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特開2023-173126マイクロレンズアレイ、拡散板及び照明装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173126
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】マイクロレンズアレイ、拡散板及び照明装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 3/00 20060101AFI20231130BHJP
   F21V 5/04 20060101ALI20231130BHJP
   F21V 5/00 20180101ALI20231130BHJP
   G02B 5/02 20060101ALI20231130BHJP
   F21Y 115/30 20160101ALN20231130BHJP
【FI】
G02B3/00 A
F21V5/04 200
F21V5/04 350
F21V5/00 320
G02B5/02 C
F21Y115:30
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022085148
(22)【出願日】2022-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安原 良
【テーマコード(参考)】
2H042
【Fターム(参考)】
2H042BA04
(57)【要約】
【課題】マイクロレンズアレイによって、受光素子上においてより均一で高効率な放射照度分布を得ることができる技術を提供する。
【解決手段】平面部材の少なくとも片面に複数のレンズ要素が配置されたマイクロレンズアレイであって、平面視で六角形の形状を有する前記レンズ要素が、該六角形における所定方向の辺同士が接するように直線状に並べられた該レンズ要素の列が、互い違いに配列されたハニカム構造を有し、前記レンズ要素の光軸を原点とした際の、前記レンズ要素の列における該レンズ要素の並び方向の座標をY、前記レンズ要素の列が互い違いに配列される配列方向の座標をX、Aを所定の係数とした場合に、前記レンズ要素のSAGを示す数式が、Axmyn(m、nは0を除く整数)の項を含む。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面部材の少なくとも片面に複数のレンズ要素が配置されたマイクロレンズアレイであって、
平面視で六角形の形状を有する前記レンズ要素が、該六角形における所定方向の辺同士が接するように直線状に並べられた該レンズ要素の列が、互い違いに配列されたハニカム構造を有し、
前記レンズ要素の光軸を原点とした際の、前記レンズ要素の列における該レンズ要素の並び方向の座標をY、前記レンズ要素の列が互い違いに配列される配列方向の座標をX、Aを所定の係数とした場合に、前記レンズ要素のSAGを示す数式が、Axmyn(m、nは0を除く整数)の項を含む、マイクロレンズアレイ。
【請求項2】
レンズ面の曲率をC、レンズ面の円錐形数とKとした場合に、前記レンズ要素のSAGを示す数式が、
【数1】

で表される、請求項1に記載のマイクロレンズアレイ。
【請求項3】
前記m及びnは偶数である、請求項1に記載のマイクロレンズアレイ。
【請求項4】
前記レンズ要素のSAGを示す数式が、Ax2y2の項を含む、請求項1に記載のマイクロレンズアレイ。
【請求項5】
平面部材の少なくとも片面に複数のレンズ要素が配置されたマイクロレンズアレイであって、
平面視で六角形の形状を有する前記レンズ要素が、該六角形における所定方向の辺同士が接するように直線状に並べられた該レンズ要素の列が、互い違いに配列されたハニカム構造を有し、
前記レンズ要素の光軸を原点とした際の、前記レンズ要素の列における該レンズ要素の並び方向をY方向、前記レンズ要素の列が互い違いに配列される配列方向をX方向、とした場合に、
原点から見てX方向とY方向の間の所定角度範囲の方向においては、前記光軸からの距離rに応じたSAGがX方向のSAGとY方向のSAGの間の範囲を逸脱する、マイクロレンズアレイ。
【請求項6】
平面部材の少なくとも片面に複数のレンズ要素が配置されたマイクロレンズアレイであって、
平面視で六角形の形状を有する前記レンズ要素が、該六角形における所定方向の辺同士が接するように直線状に並べられた該レンズ要素の列が、互い違いに配列されたハニカム構造を有し、
αを、前記六角形の形状における、前記レンズ要素の列における前後のレンズ要素と接していない二辺の頂角とし、kを、複数の前記レンズ要素の、前記レンズ要素の列が互い違いに配列される配列方向のピッチである第2ピッチを、前記レンズ要素の列における該レンズ要素の並び方向のピッチである第1ピッチで除したアスペクト比とし、aを、(α―90)/kの値とした場合に、15≦a≦35を満たす、マイクロレンズアレイ。
【請求項7】
複数の前記レンズ要素の、前記レンズ要素の列における該レンズ要素の並び方向に対するピッチである第1ピッチより、前記レンズ要素の列が互い違いに配列される配列方向のピッチである第2ピッチの方が大きい、請求項1、5または6に記載のマイクロレンズアレイ。
【請求項8】
前記六角形の形状において、前記レンズ要素の列における前後のレンズ要素と接していない二辺の頂角が125度以下である、請求項1、5または6に記載のマイクロレンズアレイ。
【請求項9】
前記マイクロレンズアレイを透過した光の強度パターンが、略矩形または、各辺が内側に湾曲した略四辺形の形状となる、請求項1、5または6に記載のマイクロレンズアレイ。
【請求項10】
請求項1、5または6に記載のマイクロレンズアレイを用いた、拡散板。
【請求項11】
請求項1、5または6に記載のマイクロレンズアレイと、
前記マイクロレンズアレイに光を入射する光源と、
を備えた照明装置。
【請求項12】
前記マイクロレンズアレイにおける前記レンズ要素が前記光源側の面に配列された、請求項11に記載の照明装置。
【請求項13】
前記光源の指向性が±20°以下である、請求項11に記載の照明装置。
【請求項14】
前記光源は、近赤外線光を発光するレーザー光源である請求項11に記載の照明装置。
【請求項15】
距離測定装置に用いられる、請求項11に記載の照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロレンズアレイ、拡散板及び照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば照明もしくは計測、顔認証、空間認証等のための装置に用いられ、複数のレンズ要素を配置したマイクロレンズアレイが公知である(例えば、特許文献1等参照。)。このマイクロレンズアレイは、光源からの光を光学的に均一化する目的で用いられる場合があるが、レンズ要素のピッチが狭すぎると各レンズ要素の透過光の干渉に起因する干渉縞が顕在化し、光源光の均一化の妨げになる場合があった。一方、レンズ要素のピッチが広すぎると光源からの照射光がマイクロレンズアレイに偏って入射することによってモアレ縞が発生し、照射分布が不均一になる場合があった。その結果、マイクロレンズアレイを用いてスクリーン等に光源光を照射した場合に、照射パターンにおける照度分布が不均一になる場合があった。図16(a)には干渉縞やモアレ縞が無い場合の照射パターンにおける照度分布、図16(b)には干渉縞が発生した場合の照射パターンにおける照度分布、図16(c)にはモアレ縞が発生した場合の照射パターンにおける照度分布の例を示す。
【0003】
上述した干渉縞による照射パターンにおける照度分布の不均一化を抑制するために、各レンズ要素の位置や形状等をランダムに分布させる対策が考えられた(例えば、特許文献2、特許文献3等参照)。しかしながら、過剰にランダム化を進めてしまうと、所望の配光特性が得られず、特に照射プロファイルのエッジをシャープにするのが困難になる場合があった。また、各レンズ要素の配列が複雑化してしまうために、作製時間や費用がかかるなどの不都合が生じる場合があった。
【0004】
また、各レンズ要素の配列を規則的にしつつ、干渉縞による照射パターンにおける照度分布の不均一化を抑制する方策として、六角形状のレンズ要素をハニカム状に配列する対策が考えられる。六角形状のレンズ要素をハニカム状に配列する技術自体は公知である(例えば、特許文献4)。
【0005】
しかしながら、六角形状のレンズ要素をハニカム状に配列した場合には、マイクロレンズアレイによる照射光の照射パターンの外形も六角形状となってしまい、通常の受光素子で受光した場合に、効率の低下や周辺部減光を助長する場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2005/103795号
【特許文献2】国際公開第2004/027495号
【特許文献3】国際公開第2016/523513号
【特許文献4】特開2014-139656号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本開示の技術は上記の事情に鑑みて発明されたもので、その目的は、マイクロレンズアレイによって、より均一で高効率な照度分布を得ることができる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、本開示に係るマイクロレンズアレイは、平面部材の少なくとも片面に複数のレンズ要素が配置されたマイクロレンズアレイであって、
平面視で六角形の形状を有する前記レンズ要素が、該六角形における所定方向の辺同士が接するように直線状に並べられた該レンズ要素の列が、互い違いに配列されたハニカム構造を有し、
前記レンズ要素の光軸を原点とした際の、前記レンズ要素の列における該レンズ要素の並び方向の座標をY、前記レンズ要素の列が互い違いに配列される配列方向の座標をX、Aを所定の係数とした場合に、前記レンズ要素のSAGを示す数式が、Axmyn(m、nは0を除く整数)の項を含む、マイクロレンズアレイである。
【0009】
このように、上記のレンズ要素のSAGを示す数式が、Axmyn(m、nは0を除く整数)の項を含むようにし、係数Axmynを適切に決めることで、レンズ要素における(X、Y)座標毎にSAGを制御することができる。そうすると、各レンズ形状における、レンズ要素の列におけるレンズ要素の並び方向に対して角度を有する斜め方向の非球面形状を制御することが可能である。これにより、マイクロレンズアレイを通過した照射光の照射パターンの外形を制御することができる。その結果、照射パターンの外形を、受光素子の受光面形状に合わせて調整することが可能となり、光学系の効率を高めることができ、あるいは、受光面における周辺部減光を抑制することが可能である。なお、本開示における照射パターンの外形は、換言すると照射パターンにおける照度分布とも言える。
【0010】
また、本開示においては、前記レンズ要素の光軸を原点とした場合の、該レンズ要素における、前記レンズ要素の列における該レンズ要素の並び方向の座標をY、前記レンズ要素の列が互い違いに配列される配列方向の座標をX、レンズ面の曲率をC、レンズ面の円錐形数とKとした場合に、前記レンズ要素のSAGを示す式が、
【数1】

で表されてもよい。
【0011】
これによれは、係数Axmymを適切に決めることで、各レンズ要素の列におけるレンズ要素の並び方向や、各レンズ要素の列の配列方向のSAGを独立して定めることができ、光軸に対する非回転体形状としてのレンズ形状を、より容易に定義することができる。
【0012】
上記において、m及びnは偶数としてもよい。これによれば、各レンズ要素において光軸を中心とした点対称のレンズ形状を構成し易くなる。また、レンズ要素のSAGを示す数式が、Ax2y2の項を含むこととしてもよい。これによれば、係数Axmynを変化させることで、光軸の付近のレンズ形状をより大きく変化させることが可能となり、より効率よくレンズ形状を制御することが可能となる。
【0013】
また、本開示は、平面部材の少なくとも片面に複数のレンズ要素が配置されたマイクロレンズアレイであって、
平面視で六角形の形状を有する前記レンズ要素が、該六角形における所定方向の辺同士が接するように直線状に並べられた該レンズ要素の列が、互い違いに配列されたハニカム構造を有し、
前記レンズ要素の光軸を原点とした際の、前記レンズ要素の列における該レンズ要素の
並び方向をY方向、前記レンズ要素の列が互い違いに配列される配列方向をX方向、とした場合に、
原点から見てX方向とY方向の間の所定角度範囲の方向においては、前記光軸からの距離rに応じたSAGがX方向のSAGとY方向のSAGの間の範囲を逸脱する、マイクロレンズアレイであってもよい。
【0014】
これによれば、各レンズ形状における、原点から見てX方向とY方向の間の所定角度範囲の方向においては、レンズ面におけるSAGを、X方向及びY方向のSAGに比較して大きく、あるいは小さくなるように設定することができる。このことで、各レンズ要素のレンズ形状について、X方向及びY方向に対して斜め方向の非球面形状を適切に制御することが可能である。
【0015】
また、本開示に係るマイクロレンズアレイは、平面部材の少なくとも片面に複数のレンズ要素が配置されたマイクロレンズアレイであって、
平面視で六角形の形状を有する前記レンズ要素が、該六角形における所定方向の辺同士が接するように直線状に並べられた該レンズ要素の列が、互い違いに配列されたハニカム構造を有し、
αを、前記六角形の形状における、前記レンズ要素の列における前後のレンズ要素と接していない二辺の頂角とし、kを、複数の前記レンズ要素の、前記レンズ要素の列が互い違いに配列される配列方向のピッチである第2ピッチを、前記レンズ要素の列における該レンズ要素の並び方向のピッチである第1ピッチで除したアスペクト比とし、aを、(α―90)/kの値とした場合に、15≦a≦35を満たす、マイクロレンズアレイであってもよい。
【0016】
ここで、上記のaの数値を変化させることで、ハニカム構造を有するマイクロレンズアレイにおける照射パターンを変化させることが可能であることが分かっている。パラメータaの値が比較的大きければ、照射パターンがより六角形に近い外形を有するようになり、パラメータaの値がより小さくなれば、照射パターンが、矩形状の形状から、各辺が内側に湾曲した四辺形に変化することが実験的またはシミュレーションによって分かっている。照射パターンの外形が六角形に近ければ照射パターンが受光素子の受光面からはみ出し、あるいは、周辺部減光を助長する。
【0017】
一方、照射パターンが、矩形または、各辺が内側に湾曲した四辺形であれば、照射パターンが受光素子の受光面に収まりはみ出す光量を減らすことができ、受光素子の四隅に照射する光量を相対的に増加させることができる。これによれば、一つのパラメータの値が目標とする範囲に入るようにレンズ形状を制御することで、ハニカム構造を有するマイクロレンズアレイの照射パターンの形状を制御することができ、受光素子の受光面における受光効率や、受光面における周辺部減光を制御することが可能となる。なお、より詳細には、照射パターンを矩形に近づけた場合には、受光素子の受光面における受光効率を向上させ、且つ、受光面における周辺部減光を抑制することが可能となる。また、照射パターンを、各辺が内側に湾曲した四辺形に近づけた場合には、特に受光面における周辺部減光を顕著に抑制することが可能となる。
【0018】
また、本開示においては、複数の前記レンズ要素の、前記レンズ要素の列における該レンズ要素の並び方向に対するピッチである第1ピッチより、前記レンズ要素の列が互い違いに配列される配列方向のピッチである第2ピッチの方が大きくなるようにしてもよい。これによれば、レンズ要素の形状をより横長とすることができ、アスペクト比kを大きくすることができる。その結果、相対的にパラメータaの値を小さくすることができ、マイクロレンズアレイの照射パターンの形状を矩形または、各辺が内側に湾曲した四辺形とし易くなり、受光素子の受光面における受光効率や、受光面における周辺部減光を制御する
ことが容易となる。
【0019】
また、本開示においては、前記六角形の形状において、前記レンズ要素の列における前後のレンズ要素と接していない二辺の頂角が125度以下としてもよい。これによれば、相対的に頂角αの値を小さくすることができる。その結果、相対的にパラメータaの値を小さくすることができ、マイクロレンズアレイの照射パターンの形状を矩形から、各辺が内側に湾曲した四辺形とし、受光素子の受光面における受光効率や、受光面における周辺部減光を制御することが可能となる。
【0020】
また、本開示においては、前記マイクロレンズアレイを透過した光の強度パターンが、略矩形または、各辺が内側に湾曲した略四辺形の形状となるようにしてもよい。これによれば、上述の理由により、受光素子の受光面における受光効率や、受光面における周辺部減光を制御することが可能となる。
【0021】
また、本開示は、上記のマイクロレンズアレイを用いた、拡散板であってもよい。
【0022】
また、本開示は、上記のマイクロレンズアレイと、前記マイクロレンズアレイに光を入射する光源と、を備えた照明装置であってもよい。また、その際、前記マイクロレンズアレイにおける前記レンズ要素が前記光源側の面に配列されるようにしてもよい。また、前記光源の指向性が±20°以下としてもよい。また、前記光源は、近赤外線光を発光するレーザー光源としてもよい。
【0023】
また、上記の照明装置は、距離測定装置に用いられてもよい。さらに、Time Of
Flight方式の距離測定装置に用いられてもよい。
【0024】
なお、本発明においては、可能な限り、上記の課題を解決するための手段を組み合わせて使用することができる。
【発明の効果】
【0025】
本開示によれば、マイクロレンズアレイによって、より均一で高効率な照度分布を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、Time Of Flight方式の距離測定装置の概略構成を示す図である。
図2図2は、光源から発光された光にマイクロレンズアレイを通過させ、スクリーン上に照射する系の概略図と、照射パターンを示す図である。
図3図3は、マイクロレンズアレイのレンズ要素の形状と、得られる照射パターンとの関係を示す図である。
図4図4は、マイクロレンズアレイのレンズ要素におけるX方向の曲率と、Y方向の曲率と、X方向とY方向の間のθ方向における曲率とを比較した図である。
図5図5は、マイクロレンズアレイにおけるハニカム構造の概略を示す図である。
図6図6は、マイクロレンズアレイにおけるレンズ要素のアスペクト比と、レンズ要素の頂角αと、パラメータaの関係を示すグラフである。
図7図7は、マイクロレンズアレイにおけるレンズ要素のパラメータa、アスペクト比kと、照射パターンの外形との関係を示す図である。
図8図8は、マイクロレンズアレイにおけるレンズ要素のパラメータa、アスペクト比kと、照射パターンの外形との関係を示す第2の図である。
図9図9は、マイクロレンズアレイにおけるレンズ要素のパラメータa、アスペクト比kと、照射パターンの外形との関係を示す第3の図である。
図10図10は、マイクロレンズアレイにおけるレンズ要素のパラメータa、アスペクト比kと、照射パターンの外形との関係を示す第4の図である。
図11図11は、マイクロレンズアレイにおけるレンズ要素のアスペクト比kと、照射パターンの外形との関係を示す第5の図である。
図12図12は、パラメータa、アスペクト比kと、効率との関係を示すグラフである。
図13図13は、パラメータa、アスペクト比kと、照射パターンにおける周辺部/中心強度比との関係を示すグラフである。
図14図14は、可撓性シートの表面にマイクロレンズアレイを形成した拡散板の斜視図である。
図15図15は、照明装置の概略構成を示す図である。
図16図16は、マイクロレンズアレイを通過した光についてスクリーン上で干渉縞、モアレ縞が発生しない場合と、発生した場合の放射照度分布の例である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に、図面を参照して本開示の実施形態に係るマイクロレンズアレイについて説明する。なお、実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は、一例であって、本開示の主旨から逸脱しない範囲内で、適宜、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。本開示は、実施形態によって限定されることはなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【0028】
<実施形態1>
図1には、実施形態におけるマイクロレンズアレイの使用用途の一例としての、TOF(Time Of Flight)方式の距離測定装置100の概略図を示す。TOF方式の距離測定装置100は、照射光の飛行時間を測定することで、測定対象Oの表面の各部までの距離を測定する装置であり、光源制御部101、照射光源102、照射光学系103、測定対象Oからの反射光を集光する受光光学系104、受光素子105、信号処理回路106を有する。
【0029】
光源制御部101からのドライブ信号に基づいて照射光源102がパルス状の光を発光すると、そのパルス状の光が照射光学系103を通過して測定対象Oに照射される。そして、測定対象Oの表面で反射した反射光は受光光学系104を通過して受光素子105で受光され、信号処理回路106で適切な電気信号に変換される。そして、演算部(不図示)において、照射光源102が照射光を発光してから受光素子105で反射光が受光されるまでの時間、つまり光の飛行時間を測定することにより、測定対象Oにおける各場所までの距離を測定する。
【0030】
このTOF方式の距離測定装置100における照射光学系103、または受光光学系104として、マイクロレンズアレイが使用される場合がある。マイクロレンズアレイとは、直径が10μm~数mm程度の微小なレンズ要素の群からなるレンズアレイである。一般的に、マイクロレンズアレイは、レンズアレイを構成する各々のレンズ要素の形状(球面、非球面、シリンドリカル、六方等)、レンズ要素の大きさ、レンズ要素の配置、レンズ要素間のピッチ等の特性によって、その機能や精度が変化する。
【0031】
そして、マイクロレンズアレイが、上述のTOF方式の距離測定装置100に使用されるような場合には、測定対象Oに均一な強度分布の光を照射することが求められる。すなわち、マイクロレンズアレイを通過後の光の使用可能な広がり角である画角θFOI(FOI:Field Of Illumination)は、測定対象Oの大きさや測定距離に応じて決定されるが、この画角θFOIの範囲においては、マイクロレンズアレイを
通過後の光の放射照度分布の均一性が求められる場合がある。このように、マイクロレンズアレイは、使用目的に応じた特性が求められる。
【0032】
次に、図2に示すような、光源2から発光された光にマイクロレンズアレイ1を通過させ、スクリーン3上に照射する系について考える。ここで、光源2は、例えば、VCSELレーザー光源(Vertical Cavity Surface Emitting
LASER:垂直共振器面発光レーザー)であり、光源2の指向性としては、±5度、±10度、±20度程度のものを選択することが可能であるが特に制限はない。そして、マイクロレンズアレイ1は、平面部材である基材の片側または両側の表面に、レンズ要素1aを2次元的に配列させたアレイが構成されたものであり、このマイクロレンズアレイ1を通過した光は、光軸に対して拡散する拡散光となり、測定対象Oに模したスクリーン3上に照射される。そして、スクリーン3上には、マイクロレンズアレイ1の特性に応じた照射パターンが形成される。
【0033】
ここで、図3(a)に示すように、例えば、長方形の外形を有するレンズ要素を単純に縦横に整列させたマイクロレンズアレイにおいては、スクリーン3上で略矩形の外形を有する照射パターンが得られる。一方、レンズ要素1aのピッチ等の条件によっては照射パターンにおいて、図16に例示したような干渉縞が生じてしまう場合がある。この干渉縞の発生を抑制するためには、マイクロレンズアレイにおけるレンズ要素1aの配置の画一性を低下させることが望ましく、図3(b)に示すように、レンズ要素1aの外形を六角形とし、この六角形のレンズ要素が直線状に並んだ列を互い違いに配置したハニカム構造を採用する場合があった。しかしながら、この場合には、干渉縞の発生は抑制できるものの、図3(b)の下段に示すように、マイクロレンズアレイの照射パターンも六角形となる場合があった。そうすると、受光素子の受光面は長方形であることが多いため、照射パターンの外形と受光素子の受光面の形状との整合性が低下することで、受光効率が低下したり、受光面における周辺部減光を助長したりする場合があった。
【0034】
それに対し、本実施形態においては、六角形の各レンズ要素におけるレンズ面の非球面形状を制御することにより、照射パターンを図3(c)に示すような矩形状に制御可能とすることとした。これにより、干渉縞の発生を抑制できるとともに、照射パターンの外形と受光素子の受光面の形状との整合性を向上させ、受光効率を高め周辺部減光を抑制することが可能となる。ここで、受光効率とは、例えば、マイクロレンズアレイによる照射パターンの全体の強度に対する、受光素子の受光面上に照射される強度の比であってもよい。
【0035】
より具体的には、レンズ要素のレンズ面におけるSAGを示す式として、図3(c)の中段に示すような非球面式(1)を採用する。
【数2】

ここで、Yは、レンズ要素1aの光軸を原点とした場合の、図3(c)における上下方向の座標、Xは、図3(c)における左右方向の座標、Cは、レンズ面の曲率、K(大文字)は、レンズ面の円錐形数である。図3(c)においては、係数Axmynを適切に決定することで、X方向及びY方向に対して斜め方向のSAGを制御し、これにより、照射パターンを六角形から矩形に近づける。
【0036】
ここで、レンズ要素1aのレンズ面におけるSAGを示す数式は上記の(1)には限られない。例えば、SAGを示す数式が、Axmyn(m、nは0を除く整数)の
項を含むこととしてもよい。このように、レンズ要素1aのSAGを示す数式が、Axmyn(m、nは0を除く整数)の項を含むようにし、係数Axmynを適切に決めることで、レンズ要素1aにおける、(X、Y)座標毎にSAGを制御することができる。そうすると、各レンズ形状における、レンズ要素の列におけるレンズ要素の並び方向に対して角度を有する斜め方向の非球面形状を制御することができる。そのことで、照射パターンを図3(c)に示すような矩形状に制御することができる。
【0037】
なお、Axmynの項において、m及びnは偶数としてもよい。これによれば、各レンズ要素において光軸を中心とした点対称のレンズ形状を構成し易くなる。また、レンズ要素1aのSAGを示す数式が、Ax2y2の項を含むようにしてもよい。これによれば、係数Ax2y2を変化させることで、光軸の付近のレンズ形状をより大きく変化させることが可能となる。このことで、より効率よくレンズ形状を制御することが可能となり、より効率よく、照射パターンの形状を制御することが可能となる。
【0038】
なお、上記のように、レンズ要素1aのレンズ形状において、X方向とY方向に対して斜め方向のSAGを制御した結果として、図4(a)に示すとおり、レンズ要素1aの原点から見てX方向とY方向の間の所定角度範囲の方向、例えば、図中ハッチングが施された角度範囲におけるθ方向において、図4(b)に示すように、レンズ面におけるSAGが、光軸からの距離rが同じX方向のSAGとY方向のSAGの間の範囲を逸脱するようにしてもよい。すなわち、従来の非球面形状を有するレンズ要素1aにおいては、仮に、レンズ要素1aの原点から見て、光軸からの距離rが同じX方向とY方向のSAGが異なる場合は、X方向とY方向の間の斜め方向については、レンズ面におけるSAGが光軸からの距離rが同じX方向のSAGとY方向のSAGの間の値を有することが多い。これは、レンズ要素1aの周方向について、例えばX方向からY方向に向けてSAGが緩やかに変化するようなレンズ形状となっている場合が多いからである。
【0039】
それに対して、本開示では、レンズ要素1aの原点から見てX方向とY方向の間の所定角度範囲の方向において、レンズ面におけるSAGが光軸からの距離rが同じX方向のSAGとY方向のSAGの間の範囲を逸脱する。これにより、例えば図4(a)中のθ方向について、図4(b)に示すように、レンズ面におけるSAGを大幅に変化させることができ、照射パターンの形状をより大幅に変化させることが可能である。例えば、X方向とY方向の間のθ方向において、レンズ面におけるSAGが光軸からの距離rが同じX方向のSAG及び、Y方向のSAGの両方よりも大きくなるようにしてもよい。あるいは、X方向とY方向の間のθ方向において、レンズ面におけるSAGが光軸からの距離rが同じX方向のSAG及び、Y方向のSAGの両方よりも小さくなるようにしてもよい。
【0040】
ここで、受光素子の受光面が四角形であり、マイクロレンズアレイ1による照射パターンが六角形である場合について、より具体的に説明すると、照射パターンの全部が受光面に照射されるようにした場合には、受光面の四隅には光が照射されず、周辺部減光が助長される。一方、受光面の四隅に充分な光を照射した場合には、受光面の外部に照射される照射光の割合が増加し、効率が低下するのである。これに対し、照射パターンの外形を矩形に近づけることで、効率を向上させるとともに、周辺部減光も抑制することが可能となる。
【0041】
次に、ハニカム構造を有するマイクロレンズアレイの照射パターン形状を特徴づける、上記の非球面式(1)の他の指標について説明する。図5には、マイクロレンズアレイ5におけるハニカム構造の模式図を示す。図中の各六角形はレンズ要素5aを示す。ハニカム構造は、レンズ要素5aを示す六角形の対向する平行な辺同士が接するように並べられ
たレンズ要素5aの列5bが互い違いに配置される形状を有する。このレンズ要素5aの列5bにおける、レンズ要素5aの並び方向は、図3(c)における上下方向すなわち、Y方向に相当する(以下、単純にY方向ともいう。)。また、このレンズ要素5aの列5bが互い違いに配列される配列方向(図5における矢印5cの方向)は、図3(c)における左右方向すなわち、X方向に相当する(以下、単純にX方向ともいう)。
【0042】
レンズ要素5aの列5bにおいてレンズ要素5aどうしが接しない二辺間の頂角をα(以下、単純にX方向の頂角αともいう。)、Y方向に対するレンズ要素5aのピッチをPy、X方向のレンズ要素5aのピッチをPxとした場合に、アスペクト比k=Py/PxとX方向の頂角αの間に、

α=a・k+90(deg)・・・・・(2)

なる関係が成り立つとする(aは本実施形態において定義するパラメータ)。本実施形態では、このパラメータaを指標として、マイクロレンズアレイ5の照射パターンの特性を評価する。図6には、パラメータaの値を変化させた場合の、アスペクト比kと、X方向の頂角αの関係のグラフを示す。この関係は式(2)に基づいて算出されたものである。なお、(2)式を変形させることで、パラメータaを以下の(3)式のように定義することも可能である。

a=(α―90)/k・・・・・(3)

なお、図5において、Pyは本開示における第1ピッチに相当し、Pxは本開示における第2ピッチに相当する。
【0043】
図7には、パラメータa及び、アスペクト比kと、マイクロレンズアレイ5の照射パターンの特性との関係を示す。図7(a)は、パラメータa≒35、アスペクト比k=1.07の場合、図7(b)は、パラメータa≒35、アスペクト比k=1.30の場合、図7(c)は、パラメータa≒35、アスペクト比k=1.67の場合について示す。図7に示すとおり、パラメータaが同じ場合、アスペクト比kが増加すると、ハニカム構造におけるレンズ要素5aが横長になっていくことが分かる。また、X方向の頂角αの値が大きくなることが分かる。そして、照射パターンの形状は、いずれの場合も六角形となっており、効率及び、周辺部減光の点で不利であることが分かる。なお、図7(a)におけるX方向の頂角αの値は、127.5(deg)、図7(b)におけるX方向の頂角αの値は、135.5(deg)、図7(c)におけるX方向の頂角αの値は、148.5(deg)と、いずれの場合にも、X方向の頂角αが125(deg)より大きくなっている。
【0044】
次に、図8には、パラメータa及び、アスペクト比kと、マイクロレンズアレイ5の照射パターンの特性との関係の第2の例を示す。図8(a)は、パラメータa≒20、アスペクト比k=1.07の場合、図8(b)は、パラメータa≒20、アスペクト比k=1.30の場合、図8(c)は、パラメータa≒20、アスペクト比k=1.67の場合について示す。図8に示すとおり、照射パターンの形状は、a≒30の場合と比較して、矩形に近いまたは、各辺が内側に湾曲した四辺形形状となっている。このことは、効率及び、周辺部減光の点でより有利であることを示している。なお、図8(a)におけるX方向の頂角αの値は、111.4(deg)、図8(b)におけるX方向の頂角αの値は、116(deg)、図8(c)におけるX方向の頂角αの値は、123.4(deg)と、いずれの場合にも、X方向の頂角αが125(deg)より小さくなっている。図7におけるX方向の頂角αと、図8におけるX方向の頂角αを比較すると、X方向の頂角αと、照射パターンの特性との間にも相関があり、X方向の頂角αの値が125(deg)以下
であれば、効率及び、周辺部減光の点でより有利であるとも言える。
【0045】
図9には、パラメータa及び、アスペクト比kと、マイクロレンズアレイ5の照射パターンの特性との関係の第3の例を示す。図9(a)は、パラメータa≒30、アスペクト比k=1.49の場合、図9(b)は、パラメータa≒10、アスペクト比k=1.49の場合について示す。図9に示すとおり、アスペクト比kが同じ場合、照射パターンの形状は、a≒30の場合と比較して、a≒10の場合には、四辺形の各辺の内側への湾曲度合いが強くなっていることが分かる。なお、図9(a)におけるX方向の頂角αの値は、134.7(deg)、図9(b)におけるX方向の頂角αの値は、104.9(deg)であり、X方向の頂角αが125(deg)より小さい図9(b)の場合には、照射パターンの外形の各辺の外側への湾曲が見られず、効率及び、周辺部減光の点でより有利であることが分かる。
【0046】
図10には、パラメータa及び、アスペクト比kと、マイクロレンズアレイ5の照射パターンの特性との関係の第4の例を示す。図10(a)は、パラメータa≒30、アスペクト比k=1.49の場合について示す。図10(b)は、パラメータa≒30、アスペクト比k=1.49の場合であって、ピッチPyを1/2から1/3に変更した場合について示す。図10(c)は、さらに、レンズ要素5aの列5bにおいてレンズ要素5a同士が接する辺を傾斜させた場合について示す。図10(b)に示すとおり、ピッチPyのずれを1/2から1/3に変更することで、照射パターンの形状を平行四辺形の形状とすることができる。そして、図10(c)に示すとおり、さらに、レンズ要素5aの列5bにおいてレンズ要素5a同士が接する辺を傾斜させることで、照射パターンの外形を長方形型に補正することが可能であることが分かる。
【0047】
図11には、パラメータa及び、アスペクト比kと、マイクロレンズアレイ5の照射パターンの特性との関係の第5の例を示す。図11(a)は、アスペクト比kにおいて、Px<Pyの場合、図11(b)は、アスペクト比kにおいて、Px>Pyの場合について示す。このように、所望の照射パターンに応じて、PxとPyの大小関係は選択可能である。これにより、照射パターン自体のアスペクト比も制御可能である。ここで、多くの装置においては、横長の長方形状の受光面を有する受光素子が用いられることが多く、図11(b)のように、マイクロレンズアレイ5のアスペクト比として、Px>Pyのアスペクト比を設定しておけば、より容易に、より多くの装置にそのまま適用が可能である。
【0048】
図12には、パラメータa及び、アスペクト比kと、照射パターンの全体の強度と、受光素子を想定した所望範囲における照射光の強度との比として定義した効率(%)との関係を示す。図12における横軸はパラメータa、縦軸は効率を示す。図12から分かるように、全てのアスペクト比kにおいて、パラメータaの値が大きい方が、効率が高くなることが分かる。
【0049】
次に、図13には、パラメータa及び、アスペクト比kと、受光素子における受光面の周辺部/中心の照射光の強度比との関係を示す。図13における横軸はパラメータa、縦軸は強度比(%)を示す。図13から分かるように、全てのアスペクト比kにおいて、パラメータaの値が小さい方が、受光面の周辺部/中心の照射光の強度比が高くなることが分かる。
【0050】
図12及び図13の結果より、パラメータaの値が、15≦a≦35の範囲であれば、充分に使用に耐え得る照射パターンを得ることが可能であり、20≦a≦30の範囲であれば、効率と周辺部減光の良好なバランスを取ることができ、より良好な照射パターンの特性を得ることが可能であることが分かる。
【0051】
ここで、上記の実施形態では、光源2から発光された光に、マイクロレンズアレイ5を通過させて、スクリーン3上に投影する用い方を前提とした場合について説明した。これ以外に、マイクロレンズアレイ5は、光源2から発光された光を、マイクロレンズアレイ1上で反射させて、スクリーン3上に投影するような用い方をすることも可能である。
【0052】
また、本実施形態ではマイクロレンズアレイ5における各レンズ要素5aが、光源2側の片面に配列された例について説明したが、各レンズ要素5aが、光源2と反対側の片面に配列されるようにしても構わない。さらに、両面に配列されるようにしても構わない。
【0053】
また、各レンズ要素5aの断面は、曲面形状が非連続的に並ぶ形状としたが、曲面形状を滑らかな曲線で連続的に繋げるような形状とすることも可能である。
【0054】
また、本実施形態におけるマイクロレンズアレイ5の材質については、基材と各レンズ要素5aとを別材料で形成してもよいし、同じ材料で一体的に形成してもよい。基材とレンズ要素5aとを別材料で形成する場合には、基材またはレンズ要素5aの一方を樹脂材料、他方をガラス材料で形成しても構わない。基材とレンズ要素5aとを同じ材料で一体的に形成する場合には、屈折率界面を有さないため、透過効率を高めることが可能となる。また、基材と各レンズ要素5aとの剥離が生じることもなく信頼性を向上させることが可能である。この場合は、マイクロレンズアレイ5は樹脂単体で形成されてもよいし、ガラス単体で形成されてもよい。
【0055】
また、図14に示すように、本実施形態において説明したマイクロレンズアレイ5と同等の機能を有するマイクロレンズアレイ11を、可撓性のシート12上に形成することによって、入射する光を拡散して均一化する拡散板10を構成することとしてもよい。マイクロレンズアレイ11を強固な平板上に形成して拡散板としてもよいことは当然である。
【0056】
また、図15に示すように、本実施形態において説明したマイクロレンズアレイ5と同等の機能を有するマイクロレンズアレイ21と、光源22と、光源制御部23とを組み合わせて、照明装置20を構成することとしてもよい。この照明装置20は、単体で照明用に使用されてもよいし、TOF方式の距離測定装置等の計測装置や他の装置に組み込まれて使用されてもよい。また、照明装置20において、マイクロレンズアレイ21のレンズ要素は、光源22側の片面に配置してもよいし、光源22の反対側の片面に配置してもよい。両面に配置してもよい。さらに、光源22として、指向性について特に制限はないが、例えば指向性が±20°以下のものを用いてもよい。より好ましくは、指向性が±10°以下のものを用いてもよい。光源22として、より指向性の高い光源を用いることで、画角θFOIの両端における放射照度分布を、よりエッジの立った形状とすることが可能である。
【0057】
また、本実施形態において説明したマイクロレンズアレイ5と同等の機能を有するマイクロレンズアレイを、画像撮影用、セキュリティ機器における顔認証用、車両やロボットにおける空間認証用の光学系として使用しても構わない。また、本実施形態において説明したマイクロレンズアレイ1を、回折光学素子や屈折光学素子を含む、他の光学素子と組み合わせて使用しても構わない。また、マイクロレンズアレイ1の表面には如何なるコーティングを施しても構わない。
【0058】
<導電性物質の配線について>
なお、本実施形態に係るマイクロレンズアレイ5の表面または内部には、導電性物質を含む配線を施し、当該配線の通電状態をモニターすることにより、各レンズ要素5aの損傷を検出できるようにしてもよい。そうすることで、各レンズ要素5aのクラック、剥離などの損傷を簡便に検出することができるので、マイクロレンズアレイ5の損傷に起因す
る照明装置や距離測定装置の不具合、誤作動による被害を未然に防止することができる。例えば、各レンズ要素5aのクラックの発生を、導電性物質の断線により検出し、光源の発光を禁止することで、当該クラックを介して光源からの0次光が直接マイクロレンズアレイ5を透過し、外部に照射されることを回避できる。その結果、装置のアイセーフティー性能を向上させることが可能である。
【0059】
上記の導電性物質の配線は、マイクロレンズアレイ5の周囲や、各レンズ要素5a上に施しても良い。また、レンズ要素5aが形成された方の面、反対側の面、両側の何れの面に施してもよい。導電性物質としては、導電性を有するものである限り特に限定されず、例えば、金属、金属酸化物、導電性ポリマー、導電性炭素系物質などを使用することができる。
【0060】
より具体的には、金属としては、金、銀、銅、クロム、ニッケル、パラジウム、アルミニウム、鉄、白金、モリブデン、タングステン、亜鉛、鉛、コバルト、チタン、ジルコニウム、インジウム、ロジウム、ルテニウム、及びこれらの合金等が挙げられる。金属酸化物としては、酸化クロム、酸化ニッケル、酸化銅、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化スズ、又は、これらの複合酸化物、例えば、酸化インジウムと酸化スズとの複合酸化物(ITO)、酸化スズと酸化リンとの複合酸化物子(PTO)等が挙げられる。導電性ポリマーとしては、ポリアセチレン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン等が挙げられる。導電性炭素系物質としては、カーボンブラック、SAF、ISAF、HAF、FEF、GPF、SRF、FT、MT、熱分解カーボン、天然グラファイト、人造グラファイト等が挙げられる。これら導電性物質は、単独または2種以上組み合わせて使用することができる。
【0061】
導電性物質としては、導電性に優れ、配線を形成しやすい、金属又は金属酸化物が好ましく、金属がより好ましく、金、銀、銅、インジウム等が好ましく、100℃程度の温度で相互に融着し、樹脂製のマイクロレンズアレイ5上でも導電性に優れた配線を形成することができる点で銀が好ましい。また、導電性物質による配線のパターン形状については特に限定されない。マイクロレンズアレイ1の周囲を囲うパターンでも良いし、よりクラック等の検出性を高めるためにパターンを複雑な形状としてもよい。さらに、透過性の導電性物質によってマイクロレンズアレイ5の少なくとも一部を覆うパターンでも良い。
【符号の説明】
【0062】
1、5、11、21・・・マイクロレンズアレイ
1a、5a・・・レンズ要素
2・・・光源
3・・・スクリーン
10・・・拡散板
12・・・可撓性のシート
20・・・照明装置
22・・・光源
23・・・光源制御部
100・・・TOF距離測定装置
101・・・光源制御部
102・・・光源
103・・・照射光学系
104・・・反射光学系
105・・・受光素子
106・・・信号処理回路
図1
図2
図3
図4
図5
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図10
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