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特開2023-173017自転車用チャイルドシートカバーの前方部周縁補強構造
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  • 特開-自転車用チャイルドシートカバーの前方部周縁補強構造 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173017
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】自転車用チャイルドシートカバーの前方部周縁補強構造
(51)【国際特許分類】
   B62J 1/00 20060101AFI20231130BHJP
   B62J 1/16 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
B62J1/00 D
B62J1/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022084958
(22)【出願日】2022-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】503356451
【氏名又は名称】株式会社大久保製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100135437
【弁理士】
【氏名又は名称】坂野 哲三
(72)【発明者】
【氏名】大久保 富彦
(57)【要約】
【課題】緊急時に容易にカバー前方部を開放することができるカバー前方部の縁部の強度を向上させる。
【解決手段】透明の合成樹脂製シートから成る前方部20の周縁に沿ってスライドファスナー20fが設けられ、この前方部20の周縁の上縁中央部には把持部を設け、この把持部を把持して前方及び/又は下方に引き寄せてファスナー20fが開放される。前方部20の縁部に適宜幅の止水テープ3を接着し、この前方部20の縁部にスライドファスナーの基地20kを接合して縫着し、この接合縁部を縁取り用生地5で被覆して縫着し、その後スライドファスナー基地20kを反転させ又は折り返し、前記スライドファスナーの基地20k、前記止水テープ3が接着された前記前方部20の縁部及び前記縁取り用生地5の全体をスライドファスナー20fに沿って縫着した。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自転車のハンドル部又は後部荷台部に固定され、ヘッドレスト及び/又はフード付きチャイルドシートの略全体を被覆できる自転車用チャイルドシートカバーであって、透明の合成樹脂製シートから成る前方部の周縁に沿ってスライドファスナーが設けられ、前記前方部の周縁の上縁中央部にはスライドファスナーが設けられていない把持部を設け、当該把持部を把持して前方及び/又は下方に引き寄せることにより前記スライドファスナーが開放されて前記前方部が開放されるチャイルドシートカバーにおいて、
前記前方部の周縁に沿って設けられるスライドファスナーとの縫着縁部に適宜幅のテープ状生地を接合し、
当該テープ状生地が接合された前方部の縁部とスライドファスナー基地を接合して縫着し、この接合縁部を縁取り用生地で被覆して縫着し、その後前記前方部をスライドファスナーの側と反対側に折り返し、又は、スライドファスナー基地をファスナーの側と反対側に折り返して、前記スライドファスナー基地、前記テープ状生地が接合された前記前方部の縁部及び前記縁取り用生地の全体をスライドファスナーに沿って縫着したことを特徴とする自転車用チャイルドシートカバーの前方部周縁補強構造。
【請求項2】
前記前方部の周縁に接合される前記テープ状生地が防水効果及び引き裂き強度を有する止水テープ生地又は防水テープ生地からなることを特徴とする請求書1に記載の自転車用チャイルドシートカバーの前方部周縁補強構造。
【請求項3】
前記前方部周縁の縫着が、前記テープ状生地が接合された前方部の縁部と前記スライドファスナー基地の縁部とを縫着する第一縫製行程と、縁取り生地で前記前方部の縁部とスライドファスナー基地の縁部を被覆して縫着する第二縫製行程と、前記スライドファスナー基地を折り返した後、前記テープ状生地が接合された前方部とスライドファスナー基地と縁取り生地との全てをスライドファスナーに沿って縫着する第三縫製行程による3回の縫製行程から成ることを特徴とする請求項1又は2に記載の自転車用チャイルドシートカバーの前方部周縁補強構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自転車のハンドル部に固定された前部チャイルドシート又は自転車の後部荷台部に固定された後部チャイルドシートの略全体を被覆することができるチャイルドシートカバーに関するものである。
ここで被覆されるチャイルドシートとしては、その背凭れ部の上端にヘッドレストや日除け用のフードが設けられたものも含む。
【背景技術】
【0002】
上記チャイルドシートとしては、現在良く知られているように、前部チャイルドシートにあっては、その座部が自転車のハンドル部中央の略U字形状に湾曲した部分に固定され、座部の前方には開閉自在で使用時に下方に開放される足乗せ部が設けられ、その背面部である背凭れ部には上下に摺動可能なヘッドレスト(ヘッドサポートともいう。)が設けられ、座部の前には着席した幼児が把持する取手部が設けられた形態を有するものである。上記ヘッドレストは、上下に摺動しない固定式のタイプのものも存在し、足乗せ部も開閉しないタイプのものもある。
【0003】
他方、後部チャイルドシートにあっては、その座部は自転車の後部荷台部に固定され、足乗せ部は自転車の後輪の両側に配設され、座部の背面部である背凭れ部にはやはり上下に摺動可能なヘッドレストが設けられた形態を有し、座部の前には着席する幼児が把持する取手部が設けられたものである。
勿論、この種のシートとしては、上記ヘッドレストが上下に摺動しない固定式のタイプのものも存在する。
【0004】
これらのチャイルドシート(以下単に「シート」とも言う。)にあっては、そのヘッドレストの上方に更にフード(日除け)が設けられたタイプのものも存在する。
このフードは、ベビーカーに設けられているような形態のもので、左右方向に掛け渡された複数本の逆U字形状のフレームを側面視扇状に開閉することができ、これらのフレームにメッシュ生地が張設されたものから成り、後方に回動して重ね合わせて解放し、前方に回動して引き出して広げて日除けとして使用することができるものである。
【0005】
現在市販されているチャイルドシートカバー(以下単に「カバー」とも言う。)としては、上記フードの付いていないタイプのチャイルドシートに適用できるものが主流で、その座部の底面部を除く略全体を被覆することができる各種形態のチャイルドシートカバーが存在している。
【0006】
下記特許文献に記載のチャイルドシートカバーは、本願出願人が先に提案したものであるが、緊急時に極めて容易にカバーの出入口を開放することができるようにすることをその第一の課題としたものである。
シートに乗せた幼児に何らかの緊急事態が生じた際、或いは、自転車が転倒した際には、例えば、カバーの前方部分や前面窓部等を簡単に開放することができるように安全を考慮したカバーを提供することをその課題とするものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2021-175626号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、上記従来例においては、緊急時に前方部の上縁中央部の把持部を把持して容易に開放することができるのは良いのであるが、この把持部を把持して開放する際にスライドファスナーのスライダーを用いずに把持部を把持して強制的にファスナーの歯合を解除するためにスライドファスナーの基地と前方部の縁部との縫着が損傷して、透明合成樹脂製シートからなる前方部の縁部が縫製部から引き千切れてしまうという問題が生じた。
【0009】
そこで、本願発明においては、緊急時に極めて容易にカバー前方部を開放することができ、カバー前方部の周縁部の縫着部位の損傷を出来る限り無くすることをその課題としている。
シートに載せた幼児に何らかの緊急事態が生じた際、或いは、自転車が転倒した際には、カバーの前方部分を簡単に開放することができ、当該前方部の周縁部の補強を目指し、この部分の強度を高めることを考慮したカバーを提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の第1のものは、自転車のハンドル部又は後部荷台部に固定され、ヘッドレスト及び/又はフード付きチャイルドシートの略全体を被覆できる自転車用チャイルドシートカバーであって、透明の合成樹脂製シートから成る前方部の周縁に沿ってスライドファスナーが設けられ、前記前方部の周縁の上縁中央部にはスライドファスナーが設けられていない把持部を設け、当該把持部を把持して前方及び/又は下方に引き寄せることにより前記スライドファスナーが開放されて前記前方部が開放されるチャイルドシートカバーにおいて、前記前方部の周縁に沿って設けられるスライドファスナーとの縫着縁部に適宜幅のテープ状生地を接合し、当該テープ状生地が接合された前方部の縁部とスライドファスナー基地を接合して縫着し、この接合縁部を縁取り用生地で被覆して縫着し、その後前記前方部をスライドファスナーの側と反対側に折り返し、又は、スライドファスナー基地をファスナーの側と反対側に折り返して、前記スライドファスナー基地、前記テープ状生地が接合された前記前方部の縁部及び前記縁取り用生地の全体をスライドファスナーに沿って縫着したことを特徴とする自転車用チャイルドシートカバーの前方部周縁補強構造である。
尚、上記発明において記載した「前方部」の「前方」という記載は、カバーを装着する自転車の進行方向の前方を意味する。
【0011】
本発明の第2のものは、上記第1の発明において、前記前方部の周縁に接合される前記テープ状生地が防水効果及び引き裂き強度を有する止水テープ生地又は防水テープ生地からなることを特徴とする自転車用チャイルドシートカバーの前方部周縁補強構造である。
【0012】
本発明の第3のものは、上記それぞれの発明において、前記前方部周縁の縫着が、前記テープ状生地が接合された前方部の縁部と前記スライドファスナー基地の縁部とを縫着する第一縫製行程と、縁取り生地で前記前方部の縁部とスライドファスナー基地の縁部を被覆して縫着する第二縫製行程と、前記スライドファスナー基地を折り返した後、前記テープ状生地が接合された前方部とスライドファスナー基地と縁取り生地との全てをスライドファスナーに沿って縫着する第三縫製行程による3回の縫製行程から成ることを特徴とする自転車用チャイルドシートカバーの前方部周縁補強構造である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の第1のものにおいては、自転車のハンドル部又は後部荷台部に固定され、ヘッドレスト及び/又はフード付きチャイルドシートの略全体を被覆できる自転車用チャイルドシートカバーであって、透明の合成樹脂製シートから成る前方部の周縁に沿ってスライドファスナーが設けられ、前記前方部の周縁の上縁中央部にはスライドファスナーが設けられていない把持部を設け、当該把持部を把持して前方及び/又は下方に引き寄せることにより前記スライドファスナーが開放されて前記前方部が開放されるチャイルドシートカバーであり、上記把持部を把持して容易にカバーの前方部を開放することができる。
【0014】
そして、前記前方部の周縁に沿って設けられるスライドファスナーとの縫着縁部に適宜幅のテープ状生地を接合し、当該テープ状生地が接合された前方部の縁部とスライドファスナー基地を接合し、この接合縁部を縁取り用生地で被覆して縫着し、その後前記前方部をスライドファスナーの側と反対側に折り返し、又は、スライドファスナー基地をファスナーの側と反対側に折り返して、前記スライドファスナー基地、前記テープ状生地が接着された前記前方部の縁部及び前記縁取り用生地の全体をスライドファスナーに沿って縫着したことにより、カバーの前方部の縁部とスライドファスナー基地との縫着部位の強度が向上し、透明合成樹脂製シートからなる前方部の周縁が損傷することが極めて少なくなるのである。
尚、本発明に係る前方部の周縁の引き裂き強度に関しては、実験により従来品よりも3倍の強度があることが判明している。
【0015】
本発明の第2のものにおいては、前記前方部の周縁に接合するテープ状生地を更に限定するものであり、即ち、当該テープ状生地が防水効果及び引き裂き強度を有する止水テープ生地又は防水テープ生地からなることを特定したものである。
【0016】
本発明の第3のものにおいては、上記それぞれの発明において前記テープ状生地が接合された前方部と前記スライドファスナー基地と縁取り生地との縫製行程について限定したものであり、その縫製行程が(ステッチ)3回縫いであることを特定し、この部位の補強に極めて大きな効果を発揮することとなるものである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係るチャイルドシートカバーを前部チャイルドシートに装着し、その前方部の把持部を把持して下方に半分ほど開放した状態を示す説明図である。
図2】本発明に係る別態様のチャイルドシートカバーを後部チャイルドシートに装着し、その前方部の把持部を把持して下方にほぼ全開状態に開放した状態を示す説明図である。
図3】本発明に係るカバー前方部の縁部を示す拡大概念説明図であり、その(A)がカバー前方部の縁部に止水テープとファスナー基地を重ね合わせる状態を示し、その(B)が前図(A)で示した縁部の接合縫着状態のものに縁取り生地を被覆し縫着した状態を示し、その(C)が前図(B)の状態からスライドファスナー基地を図中裏側に反転させ、縫着した状態を示し。その(D)が前図(C)の横断面を示している。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下添付の図面と共に、本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明に係るチャイルドシートカバーを前部チャイルドシートに装着し、その前方部の把持部を把持して下方に半分ほど開放した状態を示す説明図である。
【0019】
この図に示した通り、本発明に係るチャイルドシートカバー1は、フード付きのチャイルドシートSのほぼ全体を被覆することができるものである。
この図に示したチャイルドシートSは、座部の背凭れ部の上縁にヘッドレストHが設けられ、座部の前方には足乗せ部が連続的に設けられた形態を有している。
【0020】
そして、このチャイルドシートSには、座部の両側部の上縁部でワンタッチ式に連結離脱できるフードが設けられている。
このフードは、略逆U字形状の3本の枠体の両脚部の下端部を軸着して前方及び後方方向に開閉することができ、その両側の夫々の軸着部の下方延長部でチャイルドシートSの両側部の上縁部で着脱自在に取り付けることができる構造である。
上記3本の枠体にはメッシュ生地が張設されて、日除けの機能を有するものである。
【0021】
本発明に係る上記チャイルドシートカバー1は、前部チャイルドシートSのほぼ全体を被覆することができる。
このように本発明に係るチャイルドシートカバー1は、チャイルドシートSの上方部分(フード部とヘッドレスト部Hと背凭れ部)とチャイルドシートSの両側面部の後方側部分を被覆する本体部10と、チャイルドシートSの前方部分及び足乗せ部を被覆する前方部20との2つの部分から構成される。
【0022】
本体部10は、上方被覆部と背面被覆部と両側の側面被覆部とを備える。
上方被覆部は、チャイルドシートのフード、ヘッドレスト及び背凭れ部の上方部分を被覆し、背面被覆部はシートの背凭れ部の下方部分と座部の底面の一部を被覆し、両側の側面被覆部はシートの側面部分と座部の底面の一部を被覆できる。
【0023】
上記両側の側面被覆部には自転車のハンドルグリップG部分を挿通させるための挿通部が設けられている。
【0024】
上記上方被覆部の下縁部には環状の可撓性及び弾力性を有する環状線状部材が配設されている。
この環状線状部材は上記上方被覆部の下端周縁部の全体に挿通部を形成してその内部に配設することができる。
【0025】
この環状線状部材はPOM樹脂を利用しており、可撓性及び弾力性に富む素材を用いている。
その他この線条部材は、可撓性及び弾力性を有する金属製ワイヤーやFRP(ファイバー・リインフォースド・プラスチック/繊維強化プラスチック)等を利用することもできる。
【0026】
この環状線状部材により、本体部10の上方被覆部(天井部)は、いわば傘或いは帽子のような形態を保持し、前部チャイルドシートのフードの上に載置されて装着される。
更に、この上方被覆部には左右方向に2本の骨部材を掛け渡すように内設しており、この骨部材の存在により、その上方被覆部の全体形状が保持されることとなり、且つ、被覆されるシートのフードの形状と適合し、より相応しくフードの上に載置され、当該フードを被覆し、装着されることとなる。
【0027】
この骨部材もPOM樹脂から成る線条材を用いているが、その太さが上記環状線状部材よりも細いものを使用している。しかし、この骨部材は、これを用いずに実施することもできる。上記上方被覆部の素材として保形性を有する素材を用いることにより製作することも可能だからである。
【0028】
上記本体部10の上方被覆部の背面部上方には図には現れていないが、エアー排出孔を複数設けており、このエアー排出孔の上には被覆シートを設けている。この被覆シートは雨除けである。
【0029】
上記本体部10の前方開口部に次に説明する本体部の前方部20が着脱自在にスライドファスナー10f、20fによって歯合されるのである。
この前方部20の前面被覆部21と両側面被覆部22の上方部分はPVC等の透明素材から形成されており、その前面被覆部21及び側面被覆部22の略中央部横方向には骨部材23を設けて、当該前方部20が適切に外側に膨出するような外形形状を保持できるようにしている。
ただし、この骨部材23もこれを用いずに製作することも可能である。
【0030】
この前方部20は、チャイルドシートの前方部分と下方の足乗せ部分と両側の側面部分の前方側部分を被覆でき、上に説明した本体部10の前方開口部と相互にスライドファスナー10f、20fによって係合離脱することができる。
即ち、前方部20の上方縁部と両側縁部とにスライドファスナー20fを設け、他方、これに対応するように、上記本体部10の前方開口部の縁部にもスライドファスナー10fを設けて相互に係合離脱できるように構成している。
【0031】
更に、上記前方部20の上縁中央部にはスライドファスナーを設けていない部分を設け、この部分を把持部25として、この把持部25を把持してスライドファスナー10f、20fを開放することができる。
【0032】
この把持部25は、使用者の手で把持できる範囲に設ければよく、この把持部25を把持して、前方及び/又は下方に引き下げることにより前方部20が本体部10から離脱してカバーの前方部が開放される
即ち、緊急時に内部に居る幼児を救出するための構成である。
また、幼児の乗降に際しては、上記ファスナー20fの左右の一方の側を開放して行うことができる。
【0033】
上記前方部20の透明部分は透明なPVC素材によって形成されている。
この前方部20の中央部下端縁部20sは、シートの足乗せ部の下面に回り込み、その両側の側面部下端縁部20rはシートの足乗せ部の両側面の下面側に回り込み収束されて装着される。
前方部20の下端縁部には適宜ゴム紐等の収束部材が縫い込まれているからである。
【0034】
上記前方部20を上記本体部10に係合する際は、前方部20の両側縁部下端に位置するそれぞれのスライダーを前方本体部10の両側下端部のスライドファスナー10fのそれぞれの始端に係合させて、前記スライダーを上方に引き上げるようにして両者を係合させることができる。
【0035】
但し、当該両スライダーは、前方部20の上端中央部にある把持部25の位置でその係合が停止する。従って、当該把持部25は係合されないまま、孔部として残されるのである。
この把持部25の孔部に手を挿入して前方部20を本体部10から離脱解放させることができることとなる。
【0036】
図2は、本発明に係る別態様のチャイルドシートカバーを後部チャイルドシートに装着し、その前方部の把持部を把持して下方にほぼ全開状態に開放した状態を示す説明図である。
【0037】
この実施形態に係るカバー2は、自転車の後部荷台に固定されている後部チャイルドシートを被覆し、装着されるものである。
この後部チャイルドシートにあっては、その基本構成は上記前部チャイルドシートと同様であるが、その足乗せ部の位置が異なっている。
即ち、この後部チャイルドシートにあっては、その足乗せ部は、シートの座部の前方両側、つまり自転車の後輪の両側に配置されている点である。
【0038】
この実施形態に係るカバー2においては、その本体部10は、上記前部チャイルドシートカバーに係る本体部10の上方被覆部と同じ形態を有しており、シートのフード、ヘッドレスト、シートの背凭れ部の上方部分を被覆でき、その下方周縁部に沿って環状線状部材が配設されている。
そして、この本体部10の下方開口部の縁部に沿ってその全体にスライドファスナー10fが設けられている。
【0039】
他方、前方部20は、上記のように本体部10の下方開口部の縁部に沿って係合されるため、シートの前面部、両側面部及び背凭れ部の背面部を被覆できる。
即ち、この前方部20の前面被覆部がシートの前面部を被覆し、その両側面被覆部がシートの両側面を被覆し、その背面被覆部がシートの背凭れ部の背面側(下方部分)を被覆できることとなる。
【0040】
ここで、上記実施形態に係る前部チャイルドシートカバーと同様に、前方部20の上端中央部、即ち上方縁部の略中央部に把持部25を設けている。
この把持部25は、スライドファスナー20fが設けられていない部分で、丁度使用者の手が入る程度の幅に設けている。
【0041】
この把持部25は、帯状の布地を補強部材として縫着して補強し、手で把持してこの前方部20の上縁部を把持し易く形成している点も上記前部チャイルドシートカバーと同じである。
【0042】
また、この後部チャイルドシートカバーにおいても、本体部10の下方縁部に配設された環状線状部材の前方部から両側部にかけて日除け用の庇部30が設けられている点も上記前部チャイルドシートカバーと同様である。
この庇部30は、上記環状線状部材の前方側にもう1つの線状部材を配設して、これら両線状部材間に生地を張設することによって形成される。
【0043】
上記前方部20においては、その上方部分とその中央部から前方部分(下方部分)を透明なPVC素材によって形成し、その中央部横方向に骨部材23としての線状部材を配設して、前方本体部20の保形性を持たせている。
【0044】
この前方部20の下端中央部には切込み部26を設けているが、この切込み部26は自転車の荷台の前方支持部を除けるために設けたものであり、その両側の部分がシートの足乗せ部を被覆する足乗せ部被覆部27、27となる。
【0045】
更に、前方部20の下方部分の両側部の後方側縁部は、当該前方部20が上記本体部10にスライドファスナー10f及び20fによって係合されて後部シートに装着された際には、シートの背凭れ部の背面側に回り込んで装着される。
【0046】
尚、上記前方部20と本体部10とのスライドファスナーによる係合は、上記前部チャイルドシートカバーと同様であるが、前方部20の両側に位置するスライドファスナー20f、20fの始端である両下端部に位置するスライダーを本体部10のスライドファスナー10fの両始端(本体部10の後方の略中央部に位置する両始端)に係合させて前方斜め上方に向かってにスライドさせて係合することができる。
【0047】
そして、把持部25の個所でスライダーは停止して、当該把持部25の個所に孔部が形成される。
この孔部に手を挿入して前方部20を本体部10から容易に開放させることができるのである。
尚、幼児の乗り降りに際しては、上記スライドファスナー10f及び20fの左右の何れか一方を開放して行うことが出来る点は、上記前部チャイルドシートカバーと同じである。
【0048】
図3は、本発明に係るカバー前方部の縁部を示す拡大概念説明図であり、その(A)がカバー前方部の縁部に止水テープとファスナーの基地を重ね合わせる状態を示し、その(B)が前図(A)で示した縁部の接合縫着状態のものに縁取り生地を被覆し縫着した状態を示し、その(C)が前図(B)の状態からスライドファスナーの基地を図中裏側に反転させ、縫着した状態を示し。その(D)が前図(C)の横断面を示している。
【0049】
この図3が本発明の特徴部分を示している。
このカバーの前方部20の縁部の構造が本発明の特徴部分であり、その構造を示すにあたり縫製行程を示すことによってより明確となるため、その縫製行程について叙述する。
【0050】
まず、前方部20は上記した通り透明の合成樹脂製の生地、ここではPVC生地を使用しており、その縁部20eに止水テープ3を図中右側縁を合致させるように重ね合わせる。
図では重ね合わせる前の状態を示している。
また、図では前方部20の縁部20eの構造を分かり易く示すため、前方部20の上縁部を切断した状態で示しており、実際には上方に連続して把持部に接続するものである。
【0051】
止水テープ3は、ポリエステル生地の細長いテープ状生地(横幅約20mm)からなり、その一方の側、ここでは前方部20の側にポリウレタン(PU)被膜を接着したものから成り、上記前方部20の縁部に熱溶着して形成することができる。
このポリウレタンの層が止水効果又は防水効果を発揮する。
また止水テープ3はポリエステル生地を使用しており、これにより前方部20の縁部の引き裂き強度を従来品よりも約3倍の強度に向上させることができた。
【0052】
他方、スライドファスナー20fの基地20kも横幅約20mm程度のものを使用し、図中左側に歯部を配置して基地20kの右側縁を前方部20の右側縁に合致させて縫着するのである。
【0053】
その後、図3(B)に示した通り、横幅約20mm程度の縁取り生地5によって前方部20とスライドファスナー基地20kの縁部を被覆し縫着する。
尚、縫着状態を図示すると接合生地又は基地の状態が分かり難くなるため、縫着糸の図示は省略し、各構成部材の間隔を少し開けて図示している。
【0054】
図3(C)は、前図3(B)の状態で、スライドファスナー20fを図中左側から右側に折り返して(反転させて)、スライドファスナー20fに沿って平行に縫着した状態を示している。ここでも理解容易化のため縫着糸の図示は省略し、各構成部材間の間を開けた状態で図示している。
【0055】
図3(D)は、上記図3(C)の前方部20の縁部の横断面図であり、各構成部材の位置関係が明瞭となる。
これらの図から解る通り、縁取り生地5は、スライドファスナーの基地20kと止水テープ3が接着された前方部20の縁部を被覆し、この横断面図では前方部20をスライドファスナー20fと反対側に折り返して縁部全体を縫着して、例えば一点鎖線で示した位置でその全体を縫着して前方部20の縁部が完成する。
【0056】
以上の説明から解る通り、縫着又は縫製は、(A)図でのスライドファスナー基地20kと前方部20の縁部とを縫着する第一縫製行程、(B)図での縁取り生地5で縁部を被覆して縫着又は縫製する第二縫製行程、そして、(C)図でのスライドファスナー20fの歯部を反転させた後に縫着する第三縫製行程による3回のステッチ縫いを行い、前方部20の縁部の縫製が完了する。
【0057】
本発明にあっては、このような縫製により、取り分け止水テープ3を前方部20の縁部に沿って接着してスライドファスナー基地と縁取り生地とを縫製することによりその強度と止水効果及び防水効果を向上させたことがその特徴となっている。
【0058】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明においては以下の通り種々設計変更が可能である。
まず、本発明にあっては、その特徴部分は、カバーの前方部の縁部構造にあるため、この縁部構造以外のカバーの構造や形態等は自由に設計変更することができる。
即ち、チャイルドシートカバーとしては、自転車のハンドル部又は後部荷台部に固定され、ヘッドレスト及び/又はフード付きチャイルドシートの略全体を被覆できる自転車用チャイルドシートカバーであって、透明の合成樹脂製シートから成る前方部の周縁に沿ってスライドファスナーが設けられ、前記前方部の周縁の上縁中央部にはスライドファスナーが設けられていない把持部を設け、当該把持部を把持して前方及び/又は下方に引き寄せることにより前記スライドファスナーが開放されて前記前方部が開放されるチャイルドシートカバーであればよく、その他の構成は自由に設計することができる。
【0059】
カバー全体の大きさや形状に関しても適宜シートの形態に合わせて変更可能である。
またその素材もカバーの部位に応じて適宜変更することができる。
【0060】
本体部の内面に帯状部材や環状ベルト部材を設け、これら帯状部材や環状ベルト部材をシートのヘッドレスト部に装着できるようにすることも自由である。
この帯状部材としては、一対のベルト部材の端部に係止具を設けたものを相互に連結できる形式のものでもよいし、伸縮自在の環状ベルトをシートの背面部内面に縫着したものであってもよい。
カバーの本体部がシートから脱落してしまわないように備えとして設けることができる。
【0061】
本体部の下方開口部又は前方開口部の周縁部に設けたスライドファスナーに係合するスライドファスナーを前方部の上縁部及び両側縁部に設けたが、両者を係合するスライダーは、本体部の側又は前方部の側の何れか一方に設けることができる。
そして、前方部のスライドファスナーの両端(始端)で、本体部のスライドファスナーの両端部(両始端)に係合し、スライダーを上方に引き上げて係合させ、その上端中央部の非係合部である把持部まで係合することにより、把持部に孔部が形成される訳である。
【0062】
前方部の下方縁部に挿通部を形成して、その内部に伸縮性のある紐状部材を配設することも自由であるし、この下方部分の前面中央下端にベルト部材を設けて、自転車のサドルポストやその他のフレームに固定させることもできる。
【0063】
止水テープの幅等のサイズは適宜必要に応じて変更することができる。
その材質も適宜自由に変更することができる。
縁取り生地のサイズや材質も自由に選択することができる。
スライドファスナーのサイズ或いは号数等も自由に設定することができる。
勿論、前方部の形状も適宜必要に応じて設計変更可能である。
【0064】
以上、本発明においては、前面部をその本体部から一気に解放できるチャイルドシートカバーであって、その前面部の縁部に止水テープ等のテープ状生地を接着してスライドファスナー基地を設け、この縁部の強度と防水性を向上させたカバーを提供することができたものである。
【符号の説明】
【0065】
1、2 チャイルドシートカバー
3 止水テープ
5 縁取り生地
10 本体部
10f、20f スライドファスナー
20 前方部
20e 縁部
20k スライドファスナーの基地
20s 中央部下端縁部
20r 側面部下端縁部
21 前面被覆部
22 側面被覆部
23 骨部材
25 把持部
26 切込み部
27 足乗せ部被覆部
30 庇部
H ヘッドレスト
S チャイルドシート
図1
図2
図3