(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173091
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】カートリッジ式発熱構造体、該カートリッジ式発熱構造体を有する温調システム及び該温調システムを備える車両用シート
(51)【国際特許分類】
F24V 30/00 20180101AFI20231130BHJP
A47C 7/74 20060101ALI20231130BHJP
B60N 2/90 20180101ALI20231130BHJP
【FI】
F24V30/00 302
A47C7/74 B
B60N2/90
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022085088
(22)【出願日】2022-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】100102141
【弁理士】
【氏名又は名称】的場 基憲
(74)【代理人】
【識別番号】100137316
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 宏
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 寛志
(72)【発明者】
【氏名】高橋 秀和
(72)【発明者】
【氏名】内村 允宣
(72)【発明者】
【氏名】市川 靖
(72)【発明者】
【氏名】中村 雅紀
【テーマコード(参考)】
3B084
3B087
【Fターム(参考)】
3B084JA03
3B084JA06
3B084JE03
3B084JF03
3B087DE08
(57)【要約】
【課題】熱源として過剰熱を発生する発熱現象を利用した発熱構造体の表面温度を下げ、車両用温調シートに利用できるようにする。
【解決手段】本発明のカートリッジ式発熱構造体は、水素を吸脱蔵して過剰熱を発する水素吸蔵合金と、上記水素吸蔵合金を加熱するヒータと、を水素ガス充填容器内に備える。
そして、上記水素吸蔵合金と水素ガス充填容器とが、水素ガス充填空間で隔てられて非接触であることとしたため、カートリッジ式発熱構造体の表面が高温にならず、車両用温調シートに利用できる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素を吸脱蔵して過剰熱を発する水素吸蔵合金と、
上記水素吸蔵合金を加熱するヒータと、を水素ガス充填容器内に備えるカートリッジ式発熱構造体であって、
上記水素吸蔵合金と水素ガス充填容器とが、水素ガス充填空間で隔てられて非接触であることを特徴とするカートリッジ式発熱構造体。
【請求項2】
上記水素吸蔵合金が、上記ヒータに保持されていることを特徴とする請求項1に記載のカートリッジ式発熱構造体。
【請求項3】
上記水素吸蔵合金と上記ヒータとが、さらに収容容器内に収容され、
上記収容容器は、ヒータの温度がT(K)であるとき、ヴィーンの変位側から得られる放射エネルギーの最大波長λ=2897/T(μm)を満たす光に対する放射率(ε)が0.1以下である低放射部と、多孔質構造又はメッシュ構造の水素透過部と、を有することを特徴とする請求項1に記載のカートリッジ式発熱構造体。
【請求項4】
上記水素ガス充填容器が、断熱材で被覆されていることを特徴とする請求項1に記載のカートリッジ式発熱構造体。
【請求項5】
上記水素ガス充填容器に充填された水素ガスの圧力が、0.01~0.1気圧であることを特徴とする請求項1に記載のカートリッジ式発熱構造体。
【請求項6】
上記水素ガス充填容器が、通電コネクタ及び水素ガス弁を有することを特徴とする請求項1~5のいずれか1つの項に記載のカートリッジ式発熱構造体。
【請求項7】
上記請求項6に記載のカートリッジ式発熱構造体と、温度センサと、制御部と、を備える温調システムであって、
上記制御部が、上記温度センサで測定した上記カートリッジ式発熱構造体の温度に基づいて上記ヒータへの通電を制御することを特徴とする温調システム。
【請求項8】
クッション部とバック部とを有する車両用シートであって、
上記請求項6に記載の温調システムを備え、
上記カートリッジ式発熱構造体が上記クッション部の内部に配置されていることを特徴とする車両用シート。
【請求項9】
上記クッション部の内部に、座面方向に拡がる伝熱板と上記伝熱板上に設けられた伝熱調整部とを、有し、
上記カートリッジ式発熱構造体が、上記伝熱板の端部に当接して上記バック部側に配置され、
上記伝熱板の熱伝導率が、面外方向よりも面内方向が高く、
上記伝熱調整部の熱伝導性が、上記カートリッジ式発熱構造体から遠い側が近い側よりも高いことを特徴とする請求項8に記載の車両用シート。
【請求項10】
上記クッション部が、フレームと、上記フレーム上に設けられたパッドと、上記パッドの表面を包囲したカバーとを有し、
上記フレームが回転部を有し、上記カバーで包囲されたパッドの少なくとも一部が開閉し、カートリッジ式発熱構造体が脱着可能であることを特徴とする請求項9に記載の車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カートリッジ式発熱構造体、該カートリッジ式発熱構造体を有する温調システム及び該温調システムを備える車両用シートに係り、更に詳細には、水素吸蔵合金が発生する過剰熱を利用したカートリッジ式発熱構造体、該カートリッジ式発熱構造体を有する温調システム及び該温調システムを備える車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気自動車(EV)の温調シートには、半導体セラミックを用いた自己温度制御機能を有するPTCヒータ(positive temperature coefficient heater)などが用いられている。(特許文献1参照)
【0003】
上記PTCヒータは、温度がキュリー温度を超えると抵抗値が急激に増加するので、低温時には大電流が流れて発熱量が大きくなり、発熱に伴う温度上昇により抵抗値が増大して電流を制限するので無駄な発熱を抑えて省エネルギー化できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、PTCヒータは、エネルギー源が電気であるので電気自動車に使用すると航続距離が大幅に減少してしまう。
【0006】
また、加熱された水素吸蔵合金が水素を吸脱蔵することで発生する過剰熱、すなわち、入力エンタルピーよりも出力エンタルピーが高くなる発熱現象が知られており、この発熱現象を電気自動車の温調シートの熱源として用いれば省電力化でき航続距離の減少を抑制できる。
【0007】
ところが、上記発熱現象は、温度が500~1000℃の高温になるため、温調シートの熱源としては温度が高すぎるので利用し難い。
【0008】
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、熱源として上記過剰熱を発生する発熱現象を利用した、カートリッジ式発熱構造体、該カートリッジ式発熱構造体を有する温調システム及び該温調システムを備える車両用シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、過剰熱を発する水素吸蔵合金と、これを収容した水素ガス充填容器とを水素ガス充填空間で隔て、非接触とすることにより、上記目的が達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明のカートリッジ式発熱構造体は、水素を吸脱蔵して過剰熱を発する水素吸蔵合金と、上記水素吸蔵合金を加熱するヒータと、を水素ガス充填容器内に備える。
そして、上記水素吸蔵合金と水素ガス充填容器とが、水素ガス充填空間で隔てられて非接触であることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の温調システムは、上記カートリッジ式発熱構造体と、温度センサと、制御部と、を備える。
そして、上記制御部が、上記温度センサで測定した上記カートリッジ式発熱構造体の温度に基づいて上記ヒータへの通電を制御することを特徴とする。
【0012】
さらに、本発明の車両用シートは、クッション部とバック部と、上記温調システムとを備える。
そして、上記カートリッジ式発熱構造体が上記クッション部の内部に配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、水素吸蔵合金と水素ガス充填容器とを水素ガス充填空間で隔てて非接触とし、水素吸蔵合金が発する過剰熱を、水素ガスを介した熱伝導によって水素ガス充填容器に伝えることとしたため、上記過剰熱を熱源としたカートリッジ式発熱構造体、該カートリッジ式発熱構造体を有する温調システム及び該温調システムを備える車両用シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明のカートリッジ式発熱構造体、温調システムの一例を示す概略図である。
【
図2】本発明のカートリッジ式発熱構造体、温調システムの他の一例を示す概略図である。
【
図3】本発明の車両用シートの一例を示す図である。
【
図4】本発明の車両用シートの他の一例を示す図である。
【
図5】本発明の車両用シートのからカートリッジ式発熱構造体を脱着する状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<カートリッジ式発熱構造体>
本発明のカートリッジ式発熱構造体は、水素を吸脱蔵して過剰熱を発する水素吸蔵合金と、上記水素吸蔵合金を加熱するヒータと、を水素ガス充填容器内に備え、上記水素ガス充填容器、すなわち、カートリッジ式発熱構造体の表面から熱を放出して被加熱体を温める。
【0016】
本発明のカートリッジ式発熱構造体は、上記水素吸蔵合金と水素ガス充填容器とが、水素ガス充填空間で隔てられて接触していないので、水素吸蔵合金が発生した過剰熱は、主に水素ガスを介した熱伝導によって水素ガス充填容器に伝わる。
【0017】
つまり、気体の熱伝導率は、固体や液体の熱伝導率に比して小さく、水素吸蔵合金が高温になっても、直ちに水素ガス充填容器が高温になることはないのに加えて、水素ガス充填容器への伝熱経路が水素ガス充填容器の内壁面全体に分散するので、水素ガス充填容器の表面が局所的に高温になることもない。
【0018】
このように、本発明のカートリッジ式発熱構造体は、熱源が高温であっても、カートリッジ式発熱構造体の表面が高温になることはなく、穏やかに熱を放出できるので、水素吸蔵合金が発生する過剰熱を温調シートの熱源として使用できる。
【0019】
水素吸蔵合金と水素ガス充填容器とが非接触であるカートリッジ式発熱構造体は、水素吸蔵合金を水素ガス充填容器の内壁面から離間したヒータや収容容器などで間接的に保持することで作製できる。
【0020】
具体的には、
図1に示すように、上記ヒータを水素ガス充填容器の内壁面から離間するように、断熱性を有する支持部材を用いて水素ガス充填容器に固定し、このヒータ上に水素吸蔵合金を載せて保持し、水素吸蔵合金と水素ガス充填容器とを水素ガス充填空間で隔てる。
【0021】
また、
図2に示すように、水素吸蔵合金を入れた収容容器を水素ガス充填容器の内壁面から離間させて固定し、上記収容容器にヒータを設けてもよい。
上記断熱性を有する支持部材としては、セラミック、アルミナ、ジルコニウムなどを使用できる。
【0022】
水素ガス充填容器に充填する水素ガスの圧力は、1気圧以下であることが好ましく、さらに、0.01~0.1気圧であることが好ましい。
【0023】
高圧環境下における気体の熱伝導率は、ほぼ一定であるが、圧力が低くなると気体分子の平均自由行程が長くなるため熱伝導率が小さくなる。450℃における水素ガスの熱伝導率は、1気圧では0.35W/(m2・K)であり、0.1気圧では0.01W/(m2・K)である。
【0024】
さらに、気体分子の運動量が低い低圧圧環境下では、対流による熱の輸送を無視できるようになる。
【0025】
なお、水素吸蔵合金の吸脱蔵によっては、水素ガス充填容器中の水素ガスの圧力に大きな変化がないことから、本発明においては、水素ガス充填容器に水素ガスを充填したときの水素ガスの圧力を測定した。
【0026】
また、水素吸蔵合金とヒータとを、放射率(ε)が低い収容容器に入れて、放射(輻射)による熱の輸送を抑制することが好ましい。
【0027】
熱を発生し高温になる水素吸蔵合金とヒータとを収容容器に入れ一体化することで、上記水素ガスの圧力と相俟って、水素ガス充填容器への熱の輸送がほぼ上記水素ガスによる熱伝導のみになるので、水素ガス充填容器が高温になることを防止できる。
【0028】
例えば、450℃の水素吸蔵合金から20℃の水素ガス充填空間に熱が放射する場合、収容容器の放射率が0.6であると放射熱は33Wであり、放射率が0.06である収容容器であると放射熱は3.3Wとなり、熱の輸送量は1/10になる。
【0029】
放射率(ε)は、収容容器の材料やその表面状態によって変わり、一般に金属光沢を有する研磨面は放射率が低く、酸化面や凹凸を有する粗面では放射率が高くなる。
【0030】
本発明では、水素吸蔵合金が水素を吸脱蔵するための経路を確保する必要があり、収容容器に蓋をし、放射率が低い容器で全面を覆うことはできず、また、一部を開放しては放射によって熱の輸送が行われるため、放射率が低い低放射部と水素透過部とを有する収容容器で全面を覆うことが好ましい。
【0031】
上記収容容器の低放射部は、ヒータの温度がT(K:ケルビン)であるとき、ヴィーンの変位側から得られる放射エネルギーの最大波長λ=2897/T(μm)を満たす波長の光に対する放射率(ε)が0.1以下であることが好ましく、また、水素透過部としては、水素透過性を有する多孔質構造又はメッシュ構造とすることができる。
【0032】
放射率は放射温度計を用いて測定できる。具体的には、まず、接触式の温度センサ(測温抵抗体、熱電対など)を用いて実際の対象物温度を測定する。その後、放射温度計における放射率設定値(0.10~0.99の範囲内)を任意の値に設定した状態で対象物温度を測定し、放射温度計での測定温度が接触式の温度センサでの測定温度と等しくなった時の放射率設定値から放射率を測定できる。
【0033】
上記収容容器の材料としては、上記過剰熱の温度により高い耐熱性を有する金属を使用でき、例えば、鉄鋼、オーステナイト系ステンレス鋼(SUS304など)、フェライト系ステンレス鋼(SUS430など)などを挙げることができる。
【0034】
上記水素吸蔵合金としては、所望の条件下で2つの固相が共存する合金を使用することができる。上記2つの固相が共存する合金は、一方の相を形成する金属水素化物と他方の相を形成する金属水素化物との生成エンタルピーの差が大きな合金を使用することが好ましい。
【0035】
水素吸蔵合金が2つの相が共存するものであると、一方の相と他方の相とでエネルギー的にバランスが取れる平衡点が異なり、水素の吸脱蔵スピードが異なるので、一方の相が水素を放出し、他方の相は水素を吸蔵するので、交互に水素の吸脱蔵が行われ、過剰熱を継続して得ることができる。
【0036】
このような生成エンタルピーの差が大きな2つの固相が共存する合金としては、例えば、ニッケル(Ni):ジルコニウム(Zr)が30:70~40:60mol%のNi-Zr合金、アルミニウム(Al):ニッケル(Ni)が75:25~65:35mol%のAl-Ni合金や、アルミニウム(Al):カルシウム(Ca)が80:20~70:3mol%のAl-Ca合金を挙げることができる。
【0037】
上記ヒータとしては、水素吸蔵合金が水素を放出する温度まで加熱が可能であるものを使用でき、後述する再生処理を行う場合は、水素吸蔵合金が液相になる温度まで加熱できる必要がある。このようなヒータとしては、例えば、電熱線などを用いた通電式ヒータを使用することができる。
【0038】
上記水素ガス充填容器は、上記ヒータに通電する通電コネクタや、水素ガス充填容器内に水素を充填・補充するための水素ガス弁を有することができる。
【0039】
また、上記水素充填容器は、(図示しない)断熱材で被覆することが好ましい。水素充填容器の表面を断熱材で覆うことで表面温度を低下させることができる。
上記断熱材としては、アルミナ(Al2O3)とシリカ(SiO2)とを主成分とするセラミック繊維で形成されたブランケットを使用できる。
【0040】
さらに、水素充填容器は、取り付ける位置を決める位置決めガイドを有していることが好ましい。位置決めガイドとしては、水素ガス充填容器に設けた溝部や平面部を挙げることができ、これによりカートリッジ式発熱構造体を確実に取り付けることができる。
【0041】
本発明のカートリッジ式発熱構造体は、シート内の他、インパネ内、ダッシュパネル内、フロア内、ルーフ内など、車両内部に装着することができる。
【0042】
<温調システム>
本発明の温調システムは、カートリッジ式発熱構造体と、該カートリッジ式発熱構造体の温度を測定る温度センサと、該温度センサで測定したカートリッジ式発熱構造体の温度に基づいてヒータへの通電を制御する制御部とを有する。
【0043】
上記制御部が温度センサからの温度情報に基づいてヒータへの通電を制御することでカートリッジ式発熱構造体から所望の熱量を得ることができる。
【0044】
上記温度センサは、カートリッジ式発熱構造体の表面温度を測定してもよく、また、水素吸蔵合金の温度を測定してもよい。
【0045】
<車両用シート>
本発明の車両用シートは、
図3に示すように、クッション部とバック部とを有し、上記クッション部及び/又はバック部の内部に、上記温調システムのカートリッジ式発熱構造体を備える。
【0046】
上記クッション部とバック部とは、フレームと、上記フレーム上に設けられたパッドと、上記パッドの表面を包囲したカバーとを有し、上記パッドの下部やバック部の後部にカートリッジ式発熱構造体が配置され、パッド及びカバーを介してカートリッジ式発熱構造体の熱が乗員に伝わる。
【0047】
上記クッション部やバック部は、
図4に示すように、カートリッジ式発熱構造体の熱が座面や背面の全体に広げる伝熱板を有することが好ましい。パッドの下側や後ろ側に伝熱板を設けることで小型化したカートリッジ式発熱構造体であっても座面や背面の全体を温めることが可能になる。
【0048】
上記カートリッジ式発熱構造体は、伝熱板に接して伝熱板に熱を伝えることができれば、例えば伝熱板の下やクッション部の前方などに配置してもよいがクッション部のバック部側に配置すると座り心地への影響を小さくすることができる。
【0049】
上記のように、カートリッジ式発熱構造体を乗員が座る位置からオフセットさせて配置した場合は、伝熱板は、熱伝導率異方性を有することが好ましい。伝熱板の熱伝導率が、面外方向よりも面内方向が高いことで、面内方向に熱が広がり易く、座面や背面の全体を温めることが可能になる。
【0050】
熱伝導率異方性を有する伝熱板としては、グラフェンシートやカーボンナノチューブなどの熱伝導率異方性を有する材料を含有する樹脂板などを挙げることができる。
【0051】
上記伝熱板は、その上面(乗員側)に伝熱調整部を有することができる。
熱伝導率異方性を有する伝熱板であっても、、カートリッジ式発熱構造体から遠い側では温度が低くなり、温度分布にムラが生じてしまうので、伝熱調整部によって座面の温度分布を均一にする。
【0052】
具体的には、伝熱板の温度が低くなるカートリッジ式発熱構造体から遠い側の熱伝導性を、伝熱板の温度が高くなる近い側の熱伝導性よりも高くすることで座面の温度分布を均一にすることができる。
【0053】
このような、伝熱調整部は、熱伝導率が異なる複数の材料を用いることの他、面内方向で厚さを変えることや面内方向で空孔率が異なる多孔質体を用いることで形成できる。前記面内方向で空孔率が異なる多孔質体は、例えば、空孔率の異なるセラミックスを数枚形成し、先端にいくにつれ空孔率が小さくなるように面内方向に接合することで作製することができる。
伝熱調整部を構成する材料としてはセラミックや樹脂などを使用できる。
【0054】
上記クッション部やバック部は、
図4,5に示すように、上記カバーで包囲されたパッドの少なくとも一部が開閉し、カートリッジ式発熱構造体が脱着可能であることことが好ましい。カートリッジ式発熱構造体を脱着可能にすることでカートリッジ式発熱構造体内の水素吸蔵合金の再生処理が容易になる。
【0055】
開閉可能なクッション部やバック部は、パッドを支えるフレームに回転部を設けることで作製でき、カートリッジ式発熱構造体を配置する位置に応じて、クッション部全体を開閉可能にしても、前部や後部のみなど一部のみを開閉可能にしてもよい。
【0056】
<再生処理>
再生処理は、水素吸蔵機能が低下した水素吸蔵合金に再度水素吸蔵機能を発現させて、過剰熱を得られるようにする処理である。
具体的には、水素吸蔵合金が液相となる温度まで加熱して均一な単一相にした後、2つの固相が共存する温度範囲まで冷却し、その温度を保持して再度2つの相が共存した水素吸蔵合金を形成することで、水素吸蔵合金を再生できる。
【符号の説明】
【0057】
1 温調システム
11 制御部
12 温度センサ
2 カートリッジ式発熱構造体
21 水素吸蔵合金
22 ヒータ
23 水素ガス充填容器
231 水素ガス充填空間
232 水素ガス弁
233 通電コネクタ
24 収容容器
241 低放射部
242 水素透過部
25 支持部材
3 車両用シート
31 クッション部
321 フレーム
322 パッド
323 カバー
324 回転部
32 バック部
4 伝熱板
41 伝熱調整部