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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173064
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】算出装置、方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04B 7/0413 20170101AFI20231130BHJP
   H04B 7/0452 20170101ALI20231130BHJP
   H04B 7/0426 20170101ALI20231130BHJP
   H04J 99/00 20090101ALI20231130BHJP
   H04W 16/28 20090101ALI20231130BHJP
【FI】
H04B7/0413 200
H04B7/0452
H04B7/0426 200
H04J99/00
H04W16/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022085056
(22)【出願日】2022-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】土井 隆暢
(72)【発明者】
【氏名】村岡 一志
(72)【発明者】
【氏名】式田 潤
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067EE02
5K067EE10
(57)【要約】
【課題】受信SINRの推定精度を向上させることができる、算出装置、方法、及びプログラムを提供する。
【解決手段】算出装置40にて相関算出部44は、各グループについて、対象レイヤの等価チャネルベクトルと、対象レイヤの等価チャネルベクトル以外の各等価チャネルベクトルとの内積である、1つ又は複数の「第1相関」を算出する。相関算出部45は、各グループについて、対象レイヤの等価チャネルベクトル以外の、同一の等価チャネルベクトル同士の又は異なる2つの等価チャネルベクトルの内積である、1つ又は複数の「第2相関」を算出する。受信SINR算出部46は、対象レイヤの受信電力と、各グループについての上記1つ又は複数の第1相関と、各グループについての上記1つ又は複数の第2相関とに基づいて、対象レイヤの受信SINRを算出する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の無線端末と無線基地局とを含む無線通信システムにおいて、レイヤ毎の受信SINR(Signal to Interference and Noise power Ratio)を算出する算出装置であって、
各無線端末は、1つ又は複数の送信アンテナを有し、1つ又は複数のレイヤの送信ストリームに対して送信ビームフォーミングウェイトを乗算することによって前記1つ又は複数の送信アンテナのそれぞれから送信する送信信号を形成し、
前記無線基地局は、複数の受信アンテナを有し、前記複数の無線端末から送信された送信信号が空間多重された空間多重信号を前記複数の受信アンテナによって受信し、
前記算出装置は、
レイヤ毎に等価チャネルベクトルを推定し、各等価チャネルベクトルは、前記複数の無線端末と前記無線基地局との間のチャネル応答行列と、各等価チャネルベクトルに対応するレイヤの送信ストリームに乗算される送信ビームフォーミングウェイトベクトルとの乗算結果をベクトル要素として含む、チャネルベクトル推定部と、
推定された複数の等価チャネルベクトルを複数のグループに分けるグルーピング部と、
受信SINRを算出する対象である対象レイヤの受信電力を算出する受信電力算出部と、
各グループについて、前記対象レイヤの等価チャネルベクトルと前記対象レイヤの等価チャネルベクトル以外の各等価チャネルベクトルとの内積である、1つ又は複数の第1相関を算出する第1の相関算出部と、
各グループについて、前記対象レイヤの等価チャネルベクトル以外の、同一の等価チャネルベクトル同士の又は異なる2つの等価チャネルベクトルの内積である、1つ又は複数の第2相関を算出する第2の相関算出部と、
前記対象レイヤの受信電力と、各グループについての前記1つ又は複数の第1相関と、各グループについての前記1つ又は複数の第2相関とに基づいて、前記対象レイヤの受信SINRを算出する受信SINR算出部と、
を具備する、算出装置。
【請求項2】
前記受信SINR算出部は、各グループについての第1相関と第2相関の逆行列との積を前記対象レイヤの受信SINRを小さくするパラメータとして用いることによって、前記対象レイヤの受信SINRを算出する、
請求項1記載の算出装置。
【請求項3】
前記受信SINR算出部は、各グループについての前記第2相関の逆行列を、各グループの等価チャネルベクトルを列ベクトルとして含む行列を特異値分解することによって得られる特異行列及び特異値行列を用いて算出する、
請求項2記載の算出装置。
【請求項4】
各グループは、同じ無線端末から送信されたレイヤの等価チャネルベクトルから構成されるか、又は、複数の無線端末から送信されたレイヤの等価チャネルベクトルから構成される、
請求項1又は2に記載の算出装置。
【請求項5】
前記グルーピング部は、第1レイヤの第1等価チャネルベクトルと第2レイヤの第2等価チャネルベクトルとの相関が閾値以上である場合、前記第1等価チャネルベクトル及び前記第2等価チャネルベクトルを同じグループに含める、
請求項1又は2に記載の算出装置。
【請求項6】
前記グルーピング部は、前記推定された複数の等価チャネルベクトルを複数のグループに分けるルールを、複数のルール候補のうちで切り替える、
請求項1又は2に記載の算出装置。
【請求項7】
前記受信SINR算出部は、各グループについての、前記第1相関と、前記第2相関及び対角行列の和の逆行列との積を、前記対象レイヤの受信SINRを小さくするパラメータとして用いることによって、前記対象レイヤの受信SINRを算出する、
請求項1記載の算出装置。
【請求項8】
各グループが1つのレイヤの等価チャネルベクトルから構成され、
前記受信SINR算出部は、各グループについての、前記第1相関と、前記第2相関及び任意の実数との和の逆数との積を、前記対象レイヤの受信SINRを小さくするパラメータとして用いることによって、前記対象レイヤの受信SINRを算出する、
請求項1記載の算出装置。
【請求項9】
各無線端末が、1つ又は複数の送信アンテナを有し、1つ又は複数のレイヤの送信ストリームに対して送信ビームフォーミングウェイトを乗算することによって前記1つ又は複数の送信アンテナのそれぞれから送信する送信信号を形成する、複数の無線端末と、複数の受信アンテナを有し、前記複数の無線端末から送信された送信信号が空間多重された空間多重信号を前記複数の受信アンテナによって受信する無線基地局と、を含む無線通信システムにおいて、レイヤ毎の受信SINR(Signal to Interference and Noise power Ratio)を算出する算出装置によって実行される方法であって、
レイヤ毎に等価チャネルベクトルを推定することを含み、
各等価チャネルベクトルは、対応するレイヤの送信ストリームと該送信ストリームに乗算される送信ビームフォーミングウェイトベクトルとの乗算結果をベクトル要素として含み、
前記方法は、さらに、
推定された複数の等価チャネルベクトルを複数のグループに分けることと、
受信SINRを算出する対象である対象レイヤの受信電力を算出することと、
各グループについて、前記対象レイヤの等価チャネルベクトルと前記対象レイヤの等価チャネルベクトル以外の各等価チャネルベクトルとの内積である、1つ又は複数の第1相関を算出することと、
各グループについて、前記対象レイヤの等価チャネルベクトル以外の、同一の等価チャネルベクトル同士の又は異なる2つの等価チャネルベクトルの内積である、1つ又は複数の第2相関を算出することと、
前記対象レイヤの受信電力と、各グループについての前記1つ又は複数の第1相関と、各グループについての前記1つ又は複数の第2相関とに基づいて、前記対象レイヤの受信SINRを算出することと、
を含む方法。
【請求項10】
各無線端末が、1つ又は複数の送信アンテナを有し、1つ又は複数のレイヤの送信ストリームに対して送信ビームフォーミングウェイトを乗算することによって前記1つ又は複数の送信アンテナのそれぞれから送信する送信信号を形成する、複数の無線端末と、複数の受信アンテナを有し、前記複数の無線端末から送信された送信信号が空間多重された空間多重信号を前記複数の受信アンテナによって受信する無線基地局と、を含む無線通信システムにおいて、レイヤ毎の受信SINR(Signal to Interference and Noise power Ratio)を算出する算出装置に、処理を実行させるプログラムであって、
前記処理は、レイヤ毎に等価チャネルベクトルを推定することを含み、
各等価チャネルベクトルは、対応するレイヤの送信ストリームと該送信ストリームに乗算される送信ビームフォーミングウェイトベクトルとの乗算結果をベクトル要素として含み、
前記処理は、さらに、
推定された複数の等価チャネルベクトルを複数のグループに分けることと、
受信SINRを算出する対象である対象レイヤの受信電力を算出することと、
各グループについて、前記対象レイヤの等価チャネルベクトルと前記対象レイヤの等価チャネルベクトル以外の各等価チャネルベクトルとの内積である、1つ又は複数の第1相関を算出することと、
各グループについて、前記対象レイヤの等価チャネルベクトル以外の、同一の等価チャネルベクトル同士の又は異なる2つの等価チャネルベクトルの内積である、1つ又は複数の第2相関を算出することと、
前記対象レイヤの受信電力と、各グループについての前記1つ又は複数の第1相関と、各グループについての前記1つ又は複数の第2相関とに基づいて、前記対象レイヤの受信SINRを算出することと、
を含む、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、算出装置、方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
大容量通信を実現させる手法として、複数のアンテナを有する基地局が複数の無線端末(ユーザ端末)と同時に無線通信を行うマルチユーザMIMO(Multi-Input Multi-Output)が知られている。マルチユーザMIMOは、例えば、第5世代移動通信(5G)システム等のマルチプルアクセス・セルラーシステムの上り回線(アップリンク)に使用され得る。上り回線マルチユーザMIMOでは、複数の無線端末が同時に送信した無線信号が空間多重された状態で送信される。そのため、同時に送信する無線端末およびレイヤ(送信データストリーム)の組み合わせによっては、基地局において干渉が大きく、受信処理後の受信信号対干渉雑音電力比(SINR: Signal to Interference and Noise power Ratio)が劣化するため、スループットが低下することがある。そこで、基地局において受信SINRが向上するように、空間多重送信に係る、無線端末およびレイヤが選択される。このとき、空間多重送信に係る、無線端末およびレイヤの組み合わせごとに、各レイヤの受信SINRを推定する必要がある。そのため、低演算量で受信SINRを推定することが求められる。
【0003】
低演算量な受信SINR推定方式として、特許文献1および非特許文献1に記載の方式1がある。方式1では、下り回線(ダウンリンク)において、無線端末が受信したレイヤと基地局の送信アンテナとの間のチャネルベクトルを用いて、各レイヤの受信電力と、複数のレイヤのチャネルベクトルの相関の総和とに基づいて、受信SINRが推定される。方式1は、チャネルベクトルの相関の総和が大きいほど、干渉による影響が大きく、受信SINRが低くなることを反映した、受信SINR推定方式である。方式1は、チャネルベクトルとしてユーザ側での処理を含む等価チャネルベクトルを用いることで、上り回線にも適用できる。
【0004】
他の受信SINR推定方式として、特許文献2に記載の方式2がある。方式2は、下り回線において、受信SINRの推定対象レイヤの受信電力と、チャネルベクトルの各要素の二乗値を要素に持つ電力ベクトルとを用いて、受信SINRを推定する。方式2は、推定対象レイヤの電力ベクトルと他のレイヤの電力ベクトルとの相関の総和が大きいほど、受信SINRが低くなる、ことを反映した推定方式である。また、各推定対象レイヤに対応する相関の総和を用いて推定することで、推定対象レイヤごとに異なる干渉の影響が反映される。また、方式2は、等価チャネルベクトルを用いることで、上り回線にも適用できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009-268106号公報
【特許文献2】特開2018-061152号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】J.Liu, X.She, L.Chen, “A low complexity capacity-greedy user selection scheme for zero-forcing beamforming,” VTC Spring 2009, Apr. 2009.
【非特許文献2】J. Shikida, N. Ishii, and Y. Kakura, “Performance Analysis of Low Complexity Multi-User MIMO Scheduling Schemes for Massive MIMO System”, The 22nd Asia-Paciific Conference on Communications (APCC2016), pp.180-184, 2016.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記の方式1では、レイヤごとに異なる干渉を同じ影響として扱うため、受信SINRの推定精度が悪い可能性がある。また、上記の方式2では、推定対象レイヤではない、他のレイヤの電力ベクトルと、別な他のレイヤの電力ベクトルとの類似度が高い場合であっても、いずれも同等に重複して干渉として扱うため、受信SINRの推定精度が悪い可能性がある。
【0008】
本開示の目的は、受信SINRの推定精度を向上させることができる、算出装置、方法、及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の態様にかかる算出装置は、複数の無線端末と無線基地局とを含む無線通信システムにおいて、レイヤ毎の受信SINR(Signal to Interference and Noise power Ratio)を算出する算出装置であって、
各無線端末は、1つ又は複数の送信アンテナを有し、1つ又は複数のレイヤの送信ストリームに対して送信ビームフォーミングウェイトを乗算することによって前記1つ又は複数の送信アンテナのそれぞれから送信する送信信号を形成し、
前記無線基地局は、複数の受信アンテナを有し、前記複数の無線端末から送信された送信信号が空間多重された空間多重信号を前記複数の受信アンテナによって受信し、
前記算出装置は、
レイヤ毎に等価チャネルベクトルを推定し、各等価チャネルベクトルは、前記複数の無線端末と前記無線基地局との間のチャネル応答行列と、各等価チャネルベクトルに対応するレイヤの送信ストリームに乗算される送信ビームフォーミングウェイトベクトルとの乗算結果をベクトル要素として含む、チャネルベクトル推定部と、
推定された複数の等価チャネルベクトルを複数のグループに分けるグルーピング部と、
受信SINRを算出する対象である対象レイヤの受信電力を算出する受信電力算出部と、
各グループについて、前記対象レイヤの等価チャネルベクトルと前記対象レイヤの等価チャネルベクトル以外の各等価チャネルベクトルとの内積である、1つ又は複数の第1相関を算出する第1の相関算出部と、
各グループについて、前記対象レイヤの等価チャネルベクトル以外の、同一の等価チャネルベクトル同士の又は異なる2つの等価チャネルベクトルの内積である、1つ又は複数の第2相関を算出する第2の相関算出部と、
前記対象レイヤの受信電力と、各グループについての前記1つ又は複数の第1相関と、各グループについての前記1つ又は複数の第2相関とに基づいて、前記対象レイヤの受信SINRを算出する受信SINR算出部と、
を具備する。
【0010】
第2の態様にかかる方法は、各無線端末が、1つ又は複数の送信アンテナを有し、1つ又は複数のレイヤの送信ストリームに対して送信ビームフォーミングウェイトを乗算することによって前記1つ又は複数の送信アンテナのそれぞれから送信する送信信号を形成する、複数の無線端末と、複数の受信アンテナを有し、前記複数の無線端末から送信された送信信号が空間多重された空間多重信号を前記複数の受信アンテナによって受信する無線基地局と、を含む無線通信システムにおいて、レイヤ毎の受信SINR(Signal to Interference and Noise power Ratio)を算出する算出装置によって実行される方法であって、
レイヤ毎に等価チャネルベクトルを推定することを含み、
各等価チャネルベクトルは、対応するレイヤの送信ストリームと該送信ストリームに乗算される送信ビームフォーミングウェイトベクトルとの乗算結果をベクトル要素として含み、
前記方法は、さらに、
推定された複数の等価チャネルベクトルを複数のグループに分けることと、
受信SINRを算出する対象である対象レイヤの受信電力を算出することと、
各グループについて、前記対象レイヤの等価チャネルベクトルと前記対象レイヤの等価チャネルベクトル以外の各等価チャネルベクトルとの内積である、1つ又は複数の第1相関を算出することと、
各グループについて、前記対象レイヤの等価チャネルベクトル以外の、同一の等価チャネルベクトル同士の又は異なる2つの等価チャネルベクトルの内積である、1つ又は複数の第2相関を算出することと、
前記対象レイヤの受信電力と、各グループについての前記1つ又は複数の第1相関と、各グループについての前記1つ又は複数の第2相関とに基づいて、前記対象レイヤの受信SINRを算出することと、
を含む。
【0011】
第3の態様にかかるプログラムは、各無線端末が、1つ又は複数の送信アンテナを有し、1つ又は複数のレイヤの送信ストリームに対して送信ビームフォーミングウェイトを乗算することによって前記1つ又は複数の送信アンテナのそれぞれから送信する送信信号を形成する、複数の無線端末と、複数の受信アンテナを有し、前記複数の無線端末から送信された送信信号が空間多重された空間多重信号を前記複数の受信アンテナによって受信する無線基地局と、を含む無線通信システムにおいて、レイヤ毎の受信SINR(Signal to Interference and Noise power Ratio)を算出する算出装置に、処理を実行させるプログラムであって、
前記処理は、レイヤ毎に等価チャネルベクトルを推定することを含み、
各等価チャネルベクトルは、対応するレイヤの送信ストリームと該送信ストリームに乗算される送信ビームフォーミングウェイトベクトルとの乗算結果をベクトル要素として含み、
前記処理は、さらに、
推定された複数の等価チャネルベクトルを複数のグループに分けることと、
受信SINRを算出する対象である対象レイヤの受信電力を算出することと、
各グループについて、前記対象レイヤの等価チャネルベクトルと前記対象レイヤの等価チャネルベクトル以外の各等価チャネルベクトルとの内積である、1つ又は複数の第1相関を算出することと、
各グループについて、前記対象レイヤの等価チャネルベクトル以外の、同一の等価チャネルベクトル同士の又は異なる2つの等価チャネルベクトルの内積である、1つ又は複数の第2相関を算出することと、
前記対象レイヤの受信電力と、各グループについての前記1つ又は複数の第1相関と、各グループについての前記1つ又は複数の第2相関とに基づいて、前記対象レイヤの受信SINRを算出することと、
を含む。
【発明の効果】
【0012】
本開示により、受信SINRの推定精度を向上させることができる、算出装置、方法、及びプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1実施形態における無線通信システムの一例を示す図である。
図2】上り回線におけるマルチユーザMIMO送信のシステムモデルの一例を示す図である。
図3】第1実施形態における算出装置の一例を示すブロック図である。
図4】第2実施形態における基地局の一例を示すブロック図である。
図5】基地局のハードウェア構成の一例を示す図である。
図6】第2実施形態における算出装置の処理動作の一例を示すフローチャートである。
図7】算出装置のハードウェア構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ、実施形態について説明する。なお、以下の記載及び図面は、説明の明確化のため、適宜、省略及び簡略化がなされている。また、以下の各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。また、本開示では、明記のない限り、「AとBの少なくともいずれか」(at least one of A or B (A/B))は、AかBの任意の1つを意味しても良いし、AとBの両方を意味しても良い。同様に、3つ以上の要素について「少なくともいずれか」が用いられた場合には、これらの要素の任意の1つを意味しても良いし、任意の複数の要素(全ての要素を含む)を意味しても良い。
【0015】
<第1実施形態>
<無線通信システムの概要>
図1は、第1実施形態における無線通信システムの一例を示す図である。図1において無線通信システムは、基地局1と、複数の無線端末(ユーザ端末)2とを含む、基地局1は、複数の無線端末(ユーザ端末)2に無線アクセスを提供する。基地局1は、アクセスポイント(AP)、TRP(transmission/reception point)、または、その他の名称で参照されてもよい。基地局1は、例えば5GシステムのgNB、またはRUおよびDUからなるシステムであってもよい。
【0016】
いくつかの実装では、無線通信システムは、複数の無線端末2から基地局1への上り回線送信のために、マルチユーザMIMO技術を利用してもよい。この場合、基地局1は、複数の無線端末2から参照信号を受信し、受信した参照信号を用いて、複数の無線端末2と基地局1の間のMIMOチャネルを推定する。そして、基地局1は、複数の無線端末2から送信可能なレイヤ(つまり、送信データストリーム)のうち、同時に空間多重して送信する複数のレイヤを選択してもよい。また、基地局1は、選択された複数のレイヤに対応する空間多重信号を受信し、この受信した空間多重信号と推定されたチャネルとを用いて、送信信号を検出してもよい。すなわち、基地局1は、選択された複数の無線端末2のマルチユーザ信号を分離するために、MIMO検出を行ってもよい。
【0017】
図2は、上り回線におけるマルチユーザMIMO送信のシステムモデルの一例を示す図である。図2では、複数の無線端末2の複数の送信機20が、チャネル(伝搬路)30を介して、基地局1の受信機10と通信する。ここで、複数の無線端末2は、実際に空間多重して信号を伝送する複数の無線端末ではなく、受信SINRを推定するために仮想的に選択された複数の無線端末2であってもよい。
【0018】
図2の例では、M個の送信機20の各々は、1つの送信アンテナを持っている。しかしながらこれに限定されるものではなく、各送信機20は、2つ以上の送信アンテナを有してもよい。別の言い方をすれば、複数の無線端末2は、全体としてM個の送信アンテナを有しており、全体として、M個以下の送信機20を有していてもよい。すなわち、複数の無線端末2は、全体としてM個の送信アンテナを有しているものとしてもよい。
【0019】
一方で、基地局1の受信機10は、N個の受信アンテナを有している。ここで、送信アンテナの合計数Mは、受信アンテナの合計数N以下であるものとする。
【0020】
以降の説明では、簡潔化のために、各無線端末2からの送信信号はシングルキャリア伝送であり、各無線端末2と基地局1との間の伝搬路はフラットフェージングであるとみなす。一方で、各無線端末2からの送信信号がOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)またはSC-FDMA(Single Carrier-Frequency Division Multiple Access)等を使用する場合のマルチパスフェージング環境においても、適切な長さのサイクリックプリフィックスを送信信号に挿入することで、各サブキャリア単位では、伝搬路がフラットフェージングであるとみなせる。したがって、本実施形態は、OFDMおよびSC-FDMAに適用されてもよい。
【0021】
ここで、複数の無線端末2の合計M個の送信アンテナから送信信号が送信される。そして、これらの送信信号が空間多重された空間多重信号が、基地局1のN個の受信アンテナにおいて受信される。このとき、等価低域表現による複素数の信号モデルは、次の式(1)で表される。
【数1】
ここで、yは、各受信アンテナの受信信号をベクトル要素とする、N×1の複素受信信号ベクトルである。また、Hは、N×Mの複素MIMOチャネル行列である。また、zは、N×1の複素加法性白色雑音ベクトルである。また、xは、各送信アンテナの送信信号をベクトル要素とする、M×1の複素送信信号ベクトルである。
【0022】
また、送信信号ベクトルは、次の式(2)に示すベクトルであってもよい。
【数2】
ここで、Fは、M×Jの送信ビームフォーミングウェイト行列である。また、sは、J×1の送信データベクトルである。ここで、送信データベクトルsの各要素は、QPSKや16QAMなどで多値変調されたデータであってもよい。すなわち、送信データベクトルsは、J個のベクトル要素を含み、J個のベクトル要素は、J個の送信データストリームに対応する。また、以降では、送信データストリームの単位を、「レイヤ」と呼ぶ。レイヤ数であるJは、M以下の自然数である。
【0023】
チャネル行列Hと送信ビームフォーミングウェイト行列Fとの積を等価チャネル行列H’としたとき、受信信号ベクトルは、次の式(3)のように表される。
【数3】
【0024】
また、第jレイヤの等価チャネルベクトルをh’jとすると、等価チャネル行列H’及び等価チャネルベクトルh’jは、それぞれ、式(4)のように表される。
【数4】
【0025】
<算出装置の構成例>
図3は、第1実施形態における算出装置の一例を示すブロック図である。図3に示す算出装置40は、複数の無線端末2と基地局1とを含む無線通信システムにおいて、レイヤ毎の受信SINR(Signal to Interference and Noise power Ratio)を算出する。算出装置40は、例えば、基地局1に含まれてもよいし、基地局1と別体の装置として基地局1と接続されて用いられてもよい。
【0026】
上記の通り、各無線端末2は、1つ又は複数の送信アンテナを有し、1つ又は複数のレイヤの送信ストリームに対して送信ビームフォーミングウェイトを乗算することによって、上記の1つ又は複数の送信アンテナのそれぞれから送信する送信信号を形成する。また、
上記の通り、基地局1は、複数の受信アンテナを有し、複数の無線端末から送信された送信信号が空間多重された空間多重信号を複数の受信アンテナによって受信する。
【0027】
図3において算出装置40は、チャネルベクトル推定部41と、グルーピング部42と、受信電力算出部43と、相関算出部(第1の相関算出部)44と、相関算出部(第2の相関算出部)45と、受信SINR算出部46とを有している。
【0028】
チャネルベクトル推定部41は、レイヤ毎に等価チャネルベクトルを推定する。各等価チャネルベクトルは、複数の無線端末2と無線基地局1との間のチャネル応答行列Hと、各等価チャネルベクトルに対応するレイヤの送信ストリームに乗算される送信ビームフォーミングウェイトベクトルとの乗算結果を、ベクトル要素として含む。「各等価チャネルベクトルに対応するレイヤの送信ストリームに乗算される送信ビームフォーミングウェイトベクトル」は、上記の送信ビームフォーミングウェイト行列Fの列ベクトルに相当する。
【0029】
グルーピング部42は、チャネルベクトル推定部41にて推定された複数の等価チャネルベクトルを複数のグループに分ける。
【0030】
受信電力算出部43は、受信SINRを算出する対象である「対象レイヤ」の受信電力を算出する。
【0031】
相関算出部44は、各グループについて、対象レイヤの等価チャネルベクトルと、対象レイヤの等価チャネルベクトル以外の各等価チャネルベクトルとの内積である、1つ又は複数の「第1相関」を算出する。
【0032】
相関算出部45は、各グループについて、対象レイヤの等価チャネルベクトル以外の、同一の等価チャネルベクトル同士の又は異なる2つの等価チャネルベクトルの内積である、1つ又は複数の「第2相関」を算出する。
【0033】
受信SINR算出部46は、対象レイヤの受信電力と、各グループについての上記1つ又は複数の第1相関と、各グループについての上記1つ又は複数の第2相関とに基づいて、対象レイヤの受信SINRを算出する。例えば、受信SINR算出部46は、各グループについての第1相関と第2相関の逆行列との積を、対象レイヤの受信SINRを小さくするパラメータとして用いることによって、対象レイヤの受信SINRを算出してもよい。
【0034】
以上のように第1実施形態によれば、算出装置40にて相関算出部44は、各グループについて、対象レイヤの等価チャネルベクトルと、対象レイヤの等価チャネルベクトル以外の各等価チャネルベクトルとの内積である、1つ又は複数の「第1相関」を算出する。相関算出部45は、各グループについて、対象レイヤの等価チャネルベクトル以外の、同一の等価チャネルベクトル同士の又は異なる2つの等価チャネルベクトルの内積である、1つ又は複数の「第2相関」を算出する。受信SINR算出部46は、対象レイヤの受信電力と、各グループについての上記1つ又は複数の第1相関と、各グループについての上記1つ又は複数の第2相関とに基づいて、対象レイヤの受信SINRを算出する。
【0035】
この算出装置40の構成により、各グループについての第1相関に基づいて対象レイヤの受信SINRを算出するので、例えば上記の方式1に比べて、受信SINRの推定精度を向上させることができる。また、各グループについての上記1つ又は複数の第2相関に基づいて、対象レイヤの受信SINRを算出するため、対象レイヤ以外の2つのレイヤの等価チャネルベクトルの類似度を考慮した受信SINRの算出が可能となり、例えば上記の方式2に比べて、受信SINRの推定精度を向上させることができる。また、等価チャネルベクトルに基づく第1相関及び第2相関に基づいて、対象レイヤの受信SINRを算出するので、送信ビームフォーミングの種類(例えば、コードブック型ビームフォーミング)に関わらず、適用可能な受信SINRの算出方法を実現できる。
【0036】
<第2実施形態>
第2実施形態は、より具体的な実施形態に関する。
【0037】
<基地局の構成例>
図4は、第2実施形態における基地局の一例を示すブロック図である。図4において基地局50は、アレイアンテナ51と、無線部52と、信号処理部53と、算出部(算出装置)40とを有している。なお、ここでは、算出部(算出装置)40が基地局50に含まれているものとして説明しているが、これに限定されるものではなく、例えば、算出部(算出装置)40は、基地局50と別体の装置として基地局50と接続されて用いられてもよい。基地局50は、第1実施形態の基地局1に相当する。
【0038】
アレイアンテナ51は、アンテナ51-1~51-Nを有している。
【0039】
無線部52は、アレイアンテナ51を介して受信した無線信号に対して受信無線処理(例えば、ダウンコンバート、アナログディジタル変換等)を施し、得られたベースバンド信号を信号処理部53及び算出部40に出力する。また、無線部52は、信号処理部53から受け取ったベースバンド信号に対して送信無線処理(ディジタルアナログ変換、アップコンバート等)を施し、得られた無線信号を、アレイアンテナ51を介して送信する。
【0040】
信号処理部53は、無線通信のためのデジタルベースバンド信号処理(データプレーン処理)とコントロールプレーン処理を行う。デジタルベースバンド信号処理は、Service Data Adaptation Protocol (SDAP) レイヤ、Packet Data Convergence Protocol (PDCP) レイヤ、Radio Link Control (RLC) レイヤ、Medium Access Control (MAC) レイヤ、およびPhysical (PHY) レイヤの信号処理を含んでもよい。また、コントロールプレーン処理は、Non-Access Stratum (NAS) messages、Radio Resource Control (RRC) messages、Medium Access Control (MAC) Control Elements (CEs)、およびDownlink Control Information (DCI) の処理を含んでもよい。
【0041】
算出部(算出装置)40は、第1実施形態と同様に、チャネルベクトル推定部41と、グルーピング部42と、受信電力算出部43と、相関算出部(第1の相関算出部)44と、相関算出部(第2の相関算出部)45と、受信SINR算出部46とを有している。
【0042】
チャネルベクトル推定部41は、無線部52から受け取った参照信号に基づき、MIMOチャネルを推定する。すなわち、チャネルベクトル推定部41は、無線部52から受け取った参照信号に基づき、レイヤ毎に等価チャネルベクトルを推定する。
【0043】
グルーピング部42は、チャネルベクトル推定部41から受け取った等価チャネル行列H’を構成する複数の等価チャネルベクトルを、K個のグループ(「レイヤグループ」と呼んでもよい)に分ける。ここで、第kグループに属する等価チャネルベクトルで構成されるグループ等価チャネル行列をH’kとし、第kグループの第jレイヤの等価チャネルベクトルをh’k,jと表す。
【0044】
そして、グルーピング部42は、グループ化した等価チャネルベクトルh’k,jを、受信電力算出部43、相関算出部44、及び相関算出部45へ供給する。
【0045】
ここで、グルーピング部42のいくつかの実装例について説明する。なお、これらの実装例は例示であり、これらに限定されるものではない。
【0046】
(グルーピング部の実装例1)
グルーピング部42の実装例1では、次の式(5)で表されるように、各グループは、1つのレイヤの等価チャネルベクトルで構成される。すなわち、グループ等価チャネル行列H’は、1つのレイヤの等価チャネルベクトルで構成される。
【数5】
【0047】
(グルーピング部の実装例2)
グルーピング部42の実装例2では、次の式(6)で表されるように、各グループは、1つの無線端末から送信された複数のレイヤの等価チャネルベクトルで構成される。
【数6】
ここで、L(k, j)は、第k無線端末の第jレイヤのレイヤ番号である。また、Jkは、第k無線端末から送信されるレイヤの数を表す
【0048】
(グルーピング部の実装例3)
各グループは、次の式(7)で表されるように、複数の無線端末から送信された複数のレイヤの等価チャネルベクトルで構成される。式(7)は、第kグループが第k’無線端末のレイヤの等価チャネルベクトルおよび第k’’無線端末のレイヤの等価チャネルベクトルからなることを表す。なお、実装例3では、1つのグループに3以上の無線端末の等価チャネルベクトルが含まれてもよい。
【数7】
【0049】
(グルーピング部の実装例4)
各グループは、次の式(8)に示すレイヤ間相関Ri,jが閾値以上であるレイヤの等価チャネルベクトルで構成される。
【数8】
*Hは、複素ベクトルおよび複素行列のエルミート転置を示す。また、|*|は、実数または複素数の絶対値を示す。また、||*||は、ベクトルのノルムを表す。
なお、レイヤ間相関Ri,jに基づいて、クラスタリング手法(例えば、最短距離法やK-meansなど)により、各レイヤの等価チャネルベクトルがグループに分けられてもよい。
【0050】
(グルーピング部の実装例5)
グルーピング部42は、複数の等価チャネルベクトルを複数のグループに分けるルールを、複数のルール候補のうちで切り替えてもよい。複数のルール候補は、例えば、グルーピング部の実装例1~4のルールである。グルーピング部42は、例えば、演算量、推定精度の要求、又は、計算に使用するCPUリソース等に応じて、複数のルール候補から適応的に実際に使用するルールを選択してもよい。
【0051】
受信電力算出部43は、グルーピング部42にてグルーピングされた各等価チャネルベクトルh’k,jに基づき、レイヤごとの受信電力を算出する。次の式(9)に示すように、第kグループの第jレイヤの受信電力は、第kグループの第jレイヤの等価チャネルベクトルのノルムの二乗によって算出される。
【数9】
【0052】
相関算出部44は、各グループについて、対象レイヤの等価チャネルベクトルと、対象レイヤの等価チャネルベクトル以外の各等価チャネルベクトルとの内積である、1つ又は複数の「第1相関」を算出する。
【0053】
例えば、相関算出部44は、グルーピング部42から受け取るグループ等価チャネル行列H’kに基づき、受信SINRを推定する第kグループの第jレイヤの等価チャネルベクトルと第k’グループに属するレイヤの等価チャネルベクトルとの間の第1相関R(k, j), k’ (1)を算出する。第1相関R(k, j), k’ (1)は、次の式(10),式(11)のように表される。
【数10】
【0054】
k’=kの場合、第1相関R(k, j), k’ (1)は、式(11)のように表される。
【数11】
ここで、[*]:, ≠jおよび[*]≠j,:は、それぞれ、行列から第j列目の列ベクトルを取り除いた行列、および、行列から第j行目の行ベクトルを取り除いた行列である。
【0055】
相関算出部45は、各グループについて、対象レイヤの等価チャネルベクトル以外の、同一の等価チャネルベクトル同士の又は異なる2つの等価チャネルベクトルの内積である、1つ又は複数の「第2相関」を算出する。
【0056】
例えば、相関算出部45は、グルーピング部42から受け取るグループ等価チャネル行列H’kに基づき、第kグループの第jレイヤを「対象レイヤ」としたときの、第k’グループに属するレイヤの間の第2相関R(k,j),k’ (2)を算出する。第2相関R(k,j),k’ (2)は、次の式(12),式(13)のように表される。
【数12】
ここで、第kグループの第jレイヤを「対象レイヤ」としたとき、k’=kの場合、第2相関R(k,j),k (2)は、式(13)のように表される。
【数13】
【0057】
受信SINR算出部46は、受信電力算出部43から受け取った受信電力Pk,jと、相関算出部44から受け取った第1相関R(k, j), k (1)と、相関算出部45から受け取った第2相関とに基づいて、第kグループの第jレイヤの受信SINRγk,jを算出する。
【0058】
ここで、受信SINR算出部46のいくつかの実装例について説明する。なお、これらの実装例は例示であり、これらに限定されるものではない。
【0059】
(受信SINR算出部の実装例1)
実装例1は、2つ以上のレイヤでグループが構成され、Zero Forcing(ZF)を用いて受信した場合の受信SINRを算出することを前提とする。ZFは、次の式(14)に示す行列WZFを用いた受信ビームフォーミングである。
【数14】
【0060】
第kグループの第jレイヤの受信SINRγk,jを、式(15)に示す。
【数15】
ここで、雑音電力をσ2とした。
【0061】
式(15)では、各グループについての第1相関と第2相関の逆行列との積を、対象レイヤ(つまり、第kグループの第jレイヤ)の受信SINRを小さくするパラメータとして用いることによって、対象レイヤの受信SINRを算出している。これにより、等価チャネルベクトルの類似度を考慮した受信SINRの算出が可能となる。なお、式(15)では、第2相関の逆行列演算が必要であるが、第2相関はZFで用いられる等価チャネル行列のグラム行列H’H H’よりも行列サイズが小さいため、逆行列演算に要する演算量は少ない。ここで、上記のグラム行列H’H H’の行列サイズは、J×Jであり、第kグループに属するレイヤ数をJkとしたとき、第2相関の行列サイズは、Jk×Jkである。
【0062】
(受信SINR算出部の実装例2)
実装例2では、受信SINRの算出に、次の式(16)に示すグループ等価チャネル行列H’kを特異値分解することで得られる、左特異行列U’k、特異値行列Λ’k 1/2、および、右特異行列V’kを用いる。
【数16】
【0063】
具体的には、式(17)に示すように、上記の式(15)における各グループについての第1相関と第2相関の逆行列との積を、左特異行列U’k、特異値行列Λ’k 1/2、および、右特異行列V’kを用いて算出する。
【数17】
【0064】
(受信SINR算出部の実装例3)
実装例3は、Regularized ZF(RZF)規範の受信ビームフォーミングを用いて受信した場合の受信SINRを算出することを前提とする。RZFは、Minimum Mean Squared Error(MMSE)規範の受信ビームフォーミングであってもよい。RZFは、次の式(18)に示す行列WRZFを用いた受信ビームフォーミングである。
【数18】
ここで、Iは、単位行列であり、αは、任意の実数である。
【0065】
式(19)は、第kグループの第jレイヤの受信SINRγk,jを表す。
【数19】
【0066】
式(19)では、各グループについての、第1相関と、第2の相関及び対角行列αIの和の逆行列との積を、対象レイヤの受信SINRを小さくするパラメータとして用いることによって、対象レイヤの受信SINRを算出している。これにより、等価チャネルベクトルの類似度を考慮した受信SINRの算出が可能となる。
【0067】
(受信SINR算出部の実装例4)
実装例4は、実装例3において特に各グループが1つのレイヤの等価チャネルベクトルで構成されることを前提とする。第kグループの第1レイヤの受信SINRγk,jを、式(20)に示す。
【数20】
【0068】
式(20)では、各グループについての、第1相関と、第2相関及び任意の実数との和の逆数との積を、対象レイヤの受信SINRを小さくするパラメータとして用いることによって、対象レイヤの受信SINRを算出している。
【0069】
<基地局のハードウェア構成例>
図5は、基地局のハードウェア構成の一例を示す図である。第2実施形態の基地局50は、図5に示すハードウェア構成を有していてもよい。
【0070】
図5において基地局100は、アンテナアレイ11、Radio Frequency(RF)トランシーバ12、プロセッサ13、メモリ14、及び、ネットワークインタフェース15を含む。
【0071】
RFトランシーバ12は、複数の無線端末2と通信するためにアナログRF信号処理を行う。RFトランシーバ12は、複数のトランシーバを含んでもよい。RFトランシーバ12は、アンテナアレイ11、プロセッサ13と結合される。RFトランシーバ13は、送信信号をプロセッサ13から受け取り、送信RF信号を生成し、送信RF信号をアンテナアレイ11に供給する。また、RFトランシーバ12は、アンテナアレイ11によって受信された受信RF信号に基づいてベースバンド受信信号を生成し、プロセッサ13へ受信信号を供給する。無線部52は、RFトランシーバ12によって実現されてもよい。
【0072】
ネットワークインタフェース15は、ネットワークノード(e.g., 他の基地局、Centralized Unit (CU)、およびコアネットワークノード)と通信するために用いられる。ネットワークインタフェース15は、例えば、IEEE 802.3 seriesに準拠したネットワークインタフェースカード (NIC) を含んでもよい。
【0073】
プロセッサ13は、複数のプロセッサを含んでもよい。例えば、プロセッサ13は、デジタルベースバンド信号処理を行うモデム・プロセッサ(e.g., Central Processing Unit (CPU), Graphics Processing Unit (GPU)、またはDigital Signal Processor (DSP))とコントロールプレーン処理を行うプロトコルスタック・プロセッサ(e.g., Central Processing Unit (CPU) またはMicro Processing Unit (MPU))を含んでもよい。
【0074】
メモリ14は、揮発性メモリおよび不揮発性メモリの組み合わせによって構成される。揮発性メモリは、例えば、Static Random Access Memory (SRAM) もしくはDynamic RAM (DRAM) またはこれらの組み合わせである。不揮発性メモリは、マスクRead Only Memory (MROM)、Electrically Erasable Programmable ROM (EEPROM)、フラッシュメモリ、もしくはハードディスクドライブ、またはこれらの任意の組み合わせである。メモリ14は、プロセッサ13から離れて配置されたストレージを含んでもよい。この場合、プロセッサ13は、ネットワークインタフェース15またはその他のI(input)/O(output)インタフェースを介してメモリ14にアクセスしてもよい。
【0075】
メモリ14は、基地局100による処理の少なくとも一部を行うための命令群およびデータを含む1つまたはそれ以上のソフトウェアモジュール(コンピュータプログラム)を格納したコンピュータ読み取り可能な媒体を含んでもよい。すなわち、基地局50の信号処理部53と算出部40とは、プロセッサ13がメモリ14に記憶されたプログラムを読み込んで実行することにより実現されてもよい。
【0076】
<基地局の動作例>
次に基地局の動作例について説明する。ここでは、特に算出部(算出装置)40の処理動作の一例について説明する。図6は、第2実施形態における算出装置の処理動作の一例を示すフローチャートである。
【0077】
チャネルベクトル推定部41は、参照信号に基づき、レイヤ毎に等価チャネルベクトルを推定する(ステップS101)。
【0078】
グルーピング部42は、チャネルベクトル推定部41で推定された等価チャネル行列H’を構成する複数の等価チャネルベクトルを、複数のグループに分ける(ステップS102)。
【0079】
受信電力算出部43は、等価チャネルベクトルのノルムによってレイヤごとの受信電力を算出する(ステップS103)。
【0080】
相関算出部44は、各グループについて、対象レイヤの等価チャネルベクトルと、対象レイヤの等価チャネルベクトル以外の各等価チャネルベクトルとの内積である、1つ又は複数の「第1相関」を算出する(ステップS104)。
【0081】
相関算出部45は、各グループについて、対象レイヤの等価チャネルベクトル以外の、同一の等価チャネルベクトル同士の又は異なる2つの等価チャネルベクトルの内積である、1つ又は複数の「第2相関」を算出する(ステップS105)。
【0082】
受信SINR算出部46は、対象レイヤの受信電力と、各グループについての上記1つ又は複数の第1相関と、各グループについての上記1つ又は複数の第2相関とに基づいて、対象レイヤの受信SINRを算出する(ステップS106)。
【0083】
なお、この処理動作の順序は一例でありこれに限定されるものではない。例えば、ステップS103の処理ステップは、ステップS101の処理ステップの後で且つステップS106の処理ステップの前において行われればよい。また、ステップS104及びステップS105の処理ステップは、ステップS102の処理ステップの後で且つステップS106の処理ステップの前において行われればよい。
【0084】
<他の実施形態>
図7は、算出装置のハードウェア構成例を示す図である。図7において算出装置200は、プロセッサ201と、メモリ202とを有している。プロセッサ201は、例えば、マイクロプロセッサ、MPU(Micro Processing Unit)、又はCPU(Central Processing Unit)であってもよい。プロセッサ201は、複数のプロセッサを含んでもよい。メモリ202は、揮発性メモリ及び不揮発性メモリの組み合わせによって構成される。メモリ202は、プロセッサ201から離れて配置されたストレージを含んでもよい。この場合、プロセッサ201は、図示されていないI/Oインタフェースを介してメモリ202にアクセスしてもよい。
【0085】
第1実施形態及び第2実施形態の算出装置40は、それぞれ、図7に示したハードウェア構成を有することができる。第1実施形態及び第2実施形態の算出装置40のチャネルベクトル推定部41と、グルーピング部42と、受信電力算出部43と、相関算出部(第1の相関算出部)44と、相関算出部(第2の相関算出部)45と、受信SINR算出部46とは、プロセッサ201がメモリ202に記憶されたプログラムを読み込んで実行することにより実現されてもよい。プログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、算出装置40に供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば光磁気ディスク)を含む。さらに、非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、CD-ROM(Read Only Memory)、CD-R、CD-R/Wを含む。さらに、非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、半導体メモリを含む。半導体メモリは、例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(Random Access Memory)を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によって算出装置40に供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムを算出装置40に供給できる。
【0086】
以上、実施の形態を参照して本開示を説明したが、本開示は上記によって限定されるものではない。本開示の構成や詳細には、発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【0087】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
(付記1)
複数の無線端末と無線基地局とを含む無線通信システムにおいて、レイヤ毎の受信SINR(Signal to Interference and Noise power Ratio)を算出する算出装置であって、
各無線端末は、1つ又は複数の送信アンテナを有し、1つ又は複数のレイヤの送信ストリームに対して送信ビームフォーミングウェイトを乗算することによって前記1つ又は複数の送信アンテナのそれぞれから送信する送信信号を形成し、
前記無線基地局は、複数の受信アンテナを有し、前記複数の無線端末から送信された送信信号が空間多重された空間多重信号を前記複数の受信アンテナによって受信し、
前記算出装置は、
レイヤ毎に等価チャネルベクトルを推定し、各等価チャネルベクトルは、前記複数の無線端末と前記無線基地局との間のチャネル応答行列と、各等価チャネルベクトルに対応するレイヤの送信ストリームに乗算される送信ビームフォーミングウェイトベクトルとの乗算結果をベクトル要素として含む、チャネルベクトル推定部と、
推定された複数の等価チャネルベクトルを複数のグループに分けるグルーピング部と、
受信SINRを算出する対象である対象レイヤの受信電力を算出する受信電力算出部と、
各グループについて、前記対象レイヤの等価チャネルベクトルと前記対象レイヤの等価チャネルベクトル以外の各等価チャネルベクトルとの内積である、1つ又は複数の第1相関を算出する第1の相関算出部と、
各グループについて、前記対象レイヤの等価チャネルベクトル以外の、同一の等価チャネルベクトル同士の又は異なる2つの等価チャネルベクトルの内積である、1つ又は複数の第2相関を算出する第2の相関算出部と、
前記対象レイヤの受信電力と、各グループについての前記1つ又は複数の第1相関と、各グループについての前記1つ又は複数の第2相関とに基づいて、前記対象レイヤの受信SINRを算出する受信SINR算出部と、
を具備する、算出装置。
(付記2)
前記受信SINR算出部は、各グループについての第1相関と第2相関の逆行列との積を前記対象レイヤの受信SINRを小さくするパラメータとして用いることによって、前記対象レイヤの受信SINRを算出する、
付記1記載の算出装置。
(付記3)
前記受信SINR算出部は、各グループについての前記第2相関の逆行列を、各グループの等価チャネルベクトルを列ベクトルとして含む行列を特異値分解することによって得られる特異行列及び特異値行列を用いて算出する、
付記2記載の算出装置。
(付記4)
各グループは、同じ無線端末から送信されたレイヤの等価チャネルベクトルから構成されるか、又は、複数の無線端末から送信されたレイヤの等価チャネルベクトルから構成される、
付記1又は2に記載の算出装置。
(付記5)
前記グルーピング部は、第1レイヤの第1等価チャネルベクトルと第2レイヤの第2等価チャネルベクトルとの相関が閾値以上である場合、前記第1等価チャネルベクトル及び前記第2等価チャネルベクトルを同じグループに含める、
付記1又は2に記載の算出装置。
(付記6)
前記グルーピング部は、前記推定された複数の等価チャネルベクトルを複数のグループに分けるルールを、複数のルール候補のうちで切り替える、
付記1又は2に記載の算出装置。
(付記7)
前記受信SINR算出部は、各グループについての、前記第1相関と、前記第2相関及び対角行列の和の逆行列との積を、前記対象レイヤの受信SINRを小さくするパラメータとして用いることによって、前記対象レイヤの受信SINRを算出する、
付記1記載の算出装置。
(付記8)
各グループが1つのレイヤの等価チャネルベクトルから構成され、
前記受信SINR算出部は、各グループについての、前記第1相関と、前記第2相関及び任意の実数との和の逆数との積を、前記対象レイヤの受信SINRを小さくするパラメータとして用いることによって、前記対象レイヤの受信SINRを算出する、
付記1記載の算出装置。
(付記9)
付記1から付記8のいずれか1項に記載の算出装置を具備する無線基地局。
(付記10)
各無線端末が、1つ又は複数の送信アンテナを有し、1つ又は複数のレイヤの送信ストリームに対して送信ビームフォーミングウェイトを乗算することによって前記1つ又は複数の送信アンテナのそれぞれから送信する送信信号を形成する、複数の無線端末と、複数の受信アンテナを有し、前記複数の無線端末から送信された送信信号が空間多重された空間多重信号を前記複数の受信アンテナによって受信する無線基地局と、を含む無線通信システムにおいて、レイヤ毎の受信SINR(Signal to Interference and Noise power Ratio)を算出する算出装置によって実行される方法であって、
レイヤ毎に等価チャネルベクトルを推定することを含み、
各等価チャネルベクトルは、対応するレイヤの送信ストリームと該送信ストリームに乗算される送信ビームフォーミングウェイトベクトルとの乗算結果をベクトル要素として含み、
前記方法は、さらに、
推定された複数の等価チャネルベクトルを複数のグループに分けることと、
受信SINRを算出する対象である対象レイヤの受信電力を算出することと、
各グループについて、前記対象レイヤの等価チャネルベクトルと前記対象レイヤの等価チャネルベクトル以外の各等価チャネルベクトルとの内積である、1つ又は複数の第1相関を算出することと、
各グループについて、前記対象レイヤの等価チャネルベクトル以外の、同一の等価チャネルベクトル同士の又は異なる2つの等価チャネルベクトルの内積である、1つ又は複数の第2相関を算出することと、
前記対象レイヤの受信電力と、各グループについての前記1つ又は複数の第1相関と、各グループについての前記1つ又は複数の第2相関とに基づいて、前記対象レイヤの受信SINRを算出することと、
を含む方法。
(付記11)
各無線端末が、1つ又は複数の送信アンテナを有し、1つ又は複数のレイヤの送信ストリームに対して送信ビームフォーミングウェイトを乗算することによって前記1つ又は複数の送信アンテナのそれぞれから送信する送信信号を形成する、複数の無線端末と、複数の受信アンテナを有し、前記複数の無線端末から送信された送信信号が空間多重された空間多重信号を前記複数の受信アンテナによって受信する無線基地局と、を含む無線通信システムにおいて、レイヤ毎の受信SINR(Signal to Interference and Noise power Ratio)を算出する算出装置に、処理を実行させるプログラムであって、
前記処理は、レイヤ毎に等価チャネルベクトルを推定することを含み、
各等価チャネルベクトルは、対応するレイヤの送信ストリームと該送信ストリームに乗算される送信ビームフォーミングウェイトベクトルとの乗算結果をベクトル要素として含み、
前記処理は、さらに、
推定された複数の等価チャネルベクトルを複数のグループに分けることと、
受信SINRを算出する対象である対象レイヤの受信電力を算出することと、
各グループについて、前記対象レイヤの等価チャネルベクトルと前記対象レイヤの等価チャネルベクトル以外の各等価チャネルベクトルとの内積である、1つ又は複数の第1相関を算出することと、
各グループについて、前記対象レイヤの等価チャネルベクトル以外の、同一の等価チャネルベクトル同士の又は異なる2つの等価チャネルベクトルの内積である、1つ又は複数の第2相関を算出することと、
前記対象レイヤの受信電力と、各グループについての前記1つ又は複数の第1相関と、各グループについての前記1つ又は複数の第2相関とに基づいて、前記対象レイヤの受信SINRを算出することと、
を含む、
プログラム。
【符号の説明】
【0088】
1 基地局
2 無線端末
40 算出部(算出装置)
41 チャネルベクトル推定部
42 グルーピング部
43 受信電力算出部
44 相関算出部(第1の相関算出部)
45 相関算出部(第2の相関算出部)
46 受信SINR算出部
50 基地局
51 アレイアンテナ
52 無線部
53 信号処理部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7