(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173134
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】積層体及び包装袋
(51)【国際特許分類】
B32B 27/32 20060101AFI20231130BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
B32B27/32 Z
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022085165
(22)【出願日】2022-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100169063
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100186761
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 勇太
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 正樹
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E086AB01
3E086AC11
3E086AD01
3E086BA04
3E086BA15
3E086BB01
3E086BB41
3E086BB85
4F100AA17B
4F100AB00B
4F100AK07A
4F100AK07C
4F100BA03
4F100BA04
4F100BA07
4F100EH66B
4F100EJ38A
4F100EJ65D
4F100GB15
4F100JK03
4F100JL12C
4F100YY00A
(57)【要約】
【課題】リサイクル性適性が高く、かつ、複数方向に対するカット性を向上可能な積層体及びその製袋物である包装袋を提供すること。
【解決手段】積層体は、二軸延伸ポリプロピレンを含む基材層と、金属及び無機酸化物の少なくとも一を含む蒸着層と、ポリプロピレンを含むシーラント層と、を備える。積層体における二軸延伸ポリプロピレン及びポリプロピレンの合計質量の割合が90質量%以上であり、積層体の厚さのうち、基材層の厚さの割合は、45%以上である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二軸延伸ポリプロピレンを含む基材層と、
金属及び無機酸化物の少なくとも一を含む蒸着層と、
ポリプロピレンを含むシーラント層と、
を備える積層体であって、
前記積層体における二軸延伸ポリプロピレン及びポリプロピレンの合計質量の割合が90質量%以上であり、
前記積層体の厚さのうち、前記基材層の厚さの割合は、45%以上である、
積層体。
【請求項2】
前記基材層と前記蒸着層との間に位置するアンカーコート層をさらに備え、
前記アンカーコート層は、極性基を有する樹脂を含み、
前記基材層と前記アンカーコート層とは、共押出層である、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
二軸延伸ポリプロピレンを含む基材層と、
二軸延伸ポリプロピレンを含む樹脂層、及び前記樹脂層上に位置すると共に金属及び無機酸化物の少なくとも一を含む蒸着層を有する中間層と、
ポリプロピレンを含むシーラント層と、
を備える積層体であって、
前記積層体における二軸延伸ポリプロピレン及びポリプロピレンの合計質量の割合が90質量%以上であり、
前記積層体の厚さのうち、前記基材層及び前記樹脂層の合計厚さの割合は、45%以上である、
積層体。
【請求項4】
前記中間層は、前記樹脂層上と前記蒸着層との間に位置するアンカーコート層をさらに備え、
前記アンカーコート層は、極性基を有する樹脂を含み、
前記樹脂層と前記アンカーコート層とは、共押出層である、請求項3に記載の積層体。
【請求項5】
前記基材層と前記シーラント層との間に位置し、ウレタン樹脂を含む接着層をさらに備える、請求項1~4のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項6】
JIS K 7128-1:1998に記載されるトラウザー引裂法に準拠して測定した、前記積層体の巾方向の引裂強度が、5.0N以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項7】
JIS K 7128-1:1998に記載されるトラウザー引裂法に準拠して測定した、前記積層体の流れ方向の引裂強度が、5.0N以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項8】
請求項1~4のいずれか一項に記載の積層体の製袋物である、包装袋。
【請求項9】
ピロー包装袋である、請求項8に記載の包装袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、積層体及び包装袋に関する。
【背景技術】
【0002】
ベースフィルムとして耐熱性及び強靭性に優れた二軸延伸PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムと、シーラント層としてポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンフィルムとを備える積層体が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
世界でプラスチックごみ問題が注目される中、循環型社会の実現にむけて環境配慮型包装材料の需要がますます高まっている。包装材料に関し、グローバル企業の多くがより優れたプラスチック資源循環に向けた目標を設定し、さまざまな施策を打ち出している。また、米国では、PE(ポリエチレン)の回収から再利用までのリサイクルルートが整備され始めているなど、世界的にモノマテリアル(単一素材)を前提とするリサイクルへの取り組みが加速しつつある。すなわち、従来、様々な異種材料を組み合わせることで高性能化を図ってきた包装用の積層体においても、モノマテリアル化が求められるようになってきている。例えば、積層体における単一樹脂材料の質量の割合が90質量%以上である積層体は、モノマテリアル化された積層体(単一樹脂材料を主構成とする積層体)と言える。
【0005】
リサイクル適正の観点から、ポリオレフィンを主構成とする積層体の利用が検討される。このような積層体を用いた包装袋には、例えば、ハーフカット加工、ミシン目加工、レーザ加工等の実施によって開封容易性を付与することがある。しかしながら、ハーフカット加工、ミシン目加工では、積層体のガスバリア性を劣化してしまうおそれがある。また、ポリオレフィンは、レーザ(特にCO2レーザ)を吸収しにくいことから、上記積層体を用いた包装袋のレーザ加工適正に課題がある。このため、ポリオレフィンを主構成とする積層体には、ガスバリア性を保持しつつ、カット性を向上可能な態様が求められる。
【0006】
本開示の一側面に係る目的は、リサイクル性適性が高く、かつ、ガスバリア性を保持しつつ複数方向に対するカット性を向上可能な積層体及びその製袋物である包装袋の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一側面に係る積層体は、二軸延伸ポリプロピレンを含む基材層と、金属及び無機酸化物の少なくとも一を含む蒸着層と、ポリプロピレンを含むシーラント層と、を備え、積層体における二軸延伸ポリプロピレン及びポリプロピレンの合計質量の割合が90質量%以上であり、積層体の厚さのうち、基材層の厚さの割合は、45%以上である。
【0008】
上記積層体によれば、積層体における二軸延伸ポリプロピレン及びポリプロピレンの合計質量の割合が90質量%以上であることから、積層体のリサイクル適正を高くできる。加えて、積層体の厚さのうち、二軸延伸ポリプロピレンを含む基材層の厚さの割合は、45%以上である。これにより、積層体に開封容易性を付与するための加工を実施することなく、積層体におけるカット性を向上可能である。このため、当該加工に伴う蒸着層の損傷などが発生しないので、積層体のガスバリア性を保持しつつ、積層体における複数方向に対するカット性を向上可能である。
【0009】
上記積層体は、基材層と蒸着層との間に位置するアンカーコート層をさらに備え、アンカーコート層は、極性基を有する樹脂を含み、基材層とアンカーコート層とは、共押出層でもよい。この場合、アンカーコート層の存在により蒸着層が剥離しにくくなるので、当該剥離に伴う積層体のガスバリア性の劣化が発生しにくくなる。加えて、アンカーコート層は極性基を有する樹脂を含むので、当該樹脂は結晶化しやすい。このようなアンカーコート層と基材層とが共押出層であることによって、アンカーコート層による積層体のカット性が阻害されにくくなる。
【0010】
本開示の別の一側面に係る積層体は、二軸延伸ポリプロピレンを含む基材層と、二軸延伸ポリプロピレンを含む樹脂層、及び樹脂層上に位置すると共に金属及び無機酸化物の少なくとも一を含む蒸着層を有する中間層と、ポリプロピレンを含むシーラント層と、を備え、積層体における二軸延伸ポリプロピレン及びポリプロピレンの合計質量の割合が90質量%以上であり、積層体の厚さのうち、基材層及び樹脂層の合計厚さの割合は、45%以上である。
【0011】
上記積層体によれば、積層体における二軸延伸ポリプロピレン及びポリプロピレンの合計質量の割合が90質量%以上であることから、積層体のリサイクル適正を高くできる。加えて、積層体の厚さのうち、二軸延伸ポリプロピレンを含む基材層及び樹脂層の合計厚さの割合は、45%以上である。これにより、積層体に開封容易性を付与するための加工を実施することなく、積層体におけるカット性を向上可能である。このため、当該加工に伴う蒸着層の損傷などが発生しないので、積層体のガスバリア性を保持しつつ、積層体における複数方向に対するカット性を向上可能である。
【0012】
中間層は、樹脂層と蒸着層との間に位置するアンカーコート層をさらに備え、アンカーコート層は、極性基を有する樹脂を含み、樹脂層とアンカーコート層とは、共押出層でもよい。この場合、アンカーコート層の存在により蒸着層が剥離しにくくなるので、当該剥離に伴う積層体のガスバリア性の劣化が発生しにくくなる。加えて、アンカーコート層は極性基を有する樹脂を含むので、当該樹脂は結晶化しやすい。このようなアンカーコート層と樹脂層とが共押出層であることによって、アンカーコート層による積層体のカット性が阻害されにくくなる。
【0013】
基材層とシーラント層との間に位置し、ウレタン樹脂を含む接着層をさらに備えてもよい。この場合、カット性を維持しつつ、基材層とシーラント層との剥離が発生しにくくなる。
【0014】
JIS K 7128-1:1998に記載されるトラウザー引裂法に準拠して測定した、積層体の巾方向の引裂強度が、5.0N以下でもよい。
【0015】
JIS K 7128-1:1998に記載されるトラウザー引裂法に準拠して測定した、積層体の流れ方向の引裂強度が、5.0N以下でもよい。
【0016】
本開示の一側面に係る包装袋は、積層体の製袋物でもよい。また、当該包装袋は、ピロー包装袋でもよい。これらの場合、複数方向に対して包装袋を容易に引き裂くことができる。
【発明の効果】
【0017】
本開示の一側面によれば、リサイクル性適性が高く、かつ、ガスバリア性を保持しつつ複数方向に対するカット性を向上可能な積層体及びその製袋物である包装袋を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1(a)は、一実施形態に係る積層体の模式平面図であり、
図1(b)は、一実施形態に係る積層体を示す模式断面図である。
【
図3】
図3(a)は、包装袋の別の一例を示す概略正面図であり、
図3(b)は、
図3(a)のIIIb-IIIb線に沿った断面図である。
【
図4】
図4は、第1変形例に係る積層体を示す模式断面図である。
【
図5】
図5は、第2変形例に係る積層体を示す模式断面図である。
【
図6】
図6(a)は、試料を示す模式平面図であり、
図6(b)は、トラウザー引裂試験後の試料を示す模式平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、場合により図面を参照しつつ本開示の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。また、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0020】
<積層体>
図1(a)は、一実施形態に係る積層体の模式平面図であり、
図1(b)は、一実施形態に係る積層体を示す模式断面図である。
図1(a),(b)に示す積層体1は、例えば包装袋などの製造に利用されるシート状の包装材料であり、基材10と、シーラント層20と、接着層30とを備える。基材10とシーラント層20とは、接着層30で接着されている。積層体1においては、基材10と、接着層30と、シーラント層20とが順に積層される。本実施形態では、基材10と、接着層30と、シーラント層20とのそれぞれは、ポリプロピレンを含む。以下では、
図1(a)に示される方向MDを積層体1の流れ方向(長手方向)とし、方向TDを積層体1の巾方向(短手方向)とする。また、方向MD,TDの両方に直交する方向を、積層体1に含まれる部材の積層方向とする。
【0021】
一実施形態では、積層体1は、モノマテリアル化が実現された部材である。本明細書では、積層体が実質的に単一の材料(モノマテリアル)から形成される場合、当該積層体のモノマテリアル化が実現されたとみなせる。積層体に含まれる特定の材料の質量比率が90質量%以上である場合、当該積層体が実質的に単一の材料(モノマテリアル)から形成されるとみなされる。本実施形態では、積層体1におけるポリプロピレンの合計質量の割合が90質量%以上である。積層体1のモノマテリアル化をより高度に達成する観点から、積層体1に含まれるポリプロピレンの質量比率は、92.5質量%以上でもよいし、95質量%以上でもよい。
【0022】
<基材10>
基材10は、積層体1における支持体として機能する層状部材であり、基材層11と、アンカーコート層12と、蒸着層13とを有する。基材10において、基材層11と、アンカーコート層12と、蒸着層13とが順に積層される。このため、アンカーコート層12は、基材層11と蒸着層13との間に位置している。基材10におけるポリプロピレンの合計質量の割合が90質量%以上である。このため、基材10は、モノマテリアル化が実現された部材と言える。
【0023】
基材層11は、ポリプロピレンを含む。基材層11は、ポリプロピレンフィルムを含んでいてよく、ポリプロピレンフィルムからなるものであってよい。ポリプロピレンフィルムは、ポリプロピレンを、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸の酸無水物、不飽和カルボン酸のエステル等を用いてグラフト変性して得られる酸変性ポリプロピレンフィルム等であってもよい。また、ポリプロピレンとしては、ホモポリプロピレン樹脂(PP)、プロピレン-エチレンランダム共重合体、プロピレン-エチレンブロック共重合体、プロピレン-αオレフィン共重合体などのポリプロピレン系樹脂等を使用することができる。
【0024】
基材層11を構成するポリプロピレンフィルムには、難燃剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、酸化防止剤、光安定剤、粘着付与剤、静電防止剤等の各種添加材が添加されてよい。
【0025】
基材層11を構成するポリプロピレンフィルムは、方向MDと方向TDとに延伸される二軸延伸フィルムである。よって、基材層11は、ポリプロピレンの一種である二軸延伸ポリプロピレン(OPP)を含む。この場合、方向MDに沿った積層体1のカットと、方向TDに沿った積層体1のカットとを容易にできる。加えて、製袋時のヒートシール工程において基材層11が熱融着することを抑制できる。また、積層体1及び積層体1から形成される包装袋などを、レトルト処理、ボイル処理を施す用途に好適に用いることができる。
【0026】
積層体1のカット容易性の観点から、基材層11の厚さの割合(OPP厚さ割合)は、積層体1の厚さの45%以上である。当該割合は、48%以上でもよいし、50%以上でもよい。基材層11の厚さは、例えば10μm以上200μm以下である、環境負荷低減のための材料削減の観点、及び、優れた耐熱性、耐衝撃性と優れたガスバリア性とを得る観点から、基材層11の厚さは、例えば20μm以上でもよいし、25μm以上でもよいし、30μm以上でもよいし、40μm以上でもよいし、100μm以下でもよいし、60μm以下でもよいし、50μm以下でもよい。もしくは、積層体1における基材層11の質量の割合(OPP質量割合)は、45質量%以上でもよいし、48質量%以上でもよいし、50質量%以上でもよい。
【0027】
基材層11には、その積層面に、バリア性能を損なわない範囲でコロナ処理、プラズマ処理、フレーム処理などの各種前処理を施したり、易接着層などのコート層を設けても構わない。
【0028】
アンカーコート層12は、蒸着層13が設けられる面を有する部分である。アンカーコート層12が設けられることにより、基材層11と蒸着層13との密着性能向上と、基材層11表面の平滑性向上との二つの効果を得ることができる。なお、平滑性が向上することで蒸着層13を欠陥なく均一に成膜し易くなり、高いバリア性を発現し易い。アンカーコート層12は、例えば、アンカーコート剤を用いて形成することができる。
【0029】
アンカーコート剤としては、例えば、ポリエステル系ポリウレタン樹脂、ポリエーテル系ポリウレタン樹脂等が挙げられる。アンカーコート剤としては、耐熱性及び層間接着強度の観点から、ポリエステル系ポリウレタン樹脂が好ましい。アンカーコート層12の切断性などの観点から、アンカーコート剤に含まれる樹脂は、極性基を有する樹脂でもよい。
【0030】
アンカーコート層12の厚さは特に限定されないが、基材層11と比較して顕著に小さい。アンカーコート層12の厚さは、例えば、0.01~5μmの範囲であることが好ましく、0.03~3μmの範囲であることがより好ましく、0.05~2μmの範囲であることが特に好ましい。アンカーコート層12の厚さが上記下限値以上であると、より十分な層間接着強度が得られる傾向がある。他方、アンカーコート層12の厚さが上記上限値以下であると、所望のガスバリア性が発現し易い傾向がある。
【0031】
アンカーコート層12を基材層11上に塗工する方法としては、公知の塗工方法が特に制限なく使用可能であり、浸漬法(ディッピング法);スプレー、コーター、印刷機、刷毛等を用いる方法が挙げられる。また、これらの方法に用いられるコーター及び印刷機の種類並びにそれらの塗工方式としては、ダイレクトグラビア方式、リバースグラビア方式、キスリバースグラビア方式、オフセットグラビア方式等のグラビアコーター、リバースロールコーター、マイクログラビアコーター、チャンバードクター併用コーター、エアナイフコーター、ディップコーター、バーコーター、コンマコーター、ダイコーター等を挙げることができる。
【0032】
アンカーコート層12の塗布量としては、アンカーコート剤を塗工して乾燥した後の1m2あたりの質量が0.01~5g/m2であることが好ましく、0.03~3g/m2であることがより好ましい。アンカーコート剤を塗工して乾燥した後の1m2あたりの質量が上記下限以上であると、成膜が十分となる傾向があり、他方、上記上限以下であると十分に乾燥し易く溶剤が残留し難い傾向がある。
【0033】
アンカーコート層12を乾燥させる方法としては、特に限定されないが、自然乾燥による方法、所定の温度に設定したオーブン中で乾燥させる方法、上記コーター付属の乾燥機、例えばアーチドライヤー、フローティングドライヤー、ドラムドライヤー、赤外線ドライヤー等を用いる方法などが挙げられる。さらに、乾燥の条件としては、乾燥させる方法により適宜選択することができ、例えばオーブン中で乾燥させる方法においては、温度60~100℃にて、1秒間~2分間程度乾燥することが好ましい。
【0034】
アンカーコート層12として、上記ポリウレタン樹脂に代えて、ポリビニルアルコール系樹脂を用いることができる。ポリビニルアルコール系樹脂としては、ビニルエステル単位がケン化されてなるビニルアルコール単位を有するものであればよく、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)が挙げられる。
【0035】
PVAとしては、例えば、酢酸ビニル、ギ酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサティック酸ビニル等のビニルエステルを、単独で重合し、次いでケン化した樹脂が挙げられる。PVAは、共重合変性又は後変性された変性PVAであってもよい。変性PVAは、例えばビニルエステルと、ビニルエステルと共重合可能な不飽和モノマーを共重合させた後にケン化することで得られる。ビニルエステルと共重合可能な不飽和モノマーとしては、例えばエチレン、プロピレン、イソブチレン、α-オクテン、α-ドデセン、α-オクタデセン等のオレフィン;3-ブテン-1-オール、4-ペンチン-1-オール、5-ヘキセン-1-オール等のヒドロキシ基含有α-オレフィン;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、ウンデシレン酸等の不飽和酸;アクリロニトリル、メタアクリロニトリル等のニトリル;ジアセトンアクリルアミド、アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド;エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸等のオレフィンスルホン酸;アルキルビニルエーテル、ジメチルアリルビニルケトン、N-ビニルピロリドン、塩化ビニル、ビニルエチレンカーボネート、2,2-ジアルキル-4-ビニル-1,3-ジオキンラン、グリセリンモノアリルエーテル、3,4-ジアセトキシ-1-ブテン等のビニル化合物;塩化ビニリデン、1,4-ジアセトキシ-2-ブテン、ビニレンカーボネート等が挙げられる。
【0036】
PVAの重合度は300~3000が好ましい。重合度が300より小さいとバリア性が低下し易く、また3000超であると粘度が高すぎて塗工適性が低下し易い。PVAのケン化度は90モル%以上が好ましく、95モル%以上がより好ましく、99モル%以上がさらに好ましい。また、PVAのケン化度は100モル%以下であっても、99.9モル%以下であってもよい。PVAの重合度及びケン化度は、JIS K 6726(1994)に記載の方法に準拠して測定できる。
【0037】
EVOHは、一般にエチレンと、酢酸ビニル、ギ酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサティック酸ビニル等の酸ビニルエステルとの共重合体をケン化して得られる。
【0038】
EVOHの重合度は300~3000が好ましい。重合度が300より小さいとバリア性が低下し易く、また3000超であると粘度が高すぎて塗工適性が低下し易い。EVOHのビニルエステル成分のケン化度は90モル%以上が好ましく、95モル%以上がより好ましく、99モル%以上がさらに好ましい。また、EVOHのケン化度は100モル%以下であっても、99.9モル%以下であってもよい。EVOHのケン化度は、核磁気共鳴(1H-NMR)測定を行い、ビニルエステル構造に含まれる水素原子のピーク面積と、ビニルアルコール構造に含まれる水素原子のピーク面積とから求められる。
【0039】
EVOHのエチレン単位含有量は10モル%以上であり、15モル%以上がより好ましく、20モル%以上がさらに好ましく、25モル%以上が特に好ましい。また、EVOHのエチレン単位含有量は65モル%以下が好ましく、55モル%以下がより好ましく、50モル%以下がさらに好ましい。エチレン単位含有量が10モル%以上であると、高湿度下におけるガスバリア性あるいは寸法安定性を良好に保つことができる。一方、エチレン単位含有量が65モル%以下であると、ガスバリア性を高めることができる。EVOHのエチレン単位含有量は、NMR法により求めることができる。
【0040】
アンカーコート層12としてポリビニルアルコール系樹脂を用いる場合、アンカーコート層12の形成方法としては、ポリビニルアルコール系樹脂溶液を用いた塗布、多層押出等が挙げられる。本実施形態では、基材層11と、アンカーコート層12とは、共押出層である。
【0041】
蒸着層13は、水蒸気、酸素に対するガスバリア性を示す層であり、金属及び無機酸化物の少なくとも一を含む。蒸着層13は、単層構造でもよいし、積層構造でもよい。このため、蒸着層13は、金属蒸着層及び無機酸化物層の少なくとも一を含む。蒸着層13が金属蒸着層を備える場合、金属蒸着層に含まれる金属としては、例えばアルミニウム、ステンレスなどが挙げられる。蒸着層13が無機酸化物層を備える場合、無機酸化物層に含まれる無機酸化物としては、例えば、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化錫等が挙げられる。透明性及びバリア性の観点から、無機酸化物としては、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、及び酸化マグネシウムからなる群より選択されてよい。また、加工時に引っ張り延伸性に優れる観点から、無機酸化物層を酸化ケイ素を用いた層とすることが好ましい。無機酸化物層を用いることにより、蒸着層13のリサイクル性に影響を与えない範囲のごく薄い層で、高いバリア性を得ることができる。
【0042】
蒸着層13の厚さは、10nm以上50nm以下であることが好ましい。蒸着層13の厚さが10nm以上であると、十分な水蒸気バリア性を得ることができる。また、蒸着層13の厚さが50nm以下であると、蒸着層13の内部応力による変形によりクラックが発生することを抑制し、水蒸気バリア性の低下を抑制することができる。なお、蒸着層13の厚さが50nmを超えると、材料使用量の増加、及び膜形成時間の長時間化等に起因してコストが増加し易いため、経済的観点からも好ましくない。上記と同様の観点から、蒸着層13の厚さは、20nm以上40nm以下であることがより好ましい。
【0043】
蒸着層13は、例えば真空成膜で形成することができる。真空成膜では、物理気相成長法あるいは化学気相成長法を用いることができる。物理気相成長法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。化学気相成長法としては、熱CVD法、プラズマCVD法、光CVD法等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0044】
上記真空成膜では、抵抗加熱式真空蒸着法、EB(Electron Beam)加熱式真空蒸着法、誘導加熱式真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、デュアルマグネトロンスパッタリング法、プラズマ化学気相堆積法(PECVD法)等が特に好ましく用いられる。但し、生産性を考慮すれば、現時点では真空蒸着法が最も優れている。真空蒸着法の加熱手段としては電子線加熱方式や抵抗加熱方式、誘導加熱方式のいずれかの方式を用いることが好ましい。
【0045】
<シーラント層20>
シーラント層20は、積層体1においてヒートシールなどによる封止性を付与する層であり、ポリプロピレンを含む。シーラント層20は、ポリプロピレンフィルムを含んでいてよく、ポリプロピレンフィルムからなるものであってよい。シーラント層20を構成するポリプロピレンフィルムは、ヒートシールによる封止性を高める観点から、無延伸フィルムであることが好ましい。このため、シーラント層20は、無延伸ポリプロピレン(CPP)を含む。シーラント層20を構成するポリプロピレンフィルムには、難燃剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、酸化防止剤、光安定剤、粘着付与剤、静電防止剤等の各種添加材が添加されてよい。
【0046】
シーラント層20の厚さは、積層体1の用途、基材層11の厚さなどによって定められる。シーラント層20の厚さは、例えば、20μm以上100μm以下である。シーラント層20の厚さは、25μm以上でもよいし、30μm以上でもよいし、40μm以上でもよいし、80μm以下でもよいし、60μm以下でもよいし、50μm以下でもよい。
【0047】
<接着層30>
積層体1では、接着層30を介して、基材10とシーラント層20とが積層される。接着層30は、例えば、ドライラミネート用接着剤、ノンソルベントラミネート用接着剤、バリア性接着剤などの接着剤を含む。当該接着剤には、例えば、ポリエステル-イソシアネート系樹脂、ウレタン樹脂、ポリエーテル系樹脂などが含まれてもよい。積層体1のカット性、耐熱性などの観点から、接着層30は、ウレタン樹脂を含んでもよい。接着層30は、塩素を含まなくてもよい。この場合、接着層30を形成する接着剤、リサイクル後の再生樹脂等の着色、及び加熱処理による臭いの発生を抑制できる。接着層30は、環境配慮の観点から、バイオマス材料で形成されていてもよく、溶剤を含まなくてもよい。
【0048】
<積層体1の引裂強度>
本実施形態では、積層体1の引裂強度は、JIS K 7128-1:1998に記載されるトラウザー引裂法に準拠して測定される。当該トラウザー引裂法に準拠した、積層体1の方向MDの引裂強度と、積層体1の方向TDの引裂強度とのそれぞれは、5.0N以下である。当該引裂強度が5.0N以下であって、OPP厚さ割合が積層体1の厚さの45%以上である場合、方向MD,TDのそれぞれに沿った積層体1の引き裂き時に、シーラント層20の伸び、基材10とシーラント層20との剥離(デラミネーション)などが発生しにくい。このため、積層体1の製袋物である包装袋を引き裂く場合、複数方向に沿って包装袋を引き裂きやすくできる。
【0049】
積層体1は、印刷層を更に含んでもよい。印刷層は、基材10と接着層30の間に設けられてもよく、基材10の接着層30とは反対側の面に設けられてもよい。印刷層は、印刷層の再溶融時に着色すること、及び臭いが発生することを抑制する観点から、塩素を含まなくてもよい。印刷層は、環境配慮の観点、バイオマス材料により形成されていてもよい。
【0050】
<包装袋>
以下では、
図2及び
図3を参照しながら、積層体1の製袋物である包装袋の例について説明する。
図2は、包装袋の一例の概略平面図である。
図2に示される包装袋100は、例えば内容物を挟むように二つ折りにした積層体1の端部を封止することによって、袋形状に成形される。
【0051】
包装袋100は、内容物が収容される本体部101と、本体部101の端部に位置するシール部102と、積層体1が折り曲げられた折曲部103とを有する三方袋である。本体部101の形状は、特に限定されず、例えば所定の方向から見て矩形状を呈する。本体部101の外表面における少なくとも一部には、印刷が施されていてよい。本体部101には、例えば、内容物に加えて窒素等の特定の気体が収容されてもよい。シール部102は、積層体1が備えるシーラント層20の一部と他部とが貼り合わされる部分である。シール部102においては、積層体1が備えるシーラント層20の一部と他部とが互いに密着している。シール部102は、例えば積層体1が備えるシーラント層20の一部と他部とが加熱及び圧縮される(すなわち、ヒートシールされる)ことによって形成されるが、これに限られない。例えば、シール部102は、コールドシール等によって形成されてもよい。包装袋100では、折曲部103が本体部101の一辺を構成し、シール部102が本体部101の残り三辺を構成する。折曲部103の両端と、シール部102とは重なっている。
【0052】
図3(a)は、包装袋の別の一例を示す概略正面図であり、
図3(b)は、
図3(a)のIIIb-IIIb線に沿った断面図である。
図3(a),(b)に示される包装袋100Aは、積層体1の折曲げ体であるピロー包装袋である。ピロー包装袋は、例えば公知のピロー包装充填機等を用いることによって形成できる。この場合、上記包装充填機等を用いて、シーラント層20(
図1を参照)が内側に位置した状態にて積層体1を曲げた後、シーラント層20の一部と他の一部とを接着することによって、ピロー包装袋である包装袋100Aが形成される。包装袋100Aは、筒形状を呈する本体110と、フランジ部111とを有する。以下では、本体110の軸方向に直交する方向を、本体110の幅方向とする。積層体1を折り曲げる前において、上記軸方向は積層体1の方向MD,TDの一方に相当し、上記幅方向は積層体1の方向MD,TDの他方に相当する。本実施形態では、上記軸方向は方向MDに相当し、上記幅方向は方向TDに相当する。
【0053】
本体110は、積層体1を幅方向に沿って丸めることによって形成される。軸方向における本体110の両端112は、シーラント層20によって封止されている。内容物の収容製の観点から、軸方向に沿った本体110の寸法は、例えば、軸方向に沿った積層体1の寸法の80%以上である。両端112のシール性の観点から、軸方向に沿った本体110の寸法は、例えば、軸方向に沿った積層体1の寸法の90%以下である。
【0054】
フランジ部111は、包装袋100Aの形成時に設けられる部分であり、軸方向に沿って延在すると共に本体110から突出する。フランジ部111は、軸方向における包装袋100Aの一端から他端まで延在する。
図3(b)に示されるように、フランジ部111は、積層体1の展開時の幅方向におけるシーラント層20の一対の端部が貼り合わされた部分に相当する。積層体1の展開時において、幅方向に沿ったフランジ部111の寸法は、例えば、幅方向に沿った積層体1の寸法の2%以上5%以下である。この場合、包装袋100Aの容積を確保しつつ、フランジ部111が良好に貼り合わせられる。一対の端部の貼り合わせは、本体110の両端112の封止と同時に実施される。
【0055】
以上に説明した本実施形態に係る積層体1によれば、積層体1におけるポリプロピレンの合計質量、具体的には基材10に含まれる二軸延伸ポリプロピレンとシーラント層20に含まれるポリプロピレンとの合計質量の割合が90質量%以上であることから、積層体1のリサイクル適正を高くできる。加えて、積層体1の厚さのうち、二軸延伸ポリプロピレンを含む基材層11の厚さの割合は、45%以上である。これにより、積層体1に開封容易性を付与するための加工を実施することなく、積層体1におけるカット性を向上可能である。このため、当該加工に伴う蒸着層13の損傷などが発生しないので、積層体1のガスバリア性を保持しつつ、積層体1における複数方向に対するカット性を向上可能である。よって、例えば、積層体1の製袋物である包装袋100,100Aなどに対してミシン目加工などを施すことなく、複数方向から容易に引き裂くことができる。したがって、積層体1を利用することによって、密封性を維持しつつ複数方向に対するカット性を向上可能な包装袋100,100Aを製造できる。
【0056】
本実施形態では、積層体1は、基材層11と蒸着層13との間に位置するアンカーコート層12を備え、アンカーコート層12は、極性基を有する樹脂を含み、基材層11とアンカーコート層12とは、共押出層である。このため、アンカーコート層12の存在により蒸着層13が剥離しにくくなるので、当該剥離に伴う積層体1のガスバリア性の劣化が発生しにくくなる。加えて、アンカーコート層12は極性基を有する樹脂を含むので、当該樹脂は結晶化しやすい。このようなアンカーコート層12と基材層11とが共押出層であることによって、アンカーコート層12による積層体1のカット性が阻害されにくくなる。
【0057】
本実施形態では、積層体1は、基材層11とシーラント層20との間に位置し、ウレタン樹脂を含む接着層30を備える。このため、カット性を維持しつつ、基材層11とシーラント層20との剥離が発生しにくくなる。
【0058】
次に、
図4及び
図5を参照しながら、上記実施形態の変形例について説明する。以下では、上記実施形態と重複する記載は省略し、上記実施形態と異なる部分を記載する。つまり、技術的に可能な範囲において、変形例に上記実施形態の記載を適宜用いてもよい。
【0059】
図4は、第1変形例に係る積層体を示す模式断面図である。
図4に示されるように、積層体1Aは、基材層11と、シーラント層20と、接着層30A,30Bと、中間層40とを備える。基材層11と中間層40とは、接着層30Aで接着されている。また、シーラント層20と中間層40とは、接着層30Bで接着されている。積層体1Aにおいては、基材層11と、接着層30Aと、中間層40と、接着層30Bと、シーラント層20とが順に積層される。第1変形例では、基材層11と、シーラント層20と、中間層40とのそれぞれは、ポリプロピレンを含む。積層体1Aに含まれるポリプロピレンの質量比率は、90質量%以上であればよい。
【0060】
積層体1Aが中間層40を備えることにより、上記実施形態の積層体と比較して、製袋時の変形をより低減できる。中間層40は、樹脂層41と、アンカーコート層42と、蒸着層43とを有する。中間層40において、樹脂層41と、アンカーコート層42と、蒸着層43とが順に積層される。このため、アンカーコート層42は、樹脂層41と蒸着層43との間に位置している。積層方向において、中間層40のうち蒸着層43が、シーラント層20に最も近い。第1変形例では、蒸着層43が接着層30Bに接触し、樹脂層41が接着層30Aに接触する。中間層40におけるポリプロピレンの合計質量の割合が90質量%以上である。このため、中間層40は、モノマテリアル化が実現された部材と言える。
【0061】
樹脂層41は、ポリプロピレンを含む。樹脂層41を構成するポリプロピレンフィルムは、基材層11と同様に、方向MDと方向TDとに延伸される二軸延伸フィルムである。よって、樹脂層41は、ポリプロピレンの一種である二軸延伸ポリプロピレンを含む。第1変形例では、樹脂層41の方向MD,TDと、基材層11の方向MD,TDとのそれぞれは、互いに一致している。この場合、方向MDに沿った積層体1Aのカットと、方向TDに沿った積層体1Aのカットとをより容易にできる。アンカーコート層42は、上記第1実施形態のアンカーコート層12と同様の機能を示す層であり、蒸着層43が設けられる面を有する部分である。蒸着層43は、上記第1実施形態の蒸着層13と同様の機能を示す層であり、水蒸気、酸素に対するガスバリア性を示す層であり、金属及び無機酸化物の少なくとも一を含む。
【0062】
積層体1Aのカット容易性の観点から、基材層11と樹脂層41との合計厚さの割合(OPP厚さ割合)は、積層体1Aの厚さの45%以上である。当該割合は、48%以上でもよいし、50%以上でもよい。もしくは、積層体1Aにおける基材層11と樹脂層41との合計質量の割合(OPP質量割合)は、45質量%以上でもよいし、48質量%以上でもよいし、50質量%以上でもよい。
【0063】
中間層40の厚さは、特に限定されないが、基材層11の厚さと同様であってよく、これらの層の厚さの比(基材層11の厚さ/中間層40の厚さ)は、1.00以上であってよく、1.25以上であってよく、1.50以上であってよい。基材層11はヒートシール時にヒートシールバーに直接接する又は近接する部分であり、積層体の各層の中でも特に熱がかかる部分であるため、ヒートシール時に熱収縮しやすい。そのため、中間層40よりも基材層11を厚くすることで、基材層11の熱収縮を抑制することができる。
【0064】
図5は、第2変形例に係る積層体を示す模式断面図である。
図5に示されるように、積層体1Bは、基材層11と、シーラント層20と、接着層30A,30Bと、中間層40Aとを備える。中間層40Aは、上記第1変形例の中間層40と比較して、樹脂層41と、アンカーコート層42と、蒸着層43との積層順序が異なる。具体的には、積層方向において、中間層40Aのうち蒸着層43が、基材層11に最も近い。第1変形例では、蒸着層43が接着層30Aに接触し、樹脂層41が接着層30Bに接触する。
【0065】
以上に説明した第1変形例及び第2変形例のそれぞれにおいても、上記実施形態と同様の作用効果が発揮される。
【0066】
本開示の一側面に係る自立性包装袋は、例えば以下の[1]~[9]に記載する通りであり、上記実施形態及び上記変形例に基づいてこれらを詳細に説明した。
[1]二軸延伸ポリプロピレンを含む基材層と、
金属及び無機酸化物の少なくとも一を含む蒸着層と、
ポリプロピレンを含むシーラント層と、
を備える積層体であって、
前記積層体における二軸延伸ポリプロピレン及びポリプロピレンの合計質量の割合が90質量%以上であり、
前記積層体の厚さのうち、前記基材層の厚さの割合は、45%以上である、
積層体。
[2]前記基材層と前記蒸着層との間に位置するアンカーコート層をさらに備え、
前記アンカーコート層は、極性基を有する樹脂を含み、
前記基材層と前記アンカーコート層とは、共押出層である、[1]に記載の積層体。
[3]二軸延伸ポリプロピレンを含む基材層と、
二軸延伸ポリプロピレンを含む樹脂層、及び前記樹脂層上に位置すると共に金属及び無機酸化物の少なくとも一を含む蒸着層を有する中間層と、
ポリプロピレンを含むシーラント層と、
を備える積層体であって、
前記積層体における二軸延伸ポリプロピレン及びポリプロピレンの合計質量の割合が90質量%以上であり、
前記積層体の厚さのうち、前記基材層及び前記樹脂層の合計厚さの割合は、45%以上である、
積層体。
[4]前記中間層は、前記樹脂層上と前記蒸着層との間に位置するアンカーコート層をさらに備え、
前記アンカーコート層は、極性基を有する樹脂を含み、
前記樹脂層と前記アンカーコート層とは、共押出層である、[3]に記載の積層体。
[5]前記基材層と前記シーラント層との間に位置し、ウレタン樹脂を含む接着層をさらに備える、[1]~[4]のいずれかに記載の積層体。
[6]JIS K 7128-1:1998に記載されるトラウザー引裂法に準拠して測定した、前記積層体の巾方向の引裂強度が、5.0N以下である、[1]~[5]のいずれかに記載の積層体。
[7]JIS K 7128-1:1998に記載されるトラウザー引裂法に準拠して測定した、前記積層体の流れ方向の引裂強度が、5.0N以下である、[1]~[6]のいずれかに記載の積層体。
[8][1]~[7]のいずれかに記載の積層体の製袋物である、包装袋。
[9]ピロー包装袋である、[8]に記載の包装袋。
【0067】
しかし、本発明の一側面は、上記実施形態、上記変形例及び上記[1]~[9]に限定されない。本発明の一側面は、その要旨を逸脱しない範囲でさらなる変形が可能である。
【0068】
上記実施形態及び上記各変形例では、積層体におけるポリプロピレンの合計質量の割合が、90質量%以上であればよい。このため、例えば、積層体において、基材層と樹脂層との一方におけるポリプロピレンの質量比率は、90質量%未満でもよい。
【0069】
上記実施形態では、基材にアンカーコート層及び蒸着層が含まれるが、これに限られない。例えば、シーラント層上に蒸着層が設けられてもよい。この場合、シーラント層と蒸着層との間にアンカーコート層が設けられてもよい。このとき、シーラント層とアンカーコート層とは、共押出層でもよい。もしくは、基材にアンカーコート層及び蒸着層が含まれ、かつ、シーラント層上に蒸着層が設けられてもよい。また、上記各変形例では、中間層にアンカーコート層及び蒸着層が含まれるが、これに限られない。例えば、基材層上に蒸着層が設けられてもよいし、シーラント層上に蒸着層が設けられてもよい。
【実施例0070】
本開示を以下の実施例によりさらに詳細に説明するが、本開示はこれらの例に限定されるものではない。
【0071】
(実施例1)
基材層として、厚さ30μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルム(三井化学東セロ株式会社製、「A-OP(登録商標)、BH」)を準備した。また、シーラント層として、蒸着層が設けられる厚さ25μmの無延伸ポリプロピレンフィルム(東レフィルム加工株式会社製、「VM-OPP,2703」)を準備した。
【0072】
次に、シーラント層の蒸着層上に、ウレタン接着剤(DICグラフィックス株式会社製、「ディックドライLX-500」)と硬化剤(DICグラフィックス株式会社製、「KW-75」)との混合溶液をバーコーター(バーNo.5、ウェット膜厚:11.43g/m2)を用いて、100mm/sの速度で塗工した。続いて、60℃にて1分間当該混合溶液を乾燥させた。続いて、ハンドラミネータを利用して、ニップ厚:0.3Mpa、ニップ温度:60℃、速度:1m/分の条件にて、基材層をシーラント層に積層した。そして、40℃にて72時間、基材層とシーラント層との積層体を静置することによって、厚さ約55μmの積層体を製造した。得られた積層体におけるポリプロピレンの含有量は90質量%以上であった。なお、ハンドラミネータのニップロールは、金属ロール(上側)とゴムロール(下側)とを用いた。
【0073】
(実施例2)
基材層として、厚さ20μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルム(東洋紡株式会社製、「パイレン(登録商標)、P2171」)を準備した。また、中間層として、蒸着層が設けられる厚さ15μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルム(Max Speciality Films社製、商品名:M15SL6)を準備した。加えて、シーラント層として、厚さ40μmの無延伸ポリプロピレンフィルム(三井化学東セロ株式会社製、「GLC」)を準備した。
【0074】
次に、中間層の蒸着層の裏面上と、基材層上とに、ウレタン接着剤(DICグラフィックス株式会社製、「ディックドライLX-500」)と硬化剤(DICグラフィックス株式会社製、「KW-75」)との混合溶液をバーコーター(バーNo.5、ウェット膜厚:11.43g/m2)を用いて、100mm/sの速度で塗工した。続いて、60℃にて1分間当該混合溶液を乾燥させた。続いて、ハンドラミネータを利用して、ニップ厚:0.3Mpa、ニップ温度:60℃、速度:1m/分の条件にて、基材層と中間層とシーラント層とを互いに積層した。そして、40℃にて72時間、基材層と中間層とシーラント層との積層体を静置することによって、厚さ約75μmの積層体を製造した。得られた積層体におけるポリプロピレンの含有量は90質量%以上であった。なお、ハンドラミネータのニップロールは、金属ロール(上側)とゴムロール(下側)とを用いた。
【0075】
(実施例3)
基材層として、厚さ30μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルム(東洋紡株式会社製、「パイレン(登録商標)、P2171」)を準備したこと以外は、実施例2と同様の手法にて厚さ約85μmの積層体を製造した。得られた積層体におけるポリプロピレンの含有量は90質量%以上であった。
【0076】
(比較例1)
基材層として、厚さ20μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルム(三井化学東セロ株式会社製、「A-OP(登録商標)、BH」)を準備したこと、ならびに、シーラント層として、蒸着層が設けられる厚さ25μmの無延伸ポリプロピレンフィルム(東レフィルム加工株式会社製、「VM-OPP,2703」)を準備したこと以外は、実施例1と同様の手法にて厚さ約45μmの積層体を製造した。得られた積層体におけるポリプロピレンの含有量は90質量%以上であった。
【0077】
(比較例2)
基材層として、厚さ30μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルム(三井化学東セロ株式会社製、「A-OP(登録商標)、BH」)を準備したこと、ならびに、シーラント層として、蒸着層が設けられる厚さ40μmの無延伸ポリプロピレンフィルム(東レフィルム加工株式会社製、「VM-OPP,2703」)を準備したこと以外は、実施例1と同様の手法にて厚さ約70μmの積層体を製造した。得られた積層体におけるポリプロピレンの含有量は90質量%以上であった。
【0078】
(比較例3)
シーラント層として、蒸着層が設けられる厚さ40μmの無延伸ポリプロピレンフィルム(株式会社麗光製、「サンミラー(登録商標),CP-VR」)を準備したこと以外は、実施例1と同様の手法にて厚さ約70μmの積層体を製造した。得られた積層体におけるポリプロピレンの含有量は90質量%以上であった。
【0079】
(比較例4)
基材層として、ポリアミド(宇部興産株式会社製、ポリアミド6、融点:220℃)と、接着性樹脂(三井化学株式会社製、「アドマーQF500」、無水マレイン酸変性ポリプロピレン)と、ポリプロピレン(日本ポリプロ株式会社製、「ノバテックFL203D」、融点:160℃)とを共押出した後、逐次二軸延伸装置により、縦方向(MD方向)に5倍、横方向(TD方向)に10倍延伸して、ポリアミドからなる表面樹脂層(0.4μm)と、接着性樹脂からなる接着性樹脂層(1μm)と、ポリプロピレンからなるポリプロピレン樹脂層(19.6μm)とを備える、厚さ21μmの多層基材を準備した。また、厚さ30μmの未延伸ポリプロピレンフィルム(三井化学東セロ株式会社製、「CPS」)をポリウレタン接着剤(三井化学株式会社製、「タケラックA-969V/タケネートA-5」(配合比3/1))を介してドライラミネートし、40℃にて24時間静置することによって、厚さ約51μmの積層体を製造した。得られた積層体におけるポリプロピレンの含有量は90質量%以上であった。
【0080】
(比較例5)
シーラント層として、厚さ60μmの無延伸ポリプロピレンフィルム(三井化学東セロ株式会社製、「GLC」)を準備したこと以外は、実施例3と同様の手法にて厚さ約105μmの積層体を製造した。得られた積層体におけるポリプロピレンの含有量は90質量%以上であった。
【0081】
(積層体の引き裂き強度)
実施例1~3及び比較例1~5のそれぞれから、
図6(a)に示される、平面視長方形状の試料S1,S2(長辺150mm、短辺50mm)を作成した。試料S1は、長手方向が積層体の流れ方向に相当し、短手方向が積層体の巾方向に相当する。試料S2は、長手方向が積層体の巾方向に相当し、短手方向が積層体の流れ方向に相当する。試料S1,S2のそれぞれには、長手方向に沿った長さ75mmの切り込みが設けられる。
図6(b)に示されるように、切込みCは、一方の短辺の中心から試料S1,S2の中心である始点SPまで長手方向に延びている。
【0082】
続いて、実施例1~3及び比較例1~5の試料S1,S2とのそれぞれに対して、引張試験機(株式会社エー・アンド・デイ製、テンシロン万能試験機、「RTF-1250」)を用いて、試験速度:200mm/分の条件で引裂強度を測定した。実施例1~3のそれぞれにおいて測定された引裂強度を下記表1に示し、比較例1~5のそれぞれにおいて測定された引裂強度を下記表2に示す。下記表1,2のそれぞれにおいて、試料S1の引裂強度の測定結果は、流れ方向引裂強度に相当し、試料S2の引裂強度の測定結果は、巾方向引裂強度に相当する。なお、下記表2における「-」は、試料のデラミネーション発生、試料のシーラント伸び等の発生によって引裂強度を測定できなかったことを意味する。
【0083】
加えて、引裂強度測定後の各試料に形成された破断線の終点EPと、各試料における他方の短辺の中心である基点BPとの距離とを測定し、当該距離に基づいて試料S1,S2の直線カット性を評価した。上記距離が短いほど、積層体のカット性が高いと判断できる。実施例1~3のそれぞれにおける直線カット性の評価結果を下記表1に示し、比較例1~5のそれぞれにおける直線カット性の評価結果を下記表2に示す。なお、上記距離が5mm以下である場合には直線カット性を「A」と評価し、上記距離が10mm以下である場合には直線カット性を「B」と評価し、デラミネーションの発生などにより試料が引き裂かれなかった場合には直線カット性を「F」と評価した。なお、「B」と評価された場合であっても、デラミネーションなどが発生することがあった。下記表1,2において、デラミネーションが発生した場合には「Y」と示され、デラミネーションが発生しなかった場合には「N」と示される。シーラント伸びの発生の有無と、中間層の有無とも、同様に示される。
【0084】
【0085】
【0086】
上記実施例1~3では、試料S1,S2のいずれも(すなわち、巾方向、流れ方向のいずれも)デラミネーション、シーラント伸びは発生せず、引き裂かれた。また、試料S1,S2のいずれも、直線カット性はAもしくはBであり、かつ、引裂強度は1.2N以下であった。一方、上記比較例1~5のいずれも、試料S2(すなわち、巾方向)にデラミネーション、シーラント伸びが発生したため、引裂強度は測定できなかった。加えて、上記比較例2~5においては、試料S1(すなわち、流れ方向)の引裂強度は測定されたが、デラミネーション、シーラント伸びが発生した。さらに、比較例2では、試料S1の引裂強度が5.0Nを超えていた。
1,1A,1B…積層体、10…基材、11…基材層、12,42…アンカーコート層、13,43…蒸着層、20…シーラント層、30、30A,30B…接着層、40,40A…中間層、41…樹脂層、100、100A…包装袋。