(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173094
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】ロボットハンド
(51)【国際特許分類】
B25J 15/08 20060101AFI20231130BHJP
【FI】
B25J15/08 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022085093
(22)【出願日】2022-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】000116079
【氏名又は名称】ローレルバンクマシン株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】500267170
【氏名又は名称】ローレル機械株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】500265501
【氏名又は名称】ローレル精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003177
【氏名又は名称】弁理士法人旺知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小澤 茂樹
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707BS12
3C707ES03
3C707ET08
3C707LV10
(57)【要約】
【課題】簡素な制御で把持機構による対象物の把持を可能とする。
【解決手段】ロボットハンド1は、把持部材H-1及び把持部材H-2を具備し、把持部材H-1及び把持部材H-2の間に配置された対象物Objを把持する把持機構HKと、把持機構HKに取り付けられ、把持部材H-1及び把持部材H-2の間の引力または斥力として作用する磁力を発生させる磁力発生部材MGと、を備える、ことを特徴とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1把持部材及び第2把持部材を具備し、
前記第1把持部材及び前記第2把持部材の間に配置された対象物を把持する把持機構と、
前記把持機構に取り付けられ、
前記第1把持部材及び前記第2把持部材の間の引力または斥力として作用する磁力を発生させる磁力発生部材と、
を備える、
ことを特徴とするロボットハンド。
【請求項2】
前記磁力発生部材は、
前記第1把持部材に取り付けられ、
前記第1把持部材及び前記第2把持部材の間の引力または斥力として作用する磁力を発生させる第1磁石を含む、
ことを特徴とする、請求項1に記載のロボットハンド。
【請求項3】
前記磁力発生部材は、
前記第1把持部材に取り付けられた第1磁石と、
前記第2把持部材に取り付けられ、
前記第1磁石との間で引力または斥力として作用する磁力を発生させる第2磁石と、
を含む、
ことを特徴とする、請求項1に記載のロボットハンド。
【請求項4】
前記磁力発生部材は、
前記第1把持部材に取り付けられ、
前記第2磁石との間で引力または斥力として作用する磁力を発生させる第3磁石を含み、
前記第1磁石と前記第2磁石との間に生じる磁力の大きさと、
前記第3磁石と前記第2磁石との間に生じる磁力の大きさとは、異なる、
ことを特徴とする、請求項3に記載のロボットハンド。
【請求項5】
前記第1磁石は、
前記第3磁石とは異なる大きさを有する、
ことを特徴とする、請求項4に記載のロボットハンド。
【請求項6】
前記磁力発生部材は、
前記第1把持部材に取り付けられた第3磁石と、
前記第2把持部材に取り付けられ、
前記第3磁石との間で引力または斥力として作用する磁力を発生させる第4磁石と、
を備え、
前記第1磁石と前記第3磁石との間隔と、
前記第2磁石と前記第4磁石との間隔とは、異なる、
ことを特徴とする、請求項3に記載のロボットハンド。
【請求項7】
前記第1把持部材及び前記第2把持部材の一方または両方の位置が所望の位置となるように、前記把持機構を駆動する駆動機構を備える、
ことを特徴とする、請求項1に記載のロボットハンド。
【請求項8】
前記第1把持部材は、
第1把持領域と、第2把持領域とを有し、
前記第2把持部材は、
前記第1把持領域に対応する第1対応領域と、前記第2把持領域に対応する第2対応領域とを有し、
前記磁力発生部材は、
前記把持機構の前記第1把持領域と前記第1対応領域との間で前記対象物が把持される場合に、
前記第1把持部材及び前記第2把持部材により前記対象物に加えられる把持力と、
前記把持機構の前記第2把持領域と前記第2対応領域との間で前記対象物が把持される場合に、
前記第1把持部材及び前記第2把持部材により前記対象物に加えられる把持力とが異なるように、
前記磁力を発生させる、
ことを特徴とする、請求項1に記載のロボットハンド。
【請求項9】
前記磁力発生部材は、
前記把持機構に取り付けられた1または複数の磁石を含み、
前記把持機構には、
前記第1把持部材及び前記第2把持部材により前記対象物に加えられる把持力が所望の力となるように、1または複数の把持力調整用磁石の中から選択された磁石が、
前記1または複数の磁石として取り付け可能である、
ことを特徴とする、請求項1に記載のロボットハンド。
【請求項10】
前記磁力発生部材は、
前記第1把持部材に取り付けられ、
前記第1把持部材及び前記第2把持部材の間の引力または斥力として作用する磁力を発生させる第1磁石を含み、
前記第1把持部材は、
前記第2把持部材との間で前記対象物を把持するための把持面を有し、
前記把持面には、
前記第1磁石を取り付けるための溝部が設けられる、
ことを特徴とする、請求項1に記載のロボットハンド。
【請求項11】
前記溝部には、
前記溝部に対して前記第1磁石を取り付けた場合に、前記第1磁石との間に引力を生じる取付磁石が設けられる、
ことを特徴とする、請求項10に記載のロボットハンド。
【請求項12】
前記磁力発生部材は、
前記第1把持部材に取り付けられ、
前記第1把持部材及び前記第2把持部材の間で引力または斥力として作用する磁力を発生させる第1磁石と、
前記磁力の少なくとも一部を遮断するように前記第1磁石の一部を覆うシールド部材と、
を備える、
ことを特徴とする、請求項1に記載のロボットハンド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットハンドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、対象物を把持する把持機構を有するロボットハンドが知られている。例えば、特許文献1には、対象物を把持する際に把持機構に加わる力を検出する力センサを備え、当該力センサによる検出結果に基づいて把持機構が対象物を把持する力を制御する、所謂、力制御を行うロボットハンドに係る技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の技術のように、ロボットハンドに設けられた把持機構を力制御することで把持機構に対象物を把持させる場合、把持機構を位置制御する態様と比較して、把持機構の制御が複雑になるという問題があった。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、把持機構が設けられたロボットハンドにおいて、従来の技術と比較して、簡素な制御で、把持機構による対象物の把持を可能とする技術の提供を、解決課題の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するために、本発明に係るロボットハンドは、第1把持部材及び第2把持部材を具備し、前記第1把持部材及び前記第2把持部材の間に配置された対象物を把持する把持機構と、前記把持機構に取り付けられ、前記第1把持部材及び前記第2把持部材の間の引力または斥力として作用する磁力を発生させる磁力発生部材と、を備える、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、従来の技術と比較して、簡素な制御で、把持機構による対象物の把持が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るロボットシステムSysの概要の一例を示す説明図である。
【
図2】ロボットハンド1の構成の一例を示す断面図である。
【
図3】把持部材H-qの構成の一例を示す平面図である。
【
図4】把持部材H-q及び磁石M-q[r]の関係の一例を示す断面図である。
【
図5】ロボットハンド1の構成の一例を示す断面図である。
【
図6】ロボットハンド1の構成の一例を示す断面図である。
【
図7】ロボットハンド1の構成の一例を示す断面図である。
【
図8】本発明の第2実施形態に係るロボットハンド1Bの構成の一例を示す断面図である。
【
図9】本発明の第3実施形態に係るロボットハンド1Cの構成の一例を示す断面図である。
【
図10】ロボットハンド1Cの構成の一例を示す断面図である。
【
図11】本発明の変形例1に係るロボットハンド1Dの構成の一例を示す断面図である。
【
図12】本発明の変形例2に係る把持部材H-q及び磁石M-q[r]の関係の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。なお、各図において、各部の寸法及び縮尺は、実際のものと適宜に異ならせてある。また、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。
【0010】
<1.第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態を説明する。
【0011】
<1.1.ロボットの概要>
以下、
図1を参照しつつ、ロボットシステムSysの概要について説明する。
【0012】
図1は、ロボットシステムSysの概要の一例を説明するための説明図である。
【0013】
図1に例示するように、本実施形態において、ロボットシステムSysは、ロボット2と、ロボット2の先端に取り付けられたロボットハンド1と、ロボットハンド1及びロボット2を制御するロボットコントローラ3と、を備える。
【0014】
ロボット2は、例えば、垂直多関節ロボットである。本実施形態では、ロボット2が、垂直6軸多関節ロボットである場合を例示して説明する。但し、本発明は、ロボット2を、垂直多関節ロボットに限定するものではない。ロボット2として、垂直多関節ロボット以外のアーム型ロボットを採用してもよい。例えば、ロボット2として、水平多関節ロボットを採用してもよいし、パラレルリンクロボットを採用してもよいし、または、直交ロボットを採用してもよい。
【0015】
ロボットハンド1は、ロボットシステムSysの操作の対象である対象物Objを把持するためのエンドエフェクタである。以下では、説明の便宜上、ロボットハンド1に固定されたハンド座標系ΣHを導入する。
ここで、ハンド座標系ΣHは、ロボット2の先端からロボットハンド1の先端へと向かう方向であるX1方向に延在するX軸と、X1方向に交差する方向であるY1方向に延在するY軸と、X1方向及びY1方向に交差する方向であるZ1方向に延在するZ軸と、を有する、3軸の座標系である。本実施形態では、Y1方向がX1方向に直交する方向であり、且つ、Z1方向がX1方向及びY1方向に直交する方向である場合を想定する。すなわち、本実施形態では、ハンド座標系ΣHが、3軸の直交座標系である場合を想定する。また、以下では、X1方向と、X1方向の反対方向であるX2方向とを、X軸方向と総称し、Y1方向と、Y1方向の反対方向であるY2方向とを、Y軸方向と総称し、Z1方向と、Z1方向の反対方向であるZ2方向とを、Z軸方向と総称する場合がある。なお、ロボットハンド1の詳細については、
図2において後述する。
【0016】
ロボットコントローラ3は、ロボットハンド1及びロボット2を制御する。具体的には、ロボットコントローラ3は、ロボットシステムSysの各部を制御する制御装置と、各種情報を記憶する記憶装置と、ロボットコントローラ3の外部に存在するロボットハンド1またはロボット2等の外部装置と通信するための通信装置と、ロボットシステムSysのユーザによる操作を受け付ける操作装置と、各種情報を表示するための表示装置と、を備える。
【0017】
このうち、記憶装置は、RAM(Random Access Memory)等の揮発性メモリと、各種情報を記憶するEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)等の不揮発性メモリと、を含む。また、記憶装置は、ロボットシステムSysの各部を制御するための制御プログラムを記憶している。
【0018】
また、制御装置は、例えば、1または複数のCPU(Central Processing Unit)を含んで構成される。制御装置は、記憶装置に記憶された制御プログラムを実行し、当該制御プログラムに従って動作することで、ロボットハンド1及びロボット2を制御する。具体的には、制御装置は、ロボット2の先端に取り付けられたロボットハンド1の位置及び姿勢が、ロボットハンド1による対象物Objの把持が可能となる位置及び姿勢となるように、ロボット2を制御する。また、制御装置は、ロボットハンド1が対象物Objを把持するように、ロボットハンド1を制御する。なお、制御装置は、1または複数のCPUに加え、または、1または複数のCPUのうち一部または全部に替えて、GPU(Graphics Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、または、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の、ハードウェアを含んで構成されるものであってもよい。
【0019】
<1.2.ロボットハンドの概要>
以下、
図2及び
図3を参照しつつ、ロボットハンド1の概要について説明する。
【0020】
図2は、
図1のE-e線を通り、且つ、Z1方向を法線方向とする平面によりロボットハンド1を切断した、ロボットハンド1の断面図である。
【0021】
図2に例示するように、ロボットハンド1は、把持部材H-1(「第1把持部材」の一例)、及び、把持部材H-2(「第2把持部材」の一例)を含む把持機構HKと、把持機構HKを駆動する駆動機構10と、把持機構HKに取り付けられた複数の磁石Mを含む磁力発生部材MGと、を備える。なお、本実施形態では、磁石Mが永久磁石である場合を想定する。
【0022】
以下では、把持部材H-1及び把持部材H-2を、把持部材H-qと総称する。ここで、変数qは、1≦q≦2を満たす自然数である。本実施形態では、把持機構HKに設けられた把持部材H-1及び把持部材H-2により、対象物Objを把持する。以下では、把持機構HKが対象物Objを把持する場合に、把持部材H-qのうち対象物Objに接触する面を、接触面WH-qと称する。
【0023】
また、本実施形態では、把持部材H-qに対して、R個の磁石Mが取り付けられている場合を想定する。ここで、値Rは、1以上の自然数である。以下では、把持部材H-qに設けられたR個の磁石Mのうち、r番目の磁石Mを、磁石M-q[r]と表現することとする。すなわち、本実施形態では、把持部材H-qに対して、磁石M-q[1]~M-q[R]のR個の磁石Mが取り付けられている場合を想定する。ここで、変数rは、1≦r≦Rを満たす自然数である。なお、本実施形態では、
図2に例示するように、「R=3」の場合を想定して説明する。
【0024】
また、以下では、磁石M-q[r]の位置を説明する便宜上、磁石M-q[r]に対して、代表点P-q[r]を設定する。ここで、代表点P-q[r]は、磁石M-q[r]の内部の任意の位置に設けられた点であってもよいし、または、磁石M-q[r]の表面の任意の位置に設けられた点であってもよい。例えば、代表点P-q[r]は、磁石M-q[r]の重心であってもよいし、または、磁石M-q[r]の表面を構成する複数の面のうち一の面の幾何中心であってもよい。本実施形態では、一例として、磁石M-q[r]のうち、接触面WH-q側の面の幾何中心に、代表点P-q[r]を設定することとする。
【0025】
上述のとおり、把持部材H-qは、X1方向に延在する。また、本実施形態では、把持部材H-2が、把持部材H-1から見てY1方向に位置する場合を想定する。なお、以下では、接触面WH-qのY軸方向における位置(つまり、
図2における左右方向の位置)を、位置YH-qと称する。すなわち、本実施形態において、位置YH-2は、位置YH-1よりも、Y1方向に位置する(つまり、
図2において右側に位置する)。
【0026】
また、以下では、把持部材H-1に設けられた磁石M-1[r1]の代表点P-1[r1]と、把持部材H-2に設けられた磁石M-2[r2]の代表点P-2[r2]との間の距離を、距離L[r1][r2]と称する。ここで、変数r1は、1≦r1≦Rを満たす自然数であり、変数r2は、1≦r2≦Rを満たす自然数である。本実施形態では、距離L[r0][r0]と、距離L[1+r0][1+r0]とが、略同じ距離である場合を想定する。ここで、変数r0は、1≦r0≦R-1を満たす自然数である。より具体的には、本実施形態では、距離L[1][1]と、距離L[2][2]と、距離L[3][3]とが、略同じ距離である場合を想定する。
【0027】
ここで、「略同じ」とは、完全に同一である場合の他に、誤差を考慮すれば同一と看做すことができる場合を含む概念である。例えば、「略同じ」とは、設計上は同一であり、製造誤差を考慮すれば同一であると看做すことができる場合を含む概念であってもよい。例えば、「略同じ」とは、10パーセント以下の誤差を取り除くことで、同一とすることができる場合を含む概念であってもよい。
【0028】
図3は、把持部材H-qの接触面WH-qを平面視した場合における、把持部材H-qの平面図である。
図3では、図示の都合上、「q=1」の場合を例示して、ハンド座標系ΣHを描いている。なお、本実施形態では、把持部材H-1及び把持部材H-2が、略同じ大きさを有し、且つ、略同じ形状を有している場合を想定する。
【0029】
図3に例示するように、把持部材H-qの接触面WH-qには、R個の磁石M-q[1]~M-q[R]が取り付けられている。本実施形態では、把持部材H-qの接触面WH-qを平面視した場合における、磁石M-q[r]の面積を、面積S-q[r]と称する。
本実施形態では、面積S-q[1+r0]が、面積S-q[r0]よりも大きい場合を想定する。すなわち、本実施形態では、
図3に例示するように、面積S-q[2]は面積S-q[1]よりも大きく、且つ、面積S-q[3]は面積S-q[2]よりも大きい。
【0030】
また、以下では、把持部材H-qに設けられた磁石M-q[r0]の代表点P-q[r0]と、把持部材H-qに設けられた磁石M-q[1+r0]の代表点P-q[1+r0]との間の距離を、距離E-q[r0][1+r0]と称する。
本実施形態では、
図3に例示するように、距離E-q[1][2]と距離E-q[2][3]とが略同じ場合を想定する。但し、本発明はこのような態様に限定されるものではない。距離E-q[1][2]と距離E-q[2][3]とは異なる距離であってもよい。
【0031】
また、以下では、把持部材H-qに設けられた磁石M-q[r0]と磁石M-q[1+r0]とのX軸方向における間隔を、間隔G-q[r0][1+r0]と称する。
本実施形態では、
図3に例示するように、間隔G-q[1][2]が間隔G-q[2][3]よりも大きい場合を想定する。但し、本発明はこのような態様に限定されるものではない。間隔G-q[1][2]は間隔G-q[2][3]以下であってもよい。
【0032】
すなわち、本実施形態に係る把持部材H-qでは、X1方向に向かうにつれて磁石Mの密度が高くなるように、把持部材H-qに対して磁石Mを配置することができる。
【0033】
<1.3.把持部材に対する磁石の取り付け>
以下、
図4を参照しつつ、把持部材H-qに対する磁石Mの取り付けについて説明する。
【0034】
図4は、
図2に示す断面図において、把持部材H-q及び磁石M-q[r]を拡大した図である。なお、
図4では、図示の都合上、「q=1」の場合を例示して、ハンド座標系ΣHを描いている。
【0035】
以下では、把持部材H-qが有する接触面WH-qのうち、磁石M-q[r]の近傍を、接触面WH-q[r](「把持面」の一例)と称する。また、以下では、把持機構HKが対象物Objを把持する場合に、磁石M-q[r]のうち対象物Objに接触する可能性がある面を、接触面WM-q[r](「第1面」の一例)と称する。
【0036】
図4に例示するように、接触面WH-qのうち接触面WH-q[r]には、取付溝部HV-q[r]が設けられる。取付溝部HV-q[r](「溝部」の一例)とは、磁石M-q[r]を取り付けるために接触面WH-q[r]に設けられた凹部であって、磁石M-q[r]と略同じ大きさ及び形状を有する凹部である。また、取付溝部HV-q[r]には、取付用磁石MT-q[r]が設けられる。ここで、取付用磁石MT-q[r](「取付磁石」の一例)とは、取付溝部HV-q[r]に対して磁石M-q[r]を取り付けた場合に、磁石M-q[r]との間に引力として作用する磁力を発生させる磁石である。
【0037】
なお、本実施形態において、取付用磁石MT-q[r]は、取付溝部HV-q[r]に対して磁石M-q[r]を取り付けた場合に、磁石M-q[r]が有する複数の面のうち接触面WM-q[r]とは反対側の面と接触するように設けられている。但し、本発明はこのような態様に限定されるものではない。取付用磁石MT-q[r]は、取付溝部HV-q[r]に対して磁石M-q[r]を取り付けた場合に、磁石M-q[r]が有する複数の面のうち接触面WM-q[r]とは異なる1または複数の面と接触するように設けられていてもよい。
【0038】
本実施形態では、磁石M-q[r]と、取付溝部HV-q[r]に設けられた取付用磁石MT-q[r]との間に生じる磁力により、磁石M-q[r]が取付用磁石MT-q[r]に引き付けられる。このため、本実施形態では、磁石M-q[r]が、把持部材H-qの取付溝部HV-q[r]から外れることを抑制することが可能となる。
【0039】
また、本実施形態において、把持部材H-qに設けられた取付溝部HV-q[r]に対して磁石M-q[r]を取り付けた場合に、把持部材H-qの接触面WH-q[r]と、磁石M-q[r]の接触面WM-q[r]との、Y軸方向における段差G-HMが、基準量Gth以下となるように、取付溝部HV-q[r]及び磁石M-q[r]の大きさ及び形状が定められている。ここで、基準量Gthとは、例えば、ロボットハンド1の大きさ、把持部材H-qの大きさ、または、ロボットハンド1により操作されることが予定される対象物Objの大きさに基づいて、予め定められた値であってもよい。本実施形態では、接触面WH-q[r]と接触面WM-q[r]との段差G-HMが、基準量Gth以下となる場合に、接触面WH-q[r]と接触面WM-q[r]とが同一面であると看做すこととする。
【0040】
このように、本実施形態では、接触面WH-q[r]と接触面WM-q[r]との段差G-HMが、基準量Gth以下であり、接触面WH-q[r]と接触面WM-q[r]とが同一面となるように、磁石M-q[r]が設けられる。このため、本実施形態によれば、段差G-HMが基準量Gthよりも大きくなる態様と比較して、把持機構HKにより対象物Objを把持した際に、接触面WH-q[r]と接触面WM-q[r]との段差G-HMに起因して、対象物Objが傷つけられる可能性を抑制することができる。
【0041】
なお、
図4では、接触面WH-qから磁石M-q[r]が突出するように、磁石M-q[r]が設けられる態様を例示している。つまり、
図4では、把持機構HKが対象物Objを把持する場合に、Y軸方向において、接触面WM-q[r]が接触面WH-q[r]よりも対象物Objに近くなるように、磁石M-q[r]が設けられる態様を例示している。但し、本発明はこのような態様に限定されるものではない。例えば、把持機構HKが対象物Objを把持する場合に、Y軸方向において、接触面WM-q[r]が接触面WH-q[r]よりも対象物Objから離れるように、磁石M-q[r]が設けられてもよい。この場合においても、接触面WH-q[r]と接触面WM-q[r]との段差G-HMが、基準量Gth以下となるように、取付溝部HV-q[r]及び磁石M-q[r]の大きさ及び形状が定められていればよい。
【0042】
<1.4.ロボットハンドによる対象物の把持>
以下、
図5乃至
図7を参照しつつ、ロボットハンド1による対象物Objの把持について説明する。
【0043】
図5は、
図2に示す断面図において、把持部材H-qの接触面WH-qを説明するための説明図である。なお、
図5は、
図2と同様に、
図1のE-e線を通る平面によりロボットハンド1を切断した、ロボットハンド1の断面を示す図である。
【0044】
図5に例示するように、把持部材H-qをY軸方向に向かって平面視したときに、把持部材H-qの接触面WH-qのうち、磁石M-q[r]と重なる領域を、磁石接触領域AM-q[r]と称する。
【0045】
また、把持部材H-qをY軸方向に向かって平面視したときに、把持部材H-qの接触面WH-qのうち、磁石M-q[r]と重ならない領域を、部材接触領域AH-q[s]と称する。ここで、変数sは、0≦s≦Rを満たす自然数である。すなわち、磁石接触領域AM-q[r]と接し、磁石接触領域AM-q[r]のX2方向に位置する部材接触領域AH-q[s]を、部材接触領域AH-q[r-1]と表現することもできる。また、磁石接触領域AM-q[r]と接し、磁石接触領域AM-q[r]のX1方向に位置する部材接触領域AH-q[s]を、部材接触領域AH-q[r]と表現することもできる。
【0046】
本実施形態では、対象物Objが把持機構HKに把持される場合、対象物Objが、磁石接触領域AM-1[r]と磁石接触領域AM-2[r]とに接触する第1の接触パターンと、対象物Objが、部材接触領域AH-1[s]と部材接触領域AH-2[s]とに接触する第2の接触パターンと、の2パターンを想定する。
【0047】
本実施形態において、駆動機構10は、把持部材H-qの位置を制御し、把持部材H-qの位置が対象物Objの把持に適した位置となるように把持部材H-qを移動させることで、把持機構HKにより対象物Objを把持する。具体的には、駆動機構10は、ロボットハンド1が把持機構HKにより対象物Objを把持する場合、
図5の矢印MV-1に示すように、把持部材H-1をY1方向に移動させ、また、
図5の矢印MV-2に示すように、把持部材H-2をY2方向に移動させることで、把持部材H-1の接触面WH-1のY軸方向における位置YH-1と、把持部材H-2の接触面WH-2のY軸方向における位置YH-2とを、把持部材H-1及び把持部材H-2の間隔が対象物Objの把持に適した間隔となるような位置に設定する。これにより、ロボットハンド1は、把持部材H-1及び把持部材H-2により対象物Objを把持する。
【0048】
図6及び
図7は、把持機構HKによる対象物Objの把持を説明するための説明図である。なお、
図6及び
図7は、
図2と同様に、
図1のE-e線を通る平面によりロボットハンド1を切断した、ロボットハンド1の断面を示す図である。
【0049】
このうち、
図6は、把持部材H-qの有する3個の取付溝部HV-q[1]~HV-q[3]に対して、3個の磁石M-q[1]~M-q[3]が取り付けられている場合を例示している。これに対して、
図7は、把持部材H-qの有する3個の取付溝部HV-q[1]~HV-q[3]のうち、取付溝部HV-q[1]及びHV-q[2]からは磁石M-q[1]及びM-q[2]が取り外され、取付溝部HV-q[3]に対してのみ磁石M-q[3]が取りつけられている場合を例示している。
【0050】
以下では、把持部材H-1に設けられた磁石M-1[r1]と、把持部材H-2に設けられた磁石M-2[r2]との間に作用する磁力を、磁力F[r1][r2]と称する。また、以下では、把持部材H-1に設けられた1または複数の磁石Mと、把持部材H-2に設けられた1または複数の磁石Mとの間に作用する磁力を、磁力Fsumと称する。ここで、磁力Fsumは、変数r1を1≦r1≦Rの間で変化させ、変数r2を1≦r2≦Rの間で変化させた場合に、把持部材H-1及び把持部材H-2の間で生じる全ての磁力F[r1][r2]の合力となる。
【0051】
また、以下では、把持部材H-1及び把持部材H-2により、対象物Objを把持する力を、把持力FHと称する。また、以下では、把持機構HKに磁石Mが取り付けられていない状態における把持力FHを、基準把持力FH0と称する。
【0052】
本実施形態において、把持力FHは、基準把持力FH0と磁力Fsumとの合力となる。つまり、把持力FHと基準把持力FH0と磁力Fsumとを、それぞれ3次元のベクトルであるとした場合、これらの3つのベクトルの間には、「FH=FH0+Fsum」が成立する。
【0053】
図6及び
図7に示す例では、一例として、磁力F[r1][r2]が、斥力である場合を想定する。例えば、
図6及び
図7に示す例では、把持部材H-1に設けられた磁石M-1[r1]のY1方向の端部の磁極と、把持部材H-2に設けられた磁石M-2[r2]のY2方向の端部の磁極とが、同一の磁極である場合を想定する。また、基準把持力FH0は、把持部材H-1及び把持部材H-2の間に引力として作用する力である。従って、
図6及び
図7に示す例では、把持力FHの大きさは、基準把持力FH0の大きさよりも小さくなる。
【0054】
より具体的には、
図6及び
図7に示す例では、磁力F[1][1]、磁力F[1][2]、磁力F[1][3]、磁力F[2][1]、磁力F[2][2]、磁力F[2][3]、磁力F[3][1]、磁力F[3][2]、及び、磁力F[3][3]の各々が、斥力である場合を想定する。そして、
図6に示す例では、磁力Fsumは、「Fsum=F[1][1]+F[1][2]+F[1][3]+F[2][1]+F[2][2]+F[2][3]+F[3][1]+F[3][2]+F[3][3]」を満たす。他方、
図7に示す例では、磁力Fsumは、「Fsum=F[3][3]」を満たす。
よって、
図6のように把持機構HKに対して磁石M-q[1]及びM-q[2]が取り付けられている場合、
図7のように把持機構HKから磁石M-q[1]及びM-q[2]が取り外されている場合と比較して、把持力FHが小さくなる。
【0055】
つまり、
図6のように把持機構HKに対して磁石M-q[1]及びM-q[2]を取り付けることで、
図7のように把持機構HKから磁石M-q[1]及びM-q[2]を取り外す場合と比較して、強度の低い対象物Objを把持する際に対象物Objが把持力FHに起因して破損する可能性を低減することができる。他方、
図7のように把持機構HKから磁石M-q[1]及びM-q[2]を取り外すことで、
図6のように把持機構HKに対して磁石M-q[1]及びM-q[2]が取り付けられている場合と比較して、重量の大きい対象物Objを把持する際に対象物Objが把持機構HKから落下する可能性を低減することができる。
【0056】
また、
図6及び
図7に示す例では、一例として、磁石M-q[1+r0]が、磁石M-q[r0]よりも強い磁力を有する場合を想定する。具体的には、
図6及び
図7に示す例では、一例として、磁力F[2][r2]が、磁力F[1][r2]よりも強い斥力として作用する磁力であり、磁力F[3][r2]が、磁力F[2][r2]よりも強い斥力として作用する磁力である場合を想定する。また、
図6及び
図7に示す例では、一例として、磁力F[r1][2]が、磁力F[r1][1]よりも強い斥力として作用する磁力であり、磁力F[r1][3]が、磁力F[r1][2]よりも強い斥力として作用する磁力である場合を想定する。よって、
図6及び
図7に示す例では、磁石M-1[1]、磁石M-1[2]、磁石M-1[3]、磁石M-2[1]、磁石M-2[2]、及び、磁石M-2[3]の中から、1または複数の磁石Mを選択し、選択された磁石Mを把持機構HKに取り付けることで、把持力FHを、対象物Objの把持に適した大きさの力に細やかに設定することが可能となる。
【0057】
また、本実施形態において、把持機構HKが、対象物Objを磁石接触領域AM-q[r]において把持する場合、磁石M-1[r]及び磁石M-2[r]の間に斥力として作用する磁力の一部が、対象物Objにより遮断される場合がある。よって、本実施形態においては、例えば、対象物Objを磁石接触領域AM-q[r]において把持するか、または、対象物Objを部材接触領域AH-q[s]において把持するかを、対象物Objの有する透磁率、形状、及び、大きさの一部または全部に応じて適宜使い分けることにより、対象物Objに加わる把持力FHを調整することが可能となる。
【0058】
また、本実施形態では、上述のとおり、把持部材H-qに設けられた磁石Mの密度は、X1方向に向かうにつれて高くなる。つまり、本実施形態において、把持機構HKが対象物Objを把持する際の把持力FHは、把持機構HKにおける対象物Objの把持位置により変動する可能性がある。具体的には、本実施形態では、例えば、対象物Objの把持位置が、X1方向に移動するにつれて、把持機構HKが対象物Objを把持する際の把持力FHが大きくなることが考えられる。よって、本実施形態においては、例えば、把持機構HKによる対象物Objの把持位置と、把持機構HKにおける磁石Mの取り付け位置とに基づいて、対象物Objに加わる把持力FHを調整することができる。
【0059】
<1.5.第1実施形態の結び>
以上のように、本実施形態では、複数の磁石M(「把持力調整用磁石」の一例)の中から選択された1または複数の磁石Mを、把持機構HKに取り付けることで、把持力FHを調整することができる。また、本実施形態では、対象物Objを磁石接触領域AM-q[r]において把持するか、または、対象物Objを部材接触領域AH-q[s]において把持するかを、使い分けることにより、把持力FHを調整することができる。また、本実施形態では、把持機構HKにおける対象物Objの把持位置と、把持機構HKにおける磁石Mの取り付け位置と、に基づいて、把持力FHを調整することができる。これらの結果、本実施形態では、把持力FHを細やかに調整することが可能となる。
【0060】
また、本実施形態によれば、把持機構HKに対する磁石Mの取り付けまたは取り外しにより、把持機構HKから対象物Objに加えられる把持力FHを調整する。従って、本実施形態によれば、把持機構HKに対する磁石Mの取り付け及び取り外しを行わず、磁力発生部材MGからの磁力Fsumによる把持力FHの調整を行うことなく、駆動機構10による把持部材H-qの位置YH-qの制御のみを行うことで、対象物Objを把持する態様と比較して、対象物Objに適した把持力FHで対象物Objを把持することができる。他方、本実施形態によれば、把持機構HKから対象物Objに加えられる力を検出する力センサからの検出値に基づいて、把持機構HKから対象物Objに加えられる把持力FHを決定する態様と比較して、ロボットハンド1の制御を簡素化することができる。つまり、本実施形態によれば、ロボットハンド1を位置制御する場合と比較してより細やかな把持力FHの調整が可能となるとともに、ロボットハンド1を力制御またはコンプライアンス制御する場合と比較してより制御の簡素化が可能となる。
【0061】
なお、本実施形態では、磁石M-1[r1]と磁石M-2[r2]との間に斥力として作用する磁力が発生する態様を一例として説明したが、本発明はこのような態様に限定されるものではない。磁石M-1[r1]と磁石M-2[r2]との間には、引力として作用する磁力が発生してもよい。
【0062】
例えば、把持部材H-1に取り付けられる1または複数の磁石Mの中には、把持部材H-2に取り付けられる1または複数の磁石Mのうちの一部または全部との間に、引力として作用する磁力を発生可能な磁石Mが含まれていてもよい。同様に、把持部材H-2に取り付けられる1または複数の磁石Mの中には、把持部材H-1に取り付けられる1または複数の磁石Mのうちの一部または全部との間に、引力として作用する磁力を発生可能な磁石Mが含まれていてもよい。
【0063】
また、例えば、把持部材H-1の有する取付溝部HV-1[r1]には、磁石M-2[r2]との間に斥力として作用する磁力を発生可能な磁石Mと、磁石M-2[r2]との間に引力として作用する磁力を発生可能な磁石Mとを、選択可能に取り付けることができてもよい。同様に、把持部材H-2の有する取付溝部HV-2[r2]には、磁石M-1[r1]との間に斥力として作用する磁力を発生可能な磁石Mと、磁石M-1[r1]との間に引力として作用する磁力を発生可能な磁石Mとを、選択可能に取り付けることができてもよい。
【0064】
なお、本実施形態において、把持部材H-1に取り付けられた磁石M-1[3]は、「第1磁石」の一例であり、把持部材H-2に取り付けられた磁石M-2[3]は、「第2磁石」の一例であり、把持部材H-1に取り付けられた磁石M-1[2]は、「第3磁石」の一例であり、把持部材H-2に取り付けられた磁石M-2[2]は、「第4磁石」の一例である。
【0065】
そして、上述のとおり、本実施形態では、
図6及び
図7に示すように、磁石M-1[3]は、磁石M-1[2]とは異なる大きさを有する。つまり、本実施形態において、磁石M-1[3]は、磁石M-1[2]とは異なる大きさの磁力を有する。このため、本実施形態において、把持機構HKに対して磁石M-1[3]及び磁石M-1[2]を選択的に取り付けることで、把持力FHを細やかに調整することが可能となる。
【0066】
また、本実施形態では、磁石M-1[3]と磁石M-2[3]との間に生じる磁力F[3][3]は、磁石M-1[2]と磁石M-2[3]との間に生じる磁力F[2][3]と、異なる大きさとなる。このため、本実施形態において、把持機構HKに対して磁石M-1[3]及び磁石M-1[2]を選択的に取り付けることで、把持力FHを細やかに調整することが可能となる。
【0067】
また、上述のとおり、本実施形態において、把持機構HKが対象物Objを把持する際、把持力FHは、厳密には、把持機構HKにおける対象物Objの把持位置により変動する。
例えば、
図7に示すように、把持機構HKから磁石M-q[1]及びM-q[2]が取り外され、把持機構HKに磁石M-1[3]及び磁石M-2[3]が取りつけられている場合を想定する。この場合、対象物Objが、磁石接触領域AM-q[3]において把持されていれば、対象物Objに加わる磁力Fsumは、磁石M-1[3]及び磁石M-2[3]の間に発生する磁力F[3][3]と、略同じとなる。しかし、対象物Objが、磁石接触領域AM-q[3]とは異なる位置で把持されている場合、対象物Objに加わる磁力Fsumは、磁力F[3][3]とは異なる力となる場合がある。
すなわち、把持部材H-1に対して磁石M-1[r]が取り付けられ、且つ、把持部材H-2に対して磁石M-2[r]が取り付けられている場合、対象物Objが、磁石接触領域AM-1[r](「第1把持領域」の一例)、及び、磁石接触領域AM-2[r](「第1対応領域」の一例)において把持されていれば、対象物Objに加わる磁力Fsumは、磁石M-1[r]及び磁石M-2[r]の間に発生する磁力F[r][r]と、略同じとなる。しかし、把持部材H-1に対して磁石M-1[r]が取り付けられ、且つ、把持部材H-2に対して磁石M-2[r]が取り付けられている場合であっても、対象物Objが、磁石接触領域AM-q[r]とは異なる位置、例えば、部材接触領域AH-1[s](「第2把持領域」の一例)、及び、部材接触領域AH-2[s](「第2対応領域」の一例)において把持されている場合においては、対象物Objに加わる磁力Fsumは、磁力F[r][r]とは異なる力となる場合がある。
このように、本実施形態によれば、把持機構HKによる対象物Objの把持位置と、把持機構HKにおける磁石Mの取り付け位置と、に応じて、把持力FHが変化することがある。よって、本実施形態によれば、把持機構HKによる対象物Objの把持位置と、把持機構HKにおける磁石Mの取り付け位置とに基づいて、対象物Objに加わる把持力FHを調整することができる。
【0068】
<2.第2実施形態>
以下、本発明の第2実施形態を説明する。なお、以下に例示する各形態において、作用または機能が第1実施形態と同様である要素については、第1実施形態で使用した符号を流用し、当該要素の詳細な説明を適宜に省略する。
【0069】
上述した第1実施形態では、距離L[r0][r0]と、距離L[1+r0][1+r0]とが略同じ距離である場合を例示して説明したが、本発明はこのような態様に限定されるものではない。例えば、距離L[r0][r0]と、距離L[1+r0][1+r0]とは、異なる距離であってもよい。
【0070】
図8は、本実施形態に係るロボットハンド1Bを示す断面図である。なお、本実施形態に係るロボットシステムは、ロボットハンド1の代わりにロボットハンド1Bを備える点を除き、
図1に示す第1実施形態に係るロボットシステムSysと同様である。そして、
図8は、
図1において、ロボット2の先端に、ロボットハンド1の代わりにロボットハンド1Bを取り付けた場合に、
図1のE-e線を通る平面によりロボットハンド1Bを切断した、ロボットハンド1Bの断面を示す図である。
【0071】
図8に例示するように、ロボットハンド1Bは、把持機構HKの代わりに、把持機構HKBを備える点において、第1実施形態に係るロボットハンド1と相違する。把持機構HKBは、把持部材H-qの代わりに、把持部材HB-qを備える点において、第1実施形態に係る把持機構HKと相違する。把持部材HB-1及び把持部材HB-2は、距離L[r0][r0]と距離L[1+r0][1+r0]とが異なる距離となるように設けられている点において、距離L[r0][r0]と距離L[1+r0][1+r0]とが略同じ距離となるように設けられた、第1実施形態に係る把持部材H-1及び把持部材H-2と相違する。
【0072】
より具体的には、本実施形態では、一例として、距離L[r0][r0]が、距離L[1+r0][1+r0]よりも長い場合を想定する。すなわち、本実施形態では、距離L[1][1]が距離L[2][2]よりも長く、且つ、距離L[2][2]が距離L[3][3]よりも長い場合を想定する。
【0073】
また、本実施形態では、一例として、磁石M-q[1]~M-q[R]が、互いに略同じ大きさの磁力を有している場合を想定する。具体的には、本実施形態では、磁石M-q[1]~M-q[R]が、互いに略同じ大きさを有し、且つ、略同じ形状を有している場合を想定する。更に、本実施形態では、一例として、面積S-q[1]~S-q[R]が、互いに略同じ面積であり、また、間隔G-q[1][2]~G-q[R-1][R]が、互いに略同じ距離である場合を想定する。
【0074】
一般的に、磁石M-1[r1]の代表点P-1[r1]と、磁石M-2[r2]の代表点P-2[r2]との距離L[r1][r2]が短い場合に、長い場合と比較して、磁石M-1[r1]と磁石M-2[r2]との間の磁力F[r1][r2]は大きくなる。よって、本実施形態において、磁力F[1+r0][1+r0]が、磁力F[r0][r0]よりも大きくなる。より具体的には、本実施形態において、磁力F[2][2]は磁力F[1][1]よりも大きく、且つ、磁力F[3][3]は磁力F[2][2]よりも大きい。
【0075】
従って、本実施形態においても、第1実施形態と同様に、磁石M-1[1]、磁石M-1[2]、磁石M-1[3]、磁石M-2[1]、磁石M-2[2]、及び、磁石M-2[3]の中から、1または複数の磁石Mを選択し、選択された磁石Mを把持機構HKに取り付けることで、把持力FHを、対象物Objの把持に適した大きさの力に細やかに設定することが可能となる。
また、本実施形態では、上述のとおり、距離L[r0][r0]と距離L[1+r0][1+r0]とが異なるという把持機構HKBの幾何的な性質を利用することで、把持部材HB-1及び把持部材HB-2の間に作用する磁力Fsumを調整する。つまり、本実施形態では、把持部材HB-1に取り付けられた磁石M-1[r1]と把持部材HB-2に取り付けられた磁石M-2[r2]との間の磁力F[r1][r2]が、磁石M-1[r1]と磁石M-2[r2]との間の距離L[r1][r2]に基づいて定められる、という性質を利用して、磁力Fsumを調整する。換言すれば、本実施形態では、磁石M-1[r1]と磁石M-2[r2]との間の距離L[r1][r2]により磁力Fsumを調整する。このため、本実施形態では、磁石M-1[r1]の大きさ、形状、若しくは、磁力、または、磁石M-2[r2]の大きさ、形状、若しくは、磁力、に関わらず、磁力Fsumを調整することが可能である。よって、本実施形態では、上述のとおり、複数の磁石M-q[1]~M-q[R]を、互いに略同じ大きさとし、且つ、互いに略同じ形状とすることが可能となる。なお、以下、把持機構HKBに取り付け可能であり互いに略同じ大きさを有し互いに略同じ形状を有する複数の磁石M-q[1]~M-q[R]の各々を、「磁石MB」と称する。すなわち、本実施形態では、複数の磁石MBの中から選択された1または複数の磁石MBを、把持機構HKBに対して取り付けることで、所望の磁力Fsumが実現される。
このように、本実施形態によれば、複数の磁石M-q[1]~M-q[R]として、互いに略同じ大きさを有し、互いに略同じ形状を有する、複数の磁石MBを採用することができる。このため、本実施形態によれば、複数の磁石M-q[1]~M-q[R]の中に、異なる大きさの2つの磁石M-q[r]が存在する場合、または、複数の磁石M-q[1]~M-q[R]の中に、異なる形状の2つの磁石M-q[r]が存在する場合等と比較して、複数の磁石M-q[1]~M-q[R]の製造が容易となり、複数の磁石M-q[1]~M-q[R]の製造コストの低減が可能となる。
また、本実施形態によれば、把持機構HKBに設けられた取付溝部HV-q[r]に対して、複数の磁石M-q[1]~M-q[R]として採用された複数の磁石MBのうち、任意の磁石MBを取り付けることができる。このため、本実施形態によれば、取付溝部HV-q[r]に対して、複数の磁石M-q[1]~M-q[R]の中から、取付溝部HV-q[r]の大きさ及び形状に対応する磁石M-q[r]を探し出し、当該探し出された磁石M-q[r]を取付溝部HV-q[r]に取り付ける態様と比較して、把持機構HKBに対する磁石Mの取り付けの手間を削減することができ、更には、把持機構HKBに対する磁石Mの取り付け作業におけるミスを低減することができる。
【0076】
なお、本実施形態において、把持部材HB-1は、「第1把持部材」の一例であり、把持部材HB-2は、「第2把持部材」の一例であり、磁石M-1[3]は、「第1磁石」の一例であり、磁石M-2[3]は、「第2磁石」の一例であり、磁石M-1[2]は、「第3磁石」の一例であり、磁石M-2[2]は、「第4磁石」の一例である。
【0077】
<3.第3実施形態>
以下、本発明の第3実施形態を説明する。
【0078】
上述した第1実施形態及び第2実施形態では、把持機構HK(または、把持機構HKB)に対する磁石Mの取り付けまたは取り外しにより、把持力FHを調整したが、本発明はこのような態様に限定されるものではない。例えば、把持機構HKに取り付けられた磁石Mに対して、磁石Mからの磁力を遮断するためのシールド板を取り付けることで、把持力FHを調整してもよい。
【0079】
図9及び
図10は、本実施形態に係るロボットハンド1Cを示す断面図である。なお、本実施形態に係るロボットシステムは、ロボットハンド1の代わりにロボットハンド1Cを備える点を除き、
図1に示す第1実施形態に係るロボットシステムSysと同様である。そして、
図9及び
図10は、
図1において、ロボット2の先端に、ロボットハンド1の代わりにロボットハンド1Cを取り付けた場合に、
図1のE-e線を通る平面によりロボットハンド1Cを切断した、ロボットハンド1Cの断面を示す図である。
【0080】
図9及び
図10に例示するように、ロボットハンド1Cは、把持機構HKの代わりに、把持機構HKCを備える点において、第1実施形態に係るロボットハンド1と相違する。把持機構HKCは、把持部材H-qの代わりに、把持部材HC-qを備える点において、第1実施形態に係る把持機構HKと相違する。把持部材HC-qは、1または複数の磁石M-q[r]の代わりに、1個の磁石ML-qが設けられている点と、磁石ML-qと対象物Objとの間に、シールド板SH-qが設けられている点と、において、第1実施形態に係る把持部材H-qと相違する。
【0081】
なお、以下では、把持部材HC-qをY軸方向に平面視した場合に、磁石ML-qのうち、シールド板SH-qが設けられておらず磁石ML-qが露出する領域を磁石露出領域BM-qと称し、シールド板SH-qが設けられている領域を磁力遮断領域BH-qと称する。
【0082】
本実施形態では、一例として、把持部材HC-qにおいて、R個の磁石露出領域BM-qが設けられるように、シールド板SH-qが配置される場合を想定する。そして、以下では、R個の磁石露出領域BM-qのうち、r番目の磁石露出領域BM-qを、磁石露出領域BM-q[r]と称する。また、以下では、R個の磁石露出領域BM-q[1]~BM-q[R]を区分するための「R-1」個の磁力遮断領域BH-qのうち、r0番目の磁力遮断領域BH-qを、磁力遮断領域BH-q[r0]と称する。また、以下では、把持部材HC-qに設けられるシールド板SH-qのうち、磁力遮断領域BH-q[r0]を覆うためのシールド板SH-qを、シールド板SH-q[r0]と称する。
【0083】
なお、本実施形態において、シールド板SH-qは磁性体を含んで構成され、磁石ML-qから発生される磁力のうち少なくとも一部を遮断する。具体的には、本実施形態において、シールド板SH-qのうち、シールド板SH-q[r0]は、磁石ML-qのうち磁力遮断領域BH-q[r0]から発生される磁力の少なくとも一部を遮断する。
また、本実施形態では、シールド板SH-q[1]~SH-q[R-1]が、1枚の板状の部材である場合を想定する。具体的には、本実施形態において、シールド板SH-qは、把持部材HC-qに設けられた磁石ML-qに取り付けられた場合に、R個の磁石露出領域BM-q[1]~BM-q[R]と1対1に対応するR個の開口を有する、1枚の板状の部材である場合を想定する。但し、本発明はこのような態様に限定されるものではない。シールド板SH-qは、「R-1」個の磁力遮断領域BH-q[1]~BH-q[R-1]と1対1に対応する、「R-1」個のシールド板SH-q[1]~SH-q[R-1]の集合であってもよい。
【0084】
また、本実施形態では、
図10に例示するように、把持部材HC-qに設けられた磁石ML-qのうち、磁石露出領域BM-q[r]に対して、シールド板SM-q[r]を取り付けることができる。ここで、シールド板SM-q[r]は、シールド板SH-q[r0]と同様に、磁石ML-qから発生される磁力のうち少なくとも一部を遮断するための磁性体を含む板状構成物である。つまり、本実施形態において、シールド板SM-q[r]は、磁石ML-qのうち磁石露出領域BM-q[r]から発生される磁力の少なくとも一部を遮断する。
【0085】
本実施形態では、磁石ML-qが発生する磁力により、把持機構HKCが対象物Objを把持する際の把持力FHが調整される。本実施形態では、磁石露出領域BM-1[r1]から露出した磁石ML-1と、磁石露出領域BM-2[r2]から露出した磁石ML-2との間に生じる磁力を、磁力F[r1][r2]と称する。また、以下では、磁石ML-1と磁石ML-2との間に生じる磁力の合力を、磁力Fsumと称する。本実施形態においても、上述した第1実施形態と同様に、把持力FHは、基準把持力FH0と磁力Fsumとの合力となる。
【0086】
上述のとおり、磁石露出領域BM-1[r1]にシールド板SM-1[r1]を取り付けた場合、または、磁石露出領域BM-2[r2]にシールド板SM-2[r2]を取り付けた場合、磁力F[r1][r2]の少なくとも一部は、シールド板SM-1[r1]またはシールド板SM-2[r2]により遮断される。例えば、
図9に示す例では、磁力Fsumは、「Fsum=F[1][1]+F[1][2]+F[1][3]+F[2][1]+F[2][2]+F[2][3]+F[3][1]+F[3][2]+F[3][3]」となる。他方、
図10に示す例では、磁力Fsumは、「Fsum=F[3][3]」となる。すなわち、本実施形態では、磁石ML-qの磁石露出領域BM-q[r]に対してシールド板SM-q[r]を取り付けること、または、磁石ML-qの磁石露出領域BM-q[r]からシールド板SM-q[r]を取り外すことにより、磁力Fsumを調整することができる。換言すれば、本実施形態では、磁石ML-qの磁石露出領域BM-q[r]に対して、シールド板SM-q[r]を取り付けまたは取り外すことにより、対象物Objに加わる把持力FHを調整することが可能となる。
【0087】
なお、本実施形態では、磁石ML-q、シールド板SH-q、及び、シールド板SM-q[r]を、磁力発生部材MGと称することとする。また、本実施形態において、把持部材HC-1は、「第1把持部材」の一例であり、把持部材HC-2は、「第2把持部材」の一例であり、磁石ML-1は、「第1磁石」の一例であり、シールド板SH-q及びシールド板SM-q[r]は、「シールド部材」の一例である。
【0088】
<4.変形例>
以上の各形態は多様に変形され得る。具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2以上の態様は、相互に矛盾しない範囲内で適宜に併合され得る。なお、以下に例示する変形例において作用や機能が実施形態と同等である要素については、以上の説明で参照した符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
【0089】
<変形例1>
上述した実施形態では、把持部材H-1(または、把持部材HB-1、若しくは、把持部材HC-1)と、把持部材H-2(または、把持部材HB-2、若しくは、把持部材HC-2)との両方に、磁石M-q[r](または、磁石ML-q)が設けられる態様を例示して説明したが、本発明はこのような態様に限定されるものではない。例えば、把持部材H-1と把持部材H-2とのうち、一方の把持部材H-qに対してのみ、磁石M-q[r]が取り付けられてもよい。
【0090】
図11は、本変形例に係るロボットハンド1Dを示す断面図である。なお、本変形例に係るロボットシステムは、ロボットハンド1の代わりにロボットハンド1Dを備える点を除き、
図1に示す第1実施形態に係るロボットシステムSysと同様である。そして、
図11は、
図1において、ロボット2の先端に、ロボットハンド1の代わりにロボットハンド1Dを取り付けた場合に、
図1のE-e線を通る平面によりロボットハンド1Dを切断した、ロボットハンド1Dの断面を示す図である。
【0091】
図11に例示するように、ロボットハンド1Dは、把持機構HKの代わりに、把持機構HKDを備える点において、第1実施形態に係るロボットハンド1と相違する。把持機構HKDは、把持部材H-2の代わりに把持部材HD-2を備える点において、第1実施形態に係る把持機構HKと相違する。把持部材HD-2は、1または複数の磁石M-q[r]の代わりに対向部材MSが設けられている点において、第1実施形態に係る把持部材H-2と相違する。ここで、対向部材MSとは、鉄などの軟磁性体である。対向部材MSは、把持部材H-1に設けられた磁石Mからの磁力を受けている場合に、磁石Mとの間に引力として作用する磁力を発生させる。
【0092】
本変形例では、把持部材H-1に設けられた磁石M-1[r]と、把持部材HD-2に設けられた対向部材MSとの間に生じる磁力を、磁力F[r]と称する。また、以下では、把持部材H-1に設けられた1または複数の磁石Mと、把持部材HD-2に設けられた対向部材MSとの間に作用する磁力を、磁力Fsumと称する。本変形例においても、上述した第1実施形態と同様に、把持力FHは、基準把持力FH0と磁力Fsumとの合力となる。
【0093】
すなわち、本変形例では、把持部材H-1に対して磁石M-1[r]を取り付けること、または、把持部材H-1から磁石M-1[r]を取り外すことにより、磁力Fsumを調整することができる。換言すれば、本変形例では、把持部材H-1に対して磁石M-1[r]を取り付けまたは取り外すことにより、対象物Objに加わる把持力FHを調整することが可能となる。
【0094】
<変形例2>
上述した実施形態及び変形例1では、把持機構HK(または、把持機構HKB若しくは把持機構HKD)が対象物Objを把持する場合に、磁石M-q[r]の接触面WM-q[r]が対象物Objに接触することを想定しているが、本発明はこのような態様に限定されるものではない。
【0095】
図12は、本変形例に係る把持機構HKが有する把持部材H-q及び磁石M-q[r]を示す図である。なお、
図12では、
図4と同様に、「q=1」の場合を例示して、ハンド座標系ΣHを描いている。
【0096】
図12に例示するように、本変形例に係る把持機構HKは、取付溝部HV-q[r]に取り付けられた磁石M-q[r]と、対象物Objとの間に、カバー部材CV-q[r]が設けられる点において、
図4に示す第1実施形態に係る把持機構HKと相違する。
【0097】
ここで、カバー部材CV-q[r]は、磁気を通過させる材料から形成される板状の部材である。磁石M-q[r]の発する磁力は、カバー部材CV-q[r]を通過する。以下では、把持機構HKが対象物Objを把持する場合に、カバー部材CV-q[r]のうち対象物Objに接触する可能性がある面を、接触面WC-q[r]と称する。
【0098】
本変形例において、把持部材H-qの接触面WH-q[r]と、カバー部材CV-q[r]の接触面WC-q[r]との、Y軸方向における段差G-HCが、基準量Gth以下となるように、取付溝部HV-q[r]及びカバー部材CV-q[r]の大きさ及び形状が定められている。つまり、本変形例において、接触面WH-q[r]と接触面WC-q[r]とは同一面であると看做すことができる。
【0099】
以上のように、本変形例では、磁石M-q[r]及び対象物Objの間にカバー部材CV-q[r]が設けられる。よって、本変形例において、磁石M-q[r]が把持部材H-qから外れることを抑制することができる。
【0100】
また、本変形例では、把持機構HKが対象物Objを把持する際に、磁石M-q[r]及び対象物Objが、カバー部材CV-q[r]により保護される。よって、本変形例では、把持機構HKが対象物Objを把持する際に、磁石M-q[r]及び対象物Objが破損する可能性を低減することが可能となる。
【0101】
また、本変形例では、取付溝部HV-q[r]から磁石M-q[r]が取り外された場合においても、取付溝部HV-q[r]に磁石M-q[r]が取り付けられている場合と同様に、接触面WH-q[r]と接触面WC-q[r]とが同一面となるように、カバー部材CV-q[r]が設けられる。このため、本変形例では、取付溝部HV-q[r]から磁石M-q[r]が取り外された場合において、取付溝部HV-q[r]に対象物Objが接触することに起因して、対象物Objが傷つけられる可能性を抑制することができる。
【0102】
なお、上述した実施形態及び変形例では、磁石M-q[r]が、把持部材H-qに設けられた取付溝部HV-q[r]に対して嵌め込まれることで、把持部材H-qに取り付けられる態様を例示して説明しているが、本発明はこのような態様に限定されるものではない。例えば、磁石M-q[r]は、把持部材H-qにおいてZ軸方向に延在するように設けられた挿通孔に対して挿通されることで、把持部材H-qに取り付けられてもよい。
【0103】
<変形例3>
上述した実施形態及び変形例では、磁石Mが永久磁石である場合を例示して説明したが、本発明はこのような態様に限定されるものではない。例えば、磁石Mは電磁石であってもよい。この場合、ロボットコントローラ3は、磁力発生部材MGが有する1または複数の磁石Mに通電して磁石Mに磁力を発生させるか否かを切り替える磁力制御部を備えてもよい。
【0104】
<変形例4>
上述した実施形態並びに変形例では、把持機構HK(または、把持機構HKB、把持機構HKC、若しくは、把持機構HKD)からの、磁石M(または、シールド板SM-q)の着脱が可能な態様を例示して説明したが、本発明はこのような態様に限定されるものではない。磁石Mまたはシールド板SM-qは、把持機構HK(または、把持機構HKB、把持機構HKC、若しくは、把持機構HKD)に固定された態様で設けられてもよい。
【0105】
<5.付記>
上述した実施形態乃至変形例の記載から、本発明は例えば以下のように把握される。なお、各態様の理解を容易にするために、以下では、図面の参照符号を便宜的に括弧書きで付記するが、本発明を図示の態様に限定する趣旨ではない。
【0106】
<付記1>
本発明の一態様に係るロボットハンドは、第1把持部材(例えば、把持部材H-1)及び第2把持部材(例えば、把持部材H-2)を具備し、前記第1把持部材及び前記第2把持部材の間に配置された対象物(例えば、対象物Obj)を把持する把持機構(例えば、把持機構HK)と、前記把持機構に取り付けられ、前記第1把持部材及び前記第2把持部材の間の引力または斥力として作用する磁力を発生させる磁力発生部材(例えば、磁力発生部材MG)と、を備える、ことを特徴とする。
【0107】
本態様によれば、ロボットハンドが、第1把持部材及び第2把持部材を具備する把持機構に加えて、第1把持部材及び第2把持部材の間の引力または斥力として作用する磁力を発生させる磁力発生部材を備えるため、ロボットハンドが対象物を把持する際に、対象物が、把持機構による把持力と磁力発生部材による磁力とにより把持されることになる。よって、本態様によれば、ロボットハンドが磁力発生部材を備えない態様と比較して、把持機構により対象物を把持する際に対象物に加えられる把持力の細やかな調整が可能となる。
【0108】
<付記2>
本発明の他の態様に係るロボットハンドは、付記1に記載のロボットハンドであって、前記磁力発生部材が、前記第1把持部材に取り付けられ、前記第1把持部材及び前記第2把持部材の間の引力または斥力として作用する磁力を発生させる第1磁石(例えば、磁石M-1[3])を含む、ことを特徴とする。
【0109】
本態様によれば、ロボットハンドが第1磁石を備えない態様と比較して、把持機構により対象物を把持する際に対象物に加えられる把持力の細やかな調整が可能となる。
【0110】
<付記3>
本発明の他の態様に係るロボットハンドは、付記1に記載のロボットハンドであって、前記磁力発生部材は、前記第1把持部材に取り付けられた第1磁石(例えば、磁石M-1[3])と、前記第2把持部材に取り付けられ、前記第1磁石との間で引力または斥力として作用する磁力を発生させる第2磁石(例えば、磁石M-2[3])と、を含む、ことを特徴とする。
【0111】
本態様によれば、ロボットハンドが第1磁石及び第2磁石を備えない態様と比較して、把持機構により対象物を把持する際に対象物に加えられる把持力の細やかな調整が可能となる。
【0112】
<付記4>
本発明の他の態様に係るロボットハンドは、付記3に記載のロボットハンドであって、前記磁力発生部材は、前記第1把持部材に取り付けられ、前記第2磁石との間で引力または斥力として作用する磁力を発生させる第3磁石(例えば、磁石M-1[2])を含み、前記第1磁石と前記第2磁石との間に生じる磁力の大きさと、前記第3磁石と前記第2磁石との間に生じる磁力の大きさとは、異なる、ことを特徴とする。
【0113】
本態様によれば、把持機構に対して、第1磁石及び第2磁石並びに第3磁石を取り付けた場合と、把持機構に対して、第1磁石及び第2磁石を取り付けた場合と、把持機構に対して、第3磁石及び第2磁石を取り付けた場合とで、それぞれ、第1把持部材及び第2把持部材の間で引力または斥力として作用する磁力の大きさは異なることになる。よって、本態様によれば、例えば、把持機構に対して、第2磁石を取り付けた上で、第1磁石及び第3磁石を選択的に取り付けることで、ロボットハンドが対象物を把持する際の把持力を細やかに調整することが可能となる。
【0114】
<付記5>
本発明の他の態様に係るロボットハンドは、付記4に記載のロボットハンドであって、前記第1磁石は、前記第3磁石とは異なる大きさを有する、ことを特徴とする。
【0115】
本態様によれば、例えば、把持機構に対して、第2磁石を取り付けた上で、第1磁石及び第3磁石を選択的に取り付けることで、ロボットハンドが対象物を把持する際の把持力を細やかに調整することが可能となる。また、本態様によれば、例えば、ロボットハンドのオペレータが、把持機構に対して、第1磁石及び第3磁石を選択的に取り付ける際に、ロボットハンドが対象物を把持する際の把持力を、視覚的且つ直観的に予測することが可能となる。
【0116】
<付記6>
本発明の他の態様に係るロボットハンドは、付記3に記載のロボットハンドであって、前記磁力発生部材は、前記第1把持部材に取り付けられた第3磁石(例えば、磁石M-1[2])と、前記第2把持部材に取り付けられ、前記第3磁石との間で引力または斥力として作用する磁力を発生させる第4磁石(例えば、磁石M-2[2])と、を備え、前記第1磁石と前記第3磁石との間隔と、前記第2磁石と前記第4磁石との間隔とは、異なる、ことを特徴とする。
【0117】
本態様によれば、第1磁石と第3磁石との間に生じる磁力の大きさと、第2磁石と第4磁石との間に生じる磁力の大きさとは、異なる。つまり、本態様によれば、例えば、把持機構に対して、第1磁石及び第3磁石並びに第2磁石及び第4磁石を取り付けた場合と、把持機構に対して、第1磁石及び第3磁石を取り付けた場合とで、第1把持部材及び第2把持部材の間で引力または斥力として作用する磁力の大きさは異なることになる。よって、本態様によれば、例えば、把持機構に対して、第1磁石、第2磁石、第3磁石、及び、第4磁石の中から1または複数の磁石を選択し、当該選択された磁石を把持機構に取り付けることで、ロボットハンドが対象物を把持する際の把持力を細やかに調整することが可能となる。
【0118】
<付記7>
本発明の他の態様に係るロボットハンドは、付記1に記載のロボットハンドであって、前記第1把持部材及び前記第2把持部材の一方または両方の位置が所望の位置となるように、前記把持機構を駆動する駆動機構(例えば、駆動機構10)を備える、ことを特徴とする。
【0119】
本態様によれば、駆動機構により把持機構を駆動して、第1把持部材及び第2把持部材を対象物の把持に好適な位置に移動させることで、把持機構による対象物の把持が可能となる。
【0120】
<付記8>
本発明の他の態様に係るロボットハンドは、付記1に記載のロボットハンドであって、前記第1把持部材は、第1把持領域(例えば、磁石接触領域AM-1[r])と、第2把持領域(例えば、部材接触領域AH-1[s])とを有し、前記第2把持部材は、前記第1把持領域に対応する第1対応領域(例えば、磁石接触領域AM-2[r])と、前記第2把持領域に対応する第2対応領域(例えば、部材接触領域AH-2[s])とを有し、前記磁力発生部材は、前記把持機構の前記第1把持領域と前記第1対応領域との間で前記対象物が把持される場合に、前記第1把持部材及び前記第2把持部材により前記対象物に加えられる把持力と、前記把持機構の前記第2把持領域と前記第2対応領域との間で前記対象物が把持される場合に、前記第1把持部材及び前記第2把持部材により前記対象物に加えられる把持力とが異なるように、前記磁力を発生させる、ことを特徴とする。
【0121】
本態様によれば、把持機構による対象物の把持位置に応じて、把持機構による対象物を把持する際の把持力が変化する。よって、本態様によれば、把持機構による対象物の把持位置に基づいて、ロボットハンドが対象物を把持する際の把持力を細やかに調整することが可能となる。
【0122】
<付記9>
本発明の他の態様に係るロボットハンドは、付記1に記載のロボットハンドであって、前記磁力発生部材は、前記把持機構に取り付けられた1または複数の磁石(例えば、磁石M)を含み、前記把持機構には、前記第1把持部材及び前記第2把持部材により前記対象物に加えられる把持力が所望の力となるように、1または複数の把持力調整用磁石の中から選択された磁石が、前記1または複数の磁石として取り付け可能である、ことを特徴とする。
【0123】
本態様によれば、例えば、把持機構に対して、複数の把持力調整用磁石の中から1または複数の磁石を選択し、当該選択された磁石を把持機構に取り付けることで、ロボットハンドが対象物を把持する際の把持力を細やかに調整することが可能となる。
【0124】
<付記10>
本発明の他の態様に係るロボットハンドは、付記1に記載のロボットハンドであって、前記磁力発生部材は、前記第1把持部材(例えば、把持部材H-q)に取り付けられ、前記第1把持部材及び前記第2把持部材の間の引力または斥力として作用する磁力を発生させる第1磁石(例えば、磁石M-q[r])を含み、前記第1把持部材は、前記第2把持部材との間で前記対象物を把持するための把持面(例えば、接触面WH-q[r])を有し、前記把持面には、前記第1磁石を取り付けるための溝部(例えば、取付溝部HV-q[r])が設けられる、ことを特徴とする。
【0125】
本態様によれば、例えば、把持面に溝部が設けられていない態様と比較して、第1把持部材に取り付けた第1磁石が、第1把持部材から脱落する可能性を低減することができる。
【0126】
<付記11>
本発明の他の態様に係るロボットハンドは、付記10に記載のロボットハンドであって、前記溝部には、前記溝部に対して前記第1磁石を取り付けた場合に、前記第1磁石との間に引力を生じる取付磁石(例えば、取付用磁石MT-q[r])が設けられる、ことを特徴とする。
【0127】
本態様によれば、例えば、溝部に取付磁石が設けられていない態様と比較して、第1把持部材に取り付けた第1磁石が、第1把持部材から脱落する可能性を低減することができる。
【0128】
<付記12>
本発明の他の態様に係るロボットハンドは、付記1に記載のロボットハンドであって、前記磁力発生部材は、前記第1把持部材(例えば、把持部材H-q)に取り付けられ、前記第1把持部材及び前記第2把持部材の間で引力または斥力として作用する磁力を発生させる第1磁石(例えば、磁石ML-q)と、前記磁力の少なくとも一部を遮断するように前記第1磁石の一部を覆うシールド部材(例えば、シールド板SH-q[r0]またはシールド板SM-q[r])と、を備える、ことを特徴とする。
【0129】
本態様によれば、磁力発生部材が、第1磁石の一部を覆うシールド部材を備えるため、磁力発生部材が、第1磁石の一部を覆うシールド部材を備えない態様と比較して、ロボットハンドが対象物を把持する際の把持力を細やかに調整することが可能となる。
【0130】
<付記13>
本発明の他の態様に係るロボットハンドは、付記10に記載のロボットハンドであって、前記第1磁石は、前記第1磁石が前記溝部(例えば、取付溝部HV-q[r])に取り付けられた場合に、前記把持面と同一面上に位置する第1面(例えば、接触面WM-q[r])を有する、ことを特徴とする。
【0131】
本態様によれば、把持面と第1面とが同一面上に位置し、把持面と第1面との間に段差が存在しないと看做すことができるため、例えば、把持面と第1面との間に段差が存在する態様と比較して、把持機構が対象物を把持する際に、把持面と第1面との段差に起因して対象物が傷つけられる可能性を低減することができる。
【0132】
<付記14>
本発明の他の態様に係るロボットハンドは、付記13に記載のロボットハンドであって、前記第1把持部材は、前記第1磁石が前記溝部から取り外された場合に、前記溝部を覆い、前記把持面と同一面上に位置するカバー部材(例えば、カバー部材CV-q[r])を有する、ことを特徴とする。
【0133】
本態様によれば、溝部を覆うカバー部材が設けられるため、溝部から第1磁石を取り外した際においても、把持面と溝部との段差に起因して対象物が傷つけられる可能性を低減することができる。
【0134】
<付記15>
本発明の他の態様に係るロボットハンドは、付記1に記載のロボットハンドであって、前記磁力発生部材は、前記第1把持部材(例えば、把持部材H-q)に取り付けられ、前記第1把持部材及び前記第2把持部材の間の引力または斥力として作用する磁力を発生させる第1磁石(例えば、磁石M-q[r])を含み、前記第1把持部材は、前記第2把持部材との間で前記対象物を把持するための把持面(例えば、接触面WH-q[r])を有し、前記把持面には、前記第1磁石を取り付けるための溝部(例えば、取付溝部HV-q[r])と、前記把持面と同一面上に位置し、前記第1磁石が前記溝部に取り付けられた場合に前記第1磁石を覆うカバー部材(例えば、カバー部材CV-q[r])と、が設けられる、ことを特徴とする。
【0135】
本態様によれば、例えば、把持面にカバー部材が設けられていない態様と比較して、第1把持部材に取り付けた第1磁石が、第1把持部材から脱落する可能性を低減することができる。
【符号の説明】
【0136】
1…ロボットハンド、2…ロボット、3…ロボットコントローラ、HK…把持機構、H-q…把持部材、M…磁石、MG…磁力発生部材、Sys…ロボットシステム、WH-q…接触面。