(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173058
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】アキュムレータ圧力調整装置、射出装置及び成形機
(51)【国際特許分類】
B22D 17/32 20060101AFI20231130BHJP
B29C 45/03 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
B22D17/32 B
B22D17/32 E
B22D17/32 H
B29C45/03
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022085049
(22)【出願日】2022-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】000003458
【氏名又は名称】芝浦機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135828
【弁理士】
【氏名又は名称】飯島 康弘
(72)【発明者】
【氏名】辻 眞
(72)【発明者】
【氏名】豊島 俊昭
(72)【発明者】
【氏名】中野 敏彰
(72)【発明者】
【氏名】船場 信
(72)【発明者】
【氏名】野田 三郎
【テーマコード(参考)】
4F206
【Fターム(参考)】
4F206JA07
4F206JD04
4F206JL02
4F206JQ31
4F206JT21
4F206JT40
(57)【要約】
【課題】作動用アキュムレータの圧力調整の幅を広くできるアキュムレータ圧力調整装置を提供する。
【解決手段】アキュムレータ圧力調整装置13は、調整用アキュムレータ(調整用ACC41)と、閉塞部材43(又は43A)とを有している。調整用ACC41は、気体用ポート41bを上部に有しているとともに、液用ポート41aを底部に有している。気体用ポート41bは、気体室45bの圧力によって液圧機器(射出シリンダ27)に液圧を付与する作動用アキュムレータ(作動用ACC39)の気体室45bに通じる。液用ポート41aは作動液を流入出させる。閉塞部材43は、調整用ACC41内の作動液の液面に位置し、当該液面の低下に伴って調整用ACC41の底部まで降下したときに液用ポート41aを塞ぐ。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体室の圧力によって液圧機器に液圧を付与する作動用アキュムレータの前記気体室に通じる気体用ポートを上部に有しているとともに、作動液を流入出させる液用ポートを底部に有している調整用アキュムレータと、
前記調整用アキュムレータ内の作動液の液面に位置し、前記液面の低下に伴って前記調整用アキュムレータの底部まで降下したときに前記液用ポートを塞ぐ閉塞部材と、
を有しているアキュムレータ圧力調整装置。
【請求項2】
前記閉塞部材は、前記調整用アキュムレータの内周面との間に作動液が通過できる隙間を生じているとともに、前記調整用アキュムレータ内の作動液に浮く、形状、大きさ及び比重を有している
請求項1に記載のアキュムレータ圧力調整装置。
【請求項3】
前記閉塞部材は、密閉空間を構成している金属部材を有している
請求項2に記載のアキュムレータ圧力調整装置。
【請求項4】
前記閉塞部材は、金属とは異なる第1材料からなる基部と、当該基部の表面を覆う、前記第1材料の比重よりも大きい比重の金属層と、を有している
請求項2に記載のアキュムレータ圧力調整装置。
【請求項5】
前記調整用アキュムレータの底部は、前記閉塞部材が前記調整用アキュムレータの底部に位置しているときに前記液用ポートの周囲において前記閉塞部材に接する、環状のパッキンを有している
請求項2に記載のアキュムレータ圧力調整装置。
【請求項6】
前記閉塞部材は、当該閉塞部材が前記調整用アキュムレータの底部に位置しているときに前記液用ポートの周囲において前記調整用アキュムレータの底部に接する、環状のパッキンを有している
請求項2に記載のアキュムレータ圧力調整装置。
【請求項7】
前記閉塞部材の前記調整用アキュムレータの底部への到達を検出する下限センサを有している
請求項1に記載のアキュムレータ圧力調整装置。
【請求項8】
前記液用ポートからタンクへの作動液の排出を許容及び禁止するバルブと、
前記下限センサによって前記閉塞部材の前記調整用アキュムレータの底部への到達が検出されたときに、前記液用ポートからの作動液の排出を前記バルブによって禁止する制御を行う制御装置と、
を有している請求項7に記載のアキュムレータ圧力調整装置。
【請求項9】
前記液用ポートと前記バルブとの間の流路の圧力を検出可能な圧力センサと、
ユーザに報知を行う報知部と、
を有しており、
前記制御装置は、前記下限センサによって前記閉塞部材の前記調整用アキュムレータの底部への到達が検出された後に前記圧力センサが検出した圧力が、所定の閾値よりも低下したときに、前記報知部によって所定の報知を行う制御を行う
請求項8に記載のアキュムレータ圧力調整装置。
【請求項10】
前記バルブは、液圧源から前記液用ポートへの作動液の供給を許容及び禁止可能であり、
前記制御装置は、
前記圧力センサが検出する圧力が目標圧力よりも大きいときは、前記液用ポートから前記タンクへの作動液の排出を前記バルブによって許容する制御を行い、
前記圧力センサが検出する圧力が前記目標圧力よりも小さいときは、前記液圧源から前記液用ポートへの作動液の供給を前記バルブによって許容する制御を行う
請求項9に記載のアキュムレータ圧力調整装置。
【請求項11】
気体室の圧力によって液圧機器に液圧を付与する作動用アキュムレータの前記気体室に通じる気体用ポートを上部に有しているとともに、作動液を流入出させる液用ポートを底部に有している調整用アキュムレータと、
上下方向に移動可能に前記調整用アキュムレータに収容されており、水を基準とした比重が0.80以下であり、上下方向に見て前記調整用アキュムレータの内周面が成す形状よりも小さい外縁を有しており、前記調整用アキュムレータの底部に位置する状態では当該底部のうち前記液用ポートの周囲の部分に対して1周に亘って接する閉塞部材と、
を有しているアキュムレータ圧力調整装置。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載のアキュムレータ圧力調整装置と、
前記液圧機器としての射出シリンダと、
前記作動用アキュムレータと、
を有している射出装置。
【請求項13】
請求項2~6のいずれか1項に記載のアキュムレータ圧力調整装置と、
前記液圧機器としての射出シリンダと、
前記作動用アキュムレータと、
を有しており、
前記作動用アキュムレータが、前記射出シリンダに通じる液室と、前記気体室とを隔てるピストンを有しているピストン式アキュムレータである
射出装置。
【請求項14】
請求項12に記載の射出装置と、
前記射出装置によって成形材料が射出される型を保持する型締装置と、
を有している成形機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アキュムレータ圧力調整装置(以下、単に「調整装置」ということがある。)、当該調整装置を含む射出装置、並びに当該射出装置を含む成形機に関する。成形機は、例えば、金属を成形するダイカストマシン、又は樹脂を成形する射出成形機である。なお、以下では、「アキュムレータ」を「ACC」と略すことがある。
【背景技術】
【0002】
成形機の射出装置として、成形材料を押すプランジャを射出シリンダによって駆動するものが知られている(例えば、下記特許文献1及び2)。特許文献1及び2では、作動用ACCから射出シリンダへ作動液(例えば油)が供給されることによって射出シリンダが駆動されている。作動用ACCは、ピストン式ACCによって構成されており、ACCシリンダと、ACCシリンダ内を摺動するピストンとを有している。ACCシリンダ内は、ピストンによって、射出シリンダに通じる液室と、圧縮気体を収容する気体室とに区画されている。このような射出装置では、プランジャによって成形材料に最終的に付与される圧力(例えばダイカストマシンの鋳造圧力)は、例えば、作動用ACCの圧力によって決定される。
【0003】
特許文献2では、作動用ACCの圧力を調整するための調整用ACCが開示されている。調整用ACCは、上部が作動用ACCの気体室に通じているとともに下部がポンプ及びタンクに通じている。調整用ACC内で上部の気体と下部の作動液とは直接に接している。ポンプから調整用ACCへ作動液が供給されることによって、調整用ACC及び作動用ACCの全体として、気体が収容されている容積が縮小される。これにより、作動用ACCの気体が更に圧縮される。すなわち、作動用ACCの圧力が高くされる。上記とは逆に、調整用ACC内からタンクへ作動液が排出されることによって作動用ACCの圧力が低くされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭58-55164号公報
【特許文献2】特開平3-184664号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
調整用ACCからタンクへ作動液を排出するとき、調整用ACCから作動液が完全に排出されると、調整用ACCの気体が調整用ACCからタンクへの流路へ流れ込み、さらには、タンクへ流れ込む。これにより、種々の不都合が生じる。このような不都合を避けるために、調整用ACCからタンクへの作動液の排出は、ある程度の量で作動液が調整用ACC内に残っている状態までとされている。すなわち、調整用ACCの容積を基準としたときに、調整用ACC内における作動液の増減の幅は比較的小さくされている。ひいては、作動用ACCの圧力調整の幅は狭くなっている。その結果、例えば、作動用ACCが射出シリンダに作動液を供給するためのものである場合においては、成形材料に最終的に付与される圧力(鋳造圧力)の調整の幅が狭くなっている。
【0006】
従って、作動用アキュムレータの圧力調整の幅を広くできるアキュムレータ圧力調整装置、該調整装置を有する射出装置、及び該射出装置を有する成形機が待たれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係るアキュムレータ圧力調整装置は、気体室の圧力によって液圧機器に液圧を付与する作動用アキュムレータの前記気体室に通じる気体用ポートを上部に有しているとともに、作動液を流入出させる液用ポートを底部に有している調整用アキュムレータと、前記調整用アキュムレータ内の作動液の液面に位置し、前記液面の低下に伴って前記調整用アキュムレータの底部まで降下したときに前記液用ポートを塞ぐ閉塞部材と、を有している。
【0008】
本開示の一態様に係るアキュムレータ圧力調整装置は、気体室の圧力によって液圧機器に液圧を付与する作動用アキュムレータの前記気体室に通じる気体用ポートを上部に有しているとともに、作動液を流入出させる液用ポートを底部に有している調整用アキュムレータと、上下方向に移動可能に前記調整用アキュムレータに収容されており、水を基準とした比重が0.80以下であり、上下方向に見て前記調整用アキュムレータの内周面が成す形状よりも小さい外縁を有しており、前記調整用アキュムレータの底部に位置する状態では当該底部のうち前記液用ポートの周囲の部分に対して1周に亘って接する閉塞部材と、を有している。
【0009】
本開示の一態様に係る射出装置は、上記アキュムレータ圧力調整装置と、前記液圧機器としての射出シリンダと、前記作動用アキュムレータと、を有している。
【0010】
本開示の一態様に係る成形機は、上記射出装置と、前記射出装置によって成形材料が射出される型を保持する型締装置と、を有している。
【発明の効果】
【0011】
上記の構成によれば、作動用アキュムレータの圧力調整の幅を広くできる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施形態に係るダイカストマシンの要部の構成を示す、一部に断面図を含む側面図。
【
図2】
図1のダイカストマシンの射出装置の要部の構成を、射出が行われている状態で示す断面図。
【
図3】
図2の射出装置の要部の構成を、増圧が行われている状態で示す断面図。
【
図4】
図2射出装置の要部の構成を、ACCの圧力調整が行われている状態で示す断面図。
【
図6】制御装置がACCの圧力調整のために実行する処理の手順の一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(実施形態に係るダイカストマシンの要点)
図1は、実施形態に係るダイカストマシン1の要部の構成を示す、一部に断面図を含む側面図である。なお、図の上下方向(紙面に沿う方向)は鉛直方向であり、図の左右方向及び紙面貫通方向は水平方向である。
【0014】
ダイカストマシン1は、例えば、液状の金属材料(溶湯)を金型101内(空間107)へ射出し、溶湯を金型101内で凝固させることにより、ダイカスト品(成形品)を製造する。溶湯の金型101内への射出は、スリーブ21内の溶湯がプランジャ23によって金型101内へ押し出されることによって行われる。プランジャ23は、射出装置9の駆動部25によって駆動される。
【0015】
図2~
図4は、実施形態に係る射出装置9の要部を示す模式的な断面図である。
図2~
図4は、後述するように、互いに異なる状態を示している。
図2~
図4の上下左右方向は、基本的に(模式的に描かれた流路及びバルブ等を除いて)、
図1の上下左右方向に対応している。すなわち、図の上下方向(紙面に沿う方向)は鉛直方向であり、図の左右方向及び紙面貫通方向は水平方向である。
【0016】
射出装置9の駆動部25は、射出シリンダ27と、射出シリンダ27に作動液を供給する作動用ACC39と、作動用ACC39の圧力を調整するためのアキュムレータ圧力調整装置13(以下、単に「調整装置13」ということがある。)とを有している。調整装置13は、調整用ACC41を有している。
【0017】
作動用ACC39は、気体室45b内の圧縮気体の圧力によって液室45aの作動液を射出シリンダ27に供給する。調整用ACC41は、気体室45bに通じている気体用ポート41bと、作動液が流入出する液用ポート41aとを有している。気体用ポート41bは調整用ACC41の上部に開口している。液用ポート41aは調整用ACC41の底部に開口している。
【0018】
液用ポート41aを介して調整用ACC41へ作動液が供給されることによって、気体室45b及び調整用ACC41の全体として、気体が収容されている容積が縮小される。これにより、気体室45bの気体が更に圧縮される。すなわち、作動用ACC39の圧力が高くされる。また、上記とは逆に、液用ポート41aを介して調整用ACC41から作動液が排出されることによって作動用ACC39の圧力は低くされる。
【0019】
調整装置13は、調整用ACC41内に閉塞部材43を有している。閉塞部材43は、作動液に浮いている。換言すれば、閉塞部材43は、作動液の液面に位置している。従って、閉塞部材43は、作動液の液面の上昇及び下降に追従して上昇及び下降する。そして、
図4に示すように、液面の下降に伴って閉塞部材43が調整用ACC41の底部に到達すると、閉塞部材43は液用ポート41aを塞ぐ。これにより、気体が液用ポート41aを介して調整用ACC41の外部へ流出する蓋然性が低減される。
【0020】
気体が調整用ACC41の外部へ流出する蓋然性が低減されることから、気体の流出による不都合が生じる蓋然性が低減される。また、別の観点では、液用ポート41aから所定の余裕量で高い位置に液面の下限を設定する必要性が低減される。すなわち、液面の下限を低くすることができる。その結果、例えば、従来に比較して、作動用ACC39の圧力を低い圧力まで調整することができる。別の観点では、作動用ACC39の圧力調整の幅が広がる。
【0021】
以上が実施形態に係るダイカストマシン1の要点である。以下では、概略、下記の順で説明を行う。
【0022】
1.ダイカストマシン1の全体構成(
図1)
2.射出装置9の構成(
図1~
図4)
2.1.射出装置9の全体構成
2.2.射出シリンダ27
2.3.作動用ACC39
2.4.射出用液圧装置
3.調整装置13の構成(
図2~
図4)
3.1.調整用ACC41
3.2.閉塞部材43
3.3.連通部
3.4.調整用液圧装置
3.5.センサ
4.射出装置の動作(
図2、
図3及び
図5)
5.調整装置の動作(
図4~
図6)
6.閉塞部材の構成の他の例(
図7)
7.実施形態のまとめ
【0023】
(1.ダイカストマシンの全体構成)
図1に示すダイカストマシン1は、既述のように、液状の金属材料(溶湯)を金型101内に射出する。溶湯は、上位概念でいえば、未硬化状態の金属材料(成形材料)である。未硬化状態は、液状の他、固液共存状態を含む。固液共存状態は、液状から凝固が進んだ半凝固状態、又は固体状から溶融が進んだ半溶融状態である。金属は、例えば、アルミニウム又はアルミニウム合金である。なお、実施形態の説明では、未硬化状態の金属材料として、基本的に溶湯を例に取る。
【0024】
金型101は、例えば、固定型103及び移動型105を含んでいる。本実施形態の説明では、便宜上、固定型103又は移動型105の断面を1種類のハッチングで示すが、これらの金型は、直彫り式のものであってもよいし、入れ子式のものであってもよい。また、固定型103及び移動型105には、中子などが組み合わされてもよい。
【0025】
ダイカストマシン1は、例えば、成形のための機械的動作を行うマシン本体3と、マシン本体3の動作を制御する制御ユニット5とを有している。
【0026】
マシン本体3は、例えば、金型101の開閉及び型締めを行う型締装置7と、金型101内に溶湯を射出する射出装置9と、ダイカスト品を固定型103又は移動型105(
図1では移動型105)から押し出す押出装置11とを有している。マシン本体3において、射出装置9以外の構成(例えば型締装置7及び押出装置11の構成)は、種々の構成とされてよく、例えば、公知の構成と同じとされて構わない。
【0027】
成形サイクルにおいて、型締装置7は、移動型105を固定型103へ向かって移動させ、型閉じを行う。さらに、型締装置7は、タイバー(符号省略)の伸長量に応じた型締力を金型101に付与して型締めを行う。型締めされた金型101内には成形品と同一形状の製品部を含む空間107が構成される。射出装置9は、その空間107へ溶湯を射出・充填する。空間107の溶湯は、金型101に熱を奪われて冷却され、凝固する。すなわち、溶湯は成形品になる。その後、型締装置7は、移動型105を固定型103から離れる方向へ移動させて型開きを行う。この際、又はその後、押出装置11は、移動型105から成形品を押し出す。
【0028】
制御ユニット5は、例えば、各種の演算を行って制御指令を出力する制御装置15と、オペレータの入力操作を受け付ける入力装置17と、画像を表示する表示装置19と、を有している。また、別の観点では、制御ユニット5は、例えば、電源回路及び制御回路等を有する不図示の制御盤と、
図1で図示されている操作ユニット(符号省略)とを有している。
【0029】
制御装置15は、例えば、不図示の制御盤及び
図1に図示されている操作ユニットに設けられている。制御装置15は、適宜に分割乃至は分散して構成されてよい。例えば、制御装置15は、型締装置7、射出装置9及び押出装置11毎の下位の制御装置と、この下位の制御装置間の同期を図るなどの制御を行う上位の制御装置とを含んで構成されてよい。
【0030】
表示装置19及び入力装置17は、例えば、操作ユニット(符号省略)に含まれている。操作ユニットは、適宜な位置に設けられてよく、図示の例では、型締装置7の固定ダイプレート(符号省略)に設けられている。表示装置19は、例えば、液晶表示ディスプレイ乃至は有機ELディスプレイを含んだタッチパネルによって構成されている。入力装置17は、例えば、機械式のスイッチ及び前記のタッチパネルによって構成されている。
【0031】
なお、制御ユニット5、制御装置15、入力装置17及び/又は表示装置19は、ダイカストマシン1が含む各装置に着目したときは、その装置の構成要素として捉えられてよい。例えば、制御装置15は、射出装置9の制御装置として捉えられてもよいし、調整装置13の制御装置として捉えられてもよい。
【0032】
(2.射出装置の構成)
(2.1.射出装置の全体構成)
射出装置9は、例えば、金型101内に通じるスリーブ21と、スリーブ21内を摺動可能なプランジャ23と、プランジャ23を駆動する駆動部25とを有している。なお、射出装置9の説明においては、金型101側を前方、その反対側を後方ということがある。また、スリーブ21及びプランジャ23は、消耗品として捉えることができるから、駆動部25のみを射出装置として捉えてもよい。
【0033】
スリーブ21は、例えば、筒状の部材であり、上面には溶湯をスリーブ21内に受け入れるための供給口21aが開口している。プランジャ23は、例えば、スリーブ21内を前後方向に摺動可能なプランジャチップ23aと、先端がプランジャチップ23aに固定されたプランジャロッド23bとを有している。
【0034】
型締装置7による金型101の型締めが完了すると、不図示の給湯装置によって1ショット分の溶湯が供給口21aからスリーブ21内へ注がれる。そして、プランジャ23が
図1の位置からスリーブ21内を前方へ摺動することにより、スリーブ21内の溶湯が金型101内に押し出される(射出される)。
【0035】
図2~
図4に示す射出装置9の駆動部25は、液圧式(又は液圧式と電動式とを組み合わせたハイブリッド式)のものとされている。具体的には、駆動部25は、プランジャ23を駆動する射出シリンダ27と、射出シリンダ27に対する作動液(例えば油)の供給等を行う射出用液圧装置29とを有している。射出用液圧装置29は、既述の作動用ACC39及び調整装置13を含んでいる。
【0036】
射出装置9は、駆動部25等の動作を把握するために、不図示の種々のセンサを有している。制御装置15は、種々のセンサの検出値に基づいて、駆動部25を制御する。種々のセンサは、例えば、公知の射出装置9と同様に設けられてよい。また、制御装置15による駆動部25の制御も、調整装置13に係る制御を除いて、公知の制御と同様とされて構わない。例えば、特に図示しないが、射出装置9は、プランジャ23の位置及び速度を検出するための位置センサと、プランジャ23が溶湯に付与する圧力を検出するための圧力センサと、を有してよい。
【0037】
(2.2.射出シリンダ)
射出シリンダ27は、種々の構成とされてよく、例えば、公知の構成と同じとされて構わない。
図2~
図4に例示されている射出シリンダ27は、いわゆる増圧式のものとされている。なお、実施形態の説明では、便宜上、射出シリンダ27が増圧式である態様を例にとって説明し、特に断り無く、射出シリンダ27が増圧式であることを前提とした表現等を用いることがある。
【0038】
具体的には、例えば、射出シリンダ27は、シリンダ部材31と、シリンダ部材31の内部を摺動可能な射出ピストン33及び増圧ピストン35と、射出ピストン33から前方(プランジャ23側)へ延びるピストンロッド37と、を有している。
【0039】
シリンダ部材31は、型締装置7の固定ダイプレートに対して移動不可能とされている。シリンダ部材31は、射出シリンダ部31eと、射出シリンダ部31eの後部に通じている増圧シリンダ部31fとを有している。増圧シリンダ部31fは、射出シリンダ部31eの後部に通じる小径シリンダ部31xと、小径シリンダ部31xの後端に直列に連結されている大径シリンダ部31yとを有している。大径シリンダ部31yの内径は、小径シリンダ部31xの内径よりも大きい。
【0040】
射出ピストン33は、射出シリンダ部31e内に摺動可能に配置されている。射出ピストン33と射出シリンダ部31eとの間には、パッキン(符号省略)が介在してよい。パッキンが介在する場合も、射出ピストン33が射出シリンダ部31e(シリンダ部材31)内を摺動すると表現する。他の部材(例えば増圧ピストン35及び後述するピストン47)についても同様とする。
【0041】
射出シリンダ部31eの内部の空間は、射出ピストン33によって、ピストンロッド37側のロッド側室31rと、その反対側のヘッド側室31hに区画されている。増圧ピストン35は、小径シリンダ部31xを摺動する小径ピストン35xと、大径シリンダ部31yを摺動する大径ピストン35yとを有している。大径シリンダ部31yの内部は、大径ピストン35yによって、前側室31aと、後側室31bとに区画されている。ピストンロッド37は、シリンダ部材31の外部へ延び出ており、その前端がカップリング24(
図1)によってプランジャ23の後端と連結されている。
【0042】
ヘッド側室31hへ作動液が供給されることによって、射出ピストン33は前進する。これにより、ピストンロッド37及びカップリング24を介して射出ピストン33に連結されているプランジャ23が前進する。ひいては、スリーブ21内の溶湯が空間107に射出される。その後、後側室31bに作動液が供給される。増圧ピストン35は、後側室31bの作動液から前方への圧力を受ける面積(受圧面積)が、小径シリンダ部31x内の作動液から後方への圧力を受ける面積(受圧面積)よりも大きいことから、後側室31bの圧力よりも高い圧力を小径シリンダ部31x内(及びヘッド側室31h)に付与できる。これにより、成形材料の圧力を上昇させる増圧(及びその後の保圧)が行われる。
【0043】
図示の例以外の射出シリンダとしては、例えば、単胴式のものを挙げることができる。単胴式の射出シリンダは、端的に言えば、増圧式の射出シリンダから増圧シリンダ部31f及び増圧ピストン35を無くした構成を有している。
【0044】
(2.3.作動用ACC)
作動用ACC39は、例えば、ヘッド側室31hに作動液を供給する。これにより、上述のように射出(増圧等を含まない狭義の射出)が行われる。また、作動用ACC39は、後側室31bに作動液を供給する。これにより、上述のように増圧が行われる。
【0045】
なお、既述のように、射出シリンダは、単胴式のものであってもよい。この場合において、作動用ACC39は、ヘッド側室31hに作動液を供給する。単胴式の射出シリンダが用いられる態様においては、射出用のACCと、増圧用のACCとが別個に設けられることがある。この場合、実施形態に係る調整装置13(調整用ACC41)は、射出用のACCの圧力を調整する調整装置に適用されてもよいし、増圧用のACCの圧力を調整する調整装置に適用されてもよい。なお、単胴式の射出シリンダだけでなく、増圧式の射出シリンダにおいても、射出用のACCと、増圧用のACCとが設けられても構わない。
【0046】
作動用ACC39は、気体室の圧力によって液圧機器(ここでは射出シリンダ27)に液圧を付与する形式である限り、種々の形式とされてよい。例えば、作動用ACC39は、ピストン式(図示の例)、気体圧式(ガス式等とも称される。)又はブラダ式とされてよい。ピストン式では、圧縮された気体がピストンを介して作動液に圧力を付与する。気体圧式では、圧縮された気体が作動液に直接に触れて作動液に圧力を付与する。なお、気体圧式では、作動液の液面を境界として、下方側が液室と捉えられ、上方側が気体室と捉えられてよい。ブラダ式では、圧縮された気体が可撓性のブラダ(ダイヤフラム)を介して作動液に圧力を付与する。これらの形式のACCにおいて、気体は、例えば、空気若しくは窒素である。
【0047】
図示の例においては、作動用ACC39の形式はピストン式である。すなわち、作動用ACC39は、シリンダ45と、シリンダ45内を軸方向に摺動するピストン47とを有している。シリンダ45の内部は、ピストン47によって、液室45aと、その反対側の気体室45bとに区画されている。液室45aは作動液を収容する。気体室45bは気体を収容する。
【0048】
成形サイクル中において、作動用ACC39の圧力は変動する。例えば、作動用ACC39からヘッド側室31hへ作動液が供給されて射出が行われると、作動用ACC39のピストン47は液室45a側へ移動し、気体室45b内の気体の圧縮が緩和され、作動用ACC39の圧力は低下する。ただし、実施形態の説明では、便宜上、このような圧力変動を無視することがある。従って、例えば、成形サイクル中の具体的な時期について言及することなく、アキュムレータの圧力について説明している場合、いずれの時期の圧力であるかは、合理的に判断されたい。
【0049】
作動用ACC39の圧力は、一般的なダイカストマシンのものと同様に設定されてよい。その具体的な大きさは、ダイカストマシンに要求される性能等によって異なるが、一例を挙げると、13MPa以上15MPa以下である。
【0050】
(2.4.射出用液圧装置)
射出シリンダ27に対する作動液の供給等を行う射出用液圧装置29の構成は、種々の構成とされてよく、例えば、調整装置13の構成を除いて、公知の構成とされて構わない。
【0051】
図2~
図4では、射出用液圧装置29の構成要素として、以下のものが例示されている。作動用ACC39とヘッド側室31hとをつなぐ流路(符号省略)。当該流路に位置する射出バルブ49。作動用ACC39と後側室31bとをつなぐ流路(符号省略)。当該流路に位置する増圧バルブ51。
【0052】
射出バルブ49が開かれるとともに増圧バルブ51が閉じられることによって、作動用ACC39からヘッド側室31hへ作動液が供給され、射出が行われる。また、射出バルブ49が閉じられるとともに増圧バルブ51が開かれることによって、作動用ACC39から後側室31bに作動液が供給され、増圧が行われる。
【0053】
射出バルブ49及び増圧バルブ51の具体的な構成は任意である。図示の例では、これらのバルブは、パイロット式の逆止弁とされている。より詳細には、これらのバルブは、パイロット圧が導入されていないときは、作動用ACC39から射出シリンダ27への流れを許容するとともに、その反対方向の流れを禁止し、パイロット圧が導入されているときは、双方の流れを禁止する。
【0054】
特に図示しないが、射出用液圧装置29は、上記の他、射出シリンダ27の駆動のために、例えば、以下の構成要素を備えていてもよい。射出シリンダ27(例えばヘッド側室31h及び/又は後側室31b)に流入する作動液の流量を制御する流量制御弁(別の観点ではメータイン回路)。射出シリンダ27(例えばロッド側室31r)から流出する作動液の流量を制御する流量制御弁(別の観点ではメータアウト回路)。ロッド側室31rから排出される作動液をヘッド側室31hへ流入させるランアラウンド回路。ポンプ等の液圧源からの作動液を射出シリンダ27(例えばロッド側室31r)へ供給するときに利用される流路及びバルブ。
【0055】
また、特に図示しないが、射出用液圧装置29は、射出(増圧等を含む広義の射出)が完了した後、作動用ACC39を蓄圧するために適宜な構成要素を備えていてよい。例えば、射出用液圧装置29は、ポンプ等の液圧源からの作動液を液室45aへ供給するための流路及びバルブを有してよい。また、例えば、射出用液圧装置29は、液圧源からの作動液をロッド側室31rへ供給し、これにより射出ピストン33を後退させ、ヘッド側室31hの作動液を液室45aへ供給するように流路及びバルブを有していてもよい。液圧源としては、ポンプの他、電動機によって駆動される液圧シリンダが挙げられる。射出装置9が電動式と液圧式とを組み合わせたハイブリッド式である態様においては、電動機によって射出ピストン33を後退させ、ヘッド側室31hの作動液を作動用ACC39へ供給するように射出装置9(射出用液圧装置29)が構成されてもよい。
【0056】
(3.調整装置の構成)
調整装置13は、既述のとおり、作動用ACC39に通じている調整用ACC41と、調整用ACC41内に位置している閉塞部材43とを有している。さらに、調整装置13は、作動用ACC39の気体室45bと調整用ACC41の上部とを連通する連通部53と、調整用ACC41に対する作動液の供給及び排出のための調整用液圧装置55と、種々のセンサと、を有している。これらの構成は、以下のとおりである。
【0057】
(3.1.調整用ACC)
調整用ACC41は、気体圧式のアキュムレータによって構成されている。すなわち、調整用ACC41は、容器状の部材である。そして、調整用ACC41内では、閉塞部材43を無視すれば、気体と作動液とが直接的に接して、圧縮された気体が作動液に圧力を付与する。ただし、これまでの説明からも理解されるように、調整用ACC41は、例えば、作動用ACC39とは異なり、射出シリンダ27のような駆動対象へ作動液を供給することは想定されておらず、作動用ACC39の圧力の調整に利用される。
【0058】
調整用ACC41の具体的な構成は、種々の構成とされてよく、例えば、公知の気体圧式のアキュムレータの構成と同様とされて構わない。図示の例では、調整用ACC41は、概略、シリンダ状に構成されている。すなわち、調整用ACC41の内部の形状は、概略、一定の横断面(径)で軸方向(鉛直方向)に延びる直柱状である。調整用ACC41の横断面(水平方向に平行な断面)の形状は任意であるが、例えば、円形である。なお、以下では、便宜上、特に断り無く、調整用ACC41の横断面の形状が円形であることを前提とした表現又は説明をすることがある。調整用ACC41の内部の上面及び/又は下面(底面)は、例えば、平面状であってもよいし(図示の例)、曲面状であってもよい。
【0059】
調整用ACC41の各種の寸法は任意である。例えば、調整用ACC41の径及び軸方向の長さは、いずれが大きくてもよい。また、調整用ACC41の径、軸方向の長さ及び/又は容積は、作動用ACC39の径、軸方向の長さ及び/又は容積に対して、大きくてもよいし、同等でもよいし、小さくてもよい。調整用ACC41の容積の具体的な値は、射出装置9及び/又は作動用ACC39に要求される性能に応じて適宜に設定されてよい。
【0060】
調整用ACC41を構成する部材も適宜なものとされてよい。図示の例では、特に符号を付さないが、調整用ACC41は、上下が開放された筒状のシリンダチューブと、シリンダチューブの上下の開口を塞いでいる2つのカバーとを有している。各カバーは、例えば、シリンダチューブ内に嵌め込まれている。各カバーとシリンダチューブとの間は、パッキン(符号省略)が介在している。すなわち、調整用ACC41の内部は、既述の液用ポート41a及び気体用ポート41bを無視すれば、気密かつ液密に密閉されている。
【0061】
既述のとおり、調整用ACC41は、液用ポート41a及び気体用ポート41bを有している。実施形態の説明では、液用ポート41a及び気体用ポート41bの語は、調整用ACC41の内部に露出する開口を指すものとする。従って、例えば、調整用ACC41は、液用ポート41aから作動用ACC39の外部へ至る流路として、一般的なポートの語の概念に合致しない比較的長いものを有していてもよい。ただし、上記流路の構成によっては、当該流路の全体がポートとして捉えられても構わない。実施形態の説明でも、便宜上、特に断り無く、流路の全体がポートであるかのような表現をすることがある。
【0062】
前段落の説明から理解されるように、液用ポート41aが調整用ACC41の底部に位置するというとき、液用ポート41aは、調整用ACC41の内部の底部に開口していればよい。すなわち、液用ポート41aは、図示の例とは異なり、調整用ACC41の外部かつ下方に開口していなくてもよい。気体用ポート41bについても同様である。すなわち、気体用ポート41bは、調整用ACC41の内部において上部に開口していればよく、調整用ACC41の外部における開口位置は、理論上は任意である。
【0063】
液用ポート41aが調整用ACC41の底部に位置するというときの底部は、別の表現では、調整用ACC41の底面、上方に面している面、又は下方の端部ということができる。ただし、例えば、底部は、「底『面』」として捉えることができない形状乃至は構成であってもよい。そのような態様としては、例えば、特に図示しないが、閉塞部材43によって液用ポート41aを好適に塞ぐために複雑な機構が調整用ACC41の底部に設けられているものが挙げられる。
【0064】
気体用ポート41bが調整用ACC41の上部に位置するというときの上部は、例えば、調整用ACC41を上部と下部との2つに区分するような場合の上部であってよい。換言すれば、ここでの上部は、調整用ACC41の上面でなくてもよいし、当該上面に比較的近い部分でなくてもよい。また、別の観点では、気体用ポート41bは、調整用ACC41の内部かつ上部の内周面に開口していてもよい。もちろん、気体用ポート41bは、調整用ACC41の上面又は上面に比較的近い位置(例えば気体用ポート41bの内部を上下に5等分したときの最上部)に位置してよい。
【0065】
液用ポート41a及び気体用ポート41b、並びにこれらのポートから調整用ACC41の外部に至る流路の形状及び寸法は任意である。例えば、これらのポートの形状は円形である。また、例えば、これらのポートの径(面積)は、少なくとも、調整用ACC41の内部の直柱状部分の径(横断面の面積)よりも小さい。その比率は任意である。液用ポート41a及び気体用ポート41bの径は、いずれかが他方よりも大きくてもよいし、同等でもよい。
【0066】
図示の例では、液用ポート41aから調整用ACC41の外部へ通じる流路は、液用ポート41aの形状及び大きさのまま、鉛直方向に平行に(別の観点では直線状に)下方へ延びて、調整用ACC41の外部の下面に開口している。また、気体用ポート41bから調整用ACC41の外部へ通じる(連通部53に通じる)流路は、気体用ポート41bの形状及び大きさのまま、鉛直方向に平行に(別の観点では直線状に)上方へ延びて、調整用ACC41の外部の上面に開口している。
【0067】
図示の例では、調整用ACC41と作動用ACC39(そのうちのシリンダ45)とは、形状及び寸法、並びに組み立てられる部材が同一とされ、又は類似とされている。ただし、両者は、全く異なっていても構わない。
【0068】
また、図示の例では、調整用ACC41及び作動用ACC39は、いずれも射出シリンダ27に搭載されている。より詳細には、2つのACCは、射出シリンダ27の上に固定された取付け用の部材(符号省略)に対して共に固定されており、また、作動用ACC39に対して調整用ACC41が後方になるように射出シリンダ27の軸方向に並んでいる。ただし、例えば、2つのACCは、射出シリンダ27の軸方向に並んでいなくてもよいし、2つのACCの一方又は双方は、射出シリンダ27に搭載されていなくてもよい。
【0069】
(3.2.閉塞部材)
閉塞部材43は、既述のように、作動液に浮くように構成されている。例えば、閉塞部材43の全体としての比重(別の観点では密度。以下、同様。)は、作動液の比重よりも小さくされている。閉塞部材43の具体的な比重は、作動液の種類等に応じて適宜に設定されてよい。例えば、一般に、油圧機器に利用される作動油の比重(水を基準とする。以下、同様。)は、0.85以上である。従って、閉塞部材43の比重は、0.80以下、0.70以下、0.60以下又は0.50以下とされてよい。閉塞部材43の比重の下限については特に限定は無い。なお、念のために記載すると、作動液は油以外の液体(例えば水)であってもよい。
【0070】
図示の例では、閉塞部材43は、気密かつ液密な空間(密閉空間)を有する中空状とされている。これにより、閉塞部材43の比重(空間を含む全体としての比重)が小さくされている。その結果、閉塞部材43の材料(空間を除く。以下、同様。)として、作動液の比重よりも大きい比重を有するものが選択可能となっている。例えば、閉塞部材43の材料は、金属である。金属の具体的な種類は任意である。例えば、金属は、鉄(Fe)、アルミニウム(Al)又はステンレス鋼とされてよい。閉塞部材43の空間は、適宜な気体(例えば空気又は窒素)が封入されていてもよいし、真空状態(厳密には大気圧よりも低い状態)とされていてもよい。
【0071】
図示の例では、閉塞部材43は、その全体(空間を除く)が、同一の材料によって一体的に形成されている。ただし、閉塞部材43は、2つ以上の部材が組み合わされて構成されていたり、及び/又は2種以上の材料によって構成されていたりしてもよい。2つ以上の部材は、溶接等によって互いに分離不可能に固定されていてもよいし、ねじ等によって互いに分離可能に固定されていてもよい。閉塞部材43の密閉空間を構成している材料(例えば金属)の表面は塗料等によってコーティングされていてもよい。ただし、そのようなコーティングの有無は無視した表現をすることがある。
【0072】
図示の例とは異なり、閉塞部材43は、密閉空間を有さない構成であってもよい。すなわち、閉塞部材43は、作動液の比重よりも小さい比重を有する材料によって構成されていてもよい。そのような材料としては、例えば、樹脂及び木材を挙げることができる。樹脂は、繊維又はガラスによって強化されたものであってもよい。なお、このような材料は、密閉空間を有する閉塞部材43の材料に用いられても構わない。
【0073】
また、図示の例とは異なり、閉塞部材43の空間には、その全体又は一部に、固体又は液体が配置されていてもよい。なお、便宜上、特に断りが無い限り、閉塞部材が密閉空間を有している、又は閉塞部材が中空状であるというとき、閉塞部材には、気体が存在する密閉空間又は真空状態の密閉空間が存在するものとする。換言すれば、空間内の固体又は液体は、閉塞部材の一部として捉えることができるから、空間全体に固体又は液体が配置されている閉塞部材は、密閉空間を有する閉塞部材としては捉えない。
【0074】
閉塞部材43は、上下方向に見たときに、調整用ACC41の内周面が成す形状よりも小さい外縁を有している。例えば、上下方向に見たときに、調整用ACC41の内周面が成す形状が円形であるのに対して、閉塞部材43の外縁の形状は、調整用ACC41の内径よりも小さい外径を有する円形である。従って、閉塞部材43と調整用ACC41との間には隙間が生じている。
【0075】
上記の隙間は、作動液が閉塞部材43よりも上方から閉塞部材43よりも下方へ流れることを許容する。別の観点では、閉塞部材43は、調整用ACC41の底部から離れているとき、ピストンとは異なり、調整用ACC41のうちの閉塞部材43よりも下方の部分を液密に密閉していない。従って、例えば、後に詳述するように、作動用ACC39から気体用ポート41bを介して調整用ACC41へ作動液が漏れたとき、その作動液は、閉塞部材43を浮かせている作動液(閉塞部材43の下方の作動液)に混ざる。
【0076】
閉塞部材43に関する理解を深めるために閉塞部材43と対比される部材としては、作動用ACC39のピストン47を挙げることができる。ピストン47は、シリンダ45のうちピストン47よりも下方の部分を密閉している。なお、図示の例では、厳密には、ピストン47とシリンダ45との間にはピストン47を軸回りに囲む環状のパッキン(符号省略)が位置しており、ピストン47の外縁は、シリンダ45の内周面が成す形状よりも小さいと解釈することができる。ただし、本開示においては、例えば、閉塞部材43の外縁が調整用ACC41の内周面が成す形状よりも小さい、又は閉塞部材43と調整用ACC41の内周面との間に隙間が生じているというとき、特に断りが無い限り、閉塞部材43と調整用ACC41との間に他の部材(パッキン)が介在する(閉塞部材43がピストン47のように機能する)態様は排除されるものとする。
【0077】
上述したように、上下方向に見たとき、閉塞部材43の外縁の形状は、例えば、調整用ACC41の内周面が成す形状が円形であるのに対して、調整用ACC41の内径よりも小さい外径を有する円形であってよい。この場合、閉塞部材43の外縁は、その外縁の全体が調整用ACC41の内周面から離れることが可能な形状及び大きさを有しているということができる。なお、そのような外縁全体が内周面から離れることができる態様は、上記のような円形と円形との組み合わせに限定されず、他の形状の組み合わせであっても構わない。また、閉塞部材43の外縁は、その全体が調整用ACC41の内周面から離れることが可能な形状及び大きさでなくてもよい。
【0078】
閉塞部材43の外縁と調整用ACC41の内周面との間の隙間の大きさは作動液の通過を許容できる限り任意である。例えば、閉塞部材43の外縁及び調整用ACC41の内周面が円形状である場合において、両者の径の差は、1cm未満であってもよいし、1cm以上であってもよく、1mm未満であってもよいし、1mm以上であってもよく、調整用ACC41の内径の1/10以上であってもよいし、調整用ACC41の内径の1/10未満であってもよい。
【0079】
既述のように、閉塞部材43は、調整用ACC41の底部まで降下すると、液用ポート41aを塞ぐ。別の観点では、液用ポート41aを気密かつ液密に密閉する。閉塞部材43によって液用ポート41aを塞ぐための構成は適宜なものとされてよい。図示の例では、閉塞部材43は、調整用ACC41の底部のうち液用ポート41aの周囲の部分に対して1周(全周)に亘って当接する。これにより、液用ポート41aが塞がれる。上下方向に見て、閉塞部材43の外縁は、例えば、既述のように、調整用ACC41の内周面が成す形状よりも小さい。従って、閉塞部材43の液用ポート41aに対する水平方向の位置は所定の範囲内で変化する。閉塞部材43の大きさは、そのような位置の変動によらずに液用ポート41aを塞ぐことが可能に設定されている。
【0080】
閉塞部材43及び調整用ACC41の底部の一方(図示の例では後者)は、閉塞部材43が調整用ACC41の底部に位置しているときに、液用ポート41aの周囲において閉塞部材43及び調整用ACC41の底部の他方(図示の例では前者)に当接する環状のパッキン57を有している。パッキン57の材料、横断面(
図2に示す断面)の形状、及び上下方向に見たときの形状、並びに各種の寸法は任意である。
【0081】
閉塞部材43の外形の具体的な形状及び寸法は任意である。例えば、閉塞部材43の外形は、円盤状とされてよい。円盤状は、換言すれば、円形状かつ板状であり、又は軸方向(上下方向)の長さが径に比較して小さい直円柱状である。上面及び下面は、例えば、互いに平行な平面状であり、側面は、上面及び下面に直交している。閉塞部材43の他の形状としては、例えば、上記のような円盤形状において、上面及び/又は下面を凸状又は凹状の曲面状にしたり、上面及び/又は下面に適宜な数で凸部又は凹部を設けたりした形状が挙げられる。もちろん、閉塞部材43の形状は、円盤とは全く異なる形状であっても構わない。
【0082】
(3.3.連通部)
作動用ACC39の気体室45bと、調整用ACC41の気体用ポート41bとを連通する連通部53の構成は、種々の構成とされてよく、例えば、公知の構成とされても構わない。例えば、連通部53は、剛体状のパイプ(図示の例)又はブロックによって構成されていてもよいし、可撓性のホースによって構成されていてもよい。連通部53の具体的な形状及び寸法も任意である。連通部53は、作動用ACC39のシリンダ45又は調整用ACC41に対して、溶接等によって分離不可能に固定されていてもよいし、ねじ等によって分離可能に固定されていてもよい。連通部53の少なくとも一部は、作動用ACC39のシリンダ45又は調整用ACC41の一部であってもよい。連通部53の一端と作動用ACC39のシリンダ45との間にはパッキン(符号省略)が配置されてよい。連通部53の他端と調整用ACC41との間にはパッキン(符号省略)が配置されてよい。
【0083】
(3.4.調整用液圧装置)
調整用ACC41に対する作動液の供給及び排出のための調整用液圧装置55の構成は、種々の構成とされてよく、例えば、公知の構成とされても構わない。図示の例では、以下のとおりである。
【0084】
調整用液圧装置55は、作動液を送出するポンプ59と、作動液を貯留するタンク61と、これらと調整用ACC41との間の作動液の流れを制御する調整バルブ63とを有している。
【0085】
ポンプ59及び/又はタンク61は、ダイカストマシン1が有する、調整用液圧装置55以外の液圧装置(例えば射出用液圧装置29のうち調整装置13を除く部分)に共用されていてもよいし、共用されていなくてもよい。ポンプ59及び/又はタンク61は、複数のダイカストマシン1に共用されていてもよいし、共用されていなくてもよい。また、ポンプ59及び/又はタンク61は、ダイカストマシン1の構成要素と捉えることが困難な態様のものであってもよい。
【0086】
ポンプ59及びタンク61の構成は、種々の構成とされてよく、例えば、公知の構成とされて構わない。ポンプ59は、必要に応じて駆動されてもよいし、常時駆動されていてもよい。ポンプ59に代えて、電動機で駆動される液圧シリンダが利用されてもよい。タンク61は、例えば、大気開放型のものとされている。従って、タンク61に接続されている流路等の圧力は、基本的には概ね大気圧である。
【0087】
調整バルブ63は、ポンプ59から調整用ACC41への作動液の流れの許容及び禁止、並びに調整用ACC41からタンク61への作動液の流れの許容及び禁止ができる限り、種々の構成とされてよい。図示の例では、調整バルブ63は、逆止弁65と切換弁67との組み合わせによって構成されている。逆止弁65及び切換弁67は、調整用ACC41の側からポンプ59及びタンク61の側へ、逆止弁65及び切換弁67の順に配置されている。
【0088】
逆止弁65は、パイロット式のものである。逆止弁65は、パイロット圧が導入されていないときは、調整用ACC41から切換弁67への方向の流れを禁止し、その逆方向の流れを許容する。また、逆止弁65は、パイロット圧が導入されているときは、双方の流れを許容する。なお、以下における切換弁67の説明において、逆止弁65に対する接続は、特に断りが無い限り、逆止弁65を介して調整用ACC41に接続するための逆止弁65に対する接続を指し、逆止弁65のパイロット圧が導入されるポートに対する接続を意味しない。
【0089】
切換弁67は、4ポート3位置の切換弁として構成されている。切換弁67は、3つの矩形によって示された状態(位置)のうち、図の左側の矩形の状態では、ポンプ59と逆止弁65とを接続し、タンク61と逆止弁65のパイロット圧用のポートとを接続する。また、切換弁67は、図の右側の矩形の状態では、タンク61と逆止弁65とを接続し、ポンプ59と逆止弁65のパイロット圧用のポートとを接続する。また、切換弁67は、図の中央の矩形の状態では、逆止弁65と、逆止弁65のパイロット圧用のポートと、タンク61との3つを接続し、ポンプ59を上記の3つから遮断する。
【0090】
従って、切換弁67が図の左側の矩形の状態であるときは、逆止弁65にパイロット圧は導入されない。そして、ポンプ59から送出された作動液が切換弁67及び逆止弁65を介して調整用ACC41に供給される。
【0091】
切換弁67が図の右側の矩形の状態であるときは、ポンプ59から送出された作動液がパイロット圧として逆止弁65に導入されて逆止弁65が開かれる。そして、調整用ACC41の作動液が逆止弁65及び切換弁67を介してタンク61に排出される。
【0092】
切換弁67が図の中央の矩形の状態であるときは、逆止弁65にパイロット圧は導入されない。そして、ポンプ59から送出された作動液の調整用ACC41への供給は切換弁67によって禁止される。また、調整用ACC41からタンク61への作動液の排出は逆止弁65によって禁止される。
【0093】
調整バルブ63の駆動方式は任意である。図示の例では、特に符号を付さないが、調整バルブは、スプリングと、スプリングに並列に作動するアクチュエータとを有している。また、アクチュエータは、ソレノイドとパイロット圧とを順次に作動させる。なお、調整バルブ63は、流量制御弁としての機能を有していてもよい。また、調整バルブ63とは別に、固定絞り又は可変絞りが設けられてもよい。
【0094】
(3.5.センサ)
調整装置13は、例えば、調整用ACC41の圧力を検出する圧力センサ(気圧センサ69及び液圧センサ71)と、閉塞部材43の移動可能範囲の下限(調整用ACC41の底部)への到達を検出する下限センサ73とを有している。制御装置15は、例えば、圧力センサの検出値が所定の目標圧力になるように調整用液圧装置55を制御する。また、制御装置15は、例えば、後述するように、下限センサ73の検出値に基づいて、報知又はフェールセーフのための制御を行う。
【0095】
圧力センサの構成は、種々の構成とされてよく、例えば、調整用ACC41の圧力を検出する圧力センサとして公知の構成とされて構わない。例えば、圧力センサは、調整用ACC41の気体の圧力を検出する気圧センサ69であってもよいし、調整用ACC41の作動液の圧力を検出する液圧センサ71であってもよい。図示の例では、気圧センサ69及び液圧センサ71の双方が設けられているが、いずれか一方のみが設けられていてもよい。また、気圧センサ69及び液圧センサ71の具体的な構成も公知の構成とされて構わない。
【0096】
圧力センサは、実質的に調整用ACC41の圧力を検出できれば適宜な位置に配置されてよい。例えば、気圧センサ69は、調整用ACC41の内部かつ上部(想定されている液面の上限位置よりも上方)、連通部53の内部若しくは作動用ACC39の気体室45b、又はこれらの空間から延びる流路に露出してよい。また、液圧センサ71は、調整用ACC41の内部かつ下部(想定されている液面の下限位置よりも下方)若しくは作動用ACC39の液室45a、又はこれらの空間から延びる流路に露出してよい。上記流路は、作動液の供給又は排出に供されるものであってもよいし、液圧の検出のための専用の行き止まりの流路であってもよい。
【0097】
図示の例では、液圧センサ71は、閉塞部材43が調整用ACC41の底部に到達して閉塞部材43よりも下方の部分が密閉されたときに閉塞部材43と調整バルブ63との間に形成される空間に、露出するように(換言すれば当該空間の圧力を検出可能に)配置されている。このような液圧センサ71は、より詳細には、調整用ACC41の底部に到達した閉塞部材43と液用ポート41aとの間に露出していてもよいし、液用ポート41aから外部への流路に位置していてもよい。後者の場合において、液圧センサ71は、調整用ACC41の下端のカバー(符号省略)に設けられていてもよいし、当該カバーから調整用ACC41の外部へ延びる流路(符号省略。図示の例)に設けられていてもよい。
【0098】
液圧センサ71が前段落で述べた位置にある場合、例えば、液圧センサ71は、閉塞部材43によって液用ポート41aが閉じられた後において、閉塞部材43と調整バルブ63との間の圧力(液圧とは限らず、気圧であることもある。)を検出することができる。その結果、例えば、後述するように、調整バルブ63の動作不良を検出できる。
【0099】
下限センサ73は、閉塞部材43が下限に到達したことを検出できる限り、種々の構成とされてよい。例えば、下限センサ73は、リミットスイッチであってよい。リミットスイッチは、調整用ACC41の底部に位置しており、閉塞部材43によって上方から押されることによってONされる。この他、例えば、下限センサ73は、閉塞部材43の位置を検出する非接触式の位置センサとされてもよい。
【0100】
なお、より厳密に見たときに、下限センサ73が検出する閉塞部材43の位置は、閉塞部材43が調整用ACC41の底部に到達する位置でなくてもよい。例えば、閉塞部材43が調整用ACC41の底部に接する前に閉塞部材43が下限センサ73としてのリミットスイッチに接してリミットスイッチの可動接点が固定接点に接してもよい。下限センサ73が閉塞部材43の調整用ACC41の底部への到達を検出するものであるか否かは、技術常識に照らして合理的に判断されてよい。また、閉塞部材43は、調整用ACC41の底部に到達した後にパッキン57の圧縮に応じて更に降下し得る。ただし、本開示の説明では、便宜上、特に断りが無い限り、そのような降下は無視した表現をすることがあり、また、閉塞部材43が調整用ACC41の底部へ到達する位置と、閉塞部材43の下限の位置とを特に区別することもしない。
【0101】
(5.射出装置の動作)
図5は、射出に係る動作を説明するための図である。
【0102】
図5において、横軸は時間tを示しており、右側ほど後の時点となっている。左の縦軸は速度Vを示しており、上側ほど高速である。右の縦軸は圧力Pを示しており、上側ほど高圧である。
【0103】
線LVは、射出速度(プランジャ23の速度)の経時変化を示している。線LP1~LP3は、それぞれ、射出圧力の経時変化を示している。ここでは、射出圧力は、プランジャ23が溶湯に付与する圧力であるものとする。線LP1~LP3の相違については後述する。
【0104】
射出装置9は、例えば、低速射出(時点t0~t1)、高速射出(時点t1~t2)、並びに増圧及び保圧(時点t2~)を順に行う。すなわち、ダイカストマシン1は、線LVによって示されているように、射出の初期段階においては、溶湯の空気の巻き込みを防止する等の観点から比較的低速(速度VL)でプランジャ23を前進させる低速射出を行う。次に、ダイカストマシン1は、線LVで示されているように、溶湯の凝固に遅れずに溶湯を充填するため等の観点から比較的高速(速度VH)でプランジャ23を前進させる高速射出を行う。次に、ダイカストマシン1は、線LP1~LP3によって示されているように、ひけ巣をなくす等の観点から、金型101内の溶湯を上昇させる増圧を行う。その後、線LP1~LP3によって示されているように、ダイカストマシン1は、増圧によって得られた鋳造圧力Pc1~Pc3のいずれかを維持する保圧を行う。
【0105】
より詳細には、低速射出(時点t0~t1)では、例えば、
図2に示されているように、射出バルブ49が開かれ、作動用ACC39からヘッド側室31hへ作動液が供給される。なお、増圧バルブ51は閉じられている。このときのプランジャ23の速度の制御は、メータアウト回路及び/又はメータイン回路によってなされてよい。なお、
図5では、便宜上、低速射出中の射出圧力については、極めて小さいものとして図示が省略されている。
【0106】
高速射出(時点t1~t2)では、例えば、低速射出に引き続き、作動用ACC39からヘッド側室31hへ作動液が供給される。ただし、メータアウト回路及び/又はメータイン回路によってプランジャ23の速度は高速に切り換えられる。速度の切換えに伴い、射出圧力は低速射出のときに比較して上昇する。
【0107】
増圧(時点t2~)では、溶湯が行き場を失うことによって射出圧力が更に上昇する。また、
図3に示されているように、増圧バルブ51が開かれ、作動用ACC39から後側室31bへ作動液が供給されて増圧が行われることによって射出圧力が更に上昇する。そして、射出圧力は、鋳造圧力Pc1~Pc3のいずれかに至る。なお、射出バルブ49は、パイロット圧が導入されることにより閉じられる、又は増圧ピストン35による増圧作用によってヘッド側室31hの圧力が作動用ACC39の圧力よりも高くなることによって自閉する。増圧の後、作動用ACC39から後側室31bへ圧力が付与された状態が維持されることによって、保圧が行われる。
【0108】
図2及び
図3の比較から理解されるように、作動用ACC39から射出シリンダ27へ作動液が放出されると、ピストン47が下降して気体室45bの容積は拡張され、気体の圧縮は緩和される。すなわち、作動用ACC39の圧力は低下する。保圧の後、作動用ACC39は、液室45aに作動液が供給されることによって、射出開始前の圧力まで蓄圧される。そのための構成は、既述のように、種々の構成とされてよい。
【0109】
気体の圧縮の緩和に伴って、調整用ACC41の作動液の圧縮も緩和され、調整用ACC41内の液面は上昇する。ただし、
図2及び
図3では、そのような液面の変動は小さいものとして、調整用ACC41内の液面の位置は
図2及び
図3で同等とされている。
【0110】
鋳造圧力Pc1~Pc3は、例えば、作動用ACC39の圧力によって決定される。より詳細には、例えば、ロッド側室31r及び前側室31aの圧力がタンク圧(大気圧)であるものとする。このとき、鋳造圧力Pc1~Pc3は、パスカルの原理に従って、作動用ACC39の圧力と、大径ピストン35yの径と、小径ピストン35xの径と、射出ピストン33の径と、プランジャチップ23a(
図1)の径とによって決定される。
【0111】
射出装置9の動作は、上記の動作と異なる動作であっても構わない。また、鋳造圧力は、作動用ACC39の圧力によって決定されなくてもよい。例えば、増圧によって射出圧力が上昇しているときに、不図示のバルブによってロッド側室31rからタンク61への作動液の排出を禁止してよい。この排出を禁止するタイミングの設定によって、ロッド側室31rの圧力をタンク圧よりも高い任意の値に設定してよい。これにより、上述した作動用ACC39の圧力によって決定される鋳造圧力よりも低い任意の鋳造圧力を実現してよい。ただし、この場合も、作動用ACC39の上限圧力及び下限圧力が鋳造圧力の上限値及び下限値に影響を及ぼすことに変わりはない。
【0112】
(5.調整装置の動作)
図4に示すように、作動用ACC39の圧力は、調整用ACC41に対する作動液の給排によって調整することができる。すなわち、液用ポート41aを介して調整用ACC41に作動液が供給され、調整用ACC41内の液面が上昇すると、気体室45b、連通部53及び調整用ACC41全体において気体が存在できる空間の容積が縮小され、気体室45bの気体が圧縮され、ひいては、作動用ACC39の圧力が上昇する。また、液用ポート41aを介して調整用ACC41の作動液が排出され、調整用ACC41内の液面が下降すると、気体室45b、連通部53及び調整用ACC41全体において気体が存在できる空間の容積が拡張され、気体室45bの気体の圧縮が緩和され、ひいては、作動用ACC39の圧力が低下する。
【0113】
図4では、調整用ACC41内の液面の位置に関して、上限位置Pos1と下限位置Pos2とが示されている。液面が上限位置Pos1に位置するとき、作動用ACC39の圧力は最も高くされ、ひいては、鋳造圧力は最も高くされる。
図5では、この最も高い鋳造圧力がPc1として示されている。液面が下限位置Pos2に位置するとき、作動用ACC39の圧力は最も低くされ、ひいては、鋳造圧力は最も低くされる。
図5では、この最も低い鋳造圧力がPc2として示されている。
【0114】
上限位置Pos1は、適宜に設定されてよい。その設定方法は、例えば、公知の方法と同様とされてよい。例えば、上限位置Pos1は、調整用ACC41に作動液を供給して、作動用ACC39において想定されている最大圧力及び調整用ACC41において想定されている最大圧力のうち小さい方の圧力まで蓄圧したときの位置であってよい。別の観点では、上限位置Pos1は、上記の最大圧力を超えないように、調整用ACC41に充填されている気体の量によって変動する位置であってよい。
【0115】
下限位置Pos2は、例えば、閉塞部材43が調整用ACC41の底部に到達して液用ポート41aが塞がれたときの液面の位置とされてよい。このときの液面の位置は、例えば、概略、閉塞部材43が作動液に浮いているときの液面から閉塞部材43の下面までの深さと同等の高さで、調整用ACC41の底部から高い位置である。
【0116】
ここで、既述のように、従来においては、気体が液用ポート41aから調整用ACC41の外部へ流出しないように、液面の下限位置は、余裕量を考慮した高さで液用ポート41aよりも上方に設定されていた。その結果、従来の液面の下限位置は、実施形態の下限位置Pos2よりも上方に位置していた。ひいては、最も低い鋳造圧力は、本実施形態における最も低い鋳造圧力よりも高かった。
図5では、この従来の最も低い鋳造圧力がPc3として示されている。
【0117】
図4では、作動用ACC39のピストン47が上限に位置している状態で、上限位置Pos1及び下限位置Pos2が示されている。ただし、作動用ACC39の圧力を調整するために調整用ACC41の液面を上昇又は下降させるときのピストン47の位置は任意である。別の観点では、上限位置Pos1及び下限位置Pos2を規定するときのピストン47の位置は任意である。例えば、図示の例とは異なり、ピストン47が下限に位置している状態で、上限位置Pos1及び下限位置Pos2が規定されてもよい。
【0118】
図6は、調整装置13によって作動用ACC39の圧力を調整するために制御装置15が実行する処理の手順の一例を示すフローチャートである。なお、ここで示す手順は、調整装置13の動作を分かりやすく示す概念的なものであり、正確性は無視している部分が存在する。
【0119】
この処理(換言すれば圧力の調整)は、任意の時期に行われてよい。例えば、この処理は、ダイカストマシン1の稼働を開始したときに実行されてもよいし、成形サイクル毎に成形サイクル中の適宜な時期に行われてもよいし、及び/又は入力装置17に対して所定の操作が行われたときに行われてもよい。また、例えば、ダイカストマシン1が稼働して作動液の温度が上昇すると、作動用ACC39の圧力が上昇する。そこで作動用ACC39の圧力が所定の閾値を超えたときに、
図6の処理が行われてもよい。
【0120】
ステップST1では、制御装置15は、圧力センサ(気圧センサ69及び/又は液圧センサ71)によって検出される作動用ACC39の検出圧力Pdが、目標圧力Ptであるか否か判定する。そして、制御装置15は、肯定判定のときは
図6の処理を終了し、否定判定のときはステップST2に進む。
【0121】
目標圧力Ptは、適宜に設定されてよい。例えば、入力装置17に対する操作によって設定された鋳造圧力に基づいて制御装置15が目標圧力Ptを設定してもよいし、入力装置17に対する操作によって直接的に目標圧力Ptが設定されてもよい。また、射出装置9の製造者によって目標圧力Ptが設定されていてもよい。また、検出圧力Pdが目標圧力Ptであるか否かの判定は、実際には、検出圧力Pdと目標圧力Ptとの差が所定の範囲内であるか否かの判定であってよい。
【0122】
ステップST2では、制御装置15は、検出圧力Pdが目標圧力Ptよりも高いか否か判定する。そして、制御装置15は、肯定判定のときは、ステップST3に進み、否定判定のときは、ステップST4に進む。
【0123】
ステップST3では、制御装置15は、調整バルブ63(及び必要に応じてポンプ59)を制御して、ポンプ59から調整用ACC41に作動液を供給する。より詳細には、制御装置15は、切換弁67を
図4の左側の矩形の状態とする。これにより、作動用ACC39の圧力が上昇する。
【0124】
ステップST3の後、制御装置15は、ステップST1に戻る。そして、制御装置15は、ステップST1で肯定判定がなされるまで、ステップST2及びST3を繰り返す。すなわち、検出圧力Pdが目標圧力Ptに上昇するまで、調整用ACC41への作動液の供給が継続される。なお、実際の制御においては、ステップST1及びST3の繰り返しにおいて、ステップST2の判定は不要である。
【0125】
ステップST3からステップST1へ戻るとき、制御装置15は、例えば、調整用ACC41への作動液の供給を維持するように調整バルブ63を維持してよい。そして、ステップST1で肯定判定がなされたときは、制御装置15は、作動液の供給を停止するように調整バルブ63を制御する。より詳細には、制御装置15は、切換弁67を
図4の中央側の矩形の状態とする。
【0126】
ステップST4では、制御装置15は、調整バルブ63を制御して、調整用ACC41からタンク61へ作動液を排出する。より詳細には、制御装置15は、切換弁67を
図4の右側の矩形の状態とする。これにより、作動用ACC39の圧力が低下する。
【0127】
ステップST4の後、制御装置15は、後述するステップST5を経由してステップST1に戻る。その結果、制御装置15は、ステップST1で肯定判定がなされるまで、ステップST2及びST4(並びにST5)を繰り返す。これにより、検出圧力Pdが目標圧力Ptに低下するまで、調整用ACC41からの作動液の排出が継続される。なお、実際の制御においては、ステップST1及びST4の繰り返しにおいて、ステップST2の判定は不要である。
【0128】
ステップST4からステップST1へ戻るとき、制御装置15は、例えば、調整用ACC41からの作動液の排出を維持するように調整バルブ63を維持してよい。そして、ステップST1で肯定判定がなされたときは、制御装置15は、作動液の排出を停止するように調整バルブ63を制御する。より詳細には、制御装置15は、切換弁67を
図4の中央側の矩形の状態とする。
【0129】
ステップST5では、制御装置15は、下限センサ73からの信号に基づいて、閉塞部材43が下限に到達したか否か判定する。そして、制御装置15は、肯定判定のときはステップST6に進み、否定判定のときはステップST1に戻る。従って、閉塞部材43が下限に到達しない場合(別の観点では液用ポート41aが閉塞部材43によって塞がれない場合)は、上述したように、作動液の排出の継続が行われ得る。
【0130】
ステップST6では、制御装置15は、調整用ACC41からの作動液の排出を禁止するように調整バルブ63を制御する。より詳細には、制御装置15は、切換弁67を
図4の中央側の矩形の状態とする。これにより、閉塞部材43による作動液の禁止に加えて、調整バルブ63による作動液の排出の禁止も行われる。
【0131】
ステップST7では、制御装置15は、液圧センサ71が検出する検出圧力Pd1が所定の閾値Pmよりも低いか否か判定する。そして、制御装置15は、肯定判定のときはステップST8に進み、否定判定のときはステップST8をスキップする。閾値Pmは、少なくともタンク圧(大気圧)よりも高くされている。
【0132】
ステップST7及びST8は、液圧センサ71が
図4の例のように、閉塞部材43と調整バルブ63との間の空間の圧力を検出するように設けられていることを前提としている。閉塞部材43の底部への到達が検出された後、調整バルブ63によってタンク61への作動液の排出が速やかに禁止されると、検出圧力Pd1はタンク圧まで低下しない。従って、検出圧力Pd1が、閾値Pm(>タンク圧)よりも低いことを検出することによって、調整バルブ63による作動液の排出の禁止が、意図されたように行われなかった可能性を検出できる。
【0133】
ステップST8では、制御装置15は、所定の報知を行うように報知部(例えば表示装置19)を制御する。例えば、制御装置15は、検出圧力Pd1が閾値Pmよりも低かったことに対応する文字列又は図形を表示装置19に表示させる。このような表示に加えて、又は代えて、制御装置15は、所定のランプの点灯状態を変えたり、所定の音響(音声を含む。)を出力したりする制御を行ってもよい。その後、制御装置15は、図示の処理を終了する。
【0134】
(6.閉塞部材の構成の他の例)
図7は、閉塞部材の構成の他の例を示す断面図である。この図は、
図2の一部に相当する。
【0135】
既述のように、閉塞部材は、密閉空間を有さない構成であってもよい。
図7の閉塞部材43Aは、そのような密閉空間を有さない閉塞部材の一例である。閉塞部材43Aは、基部75と、基部75の表面全体を覆う金属層77とを有している。基部75は、作動液(及び金属層77)よりも比重が小さい材料によって構成されている。これにより、閉塞部材43A全体としては、作動液よりも比重が小さくなっている。なお、作動液よりも比重が小さい材料の例については既に述べた。
【0136】
基部75は、例えば、閉塞部材43Aの体積の大部分を占める。例えば、基部75は、閉塞部材43Aの体積の9割以上を占めている。また、別の観点では、金属層77は、例えば、概略一定の厚さで基部75を覆っており、基部75の形状は、閉塞部材43Aの形状に反映されている。金属層77の厚さは任意である。
【0137】
また、既述のように、パッキン57は、調整用ACC41に代えて、又は加えて、閉塞部材に設けられていてもよい。閉塞部材43Aは、パッキン57を有する閉塞部材の一例ともなっている。
【0138】
(7.実施形態のまとめ)
以上のとおり、実施形態に係るアキュムレータ圧力調整装置13は、調整用アキュムレータ(調整用ACC41)と、閉塞部材43(又は43A)とを有している。調整用ACC41は、気体用ポート41bを上部に有しているとともに、液用ポート41aを底部に有している。気体用ポート41bは、気体室45bの圧力によって液圧機器(射出シリンダ27)に液圧を付与する作動用アキュムレータ(作動用ACC39)の気体室45bに通じる。液用ポート41aは作動液を流入出させる。閉塞部材43は、調整用ACC41内の作動液の液面に位置し、当該液面の低下に伴って調整用ACC41の底部まで降下したときに液用ポート41aを塞ぐ。
【0139】
別の観点では、実施形態に係るアキュムレータ圧力調整装置13は、調整用アキュムレータ(調整用ACC41)と、閉塞部材43(又は43A)とを有している。調整用ACC41は、気体用ポート41bを上部に有しているとともに、液用ポート41aを底部に有している。気体用ポート41bは、気体室45bの圧力によって液圧機器(射出シリンダ27)に液圧を付与する作動用アキュムレータ(作動用ACC39)の気体室45bに通じる。液用ポート41aは作動液を流入出させる。閉塞部材43は、上下方向に移動可能に調整用ACC41に収容されており、水を基準とした比重が0.80以下であり、上下方向に見て調整用ACC41の内周面が成す形状よりも小さい外縁を有しており、調整用ACC41の底部に位置する状態では当該底部のうち液用ポート41aの周囲の部分に対して1周に亘って接する。
【0140】
従って、実施形態の説明の冒頭で述べたように、液面が低下したときに閉塞部材43によって自動的に液用ポート41aが閉じられることから、気体が液用ポート41aを介して調整用ACC41の外部へ流出する蓋然性が低減される。その結果、例えば、
図4及び
図5を参照して説明したように、従来に比較して、調整用ACC41内の液面を低くすることができ、ひいては、作動用ACC39の圧力を調整できる幅が低圧側に広くなる。なお、説明を分かりやすくするために低圧側に幅を広くできると述べたが、作動用ACC39、連通部53及び調整用ACC41に充填されている気体の質量を多くすれば圧力が調整される幅は高圧側にシフトされるから、高圧側に幅を広くすることも可能である。
【0141】
閉塞部材43は、調整用ACC41の内周面との間に作動液が通過できる隙間を生じていてよい。また、閉塞部材43は、作動液に浮く、形状、大きさ及び比重を有していてよい。
【0142】
従って、例えば、閉塞部材43がピストン状である態様(当該態様も本開示に係る技術に含まれる。)とは異なり、作動用ACC39から気体用ポート41bを介して調整用ACC41に漏れた作動液は、閉塞部材43を浮かせている作動液に混ざることができる。その結果、閉塞部材43の上に作動液が溜まって、意図されていない作用が生じる蓋然性が低減される。
【0143】
なお、作動用ACC39は、ピストン式アキュムレータであるから、理論上は、液室45aの作動液は、調整用ACC41へ漏れない。しかし、実際には、液室45aの作動液は、シリンダ45とピストン47との間を通過して気体室45bへ漏れ、さらには、調整用ACC41に漏れる。その理由としては、ピストン47が下降するときは高速であり、作動液がシリンダ45の内周面に付着した状態でピストン47の上方に残されやすいこと、その一方で、ピストン47が上昇するときは相対的に低速であり、シリンダ45の内周面に付着している作動液がピストン47によって上方へ擦り取られやすい(ピストン47の下方に残りにくい)ことが挙げられる。
【0144】
閉塞部材43は、密閉空間を構成している金属部材を有してよい。なお、
図2等に例示した閉塞部材43は、その全体が金属部材である。
【0145】
この場合、例えば、閉塞部材43の比重を作動液よりも小さくしつつ、閉塞部材43の材料として金属を用いることができる。閉塞部材43の材料が金属である場合、例えば、閉塞部材43の材料が樹脂又は木材である態様に比較して、閉塞部材43が作動液を吸収して変質する蓋然性が低減される。
【0146】
閉塞部材43A(
図7)は、金属とは異なる第1材料からなる基部75と、当該基部75の表面を覆う、第1材料の比重よりも大きい比重の金属層77と、を有してよい。
【0147】
この場合、例えば、閉塞部材43Aを中空状にせずに、作動液に触れる表面を金属にしつつ、閉塞部材43Aの比重を作動液よりも小さくできる。表面が金属層77であることによって、閉塞部材43が金属部材である場合と同様に、閉塞部材43Aが作動液を吸収して変質する蓋然性が低減される。閉塞部材の形状及び大きさ並びに製造方法にもよるが、中空状に閉塞部材を作製するよりも、このような2種の材料によって構成した方が、製造コストが安価になることがある。
【0148】
調整用ACC41の底部は、閉塞部材43(43A)が調整用ACC41の底部に位置しているときに液用ポート41aの周囲において閉塞部材43に接する、環状のパッキン57を有していてよい。及び/又は、閉塞部材43は、当該閉塞部材43が調整用ACC41の底部に位置しているときに液用ポート41aの周囲において調整用ACC41の底部に接する、環状のパッキン57を有していてよい。
【0149】
この場合、例えば、まず、閉塞部材43と調整用ACC41の底部の液用ポート41aの周囲部分とが接して液用ポート41aが塞がれるから、閉塞部材が有している突部が液用ポート41aに挿入されて液用ポート41aが塞がれるような態様(当該態様も本開示に係る技術に含まれる。)に比較して、液用ポート41aを塞ぐときの閉塞部材43の水平方向の位置に関して遊びが許容される。その結果、例えば、閉塞部材43と調整用ACC41の内周面との間に隙間(遊び)を生じさせつつ閉塞部材43を作動液に浮かすことが容易化される。また、パッキンによって密閉性が向上し、気体が液用ポート41aを介して調整用ACC41の外部へ流出する蓋然性が低減される。
【0150】
なお、上述した閉塞部材が有している突部が液用ポート41aに挿入されて液用ポート41aが塞がれるような態様においては、上記突部を先端側ほど細くなるテーパ状としたり、液用ポート41aから下方に延びる流路を上方ほど径が大きくなる逆テーパ状としたりしてよい。これにより、閉塞部材が調整用ACC41の底部から上方へ離れているときに閉塞部材と調整用ACC41の内周面との遊びが存在しても、閉塞部材が下降したときに閉塞部材と液用ポート41aとの水平方向の位置合わせが行われる。すなわち、閉塞部材43と調整用ACC41の内周面との遊び(別の観点では、閉塞部材43の外縁全体が調整用ACC41の内周面から離れることができる構成)に関して、閉塞部材43と調整用ACC41の底部のうち液用ポート41aの周囲の部分との接触は必須の要件ではない。
【0151】
調整装置13は、閉塞部材43の調整用ACC41の底部への到達を検出する下限センサ73を有していてよい。
【0152】
この場合、例えば、制御装置15は、下限センサ73の検出結果に基づいて閉塞部材43が下限に到達したこと(これに相当する情報を含む。)を報知部(例えば表示装置19)によって報知する制御(不図示)を行うことができる。これにより、例えば、オペレータは、現在の圧力よりも低くする圧力調整ができないことを知ることができ、オペレータの利便性が向上する。
【0153】
調整装置13は、バルブ(調整バルブ63)と、制御装置15とを有してよい。調整バルブ63は、液用ポート41aからタンク61への作動液の排出を許容及び禁止してよい。制御装置15は、下限センサ73によって閉塞部材43の調整用ACC41の底部への到達が検出されたときに、液用ポート41aからの作動液の排出を調整バルブ63によって禁止する制御(ステップST6)を行ってよい。
【0154】
この場合、例えば、液用ポート41aからタンク61への作動液(若しくは気体)の流れは、閉塞部材43によって禁止されるだけでなく、調整バルブ63によっても禁止される。これにより、気体がタンク61へ流れる蓋然性が更に低減される。別の観点では、調整バルブ63によってフェールセーフが実現される。
【0155】
なお、より厳密に見たときには、既に触れたように、下限センサ73が閉塞部材43の調整用ACC41の底部への到達を検出するタイミングは、現に閉塞部材43が調整用ACC41の底部に接するタイミング(別の観点では液用ポート41aが塞がれるタイミング)よりも早いことがあり得る。ひいては、閉塞部材43が液用ポート41aを塞ぐ前に調整バルブ63が閉じられることもあり得る。すなわち、前段落の説明とは逆に、調整バルブ63によって作動液の排出を禁止する動作に対して、閉塞部材43によってフェールセーフが実現されてもよいし、いずれが主でいずれが従であるか区別ができなくてもよい。
【0156】
調整装置13は、液用ポート41aと調整バルブ63との間の流路の圧力を検出可能な圧力センサ(液圧センサ71)と、ユーザに報知を行う報知部(例えば表示装置19)と、を有してよい。制御装置15は、下限センサ73によって閉塞部材43の調整用ACC41の底部への到達が検出された後に液圧センサ71が検出した圧力(検出圧力Pd1)が、所定の閾値Pmよりも低下したときに(ステップST7で肯定判定がなされたときに)、報知部によって所定の報知を行う制御(ステップST8)を行ってよい。
【0157】
この場合、例えば、既述のように、調整バルブ63による作動液の排出の禁止に関して、意図された作用が生じていないときに、オペレータはそのことを知ることができる。その結果、例えば、調整装置13のメンテナンスが容易化される。
【0158】
なお、ここでは、検出圧力Pd1が所定の閾値Pmよりも低下したときに報知を行う例を示した。逆に、検出圧力Pd1が所定の閾値よりも高いときに報知を行ってもよい。この場合、例えば、閉塞部材43による作動液の排出の禁止に関して、意図された作用が生じておらず、調整用ACC41の圧力によって液用ポート41aと調整バルブ63との間流路の圧力が上昇していることを検知できる。
【0159】
調整バルブ63は、液用ポート41aからタンク61への作動液の排出の許容及び禁止に加えて、液圧源(ポンプ59)から液用ポート41aへの作動液の供給を許容及び禁止可能であってよい。制御装置15は、液圧センサ71が検出する圧力(検出圧力Pd)が目標圧力Ptよりも大きいとき(ステップST2で否定判定がなされたとき)は、液用ポート41aからタンク61への作動液の排出を調整バルブ63によって許容する制御を行ってよい(ステップST4)。また。制御装置15は、検出圧力Pdが目標圧力Ptよりも小さいとき(ステップST2で肯定判定がなされたとき)は、ポンプ59から液用ポート41aへの作動液の供給を調整バルブ63によって許容する制御を行ってよい(ステップST3)。
【0160】
すなわち、液圧センサ71は、調整バルブ63(及び/又は閉塞部材43)による作動液の排出の禁止がなされたか否かの確認に利用されるだけでなく、作動用ACC39の圧力を目標圧力Ptに近づけることに利用されてよい。この場合、例えば、気圧センサ69は設けられなくてよい。これにより、調整装置13の構成を簡素化できる。
【0161】
なお、以上の実施形態において、射出シリンダ27は、作動用アキュムレータから液圧が付与される液圧機器の一例である。調整バルブ63はバルブの一例である。気圧センサ69及び液圧センサ71はそれぞれ圧力センサの一例である。表示装置19は報知部の一例である。ダイカストマシン1は成形機の一例である。溶湯は成形材料の一例である。金型101は型の一例である。
【0162】
本開示に係る技術は、以上の実施形態に限定されず、種々の態様で実施されてよい。
【0163】
作動用アキュムレータから液圧が付与される液圧機器は、射出シリンダに限定されない。例えば、液圧機器は、成形機の技術分野に属するものに限定されず、工作機械、建設機械又は作業用車両の技術分野に属するものであってもよい。また、例えば、液圧機器は、液圧シリンダに限定されず、液圧モータであってもよい。また、例えば、液圧機器が成形機の技術分野に属する液圧シリンダである場合において、液圧機器は、局部加圧用のもの、押出し用のもの、及び/又は型開閉及び型締めの少なくとも一方のためのものであってもよい。
【0164】
作動用アキュムレータは、液圧機器(例えば射出シリンダ)を積極的に駆動するためのものでなくてもよい。例えば、作動用アキュムレータは、液圧機器の駆動に加えて、又は代えて、液圧機器から圧力を吸収することに寄与してよい。吸収される圧力は、一時的に生じる過剰な圧力であってもよいし、一定期間に亘って生じる圧力であってもよい。
【0165】
成形機は、ダイカストマシンに限定されない。例えば、成形機は、他の金属成形機であってもよいし、樹脂を成形する射出成形機であってもよいし、木粉に熱可塑性樹脂等を混合させた材料を成形する成形機であってもよい。また、成形機は、横型締横射出に限定されず、例えば、縦型締縦射出、縦型締横射出、横型締縦射出であってもよい。ダイカストマシンは、コールドチャンバマシンに限定されず、例えば、ホットチャンバマシンであってもよい。
【0166】
実施形態の説明でも触れたように、射出装置の駆動部は、液圧式のものに限定されず、電動式と液圧式とを組み合わせたハイブリッド式であってもよい。作動用アキュムレータは、射出に利用されてもよいし、増圧に利用されてもよいし、その双方に利用されてもよい。また、既述のように、作動用アキュムレータは、射出シリンダを積極的に駆動するためのものではなく、その圧力を吸収するような用途に利用されるものであってもよい。射出は、低速射出及び高速射出を含むものに限定されず、例えば、低速で層流充填を行うものであってもよい。
【0167】
実施形態では、1つの作動用ACCに対して1つの調整用ACCが設けられた。ただし、1つの作動用ACCに対して2以上の調整用ACCが設けられてもよい。実施形態の説明でも触れたように、閉塞部材は、作動液に浮くものに限定されず、ピストン状であってもよい。閉塞部材は、比重が作動液よりも小さいものに限定されず、上部に凹部を有することによって(ピストン47を参照)作動液に浮いてもよい。なお、閉塞部材の比重の用語は、実施形態のように閉塞部材が密閉空間を有している場合においては、密閉空間を含む閉塞部材の全体の比重を指し、上記のように閉塞部材が凹部を有している場合においては、凹部内の空間を除く閉塞部材の比重を指すものとする。
【0168】
実施形態では、作動用ACCの圧力調整は、調整用ACCへの作動液の供給及び排出によって行われた。しかし、作動用ACCの圧力調整は、調整用ACCへの作動液の供給及び排出に加えて、駆動用ACC、連通部及び調整用ACCの気体を収容する空間に対する気体の供給及び排出によって行われてもよい。
【符号の説明】
【0169】
1…ダイカストマシン(成形機)、9…射出装置、13…アキュムレータ圧力調整装置、21…スリーブ、23…プランジャ、25…駆動部、27…射出シリンダ(液圧機器)、39…作動用アキュムレータ、41b…気体室、41…調整用アキュムレータ、41a…液用ポート、41b…気体用ポート、43…閉塞部材、101…金型(型)、107…空間(型の内部)。