS01
5H040AS04
5H040AS07
5H040AT02
5H040AT03
5H040AT04
5H040AY05
5H040CC20
5H040JJ03
5H040LL01
5H040LL06
5H040NN03
(57)【要約】
【課題】製造性を向上させるとともに、電池の冷却、及び放熱性能を両立する組電池構造を提供する。
【解決手段】セル12間にセパレータ13を挟んだ状態でセル12を並列させて収容する樹脂ケース5と、樹脂ケース5の底板及びセル12の底面に向く上面を有する金属板21と、金属板21上に配設された絶縁層214と、セル12の底面と樹脂ケース5の底板55とを接着する接着保持剤47と、樹脂ケース5の底板55と絶縁層214とを接着する接着剤49と、樹脂ケース5の底板55に貫通形成された枠孔554に収容され、セル12の底面と絶縁層214との間で圧縮された状態でセル12の底面と絶縁層214とに密着する可塑性材料41と、を備える組電池1。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のセルと、
前記セル間にセパレータを挟んだ状態で前記セルを並列させて収容する樹脂ケースと、
前記樹脂ケースの底板及び前記セルの底面に向く上面を有する金属板と、
前記上面に配設された絶縁層と、
前記樹脂ケースに収容された前記セルの底面と前記樹脂ケースの底板とを接着する接着保持剤と、
前記樹脂ケースの底板と前記絶縁層とを接着する接着剤と、
前記樹脂ケースの底板に貫通形成された枠孔に収容され、前記セルの底面と前記絶縁層との間で圧縮された状態で前記セルの底面と前記絶縁層とに密着する可塑性材料と、を備える組電池。
【請求項2】
前記接着保持剤が、両面テープである請求項1に記載の組電池。
【請求項3】
可塑性シートをさらに備え、
前記樹脂ケースに、前記セルを収容する収容室と、前記収容室の外に設けられボルトが通る第1の貫通孔と、が設けられ、
前記金属板に、前記第1の貫通孔に連通するとともに前記ボルトが通る第2の貫通孔が設けられ、
前記金属板は、中央が凸状の曲面である下面を有し、前記下面の中央は、前記セルが並列する方向において前記樹脂ケース内の前記複数のセルのうち他の前記セルに囲まれた前記セルに対応する位置にあり、
前記下面と組電池を支持する台との間で前記可塑性シートが挟まれた状態で、前記第1の貫通孔及び前記第2の貫通孔を通るとともに前記台のボルト穴に螺合された前記ボルトによって、前記樹脂ケース、前記金属板、及び前記台が固定される、請求項1に記載の組電池。
【請求項4】
前記金属板は、前記上面も凸状の曲面を備える請求項3に記載の組電池。
【請求項5】
前記絶縁層が、絶縁樹脂を繊維に含浸させたプリプレグである請求項1乃至4のいずれか1つに記載の組電池。
【請求項6】
請求項1に記載の組電池の製造方法であって、
前記樹脂ケースの底板に前記接着剤を配設する接着剤配設工程と
前記樹脂ケースに収容された前記セルの底面と前記樹脂ケースの底板とを前記接着保持剤で接着する接着工程と、
前記樹脂ケースの底板の前記枠孔に前記可塑性材料を収容した後、複数の前記セルを前記可塑性材料に向かってプレスし前記可塑性材料を圧縮変形させた状態で、前記可塑性材料を前記絶縁層に密着させるとともに、前記接着剤により前記樹脂ケースと前記絶縁層とを接着固定する固定工程と、を備える組電池の製造方法。
【請求項7】
圧縮変形前の前記可塑性材料の厚さは、前記接着保持剤と前記樹脂ケースの底板と前記接着剤との厚さの合計より厚く、
前記固定工程では、圧縮変形後の前記可塑性材料の厚さを、前記接着保持剤と前記樹脂ケースの底板と前記接着剤との厚さを合計した厚さと等しくする請求項6に記載の組電池の製造方法。
【請求項8】
前記固定工程後に、前記組電池を支持する台、前記樹脂ケース、及び前記金属板、をボルトによって固定する締結工程、をさらに備え、
前記樹脂ケースに、前記セルを収容する収容室と、前記収容室の外に設けられボルトが通る第1の貫通孔と、が設けられ、
前記金属板に、前記第1の貫通孔に連通するとともに前記ボルトが通る第2の貫通孔が設けられ、
前記金属板は、中央が凸状の曲面である下面を有し、前記下面の中央は、前記セルが並列する方向において前記樹脂ケース内の前記複数のセルのうち他の前記セルに囲まれた前記セルに対応する位置にあり、
前記締結工程では、前記下面と組電池を支持する前記台との間で可塑性シートを挟んだ状態で、前記第1の貫通孔及び前記第2の貫通孔を通すとともに前記台のボルト穴に螺合した前記ボルトによって、前記樹脂ケース、前記金属板、及び前記台を固定する、請求項6又は請求項7に記載の組電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、組電池、及び組電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の電池セルを導電部材によって電気的に接続した組電池が知られており、車両や電子機器、その他産業用の電源として用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の組電池は、所望の電圧電流となるように複数のセルが直列/並列にバスバー等で端子側が接続され、仕切り壁であるセパレータを挟んで並んだ状態で、樹脂ケースに収容されている。そして、樹脂ケース内部のセルの充放電によって発生した熱の外部への放熱や伝導を目的として、セルの下側に絶縁層が配設された金属板を設け、金属板を介して熱を放熱する技術がある。このとき、可塑性を有する材料を複数のセルの底面、及び金属板に配設された絶縁層のそれぞれに下又は上から密着させる。
【0005】
従来の樹脂ケースは、低頭な平ネジ用の座繰りと、ボルトを通す貫通穴と、を別々に備えており、また、樹脂ケースとセルとの間に複数のセルごとの底面の高さのばらつき(底面のミクロ単位の凹凸)を吸収するために上記可塑性を有する板状の材料を配置している。さらに凹凸を埋める該可塑性材料の下に、絶縁層が配設された金属板を配し、セルと絶縁層が配設された金属板と可塑性材料とを、低頭の平ネジの座繰りに平ネジを例えば樹脂ケースの下面側から入れて締結することで固定をしていた。さらに、絶縁層が配設された金属板の下方には、冷却プレート等が可塑性シートを間に挟んで配置され、金属板と樹脂ケースと冷却プレート等とを、貫通穴に通したボルトによって締結していた。
【0006】
しかし、樹脂ケースが貫通穴に加えて座繰りを備えることで、座繰り穴周囲の強度が低下する等の設計検討事項が増える。また、座繰りに平ネジを通し、さらに貫通穴にボルトを通すため固定のための工数が増える。また、仮に冷却プレート側の接触面に、平ネジ頭部が突出すると、冷却プレート、金属板、及び可塑性材料の間にがたつきやぐらつきが発生して接触熱抵抗が上がりセルの放熱が阻害される。これを防ぐために、絶縁層が配設された金属板の冷却プレート側の面から平ネジが突出しないように、樹脂ケースに座繰りを深く設けると、絶縁層が配設された金属板の厚さを相対的により厚くする必要が生じ、組電池のサイズと重量とが上昇してしまう。
【0007】
よって、組電池においては、製造性を向上させるとともに、電池の冷却、及び放熱性能を両立する組電池構造を提供するという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態の組電池は、複数のセル間にセパレータを挟んだ状態で前記セルを並列させて収容する樹脂ケースと、前記樹脂ケースの底板及び前記セルの底面に向く上面を有する金属板と、前記上面に配設された絶縁層と、前記樹脂ケースに収容された前記セルの底面と前記樹脂ケースの底板とを接着する接着保持剤と、前記樹脂ケースの底板と前記絶縁層とを接着する接着剤と、前記樹脂ケースの底板に貫通形成された枠孔に収容され、前記セルの底面と前記絶縁層との間で圧縮された状態で前記セルの底面と前記絶縁層とに密着する可塑性材料と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態の組電池を底板側から見た斜視図である。
【
図2】実施形態の組電池のセルの一例を示す斜視図である。
【
図3】実施形態の組電池を構成要素ごとに分解して示す斜視図である。
【
図4】実施形態の組電池の樹脂ケースの一部を示す斜視図である。
【
図5】実施形態の組電池を、樹脂ケースの一部(ケース天板)を省略した状態で上側から見た斜視図である。
【
図6】上面に絶縁層が配設された金属板の一例を示す断面図である。
【
図7】上面に絶縁層が配設された金属板の別例を示す断面図である。
【
図9】実施形態の組電池による回路構成の一例である。
【
図10】実施形態の組電池の製造方法における、接着剤配設工程と、接着工程とを実施し、固定工程において樹脂ケースの底板の枠孔に可塑性材料を収容した状態を説明する断面図である。
【
図11】固定工程において、セルを可塑性材料に向かってプレスし可塑性材料を圧縮変形させた状態で、可塑性材料を絶縁層に密着させるとともに、接着剤により樹脂ケースと絶縁層とを接着固定した状態を説明する断面図である。
【
図12】実施形態の組電池の製造方法における締結工程を説明する断面図である。
【
図13】カプトン(登録商標)テープを備える組電池の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、
図1~
図5を用いて組電池1の例示的かつ模式的な実施形態を開示する。また、以下の各図では、便宜上、方向(X方向、Y方向、Z方向)が規定されている。X方向、Y方向、及びZ方向は、互いに直交している。
【0011】
図1、
図3~
図5に示す実施形態の組電池1に含まれる
図2に示すセル12について説明する。セル12は、電池セル、単電池、又は電池等とも称される。セル12は、一例として、リチウムイオン電池などの非水電解質二次電池であり、例えば、アルミニウムまたはアルミニウム合金で形成された扁平又は略直方形状の外装容器120と、外装容器120内に非水電解液と共に収容された図示しない電極体と、を備えている。
【0012】
セル12は、外装容器120の上面に、セル12の横方向(X方向)の両端部に正極端子121と負極端子122との2種の端子を備えており、正極端子121及び負極端子122は図示しない電極体に電気的に接続されている。また、セル12は、該上面に外装容器120内に発生したガスを排出するガス排出弁123、及び非水電解液を外装容器120の内部に注入するための注液口124を備えていてもよい。外装容器120の底面125は、略平坦面となっている。
【0013】
図3に示す組電池1において、複数のセル12の正極端子121および負極端子122は、図示しないバスバーの端子接続面に例えば溶接等で接続され電気的に接続される。組電池1では、複数のセル12が電気的に直列に接続される直列接続構造、及び、複数のセル12が電気的に並列に接続される並列接続構造の少なくとも一方が、形成される。
【0014】
実施形態の組電池1は、種々の装置や、機械、設備等に設置され、それら種々の装置や、機械、設備の電源として使用される。例えば、組電池1は、自動車や鉄道車両等の電源等、移動型の電源としても使用される他、例えば、POS(Point Of Sales)システム用の電源等、定置型の電源としても使用されうる。また、種々の装置等には、複数の、本実施形態で示される組電池1を、直列あるいは並列に接続したセット(例えば棚状に上下に重ねたセット)として搭載することもできる。なお、組電池1に含まれるセル12の数や配置等は、本実施形態で開示されるものには限定されない。組電池1は、電池モジュールや電池装置等とも称される。
【0015】
図3に各構成を分解して示す組電池1は、複数のセル12と、セル12間にセパレータ13を挟んだ状態でセル12を並列させて収容する樹脂ケース5と、樹脂ケース5の底板55及びセル12の底面125に向く上面212を有する金属板21と、金属板21の上面212に配設された絶縁層214と、樹脂ケース5に収容されたセル12の底面125と樹脂ケース5の底板55とを接着する接着保持剤47と、を備えている。
【0016】
図1、
図3~
図5に示す樹脂ケース5は、電気的絶縁性を有する材料から形成される。樹脂ケース5を形成する材料としては、例えば、ポリフェニレンエーテル、ポリカーボネート及びポリブチレンテレフタレート等の樹脂が挙げられる。
【0017】
樹脂ケース5は、平面視矩形で蓋形状の天板51(
図1のみ図示)、樹脂ケース5の長手方向(X方向)において対向する一対の側壁52、樹脂ケース5の短手方向(Y方向)において対向する一対の側壁53、及び底板55を備える。
【0018】
樹脂ケース5において、天板51及び底板55は、高さ方向(Z方向)について
図3、
図4に示す収容室50を挟んで対向する。それぞれの側壁52とそれぞれの側壁53とは例えば一体的に接続されており、収容室50側方全周を囲む。
【0019】
また、
図3、
図4に示すように、樹脂ケース5は、例えば2つの仕切り壁56を備える。各仕切り壁56は、X方向において一対の側壁52の間に配置され、互いに対して離れて配置される。仕切り壁56のそれぞれは、天板51(
図1参照)及び底板55との間に、高さ方向(Z方向)に沿って連続して延設される。2つの仕切り壁56によって樹脂ケース5の収容室50は、
図3、
図4に示すように3つの領域502に仕切られる。即ち、収容室50は、仕切り壁56によって、X方向において3分割される。
【0020】
例えば、
図3に示すように、Y方向において互いに対して隣り合うセル12の間に、セパレータ13が設けられる。Y方向に並ぶ複数(例えば8つ)のセル12をセル列15として、セル列15のそれぞれには、セパレータ13は、1つ以上設けられ、
図3の例では、セル列15の一つに対して7つのセパレータ13が設けられる。セパレータ13のそれぞれは、少なくとも外表面が電気的絶縁性を有する材料から形成される。セパレータ13の少なくとも外表面を形成する材料としては、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリカーボネート(PC)及びポリブチレンテレフタレート(PBT)等の電気的絶縁性を有する樹脂が挙げられる。このように、樹脂ケース5は、セル12間にセパレータ13を挟んだ状態でセル12を並列させて収容室50に収容する。セパレータ13は、例えば、各仕切り壁56に係合する係合溝を複数備えており、仕切り壁56によって支持される。
【0021】
図3~
図5に示すように、底板55は、Z方向の下側から、複数のセル12を支持する。底板55には、
図4に示すように3つの枠孔554が貫通形成されている。底板55では、枠孔554のそれぞれは、領域502の1つと対応する位置に形成される。枠孔554は、例えば、平面視略矩形状に貫通形成されている。
【0022】
また、
図4に示すように、底板55上の各枠孔554の近傍となる位置には、複数の区分け板556がY方向に等間隔を空けて立設している。領域502のそれぞれは、区分け板556によって、領域502に収容するセル12の数と同一の数に区分けされる。そして、区分け板556によって
図3に示すセル列15に含まれる複数のセル12のY方向における適切な位置決めがなされる。
【0023】
図3、
図5に示す1つのセル列15は、例えば8つのセル12が配列されて構成される。セル列15のそれぞれでは、セル12の横方向が樹脂ケース5の長手方向(X方向)と平行又は略平行の状態に、セル12が配列される。3つの領域502のそれぞれでは、セル列15は、底板55の枠孔554以外の領域によって支持される。また、セル列15では、セル12のそれぞれの奥行方向が、樹脂ケース5の短手方向(Y方向)と平行又は略平行の状態になっている。そして、セル列15では、セル12のそれぞれの高さ方向が、樹脂ケース5の高さ方向(Z方向)と平行又は略平行の状態になっている。また、セル列15の1つのセル12は、別の1つのセル列15のY方向において同順番となる1つのセル12と、互いにY方向及びZ方向にほとんどずれることなく配列される。
【0024】
図4に示す収容室50の領域502のそれぞれは、枠孔554の対応する1つを通して、樹脂ケース5の外部に対して開口する。領域502のそれぞれでは、全周に渡って内周側へ突出する状態に底板55が形成され、枠孔554のそれぞれでは、底板55の突出端によって、全周に渡ってその縁が形成される。
【0025】
図3に示すように、樹脂ケース5に収容されたセル12の底面125と樹脂ケース5の底板55の上面とを接着する接着保持剤47は、例えば、それぞれのセル12の外装容器120の底面125に塗布又は貼り付けされている。なお、接着保持剤47は、それぞれのセル12の底面125の全面に塗布又は貼り付けされておらず、底面125のうち枠孔554から露出して可塑性材料41と対向する領域には塗布又は貼り付けされていない。
図3に示す例においては、例えば、セル12の底面125のX方向両側の領域の2か所に接着保持剤47が配設されている。
【0026】
図3に示す接着保持剤47は、例えば、2液硬化型のエポキシ樹脂系接着剤であるが、これに限定されず、極薄の両面テープであってもよい。塗布又は貼り付けされた接着保持剤47の厚さは、樹脂ケース5の底板55の厚さ(例えば、厚さ1.35mm)や、可塑性材料41の厚さ(例えば、厚さ1.62mm)と比較して無視できるほど非常に小さく設定されている。
【0027】
接着保持剤47は、セル12ではなく、樹脂ケース5の底板55の上面に塗布又は貼り付けされていてもよい。即ち、例えば底板55の上面のうち隣り合う区分け板556と区分け板556との間のセル12を支持する領域や区分け板556と一対の側壁53との間のセル12を支持する領域に、接着保持剤47がそれぞれ塗布又は貼り付けされていてもよい。
【0028】
複数のセル12が樹脂ケース5に区分け板556を用いて位置決めされつつ収容された際に、接着保持剤47によってそれぞれのセル12の底面125と底板55の上面とが接着固定される。なお、接着保持剤47による樹脂ケース5の底板55とセル12との接着箇所は上記例に限定されない。
【0029】
また、組電池1は、
図3に示す複数のセル12が可塑性材料41を介し、また樹脂ケース5が接着剤49(
図1参照)を介して、絶縁層214が上面212に配設された金属板21に密着固定される。金属板21は、樹脂ケース5に比べて熱伝導性が高い。
【0030】
金属板21は、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、又は銅板等が挙げられる。金属板21は、組電池1の高さ方向(Z方向)について底板55が位置する下側から、樹脂ケース5に取付けられる。なお、金属板21は、
図3に示す例においては、樹脂ケース5の底板55と略同程度の大きさの平面視略矩形状に形成されており、その4角近傍にさらに外側に突き出る突片217を備えているが、必要に応じて適切な寸法及び形状等に形成される。
【0031】
図1、
図3に示すように、組電池1は、例えば薄いシート状の可塑性材料41を備えている。本実施形態においては、可塑性材料41は3枚配設されており、例えば、樹脂ケース5の枠孔554(
図4参照)の形状に対応するように、可塑性材料41は平面視略矩形状に形成されており、その全周が枠孔554に入る大きさに設定されている。枠孔554のそれぞれは、可塑性材料41の対応する1つによってほぼ充填される。ただし、枠孔554の内周とそれぞれに配置される可塑性材料41の外周部分との間には、可塑性材料41のZ方向のプレスによる圧縮変形に伴うXY方向への拡大を許容する僅かな隙間が形成されていてもよい。なお、
図1においては、可塑性材料41が底板55の枠孔554にそれぞれ収容された状態を示しており、
図3においては、可塑性材料41が枠孔554に収容される前の状態を示している。また、
図1においては、可塑性材料41の説明のため、組電池1の金属板21を省略して示している。
【0032】
図1、
図3に示す可塑性材料41のそれぞれは、樹脂ケース5及び空気に比べて熱伝導性が高い。可塑性材料41としては、シリコーン等の可塑性及び電気的絶縁性を有する樹脂が挙げられる。また、可塑性材料41のそれぞれは、
図3に示す金属板21に比べて、熱伝導性が低い。可塑性材料41のそれぞれは、組電池1の高さ方向について、複数のセル12と、絶縁層214が上面212に配設された金属板21との間で挟まれる。
【0033】
可塑性材料41のそれぞれは、
図4に示す枠孔554に収容された状態で収容室50において領域502の対応する1つに配置される。また、
図3に示す可塑性材料41のそれぞれは、領域502の対応する1つにおいて、Y方向に並ぶ複数のセル12のセル列15の対応する1つに密着及び当接する。すなわち、セル列15のそれぞれでは、組電池1の高さ方向(Z方向)について金属板21が位置する下側から、可塑性材料41の対応する1つが複数のセル12のそれぞれの底面125に密着及び当接する。
【0034】
可塑性材料41は、プレス加工機等によってZ方向における上方から下方に向かって所定押圧力(例えば、2800N)が所定時間(例えば、2秒)加えられた場合に、所定の厚さ分圧縮変形保持される特性を備えるとともに、セル12の底面125及び金属板21上の絶縁層214に対して十分な粘着性、及び密着性を備えるものを選定する。また、圧縮される前の可塑性材料41の厚さは、例えば可塑性材料41の樹脂ケース5の収容室50側となる上面を底板55の上面と面一となるように可塑性材料41を枠孔554に配設した場合に、
図1に示すように、底板55の下面から所定厚さ分(例えば、0.070mm)だけ下方に突出可能な厚さに設定される。
【0035】
図3に示す金属板21の複数のセル12が位置する側を向く上面212の全面、又は略全面に、絶縁層214が配設されている。したがって、絶縁層214は、組電池1の高さ方向において、可塑性材料41及び樹脂ケース5の底板55のそれぞれと金属板21との間に位置する。絶縁層214は、例えば、エポキシ樹脂等の薄膜層であり、電気的絶縁性を有する樹脂から形成され、例えばアルミニウム板等の金属板21の上面212に予めシート状のものを貼り付けられ、又は液状樹脂を塗布後に乾燥して一体化するように形成されたものである。
【0036】
金属板21の上面に形成された絶縁層214は、例えば、繊維材料(カーボン、シリコンカーバイド、又はアラミド等)に絶縁樹脂材料(エポキシ樹脂、シアネートエステル樹脂、又はベンゾオキサジン樹脂等)を含浸させたプリプレグ等であってもよく、シート状の該プリプレグがあらかじめ金属板21の上面212に貼り付けされている、又は該プリプレグが金属板21の上面212において硬化して一体化していてもよい。
【0037】
図3に示す樹脂ケース5の底板55は、高さ方向についてセル列15に含まれる複数のセル12が位置する側から、絶縁層214に接着剤49(
図1参照)を介して当接する。また、可塑性材料41のそれぞれは、複数のセル12の高さ方向についてセル列15に含まれる複数のセル12が位置する側から、絶縁層214に密着及び当接する。そして、3つのセル列15それぞれは、樹脂ケース5、可塑性材料41、及び絶縁層214等によって、金属板21に対して、電気的に絶縁される。
【0038】
複数のセル12から構成されるセル列15が充放電してそれぞれで発生した熱は、可塑性材料41の対応する1つ、及び絶縁層214を通して金属板21へ伝達される。したがって、可塑性材料41等によって、複数のセル12から金属板21への空気中を通らない伝熱経路が形成される。
【0039】
図3、
図6に示す本実施形態のように、金属板21は、例えば厚さが0.5mm以上5mm以下程度で、
図3~
図5に示す樹脂ケース5内において中央部分、即ち、底板55の中央領域上に位置する複数のセル(例えば、中央のセル列15の3番目乃至6番目の計4つのセル12)に対応する凸状の曲面を下面216として備えている。換言すると、下面216が、金属板21上に位置するセル12が並列する方向(XY方向)においてその下面216の中央の領域から外周側の領域に向かって徐々に高くなっていくような凸状の湾曲を備えている。なお、金属板21は、厚さが0.5mm以上5mm以下程度であり、上面212及び下面216が平坦面である平板状に形成されていてもよい。
【0040】
図3、
図5に示す底板55の中央領域上に位置し組電池1の中心付近となる上記4つのセル12のそれぞれは、周囲が他のセル12に囲まれているため、特に温度が高くなりがちなホットスポットとなるセル12である。以下、ホットスポットとなる4つのセル12をセル群129とする。そして、
図6に示す金属板21は、中央が凸状の曲面である下面216を有し、下面216の中央は、セル12が並列する方向において複数のセル12のうち他のセル12に囲まれたホットスポットとなる
図3に示すセル群129に対応する。なお、金属板21の下面216の凸状の湾曲はわずかなものであり、その曲率は、ホットスポットとなるセル12の本数等によって適宜定められる。なお、
図3、及び
図6に示す金属板21の上面212及び絶縁層214は、図示の例においては略平坦面となっている。
【0041】
図3、
図6に示す金属板21に代えて、組電池1は
図7に示す金属板22を備えていてもよい。金属板22は、
図6に示す金属板21と略同様の凸状の湾曲を下面224側に備えているとともに、その上面225側にも凸状の湾曲を備えている。換言すれば、
図7に示す金属板22は、全体が凸レンズ状の形状を有している。そして、金属板22の上面225に配設されている絶縁層214は、該凸状の湾曲に倣って湾曲している。
【0042】
組電池1は、
図1に示す樹脂ケース5の底板55の下面と金属板21の上面212に配設された絶縁層214(
図3参照)とを接着する接着剤49を備えている。
図1に示す接着剤49は、2液硬化型のエポキシ樹脂系接着剤等を用いてもよいし、両面テープを用いてもよい。接着剤49の一例としては、アクリル系粘着剤を基材に貼りあわせた両面テープであり、厚さ0.2mm~0.3mm程度に設定されている。接着剤49は、被着体の表面凹凸に対する追従性が良く、接着性や防水性に優れて金属やプラスチックに対しても強力に接着し、一般的に接着しにくいポリプロピレン等への接着性にも優れていると好ましい。
【0043】
接着剤49は、例えば、
図1に示す例のように、底板55の下面の外周側の領域に平面視四角環状に連続して配設されている。なお、接着剤49は、四角環状に配設されるのに加えて、底板55に形成された枠孔554に収容され隣り合う可塑性材料41と可塑性材料41との間に位置する底板55の下面にもY方向に延びる帯状に配設されていてもよい。また、例えば、接着剤49は、底板55の下面の外周側の領域の4角部分の内側近傍となる4か所にそれぞれ配設されていてもよい。
【0044】
図8に示す台61は、組電池1を支持固定する金属製の土台である。したがって、組電池1に含まれる複数のセル12、樹脂ケース5、可塑性材料41、及び金属板21は、台61上に設置される。台61は、樹脂ケース5及び可塑性材料41に比べて、熱伝導性が高く、例えば、金属板21と同程度の熱伝導性を有する。
【0045】
例えば、
図1、
図3~
図5、及び
図8に示す組電池1は、定置用の電源又は鉄道車両用の電源等として用いられる。ここで、組電池1を例えば鉄道車両用に用いる場合は、組電池1を棚状に複数上下に重ねた状態で多数のセル12を直列に接続することになり、高い冷却性能が求められる。このため、組電池1同士が接する部分に冷却プレートとしての機能を有する台61を設け、例えば、台61の内部に冷却液や冷却ガス等を含む冷却用流体が流れる流路を設けて循環させて強制冷却することがある。
【0046】
図8に示す台61は、組電池1の高さ方向(Z方向)について、金属板21に対して複数のセル12が位置する側とは反対側に配置される。また、台61は、複数のセル12が位置する側とは反対側に、金属板21から離れて配置される。すなわち、組電池1の高さ方向について金属板21と台61との間には、クリアランスが形成される。ある一例では、金属板21と台61との間のクリアランスは、0.2mm程度である。そして、金属板21と台61との間のクリアランスには、組電池1に含まれる可塑性シート63が配設される。可塑性シート63は、例えば、シリコーングリース等の可塑性及び電気的絶縁性を有する樹脂から形成される。金属板21と台61との間のクリアランスは、可塑性シート63によって充填される。このため、可塑性シート63は、組電池1の高さ方向について、金属板21の下面216と台61との間で挟まれる。また、可塑性シート63は、金属板21の下面216及び台61のそれぞれに、密着及び当接する。
【0047】
可塑性シート63は、空気及び樹脂ケース5に比べて熱伝導性が高いものを使用する。ただし、可塑性シート63は、金属板21及び台61に比べて、熱伝導性が低い。セル12のそれぞれで発生した熱は、可塑性材料41の対応する1つ、絶縁層214が配設された金属板21、及び可塑性シート63を順に通って、台61へ伝達される。すなわち、可塑性シート63は、金属板21から伝達された熱を台61に伝達する。よって、可塑性材料41、金属板21等及び可塑性シート63等によって、複数のセル12から台61への空気中を通らない伝熱経路が形成される。
【0048】
図1、
図3~
図5に示すように、樹脂ケース5の一対の側壁52の外側面の4角となる部分には、外側から内側に向かって矩形の切り欠き520が形成されており、切り欠き520内に、樹脂ケース5外側における底板55の上面が一部露出している。切り欠き520内で露出する底板55には、外側へ突出する突出端555が設けられている。そして、樹脂ケース5の4角にそれぞれ位置する4つの突出端555には、その上面から底板55の下面に至る第1の貫通孔551が形成されている。このように第1の貫通孔551は、
図3、
図4に示す樹脂ケース5の収容室50の外側であり樹脂ケース5の例えば4角となる位置にそれぞれ形成されている。また、
図1に示すように、第1の貫通孔551のそれぞれは、例えば樹脂ケース5の底板55の下面に四角環状に配設された接着剤49(
図1参照)よりも外側となる位置に配設されている。
【0049】
例えば
図3に示すように、金属板21の4角近傍部分には、一部が外側へ凸状に突出する4つの突片217が設けられている。突片217の上面にも絶縁層214は配設されており、突片217には、底板55の4つの第1の貫通孔551にZ方向においてそれぞれ対応し連通する第2の貫通孔215が形成されている。なお、第2の貫通孔215は、突片217上に配設された絶縁層214もZ方向に貫通している。
【0050】
例えば、
図8に示す台61と可塑性シート63とは、平面視略矩形状に形成されており、その大きさが樹脂ケース5の底板55と略同一の大きさに設定されている。また、
図8に示す可塑性シート63の4角部分(2つのみ図示)には、樹脂ケース5の第1の貫通孔551及び金属板21の第2の貫通孔215からずれることなく配置された第3の貫通孔633が形成されている。
【0051】
また、台61の4角部分(2つのみ図示)には、対応する第1の貫通孔551、第2の貫通孔215、第3の貫通孔663からずれることなく配置されたボルト穴615が形成されている。そして、
図3、
図5及び
図8等に示すボルト66が第1の貫通孔551、第2の貫通孔215、及び第3の貫通孔663に通されてボルト穴615に螺合される。そして、樹脂ケース5の4角全てで同様にボルト66の挿通及び螺合がなされることで、樹脂ケース5、絶縁層214が上面212に配設された金属板21、及び台61が
図8に示すように締結固定されて一体化する。
図3及び
図8に示すように、ボルト66は、収容室50の外側に設けられ、樹脂ケース5の一対の側壁52に対して収容室50が位置する側とは反対側に配置される。
【0052】
図9は、組電池1による回路構成の一例である。組電池1は、一対の外部端子63A,63Bを備える。外部端子63Aが組電池1の正極外部端子であり、外部端子63Bが組電池1の負極外部端子である。組電池1は、電源/負荷64に電気的に接続される。電源から組電池1に電力が供給されることにより、組電池1が充電される。また、組電池1から負荷へ電力が供給されることにより、組電池1から放電される。
【0053】
図9の一例では、台61が接地され、台61がGNDになる。そして、組電池1を流れる電流の電流経路のGND側経路が、台61に接続される。組電池1では、外部端子(正極外部端子)63Aは、他の組電池1を間に介することなく、又は、他の組電池1を間に介して、負荷等に接続される。また、組電池1では、外部端子(負極外部端子)63Bは、他の組電池1を間に介することなく、又は、他の組電池1を間に介して、グランド側経路(台61)に接続される。なお、他の組電池1を間に介することなく外部端子63Bがグランド側経路に接続される場合、組電池1の外部端子63Bの電位(負極電位)は、台61の電位と一致し、GND電位になる。例えば、組電池1が鉄道用車両で用いられる場合等は、台61がGNDとなる。
【0054】
以下に、
図1~
図8を用いて説明した実施形態の組電池1の製造方法の各工程の例をそれぞれ説明する。
(1)接着剤配設工程
組電池1の製造方法では、例えば
図1、
図10に示す樹脂ケース5の底板55の下面の外周側の領域であって各第1の貫通孔551よりも内側となる位置に、接着剤49が例えば平面視四角環状に1本連続するように塗布、又は貼り付けされる。本実施形態においては、接着剤49の厚さは、例えば0.2mmに設定されている。
【0055】
(2)接着工程
上記接着剤配設工程と並行、又は前後して、
図3、
図10に示す樹脂ケース5の収容室50に収容される複数のセル12それぞれの底面125のうち可塑性材料41と対向する領域を除いた領域に対して、接着保持剤47が複数個所(例えば、2か所)塗布、又は貼り付けられる。
【0056】
なお、セル12側ではなく、接着保持剤47が、樹脂ケース5の底板55の上面に塗布又は貼り付けされてもよい。即ち、例えば
図3、
図4に示す底板55の上面のうち隣り合う区分け板556と区分け板556との間の領域や区分け板556と一対の側壁53との間の領域等の、底板55がセル12の底面125を支持する領域にそれぞれ接着保持剤47が塗布又は貼り付けされていてもよい。
【0057】
次いで、
図3、
図10に示す複数のセル12を、樹脂ケース5の収容室50の3つの領域502に順次区分け板556(
図3参照)を用いて位置決めしつつ配置していくことで、それぞれのセル12の底面125が樹脂ケース5の底板55の上面に接着保持剤47により接着固定される。また、セル12の底面125の一部は、底板55の枠孔554とZ方向において対向する。
【0058】
さらに、セパレータ13(
図3参照)を、Y方向において、
図10に示す接着固定されたセル12とセル12との間に配設しながら、セル12を樹脂ケース5の収容室50の各領域502に並列させていき、
図3に示すセル列15を形成する。
【0059】
(3)固定工程
上記接着剤配設工程及び接着工程と並行、又は前後して、図示しないプレス用テーブルの上に、
図3、
図10に示す金属板21を絶縁層214を上側に向けた状態で載置し、さらに、金属板21の絶縁層214上に所定間隔を空けて3つの可塑性材料41を載置する。次いで、
図10に示す底板55に接着保持剤47によって接着された複数のセル12が収容された樹脂ケース5の3つの枠孔554それぞれに、1つずつ可塑性材料41が収容されるように、樹脂ケース5を可塑性材料41上でXY方向に調整移動し、それぞれの枠孔554と可塑性材料41とをZ方向において対向させる。
【0060】
上記調整後に、樹脂ケース5を降下させて、樹脂ケース5の底板55の枠孔554に可塑性材料41を収容するとともに、
図10に示すように、3つの可塑性材料41の上面を複数のセル12のそれぞれの底面125に当接させる。
【0061】
例えば、
図10に示す圧縮変形される前の可塑性材料41の厚さT1は、1.62mmであり、樹脂ケース5の底板55の厚さT2は1.35mmであり、底板55の下面に配設された接着剤49の厚さT3は、0.2mmである。また、樹脂ケース5の底板55の上面とそれぞれのセル12の底面125とを接着している接着保持剤47の厚さは、上記厚さT1、厚さT2、及び厚さT3に比して無視できる厚さとなっている。そして、
図10に示すように、可塑性材料41の上面に複数のセル12が当接し、また、可塑性材料41が未だZ方向にプレスされずに圧縮変形していない状態においては、可塑性材料41の厚さT1は、接着保持剤47の厚さと樹脂ケース5の底板55の厚さT2と接着剤49の厚さT3とを合計した値よりも厚く(大きく)なっている。
【0062】
上記のように可塑性材料41の厚さT1が設定されていることで、3つの可塑性材料41の上面をセル12のそれぞれの底面125に
図10に示すように当接させた段階においては、底板55の下面に配設された接着剤49の下面と、金属板21上に配設され接着剤49に対向する絶縁層214との間には、所定の大きさの隙間Sが形成された状態になる。該隙間Sの大きさは、例えば、可塑性材料41の厚さT1-(樹脂ケース5の底板55の厚さT2+底板55の下面に配設された接着剤49の厚さT3)=1.62mm-(1.35mm+0.2mm)=0.07mmとなる。この隙間Sの大きさ=0.07mmが可塑性材料41の潰し代となる。
【0063】
次いで、図示しないプレス用テーブルの上に載置された状態の樹脂ケース5に収容された例えば全てのセル12を、
図11に示すように、上方から各セル12に掛かる押圧力が均一になるように制御しつつ下方の可塑性材料41に向かってプレスする。各セル12をプレスする押圧力の方向は、金属板21の上面212に対して垂直な方向となっている。例えば、該プレスは、押圧力が2800Nで、2秒間実施される。
【0064】
該プレスが実施されることで、可塑性材料41がZ方向に例えば
図10に示す隙間Sの大きさ=0.07mmだけ圧縮変形され、
図11に示すように、それぞれのセル12の底面125が可塑性材料41の上面に密着するとともに、可塑性材料41の下面が絶縁層214に密着する。また、可塑性材料41の圧縮変形に伴って下降する樹脂ケース5の底板55下面に配設された接着剤49が、金属板21上に配設された絶縁層214に接着されることで、樹脂ケース5と絶縁層214とが接着固定され、組電池1が組み立てられた状態になる。なお、底板55の一部であり第1の貫通孔551が形成されている突出端555の厚さは、底板55のその他の部分の厚さよりも例えば接着剤49の厚さ分だけさらに厚く設定されており、該プレスによって突出端555の下面は絶縁層214に接触する。
【0065】
例えば、本実施形態における固定工程では、
図11に示す圧縮変形後の可塑性材料41の厚さT4を、接着保持剤47の厚さ(無視できるほど小さい厚さ)と樹脂ケース5の底板55の厚さT2と接着剤49の厚さT3とを合計した厚さと等しくする。
【0066】
(4)締結工程
本実施形態の組電池の製造方法では、上記固定工程実施後に、
図12に示す組電池1を支持する台61、樹脂ケース5、及び絶縁層214が配設された金属板21、をボルト66によって固定する締結工程、をさらに備える。
【0067】
固定工程後においては、
図12に示す樹脂ケース5、複数のセル12、及び絶縁層214が形成された金属板21等が一体化されており、金属板21の中央が凸状の曲面である下面216が組電池1全体の下面となっている。また、下面216の中央は、セル12が並列する方向において樹脂ケース5内の複数のセル12のうち他のセル12に囲まれたセル12、具体的には、
図3~
図5に示す樹脂ケース5内において中央部分、即ち、底板55の中央領域上に位置するホットスポットとなるセル群129の下方に位置している。
【0068】
図示しないテーブル上に平面視矩形の台61が載置されるとともに、台61上に可塑性シート63が載置され、台61の4角部分にそれぞれ位置するボルト穴615と可塑性シート63の4角部分にそれぞれ位置する第3の貫通孔663とが重ねられて連通する。なお、可塑性シート63は、あらかじめ台61の上面に接着固定されており、台61と可塑性シート63とが一体化していてもよい。
【0069】
次いで、可塑性シート63の上面に、セル12及び金属板21等が一体化された樹脂ケース5が位置づけされ、また、樹脂ケース5の第1の貫通孔551、金属板21の第2の貫通孔215、可塑性シート63の第3の貫通孔663、及び台61のボルト穴615のそれぞれが重なって連通するように位置合わせが行われる。これによって、金属板21の下面216と台61との間で可塑性シート63が挟まれた状態になる。
【0070】
さらに、
図12に示すボルト66が第1の貫通孔551、第2の貫通孔215、及び第3の貫通孔663に通されてボルト穴615に螺合される。樹脂ケース5の4角全てで同様にボルト66の挿通及び螺合がなされることで、樹脂ケース5、絶縁層214が上面212に配設された金属板21、可塑性シート63及び台61が締結固定されて、
図8に示すように一体化する。それぞれのボルト66は、樹脂ケース5の一対の側壁52に対して収容室50が位置する側とは反対側に配置される。また、金属板21の凸状の湾曲を備える下面216は組電池1の高さ方向における上方に向かって押し込まれて応力を内包しつつ、平坦面となって可塑性シート63と密着した状態になる。また、台61と可塑性シート63とが密着した状態になる。
【0071】
上記のように、実施形態の製造方法、及び実施形態の製造方法により製造された
図8に示す組電池1は、絶縁層214が配設された金属板21と、収容室50内に収容された複数のセル12が接着保持剤47により接着固定されている樹脂ケース5とを、接着剤49により複数のセル12のプレスにより一度で接着して一体化でき、かつ、該プレスによってセル12の底面125と絶縁層214との間で圧縮された状態で可塑性材料41をセル12の底面125と絶縁層214とに密着できる。よって、組電池1全体の剛性を上げつつ、短時間かつ従来よりもコストを下げて組電池1を製造できる。
【0072】
また、接着剤49を用いて金属板21上に配設された絶縁層214とセル12を収容した樹脂ケース5とを接着固定するため、樹脂ケース5自体の成形難易度を下げることができ、所望振動条件(例えば、危険物と指定されている組電池1における国連輸送振動試験条件など)をみたすケース強度を少ない設計検討で確保できるとともに、組電池1の総重量やサイズをより小さくすることができる。
【0073】
実施形態の組電池1において、接着保持剤47を両面テープとすることで、例えば、作業者が容易にセル12の底面125に接着保持剤47を貼り付けることができる。
【0074】
本実施形態の組電池1の製造方法においては、固定工程後に締結工程を実施することで、金属板21の下面216に、放熱用の台61を可塑性シート63を介して取り付ける。そして、締結工程では、樹脂ケース5の底板55の中央領域上に位置するホットスポットとなるセル群129に対する、金属板21の放熱性能を十分に確保できる。即ち、本実施形態のように、樹脂ケース5の4角でボルト66が第1の貫通孔551、第2の貫通孔215、及び第3の貫通孔663に通されてボルト穴615に螺合された場合であっても、台61に可塑性シート63を介して接触する金属板21の下面216を中央が凸状の曲面としていることで、台61側に向かう応力を金属板21が有したまま組電池1を台61に固定できる。したがって、金属板21において、ボルト66により締結されていることで台61側への面圧を十分に確保している4角部分から遠い位置にある下面216の中央部分においても、台61側へ向かう面圧を確保できる。そのため、ホットスポットとなるセル群129に対応する金属板21の中央部分の接触熱抵抗が上昇してしまうことを防ぐことが可能となる。同時に、金属板21の下面216と台61との間に挟む可塑性シート63の厚さをより薄くすることが可能となり、コストの削減と軽量化を図ることが可能となる。
【0075】
なお、
図7に示す下面224に凸状の湾曲を備え、かつ、上面225にも凸状の湾曲を備える金属板22を、
図6に示す金属板21に代えて使用した場合であっても、同様の理論により、ホットスポットとなるセル群129に対応する金属板22の中央部分の接触熱抵抗が上昇してしまうことを防ぐことが可能となる。同時に、可塑性シート63の厚さをより薄くすることが可能となり、コストの削減と軽量化を図ることが可能となる。
【0076】
(変形例)
例えば、組電池1は、
図13に示すカプトン(登録商標)テープ7を備えていてもよい。カプトンテープ7は、超耐熱及び超耐寒性ポリイミドフィルムであり、また、高い絶縁性を備える。カプトンテープ7は、例えば、
図5、及び
図13に示す樹脂ケース5の底板55の下面外周縁から絶縁層214が配設された金属板21の外周縁に貼着される。即ち、樹脂ケース5の底板55と絶縁層214を備える金属板21との間には、例えば平面視四角環状に配設された接着剤49が存在しており、固定工程が実施されて組み立てられた組電池1においては、接着剤49の外周面はカプトンテープ7が仮にない場合(
図5に示す場合)には露出している。
【0077】
そこで、例えば
図13に示す断面視逆L字状のカプトンテープ7を、樹脂ケース5の底板55と絶縁層214を備える金属板21との間に樹脂ケース5の底板55の底面外周縁の略全周に沿って貼着して、四角環状の接着剤49の外周面の略全周をカプトンテープ7によって囲繞する。
【0078】
組電池1がカプトンテープ7を備えることで、
図13に示すセル12の底面125、樹脂ケース5の枠孔554内周と枠孔554に収容された可塑性材料41の外周との間のわずかな隙間、及び接着剤49を通る外部短絡を、高い絶縁性を備え底板55の下面に四角環状に配設された接着剤49の外周面を囲繞するカプトンテープ7で止めることが可能となる。したがって、組電池1をより高電圧下で使用することが可能となる。
【0079】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0080】
1:組電池
12:セル
13:セパレータ
21:金属板 214:絶縁層
41:可塑性材料
47:接着保持剤
49:接着剤
5:樹脂ケース 50:収容室
61:台
63:可塑性シート
66:ボルト
7:カプトンテープ