(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173107
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】触覚提示装置、触覚提示方法、触覚提示プログラム、および、電子機器
(51)【国際特許分類】
G06F 3/01 20060101AFI20231130BHJP
G09B 21/00 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
G06F3/01 560
G09B21/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022085120
(22)【出願日】2022-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100133514
【弁理士】
【氏名又は名称】寺山 啓進
(72)【発明者】
【氏名】内貴 崇
【テーマコード(参考)】
5E555
【Fターム(参考)】
5E555AA80
5E555BA01
5E555BB01
5E555BC01
5E555BE08
5E555CA42
5E555CB19
5E555CB23
5E555DA24
5E555EA04
5E555FA00
(57)【要約】 (修正有)
【課題】視覚や聴覚で周囲の状況を伝えることが難しい場合であっても、周囲の状況を直感的に触覚で把握することができる、触覚提示装置、触覚提示方法及び触覚提示プログラムを提供する。
【解決手段】触覚提示装置100は、対象物の状態として、位置、方向、距離、速度、加速度及び緊急性のうち少なくとも一つに関する対象物情報を取得する対象物情報取得部112と、対象物情報取得部112により取得された対象物情報に基づいて、対象物の状態を疑似的に触刺激として提示する触刺激提示部102と、を備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物の状態として、位置、方向、距離、速度、加速度、および、緊急性のうち少なくとも一つに関する対象物情報を取得する対象物情報取得部と、
前記対象物情報に基づいて、前記対象物の状態を疑似的に、触刺激として提示する触刺激提示部と、
を備えた触覚提示装置。
【請求項2】
前記触刺激提示部は、アレイ状、面状または線状に配置された、振動または圧力を提示する触覚素子を制御することにより、前記対象物の状態を疑似的に、振動感覚または圧覚の触刺激として提示する、
請求項1に記載の触覚提示装置。
【請求項3】
前記触刺激提示部は、前記触覚素子を制御する位置により、前記対象物の方向または距離を疑似的に提示する、
請求項2に記載の触覚提示装置。
【請求項4】
前記触刺激提示部は、前記触覚素子を制御する強度により、前記対象物の距離、緊急度、相対速度を疑似的に提示する、
請求項2に記載の触覚提示装置。
【請求項5】
前記触刺激提示部は、前記触覚素子を制御する頻度により、前記対象物の距離、緊急度、相対速度を疑似的に提示する、
請求項2に記載の触覚提示装置。
【請求項6】
前記触刺激提示部は、前記触覚素子の制御位置を移動させることにより、距離、緊急度、相対速度を疑似的に提示する、
請求項2に記載の触覚提示装置。
【請求項7】
請求項3乃至6に記載のいずれか一つの触覚提示装置の前記触刺激提示部のうち少なくとも二つを組み合わせた、触覚提示装置。
【請求項8】
前記触刺激提示部は、前記触覚素子が配置されたアレイまたは面もしくは線において、疑似的な利用者の位置を示す原点を設定し、利用者の位置に対する対象物の状態を、当該原点に対する相対的な制御位置として提示する、
請求項2に記載の触覚提示装置。
【請求項9】
前記触刺激提示部は、緊急性を提示するために、非緊急時よりも多くの前記触覚素子を制御する、
請求項2に記載の触覚提示装置。
【請求項10】
前記触覚素子の振動体の一単位は、圧電体の単体構造またはアレイ構造を有する、
請求項2に記載の触覚提示装置。
【請求項11】
前記触刺激提示部は、前記触覚素子の振動体を、非触刺激提示時に振動オフとし触刺激提示時に振動オンとする制御、あるいは、非触刺激提示時に振動オンとし触刺激提示時に振動オフとする制御を行う、
請求項2に記載の触覚提示装置。
【請求項12】
前記触覚素子は、電磁ソレノイドを用いた可動突起部である、
請求項2に記載の触覚提示装置。
【請求項13】
前記触刺激提示部は、前記可動突起部を、非触刺激提示時に引き込みとし触刺激提示時に突出とする制御、あるいは、非触刺激提示時に突出とし触刺激提示時に引き込みとする制御を行う、
請求項12に記載の触覚提示装置。
【請求項14】
前記触刺激提示部は、前記アレイ構造の振動時に、周囲部よりも中心部の振動波形の位相を遅らせることで、中心部に発出する超音波を集中させるように制御する、
請求項10に記載の触覚提示装置。
【請求項15】
前記触刺激提示部は、駆動波の位相関係を調整することで、超音波を集中させる場所を移動させる、
請求項1に記載の触覚提示装置。
【請求項16】
対象物の状態として、位置、方向、距離、速度、加速度、および、緊急性のうち少なくとも一つに関する対象物情報を取得するステップと、
前記対象物情報に基づいて、前記対象物の状態を疑似的に、触刺激として提示するステップと、
を含む触覚提示方法。
【請求項17】
対象物の状態として、位置、方向、距離、速度、加速度、および、緊急性のうち少なくとも一つに関する対象物情報を取得するステップと、
前記対象物情報に基づいて、前記対象物の状態を疑似的に、触刺激として提示するステップと、
をコンピュータに実行させるための触覚提示プログラム。
【請求項18】
請求項1乃至6及び請求項8乃至15のいずれか一つに記載の触覚提示装置を搭載する電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、触覚提示装置、触覚提示方法、触覚提示プログラムおよび、電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、物体の存在などの周囲の状況を、利用者に音声または触覚で提示するデバイスが開発されている。
【0003】
例えば、非特許文献1には、計算機がセンサからの計測値を分析して、周囲の状況を推定し、推定結果を利用者に音声または触覚で伝達する電子白杖システムが開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】村上満佳子、他「視覚障害者のための状況推定を導入した電子白杖の構築」、システム制御情報学会論文誌,Vol.16, No.6, pp.287-294, 2003 <URL: https://www.jstage.jst.go.jp/article/iscie1988/16/6/16_6_287/_pdf/-char/ja>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、非特許文献1などの従来技術において、周囲の状況を音声で提示する場合、外来ノイズ音が気になる環境や、他の音が競合する等により音情報が欠落することを嫌う使用環境や、利用者の耳が不自由な場合などにおいて、利用することが難しいという課題がある。
【0006】
一方、非特許文献1などの従来技術において、周囲の状況を触覚で提示する場合、触覚の提示方法が直感的ではなく、周囲の状況を把握しにくいという課題がある。例えば、非特許文献1では、壁の存在を伝える振動子aと、階段の存在を伝える振動子bと、段差の存在を伝える振動子cを電子白杖のグリップ周囲に配置しているが、利用者は即時的に物体の位置関係などを直感的に把握しにくいという問題がある。
【0007】
本実施形態は、上述の実情に鑑みて提案されるものであって、視覚や聴覚で周囲の状況を伝えることが難しい場合であっても、周囲の状況を直感的に触覚で把握することができる、触覚提示装置、触覚提示方法、および、触覚提示プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本実施形態の一態様は、対象物の状態として、位置、方向、距離、速度、加速度、および、緊急性のうち少なくとも一つに関する対象物情報を取得する対象物情報取得部と、前記対象物情報に基づいて、前記対象物の状態を疑似的に、触刺激として提示する触刺激提示部と、を備えた触覚提示装置である。
【0009】
本実施形態の一態様は、対象物の状態として、位置、方向、距離、速度、加速度、および、緊急性のうち少なくとも一つに関する対象物情報を取得するステップと、前記対象物情報に基づいて、前記対象物の状態を疑似的に、触刺激として提示するステップと、を含む触覚提示方法である。
【0010】
本実施形態の一態様は、対象物の状態として、位置、方向、距離、速度、加速度、および、緊急性のうち少なくとも一つに関する対象物情報を取得するステップと、前記対象物情報に基づいて、前記対象物の状態を疑似的に、触刺激として提示するステップと、をコンピュータに実行させるための触覚提示プログラムである。
【0011】
本実施形態の一態様は、上記触覚提示装置を搭載する電子機器である。
【発明の効果】
【0012】
本実施形態によれば、視覚や聴覚で周囲の状況を伝えることが難しい場合であっても、周囲の状況を直感的に触覚で把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、
図1は、本実施形態にかかる触覚提示装置100を含む触覚提示システムの構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、本実施形態を白杖に適用した例を示す図である。
【
図3】
図3は、本実施形態を白杖に適用した例を示す図である。
【
図4】
図4は、本実施形態を白杖に適用した例を示す図である。
【
図5】
図5は、触覚素子114が配置された面を示す図である。
【
図6】
図6は、
図5よりも更に広範囲に触覚素子114を配置した例を示す図である。
【
図7】
図7は、本実施形態を車両の運転座席のシート面に適用した図である。
【
図8】
図8は、本実施形態のトランスデューサ1を示す平面図である。
【
図9】
図9は、本実施形態のトランスデューサ1を示す断面図である。
【
図10】
図10は、トランスデューサ1の基板10の主表面11における振動膜12の配置を示す平面図である。
【
図11】
図11は、触覚素子114として、電磁ソレノイドを用いた可動突起部を示す図である。
【
図12】
図12は、本実施形態の触覚提示装置100における触覚提示処理の一例を示すフローチャートである。
【
図13】
図13は、対象物の状態に応じた触刺激のパターンの例を示す図である。
【
図14】
図14は、
図13で示した振動期間中の一つの振動刺激区間(
図14の二段目の矩形)における、振動の態様を示す図である。
【
図15】
図15は、
図13で示した振動期間中の一つの振動刺激区間(
図14の二段目の矩形)における、振動の態様を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、図面を参照して、本実施形態について説明する。以下に説明する図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各構成部品の厚みと平面寸法との関係等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面の相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0015】
また、以下に示す実施形態は、技術的思想を具体化するために例示するものであって、各構成部品の材質、形状、構造、配置等を特定するものではない。実施形態は、特許請求の範囲に規定された構成に基づいて、種々の変更を加えることができる。
【0016】
以下、まず、本実施形態の構成について説明し、その後、本実施の形態の処理等について詳細に説明する。ここで、
図1は、本実施形態にかかる触覚提示装置100を含む触覚提示システムの構成の一例を示すブロック図であり、該構成のうち本実施形態に関係する部分のみを概念的に示している。
【0017】
[触覚提示装置の構成]
図1に示すように、本実施形態にかかる触覚提示装置100を含む触覚提示システムは、対象物情報取得部112と、触刺激提示部102と、触覚素子114を、有線または無線にて接続して構成される。換言すれば、触覚提示装置100は、少なくとも、対象物情報取得部112と、触刺激提示部102を備える。なお、各部は、任意の通信路を介して通信可能に接続される構成となっていてもよい。
【0018】
このうち、対象物情報取得部112は、対象物の状態として、位置、方向、距離、速度、加速度、および、緊急性のうち少なくとも一つに関する対象物情報を取得する。例えば、対象物情報取得部112は、対象物の位置、方向、距離、速度、および、加速度のうち少なくとも一つを検出(センシング)することにより対象物情報を取得するセンサ等(例:3Dカメラ、LiDAR(light detection and ranging))であってもよい。また、対象物情報取得部112は、任意の通信路を介して、対象物情報を取得してもよい。例えば、対象物情報取得部112は、車両に備えられた障害物検出システム等の外部システムから、有線または無線により、対象物情報を取得してもよい。
【0019】
また、対象物情報取得部112は、対象物の緊急性に関する対象物情報を、対象物の位置、方向、距離、速度、加速度のうち少なくとも一つから判定することにより、取得してもよい。例えば、対象物情報取得部112は、対象物の位置や距離が閾値の範囲以内であること、対象物の移動方向が利用者に向かっていること、対象物の速度や加速度が閾値以上であること等により、緊急性を判定してもよい。または、対象物情報取得部112は、車両に備えられた障害物検出システム等の外部システムから、緊急性に関する対象物情報を取得してもよい。なお、対象物の速度や加速度は、絶対速度や絶対加速度に限らず、利用者が移動中の場合などにおいて、相対速度や相対加速度であってもよい。
【0020】
また、触刺激提示部102は、対象物情報取得部112により取得された対象物情報に基づいて、対象物の状態を疑似的に、触刺激として提示する。すなわち、触刺激提示部102は、対象物の位置や、方向、距離、速度、加速度、緊急性などを、触覚の刺激でシミュレートして、利用者に提示する。本実施形態の一形態において、触覚の刺激が提示される面には、アレイ状、面状または線状に配置された、振動または圧力(電気刺激を含む)を提示する触覚素子114が備えられている。触刺激提示部102は、触覚素子114を的確に制御することにより、利用者の皮膚面の複数の触覚受容体を刺激して、対象物の位置や、方向、距離、速度、加速度、緊急性などを直感的に伝達する。
【0021】
例えば、触刺激提示部102は、触覚素子114を制御する位置により、対象物の方向または距離を疑似的に提示してもよい。具体的には、触刺激提示部102は、利用者の皮膚面において、対象物の方向または距離が表現されるように触覚受容体の位置を刺激する制御を行う。
【0022】
また、触刺激提示部102は、触覚素子114を制御する強度により、対象物の距離、緊急度、相対速度を疑似的に提示してもよい。具体的には、触刺激提示部102は、利用者の皮膚面において、対象物の距離や緊急度や相対速度が表現されるように適切な強度で触覚受容体を刺激する制御を行う。
【0023】
また、触刺激提示部102は、触覚素子114を制御する頻度により、対象物の距離、緊急度、相対速度を疑似的に提示してもよい。具体的には、触刺激提示部102は、利用者の皮膚面において、対象物の距離や緊急度や相対速度が表現されるように適切な頻度で触覚受容体を刺激する制御を行う。
【0024】
また、触刺激提示部102は、触覚素子114の制御位置を移動させることにより、距離、緊急度、相対速度を疑似的に提示してもよい。具体的には、触刺激提示部102は、利用者の皮膚面において、対象物の距離や緊急度や相対速度が表現されるように適切な位置で触覚受容体を刺激する制御を行う。
【0025】
触刺激提示部102は、以上に例示したような対象物の位置や、方向、距離、速度、加速度、緊急性などをシミュレートする制御方法を、二つ以上、任意に組み合わせて実施してもよい。
【0026】
また、触刺激提示部102は、触覚素子114が配置されたアレイまたは面もしくは線において、疑似的な利用者の位置を示す原点(図示で後述する星印)を設定し、利用者の位置に対する対象物の状態を、当該原点に対する相対的な制御位置として提示してもよい。具体的には、触刺激提示部102は、利用者の皮膚面において、仮想上の利用者の位置である原点を決め、対象物の位置や方向、距離等を、対応する利用者の皮膚面上の原点に対する位置や方向、距離等において触覚受容体が刺激されるように制御を行ってもよい。
【0027】
また、触刺激提示部102は、緊急性を提示するために、非緊急時よりも多くの触覚素子114を制御してもよい。また、触刺激提示部102は、触覚素子114の振動体を、非触刺激提示時に振動オフとし触刺激提示時に振動オンとする制御、あるいは、その逆の制御(非触刺激提示時に振動オンとし触刺激提示時に振動オフとする制御)を行ってもよい。同様に、触刺激提示部102は、触覚素子114の可動突起部を、非触刺激提示時に引き込みとし触刺激提示時に突出とする制御、あるいは、その逆の制御(非触刺激提示時に突出とし触刺激提示時に引き込みとする制御)を行ってもよい。
【0028】
ここで、触覚素子114は、触刺激提示部102による制御を受けて、振動や圧力(電気刺激を含む)などの触覚刺激を提示する部材等(アクチュエータ等)である。なお、本明細書の説明では、触覚素子114という場合、単数の素子に限定されることはなく、複数の素子をも意味する。特に、本実施形態では、触覚素子114は、アレイ状、面状または線状に複数が配置されており、振動または圧力(電気刺激を含む)を提示する。例えば、触覚素子114の振動体の一単位は、圧電体(圧電素子)の単体構造またはアレイ構造からなってもよい。また、触覚素子114の振動子は、ボイスコイル型振動子、ピエゾ素子、バイブレーションモータ等であってもよい。ここで、
図2~
図4は、触覚提示装置100を搭載した電子機器の一例である白杖を示す図である。
【0029】
図2~
図4に示すように、白杖の持ち方には複数の種類があるので、白杖の持ち方に応じて、利用者に直感的に触覚刺激が提示されるように工夫している。なお、触覚刺激が提示される触覚素子114の面(斜線部)は、手で隠れてしまう場合があるので、各図には、白杖を手で持っていない場合の図も併記している。
【0030】
図2は、スライドテクニックまたはタッチテクニックを行う場合の白杖の持ち方と、触覚素子114の位置(斜線部)を示している。
図2に示すように、この持ち方では、親指の根元側に、利用者の仮想上の原点(星印)が設定され、親指の先側が、利用者の進行方向として触刺激が表現される。
【0031】
図3および
図4は、いわゆる鉛筆持ちといわれる白杖の持ち方と、触覚素子114の位置(斜線部)を示している。
図3および
図4に示すように、親指の根元側に、利用者の仮想上の原点(星印)が設定され、親指の先側が、利用者の進行方向として触刺激が表現される。
【0032】
図5および
図6は、触覚素子114が配置された面を示す図である。小さい円で触覚素子114の一単位が図示されているが、この小さい円は一つの素子(圧電素子等)とは限らず、後述するように、複数の素子で触覚素子114の一単位を構成している場合(例:MEMS(Micro Electro Mechanical Systems))もある。
【0033】
上述のように、
図5および
図6の星印は、原点を示している。したがって、利用者の真正面から対象物が向かってきている場合、触刺激提示部102は、触覚素子114-6や触覚素子114-2等を順次制御する。同様に、利用者の左前方から対象物が向かってきている場合、触刺激提示部102は、触覚素子114-4や触覚素子114-1等を順次制御する。なお、触刺激提示部102は、原点の位置を利用者に示すために、原点の触覚素子114-0を、オンとオフを繰り返す点滅制御を行ってもよい。
【0034】
図6は、
図5よりも更に広範囲に触覚素子114を配置した例を示す図である。このように広範囲に配置することにより、より広い範囲や、遠い距離等を、触覚で表現することができる。また、速度や加速度の触覚表現も表現の自由度が広がる。例えば、利用者の右前方から対象物が向かってきている場合、触覚素子114-23,18,13,8,3を順次制御する速度および加速度を、触刺激提示部102は、よりきめ細かく表現することができる。
【0035】
ここで、
図7は、触覚提示装置100を電子機器の一例である車両(具体的には、運転座席のシート面)に搭載した図である。これにより、運転者は、臀部や太ももの触刺激によって対象物の状態を知覚することができる。ここでは、図の上側が、車両の進行方向として説明する。
図7に示すように、シート面の中央付近に原点を設定しているので、後方の対象物の状態も利用者(運転者)は把握することができ、特に、バック(後退運転)をしている際に、後方の障害物(対象物)を把握しやすいという追加の利点がある。
【0036】
ここで、
図8~
図10を用いて、上述した触覚素子114の一単位(
図5~
図7の小さい円)が、MEMSとして複数の素子で構成されている例を説明する。
【0037】
図8は、本実施形態のトランスデューサ1を示す平面図である。
図9は、本実施形態のトランスデューサ1を示す断面図である。
図9の断面図は、
図8の平面図における切断線II-IIによる切断面を示している。本実施形態のトランスデューサ1は、平坦な主表面11及び主表面11に対向する背面15を有する基板10に形成されている。基板10は、所定の厚さを有する略板状の形状のシリコン基板であり、平面視で縦方向及び横方向のサイズが略等しい略矩形状の形状を有している。なお、基板10はシリコン基板に限らず、ガラス基板、有機材料など他の種類の素材によって構成されてもよい。
【0038】
基板10の背面15には、複数の凹部16が形成されている。複数の凹部16は、主表面11から所定の深さまで達し、主表面11が基板10の厚さ方向に振動できるように所定の厚さの基板10を残すように形成されている。これらの所定の厚さの基板10が残された部分は、複数の振動膜12を形成している。複数の振動膜12は、超音波を発生するために使用されるため、その固有振動数は可聴域よりも高い振動数とされている。また、複数の振動膜12を構成する基板10はそれぞれの振動膜12の全周において主表面11が連結しているが、振動膜12が片持ち梁又は両持ち梁の構造を有するように基板10に適切なスリットが形成されてもよい。
【0039】
複数の振動膜12において、主表面11には下部電極層21及び上部電極層23の一対の電極層によって圧電体層22が挟まれて構成された駆動層20が積層されている。駆動層20は、図示しない配線層によって供給された電圧によって振動膜12が基板10の厚さ方向に振動するように駆動する圧電素子を構成している。主表面11において、複数の振動膜12は、同一の径を有する略円板状の形状を有している。複数の振動膜12に積層される駆動層20も、主表面11において、複数の振動膜12の形状にしたがい同様に略円板状の形状を有している。
【0040】
複数の振動膜12は、主表面11において、3方向について等しい間隔dで配置されている。ここで、振動膜12の間隔dとは、略円板状の形状を有する振動膜12のそれぞれの中心の間の距離をいうものとする。一般に、振動膜12の間隔dは、主表面11における振動膜12のそれぞれの重心の間の距離としてもよい。主表面11において、複数の振動膜12は、3方向について等しい間隔dで配置されているため、各振動膜12に隣接する他の振動膜12が当該振動膜12の6回回転対称な位置に配置される対称性を有している。なお、等しい間隔dとは、厳密に等しい間隔に限らず、例えば差異が±10%程度に留まるなど実質的に等しいとみなせる場合を含むものとする。
【0041】
図10は、トランスデューサ1の基板10の主表面11における振動膜12の配置を示す平面図である。主表面11の中央に配置された1個の振動膜12を中央の振動膜120ということにする。複数の振動膜12は、中央の振動膜12
0に隣接し、中央の振動膜12
0を取り囲むように中央の振動膜12
0から所定の間隔の周上に所定の間隔で配置された6個の振動膜12を有している。これら6個の振動膜12を第1周の振動膜12
1と称することにする。
【0042】
また、複数の振動膜12は、第1周の振動膜121について、それぞれ隣接する周囲の6回回転対称な位置に6個の振動膜12が配置されるように、第1周の振動膜12を取り囲むように配置された12個の振動膜12を有している。これら12個の振動膜12の内で、中央の振動膜120との間隔が相対的に小さい6個の振動膜12を第2周の振動膜122と称し、中央の振動膜120との間隔が相対的に大きい6個の振動膜12を第3周の振動膜123と称することにする。
【0043】
第2周の振動膜122は、第1周の振動膜121を取り囲むように中央の振動膜120から所定の間隔の周上に所定の間隔で配置されている。第3周の振動膜123は、第2周の振動膜122を取り囲むように中央の振動膜120から所定の間隔の周上に所定の間隔で配置されている。主表面11の大部分は、中央の振動膜120、第1周の振動膜121、第2周の振動膜122及び第3周の振動膜123によって占められている。
【0044】
平面視で略矩形状の形状を有する主表面11の4個の頂点に近く振動膜12が配置されていない部分には、それぞれ主表面11の縦方向に延びる一対の辺に沿って複数の電極パッド14が形成されている。これら複数の電極パッド14からは、複数の振動膜12をそれぞれ駆動する複数の駆動層20に電圧を供給できるように、駆動層20の下部電極層21及び上部電極層23の一対の電極層にそれぞれ図示しない配線が接続されている。これらの複数の電極パッド14からは、複数の駆動層20に向けて共通の配線が接続されている。
【0045】
なお、一対の電極パッド14から複数の駆動層20に向かう配線の接続はこれに限らず、主表面11に形成された複数の振動膜12の一部が個別に制御されるように独立に接続されてもよい。例えば、主表面11に配置された中央の振動膜120、第1周の振動膜121、第2周の振動膜122及び第3周の振動膜122のそれぞれについて振動膜12を駆動する駆動層20に向けた配線が共通とされ、中央の振動膜120、第1周の振動膜121、第2周の振動膜122及び第3周の振動膜122のそれぞれを独立して駆動できるように接続されてもよい。また、主表面11に配置された複数の振動膜12について振動膜12を駆動する駆動層20に向けた配線がそれぞれ独立し、振動膜12を個別に駆動できるように接続されてもよい。主表面11に形成された複数の振動膜12の少なくとも一部を独立して制御することにより、例えば異なる位相で発生した音波が互いに干渉するなど様々な機能を提供することができる。
【0046】
本実施形態のトランスデューサ1においては、主表面11において同一の径を有する略円板状の形状の振動膜12が3方向に等しい間隔dで配置されるようにすることにより、主表面11の大部分が複数の振動膜12によって占められる。このような配置により、振動膜12は隣接する他の振動膜が6回回転対称な位置に配置されるようになり、高い密度で配置することができる。したがって、主表面11の大部分が振動膜12として有効に利用されるようになり、トランスデューサ1は触覚素子として使用するために十分な振動を発生することができる。また、本実施形態のトランスデューサ1は、半導体製造技術を応用したMEMS技術を用いて製造されるため、一度に複数の個片を高い精度で作製することができる。
【0047】
なお、本実施形態のトランスデューサ1においては、主表面11における複数の振動膜12について3方向に等しい間隔で配置されるとしたが、これに限らず、複数の振動膜12は2方向に等しい間隔で配置されてもよい。このような場合にも、主表面11において複数の振動膜12の密度を確保することができ、主表面11の大部分に複数の振動膜12を形成することができる。
【0048】
また、本実施形態のトランスデューサ1においては、複数の振動膜12が、中央の振動膜120、第1周の振動膜121、第2周の振動膜122及び第3周の振動膜123から構成されるとしたが、これに限定されず、複数の振動膜12は、中央の振動膜120から所望の周の振動膜12までで構成されてもよい。一つの周(第n周:n=1,2,3・・・)を構成する振動膜12に隣接して次の周(第n+1)を構成する振動膜12を配置することを繰り返すことにより所望の周の振動膜12までを配置することができる。
【0049】
なお、本実施形態において、主表面11に配置された複数の振動膜12は同一の径を有する略円板状の形状を有するとしたが、これに限られない。例えば、複数の振動膜12は同一の所定の形状を有していてもよいし、少なくとも一部が同一の形状を有していてもよいし、すべてが異なる形状を有していてもよい。また、例えば、中央の振動膜120、第1周の振動膜121、第2周の振動膜122及び第3周の振動膜123のように、それぞれの周を構成する振動膜12がそれぞれ同一の形状を有していてもよい。例えば、中央の振動膜120、第1周の振動膜121、第2周の振動膜122及び第3周の振動膜123はそれぞれ径が異なる略円板状の形状を有していてもよい。なお、複数の駆動層20は、複数の振動膜12に積層されるため、積層する複数の振動膜12のそれぞれと同一の形状であってもよい。
【0050】
以上のように、触覚素子114の一単位(
図5~
図7の小さい円)が、MEMSとして複数の素子で構成されていることで、さまざまな機能が得られる。例えば、主表面11に形成された複数の振動膜12の少なくとも一部を独立して制御することにより、例えば異なる位相で発生した音波が互いに干渉するなど様々な機能を提供することができる。例えば、振動時に、周囲部(12
2、12
1)よりも中心部(12
0)の振動波形の位相を遅らせることで、中心部に発出する超音波を集中させ、ビームフォーミングを形成させることができ、強い触覚刺激を提示することが可能となる。また、波の干渉波の向きが変えられるのと同様の原理で、駆動波の位相関係を調整することで、超音波を集中させる場所を移動させる制御も可能となる。例えば、超音波を集中させる場所をぐるぐると移動させることにより、より触覚に訴える刺激を提示することができる。
【0051】
ここで、上述の例では主に触覚素子114が振動体である場合を例に説明したが、電磁ソレノイド等を用いた可動突起部であってもよい。
図11は、触覚素子114として、電磁ソレノイドを用いた可動突起部を示す図である。
【0052】
図11に示すように、固定鉄芯114eと可動鉄芯114bを設け、コイル114dに電流を流すと磁界が発生するので、可動鉄芯114bが固定鉄芯114eへ吸引され、可動突起部114aは引き込まれる。通電を遮断すると、戻しばね114cの力(負荷)によって、可動鉄芯114bは元の位置に戻り、可動突起部114aは突出することになる。これが直線作動(リニア)の電磁ソレノイドの作動原理である。
【0053】
以上で、本実施形態の触覚提示装置100の各構成の説明を終える。
【0054】
[触覚提示装置100の処理]
次に、このように構成された本実施形態における触覚提示装置100の処理の一例について、以下に
図12~
図15を参照して詳細に説明する。
図12は、本実施形態の触覚提示装置100における触覚提示処理の一例を示すフローチャートである。
【0055】
図12に示すように、まず、触覚提示装置100の対象物情報取得部112は、対象物の状態として、位置、方向、距離、速度、加速度、および、緊急性のうち少なくとも一つに関する対象物情報を取得する(ステップSA-1)。例えば、対象物情報取得部112は、LiDAR等のセンサにより、対象物の位置、方向、距離、速度、加速度を検出してもよく、取得した対象物の状態(速度や方向等)により緊急性を判定することにより、対象物情報を取得してもよい。
【0056】
そして、触刺激提示部102は、対象物情報取得部112により取得された対象物情報に基づいて、対象物の状態が疑似的に触刺激として提示されるように触覚素子114を制御する信号(電気信号等)を伝達する(ステップSA-2)。
【0057】
そして、触覚素子114は、触刺激提示部102から伝達された信号に従って駆動することにより、対象物の状態が疑似的に触刺激として提示される(ステップSA-3)。
【0058】
ここで、
図13は、対象物の状態に応じた触刺激のパターンの例を示す図である。図の横軸が時間軸であり、縦軸が振動の大きさを表す。
図13に示すように、対象物の位置が利用者より遠い場合や、安全な速度などの場合、触刺激提示部102は、比較的、振動周期をゆっくりとした、比較的小さな振動刺激を提示する(パターンA)。
【0059】
一方、対象物の位置が利用者に近い場合や、危険な速度など緊急性が高い場合、触刺激提示部102は、比較的大きな振動刺激を提示するパターンBや、比較的に振動周期(頻度)を増加したパターンCで、触刺激を提示する。
【0060】
ここで、
図14および
図15は、
図13で示した振動期間中の一つの振動刺激区間(
図14の二段目の矩形)における、振動の態様を示す図である。
図14に示すように、一つの振動刺激区間において、触刺激提示部102は、連続波で提示してもよく、変調波で提示してもよく、断続波で提示してもよい。また、
図15に示すように、可動突起部のような圧力刺激の場合も、触刺激提示部102は、連続波で提示してもよく、変調波で提示してもよく、断続波で提示してもよい。なお、これらの刺激パターンは、人によって感受しやすい刺激の形や、強さがあるので、触覚提示装置100の触刺激提示部102は、その調整や選択が可能となるように構成されてもよい。
【0061】
以上が、触覚提示装置100の処理の一例である。
【0062】
本実施形態の具体的な触覚提示装置及び触覚提示方法は、以下の通りである。
【0063】
<1> 対象物の状態として、位置、方向、距離、速度、加速度、および、緊急性のうち少なくとも一つに関する対象物情報を取得する対象物情報取得部と、前記対象物情報に基づいて、前記対象物の状態を疑似的に、触刺激として提示する触刺激提示部と、を備えた触覚提示装置。
【0064】
<1>によれば、視覚や聴覚で周囲の状況を伝えることが難しい場合であっても、周囲の状況を直感的に触覚で把握することができる。
【0065】
<2> 前記触刺激提示部は、アレイ状、面状または線状に配置された、振動または圧力を提示する触覚素子を制御することにより、前記対象物の状態を疑似的に、振動感覚または圧覚の触刺激として提示する、<1>に記載の触覚提示装置。
【0066】
<2>によれば、アレイ状、面状または線状に配置された素子を用いて、きめ細かな触刺激を再現することができる。
【0067】
<3> 前記触刺激提示部は、前記触覚素子を制御する位置により、前記対象物の方向または距離を疑似的に提示する、<2>に記載の触覚提示装置。
【0068】
<3>によれば、利用者は、触覚受容体を介して、対象物の方向または距離を直感的に知覚することができる。
【0069】
<4> 前記触刺激提示部は、前記触覚素子を制御する強度により、前記対象物の距離、緊急度、相対速度を疑似的に提示する、<2>に記載の触覚提示装置。
【0070】
<4>によれば、利用者は、触覚受容体を介して、対象物の距離や緊急度や相対速度を直感的に知覚することができる。
【0071】
<5> 前記触刺激提示部は、前記触覚素子を制御する頻度により、前記対象物の距離、緊急度、相対速度を疑似的に提示する、<2>に記載の触覚提示装置。
【0072】
<5>によれば、利用者は、触覚受容体を介して、対象物の距離や緊急度や相対速度を直感的に知覚することができる。
【0073】
<6> 前記触刺激提示部は、前記触覚素子の制御位置を移動させることにより、距離、緊急度、相対速度を疑似的に提示する、<2>に記載の触覚提示装置。
【0074】
<6>によれば、利用者は、触覚受容体の刺激位置を介して、対象物の距離や緊急度や相対速度を直感的に知覚することができる。
【0075】
<7> <3>乃至<6>のいずれか一つに記載の触覚提示装置の前記触刺激提示部のうち少なくとも二つを組み合わせた、触覚提示装置。
【0076】
<7>によれば、きめ細かな触覚提示を行うことができる。
【0077】
<8> 前記触刺激提示部は、前記触覚素子が配置されたアレイまたは面もしくは線において、疑似的な利用者の位置を示す原点を設定し、利用者の位置に対する対象物の状態を、当該原点に対する相対的な制御位置として提示する、<2>乃至<7>のいずれか一つに記載の触覚提示装置。
【0078】
<8>によれば、利用者は、原点に対する触覚受容体の刺激位置を介して、対象物の距離や方向等を直感的に知覚することができる。
【0079】
<9> 前記触刺激提示部は、緊急性を提示するために、非緊急時よりも多くの前記触覚素子を制御する、<2>乃至<8>のいずれか一つに記載の触覚提示装置。
【0080】
<9>によれば、利用者は、触覚受容体の刺激範囲を介して、対象物の緊急度を直感的に知覚することができる。
【0081】
<10> 前記触覚素子の振動体の一単位は、圧電体の単体構造またはアレイ構造を有する、<2>乃至<9>のいずれか一つに記載の触覚提示装置。
【0082】
<10>によれば、一または複数の圧電素子等を用いて、様々な強度の触覚刺激を提示することができる。
【0083】
<11> 前記触刺激提示部は、前記触覚素子の振動体を、非触刺激提示時に振動オフとし触刺激提示時に振動オンとする制御、あるいは、非触刺激提示時に振動オンとし触刺激提示時に振動オフとする制御を行う、<2>乃至<10>のいずれか一つに記載の触覚提示装置。
【0084】
<11>によれば、利用者は、触覚受容体の刺激有無を介して、対象物の状態を直感的に知覚することができる。
【0085】
<12> 前記触覚素子は、電磁ソレノイドを用いた可動突起部である、<2>乃至<11>のいずれか一つに記載の触覚提示装置。
【0086】
<12>によれば、触覚受容体に対する圧力刺激を提示することができる。
【0087】
<13> 前記触刺激提示部は、前記可動突起部を、非触刺激提示時に引き込みとし触刺激提示時に突出とする制御、あるいは、非触刺激提示時に突出とし触刺激提示時に引き込みとする制御を行う、<12>に記載の触覚提示装置。
【0088】
<13>によれば、利用者は、触覚受容体の刺激有無を介して、対象物の距離や緊急度や相対速度を直感的に知覚することができる。
【0089】
<14> 前記触刺激提示部は、前記アレイ構造の振動時に、周囲部よりも中心部の振動波形の位相を遅らせることで、中心部に発出する超音波を集中させるように制御する、<10>に記載の触覚提示装置。
【0090】
<14>によれば、ビームフォーミングの原理により、強度の高い触覚刺激を提示することができる。
【0091】
<15> 前記触刺激提示部は、駆動波の位相関係を調整することで、超音波を集中させる場所を移動させる、<1>乃至<14>のいずれか一つに記載の触覚提示装置。
【0092】
<15>によれば、刺激位置を順次移動させる等により、知覚しやすい触覚刺激を提示することができる。
【0093】
<16>対象物の状態として、位置、方向、距離、速度、加速度、および、緊急性のうち少なくとも一つに関する対象物情報を取得するステップと、前記対象物情報に基づいて、前記対象物の状態を疑似的に、触刺激として提示するステップと、を含む触覚提示方法。
【0094】
<16>によれば、視覚や聴覚で周囲の状況を伝えることが難しい場合であっても、周囲の状況を直感的に触覚で把握することができる。
【0095】
[他の実施形態]
さて、これまで本実施形態について説明したが、本発明は、上述した実施形態以外にも、特許請求の範囲に記載した技術的思想の範囲内において種々の異なる実施形態にて実施されてよいものである。
【0096】
例えば、触覚提示装置100は、スタンドアローンの形態で処理を行うよう一体として構成されてもよく、あるいは、要求に応じて処理を行い、その処理結果を当該端末に返却する構成としてもよい。
【0097】
また、実施形態において説明した各処理のうち、自動的に行われるものとして説明した処理の全部または一部を手動的に行うこともでき、あるいは、手動的に行われるものとして説明した処理の全部または一部を公知の方法で自動的に行うこともできる。
【0098】
このほか、上記文献中や図面中で示した処理手順、制御手順、具体的名称、各処理の登録データや検索条件等のパラメータを含む情報、画面例、データベース構成については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。
【0099】
また、触覚提示装置100に関して、図示の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。
【0100】
例えば、触覚提示装置100の各装置が備える処理機能、特に触刺激提示部102にて行われる各処理機能については、その全部または任意の一部を、CPU(Central Processing Unit)および当該CPUにて解釈実行されるプログラムにて実現してもよく、また、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現してもよい。尚、プログラムは、後述する、コンピュータに本実施形態に係る方法を実行させるためのプログラム化された命令を含む、一時的でないコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されており、必要に応じて触覚提示装置100に機械的に読み取られる。すなわち、ROMまたはHDD(Hard Disk Drive)などの記憶部などには、OS(Operating System)と協働してCPUに命令を与え、各種処理を行うためのコンピュータプログラムが記録されている。このコンピュータプログラムは、RAMにロードされることによって実行され、CPUと協働して制御部を構成する。
【0101】
また、このコンピュータプログラムは、触覚提示装置100に対して任意のネットワークを介して接続されたアプリケーションプログラムサーバに記憶されていてもよく、必要に応じてその全部または一部をダウンロードすることも可能である。
【0102】
また、本実施形態に係るプログラムを、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納してもよく、また、プログラム製品として構成することもできる。ここで、この「記録媒体」とは、メモリーカード、USBメモリ、SDカード、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、EPROM、EEPROM、CD-ROM、MO、DVD、および、Blu-ray(登録商標)Disc等の任意の「可搬用の物理媒体」を含むものとする。
【0103】
また、「プログラム」とは、任意の言語や記述方法にて記述されたデータ処理方法であり、ソースコードやバイナリコード等の形式を問わない。なお、「プログラム」は必ずしも単一的に構成されるものに限られず、複数のモジュールやライブラリとして分散構成されるものや、OS(Operating System)に代表される別個のプログラムと協働してその機能を達成するものをも含む。なお、実施の形態に示した各装置において記録媒体を読み取るための具体的な構成、読み取り手順、あるいは、読み取り後のインストール手順等については、周知の構成や手順を用いることができる。プログラムが、一時的でないコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されたプログラム製品として本実施形態を構成してもよい。
【0104】
触覚提示装置100に格納される各種のデータベース等は、RAM、ROM等のメモリ装置、ハードディスク等の固定ディスク装置、フレキシブルディスク、および、光ディスク等のストレージ手段であり、各種処理やウェブサイト提供に用いる各種のプログラム、テーブル、データベース、および、ウェブページ用ファイル等を格納する。
【0105】
また、触覚提示装置100は、既知のパーソナルコンピュータ、ワークステーション等の情報処理装置として構成してもよく、また、該情報処理装置に任意の周辺装置を接続して構成してもよい。また、触覚提示装置100は、該情報処理装置に本実施形態の方法を実現させるソフトウェア(プログラム、データ等を含む)を実装することにより実現してもよい。
【0106】
本実施形態の具体的な触覚提示プログラムは、以下の通りである。
【0107】
<17> 対象物の状態として、位置、方向、距離、速度、加速度、および、緊急性のうち少なくとも一つに関する対象物情報を取得するステップと、前記対象物情報に基づいて、前記対象物の状態を疑似的に、触刺激として提示するステップと、をコンピュータに実行させるための触覚提示プログラム。
【0108】
<17>によれば、視覚や聴覚で周囲の状況を伝えることが難しい場合であっても、周囲の状況を直感的に触覚で把握することができる。
【0109】
また、本実施形態の具体的な電子機器は、以下の通りである。
【0110】
<18> <1>乃至<15>のいずれか一つに記載の触覚提示装置を搭載する電子機器。
【0111】
<18>によれば、視覚や聴覚で周囲の状況を伝えることが難しい場合であっても、周囲の状況を直感的に触覚で把握することができる。
【0112】
更に、装置の分散・統合の具体的形態は図示するものに限られず、その全部または一部を、各種の付加等に応じて、または、機能負荷に応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。すなわち、上述した実施形態を任意に組み合わせて実施してもよく、実施形態を選択的に実施してもよい。
【0113】
上述のように、本実施形態について記載したが、開示の一部をなす論述及び図面は例示的なものであり、限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替の実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【符号の説明】
【0114】
1 トランスデューサ
10 基板
11 主表面
12 振動膜
120 中央の振動膜
121 第1周の振動膜、第1列の振動膜
122 第2周の振動膜、第2列の振動膜
14 電極パッド
15 背面
16 凹部
100 触覚提示装置
102 触刺激提示部
112 対象物情報取得部
114 触覚素子
114a 可動突起部
114b 可動鉄芯
114c 戻しばね
114d コイル
114e 固定鉄芯