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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173032
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】回転機
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/20 20060101AFI20231130BHJP
   H02K 9/19 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
H02K1/20 C
H02K9/19 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022085008
(22)【出願日】2022-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】000002059
【氏名又は名称】シンフォニアテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】小林 鷹謙
【テーマコード(参考)】
5H601
5H609
【Fターム(参考)】
5H601AA16
5H601CC11
5H601DD01
5H601DD09
5H601DD11
5H601DD30
5H601EE26
5H601GA22
5H601GE02
5H601GE14
5H609BB01
5H609BB19
5H609PP02
5H609PP06
5H609PP09
5H609QQ05
5H609QQ10
5H609RR26
5H609RR36
5H609RR46
(57)【要約】
【課題】ステータ径内側への冷却液漏れを抑制し、製造時の施工性を良好とする。
【解決手段】ステータにおけるステータスロット411に冷却液が通されることで、前記ステータスロット411が有する空間に設けられたステータコイル412を冷却できる回転機1において、前記ステータスロット411の径内端寄りに設けられ、前記ステータの径内側の空間に対して前記ステータスロット411が有する空間Sを液密に隔てるものであって、軸方向に沿って延びる隔壁部7を備え、前記隔壁部7は、径方向の内外方向に配置された、内層部71と外層部72の少なくとも2層構成とされたものであって、前記ステータコア41に対して接着されずに当接しており、径外側の面が前記冷却液の圧力を直接的または間接的に受ける受圧面73として構成されており、前記内層部71の硬度は、前記外層部72の硬度よりも小さい。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータを構成するステータコアに形成されたステータスロットに冷却液が通されることで、前記ステータスロットが有する空間に設けられたステータコイルを冷却できる回転機において、
前記ステータスロットの径内端寄りに設けられ、前記ステータの径内側の空間に対して前記ステータスロットが有する空間を液密に隔てるものであって、軸方向に沿って延びる隔壁部を備え、
前記隔壁部は、径方向の内外方向に配置された、内層部と外層部の少なくとも2層構成とされたものであって、前記ステータコアに対して接着されずに当接しており、径外側の面が前記冷却液の圧力を直接的または間接的に受ける受圧面として構成されており、
前記内層部の硬度は、前記外層部の硬度よりも小さいことを特徴とする、回転機。
【請求項2】
前記ステータコアは、複数の電磁鋼板が軸方向に積層されて構成されており、
前記外層部は硬質樹脂から形成されており、前記内層部は、前記受圧面が受ける冷却液の圧力に応じて、前記ステータコアにおける前記複数の電磁鋼板の境界に入り込むように変形する軟質樹脂から形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の回転機。
【請求項3】
前記隔壁部の前記受圧面よりも径外側に配置される加圧部材をさらに備え、
前記加圧部材は、前記受圧面と前記ステータスロットの内面との間に介在することで、前記内層部を径方向に圧縮させることを特徴とする、請求項1に記載の回転機。
【請求項4】
前記内層部のショアA硬度が40~60であり、
前記外層部のショアA硬度が90~100であることを特徴とする、請求項1に記載の回転機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータまたは発電機のように、電力と回転力とを変換するために用いる回転機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
回転機における、冷却液を内部で循環することによる冷却構造が特許文献1に記載されている。この回転機(特許文献1では「回転電機」と称している)は、ロータと、ステータと、これらを収容するケースと、ケース内をロータ側とステータ側とに仕切る仕切部材と、仕切られたステータ側であるステータ室に対して冷却液の給排を行う機構とを備える。特許文献1の仕切部材は、シール材の塗布により液密に仕切られている。
【0003】
しかし、特許文献1の構成では、仕切部材を設ける際にシール材の塗布を要するため、製造時の施工性に改良の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6107523号公報(0057段落、図2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明は、ステータ径内側への冷却液漏れを抑制した回転機であって、製造時の施工性が良好な回転機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ステータを構成するステータコアに形成されたステータスロットに冷却液が通されることで、前記ステータスロットが有する空間に設けられたステータコイルを冷却できる回転機において、前記ステータスロットの径内端寄りに設けられ、前記ステータの径内側の空間に対して前記ステータスロットが有する空間を液密に隔てるものであって、軸方向に沿って延びる隔壁部を備え、前記隔壁部は、径方向の内外方向に配置された、内層部と外層部の少なくとも2層構成とされたものであって、前記ステータコアに対して接着されずに当接しており、径外側の面が前記冷却液の圧力を直接的または間接的に受ける受圧面として構成されており、前記内層部の硬度は、前記外層部の硬度よりも小さいことを特徴とする、回転機である。
【0007】
この構成によれば、受圧面が冷却液の圧力を直接的または間接的に受け、その圧力により、外層部の硬度よりも小さい内層部がステータコアに押し付けられる。しかも、隔壁部はステータコアに対して接着されずに当接しているから、内層部が径方向に制限なく変位できる。このため、冷却液の圧力に応じた強さでステータコアへの押し付けがなされる。従って、ステータスロットからステータの径内側空間へ通じる隙間が塞がれ、冷却液が漏れにくくなる。
【0008】
また、前記ステータコアは、複数の電磁鋼板が軸方向に積層されて構成されており、前記外層部は硬質樹脂から形成されており、前記内層部は、前記受圧面が受ける冷却液の圧力に応じて、前記ステータコアにおける前記複数の電磁鋼板の境界に入り込むように変形する軟質樹脂から形成されているものとできる。
【0009】
この構成によれば、ステータコアは複数の電磁鋼板が積層されて構成されていることが一般的であるが、このようなステータコアに対して内層部が入り込むように変形することで密着することにより、冷却液漏れを有効に抑制できる。
【0010】
また、前記隔壁部の前記受圧面よりも径外側に配置される加圧部材をさらに備え、前記加圧部材は、前記受圧面と前記ステータスロットの内面との間に介在することで、前記内層部を径方向に圧縮させるものとできる。
【0011】
また、この構成によれば、加圧部材により、冷却液を通す前の状態で内層部を圧縮状態にできる。このため、冷却液の圧力が小さい場合でも、冷却液漏れを有効に抑制できる。
【0012】
また、前記内層部のショアA硬度が40~60であり、前記外層部のショアA硬度が90~100であるものとできる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、受圧面が冷却液の圧力を直接的または間接的に受けることで冷却液が漏れにくくなる。このため、ステータ径内側への冷却液漏れを抑制できる。従って、隔壁部をステータコアに対して接着しなくてよいので、製造時の施工性が良好である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る回転機(モータ)の外観を示す斜視図である。
図2】前記回転機の回転中心位置での断面図である。
図3図2のIII-III矢視での断面図である。
図4図3のIV囲み部分の拡大図である。
図5】本実施形態におけるステータの一部である冷却液分配部材を単体で示す斜視図である。
図6】前記回転機を構成する隔壁部を示す斜視図である。
図7図4のVI囲み部分の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明につき、一実施形態としてモータ1を例示し、図面とともに以下説明を行う。以下の説明における「径方向」及び「周方向」は、モータ1における方向である。また、「軸方向」は、回転軸2の延びる方向に対応している。個々の部材に関して特記した説明以外では、これらの方向により説明を行う。
【0016】
なお、本発明の対象である回転機は、電力と回転力とを変換するために用いる装置であって、例示するモータ1の場合、電力が入力されて回転力を出力する。また発電機の場合、回転力が入力されて電力を出力する。変換は一方向であってもよいし、回生電力を取り出せるよう構成されたモータのように、変換が双方向であり、作用に係る場面によって変わるものであってもよい。
【0017】
本実施形態に係る回転機としてのモータ1は、図1に示すような外観を有しており、図2に示すように、回転可能に支持された回転軸2と、回転軸2周りに一体的に配置されたロータ(回転子)3と、ロータ3に対して径方向のエアギャップをもって配置されたステータ(固定子)4とを備えて構成されている。ロータ3及びステータ4は筐体5の内部に配置されていて、回転軸2の一部は筐体5から突出している。回転軸2は一対のベアリング21によって、筐体5に回転自在な状態で支持されている。なお、回転軸2とロータ3に関しては従来通りの構成であることから、詳しい説明は行わない。図1に示した形態例では、回転軸2を水平方向とするため、筐体5が基台6に支持されることで固定されているが、基台6を設けることは必須ではなく、種々の支持形態とできる。
【0018】
筐体5の側周面に設けられている穴は、筐体5を径方向に貫通しており、冷却油等の冷却液を筐体5の内部に供給するための供給穴51である。また、筐体5の端面に設けられている穴は、筐体5を軸方向に貫通しており、冷却液を筐体5の内部から排出するための排出穴52である。図2に示すように排出穴52は、モータ1の軸方向の一端側端面と他端側端面の2箇所に設けられている。供給穴51及び排出穴52には図示しない冷却液配管が接続され、図示しないポンプ等の加圧手段によって、モータ1に対して出入りする冷却液の流れを形成できる。加圧手段は、モータ1の運転時に作動する。加圧手段により筐体5の内部への供給がされることから、冷却液は圧力のかかった状態で供給される。供給圧力は、例えば0.2~0.4MPaに設定される。
【0019】
ステータ4はステータコア41から構成されている。ステータコア41は、図示しない複数の電磁鋼板が軸方向に積層されて構成されている。なお、ステータ4の軸方向中央には、冷却液分配部材42が1枚挿入されている。ステータコア41には空間を有するステータスロット411が、軸方向に延びるようにして、周方向に複数形成されている。図4に示すように(図3も参照)、複数のステータスロット411~411は各々同一形状とされており、周方向に均等に配置されている。モータ1の軸方向略中央位置では、周方向に隣り合うステータスロット411,411間に空間が設けられており、その空間に冷却液が流される。各ステータスロット411の空間には、電力が供給される(発電機の場合は電力が発生する)ステータコイル412が設けられている。各ステータスロット411に、前述のようにモータ1の外部から供給された冷却液が通されることで、前記空間に設けられたステータコイル412のうち少なくとも一部を冷却液に曝露させることで、発熱源であるステータコイル412を冷却できる。
【0020】
本実施形態の冷却液分配部材42の外周縁には、図5に示すように、複数の外縁突起421~421が周方向に一定間隔で設けられている。隣り合う外縁突起421,421の間には空間が形成されて外側流路422とされている。外側流路422は複数の外縁突起421~421の径内位置で、周方向に連続するように合流している。また、冷却液分配部材42におけるステータスロット411は外縁突起421と同じ高さで突出している。周方向で隣り合うステータスロット411,411の間には複数の内側流路423~423が形成されている。
【0021】
筐体5の内部における冷却液の流れは、図2及び図4に矢印で示した流れFである。図示した流れFは主な流れの一例を示したものである。供給穴51から導入された冷却液は、各図に示すように軸方向における略中央部(図2のIII-IIIの位置に対応)にて周方向に流れる。そして冷却液分配部材42の、複数の外側流路422~422を抜けて、複数の内側流路423~423を径内方向に流れて、軸方向の一方側と他方側に分かれる。この際、後述する隔壁部7により形成された空間Sに冷却液が通される。その後、冷却液はステータ4から離れて排出穴52からモータ1の外部に排出される。
【0022】
このように、本実施形態ではモータ1の軸方向における略中央から冷却液が導入され、両端から排出される。ここで、例えば冷却液をモータの軸方向一方側から導入して他方側に排出する構成を比較例とする。この比較例では、モータの一方側で既に温まってしまった冷却液を他方側に送ることになるため、排出側は導入側に対して冷却力が低下してしまうから、モータ内で冷却ムラ(冷却液の温度ムラ)が生じる。これに対して本実施形態では、冷却液の導入から排出までの軸方向の距離が比較例の約半分になるため、モータ1の両端まで均等に冷却することが可能となる。
【0023】
ステータスロット411の径内端寄りには隔壁部7が設けられている。この隔壁部7は、ステータ4のロータ3に面した径内側空間に対して連通し、ステータスロット411が有する空間を液密に隔てるものであって、軸方向に沿って延びている。本実施形態の隔壁部7は、ステータスロット411の軸方向の一端部から他端部までの長さに対応して切れ目なく連続した細長い形態とされている。隔壁部7はステータコア41とは別体とされており、モータ1の製造時に、ステータスロット411が有する前記空間に軸方向から差し込まれる。
【0024】
隔壁部7が設けられたことにより、ステータスロット411におけるステータコイル412と隔壁部7との間には、径方向に閉じた空間Sが形成される。この空間Sは、軸方向における略中央部が周方向に開放されていて(図4及び図7参照)、そこが冷却液の入口となる。また、軸方向における両端部が軸方向に開放されていて、そこが冷却液の出口となる。このように形成された空間Sに、図2及び図4に矢印で示したように冷却液が通される。なお、冷却液が通される前記空間Sは、前述のように軸方向の両端部で開放されている。しかし、モータ1の運転時にはロータ3が回転しているため、図1及び図2に示すように回転軸2が水平に配置される場合において、ロータ3とステータ4との間のエアギャップに冷却液が回り込んでしまう流れは生じない。図7に示すように、ステータスロット411は隔壁部7を当接させるために当接部4111が設けられている。本実施形態ではステータスロット411の内面において段差状とされた部分の一部が当接部4111である。当接部4111には隔壁部7の面取部711が当接する。
【0025】
隔壁部7はステータコア41に対して、径方向に接離可能に当接する。つまり、従来とは異なり、隔壁部7はステータコア41に対して接着されていない。隔壁部7は、不導体から形成されていて、径方向の内外方向に配置された、内層部71と外層部72の少なくとも2層構成とされたものである。各層は例えば接着により一体化されている。隔壁部7の単体の形態例を図5に示す。本実施形態の外層部72は、幅寸法が一定幅で細長い平板状体とされている。内層部71は、外層部72と同様に、幅寸法が一定幅で細長い平板状体とされている。内層部71、外層部72とも、厚み方向に冷却液が透過しない形状及び材質とされている。内層部71の幅寸法及び長手寸法は、外層部72と同一とされている。内層部71における径内側の周方向両端には面取部711が形成されている。つまり、径内側の周方向両端の角部には平面が形成されている。図7に示すように、面取部711はステータスロット411の当接部4111と略一致した形状とされている。このため、面取部711はステータスロット411の当接部4111に面接触する。
【0026】
隔壁部7は、ステータコア41に対して接着されずに当接しており、径外側の面が冷却液の圧力を受ける受圧面73として構成されている。本実施形態では、受圧面73は外層部72の一部である。受圧面73は冷却液の圧力を直接的または間接的に受けることができる。本実施形態では、隔壁部7(外層部72)の径外側に後述の加圧部材8が隣接するため、受圧面73は冷却液の圧力を、当接した加圧部材8の径内側の面を介して間接的に受けることになる。
【0027】
内層部71の硬度は、外層部72の硬度よりも小さい。本実施形態では、外層部72は硬質樹脂から形成されている。内層部71は、受圧面73が受ける冷却液の圧力に応じて、ステータコア41における複数の電磁鋼板の境界に入り込むように変形する軟質樹脂から形成されている。なお、「硬質」、「軟質」は相対的な性質の評価であるが、本実施形態において硬質樹脂に期待される機能の一つは、保形性を発揮して冷却液の圧力を軟質樹脂に伝達することである。また、軟質樹脂に期待される機能の一つは、冷却液の圧力に応じてステータコア41に対して押し付けられるように変形できる機能である。本実施形態で用いられる硬質樹脂と軟質樹脂は、一般的に理解される硬質樹脂(例えば、ベークライトやガラスエポキシ等の硬質プラスチック)と軟質樹脂(例えばゴム、シリコン、フッ素樹脂)と一致している。
【0028】
ここで、ステータコア41は複数の平板状である電磁鋼板が積層されて構成されていることが一般的である。前述のように、電磁鋼板の積層方向はモータ1の軸方向(図2における左右方向)である。このように構成されたステータコア41の電磁鋼板の境界には、各電磁鋼板(個々の電磁鋼板)の断面形状における角部が有するアールまたは面取りに起因して、各電磁鋼板の周縁部に露出した凹凸部が形成される。この凹凸形状に追従するように内層部71が変形して密着することによってステータスロット411が液密状態になるため、冷却液漏れを有効に抑制できる。一例として、内層部71のショアA硬度は40~60、外層部72のショアA硬度は90~100に設定することができる(それ以外の硬度設定も可能である)。また、内層部71の厚さは0.5mm~3mmの間で形成され、好ましくは0.8mm~2mmの間で形成され、更に好ましくは1mm~1.5mmの間で形成される。
【0029】
以上、ステータスロット411に隔壁部7を設けることにより、受圧面73が冷却液の圧力を直接的または間接的に受け、その圧力により、外層部72の硬度よりも小さい内層部71がステータコア41に押し付けられる。内層部71のステータコア41への押し付け力は冷却液の圧力に比例する。つまり、冷却液の圧力が大きくなるほど液漏れがしやすくなるのが一般的な理解であるが、本実施形態ではこれと逆に、冷却液の圧力が大きくなるほど前記押し付けの力が大きくなることで、径内側(ロータ3側)への液漏れを有効に防止できる。しかも、隔壁部7はステータコア41に対して接着されずに当接しているから、接着のように変位が拘束されるような構成に対し、内層部71が径方向に制限なく変位できる。このため、冷却液の圧力に応じた強さでステータコア41への押し付けがなされる。従って、ステータスロット411からステータ4の径内側の空間へ通じる隙間が有効に塞がれ、径内側(ロータ3側)に冷却液が漏れにくくなる。その結果、ステータ4の径内側への液漏れを抑制できる。
【0030】
液漏れを抑制できるから、ロータ3とステータ4との間のエアギャップを小さく設計することが可能となり(漏れた冷却液によるエアギャップの阻害を考慮しなくても済む、具体的には、エアギャップ内に漏れた冷却液による攪拌損失を低減するために、エアギャップを大きくする必要が無くなるため)、これに伴い、モータ1を高出力化や高効率化できる。また、冷却液の圧力を大きくできるため、その分、供給液量を増加させて冷却効率を向上できる。
【0031】
そして従来と異なり、隔壁部7をステータコア41に対して接着しなくてよいので製造時の施工性が良好である。また、接着の場合、経年によるシール材の剥がれが懸念されるが、本実施形態では接着をしていないので、隔壁部7をステータコア41との間で、接着部分の剥がれのような経年変化を心配する必要も小さい。
【0032】
本実施形態では、隔壁部7の受圧面73よりも径外側に配置される加圧部材8をさらに備えている。つまり、加圧部材8は隔壁部7とは別体とされている。加圧部材8は例えば隔壁部7の外層部72と同一の材質とできる。加圧部材8の長手寸法は、隔壁部7の長手寸法と略同一とされている。加圧部材8の幅寸法は、図7に示すように、隔壁部7の幅寸法よりも大きくされている。なおこれは、ステータスロット411の周方向寸法が径内側よりも径外側の方が大きく形成されていることに伴うものである。このため寸法関係は、ステータスロット411の形状に応じて変わりうる。
【0033】
加圧部材8を支持するため、ステータスロット411には、加圧部材8の径外側に位置し、周方向で空間側に突出した支持突起4112が形成されている。支持突起4112と隔壁部7の径外端部との間の径方向寸法に対し、加圧部材8の厚み寸法が大きく形成されている。つまり、加圧部材8の配置される空間よりも、加圧部材8の方が大きい。例えばプラスチックハンマー等を用いて、加圧部材8をステータ4の軸方向端部からたたき込むことによって、加圧部材8を支持突起4112と隔壁部7との間に介在させられるが、前述のような大きさの差によって、加圧部材8が「くさび」のように作用して、軟質樹脂製である内層部71が圧縮変形する。これにより隔壁部7を、冷却液の圧力がかかっていない状態でも圧縮変形した予圧状態とできる。この際、受圧面73には加圧部材8の押圧力が常時かかることになる。
【0034】
加圧部材8は、受圧面73とステータスロット411の内面との間に介在することで、隔壁部7の内層部71を径方向に圧縮させ、前記予圧状態とできる。この加圧部材8により、冷却液を通す前の状態で内層部71を圧縮状態にできる。このため、冷却液の圧力が小さいことで、内層部71がステータコア41に押し付けられる力が小さい場合でも、冷却液漏れを有効に抑制できる。
【0035】
以上、本発明につき一実施形態を取り上げて説明してきたが、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0036】
例えば、本発明はインナーロータ型の回転機にも、アウターロータ型の回転機にも適用が可能である。
【0037】
また、前記実施形態の隔壁部7は内外二層構造であったが、三層以上とすることもできる。具体的には、前記実施形態の内層部71と同一素材の部分が、外層部72の全周を取り巻くように位置していてもよい。この場合、受圧面73は、外層部72を取り巻く部分の径外側の面となる。また、内層部71と外層部72を一体化せずに、分離した別体とすることもできる。
【0038】
また、前記実施形態で設けられていた加圧部材8は、省略することもできる。この場合、ステータスロット411の支持突起4112は、隔壁部7に直接当接することになる。また、前記実施形態では、加圧部材8は隔壁部7とは別体とされていたが、加圧部材8を隔壁部7と一体として構成してもよい。
【0039】
また、径外側の面がステータスロット411の空間に露出する場合の隔壁部7の前記空間に面した面、または、加圧部材8を用いる場合に加圧部材8の前記空間に面した面は、受圧面積を増大するために例えば凹凸を形成することもできる。
【0040】
また、内層部71の幅寸法及び長手寸法は、前記実施形態では外層部72と同一とされていたが、例えば幅寸法につき、外層部72よりも内層部71を小さくしてもよい。
【0041】
また、前記実施形態では、内層部71に平面である面取部711を形成していた。しかしこれに限定されず。湾曲面であるアール部を形成することもできる。また、内層部71の断面形状を長方形状とし、径内側を一つの平面とすることもできる。
【0042】
また、内層部71または外層部72が有する硬度は、各部の長手方向で変化させても良いし、幅方向で変化させても良い。
【符号の説明】
【0043】
1 回転機、モータ
2 回転軸
3 ロータ
4 ステータ
41 ステータコア
411 ステータスロット
4111 当接部
4112 支持突起
412 ステータコイル
5 筐体
6 基台
7 隔壁部
71 内層部
72 外層部
73 受圧面
8 加圧部材
S 空間
F 冷却液の流れ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7