(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173140
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】撮像レンズ及び撮像装置
(51)【国際特許分類】
G02B 13/04 20060101AFI20231130BHJP
G02B 13/18 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
G02B13/04 D
G02B13/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022085182
(22)【出願日】2022-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】000133227
【氏名又は名称】株式会社タムロン
(74)【代理人】
【識別番号】100156867
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 欣浩
(74)【代理人】
【識別番号】100143786
【弁理士】
【氏名又は名称】根岸 宏子
(72)【発明者】
【氏名】江村 大樹
(72)【発明者】
【氏名】萩原 宏行
(72)【発明者】
【氏名】布施 慎吾
【テーマコード(参考)】
2H087
【Fターム(参考)】
2H087KA02
2H087KA03
2H087LA03
2H087NA08
2H087NA18
2H087PA05
2H087PA06
2H087PA17
2H087PA18
2H087PB06
2H087QA02
2H087QA07
2H087QA17
2H087QA21
2H087QA22
2H087QA25
2H087QA34
2H087QA42
2H087QA45
2H087RA04
2H087RA05
2H087RA12
2H087RA13
2H087RA32
2H087RA43
2H087RA44
(57)【要約】
【課題】全体の小型化を実現しつつ、明るく、撮像範囲が広く、且つ、結像性能の高い撮像レンズ及び撮像装置を提供する。
【解決手段】当該撮像レンズは、物体側から像側に順に、物体側に凸形状を向けた負メニスカスレンズからなる第一レンズG1と、像側に凸形状を向けた正メニスカスレンズからなる第二レンズG2と、第三レンズG3を含む少なくとも1枚のレンズと、第四レンズG4と、第五レンズG5と、像側面が凸面である正レンズからなる第六レンズG6とから構成され、以下の式(1)を満たす。また、当該撮像レンズを備えた撮像装置とする。
(1) 1.2 < D
2/f
但し、
D
2第二レンズの光軸上の厚み
f :当該撮像レンズの焦点距離
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体側から像側に順に、物体側に凸形状を向けた負メニスカスレンズからなる第一レンズと、像側に凸形状を向けた正メニスカスレンズからなる第二レンズと、第三レンズを含む少なくとも1枚のレンズと、第四レンズと、第五レンズと、像側面が凸面である正レンズからなる第六レンズとから構成され、以下の式(1)を満たすことを特徴とする撮像レンズ。
(1) 1.2 < D2/f
但し、
D2:前記第二レンズの光軸上の厚み
f :当該撮像レンズの焦点距離
【請求項2】
以下の式(2)を満たす請求項1に記載の撮像レンズ。
(2) -10.0 < f12/f < 0
但し、
f12:前記第一レンズ及び前記第二レンズの合成焦点距離
【請求項3】
以下の式(3)を満たす請求項1に記載の撮像レンズ。
(3) 0.05 < D1/f < 0.6
但し、
D1:前記第一レンズの光軸上の厚み
【請求項4】
以下の式(4)を満たす請求項1に記載の撮像レンズ。
(4) 0.1 < d1-2/f < 2.0
但し、
d1-2:前記第一レンズと前記第二レンズとの間の光軸上の空気間隔
【請求項5】
前記第一レンズは少なくとも非球面を一面有する請求項1に記載の撮像レンズ。
【請求項6】
以下の式(5)を満たす請求項1に記載の撮像レンズ。
(5) 0.5 < R11/f < 10.0
但し、
R11:前記第一レンズの物体側面の近軸曲率半径
【請求項7】
以下の式(6)を満たす請求項1に記載の撮像レンズ。
(6) 0.25 < D3/f < 2.0
但し、
D3:前記第三レンズの光軸上の厚み
【請求項8】
以下の式(7)を満たす請求項1に記載の撮像レンズ。
(7) 0 < d5-6/f < 1.5
但し、
d5-6:前記第五レンズと前記第六レンズとの間の光軸上の空気間隔
【請求項9】
以下の式(8)を満たす請求項1に記載の撮像レンズ。
(8) 2.0 < TTL/f < 10.0
但し、
TTL:前記第一レンズの物体側面から像面までの光軸上の距離をいい、前記第六レンズから前記像面までの光軸上の距離は空気換算した値を用いる。
【請求項10】
以下の式(9)を満たす請求項1に記載の撮像レンズ。
(9) 0.2 < BF/f < 2.0
但し、
BF:前記第六レンズの像側面から前記像面までの空気換算した光軸上の距離
【請求項11】
以下の式(10)を満たす請求項1に記載の撮像レンズ。
(10) 90°< FOV
但し、
FOV:当該撮像レンズの画角
【請求項12】
以下の式(11)を満たす請求項1に記載の撮像レンズ。
(11) 40 < ν3
但し、
ν3:前記第三レンズのd線に対するアッベ数
【請求項13】
以下の式(12)を満たす請求項1に記載の撮像レンズ。
(12) 1.0 < f3/f < 5.0
但し、
f3:前記第三レンズの焦点距離
【請求項14】
以下の式(13)を満たす請求項1に記載の撮像レンズ。
(13) (Ymax-f×tanθ)/(f×tanθ) < -0.3
但し、
Ymax:有効像円における像高
θ :有効像円における半画角
【請求項15】
前記第四レンズは正レンズからなり、前記第五レンズは負レンズからなり、
以下の式(14)を満たす請求項1に記載の撮像レンズ。
(14) f45/f < -1.0
但し、
f45:前記第四レンズ及び前記第五レンズの合成焦点距離
【請求項16】
前記第一レンズから前記第六レンズまでの全てのレンズが硝子製である請求項1に記載の撮像レンズ。
【請求項17】
請求項1から請求項16のいずれか一項に記載の撮像レンズと、当該撮像レンズによって形成された光学像を電気的信号に変換する撮像素子と、を備えたことを特徴とする撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件発明は、撮像レンズ及び撮像装置に関し、特に、CCD(Charge Coupled Device)センサやCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサ等の固体撮像素子を用いた撮像装置に好適な撮像レンズ及び撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
かねてより、一眼レフカメラ、ミラーレス一眼カメラ、デジタルスチルカメラ等の携帯可能な撮像装置や、監視用撮像装置、車載用撮像装置等の据付固定型の撮像装置等、種々の撮像装置が普及している。これらに用いられる固体撮像素子の高画素化に伴い、その撮像レンズの高性能化が求められている。
【0003】
また近年では、ADAS(Advanced Driver Assistance System、先進運転支援システム)の普及が進み始めている。ADASでは車載用撮像装置を用いてセンシングを行い、撮像装置より得られた画像の解析に基づいて、各種の運転支援を行う。ADASに用いられる撮像装置には、高い解像力を有すると共に、小型軽量で、広い撮像範囲を有し、さらには悪天候時や夜間時などの低照度下においても明るい被写体像を取得可能な撮像レンズが求められる。さらにこのような撮像装置では長期使用に耐え得る信頼性が求められる他、種々の環境で使用されるため、その撮像レンズには耐久性は勿論のこと、使用環境の変化によらず安定的に良好な結像性能を維持可能であることが求められる。
【0004】
車載用撮像装置の撮像レンズとして、例えば、特許文献1には、物体側から像側にかけて順に、像側に凹形状を向けた負メニスカスレンズと、物体側に凹形状を向けた正メニスカスレンズと、両凸レンズと、開口絞りと、負の合成屈折力を有するレンズ群と、正の合成屈折力を有するレンズ群とから構成されたものが開示されている。当該撮像レンズによれば、開口絞りよりも物体側に配置されるレンズによって正の合成屈折力を有するレンズ群が構成されるため、比較的広角でありながら低ディストーションを実現している。
【0005】
特許文献2には、物体側から像側にかけて順に、光軸付近で物体側に凸形状を向けた負レンズと、像側に凸形状を向けた正メニスカスレンズと、正レンズと、正レンズ及び負レンズを接合した接合レンズと、正レンズとから構成された撮像レンズが開示されている。当該撮像レンズでは、最も物体側に位置する負レンズの曲率半径及び中心厚を所定の範囲内の値とすることで光軸中心付近において高い角度分解能を実現している。
【0006】
特許文献3には、物体側から像側にかけて順に、物体側に凸形状を向けた負レンズと、負レンズと、開口絞りと、正レンズと、両凸レンズと、負レンズと、正レンズとから構成された撮像レンズが開示されている。当該撮像レンズでは、屈折力配置を規定すると共に、非球面レンズを所定の配置とすることで、広角で良好な結像性能を実現できるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2016-126230号公報
【特許文献2】特開2017-173807号公報
【特許文献3】特表2021-533422号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら特許文献1に開示の撮像レンズでは、開口絞りよりも物体側において正の合成屈折力を有するレンズ群が構成されるため、開口絞りには収斂された光線束が入射する。そのため、当該撮像レンズでは十分な開口絞り径を確保することができず、明るさが不足してしまう。すなわち、F値の大きな撮像レンズとなってしまう。特許文献1にはF値が2.6程度の実施例が開示されているが、車載用撮像装置が低照度下で使用されることを考慮すると、撮像レンズのF値は十分ではなく、被写体に対する十分な視認性を得るには、より明るい(よりF値の小さい)撮像レンズとする必要がある。さらに、特許文献1に開示の撮像レンズの半画角は30度程度である。車載センシング用撮像装置の撮像レンズとして用いるにはより広い画角を実現する必要がある。
【0009】
特許文献2に開示の撮像レンズでは、光軸付近の角度分解能を高めるため、最も物体側に位置する負レンズの曲率半径を小さく、中心厚を厚くしている。そのため、周辺部まで良好な光学性能を得ることは困難であり、当該撮像レンズの小型化を図ることも困難である。さらに車載用撮像装置は小型であることが求められ、撮像レンズの最も物体側に配置されるレンズは外側(物体側/例えば、車両の外側)から視認されにくいことが求められる。すなわち、車載用撮像装置の撮像レンズには前玉径に対する厳しい制約がある。特許文献2に記載の撮像レンズでは、この最も物体側に配置されるレンズの屈折力が弱いため、車載用撮像装置の撮像レンズに要求されるレベル以下に前玉径を小さくすることが困難である。
【0010】
特許文献3に開示の撮像レンズでは、開口絞りよりも物体側には負レンズのみが配置されるため、開口絞りの物体側には強い発散作用を有する負の屈折力を有するレンズ群が構成される。従って、開口絞りには発散された光線束が入射する。そのため十分な開口絞り径を得ることができ、F値の小さい撮像レンズを構成する上では好ましい。また、この場合、前玉径を小さくすることも容易になる。しかしながら、開口絞りの前後において光線束が広がってしまうため、撮像レンズ全体、特に開口絞りよりも像側に配置されるレンズを小径化することが困難になる。
【0011】
そこで、本発明の課題は、全体の小型化を実現しつつ、明るく、撮像範囲が広く、且つ、結像性能の高い撮像レンズ及び撮像装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために本件発明に係る撮像レンズは、物体側から像側に順に、物体側に凸形状を向けた負メニスカスレンズからなる第一レンズと、像側に凸形状を向けた正メニスカスレンズからなる第二レンズと、第三レンズを含む少なくとも1枚のレンズと、第四レンズと、第五レンズと、像側面が凸面である正レンズからなる第六レンズとから構成され、以下の式(1)を満たすことを特徴とする。
(1) 1.2 < D2/f
但し、
D2:前記第二レンズの光軸上の厚み
f :当該撮像レンズの焦点距離
【0013】
また、上記課題を解決するために本件発明に係る撮像装置は、上記撮像レンズと当該撮像レンズによって形成された光学像を電気的信号に変換する撮像素子とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本件発明によれば、全体の小型化を実現しつつ、明るく、撮像範囲が広く、且つ、結像性能の高い撮像レンズ及び撮像装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施例1の撮像レンズのレンズ断面図である。
【
図2】実施例1の撮像レンズの無限遠物体合焦状態における球面収差図、非点収差図及び歪曲収差図である。
【
図3】本発明の実施例2の撮像レンズのレンズ断面図である。
【
図4】実施例2の撮像レンズの無限遠物体合焦状態における球面収差図、非点収差図及び歪曲収差図である。
【
図5】本発明の実施例3の撮像レンズのレンズ断面図である。
【
図6】実施例3の撮像レンズの無限遠物体合焦状態における球面収差図、非点収差図及び歪曲収差図である。
【
図7】本発明の実施例4の撮像レンズのレンズ断面図である。
【
図8】実施例4の撮像レンズの無限遠物体合焦状態における球面収差図、非点収差図及び歪曲収差図である。
【
図9】本発明の実施例5の撮像レンズのレンズ断面図である。
【
図10】実施例5の撮像レンズの無限遠物体合焦状態における球面収差図、非点収差図及び歪曲収差図である。
【
図11】本発明の実施例6の撮像レンズのレンズ断面図である。
【
図12】実施例6の撮像レンズの無限遠物体合焦状態における球面収差図、非点収差図及び歪曲収差図である。
【
図13】本発明の一実施形態に係る撮像装置の構成の一例を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本件発明に係る撮像レンズ及び撮像装置の実施の形態を説明する。但し、以下に説明する撮像レンズ及び撮像装置は本件発明に係る撮像レンズ及び撮像装置の一態様であって、本件発明に係る撮像レンズ及び撮像装置は以下の態様に限定されるものではない。
【0017】
1.撮像レンズ
1-1.光学構成
当該撮像レンズは、物体側から像側に順に、物体側に凸形状を向けた負メニスカスレンズからなる第一レンズと、像側に凸形状を向けた正メニスカスレンズからなる第二レンズと、第三レンズを含む少なくとも1枚のレンズと、第四レンズと、第五レンズと、像側面が凸面である正レンズからなる第六レンズとから構成される。なお、当該撮像レンズはこれらのレンズから実質的に構成されるが、当該撮像レンズはこれらの実質的な屈折力を有するレンズの他に、実質的な屈折力を有さないレンズやカバーガラス等のレンズ以外に光学要素を備えることは許容される。以下、物体側から順に詳細に説明する。
【0018】
(1)第一レンズ
最も物体側に配置される第一レンズを負レンズとすることにより、入射光束を発散させて広い画角を実現することが容易になる。また、第一レンズ、すなわち前玉のレンズ径を小さくしつつ開口絞り径を大きくすることができ、F値を小さくすることが容易になる。さらに、第一レンズを物体側に凸形状を向けた負メニスカスレンズとすることで、第一レンズを通過した光束が像面又は鏡筒内で反射して第一レンズに達したときに、第一レンズにおいて反射した光が再度像面に入射してゴーストが発生することを抑制することができる。また、第一レンズの物体側面を凹面とすると広い画角を実現しようとしたときに、入射光が第一レンズの物体側面で全反射してしまい、所望の画角を得ることができない場合がある。一方、当該撮像レンズのように、第一レンズの物体側面を凸面とすることで、より広い画角を実現することが容易になる。
【0019】
ここで、第一レンズは非球面を少なくとも一面備えることが好ましい。第一レンズの物体側面又は像側面を非球面とすることで、特に、光軸中心から周辺部にかけての像面湾曲を良好に補正することができ、少ないレンズ枚数で良好な結像性能を有する撮像レンズを構成することができる。さらに、第一レンズの物体側面及び像側面をそれぞれ非球面とすれば、面間偏芯の測定が容易になる。なお、面間偏芯量とは、第一レンズの物体側面の面頂位置と、第一レンズの像側面の面頂位置との偏芯方向差分をいう。すなわち、光軸に平行な軸をz軸とし、z軸に垂直な面をxy平面としたとき、第一レンズの面間偏芯量は、物体側面と像側面の各面頂位置のx軸方向の差分と、y軸方向の差分とで表される面頂位置のずれ量をいう。面間偏芯量の測定が容易になることで、第一レンズの品質管理が容易になり、面間偏芯に起因する片ボケや偏芯コマ収差などの発生を抑制することができる。
【0020】
(2)第二レンズ
第二レンズは像側に凸形状を向けた正メニスカスレンズである。そのため、第二レンズの物体側面は凹面となる。一方、第一レンズの像側面は凹面である。従って、第一レンズと第二レンズとの間には、両凸形状の空気レンズが構成される。この空気レンズにより光線束の発散作用を得ることができるため、第一レンズにのみ強い負の屈折力を配置する必要がなくなり、広い画角を実現しつつ、諸収差の発生を抑制し、結像性能の高い撮像レンズを得ることができる。
【0021】
また、第二レンズは正の屈折力を有するため、第一レンズにおいて発散した光束を第二レンズにより収斂することができる。従って、広い画角を実現しつつ、当該撮像レンズの小型化を図ることができる。
【0022】
(3)第三レンズ
当該撮像レンズにおいて、第三レンズに配置する屈折力の正負の別や、そのレンズ面形状は特に限定されるものではない。例えば、第三レンズに正の屈折力を配置すれば、第二レンズから入射する光束を収斂することができ、当該撮像レンズ全体の小型化を図ることができて好ましい。当該撮像レンズでは、第二レンズが正の屈折力を有するため、第三レンズに正の屈折力を配置することにより、第二レンズと第三レンズとに正の屈折力を分散配置することができる。そのため、第二レンズの偏芯敏感度が高くなり過ぎることを抑制することができ、歩留まりを向上する上でも好ましい。
【0023】
第三レンズが正レンズである場合、第三レンズは両凸レンズであることがより好ましい。物体側面及び像側面をそれぞれ凸面とすることで、両面に正の屈折力を分散配置することができ、第三レンズに比較的強い正の屈折力を配置したときも、諸収差の発生を抑制し、良好な結像性能を得ることが容易になる。
【0024】
一方、第三レンズに負の屈折力を配置した場合、色収差を良好に補正することができる。このとき、当該撮像レンズの更なる小型化を図る場合は、第二レンズに強い正の屈折力を配置する必要がある。しかしながら、第二レンズに強い正の屈折力を配置すると諸収差を補正することが困難になる。従って、第三レンズに負の屈折力を配置する場合、第三レンズと第四レンズとの間に正の屈折力を有するレンズを配置し、第二レンズに配置する正の屈折力を弱めることが好ましい。
【0025】
第三レンズが正レンズのとき、第三レンズと第四レンズの間に正レンズを1枚配置することで、正の屈折力を分散配置することができ、諸収差の発生を抑制できる。また、第三レンズが正レンズのとき、第三レンズと第四レンズの間に負レンズを1枚配置することで、色収差を良好に補正することができる。さらに、第三レンズと第四レンズの間に2枚以上のレンズが配置される場合も同様の効果を得ることができる。このように第三レンズと第四レンズとの間には、1枚以上のレンズが配置されていてもよい。当該撮像レンズの小型化を図る上では、第三レンズと第四レンズとの間には実質的な屈折力を有するレンズは1枚までであることが好ましい。つまり、当該撮像レンズは、6枚または7枚のレンズから構成されることが好ましい。
【0026】
(4)第四レンズ
当該撮像レンズにおいて、第四レンズに配置する屈折力の正負の別や、そのレンズ面形状は特に限定されるものではないが、第四レンズは正レンズであることが好ましい。第四レンズを正レンズとすれば、当該撮像レンズの像側において光束をさらに収斂することができ、当該撮像レンズ全体の小型化を図ることができて好ましい。
【0027】
(5)第五レンズ
当該撮像レンズにおいて、第五レンズに配置する屈折力の正負の別や、そのレンズ面形状は特に限定されるものではない。但し、色収差の補正を良好に行う上で、第五レンズの屈折力は、第四レンズの屈折力とは逆の符号であることが好ましい。第四レンズが正の屈折力を有する場合、第五レンズに負の屈折力を配置すれば、色収差の補正を良好に行うことができる。
【0028】
色収差を良好に補正する上で、第四レンズは正レンズであり、第五レンズが負レンズであることが好ましい。その逆の屈折力配置の場合と比較して、色収差をより良好に補正することができる。また、第四レンズと第五レンズとは接合され、一体化されていることが好ましい。第四レンズ及び第五レンズを接合レンズとすることで、当該撮像レンズを製造するときのレンズの光軸合わせ等の配列調整が容易になり、偏芯敏感度を低くすることができる。また、この場合、当該接合レンズの合成屈折力は負であることが好ましい。当該接合レンズに発散作用を持たせることで、当該撮像レンズの小型化を図りつつ、像面側で光線を所望の像高まで跳ね上げ、有効像円を大きくすることができる。
【0029】
(6)第六レンズ
第六レンズは当該撮像レンズにおいて実質的に最も像側に配置されるレンズであり、像側面が凸面の正レンズにより構成される。像側面が凸面であるため、像面において反射した光束が第六レンズの像側面に入射したときに、その再反射光が像面に入射するのを防ぐことができる。すなわち、再反射光を像面の外側に向かうようにすることで、ゴーストの発生を抑制することができる。また、第六レンズの物体側面を凸面とすれば、第五レンズで跳ね上げられた光束を第六レンズの入射面で収斂させることができる。また、第六レンズの物体側面と像側面とにおいて正の屈折力を分散させることができ、諸収差の発生を抑制することができる。
【0030】
(7)レンズ硝材
当該撮像レンズを構成する第一レンズから前記第六レンズまでの全てのレンズは硝子製であることが好ましい。硝子製レンズは、プラスチック製レンズと比較して、熱的安定性が高く、雰囲気温度の変化に伴う膨張・収縮の程度が小さい。そのため、当該撮像レンズを構成する全てのレンズを硝子製レンズとすることで、雰囲気温度が変化してもピント(焦点位置)変動や画角変動を良好に抑制することができる。
【0031】
(8)開口絞り
当該撮像レンズにおいて、絞り(開口絞り)の配置場所は、特に限定されるものではない。しかしながら、適切な位置に絞りを配置することで、周辺像高の不要光をカットしつつ、F値の小さい明るい撮像レンズを得ることができる。ここで、絞りは瞳位置を規定する。当該撮像レンズにおいて、入射瞳位置が物体側により近い程、第一レンズのレンズ径を小さくすることができる。一方、射出瞳位置が像面に近い程当該撮像レンズの小型化に寄与する。しかしながら、射出瞳位置が撮像レンズの像面に近くなる程、像面に対する結像光の入射角度が大きくなり、撮像素子に配置されるフォトダイオードに適切に入射することが困難となる。その結果、適正露出の確保が困難となるため、感度ムラ(シェーディングムラ)や周辺の色付きが発生してしまう。従って、明るく、感度ムラや周辺の色付き等を抑制するという観点から、絞りは第四レンズよりも物体側に配置されることが好ましく、第二レンズと第四レンズとの間に配置されることがより好ましく、第二レンズと第三レンズとの間に配置されることが最も好ましい。
【0032】
1-2.式
当該光学系は下記に示す式を1つ以上満足することが好ましい。
【0033】
1-2-1. 式(1)
(1) 1.2 < D2/f
但し、
D2:第二レンズの光軸上の厚み
f :当該撮像レンズの焦点距離
【0034】
上記式(1)は、第二レンズの光軸上の厚み(中心厚)と当該撮像レンズの焦点距離との比を規定する式である。式(1)を満足する場合、当該撮像レンズを小型に維持しつつ、倍率色収差を良好に補正することができ、結像性能の良好な撮像レンズを得ることができる。また、第一レンズのレンズ径を車載用撮像装置の撮像レンズに要求されるレベル以下に小さくする上でも有効である。
【0035】
これに対して、式(1)の数値が下限値以下である場合、車載用撮像装置の撮像レンズでは、第二レンズの厚みが薄くなると、第二レンズに所望の正の屈折力を配置することが困難になり、広い画角を実現しつつ、当該撮像レンズの径方向の小型化を図ることが困難になり、好ましくない。
【0036】
上記効果を得る上で、式(1)の下限値は1.25であることがより好ましく、1.35であることがさらに好ましい。また、式(1)の上限値は特に限定されるものではないが、第二レンズの厚みが厚くなりすぎると、当該撮像レンズの小型化を図りつつ、良好な結像性能を得ることが困難になる場合がある。従って、上記式(1)の上限値は例えば5.0であることが好ましく、2.0であることがより好ましい。但し、式(1)において不等号(<)を等号付不等号(≦)に置換してもよい。また、上限値については等号付不等号(≦)であっても不等号(<)であってもよい。他の式においても同様である。
【0037】
1-2-2. 式(2)
(2) -10.0 < f12/f < 0
但し、
f12:第一レンズ及び第二レンズの合成焦点距離
【0038】
上記式(2)は、第一レンズ及び第二レンズの合成焦点距離と当該撮像レンズの焦点距離との比を規定する式である。式(2)を満足する場合、第一レンズ及び第二レンズの合成焦点距離が負となり、当該撮像レンズのバックフォーカス、すなわち、第六レンズと像面との間の光軸上の距離(但し、空気換算長とする)を長くすることができる。この場合、第六レンズと像面との間に水晶ローパスフィルターや赤外線カットフィルターなどの光学ブロックの配置が容易になる。また、第一レンズ及び第二レンズの合成焦点距離が上記式(2)の範囲内となる場合、非点収差の補正が良好になりより結像性能の高い撮像レンズを得ることができる。
【0039】
これに対して、式(2)の数値が下限値以下になると、第一レンズ及び第二レンズによる負の合成屈折力が弱くなり過ぎ、F値が小さく、且つ、良好な結像性能を有する撮像レンズを得るには、第一レンズのレンズ径を大きくする必要があり、当該撮像レンズの小型化を図る上で好ましくない。一方、式(2)の値が上限値以上になると、すなわち、f12が正の値を示すと、F値が小さく、且つ、良好な結像性能を有する撮像レンズを得るには、この場合も、第一レンズのレンズ径を大きくする必要があり好ましくない。
【0040】
上記効果を得る上で、式(2)の下限値は-5.0であることがより好ましく、-3.6であることがさらに好ましい。式(2)の値は上記範囲内で大きくなるほど、第一レンズ及び第二レンズによる負の合成屈折力が強くなり、第一レンズのレンズ径を小さくする上では好ましい。しかしながら、負の合成屈折力が強くなりすぎると、像面湾曲などの諸収差の補正が困難になる場合がある。当該観点から、式(2)の上限値は-1.0であることがより好ましく、-1.6であることがさらに好ましい。
【0041】
1-2-3. 式(3)
(3) 0.05 < D1/f < 0.6
但し、
D1:第一レンズの光軸上の厚み
【0042】
上記式(3)は、第一レンズの光軸上の厚みと当該撮像レンズの焦点距離との比を規定する式である。式(3)を満足する場合、第一レンズの耐久性を維持することのできる厚みを確保しつつ、第一レンズの曲率を適正な範囲内とすることができる。そのため、十分な負の屈折力を第一レンズに配置しつつ、諸収差の発生を抑制しながら、車載用撮像装置の撮像レンズに要求されるレベル以下に第一レンズを小径化することがより容易になる。
【0043】
これに対して、式(3)の数値が下限値以下になると、第一レンズの厚みが薄くなり過ぎて、耐久性を維持することが困難になる。一方、式(3)の数値が上限値以上になると、第一レンズの厚みが厚くなり過ぎ、第一レンズに十分な負の屈折力を配置することが困難になる、或いは、第一レンズのレンズ径が大きくなるなど、当該撮像レンズを小型化するという観点から好ましくない。
【0044】
上記効果を得る上で、式(3)の下限値は0.1であることがより好ましく、0.2であることがさらに好ましい。また、式(3)の上限値は0.5であることがより好ましく、0.4であることがさらに好ましい。
【0045】
1-2-4. 式(4)
(4) 0.1 < d1-2/f < 2.0
但し、
d1-2:第一レンズと第二レンズとの間の光軸上の空気間隔
【0046】
上記式(4)は、第一レンズと第二レンズとの間の光軸上の空気間隔と当該撮像レンズの焦点距離との比を規定する式である。「d1-2」の値は、第一レンズと第二レンズとの間に形成される上記空気レンズの厚み(面間隔)に相当する。式(4)を満足させることにより、上記空気レンズにより諸収差を良好に補正することができ、結像性能の高い撮像レンズを得ることができる。また、式(4)を満足させることにより、第一レンズと第二レンズとの光軸上の空気間隔が適切な範囲内となり、第一レンズにおいて発散した光束の径が大きくなり過ぎる前に第二レンズに入射させることができる。そのため、当該撮像レンズの小型化を図ることがより容易になる。
【0047】
これに対して、式(4)の数値が上限値以上になると、第二レンズのレンズ径を大きくする必要があり、光学全長も長くなる。そのため当該撮像レンズの小型化を図る上で好ましくない。一方、式(4)の数値が下限値以下になると、上記空気レンズによる発散作用を十分に得ることができず、諸収差を補正することが困難になり、良好な結像性能を得ることが困難になる。
【0048】
上記効果を得る上で、式(4)の下限値は0.2であることがより好ましく、0.3であることがさらに好ましい。また、式(4)の上限値は1.0であることがより好ましく、0.6であることがさらに好ましい。
【0049】
1-2-5. 式(5)
(5) 0.5 < R11/f < 10.0
但し、
R11:第一レンズの物体側面の近軸曲率半径
【0050】
上記式(5)は、第一レンズの物体側面の近軸曲率半径と当該撮像レンズの焦点距離との比を規定する式である。式(5)を満足する場合、第一レンズの物体側面の形状がゴーストの発生を抑制する上でより適正な凸面形状となる。
【0051】
これに対して、式(5)の数値が下限値以下になると、第一レンズの物体側面の近軸曲率半径が小さくなり過ぎて、コマ収差や像面湾曲等の諸収差の発生を抑制することが困難になり、少ないレンズ枚数で良好な結像性能を得ることが困難になるため、好ましくない。一方、式(5)の数値が上限値以上になると、第一レンズの物体側面が平面に近くなり、ゴーストの発生を抑制することが困難になるため、好ましくない。
【0052】
上記効果を得る上で、式(5)の下限値は0.8であることがより好ましく、1.0であることがさらに好ましい。また、式(5)の上限値は5.0であることがより好ましく、2.0であることがさらに好ましい。
【0053】
1-2-6. 式(6)
(6) 0.25 < D3/f < 2.0
但し、
D3:第三レンズの光軸上の厚み
【0054】
上記式(6)は、第三レンズの光軸上の厚みと当該撮像レンズの焦点距離との比を規定する式である。式(6)を満足する場合、光学全長方向の小型化を図ると共に、球面収差や倍率色収差等の諸収差を良好に補正することができ、結像性能のより良好な撮像レンズを得ることができる。
【0055】
これに対して、式(6)の数値が下限値以下になると、球面収差や倍率色収差の補正が困難になり、好ましくない。一方、式(6)の数値が上限値以上になると、第三レンズの厚みが厚くなり、当該撮像レンズの小型化を図る上で、好ましくない。
【0056】
上記効果を得る上で、式(6)の下限値は0.35であることがより好ましく、0.50であることがさらに好ましい。また、式(6)の上限値は1.0であることがより好ましく、0.95であることがさらに好ましい。
【0057】
1-2-7. 式(7)
(7) 0 < d5-6/f < 1.5
但し、
d5-6:第五レンズと第六レンズとの間の光軸上の空気間隔
【0058】
上記式(7)は、第五レンズと第六レンズとの間の光軸上の空気間隔と当該撮像レンズの焦点距離との比を規定する式である。式(7)を満足する場合、当該撮像レンズの光学全長が短くなり当該撮像レンズの小型化を図りつつ、第六レンズに対する入射光の光線高さを所望の像高まで跳ね上げ、有効像円を大きくすることができて、好ましい。
【0059】
これに対して、式(7)の数値が下限値以下になると、光学全長は短くなるが、光線を所望の像高まで跳ね上げることが困難になり、有効像円を大きくすることができず好ましくない。一方、式(7)の数値が上限値以上になると、光学全長が長くなり、当該撮像レンズの小型化を図る上で、好ましくない。
【0060】
上記効果を得る上で、式(7)の下限値は0.05であることがより好ましく、0.13であることがさらに好ましい。また、式(7)の上限値は1.0であることがより好ましく、0.7であることがさらに好ましい。
【0061】
1-2-8. 式(8)
(8) 2.0 < TTL/f < 10.0
但し、
TTL:第一レンズの物体側面から像面までの光軸上の距離をいい、第六レンズから像面までの光軸上の距離は空気換算した値を用いる。
【0062】
上記式(8)は、第一レンズの物体側面から像面までの光軸上の距離、すなわち光学全長と、当該撮像レンズの焦点距離との比を規定する式である。式(8)を満足する場合、焦点距離に比して当該撮像レンズの光学全長が短く、当該撮像レンズの小型化を図りつつ、諸収差が良好に補正された結像性能の高い撮像レンズを得ることがより容易になる。
【0063】
上記効果を得る上で、式(8)の下限値は3.0であることがより好ましく、4.0であることがさらに好ましい。また、式(8)の上限値は9.0であることがより好ましく、8.0であることがさらに好ましい。
【0064】
1-2-9. 式(9)
(9) 0.2 < BF/f < 2.0
但し、
BF:第六レンズの像側面から像面までの空気換算した光軸上の距離
【0065】
上記式(9)は、第六レンズの像側面から像面までの光軸上の距離と、当該撮像レンズの焦点距離との比を規定する式である。式(9)を満足する場合、当該撮像レンズの光学全長が長くなることを抑制しつつ、第六レンズと像面との間に水晶ローパスフィルターや赤外カットフィルターなどの光学ブロックを設置することが容易になる。
【0066】
上記効果を得る上で、式(9)の下限値は0.4であることがより好ましく、0.5であることがさらに好ましい。また、式(9)の上限値は1.7であることがより好ましく、1.2であることがさらに好ましい。
【0067】
1-2-10. 式(10)
(10) 90°< FOV
但し、
FOV:当該撮像レンズの画角
【0068】
上記式(10)は、当該撮像レンズの画角を規定する式である。式(10)を満足する場合、広い画角を確保しつつ、近軸付近において角度分解能の高い撮像レンズを得ることができる。そのため、遠方の物体を高解像度で結像することができ、同程度の焦点距離を有する撮像レンズと比較すると画角の広い撮像レンズを得ることができる。従って、当該撮像レンズをセンシングカメラの撮像光学系に適用し、車両の進行方向前方をセンシングすれば、車両の周囲の物体(障害物、信号機、道路交通標識等)を広く認識しつつ、先行車などの遠方の物体を精度よく検出することができる。
【0069】
上記効果を得る上で、式(10)の下限値は100°であることがより好ましく、110°であることがさらに好ましい。また、式(10)の上限値は特に限定されるものではないが、例えば180°であってもよい。
【0070】
1-2-11. 式(11)
(11) 40 < ν3
但し、
ν3:第三レンズのd線に対するアッベ数
【0071】
上記式(11)は、第三レンズのd線に対するアッベ数を規定する式である。式(11)を満足する場合、軸上色収差を良好に低減することができ、結像性能のより高い撮像レンズを得ることができる。
【0072】
上記効果を得る上で、式(11)の下限値は45であることがより好ましい。また、式(11)の上限値は特に限定されるものではないが、例えば80であることが好ましく、70であることがより好ましい。
【0073】
1-2-12. 式(12)
(12) 1.0 < f3/f < 5.0
但し、
f3:第三レンズの焦点距離
【0074】
上記式(12)は、第三レンズの焦点距離と当該撮像レンズの焦点距離との比を規定する式である。式(12)を満足する場合、第三レンズは正の屈折力を有し、第三レンズにおいて光線束を収斂することができるため、当該撮像レンズを構成するレンズ、特に第四レンズ、第五レンズ、第六レンズの小径化が容易になる。また、式(12)を満足する場合、第三レンズに配置される正の屈折力が適正な範囲内となり、特に球面収差の発生を抑制しつつ、当該撮像レンズの小型化を図ることがより容易になる。
【0075】
これに対して、式(12)の数値が下限値以下になると、当該第三レンズに配置される正の屈折力が強くなり過ぎ、球面収差等の諸収差の補正が困難になり、良好な結像性能を有する撮像レンズを得ることが困難になる。一方、式(12)の数値が上限値以上になると、第三レンズに配置される正の屈折力が弱くなり過ぎ、当該撮像レンズの小型化を図る上で、好ましくない。
【0076】
上記効果を得る上で、式(12)の下限値は1.25であることがより好ましく、1.4であることがさらに好ましい。また、式(12)の上限値は4.0であることが好ましく、2.8であることがより好ましい。
【0077】
1-2-13. 式(13)
(13) (Ymax-f×tanθ)/(f×tanθ) < -0.3
但し、
Ymax:有効像円における像高
θ :有効像円における半画角
【0078】
式(13)を満足する場合、通常の撮像レンズと比較したときに大きな負の歪曲を発生させることができ、広い画角を確保しつつ、近軸付近において角度分解能の高い撮像レンズを得ることが容易になる。
【0079】
式(13)の数値は小さい程、負の歪曲が大きくなり、上記効果を得る上で好ましい。当該観点から式(13)の下限値は特に限定されるものではない。しかしながら、負の歪曲が大きくなると、周辺部に映り込んだ物体の認識が困難になる。当該観点から、式(13)の下限値は、例えば、-0.7とすることができ、-0.6であることがさらに好ましい。一方、上述のとおり、式(13)の数値は小さい程好ましいため、式(13)の上限値は-0.35であることがより好ましく、-0.40であることがさらに好ましい。
【0080】
1-2-14. 式(14)
第四レンズは正レンズであり、第五レンズが負レンズであるとき、下記式(14)を満たすことが好ましい。
(14) f45/f < -1.0
但し、
f45:第四レンズ及び第五レンズの合成焦点距離
【0081】
上記式(14)は、第四レンズ及び第五レンズの合成焦点距離と当該撮像レンズの焦点距離との比を規定する式である。式(14)を満足する場合、第四レンズと第五レンズにより光線束の発散作用が得られるため、光線高さを像高まで跳ね上げ、有効像円を大きくすることができる。さらに、式(14)を満足させることで、像面湾曲の発生を抑制し、結像性能のより高い撮像レンズを得ることが容易になる。
【0082】
式(14)の下限値は特に限定されるものではないが、例えば、-50.0であることが好ましく、-15.0であることがより好ましい。また、式(14)の上限値は-1.3であることがより好ましく、-2.0であることがさらに好ましい。
【0083】
2.撮像装置
次に、本件発明に係る撮像装置について説明する。本件発明に係る撮像装置は、上記本件発明に係る撮像レンズと、当該撮像レンズによって形成された光学像を電気的信号に変換する撮像素子とを備えたことを特徴とする。なお、撮像素子は光学系の像側に設けられることが好ましい。
【0084】
ここで、撮像素子等に特に限定はなく、CCD(Charge Coupled Device)センサやCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサなどの固体撮像素子等も用いることができる。本件発明に係る撮像装置は、デジタルカメラやビデオカメラ等のこれらの固体撮像素子を用いた撮像装置に好適である。また、当該撮像装置は、一眼レフカメラ、ミラーレス一眼カメラ、デジタルスチルカメラ、監視カメラ、車載用カメラ、ドローン搭載用カメラ等の種々の撮像装置に適用することができる。また、これらの撮像装置はレンズ交換式の撮像装置であってもよいし、レンズが筐体に固定されたレンズ固定式の撮像装置であってもよい。特に、上記撮像レンズは車両等の移動体に搭載される撮像装置の光学系に好適である。さらに上記撮像レンズは広い画角を有するため、一つの画像に自立航法による移動や、周囲の監視等を行うために必要な多くの情報を取得することができる。さらに、上記撮像レンズでは、光軸付近の画像解像度が高いため、当該撮像装置は車両等に搭載されるセンシングカメラに好適であり、車両等の移動体の進行方向前方をセンシングすれば、周囲の物体(障害物、信号機、道路交通標識等)を広く認識しつつ、先行車などの遠方の物体を精度よく検出することができる。
【0085】
また、当該撮像装置では、固体撮像素子が受像した光を光電変換して電気信号として出力し、被写体の像に対応したデジタル画像を生成する。デジタル画像は、例えばHDD(Hard Disk Device)やメモリカード、光ディスク、磁気テープなどの記録媒体に記録することができる。なお、撮像装置が銀塩フィルムカメラのときは、固体撮像素子に代えて、フィルム面を像面としてもよい。
【0086】
図13は、撮像装置1の構成の一例を模式的に示す図である。カメラ2は、着脱可能な撮像レンズ3と、撮像レンズ3の結像面IPに配置された撮像素子21と、撮像素子21の物体側に配置されたカバーガラス22を有す。撮像レンズ3は、開口絞り31を有する。
【0087】
次に、実施例を示して本件発明を具体的に説明する。但し、本件発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例0088】
(1)光学構成
図1は、本件発明に係る実施例1の撮像レンズのレンズ断面図である。
図1に示すように、当該撮像レンズは、物体側から像側に順に、物体側に凸形状を向けた負メニスカスレンズからなる第一レンズG1と、像側に凸形状を向けた正メニスカスレンズからなる第二レンズG2と、両凸レンズからなる第三レンズG3と、両凸レンズからなる第四レンズG4及び両凹レンズからなる第五レンズG5を接合した接合レンズと、両凸レンズからなる第六レンズG6とから構成されている。第二レンズG2と第三レンズG3との間に開口絞りSPが配置されている。第一レンズG1の両面、第三レンズG3の両面、第六レンズG6の両面はそれぞれ非球面である。
【0089】
第六レンズG6と像面IPとの間には、光学ブロックGが配置されている。光学ブロックGは、光学フィルタや、フェースプレート、水晶ローパスフィルター、赤外カットフィルター等に相当するものである。像面IPは、例えば、CCDセンサやCMOSセンサなどの固体撮像素子の撮像面、或いは、銀塩フィルムのフィルム面等である。これらの事項は、他の実施例においても同様であるため、以後説明を省略する。
【0090】
(2)数値実施例
次に、当該撮像レンズの数値実施例について説明する。以下に当該撮像レンズの面データ、諸元、非球面係数を示す。
【0091】
「面データ」では、当該撮像レンズを構成する各レンズのうち、最も物体側に位置するレンズのレンズ面を1番目として、像面側に向かうに従い順次増加するレンズ面の番号を面番号として示している。「r」は、各面番号に対応したレンズ面の曲率半径[mm]を示している(但し、rの値がINFとなる面は、その面が平面であることを示す)。「d」は、面番号i(iは自然数とする)のレンズ面と、面番号i+1のレンズ面との軸上面間隔[mm]を示している。「nd」は、各レンズのd線(波長587.56nm)における屈折率を示している。「νd」は、各レンズのd線(波長587.56nm)におけるアッベ数を示している。但し、レンズ面が非球面である場合、表中の面番号の前に「※」を付している。また、非球面である場合には、「r」の欄にはその近軸曲率半径を示している。
【0092】
「非球面係数」では、非球面であるレンズ面の面番号と、その非球面係数を示している。なお非球面形状は、面頂点基準として、光軸からの距離hの位置での光軸方向の変位zを以下の非球面式により表すことができる。
【0093】
z=ch2/[1+{1-(1+k)c2h2}1/2]+A4h4+A6h6+A8h8+A10h10・・・
但し、cは曲率(1/r)であり、hは光軸からの高さであり、kは円錐係数(コーニック定数)であり、A4、A6、A8、A10・・・は各次数の非球面係数である。なお、非球面係数及びコーニック定数の数値における「E±m」(mは整数を表す)という表記は、「×10±m」を意味している。
【0094】
「諸元」は、当該撮像レンズの焦点距離(f)[mm]、F値、半画角(θ)[°]、像高[mm]、光学全長(TTL)[mm]、バックフォーカス(BF)[mm]を示している。光学全長は、第一レンズG1の物体側面から第六レンズG6の像側面までの光軸上の距離にバックフォーカス(BF)を加えた値である。また、バックフォーカス(BF)は、レンズ最終面から近軸像面までの距離を空気換算した値である。
【0095】
さらに、式(1)~式(14)の値を表1(後掲)に示す。これらの数値に関する事項は他の実施例においても同様であるため、以下では説明を省略する。
【0096】
図2に当該撮像レンズの無限遠物体合焦状態における縦収差図を示す。各縦収差図において、図面に向かって左から順に、球面収差、非点収差、歪曲収差を表している。球面収差を表す図では、縦軸は開放F値(Fno)との割合、横軸にデフォーカスをとり、実線がd線(波長λ=587.56nm)、一点鎖線がC線(波長λ=656.28nm)、破線がF線(波長λ=486.13nm)における球面収差を示す。非点収差を表す図では、縦軸は最大像高(Ymax)、横軸にデフォーカスをとり、実線がd線に対するサジタル像面、点線がd線に対するメリジオナル像面を示す。歪曲収差を表す図では、縦軸は最大像高(Ymax)、横軸にディストーション[%]をとり、歪曲収差を表す。これらの各図に関する事項は他の実施例で示す縦収差図においても同様であるため、以下では説明を省略する。
【0097】
(面データ)
面番号 r d nd νd
※1 8.254 1.420 1.8513 40.10
※2 3.015 2.027
3 -25.610 7.760 1.9037 31.32
4 -13.140 0.150
5SP INF 3.152
※6 10.353 3.710 1.6188 63.86
※7 -8.981 0.169
8 19.200 3.300 1.6180 63.40
9 -10.100 0.500 1.8052 25.46
10 7.140 1.801
※11 8.673 4.340 1.5920 67.02
※12 -34.391 1.000
13 INF 0.900 1.5168 64.20
14 INF 2.047
【0098】
(非球面係数)
面番号 k A4 A6 A8 A10
1 -1.2019E+00 -5.1799E-03 2.2066E-04 -4.9612E-06 4.6742E-08
2 -2.5679E+00 4.0899E-04 -1.1579E-05 1.1385E-05 -3.3286E-07
6 0.0000E+00 -2.0858E-04 -5.5269E-07 -6.4224E-09 -7.7140E-10
7 0.0000E+00 4.3443E-04 -1.8653E-06 5.3720E-08 -1.3991E-09
11 0.0000E+00 -1.9662E-04 -6.2925E-06 -4.3212E-08 -8.3966E-09
12 0.0000E+00 -9.6135E-04 1.8180E-05 -6.0126E-07 1.7294E-09
【0099】
(諸元)
焦点距離[mm] 5.120
F値 1.60
半画角[°] 61.94
像高[mm] 4.10
光学全長[mm] 31.97
BF(in air)[mm] 3.64