(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173021
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】アプリケータ
(51)【国際特許分類】
A61M 37/00 20060101AFI20231130BHJP
【FI】
A61M37/00 500
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022084968
(22)【出願日】2022-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】501296380
【氏名又は名称】コスメディ製薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】権 英淑
(72)【発明者】
【氏名】梶山 健次
(72)【発明者】
【氏名】神山 文男
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA05
4C267AA72
4C267CC01
4C267CC05
4C267GG04
(57)【要約】 (修正有)
【課題】マイクロニードルを皮膚に穿刺したときに、皮膚に垂直にマイクロニードルが穿刺できるアプリケータを提供する。
【解決手段】シリンダー2と、シリンダーの内部に設けられた付勢部材と、シリンダーの内部に設けられ、付勢部材によってシリンダーの軸方向一端部側へ付勢可能に配置されたピストンとを有するマイクロニードルアレイ用アプリケータにおいて、マイクロニードルアレイはシリンダーの軸方向一端部側に取り付けられ、シリンダーの軸方向一端部を上方向とした場合に、シリンダーの上方向の皮膚と対向するシリンダー周辺面に複数の圧力センサー3を有するマイクロニードルアレイ用アプリケータ。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダーと、
前記シリンダーの内部に設けられた付勢部材と、
前記シリンダーの内部に設けられ、前記付勢部材によって前記シリンダーの軸方向一端部側へ付勢可能に配置されたピストンとを有するマイクロニードルアレイ用アプリケータにおいて、
マイクロニードルアレイは前記シリンダーの軸方向一端部側に取り付けられ、前記シリンダーの軸方向一端部を上方向とした場合に、前記シリンダーの上方向の皮膚と対向するシリンダー周辺面に複数の圧力センサーを有するマイクロニードルアレイ用アプリケータ。
【請求項2】
前記圧力センサーの情報を処理する処理手段をさらに有する、請求項1に記載のマイクロニードルアレイ用アプリケータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アプリケータに関する。詳しくは、マイクロニードルの皮膚適用装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、薬物が含有された微小針(以下「マイクロニードル」という)を保護粘着剤シートに設け、そのマイクロニードルをアプリケータによって皮膚に穿刺する方法が、人体に痛みを与えることなく、効率よく薬物を体内に投与可能なことから注目されている。
【0003】
アプリケータとしては、例えばシリンダー内に、バネなどによる衝撃力をマイクロニードルに伝えるピストンと、そのピストンをバネに抗した状態で固定するための固定手段と、が設けられたものがある(例えば、特許文献1参照)。このアプリケータによれば、解放機構により、固定手段で固定されたピストンを解放すると、バネの力により、ピストンが打ち出され、皮膚にマイクロニードルを穿刺する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このようなアプリケータでは、バネによってマイクロニードルを皮膚に穿刺したときに、皮膚は弾性体でありしかも腕などにおいて明らかなように平面でなく曲面であるのでマイクロニードルを皮膚に垂直に穿刺することが難しい。アプリケータをマイクロニードルが皮膚に垂直に穿刺できるよう皮膚上に設置することは、熟練がいる作業となる。アプリケータが皮膚に垂直に設置できないとマイクロニードルも皮膚に垂直に穿刺できず、マイクロニードルが皮膚から抜けたり、マイクロニードルが傾いたりして、その穿刺深さが安定して維持されないため、薬物投与量が不安定になる可能性がある。
本発明が解決しようとする課題は、マイクロニードルを皮膚に穿刺したときに、皮膚に垂直にマイクロニードルが穿刺できるアプリケータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本開示に係るアプリケータは、シリンダーと、シリンダーの内部に設けられたバネと、シリンダーの内部に設けられ、バネによってシリンダーの軸方向一端部側へ圧縮可能に配置されたピストンと、シリンダーの周辺面に複数の圧力センサーを有することを特徴とする。本発明のアプリケータは、さらに、圧力センサーからの情報を処理する電子回路を有していてもよい。
本発明は、以下に示す通りである。
〔1〕 シリンダーと、
前記シリンダーの内部に設けられた付勢部材と、
前記シリンダーの内部に設けられ、前記付勢部材によって前記シリンダーの軸方向一端部側へ付勢可能に配置されたピストンとを有するマイクロニードルアレイ用アプリケータにおいて、
マイクロニードルアレイは前記シリンダーの軸方向一端部側に取り付けられ、前記シリンダーの軸方向一端部を上方向とした場合に、前記シリンダーの上方向の皮膚と対向するシリンダー周辺面に複数の圧力センサーを有するマイクロニードルアレイ用アプリケータ。
〔2〕 前記圧力センサーの情報を処理する処理手段をさらに有する、〔1〕に記載のマイクロニードルアレイ用アプリケータ。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、マイクロニードルを皮膚に穿刺するにあたって、圧力センサーで計測される圧力のバランスを指標にして、アプリケータを皮膚に垂直にセットできるので、皮膚にマイクロニードルが垂直に穿刺され皮膚内に確実に透過し、マイクロニードルに塗布あるいは含有している薬物の安定的皮膚内移行を可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態に係るアプリケータの軸方向の一端部を示す。ピストン(図示せず)は、シリンダー2内に仮止めされている。圧力センサー3は、シリンダー2の外側に8個設置されており、それぞれの圧力センサー3からの圧力電流は、リード線4を介して制御基板5に導かれる。
【
図2】マイクロニードルアレイ、粘着テープ及びケースを示す。マイクロニードルアレイは粘着テープ上に保持され、粘着テープはケースに止められている。アプリケータへのケースの保持はA面で確保され、かつ、A面は圧力センサーに接触する。
【
図3】アプリケータの軸方向の一端部に、マイクロニードルアレイ6/ケース7を設置した図。
【
図4】制御基板を経てコンピュータに伝えられた各圧力センサーの電圧の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示に係る実施の形態について、図面を基に詳細に説明する。なお、説明の便宜上、アプリケータ及びケースにおいて皮膚に接触する側を上方向とし、その反対側を下方向とする。また、本実施形態では、後述する実施例ではマイクロニードルを、積層したパラフィルムに穿刺する場合を例に取って説明する。更に、マイクロニードルには自己溶解型、或いは薬物塗布型などがあるが、本実施形態におけるマイクロニードルの形態については、これに限定されない。
【0010】
図1~
図3に示されるように、本実施形態に係るアプリケータは、シリンダーと、シリンダーの上端部に設置されることで着脱可能に取り付けられるケースと、シリンダー上部周辺に取り付けられた圧力センサーを主要構成要素とする。
図2に示すケースと
図1に示すシリンダーの上端部との嵌合は、ケース下部凹部をシリンダー上部凸部に押しつけることで安定に取り付けられる。
図2に示すケースにはマイクロニードルアレイが粘着テープによって固定され、粘着テープは、テープ背面がケース上面に接触固定されており、ピストンの衝撃で外れ皮膚に衝撃投与される。
【0011】
なお、シリンダー及びピストンは、軽量で摩擦係数が低い樹脂製であることが好ましく、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリオレフィン、ポリアセタール等で成形されることが好ましい。
【0012】
実際に皮膚に投与するに当たっては、
図1~
図3に示されるように、ピストンをコイルバネの付勢力に抗して引き上げた状態で仮止めされた後、マイクロニードルアレイが粘着テープで固定されたケースをシリンダーの上端部に取り付ける。
【0013】
以上のような構成とされたアプリケータを、上腕、腹部等の皮膚に押しつけると、ケースを通じての圧力がシリンダー上部の圧力センサーに伝えられ、その情報がリード線により制御基板により電圧変換される。各センサー(実施例では8個)からの電圧がほぼ一定であれば、アプリケータは皮膚に垂直にセットされている。センサー間の電圧が不均一であれば、皮膚にアプリケータが不均一に接触していることを示しており、アプリケータの設置状態を調整することにより、垂直セットに容易に到達できる。
【0014】
本発明のアプリケータを用いてマイクロニードルアレイを皮膚に穿刺するときには、アプリケータを皮膚に押しつけ8個のセンサーからの電圧がほぼ等しくなるようにし、コイルバネの仮止めを解除し、解除されたコイルバネの付勢力により、ピストンがシリンダーを通ってケース下端面に当たり、マイクロニードル付きの粘着テープが上方向に向かって打ち出される。代表的付勢部材としてコイルバネを例示して説明したが、上記仮止め以降の打ち出しプロセスは、付勢部材の異なるアプリケータによって異なる。例えば、圧縮空気の利用なども可能である。それは既知の方法によれば良く、本発明とは関係しないのはむろんである。
前記圧力センサーの情報を処理する処理手段の1例として、制御基板を経てコンピュータに伝えられた各センサー電圧の様子を
図4に示す。8個のセンサー(
図4の手前に見えるセンサーから時計周りにセンサー1~8)は、本例においてはセンサー1、8に対応するアプリケータ上面が皮膚に強く押しつけられ、その反対面(
図4の奥側に位置するセンサー4、5)に対応するアプリケータ上面が皮膚に弱く押しつけられていることを明瞭に示している。
【0015】
アプリケータによる一連の穿刺方法は、以上の通りであるが、本実施形態に係るアプリケータの本体は、樹脂製が好ましいので軽量であり、かつ、好ましくは円筒形状であるので、寸法精度を出し易い利点がある。また、付勢部材がコイルバネであり、その付勢力(バネ定数であり、穿刺エネルギーに変換させるために蓄積する圧縮エネルギー)を調整し易い利点もある。
【0016】
以上、本実施形態に係るアプリケータについて、図面を基に説明したが、本実施形態に係るアプリケータは、図示のものに限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲内において、適宜設計変更可能なものである。例えば、センサーの個数は3個以上であれば目的を達する。本発明においては
図4に示すように、センサーからの情報をコンピュータに導いているが、これは一例である。センサー情報を全てアプリケータの中で処理し、各センサーからの電圧情報がほぼ均等になったときに、光あるいは音により使用者に伝達し、使用者はその光あるいは音に基づきマイクロニードルアレイを投与することは、公知の電子回路技術により容易に可能となる。
【実施例0017】
以下、本発明を下記実施例によりさらに詳しく説明する。これら実施例は、単に本発明を具体的に説明するための例であり、本発明の範囲がこれら実施例に限定されるものではない。
【0018】
試験例:圧力センサーを搭載したアプリケータを用いたマイクロニードルアレイの穿刺実験
評価方法:積層パラフィルム内部への針到達深度及び針数
アプリケータ:圧力センサー付アプリケータ
投与対象:パラフィルム8枚(各厚さ130μm)/シリコーンシート(5mm)/発泡スチロール(27mm)
投与回数:1回
使用マイクロニードルアレイ:ポリグリコール酸製、射出成形品
針長さ:900μm、上端直径:40μm、根元部直径:300μm、
総針本数:94、アレイ直径:10mm、ドーナッツ型(針は外周部に存在し中央部にはない)
【0019】
試験条件
条件1:センサー8箇所が検出圧力4V以上
条件2:センサー5箇所が検出圧力4V以上、3箇所が検出圧力4V以下
条件3:センサー4箇所が検出圧力4V以上、4箇所が検出圧力4V以下
【0020】
試験結果
パラフィルムに残された穿刺痕より、各層(枚)の到達本数をカウントした結果をパーセント表示した。
【0021】
【0022】
アプリケータが皮膚に均等に押し付けられることによって、すなわち、アプリケータに搭載された各圧力センサーが一定値以上の圧力を検出することによって、マイクロニードルは、皮膚のより深部に均一に刺入されること、及びそのために本アプリケータによる圧力センサーの存在の有効性が示された。