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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173087
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】硬化性組成物及びその硬化物
(51)【国際特許分類】
   C08L 71/02 20060101AFI20231130BHJP
   C08L 83/04 20060101ALI20231130BHJP
   C08G 65/336 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
C08L71/02
C08L83/04
C08G65/336
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022085082
(22)【出願日】2022-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 隆博
(72)【発明者】
【氏名】松尾 陽一
【テーマコード(参考)】
4J002
4J005
【Fターム(参考)】
4J002CH02X
4J002CP03W
4J002GH01
4J002GJ01
4J005AA02
4J005BD08
(57)【要約】
【課題】反応性シリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体を含有し、高強度の硬化物を与え得る硬化性組成物の提供。
【解決手段】反応性シリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)と、オルガノポリシロキサン(B)を含む硬化性組成物。(B)は、[T3/(Q1+Q2+Q3+Q4+T1+T2+T3+D1+D2+M1)]×100で表されるT3比率が20%以上45%以下である。Q1、Q2、Q3、又はQ4はテトラアルコキシシランに由来し、シロキサン結合が1個、2個、3個、又は4個の構成単位;T1、T2、又はT3はモノオルガノトリアルコキシシランに由来し、シロキサン結合が1個、2個、又は3個の構成単位;D1、又はD2はジオルガノジアルコキシシランに由来し、シロキサン結合が1個、又は2個の構成単位;M1はトリオルガノモノアルコキシシランに由来し、シロキサン結合が1個の構成単位を指す。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応性シリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)、及び、オルガノポリシロキサン(B)、を含有する、硬化性組成物であって、
前記オルガノポリシロキサン(B)は、式:[T3/(Q1+Q2+Q3+Q4+T1+T2+T3+D1+D2+M1)]×100で表されるT3比率が20%以上45%以下である
(式中、Q1、Q2、Q3、又はQ4はそれぞれ、テトラアルコキシシランに由来し、シロキサン結合を1個、2個、3個、又は4個形成している構成単位を指し、
T1、T2、又はT3はそれぞれ、モノオルガノトリアルコキシシランに由来し、シロキサン結合を1個、2個、又は3個形成している構成単位を指し、
D1、又はD2はそれぞれ、ジオルガノジアルコキシシランに由来し、シロキサン結合を1個、又は2個形成している構成単位を指し、
M1は、トリオルガノモノアルコキシシランに由来し、シロキサン結合を1個形成している構成単位を指す)、硬化性組成物。
【請求項2】
前記オルガノポリシロキサン(B)は、ケイ素原子に直接結合した有機基として、炭素数1~10のアルキル基(b1)と炭素数6~10のアリール基(b2)を有する、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
前記ポリオキシアルキレン系重合体(A)と前記オルガノポリシロキサン(B)の合計のうち、前記ポリオキシアルキレン系重合体(A)の割合が、60~99重量%である、請求項1又は2に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
硬化触媒(C)を更に含有する、請求項1又は2に記載の硬化性組成物。
【請求項5】
前記ポリオキシアルキレン系重合体(A)は、数平均分子量が10,000以上である、請求項1又は2に記載の硬化性組成物。
【請求項6】
前記硬化性組成物中の溶剤の含有割合が、前記硬化性組成物の全量に対し15重量%以下である、請求項1又は2に記載の硬化性組成物。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の硬化性組成物を硬化させてなる硬化物。
【請求項8】
請求項1又は2に記載の硬化性組成物を製造する方法であって、
前記反応性シリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)と前記オルガノポリシロキサン(B)を溶剤中で混合する工程、及び
前記溶剤を留去する工程、を含む、製造方法。
【請求項9】
前記溶剤を留去する工程の後に、硬化触媒(C)を混合する工程を含む、請求項8に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反応性シリル基を有する重合体を含む硬化性組成物、その硬化物、及び前記組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ケイ素原子上に水酸基または加水分解性基を有し、シロキサン結合を形成し得るケイ素含有基(以下、「反応性シリル基」という)を有する有機重合体は、湿分反応性ポリマーとして知られており、接着剤、シーリング材、コーティング材、塗料、粘着剤などの多くの工業製品に含まれ、幅広い分野で利用されている。このような反応性シリル基含有重合体としては、主鎖骨格がポリオキシアルキレン系重合体のものが広く使用されている。
【0003】
このような反応性シリル基を有する有機重合体を硬化させた後に発現する機械的特性を改善する方法として、該有機重合体にシリコーン樹脂を配合する技術が知られている。シリコーン樹脂とは、主鎖が無機骨格のシロキサン結合で構成され、側鎖にメチル基やフェニル基などの有機基を有する重合体である。該樹脂は、オルガノアルコキシシランの加水分解・脱水縮合反応によって製造することができる。
【0004】
そのようなシリコーン樹脂の1種として、3官能のオルガノトリアルコキシシランから合成されるポリシルセスキオキサンが知られている。
例えば、特許文献1では、反応性シリル基を有する重合体と、シルセスキオキサン単位を含むシリコーン樹脂を含有する架橋組成物が開示されている。また、特許文献2では、フェニル基とアルコキシ基を含むシルセスキオキサンと、アルコキシシラン基を含むシリル化ポリマーと、炭酸塩フィラーを含む組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2014-521819号公報
【特許文献2】特表2020-521034号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
反応性シリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体は、硬化して硬化物を形成するが、当該硬化物が示す強度について改善の余地がある。
【0007】
本発明は、上記現状に鑑み、反応性シリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体を含有し、高強度の硬化物を与え得る硬化性組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らが上記課題を解決すべく鋭意検討したところ、反応性シリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体に、特定の構成単位を特定の比率で有するシリコーン樹脂を配合することによって、硬化後の強度が向上し得ることを見出し、本発明に至った。
【0009】
すなわち本発明は、反応性シリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)、及び、オルガノポリシロキサン(B)、を含有する、硬化性組成物であって、
前記オルガノポリシロキサン(B)は、式:[T3/(Q1+Q2+Q3+Q4+T1+T2+T3+D1+D2+M1)]×100で表されるT3比率が20%以上45%以下である
(式中、Q1、Q2、Q3、又はQ4はそれぞれ、テトラアルコキシシランに由来し、シロキサン結合を1個、2個、3個、又は4個形成している構成単位を指し、
T1、T2、又はT3はそれぞれ、モノオルガノトリアルコキシシランに由来し、シロキサン結合を1個、2個、又は3個形成している構成単位を指し、
D1、又はD2はそれぞれ、ジオルガノジアルコキシシランに由来し、シロキサン結合を1個、又は2個形成している構成単位を指し、
M1は、トリオルガノモノアルコキシシランに由来し、シロキサン結合を1個形成している構成単位を指す)、硬化性組成物に関する。
また本発明は、前記硬化性組成物を硬化させてなる硬化物にも関する。
さらに本発明は、前記硬化性組成物を製造する方法であって、
前記反応性シリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)と前記オルガノポリシロキサン(B)を溶剤中で混合する工程、及び
前記溶剤を留去する工程、を含む、製造方法にも関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、反応性シリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体を含有し、高強度の硬化物を与え得る硬化性組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明の実施形態を具体的に説明する。
本開示に係る硬化性組成物は、少なくとも、反応性シリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)と、オルガノポリシロキサン(B)を含有する。
【0012】
<<反応性シリル基含有ポリオキシアルキレン系重合体(A)>>
反応性シリル基含有ポリオキシアルキレン系重合体(A)は、複数の繰り返し単位から構成される重合体骨格と、該重合体骨格の末端に結合した末端構造を有する。前記重合体骨格とは、複数の繰り返し単位から構成される重合体主鎖のことをいう。重合体(A)の重合体骨格は、直鎖状のものであってもよいし、分岐鎖状のものであってもよい。
【0013】
前記重合体骨格は、互いに連結した複数の繰り返し単位のみから構成される重合体骨格であるか、又は、当該複数の繰り返し単位と、重合時に使用される開始剤に由来する構造とのみから構成される重合体骨格であることが好ましい。前記繰り返し単位とは、オキシアルキレン単位を指し、例えば、炭素数2~6、好ましくは炭素数2~4のオキシアルキレン単位のことをいう。
【0014】
前記末端構造とは、重合体骨格を構成する繰り返し単位を含まない部位であって、前記重合体骨格の末端に結合した部位を指す。前記末端構造は、酸素原子を介して、前記重合体骨格の端に位置するオキシアルキレン単位に結合していることが好ましい。また、重合体(A)が有する反応性シリル基は、末端構造中に含まれていることが好ましい。この時、各末端構造がそれぞれ反応性シリル基を含むものであってもよいし、反応性シリル基を含む末端構造と、反応性シリル基を含まない末端構造が併存してもよい。
【0015】
<反応性シリル基>
ポリオキシアルキレン系重合体(A)は反応性シリル基を有するものである。該反応性シリル基とは、ケイ素原子上に水酸基または加水分解性基を有し、加水分解・脱水縮合反応によってシロキサン結合を形成し得るケイ素含有基のことをいい、具体的には、下記一般式(1)で表すことができる。
-Si(R3-a(X) (1)
式(1)中、Rは、それぞれ独立に、炭素数1~20の炭化水素基を表し、前記炭化水素基は、ヘテロ含有基を有してもよい。Xは、それぞれ独立に、水酸基または加水分解性基を表す。aは1、2、または3である。
【0016】
は、炭素数1~20の炭化水素基である。前記炭素数は、1~12が好ましく、1~6がより好ましく、1~4が特に好ましい。該炭化水素基は、無置換の炭化水素基であってもよいし、置換基を有する炭化水素基であってもよい。
【0017】
としての炭化水素基が置換基として有してもよいヘテロ含有基は、ヘテロ原子を含む基である。ここで、炭素原子および水素原子以外の原子をヘテロ原子とする。
【0018】
ヘテロ原子の好適な例としては、N、O、S、P、Si、およびハロゲン原子が挙げられる。ヘテロ含有基について、炭素数とヘテロ原子数との合計は、1~10が好ましく、1~6がより好ましく、1~4がさらに好ましい。
【0019】
ヘテロ含有基の好適な例としては、水酸基;メルカプト基;Cl、Br、I、Fなどのハロゲン原子;ニトロ基;シアノ基;メトキシ基、エトキシ基、n-プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基などのアルコキシ基;メチルチオ基、エチルチオ基、n-プロピルチオ基、イソプロピルチオ基などのアルキルチオ基;アセチル基、プロピオニル基、ブタノイル基などのアシル基;アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基、ブタノイルオキシ基などのアシルオキシ基;アミノ基、メチルアミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基などの置換または非置換のアミノ基;アミノカルボニル基、メチルアミノカルボニル基、エチルアミノカルボニル基、ジメチルアミノカルボニル基、ジエチルアミノカルボニル基などの置換または非置換のアミノカルボニル基;シアノ基などが挙げられる。
【0020】
としての炭素数1~20の炭化水素基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、2-エチル-n-ヘキシル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、n-トリデシル基、n-テトラデシル基、n-ペンタデシル基、n-ヘキサデシル基、n-オクタデシル基、n-ノナデシル基、n-イコシル基などのアルキル基;ビニル基、2-プロペニル基、3-ブテニル基、4-ペンテニル基などのアルケニル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基などのシクロアルキル基;フェニル基、ナフタレン-1-イル基、ナフタレン-2-イル基、o-フェニルフェニル基、m-フェニルフェニル基、p-フェニルフェニル基などのアリール基;ベンジル基、フェネチル基、ナフタレン-1-イルメチル基、ナフタレン-2-イルメチル基などのアラルキル基が挙げられる。これらの炭化水素基が、前述のヘテロ含有基で置換された基も、Rとして好ましい。
【0021】
の好適な例としては、例えば、メチル基、エチル基などのアルキル基;クロロメチル基、メトキシメチル基などのヘテロ含有基を有するアルキル基;シクロヘキシル基などのシクロアルキル基;フェニル基などのアリール基;ベンジル基などのアラルキル基;などが挙げられる。Rとしては、メチル基、メトキシメチル基、およびクロロメチル基が好ましく、メチル基、およびメトキシメチル基がより好ましく、メチル基がさらに好ましい。
【0022】
Xとしては、例えば、水酸基、水素、ハロゲン、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、酸アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基、アルケニルオキシ基などが挙げられる。これらの中では、加水分解性が穏やかで取扱いやすいことから、アルコキシ基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基がより好ましい。
【0023】
aは1、2、または3である。aとしては、2または3が好ましい。
【0024】
前記反応性シリル基の具体例としては、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリス(2-プロペニルオキシ)シリル基、トリアセトキシシリル基、ジメトキシメチルシリル基、ジエトキシメチルシリル基、ジメトキシエチルシリル基、(クロロメチル)ジメトキシシリル基、(クロロメチル)ジエトキシシリル基、(メトキシメチル)ジメトキシシリル基、(メトキシメチル)ジエトキシシリル基、(N,N-ジエチルアミノメチル)ジメトキシシリル基、(N,N-ジエチルアミノメチル)ジエトキシシリル基などが挙げられるが、これらに限定されない。これらの中では、ジメトキシメチルシリル基、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、および(メトキシメチル)ジメトキシシリル基が良好な機械物性を有する硬化物が得られるため好ましい。活性の観点から、トリメトキシシリル基、(クロロメチル)ジメトキシシリル基、および(メトキシメチル)ジメトキシシリル基がより好ましく、トリメトキシシリル基、および(メトキシメチル)ジメトキシシリル基が特に好ましい。安定性の観点から、ジメトキシメチルシリル基、およびトリエトキシシリル基がより好ましく、ジメトキシメチルシリル基が特に好ましい。
【0025】
ポリオキシアルキレン系重合体(A)の1分子あたりの反応性シリル基の平均数は、1.0個を超えることが好ましく、1.3個以上がより好ましく、1.6個以上がさらに好ましい。特に、オルガノポリシロキサン(B)の配合による硬化物の強度向上効果に優れることから、重合体(A)1分子あたりの反応性シリル基の平均数は、2.0個以上であることが好ましく、2.2個以上がより好ましく、2.5個以上が特に好ましい。また、前記平均数の上限は、特に限定されないが、6個以下が好ましく、5個以下がより好ましい。尚、重合体(A)1分子あたりの反応性シリル基の平均数は、NMR測定の結果から算出することができる。
【0026】
また、ポリオキシアルキレン系重合体(A)1分子における重合体骨格の末端の数に対する反応性シリル基の数の平均比率は、特に限定されず、1.0以下であってもよいし、1.0より多くてもよい。また、前記平均比率の上限は、特に限定されないが、5以下が好ましく、3以下がより好ましい。尚、該平均比率の数値は、NMR測定の結果から算出することができる。
【0027】
本願明細書において、前記重合体骨格の末端の数に対する反応性シリル基の数の平均比率とは、重合体骨格の末端構造1個あたりに平均して含まれる反応性シリル基の数を指し、重合体1分子中の反応性シリル基の平均数/重合体1分子中の重合体骨格の末端の数で表される。重合体1分子中の重合体骨格の末端の数は、重合体骨格が全て直鎖状の場合、2となり、重合体骨格が全て分岐鎖状の場合、3又はそれ以上となる。また、重合体骨格が直鎖状と分岐鎖状の混合物である場合には、2から3の間にもなり得る。
【0028】
ポリオキシアルキレン系重合体(A)において、反応性シリル基を有する末端構造は、特に限定されないが、代表的なものとして、下記一般式(2)又は(3)で表される末端構造が挙げられる。
【0029】
-O-R-CH(R)-CH-Si(R3-a(X) (2)
式(2)中、Rは、直接結合または炭素数1~4の2価の炭化水素基を表し、Rは、水素または炭素数1~6のアルキル基を表す。左端の酸素は、前記重合体骨格の末端に位置する繰り返し単位中の酸素、又は、前記重合体骨格の末端に位置する繰り返し単位に結合した酸素を示す。R、X、及びaは、式(1)について上述したものと同じである。
【0030】
としては、炭素数1~3の2価の炭化水素基が好ましく、炭素数1~2の2価の炭化水素基がより好ましい。該炭化水素基としては、アルキレン基が好ましく、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基を使用することができる。メチレン基が特に好ましい。
【0031】
としては、水素または炭素数1~4のアルキル基が好ましく、水素または炭素数1~3のアルキル基がより好ましい。該アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられる。Rとしては、水素、メチル基、エチル基が好ましく、水素、メチル基がより好ましい。
【0032】
【化1】
【0033】
式(3)中、Rは、直接結合または炭素数1~6の2価の結合基を表す。Rは、水素または炭素数1~10の炭化水素基を表す。nは1から10の整数である。左端の酸素は、前記重合体骨格の末端に位置する繰り返し単位中の酸素、又は、前記重合体骨格の末端に位置する繰り返し単位に結合した酸素を示す。R、R、R、X、及びaは、式(1)及び(2)について上述したものと同じである。
【0034】
は、炭素数1~6の2価の有機基であってよい。該有機基は、炭化水素基、又は、酸素原子を含む炭化水素基が好ましい。前記炭素数は1~4が好ましく、1~3がより好ましく、1~2がさらに好ましい。Rとしては、-CHOCH-、-CHO-、-CH-が好ましく、-CHOCH-がより好ましい。
【0035】
としては、水素または炭素数1~5の炭化水素基が好ましく、水素または炭素数1~3の炭化水素基がより好ましく、水素または炭素数1~2の炭化水素基がさらに好ましい。特に好ましくは、水素原子、メチル基であり、最も好ましくは水素原子である。
【0036】
<重合体骨格>
ポリオキシアルキレン系重合体(A)の重合体骨格としては、例えば、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレン、ポリオキシテトラメチレン、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン共重合体、ポリオキシプロピレン-ポリオキシブチレン共重合体などが挙げられる。各重合体はブロック状、グラフト状などに混在していてもよい。これらの中でも、ポリオキシプロピレンが特に好ましい。ポリオキシアルキレン系重合体(A)は、重合体骨格中に前記のポリオキシアルキレンの繰り返し単位を50重量%以上含有することが好ましく、70重量%以上含有することがより好ましい。
【0037】
ポリオキシアルキレン系重合体(A)は、いずれか1種の重合体骨格を有する重合体であってもよいし、異なる重合体骨格を有する2種以上の重合体の混合物でもよい。また、混合物については、それぞれ別々に製造された重合体の混合物でもよいし、任意の混合組成になるように同時に製造された混合物でもよい。
【0038】
ポリオキシアルキレン系重合体(A)の数平均分子量は、特に限定されないが、GPCにおけるポリスチレン換算分子量として、3,000~100,000が好ましく、3,000~50,000がより好ましく、3,000~30,000が特に好ましい。数平均分子量が上記の範囲内であると、反応性シリル基の導入量が適度であることにより、製造コストを適度な範囲内に抑えつつ、扱いやすい粘度を有し作業性に優れるポリオキシアルキレン系重合体(A)を比較的容易に製造することができる。
特に、高い強度を示す硬化物が得られるため、ポリオキシアルキレン系重合体(A)の数平均分子量は、7,000以上であることが好ましく、10,000以上がより好ましく、12,000以上がさらに好ましい。
【0039】
ポリオキシアルキレン系重合体(A)の分子量としては、反応性シリル基導入前の重合体前駆体を、JIS K 1557の水酸基価の測定方法と、JIS K 0070に規定されたよう素価の測定方法の原理に基づいた滴定分析により、直接的に末端基濃度を測定し、重合体の構造(使用した重合開始剤によって定まる分岐度)を考慮して求めた末端基換算分子量で示すこともできる。ポリオキシアルキレン系重合体(A)の末端基換算分子量は、重合体前駆体の一般的なGPC測定により求めた数平均分子量と上記末端基換算分子量の検量線を作成し、ポリオキシアルキレン系重合体(A)のGPCにより求めた数平均分子量を末端基換算分子量に換算して求めることも可能である。
【0040】
ポリオキシアルキレン系重合体(A)の分子量分布(Mw/Mn)は特に限定されないが、狭いことが好ましい。具体的には2.0未満が好ましく、1.6以下がより好ましく、1.5以下がさらに好ましく、1.4以下が特に好ましく、1.3以下がより特に好ましく、1.2以下が最も特に好ましい。ポリオキシアルキレン系重合体(A)の分子量分布はGPC測定により得られる数平均分子量と重量平均分子量から求めることができる。
【0041】
<反応性シリル基含有ポリオキシアルキレン系重合体(A)の製造方法>
次に反応性シリル基含有ポリオキシアルキレン系重合体(A)を製造する方法について説明する。反応性シリル基含有ポリオキシアルキレン系重合体(A)は、反応性シリル基を導入することが可能な前駆重合体に対し、反応性シリル基を導入することで製造できる。具体的には、ポリオキシアルキレン系重合体(A)は、末端に水酸基を有するポリオキシアルキレン系重合体(P)に対し、水酸基の反応性を利用して炭素-炭素不飽和結合を導入して、炭素-炭素不飽和結合を有する前駆重合体を得た後、該前駆重合体に、該炭素-炭素不飽和結合との反応性を有する反応性シリル基含有化合物を反応させて反応性シリル基を導入することで製造できる。
【0042】
(重合)
ポリオキシアルキレン系重合体の重合体骨格は、従来公知の方法によって、水酸基を有する開始剤にエポキシ化合物を重合させることで形成することができ、これによって末端に水酸基を有するポリオキシアルキレン系重合体(P)が得られる。具体的な重合方法としては特に限定されないが、分子量分布(Mw/Mn)の小さい水酸基末端重合体が得られることから、亜鉛ヘキサシアノコバルテートグライム錯体等の複合金属シアン化物錯体触媒を用いた重合方法が好ましい。
【0043】
水酸基を有する開始剤としては特に限定されないが、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、低分子量のポリオキシプロピレングリコール、低分子量のポリオキシプロピレントリオール、ブタノール、アリルアルコール、低分子量のポリオキシプロピレンモノアリルエーテル、低分子量のポリオキシプロピレンモノアルキルエーテルなどが挙げられる。
【0044】
前記エポキシ化合物としては特に限定されないが、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイド類、メチルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル等のグリシジルエーテル類等が挙げられる。好ましくはプロピレンオキサイドである。
【0045】
(アルカリ金属塩との反応)
末端に水酸基を有するポリオキシアルキレン系重合体(P)に対し炭素-炭素不飽和結合を導入するにあたっては、まず、ポリオキシアルキレン系重合体(P)に対しアルカリ金属塩を作用させて末端の水酸基をメタルオキシ基に変換することが好ましい。また、アルカリ金属塩の代わりに、複合金属シアン化物錯体触媒を用いることもできる。以上によって、メタルオキシ基末端ポリオキシアルキレン系重合体(D)が形成される。
【0046】
前記アルカリ金属塩としては特に限定されないが、例えば、水酸化ナトリウム、ナトリウムアルコキシド、水酸化カリウム、カリウムアルコキシド、水酸化リチウム、リチウムアルコキシド、水酸化セシウム、セシウムアルコキシド等が挙げられる。アルカリ金属塩は溶剤に溶解した状態で反応に供してもよい。
【0047】
(求電子剤(E)との反応)
次いで、メタルオキシ基末端ポリオキシアルキレン系重合体(D)に対し、炭素-炭素不飽和結合を有する求電子剤(E)を作用させることで、メタルオキシ基を、炭素-炭素不飽和結合を含む構造に変換することができる。これにより、末端構造中に炭素-炭素不飽和結合を有するポリオキシアルキレン系重合体(F)が形成される。
【0048】
炭素-炭素不飽和結合を有する求電子剤(E)としては、ポリオキシアルキレン系重合体(D)が有する前記メタルオキシ基と反応し、ポリオキシアルキレン系重合体に炭素-炭素不飽和結合を導入できる化合物であれば特に限定されないが、例えば、炭素-炭素不飽和結合を有する有機ハロゲン化物(E1)や、炭素-炭素不飽和結合を有するエポキシ化合物(E2)等が挙げられる。
【0049】
前記炭素-炭素不飽和結合を有する有機ハロゲン化物(E1)は、ハロゲンの置換反応によって前記メタルオキシ基と反応してエーテル結合を形成して、ポリオキシアルキレン系重合体の末端構造として炭素-炭素不飽和結合を含む構造を導入することができる。
【0050】
炭素-炭素不飽和結合を有する有機ハロゲン化物(E1)は、炭素-炭素二重結合を有するハロゲン化炭化水素化合物であることが好ましい。当該化合物を反応させて得られたポリオキシアルキレン系重合体(G)は、重合体骨格の末端に、炭素-炭素二重結合を有する。前記炭素-炭素二重結合を有するハロゲン化炭化水素化合物は、限定されるものではないが、下記一般式(7)で表すことができる。
Z-R-C(R)=CH (7)
【0051】
式(7)中、R及びRは、それぞれ、一般式(2)について上述したR及びRと同じ基である。Zは、ハロゲン原子を表す。当該有機ハロゲン化物(E1)を反応させて得られた、末端構造中に炭素-炭素不飽和結合を有するポリオキシアルキレン系重合体(F)に対して、後に説明する反応性シリル基の導入を行うと、前記一般式(2)で表される末端構造が形成され得る。
【0052】
前記炭素-炭素二重結合を有するハロゲン化炭化水素化合物の具体例としては、特に限定されないが、塩化ビニル、塩化アリル、塩化メタリル、臭化ビニル、臭化アリル、臭化メタリル、ヨウ化ビニル、ヨウ化アリル、ヨウ化メタリル等が挙げられる。取り扱いの容易さから、塩化アリル、塩化メタリルが好ましい。また、重合体骨格の末端の数に対する反応性シリル基の数の平均比率が向上することから、塩化メタリル、臭化メタリル、ヨウ化メタリルが好ましい。
【0053】
前記炭素-炭素不飽和結合を有するエポキシ化合物(E2)は、エポキシ基の開環付加反応によって前記メタルオキシ基と反応してエーテル結合を形成して、ポリオキシアルキレン系重合体の末端構造として炭素-炭素不飽和結合と水酸基を含む構造を導入することができる。前記開環付加反応においては、前記メタルオキシ基に対するエポキシ化合物(E2)の使用量や反応条件を調節することで、1つのメタルオキシ基に対して、単数又は複数のエポキシ化合物(E2)を付加させることができる。
【0054】
前記炭素-炭素不飽和結合を有するエポキシ化合物(E2)は、限定されるものではないが、炭素-炭素二重結合を有するエポキシ化合物が好ましく、下記一般式(8)で表すことができる。
【0055】
【化2】
【0056】
式(8)中、R及びRは、それぞれ、一般式(3)について上述したR及びRと同じ基である。
【0057】
炭素-炭素不飽和結合を有するエポキシ化合物(E2)の具体例としては、特に限定されないが、アリルグリシジルエーテル、メタリルグリシジルエーテル、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、ブタジエンモノオキシドが反応活性の点から好ましく、アリルグリシジルエーテルが特に好ましい。
【0058】
以上の通りメタルオキシ基末端ポリオキシアルキレン系重合体(D)に対し炭素-炭素不飽和結合を有するエポキシ化合物(E2)を作用させると、エポキシ基の開環によって新たにメタルオキシ基が生成する。そのため、該エポキシ化合物(E2)を作用させた後、連続的に、炭素-炭素不飽和結合を有する有機ハロゲン化物(E1)を作用させることもできる。この方法は、重合体への炭素-炭素不飽和結合の導入量、および反応性シリル基の導入量をより高めることができるため好ましい。エポキシ化合物(E2)と有機ハロゲン化物(E1)を併用する方法により得られた、末端構造中に炭素-炭素不飽和結合を有するポリオキシアルキレン系重合体(F)に対して、次に説明する反応性シリル基の導入を行うと、前記一般式(3)で表される末端構造が形成され得る。
【0059】
(反応性シリル基の導入)
以上によって得られた末端構造中に炭素-炭素不飽和結合を有するポリオキシアルキレン系重合体(F)(前駆重合体)に対し、反応性シリル基を有するヒドロシラン化合物(G)をヒドロシリル化反応させることで、重合体に反応性シリル基を導入することができる。これにより、反応性シリル基含有ポリオキシアルキレン系重合体(A)が製造され得る。ヒドロシリル化反応には、簡便に実施できることに加え、反応性シリル基の導入量の調整が容易であり、また、得られる重合体の物性が安定している利点がある。
【0060】
前記反応性シリル基を有するヒドロシラン化合物(G)の具体例としては、トリクロロシラン、ジクロロメチルシラン、クロロジメチルシラン、ジクロロフェニルシラン、(クロロメチル)ジクロロシラン、(ジクロロメチル)ジクロロシラン、ビス(クロロメチル)クロロシラン、(メトキシメチル)ジクロロシラン、(ジメトキシメチル)ジクロロシラン、ビス(メトキシメチル)クロロシランなどのハロシラン類;トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、ジメトキシメチルシラン、ジエトキシメチルシラン、ジメトキシフェニルシラン、エチルジメトキシシラン、メトキシジメチルシラン、エトキシジメチルシラン、(クロロメチル)メチルメトキシシラン、(クロロメチル)ジメトキシシラン、(クロロメチル)ジエトキシシラン、ビス(クロロメチル)メトキシシラン、(メトキシメチル)メチルメトキシシラン、(メトキシメチル)ジメトキシシラン、ビス(メトキシメチル)メトキシシラン、(メトキシメチル)ジエトキシシラン、(エトキシメチル)ジエトキシシラン、(3,3,3-トリフルオロプロピル)ジメトキシシラン、(N,N-ジエチルアミノメチル)ジメトキシシラン、(N,N-ジエチルアミノメチル)ジエトキシシラン、[(クロロメチル)ジメトキシシリルオキシ]ジメチルシラン、[(クロロメチル)ジエトキシシリルオキシ]ジメチルシラン、[(メトキシメチル)ジメトキシシリルオキシ]ジメチルシラン、[(メトキシメチル)ジエトキシシリルオキシ]ジメチルシラン、[(ジエチルアミノメチル)ジメトキシシリルオキシ]ジメチルシラン、[(3,3,3-トリフルオロプロピル)ジメトキシシリルオキシ]ジメチルシラン等のアルコキシシラン類;ジアセトキシメチルシラン、ジアセトキシフェニルシラン等のアシロキシシラン類;ビス(ジメチルケトキシメート)メチルシラン、ビス(シクロヘキシルケトキシメート)メチルシランなどのケトキシメートシラン類、トリイソプロペニロキシシラン、(クロロメチル)ジイソプロペニロキシシラン、(メトキシメチル)ジイソプロペニロキシシラン等のイソプロペニロキシシラン類(脱アセトン型)等が挙げられる。
【0061】
ヒドロシリル化反応は、反応促進のため、ヒドロシリル化触媒の存在下で実施することが好ましい。ヒドロシリル化触媒としては、コバルト、ニッケル、イリジウム、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム等の金属や、その錯体等が知られており、これらを用いることができる。具体的には、アルミナ、シリカ、カーボンブラック等の担体に白金を担持させたもの;塩化白金酸;塩化白金酸とアルコールやアルデヒドやケトン等とからなる塩化白金酸錯体;白金-オレフィン錯体[例えばPt(CH=CH(PPh)、Pt(CH=CHCl];白金-ビニルシロキサン錯体[例えばPt{(vinyl)MeSiOSiMe(vinyl)}、Pt{Me(vinyl)SiO}];白金-ホスフィン錯体[例えばPh(PPh、Pt(PBu];白金-ホスファイト錯体[例えばPt{P(OPh)]等が挙げられる。反応効率の点から、塩化白金酸、白金ビニルシロキサン錯体等の白金触媒が好ましい。
【0062】
<<オルガノポリシロキサン(B)>>
オルガノポリシロキサン(B)は、主鎖がシロキサン結合で構成され、側鎖にメチル基やフェニル基などの有機基を有する重合体である。
オルガノポリシロキサン(B)は、少なくともモノオルガノトリアルコキシシランを含むアルコキシシラン成分の加水分解縮合物である。
【0063】
前記モノオルガノトリアルコキシシランとは、ケイ素原子に直接結合した1個の有機基と、ケイ素原子に直接結合した3個のアルコキシ基を有するシラン化合物を指し、式:RSi(OR’)で表される。式中、Rが前記有機基を表し、OR’がアルコキシ基を表す。前記有機基とは、アルコキシ基以外の有機基を指す。
【0064】
ケイ素原子に直接結合した前記アルコキシ基:OR’としては特に限定されないが、炭素数1~3のアルコキシ基であることが好ましい。具体的には、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基が挙げられ、メトキシ基、エトキシ基が好ましく、メトキシ基がより好ましい。前記アルコキシ基は1種類のみであってもよいし、2種以上が混在していてもよい。
【0065】
ケイ素原子に直接結合した前記有機基としては特に限定されないが、置換又は無置換の炭化水素基であることが好ましく、例えば、炭素数1~10のアルキル基、炭素数6~12のアリール基が挙げられる。
【0066】
前記炭素数1~10のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基等が挙げられる。前記アルキル基の炭素数は、1~4が好ましく、1~3がより好ましく、1~2がさらに好ましく、1が特に好ましい。前記アルキル基は、置換基を持たないものであっても良いし、ハロゲン原子やアルコキシ基、アシル基等のヘテロ含有基を置換基として有するものであっても良い。前記アルキル基は1種類のみであってもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0067】
前記炭素数6~12のアリール基としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等が挙げられる。前記アリール基の炭素数は、6~10が好ましく、6~8がより好ましく、6~7がさらに好ましく、6が特に好ましい。前記アリール基は、置換基を持たないものであっても良いし、ハロゲン原子やアルコキシ基、アシル基等のヘテロ含有基を置換基として有するものであっても良い。前記アリール基は1種類のみであってもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0068】
前記有機基がアルキル基であるモノオルガノトリアルコキシシランの具体例としては特に限定されないが、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、プロピルトリイソプロポキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ブチルトリイソプロポキシシラン、ペンチルトリメトキシシラン、ペンチルトリエトキシシラン、ペンチルトリイソプロポキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン等が挙げられる。なかでも、メチルトリアルコキシランが好ましく、メチルトリメトキシシランが特に好ましい。
【0069】
前記有機基がアリール基であるモノオルガノトリアルコキシシランの具体例としては特に限定されないが、例えば、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリプロポキシシラン、トリルトリメトキシシラン、トリルトリエトキシシラン、トリルトリプロポキシシラン、キシリルトリメトキシシラン、キシリルトリエトキシシラン、キシリルトリプロポキシシラン、ナフチルトリメトキシシラン、ナフチルトリエトキシシラン、ナフチルトリプロポキシシラン等が挙げられる。なかでも、フェニルトリアルコキシランが好ましく、フェニルトリメトキシシランが特に好ましい。
【0070】
ポリオキシアルキレン系重合体(A)とオルガノポリシロキサン(B)の相溶性を向上させ、前記硬化性組成物を硬化させて得られる硬化物の強度がより向上し得る観点から、前記モノオルガノトリアルコキシシランとして、有機基がアルキル基であるモノオルガノトリアルコキシシランと、有機基がアリール基であるモノオルガノトリアルコキシシランを併用することが好ましい。
【0071】
前記アルコキシシラン成分は、モノオルガノトリアルコキシシランのみを含有するものであってもよいし、モノオルガノトリアルコキシシランに加えて、テトラアルコキシシラン、ジオルガノジアルコキシシラン、及び、トリオルガノモノアルコキシシランからなる群より選択される少なくとも1種を更に含有するものであってもよい。
【0072】
前記テトラアルコキシシランは、ケイ素原子に直接結合した4個のアルコキシ基を有するシラン化合物を指す。前記ジオルガノジアルコキシシランは、ケイ素原子に直接結合した2個の有機基と、ケイ素原子に直接結合した2個のアルコキシ基を有するシラン化合物を指す。前記トリオルガノモノアルコキシシランは、ケイ素原子に直接結合した3個の有機基と、ケイ素原子に直接結合した1個のアルコキシ基を有するシラン化合物を指す。
【0073】
前記アルコキシシラン成分は、前記モノオルガノトリアルコキシシランを主成分として含有することが好ましい。具体的には、前記アルコキシシラン成分中、前記モノオルガノトリアルコキシシランの割合は、80~100モル%であることが好ましく、90~100モル%がより好ましく、95~100モル%さらに好ましく、99~100モル%が特に好ましい。
【0074】
オルガノポリシロキサン(B)は、これを構成する全構成単位の合計(即ち、Q1、Q2、Q3、Q4、T1、T2、T3、D1、D2、及びM1の合計)のうち、モノオルガノトリアルコキシシランに由来し、シロキサン結合を3個形成している構成単位T3の比率:[T3/(Q1+Q2+Q3+Q4+T1+T2+T3+D1+D2+M1)]×100が特定範囲内にある。
【0075】
ここで、テトラアルコキシシランに由来する構成単位であって、シロキサン結合を1個形成している構成単位をQ1、シロキサン結合を2個形成している構成単位をQ2、シロキサン結合を3個形成している構成単位をQ3、シロキサン結合を4個形成している構成単位をQ4と定義し、
モノオルガノトリアルコキシシランに由来する構成単位であって、シロキサン結合を1個形成している構成単位をT1、シロキサン結合を2個形成している構成単位をT2、シロキサン結合を3個形成している構成単位をT3と定義し、
ジオルガノジアルコキシシランに由来する構成単位であって、シロキサン結合を1個形成している構成単位をD1、シロキサン結合を2個形成している構成単位をD2と定義し、
トリオルガノモノアルコキシシランに由来し、シロキサン結合を1個形成している構成単位を、M1と定義する。
【0076】
前記T3の比率は、オルガノポリシロキサン(B)を29Si-NMRにより測定して得られたNMRチャートにおいて、Q1、Q2、Q3、Q4、T1、T2、T3、D1、D2、及びM1それぞれに由来するピークのピーク面積に基づき、これらの合計ピーク面積に対するT3に由来するピーク面積の割合(%)として算出される。
【0077】
オルガノポリシロキサン(B)が示すT3の比率は、20%以上45%以下の範囲内にある。当該T3の比率が20%未満であると、ポリオキシアルキレン系重合体(A)にオルガノポリシロキサン(B)を配合しても硬化物の強度向上効果を十分に得ることができない。また、前記T3の比率が45%を超えると、硬化性組成物の硬化反応の進行が速すぎたり、硬化性組成物の粘度が高すぎるため、取り扱いが困難となる。前記T3比率は、25%以上40%以下であることが好ましい。
【0078】
前記T3の比率は、アルコキシシラン成分中のモノオルガノトリアルコキシシランの割合、オルガノポリシロキサンを形成するための加水分解・脱水縮合反応時に使用する水の使用量や触媒の種類・量、反応温度、加水分解反応で発生したアルコールの除去量などを調節することで制御できる。
【0079】
また、オルガノポリシロキサン(B)は、全構成単位の合計のうち、T1、T2、T3の合計の比率:[(T1+T2+T3)/(Q1+Q2+Q3+Q4+T1+T2+T3+D1+D2+M1)]×100は、80~100%であることが好ましく、90~100%がより好ましく、95~100%がさらに好ましく、99~100%が特に好ましい。T1、T2、T3の合計の比率は、上述したT3の比率と同様、29Si-NMRにより測定に基づき算出することができる。
【0080】
オルガノポリシロキサン(B)は、ポリオキシアルキレン系重合体(A)との相溶性を向上させ、前記硬化性組成物を硬化させて得られる硬化物の強度がより向上し得る観点から、ケイ素原子に直接結合した有機基として、炭素数1~10のアルキル基(b1)と、炭素数6~12のアリール基(b2)の双方を有することが好ましい。
【0081】
この好適な態様では、オルガノポリシロキサン(B)において、ケイ素原子に直接結合した前記アルキル基(b1):ケイ素原子に直接結合した前記アリール基(b2)のモル比は、10:90~90:10であることが好ましく、20:80~80:20がより好ましく、30:70~70:30がさらに好ましい。
【0082】
また、記硬化性組成物を硬化させて得られる硬化物の伸びが良好であることから、ケイ素原子に直接結合した前記アルキル基(b1):ケイ素原子に直接結合した前記アリール基(b2)のモル比は、10:90~70:30であることが好ましく、10:90~50:50がより好ましく、10:90~40:60がさらに好ましい。
【0083】
前記オルガノポリシロキサン(B)は、更に、アルコキシシリル基及び/又はシラノール基を有することが好ましい。これらアルコキシシリル基及び/又はシラノール基を有することで、オルガノポリシロキサン(B)は、ポリオキシアルキレン系重合体(A)と共に、加水分解及び脱水縮合反応による硬化性を示すことができる。
【0084】
前記オルガノポリシロキサン(B)が有し得るアルコキシシリル基は、原料たるアルコキシシラン成分に含まれていた一部のアルコキシ基がオルガノポリシロキサン(B)の製造時に未反応で残留したものである。当該アルコキシシリル基は、例えば、炭素数1~3のアルコキシシリル基であってよい。具体的には、メトキシシリル基、エトキシシリル基、プロポキシシリル基が挙げられ、メトキシシリル基、エトキシシリル基が好ましく、メトキシシリル基がより好ましい。前記アルコキシシリル基は1種類のみであってもよいし、2種以上が混在していてもよい。
【0085】
前記オルガノポリシロキサンが有し得るシラノール基(-SiOH)は、原料たるアルコキシシラン成分に含まれていた一部のアルコキシ基がオルガノポリシロキサン(B)の製造時に加水分解反応を受けた後、脱水縮合反応は進行せず、即ちシロキサン結合を形成せずに残留したものである。
【0086】
オルガノポリシロキサン(B)の数平均分子量は、400~10,000であることが好ましく、500~5,000がより好ましい。オルガノポリシロキサン(B)の数平均分子量は、GPCによって測定することができる。
【0087】
(オルガノポリシロキサン(B)の製造)
オルガノポリシロキサン(B)は、前記モノオルガノトリアルコキシシランを含むアルコキシシラン成分を、水と、必要に応じて縮合触媒の存在下で、加水分解及び脱水縮合反応させることによって製造することができる。
【0088】
前記加水分解及び脱水縮合反応は水を添加して実施することが好ましい。この時、水の使用量を調節することによって、オルガノポリシロキサン(B)のT3比率や分子量を制御することができる。この観点から、水の使用量は、アルコキシシラン成分に含まれるケイ素原子上のアルコキシ基の合計モル数100%に対して、30モル%以上50モル%以下であることが好ましく、32モル%以上49モル%以下がより好ましく、35モル%以上45モル%以下がさらに好ましい。
【0089】
前記加水分解及び脱水縮合反応は、反応促進のため、縮合触媒の存在下で行うことが好ましい。縮合触媒としては公知のものを使用することができる。具体的には、塩基性触媒、酸性触媒、中性塩等が挙げられる。得られるオルガノポリシロキサン(B)の貯蔵安定性が向上するため、縮合触媒としては、酸性触媒、中性塩が好ましく、中性塩がより好ましい。
【0090】
酸性触媒としては、アルコキシシラン成分との相溶性から、有機酸が好ましく、リン酸エステルやカルボン酸がより好ましい。有機酸の具体例としては、エチルアシッドホスフェート、ブチルアシッドホスフェート、ジブチルピロホスフェート、ブトキシエチルアシッドホスフェート、2-エチルヘキシルアシッドホスフェート、イソトリデシルアシッドホスフェート、ジブチルホスフェート、ビス(2-エチルヘキシル)ホスフェート、ギ酸、酢酸、酪酸、イソ酪酸等が挙げられる。
【0091】
塩基性触媒としては、例えば、N-エチルモルホリン、N-メチルジエタノールアミン、N-エチルジエタノールアミン、N-n-ブチルジエタノールアミン、N-t-ブチルジエタノールアミン、トリエチルアミン、n-ブチルアミン、ヘキシルアミン、トリエタノールアミン、ジアザビシクロウンデセン、アンモニア等のアミン系化合物や、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の金属水酸化物等が挙げられる。
【0092】
中性塩とは、強酸と強塩基からなる正塩のことであり、例えば、カチオンとして第一族元素イオン、第二族元素イオン、テトラアルキルアンモニウムイオン、グアニジウムイオンよりなる群から選ばれるいずれかと、アニオンとしてフッ化物イオンを除く第十七族元素イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、過塩素酸イオンよりなる群から選ばれるいずれかとの組合せからなる塩のことである。特に、アニオンとしては、求核性が高いため、第十七族元素イオンが好ましく、カチオンとしては、求核作用を阻害しないように、嵩高くないイオンとして、第一族元素イオン、第二族元素イオンが好ましい。
【0093】
中性塩の具体的な化合物は特に限定されないが、好ましい具体例として、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化ラビジウム、塩化セシウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化ストロンチウム、臭化リチウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム、臭化ラビジウム、臭化セシウム、臭化マグネシウム、臭化カルシウム、臭化ストロンチウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化ラビジウム、ヨウ化セシウム、ヨウ化マグネシウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化ストロンチウム等が挙げられる。
【0094】
縮合触媒の添加量は適宜調節できるが、例えば、アルコキシシラン成分に対して50ppm~3重量%程度であってよい。しかし、オルガノポリシロキサン(B)の安定性を向上させるため、縮合触媒による反応時間短縮の効果が達成される範囲内で、縮合触媒の使用量は少ないほど好適である。
【0095】
前記加水分解及び脱水縮合工程を実施する際の反応温度は当業者が適宜設定できるが、例えば反応液を50~110℃の範囲に加熱することが好ましい。また、前記加水分解及び脱水縮合工程を実施する際の反応時間は、当業者が適宜設定できるが、例えば10分間~12時間程度であってよい。
【0096】
本開示に係る硬化性組成物中のポリオキシアルキレン系重合体(A)とオルガノポリシロキサン(B)の比率は、該組成物の硬化性や、得られる硬化物の強度などを考慮して適宜決定することができる。硬化後の強度向上効果に優れることから、ポリオキシアルキレン系重合体(A)とオルガノポリシロキサン(B)の合計のうちポリオキシアルキレン系重合体(A)の割合が60~99重量%であることが好ましく、60~95重量%がより好ましく、65~90重量%がより更に好ましく、65~85重量%が特に好ましい。
【0097】
オルガノポリシロキサン(B)を製造した後において、その製造時にアルコキシシラン成分の加水分解によって発生したアルコールを除去する工程を実施してもよい。この工程は、ポリオキシアルキレン系重合体(A)と、前記アルコールを含むオルガノポリシロキサン(B)を混合した後に、実施することが好ましい。これによって、ポリオキシアルキレン系重合体(A)とオルガノポリシロキサン(B)を均一に混合しながら、アルコール等の揮発成分の含有量を低減した混合物を得ることができる。当該アルコールの除去工程は、混合液を減圧蒸留に付してアルコールを留去することで実施できる。減圧蒸留の条件は当業者が適宜設定することが可能であるが、温度は、例えば、60~160℃程度であってよい。
【0098】
<<硬化触媒(C)>>
本開示に係る硬化性組成物は、ポリオキシアルキレン系重合体(A)が有する反応性シリル基を加水分解・脱水縮合させる反応、即ち硬化反応を促進する目的で、硬化触媒(C)を更に含有することが好ましい。
【0099】
しかし、本開示に係る硬化性組成物は、硬化触媒(C)を含有しないものであってもよい。このような場合、硬化触媒(C)を含有しない硬化性組成物を入手した者、又は、該組成物を使用する者が、該組成物に対し硬化触媒(C)を適宜配合、又は添加することにより、硬化触媒(C)を含有する硬化性組成物を構成することができる。
【0100】
硬化触媒(C)としては、従来公知のものを使用することができ、具体的には、有機錫化合物、カルボン酸金属塩、アミン化合物、カルボン酸、アルコキシ金属、無機酸等を使用することができる。
【0101】
有機錫化合物の具体例としては、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジオクタノエート、ジブチル錫ビス(ブチルマレエート)、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ビス(アセチルアセトナート)、ジブチル錫オキサイドとシリケート化合物との反応物、ジブチル錫オキサイドとフタル酸エステルとの反応物、ジオクチル錫ジアセテート、ジオクチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ビス(エチルマレエート)、ジオクチル錫ビス(オクチルマレエート)、ジオクチル錫ビス(アセチルアセトナート)、ジオクチル錫ジステアレート、ジオクチル錫オキサイド、ジオクチル錫オキサイドとシリケート化合物との反応物などが挙げられる。近年の環境への関心の高まりから、ジオクチル錫化合物が好ましい。
【0102】
カルボン酸金属塩の具体例としては、カルボン酸錫、カルボン酸ビスマス、カルボン酸チタン、カルボン酸ジルコニウム、カルボン酸鉄、カルボン酸カリウム、カルボン酸カルシウム、カルボン酸セシウムなどが挙げられる。カルボン酸基としては下記のカルボン酸と各種金属を組み合わせることができる。
【0103】
アミン化合物の具体例としては、オクチルアミン、2-エチルヘキシルアミン、ラウリルアミン、ステアリルアミン、などのアミン類;ピリジン、1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン-7(DBU)、1,5-ジアザビシクロ[4,3,0]ノネン-5(DBN)、などの含窒素複素環式化合物;グアニジン、フェニルグアニジン、ジフェニルグアニジンなどのグアニジン類;ブチルビグアニド、1-o-トリルビグアニドや1-フェニルビグアニドなどのビグアニド類;アミノ基含有シランカップリング剤;ケチミン化合物などが挙げられる。
【0104】
カルボン酸の具体例としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、2-エチルヘキサン酸、ラウリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、ネオデカン酸、バーサチック酸などが挙げられる。
【0105】
アルコキシ金属の具体例としては、テトラブチルチタネート、チタンテトラキス(アセチルアセトナート)、ジイソプロポキシチタンビス(エチルアセトセテート)などのチタン化合物や、アルミニウムトリス(アセチルアセトナート)、ジイソプロポキシアルミニウムエチルアセトアセテートなどのアルミニウム化合物類、ジルコニウムテトラキス(アセチルアセトナート)などのジルコニウム化合物類が挙げられる。
【0106】
その他の硬化触媒として、フッ素アニオン含有化合物、光酸発生剤や光塩基発生剤も使用できる。
【0107】
硬化触媒(C)としては、異なる2種類以上の触媒を併用してもよく、例えば、前記のアミン化合物とカルボン酸や、アミン化合物とアルコキシ金属を併用することで、反応性が向上する効果が得られる可能性がある。
【0108】
硬化触媒(C)の配合量としては、硬化反応速度の向上と硬化時の作業性を両立する観点から、ポリオキシアルキレン系重合体(A)とオルガノポリシロキサン(B)の合計100重量部に対して、0.01~20重量部程度であることが好ましく、0.1~15重量部がより好ましく、0.1~10重量部が特に好ましい。
【0109】
<<硬化性組成物>>
本開示に係る硬化性組成物は、ポリオキシアルキレン系重合体(A)、オルガノポリシロキサン(B)、及び、任意の硬化触媒(C)以外に、必要に応じて、種々の添加剤を含んでよい。当該添加剤としては、充填剤、接着性付与剤、可塑剤、タレ防止剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、物性調整剤、エポキシ基を含有する化合物、光硬化性物質、酸素硬化性物質、および、ポリオキシアルキレン系重合体(A)以外の有機樹脂などが挙げられる。
【0110】
また、硬化性組成物または硬化物の諸物性の調整を目的として、硬化性組成物には、必要に応じて上記以外の他の添加剤が添加されてもよい。このような他の添加剤の例としては、例えば、粘着付与樹脂、溶剤、希釈剤、エポキシ樹脂、表面性改良剤、発泡剤、硬化性調整剤、難燃剤、シリケート、ラジカル禁止剤、金属不活性化剤、オゾン劣化防止剤、リン系過酸化物分解剤、滑剤、顔料、防かび剤などが挙げられる。
【0111】
本開示に係る硬化性組成物は、常温で流動性を示し得るポリオキシアルキレン系重合体(A)を主体とする組成物であって、溶剤を実質的に含有しない組成物として構成することが好適である。本開示に係る硬化性組成物は溶剤を実質的に含有しなくても、常温で流動性を示すことが可能で、硬化前の取扱いが容易であると共に、硬化時又は硬化後に溶剤を除去する必要がない。
【0112】
具体的には、本開示に係る硬化性組成物中の溶剤の含有割合は、前記硬化性組成物の全量に対し15重量%以下とすることができる。当該溶剤の含有割合は、10重量%以下であることが好ましく、5重量%以下がより好ましく、1重量%以下がさらに好ましい。
前記溶剤とは、常温で液状を呈する成分であって、ポリオキシアルキレン系重合体(A)及びオルガノポリシロキサン(B)を溶解又は分散させることが可能な成分を指す。前記溶剤は、上述したような、オルガノポリシロキサン(B)の製造時にアルコキシシラン成分の加水分解によって発生したアルコールであってもよい。
【0113】
前記硬化性組成物を製造するには、ポリオキシアルキレン系重合体(A)と前記オルガノポリシロキサン(B)を適切な手段で混合すればよいが、混合の容易さ及び均一性の観点から、ポリオキシアルキレン系重合体(A)と前記オルガノポリシロキサン(B)を溶剤中で混合することが好ましい。混合後に溶剤を留去することができ、これによると、ポリオキシアルキレン系重合体(A)とオルガノポリシロキサン(B)を均一に混合しながら、溶剤の含有量を低減した硬化性組成物を得ることができる。溶剤を留去する手法は特に限定されず、公知の方法を適用することができる。
また、溶剤を留去した後に、硬化触媒(C)を添加し、混合することが好ましい。
【0114】
前記硬化性組成物は、すべての配合成分を予め配合密封保存し、施工後空気中の湿気により硬化する1成分型として調製することが可能である。1成分型の硬化性組成物は水を実質的に含有しないことが好ましく、水の含有量は5重量%以下であることが好ましく、1重量%以下がより好ましい。作業性の点からは、1成分型が好ましい。
【0115】
また、硬化剤として、硬化触媒(C)、充填材、可塑剤、および水などの成分を配合しておき、該硬化剤と、ポリオキシアルキレン系重合体(A)及びオルガノポリシロキサン(B)を含む主剤を使用前に混合する2成分型として調製することもできる。2成分型の主剤は水を実質的に含有しないことが好ましく、水の含有量は5重量%以下であることが好ましく、1重量%以下がより好ましい。
【0116】
さらに、ポリオキシアルキレン系重合体(A)、オルガノポリシロキサン(B)、及び硬化触媒(C)等を含むA剤と、他の硬化性樹脂、水等を含むB剤とから構成される2成分型の硬化性組成物であってよい。A剤は水を実質的に含有しないことが好ましく、水の含有量は5重量%以下であることが好ましく、1重量%以下がより好ましい。
【0117】
前記硬化性組成物は、硬化に先だって、塗布、注型、または充填などの方法によって、所望の形状に整えられる。塗布、注型、または充填され、形状を整えられた前記硬化性組成物は、常温で硬化させることができ、また、加熱下で硬化させることもできる。加熱硬化条件は特に限定されないが、温度60~220℃、時間1~120分であることが好ましく、温度100~200℃、時間5~60分がより好ましい。
【0118】
本開示に係る硬化性組成物は、接着剤、粘着剤、建造物・船舶・自動車・バス・道路・家電製品などにおけるシーリング施工用のシーリング材、型取剤、塗料、吹付剤などに使用できる。また、前記硬化性組成物を硬化して得られる硬化物は、防水材、塗膜防水材、防振材、制振材、防音材、発泡材料などとして好適に使用される。
【0119】
以下の各項目では、本開示における好ましい態様を列挙するが、本発明は以下の項目に限定されるものではない。
[項目1]
反応性シリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)、及び、オルガノポリシロキサン(B)、を含有する、硬化性組成物であって、
前記オルガノポリシロキサン(B)は、式:[T3/(Q1+Q2+Q3+Q4+T1+T2+T3+D1+D2+M1)]×100で表されるT3比率が20%以上45%以下である
(式中、Q1、Q2、Q3、又はQ4はそれぞれ、テトラアルコキシシランに由来し、シロキサン結合を1個、2個、3個、又は4個形成している構成単位を指し、
T1、T2、又はT3はそれぞれ、モノオルガノトリアルコキシシランに由来し、シロキサン結合を1個、2個、又は3個形成している構成単位を指し、
D1、又はD2はそれぞれ、ジオルガノジアルコキシシランに由来し、シロキサン結合を1個、又は2個形成している構成単位を指し、
M1は、トリオルガノモノアルコキシシランに由来し、シロキサン結合を1個形成している構成単位を指す)、硬化性組成物。
[項目2]
前記オルガノポリシロキサン(B)は、ケイ素原子に直接結合した有機基として、炭素数1~10のアルキル基(b1)と炭素数6~10のアリール基(b2)を有する、項目1に記載の硬化性組成物。
[項目3]
前記ポリオキシアルキレン系重合体(A)と前記オルガノポリシロキサン(B)の合計のうち、前記ポリオキシアルキレン系重合体(A)の割合が、60~99重量%である、項目1又は2に記載の硬化性組成物。
[項目4]
硬化触媒(C)を更に含有する、項目1~3のいずれかに記載の硬化性組成物。
[項目5]
前記ポリオキシアルキレン系重合体(A)は、数平均分子量が10,000以上である、項目1~4のいずれかに記載の硬化性組成物。
[項目6]
前記硬化性組成物中の溶剤の含有割合が、前記硬化性組成物の全量に対し15重量%以下である、項目1~5のいずれかに記載の硬化性組成物。
[項目7]
項目1~6のいずれかに記載の硬化性組成物を硬化させてなる硬化物。
[項目8]
項目1~7のいずれかに記載の硬化性組成物を製造する方法であって、
前記反応性シリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)と前記オルガノポリシロキサン(B)を溶剤中で混合する工程、及び
前記溶剤を留去する工程、を含む、製造方法。
[項目9]
前記溶剤を留去する工程の後に、硬化触媒(C)を混合する工程を含む、項目8に記載の製造方法。
【実施例0120】
以下に実施例を掲げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0121】
各合成例中の数平均分子量、及び重量平均分子量は、以下の条件で測定したGPC分子量である。
送液システム:東ソー製HLC-8420GPC
カラム:東ソー製TSKgel SuperHシリーズ
溶媒:THF
分子量:ポリスチレン換算
測定温度:40℃
【0122】
各合成例中の末端基換算分子量は、水酸基価をJIS K 1557の測定方法により、ヨウ素価をJIS K 0070の測定方法により求め、有機重合体の構造(使用した重合開始剤によって定まる分岐度)を考慮して求めた分子量である。
【0123】
各合成例に示す各重合体のシリル基の平均導入数は、NMR測定により算出した。
【0124】
各合成例に示すポリシロキサンのT3比率は、以下のように測定した。
モノオルガノトリアルコキシシランに由来する構成単位は、シロキサン結合を1個形成している構成単位T1、シロキサン結合を2個形成している構成単位T2、及び、シロキサン結合を3個形成している構成単位T3に分類される。BRUKER社製AVANCEIIIHD500を用い、重水素化クロロホルムを溶媒として、オルガノポリシロキサンの29Si-NMRを測定し、T1、T2、及びT3構造に由来するピーク面積の合計に対する、T3構造に由来するピーク面積の割合を、ポリシロキサンのT3比率とした。
なお、各合成例では、テトラアルコキシシランに由来する構成単位Q1~4、ジオルガノジアルコキシシランに由来する構成単位D1~D2、トリオルガノモノアルコキシシランに由来する構成単位M1は含まれておらず、これら構成単位の比率は0である。
【0125】
(合成例1)
数平均分子量が約2,000のポリオキシプロピレングリコールを開始剤とし、亜鉛ヘキサシアノコバルテートグライム錯体触媒にてプロピレンオキサイドの重合を行い、両末端に水酸基を有する数平均分子量27,900(上記と同じ方法にて測定)、分子量分布Mw/Mn=1.21のポリプロピレンオキシドを得た。続いてこの水酸基末端ポリプロピレンオキシドの水酸基に対して1.2倍当量のNaOMeのメタノール溶液を添加してメタノールを留去し、更に塩化アリルを添加して末端の水酸基をアリル基に変換した。未反応の塩化アリルは減圧脱揮により除去した。得られた未精製のアリル基を有するポリプロピレンオキシド100重量部に対し、n-ヘキサン300重量部と、水300重量部を混合攪拌した後、遠心分離により水を除去し、得られたヘキサン溶液に更に水300重量部を混合攪拌し、再度遠心分離により水を除去した後、ヘキサンを減圧脱揮により除去した。以上により、末端部位にアリル基を有する数平均分子量27,900(上記と同じ方法にて測定)、分子量分布Mw/Mn=1.21のポリプロピレンオキシドを得た。得られたアリル基を有するポリプロピレンオキシド100重量部に対して白金ビニルシロキサン錯体の白金含量3wt%のイソプロパノール溶液36ppmを触媒として、ジメトキシメチルシラン0.9重量部と90℃で2時間反応させた後、未反応のジメトキシメチルシランを減圧下留去する事により、末端にジメトキシメチルシリル基を有する数平均分子量28,500のポリオキシプロピレン(A-1)を得た。重合体(A-1)はジメトキシメチルシリル基を1つの末端に平均0.8個、1分子中に平均1.6個有することが分かった。
【0126】
(合成例2)
数平均分子量が約4,500のポリオキシプロピレントリオールを開始剤とし、亜鉛ヘキサシアノコバルテートグライム錯体触媒にてプロピレンオキサイドの重合を行い、末端に水酸基を有する数平均分子量24,600(末端基換算分子量17,400)、分子量分布Mw/Mn=1.31のポリオキシプロピレン(P-1)を得た。得られた水酸基末端ポリオキシプロピレン(P-1)の水酸基に対して1.2モル当量のナトリウムメトキシドを28%メタノール溶液として添加した。真空脱揮によりメタノールを留去した後、重合体(P-1)の水酸基に対して、さらに1.5モル当量の塩化アリルを添加して末端の水酸基をアリル基に変換した。未反応の塩化アリルを減圧脱揮により除去した。得られた未精製のポリオキシプロピレンをn-ヘキサンと、水を混合攪拌した後、遠心分離により水を除去し、得られたヘキサン溶液からヘキサンを減圧脱揮することでポリマー中の金属塩を除去した。以上により、末端にアリル基を有するポリオキシプロピレン(Q-1)を得た。この重合体(Q-1)500gに対して白金ジビニルジシロキサン錯体溶液(白金換算で3重量%のイソプロパノール溶液)50μlを加え、撹拌しながら、ジメトキシメチルシラン6.4gをゆっくりと滴下した。100℃で2時間反応させた後、未反応のジメトキシメチルシランを減圧下留去する事により、末端にジメトキシメチルシリル基を有する数平均分子量26,200のポリオキシプロピレン(A-2)を得た。重合体(A-2)はジメトキシメチルシリル基を1つの末端に平均0.7個、1分子中に平均2.2個有することが分かった。
【0127】
(合成例3)
合成例2で得られた重合体(Q-1)500gに対して白金ジビニルジシロキサン錯体溶液(白金換算で3重量%のイソプロパノール溶液)50μlを加え、撹拌しながら、トリメトキシシラン6.9gをゆっくりと滴下した。100℃で2時間反応させた後、未反応のトリメトキシシランを減圧下留去する事により、末端にトリメトキシシリル基を有する数平均分子量26,200のポリオキシプロピレン(A-3)を得た。重合体(A-3)はトリメトキシシリル基を1つの末端に平均0.7個、1分子中に平均2.0個有することが分かった。
【0128】
(合成例4)
数平均分子量約4,500のポリオキシプロピレングリコールの水酸基に対して1.2当量のナトリウムメトキシドのメタノール溶液を添加して130℃でメタノールを留去し、1.5当量の3-クロロ-1-プロペンを130℃で添加して水酸基をアリル基に変換した。残存する塩類の除去後、得られたアリル基末端ポリオキシプロピレン100重量部に対して、白金ジビニルジシロキサン錯体(白金換算で3質量%のイソプロピルアルコール溶液)36ppmおよびメチルジメトキシシラン6.0重量部を加え、90℃で2時間反応させた後、未反応のジメトキシメチルシランを減圧下留去する事により、末端にジメトキシメチルシリル基を有する数平均分子量5,000のポリオキシプロピレン(A-4)を得た。重合体(A-1)はジメトキシメチルシリル基を1つの末端に平均0.7個、1分子中に平均1.4個有することが分かった。
【0129】
(合成例5)
数平均分子量約4,500のポリオキシプロピレンジオールを開始剤とし、亜鉛ヘキサシアノコバルテートグライム錯体触媒にてプロピレンオキシドの重合を行い、数平均分子量が約15,000の水酸基末端ポリオキシプロピレンを得た。続いてこの水酸基末端ポリオキシプロピレンの水酸基に対して1.2当量のナトリウムメトキシドのメタノール溶液を添加して140℃でメタノールを留去した後、1.6当量の3-クロロ-1-プロペンを添加して末端の水酸基をアリル基に変換した。次に、得られたアリル基末端ポリオキシプロピレン100重量部に対して、白金ジビニルジシロキサン錯体(白金換算で3質量%のイソプロピルアルコール溶液)36ppmおよびメチルジメトキシシラン1.7重量部を加え、90℃で2時間反応させた後、未反応のジメトキシメチルシランを減圧下留去する事により、末端にジメトキシメチルシリル基を有する数平均分子量15,000のポリオキシプロピレン(A-5)を得た。重合体(A-5)はジメトキシメチルシリル基を1つの末端に平均0.8個、1分子中に平均1.6個有することが分かった。
【0130】
(合成例6)
攪拌機を備えた四口フラスコに、室温で、フェニルトリメトキシシラン74.4重量部、メチルトリメトキシシラン98.1重量部、水23.6重量部(アルコキシシラン成分中のアルコキシ基100モル%に対して40モル%)、10%LiBr水溶液を0.1重量部加えた後、加温して、発生するメタノールによる還流下で6時間反応させ、ポリシロキサン(B-1)のメタノール溶液を得た。ポリシロキサン(B-1)において、ケイ素原子に直接結合したメチル基とフェニル基のモル比は50:50である。ポリシロキサン(B-1)のT3比率は29%であることが分かった。
【0131】
(合成例7)
攪拌機を備えた四口フラスコに、室温で、フェニルトリメトキシシラン74.4重量部、メチルトリメトキシシラン98.1重量部、水26.5重量部(アルコキシシラン成分中のアルコキシ基100モル%に対して45モル%)、10%LiBr水溶液を0.1重量部加えた後、加温して、発生するメタノールによる還流下で6時間反応させ、ポリシロキサン(B-2)のメタノール溶液を得た。ポリシロキサン(B-2)において、ケイ素原子に直接結合したメチル基とフェニル基のモル比は50:50である。ポリシロキサン(B-2)のT3比率は35%であることが分かった。
【0132】
(合成例8)
攪拌機を備えた四口フラスコに、室温で、フェニルトリメトキシシラン74.4重量部、メチルトリメトキシシラン98.1重量部、水29.5重量部(アルコキシシラン成分中のアルコキシ基100モル%に対して50モル%)、10%LiBr水溶液を0.1重量部加えた後、加温して、発生するメタノールによる還流下で6時間反応させ、ポリシロキサン(B-3)のメタノール溶液を得た。ポリシロキサン(B-3)において、ケイ素原子に直接結合したメチル基とフェニル基のモル比は50:50である。ポリシロキサン(B-3)のT3比率は44%であることが分かった。
【0133】
(合成例9)
攪拌機を備えた四口フラスコに、室温で、フェニルトリメトキシシラン111.6重量部、メチルトリメトキシシラン49.0重量部、水19.8重量部(アルコキシシラン成分中のアルコキシ基100モル%に対して40モル%)、10%LiBr水溶液を0.1重量部加えた後、加温して、発生するメタノールによる還流下で6時間反応させ、ポリシロキサン(B-4)のメタノール溶液を得た。ポリシロキサン(B-4)において、ケイ素原子に直接結合したメチル基とフェニル基のモル比は25:75である。ポリシロキサン(B-4)のT3比率は21%であることが分かった。
【0134】
(合成例10)
攪拌機を備えた四口フラスコに、室温で、フェニルトリメトキシシラン37.2重量部、メチルトリメトキシシラン147.1重量部、水27.3重量部(アルコキシシラン成分中のアルコキシ基100モル%に対して40モル%)、10%LiBr水溶液を0.1重量部加えた後、加温して、発生するメタノールによる還流下で6時間反応させ、ポリシロキサン(B-5)のメタノール溶液を得た。ポリシロキサン(B-5)において、ケイ素原子に直接結合したメチル基とフェニル基のモル比は75:25である。ポリシロキサン(B-5)のT3比率は38%であることが分かった。
【0135】
(比較合成例1)
攪拌機を備えた四口フラスコに、室温で、フェニルトリメトキシシラン74.4重量部、メチルトリメトキシシラン98.1重量部、水41.3重量部(アルコキシシラン成分中のアルコキシ基100モル%に対して70モル%)、10%LiBr水溶液を0.1重量部加えた後、加温して、発生するメタノールによる還流下で6時間反応させ、ポリシロキサン(B’-1)のメタノール溶液を得た。ポリシロキサン(B’-1)において、ケイ素原子に直接結合したメチル基とフェニル基のモル比は50:50である。ポリシロキサン(B’-1)のT3比率は47%であることが分かった。
【0136】
(実施例1~6及び比較例1~5)
(A)成分と(B)成分を固形分比が表1に記載の通りとなるように混合し、メタノールを減圧脱揮により留去し、そこへオクチル酸スズ(II)(日東化成工業(株)製、商品名:ネオスタンU-28)とラウリルアミン(和光純薬工業(株)製)を表1に記載の重量割合で配合して手混ぜを行い、遠心分離機にて脱泡を行い、硬化性組成物を得た。得られた硬化性組成物は、以下に示すように引張物性を測定した。
【0137】
比較例5で使用したポリシロキサンの詳細は以下の通りである。
DOWSIL US-CF2403 Resin:ポリメチルシルセスキオキサン(DOW製)、T3比率19%
【0138】
(引張物性)
各硬化性組成物を厚さ3mmのシート状試験体に成形して、23℃、50%RH条件で3日間、さらに50℃の乾燥機に4日間入れることで完全に硬化させた。3号ダンベル型に打ち抜いた後、島津(株)製オートグラフを用いて引張速度200mm/分で引張試験を行い、破断強度(TBと示す)を測定した。
【0139】
【表1】
【0140】
表1から、(A)成分単独である比較例1~3と比較して、(A)成分に、T3比率が20~45%の(B)成分を配合した実施例1~6は、破断強度が大きく向上していることが分かる。
一方、T3比率が47%であるポリシロキサンを配合した比較例4では、硬化が速すぎて試験片を作製することができなかった。また、T3比率が19%であるポリシロキサンを配合した比較例5では、比較例3と比較して破断強度の低下が生じた。
【0141】
(実施例7~13及び比較例6~10)
(A)成分と(B)成分を固形分比が表2に記載の通りとなるように混合し、メタノールを減圧脱揮により留去し、そこへ表面処理膠質炭酸カルシウム(白石工業(株)製、商品名:白艶華CCR)50重量部を混合して充分混練りした後、小型3本ペイントロールに1回通した。この後、120℃で2時間減圧脱水を実施し、50℃以下に冷却した後、脱水剤としてビニルトリメトキシシラン(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製、商品名:Silquest A-171)3重量部、接着性付与剤としてγ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製、商品名:Silquest A-1120)2重量部、硬化触媒(C)を表2に記載の重量割合で配合して混練し、防湿性のカートリッジ型容器に充填後密閉して、硬化性組成物を得た。得られた硬化性組成物は、上記に示したように引張物性を測定した。
【0142】
表2における硬化触媒(C)の詳細は以下の通りである。
ネオスタンU-220H:ジブチル錫ジアセチルアセトナート(日東化成(株)製)
ネオスタンU-28:オクチル酸スズ(II)(日東化成工業(株)製)
ラウリルアミン(和光純薬工業(株)製)
【0143】
【表2】
【0144】
(A)成分単独の比較例6と比較して、(A)成分に(B)成分を配合した実施例7は、破断強度が向上していることが分かる。同様のことが、比較例7と、実施例8、12、13との比較、比較例8と実施例9との比較、比較例9と実施例10との比較、比較例10と実施例11との比較からも言える。