(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173019
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】同軸コネクタと基板側コネクタの嵌合構造、同軸コネクタを含むデバイスモジュール、同軸コネクタの基板側接続部とリアケースとの嵌合部の封止構造、及び、同軸コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 12/91 20110101AFI20231130BHJP
H01R 24/38 20110101ALI20231130BHJP
【FI】
H01R12/91
H01R24/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022084963
(22)【出願日】2022-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】000228257
【氏名又は名称】日本オートマチックマシン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100413
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 温
(74)【代理人】
【識別番号】100123696
【弁理士】
【氏名又は名称】稲田 弘明
(72)【発明者】
【氏名】勝田 健一郎
(72)【発明者】
【氏名】昆 真央
【テーマコード(参考)】
5E223
【Fターム(参考)】
5E223AA16
5E223AA21
5E223AB26
5E223AC03
5E223BA01
5E223BA07
5E223BB12
5E223CB25
5E223CB27
5E223CB38
5E223CD01
5E223EB03
5E223GA06
5E223GA19
(57)【要約】
【課題】 同軸コネクタが組み込まれたバックカメラなどのデバイスモジュールの組立て体において、同軸コネクタ5の基板側接続部57と、基板側コネクタ9との位置ズレを無理なく吸収できる構造を提供する。
【解決手段】 同軸コネクタ5の基板側接続部57と、基板73上に配置された基板側コネクタ9との嵌合構造は、複数の平板コンタクト58と、該コンタクト58を挟む二股状のフォーク部91bを有する複数のフォークコンタクト91と、を備える。平板コンタクト58に対して垂直の方向にフォーク部91bが容易に変位可能となるよう、フォークコンタクト91に易変形部91kが設けられている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
同軸コネクタ(5)の基板側接続部(57)と、基板(73)上に配置された基板側コネクタ(9)との嵌合構造であって、
前記基板側接続部(57)のコンタクト(58)と前記基板側コネクタ(9)のコンタクト(91)との接触構造に、3次元方向(XYZ方向)の各々の位置ズレを吸収する位置ズレ吸収構造が設けられており、
該位置ズレ吸収構造が、両コンタクト(58・91)の導通させる接点(91a)の接触圧力を生む接圧付与部(91b)の変形に依拠しないものであることを特徴とする同軸コネクタと基板側コネクタの嵌合構造。
【請求項2】
前記接圧付与部(91b)の全体が、その形態を保った状態で変位することにより位置ズレを吸収するものであることを特徴とする請求項1記載の同軸コネクタと基板側コネクタの嵌合構造。
【請求項3】
同軸コネクタ(5)の基板側接続部(57)と、基板(73)上に配置された基板側コネクタ(9)との嵌合構造であって、
互いに平行に配列された、平行平面である表裏の表面(58b)を有する複数の平板コンタクト(58)と、
該平板コンタクト(58)の表裏の表面(58b)の各々に対してスライド可能に接する一対の接点(91a)が形成されており、前記平板コンタクト(58)を挟む二股状のフォーク部(91b)を有する複数のフォークコンタクト(91)と、を備えるとともに、
前記平板コンタクト(58)の表面(58b)に対して垂直の方向に前記フォーク部(91b)が容易に変位可能となるよう、前記フォークコンタクト(91)に易変形部(91k、可動部)が設けられていることを特徴とする三次元フローティング機能付きの同軸コネクタと基板側コネクタの嵌合構造。
【請求項4】
前記接点(91a)と前記平板コンタクト(58)の表面(58b)との間の接触圧力が、前記フォークコンタクト(91)のフォーク部(91b)が前記平板コンタクト(58)を挟む力によって生じるものであり、前記易変形部(91k)のバネ構造により前記フォーク部(91b)が位置調整されるため、位置ズレ吸収による接触圧力の変動が少ないことを特徴とする請求項3記載の同軸コネクタと基板側コネクタの嵌合構造。
【請求項5】
同軸コネクタ(5)の基板側接続部(57)と、基板(73)上に配置された基板側コネクタ(9)との嵌合構造であって、
ここで、該嵌合構造は、前記基板側接続部(57)と前記基板側コネクタ(9)とが、Z方向に相対的に移動して嵌合するものであり、
前記嵌合構造は、
互いに平行に配列された、上記Z方向に沿う平行平面である表裏の表面(58b)を有する複数の平板コンタクト(58)と、
該平板コンタクト(58)の表裏の表面(58b)の各々に対してスライド可能に接する一対の接点(91a)が形成されており、前記平板コンタクト(58)を挟む二股状のフォーク部(91b)を有する複数のフォークコンタクト(91)と、
前記平板コンタクト(58)の表面(58b)に対して垂直の方向に前記フォーク部(91b)が容易に変位可能となるよう、前記フォークコンタクト(91)に易変形部(91k)(可動部)が形成されており、
前記フォーク部(91b)及びその根元部(91d)が、実質的にX方向及びZ方向に沿う面状の部材であり、
前記易変形部(91k)が、前記根元部(91d)に接続された、X方向に曲がり易いベンド部(91k)として形成されていることを特徴とする三次元フローティング機能付きの同軸コネクタと基板側コネクタの嵌合構造。
【請求項6】
前記複数の平板コンタクト(58)が、
前記同軸コネクタ(5)の中心コンタクト(55)の基板側の端部に形成された平板コンタクト“中”(58I)と、
前記同軸コネクタ(5)の外部導体(53)の基板側の端部に形成された平板コンタクト“外”(58S)と、
を含み、
前記平板コンタクト“中”(58I)と、前記平板コンタクト“外”(58S)が、同じ厚さであることを特徴とする請求項3,4、又は5記載の同軸コネクタと基板側コネクタの嵌合構造。
【請求項7】
同軸コネクタ(5)の基板側接続部(57)と、基板(73)上に配置された基板側コネクタ(9)との嵌合構造であって、
ここで、該嵌合構造は、前記基板側接続部(57)と前記基板側コネクタ(9)とが、Z方向に相対的に移動して嵌合するものであり、
前記嵌合構造は、
互いに平行に配列された、上記Z方向に沿う平行平面である表裏の表面(58b)を有する複数の平板コンタクト(58)と、
該平板コンタクト(58)の表裏の表面(58b)の各々に対してスライド可能に接する一対の接点(91a)が形成されており、前記平板コンタクト(58)を挟む二股状のフォーク部(91b)を有する複数のフォークコンタクト(91)と、
前記フォーク部(91b)の挿入保持される挿入溝(95f)が、Z方向に延びるスリット状に形成されているフォークハウジング(95)と、
前記フォークコンタクト(91)の前記フォーク部(91b)とは異なる一部であるベース固定部(91x)が挿入される挿入孔(93f)有するベースハウジング(93)と、
を備えるとともに、
前記平板コンタクト(58)の表面(58b)に対して垂直の方向に前記フォーク部(91b)が容易に変位可能となるよう、前記フォークコンタクト(91)に、易変形部(91k)(可動部)が形成されており、
該易変形部(91k)に接続された前記ベース固定部(91x)は、前記ベースハウジング(93)に固定されており、
前記フォーク部(91b)、及び、前記フォークハウジング(95)が、前記ベースハウジング(93)に対して変位可能なフローティング構造となっていることを特徴とする同軸コネクタと基板側コネクタの嵌合構造。
【請求項8】
さらに、前記フォークハウジング(95)を、隙間S(SX、SY)を隔てて囲うシールド枠(97)を備え、
前記フォーク部(91b)及び前記フォークハウジング(95)の変位時に、前記隙間S(SX、SY)が詰まり、前記フォークハウジング(95)の端面(95g・95j)が前記シールド枠(97)の内壁面(97g・97j)に当たることにより、変位が制限されることを特徴とする請求項7記載の同軸コネクタと基板側コネクタの嵌合構造。
【請求項9】
前記フォーク部(91b)及び前記フォークハウジング(95)のZ方向変位時に、
Zr方向(+側:抜去時)については、フォークハウジング(95)の面がベースハウジング(93)及び、シールド(97)の面に当たって、フォークハウジング(95)の+側への動きを制限し、
Zf方向(-側:挿入時)については、フォークハウジング(95)の底面が基板(73)に当たって、フォークハウジング(95)の+側への動きを制限することを特徴とする請求項7又は8記載の同軸コネクタと基板側コネクタの嵌合構造。
【請求項10】
同軸コネクタ(5)及びその基板側接続部(57)を有するリアケース(3)と、
カメラなどのデバイス、該デバイスの配線基板(73)、及び、該基板(73)上に配置された基板側コネクタ(9)を有するフロントケース(7)と、
を具備するデバイスモジュールであって、
前記基板側接続部(57)に、互いに平行に配列された、平行平面である表裏の表面(58b)を有する複数の平板コンタクト(58)が設けられており、
前記基板側コネクタ(9)に、前記平板コンタクト(58)の表裏の表面(58b)を挟む二股状のフォーク部(91b)を有する複数のフォークコンタクト(91)が設けられており、
該フォークコンタクト(91)が、前記平行平面に対して垂直の方向に前記フォーク部(91b)が可動な易変形(可動)部(91k)を有することを特徴とするデバイスモジュール。
【請求項11】
同軸コネクタ(5)の基板側接続部(57)とリアケース(3)との嵌合部の封止構造であって、
前記基板側接続部(57)には、互いに平行に配列された、平行平面である表裏の表面(58b)を有する複数の平板コンタクト(58)を備え、
前記複数の平板コンタクト(58)が、
前記同軸コネクタ(5)の中心コンタクト(55)の基板側の端部に形成された平板コンタクト“中”(58I)と、
前記同軸コネクタ(5)の外部導体(53)の基板側の端部に形成された平板コンタクト“外”(58S)と、
を含み、
前記外部導体(53)の前記リアケース(3)から突出した部分に、封止剤這い上がり防止用の切り欠き(53m・53n)が形成されていることを特徴とする封止構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、同軸ケーブルを接続するための同軸コネクタと、カメラなどのデバイスの基板の側に設けられたコネクタの嵌合構造に関する。特には、コネクタ嵌合時のX,Y,Zの3方向の位置ズレ吸収機構を有するコネクタの嵌合構造に関する。また、カメラ等のデバイスからの信号を伝送する同軸コネクタを有するデバイスモジュールに関し、特に、各部品の個体差から起こる位置ずれを吸収するフローティング機能の付加されたコネクタを有するデバイスモジュールに関する。あるいは、カメラなどに装着される同軸コネクタに求められる気密化作業の容易化と不良低減に寄与できる、封止剤の毛細管現象の防止構造が付加されたコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
車載の同軸コネクタを例にとって背景技術を説明する。近年の乗用車にあっては、後方撮影カメラ(バックモニタカメラ)と、その撮影画像を運転席で表示するディスプレイを装備しているものが多い。そして、カメラからの画像信号を、運転席ディスプレイの制御ユニットまで、同軸ケーブル等で伝送している。その同軸ケーブルとカメラの信号出力部との接続には、同軸コネクタが用いられている。
【0003】
図1は、本発明の実施形態に係るデバイスモジュール(あるいは「カメラモジュール」)のコネクタ周りの構造を説明するための図であって、(A)は正面断面図、(B)は側面断面図である。このデバイスモジュール1は、同軸コネクタ5と基板側コネクタ9の構成が本発明に係るものであるが、その他の部分の基本的構成は、現在多用されている一般的なものと同様である。
【0004】
この図の上下方向(コネクタ5の差し込み・抜き出し方向)をZ方向といい、Z方向の直角方向をX方向・Y方向という。デバイスモジュール1は、大きく分けて、リアケース3(同軸コネクタ側)とフロントケース7(カメラ側)とから構成されている。フロントケース7内には、撮像素子や撮像光学系を含むカメラ部75が収容されている。フロントケース7のリアケース3の側(Zr側)には、基板73と基板側コネクタ9が配置されている。基板側コネクタ9は、基板73のZr側に突出するように基板73に固定されている。
【0005】
リアケース3は、フロントケース7の基板73の上に被さる蓋状のものである。両ケース3・7は、それらの凹凸嵌合部3g・7gにおいて、嵌り合って組み合わされている。なお、自動車のバックカメラの場合、両ケース3・7は、組立後に超音波溶着や接着剤、あるいはパッキンを使用してのねじ止め等によって結合される。
【0006】
リアケース3内には、同軸コネクタ5が収容されている(内蔵されている)。同軸コネクタ5は、Zr側のオスコネクタ部51や、反Zr側(Zf側)の、基板側コネクタ9との接続部(基板側接続部57)を有する。オスコネクタ部51には、図示しないメスコネクタが接続される。メスコネクタには、自動車の運転席ディスプレイの制御ユニットに至る同軸ケーブルがつながっている。基板側接続部57は、基板側コネクタ9に嵌合接続される。なお、オスコネクタ部51の外周域に立設されているリアケース3の筒状部(コネクタ受け筒38)には、メスコネクタの外周が内嵌合する。同コネクタ受け筒38の外側に突き出している略三角形の突起3qは、相手側同軸コネクタソケットの抜け止めロック部である。
【0007】
同軸コネクタ5の基板側接続部57と、基板側コネクタ9との接続は、リアケース3のフロントケース7への嵌合組立と同時になされる。この際に問題となり得るのが、リアケース3内における同軸コネクタの基板側接続部57の位置と、フロントケース7内における基板側コネクタ9の位置との間における、相対的なズレである。特に、フロントケース7の側は部品点数が多く、各部品の公差の蓄積により、上記位置ズレが生じる蓋然性が高い。なお、ズレは、
図1に示す矢印X・Y・Zの三方向に生じ得る。
【0008】
上記の位置精度に関係する要素は多いが、その内の主要なものは以下である。
(1)両ケース3・7の凹凸嵌合部3g・7gの寸法精度。
(2)リアケース3と同軸コネクタ5との間の位置決め精度。
(3)フロントケース7と基板73との位置決め精度。
(4)基板73上における基板側コネクタ9の位置決め精度。
【0009】
このリアコネクタ5と基板側コネクタ9との位置ズレは、デバイスモジュールの組立に悪影響を与える。この位置ズレ対策のため、従来より、以下のような対策が採られている。
(ア)リアケース側コネクタには細線同軸ケーブルを直付けし、基板側については細線同軸コネクタにて接続を行った後にリア、フロントケースの組立てを行う。
(イ)フロントケースとリアケースの組立て後に、リアケースにコネクタを嵌合させてから、あらかじめ位置ズレ吸収用のガタを考慮した取り付け穴をフランジ部に有するコネクタをフロントケース内コネクタと嵌合させてからフランジ部とリアケースをねじ締結する。
(ウ)コネクタのコンタクト部の変形により吸収する(実登3225606・特開2016-162556など)。
(エ)意図的な位置ズレ解消機構(フローティング構造)を設けず、構成部品の寸法精度確保により位置ズレを許容範囲内に抑制する(特開2015-191817など)。
【0010】
しかしながら、上記いずれの方法にも、次のような問題がある。
(ア)では、細線同軸ケーブルのリアケース側でのはんだ付けが必要であり、両ケースの組立に工数がかかる。
(イ)では、デバイスモジュールを組立て後にしか、気密性検査ができない。
(ウ)では、コンタクトの接触力が位置ズレ量により変動すると、コネクタの性能に悪影響を及ぶ。または位置ズレ吸収量を大きくできない。
(エ)では、部品の製造コストが高くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】実登3225606公報
【特許文献2】特開2016-162556公報
【特許文献3】JP2015-191817公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、以下A~Dの一つ以上の特長を有する同軸コネクタを提供することを目的とする。
A.同軸コネクタが組み込まれたバックカメラなどのデバイスモジュールの組立て体において、同軸コネクタ5の基板側接続部57と、基板側コネクタ9との位置ズレを無理なく吸収できる。
B.上記Aの問題に対処するため、リアケース側のコネクタを別体とした場合は、モジュールの組立て後に、気密性試験を実施する必要が生じるが、リアケース単体で気密性を評価できる。
C.リアケースとカメラモジュール内基板などとの接続が容易となり、かつ、組み立て工数を削減できる。
【0013】
D.同軸コネクタ組立体への封止剤注入時の毛細管現象への対策として、コネクタ部品の形状に工夫が施されており、封止剤注入時の作業管理の手間が省ける。また、封止剤のコンタクト部への侵入による接続障害を確実に防止できる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この「課題を解決するための手段」、及び、「特許請求の範囲」においては、添付図各部の参照符号を括弧書きして示すことがあるが、これは単に参考のためであって、権利範囲を添付図のものに限定する意図はない。
【0015】
本発明の第一の同軸コネクタと基板側コネクタの嵌合構造は、 同軸コネクタ(5)の基板側接続部(57)と、基板(73)上に配置された基板側コネクタ(9)との嵌合構造であって、 前記基板側接続部(57)のコンタクト(58)と前記基板側コネクタ(9)のコンタクト(91)との接触構造に、3次元方向(XYZ方向)の各々の位置ズレを吸収する位置ズレ吸収構造が設けられており、 該位置ズレ吸収構造が、両コンタクト(58・91)を導通させる接点(91a)の接触圧力を生む接圧付与部(91b)の変形に依拠しないものであることを特徴とする。
上記嵌合構造においては、 前記接圧付与部(91b)の全体が、その形態を保った状態で変位することにより位置ズレを吸収するものとすることができる。
【0016】
本発明の同軸コネクタと基板側コネクタの嵌合構造の具体的形態は、 同軸コネクタ(5)の基板側接続部(57)と、基板(73)上に配置された基板側コネクタ(9)との嵌合構造であって、 互いに平行に配列された、平行平面である表裏の表面(58b)を有する複数の平板コンタクト(58)と、 該平板コンタクト(58)の表裏の表面(58b)の各々に対してスライド可能に接する一対の接点(91a)が形成されており、前記平板コンタクト(58)を挟む二股状のフォーク部(91b)を有する複数のフォークコンタクト(91)と、を備えるとともに、 前記平板コンタクト(58)の表面(58b)に対して垂直の方向に前記フォーク部(91b)が容易に変位可能となるよう、前記フォークコンタクト(91)に易変形部(91k、可動部)が設けられていることを特徴とする。
【0017】
上記具体的形態においては、三次元のズレのうちの二次元(実施形態のY・Z方向)のズレは、平板コンタクト(58)の表面(58b)と、フォークコンタクト(91)のフォーク部(91b)の接点(91a)との滑りによってズレを吸収する。残りの一次元(実施形態のX方向)のズレは、フォークコンタクト(91)の易変形部(91k、可動部)の変形に伴うフォーク部(91b)のX方向変位によってズレを吸収する。
【0018】
上記の具体的形態においては、 前記接点(91a)と前記平板コンタクト(58)の表面(58b)との間の接触圧力が、前記フォークコンタクト(91)のフォーク部(91b)が前記平板コンタクト(58)を挟む力によって生じるものであり、根本部(91d)を支点とするフォーク部(91b)の開閉力が接触圧力となっている。これは平板コンタクト(58)とフォーク部(91b)の先端にある左右の接点(91a)の接触圧力が均等になる様に、易変形部(91k)のバネ構造により位置調整(実施形態のX)されるため、位置ズレ吸収による接触圧力の変動が少ない。
この具体的形態においては、「基板側接続部(57)のコンタクト(58)と前記基板側コネクタ(9)のコンタクト(91)(両コンタクト(58・91))の導通のための接点(91a)の接触圧力を生む接圧付与部(91b)」は、平板コンタクト(58)を挟む二股状のフォーク部(91b)である。この二股状のフォーク部(91b)が、自由形状よりも開くことにより、平板コンタクト(58)の表裏面(58b)を挟み、同面とフォークコンタクト(91)の接点(91a)の間に、両コンタクト(58・91)の導通のための接点(91a)の接触圧力が生まれている。
そして、X方向の位置ズレ吸収の際には、接圧付与部であるフォーク部(91b)は、その形状を保ったまま、易変形部(91k、可動部)の変形に伴って、X方向に変位するのである。つまり、位置ズレ吸収作用は、接圧付与部の変形に依拠しない。なお、易変形部(91k、可動部)の変形の弾性定数は、接圧付与部であるフォーク部(91b)の開閉の弾性定数よりも数段小さいので、易変形部の変形抵抗が接点接触圧力に影響を与える程度は低い。すなわち、「X方向の位置ズレ吸収構造は接圧付与部(91b)の変形に依拠しない」といえる範囲内である。
また、YZ方向については、実施形態の例では、平板コンタクト(58)の表面(58b)と、フォークコンタクト(91)の接点(91a)の間の摩擦力がフォークコンタクト(91)に作用してわずかな影響を与えることがあり得るが、その程度は軽微であり、「位置ズレ吸収作用が接圧付与部の変形に依拠しない」といえる範囲内である。
【0019】
これにより、位置ズレ吸収時の基板側コネクタのコンタクトの応力を低下させることができ、充分な位置ズレ吸収量(一例で、X方向・Y方向・Z方向ズレ吸収量それぞれ±0.5mm)を得ることができる。
【0020】
本発明の三次元フローティング機能付きの同軸コネクタと基板側コネクタの嵌合構造の他の態様は、 同軸コネクタ(5)の基板側接続部(57)と、基板(73)上に配置された基板側コネクタ(9)との嵌合構造であって、 ここで、該嵌合構造は、前記基板側接続部(57)と前記基板側コネクタ(9)とが、Z方向に相対的に移動して嵌合するものであり、 前記嵌合構造は、 互いに平行に配列された、上記Z方向に沿う平行平面である表裏の表面(58b)を有する複数の平板コンタクト(58)と、 該平板コンタクト(58)の表裏の表面(58b)の各々に対してスライド可能に接する一対の接点(91a)が形成されており、前記平板コンタクト(58)を挟む二股状のフォーク部(91b)を有する複数のフォークコンタクト(91)と、 前記平板コンタクト(58)の表面(58b)に対して垂直の方向に前記フォーク部(91b)が容易に変位可能となるよう、前記フォークコンタクト(91)に易変形部(91k)(可動部)が形成されており、 前記フォーク部(91b)及びその根元部(91d)が、実質的にX方向及びZ方向に沿う面状の部材であり、 前記易変形部(91k)が、前記根元部(91d)に接続された、X方向に曲がり易いベンド部(91k)として形成されていることを特徴とする。
【0021】
上記同軸コネクタと基板側コネクタの嵌合構造においては、 前記複数の平板コンタクト(58)が、 前記同軸コネクタ(5)の中心コンタクト(55)の基板側の端部に形成された平板コンタクト“中”(58I)と、 前記同軸コネクタ(5)の外部導体(53)の基板側の端部に形成された平板コンタクト“外”(58S)と、 を含み、 前記平板コンタクト“中”(58I)と、前記平板コンタクト“外”(58S)が、同じ厚さであることが好ましい。
【0022】
このような構成とすれば、複数枚の平板コンタクト(58)が同一厚さの板状構造となっていることから、複数個の基板側コンタクト(フォークコンタクト91)が共通部品となり、部品コストや組立の手間を低減できる。
【0023】
中心コンタクトは外部導体の厚みに合わせる為、途中でコイニング加工等により厚みを変化させることができる。
【0024】
本発明の他の同軸コネクタと基板側コネクタの嵌合構造は、 同軸コネクタ(5)の基板側接続部(57)と、基板(73)上に配置された基板側コネクタ(9)との嵌合構造であって、 ここで、該嵌合構造は、前記基板側接続部(57)と前記基板側コネクタ(9)とが、Z方向に相対的に移動して嵌合するものであり、 前記嵌合構造は、 互いに平行に配列された、上記Z方向に沿う平行平面である表裏の表面(58b)を有する複数の平板コンタクト(58)と、 該平板コンタクト(58)の表裏の表面(58b)の各々に対してスライド可能に接する一対の接点(91a)が形成されており、前記平板コンタクト(58)を挟む二股状のフォーク部(91b)を有する複数のフォークコンタクト(91)と、 前記フォーク部(91b)の挿入保持される挿入溝(95f)が、Z方向に延びるスリット状に形成されているフォークハウジング(95)と、 前記フォークコンタクト(91)の前記フォーク部(91b)とは異なる一部であるベース固定部(91x)が挿入される挿入孔(93f)を有するベースハウジング(93)と、 を備えるとともに、 前記平板コンタクト(58)の表面(58b)に対して垂直の方向に前記フォーク部(91b)が容易に変位可能となるよう、前記フォークコンタクト(91)に、易変形部(91k)(可動部)が形成されており、 該易変形部(91k)に接続された前記ベース固定部(91x)は、前記ベースハウジング(93)に固定されており、 前記フォーク部(91b)、及び、前記フォークハウジング(95)が、前記ベースハウジング(93)に対して変位可能なフローティング構造となっていることを特徴とする。
【0025】
フォークコンタクト(91)のベース固定部(91x)はベースハウジング(93)に圧入(一例)固定されているが、易変形部(91k)に接続されたフォーク部(91b)、及び、同部を収容するフォークハウジング(95)は、言わば「中空に浮いたような状態」にあることから、フォーク部(91b)、及び、フォークハウジング(95)は、組み合わさった状態で、X方向に滑らかに可動(変位可能)となる。
【0026】
上記同軸コネクタと基板側コネクタの嵌合構造は、好ましくは、 さらに、前記フォークハウジング(95)を、隙間S(SX、SY)を隔てて囲うシールド枠(97)を備え、 前記フォーク部(91b)及び前記フォークハウジング(95)の変位時に、前記隙間S(SX、SY)が詰まり、前記フォークハウジング(95)の端面(95g・95j)が前記シールド枠(97)の内壁面(97g・97j)に当たることにより、変位が制限される。
【0027】
さらに好ましくは、フォークハウジング(95)は、ある方向(実施形態ではX方向の両方向、及び、Y方向の片方の方向)については、シールド枠(97)により変位の限界を画される(過剰な可動が抑制される)。なお、他の一方向(実施形態におけるY方向)における他の片方の方向、については、フォークハウジング(95)は、ベースハウジング(93)により変位の限界を画される(過剰な可動を抑制される)。この変位の限界を画する構造を、本明細書では「リミッター」とも称する。
さらに好ましくは、他の方向(Z方向)については、前記フォーク部(91b)及び前記フォークハウジング(95)のZ方向変位時に、Zf方向(-側:挿入時)については、前記フォークハウジング(95)の底面(95t)が基板(73)に当接することによりの変位が制限され、 Zr方向(+側:抜去時)については、前記フォークハウジング(95)のハウジング側端面凸部(95v)がベースハウジング(93)の凹み部(93a)および、シールド側端面凸部(95w)がシールド(97)底面凹部(97v)に当接することにより変位が制限される。概念的には、ハウジングは、Z方向(+側:抜去時)については、ハウジング側端面凸部がベースハウジングに当たり、また、シールド側端面凸部がシールドに当たりハウジングの+側への動きを制限しコンタクトへの過剰な負荷を抑制する。Z方向(-側:挿入時)については、ハウジング底面凸部が基板に当たり、コンタクトへの過剰な負荷を抑制する。
【0028】
本発明のデバイスモジュールは、 同軸コネクタ(5)及びその基板側接続部(57)を有するリアケース(3)と、 カメラなどのデバイス、該デバイスの配線基板(73)、及び、該基板(73)上に配置された基板側コネクタ(9)を有するフロントケース(7)とを具備するデバイスモジュールであって、 前記基板側接続部(57)に、互いに平行に配列された、平行平面である表裏の表面(58b)を有する複数の平板コンタクト(58)が設けられており、 前記基板側コネクタ(9)に、前記平板コンタクト(58)の表裏の表面(58b)を挟む二股状のフォーク部(91b)を有する複数のフォークコンタクト(91)が設けられており、 該フォークコンタクト(91)が、前記平行平面に対して垂直の方向に前記フォーク部(91b)が可動な易変形(可動)部(91k)を有することを特徴とする。
なお、上記リアケース(3)及びフロントケース(7)における「リア」及び「フロント」という言葉は、特定の方向を限定する意味はない。
【0029】
本発明の同軸コネクタ(5)の基板側接続部(57)とリアケース(3)との嵌合部の封止構造は、 前記基板側接続部(57)には、互いに平行に配列された、平行平面である表裏の表面(58b)を有する複数の平板コンタクト(58)を備え、 前記複数の平板コンタクト(58)が、 前記同軸コネクタ(5)の中心コンタクト(55)の基板側の端部に形成された平板コンタクト“中”(58I)と、 前記同軸コネクタ(5)の外部導体(53)の基板側の端部に形成された平板コンタクト“外”(58S)と、を含み、 前記外部導体(53)の前記リアケース(3)から突出した部分に、封止剤這い上がり防止用の切り欠き(53m・53n)が形成されていることを特徴とする。
同軸コネクタはリアケースに挿入(圧入など)される。気密性確保の為、リアケース、同軸コネクタ間に封止剤が注入される。この際、封止剤注入時の毛細管現象対策として、外部導体に切り欠きを設ける。切り欠きを設ける事で、中心コンタクトと外部導体との距離を確保し、封止剤注入時の毛細管現象による同材の這い上がりを防ぐ。これによって、カメラモジュールなどの同軸コネクタに要求される気密化作業を容易にするとともに、封止剤のコンタクト接続部への付着などに起因する不良を低減する。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、以下の効果の一つ以上を得ることができる。
A.デバイスモジュールの組立てにおいて、同軸コネクタ(5)の基板側接続部(57)と、基板側コネクタ(9)との位置ズレを、無理なく吸収できる。
B.リアケース(同軸コネクタ込み)単体での気密性試験を行うことができる。
C.リアケースとデバイスモジュール内基板などとの接続が容易となり、かつ、組み立て工数を削減できる。
D.同軸コネクタ組立体への封止剤注入時の作業管理の手間が省ける。また、封止剤のコンタクト部への侵入による接続障害を確実に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明の実施形態に係るデバイスモジュールのコネクタ周りの構造を説明するための図であって、(A)は正面断面図、(B)は側面断面図である。
【
図2】
図1のデバイスモジュール1における同軸コネクタ5と基板側コネクタ9の嵌合構造の斜視図である。
【
図3】
図1のデバイスモジュールのリアケース3及び内蔵同軸コネクタ5の分解斜視図である。
【
図4】
図3の同軸コネクタ5の図であって、(A)は断面斜視図、(B)はZf側部分の外形の斜視図である。
【
図5】
図3の同軸コネクタの中心コンタクト55の斜視図である。
【
図6】
図1のデバイスモジュール1における基板側コネクタ9の一部破断斜視図である。
【
図7】
図6の基板側コネクタ9の分解斜視図である。
【
図8】
図2の同軸コネクタ5と基板側コネクタ9の嵌合構造のYZ方向のズレ吸収作用を説明するための斜視図である。
【
図9】
図2の同軸コネクタ5と基板側コネクタ9の嵌合構造のX方向のズレ吸収作用を説明するための図である。
【
図10】
図2の同軸コネクタ5と基板側コネクタ9の嵌合構造のXY方向のズレ吸収作用の変位制限機構(リミッター)を説明するための平面図である。
【
図11】
図2の同軸コネクタ5と基板側コネクタ9の嵌合構造のZ方向のズレ吸収作用の変位制限機構(リミッター)を説明するため図であって、(A)は正面図、(B)は側面断面図である。
【
図12】
図2のリアケース3及び内蔵同軸コネクタ5の組立手順を示す斜視図である。
【
図13】
図1のデバイスモジュールのリアケース3及び内蔵同軸コネクタ5の封止剤注入の様子を示す図である。(A)は全体斜視図であり、(B)は実施形態の拡大断面図であり、(C)は比較例の拡大断面図である。
【
図14】実施形態の同軸コネクタ5と基板側コネクタ9の嵌合接続構造の性能(VSWR)の一例のグラフである。
【
図15】同軸コネクタのシール構造の変形例を示す図であって、(A)は組立状態の斜視図であり、(B)は分解斜視図である。
【符号の説明】
【0032】
1;デバイスモジュール
3;リアケース、3a;矩形凹所、3g;凹凸嵌合部、3j;封止剤注入凹部、3p;貫通孔、
3q;突起(抜け止めロック部)、3x;位置決めピン部、3x´;溶着ボス
5;同軸コネクタ、5´;ボディサブアッシー
51;オスコネクタ部
53;外部導体、53b;チューブ部、53c;先端、53d;内孔、53g;突出部、
53m・53n;切り欠き、
54;軸間インシュレータ、54b;先薄部、54d;内孔、54g;元厚部
54h;内孔、54p;矩形筒部、54s;内孔部
55;中心コンタクト、55b;先軸部、55f;中軸部、55r;平板部
57;基板側接続部
58;平板コンタクト、58I;平板コンタクト“中”、58S;平板コンタクト“外”
58b;表面
59;端インシュレータ、59b;端半円板部、59f;ボス部、
7;フロントケース、7g;凹凸嵌合部、73;基板、73t;基板表面、75;カメラ部
9;基板側コネクタ
91;フォークコンタクト(コンタクト)、91a;接点、91b;フォーク部(接圧付与部)、91c;スリット
91d;根元部、91f;くびれ部、91g;接続部、91k;可動部(易変形部、ベンド部)、91h;屈曲点、91t;立設部、91x;ベース固定部、91z;下端部
93;ベースハウジング、93a:ベースハウジング凹み部、93f;挿入孔、
93i;フォークハウジング側端面
95;フォークハウジング、95b;側角、95c;中角、95f;挿入溝、
95g;X方向端面、95i; ハウジング側端面、95j;シールド側端面、95k;挿入孔、
95t;底面凸部、95v;ハウジング側端面凸部、95w;シールド側端面凸部
97;シールド枠、97f;外壁面、97g;内壁面、97j;Y方向内壁面、97k;枠状部分、
97p;枠状部分、97v;底凹部、97t:半田付け部
10;シールドケース、10b;側壁、10d;切欠部、10h;底板、10j;開口、
10p;位置決め孔、10r:同軸コネクタ接触部
153;外部導体
205;同軸コネクタ、250;シール、252;Oリング、253;外部導体、
254;インシュレータ、255;中心コンタクト、256;嵌合部、
258S;平板コンタクト、258I;平板コンタクト“中”
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施形態に係る同軸コネクタ5と基板側コネクタ9の嵌合構造について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る同軸コネクタ5と基板側コネクタ9の嵌合構造を含むデバイスモジュールのコネクタ周りの構造を説明するための図であって、(A)は正面断面図、(B)は側面断面図である。
図2は、
図1のカメラモジュールにおけるオス同軸コネクタ(リアコネクタ)5と、基板側コネクタ9の要部であるフォークコンタクト91を示す斜視図である。なお、フォークコンタクト91の周りの基板側コネクタ9の部品(
図6・
図7参照)は図示省略してある。
【0034】
図中(
図1・
図2以外の場合も同じ)における矢印は、各方向の呼び名を示す。ただし、本発明を厳密に定義するものではない。すなわち、同軸コネクタ5の差し込み・抜き出し方向をZ方向といい、Z方向の直角方向をX方向・Y方向という。特にZ方向については、Zf側は同軸コネクタ5を基板側コネクタ9に差し込む方向であり、Zr側はZf側の反対方向(抜き出す方向)である。なお、X方向とY方向は、相互に垂直である。ただし、本発明の本質においては、各方向の間の角度は厳密に垂直でなくてもよい場合もある。
【0035】
図1については、全体的構成について背景技術の部分で説明したが、概要をここでも説明する。すなわち、
図1の下方にはフロントケース7が示されており、図の上方にはリアケース3が示されている。フロントケース7内には、カメラ部75(撮像光学系・撮像素子などを含む)や、そのZr側の基板73及び基板側コネクタ9が配置されている。基板側コネクタ9は、基板73のZr側に突出するように基板73に固定されている。
【0036】
リアケース3内には、同軸コネクタ5が収容(内蔵)されている。同軸コネクタ5は、Zr側のオスコネクタ部51と、反Zr側(Zf側)の基板側接続部57(基板側コネクタ9との接続部)などを有する。オスコネクタ部51の先には、図示しない同軸ケーブルのメスコネクタが接続される。同ケーブルは、バックカメラの場合は、図示しない自動車の運転席ディスプレイの制御ユニットにまで至っている。
【0037】
基板側接続部57と基板側コネクタ9との嵌合接続は、リアケース3のフロントケース7への嵌合組立と同時になされる。
【0038】
図2には、左側(Zr側)にオス同軸コネクタ部51と、その右側(Zf側)に形成されている3セットの平板コンタクト58と、それと接触する基板側コネクタ9(
図6・
図7参照)の3セットのフォークコンタクト91が示されている。
【0039】
オスコネクタ部51は、Z方向に延びるパイプ状(中空円筒状)の外部導体53、及び、その中心部においてZ方向に延びる中心コンタクト55を有する(詳細は
図3~5を参照しつつ後述)。オスコネクタ部51のZf側に形成されている基板側接続部57は、三枚のYZ方向に広がる平板コンタクト58が、X方向に平行に並んで配置されている。平板コンタクト58の三枚のうちの外側の二枚58Sは、外部導体53の後端に一体に形成されている。平板コンタクト58の三枚のうちの内側の一枚58Iは、中心コンタクト55の後端に一体に形成されている(詳細後述)。
【0040】
基板側コネクタ9(組立構造の詳細は
図6・
図7を参照しつつ後述)の主要部品であるフォークコンタクト91は、上述のオスコネクタ51の平板コンタクト58を、X方向の両側から挟むフォーク部91bを有する。同フォーク部91bは、Zr側の先端部が開いた、Z方向に延びる二股状の部分である。二股の間は、U字状のスリット91cとなっている。このスリット91cの間には、オスコネクタ51の平板コンタクト58が、その厚さ方向において挟まれる。
【0041】
このスリット91cの先端部の内側には、平板コンタクト58の表面58bに押し付けられる一対の接点91aが対向して突出するように形成されている。ここで、フォーク部91bが自由状態にあるときには、スリット91cの一対の接点91aの間の寸法(間隔)は、平板コンタクト58の厚さよりも小さい。そして、オスコネクタ51の基板側コネクタ9への挿入時(リアケース3のフロントケース7への組込み時、
図1参照)には、一対の接点91aの間に、フォーク部91bの二股を広げながら、平板コンタクト58が押し込まれる。その結果、フォーク部91bの接点91aは、平板コンタクト58の表面58bに押し付けられ、両者は電気的に導通する。なお、接点91aの表面は、やや凸の丸みが付けられている。
【0042】
フォーク部91bのZr側は、二股がひとつに合流する根元部91dとなっている。これらのフォーク部91bと根元部91dは、X方向及びZ方向に沿う面状の部分である。根元部91dのZf側のくびれ部91fは、X方向にくびれており、Z軸周りに捻じれ易くなっている。フォークハウジング(95)への圧入荷重受けや、易変形部(91k)の曲げ形状の構成を考慮して、このような形状としている。
【0043】
くびれ部91fのZf側は、ベンド部91kへの接続部91gとなっている。同接続部91gには、
図2のY方向下方に延びるベンド部91kがつながっている。同ベンド部(可動部)91kは、巾が狭くかつ肉盗み長孔91mが切り込まれているので、X方向に弾性変形し易くなっている。このベンド部91kの曲がりにより、フォーク部91bは、X方向に変位容易になっている。
【0044】
ベンド部91kのY方向下方は、基板73(
図1参照)への立設部91tとなっている。同立設部91tの下端部91zは、基板73上面の配線(図示されず)に半田接続される。立設部91tのZr側のベース固定部91xは、後述(
図6・
図7)するベースハウジング93に挿入されて、基板に固定される。
【0045】
この実施形態の同軸コネクタと基板側コネクタとの接続部における位置ズレ吸収機構(フローティング構造)の概要について説明する(より詳しくは
図8・
図9を参照しつつ後述する)。この位置ズレ吸収機構の特徴は、三次元の各方向における位置ズレを、二方向と残りの一方向に分けて、別機構で分担していることである。
【0046】
すなわち、YZ方向のズレは、平板コンタクト58の平面58bのZY平面に対するフォーク部接点91aの接触位置のずれ(上下左右スライド)で吸収している。X方向については、フォークコンタクト91のベンド部91kの変形により、フォーク部91bがX方向に揺動することにより吸収する。より詳しくは、
図8~11を参照しつつ後述する。
【0047】
本実施形態の上述の位置ズレ吸収機構は、電気接点の接触圧力が、位置ズレの量によって、あまり影響を受けない。すなわち、接点接触圧力は、フォークコンタクト91のフォーク部91bが平板コンタクト58を挟む力によってほぼ決定されるので、位置ズレ量にかかわらずほぼ一定である。ズレ吸収の機構・作用のより詳しい説明は、以下で適宜行う。この接点接触圧力の変動が小さいことにより、位置ズレ吸収時の基板側コネクタ9のコンタクト91の屈曲点91hと易変形部91kの変形により、充分な位置ズレ吸収量(一例として、X・Y・Z各々の方向のズレ許容量=±0.5mm)を得ることができる
【0048】
図3は、
図1のデバイスモジュールのリアケース3及び内蔵同軸コネクタ5の分解斜視図である。図の最も右側(Zr側)には、リアケース3が示されている。また、同ケース3のZf側の矩形凹所3aや同軸コネクタの貫通孔3p、それらの外周の凹凸嵌合部3g(フロントケース7との嵌合部)が見えている。
【0049】
リアケース3の左隣には、シールドケース10が示されている。同シールドケース10は、薄い板金製の四角い薄皿状のものである。同シールドケース10は、XY面に広がる底板10hと、その周囲に立設された側壁10bを有する。同シールドケース10は、リアケース3の矩形凹所3aに入り込んでいる。このシールドケース10は、同軸コネクタ5の基板側接続部57(平板コンタクト58)と、基板側コネクタ9との嵌合接続部を、外来ノイズから遮蔽する。同シールドケース底板10hの中央部には、同軸コネクタ5の貫通する開口10jが形成されている。
【0050】
図3の左半分には、リアケース3に内蔵される同軸コネクタ5が示されている。同軸コネクタ5は、外部導体53や、軸間インシュレータ54、中心コンタクト55、端インシュレータ59を組み立てたものである。このうち、外部導体53・軸間インシュレータ54・中心コンタクト55(端インシュレータ59以外)を組み立てたものを、ボディサブアッシー5´という。なお、
図3の各部の組立は、まずボディサブアッシー5´を組み立て、それをリアケース3の貫通孔3pに圧入し、その後、シールドケース10をリアケース3に組み込み、位置決めボス3xを熱融着し3x’、最後に端インシュレータ59を組み込む(
図12参照)。各部の詳細は、下記の軸間インシュレータ54の概形に関する以外、
図4・
図5を参照しつつ後述する。
【0051】
軸間インシュレータ54は、外部導体53と中心コンタクト55との間を電気絶縁する孔開き円筒状の部材である。その外形は、Zr側からZf側に向けて、円筒部(先薄部54b、元厚部54g)、矩形筒部54pとなっている(
図4(A)参照)。矩形筒部54pの内孔部54sは、その断面が矩形となっており、中心コンタクト55の中軸部55fが圧入される。
【0052】
図4は、
図3の同軸コネクタ5を示す図であって、(A)は断面斜視図、(B)はZf側部分の外形の斜視図である。外側の外部導体53は、薄肉中空のチューブ部53bを有する。同チューブ部53bは、Zr側の先端53cからZf側に延びており、同軸コネクタ5の約三分の二から四分の三程度の長さを占めている。チューブ部53bのZf側端部は、円筒加工されていない平板部53rとなっている。同平板部53rのさらにZf側は、平板コンタクト“外”58Sとなっている。これらの平板部53r及び平板コンタクト58Sは、平板をプレス機の順送金型を用いて成形加工して作製できる(一例)。
【0053】
図4のZ方向中央部の上部の突出部53gは、リアケース3との角度を含めた位置決め部位である。外部導体53のチューブ部53bの図のZf側下部、及び、側部には、
図13を参照しつつ後述する封止剤這い上がり防止用の切り欠き53m・53nが形成されている。
【0054】
外部導体53の内孔53dの内側には、軸間インシュレータ54がはめ込まれている。同軸間インシュレータ54は、Z方向に延びる中空体であり、そのZr側は比較的薄肉の先薄部54bとなっており、Zf側は比較的厚肉の元厚部54gとなっている。先薄部54bの内孔54dには、図示せぬメス同軸コネクタの内側部分が嵌合する。元厚部54gの内孔54hには、中心コンタクト55が嵌合する。なお、軸間インシュレータ54の先薄部54bに対応する同軸コネクタ5の部分を、本明細書・図ではオスコネクタ部51と称する。
【0055】
オスコネクタ51の中心部には、中心コンタクト55がZ方向に貫通している。
図5は、
図3の同軸コネクタの中心コンタクト55の斜視図である。中心コンタクト55のZr側の先軸部55bは細い丸軸であって、図示せぬメス同軸コネクタの中心コンタクトと嵌合導通する。中心コンタクト55のZf側は、やや太い矩形断面の中軸部55fとなっており、その外周には軸間インシュレータ54の元厚部54gが外嵌合している。
【0056】
中心コンタクト55のZf側端部は、中軸部55fが平たく押しつぶされた平板部55rとなっている。同平板部55rのZf側は、平板コンタクト58Iとなっている。これらの平板部の成形方法の一例においては、コイニング加工等を採用して板厚を変化させている。
【0057】
中心コンタクト55の軸端の平板コンタクト“中”58I、及び、外部導体53の軸端の平板コンタクト“外”58S・58S´は、互いに平行な三枚の並列板構造となっている。これにより、基板側コネクタ9の各フォークコンタクト91との間にて位置ズレを吸収できるようになっている。また、三枚のフォークコンタクト91は、各々同一形状(厚さなど)で、取付ピッチも同じである。これにより、平板コンタクト58と嵌合接触する三組のフォークコンタクト91を、各々同一形状にでき、部品の共通化・低コスト化を図っている。
【0058】
端インシュレータ59は、
図3に見られるように、端半円板部59bと、そのZr側に立設されたZr側に延びるボス部59fとからなる。端半円板部59bは、
図4(B)に示すように、外部導体53のZf側端部における、平板コンタクト58が存在しない部分を塞いでいる。ボス部59fは、外部導体53のZf側端部における内孔に挿入されている。この端インシュレータ59は、基板側コネクタ9との嵌合における、基板側コネクタのフォークコンタクト91及びシールドケース10との絶縁を図るものである。また、平板コンタクト58I・S・S’の
図4の下方の空気層を埋めることで、インピーダンスを整合させる作用もある。
【0059】
次に、基板側コネクタ9の詳細構造を説明する。
図6は、
図1のデバイスモジュール1における基板側コネクタ9の一部破断斜視図である。
図7は、同基板側コネクタ9の分解斜視図である。この基板側コネクタ9は、
図2において説明したフォークコンタクト91を主たる構成部品としている。そして、
図2では図示省略した、フォークコンタクト91を基板73に固定するためのベースハウジング93や、前記フォークコンタクト91のフォーク部91bを収容するフォークハウジング95、ベースハウジング93の外周を覆うシールド枠97からなる。
【0060】
基板側コンタクト(フォークコンタクト91)は、X方向に、3個が、等間隔で並んでいる。前述したように、リアケース3側の、中心コンタクト55及び外部導体53のZr側端部に形成されている平板コンタクト58が、平行、等間隔、同一厚さの板状構造となっていることから、3個のフォークコンタクト91は、各々が共通部品となっている。
【0061】
ベースハウジング93は、電気絶縁性の樹脂製の成形品であり、四角いブロック状である。ベースハウジング93の内部には、フォーク部91bのベース固定部91xが挿入される挿入孔93fが、Z方向に延びるように形成されている。この挿入孔93fは、X方向に並んで、ZY方向の同じ位置(高さ・奥行)に、計3か所形成されている。したがって、各挿入孔93fに挿入固定される3個のフォークコンタクト91も、X方向に並んで、ZY方向の同じ位置(高さ・奥行)に、同じ姿勢で並んでいる。
【0062】
ベースハウジング93の、
図6・
図7で見えるY方向の下面は、シールド枠97の下板97fを介して、基板73(
図1参照)に載っている。結局、フォークコンタクト91は、ベースハウジング93及びシールド枠97を隔てて、基板73上に立ち上がるように取り行けられている。なお、
図10に、フォークコンタクト91のフォーク部91bと、フォークハウジング95との関係が、拡大して示されているので、以下の説明では、細部は
図10を参照されたい。
【0063】
フォークハウジング95は、4本の角状の部分(X方向両側の二か所の側角95b、中央部の二か所の中角95c)を有する。隣接する二か所の角部95b・95c又は95c・95cの間には、フォーク部91bの挿入保持される挿入長孔95kが、Z方向に延びるスリット状に形成されている。そして、隣接する二か所の角部の間には、挿入長孔95kの丁度X方向真ん中に、溝95fが切り込まれている。この溝95fには、コネクタ接続時に、オスコネクタ51側の平板コンタクト58が入り込む。
【0064】
シールド枠97は金属薄板のプレス加工品であり、全体として四角いハチマキ状である。シールド枠97の内部には、フォークコンタクト91のフォーク部91b以外の部品が収容され、これらの部品への、外来ノイズを遮蔽している。また、シールド枠97は、フォークハウジング95・フォーク部91bの変位を規制するリミッターとしても作用する(
図10・
図11を参照しつつ後述)。
【0065】
基板側コネクタ9を形成する部品のうち、フォークコンタクト91の下端部91zと、シールド枠97のはんだ付け部97tが、基板73(P.C.B)に半田付け固定される。一方、フォークハウジング95は基板73に固定されず、上述のフォークコンタクト91の可動部91kを介して、シールド枠97内を、隙間S(SX・SY、
図10・
図11参照)の分だけ、可動する(変位可能な、フローティングする)構造となっている。
【0066】
本実施形態のコネクタの接続構造における可動構造においては、X方向に並列のYZ方向同位置に、複数(3組)の平板コンタクト58とフォークコンタクト91との組合せを用いている。これにより、各コンタクトの嵌合姿勢が、Z軸周りの傾きが抑制された状態で、各方向に変位可能な構造となっている。
【0067】
図8は、平板コンタクト58とフォークコンタクト91との接触点におけるY方向・Z方向のズレ吸収作用を説明するための斜視図である。上の左右に並ぶ3つの図(Y+)、(Y0)、及び、(Y-)は、Y方向のズレ吸収作用を表す図である。下の左右に並ぶ3つの図(Z+)、(Z0)、及び、(Z-)は、Z方向のズレ吸収作用を表す図である。
【0068】
各図においては、X方向に並ぶ3枚の平板コンタクト58S・58I・58S´と、各平板コンタクト58のうちの1枚を挟むフォークコンタクト91S・91I・91S´が示されている。なお、フォークハウジング95の図示は省略してある。
【0069】
図の上の左右中央の(Y0)は、接触点のズレのない状態(取り付け状態が設計の中心値の場合)である。図の右手前の平板コンタクト58Sの表面58bにおいて、図のZ方向に延びる一本の太い中心線は、Y方向のズレのない接触点のY方向位置を示す線である。図の上の左の(Y+)は、接触点のY方向のズレが許容最大値Y+の状態である。二本の中心線のうちの太い中心線はズレ0の位置を示し、細い中心線はズレY+の位置を示す。図の上の右の(Y-)は、接触点のY方向のズレが許容最大値Y-の状態である。二本の中心線のうちの太い中心線はズレ0の位置を示し、細い中心線はズレY-の位置を示す。
【0070】
下の左右に並ぶ3つの図(Z+)、(Z0)、及び、(Z-)は、Z方向(平板コンタクト58とフォークコンタクト91の嵌合方向)のズレ吸収作用を表す図である。
図の下の左右中央の(Z0)は、接触点のズレのない状態(取り付け状態が設計の中心値の場合)である。図の右手前の平板コンタクト58S´の表面58bにおいて、図のZ方向に延びる一本の太い中心線は、Z方向のズレのない接触点のZ方向位置を示す線である。
【0071】
図の下の左の(Z+)は、接触点のZ方向のズレが許容最大値Z+の状態(嵌合が最も浅い状態)である。二本の中心線のうちの太い中心線はズレ0の位置を示し、細い中心線はズレZ+の位置を示す。図の下の右の(Z-)は、接触点のZ方向のズレが許容最大値Z-の状態(嵌合が最も深い状態)である。二本の中心線のうちの太い中心線はズレ0の位置を示し、細い中心線はズレZ-の位置を示す。
【0072】
図8の接触点のズレがあるいずれの状態の場合も、平板コンタクト58の表面58bのかなり内側の部分において、フォークコンタクト91の接点91aが平板コンタクト58の表面58bに接触している。すなわち、許容最大のズレがあっても、平板コンタクト58とフォークコンタクト91の導通はしっかり確保される状態である。そして、フォークコンタクト91のフォーク部91bの接点91aの、平板コンタクト58の表面58bにおける接触位置のスライドによりズレを吸収するので、Z方向に関しては特許文献2(特開2016-162556)の接触構造の様にコンタクト接触部の変位量により位置ズレを吸収する構造ではない為、接触力が安定する。
【0073】
次に、
図9を参照しつつ、X方向のズレ吸収について説明する。
図9は、平板コンタクト58とフォークコンタクト91との接触点におけるX方向のズレ吸収の作用を説明するための図である。図の上の左右に並ぶ3つの図は、基板側コネクタ9の上面図である。図の上下中央の左右に並ぶ3つの図は、基板側コネクタ9の正面図である。図の下の左右に並ぶ3つの図は、基板側コネクタ9の底面図である。
【0074】
図中には、フォークコンタクト91やそれを収容するフォークハウジング95、ベースハウジング93などが示されている。フォークコンタクト91の下端部91zは、基板73(
図1参照)に固定されている。
なお、
図10に、フォークコンタクト91のフォーク部91bと、フォークハウジング95との関係が、拡大して示されているので、以下の説明では、細部は
図10を参照されたい。
【0075】
図の左右中央の(X0)は、X方向のズレのない状態(取り付け状態が設計の中心値の場合)である。中央のフォーク部91bのX方向の中心は、同フォーク部91bの変位0(ゼロ)の際の中心線(太い一点鎖線)と一致している。太い一点鎖線は、基板側コネクタ9のX方向中心線でもある。
【0076】
左の図(X+)は、接触点のズレがX+の最大の許容状態である。二本の中心線のうちの太い中心線はズレ0の位置を示し、細い中心線はズレX+の位置を示す。右の図(X-)は、接触点のズレがX-の最大の許容状態である。二本の中心線のうちの太い中心線はズレ0の位置を示し、細い中心線はズレX-の位置を示す。詳しくは次述するように、基板側コンタクトの嵌合部(フォークハウジング95)ごとX方向に動いて、位置ズレを吸収している。
【0077】
X方向のズレ吸収の主役は、薄肉板金製のフォークコンタクト91のベンド部91k(
図6も参照)であり、その変形により、フォーク部91bがX方向に揺動してX方向のズレを吸収する。具体的には、
図9の底面図に分かり易く示すように、フォークコンタクト91のベンド部91kは、X方向の曲がり角度が容易に(軽い力で)変化する。なお、このフォークコンタクト91の変形は、弾性変形域で行われるが、再嵌合を前提としない場合には塑性変形域まで使用可能である。
【0078】
フォークコンタクト91は、
図9の中段の正面図における下端の下端部91zが、半田によって基板73(プリント配設部)に固定されている。また、フォークコンタクト91は、そのベース固定部91xが、ベースハウジング93に挿入固定されている。このベース固定部91xの先(図の下方)にベンド部91kがつながっている。これらの下端部91z、及び、ベース固定部91xによって、フォークコンタクト91の基部は基板73に固定されている。
【0079】
図9の下段の底面図においては、ベンド部91kの先には、屈曲点91h(図示省略・
図2参照)、接続部91g(同左)、くびれ部91f(同前)を経由してフォーク部91bがつながっている。フォーク部91bは、
図2で説明したように、二股状の平板コンタクト58を挟む部材である(
図9ではスリット91cの図示(破線)は省略)。フォーク部91bは、フォークハウジング95(
図6・
図7参照)の挿入長孔95kに挟まれている。
【0080】
フォークコンタクト91のベンド部91kは、
図9の底面図の左側の図においては、下方の左側に大きく曲がっている。このとき、図の下方のフォーク部91bは、X方向において図の左側に寄っており、X+最大変位の状態である。すなわち、この状態において、中央のフォーク部91bのX方向の中心線(細い一点鎖線)は、同フォーク部91bの変位0(ゼロ)の際の中心線(太い一点鎖線)に対して、図の左側にX+だけ寄っている。
【0081】
同底面図の中央の図においては、同ベンド部91kは、下方の左側に少し曲がっている。この中央の図の状態が、フォーク部91bのX変位0(ゼロ)の状態である(図示されている中心線は一本)。一方、同底面図の右側の図においては、同ベンド部91kは、下方にほぼ真っ直ぐ垂下している。この右側の図の状態が、フォーク部91bのX-最大変位の状態である(太い一点鎖線の右側に細い一点鎖線(フォーク部91bの中心線)が描かれている)。
【0082】
フォーク部91bのX-最大変位の状態では、フォークコンタクト91全体の形状は、略L字である。他のX+最大変位の状態においては、ベース固定部91xの下部において左に曲がっており、L字のコーナーの角度は鋭角となっている。
【0083】
図9の上段の上面図には、フォーク部91bの二股状が図示されている。また、フォーク部91bを挟んで収容するフォークハウジング95の挿入長孔95kも図示されている。左右に並ぶ三つの図の意味合い、一点鎖線の意味合いは、底面図の場合と同じである。
【0084】
図9の中段の正面図には、フォークハウジング95の変位状態が分かり易く図示されている。また、フォークハウジング95とベースハウジング93との位置関係も図示されている。左右に並ぶ三つの図の意味合い、一点鎖線の意味合いは、底面図の場合と同じである。
【0085】
これらの図に分かり易く示すように、本実施形態の基板側コネクタ9においては、フォークコンタクト91のフォーク部91bと、フォークハウジング95とが、組み合わさったまま、X方向に変位して(フローティング構造)、X方向のズレを吸収する。
【0086】
次に
図10を参照しつつ、基板側コネクタ9の位置ズレ吸収機構(フローティング構造)の変位限界を定める機構(リミッター)について説明する。
図10は、基板側コネクタ9の上面図であって、
図9の上面図のうち左右方向中央の図と同じズレ状態(X方向ズレ=0、Y方向ズレ=0)である。
図10には、二股状のフォーク部91bが図示されている。また、同部91bを、Y方向の両側から挟んでいる、フォークハウジング95の挿入長孔95kも、図示されている。
【0087】
基板側コネクタ9の一番外のシールド枠97は、フォークコンタクト91(図にはフォーク部91bのみが見えている)やフォークハウジング95の基部、ベースハウジング93を取り囲んでいる(
図6参照)。ここで、ベースハウジング93とシールド枠97は、基板73(
図1・
図11参照)に固定されている。一方、フォークコンタクト91のフォーク部91bやフォークハウジング95は、フォークコンタクト91のベンド部91kの変形の分だけ、基板73やベースハウジング93・シールド枠97に対して相対変位する(フローティング構造)。
【0088】
シールド枠97は、フォーク部91b及びフォークハウジング95の基部(
図6参照)の周りの、
図10の左右及び上方を取り囲む枠状部分97k・97pを有している。そして、X方向の両側の枠状部分97kの内面97gの内側には、隙間SXを介して、フォークハウジング95のX方向端面95gが対向している。
【0089】
フォーク部91b及びフォークハウジング95が図のX軸右方向に大きくズレて(変位して)、これらの対向する面95gと面97gが当たると、フォーク部91b及びフォークハウジング95のそれ以上のズレは制限される(
図9の上段の右側図(X-)を参照)。フォークハウジング95等のX方向反対側の変位の制限作用も上記と同様である(
図9の上段の左側図(X+)を参照)。
【0090】
次に、Y方向の変位制限機構について説明する。そもそも、フォークコンタクト91のフォーク部91bのY方向の変位は、屈曲点91hとベンド部91kの曲がり変化にともなうベンド部91kのY方向長さの差などに起因するものであり(
図9底面図参照)、X方向の変位と比べて小さい。なお、部品の位置誤差に基づく平板コンタクト58とフォークコンタクト91とのズレは、基本的には、前者の表面58b上における後者の接点91aのスライド(スリップ)により逃がされる。
【0091】
Y方向のリミッターの具体的構造について説明する。フォーク部91b及びフォークハウジング95の、
図10の上方を囲む枠状部分97pのY方向内面97jの内側には、隙間SYを介して、フォークハウジング95のシールド側端面95jが対向している。フォーク部91b及びフォークハウジング95が図のY軸上方向に大きく変位しても、これらの対向する面97jと面95jが当たると、フォーク部91b及びフォークハウジング95のそれ以上のズレは制限される。
【0092】
フォークハウジング95等のY方向反対側の変位の制限作用は、フォークハウジング95のベースハウジング側端面95iと、ベースハウジング93の図のフォークハウジング側端面93iとが当たる所で制限される。
【0093】
図11は、
図2の同軸コネクタ5と基板側コネクタ9の嵌合構造のZ方向のズレ吸収作用の変位制限機構(リミッター)を説明するための図であって、(A)は正面図、(B)は側面断面図である。図中には、フォークハウジング95の4本の角状の側角95b・中角95cや、それらの間の嵌合溝95fが見えている。各々の嵌合溝95fの中には、フォークコンタクト91のフォーク部91bの一対の接点91aが、溝の両側に対向するように見えている。この嵌合溝95fには、一対の接点91aに挟まれるように、同軸コネクタ5側の平板コンタクト58が挿入される。
【0094】
平板コンタクト58とフォーク部接点91aとの間は、
図2や
図8(下段部)を参照しつつ説明したように、スライド(スリップ)によりズレが吸収される。しかし、両者の摩擦力の存在により、コネクタ嵌合時あるいは嵌合解除時に、フォークコンタクト91とフォークハウジング95が、Z方向に動いてしまう。このときに、フォークハウジング95のZ方向移動を制限しているのが、変位制限機構(リミッター)である。
【0095】
Zr側(Z+側、コネクタ抜き出し時)のリミッターとして、フォークハウジング95には、ハウジング側端面凸部95v及びシールド側端面凸部95wが、突出するように形成されている(
図7も参照)。一方、ベースハウジング93には、ベースハウジング凹み部93aがあり、シールドケース97には、底凹部97vが切り欠き状に形成されている。そして、フォークハウジング95がZr方向(+側)に動くコネクタ抜去時には、ハウジング側端面凸部95v、シールド側端面凸部95Wが、
図11の上方向に上がって、それぞれ、ベースハウジング凹み部93a、シールドケース97の底凹部97vのエッジに当たり、フォークハウジング95のそれ以上の上昇は防止される。
【0096】
Zf側(Z-側、コネクタ挿入時)については、フォークハウジング95の底面凸部95t(
図7も参照)が、基板73の上面73tに当たり、フォークハウジング95の-側(コネクタ嵌合が深くなる方向)への動きを制限する。
【0097】
これらのコネクタ嵌合構造のZ方向の変位制限機構(リミッター)により、フォークコンタクト91への過剰な変形に起因する負荷を抑制することができる。
【0098】
次に、主に
図12を参照しつつ、本実施形態(
図1)のリアケース3及び内蔵同軸コネクタ5の組立手順を説明する。
まず、
図3に示すように、外部導体53・軸間インシュレータ54・中心コンタクト55を組み立てて、ボディサブアッシー5´とする。
【0099】
このボディサブアッシー5´を、リアケース3の貫通孔3pに、Zr側から圧入する。圧入後の姿が
図12(A)である。
次に、封止剤注入凹部3j(貫通孔3pの上部)に封止剤SEを注入する(詳しくは
図13を参照しつつ後述)。封止剤注入後の姿が
図12(B)である。封止剤SEは、リアケース3をカメラモジュールに組み込んだ状態における気密性・水密性を確保するためである。
【0100】
次に、
図12(C)に示すように、リアケース3の矩形凹所3a内に、シールドケース10を嵌め込む。このとき、リアケース3の位置決めピン部3x(溶着ボスでもある)と、シールドケース10の位置決め孔10pを合わせる。
次に、
図12(D)に示すように、位置決めピン部3xを熱カシメにより潰して溶着ボス3x´とし、シールドケース10をリアケース3に固定する。また、端インシュレータ59を、基板側接続部57に圧入し、同部57の側方部や、外部導体53の切り欠き53mをふさぐ(
図4(A)参照)。
【0101】
次に、
図13を参照しつつ、封止剤注入に関する本発明の実施形態を説明する。
図13は、封止剤SEが、リアケース3とリアコネクタ5の基板側接続部57との間に注入された状態を示す図である。(A)は、リアケース3全体をZf側の斜めから見た斜視図である。(B)は、本発明の実施形態に係るコネクタにおける、封止剤SEの注入状況を拡大して示す側面断面図である。(C)は、比較例のコネクタにおける、封止剤SEの注入状況を拡大して示す側面断面図である。
【0102】
図13(A)においては、リアケース3のZf側の矩形凹所3aが大きく見えている。その凹部3aの中央に、リアコネクタ5のZf側端部の基板側接続部57が示されている。同基板側接続部57は、三枚の平板コンタクトである、X方向両側の二枚の平板コンタクト58S・58s´、及び、中央の平板コンタクト58Iを有している(
図2・
図4(B)参照)。
【0103】
続いて、
図13(C)を参照しつつ、比較例のコネクタの封止剤注入部における問題点を説明する。同図(C)には、リアコネクタの外部導体153や、中心コンタクト55、軸間インシュレータ54などが示されている。外部導体153の端部は、平板コンタクト58Sになっている。同平板コンタクト58Sの根元の部分の周りには、リアケース3のZf側の矩形凹所3aの中央部をZr側に掘り込むように、封止剤注入凹部3jが形成されている。
【0104】
リアケース3への同軸コネクタのボディサブアッシー5´(
図3参照)の組み込み(圧入)後に(
図12(A)参照)、この封止剤注入凹部3jに封止剤SEを注入する。封止剤SEは、注入凹部3j内の、Zf側端部における軸間インシュレータ54や中心コンタクト55の周り、外部導体53の内外などに注入される。なお、封止剤注入時の各部品の姿勢は、Zf側が地球重力方向の上側である
図13(A)の姿勢である。なお、注入凹部3jの周りの四本のピン3xは、上述の位置決めピン部(溶着ボス)である。
【0105】
この封止剤SEを注入するとき、パイプ状の外部導体153の内面と中心コンタクト55の外面との間において、封止剤SE´が毛細管現象で侵入する(這い上がる)。この封止剤侵入がひどい場合には、封止剤SEが平板コンタクト58の接触導通面にまで付いて、コネクタの接続障害につながるおそれがある。それを防止する、あるいは検査で発見するには、封止剤注入時の作業管理の手間が増える。
【0106】
図13(B)に示す本発明の実施形態では、パイプ状の外部導体53の端部に切り欠き53mを設けている(
図4も参照)。この切り欠き53mにより、外部導体53の内面と中心コンタクト55の外面との間の隙間が、大気に開放される。そのため、同隙間への封止剤SE´の毛細管現象による侵入(這い上がり)を防止できる。
【0107】
このように、封止剤注入時の毛細管現象を防ぐ外部導体の切り欠きを設けることで、中心コンタクトと外部導体との距離を確保し、封止剤注入時の毛細管現象による封止剤の這い上がりを防ぐことができる。これにより、封止剤注入時の作業管理の手間が省ける。また、封止剤のコンタクト部への侵入による接続障害を確実に防止できる。
【0108】
なお、上記シールドケース10は、バネ状の形状の同軸コネクタ接触部10rを持ち、外部導体基板側嵌合部切り欠き部53mに接触し、切り欠き部の遮蔽を行う。
【0109】
図14は、実施形態の同軸コネクタ5と基板側コネクタ9の嵌合接続構造の性能(VSWR)の一例のグラフである。横軸は、同接合構造に印加される信号の周波数である。縦軸は、電圧定在波比 (VSWR: Voltage Standing Wave Ratio)である。グラフの実線は、コンタクトのズレが三次元の各方向ともに0(ゼロ)の場合の特性である。グラフの破線は、コンタクトのズレが三次元の各方向ともに0.5mm(仕様最大値)の場合の特性である。このグラフから理解できるように、各方向にズレが生じた(変位させた)場合においても、特性の悪化は許容範囲内である。
【0110】
次に、本発明の他の実施形態(変形例)について説明する。
《変形例1;外部導体53への切り欠きなし。》
気密性が不要で封止剤を注入しない場合は、封止剤這い上がり対策が不要となるため、外部導体53の切り欠きを設けなくてもよい。すなわち、
図4において、切り欠き53m・53nが存在せず、パイプ状の外部導体53の円筒面となっている状態となる。
【0111】
《変形例2;封止剤SEを用いずにOリングあるいはシールリングを用いる。》
図15は、同軸コネクタのシール構造の変形例2を示す図であって、(A)は組立状態の斜視図であり、(B)は分解斜視図である。この変形例の同軸コネクタ205は、気密封止にOリング252やシール250を使用し、封止剤の注入を行わない例である。そして、外部導体253にダイキャスト製や切削加工品を用い、平板コンタクト258Sをプレス加工の嵌合部256に形成している。嵌合部256は、外部導体253の内孔253aに圧入してもよい。なお、符号255は、平板コンタクト258IがZf側端部に形成された中心コンタクトである。
【0112】
《変形例3》
図1などに示す実施形態では、同軸コネクタをFAKRA形状としているが、他の同軸コネクタ形状、例えば四角形断面やケーブル一体型としてもよい。