(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173119
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/60 20060101AFI20231130BHJP
H01L 25/07 20060101ALI20231130BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
H01L21/60 311Q
H01L25/08 B
H01L21/304 647A
H01L21/304 642
H01L21/304 621D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022085137
(22)【出願日】2022-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(71)【出願人】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(72)【発明者】
【氏名】白坂 敏明
(72)【発明者】
【氏名】奥田 唯史
(72)【発明者】
【氏名】柴田 智章
(72)【発明者】
【氏名】福住 志津
(72)【発明者】
【氏名】福島 誉史
(72)【発明者】
【氏名】ムルゲサン マリアッパン
(72)【発明者】
【氏名】小柳 光正
【テーマコード(参考)】
5F044
5F057
5F157
【Fターム(参考)】
5F044KK05
5F044LL00
5F044QQ03
5F044QQ04
5F044RR02
5F057AA03
5F057AA21
5F057CA34
5F057DA03
5F057DA38
5F057EC30
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5F057GB16
5F157AA77
5F157AA99
5F157BC54
5F157BE12
5F157BF12
5F157BF52
5F157BF58
5F157BF59
5F157CD04
5F157CD31
5F157DB03
5F157DB18
(57)【要約】
【課題】ハイブリッドボンディングにおいて有機絶縁膜同士の接合強度を高めることができる半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】半導体装置の製造方法は、第1半導体基板の第1有機絶縁膜及び第1電極の表面を研磨する工程と、第2半導体基板の第2有機絶縁膜及び第2電極の表面を研磨する工程と、第2半導体基板を個片化し、第2有機絶縁膜に対応する絶縁膜部分と第2電極とを備えた複数の半導体チップを取得する工程と、複数の半導体チップの表面を洗浄する工程と、第1有機絶縁膜と絶縁膜部分とを互いに接合する工程と、第1電極と第2電極とを接合する工程と、を備える。第1及び第2有機絶縁膜は、ガラス転移温度が250℃以上の樹脂材料から形成される。洗浄する工程では、洗浄後の半導体チップにおける絶縁膜部分の表面の表面粗さRaが1nm以下を維持するように、クエン酸またはアスコルビン酸を含む酸性水溶液で洗浄する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基板本体と、該第1基板本体の一面に設けられた第1有機絶縁膜及び第1電極とを有する第1半導体基板を準備する工程と、
第2基板本体と、該第2基板本体の一面に設けられた第2有機絶縁膜及び複数の第2電極とを有する第2半導体基板を準備する工程と、
前記第1半導体基板の前記一面側に配置されている前記第1有機絶縁膜及び前記第1電極の表面を研磨する工程と、
前記第2半導体基板の前記一面側に配置されている前記第2有機絶縁膜及び前記第2電極の表面を研磨する工程と、
研磨された前記第2半導体基板を個片化し、前記第2有機絶縁膜に対応する絶縁膜部分と少なくとも1つの前記第2電極とをそれぞれが備えた複数の半導体チップを取得する工程と、
前記複数の半導体チップの表面を洗浄する工程と、
前記第1半導体基板の前記第1電極に対して前記複数の半導体チップの内の少なくとも1つの半導体チップの前記第2電極の位置合わせを行う工程と、
前記第1半導体基板の前記第1有機絶縁膜と前記半導体チップの前記絶縁膜部分とを互いに接合する工程と、
前記第1半導体基板の前記第1電極と前記半導体チップの前記第2電極とを接合する工程と、を備え、
前記第1有機絶縁膜及び前記第2有機絶縁膜は、ガラス転移温度が250℃以上の樹脂材料から形成され、
前記洗浄する工程では、該洗浄後の前記複数の半導体チップにおける前記絶縁膜部分の表面の表面粗さRaが1nm以下を維持するように、クエン酸またはアスコルビン酸を含む酸性水溶液で前記複数の半導体チップの表面を洗浄する、半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記洗浄する工程では、前記複数の半導体チップの表面を前記酸性水溶液に所定時間浸すことで行われる、
請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記所定時間は1分間以内である、
請求項2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記第2有機絶縁膜に含まれる樹脂材料は、ビスマレイミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ベンゾシクロブテン(BCB)、又は、ポリベンゾオキサゾール(PBO)を含む、
請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記第2半導体基板を研磨する工程では、前記第2有機絶縁膜及び前記第2電極の表面の表面粗さRaが1nm以下となるように研磨する、
請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、LSIの集積度を向上させるために三次元実装が検討されている。非特許文献1には、半導体チップの三次元実装の一例が開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】F.C. Chen et al., “System onIntegrated Chips(SoIC TM) for 3D Heterogeneous Integration”, 2019 IEEE 69thElectronic Components and Technology Conference (ECTC), p.594-599(2019)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
半導体チップの三次元実装を行う場合、配線の微細化のため、Wafer-to-Wafer(W2W)接合に用いられるハイブリッドボンディング技術を使うことが検討されている。しかしながら、この場合、W2Wプロセスと異なり、Chip-on-Wafer(CoW)プロセスが用いられ、半導体チップへの個片化が行われる。個片化の際のダイシングにより、デブリ(切断破片)が発生することがある。デブリが半導体チップ等の接合界面(ハイブリッドボンディングの絶縁膜)に付着すると、製造される半導体装置において接合不良が生じ得る。そこで、このようなデブリを吸収できるように、接合界面側の絶縁膜に有機絶縁材料を用いることが検討されている。一方、ハイブリッドボンディング製法では、電極同士を接合する前に電極表面の酸化物をプラズマ処理等により除去することが行われている。しかしながら、プラズマ処理等を用いると有機絶縁膜の表面を荒らしてしまい、絶縁膜同士の接合が不十分となる虞がある。
【0005】
本開示は、有機絶縁膜を用いたハイブリッドボンディング製法において、電極同士の接続抵抗を下げると共に有機絶縁膜同士の接合強度を高めることができる半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、半導体装置の製造方法に関する。この半導体装置の製造方法は、第1基板本体と、該第1基板本体の一面に設けられた第1有機絶縁膜及び第1電極とを有する第1半導体基板を準備する工程と、第2基板本体と、該第2基板本体の一面に設けられた第2有機絶縁膜及び複数の第2電極とを有する第2半導体基板を準備する工程と、第1半導体基板の一面側に配置されている第1有機絶縁膜及び第1電極の表面を研磨する工程と、第2半導体基板の一面側に配置されている第2有機絶縁膜及び第2電極の表面を研磨する工程と、研磨された第2半導体基板を個片化し、第2有機絶縁膜に対応する絶縁膜部分と少なくとも1つの第2電極とをそれぞれが備えた複数の半導体チップを取得する工程と、複数の半導体チップの表面を洗浄する工程と、第1半導体基板の第1電極に対して複数の半導体チップの内の少なくとも1つの半導体チップの第2電極の位置合わせを行う工程と、第1半導体基板の第1有機絶縁膜と半導体チップの絶縁膜部分とを互いに接合する工程と、第1半導体基板の第1電極と半導体チップの第2電極とを接合する工程と、を備える。第1有機絶縁膜及び第2有機絶縁膜は、ガラス転移温度が250℃以上の樹脂材料から形成される。洗浄する工程では、該洗浄後の複数の半導体チップにおける絶縁膜部分の表面の表面粗さRaが1nm以下を維持するように、クエン酸またはアスコルビン酸を含む酸性水溶液で前記複数の半導体チップの表面を洗浄する。
【0007】
この半導体装置の製造方法では、表面が研磨された第2半導体基板を個片化して複数の半導体チップとした後に、複数の半導体チップの表面、即ち、第2有機絶縁膜に対応する絶縁膜部分と第2電極の表面を洗浄している。しかも、この洗浄では、絶縁膜部分の表面の表面粗さRaが1nm以下を維持するように、クエン酸またはアスコルビン酸を含む酸性水溶液で複数の半導体チップの表面を洗浄している。本発明者らの知見によれば、クエン酸またはアスコルビン酸といった酸解離定数(pka)が高い材料を用いることで、第2電極の表面の酸化物を適切に除去して電極同士の電気的な接続を向上することができる一方、クエン酸またはアスコルビン酸といった材料によれば、絶縁膜部分(第2有機絶縁膜)の表面を研磨後の表面粗さ状態から悪化させないようにできることが分かってきている。このように、この半導体装置の製造方法によれば、ハイブリッドボンディング製法において電極同士の接続抵抗を下げると共に、有機絶縁膜同士の接合強度を高めることができる。なお、ここで用いる表面粗さRaは、JIS B 0601-2001で規定される算術平均粗さ(Ra)である。
【0008】
上記の半導体装置の製造方法において、洗浄する工程では、複数の半導体チップの表面を上記の酸性水溶液に所定時間浸すことで行われることが好ましい。この場合、第2電極の表面における酸化物を容易に除去することができる。この場合において、酸性水溶液へ浸す所定時間は1分間以内であることが好ましい。これにより、複数の半導体チップの第2電極の表面の酸化物をより確実に除去することができると共に、絶縁膜部分(第2有機絶縁膜)の表面を必要以上に荒らさないようにすることができる。よって、この方法によれば、ハイブリッドボンディング製法において電極同士の接続抵抗を下げると共に、有機絶縁膜同士の接合強度を高めることができる。
【0009】
上記の半導体装置の製造方法において、第2有機絶縁膜に含まれる樹脂材料は、ビスマレイミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ベンゾシクロブテン(BCB)、又は、ポリベンゾオキサゾール(PBO)を含むことが好ましい。この場合、ハイブリッドボンディング製法において第1電極と第2電極とを接合する際に加熱温度が高くなったとしても、絶縁膜部分(第2有機絶縁膜)が軟化等して第1電極と第2電極との接合を阻害してしまうことを抑制できる。
【0010】
上記の半導体装置の製造方法において、第2半導体基板を研磨する工程では、第2有機絶縁膜及び第2電極の表面の表面粗さRaが1nm以下となるように研磨することが好ましい。第2電極の表面粗さRaが1nm以下になるように研磨されていることにより、第1電極と第2電極との接合をより確実に行って、電極同士の接続抵抗をより確実に下げることが可能となる。また、絶縁膜部分(第2有機絶縁膜)の表面粗さRaが1nm以下に研磨されていることにより、酸性水溶液で洗浄されたとしても、絶縁膜部分の表面粗さRaをそれほど荒らさなくても済み、第1有機絶縁膜との接合をより確実に行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、有機絶縁膜を用いたハイブリッドボンディング製法において、電極同士の接続抵抗を下げると共に有機絶縁膜同士の接合強度を高めることができる半導体装置の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本開示の一実施形態に係る半導体装置の製造方法によって製造される半導体装置(CoW)の一例を模式的に示す断面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す半導体装置を製造する方法を順に示す模式的な断面図である。
【
図3】
図3は、
図1に示す半導体装置を製造する方法を順に示す模式的な断面図であり、
図2に示す工程の後の製造プロセスを示す。
【
図4】
図4は、実施例2として用いる第2テストウェハの製造方法を順に示す断面図である。
【
図5】
図5は、実施例1等において研磨された電極表面及び絶縁膜表面の一例を示す断面図である。
【
図6】
図6は、
図5に示す電極表面及び絶縁膜表面の表面粗さのウェハ中心からの距離毎の分布を示す図であり、(a)は電極表面の表面粗さ分布を示し、(b)は絶縁膜表面の表面粗さ分布を示す。
【
図7】
図7は、実施例1等における酸洗浄による電極表面上の酸化物の変化状況を示す図である。
【
図8】
図8は、アスコルビン酸、クエン酸、硫酸を用いた酸洗浄による電極(Cu)及び絶縁膜(PI:ポリイミド)の表面粗さの変化状況を示す図である。
【
図9】
図9は、第1テストウェハにおける第1電極と第2電極との接合の状態を示す図である。
【
図10】
図10は、第2テストウェハにおける第1電極と第2電極との接合及び有機絶縁膜同士の接合の状態を示す図である。
【
図11】
図11は、アスコルビン酸及びクエン酸での酸洗浄を行った場合の電極同士の接続抵抗の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、必要により図面を参照しながら本開示のいくつかの実施形態について詳細に説明する。以下の説明では、同一又は相当部分には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。本明細書の記載及び請求項において「左」、「右」、「正面」、「裏面」、「上」、「下」、「上方」、「下方」等の用語が利用されている場合、これらは、説明を意図したものであり、必ずしも永久にこの相対位置である、という意味ではない。更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0014】
本明細書において「層」との語は、平面図として観察したときに、全面に形成されている形状の構造に加え、一部に形成されている形状の構造も包含される。また、本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。また、「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
【0015】
(半導体装置の構成)
図1は、一実施形態に係る半導体装置の製造方法によって製造される半導体装置の一例を模式的に示す断面図である。
図1に示すように、半導体装置1は、例えば半導体パッケージの一例であり、第1半導体基板10と複数の半導体チップ20とを備えており、Chip-on-wafer(CoW)構造を有している。複数の半導体チップ20は、後述する第2半導体基板200A(
図2の(f)を参照)をダイシングにより個片化することで作製される。複数の半導体チップ20が第1半導体基板10上に実装されて三次元実装構造となる。第1半導体基板10は、例えばLSI(Large scale Integrated Circuit:大規模集積回路)チップ又はCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサ等の複数の半導体チップが各半導体チップ20に対応する箇所に形成された基板であってもよいが、これらに限定されない。各半導体チップ20は、例えばLSI又はメモリ等の半導体チップであってもよいが、これらに限定されない。第1半導体基板10と複数の半導体チップ20とは、後述する有機絶縁膜を用いたハイブリッドボンディング製法により、それぞれの端子電極とその周りの有機絶縁膜同士が強固且つ位置ズレせずに微細接合されている。なお、半導体装置1は、
図1に示す構成から更に個片化された1の半導体チップ20と、1の半導体チップ20に対応する第1半導体基板10の一部である基板部分とを備える、個別の半導体装置1Aに更に個片化されてもよい(
図3の(d)を参照)。
【0016】
(半導体装置の製造方法)
次に、半導体装置1の製造方法について、
図2及び
図3を参照して、説明する。
図2は、
図1に示す半導体装置を製造するための方法を順に示す模式的な断面図である。
図3は、
図1に示す半導体装置を製造するための方法を順に示す模式的な断面図であり、
図2に示す工程の後に行われる工程を示す模式図である。
【0017】
半導体装置1は、例えば、以下の工程(a)~工程(h)を経て製造することができる。
(a)第1基板本体と、該第1基板本体の一面に設けられた第1有機絶縁膜及び第1電極とを有する第1半導体基板を準備する工程。
(b)第2基板本体と、該第2基板本体の一面に設けられた第2有機絶縁膜及び複数の第2電極とを有する第2半導体基板を準備する工程。
(c)前記第1半導体基板の前記一面側に配置されている前記第1有機絶縁膜及び前記第1電極の表面を研磨する工程。
(d)前記第2半導体基板の前記一面側に配置されている前記第2有機絶縁膜及び前記第2電極の表面を研磨する工程。
(e)研磨された前記第2半導体基板を個片化し、前記第2有機絶縁膜に対応する絶縁膜部分と少なくとも1つの前記第2電極とをそれぞれが備えた複数の半導体チップを取得する工程。
(f)前記複数の半導体チップの表面を洗浄する工程。
(g)前記第1半導体基板の前記第1電極に対して前記複数の半導体チップの内の少なくとも1つの半導体チップの前記第2電極の位置合わせを行う工程。
(h)前記第1半導体基板の前記第1有機絶縁膜と前記半導体チップの前記絶縁膜部分とを互いに接合する工程。
(i)前記第1半導体基板の前記第1電極と前記半導体チップの前記第2電極とを接合する工程。
【0018】
[工程(a)]
工程(a)は、半導体素子及びそれらを接続する配線などからなる集積回路が形成されたシリコン基板である第1半導体基板を準備する工程である。工程(a)では、
図2の(a)に示すように、シリコン等からなる第1基板本体101の一面101aに、メッキ下地層102を形成すると共に、メッキ下地層102の上にドライフィルムレジスト(DFR)を用いて、所定パターンの複数の開口103aを有するレジスト層103を形成する。メッキ下地層102は、例えば、Ti/Cu膜であり、複数の開口103aに露出する。レジスト層103が形成されると、
図2の(b)に示すように、各開口103a内に電気メッキにより銅を析出させて第1電極104を形成する。第1電極104は、銅以外の材料から形成されてもよい。その後、
図2の(c)に示すように、レジスト層103を除去する。これにより、複数の第1電極104の間に空隙104aが形成される。
【0019】
続いて、絶縁膜に用いられる有機絶縁材料を準備する。ここで用いられる有機絶縁材料としては、例えば、ポリイミドであり、硬化した後のガラス転移温度Tgが250℃以上の樹脂材料である。有機絶縁材料は、ポリイミド以外としては、例えば、ビスマレイミド、ポリアミドイミド、ベンゾシクロブテン(BCB)、又は、ポリベンゾオキサゾール(PBO)等を用いることができる。これら有機絶縁材料は、例えば、酸化シリコン(SiO2)等の無機材料に比べて低い弾性率を有しており、柔らかい材料である。このような有機材料を用いることにより、後述する工程(h)で有機絶縁膜同士を貼り合わせる際、絶縁膜上に微細なデブリがあっても有機絶縁膜内に吸収してデブリによる接合不良を防止し、有機絶縁膜同士の貼り合わせを確実に行うことが可能となる。有機絶縁材料は、液状又は溶媒に可溶なものとして準備される。
【0020】
液状の有機絶縁材料が準備されると、
図2の(d)に示すように、第1基板本体101の一面101a上に有機絶縁材料105をスピンコートにより塗布する。これにより、複数の第1電極104の全体を有機絶縁材料105が覆うようになる。有機絶縁材料105が塗布されると、
図1の(e)に示すように、有機絶縁材料105を含む半製品を所定時間(例えば2時間)、高温(例えば350℃以上)で加熱して、有機絶縁材料105を硬化させる。これにより、有機絶縁材料105が硬化して、第1絶縁膜105Aが形成される。以上により、第1半導体基板100が形成される。
【0021】
[工程(b)]
工程(b)は、工程(a)と同様のプロセスであり、半導体素子及びそれらを接続する配線などからなる集積回路が形成されたシリコン基板である第2半導体基板を準備する工程である。工程(b)では、
図2の(a)に示すように、シリコン等からなる第2基板本体201の一面201aに、メッキ下地層202を形成すると共に、メッキ下地層202の上にドライフィルムレジストを用いて、所定パターンの複数の開口203aを有するレジスト層203を形成する。レジスト層203が形成されると、
図2の(b)に示すように、各開口203a内に電気メッキにより銅を析出させて第2電極204を形成する。第2電極204は、銅以外の材料から形成されてもよい。その後、
図2の(c)に示すように、レジスト層203を除去する。これにより、複数の第2電極204の間に空隙204aが形成される。
【0022】
続いて、第2絶縁膜に用いられる有機絶縁材料を準備する。ここで用いられる有機絶縁材料としては、例えば、ポリイミドであり、硬化した後のガラス転移温度Tgが250℃以上の樹脂材料である。第2絶縁膜に用いられる有機絶縁材料は、第1絶縁膜に用いられる有機絶縁材料と同じであってもよく、記載を省略する。液状の有機絶縁材料が準備されると、
図2の(d)に示すように、第2基板本体201の一面201a上に有機絶縁材料205をスピンコートにより塗布する。これにより、複数の第2電極204の全体を有機絶縁材料205が覆うようになる。有機絶縁材料205が形成されると、
図2の(e)に示すように、有機絶縁材料205を含む半製品を所定時間(例えば2時間)、高温(例えば350℃以上)で加熱して、硬化させる。これにより、有機絶縁材料205が硬化して、第2絶縁膜205Aが形成される。以上により、第2半導体基板200が形成される。
【0023】
[工程(c)]
続いて、硬化した有機絶縁材料からなる第1絶縁膜105Aを含む第1半導体基板100が形成されると、
図2の(e)及び(f)に示すように、第1絶縁膜105Aの表面105aをCMP(Chemical Mechanical Polishing)法を用いて研磨する。工程(c)では、第1絶縁膜105Aだけでなく、第1電極104の先端部分も研磨する。工程(c)では、例えば、第1電極104の先端104bが、研磨された第1絶縁膜105Bの表面105bから突出するように選択的にCMP法で研磨してもよいし、逆に、第1電極104の先端104bが、研磨された第1絶縁膜105Bの表面105bから凹むように選択的にCMP法で研磨してもよい。このような選択的な研磨は、CMP法に用いるスラリーの材料構成又は研磨速度等を変えることで実現することが可能である。この研磨により、第1半導体基板100Aの表面上のデブリ等も除去される。工程(c)による研磨により、第1半導体基板100Aの表面、即ち、第1絶縁膜105Bの表面105bと第1電極104の先端104bの表面との表面粗さRaが1nm以下となるように研磨される。なお、ここで用いる表面粗さRaは、JIS B 0601-2001で規定される算術平均粗さ(Ra)である。
【0024】
[工程(d)]
続いて、硬化した有機絶縁材料からなる第2絶縁膜205Aが形成されると、工程(c)と同様に、
図2の(e)及び(f)に示すように、第2絶縁膜205Aの表面205aをCMP法を用いて研磨する。工程(d)では、第2絶縁膜205Aだけでなく、第2電極204の先端部分も研磨する。工程(d)では、例えば、第2電極204の先端204bが、研磨された第2絶縁膜205Bの表面205bから突出するように選択的にCMP法で研磨してもよいし、逆に、第2電極204の先端204bが、研磨された第2絶縁膜205Bの表面205bから凹むように選択的にCMP法で研磨してもよい。この研磨により、第2半導体基板200Aの表面上のデブリ等も除去される。工程[d]による研磨により、第2半導体基板200Aの表面、即ち、第2絶縁膜205Bの表面205bと第2電極204の先端204bの表面との表面粗さRaが1nm以下となるように研磨される。
【0025】
[工程(e)]
続いて、第2半導体基板200Aの研磨が終了すると、工程(e)では、研磨された第2半導体基板200Aを個片化し、第2絶縁膜205Bに対応する絶縁膜部分205Cと少なくとも1つの第2電極204とをそれぞれが備えた複数の半導体チップ20を取得する。工程(e)では、
図3の(a)に示すように、第2半導体基板200をダイシングテープ206上に配置して、第2絶縁膜205Bから第2基板本体201に向かってダイシング等の切断手段により複数の半導体チップ20へと個片化する。第2半導体基板200Aをダイシングする際に第2絶縁膜205Bに保護材等を被覆して、それから個片化してもよい。工程(e)により、第2半導体基板200Aの第2絶縁膜205Bは、
図3の(a)に示すように、各半導体チップ20に対応する絶縁膜部分205Cへと分割される。また、第2基板本体201は、同様に、対応する基板部分201Bへと分割される。第2半導体基板200Aを個片化するダイシング方法としては、例えば、プラズマダイシング、ステルスダイシング又はレーザーダイシングを用いることができる。
【0026】
[工程(f)]
続いて、第2半導体基板200Aを個片化して複数の半導体チップ20が形成されると、工程(f)では、複数の半導体チップ20の表面20aを酸洗浄する。この洗浄では、例えば、クエン酸またはアスコルビン酸を純水で希釈して、クエン酸またはアスコルビン酸を含む酸性水溶液(例えば5体積%の酸性水溶液)を準備する。そして、複数の半導体チップ20の表面20aを、この酸性水溶液に所定時間(例えば1分間)浸して、表面20aを洗浄する。このような酸洗浄処理により、複数の半導体チップ20の表面20aに付着した酸化物が除去される。また、ここで用いる酸性水溶液が、クエン酸またはアスコルビン酸といった酸解離定数(pka)が高い材料を用いた水溶液であることで、第2電極204の表面204bの酸化物を適切に除去することができる一方、絶縁膜部分205Cの表面205cの表面粗さRaを荒らさないようにすることができる。酸性水溶液への浸漬が終了すると、半導体チップ20の表面20aを純水等で洗浄し、その後、窒素等により乾燥させる。このような酸洗浄により、例えば、第2電極204の表面204bに堆積している酸化物を半分以上、除去することができる。
【0027】
[工程(g)]
続いて、半導体チップ20の酸洗浄処理が終了すると、
図3の(b)に示すように、第1半導体基板100Aの第1電極104に対して各半導体チップ20の第2電極204の位置合わせを行う。工程(g)では、ボンディングパッドPを用いて半導体チップ20をピックアップし、第2電極204を第1電極104に対して位置合わせさせる。
【0028】
[工程(h)及び工程(i)]
続いて、第1半導体基板100Aの第1電極104に対する半導体チップ20の第2電極204の位置決めがされると、
図3の(c)に示すように、第1半導体基板100A及び半導体チップ20を所定の高温(例えば、300℃)に加熱すると共に、第1半導体基板100Aに対して半導体チップ20を所定圧(例えば、0.8MPa)で押圧する。この押圧処理は、例えば、押圧部材Rを用いて1時間程度継続される。このようなハイブリッドボンディングにより、第1半導体基板100Aの第1絶縁膜105Bと半導体チップ20の絶縁膜部分205Cとを互いに接合すると共に、第1半導体基板100の第1電極104と半導体チップ20の第2電極204とを接合する。絶縁膜同士の接合と電極同士との接合は同時に行われてもよいし、絶縁膜同士が接合された後に、押圧を更に進めて電極同士を接合させてもよい。このような接合により、
図1に示す半導体装置1が得られる。
【0029】
なお、このようにハイブリッドボンディングにより互いに接合された第1半導体基板100と複数の半導体チップ20とを、
図3の(d)に示すように、更に個片化してもよい。このようにして形成される半導体装置1Aは、少なくとも1つの半導体チップ20と、第1半導体基板100の内、半導体チップ20に対応する基板部分201Bとを有する。
【0030】
以上、本実施形態に係る半導体装置の製造方法によれば、表面が研磨された第2半導体基板200Aを個片化して複数の半導体チップ20とした後に、複数の半導体チップ20の表面20a、即ち、第2絶縁膜205Bに対応する絶縁膜部分205Cの表面205cと第2電極204の表面204bを洗浄している。しかも、この洗浄では、絶縁膜部分205Cの表面205cの表面粗さRaが1nm以下を維持するように、クエン酸またはアスコルビン酸を含む酸性水溶液で複数の半導体チップ20の表面を洗浄している。本発明者らの知見によれば、クエン酸またはアスコルビン酸といった酸解離定数(pka)が高い材料を用いることで、第2電極204の表面204bの酸化物を適切に除去することができる一方、絶縁膜部分205Cの表面205cを荒らさないようにすることができることが分かってきている。このように、この半導体装置の製造方法によれば、ハイブリッドボンディング製法において電極同士の接続抵抗を下げると共に、有機絶縁膜同士の接合強度を高めることができる。
【0031】
また、本実施形態に係る半導体装置の製造方法では、複数の半導体チップ20の表面20aを酸性水溶液に所定時間浸すことで洗浄が行われてもよい。この場合、第2電極204の表面204bにおける酸化物を容易に除去することができる。この場合において、酸性水溶液へ浸す所定時間は1分間以内であってもよい。これにより、複数の半導体チップ20の第2電極204の表面204bの酸化物をより確実に除去することができると共に、第2絶縁膜205Bに対応する絶縁膜部分205Cの表面205cを必要以上に荒らさないようにすることができる(例えば、
図6の(b)を参照)。よって、この方法によれば、ハイブリッドボンディング製法において電極同士の接続抵抗を下げると共に、有機絶縁膜同士の接合強度を高めることができる。
【0032】
また、本実施形態に係る半導体装置の製造方法では、第2絶縁膜205Bに含まれる樹脂材料は、ビスマレイミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ベンゾシクロブテン(BCB)、又は、ポリベンゾオキサゾール(PBO)を含んでもよい。この場合、ハイブリッドボンディング製法において第1電極104と第2電極204とを接合する際に高温をかけたとしても、第2絶縁膜205Bに対応する絶縁膜部分205Cが軟化して第1電極104と第2電極204との接合を阻害してしまうことを抑制できる。
【0033】
また、本実施形態に係る半導体装置の製造方法では、第2半導体基板200を研磨する工程では、第2絶縁膜205Bの表面及び第2電極204の表面の表面粗さRaが1nm以下となるように研磨することが好ましい。第2電極204の表面粗さRaが1nm以下になるように研磨されていることにより、第1電極104と第2電極204との接合をより確実に行って、電極同士の接続抵抗をより確実に下げることが可能となる。また、第2絶縁膜205Bの表面粗さRaが1nm以下に研磨されていることにより、研磨後に酸性水溶液で洗浄されたとしても、絶縁膜部分205Cの表面粗さRaをそれほど荒らさなくても済み、第1絶縁膜105Bとの接合をより確実に行うことが可能となる。
【実施例0034】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0035】
実施例1では、上述した第1半導体基板100Aと第2半導体基板200A(半導体チップ20)に対応する一対の第1テストウェハを準備し、所定の酸洗浄を行った後に両者を接合して、半導体装置1における有機絶縁膜同士の接合強度を確認した。また、実施例2では、
図4に示す端子電極を含み表面側に有機絶縁膜が配置された第2テストウェハを一対準備した後に両者を接合して、半導体装置1における端子電極同士の接続抵抗を確認した。
図4は、ディジーチェーン接続するための第2テストウェハを作製する方法を示す図である。
【0036】
まず、実施例1及び実施例2の第1テストウェハ及び第2テストウェハに用いる有機絶縁膜の材料として、ポリイミドPI-A(HDマイクロシステムズ社製、商品名)を準備した。このポリイミドPI-Aは、引張強度が194MPa、伸度が94%、弾性率(ヤング率)が2.5GPa、ガラス転移温度Tgが267℃、熱膨張係数(CTE)が75ppm/℃であった。
【0037】
続いて、実施例1として、
図2に示す方法により、シリコン基板である第1基板本体101上に10μm角であって高さ6μmの銅ピラー(Cu)である多数の第1電極104をセミアディディブ法にて作製した。その後、上述したポリイミドPI-Aを第1基板本体101上にスピンコートして第1電極104を覆うように被覆し、窒素雰囲気下において、375℃で2時間ベークして硬化させた。その後、CMP法によって、第1電極104及びポリイミドPI-Aの硬化物(第1絶縁膜105Aに相当)の表面を研磨した。これにより、第1半導体基板100Aを作製した。また、同様の方法で、第2半導体基板200Aを作製した。CMPによって研磨された第1半導体基板100Aと第2半導体基板200Aの各表面の表面粗さRaは、
図5に示す通りであった。
【0038】
より具体的には、第1電極104及び第2電極204の表面の表面粗さRaは0.667nmであり(
図5の(a)を参照)、有機絶縁層の表面の表面粗さRaは、0.375nmであった(
図5の(b)を参照)。表面粗さRaの測定は、走査型プローブ顕微鏡装置SPI4000(日立ハイテク製、商品名)を用いて、JIS B 0601-2001で規定される算術平均粗さ(Ra)の測定方法に準じて測定された。また、
図6は、ウエハ中心からの距離に応じた表面粗さRaの分布を示したものであり、
図6の(a)は、銅から成る第1電極104及び第2電極204の表面粗さRaをウエハ中心からの距離(0mm、50mm、80mm)毎にまとめた表であり、
図6の(b)は、ポリイミドからなる第1絶縁膜105B及び第2絶縁膜205Bの表面粗さRaをウエハ中心からの距離(0mm、50mm、80mm)毎にまとめた表である。
【0039】
また、実施例2における電気的な接続を試験するための第2テストウェハの作製では、
図4に示すように、ポリイミドと銅を含むディジーチェーン接続体を作製した。この作製では、まず
図4の(a)に示すように、シリコン基板である第3基板本体301上に絶縁層302であるSiO
2層を設けると共に、一部が絶縁層302から突出するように第3電極303を設けた。その後、上記と同様にポリイミドPI-Aを準備して、スピンコートにより第3電極303の全体を覆うように有機絶縁材料を塗布して、絶縁膜304を形成した。続いて、
図4の(c)に示すように、窒素雰囲気下において、375℃で2時間ベークし、絶縁層304Aとした。その後、
図4の(d)に示すように、CMP法によって、第3電極303とポリイミドPI-Aの硬化物からなる絶縁層304Aとの表面を研磨し、接続体300を作製した。第3電極303と絶縁層304Aの表面粗さRaは、上述した第1半導体基板100Aと第2半導体基板200Aと同様であった。この実施例では、同じ構成を備える一対の接続体300を作製した。
【0040】
続いて、第1半導体基板100Aに対応する第1テストウェハの一方と、一対の第2テストウェハの一方とをブレードダイサDFD-6362(DISCO社製、商品名)を用いてダイシングして、複数の半導体チップに個片化した。個片化されたチップのサイズは5mm×5mmであった。そして、第1テストウェハ及び第2テストウェハを個片化した各半導体チップの一部を、クエン酸を純水で希釈した5体積%の酸性水溶液で洗浄した。クエン酸で洗浄した半導体チップは、第1テストウェハでは111個であり、第2テストウェハでは32個であった。同様に、第1テストウェハ及び第2テストウェハを個片化した各半導体チップの別の一部を、アスコルビン酸を純水で希釈した5体積%の酸性水溶液で洗浄した。アスコルビン酸で洗浄した半導体チップは、第1テストウェハでは120個であり、第2テストウェハでは31個であった。洗浄の方法は、いずれの酸性水溶液でも同じであり、上記の酸性水溶液に各半導体チップの接続表面を1分間浸して洗浄し、その後、純水でリンスして窒素で乾燥させた。
【0041】
このような酸洗浄処理により、
図7に示すように、各半導体チップの端子電極上の酸化物の量が削減されることが確認できた。より詳細には、
図7に示すように、酸洗浄処理がない場合の端子電極上の酸化物を1.0とした場合、クエン酸の酸性水溶液を用いて洗浄すると、酸洗浄処理をしない場合に比べて、酸化物を平均して60%程度削減できることが確認された。また、アスコルビン酸の酸性水溶液を用いて洗浄すると、酸洗浄処理をしない場合に比べて、酸化物を平均して50%程度削減できることが確認された。
【0042】
また、
図8に示すように、各半導体チップの有機絶縁膜(PI:ポリイミド)の表面の表面粗さRaは、アスコルビン酸の酸性水溶液を用いた場合、60秒の浸漬でも1.0nm以下を維持できており、それ以上は荒れないことが確認できた。また、クエン酸の酸性水溶液を用いた場合、60秒の浸漬でも各半導体チップの有機絶縁膜(PI:ポリイミド)の表面の表面粗さRaは1.0nm以下を維持できており、それ以上は荒れないことが確認できた。一方、硫酸の5体積%水溶液を用いて洗浄した場合、半導体チップの有機絶縁膜の表面の表面粗さRaは、60秒の浸漬でも1.0nmを超えてしまうことが確認された。
【0043】
続いて、実施例1として、上述した酸洗浄が終了した第1テストウェハからダイシングされた半導体チップ(半導体チップ20に対応)を第1テストウェハの他方(第1半導体基板100Aに対応)に対して電極の位置合わせを行った後に互いに押し当てて300℃で2時間加熱した。また、実施例2として、上述した酸洗浄が終了した第2テストウェハからダイシングされた半導体チップを第2テストウェハの他方(基板)に対して電極の位置合わせを行った後に互いに押し当てて300℃で2時間加熱した。
【0044】
実施例1としては、第1テストウェハにおけるこのような加熱押圧により、各半導体チップが平均して20MPa以上で接合していることが確認できた。即ち、各半導体チップの有機絶縁膜の表面がクエン酸又はアスコルビン酸のいずれの酸洗浄によっても荒れることがなく、ハイブリッドボンディングで有機絶縁膜同士が強固に接合されることが確認できた。
図9に、クエン酸で酸洗浄した半導体チップの電極を第1テストウェハの電極に接合した状態の断面写真を示す。
図9に示すように、接合した電極同士の境界がほぼなくなるように両者が接合されていることが確認できた。
【0045】
また、実施例2としては、上述した酸洗浄が終了して互いに接合された第2テストウェハから形成されたディジーチェーン接続体の電気抵抗を確認した。
図10に、クエン酸で酸洗浄した半導体チップを他方の第2テストウェハに接合した状態の断面写真を示す。
図10に示すように、接合した電極同士の境界及び有機絶縁膜同士の境界がほぼなくなるように両者が接合されていることが確認できた。また、
図11に、酸洗浄に用いたアスコルビン酸及びクエン酸毎の電気抵抗の結果を示す。
図11に示すように、アスコルビン酸の酸性水溶液を用いて洗浄した後に電極同士を接続した接続体では、抵抗が2~6Ωとなった。また、クエン酸の酸性水溶液を用いて洗浄した後に電極同士を接続した接続体では、抵抗が概ね2~8Ωとなった。なお、
図8に示す半導体チップの電極(Cu)の表面粗さRaにおいて、端子電極の表面粗さRaは、アスコルビン酸の酸性水溶液を用いた場合、60秒の浸漬で2.25nm程度まで荒れてしまい、また、クエン酸の酸性水溶液を用いた場合、60秒の浸漬で2.0nm程度まで荒れてしまっていた。しかしながら、
図11に示す抵抗試験の結果からは、端子電極の表面が多少荒れてしまったとしても、電極の接合、即ち接続抵抗への影響はそれほど大きくなく、許容できる範囲であることが確認できた。
【0046】
以上、実施例1及び2によれば、有機絶縁膜を用いたハイブリッドボンディング製法において、クエン酸またはアスコルビン酸を含む酸性水溶液で半導体チップの表面を洗浄することにより、酸化物を取り除いて電極同士の接続抵抗を下げられると共に、有機絶縁膜同士の接合強度を高めることができることが確認できた。
1,1A…半導体装置、10…第1半導体基板、20…半導体チップ、100,100A…第1半導体基板、101…第1基板本体、101a…一面、104…第1電極,104b…先端、105…有機絶縁材料、105A,105B…第1絶縁膜、105a,105b…表面、200,200A…第2半導体基板、201…第2基板本体、201a…一面、204…第2電極、204b…先端、205…有機絶縁材料、205A,205B…第2絶縁膜、205C…絶縁膜部分、205c…表面。