(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173047
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】活性エネルギー線硬化性ハードコート剤、ハードコート層、光学部材および電子機器
(51)【国際特許分類】
G02B 1/14 20150101AFI20231130BHJP
C08F 290/06 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
G02B1/14
C08F290/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022085027
(22)【出願日】2022-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】石崎 慎治
【テーマコード(参考)】
2K009
4J127
【Fターム(参考)】
2K009AA15
2K009BB28
2K009CC09
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2K009DD05
4J127AA03
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4J127BG051
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4J127CB371
4J127DA06
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4J127EA13
4J127FA08
(57)【要約】
【課題】 透明性、水蒸気バリア性、耐擦傷性、支持体との密着性に優れた活性エネルギー線硬化性ハードコート剤を提供する事である。また、活性エネルギー線硬化性ハードコート剤より形成されたハードコート層とそれを有する光学部材および電子機器を提供すること。
【解決手段】上記課題は、3つ以上の環が縮合した多環式構造と2つ以上の(メタ)アクリロイル基とを有する化合物(A)、6つ以上の(メタ)アクリロイル基を有し重量平均分子量が5000以下である化合物(B)、無機酸化物(C)、および重合開始剤(D)を含む活性エネルギー線硬化性ハードコート剤であって、
活性エネルギー線硬化性ハードコート剤の不揮発分中、前記化合物(A)を50~75質量%、化合物(B)を10~35質量%、無機酸化物(C)を1~20質量%、重合開始剤(D)を0.5~15質量%を含むことを特徴とする活性エネルギー線硬化性ハードコート剤により解決する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
3つ以上の環が縮合した多環式構造と2つ以上の(メタ)アクリロイル基とを有する化合物(A)、6つ以上の(メタ)アクリロイル基を有し重量平均分子量が5000以下である化合物(B)、無機酸化物(C)、および重合開始剤(D)を含む活性エネルギー線硬化性ハードコート剤であって、
活性エネルギー線硬化性ハードコート剤の不揮発分中、前記化合物(A)を50~75質量%、化合物(B)を10~35質量%、無機酸化物(C)を1~20質量%、重合開始剤(D)を0.5~15質量%を含むことを特徴とする活性エネルギー線硬化性ハードコート剤。
【請求項2】
前記化合物(A)が、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレートである請求項1記載の活性エネルギー線硬化性ハードコート剤。
【請求項3】
前記無機酸化物(C)は、粒子径(D50)が10~90nm、かつ粒子径(D99)が150~300nmの酸化アルミニウム微粒子を含む請求項1記載の活性エネルギー線硬化性ハードコート剤。
【請求項4】
請求項1~3記載の記載の活性エネルギー線硬化性ハードコート剤より形成されたハードコート層。
【請求項5】
支持体と、請求項4記載のハードコート層とを有する光学部材。
【請求項6】
請求項5記載の光学部材を具備してなる電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性エネルギー線硬化性ハードコート剤および該ハードコート剤より形成されたハードコート層、光学部材、電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
活性エネルギー線硬化型ハードコート剤は、透明性に優れ、表面硬度が高い特徴を活かし、主にディスプレイ用光学フィルムのハードコート剤として用いられている。近年、ディスプレイの薄型化に伴い各種光学フィルムの薄膜化が進んでいる。このうち、液晶ディスプレイ(LCD)や有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイの光学補償に使用される偏光板に用いられているトリアセチルセルロース(TAC)フィルムは、元来透湿性が高い素材であるため、湿気による部材の劣化が懸念されている。
【0003】
OLEDディスプレイの表示素子は、大気中の水分等による劣化を受けやすく、また素子の作製に高温処理を伴うため、部材としてバリア性と耐熱性を有するガラスが用いられてきた。しかし、近年、市場ではOLEDディスプレイのフレキシブル化が求められている。フレキシブル化において、ガラスの代替となるフレキシブルフィルムは不可欠な部材であるが、それに用いられるフィルムには、水蒸気バリア性が求められるとともに、ディスプレイ作成工程に耐え得る種々の性能が求められる。
このような背景により水蒸気バリア性に優れるフィルムに使用されるハードコート剤の開発が行われている。例えば、特許文献1には、特定脂環構造を有する化合物を含む硬化性組成物が開示されている。また、特許文献2には、水酸基含有水素化石油樹脂および重合性官能基を少なくとも1つ有する化合物を含有する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が開示されている。また、特許文献3には、石油樹脂、アクリル樹脂、及び多官能(メタ)アクリレートモノマーを含有する活性エネルギー線硬化型樹脂組成物が開示されている。
【0004】
しかしながら、これら文献に記載されている硬化性組成物では、ハードコート剤としてディスプレイに求められる耐擦傷性が不十分であり、ハードコート剤を塗布した層と支持体との密着性が不十分であるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006-083225号公報
【特許文献2】特開2004-323751号公報
【特許文献3】特開2017-105916号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、水蒸気バリア性、耐擦傷性、支持体との密着性に優れたハードコート層を形成可能な活性エネルギー線硬化性ハードコート剤を提供することである。また、活性エネルギー線硬化性ハードコート剤より形成されたハードコート層とそれを有する光学部材および電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、本発明に至った。
[1]3つ以上の環が縮合した多環式構造と2つ以上の(メタ)アクリロイル基とを有する化合物(A)、6つ以上の(メタ)アクリロイル基を有し重量平均分子量が5000以下である化合物(B)、無機酸化物(C)、および重合開始剤(D)を含む活性エネルギー線硬化性ハードコート剤であって、
活性エネルギー線硬化性ハードコート剤の不揮発分中、前記化合物(A)を50~75質量%、前記化合物(B)を10~35質量%、無機酸化物(C)を1~20質量%、重合開始剤(D)を0.5~15質量%を含むことを特徴とする活性エネルギー線硬化性ハードコート剤。
[2]また、本発明は、上記化合物(A)が、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレートである[1]に記載の活性エネルギー線硬化性ハードコート剤。
[3]また、本発明は、前記無機酸化物(C)は、粒子径(D50)が10~90nm、かつ粒子径(D99)が150~300nmの酸化アルミニウム微粒子である[1]または[2]に記載の活性エネルギー線硬化性ハードコート剤に関する。
[4]また、本発明は、[1]~[3]いずれかに記載の活性エネルギー線硬化性ハードコート剤より形成されたハードコート層に関する。
[5]また、本発明は、支持体と、[4]に記載のハードコート層とを有する光学部材に関する。
[6]また、本発明は、[5]に記載の光学部材を具備してなる電子機器に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の活性エネルギー線硬化性ハードコート剤によって、光学部材に必要な透明性、水蒸気バリア性、耐擦傷性、および支持体との密着性に優れたハードコート層を形成することができるようになった。従って、上記の性質が求められる光学部材、電子機器が提供できるようになった。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限りこれらの内容に特定されない。尚、本明細書では、「(メタ)アクリル」、「(メタ)アクリロ」、「(メタ)アクリル酸」、「(メタ)アクリレート」、および「(メタ)アクリロイルオキシ」と表記した場合には、特に説明がない限り、それぞれ、「アクリルまたはメタクリル」、「アクリロまたはメタクリロ」、「アクリル酸またはメタクリル酸」、「アクリレートまたはメタクリレート」および「アクリロイルオキシまたはメタクリロイルオキシ」を表すものとする。また、「3つ以上の環が縮合した多環式構造と2つ以上の(メタ)アクリロイル基とを有する化合物(A)」および「6つ以上の(メタ)アクリロイル基を有し重量平均分子量が500~5000である化合物(B)」を、それぞれ「化合物(A)」および「化合物(B)」と略記することがある。
【0010】
<3つ以上の環が縮合した多環式構造と2つ以上の(メタ)アクリロイル基とを有する化合物(A)>
本発明で用いられる3つ以上の環が縮合した多環式構造と2つ以上の(メタ)アクリロイル基とを有する化合物(A)は、3つ以上の環が縮合した多環式構造および2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物であれば特に限定されない。3つ以上の環が縮合した多環式構造としては、例えば、アントラセン骨格、フルオレン骨格等の芳香式縮合環、トリシクロデカン骨格、アダマンタン骨格等の脂環式縮合環、キサンテン骨格、カルバゾール骨格等の複素縮合環等が挙げられる。その中でも硬化後の透明性や水蒸気バリア性の観点で脂環式縮合環が好ましく、トリシクロデカン骨格がより好ましい。トリシクロデカン骨格を有し、2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、トリシクロデカンジメタノール(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールのエチレングリコールまたはプロピレングリコールで変性した(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、水蒸気バリア性の観点でトリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレートが特に好ましい。市販品としては新中村化学社製 NKエステル A-DCP、A-BPEF、DCP等、エスアール商事社製 AMB-10 AMB-9等が挙げられるがこれらに限定されない。これらは単独でも併用でも使用できる。
【0011】
化合物(A)は、3つ以上の環が縮合した多環式構造を含有することにより、ハードコート層での水蒸気の移動が制限されることで水蒸気バリア性が高められる。また、脂環式縮合環の疎水性により、ハードコート層への水蒸気の溶解性が低くなり、水蒸気バリア性が高められる。
【0012】
化合物(A)の含有量は、活性エネルギー線硬化性ハードコート剤の不揮発分中、50~75質量%であり、55~70質量%が好ましい。50質量%以下未満では水蒸気バリア性が劣り、75質量%を超えると耐擦傷性や密着性が劣る。上記範囲内であると、耐擦傷性や密着性が良好となる。特にハードコート層の膜厚が厚い場合でも、支持体との優れた密着性を示す。
【0013】
<6つ以上の(メタ)アクリロイル基を有し重量平均分子量が5000以下である化合物(B)>
6つ以上の(メタ)アクリロイル基を有し重量平均分子量(以下、Mwと記載する場合がある)が5000以下である化合物(B)は、6つ以上の(メタ)アクリロイル基を有しMwが5000以下であることで耐擦傷性、水蒸気バリア性、密着性に優れる。また、Mwは、4000以下がより好ましく、3000以下がさらに好ましい。尚、本明細書におけるMwは、溶離液にテトラヒドロフランを用いて40℃にてゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)法によって測定された標準ポリスチレンの換算値である。
【0014】
化合物(B)としては6つ以上の(メタ)アクリロイル基を有し重量平均分子量が5000以下である化合物であればよく、例えばジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、およびこれらのエチレンオキシ変性体またはプロピルオキシ変性体、カプロラクトン変性体等や、ポリウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリアクリルアクリレート等が挙げられる。
【0015】
化合物(B)の市販品(重量平均分子量/(メタ)アクリロイル基数;カタログ値)としては、MIWON社製 Miramer M600(578/6)、ウレタンアクレートとしてはダイセル・オルネスク社製 EBECRYL 220(1000/6)、1290(1000/6)、KRM 8200(1000/6)、8200AE(1000/6)、及び8904(1800/6)等、三菱ケミカル社製 紫光UV-7605B(1100/6)、UV-1700B(1800/10)、UV-7630B(2200/6)、UV-7640B(1500/6.5)、及びUV-6300B(3700/7)等、日本化薬製 KAYARAD UX-5000(1500/6)、UX-5102D-M20(3,500/6)等、根上工業社製 アートレジン、UN-3320HA(1500/6)、UN-906S(1000/6 シリコーン骨格含有)等、MIWON社製 Miramer PU610(1800/6)、MU9800(3500/9)、ポリエステルアクリートとしてはダイセル・オルネスク社製 EBECRYL 450(1600/6)、846(110/6)、1830(1500/6)等、が挙げられるが、これらに限定されない。化合物(B)は、単独でも併用でも使用できる。
【0016】
化合物(B)は、耐擦傷性の観点で、ジペンタエリスチロールヘキサアクリレートやウレタンアクレートが好ましく、ウレタンアクレートを含むことがさらに好ましい。
【0017】
化合物(B)の含有量は、活性エネルギー線硬化性ハードコート剤の不揮発分中、10~35質量%である。10質量%未満では耐擦傷性や支持体との密着性が劣り、35質量%を超えると水蒸気バリア性が劣る。また、15~30質量%がより好ましい。
【0018】
<無機酸化物(C)>
本発明で用いられる無機酸化物(C)は、無機の酸化物であれば特に限定されないが、例えば、チタニウム、亜鉛、ジルコニウム、珪素およびアルミニウムからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素を含有するものが好ましい。具体的には、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化ケイ素(シリカ)、酸化アルミニウム、チタン酸バリウム等が挙げられる。これら無機酸化物(C)は、表面が有機物および/または無機物で処理されていてもよい。また、無機酸化物(C)は、2種類以上を併用してもよい。
【0019】
無機酸化物(C)の含有量は、活性エネルギー線硬化性ハードコート剤の不揮発分中、1~20質量%であり、3~15質量%であることが好ましく、5~10質量%であることがさらに好ましい。上記範囲内であると、水蒸気バリア性や支持体との密着性に優れたハードコート層とすることができる。
【0020】
また、無機酸化物(C)は、透明性と耐擦傷性の観点から、粒子径(D50)が10~90nm、かつ粒子径(D99)が150~300nmの酸化アルミニウム微粒子であることが好ましい。これにより、透明性と耐擦傷性に優れたハードコート層とすることができる。また、ハードコート層の膜厚に関わらず優れた透明性を得るために、粒子径(D99)は180~290nmであることが好ましく、さらに耐擦傷性向上のために、酸化アルミニウム微粒子の結晶構造がθ型および/またはα型であることが好ましい。粒子径(D50)ならびに粒子径(D99)とは、粒度分布測定値から求められる体積基準の粒子径分布において、累積値がそれぞれ50%、99%となる粒子径を表わす。
なお、無機酸化物微粒子の分散粒径は動的光散乱法を利用したマイクロトラック粒子径分布測定装置等により求めることができる。マイクロトラック粒子径分布測定装置としては、例えば、日機装(株)製「ナノトラックUPA」等が挙げられる。具体的には、無機酸化物微粒子を溶剤に分散させた無機酸化物微粒子分散体を、ローディングインデックス値が1.0になるように希釈液に添加して測定できる。希釈液は、無機酸化物微粒子の分散溶媒の主成分である分散溶媒と同じ分散溶媒を用いることが好ましく、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどが挙げられる。上記範囲内であると、透明性の優れたハードコート層が得られる。
【0021】
<重合開始剤(D)>
本発明で用いられる重合開始剤(D)は、活性エネルギー線の照射によって(メタ)アクリロイル基等の重合を引き起こすことができるものが好ましく、光重合開始剤であることがより好ましい。重合開始剤(D)としては、例えば、モノカルボニル系光重合開始剤、ジカルボニル系光重合開始剤、アセトフェノン系光重合開始剤、ベンゾインエーテル系光重合開始剤、アシルホスフィンオキシド系光重合開始剤、アミノカルボニル系光重合開始剤が使用できる。
【0022】
具体的には、モノカルボニル系光重合開始剤としては、ベンゾフェノン、4-メチル-ベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾフェノン、メチル-o-ベンゾイルベンゾエート、4-フェニルベンゾフェノン、3,3´,4,4´-テトラ(t-ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2-/4-イソ-プロピルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン、1-クロロ-4-プロポキシチオキサントン等が挙げられる。
【0023】
ジカルボニル系光重合開始剤としては、2-エチルアントラキノン、9,10-フェナントレンキノン、メチル-α-オキソベンゼンアセテート等が挙げられる。
アセトフェノン化合物としては、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-ヒドロキシ-シクロヘキシルフェニルケトン、ジエトキシアセトフェノン、ジブトキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、2,2-ジエトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オン、1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-(o-エトキシカルボニル)オキシム等が挙げられる。
【0024】
ベンゾインエーテル系光重合開始剤、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイゾブチルエーテル、ベンゾインノルマルブチルエーテル等が挙げられる。
【0025】
アシルホスフィンオキシド系光重合開始剤としては、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、4-n-プロピルフェニル-ジ(2,6-ジクロロベンゾイル)ホスフィンオキシド等が挙げられる。
【0026】
アミノカルボニル系光重合開始剤としては、エチル-4-(ジメチルアミノ)ベンゾエート、2-n-ブトキシエチル-4-(ジメチルアミノ)ベンゾエート、イソアミル-4-(ジメチルアミノ)ベンゾエート、2-(ジメチルアミノ)エチルベンゾエート、4,4´-ビス-4-ジメチルアミノベンゾフェノン、4,4´-ビス-4-ジエチルアミノベンゾフェノン、2,5´-ビス(4-ジエチルアミノベンザル)シクロペンタノン等が挙げられる。
【0027】
重合開始剤(D)の市販品としては、IGM-Resins B.V.社製のOmnirad184、651、500、907、127、369、784、2959、エサキュアワン、BASF(株)社製ルシリンTPO等が挙げられる。 特に、活性エネルギー線硬化後の耐黄変の観点で、Omnirad184やエサキュアワンが好ましい。
【0028】
重合開始剤(D)は、2種類以上を混合して用いてもよい。また、増感剤と併用してもよい。
【0029】
重合開始剤(D)の含有量は、活性エネルギー線硬化性ハードコート剤中の不揮発分中、0.5~15質量%であり、3~10質量%であることがより好ましい。上記範囲内であると、ハードコート剤の硬化性と耐擦傷性に優れたハードコート層が得られやすい。
【0030】
本発明の活性エネルギー線硬化性ハードコート剤は、化合物(A)及び化合物(B)以外の(メタ)アクリロイル基を有する化合物(E)(以下、化合物(E)と略記することがある)を含んでもよい。
【0031】
化合物(E)としては、1~5個の(メタ)アクリロイル基を有するモノマー、2~5個の(メタ)アクリロイル基を有するオリゴマー、および、6個以上の(メタ)アクリロイル基を有し重量平均分子量が5000を超えるオリゴマー等が挙げられる。
【0032】
例えば、3個~5個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸変性トリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、およびこれらのエチレンオキシ変性体またはプロピルオキシ変性体、カプロラクトン変性体等が挙げられる。
【0033】
また、2個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、例えば、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ノナンジオールジアクリレート、ビスフェノールAジアクリレート、ビスフェノールFジアクリレートおよびこれらのエチレンオキシ変性体またはプロピルオキシ変性体等が挙げられる。
【0034】
また、単官能の化合物としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート等のアルキル系(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノ(メタ)アクリレートや4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の末端に水酸基を有するモノ(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート等の末端にアルコキシ基を有しポリオキシアルキレン鎖を有するモノ(メタ)アクリレート、フェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート等の末端にフェノキシまたはアリールオキシ基を有するポリオキシアルキレン系モノ(メタ)アクリレート、アクリル酸等のカルボキシル基を有するモノ(メタ)アクリレート、N-メチロール(メタ)アクリルアミド等の窒素含有モノ(メタ)アクリル系化合物、パーフルオロメチル(メタ)アクリレート等の、炭素数1~20のパーフルオロアルキル基を有するパーフルオロアルキルアルキル(メタ)アクリレート、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のアルコキシシリル基含有ビニル化合物及びその誘導体、グリシジルアクリレート等のグリシジル基含有アクリレートが挙げられる。
【0035】
また、(メタ)アクリロイル基を有するオリゴマーとしては、(メタ)アクリレートオリゴマーが挙げられ、例えばポリウレタン系(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステル系(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシ系(メタ)アクリレートオリゴマー、アクリル系(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0036】
本発明の活性エネルギー線硬化性ハードコート剤は、必要に応じて溶剤を含有してもよく、さらに添加剤を、含有してもよい。添加剤としては、例えば、重合禁止剤、レベリング剤、スリップ剤、消泡剤、界面活性剤、抗菌剤、アンチブロッキング剤、可塑剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、酸化防止剤、シランカップリング剤、導電剤、無機充填剤、顔料、染料等が挙げられる。
【0037】
溶剤を加える場合、ハードコート層を形成する際には、溶剤を揮発させた後に活性エネルギー線による硬化を行なうことが好ましい。溶剤としては、特に制限されるものでなく、様々な公知の溶剤を用いることができる。具体的には、例えば、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、アセトン、アセチルアセトン、トルエン、キシレン、n-ブタノール、イソブタノール、tert-ブタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、エタノール、メタノール、3-メトキシ-1-ブタノール、3-メトキシ-2-ブタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノn-ブチルエーテル、2-エトキシエタノール、1-メトキシ-2-プロパノール、ジアセトンアルコール、乳酸エチル、乳酸ブチル、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸ジプロピル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、2-エトキシエチルアセテート、ブチルアセテート、テトラヒドロフラン、メチルピロリドン等が挙げられる。溶剤は、2種類以上を併用しても差し支えない。
【0038】
なお、本発明の「活性エネルギー線硬化性ハードコート剤の不揮発分中」とは、上記ハードコート層を形成した段階で該ハードコート層の構成成分として(そのままの状態で又は反応した状態で)残存する成分(残存成分)を意味する。上記残存成分は、通常、活性エネルギー線硬化性ハードコート剤から溶剤を除去した残りの成分であるが、本明細書では、日本工業規格JIS K5601-1-2:2008の塗料成分試験方法の第2節 加熱残分によって測定された数値である。
【0039】
本発明の活性エネルギー線硬化性ハードコート剤は、支持体へ塗工する等して、ハードコート層を有する光学部材を得ることができる。本発明の活性エネルギー線硬化性ハードコート剤は、プラスチックフィルムに塗工しハードコートフィルムとして使用することが好ましい。また、必要に応じて、高屈折率層、低屈折率層、近赤外吸収層、電磁波シールド層など公知の機能層が本発明の活性エネルギー線硬化性ハードコート剤層の上層や下層に形成されていてもよい。
【0040】
ハードコート層を形成する方法としては、例えば、活性エネルギー線硬化性ハードコート剤を、バーコーティング、ブレードコーティング、スピンコーティング、リバースコーティング、ダイティング、スプレーコーティング、ロールコーティング、グラビアコーティング、マイクログラビアコーティング、リップコーティング、エアーナイフコーティング、ディッピング法等の塗工方法で支持体上に塗工した後、必要に応じて溶剤の揮発分を揮発させ、さらに紫外線等の活性エネルギー線を照射する方法が挙げられる。活性エネルギー線としては、キセノンランプ、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、カーボンアーク灯、タングステンランプ等の光源から発せられる光や、通常20~2000KeVのコックロフワルトン型、バンデグラフ型、共振変圧型、絶縁コア変圧器型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の電子線加速器から取り出される電子線の他、α線、β線、γ線等の放射線が挙げられる。
【0041】
ハードコート層の膜厚は、特に限定されないが、通常0.5~50μmの範囲内で使用されるが、近年のディスプレイ等の薄膜化要求に応えるためには、好ましくは1μm以上4μm未満である。また、より高い水蒸気バリア性が必要な場合には、好ましくは4μm以上20μm以下である。一般的にハードコート層の膜厚が厚くなるとクラックが発生する、支持体からの剥離が生じ易くなる、透明性が低くなるが、本発明のハードコート層は、上記膜厚であっても高い透明性を有し、クラックの発生や支持体からの剥離が生じにくいといった特徴を有する。
【0042】
本発明において、支持体(基材ともいう)としては、特に限定はなく、ガラス、合成樹脂成型物、フィルムなどが挙げられる。合成樹脂成型物としては、ポリメチルメタクリレート樹脂、メチルメタクリレートを主成分とする共重合体樹脂、ポリスチレン樹脂、スチレン-メチルメタクリレート共重合体樹脂、スチレン-アクリロニトリル共重合体樹脂、ポリカーボネート樹脂、セルロースアセテートブチレート樹脂、ポリアリルジグリコールカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂等の成型物が挙げられる。
【0043】
また、フィルムとしては、例えば、ポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、セロファンフィルム、ジアセチルセルロースフィルム、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム、アセチルセルロースブチレートフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレンビニルアルコールフィルム、ポリオレフィンフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリメチルペンテルフィルム、ポリスルフォンフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリエーテルスルフォンフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリイミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、ナイロンフィルム、アクリルフィルム等が挙げられる。 上記フィルムの内、TACフィルムを使用した場合、水蒸気バリア性、耐擦傷性、密着性に特に優れた効果が期待される。なお、フィルムを支持体として使用する場合、アクリル系樹脂、共重合ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、スチレン-マレイン酸グラフトポリエステル樹脂、アクリルグラフトポリエステル樹脂等の樹脂層が設けられた、いわゆる易接着タイプのフィルムも用いることができる。
【0044】
本発明の活性エネルギー線硬化性ハードコート剤は、LCDやOLED等の光学ディスプレイ用途、プラスチック成型品の表面コート用途など、各種用途に好適に使用できる。
【実施例0045】
以下に、実施例により、本発明をさらに具体的に説明するが、以下の実施例は本発明の技術的範囲を何ら制限するものではない。
【0046】
《粒子径(D50)、(D99)の測定》
無機酸化物(C)を分散させた無機酸化物分散体を、動的光散乱法を利用したマイクロトラック粒子径分布測定装置にて、ローディングインデックス値が1.0になるように希釈液に添加して測定した。なお、マイクロトラック粒子径分布測定装置日機装(株)製「ナノトラックUPA」を用いて測定し、希釈液は無機酸化物の分散溶媒に応じて、主成分となる分散溶媒と同じものを用いた。
【0047】
<多官能ポリエステルアクリレートの製造>
(多官能ポリエステルアクリレートPE1の製造)撹拌機、還流冷却管、ドライエアー導入管、温度計を備えた4口フラスコに3,3’、4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物80.0部、水酸基価122mgKOH/gのペンタエリスリトールトリアクリレート(日本化薬社製ペンタエリスリトールトリアクリレート商品名:KAYARAD PET-30、副生成物としてペンタエリスリトールテトラアクリレートを含む)250.0部、メチルヒドロキノン0.24部、シクロヘキサノン217.8部を仕込み、60℃まで昇温した。次いで触媒として1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン1.65部を加え、90℃で8時間撹拌した。その後、メタクリルグリシジルエーテル78.3部、シクロヘキサノン54.0部を加え、次いで触媒として、ジメチルベンジルアミン2.65部を加え、100℃で6時間撹拌し、反応を継続しながら定期的に反応物の酸価を測定し、酸価が5.0mgKOH/g以下になったところで、室温まで冷却して反応を停止させた。得られた樹脂ワニスは淡黄色透明で、固形分60%であるポリエステルアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物(固形分質量比がポリエステルアクリレート:ペンタエリスリトールテトラアクリレート=76:24)である、多官能ポリエステルアクリレートPE1溶液を得た。多官能ポリエステルアクリレートPE1は、官能基数8 重量平均分子量3500であった。
【0048】
《無機酸化物(C)》
<酸化アルミニウム微粒子分散体の製造>
[製造例1:酸化アルミニウム微粒子分散体(1)]
酸化アルミニウム(1)(θ型結晶一次粒子径10nm)を35部と、多官能ポリエステルアクリレートPE1を固形分で14部、有機溶剤としてメチルエチルケトンを25.5部、メトキシブタノールを25.5部混合し、ディスパー攪拌後、サンドミルにて分散処理を行い、θ型結晶の酸化アルミニウム微粒子(C-1)を含む均一な酸化アルミニウム微粒子分散体(1)を得た。酸化アルミニウム微粒子(C-1)は、粒子径(D50)が80nm、粒子径(D99)が200nmであった。
【0049】
[製造例2:酸化アルミニウム微粒子分散体(2)]
酸化アルミニウム(1)を14.3部と、多官能ポリエステルアクリレートPE1を固形分で5.7部、有機溶剤としてメチルエチルケトンを40部、メトキシブタノールを4
0部混合した以外は製造例1と同様の手順で分散処理を行い、θ型結晶の酸化アルミニウ
ム微粒子(C-2)を含む均一な酸化アルミニウム微粒子分散体(2)を得た。酸化アル
ミニウム微粒子(C-2)は、粒子径(D50)が60nm、粒子径(D99)が160
nmであった。
【0050】
[製造例3:酸化アルミニウム微粒子分散体(3)]
酸化アルミニウム(2)(θ型結晶一次粒子径30nm)を用いた以外は製造例1
と同様の手順で分散処理を行い、θ型結晶の酸化アルミニウム微粒子(C-3)を含む均
一な酸化アルミニウム微粒子分散体(3)を得た。酸化アルミニウム微粒子(C-3)
は、粒子径(D50)が90nm、粒子径(D99)が280nmであった。
【0051】
[製造例4:酸化アルミニウム微粒子分散体(4)]
酸化アルミニウム(3)(α型結晶一次粒子径30nm)を用いた以外は製造例2
と同様の手順で分散処理を行い、α型結晶の酸化アルミニウム微粒子(C-4)を含む均
一な酸化アルミニウム微粒子分散体(4)を得た。酸化アルミニウム微粒子(C-4)
は、粒子径(D50)が80nm、粒子径(D99)が200nmであった。
【0052】
[製造例5:酸化アルミニウム微粒子分散体(5)]
酸化アルミニウム(4)(γ型結晶一次粒子径10nm)を用いた以外は製造例1と
同様の手順で分散処理を行い、γ型結晶の酸化アルミニウム微粒子(C-5)を含む均一
なアルミナ分散体(5)を得た。酸化アルミニウム微粒子(C-5)は、粒子径(D5
0)が80nm、粒子径(D99)が200nmであった。
【0053】
[製造例6:酸化アルミニウム微粒子分散体(6)]
酸化アルミニウム(5)(α型結晶一次粒子径50nm)を用いた以外は製造例2と
同様の手順で分散処理を行い、α型結晶の酸化アルミニウム微粒子(C’-1)を含む均
一な酸化アルミニウム微粒子分散体(6)を得た。酸化アルミニウム微粒子(C’-1)
は、粒子径(D50)が110nm、粒子径(D99)が280nmであった。
【0054】
[製造例7:酸化アルミニウム微粒子分散体(7)]
酸化アルミニウム(3)(α型結晶一次粒子径30nm)を用いた以外は製造例1と
同様の手順で分散処理を行い、α型結晶の酸化アルミニウム微粒子(C’-2)を含む均
一な酸化アルミニウム微粒子分散体(5)を得た。酸化アルミニウム微粒子(C’-2)
は、粒子径(D50)が90nm、粒子径(D99)が320nmであった。
【0055】
<シリカ微粒子>
・無機酸化物(C-6):MEK―AC-2140Y(日産化学(株)社製、シリカ微粒子、粒子径(D50)が20nm、粒子径(D99)が150nm)
【0056】
無機酸化物の種類、結晶系、平均粒子径を表1にまとめた。
【0057】
【0058】
[実施例1]
<活性エネルギー線重合性ハードコート剤の製造>
遮光されたガラス瓶に、化合物(A)としてA-DCP(トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、新中村化学工業社製、商品名NKエステル A-DCP)70質量部、化合物(B)としてDPHA(MIWON社製 商品名Miramer Mw600)20.8質量部、および酸化アルミニウム無微粒子(C-1)を含む分散体(1)を、(C-1)が3質量部となるように加えた。この時、酸化アルミニウム無微粒子(C-1)を含む分散体(1)中に含まれるPE1(多官能ポリエステルアクリレート)は、1.2質量部であり、化合物(B)に分類される。更に、重合開始剤(D)としてエサキュアワン(DKSHジャパン(株)社製、商品名 Esacure One)5質量部を加え、溶剤として炭酸ジメチル35質量部および1-メトキシ-2-プロパノール35質量部を加え、十分に攪拌と脱泡を行い、活性エネルギー線重合性ハードコート剤を得た。ハードコート剤中の不揮発分は、上記化合物(A)、化合物(B)、無機酸化物(C)および重合開始剤(D)の合計量に相当し、100質量部であった。
【0059】
<活性エネルギー線硬化性ハードコート剤より形成されたハードコート層及びハードコート層を有する光学部材の製造>
支持体として、厚さ約40μmのトリアセチルセルロースフィルム(富士写真フィルム社製)上にバーコーター#3を用いて上記製造した活性エネルギー線硬化性ハードコート剤を塗布し、熱風オーブンで溶剤を除去した後、出力80W/cmの高圧水銀ランプで紫外線を照射し、塗布層を硬化させ、膜厚2μmのハードコート層を有する光学部材を得た。
【0060】
得られたハードコート層を有する光学部材について、透明性、密着性、耐擦傷性、水蒸気バリア性を評価した。結果を表1に示す。
【0061】
《透明性 (HZ;ヘイズ値の測定)》
日本電色工業社製「ヘイズメーターSH7000」により低屈折率層表面のヘイズ値(HZ)を測定し。なお、△および〇が実用上問題ないレベルである。
・〇:1.5%以下。良好
・△:1.5%超過2.0%以下。実用可
・×:2.0%超過。実用不可
【0062】
《密着性試験》
JIS K5400碁盤目剥離法に準じて、ハードコート層にカッターナイフで1ミリ間隔の碁盤目状の切り傷を100マス付け、セロハンテープ(ニチバン社製)を貼り付け、一気に引きはがした後、剥離しないで支持体上に残ったハードコート層のマス目の数(n)を数え、n/100で表し、密着性とした。この密着性を以下の3段階で評価した。評価基準が、○または△であれば、実用上、問題のないレベルである。
〇:100/100(剥離なし)。良好
△:90~99/100。使用可。実用可
×:90未満 /100。使用不可。実用不可
【0063】
《擦傷性試験》
#0000のスチールウールを装着した1平方センチメートルの角形パッドを光学部材のハードコート層の表面上に置き、荷重4.41Nで表面上を10回往復させた後、外観を目視で評価し、生じた傷の本数を測定して擦傷性とした。この擦傷性を以下の4段階で評価した。評価基準が、◎、○または△であれば、実用上、問題のないレベルである。
◎:0本(傷なし)。優良
○:1~5本。良好
△:6~20本。使用可
×:20本を超える。使用不可
【0064】
《水蒸気バリア性試験1(ハードコート層2μm)》
水蒸気透過率測定装置(PARMTRAN MOCON社製)を用いて上記光学部材の水蒸気透過率を測定した。測定は、40℃ 相対湿度90%の環境下で測定した。水蒸気透過率を以下の3段階で評価した。評価基準が、○または△であれば、実用上、問題のないレベルである。
○:325g/m2・24hr未満。良好
△:325g/m2・24hr以上 350g/m2・24hr未満。使用可
×:350g/m2・24hr以上。使用不可
【0065】
[実施例2~27]、[比較例1~12]
表2、4に示す組成に従って、実施例1と同様にして活性エネルギー線硬化性ハードコート剤およびハードコート層を有する光学部材を製造して、同様に評価した。表2、4中、特に断りのない限り、数値は質量部(質量%)を表し、空欄は配合していないことを表す。
【0066】
[実施例29]
表3に示す組成に従って、実施例1と同様にして活性エネルギー線硬化性ハードコート剤を製造し、実施例1で使用したバーコーター#3を、バーコーター#12に変更した以外は、実施例1と同じ操作を行い、膜厚9μmのハードコート層を有する光学部材を得た。得られたハードコート層を有する光学部材について、実施例1と同様に、密着性、耐擦傷性を評価した。水蒸気バリア性については、実施例1と同様に水蒸気透過率を測定し、下記3段階で評価した。結果を表2に示す。
【0067】
《水蒸気バリア性試験2(ハードコート層9μm)》
水蒸気バリア性試験1と同様に測定し、この水蒸気透過率を以下の3段階で評価した。評価基準が、○または△であれば、実用上、問題のないレベルである。
○:125g/m2・24hr未満。良好
△:125g/m2・24hr以上 150g/m2・24hr未満。使用可
×:150g/m2・24hr以上。使用不可
【0068】
[実施例30~55]、[比較例13~24]
表3、4に示す組成に従って、実施例29と同様にして活性エネルギー線硬化性ハードコート剤およびハードコート層を有する光学部材を製造して、同様に評価した。表3、4中、特に断りのない限り、数値は質量部(質量%)を表し、空欄は配合していないことを表す。
【0069】
【0070】
【0071】
【0072】
以下に、実施例、比較例で使用した材料とその略号を示す。
<化合物(A)>
A-DCP:トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、分子量:304、新中村化学社製、商品名「NKエステル A-DCP」
A-BPEF:9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレンジアクリレート、分子量:546、新中村化学工業社製、商品名「NKエステル A-BPEF)」
【0073】
<化合物(B)>
DPHA:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、MIWON社製、分子量:578、(メタ)アクリロイル基数:6、商品名「Miramer M600」
UN-3320HA:根上工業社製 Mw:1500、(メタ)アクリロイル基数:6、商品名「アートレジンUN-3320HA」
PU610:MIWON社製、Mw:1800、(メタ)アクリロイル基数:6、商品名「Miramer PU610」
UV―1700B:(三菱ケミカル社製 Mw:1800、(メタ)アクリロイル基数:10、商品名「紫光UV-1700B」
MU9800:MIWON社製、Mw:3500、(メタ)アクリロイル基数:9、商品名「Miramer MU9800」
UN-904:ポリウレタン系アクリレートオリゴマー、根上工業社製、Mw:4900、(メタ)アクリロイル基数:10、商品名「アートレジンUN904」
PE1:上記記載方法にて合成した多官能ポリエステルアクリレート Mw:3500、(メタ)アクリロイル基数:8
【0074】
<無機酸化物(C)>
(C-1~C-5及びC’-1~2):上記記載方法で調整した酸化アルミニウム微粒子
(C-6):シリカ微粒子 日産化学工業(株)製:商品名オルガノシリカゾルシリーズMEK-ST-2040 (粒径200nm シリカ成分40%) 表にはシリカ成分量のみ質量%として記載。
【0075】
<重合開始剤(D)>
エサキュアワン:アセトフェノン系光重合開始剤、DKSHジャパン(株)社製、商品名「Esacure One」
【0076】
<化合物(E)>
UV-3310B:ポリウレタン系アクリレートオリゴマー、三菱ケミカル社製 Mw:5000、(メタ)アクリロイル基数:2、商品名「紫光UV-3310B」
UV-7610B:ポリウレタン系アクリレートオリゴマー、三菱ケミカル社製 Mw:11000、(メタ)アクリロイル基数:9、商品名「紫光UV-7610B」
UV-7550B:ポリウレタン系アクリレートオリゴマー、三菱ケミカル社製 Mw:2400、(メタ)アクリロイル基数:3、商品名「紫光UV-7550B」
TMPTA:トリメチロールプロパントリアクリレート(3個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物)、MIWON社製、分子量:296、(メタ)アクリロイル基数:3、商品名「Miramer M300」
【0077】
表2、3に示すように、実施例の活性エネルギー線硬化性ハードコート剤を用いて形成されたハードコート層を有する光学部材は、ハードコート層の膜厚に依存することなく支持体との密着性を有し、優れた透明性、水蒸気バリア性、耐擦傷性を有することが明らかとなった。