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  • 特開-二酸化塩素発生剤 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173139
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】二酸化塩素発生剤
(51)【国際特許分類】
   C01B 11/02 20060101AFI20231130BHJP
   A61L 2/20 20060101ALI20231130BHJP
   A61L 9/01 20060101ALI20231130BHJP
   A61L 101/06 20060101ALN20231130BHJP
【FI】
C01B11/02 F
A61L2/20
A61L9/01 F
A61L101:06
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022085178
(22)【出願日】2022-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】508133053
【氏名又は名称】有限会社クリーンケア
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100202430
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 千香子
(72)【発明者】
【氏名】大久保 善彦
【テーマコード(参考)】
4C058
4C180
【Fターム(参考)】
4C058AA23
4C058BB07
4C058JJ16
4C058JJ30
4C180AA07
4C180AA16
4C180AA19
4C180CA04
4C180EA23X
4C180EA23Y
4C180EA24X
4C180EA24Y
4C180EA26Y
4C180EA29Y
4C180EA30Y
4C180EA35Y
4C180EA52Y
4C180EA56Y
4C180EA57X
4C180EB01Y
4C180EB05Y
4C180EB06Y
4C180EB07Y
4C180EB13Y
4C180EB14Y
4C180EB16Y
4C180EB24Y
4C180GG17
(57)【要約】
【課題】使用開始直後から長期間にわたり安定した二酸化塩素ガスの発生量が得られ、空間中の二酸化塩素濃度を概略一定の範囲に維持させ得る二酸化塩素発生剤を提供する。
【解決手段】無機多孔質体に亜塩素酸塩を担持させた亜塩素酸塩担持無機多孔質体(A)、2-オキソグルタル酸及び/又は無水コハク酸(B)、潮解性無機塩(C)及び、乾燥剤(D)を含有する二酸化塩素発生剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機多孔質体に亜塩素酸塩を担持させた亜塩素酸塩担持無機多孔質体(A)、2-オキソグルタル酸及び/又は無水コハク酸(B)、潮解性無機塩(C)及び、乾燥剤(D)を含有する二酸化塩素発生剤。
【請求項2】
前記成分(D)として無水硫酸マグネシウムを含有する、請求項1に記載の二酸化塩素発生剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化塩素ガスを発生させる二酸化塩素発生剤に関する。
【背景技術】
【0002】
二酸化塩素ガスは強力な酸化剤であり、その酸化力を利用して殺菌剤や漂白剤のほか、悪臭成分を分解する消臭剤として使用されている。二酸化塩素ガスを利用した殺菌、除菌を行う方法は、塩素、次亜塩素酸塩、過酸化水素などを用いる方法に比べて、毒性が少なく安全に実施することができ、塩素のような強い刺激臭がなく不快感を伴わないといった利点がある。また、二酸化塩素ガスは単位当たりの酸化力が高く、胞子、かび、バクテリア、ウィルス等に優れた殺菌、除菌効果を示す一方で、発がん物質を生成しないという利点もある。
一方、二酸化塩素ガスは不安定であり、長期間にわたって一定濃度で保管することが困難である。二酸化塩素を発生させる方法としては、亜塩素酸塩と酸を混合し反応させる方法が従来の主流であったが、最初は二酸化塩素が多く発生するものの、次第にその発生量が少なくなり、長期間持続的に二酸化塩素を放出するのが難しいことや、水溶液状態の亜塩素酸塩は保存安定性が低く、経時的に分解が進んでしまうことが知られている。
【0003】
二酸化塩素を長期間持続的に発生させる方法として、リン酸二水素ナトリウムなどのpH調整剤を用いる方法、二酸化塩素水溶液を寒天、ゼラチン、高吸水性樹脂等のゲル化剤でゲル化させる方法等が提案されている。これらの提案に基づき、据え置きボトル型製剤として空間の殺菌、除菌効果を得る製品や、首から名札のようにぶら下げるタイプやポケットに挿すペンタイプの身体装着型製剤として、使用者の顔面付近の殺菌、除菌効果を得る製品が市販されている。
これらの市販製品、特に身体装着型製剤の製品は、10cmしか離れていない場所で検出限界程度となるような量でしか二酸化塩素を発生させないことが、下記非特許文献1に報告されている。
すなわち、二酸化塩素発生剤には、依然として、二酸化塩素ガスの発生量が極めて少なく、殺菌、除菌効果を十分に発揮しないという問題がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】環境感染誌、第32巻、第4号、第222~226頁、2017年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、使用開始直後から長期間にわたり安定した二酸化塩素ガスの発生量が得られ、空間中の二酸化塩素濃度を概略一定の範囲に維持させ得る二酸化塩素発生剤の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、亜塩素酸塩担持無機多孔質体と、2-オキソグルタル酸及び/又は無水コハク酸の組み合わせを採用することにより、二酸化塩素の初期発生濃度を抑制しつつ、長期間にわたり安定した二酸化塩素ガスの発生が得られることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0007】
本発明は、詳しくは以下の事項を要旨とする。
1.無機多孔質体に亜塩素酸塩を担持させた亜塩素酸塩担持無機多孔質体(A)、2-オキソグルタル酸及び/又は無水コハク酸(B)、潮解性無機塩(C)及び、乾燥剤(D)を含有する二酸化塩素発生剤。
2.前記成分(D)として無水硫酸マグネシウムを含有する、1.に記載の二酸化塩素発生剤。
【発明の効果】
【0008】
本発明の二酸化塩素発生剤は、亜塩素酸塩担持無機多孔質体と2-オキソグルタル酸及び/又は無水コハク酸の組み合わせにより、使用直後から安定した二酸化塩素の発生量を得ることができ、安全性において優れている。
また、本発明の二酸化塩素発生剤は、二酸化塩素発生量を長期間にわたり概略一定の範囲に維持させることが出来るため、非常に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】「オンマスク」の試験終了後の、コントロール、実施例2、市販製品A1袋、市販製品A2袋、市販製品Bの菌数確認におけるSCDLP寒天培地の写真を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
<成分(A)>
本発明の二酸化塩素発生剤は、成分(A)として無機多孔質体に亜塩素酸塩を担持させた亜塩素酸塩担持無機多孔質体を有するものである。
亜塩素酸ナトリウムなどの亜塩素酸塩類は、その性質上衝撃などにより発火するなどの危険性が知られており、国際的にも酸化性物質として登録されている。本発明における無機多孔質体は、亜塩素酸塩から二酸化塩素ガスを生成させる反応には関係しないが、無機多孔質体に亜塩素酸塩を担持させることにより、発火などの危険性が低減し、酸化性固体として扱う必要がなくなり、物質としての取扱が容易となる。
【0011】
本発明における亜塩素酸塩は、二酸化塩素ガスの主たる発生原料である。本発明で使用できる亜塩素酸塩としては、例えば、亜塩素酸アルカリ金属塩や亜塩素酸アルカリ土類金属塩などが挙げられる。亜塩素酸アルカリ金属塩としては、例えば、亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸カリウム、亜塩素酸リチウムが挙げられ、亜塩素酸アルカリ土類金属塩としては、例えば、亜塩素酸カルシウム、亜塩素酸マグネシウム、亜塩素酸バリウムが挙げられる。中でも、広く一般に使用されており、低コストなものとして亜塩素酸アルカリ金属塩が好ましく、亜塩素酸ナトリウムがより好ましい。
【0012】
本発明における無機多孔質体としては、その種類は特に限定されず、公知の多孔質担体を用いることができる。
本発明の無機多孔質体は、無機多孔質体1質量部に対して純水2.5~5質量部を加えて振盪して含有成分を水に浸出させ、浸出液をガラス電極により測定したpH値が7以上であるものが好ましく、pH7.1以上の中性ないしはアルカリ性を呈する無機多孔質体がより好ましい。
本発明の無機多孔質体は、ベースとなる無機多孔質体に炭酸ナトリウムや炭酸水素ナトリウム等のフラックスを加え、焼成させて得られた焼成体であってもよい。例えば、珪藻土にフラックスを加えて焼成した融剤焼成珪藻土も用いることができる。
本発明における無機多孔質体の形状は特に限定されず、粒状、粉状、繊維状等から任意に選択することができる。一般的には粒状または粉末状のものが入手しやすく、安価であること等から好適に使用できる。
粒状または粉末状の無機多孔質体は、平均粒子径が約0.01~10mmの範囲のものが好ましく、0.025~3mmの範囲のものがより好ましく、0.03mm~0.1mmの範囲のものがさらに好ましい。なお、本願明細書における平均粒子径は、50%粒子径(メディアン径)を意味する。
また、本発明の無機多孔質体は、BET比表面積が10~300m/gの範囲のものが好ましい。
【0013】
本発明における亜塩素酸塩担持無機多孔質体は、無機多孔質体に亜塩素酸塩を担持させる方法は特に限定されない。例えば、亜塩素酸塩を溶媒に溶解させて亜塩素酸塩溶液を調製し、この亜塩素酸塩溶液に無機多孔質体を浸漬して含浸させるか、あるいは亜塩素酸塩溶液を無機多孔質体に噴霧する方法を例示できる。噴霧方法はむらなく噴霧することができれば特段の条件はないが、無機多孔質体を混合装置内で撹拌させながら、亜塩素酸塩溶液を均一に噴霧する方法が簡便である。亜塩素酸塩溶液を含浸または噴霧した後は、乾燥させて無機多孔質体に亜塩素酸塩をしっかりと担持させる。乾燥方法は特に限定されないが、例えば、流動乾燥機や棚段乾燥機等による乾燥が挙げられる。乾燥条件も特に限定されないが、30~130℃、好ましくは70~100℃で、0.5~48時間、好ましくは3~8時間乾燥させる。この乾燥により、亜塩素酸塩担持無機多孔質体全体に対する水分含有率を、30質量%以下とすることが好ましく、20質量%以下にすることがより好ましく、10質量%以下にすることがさらに好ましい。
上述の亜塩素酸塩溶液は、使用する亜塩素酸塩が水溶性である場合は水溶液とすればよいが、亜塩素酸塩を溶解させることができる有機溶媒を含んでいても良い。また、亜塩素酸塩濃度も限定されず、適宜設定すればよく、例えば、亜塩素酸ナトリウム水溶液であれば25質量%程度が好ましい。
【0014】
本発明における亜塩素酸塩担持無機多孔質体は、亜塩素酸塩の含有量、すなわち、無機多孔質体と亜塩素酸塩の合計を100質量%としたときの亜塩素酸塩の割合が、1~50質量%の範囲が好ましく、5~40質量%の範囲がより好ましく、10~35質量%の範囲がさらに好ましい。
本発明の二酸化塩素発生剤における亜塩素酸塩の含有量は、二酸化塩素発生剤全体を100質量%とした場合、1~25質量%の範囲であることが好ましく、5~20質量%の範囲であることがより好ましい。
本発明における亜塩素酸塩担持無機多孔質体は、1種に限定されず、異なる無機多孔質体と亜塩素酸塩を組み合わせた2種以上の亜塩素酸塩担持無機多孔質体を併用してもよい。
【0015】
<成分(B)>
本発明の二酸化塩素発生剤は、成分(B)として、2-オキソグルタル酸及び/又は無水コハク酸を含有するものである。
本発明における成分(B)は、水の存在下で亜塩素酸塩と反応して二酸化塩素を発生させる成分である。
本発明の二酸化塩素発生剤は、成分(A)と成分(B)とを組み合わせることにより、成分(B)を含有しない二酸化塩素発生剤に比べて、二酸化塩素の発生量を使用開始直後から大きく向上させ、長期間にわたり安定した二酸化塩素の発生量が得られるという極めて優れた効果を発揮する。本発明における成分(A)と成分(B)との組み合わせによる、これらの効果は、本発明者が数多くの実験を行い新たに見出したものである。
本発明の成分(B)としては、2-オキソグルタル酸を単独或いは、2-オキソグルタル酸と無水コハク酸を併用する態様が好ましく、2-オキソグルタル酸を単独で含有することがより好ましい。
本発明の二酸化塩素発生剤における成分(B)の含有量は、二酸化塩素発生剤全体を100質量%とした場合、0.1~50質量%の範囲が好ましく、0.1~30質量%の範囲がより好ましく、0.2~10質量%の範囲がさらに好ましく、0.3~5質量%の範囲が特に好ましく、0.5~3質量%の範囲が最も好ましい。なお、この好適な含有量の範囲は、本発明の二酸化塩素発生剤が、下記の成分(B)以外の酸性基を有する物質を含有しない場合のものである。
【0016】
本発明の二酸化塩素発生剤は、成分(B)である2-オキソグルタル酸及び/又は無水コハク酸以外に、酸性基を有する物質を含有することが好ましい。
酸性基を有する物質とは、亜塩素酸塩に対して酸化作用を有し、水の存在下で亜塩素酸塩と反応して二酸化塩素を発生させる成分を意味する。
酸性基を有する物質は、その種類は特に限定されないが、分子構造内にカルボキシ基、スルホ基、ヒドロキシ基等の官能基を有する物質を挙げることができる。中でも、水中でpH値8以下を示す物質であることが好ましく、その具体例として、グルコース、キシロース、マンノース、ガラクトースなどアルドース類、フルクトースなどケトース類を挙げることができる。
また、酸性基を有する物質として、有機酸及びスメクタイト族鉱物が挙げられる。有機酸としては、クエン酸、コハク酸、マレイン酸、グルコン酸、グルコノデルタラクトン、グルコノラクトン、グリシン、アルギン酸、ステアリン酸、イコニット酸、アジピン酸、グルコース等を挙げられる。また、スメクタイト族鉱物は、その層間の電荷が構成元素の種類により異なるが、陽イオン交換能を有する点で共通しており、活性白土、サポナイト、モンモリロナイト、バイデライト、スチーブンサイト、ヘクトライト等が挙げられる。
本発明の二酸化塩素発生剤において、成分(B)である2-オキソグルタル酸及び/又は無水コハク酸と、酸性基を有する物質を併用する場合は、酸性基を有する物質の含有量は、二酸化塩素発生剤全体を100質量%とした場合、1~35質量%の範囲が好ましく、10~30質量%の範囲がより好ましく、15~25質量%の範囲がさらに好ましい。
また、本発明の二酸化塩素発生剤が酸性基を有する物質を含有する場合における成分(B)の含有量は、二酸化塩素発生剤全体を100質量%とした場合、0.01~10質量%の範囲が好ましく、0.05~5質量%の範囲がより好ましく、0.1~3質量%の範囲がさらに好ましい。
【0017】
<成分(C)>
本発明の二酸化塩素発生剤は、成分(C)として潮解性無機塩を含有するものである。
本発明における潮解性無機塩とは、当該無機塩の20℃での飽和水溶液の水蒸気分圧が、それと接触する20℃、相対湿度45%の大気の水蒸気分圧(7.9mmHg)よりも低い性質を有する無機金属塩を意味する。
本発明における潮解性無機塩は、空気中の水分を吸収し自発的に溶解することで水溶液へと変化する。当該無機塩が吸収した水分が、亜塩素酸塩と、2-オキソグルタル酸及び/又は無水コハク酸又は、2-オキソグルタル酸及び/又は無水コハク酸と酸性基を有する物質の併用物との反応を促して、二酸化塩素を発生させるメカニズムである。
本発明における成分(C)としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、硫化水素ナトリウム、塩化マグネシウム、塩化アルミニウム、硫酸マンガン、硝酸カルシウム、炭酸カリウム、酢酸カリウム、塩化亜鉛等が挙げられる。これらの潮解性無機塩のなかでも、低コストでありかつ取り扱いの容易さを考慮すれば、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウムが好ましい。
本発明における成分(C)として、これらの潮解性無機塩を1種又は2種以上併用することができる。
本発明の二酸化塩素発生剤における成分(C)の含有量は、二酸化塩素発生剤全体を100質量%とした場合、0.1~50質量%の範囲が好ましく、1~40質量%の範囲がより好ましく、5~30質量%の範囲がさらに好ましい。潮解性無機塩の含有割合が多くなるほど二酸化塩素ガスの発生速度が速くなり、使用空間内の二酸化塩素ガス濃度が所定値に達するまでの時間が短縮される場合がある。
空間内の湿度が高いと、潮解性無機塩が早く潮解して二酸化塩素ガスの発生速度が高くなり、逆に湿度が低いと、潮解が遅くなって二酸化塩素ガスの発生速度が遅くなる傾向にあるので、本発明の成分(C)の含有量は、使用目的、用途、使用環境等に応じて適宜調節することが好ましい。
【0018】
<成分(D)>
本発明の二酸化塩素発生剤は、成分(D)として乾燥剤を含有するものである。
本発明における成分(D)は、使用開始前における二酸化塩素発生剤の水分を吸収して保存安定性を向上させる目的で配合される成分である。本発明の二酸化塩素発生剤は、水の存在下で成分(A)と成分(B)との反応により二酸化塩素ガスを生成するものであるから、二酸化塩素発生剤の乾燥状態を保つことで当該反応を阻止し、保存時の安定性を向上させることができる。
本発明の成分(D)としては、(無水)硫酸マグネシウム、シリカゲル、ゼオライト等を挙げることができる。ゼオライトとしては、結晶性ゼオライトが好ましい。本発明における成分(D)として、これらの乾燥剤を1種又は2種以上併用することができる。
なお、本発明の成分(C)である潮解性無機塩には、塩化カルシウムや塩化マグネシウムなどのように、潮解性を有しかつ乾燥機能を有する物質が含まれるが、当該物質は、本発明の成分(D)には含まれないものの、本発明の成分(C)として、塩化カルシウムや塩化マグネシウムを用いた場合は、乾燥機能も発揮するために好ましい。
本発明の二酸化塩素発生剤は、上述のとおり、成分(A)と成分(B)を組み合わせることにより、二酸化塩素の発生量が使用開始直後から大きく向上するものである。すなわち、本発明の成分(A)と成分(B)の反応性が高いので、保存時の安定性を向上させるために、成分(D)として(無水)硫酸マグネシウムを含有することが好ましい。
本発明の成分(D)として、(無水)硫酸マグネシウムを用いる場合は、(無水)硫酸マグネシウム単独でも良いし、他の乾燥剤を1種又は2種以上併用しても良いが、(無水)硫酸マグネシウムと他の乾燥剤を1種又は2種以上併用する態様が好ましい。
本発明の二酸化塩素発生剤における成分(D)の含有量は、二酸化塩素発生剤全体を100質量%とした場合、5~35質量%の範囲が好ましく、7~30質量%の範囲がより好ましく、10~30質量%の範囲がさらに好ましい。
【0019】
本発明の二酸化塩素発生剤は、二酸化塩素発生剤の特性を阻害しない限り、他の材料を配合することができる。例えば、ポリアクリル酸ナトリウム等の吸水性樹脂や香料を配合することができる。前記吸水性樹脂は主としてポリアクリル酸ナトリウムからなる共重合架橋体であり、自重の10~1000倍の水分を保水することができる。この吸水性樹脂を添加することで、潮解性無機塩剤により潮解した水分を二酸化塩素発生剤中に保持し、かつ水分を二酸化塩素発生剤中に分散させることができる。
本発明の二酸化塩素発生剤において吸水性樹脂は、二酸化塩素発生剤全体を100質量%として0~5質量%の範囲で用いることができる。
【0020】
<二酸化塩素発生剤の作製>
本発明の二酸化塩素発生剤は、成分(A)~(D)を所定の割合で計量し、これらを混合して調製することができる。混合方法は均一に混合できればどのような方法でもよく、例えば、V型混合器や容器回転揺動型混合器による混合方法が挙げられる。混合時間は混合する量及び使用する混合器の性能にもよるが、例えば、容器回転揺動型混合器を使用する場合100kgの混合で20~40分の混合時間が適切である。
本発明の二酸化塩素発生剤の製剤形状は、粉状、粒状のほか、打錠して円柱状に成型してもよいし、それ以外の製剤形状に成型してもよい。
【0021】
本発明の二酸化塩素発生剤は、二酸化塩素ガスの発生反応が起きないように、水蒸気との接触を断った乾燥状態で保存することが好ましく、水蒸気を透過しない材料で作製した容器内に密封することにより、長期保存することが可能となる。当該容器の形状は特に制限されず、箱型、ボトル型、袋体、名札型、ペン型等が挙げられる。また、乾燥状態を保つために、当該容器が完全に密封されていなくても、乾燥剤と共に包装する方法においても、長期保存が可能である。
当該容器の材料としては、水蒸気が透過しない又は水蒸気透過度が低い材料から任意に選択することができる。具体的には、例えば、金属、延伸ポリプロピレン、無延伸ポリプロピレン、ポリエステル、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレンビニルアルコール樹脂(EVOH)等が挙げられる。これらの材料としては、水蒸気透過度が30(g/m/day)以下のものが好ましく、具体的には、アルミニウム蒸着ポリエチレンフィルム、金属箔と樹脂フィルムのラミネート材が挙げられる。
当該容器に密封した本発明の二酸化塩素発生剤は、長期保存が可能であり、流通時の輸送なども容易である。
【0022】
容器に収納された本発明の二酸化塩素発生剤は、当該容器を開口して大気中に接触させることにより、大気中の水蒸気を吸収して、成分(C)の潮解性無機塩が潮解し、亜塩素酸塩と成分(B)の2-オキソグルタル酸及び/又は無水コハク酸に水分を提供し、この水との接触により二酸化塩素ガスが発生する。
本発明の二酸化塩素発生剤は、成分(A)と成分(B)との組み合わせにより、使用開始直後から二酸化塩素の発生量を大きく向上させ得ることができ、長期間にわたり安定した二酸化塩素の発生量が得られるため、優れた殺菌、除菌効果を発揮するものである。
【実施例0023】
以下に、実施例、比較例を用いて本発明を具体的に説明する。
<成分(A)の調製>
(1)無機多孔質体
無機多孔質体として、平均粒子径7μm、BET比表面積20m/gの珪藻土、平均粒子径12μm、BET比表面積4m/gのパーライト、平均粒子径0.2μm、BET比表面積10m/gのカオリンを用いた。
これらの無機多孔質体1質量部に対して、純水2.5質量部を加えて30分間震盪し、浸出液のpH値をガラス電極にて測定したところ、珪藻土がpH値8、パーライトがpH値7、カオリンがpH値7であった。
(2)亜塩素酸塩溶液
亜塩素酸塩溶液として、25質量%の亜塩素酸ナトリウム水溶液を調製した。
(3)亜塩素酸塩担持無機多孔質体の調製
上記(1)の各無機多孔質体100質量部に対し、それぞれ亜塩素酸ナトリウム水溶液100質量部を噴霧して含浸させた後、70℃で6時間乾燥させて亜塩素酸塩担持無機多孔質体を得た。
得られた亜塩素酸塩担持無機多孔質体における亜塩素酸ナトリウムの含有割合は、珪藻土、パーライト、カオリン全てにおいて55質量%であった。
また、各亜塩素酸塩担持無機多孔質体における水分含有率は、珪藻土、パーライト、カオリン全てにおいて5質量%より少なかった。
【0024】
<実施例1~3>
(1)実施例1の二酸化塩素発生剤の製造
実施例1の二酸化塩素発生剤は、表1に記載した組成に基づいて、上記「成分(A)の調製」で得られた亜塩素酸塩担持珪藻土体(A)、2-オキソグルタル酸(B)、塩化カルシウムと塩化ナトリウム(C)、シリカゲル(D)、成分(B)以外のグルコースを量り取り、容器回転揺動型混合器で20分間混合して作製した。
なお、表1中の成分(A)の欄における、()内の数字は、二酸化塩素発生剤中の亜塩素酸ナトリウムの含有量を示すものである。
(2)実施例2の二酸化塩素発生剤の製造
実施例2の二酸化塩素発生剤は、表1に記載した組成に基づいて、上記「成分(A)の調製」で得られた亜塩素酸塩担持珪藻土体(A)、2-オキソグルタル酸(B)、塩化カルシウムと塩化ナトリウム(C)、シリカゲルと(無水)硫酸マグネシウム(D)、成分(B)以外のグルコースを量り取り、容器回転揺動型混合器で20分間混合して作製した。
(3)実施例3の二酸化塩素発生剤の製造
実施例3の二酸化塩素発生剤は、表1に記載した組成に基づいて、上記「成分(A)の調製」で得られた亜塩素酸塩担持珪藻土体(A)、無水コハク酸(B)、塩化カルシウムと塩化ナトリウム(C)、シリカゲルと(無水)硫酸マグネシウム(D)、成分(B)以外のグルコースを量り取り、容器回転揺動型混合器で20分間混合して作製した。
【0025】
<比較例1~10>
(1)比較例1~10の二酸化塩素発生剤の製造
比較例1~10の二酸化塩素発生剤は、本発明における成分(B)を含有しない例である。
酸性基を有する物質として、活性白土、グルコノラクトン、グルコース、コハク酸を用いた。
成分(C)として、塩化カルシウムと塩化ナトリウム以外に、塩化マグネシウムを用いた。
成分(D)として、(無水)硫酸マグネシウムとシリカゲル以外に、結晶性ゼオライト(商品名「モレキュラーシーブ」)、ゼオライトを用いた。
表1に記載した組成に基づいて、実施例1~3の二酸化塩素発生剤と同様に、比較例1~10の二酸化塩素発生剤を製造した。
【0026】
<評価方法>
作製した実施例1~3、比較例1~10の各二酸化塩素発生剤30gを、ポリエチレン/ポリプロピレンを基材とする防水透湿性の不織布に入れヒートシールにより密封したものを、さらに厚さ12μmのポリエチレンフィルムの片面にアルミニウムを9μmの厚さに蒸着した複層フィルムで作成された保存袋に入れ、その保存袋の開口部をヒートシールして密封した。前記保存袋に密封した二酸化塩素発生剤は常温で3ヶ月保管した。
3ヶ月経過後の二酸化塩素発生剤の「使用時反応性」を、以下の方法で評価した。
【0027】
(1)使用時反応性
保存袋を開封して取り出した二酸化塩素発生剤の二酸化塩素ガス発生状況について評価した。
実施例1~3及び比較例1~10の二酸化塩素発生剤は10gを計量して、それぞれ低密度ポリエチレン製のサンプル容器に入れた。前記サンプル容器は上面が開口し、その開口面積は706mmである。
二酸化塩素発生剤を入れた各サンプル容器を、内部容積16Lの高密度ポリエチレン製チャンバー内に載置し、チャンバー内を温度25℃、湿度45%に保持して密閉して、チャンバー内載置から30分後、60分後のチャンバー内の二酸化塩素ガス濃度を測定した。各測定値を表1に示す。
また、測定後の各二酸化塩素発生剤を前記サンプル容器に入れたままで大気に接触させた状態で常温下において1ヶ月放置した。1ヶ月放置後に、同様の方法で、密閉した小型チャンバー内における30分後及び60分後の二酸化塩素ガス濃度を測定した。各測定値を表1に示す。
使用時反応性の評価は、二酸化塩素ガス濃度はガステック社の二酸化塩素ガス測定器(自動ガス採取装置GSP-300FT-2及びガス検知管23M、23L)を用いて測定した。
【0028】
【表1】
【0029】
表1に示すとおり、成分(B)である2-オキソグルタル酸又は無水コハク酸を含有する本発明の二酸化塩素発生剤の具体例である実施例1~3は、成分(B)を含有しない比較例1~10の二酸化塩素発生剤に比べて、チャンバー内載置から30分後、60分後はもとより、1ヶ月放置してから30分後、60分後においても、安定した二酸化塩素の発生量を得られることが確認され、使用時反応性が高いことが明らかとなった。中でも、成分(B)である2-オキソグルタル酸又は無水コハク酸と、成分(D)である無水硫酸マグネシウムを併用する実施例2、3の二酸化塩素発生剤は、成分(D)を含有しない実施例1の二酸化塩素発生剤よりも、さらに、使用直後から安定し、かつ、高い二酸化塩素の発生量が得られることも明らかとなり、使用時反応性にさらに優れることが確認された。
上記結果より、本発明の二酸化塩素発生剤は、使用直後から安定した二酸化塩素の発生量を得ることができ、さらには、二酸化塩素発生量を長期間にわたり概略一定の範囲に維持させることが出来ることが明らかとなった。
【0030】
(2)安全性
本発明の二酸化塩素発生剤の具体例である実施例1~3及び、比較例1~10の二酸化塩素発生剤の安全性の評価として、各二酸化塩素発生剤0.02gと赤リン0.02gの混合物を、直径70mmの真鍮製円柱で挟んだのち、円柱の上部より打撃を加えた時の発火の有無を観察した。この打撃試験は1回~3回行った。
本発明の二酸化塩素発生剤の具体例である実施例1~3及び、比較例1~10の二酸化塩素発生剤は全て、発火しないことが確認され、本発明の二酸化塩素発生剤は安全性に優れることが明らかとなった。
なお、市販製品Aについて、上記安全性試験を実施したところ、発火が確認された。
【0031】
(3)除菌性
本発明の二酸化塩素発生剤を、市販の身体装着型製剤と同様に使用することを想定した場合(吊使用)と、装着していたマスクを外した際にマスクを除菌することを想定した場合(オンマスク)について、それぞれ除菌性を評価した。
・試験方法
「吊使用」の試験方法は、マネキンにマスクを着用させ、マスクに下記菌布を貼付した。マスク下限から5cm下方の架台に、使用開始(開封)から24時間経過した試験検体をそれぞれ載置して、3時間及び6時間暴露させた後、前記菌布を回収して、下記方法により菌数を確認した。
「オンマスク」の試験方法は、マスクに下記菌布を貼付した。その上に、使用開始(開封)から24時間経過した試験検体をそれぞれ載置して、1時間暴露させた後、前記菌布を回収して、下記方法により菌数を確認した。
試験に使用した「菌布」は、環境中から採取した一般生菌を付着させた不織布である。詳しくは、予め集菌した一般生菌を、標準寒天培地培養(36℃、48時間)後、生育した菌のコロニーを釣菌し、生理食塩水にブイヨンを入れて増殖させて、再び標準寒天培地上で計数した。これを希釈して10程度に調製したものを試験用の菌液として、この菌液1mLを不織布に滴下し、自然乾燥させたものを「菌布」として各試験に用いた。
試験後の菌数確認は、回収した「菌布」を5mLの精製水に入れ、十分に揉みだした絞り水をSCDLP寒天培地で適宜希釈して培養し、菌数(CFU/mL)を計数することにより行った。
・試験検体
試験検体として、保存袋を開封して取り出したポリエチレン/ポリプロピレンを基材とする防水透湿性の密封された不織布製袋に入った実施例2の二酸化塩素発生剤(1.5g)及び、市販されている二酸化塩素発生剤(市販製品A1袋:1.5g、市販製品A2袋(1.5g×2=3.0g))、市販製品B:ペン型1本)を使用した。2つの市販製品A、Bは、製品形状のまま使用した。
「吊使用」試験は市販製品Aを2袋、「オンマスク」試験は市販製品Aを1袋と2袋を使用して実施した。それぞれの試験終了時に確認された菌数(CFU/mL)を、下記表2にまとめて示す。
また、「オンマスク」の試験終了後の菌数確認におけるSCDLP寒天培地の写真を、図1に示す。
表1及び図1中には、試験検体を使用しなかったものを「コントロール」、試験検体は、それぞれ「実施例2」、「市販製品A1袋」、「市販製品A2袋」、「市販製品B」と表記する。
【0032】
【表2】
【0033】
表2に示すとおり、本発明の二酸化塩素発生剤の具体例である実施例2は、市販の身体装着型製剤と同様に使用することを想定した(吊使用)と、装着していたマスクを外した際にマスクを除菌することを想定した(オンマスク)それぞれの除菌性試験において、市販されている製品に比べて、極めて顕著な除菌性を示すことが確認された。
この結果より、本発明の二酸化塩素発生剤は、使用直後から安定した二酸化塩素の発生量を得ることが出来、さらに、二酸化塩素発生量を長期間にわたり概略一定の範囲に維持させることが出来るため、除菌性に非常に優れていることが明らかとなった。
図1