IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友ゴム工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-タイヤ 図1
  • 特開-タイヤ 図2
  • 特開-タイヤ 図3
  • 特開-タイヤ 図4
  • 特開-タイヤ 図5
  • 特開-タイヤ 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173086
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/00 20060101AFI20231130BHJP
【FI】
B60C11/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022085080
(22)【出願日】2022-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菊池 洋
(72)【発明者】
【氏名】永瀬 将弘
(72)【発明者】
【氏名】牧野 彰太
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BB01
3D131BC02
3D131BC12
3D131BC15
3D131BC19
3D131EA02U
3D131EA08U
3D131EA08V
3D131EA08W
3D131EA08X
3D131EA08Y
3D131EA09W
3D131EA09X
(57)【要約】
【課題】ウェット路面でのグリップ性能を低下させることなく、転がり抵抗の低減を達成できる、タイヤ2の提供。
【解決手段】タイヤ2の外面2Gはトレッド面24と一対のサイド面26とを備える。トレッド面24の輪郭線は、センター円弧と、一対のミドル円弧と、一対のサイド円弧と、一対のショルダー円弧とを含む。サイド面26の輪郭線はショルダー円弧に連なる。正規状態のタイヤ2に、正規荷重の80%の荷重を付与して、タイヤ2を平面に接触させて得られる接地端に対応する外面2G上の位置が基準接地位置PGであり、ショルダー円弧とサイド円弧との境界が基準境界SHである。基準境界SHは基準接地位置PGの軸方向外側に位置する。赤道面から基準境界SHまでの軸方向距離Lの、赤道面からトレッド基準端TEまでの軸方向距離HTWに対する比は0.94以上0.98以下である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のビードと、一対の前記ビードの間を架け渡すカーカスと、前記カーカスの軸方向外側に位置する一対のサイドウォールと、前記カーカスの径方向外側に位置するトレッドと、前記カーカスと前記トレッドとの間に位置するベルトとを備える、タイヤであって、
前記タイヤの外面が、路面と接地するトレッド面と、前記トレッド面に連なる一対のサイド面とを備え、
前記トレッド面が、赤道面との交点である赤道を含み、
それぞれの前記サイド面が、前記タイヤが最大幅を示す最大幅位置を含み、
前記タイヤの子午線断面において、前記トレッド面の輪郭線が、軸方向に並ぶ複数の円弧を含み、
複数の前記円弧が、前記赤道を通るセンター円弧と、前記センター円弧に連なる一対のミドル円弧と、それぞれの前記ミドル円弧に連なる一対のサイド円弧と、それぞれの前記サイド円弧に連なる一対のショルダー円弧とを含み、
一対の前記サイド面の輪郭線がそれぞれ、一対の前記ショルダー円弧のそれぞれに連なり、
前記ショルダー円弧の第一端における前記ショルダー円弧の接線と、その第二端における前記ショルダー円弧の接線との交点がトレッド基準端であり、
前記タイヤを正規リムに組み、前記タイヤの内圧を正規内圧に調整し、正規荷重の80%の荷重を前記タイヤに付与して、前記タイヤを平面に接触させて得られる接地端が基準接地端であり、前記基準接地端に対応する前記タイヤの外面上の位置が基準接地位置であり、
前記ショルダー円弧と前記サイド円弧との境界が基準境界であり、
前記基準境界が前記基準接地位置の軸方向外側に位置し、
前記赤道面から前記基準境界までの軸方向距離の、前記赤道面から前記トレッド基準端までの軸方向距離に対する比が0.94以上0.98以下である、
タイヤ。
【請求項2】
前記赤道から前記基準接地位置までの径方向距離の、前記赤道面から前記トレッド基準端までの軸方向距離に対する比が0.06以上0.15以下である、
請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記ミドル円弧の半径の、前記サイド円弧の半径に対する比が、2.1以上2.7以下である、
請求項1又は2に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤに関する。詳細には、本発明は乗用車に装着されるタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
図5は、子午線断面におけるトレッド面TSの輪郭線を示す。トレッド面TSの輪郭線は、複数の円弧を軸方向に組み合わせて構成される。図5に示された輪郭線を構成する円弧は、赤道面から軸方向外側に向かって、センター円弧、ミドル円弧、サイド円弧及びショルダー円弧を含む。センター円弧が最も大きな半径Rcを有する。ミドル円弧が次に大きな半径Rmを有する。サイド円弧が次に大きな半径Rsを有する。ショルダー円弧が最も小さな半径Rshを有する。このショルダー円弧にサイド面の輪郭線が連なる。
【0003】
トレッド面TSの輪郭線では、その曲率半径は、隣り合う円弧の境界において変化する。トレッド面TSの輪郭線において、曲率半径の変化率が最も大きな境界は、サイド円弧とショルダー円弧との境界(以下、基準境界SHc)である。
【0004】
環境への配慮から、車両に装着されるタイヤにおいては、転がり抵抗の低減が求められている。そのために、タイヤを構成する要素の数を減らす、要素の厚さを低減する、要素を構成する材料にエネルギー損失が少ない材料、具体的には、低い損失正接を有するゴム(以下、低損失ゴム)を採用する等が検討される(例えば、下記の特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-120242号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
タイヤのトレッドはキャップ部とベース部とを備える。キャップ部は路面と接地する。キャップ部には、グリップ性能や耐摩耗性を考慮したゴムが用いられる。ベース部はキャップ部に覆われ、路面と接地しない。ベース部に低損失ゴムが用いられる。
【0007】
キャップ部に低損失ゴムを用いることで、タイヤは転がり抵抗をさらに低減できる。しかしキャップ部に低損失ゴムを用いると、ウェット路面でのグリップ性能の低下が懸念される。キャップ部に低損失ゴムを用いることなく、転がり抵抗の低減を図れる技術の確立が求められている。
【0008】
図6の実線は、路面と接地しているトレッド部の状態を模式的に示す。点線は、路面と接地する前(又は接地した後)のトレッド部の状態を示す。
図6に示されるように、路面と接地することでトレッド部はそのショルダー部分において大きく変形する。これにより、符号CSで示される、ショルダー部分の表層部に圧縮歪みが生じる。圧縮歪みは転がり抵抗の増加因子である。圧縮歪みの発生を抑制できれば、転がり抵抗をさらに低減できる見込みがある。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものである。本発明の目的は、ウェット路面でのグリップ性能を低下させることなく、転がり抵抗の低減を達成できる、タイヤの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
トレッド面の輪郭線はトレッドの路面との接地状態と密接に関連する。そこで、本発明者らは、トレッド面の輪郭線と圧縮歪みの発生との関係について鋭意検討した。その結果、接地端に対する基準境界の位置が圧縮歪みの発生に関与していることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
本発明に係るタイヤは、一対のビードと、一対の前記ビードの間を架け渡すカーカスと、前記カーカスの軸方向外側に位置する一対のサイドウォールと、前記カーカスの径方向外側に位置するトレッドと、前記カーカスと前記トレッドとの間に位置するベルトとを備える。前記タイヤの外面は、路面と接地するトレッド面と、前記トレッド面に連なる一対のサイド面とを備える。前記トレッド面は、赤道面との交点である赤道を含む。それぞれの前記サイド面は、前記タイヤが最大幅を示す最大幅位置を含む。前記タイヤの子午線断面において、前記トレッド面の輪郭線が、軸方向に並ぶ複数の円弧を含む。複数の前記円弧は、前記赤道を通るセンター円弧と、前記センター円弧に連なる一対のミドル円弧と、それぞれの前記ミドル円弧に連なる一対のサイド円弧と、それぞれの前記サイド円弧に連なる一対のショルダー円弧とを含む。一対の前記サイド面の輪郭線はそれぞれ、一対の前記ショルダー円弧のそれぞれに連なる。前記ショルダー円弧の第一端における前記ショルダー円弧の接線と、その第二端における前記ショルダー円弧の接線との交点がトレッド基準端である。前記タイヤを正規リムに組み、前記タイヤの内圧を正規内圧に調整し、正規荷重の80%の荷重を前記タイヤに付与して、前記タイヤを平面に接触させて得られる接地端が基準接地端である。前記基準接地端に対応する前記タイヤの外面上の位置が基準接地位置であり、前記ショルダー円弧と前記サイド円弧との境界が基準境界である。前記基準境界は前記基準接地位置の軸方向外側に位置する。前記赤道面から前記基準境界までの軸方向距離の、前記赤道面から前記トレッド基準端までの軸方向距離に対する比は0.94以上0.98以下である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ウェット路面でのグリップ性能を低下させることなく、転がり抵抗の低減を達成できる、タイヤが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係るタイヤの一部を示す断面図である。
図2】トレッド面の輪郭線を説明する断面図である。
図3】タイヤの接地面形状を示す模式図である。
図4】基準境界と基準接地端との位置関係を説明する断面図である。
図5】従来のトレッド面の輪郭線を説明する断面図である。
図6】路面との接地によるトレッド部の変形を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて、本発明が詳細に説明される。
【0015】
本発明のタイヤはリムに組まれる。タイヤの内部には空気が充填され、タイヤの内圧が調整される。本発明において、リムに組まれたタイヤは、タイヤ-リム組立体である。タイヤ-リム組立体は、リムと、このリムに組まれたタイヤとを備える。
【0016】
本発明において、タイヤを正規リムに組み、タイヤの内圧を正規内圧に調整し、このタイヤに荷重をかけていない状態は、正規状態と称される。
【0017】
本発明においては、特に言及がない限り、タイヤ各部の寸法及び角度は、正規状態で測定される。
正規リムにタイヤを組んだ状態で測定できない、タイヤの子午線断面における各部の寸法及び角度は、回転軸を含む平面に沿ってタイヤを切断することにより得られる、タイヤの断面(以下、基準切断面)において、測定される。この測定では、左右のビード間の距離は、正規リムに組んだタイヤにおけるビード間の距離に一致するようにセットされる。
【0018】
正規リムとは、タイヤが依拠する規格において定められたリムを意味する。JATMA規格における「標準リム」、TRA規格における「Design Rim」、及びETRTO規格における「Measuring Rim」は、正規リムである。
【0019】
正規内圧とは、タイヤが依拠する規格において定められた内圧を意味する。JATMA規格における「最高空気圧」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「INFLATION PRESSURE」は、正規内圧である。
【0020】
正規荷重とは、タイヤが依拠する規格において定められた荷重を意味する。JATMA規格における「最大負荷能力」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「LOAD CAPACITY」は、正規荷重である。
【0021】
本発明において、「タイヤの呼び」は、JIS D4202「自動車用タイヤ-呼び方及び諸元」に規定された「タイヤの呼び」である。
【0022】
本発明において、タイヤのトレッド部とは、路面と接地する、タイヤの部位である。ビード部とは、リムに嵌め合わされる、タイヤの部位である。サイドウォール部とは、トレッド部とビード部との間を架け渡す、タイヤの部位である。タイヤは、部位として、トレッド部、一対のビード部及び一対のサイドウォール部を備える。トレッド部の端の部分はショルダー部分とも称される。
【0023】
[本発明の実施形態の概要]
以下、本発明の実施形態の概要を列記して説明する。
【0024】
[構成1]
本発明の一態様に係るタイヤは、一対のビードと、一対の前記ビードの間を架け渡すカーカスと、前記カーカスの軸方向外側に位置する一対のサイドウォールと、前記カーカスの径方向外側に位置するトレッドと、前記カーカスと前記トレッドとの間に位置するベルトとを備える、タイヤであって、前記タイヤの外面が、路面と接地するトレッド面と、前記トレッド面に連なる一対のサイド面とを備え、前記トレッド面が、赤道面との交点である赤道を含み、それぞれの前記サイド面が、前記タイヤが最大幅を示す最大幅位置を含み、前記タイヤの子午線断面において、前記トレッド面の輪郭線が、軸方向に並ぶ複数の円弧を含み、複数の前記円弧が、前記赤道を通るセンター円弧と、前記センター円弧に連なる一対のミドル円弧と、それぞれの前記ミドル円弧に連なる一対のサイド円弧と、それぞれの前記サイド円弧に連なる一対のショルダー円弧とを含み、一対の前記サイド面の輪郭線がそれぞれ、一対の前記ショルダー円弧のそれぞれに連なり、前記ショルダー円弧の第一端における前記ショルダー円弧の接線と、その第二端における前記ショルダー円弧の接線との交点がトレッド基準端であり、前記タイヤを正規リムに組み、前記タイヤの内圧を正規内圧に調整し、正規荷重の80%の荷重を前記タイヤに付与して、前記タイヤを平面に接触させて得られる接地端が基準接地端であり、前記基準接地端に対応する前記タイヤの外面上の位置が基準接地位置であり、前記ショルダー円弧と前記サイド円弧との境界が基準境界であり、前記基準境界が前記基準接地位置の軸方向外側に位置し、前記赤道面から前記基準境界までの軸方向距離の、前記赤道面から前記トレッド基準端までの軸方向距離に対する比が0.94以上0.98以下である。
【0025】
このようにタイヤを整えることにより、トレッド面のうち路面と接地する部分のフラット化が促される。これにより、従来タイヤのショルダー部分で確認された、圧縮歪みの発生が抑制される。圧縮歪みの低減は、転がり抵抗の低減に貢献する。
このタイヤは、トレッドにウェット路面でのグリップ性能が考慮されたゴムが用いられていても、このゴムを低損失ゴムに置き換えることなく、転がり抵抗の低減を達成できる。このタイヤは、ウェット路面でのグリップ性能を低下させることなく、転がり抵抗の低減を達成できる。
【0026】
[構成2]
好ましくは、前述の[構成1]に記載のタイヤにおいて、前記赤道から前記基準接地位置までの径方向距離の、前記赤道面から前記トレッド基準端までの軸方向距離に対する比は0.06以上0.15以下である。
【0027】
前述の[構成1]のタイヤでは、トレッド面のフラット化が促される。トレッド面がフラットになり過ぎると、ショルダー部分でのトレッドの厚さが増大する。この場合、接地端付近での接地圧が局所的に高まり、偏摩耗が生じることが懸念される。圧縮歪みの低減により転がり抵抗の低減が可能になったにもかかわらず、厚いトレッドが転がり抵抗の増加を招くことも懸念される。
しかし[構成2]のようにタイヤを整えることにより、トレッド面がフラットになり過ぎることなく、ショルダー部分でのトレッドが適切な厚さで構成される。このタイヤは、良好な耐偏摩耗性を維持しながら、転がり抵抗の低減を達成できる。トレッドにウェット路面でのグリップ性能が考慮されたゴムが用いられていても、このゴムを低損失ゴムに置き換える必要もない。このタイヤは、良好な耐偏摩耗性を維持しながら、ウェット路面でのグリップ性能を低下させることなく、転がり抵抗の低減を達成できる。
【0028】
[構成3]
好ましくは、前述の[構成1]又は[構成2]に記載のタイヤにおいて、前記ミドル円弧の半径の、前記サイド円弧の半径に対する比は、2.1以上2.7以下である。
【0029】
圧縮歪みの低減が可能なフラットなトレッド面においても、ミドル円弧とサイド円弧との境界における、トレッド面の輪郭線の曲率半径の変化率が大きいと、接地面においてトレッド面が路面に対して滑りやすくなることが懸念される。トレッド面の路面に対する滑りは、偏摩耗の発生を助長する。逆に曲率半径の変化率が小さいと、ショルダー部分でのトレッドの厚さが増大するので、この場合も偏摩耗の発生を助長させる。
しかし[構成3]のようにタイヤを整えることにより、このタイヤは、トレッド面の路面に対する滑りを抑制でき、ショルダー部分でのトレッドを適切な厚さで構成できる。このタイヤは、良好な耐偏摩耗性を維持しながら、転がり抵抗の低減を達成できる。トレッドにウェット路面でのグリップ性能が考慮されたゴムが用いられていても、このゴムを低損失ゴムに置き換える必要もない。このタイヤは、良好な耐偏摩耗性を維持しながら、ウェット路面でのグリップ性能を低下させることなく、転がり抵抗の低減を達成できる。
【0030】
[本発明の実施形態の詳細]
図1は、本発明の一実施形態に係るタイヤ2の一部を示す。このタイヤ2は、乗用車用空気入りタイヤである。
図1は、タイヤ2の回転軸を含む平面に沿った、このタイヤ2の断面(以下、子午線断面)の一部を示す。図1において、左右方向はタイヤ2の軸方向であり、上下方向はタイヤ2の径方向である。図1の紙面に対して垂直な方向は、タイヤ2の周方向である。一点鎖線CLはタイヤ2の赤道面を表す。
図1においてタイヤ2はリムR(正規リム)に組まれている。タイヤ2の内部には空気が充填され、タイヤ2の内圧が調整される。
【0031】
図1において、軸方向に延びる実線BBLはビードベースラインである。このビードベースラインは、リムRのリム径(JATMA等参照)を規定する線である。
【0032】
図1において符号PCで示される位置は、タイヤ2の外面2G(具体的には、後述するトレッド面)と赤道面との交点である。交点PCはタイヤ2の赤道である。赤道面上に溝が位置する場合は、溝がないと仮定して得られる仮想外面(後述の仮想トレッド面)に基づいて赤道PCは特定される。赤道PCはタイヤ2の径方向外端である。
【0033】
図1において符号PWで示される位置はタイヤ2の軸方向外端(以下、外端PW)である。模様や文字等の装飾が外面にある場合、外端PWは、装飾がないと仮定して得られる仮想外面に基づいて特定される。
正規状態において得られる第一外端PWから第二外端PWまでの軸方向距離がタイヤ2の最大幅である。外端PWは最大幅位置とも称される。最大幅位置とは、タイヤ2が最大幅を示す位置である。正規状態において得られる最大幅がタイヤ2の断面幅(JATMA等参照)である。
【0034】
図1において符号PTで示される位置はタイヤ2のトゥである。トゥPTは、タイヤ2の外面2Gと内面2Nとの境界である。
【0035】
このタイヤ2は、要素として、トレッド4、一対のサイドウォール6、一対のクリンチ8、一対のビード10、カーカス12、ベルト14、バンド16、インナーライナー18、一対のクッション20及び一対のインスレーション22を備える。
【0036】
トレッド4はトレッド面24において路面と接地する。トレッド4は、路面と接地するトレッド面24を有する。トレッド4は後述するカーカス12の径方向外側に位置する。
トレッド面24はタイヤ2の外面2Gの一部である。トレッド面24にはサイド面26が連なる。タイヤ2の外面2Gは、トレッド面24と、一対のサイド面26とを備える。
トレッド面24は赤道PCを含み、それぞれのサイド面26は最大幅位置PWを含む。
【0037】
トレッド4には溝28が刻まれる。これにより、トレッドパターンが構成される。
溝28は、周方向に連続して延びる周方向溝30を含む。このタイヤ2では、軸方向に並列した複数の周方向溝30がトレッド4に刻まれる。
図1に示されたトレッド4には、4本の周方向溝30が刻まれる。4本の周方向溝30のうち、軸方向において最も外側に位置する周方向溝30がショルダー周方向溝30sである。ショルダー周方向溝30sの軸方向内側に位置する周方向溝30がミドル周方向溝30mである。
【0038】
トレッド4に周方向溝30を刻むことで複数の陸部32が構成される。図1に示されたトレッド4には5本の陸部32が構成される。5本の陸部32のうち、軸方向において最も外側に位置する陸部32がショルダー陸部32sである。ショルダー陸部32sの軸方向内側に位置する陸部32がミドル陸部32mである。ミドル陸部32mの軸方向内側に位置する陸部32がセンター陸部32cである。センター陸部32cは赤道PCを含む。
【0039】
トレッド4は、キャップ部34と、ベース部36とを備える。キャップ部34はトレッド面24を含む。キャップ部34は、耐摩耗性及びグリップ性能が考慮された架橋ゴムからなる。ベース部36はキャップ部34の径方向内側に位置する。ベース部36はその全体がキャップ部34に覆われる。ベース部36は低発熱性の架橋ゴムからなる。
【0040】
それぞれのサイドウォール6はトレッド4に連なる。サイドウォール6はトレッド4の径方向内側に位置する。サイドウォール6はカーカス12の軸方向外側に位置する。サイドウォール6は、耐カット性を考慮した架橋ゴムからなる。サイドウォール6はサイド面26の一部を構成する。
【0041】
それぞれのクリンチ8はサイドウォール6の径方向内側に位置する。クリンチ8はリムRと接触する。クリンチ8は耐摩耗性が考慮された架橋ゴムからなる。
【0042】
それぞれのビード10はクリンチ8の軸方向内側に位置する。ビード10はサイドウォール6の径方向内側に位置する。
ビード10は、コア38と、エイペックス40とを備える。コア38は周方向にのびる。図示されないが、コア38はスチール製のワイヤーを含む。エイペックス40はコア38の径方向外側に位置する。エイペックス40は高い剛性を有する架橋ゴムからなる。
【0043】
カーカス12は、トレッド4、一対のサイドウォール6及び一対のクリンチ8の内側に位置する。カーカス12は一対のビード10の間を架け渡す。
【0044】
カーカス12は少なくとも1枚のカーカスプライ42を含む。図示されないが、カーカスプライ42は並列された多数のカーカスコードを含む。これらカーカスコードは赤道面と交差する。このタイヤ2のカーカス12はラジアル構造を有する。このタイヤ2では、有機繊維からなるコードがカーカスコードとして用いられる。有機繊維としては、ナイロン繊維、レーヨン繊維、ポリエステル繊維及びアラミド繊維が例示される。
【0045】
カーカスプライ42は、プライ本体42aと、一対の折り返し部42bとを含む。プライ本体42aは、第一のビード10と第二のビード10との間を架け渡す。それぞれの折り返し部42bは、プライ本体42aに連なりそれぞれのビード10で軸方向内側から外側に向かって折り返される。
【0046】
ベルト14はトレッド4の径方向内側に位置する。ベルト14はカーカス12に積層される。ベルト14はカーカス12とトレッド4との間に位置する。前述の赤道面は、ベルト14の軸方向幅の中心においてベルト14と交差する。
このタイヤ2では、ベルト14の軸方向幅は、トレッド4の幅の、85%以上100%以下である。トレッド4の幅は、後述の基準幅HTWの2倍である。
【0047】
ベルト14は、内側層44と、外側層46とを備える。内側層44はプライ本体42aの径方向外側に位置し、プライ42aに積層される。外側層46は内側層44の径方向外側に位置し、内側層44に積層される。
【0048】
図1に示されるように、外側層46の端は内側層44の端の軸方向内側に位置する。外側層46は内側層44よりも狭い。外側層46の端から内側層44の端までの長さは3mm以上10mm以下である。前述のベルト14の軸方向幅は、幅広の内側層44の軸方向幅で表される。
【0049】
図示されないが、内側層44及び外側層46はそれぞれ、並列した多数のベルトコードを含む。それぞれのベルトコードは赤道面に対して傾斜する。ベルトコードの材質はスチールである。
【0050】
バンド16は、トレッド4の内側においてベルト14に積層される。バンド16の端はベルト14の端の軸方向外側に位置する。ベルト14の端からバンド16の端までの長さは3mm以上7mm以下である。
前述の赤道面は、バンド16の軸方向幅の中心においてバンド16と交差する。バンド16の両端はそれぞれ、赤道面を挟んで相対するように配置される。このバンド16はフルバンドである。このバンド16が、赤道面を挟んで軸方向に離して配置され、ベルト14の端の部分を覆うように構成された一対のエッジバンドであってもよい。このバンド16がフルバンドと一対のエッジバンドとで構成されてもよい。
【0051】
図示されないが、バンド16はらせん状に巻かれたバンドコードを含む。バンド16においてバンドコードは実質的に周方向にのびる。詳細には、バンドコードが周方向に対してなす角度は、5°以下である。バンド16はジョイントレス構造を有する。有機繊維からなるコードがバンドコードとして用いられる。有機繊維としては、ナイロン繊維、レーヨン繊維、ポリエステル繊維及びアラミド繊維が例示される。
【0052】
インナーライナー18は、カーカス12の内側に位置する。インナーライナー18はタイヤ2の内面2Nを構成する。インナーライナー18は、空気遮蔽性に優れた架橋ゴムからなる。インナーライナー18は、タイヤ2の内圧を保持する。
【0053】
それぞれのクッション20は、軸方向において離して配置される。クッション20は、ベルト14及びバンド16の端と、カーカス12との間に位置する。クッション20は低い剛性を有する架橋ゴムからなる。このタイヤ2においてクッション20は必須の要素ではない。タイヤ2の仕様によってはこのクッション20は設けられなくてもよい。
【0054】
それぞれのインスレーション22は、カーカス12とインナーライナー18との間に位置する。インスレーション22の第一端は、ベルト14の端の軸方向内側に位置する。インスレーション22の第二端は径方向において最大幅位置PWとビード10との間に位置する。
【0055】
図2は、子午線断面における、タイヤ2の外面2Gの輪郭線の一部を示す。外面2Gの輪郭線は、溝、模様や文字等の装飾がないと仮定して得られる仮想外面により表される。
詳述しないが、本発明において外面2Gの輪郭線は、例えば変位センサーを用いて、正規状態のタイヤ2の外面形状を計測することで得られる。
【0056】
子午線断面においてトレッド面24の輪郭線は、軸方向に並ぶ複数の円弧を含む。詳細には、トレッド面24の輪郭線は軸方向に並ぶ複数の円弧で構成される。
複数の円弧は、センター円弧、一対のミドル円弧、一対のサイド円弧及び一対のショルダー円弧を含む。
センター円弧は、複数の円弧のうち軸方向において中央に位置する円弧である。図2において符号Rcで示される矢印はセンター円弧の半径である。センター円弧は赤道PCを通る。センター円弧の中心は赤道面上に位置する。
それぞれのミドル円弧は、センター円弧の軸方向外側に位置する円弧である。図2において符号Rmで示される矢印はミドル円弧の半径である。ミドル円弧は、センター円弧の半径Rcの次に大きい半径Rmを有する。
それぞれのサイド円弧は、ミドル円弧の軸方向外側に位置する円弧である。図2において符号Rsで示される矢印はサイド円弧の半径である。サイド円弧は、ミドル円弧の半径Rmの次に大きい半径Rsを有する。
それぞれのショルダー円弧は、サイド円弧の軸方向外側に位置する円弧である。図2において符号Rshで示される矢印はショルダー円弧の半径である。ショルダー円弧は、サイド円弧の半径Rsの次に大きい半径Rshを有する。
【0057】
このタイヤ2では、センター円弧は、複数の円弧のうち軸方向において中央に位置する円弧である。センター円弧は、トレッド面24の輪郭線を構成する複数の円弧の中で、最も大きい半径Rcを有する。ショルダー円弧は、複数の円弧のうち軸方向において最も外側に位置する円弧である。ショルダー円弧は、トレッド面24の輪郭線を構成する複数の円弧の中で、最も小さい半径Rshを有する。
【0058】
ミドル円弧はセンター円弧に連なる。図2において符号CMで示される位置はセンター円弧とミドル円弧との境界である。ミドル円弧は境界CMにおいてセンター円弧と接する。境界CMはセンター円弧の端でもあり、ミドル円弧の第一端でもある。
サイド円弧はミドル円弧に連なる。図2において符号MSで示される位置はミドル円弧とサイド円弧との境界である。サイド円弧は境界MSにおいてミドル円弧と接する。境界MSはミドル円弧の第二端でもあり、サイド円弧の第一端でもある。
ショルダー円弧はサイド円弧に連なる。図2において符号SHで示される位置はサイド円弧とショルダー円弧との境界である。ショルダー円弧は境界SHにおいてサイド円弧と接する。境界SHはサイド円弧の第二端でもあり、ショルダー円弧の第一端でもある。
このタイヤ2のトレッド面24の輪郭線は、センター円弧、一対のミドル円弧、一対のサイド円弧及び一対のショルダー円弧からなる7つの円弧で構成される。
【0059】
本発明においては、赤道面上に中心を有し、赤道PCを含む円弧のうち、トレッド面24の輪郭線との重複長さが最大となる円弧がセンター円弧として特定され、この円弧の端が境界CMとして特定され、この円弧の半径がセンター円弧の半径Rcとして用いられてもよい。この境界CMとセンター円弧の中心とを通る直線上に中心を有し、境界CMを含む円弧のうち、トレッド面24の輪郭線との重複長さが最大となる円弧がミドル円弧として特定され、この円弧の外端が境界MSとして特定され、この円弧の半径がミドル円弧の半径Rmとして用いられてもよい。この境界MSとミドル円弧の中心とを通る直線上に中心を有し、境界MSを含む円弧のうち、トレッド面24の輪郭線との重複長さが最大となる円弧がサイド円弧として特定され、この円弧の外端が境界SHとして特定され、この円弧の半径がサイド円弧の半径Rsとして用いられてもよい。この境界SHとサイド円弧の中心とを通る直線上に中心を有し、境界SHを含む円弧のうち、トレッド面24の輪郭線との重複長さが最大となる円弧がショルダー円弧として特定され、この円弧の外端が境界HUとして特定され、この円弧の半径がショルダー円弧の半径Rshとして用いられてもよい。
【0060】
このタイヤ2では、サイド面26の輪郭線はショルダー円弧に連なる。図2において符号HUで示される位置はショルダー円弧とサイド面26の輪郭線との境界である。サイド面26の輪郭線は、境界HUにおいてショルダー円弧と接する。境界HUは、ショルダー円弧の第二端でもあり、サイド面26の輪郭線の第一端でもある。サイド面26の輪郭線の第二端はタイヤ2のトゥPTである。
【0061】
図2において、符号LSHで示される直線は、ショルダー円弧の第一端SHにおけるショルダー円弧の第一接線である。符号LHUで示される直線は、ショルダー円弧の第二端HUにおけるショルダー円弧の第二接線である。符号TEで示される位置は、第一接線LSHと第二接線LHUとの交点である。本発明においては、交点TEがトレッド基準端である。
【0062】
図2において符号HTWで示される長さは、赤道面からトレッド基準端TEまでの軸方向距離である。本発明においては軸方向距離HTWがトレッド4の基準幅である。符号HXWで示される長さは、赤道面から最大幅位置PWまでの軸方向距離である。本発明においては軸方向距離HXWが基準断面幅である。基準断面幅HXWの2倍が、前述の、タイヤ2の断面幅である。
このタイヤ2では、トレッド4の基準幅HTWの、基準断面幅HXWに対する比率(HTW/HXW)は70%以上80%以下である。
【0063】
図2において符号HCMで示される長さは、赤道面から境界CMまでの軸方向距離である。符号HMSで示される長さは、赤道面から境界MSまでの軸方向距離である。
このタイヤ2では、軸方向距離HCMの、トレッド4の基準幅HTWに対する比(HCM/HTW)は0.25以上0.35以下であるのが好ましい。軸方向距離HMSの、トレッド4の基準幅HTWに対する比(HMS/HTW)は0.65以上0.75以下であるのが好ましい。
【0064】
サイド面26の輪郭線は、少なくとも1の円弧を含む。このサイド面26の輪郭線は、上部円弧を含む。上部円弧は、最大幅位置PWを含み、この最大幅位置PWからトレッド基準端TE側にのびる円弧である。上部円弧は外向きに凸な円弧であり、その中心は、最大幅位置PWを通り軸方向にのびる直線上に位置する。図2において符号UGで示される位置は、上部円弧の外端である。図2において符号Ruで示される矢印は上部円弧の半径である。
【0065】
このタイヤ2では、前述の境界HUと外端UGとは直線で結ばれる。この直線は、境界HUにおいてショルダー円弧と接し、外端UGにおいて上部円弧と接する。境界HUの位置と外端UGの位置とが一致していてもよい。この場合、ショルダー円弧に上部円弧が直接繋げられる。
上部円弧の外端UGを境界HUから離して配置するほど、ショルダー部分におけるゴムのボリュームの低減が可能である。ゴムボリュームの低減は、転がり抵抗の低減に貢献する。この観点から、外面2Gの輪郭線において、境界HUと外端UGとは直線で結ばれるのが好ましい。
【0066】
図3は、このタイヤ2の接地面形状を示す。図3において、左右方向はタイヤ2の軸方向に対応する。上下方向は、タイヤ2の周方向に対応する。
【0067】
接地面は、タイヤ接地面形状測定装置(図示されず)を用いて、正規状態のタイヤ2に所定の荷重を付与して、このタイヤ2を平面に接触させることにより得られる。接地面に含まれる各陸部32の輪郭をトレースすることで、図3に示された接地面形状が得られる。接地面を得るにあたってタイヤ2は、その軸方向が路面に対して平行となるように配置される。このタイヤ2には、路面に対して垂直な向きに前述の荷重がかけられる。言い換えれば、タイヤのキャンバー角を0°とした状態で、タイヤに縦荷重が付与される。
【0068】
図3において符号GEで示される位置は接地面の軸方向外端(接地端とも称される。)である。本発明においては、正規状態のタイヤ2に正規荷重の80%の荷重を付与して、タイヤ2を平面に接触させて得られる、タイヤ2の接地面の軸方向外端GEが基準接地端である。基準接地端GEに対応するタイヤ2の外面2Gの位置が、基準接地位置である。図2において、符号PGで示される位置が基準接地位置である。
【0069】
図2において符号HGWで示される長さは、赤道面から基準接地位置PGまでの軸方向距離である。このタイヤ2では、軸方向距離HGWの、トレッド4の基準幅HTWに対する比は、0.88以上0.92以下の範囲で設定される。
【0070】
このタイヤ2では、トレッド面24の輪郭線を構成する複数の円弧は異なる半径を有する。トレッド面24の輪郭線の曲率半径は、隣り合う円弧の境界において変化する。
前述したように、ショルダー円弧は、トレッド面24の輪郭線を構成する複数の円弧のうち、最も軸方向外側に位置する円弧であり、最も小さな半径Rshを有する。このショルダー円弧にサイド面26の輪郭線が連なる。このタイヤ2では、トレッド面24の輪郭線の曲率半径は、ショルダー円弧とサイド円弧との境界SHにおいて、最大の変化率を示す。本発明においては、ショルダー円弧とサイド円弧との境界SHが基準境界である。図2において符号Lで示される長さは、赤道面から基準境界SHまでの軸方向距離である。
【0071】
トレッド面の輪郭線はトレッドの路面との接地状態と密接に関連する。そこで、本発明者らは、トレッド面の輪郭線と圧縮歪みの発生との関係について鋭意検討した。その結果、基準接地端に対する基準境界の位置が圧縮歪みの発生に関与していること、具体的には、基準境界が基準接地端位置の軸方向内側に位置すると、ショルダー部分の表層部に圧縮歪みが生じる傾向にあることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0072】
図4は、基準境界SHと基準接地位置PGとの位置関係を示す。図4において、実線がトレッド面24の輪郭線であり、点線が従来トレッド面TSの輪郭線である。従来トレッド面TSの輪郭線において符号SHcで示される位置は、従来トレッド面TSにおける基準境界である。符号PGcで示される位置は、従来トレッド面TSにおける基準接地端位置である。
【0073】
図4に示されるように、従来トレッド面TSでは、基準境界SHcは基準接地位置PGcの軸方向内側に位置する。これに対してこのタイヤ2のトレッド面24では、基準境界SHは基準接地位置PGの軸方向外側に位置する。このトレッド面24では、輪郭線の曲率変化が大きい基準境界SHが接地面に含まれない。このタイヤ2では、従来タイヤで確認される、ショルダー部分の表層部での圧縮歪みの発生が抑制される。
【0074】
基準境界SHが基準接地位置PGから軸方向外側に離れて配置されると、ショルダー部分でのトレッド4の厚さが増加することが懸念される。トレッド4の厚さの増加は転がり抵抗を増加させることから、この場合、圧縮歪みの発生を抑制することでもたらされる転がり抵抗の低減効果が相殺されてしまう。
【0075】
しかしこのタイヤ2では、赤道面から基準境界SHまでの軸方向距離Lの、赤道面からトレッド基準端TEまでの軸方向距離HTWに対する比(L/HTW)は0.94以上0.98以下である。
比(L/HTW)が0.98以下であるので、基準境界SHが基準接地位置PGから離れすぎることなく配置される。基準境界SHと基準接地位置PGとの間隔が適切に維持されるので、ショルダー部分でのトレッド4が適正な厚さで構成される。このタイヤ2は、厚さの増加による転がり抵抗の増加を抑えることができる。このタイヤ2では、圧縮歪みの発生を抑制することでもたらされる転がり抵抗の低減効果が十分に発揮される。この観点から、比(L/HTW)は0.97以下であるのが好ましい。
比(L/HTW)が0.94以上であるので、基準接地位置PGの軸方向外側に基準境界SHを配置させたことが、圧縮歪みの発生を抑制することに効果的に貢献できる。このタイヤ2では、圧縮歪みを起因とする転がり抵抗が低減される。この観点から、比(L/HTW)は0.95以上であるのが好ましい。
【0076】
このタイヤ2では、基準境界SHが基準接地位置PGの軸方向外側に位置し、赤道面から基準境界SHまでの軸方向距離Lの、赤道面からトレッド基準端TEまでの軸方向距離HTWに対する比(L/HTW)が0.94以上0.98以下である。
このタイヤ2では、圧縮歪みの発生が抑えられ、ショルダー部分でのトレッドが適切な厚さで構成される。このタイヤ2は、転がり抵抗の低減を図ることができる。
前述したように、このタイヤ2のトレッド4では、キャップ部34が耐摩耗性及びグリップ性能が考慮された架橋ゴムからなる。このタイヤ2では、転がり抵抗の低減のために、キャップ部34の架橋ゴムを低損失ゴムに置き換える必要はない。このタイヤ2は、ウェット路面でのグリップ性能を低下させることなく、転がり抵抗の低減を達成できる。
【0077】
図2において符号tで示される長さは赤道PCから基準接地位置PGまでの径方向距離である。
このタイヤ2では、赤道PCから基準接地位置PGまでの径方向距離tの、赤道面からトレッド基準端TEまでの軸方向距離HTWに対する比(t/HTW)は0.06以上0.15以下であるのが好ましい。
比(t/HTW)が0.06以上に設定されることにより、トレッド面24がフラットになり過ぎることなく、このタイヤ2は、ショルダー部分でのトレッド4を適切な厚さで構成できる。接地圧の局所的な高まりが抑えられるので、偏摩耗の発生が抑えられる。このタイヤ2では良好な耐偏摩耗性が維持される。この観点から、比(t/HTW)は0.10以上であるのがより好ましい。
比(t/HTW)が0.15以下に設定されることにより、圧縮歪みの発生が効果的に抑制される。このタイヤ2は、転がり抵抗のさらなる低減を図ることができる。この観点から、比(t/HTW)は0.12以下であるのがより好ましい。
【0078】
このタイヤ2では、ミドル円弧の半径Rmの、サイド円弧の半径Rsに対する比(Rm/Rs)は2.1以上2.7以下であるのが好ましい。
比(Rm/Rs)が2.1以上に設定されることにより、圧縮歪みの発生が効果的に抑制される。このタイヤ2は、転がり抵抗のさらなる低減を図ることができる。この観点から、比(Rm/Rs)は2.3以上であるのがより好ましい。
比(Rm/Rs)が2.7以下に設定されることにより、トレッド面24の路面に対する滑りが抑制され、ショルダー部分でのトレッド4が適切な厚さで構成される。このタイヤ2では、良好な耐偏摩耗性が維持される。この観点から、比(Rm/Rs)は2.5以下であるのがより好ましい。
【0079】
このタイヤ2では、センター円弧の半径Rcの、ミドル円弧の半径Rmに対する比(Rc/Rm)は4.0以上5.5以下であるのが好ましい。
比(Rc/Rm)が4.0以上に設定されることにより、圧縮歪みの発生が効果的に抑制される。このタイヤ2は、転がり抵抗のさらなる低減を図ることができる。この観点から、比(Rc/Rm)は4.2以上であるのがより好ましい。
比(Rc/Rm)が5.5以下に設定されることにより、トレッド面24の路面に対する滑りが抑制され、ショルダー部分でのトレッド4が適切な厚さで構成される。このタイヤ2では、良好な耐偏摩耗性が維持される。この観点から、比(Rm/Rs)は5.3以下であるのがより好ましい。
【0080】
このタイヤ2では、サイド円弧の半径Rsの、ショルダー円弧の半径Rshに対する比(Rs/Rsh)は10以上20以下であるのが好ましい。
比(Rs/Rsh)が10以上に設定されることにより、圧縮歪みの発生が効果的に抑制される。このタイヤ2は、転がり抵抗のさらなる低減を図ることができる。この観点から、比(Rs/Rsh)は13以上であるのがより好ましい。
比(Rs/Rsh)が20以下に設定されることにより、トレッド面24の路面に対する滑りが抑制され、ショルダー部分でのトレッド4が適切な厚さで構成される。このタイヤ2では、良好な耐偏摩耗性が維持される。この観点から、比(Rs/Rsh)は17以下であるのがより好ましい。
【0081】
以上説明したように、発明によれば、ウェット路面でのグリップ性能を低下させることなく、転がり抵抗の低減を達成できる、タイヤが得られる。
【実施例0082】
以下、実施例などにより、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例のみに限定されるものではない。
【0083】
[実施例1]
図1に示された基本構成を備えた乗用車用の空気入りタイヤ(タイヤサイズ=205/55R19)を得た。
トレッド面の輪郭線の調整により、比(L/HTW)、比(t/HTW)及び比(Rm/Rs)が下記の表1に示される通りに設定された。
赤道面から基準接地位置PGまでの軸方向距離HGWの、トレッドの基準幅HTWに対する比(HGW/HTW)は0.88であった。実施例1の基準境界SHは基準接地位置PGの軸方向外側に配置された。
トレッドのキャップ部は、低損失ゴムではなく、ウェット路面でのグリップ性能が考慮された架橋ゴムで構成された。
【0084】
[比較例1]
比較例1は従来タイヤである。この比較例1の比(L/HTW)、比(t/HTW)及び比(Rm/Rs)は下記の表1に示される通りである。赤道面から基準接地位置PGcまでの軸方向距離HGWの、トレッドの基準幅HTWに対する比(HGW/HTW)は0.88であった。比較例1の基準境界SHcは基準接地位置PGcの軸方向内側に配置された。比較例1の基本構成は実施例1のそれと同じである。
【0085】
[実施例2-7及び比較例2-3]
トレッド面の輪郭線の調整により、比(L/HTW)、比(t/HTW)及び比(Rm/Rs)が下記の表1に示される通りに設定し、実施例2-7及び比較例2-3のタイヤを得た。いずれのタイヤも、比(HGW/HTW)は0.88であった。実施例2-7及び比較例2-3の基本構成は、実施例1のそれと同じである。
【0086】
[転がり抵抗]
転がり抵抗試験機を用い、試作タイヤが下記の条件でドラム上を速度80km/hで走行するときの転がり抵抗係数(RRC)を測定した。その結果が比較例1を100とした指数で下記表1-2の「RRC」の欄に示されている。数値が大きいほど、タイヤの転がり抵抗は低い。
リム:16×6.5J
内圧:210kPa
縦荷重:4.82kN
【0087】
[耐偏摩耗性]
試作タイヤをリム(サイズ=16×7.0J)に組み、空気を充填して内圧を250kPaに調整した。このタイヤを摩耗エネルギー測定装置に装着した。キャンバー角を0°、スリップ角を0°に設定して、タイヤの摩耗エネルギーを測定した。赤道面における摩耗エネルギーEcと、接地端における摩耗エネルギーEsとから、耐偏摩耗性の指標としての比(Ec/Es)を求めた。その結果が比較例1を100とした指数で下記の表1-2の「耐偏摩耗性」の欄に示されている。数値が小さいほど耐偏摩耗性に優れる。
【0088】
【表1】
【0089】
【表2】
【0090】
表1-2に示されているように、実施例では、低損失ゴムをキャップ部に用いることなく、転がり抵抗の低減が達成されている。すなわち、表1-2に示された実施例では、ウェット路面でのグリップ性能を低下させることなく、転がり抵抗の低減が達成される。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0091】
以上説明された、低損失ゴムを用いることなく転がり抵抗を低減できる技術は種々のタイヤにも適用されうる。
【符号の説明】
【0092】
2・・・タイヤ
2G・・・タイヤ2の外面
4・・・トレッド
6・・・サイドウォール
10・・・ビード
12・・・カーカス
14・・・ベルト
24・・・トレッド面
26・・・サイド面
34・・・キャップ部
36・・・ベース部
44・・・内側層
46・・・外側層
図1
図2
図3
図4
図5
図6