(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173052
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】ポリウレタンフォーム
(51)【国際特許分類】
C08G 18/00 20060101AFI20231130BHJP
C08G 101/00 20060101ALN20231130BHJP
【FI】
C08G18/00 L
C08G101:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022085041
(22)【出願日】2022-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 未紗
【テーマコード(参考)】
4J034
【Fターム(参考)】
4J034BA03
4J034BA08
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4J034RA03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ポリウレタンフォームの通気性を向上するとともに、フォームの硬さを下げ、圧縮残留ひずみを改善する。
【解決手段】ポリウレタンフォームは、ポリオールと、ポリイソシアネートと、を混合した組成物から得られ、該組成物は、式(1)の化合物及び/又は(2)の化合物を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオールと、
ポリイソシアネートと、
を、混合した組成物から得られるポリウレタンフォームであって、
前記組成物は、化学式(1)で示される化合物、及び/又は化学式(2)で示される化合物を含有する、ポリウレタンフォーム。
【化1】
【化2】
(但し、化学式(1)、化学式(2)のそれぞれにおいて、R1,R2は炭化水素基であって、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。R1,R2は互いに結合して環を形成してもよい。R1,R2の炭素数の合計は2-20である。)
【請求項2】
前記組成物は、ポリオレフィン系樹脂を含有する、請求項1に記載のポリウレタンフォーム。
【請求項3】
前記組成物は、ヒドロキシカルボン酸を含有する、請求項2に記載のポリウレタンフォーム。
【請求項4】
JIS K6400-7 A法:2012に基づく通気量が20L/min以上である、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のポリウレタンフォーム。
【請求項5】
JIS K6400-2 D法:2012に基づく硬さが200N以下である、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のポリウレタンフォーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ポリウレタンフォームに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ポリウレタン原料として特定のシロキサン化合物を使用した軟質ポリウレタン発泡体が開示されている。この軟質ポリウレタン発泡体は、シロキサン化合物を使用することにより通気性に優れている、と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のポリウレタンフォームでは、通気性以外にも、フォームの硬さ、圧縮残留ひずみ等の物性が必ずしも十分でない場合があった。例えば、軽量軟質ポリウレタンフォームの製造においては、発泡倍率を高くするために、発泡剤としての水の添加量を増やす必要がある。ところが、水の添加量が増えると、フォームが硬くなり、圧縮残留ひずみが高くなるという課題があった。
本開示は、ポリウレタンフォームの通気性を向上するとともに、フォームの硬さを下げ、圧縮残留ひずみを改善するためのものであり、以下の形態として実現できる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
ポリオールと、
ポリイソシアネートと、
を、混合した組成物から得られるポリウレタンフォームであって、
前記組成物は、化学式(1)で示される化合物、及び/又は化学式(2)で示される化合物を含有する、ポリウレタンフォーム。
【化1】
【化2】
(但し、化学式(1)、化学式(2)のそれぞれにおいて、R1,R2は炭化水素基であって、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。R1,R2は互いに結合して環を形成してもよい。R1,R2の炭素数の合計は2-20である。)
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、ポリウレタンフォームの通気性を向上するとともに、フォームの硬さを下げ、圧縮残留ひずみを改善できる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
ここで、本開示の望ましい例を示す。
・前記組成物は、ポリオレフィン系樹脂を含有する、ポリウレタンフォーム。
・前記組成物は、ヒドロキシカルボン酸を含有する、ポリウレタンフォーム。
・JIS K6400-7 A法:2012に基づく通気量が20L/min以上である、ポリウレタンフォーム。
・JIS K6400-2 D法:2012に基づく硬さが200N以下である、ポリウレタンフォーム。
【0008】
以下、本開示を詳しく説明する。なお、本明細書において、数値範囲について「-」を用いた記載では、特に断りがない限り、下限値及び上限値を含むものとする。例えば、「10-20」という記載では、下限値である「10」、上限値である「20」のいずれも含むものとする。すなわち、「10-20」は、「10以上20以下」と同じ意味である。
【0009】
1.ポリウレタンフォーム
ポリウレタンフォームは、ポリオールと、ポリイソシアネートと、を、混合した組成物(以下「ポリウレタン樹脂組成物」ともいう)から得られる。組成物は、化学式(1)で示される化合物、及び/又は化学式(2)で示される化合物を含有する。
【化3】
【化4】
(但し、化学式(1)、化学式(2)のそれぞれにおいて、R1,R2は炭化水素基であって、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。R1,R2は互いに結合して環を形成してもよい。R1,R2の炭素数の合計は2-20である。)
【0010】
(1)ポリオール
ポリオールは、特に限定されない。各種のポリオールは単独で用いられてもよいし、2種以上併用されてもよい。
ポリオールとしては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルエステルポリオール、ポリカーボネートジオール、主鎖が炭素-炭素結合系ポリオールが例示される。
ポリエーテルポリオールは、例えば、ポリオキシプロピレン・ポリオキシエチレンポリオール、ポリマーポリオール、ポリオキシテトラメチレングリコールが挙げられる。
ポリエステルポリオールは、例えば、脂肪族系又は芳香族系の重縮合系ポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオールが挙げられる。
主鎖が炭素-炭素結合系ポリオールは、例えば、ポリブタジエンポリオール、イソプレンポリオール等のポリオレフィン系ポリオール、アクリルポリオールが挙げられる。
【0011】
(1.1)ポリエーテルポリオール
ポリエーテルポリオールとして、以下の開始剤(化合物)の1種又は2種以上に、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、テトラヒドロフラン、エピクロロヒドリン、スチレンオキシド等の1種又は2種以上を付加せしめて得られるポリエーテルポリオール、又はポリテトラメチレンエーテルグリコールが例示される。
【0012】
(1.1.1)開始剤
(1.1.1.1)多価アルコール、及び多価アルコールのアルキレンオキシド付加物
多価アルコールの例:
〔2官能アルコール〕エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチレングリコール
〔3官能アルコール〕グリセリン、トリメチロールプロパン
〔4官能アルコール〕ペンタエリスリトール
〔6官能アルコール〕ソルビトール
〔8官能アルコール〕ショ糖
(1.1.1.2)多価フェノール類のアルキレンオキシド付加物
多価フェノール類のアルキレンオキシド付加物の例:ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物
(1.1.1.3)多価ヒドロキシ化合物
多価ヒドロキシ化合物の例:りん酸、ベンゼンりん酸、ポリりん酸(例えばトリポリりん酸およびテトラポリりん酸)等
(1.1.1.4)フェノール-アニリン-ホルムアルデヒド三元縮合生成物
(1.1.1.5)アニリン-ホルムアルデヒド縮合生成物
(1.1.1.6)ポリアミン類
ポリアミン類の例:エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、メチレンビスオルソクロルアニリン、4,4-および2,4’-ジフェニルメタンジアミン、2,4-トリレンジアミン、2,6-トリレンジアミン等
(1.1.1.7)アルカノールアミン類
アルカノールアミン類の例:トリエタノールアミン、ジエタノールアミン等
【0013】
(1.1.2)ポリマーポリオール
ポリマーポリオールは、既述のポリエーテルポリオールに、アクリロニトリル、スチレン、アルキルメタクリレート等のエチレン性不飽和化合物をグラフト重合させたポリオールである。
【0014】
(1.2)ポリエステルポリオール
ポリエステルポリオールは、少なくとも2個のヒドロキシ基を有する化合物の1種又は2種以上と、少なくとも2個のカルボキシル基を有する化合物の1種又は2種以上との縮合により得られるポリエステルポリオール、又はカプロラクトン、メチルバレロラクトン等の環状エステルの開環重合体類である。
【0015】
(1.2.1)少なくとも2個のヒドロキシ基を有する化合物の例
エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチレングリコール1,3-および1,4-ブタンジオール、テトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、メチルペンタンジオール、ブチルエチルプロパンジオール、ヘキサメチレングリコール、デカメチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール
【0016】
(1.2.2)少なくとも2個のカルボキシル基を有する化合物の例
マロン酸、マレイン酸、コハク酸、アジピン酸、酒石酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、シュウ酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ヘメリット酸
【0017】
(1.3)ポリカーボネートジオール
ポリカーボネートポリオールとしては、例えばブタンジオールやヘキサンジオール等の低分子ポリオールと、プロピレンカーボネートやジエチルカーボネート等の低分子カーボネートとのエステル交換反応よって得られるもの等が挙げられる。
【0018】
(1.4)ポリオレフィン系ポリオール
ポリオレフィン系ポリオールとしては、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール、水素添加ポリブタジエンポリオール、水素添加ポリイソプレンポリオールが例示される。
【0019】
(1.5)植物由来ポリオール
ポリオールとして、上記のポリオールに加え、植物由来ポリオールを含んでもよい。植物由来ポリオールとしては、例えば、ひまし油系ポリオール、大豆油系ポリオール、パーム油系ポリオール、パーム核油系ポリオール、ヤシ油系ポリオール、カシュー油系ポリオール、オリーブ油系ポリオール、綿実油系ポリオール、サフラワー油系ポリオール、ごま油系ポリオール、ひまわり油系ポリオール、アマニ油系ポリオール等が挙げられる。植物由来のポリオール類は、1分子中の水酸基の官能基数が通常2~3である。
ひまし油系ポリオールとしては、ひまし油、ひまし油とポリオールとの反応物、ひまし油脂肪酸とポリオールとのエステル化反応物等を挙げることができる。ひまし油又はひまし油脂肪酸と反応させるポリオールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロプレングリコールなどの2価のポリオール、あるいはグリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール、ソルビトール等の3価以上のポリオールなどを挙げることができる。
大豆油系ポリオールとしては、大豆油に由来するポリオール、例えば、大豆油とポリオールとの反応物、大豆油脂肪酸とポリオールとのエステル化反応物等が挙げられる。大豆油又は大豆油脂肪酸と反応させるポリオールとしては、上記ひまし油の場合と同様のものを用いることができる。パーム油系ポリオール、カシュー油系ポリオール等についても、大豆油系ポリオールの場合と同様である。なお、植物由来ポリオールとして例示した各種のポリオールは、単独で用いられてもよいし、2種以上併用されてもよい。
【0020】
(2)触媒
ポリウレタン樹脂組成物には、触媒が含まれていてもよい。従来公知の触媒を特に限定なく採用できる。各種の触媒は単独で用いられてもよいし、2種以上併用されてもよい。
触媒として、アミン触媒、第4級アンモニウム塩触媒を用いることができる。これらの触媒の具体例を示す。
トリエチレンジアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリイソプロパノールアミン、トリブチルアミン、トリオクチルアミン、ヘキサデシルジメチルアミン、N-メチルモルホリン、N-エチルモルホリン、N-オクタデシルモルホリン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン、N,N-ジメチルアミノヘキサノール、N,N-ジメチルアミノエトキシエトキシエタノール、N,N-ジメチルアミノエトキシエタノール等の第三級アミン触媒、トリエチレンジアミンのギ酸塩および他の塩、第一および第二アミンのアミノ基のオキシアルキレン付加物、N-N-ジアルキルピペラジン類のようなアザ環化合物、種々のN,N’,N’-トリアルキルアミノアルキルヘキサヒドロトリアジン類、N,N,N",N"-テトラメチルジエチレントリアミンのような官能基としてアミノ基を有するアミン触媒等を採用できる。
また、テトラメチルアンモニウムクロライド等のテトラアルキルアンモニウムハロゲン化物、水酸化テトラメチルアンモニウム塩等のテトラアルキルアンモニウム水酸化物、テトラメチルアンモニウム2-エチルヘキサン酸塩、2-ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムギ酸塩、2-ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム2-エチルヘキサン酸塩等のテトラアルキルアンモニウム有機酸塩類等の第4級アンモニウム塩触媒も採用できる。
ポリウレタン樹脂組成物における、アミン触媒及び第4級アンモニウム塩触媒からなる群より選択される1種以上の触媒の配合量は、特に限定されない。これらの触媒の配合量は、ポリオール100質量部に対し、ポリウレタンの生成反応を十分に促進させる観点から、0.01質量部以上が好ましく、0.05質量部以上がより好ましく、0.07質量部以上が更に好ましい。他方、ポリウレタンフォームの諸物性を保持する観点、及び製造コストの観点から、1質量部以下が好ましく、0.8質量部以下がより好ましく、0.5質量部以下が更に好ましい。これらの観点から、アミン触媒及び第4級アンモニウム塩触媒からなる群より選択される1種以上の触媒の配合量は、ポリオール100質量部に対し、0.01質量部以上1質量部以下が好ましく、0.05質量部以上0.8質量部以下がより好ましく、0.07質量部以上0.5質量部以下が更に好ましい。
【0021】
触媒として、金属触媒(有機金属触媒)を用いることができる。金属触媒として、従来公知の金属触媒を特に限定なく採用できる。
金属触媒として、例えば、Sn(錫)、Pb(鉛)、Bi(ビスマス)、Ni(ニッケル)、Co(コバルト)、Fe(鉄)、Zr(ジルコニウム)、Cu(銅)、Zn(亜鉛)等の金属塩、有機酸金属塩等が用いることができる。より具体的には、下記の金属触媒を用いることができる。
Sn触媒:オクチル酸スズ(II)(2-エチルヘキサン酸スズ、スタナスジオクトエート)、酢酸スズ(II)、スタナスジアセテート、オクタン酸スズ(II)、スズスタナスジオレエート、ネオデカン酸スズ(II)スタナスジラウレート、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジクロライド、ジオクチル錫ジラウレート、ジブチルスズジマレエート、ジオクチルスズジアセテート等
Pb触媒:オクタン酸鉛、ナフテン酸鉛等
Bi触媒:オクチル酸ビスマス、ナフテン酸ビスマス、ネオデカン酸ビスマス、ロジン酸ビスマス等
Fe触媒:鉄アセチルアセトナート等
Zr触媒:ジルコニウムアセチルアセトナート等
Ni触媒:ニッケルアセチルアセトナート、オクチル酸ニッケル、ナフテン酸ニッケル等
Co触媒:コバルトアセチルアセトナート、オクチル酸コバルト、ナフテン酸コバルト等
【0022】
ポリウレタン樹脂組成物における、金属触媒の配合量は、特に限定されない。金属触媒の配合量は、ポリオール100質量部に対し、ポリウレタンの生成反応を十分に促進させる観点から、0.01質量部以上が好ましく、0.05質量部以上がより好ましく、0.1質量部以上が更に好ましい。他方、金属触媒に由来する揮発性有機化合物(2-エチルヘキサン酸等)を抑制する観点から、1.0質量部以下が好ましく、0.5質量部以下がより好ましく、0.3質量部以下が更に好ましい。これらの観点から、金属触媒の配合量は、ポリオール100質量部に対し、0.01質量部以上1.0質量部以下が好ましく、0.05質量部以上0.5質量部以下がより好ましく、0.1質量部以上0.3質量部以下が更に好ましい。
【0023】
(3)整泡剤
ポリウレタン樹脂組成物には、整泡剤が含まれていてもよい。整泡剤は、特に限定されない。
整泡剤は、具体的には、オルガノポリシロキサン、オルガノポリシロキサン-ポリオキシアルキレン共重合体、ポリオキシアルキレン側鎖を有するポリアルケニルシロキサン、シリコーン-グリース共重合体等のシリコーン系化合物、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム等のアニオン系界面活性剤、ポリエーテルシロキサン、フェノール系化合物等が用いられる。これらの整泡剤は単独で用いられてもよいし、2種以上併用されてもよい。
整泡剤の配合量は、特に限定されない。整泡剤の配合量は、ポリオール100質量部に対して0.03質量部以上5.0質量部以下が好ましい。
【0024】
(4)発泡剤
ポリウレタン樹脂組成物には、発泡剤が含まれていてもよい。発泡剤は、特に限定されない。発泡剤としては、水、ペンタン、シクロペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ジクロロメタン、炭酸ガス等が好適に用いられる。発泡剤が水の場合、添加量はポリウレタン発泡体において目的とする密度や良好な発泡状態が得られる範囲に決定され、通常はポリオール100質量部に対して1質量部以上10質量部以下が好ましい。
【0025】
(5)ポリイソシアネート
ポリイソシアネートは、特に限定されない。ポリイソシアネートとしては、芳香族系イソシアネート、脂環式イソシアネート、及び脂肪族系イソシアネートからなる群より選ばれる少なくとも1種以上が好適に採用される。脂肪族系イソシアネートの1種類以上と、芳香族系イソシアネートの1種類以上を併用してもよい。
また、ポリイソシアネートは、1分子中に2個のイソシアネート基を有する2官能のポリイソシアネート、1分子中に3個以上のイソシアネート基を有する3官能以上のポリイソシアネートのいずれであってもよく、単独であるいは複数組み合わせて使用してもよい。
例えば、2官能のポリイソシアネートとしては、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、m-フェニレンジイソシネート、p-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、3,3’-ジメチル-4,4’-ビフェニレンジイソネート、3,3’-ジメトキシ-4,4’-ビフェニレンジイソシアネート等の芳香族系イソシアネート、シクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート等の脂環式イソシアネート、ブタン-1,4-ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソプロピレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、リジンイソシアネート等の脂肪族系イソシアネートを挙げることができる。
また、3官能以上のポリイソシアネートとしては、1-メチルベンゾール-2,4,6-トリイソシアネート、1,3,5-トリメチルベンゾール-2,4,6-トリイソシアネート、ビフェニル-2,4,4’-トリイソシアネート、ジフェニルメタン-2,4,4’-トリイソシアネート、メチルジフェニルメタン-4,6,4’-トリイソシアネート、4,4’-ジメチルジフェニルメタン-2,2’,5,5’テトライソシアネート、トリフェニルメタン-4,4’,4"-トリイソシアネート、ポリメリックMDI等を挙げることができる。
なお、その他ウレタンプレポリマーやカルボジイミド変性イソシアネート、イソシアヌレート変性イソシアネート、ビュレット変性イソシアネートも使用することができる。
【0026】
ポリイソシアネートとポリオールの混合割合は、特に限定されない。イソシアネートインデックスは80以上120以下が好ましい。イソシアネートインデックス(INDEX)は、ポリウレタン樹脂組成物中に含まれる活性水素基1モルに対するイソシアネート基のモル数を100倍した値であり、[(組成物中のイソシアネート当量/組成物中の活性水素の当量)×100]で計算される。
【0027】
(6)化学式(1)で示される化合物、化学式(2)で示される化合物
化学式(1)、化学式(2)のそれぞれにおいて、R1,R2は炭化水素基であって、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。R1,R2は互いに結合して環を形成してもよい。R1,R2の炭素数の合計は2-20である。
【0028】
R1は、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、又アリール基を表す。R2は、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、又アリール基を表す。R1,R2は、例えば、2つのアルキル基が結合してアルキレン基となり、環を形成していてもよい。アルキレン基としては、分岐状アルキレン基、直鎖状アルキレン基が好ましい。分岐状アルキレン基としては、メチルエチレン基、メチルメチレン基、1-メチルペンチレン基、1,4-ジメチルブチレン基等が挙げられる。直鎖状アルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基、デカメチレン基等が挙げられる。
【0029】
化学式(1)で示される化合物は、非プロトン性極性溶媒であることが好ましい。化学式(1)で示される化合物としては、例えば、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、及びエチレンカーボネートから選ばれる1種以上の有機カーボネートが挙げられる。
化学式(2)で示される化合物は、非プロトン性極性溶媒であることが好ましい。化学式(2)で示される化合物としては、例えば、γ-ブチロラクトン、ε-カプロラクトン、γ-バレロラクトンから選ばれる1種以上の環状エステルが挙げられる。
【0030】
ポリウレタン樹脂組成物は、化学式(1)で示される化合物と化学式(2)で示される化合物の双方を含んでいてもよく、一方のみを含んでいてもよい。ポリウレタン樹脂組成物は、化学式(1)で示される化合物を含んでいることが好ましく、プロピレンカーボネートを含んでいることがより好ましい。
【0031】
ポリウレタン樹脂組成物における、化学式(1)で示される化合物と化学式(2)で示される化合物の合計の配合量は、特に限定されない。化学式(1)で示される化合物と化学式(2)で示される化合物の合計の配合量は、ポリオール100質量部に対し、ポリウレタンフォームの通気性、フォームの硬さ、及び圧縮残留ひずみを改善する観点から、0.1質量部以上が好ましく、1.5量部以上がより好ましく、3質量部以上が更に好ましい。他方、ポリウレタンフォームの諸物性を保持する観点、及び製造コストの観点から、20質量部以下が好ましく、15質量部以下がより好ましく、7.5質量部以下が更に好ましい。これらの観点から、化学式(1)で示される化合物と化学式(2)で示される化合物の合計の配合量は、ポリオール100質量部に対し、0.1質量部以上20質量部以下が好ましく、1.5質量部以上15質量部以下がより好ましく、3質量部以上7.5質量部以下が更に好ましい。
【0032】
(7)ポリオレフィン系樹脂
組成物は、ポリオレフィン系樹脂を含有することが好ましい。例えば、密度が低い(例えば密度20kg/m3未満)の軽量のポリウレタンフォームでは水の添加量が増え、発泡時の発熱量の増加が懸念される。組成物がポリオレフィン系樹脂を含有する場合には、ポリオレフィン系樹脂の吸熱効果によって、発泡時の発熱を抑えることができる。
ポリオレフィン系樹脂は、エチレン、プロピレン等のα-オレフィンの単独重合又は共重合によって得られる樹脂である。ポリオレフィン系樹脂は、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びプロピレン-エチレン共重合体からなる群より選ばれる1種以上が好ましい。
ポリオレフィン系樹脂は、ポリオレフィン系樹脂パウダーとして組成物に含有されることが好ましい。ポリオレフィン系樹脂パウダーは、例えば、ポリエチレンパウダー、ポリプロピレンパウダー等が挙げられ、これらを1種又は2種以上を使用できる。融点の観点から、ポリエチレンパウダーが好ましい。
ポリオレフィン系樹脂パウダーの粒径は特に限定されない。ポリオレフィン系樹脂パウダーのメディアン径D50は、フォームの触感を維持する観点から、1μm以上1000μm以下が好ましく、5μm以上800μm以下がより好ましく、10μm以上600μm以下が更に好ましい。なお、ポリオレフィン系樹脂パウダーのメディアン径D50は、例えば、コールターカウンター法で測定できる。ポリオレフィン系樹脂パウダーが市販品の場合には、メディアン径D50としてカタログ値を採用してもよい。
【0033】
ポリウレタン樹脂組成物における、ポリオレフィン系樹脂の配合量は、特に限定されず、配合されていればよい。ポリオレフィン系樹脂の配合量は、ポリオール100質量部に対し、吸熱効果の観点から、1質量部以上が好ましく、5量部以上がより好ましく、10質量部以上が更に好ましい。他方、ポリウレタンフォームの諸物性を保持する観点から、50質量部以下が好ましく、35質量部以下がより好ましく、25質量部以下が更に好ましい。これらの観点から、ポリオレフィン系樹脂の配合量は、ポリオール100質量部に対し、1質量部以上50質量部以下が好ましく、5質量部以上35質量部以下がより好ましく、10質量部以上25質量部以下が更に好ましい。なお、2種以上のポリオレフィン系樹脂を用いる場合には、上記配合量は、全ポリオレフィン系樹脂の合計量を意味する。
【0034】
(8)ヒドロキシカルボン酸
ポリウレタン樹脂組成物には、ポリウレタンフォームの変色を抑制する観点からヒドロキシカルボン酸が含まれていてもよい。
ヒドロキシカルボン酸は、分子内にヒドロキシ基とカルボキシル基の両方を有する化合物である。本開示においては、ヒドロキシカルボン酸のヒドロキシ基とカルボキシル基が分子内脱水縮合した環状化合物であるラクトン、2分子のヒドロキシカルボン酸の互いのヒドロキシ基とカルボキシル基が脱水縮合した環状化合物であるラクチドも、ヒドロキシカルボン酸に含める。ヒドロキシカルボン酸としては、例えば、乳酸、グリコール酸、プロピオン酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシペンタン酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシヘプタン酸、2-ヒドロキシエトキシ酢酸、1,3-プロパンジオール,1-カルボネートやこれらの誘導体、これらの1種以上が分子内脱水縮合したラクトン、これらの1種以上が2分子間で脱水縮合したラクチド等が挙げられ、これらのヒドロキシカルボン酸を1種又は2種以上を使用できる。
【0035】
ポリウレタン樹脂組成物における、ヒドロキシカルボン酸の配合量は、特に限定されない。ヒドロキシカルボン酸の配合量は、ポリオール100質量部に対し、ポリウレタンフォームの変色を効果的に抑制する観点から、0.01質量部以上が好ましく、0.03質量部以上がより好ましく、0.05質量部以上が更に好ましい。他方、ポリウレタンフォームの諸物性を保持する観点、及び製造コストの観点から、5質量部以下が好ましく、3質量部以下がより好ましく、1質量部以下が更に好ましい。これらの観点から、乳酸の配合量は、ポリオール100質量部に対し、0.01質量部以上5質量部以下が好ましく、0.03質量部以上3質量部以下がより好ましく、0.05質量部以上1質量部以下が更に好ましい。
【0036】
(9)その他の添加剤
ポリウレタン樹脂組成物には、適宜その他の添加剤、例えば架橋剤、可塑剤、難燃剤、充填剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、脱泡剤、相溶化剤、着色剤、安定剤、抗菌剤、防カビ剤、脱臭剤、消臭剤、芳香剤、香料等を配合することができる。架橋剤としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン等の短鎖ジオール系の架橋剤等が挙げられる。着色剤としては、顔料、染料、着色料等が挙げられる。
【0037】
2.ポリウレタンフォームの物性
ポリウレタンフォームの物性は、用途等に応じて適宜設定できる。ポリウレタンフォームは、軟質ポリウレタンフォームであることが好ましい。
ポリウレタンフォームは、以下の物性を備えることが好ましい。
(1)見かけ密度
見かけ密度(JIS K7222)は、8kg/m3-150kg/m3が好ましく、10kg/m3-100kg/m3がより好ましく、12kg/m3-80kg/m3が更に好ましい。
(2)硬さ
硬さ(JIS K6400-2 D法)は、10N-600Nが好ましく、20N-400Nがより好ましく、30N-200Nが更に好ましい。この範囲であれば柔軟性に富み、軟質ポリウレタンフォームとして好ましい。
(3)反発弾性
反発弾性(JIS K6400-3)は、1%-80%が好ましく、5%-70%がより好ましい。
(4)引張強さ、伸び
引張強さ(JIS K6400-5)は、30kPa以上が好ましく、50kPa以上がより好ましい。
伸び(JIS K6400-5)は、50%-500%が好ましい。50%以上であれば柔軟性に富み、軟質ポリウレタンフォームとして好ましい。
(5)通気量
通気量(JIS K6400-7 A法:2012)は、20L/min以上が好ましく、30L/min以上がより好ましく、50L/min以上が更に好ましい。尚、通気量は、通常300L/min以下である。
(6)圧縮残留ひずみ
圧縮残留ひずみ(JIS K6400-4 4.5.2 A法)は、20%以下が好ましく、15%以下がより好ましく、10%以下が更に好ましい。試験条件は、70℃の恒温槽にて、50%圧縮、試験時間22時間とした。
(7)湿熱圧縮残留ひずみ
湿熱圧縮残留ひずみ(JIS K6400-4 4.5.2 C法)は、20%以下が好ましく、15%以下がより好ましく、10%以下が更に好ましい。試験条件は、50℃、95%RHの恒温槽にて、70%圧縮、試験時間22時間とした。
【0038】
3.ポリウレタンフォームの製造
ポリウレタンフォームは、ポリウレタン樹脂組成物を攪拌混合してポリオールとポリイソシアネートを反応させる公知の発泡方法によって製造することができる。発泡方法には、スラブ発泡とモールド発泡とがあり、いずれの成形方法でもよい。スラブ発泡は、混合したポリウレタン樹脂組成物をベルトコンベア上に吐出し、大気圧下、常温で発泡させる方法である。他方、モールド発泡は、混合したポリウレタン樹脂組成物をモールド(成形型)に充填してモールド内で発泡させる方法である。
【実施例0039】
1.ポリウレタンフォームの製造
表1の割合で配合したポリウレタン樹脂組成物を調製し、スラブ発泡により、実施例及び比較例のポリウレタンフォームを製造した。
各原料の詳細は以下の通りである。
・ポリオール:ポリエーテルポリオール、官能基数3、分子量3000、水酸基価56mgKOH/g
・アミン触媒:N,N-ジメチルアミノヘキサノール
・整泡剤:シリコーン系整泡剤、品名:L-595、モメンティブ製
・ポリオレフィン系樹脂:ポリエチレンパウダー(PEパウダー)、品名:ミペロン XM-330、三井化学(株)製
・発泡剤:水
・ヒドロキシカルボン酸:乳酸
・金属触媒:オクチル酸スズ(II)
・ポリイソシアネート:トルエンジイソシアネート(TDI)、T-80(2,4-トリレンジイソシアネート80質量%と2,6-トリレンジイソシアネート20質量%との混合物)
・化学式(1)で示される化合物、及び/又は化学式(2)で示される化合物(化合物A):プロピレンカーボネート
【0040】
ポリウレタンフォームは、具体的には次の手順により製造した。
ポリイソシアネート以外の原料をカップ容器に計量、攪拌し、混合溶液とした。
混合溶液にポリイソシアネートを添加し、攪拌して、ポリウレタン樹脂組成物とした。
【0041】
【0042】
2.評価方法
(1)見かけ密度(密度)
見かけ密度は、JIS K7222にて測定した。
(2)硬さ
硬さは、JIS K6400-2 D法にて測定した。
(3)反発弾性
反発弾性は、JIS K6400-3にて測定した。
(4)引張強さ、伸び
引張強さ、伸びは、JIS K6400-5にて測定した。
(5)通気量
通気量は、JIS K6400-7 A法にて測定した。
(6)圧縮残留ひずみ
圧縮残留ひずみは、JIS K6400-4 4.5.2 A法にて測定した。試験条件は、70℃の恒温槽にて、50%圧縮、試験時間22時間とした。
(7)湿熱圧縮残留ひずみ
湿熱圧縮残留ひずみは、JIS K6400-4 4.5.2 C法にて測定した。試験条件は、50℃、95%RHの恒温槽にて、70%圧縮、試験時間22時間とした。
【0043】
3.結果
結果を表1に併記する。なお、表中の内部温度とは、スラブ発泡した際のポリウレタンフォーム内部の最高温度を意味する。なお、表1中「-」は未測定であることを示す。
比較例1,実施例1,2は、密度16.0kg/m3-16.5kg/m3のポリウレタンフォームである。実施例1,2は化合物A(プロピレンカーボネート)を添加したポリウレタンフォームである。比較例1は、化合物A(プロピレンカーボネート)を添加していないポリウレタンフォームである。実施例1,2は、同等の密度である比較例1よりも通気性が高く、硬さ及び圧縮残留ひずみが低かった。
【0044】
また、実施例1,2のポリウレタン樹脂組成物はポリオレフィン系樹脂であるポリエチレンパウダーを含有する。実施例1の内部温度は、169℃である。実施例2の内部温度は、167℃である。実施例1,2は、発泡時の発熱が抑制されていた。
【0045】
また、実施例1,2のポリウレタン樹脂組成物は、ポリオレフィン系樹脂であるポリエチレンパウダーとともに、ヒドロキシカルボン酸である乳酸を含有する。ポリウレタンフォームにおいて、ポリオレフィン系樹脂パウダーの添加により、ポリウレタンフォームが黄色に変色する場合があった。実施例1,2は、ポリオレフィン系樹脂とともにヒドロキシカルボン酸を配合することで変色も抑制されていた。
【0046】
比較例2,実施例3は、密度19.8kg/m3のポリウレタンフォームである。実施例3は化合物A(プロピレンカーボネート)を添加したポリウレタンフォームである。比較例2は、化合物A(プロピレンカーボネート)を添加していないポリウレタンフォームである。実施例3は、同等の密度である比較例2よりも通気性が高く、硬さ及び圧縮残留ひずみが低かった。
【0047】
比較例3,実施例4,5は、密度25.0kg/m3-26.7kg/m3のポリウレタンフォームである。実施例4,5は化合物A(プロピレンカーボネート)を添加したポリウレタンフォームである。比較例3は、化合物A(プロピレンカーボネート)を添加していないポリウレタンフォームである。実施例4,5は、同等の密度である比較例3よりも通気性が高く、硬さ及び圧縮残留ひずみが低かった。
【0048】
以上の実施例によれば、ポリウレタンフォームの通気性を向上するとともに、フォームの硬さを下げ、圧縮残留ひずみを改善できた。
【0049】
本開示は上記で詳述した実施例に限定されず、本開示の範囲で様々な変形又は変更が可能である。