(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173025
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】プリント配線板の製造方法
(51)【国際特許分類】
H05K 3/46 20060101AFI20231130BHJP
H05K 3/42 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
H05K3/46 N
H05K3/46 B
H05K3/42 610A
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022084977
(22)【出願日】2022-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122622
【弁理士】
【氏名又は名称】森 徳久
(72)【発明者】
【氏名】籠橋 進
(72)【発明者】
【氏名】酒井 純
(72)【発明者】
【氏名】吉川 恭平
【テーマコード(参考)】
5E316
5E317
【Fターム(参考)】
5E316AA02
5E316AA12
5E316AA15
5E316AA43
5E316CC04
5E316CC09
5E316CC32
5E316CC34
5E316DD17
5E316DD24
5E316DD32
5E316DD33
5E316EE33
5E316FF05
5E316FF07
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5E316FF17
5E316GG15
5E316GG16
5E316GG17
5E316GG18
5E316GG22
5E316GG23
5E316HH40
5E317BB02
5E317BB12
5E317BB18
5E317CC33
5E317CD13
5E317CD15
5E317GG03
(57)【要約】
【課題】高い品質を有するプリント配線板を製造するための方法の提供。
【解決手段】プリント配線板の製造方法は、第1導体層上に第1面と第1面と反対側の第2面とを有する樹脂絶縁層を形成することと、第1面上に保護膜を形成することと、ビア導体用の開口を形成することと、開口内を洗浄することと、樹脂絶縁層から保護膜を除去することと、樹脂絶縁層の第1面上に第2導体層を形成することと、ビア導体を形成すること、とを含む。第2導体層を形成することは、シード層を形成することと、めっきレジストを形成することと、電解めっき層を形成することと、めっきレジストを除去することと、電解めっき層から露出するシード層を除去すること、とを含む。シード層を形成することは、第1面上に銅と特定卑金属を含有する合金からなる第1層をスパッタによって形成することと、第1層上に銅からなる第2層をスパッタによって形成すること、とを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体回路を有する第1導体層上に第1面と前記第1面と反対側の第2面とを有する樹脂絶縁層を形成することと、
前記樹脂絶縁層の前記第1面上に保護膜を形成することと、
前記樹脂絶縁層を貫通し前記第1導体層に至るビア導体用の開口を形成することと、
前記開口内をプラズマによって洗浄することと、
前記洗浄することの後に前記樹脂絶縁層から前記保護膜を除去することと、
前記樹脂絶縁層の前記第1面上に第2導体層を形成することと、
前記開口に前記第1導体層と前記第2導体層を接続するビア導体を形成すること、とを含むプリント配線板の製造方法であって、
前記第2導体層を形成することは、前記樹脂絶縁層の前記第1面上にシード層を形成することと、前記シード層上にめっきレジストを形成することと、前記めっきレジストから露出する前記シード層上に電解めっき層を形成することと、前記めっきレジストを除去することと、前記電解めっき層から露出する前記シード層を除去すること、とを含み、
前記シード層を形成することは、前記第1面上に銅と特定卑金属を含有する合金からなる第1層をスパッタによって形成することと、前記第1層上に銅からなる第2層をスパッタによって形成すること、とを含み、前記特定卑金属は銅以外の卑金属である。
【請求項2】
請求項1のプリント配線板の製造方法であって、前記シード層を除去することは前記第1層と前記第2層を同時に除去することを含む。
【請求項3】
請求項2のプリント配線板の製造方法であって、前記シード層を除去することは前記第1層と前記第2層をウェットエッチングによって除去することを含み、前記ウェットエッチングに用いられるエッチング液は過酸化水素と硫酸を含む水溶液である。
【請求項4】
請求項1のプリント配線板の製造方法であって、前記合金中の銅の含有率は90at%より大きい。
【請求項5】
請求項1のプリント配線板の製造方法であって、前記特定卑金属はアルミニウムである。
【請求項6】
請求項1のプリント配線板の製造方法であって、前記第2層の銅の含有率は99at%以上である。
【請求項7】
請求項1のプリント配線板の製造方法であって、前記樹脂絶縁層は樹脂と無機粒子を含み、前記保護膜を除去することの後に前記樹脂を選択的に除去することをさらに含み、前記無機粒子は前記樹脂に部分的に埋まっている第1無機粒子と前記樹脂に完全に埋まっている第2無機粒子を含み、前記第1無機粒子は前記樹脂から突出する第1部分と前記樹脂に埋まっている第2部分で形成され、前記選択的に除去することの後の前記第1面は前記樹脂の上面と前記上面から露出する前記第1部分の露出面で形成されている。
【請求項8】
請求項7のプリント配線板の製造方法であって、前記第1部分の体積と前記第1無機粒子の体積との比は0より大きく0.4以下である。
【請求項9】
請求項7のプリント配線板の製造方法であって、前記選択的に除去することの後の前記第1面の算術平均粗さ(Ra)は0.08μm未満である。
【請求項10】
請求項7のプリント配線板の製造方法であって、前記無機粒子は前記開口の内壁面を形成する第3無機粒子をさらに含み、前記内壁面は前記第3無機粒子と前記樹脂によって形成されており、前記第3無機粒子は平坦部を有し、前記平坦部が前記内壁面を形成する。
【請求項11】
請求項10のプリント配線板の製造方法であって、前記内壁面の算術平均粗さ(Ra)は1.0μm以下である。
【請求項12】
請求項10のプリント配線板の製造方法であって、前記第3無機粒子の形状は球を平面で切断することで得られる。
【請求項13】
請求項12のプリント配線板の製造方法であって、前記第3無機粒子の形状は前記第2無機粒子を平面で切断することで得られる。
【請求項14】
請求項1のプリント配線板の製造方法であって、前記開口の底部の径は20μm以上50μm以下である。
【請求項15】
請求項7のプリント配線板の製造方法であって、前記選択的に除去することにより、前記前記第1部分の前記露出面が露出する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書によって開示される技術は、プリント配線板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、樹脂絶縁層と導体回路を含むプリント配線板を開示している。導体回路は、樹脂絶縁層上に形成される合金層と、合金層上に形成される無電解銅めっき膜と、無電解銅めっき膜上に形成される電解めっき膜を含む。合金層は銅とニッケルの合金、銅とモリブデンの合金、銅とチタンの合金等で形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
[特許文献1の課題]
一般的に、無電解銅めっき膜は大気中で形成される。無電解銅めっき膜は途中基板を溶液に浸漬することで形成される。そのため無電解銅めっき工程では合金層が酸化しやすいと考えられる。合金層が酸化すると、合金層と無電解銅めっき膜間の密着力が低下すると考えられる。プリント配線板が銅合金層と無電解銅めっき膜と電解めっき膜からなるビア導体を有する場合、ビア導体用の開口の径が小さいと、ビア導体と導体回路の接続信頼性が低下すると考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のプリント配線板の製造方法は、導体回路を有する第1導体層上に第1面と前記第1面と反対側の第2面とを有する樹脂絶縁層を形成することと、前記樹脂絶縁層の前記第1面上に保護膜を形成することと、前記樹脂絶縁層を貫通し前記第1導体層に至るビア導体用の開口を形成することと、前記開口内をプラズマによって洗浄することと、前記洗浄することの後に前記樹脂絶縁層から前記保護膜を除去することと、前記樹脂絶縁層の前記第1面上に第2導体層を形成することと、前記開口に前記第1導体層と前記第2導体層を接続するビア導体を形成すること、とを含む。前記第2導体層を形成することは、前記樹脂絶縁層の前記第1面上にシード層を形成することと、前記シード層上にめっきレジストを形成することと、前記めっきレジストから露出する前記シード層上に電解めっき層を形成することと、前記めっきレジストを除去することと、前記電解めっき層から露出する前記シード層を除去すること、とを含む。前記シード層を形成することは、前記第1面上に銅と特定卑金属を含有する合金からなる第1層をスパッタによって形成することと、前記第1層上に銅からなる第2層をスパッタによって形成すること、とを含む。前記特定卑金属は銅以外の卑金属である。
【0006】
本発明の実施形態の製造方法では、第1層と第2層はスパッタで形成される。スパッタは真空中で行われるため、第2層が形成される時、第1層の酸化が起こりがたい。第1層と第2層が十分に密着する。第2層が第1層から剥がれがたい。ビア導体用の開口の径が小さくてもビア導体と第1導体層間の接続信頼性が高い。高い品質を有するプリント配線板が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態のプリント配線板を模式的に示す断面図。
【
図2】実施形態のプリント配線板の一部を模式的に示す拡大断面図。
【
図3】実施形態のプリント配線板の一部を模式的に示す拡大断面図。
【
図4A】実施形態のプリント配線板の製造方法を模式的に示す断面図。
【
図4B】実施形態のプリント配線板の製造方法を模式的に示す断面図。
【
図4C】実施形態のプリント配線板の製造方法を模式的に示す断面図。
【
図4D】実施形態のプリント配線板の製造方法を模式的に示す拡大断面図。
【
図4E】実施形態のプリント配線板の製造方法を模式的に示す断面図。
【
図4F】実施形態のプリント配線板の製造方法を模式的に示す拡大断面図。
【
図4G】実施形態のプリント配線板の製造方法を模式的に示す断面図。
【
図5】実施形態の改変例のプリント配線板を模式的に示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[実施形態]
図1は実施形態のプリント配線板2を示す断面図である。
図2と
図3は実施形態のプリント配線板2の一部を示す拡大断面図である。
図1に示されるように、プリント配線板2は、絶縁層4と第1導体層10と樹脂絶縁層20と第2導体層30とビア導体40とを有する。
【0009】
絶縁層4は樹脂を用いて形成される。絶縁層4はシリカ等の無機粒子を含んでもよい。絶縁層4は、ガラスクロス等の補強材を含んでもよい。絶縁層4は、第3面6(図中の上面)と第3面6と反対側の第4面8(図中の下面)を有する。
【0010】
第1導体層10は絶縁層4の第3面6上に形成されている。第1導体層10は信号配線12とパッド14を含む。図に示されていないが、第1導体層10は信号配線12とパッド14以外の導体回路も含んでいる。第1導体層10は主に銅によって形成される。第1導体層10は、絶縁層4上のシード層10aとシード層10a上の電解めっき層10bで形成されている。シード層10aの厚みは0.5μm未満である。シード層10aは第3面6上の第1層11aと第1層11a上の第2層11bで形成されている。第1層11aの厚みと第2層11bの厚みとの比(第1層の厚み/第2層の厚み)は0.25以上、0.7以下である。第2層11bの厚みは第1層11aの厚みより厚い。第1層11aは銅と特定卑金属を含む合金(銅合金)で形成されている。特定卑金属は銅以外の卑金属である。特定卑金属は例えばアルミニウムである。第2層11bは銅で形成されている。電解めっき層10bは銅で形成されている。第1層11aは絶縁層4に接している。
【0011】
第1層11aを形成している銅合金中の銅の含有率は90at%より大きい。第1層11aの銅合金中の銅の含有率は99at%未満である。銅合金中の銅の含有率は98at%以下である。第2層11bを形成している銅の含有率は99.9at%以上である。第2層11b中の銅の含有率は99.95at%以上であることが好ましい。
【0012】
樹脂絶縁層20は絶縁層4の第3面6と第1導体層10上に形成されている。樹脂絶縁層20は第1面22(図中の上面)と第1面22と反対側の第2面24(図中の下面)を有する。樹脂絶縁層20の第2面24は第1導体層10と対向する。樹脂絶縁層20はパッド14を露出する開口26を有している。開口26の底部の径は20μm以上50μm以下である。樹脂絶縁層20は樹脂80と樹脂80内に分散されている多数の無機粒子90で形成されている。樹脂80はエポキシ系樹脂である。樹脂の例は熱硬化性樹脂と光硬化性樹脂である。無機粒子90は例えばシリカやアルミナである。無機粒子90の平均粒径は0.5μm以下である。樹脂絶縁層20中の無機粒子90の量は75wt%以上である。
【0013】
図1と
図2に示されるように、無機粒子90は、樹脂80に部分的に埋まっている第1無機粒子91と、樹脂80内に埋まっている第2無機粒子92を含む。第1無機粒子91と第2無機粒子92の形は球である。
図2に示されるように、第1無機粒子91は、樹脂80から突出する第1部分91aと樹脂80に埋まっている第2部分91bで形成されている。樹脂絶縁層20の第1面22は樹脂80の上面と樹脂80の上面から露出する第1部分91aの露出面で形成されている。
【0014】
第1部分91aの体積と第1無機粒子91の体積との比R(第1部分の体積/第1粒子の体積)は0より大きく0.4以下である。比Rは0.2以下であることが好ましい。比Rは0.1以下であることがより好ましい。比Rは0.05以下であることが最も好ましい。樹脂80から第1部分91aが突出すると樹脂絶縁層20の第1面22が僅かな凹凸を有する。しかし樹脂80の上面は荒らされていない。そのため第1面22は凹部をほぼ有していない。第1面22の算術平均粗さ(Ra)は0.08μm未満である。第1面22のRaは0.05μm以下であることが好ましい。第1面22のRaは0.03μm以下であることがより好ましい。
【0015】
図1と
図3に示されるように、無機粒子90は、開口26の内壁面27を形成する第3無機粒子93をさらに含む。第3無機粒子93の形状は球を平面で切断することで得られる。第3無機粒子93の形状は第2無機粒子92を平面で切断することで得られる。第3無機粒子93の形状と第2無機粒子92の形状は異なる。第3無機粒子93は平坦部93aを有する。平坦部93aは内壁面27を形成する。内壁面27は樹脂80と平坦部93aで形成されている。平坦部93aと内壁面27を形成する樹脂80の面は、ほぼ共通な面を形成する。内壁面27を形成する樹脂80上に凹凸が形成されない。内壁面27を形成する樹脂80の面はほぼ平滑である。平坦部93aの露出面(内壁面27を形成する面)上に凹凸が形成されない。平坦部93aの露出面は平滑である。内壁面27は平滑に形成される。内壁面27の算術平均粗さ(Ra)は1.0μm以下である。
【0016】
図1に示されるように、第2導体層30は樹脂絶縁層20の第1面22上に形成されている。第2導体層30は第1信号配線32と第2信号配線34とランド36を含む。図に示されていないが、第2導体層30は第1信号配線32と第2信号配線34とランド36以外の導体回路も含んでいる。第1信号配線32と第2信号配線34はペア配線を形成している。第1信号配線32と第2信号配線34は隣り合っている。
図2に示されるように、第1信号配線32と第2信号配線34との間の間隔D1は1.5μm以上10μm以下である。間隔D1は1.5μm以上8μm以下であることが好ましい。
【0017】
第2導体層30は主に銅によって形成される。第2導体層30は、第1面22上のシード層30aとシード層30a上の電解めっき層30bで形成されている。シード層30aは第1面22上の第1層31aと第1層31a上の第2層31bで形成されている。シード層30aの厚みは0.5μm未満である。第1層31aの厚みと第2層31bの厚みとの関係と第1層11aの厚みと第2層11bの厚みとの関係は同様である。第1層31aと第2層31bは第2導体層30を形成し、第1層11aと第2層11bは第1導体層10を形成する。第1層31aは銅と特定卑金属を含む合金(銅合金)で形成されている。特定卑金属は銅以外の卑金属である。特定卑金属は例えばアルミニウムである。第2層31bは銅で形成されている。電解めっき層30bは銅で形成されている。第1層31aは第1面22に接している。
【0018】
第1層31aを形成している銅合金中の銅の含有率は90at%より大きい。第1層31aの銅合金中の銅の含有率は99at%未満である。銅合金中の銅の含有率は98at%以下である。第2層31bを形成している銅の含有率は99.9at%以上である。第2層31b中の銅の含有率は99.95at%以上であることが好ましい。
【0019】
ビア導体40は開口26内に形成されている。ビア導体40は第1導体層10と第2導体層30を接続する。
図1ではビア導体40はパッド14とランド36を接続する。ビア導体40はシード層30aとシード層30a上の電解めっき層30bで形成されている。ビア導体40を形成するシード層30aと第2導体層30を形成するシード層30aは共通である。第1層31aは内壁面27に接している。
【0020】
図に示されないが、プリント配線板2の各辺の長さは50mm以上である。各辺の長さは100mm以上であることが好ましい。各辺の長さは250mm以下である。
【0021】
[実施形態のプリント配線板2の製造方法]
図4A~
図4Gは実施形態のプリント配線板2の製造方法を示す。
図4A~
図4Cと
図E、
図4Gは断面図である。
図4Dと
図4Fは拡大断面図である。
図4Aは絶縁層4と絶縁層4の第3面6上に形成されている第1導体層10を示す。第1導体層10はセミアディティブ法によって形成される。第1層11aと第2層11bはスパッタで形成される。第1層11aと第2層11bは真空中で形成される。電解めっき層10bは電解めっきで形成される。
【0022】
図4Bに示されるように、絶縁層4と第1導体層10上に樹脂絶縁層20と保護膜50が形成される。樹脂絶縁層20の第2面24が絶縁層4の第3面6と対向している。樹脂絶縁層20の第1面22上に保護膜50が形成されている。樹脂絶縁層20は樹脂80と無機粒子90(第2無機粒子92)を有する。無機粒子90は樹脂80内に埋まっている。
【0023】
保護膜50は樹脂絶縁層20の第1面22を完全に覆っている。保護膜50の例は、ポリエチレンテレフタレート(PET)製のフィルムである。保護膜50と樹脂絶縁層20との間に離型剤が形成されている。
【0024】
図4Cに示されるように、保護膜50の上からレーザ光Lが照射される。レーザ光Lは保護膜50と樹脂絶縁層20を同時に貫通する。第1導体層10のパッド14に至るビア導体用の開口26が形成される。レーザ光Lは例えばUVレーザ光、CO2レーザ光である。開口26によりパッド14が露出される。開口26が形成される時、第1面22は保護膜50で覆われている。そのため、開口26が形成される時、樹脂が飛散しても、第1面22に樹脂が付着することが抑制される。
【0025】
図4Dは、レーザ光照射後の開口26の内壁面27bを示す。内壁面27bは樹脂80と樹脂80から突出している無機粒子90で形成されている。内壁面の形状を制御するため、レーザ光照射後の内壁面27bは処理される。樹脂80から突出している無機粒子90を選択的に除去することが好ましい。これにより、無機粒子90から第3無機粒子93が形成される。例えば、レーザ光照射後の内壁面27bを薬品で処理することで、樹脂80から突出している無機粒子90が選択的に除去される。あるいは、レーザ光照射後の内壁面27bをプラズマで処理することで、樹脂80から突出している無機粒子90が選択的に除去される。選択的に除去することは、無機粒子90のエッチング速度が樹脂80のエッチング速度より大きいことを含む。例えば、両者のエッチング速度差は10倍以上である。あるいは、両者のエッチング速度差は50倍以上である。あるいは、両者のエッチング速度差は100倍以上である。レーザ光照射後の内壁面27bを処理することで、平坦部93a(
図3参照)を有する第3無機粒子93が得られる。レーザ光照射後の内壁面27bを処理するための条件を制御することで、内壁面27の形状を制御することができる。条件の例は、温度、濃度、時間、ガスの種類や圧力である。無機粒子90のエッチング速度と樹脂のエッチング速度が制御される。
【0026】
樹脂絶縁層20にレーザ光Lを照射することで、樹脂80に埋まっている第2無機粒子92の一部がレーザ光照射後の内壁面27bを形成する。レーザ光照射後の内壁面27bを形成する第2無機粒子92は、樹脂80から突出している突出部分Pと樹脂80に埋まっている部分Eで形成される。レーザ光照射後の内壁面27bが処理される。例えば、四フッ化メタンを含むガスのプラズマで内壁面27bが処理される。突出部分Pが選択的に除去され、実施形態の内壁面27(
図1、
図3)が形成される。第2無機粒子92から第3無機粒子93が形成される。突出部分Pを選択的に除去することで、平坦部93aを有する第3無機粒子93が形成される。平坦部93aは平面である。球の形を持つ第2無機粒子92が平面で切断されると、第3無機粒子93の形状が得られる。内壁面27は平坦部93aと樹脂80の面80aで形成される。平坦部93aの露出面93bと樹脂80の面80aはほぼ同一平面上に位置する。例えば、スパッタで内壁面27b上にシード層30aが形成されると、突出部分Pはスパッタ膜の成長を阻害する。例えば、内壁面27b上に連続しているシード層30aが形成されない。あるいは、シード層30aの厚みを大きくしなければならない。微細な導体回路を形成することができない。実施形態では、突出部分Pが除去される。スパッタで形成されるシード層30aの厚みを薄くできる。スパッタで形成されるシード層30aの厚みが薄くても、連続しているシード層30aが得られる。シード層30aの厚みは0.05μm以上、0.5μm未満である。
【0027】
内壁面27上に凹凸が形成されない。内壁面27は平滑に形成される。レーザ光照射後の内壁面27bを処理するための条件を制御することで、凹凸の大きさが制御される。
【0028】
開口26内が洗浄される。開口26内を洗浄することにより開口26形成時に発生する樹脂残渣が除去される。開口26内の洗浄はプラズマによって行われる。即ち洗浄はドライプロセスで行われる。洗浄はデスミア処理を含む。樹脂絶縁層20の第1面22は保護膜50で覆われているためプラズマの影響を受けない。この時点で樹脂絶縁層20の第1面22には凹凸が形成されない。第1面22に無機粒子90が露出しない。第1面22は荒らされていない。
【0029】
レーザ光照射後の内壁面27bを処理することが開口26内を洗浄することを含む場合、開口26内を洗浄することを削除することができる。レーザ光照射後の内壁面27bをプラズマで処理することで開口26内が洗浄されると、レーザ光照射後の内壁面27bをプラズマで処理することは、開口26内をプラズマで洗浄することを兼ねる。
【0030】
図4Eに示されるように、開口26内を洗浄することの後に、樹脂絶縁層20から保護膜50が除去される。レーザ光照射後の内壁面27bを処理することが開口26内を洗浄することを含む場合、レーザ光照射後の内壁面27bを処理することの後に、樹脂絶縁層20から保護膜50が除去される。レーザ光照射後の内壁面27bが処理される時、保護膜50は樹脂絶縁層20の第1面22を覆っている。
【0031】
保護膜50の除去後、樹脂絶縁層20の第1面22がクリーニングされる。第1面22がドライエッチングされる。ドライエッチングはアルゴンガスを用いたスパッタリング(アルゴンスパッタリング)によって行われる。
図4F(a)(b)はドライエッチング前後の樹脂絶縁層20の第1面22を模式的に示す。
図4F(a)(b)に示されるように、ドライエッチングによって樹脂絶縁層20を形成する樹脂80が20nm程度除去される。例えば、保護膜50を樹脂絶縁層20に接着するための接着材が除去される。ドライエッチングによって、樹脂80が選択的に除去される。樹脂80の厚みが薄くなる。無機粒子90(第2無機粒子92)の一部は、ドライエッチングによって部分的に樹脂80の上面から露出する。樹脂80に埋まっている第2無機粒子92を樹脂80の上面から露出することで、第1無機粒子91が得られる。第1無機粒子91は第2無機粒子92から形成される。第1無機粒子91の形と第2無機粒子92の形は同じである。両者の形は球である。
図4F(b)に示されるように、第1無機粒子91は、樹脂80から突出する第1部分91aと樹脂80に埋まっている第2部分91bで形成されている。樹脂絶縁層20の第1面22は樹脂80の上面80Rと樹脂80の上面80Rから突出している第1部分91aの露出面91aRで形成されている。ドライエッチングによって第1部分91aの露出面91aRが露出する。樹脂絶縁層20の第1面22は荒らされていない。そのため第1面22には凹部がほぼ形成されない。
【0032】
比Rは、例えば、
図4F(b)に示される第1無機粒子91の断面図を用いて算出される。
図4F(b)は上面80Rに垂直な面で樹脂絶縁層20を切断することで得られる。
図4F(b)には、第2導体層30が省略されている。
図4F(b)中の第1無機粒子91上に第2導体層30が形成されている。
図4F(b)中の露出面91aRは第2導体層30で覆われている。
図4F(b)を用いて、第1部分91aの断面積91aSが求められる。同様に、第1無機粒子91の断面積91Sが求められる。例えば、比Rは断面積91aSと断面積91Sの比(第1部分91aの断面積91aS/第1無機粒子91の断面積91S)で代表される。例えば、比Rが評価される時、50個の第1無機粒子91が観察される。50個の第1無機粒子91が比Rを満足する。
【0033】
図4Gに示されるように、樹脂絶縁層20の第1面22上にシード層30aが形成される。シード層30aはスパッタによって形成される。シード層30aの形成はドライプロセスで行われる。第1層31aが第1面22上にスパッタで形成される。同時に、開口26から露出する内壁面27とパッド14上に第1層31aがスパッタで形成される。第1面22上には凹部がほとんど形成されていない。そのため、第1面22上の第1層31aはほぼ平坦に形成される。その後、第1層31a上に第2層31bがスパッタで形成される。第2層31bはほぼ平坦に形成される。第1層31aと第2層31bは真空中で形成される。シード層30aは開口26から露出するパッド14の上面と開口26の内壁面27にも形成される。第1層31aは銅と特定卑金属(アルミニウム)を含む合金で形成される。第2層31bは銅で形成される。
【0034】
第1面22は凹部を有していない。内壁面27は平滑に形成されている。そのためスパッタ膜(第1層31a、第2層31b)の厚みが薄くても連続するシード層30aを形成することができる。その結果、微細な配線を形成することができる。
【0035】
シード層30a上にめっきレジスト(図示しない)が形成される。めっきレジストは、第1信号配線32と第2信号配線34とランド36(
図1)を形成するための開口を有する。第1面22が凹部を有すると、その凹部に起因する空気がめっきレジストとシード層30a間に閉じ込められやすい。しかしながら、実施形態では、第1面22は凹部をほとんど有していない。そのため、第1面22上のシード層30aはほぼ平坦に形成される。シード層30aがほぼ凹部を有さない。めっきレジストとシード層30aの間に空気が残りがたい。めっきレジストとシード層30a間の接触面積が大きい。第1信号配線32と第2信号配線34間の空間を形成するためのめっきレジストの幅が10μm以下であっても、めっきレジストがシード層30aの上面から剥がれがたい。実施形態によれば、めっきレジストの幅が3μm以上、8μm以下であっても、めっきレジストをシード層30a上に形成することができる。めっきレジストの幅が6μm以下であっても、めっきレジストがシード層30aから剥がれ難い。
【0036】
めっきレジストから露出するシード層30a上に電解めっき層30bが形成される。電解めっき層30bは銅で形成される。電解めっき層30bは開口26を充填する。第1面22上のシード層30aと電解めっき層30bによって、第1信号配線32と第2信号配線34とランド36が形成される。第2導体層30が形成される。開口26内のシード層30aと電解めっき層30bによって、ビア導体40が形成される。ビア導体40は、パッド14とランド36を接続する。第1信号配線32と第2信号配線34はペア配線を形成する。
【0037】
めっきレジストが除去される。電解めっき層30bから露出するシード層30aが除去される。シード層30aはウェットエッチングによって除去される。ウェットエッチングに用いられるエッチング液は過酸化水素水と硫酸を含む水溶液である。ウェットエッチングにより第1層31aと第2層31bは同時に除去される。第2導体層30とビア導体40は同時に形成される。実施形態のプリント配線板2(
図1)が得られる。
【0038】
実施形態のプリント配線板2(
図1~
図3)では、樹脂絶縁層20の第1面22は樹脂80の上面80Rと樹脂80の上面80Rから露出する第1部分91aの露出面91aRで形成されている。第1面22が凹部を有していない。そのため、樹脂絶縁層20上にスパッタによってシード層30aが形成される場合、スパッタ膜の厚みが薄くても連続するシード層30aを形成することができる。シード層30aは薄く形成される。シード層30aが除去される時、エッチング量が少ない。そのため、電解めっき層30bのエッチング量が少ない。第1信号配線32と第2信号配線34を有する第2導体層30が設計値通りの幅を有する。微細な配線が形成される。高い品質を有するプリント配線板2が提供される。
【0039】
実施形態のプリント配線板2では、開口26の内壁面27は第3無機粒子93の平坦部93aと樹脂80によって形成される。平坦部93aと内壁面27を形成する樹脂80の面80aは共通な面を形成する。内壁面27は平滑に形成される。そのため、開口26の内壁面27上に均一な厚みのシード層30aが形成される。シード層30aは薄く形成される(
図4G)。シード層30aが除去される時、エッチング量が少ない。そのため、電解めっき層30bのエッチング量が少ない。第1信号配線32と第2信号配線34を有する第2導体層30が設計値通りの幅を有する。微細な配線が形成される。高い品質を有するプリント配線板2が提供される。
【0040】
実施形態のプリント配線板2では、シード層30aの第1層31aと第2層31bはスパッタで形成される(
図4G)。スパッタは真空中で行われるため、第2層31bが形成される時、第1層31aの酸化が起こりがたい。第1層31aと第2層31bが十分に密着する。第2層31bが第1層31aから剥がれがたい。開口26の径が小さくてもビア導体40とパッド14間の接続信頼性が高い。ビア導体40を介する接続抵抗が上昇しがたい。
図4(E)に示されるように、ビア導体40の径(開口26の直径)Dはパッド14上で測定される。径Dは20μm以上、50μm以下である。プリント配線板2の各辺の長さが50mmを超えてもビア導体40を介する接続抵抗が上昇しがたい。プリント配線板2の各辺の長さが100mm以上であっても長期間接続抵抗が上昇しがたい。高い品質を有するプリント配線板2が提供される。
【0041】
[実施形態の別例1]
実施形態の別例1では、特定卑金属は、チタン、ニッケル、クロム、スズ、カルシウムの中から選ばれる。
【0042】
[実施形態の別例2]
実施形態の別例2では、シード層10a、30aの第1層11a、31aは、銅と第2元素で形成されている。第2元素は、ケイ素、アルミニウム、チタン、ニッケル、クロム、炭素、酸素、スズ、カルシウムの中から選ばれる。第1層11a、31aは銅を含む合金で形成される。第2層11b、31bは銅で形成される。第2層11b、31bを形成している銅の量は99.9at%以上である。99.95at%以上が好ましい。
【0043】
[実施形態の改変例]
図5は実施形態の改変例を示す。
図5に示されるように、改変例のプリント配線板102は絶縁層4上にビルドアップ層500を有する。ビルドアップ層500は複数の導体層と複数の樹脂絶縁層を有する。導体層と樹脂絶縁層は交互に積層される。ビルドアップ層500は5層の導体層と4層の樹脂絶縁層を有する。5層の導体層は第1導体層10と第2導体層30、第3導体層130、第4導体層230、第5導体層330を含む。第1導体層10と第2導体層30は実施形態と同様である。第3導体層130と第4導体層230、第5導体層330は、第2導体層30と共通する構成(シード層と電解めっき層)を有する。第3導体層130と第4導体層230、第5導体層330は、第2導体層30と同様の方法によって形成される。
【0044】
4層の樹脂絶縁層は第1樹脂絶縁層20と第2樹脂絶縁層120(第2層間樹脂絶縁層)、第3樹脂絶縁層(第3層間樹脂絶縁層)220、第4樹脂絶縁層(第4層間樹脂絶縁層)320を含む。第1樹脂絶縁層20は実施形態の樹脂絶縁層20と同様である。第2樹脂絶縁層120と第3樹脂絶縁層220、第4樹脂絶縁層320は、第1樹脂絶縁層20と共通する構成(樹脂と無機粒子)を有する。第1樹脂絶縁層20と第2樹脂絶縁層120、第3樹脂絶縁層220、第4樹脂絶縁層320は実施形態の樹脂絶縁層20と同様の方法で形成される。第1樹脂絶縁層20と第2樹脂絶縁層120、第3樹脂絶縁層220、第4樹脂絶縁層320は開口26、126、226、326を有している。
【0045】
ビルドアップ層500は4個のビア導体40、140、240、340を有する。ビア導体40は開口26内に形成されており、第1導体層10と第2導体層30を接続する。ビア導体140は開口126内に形成されており、第2導体層30と第3導体層130を接続する。ビア導体240は開口226内に形成されており、第3導体層130と第4導体層230を接続する。ビア導体240は開口226内に形成されており、第3導体層130と第4導体層230を接続する。ビア導体340は開口326内に形成されており、第4導体層230と第5導体層330を接続する。3個のビア導体140、240、340はビア導体40の直上に積層されている。4個のビア導体40、140、240、340はスタックビアを形成する。
【0046】
改変例のプリント配線板102は5層の導体層10、30、130、230、330と、4個のビア導体40、140、240、340で形成されるスタックビアを含んでいる。プリント配線板102の使用に伴って最も下のビア導体40と第1導体層10(パッド14)の接続部分に大きい応力が加わる。しかしながら、改変例では、ビア導体40と第1導体層10(パッド14)間の接続信頼性は高い。ビア導体40を介する接続抵抗が上昇しがたい。
【0047】
[改変例の別例]
ビルドアップ層500は5層以上の導体層を有する。ビルドアップ層500は10層以上の導体層を有することが好ましい。導体層の数は20以下である。
【符号の説明】
【0048】
2 :プリント配線板
4 :絶縁層
10 :第1導体層
20 :樹脂絶縁層
22 :第1面
24 :第2面
26 :開口
27 :内壁面
30 :第2導体層
30a :シード層
31a :第1層
31b :第2層
40 :ビア導体
80 :樹脂
90 :無機粒子
91 :第1無機粒子
91a :第1部分
91b :第2部分
92 :第2無機粒子
93 :第3無機粒子